(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】複数のイオンガイドを有するイオンガイドアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01J 49/06 20060101AFI20231222BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20231222BHJP
G01N 27/622 20210101ALI20231222BHJP
【FI】
H01J49/06 800
H01J49/06 500
H01J49/02 200
G01N27/622
(21)【出願番号】P 2022552625
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 GB2021050689
(87)【国際公開番号】W WO2021186192
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504142097
【氏名又は名称】マイクロマス ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ワイルドグース,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット,ダレン
(72)【発明者】
【氏名】コリアー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マルパス,オリバー
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0021468(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0287779(US,A1)
【文献】米国特許第09312113(US,B1)
【文献】特表2014-521190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 40/00-49/48
G01N 27/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンガイドアセンブリであって、
2つの平面状取り付けコンポーネントと、
前記2つの平面状取り付けコンポーネントに取り付けられた第1および第2のイオンガイドであって、前記イオンガイドが互いから離隔され、前記平面状取り付けコンポーネントの少なくとも一方が、前記第1および第2のイオンガイドが取り付けられた前記平面状取り付けコンポーネントの少なくとも一方における位置の間に位置する、前記平面状取り付けコンポーネントの少なくとも一方を貫通する開口を有する、第1および第2のイオンガイドと、
前記平面状取り付けコンポーネントにおける前記開口を通り、前記第1のイオンガイドと前記第2のイオンガイドとの間の空間に挿入されるようなサイズおよび構成とされた、イオン光学装置と、を含む、イオンガイドアセンブリ。
【請求項2】
前記開口が、5mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、30mm以下、25mm以下、20mm以下、10mm以下または5~20mmからなる群から選択される第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の
方向におけるサイズを有し、および/または
前記開口が、5mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、25mm以上、30mm以上、40mm以下、35mm以下、30mm以下、25mm以下、20mm以下、15mm以下、5~30mm、または10~25mmからなる群から選択される前記第1のイオンガイドと前記第2のイオンガイドとの間の方向に直交する方向におけるサイズを有する、請求項1に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項3】
前記2つの平面状取り付けコンポーネントが、それぞれの主面が互いに面するよう配置され、前記第1および第2のイオンガイドが、前記2つの平面状取り付けコンポーネントの間に位置する、請求項1または2に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項4】
前記第1のイオンガイドが、それに沿ってイオンをガイドする第1の軸を画定し、前記第2のイオンガイドが、それに沿ってイオンをガイドする第2の軸を画定し、前記第1の軸と前記第2の軸とは同軸である、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項5】
前記2つの平面状取り付けコンポーネントの一方または両方が、その上に電気接点を有する印刷回路基板であり、前記第1および/または第2のイオンガイドの電極が、PCBを介して前記第1および/または第2のイオンガイドに電圧を印加するため、前記電気接点に電気的に接続される、請求項1~4のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項6】
前記2つの平面状取り付けコンポーネントの間、かつ前記第1のイオンガイドのまわりの空間が、前記第1のイオンガイドが位置する第1のガスセルを画定するよう密閉され、および/または
前記2つの平面状取り付けコンポーネントの間、かつ前記第2のイオンガイドのまわりの空間が、前記第2のイオンガイドが位置する第2のガスセルを画定するよう密閉される、請求項1~5のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項7】
前記イオン光学装置を
前記平面状取り付けコンポーネントに取り付けるための、少なくとも1つの取り付け具を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項8】
前記2つの平面状取り付けコンポーネントが各々、前記取り付け具が位置するスロットを備えた開口を含む、請求項7に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項9】
前記取り付け具が、前記平面状取り付けコンポーネントの主面に当接する面を有する、請求項7または8に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項10】
前記取り付け具が、それぞれが前記平面状取り付けコンポーネントの一方または両方における穴を通って延在する1つ以上の突出部を含み、前記1つ以上の突出部が、前記取り付け具の動きを防止するよう、それぞれが前記1つ以上の穴により閉じ込められる、請求項7~9のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項11】
前記取り付け具が
、ねじ、ボルト、
またはクリップを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項12】
前記イオン光学装置が、前記第1のイオンガイドと前記第2のイオンガイドとの間において前記平面状取り付けコンポーネントに取り付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項13】
前記イオン光学装置が、イオン入口およびイオン出口を画定するよう配置された複数の電極を含み、
前記イオン入口およびイオン出口は、
前記イオン光学装置が、前記第1のイオンガイドと前記第2のイオンガイドとの間に配置され、前記イオン入口を通して前記第1のイオンガイドからイオンを受容し、前記イオン出口を通して前記第2のイオンガイドにイオンを通過させることが可能となるように、
構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項14】
前記イオン光学装置が、前駆検体イオンを断片化して娘イオンを形成するための断片化装置、イオンを活性化するための活性化装置、または検体イオンを他のイオンもしくは非イオン性分子と反応させるための反応装置である、請求項1~13のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ。
【請求項15】
質量または移動度分光計であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリと、
前記イオンガイドアセンブリの下流にある質量または移動度分析器と、を含む、質量または移動度分光計。
【請求項16】
前記質量または移動度分光計が、1つ以上の真空チャンバであって、前記イオンガイドアセンブリが配置された1つ以上の真空チャンバと、前記1つ以上の真空チャンバを真空にするための1つ以上の真空ポンプと、を含み、前記質量または移動度分光計が、前記第1および/または第2のイオンガイドを少なくとも0.001mbarの圧力に維持するよう、前記真空ポンプを制御するように構成される、請求項15に記載の質量または移動度分光計。
【請求項17】
閉ループイオン移動度分離器を含む、請求項15または16に記載の質量または移動度分光計。
【請求項18】
方法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載のイオンガイドアセンブリ、または、請求項15~17のいずれか一項に記載の質量または移動度分光計を備えることと、
前記平面状取り付けコンポーネントにおける前記開口を通して、前記第1のイオンガイドと前記第2のイオンガイドとの間の空間に、前記イオン光学装置を挿入することと、を含む、方法。
【請求項19】
質量または移動度分光分析の方法であって、
請求項15~17のいずれか一項に記載の質量または移動度分光計を備えることと、
前記第1のイオンガイドを通して、前記イオン光学装置に、次いで前記第2のイオンガイドを通して、イオンをガイドすることと、
前記第2のイオンガイドの下流のイオンを、質量または移動度分析することと、を含む、方法。
【請求項20】
イオンガイドアセンブリであって、
取り付けコンポーネントと、
前記取り付けコンポーネントに取り付けられた第1および第2のイオンガイドであって、前記イオンガイドが互いから離隔され、前記取り付けコンポーネントが、前記第1および第2のイオンガイドが取り付けられた前記取り付けコンポーネントにおける位置の間に位置する、前記取り付けコンポーネントを貫通する開口を有する、第1および第2のイオンガイドと、
前記取り付けコンポーネントにおける前記開口を通り、前記第1のイオンガイドと前記第2のイオンガイドとの間の空間に挿入されるようなサイズおよび構成とされた、イオン光学装置と、を含む、イオンガイドアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月19日に出願された英国特許出願第2004014.3号の優先権およびその利益を主張するものである。本出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、一般的に、質量分析計および/またはイオン移動度分析計に関し、特に、かかる分析計を通してイオンをガイドするためのイオンガイドアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析計または移動度分析計においては、複数のイオンガイドを互いにおよび/または他のイオン光学装置と整列させることが望ましい。しかしながら、かかるコンポーネントのイオンガイド経路を整列させることは、特に特定のイオン光学装置が取り外され交換される必要がある場合、実現および維持することが困難であり得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、イオンガイドアセンブリであって、
2つの平面状取り付けコンポーネントと、
2つの平面状取り付けコンポーネントに取り付けられた第1および第2のイオンガイドであって、これらイオンガイドは互いから離隔されている、第1および第2のイオンガイドと、を含み、
平面状取り付けコンポーネントの少なくとも一方は、第1および第2のイオンガイドが取り付けられた該少なくとも一方の取り付けコンポーネントにおける位置の間に位置する、平面状取り付けコンポーネントを貫通する開口を有する、イオンガイドアセンブリを提供する。
【0005】
平面状取り付けコンポーネントの該少なくとも一方における開口は、イオン光学装置が、開口を通して第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の空間に挿入されることを可能とするようなサイズおよび構成とされている。イオン光学装置は、第1のイオンガイドからイオンを受容し、第2のイオンガイドにイオンを移送するように構成される。
【0006】
開口は、5mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、30mm以下、25mm以下、20mm以下、10mm以下または5~20mmからなる群から選択される第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の寸法におけるサイズを有しても良く、および/または、開口は、5mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、25mm以上、30mm以上、40mm以下、35mm以下、30mm以下、25mm以下、20mm以下、15mm以下、5~30mmまたは10~25mmからなる群から選択される第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の方向に直交する方向におけるサイズを有しても良い。開口は、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の寸法について列記されたサイズのうちいずれか1つと、直交する方向について列記されたサイズのうちいずれか1つと、の組み合わせを有しても良い。
【0007】
開口は、長方形、正方形、または楕円形のような他の形状であっても良い。
【0008】
開口は、平面状取り付けコンポーネントの材料によって完全に囲まれても良く、すなわち、平面状取り付けコンポーネントの外側端からスロット状にされたものとは対照的であっても良い。
【0009】
2つの平面状取り付けコンポーネントは、それらの主面が互いに面するように配置されても良く、第1および第2のイオンガイドは、2つの平面状取り付けコンポーネントの間に位置しても良い。
【0010】
平面状取り付けコンポーネントは、剛性のものであっても良い。
【0011】
平面状取り付けコンポーネントは、互いに平行に配置されても良い。
【0012】
第1および/または第2のイオンガイドは、取り付けコンポーネントの両方に直接取り付けられても良い。
【0013】
第1および/または第2のイオンガイドは、長細のイオンガイド経路を画定するように配置された複数の電極を含む。
【0014】
第1のイオンガイドは、それに沿ってイオンをガイドする第1の軸を画定し、第2のイオンガイドは、それに沿ってイオンをガイドする第2の軸を画定し、第1の軸と第2の軸とは、同軸であっても良い。
【0015】
第1および/または第2のイオンガイドは、イオンガイドの軸方向の長さに沿って離隔された複数の開口を持つ電極を含んでも良く、これら電極における開口は、使用時にイオンが導かれるトンネルを画定するように整列される。
【0016】
第1および/または第2のイオンガイドは、四重極ロッドセット型イオンガイドなどの多極イオンガイドを含んでも良い。
【0017】
イオンガイドアセンブリは、それらの電極に電圧を印加するために各イオンガイドの電極に接続された、1つ以上の電圧供給部を含んでも良い。例えば、イオンガイドは、イオンガイドを通るイオンガイド経路にイオンを径方向に閉じ込めるために、第1および/または第2のイオンガイドの電極にRF電圧を印加するためのRF電圧供給部を含んでも良い。イオンガイドの一方または両方が軸方向に離隔された電極(開口を持つ電極またはセグメント化された多極ロッドセットのような)から形成される実施形態においては、イオンに対して径方向の閉じ込め力をもたらすように、軸方向に交番する電極にRF電圧の反対位相が印加されても良い。
【0018】
イオンガイドアセンブリは、イオンガイドに沿って軸方向にイオンを付勢するために、第1および/または第2のイオンガイドの電極にDC電圧を印加するための、1つ以上のDC電圧供給部を含んでも良い。例えば、1つ以上のDC電圧供給部は、イオンガイドに沿って過渡DC電圧を1回以上移動させてイオンガイドに沿ってイオンを付勢するように、イオンガイドに沿って異なる電極、または複数の電極の異なる群に、過渡DC電圧を連続的に印加するように構成されても良い。
【0019】
代替としてまたはこれに加えて、1つ以上のDC電圧供給部は、イオンガイドに沿って軸方向の電場を生成するように、イオンガイドに沿った異なる電極に異なるDC電圧を同時に印加するように構成されても良い。
【0020】
2つの取り付けコンポーネントの一方または両方は、その上に電気接点を有する印刷回路基板であっても良い。第1および/または第2のイオンガイドの電極は、PCBを介して第1および/または第2のイオンガイドに電圧を印加するために、該電気接点に電気的に接続されても良い。
【0021】
PCBは、非導電性基板のシート層上に積層される材料の1つ以上のシート層からエッチングされ、1つ以上のシート層に印刷され、または1つ以上のシート層に堆積させられた導電性トラック、パッドおよび他の特徴の形をとる電気接点を含むコンポーネントであっても良い。
【0022】
少なくとも第1のイオンガイドのまわりの2つの平面状取り付けコンポーネントの間の空間は、第1のイオンガイドが位置する第1のガスセルを画定するように密閉されても良く、および/または、少なくとも第2のイオンガイドのまわりの2つの平面状取り付けコンポーネントの間の空間は、第2のイオンガイドが位置する第2のガスセルを画定するように密閉されても良い。
【0023】
第1および/または第2のガスセルの各々は、イオンガイドの入口および出口オリフィスから離れて気密であっても良く、例えばそれにより、これらのオリフィスが上流領域と下流領域との間の差動ポンピング開口として機能する。しかしながら、イオンガイド内のガス流または圧力を制御するように、イオンガイドに隣接する1つ以上の位置において、密閉された部分または取り付けコンポーネントを通って延在するように1つ以上の穴が配置され得ると考えられる。
【0024】
イオンガイドアセンブリは、イオン光学装置を取り付け具に取り付けるための、平面状取り付けコンポーネントに取り付けられた少なくとも1つの取り付け具を含んでも良い。
【0025】
取り付けコンポーネントはそれぞれ、取り付け具が位置するスロットを備えた開口を含んでも良い。
【0026】
各スロットを備えた開口は、スロットを備えた開口の対向する側端が、取り付け具が第1の方向(y方向)において動くことを防止するようなサイズおよび構成とされても良い。
【0027】
取り付け具は、平面状取り付けコンポーネントの主面に当接する面を有しても良い。このことは、取り付け具が第2の方向(z方向)において動くことを防止し得る。
【0028】
取り付け具は、それぞれが平面状取り付けコンポーネントの一方または両方における穴を通って延在する1つ以上の突出部を含んでも良く、1つ以上の突出部は、取り付け具の動きを防止するよう、それぞれが1つ以上の穴によって閉じ込められても良い。突出部と穴とは、取り付け具が少なくとも第3の方向(x方向)において動くことを防止するように協働していても良い。
【0029】
取り付け具は、イオン光学装置を取り付け具に取り付けるためのねじ、ボルト、クリップまたは他の装着機構を含んでも良い。
【0030】
本発明はまた、本明細書に記載されるイオンガイドアセンブリと、イオンガイドアセンブリの下流にある質量または移動度分析器と、を含む質量または移動度分光計を提供する。
【0031】
それは、平面状取り付けコンポーネントにおける開口を通って、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の空間に挿入されるようなサイズおよび構成とされたイオン光学装置を含んでも良い。
【0032】
イオン光学装置は、第1のイオン光学装置と第2のイオンガイドとの間において平面状取り付けコンポーネントに取り付けられても良い。
【0033】
イオン光学装置は、平面状取り付けコンポーネントに直接取り付けられても良いし、または本明細書に記載される取り付け具のうちの1つ以上に取り付けられても良い。
【0034】
イオン光学装置は、イオン入口およびイオン出口を画定するよう配置された複数の電極を含んでも良く、イオン入口およびイオン出口は、イオン光学装置が、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間に配置された場合、イオン光学装置が、イオン入口を通して第1のイオンガイドからイオンを受容し、イオン出口を通して第2のイオンガイドにイオンを通過させることが可能となるよう構成される。
【0035】
イオン光学装置は、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の寸法における開口よりも小さい、そのイオン入口とイオン出口との間の長さを有しても良い。
【0036】
イオン光学装置は、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の方向に直交する方向において、開口よりも小さい高さを有しても良い。
【0037】
イオン光学装置は、イオントンネル型イオンガイド、多極型イオンガイド、またはイオンファネル型イオンガイドのような、第1および/または第2のイオンガイドに関連して説明されたような形態を有するイオンガイドを含んでも良い。
【0038】
イオン光学装置は、前駆検体イオンを断片化して娘イオンを形成するための断片化装置、イオンを活性化するための活性化装置、または検体イオンを他のイオンもしくは非イオン性分子と反応させるための反応装置であっても良い。
【0039】
例えば、イオン光学装置は、表面誘導解離装置(SID)、電子捕獲解離装置(EDC)、電子衝突解離装置(EID)、または光解離装置であっても良い。
【0040】
本明細書に記載される活性化装置は、イオンのデクラスタリング(すなわち、検体イオンを付加種から分離するように検体イオンのクラスタと付加種のクラスタとを解離すること)、イオンを断片化せずにイオンにおける構造変化を引き起こすように(すなわちイオンの配座を変化させるように)エネルギーを付与すること、および、電子捕獲または電荷移動条件(例えばECDまたはETD条件)にさらされることのような別の技術によってイオンが励起された後にイオンが断片化するように、背景ガス分子と衝突させることによってイオンにエネルギーを付与することのうちの1つ以上を引き起こすように構成され動作させられても良い。したがって、イオン光学装置が、励起された後にイオンを断片化させる活性化装置である場合、分光計はまた、活性化装置において活性化される前にイオンに対してかかる励起を実行するための励起装置を含んでも良い。例えば、励起装置は、電子捕獲解離装置、電子移動解離装置、電子放出装置などであっても良い。
【0041】
分光計は、イオンガイドアセンブリが配置される1つ以上の真空チャンバと、1つ以上の真空チャンバを真空にするための1つ以上の真空ポンプと、を含んでも良い。分光計は、第1および/または第2のイオンガイドを少なくとも0.001mbarの圧力に維持するように、真空ポンプを制御するように構成されても良い。
【0042】
分光計は、イオンを背景ガス分子と衝突させ、衝突誘起解離または衝突誘起活性化を引き起こすために、第1および/または第2のイオンガイドへとまたはその中でイオンが加速させられるよう、電極に電圧を印加するように構成された1つ以上の電圧供給部を含んでも良い。
【0043】
これを実現するため、イオンは、例えば軸方向の電位差によって軸方向に加速されても良い。代替としては、衝突誘起解離または衝突誘起活性化を実現するため、イオンを(例えば径方向または軸方向に)振動させるように、第1および/または第2のイオンガイドの電極にAC電圧が印加されても良い。
【0044】
分光計は、イオンのパルスをイオンガイドアセンブリに通過させるため、イオンガイドアセンブリの上流に、パルスイオン源、パルスイオントラップまたはイオンゲートを含んでも良い。
【0045】
これに加えてまたは代替として、イオン移動度または質量電荷比のような物理化学的性質に従ってイオンを時間的に分離するための分離装置が、イオンガイドアセンブリの上流に備えられても良い。例えば、イオンを分離し、異なる移動度のイオンを異なる時間にイオンガイドアセンブリに通過させるように、イオン移動度分離器(IMS)が、イオンガイド領域の上流に備えられても良い。代替としてまたはこれに加えて、異なる質量電荷比のイオンを異なる時間にイオンガイドアセンブリに伝達するように、質量選択的イオントラップまたは質量フィルタが、イオンガイド領域の上流に備えられても良い。
【0046】
分光計は、閉ループイオン移動度分離器を含んでも良い。
【0047】
本発明はまた、本明細書に記載される質量または移動度分光計を備えることと、イオン光学装置を、平面状取り付けコンポーネントにおける開口を通して、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の空間に挿入することと、を含む方法を提供する。
【0048】
イオン光学装置は次いで、平面状取り付けコンポーネントに直接、または間接的に(例えば取り付け具を介して)取り付けられても良い。
【0049】
本方法はさらに、平面状取り付けコンポーネントにおける開口を通して、イオン光学装置を、第1のイオンガイドと第2のイオンガイドとの間の空間から取り外すことを含んでも良い。
【0050】
本発明はまた、本明細書に記載される質量または移動度分光計を備えることと、第1のイオンガイドを通して、イオン光学装置に、次いで第2のイオンガイドを通して、イオンをガイドすることと、第2のイオンガイドの下流のイオンを、質量または移動度分析することと、を含む、質量または移動度分光分析の方法を提供する。
【0051】
イオンガイドアセンブリは、2つの平面状取り付けコンポーネントを有するものとして説明されたが、第1および第2のイオンガイドは代わりに、単一の平面状取り付けコンポーネントのみに、または2つよりも多い平面状取り付けコンポーネントに取り付けられ得ると考えられる。
【0052】
これに加えてまたは代替として、1つ以上の取り付けコンポーネントは平面状である必要はないと考えられる。
【0053】
したがって、本発明はまた、取り付けコンポーネントと、取り付けコンポーネントに取り付けられた第1および第2のイオンガイドであって、イオンガイドは互いから離隔され、取り付けコンポーネントは、第1および第2のイオンガイドが取り付けられた取り付けコンポーネントにおける位置の間に位置する、取り付けコンポーネントを貫通する開口を有する、第1および第2のイオンガイドと、を含むイオンガイドアセンブリを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
以下に、様々な実施形態が、単に例として、添付図面を参照しながら説明される。
【
図1】本発明の実施形態によるイオンガイドアセンブリの模式的な斜視図を示す。
【
図2】
図1に示されるイオンガイドアセンブリの一部の断面図を示す。
【
図3】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【
図4】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【
図5】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【
図6】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【
図7】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【
図8】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【
図9】本発明の種々の実施形態による分光計におけるコンポーネントの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明の実施形態によるイオンガイドアセンブリ2の模式的な斜視図を示し、
図2は、同じ実施形態の一部の断面図を示す。
【0056】
イオンガイドアセンブリ2は、平行に配置されかつ主面が互いに面する、2つの平面状取り付けコンポーネント4を含む。第1のイオンガイド6は、取り付けコンポーネント4の両方の間に配置され、それらのコンポーネントの両方に直接取り付けられている。同様に、第2のイオンガイド8は、取り付けコンポーネント4の両方の間に配置され、それらのコンポーネントの両方に直接取り付けられている。第1および第2のイオンガイド6、8の各々は、長細のイオンガイド経路を画定するように配置された複数の電極10を含む。図示されている実施形態においては、第1および第2のイオンガイドの各々は、イオンガイド6、8の軸方向の長さに沿って離隔された複数の電極10を含み、電極10における開口は、使用時にイオンが通ってガイドされるトンネルを画定するように整列されている(すなわち、イオンガイドは、イオントンネル型イオンガイドまたは積層リング型イオンガイドである)。しかしながら、イオンガイド6、8の一方または両方は、異なるタイプのイオンガイドでも良いと考えられる。例えば、イオンガイドの一方または両方は、四重極ロッドセット型イオンガイドなどの多極イオンガイドであっても良い。
【0057】
各イオンガイド6、8の電極10には、イオンガイドにおける通常の目的のために、これらの電極に電圧を印加するための電圧電源が接続されている。例えば、イオンガイドを通るイオンガイド経路にイオンを径方向に閉じ込めるために、RF電圧が各イオンガイド6、8の電極10に印加されても良い。イオンガイド6、8の一方または両方が軸方向に離隔された開口を持つ電極10から形成される実施形態においては、イオンに対して径方向の閉じ込め力をもたらすように、軸方向に交番する電極にRF電圧の反対位相が印加されても良い。代替としてまたはこれに加えて、例えばイオンガイドの一方または両方に軸方向に沿って軸方向にイオンを付勢するために、イオンガイド6、8の一方または両方の電極10にDC電圧が印加されても良い。例えば、イオンガイドに沿ってイオンを付勢するために、イオンガイド6、8に沿って1回以上、過渡DC電圧が移動させられても良い。過渡DC電圧がイオンガイドに沿って移動させられるたびに、過渡DC電圧がイオンガイドに沿って動くように、イオンガイドに沿って、過渡DC電圧が異なる電極10に連続的に印加されても良いし、または複数の電極の異なる群に連続的に印加されても良い。過渡DC電圧は電位障壁を生成するため、過渡DC電圧がイオンガイド6、8に沿って動くとき、電位障壁はイオンガイドに沿ってイオンを付勢する。代替としてまたはこれに加えて、イオンガイドに沿って過渡DC電圧を移動させるために、イオンガイドに沿って軸方向の電場を生成するように、イオンガイドの異なる電極に異なるDC電圧を同時に印加することによって、イオンがイオンガイドに沿って付勢されても良い。
【0058】
取り付けコンポーネント4の一方または両方は、印刷回路基板(PCB)であっても良く、イオンガイド6、8の電極10は、PCB上の電気接点12に電気的に接続され、それにより電圧がPCBを介してイオンガイド6、8の電極10に供給されても良いと考えられる。このことは、2つのイオンガイド6、8の機械的な整列を維持し、かつ、電圧がその電極10に容易に印加されることを可能とする、取り付けコンポーネント4を提供する。
【0059】
第1のイオンガイド6と第2のイオンガイド8とは、互いに離隔されている。第1のイオンガイド6の下流端は、第1のイオンガイド6を通るイオンガイド軸に対応する方向に沿って、第2のイオンガイド8の上流端と離隔されている。以下にさらに説明されるように、このことは、第1のイオンガイド6からイオンを受容し、第2のイオンガイド8にイオンを通過させるように、イオン光学装置がイオンガイド6とイオンガイド8との間の空間に挿入されることを可能とする。第1のイオンガイド6のイオンガイド軸は、第2のイオンガイド8を通るイオンガイド軸と実質的に平行であっても良い。第1のイオンガイド6を通るイオンガイド軸は、第2のイオンガイド8を通るイオンガイド軸と同軸であっても良いが、イオンガイド6、8のイオンガイド軸は同軸でなくても良く、例えばイオンガイド6、8の径方向において、互いにオフセットされていても良いと考えられる。
【0060】
平面状取り付けコンポーネント4の、第1および第2のイオンガイド6、8が取り付けられる部分の間の部分において、平面状取り付けコンポーネント4の一方または両方を通る開口14が備えられる。開口14は、イオン光学装置が第1および第2のイオンガイド6、8と整列されるように、取り付けコンポーネント4の開口14を通ってイオンガイド6とイオンガイド8との間の空間に挿入されることを可能とするよう位置決めされる。このことは、第1のイオンガイド6を通ってガイドされるイオンが、イオン光学装置へと通過し、イオン光学装置から出たイオンが第2のイオンガイド8へと通過して、それによって下流にガイドされるようにすることを可能とする。例えば、イオン光学装置は、前駆検体イオンを断片化して娘イオンを形成するための断片化装置であっても良く、例えば、イオン光学装置は、表面誘導解離装置(SID)、電子捕獲解離装置(ECD)、電子衝突解離装置(EID)、または紫外線光分解(UVPD)装置もしくは赤外線光分解(IRPD)装置のような光分解装置であっても良い。代替としては、イオン光学装置は、活性化装置(例えば、イオン性クラスタを活性化して検体イオンと付加種とに解離させるための)、または検体イオンを他のイオンもしくは非イオン性分子と反応させる反応装置(例えば、検体イオンを断片化するもしくは電荷をそれらに移動させるための)であっても良い。
【0061】
イオン光学装置が取り付けコンポーネント4の一方の開口14のうちの1つから挿入されると、そのイオン光学装置は例えばねじ、ボルト、クリップ、溶接またははんだ付け(図示されていない)を介して2つの取り付けコンポーネント4に直接取り付けられても良い。代替としては、
図1および
図2に示されるように、取り付け具16が取り付けコンポーネント4に取り付けられても良く、イオン光学装置が取り付け具16に取り付けられても良い。
【0062】
図示される実施形態においては、取り付けコンポーネント4における開口14は、同じ形状およびサイズを有しかつ一致した位置にあるが、このことは必須ではない。各開口14は、イオン光学コンポーネントをそこを通して挿入するための比較的大きな主部と、2つの取り付けコンポーネント4の間に延在する取り付け具16を受容するための上端部におけるスロット部分18と、を含む。各スロット部分18は、取り付け具16を受容し、スロット部分18の対向する側端が、取り付け具が第1の方向(y方向)において動くのを防止するようなサイズおよび構成とされる。取り付け具16はまた、スロット部分18に配置されたときに、取り付け具16が第2の方向(z方向)において動くことを防止するように、取り付け具16の外側に面する面(z方向において)が、取り付けコンポーネント4の内側に面する主面に当接するように構成されても良い。取り付け具16のこれらの外側に面する面の各々はまた、取り付け具16が少なくとも第3の方向(x方向)において動くことを防止するように、開口14から離隔された取り付けコンポーネント4における各々の穴を通って延在する突出部20を含んでも良い。取り付け具16は、これにイオン光学装置を取り付けるためのねじ22、またはボルトもしくはクリップのような他の装着手段を含んでも良い。代替としては、イオン光学装置は、取り付け具16に溶接またははんだ付けされても良い。
【0063】
取り付けコンポーネント4の各開口14は、2つの取り付けコンポーネント4の間に延在する第2の取り付け具16を受容するために、下端部に第2のスロット部分18を含んでも良い。第2のスロット部分18および第2の取り付け具16は、以上に説明されたものと対応する態様で構成されても良く、イオン光学装置もまた、以上に説明されたものと対応する態様で第2の取り付け具に取り付けられても良い。スロット部分18は、y方向において取り付けコンポーネント4の上部および下部にあるものとして説明されたが、y方向は垂直でなくても良く、いずれの方向であっても良い。
【0064】
使用時には、イオン源からのイオンは、イオンガイドアセンブリ2の第1のイオンガイド6にガイドされる。イオンは次いで、第1のイオンガイド6から、イオンガイドアセンブリ2の取り付けコンポーネント4に取り付けられているイオン光学装置(例えば解離装置または活性化装置)へと通過する。イオンは、イオン光学装置内で、例えば解離または断片化されることにより処理される。その結果のイオンは次いで、イオンガイドアセンブリ2の第2のイオンガイド8に通過し、それによって質量分析器または移動度分析器へと下流に通過させられ、そこでイオンが質量または移動度分析される。
【0065】
イオンガイドアセンブリ2は、第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置が所望の圧力に維持されるように、質量または移動度分光計内に配置され得ると考えられる。例えば、これらの装置のうちの任意の1つ以上が、そこを通って通過させられるイオンが背景ガス分子と比較的少ない衝突しかしないまたは実質的に衝突しないように、比較的低い圧力に維持されても良い。代替としてまたはこれに加えて(すなわち別の装置について)、これらの装置のうちの任意の1つ以上は、そこを通って通過させられるイオンが背景ガス分子と比較的高い割合で衝突するように、比較的高い圧力に維持されても良い。様々な装置が維持される圧力は、1つ以上のチャンバ上にそれらを配置し、1つ以上の真空ポンプを使用して1つ以上のチャンバ内の圧力を大気圧よりも低下させることによって制御されても良い。
【0066】
イオンガイドアセンブリはまた、そこを通るイオン経路内の圧力および/またはガス流を制御するように設計されても良い。例えば、第1のイオンガイド6のまわりにある取り付けコンポーネント4の間の空間は、第1のイオンガイド6が位置するガスセルを画定するように密閉されても良い。ガスセルは、第1のイオンガイド6の入口オリフィスおよび出口オリフィスを除いて気密であっても良く、例えばこれにより、これらのオリフィスが、上流領域と下流領域との間の差動ポンピング開口として機能する。しかしながら、第1のイオンガイド6内のガス流または圧力を制御するように、第1のイオンガイド6に隣接する1つ以上の位置において、密閉された部分または取り付けコンポーネント4を通って延在するように1つ以上の穴が配置されても良いと考えられる。例えば、ガスは、かかる穴を通して第1のイオンガイド6に導入されても良いし、または第1のイオンガイド6から排出されても良い。代替としてまたはこれに加えて、第2のイオンガイド8は、以上に説明されたものに対応する態様で密閉されても良い。
【0067】
第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置は、例えば約0.001mbar以上のような比較的高い圧力に維持されても良い。この圧力に維持される背景ガスは、窒素のような不活性ガスであっても良い。かかる比較的高い圧力においては、第1および/または第2のイオンガイド6、8(および/またはイオン光学装置)を通過するイオンは、背景ガス分子との衝突によって調整され、このことは、イオンの捕捉およびすぐ隣接する下流の装置(およびことによるとさらに下流の1つ以上の装置)への通過を改善する。これらの圧力領域においては、以上に説明されたように、その中にイオンを径方向に閉じ込めるように、第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置の電極10にRF電圧が印加されても良い。かかる比較的高い圧力に維持された第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置においては、衝突誘起解離(CID)または衝突誘起活性化が実行される実施形態が考えられる。例えば、イオンを背景ガス分子と衝突させ、CIDまたは衝突誘起活性化を引き起こすために、これらの装置のうちの1つ以上へとまたはこれらの装置のうちの1つ以上内でイオンが加速させられるように、機器に電圧が印加されても良い。これを実現するため、イオンは、例えば軸方向の電位差によって、軸方向に加速されても良い。代替としては、CIDまたは衝突誘導活性化を実現するために、イオンを(例えば径方向または軸方向に)振動させるように、1つ以上の装置の電極にAC電圧が印加されても良い。
【0068】
また、第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置は、例えばイオンと背景ガスとの衝突が比較的少ないまたは実質的にないように、比較的低い圧力に維持されても良いと考えられる。かかる圧力においては、イオンのRF閉じ込めが依然として望ましいが、背景ガス分子とのイオン衝突が最小化されるよう装置が比較的短い場合には必要とされないこととなり得る。
【0069】
イオンガイドアセンブリ2は、望ましい物理化学的特性を有するイオンに対して比較的短い時間プロファイル(例えば100ミリ秒未満)を提供する装置の下流に備えられても良い。比較的短い時間プロファイルは、限定するものではないが、パルスイオン源から、イオントラップのようなイオン蓄積領域から、またはイオンゲートを使用してイオンガイドアセンブリ2へのイオンの通過をゲートすることによって、イオンガイドアセンブリ2へイオンを提供することのような、様々な技術によって提供され得る。これに加えてまたは代替として、比較的短い時間的プロファイルは、限定するものではないが、イオン移動度または質量電荷比のような物理化学的特性に従って時間的に分離されるイオンを提供する分離装置を使用して提供されても良い。例えば、イオン移動度分離器(IMS)が、イオンを分離し、イオンガイドアセンブリに通過させるために使用されても良い。代替としては、例えば異なる時間に異なる質量電荷比のイオンをイオントラップからおよびイオンガイドアセンブリに質量選択的に放出することによって、または走査されるもしくは時間とともにステップ状にされる質量透過ウィンドウを有する質量フィルタ(四重極質量フィルタのような)を通してイオンを通過させることによって、イオンを分離しイオンガイドアセンブリに通過させるために、質量電荷分離器が使用されても良い。
【0070】
比較的短い時間プロファイルを有するイオンを提供する実施形態においては、例えば時間的に分離されたイオンの忠実度を維持するように、第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置(および任意選択的にさらに下流の領域)を通るイオンの通過時間を制御することが望ましいこととなり得る。このことは、軸方向に沿ってイオンを付勢するために、第1のイオンガイド6および/または第2のイオンガイド8および/またはイオン光学装置に軸方向の電場を印加することによって、またはこれらにそって過渡DC電圧を移動させることによって、達成され得る。第1および第2のイオンガイド6、8に関して以上に説明されたように、このことは、軸方向の電場を形成するように、または過渡DC電圧を移動させるように、軸方向に離隔された電極を各装置に備え、これらの電極にDC電圧を印加することによって、達成され得る。軸方向の電場を生成するための、または過渡DC電圧を移動させるための、専用の電極が備えられても良い。代替としては、これらのDC電圧は、RF閉じ込め電極のような他の機能を果たす装置の電極に供給されても良い。あまり好ましくはないが、装置を通るイオンの通過は、これら装置を通るガス流を変化させることによって制御されても良い。比較的短い時間プロファイルを有するイオンガイドアセンブリ2にイオンが供給される実施形態が説明されたが、このことは必須ではないと考えられる。
【0071】
本明細書に記載されるイオンガイドアセンブリ2は、様々な異なる装置形状に組み込まれることができ、そのいくつかが
図3~
図9に示されている。一般的に、イオンガイドアセンブリ2の上流および/または下流に、イオン源、質量分析器、質量分離器、質量フィルタ、イオン移動度ベースの分析器、イオン移動度ベースの分離器、イオン移動度フィルタ、および断片化装置のうちの1つ以上が配置されても良い。
【0072】
図3は、イオンガイドアセンブリ2がイオン源30と質量分析器32との間に配置されている実施形態を示す。イオン光学装置31は、イオンガイドアセンブリ内に配置されている。使用時には、イオン源30からのイオンは、イオンガイドアセンブリ2の第1のイオンガイド6にガイドされる。イオンは次いで、第1のイオンガイド6から、イオンガイドアセンブリの取り付けコンポーネントに取り付けられたイオン光学装置31(例えば解離装置または活性化装置)へと通過する。イオンは、イオン光学装置31内で、例えば解離または断片化されることによって処理される。その結果のイオンは次いで、イオンガイドアセンブリ2の第2のイオンガイド8に通過し、それによって質量分析器32へと下流に通過させられ、そこでイオンが質量分析される。
【0073】
図4は、イオン源30とイオンガイドアセンブリ2との間に、分解四重極質量フィルタのような質量フィルタ34(すなわちRF電圧およびDC電圧を有する)が配置されていることを除いて、
図3のものと同じである実施形態を示す。質量フィルタ34は、ある質量電荷比のイオンだけをイオンガイドアセンブリ2に選択的に通過させるように、質量通過ウィンドウを有するように動作させられても良い。質量フィルタ34の電極に印加される電圧は、例えば通過させられる質量電荷比を実質的に連続的に走査するまたはステップ状にすることによって、質量フィルタが異なる時間に異なる質量電荷比を有するイオン(だけ)を通過させるように、時間とともに変化させられても良い。また、別の形態においては、質量フィルタ34は、すべてのイオンを通過させるイオンガイド(例えばRFのみのイオンガイド)として動作させられても良いと考えられる。
【0074】
図5は、イオン移動度分離器(IMS)36が質量フィルタ34とイオンガイドアセンブリ2との間に配置されていることを除いて、
図4のものと同じである実施形態を示す。フィルタ34によって通過させられるイオンは、IMS装置36において、異なる移動度のイオンが異なる時間にイオンガイドアセンブリ2に到達するように分離されても良い。IMS装置36は、例えば静的電圧勾配によって、またはIMS装置に沿って過渡DC電圧を移動させることによって、異なる移動度を有するイオンがIMS装置を通る異なる通過時間を有するように、イオンが装置の出口に向かってガスを通して付勢される、ドリフトIMS装置であっても良い。代替としては、IMS装置は、異なるFAIMS移動度を有するイオンが異なる時間に出て行くように動作させられるFAIMS装置であっても良い。質量フィルタ34は、
図4に関連して説明されたように操作されても良く(例えば走査されるまたはステップ状にされる)、それによって通過させられたイオンは、下流のIMS装置36において分離されても良い。IMSは、例えば2つの装置の組み合わせが選択された電荷状態を有するイオンを通過させるように、質量フィルタと同期して動作させられても良い。
【0075】
図6は、質量フィルタ34およびIMS装置36の順序が逆になっていることを除いて、
図5のものと同じである実施形態を示す。
【0076】
図7は、IMS装置36が、例えばWO2015/155551に開示されるもののような直交IMS装置または閉ループIMS装置であることを除いて、
図5のものと同じである実施形態を示す。IMS装置36の上流に、イオンをトラップしIMS装置に向けて放出するためのイオントラップ38が配置されても良い。
【0077】
図8は、イオンガイドアセンブリ2の位置が、イオントラップ38とIMS装置36との間であることを除いて、
図7のものと同じである実施形態を示す。
【0078】
図9は、イオンガイドアセンブリ2の位置が質量フィルタ34とイオントラップ38との間であることを除いて、
図7のものと同じである実施形態を示す。
【0079】
本明細書に記載される実施形態においては、機器の下流端における質量分析器は好ましくは、飛行時間型(ToF)質量分析器、四重極質量分析器、フーリエ変換質量分析器、またはイオントラップ型質量分析器である。
【0080】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することなく、形態および細部での様々な変更が行われ得ることは、当業者ならば理解されるであろう。
【0081】
例えば、本開示は上流および下流方向の文脈で説明されたが、イオンガイドに沿って前後にイオンを通過させるように、機器を通るイオン移動の方向が反転されても良い。例えば、前駆イオンは、下流方向に装置を通過させられ、イオン光学装置において断片化されても良い。断片イオンは次いで、下流方向に通過させられる前に、分析されるために上流に戻されても良い。