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7407971疼痛の治療のためのhMrgX1受容体の増強剤としての4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】疼痛の治療のためのhMrgX1受容体の増強剤としての4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/47 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C07D239/47 Z CSP
A61K31/505
A61P25/04
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022567583
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021030100
(87)【国際公開番号】W WO2021225878
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】63/021,806
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ダリル リン
(72)【発明者】
【氏名】ウィネロスキー,レオナード ラリー ジュニア
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/018374(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/052072(WO,A2)
【文献】特表2006-528617(JP,A)
【文献】国際公開第1997/044326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 239/47
A61K 31/505
A61P 25/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物であって、
【化1】
式中、Rは、水素又はメチルであり、
は、
【化2】
である、化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が、水素である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
が、メチルである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
が、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
が、
【化4】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
が、
【化5】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記化合物が、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
式:
【化7】
である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、
【化8】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
式:
【化9】
である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、
【化10】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
式:
【化11】
である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、
【化12】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
式:
【化13】
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、
【化14】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
式:
【化15】
である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、
【化16】
である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
前記化合物が、
【化17】
である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、疼痛の治療剤。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、慢性疼痛の治療剤。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、慢性腰痛の治療剤。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、糖尿病性末梢神経障害疼痛の治療剤。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、骨関節炎疼痛の治療剤。
【請求項24】
疼痛を治療するための医薬品の製造のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項25】
慢性疼痛を治療するための医薬品の製造のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項26】
慢性腰痛を治療するための医薬品の製造のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項27】
糖尿病性末梢神経障害疼痛を治療するための医薬品の製造のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項28】
骨関節炎疼痛を治療するための医薬品の製造のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項29】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、薬学的組成物。
【請求項30】
薬学的組成物を製造するための方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、hMrgX1受容体の増強剤である化合物、本化合物を含む薬学的組成物、本化合物を使用して疼痛を治療する方法、並びに本化合物の合成に有用な中間体及びプロセスに関する。
【0002】
米国だけでも、成人の約20%が慢性疼痛を患っていると推定されている。慢性疼痛は、成人が医療を求める最も一般的な理由の1つであり、運動性及び日常活動の制限に関連している。残念なことに、慢性疼痛は、現在の療法に対して難治性であることが多く、多くの鎮痛薬は、用量制限の有害事象又は中毒及び乱用の深刻なリスクと関連しており、これらは、慢性疼痛の治療にそれを使用する際の実質的な障壁となり得る。したがって、新しい慢性疼痛療法、特にそのような有害な影響が低減又は効果的に排除された治療に対する満たされていない必要性が存在する。
【0003】
米国特許第6,326,368B1号は、特定の2-アリールオキシ及び2-アリールチオ置換ピリミジン及びトリアジン、並びにそれらの誘導体を、うつ病、不安神経症、薬物中毒、及び炎症性障害などの様々な障害の治療に有用なコルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニストとして開示している。米国特許第5,100,459号は、特定の置換スルホニル尿素及びその中間体を開示している。W.Wangdong,et.al.,ChemMedChem,vol10(1),57-61(2015)は、2-(シクロプロパンスルホンアミド)-N-(2-エトキシフェニル)ベンズアミド、ML382を、MrgX1の強力かつ選択的なポジティブアロステリックモジュレーターとして開示している。
【0004】
慢性疼痛を含む疼痛の代替治療に対する必要性が存在する。更に、hMrgX1受容体の増強剤である化合物に対する必要性が存在する。
【0005】
したがって、一実施形態では、本発明は、式Iの化合物であって、
【化1】
式中、Rは、水素又はメチルであり、
は、
【化2】
である、化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0006】
一実施形態では、Rは、水素である。
【0007】
一実施形態では、Rは、メチルである。
【0008】
一実施形態では、Rは、
【化3】
である。
【0009】
一実施形態では、Rは、
【化4】
である。
【0010】
一実施形態では、Rは、
【化5】
である。
【0011】
特定の実施形態では、本化合物は、
【化6】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0012】
特定の実施形態では、本化合物は、
【化7】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0013】
特定の実施形態では、本化合物は、
【化8】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0014】
特定の実施形態では、本化合物は、
【化9】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0015】
特定の実施形態では、本化合物は、
【化10】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0016】
特定の実施形態では、本化合物は、
【化11】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0017】
一実施形態では、本発明はまた、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、疼痛を治療する方法を、そのような治療を必要とする患者において提供する。一実施形態では、本発明は、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、慢性疼痛を治療する方法を、そのような治療を必要とする患者において更に提供する。一実施形態では、本発明は、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、慢性腰痛を治療する方法を、そのような治療を必要とする患者において更に提供する。一実施形態では、本発明は、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、糖尿病性末梢神経障害疼痛を治療する方法を、そのような治療を必要とする患者において更に提供する。一実施形態では、本発明は、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、骨関節炎疼痛を治療する方法を、そのような治療を必要とする患者において更に提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、療法に使用するための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を更に提供する。一実施形態では、本発明は、疼痛の治療に使用するための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、慢性疼痛の治療に使用するための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明はまた、疼痛を治療するための医薬品の製造のための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、慢性疼痛を治療するための医薬品の製造のための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物を更に提供する。一実施形態では、本発明は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と混合することを含む、薬学的組成物を調製するためのプロセスを更に提供する。一実施形態では、本発明は、式Iの化合物の合成のための新規中間体およびプロセスも包含する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療」、又は「治療する」という用語は、既存の症状又は障害の進行又は重症度を抑制すること、遅延させること、阻止すること、又は改善することを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳類、特にヒトを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に単回又は複数回投与すると、診断中又は治療中の患者に所望の効果を提供する、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の量又は投与量を指す。
【0024】
有効量は、既知の技法の使用によって、かつ同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により決定され得る。患者のための有効量を決定する際には、担当診断医によって多数の要因が考慮され、これらの要因には、患者の人種;患者のサイズ、年齢、および全体的な健康状態;関与する特定の疾患又は障害;疾患又は障害の程度又は関与若しくは重症度;個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与の様式;投与される調製物の生物学的利用能の特性;選択された投与レジメン;付随する薬物の使用;並びに他の関連する状況が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の化合物は、本化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される薬学的組成物として製剤化される。より好ましくは、そのような組成物は、経口投与用である。そのような薬学的組成物及びそれを調製するためのプロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照されたい)。
【0026】
以下の調製物に記載される特定の中間体は、1つ以上の窒素保護基を含んでもよい。保護基は、特定の反応条件及び実施される特定の変換に応じて、当業者によって認識されるように変化し得ることが理解される。保護及び脱保護条件は、当業者に周知であり、文献(例えば、“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,Fourth Edition,by Peter G.M.Wuts and Theodora W.Greene,John Wiley and Sons,Inc.2007を参照のこと)に記載されている。
【0027】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩を、例えば、当該技術分野で周知の標準的な条件下で、ジエチルエーテルなどの好適な溶媒中で、本発明の化合物の適切な遊離塩基の、適切な薬学的に許容される酸の反応によって形成することができる。加えて、そのような薬学的に許容される塩の形成は、窒素保護基の脱保護と同時に起こり得る。例えば、Gould,P.L.,“Salt selection for basic drugs,”International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986)、Bastin,R.J.,et al.“Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,”Organic Process Research and Development,4:427-435(2000)、及びBerge,S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)を参照されたい。
【0028】
特定の略語は、次のように定義される:「ACN」は、アセトニトリルを指す;「BAM8-22」は、ウシ副腎髄質ペプチド8-22を指す;「Cat.#」は、カタログ番号を指す;「CRC」は、濃度応答曲線を指す;「DMEM」は、ダルベッコ改変イーグル培地を指す;「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指す;「DPBS」は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を指す;「EC50」は、指定された曝露時間後にベースラインと最大値との間の最大応答の半分を供する薬剤の有効濃度を指す;「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を指す;「ESMS」は、エレクトロスプレー質量分析法を指す;「FBS」は、ウシ胎児血清を指す;「g」は、グラムを指す;「h」は、時間を指す;「HEC」は、ヒドロキシエチルセルロースを指す;「HEK293」は、ヒト胎児腎臓293細胞を指す;「HEPES」は、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を指す;「hMrgX1」は、ヒトMrgX1受容体を指す;「HTRF」は、均一な時間分解蛍光を指す;「IP1」は、イノシトール一リン酸を指す;「Kp,uu」は、非結合の脳から血漿への分配係数を指す;「LC-ESMS」は、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレー質量分析法を指す;「min」は、分を指す;「mL」は、ミリリットルを指す;「Me」は、メチルを指す;「mol」は、モルを指す;「mmol」は、ミリモルを指す;「nm」は、ナノメートルを指す;「nmol」は、ナノモルを指す;「m/z」は、質量分析法の質量電荷定量を指す;「n」は、生物学的データの文脈では、実行回数又は試験した回数を指す;「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を指す;「rpm」は、1分又は数分当たりの回転数を指す;「SD」は、標準偏差を指す;「SEM」は、平均値の標準誤差を指す;「U/mL」は、1ミリリットル当たりの単位を指す。
【0029】
一般化学
本発明の化合物又はその塩は、当業者に既知の様々な手順によって調製されてもよく、そのうちのいくつかが、以下のスキーム、調製、及び実施例で説明されている。当業者は、本発明の化合物又はその塩を調製するために、記載される経路の各々に対する特定の合成ステップを異なる様式で組み合わせるか、又は異なるスキームからのステップと併せることができることを認識している。以下のスキームにおける各ステップの生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、当技術分野で周知の従来の方法によって回収することできる。以下のスキームにおいて、全ての置換基は、別途指示のない限り、すでに定義したとおりである。試薬及び出発材料は、当業者であれば容易に入手可能なものである。以下のスキーム、調製、実施例、及びアッセイは、本発明を更に説明するものであるが、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0030】
【化12】
スキーム1は、当業者に周知されているように、芳香族求核置換反応による式Iの化合物(R=H若しくはCH、R=2,6-ジフルオロフェニル、2,4,6-トリフルオロフェニル、又は4-シアノ-2,6-ジフルオロフェニル)の一般的な調製を示す。更に、式Iの化合物は、当技術分野で十分に記載されているように、遷移金属(例えば、銅、ニッケル、又はパラジウム媒介)クロスカップリング又はウルマン型反応によって調製され得る。
【0031】
4位に適切な脱離基(LG)を有する2-アミノ-6-トリフルオロメチル-5置換ピリミジン出発材料(例えば、LG=Cl、Br、I、トリフレート、メシレート、トシレート)は、商業的に購入され得る。あるいは、当業者は、適切な出発材料が、塩基性条件下で適切な5置換4,4,4-トリフルオロ-2-メチル-3-オキソ-ブタン酸エステル(R=H、CH)を用いたグアニジンの脱水環化など、当技術分野で十分に文書化されている様々な技術の下で調製され得ることを認識するであろう。その後の環化2-アミノ-6-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシ-5置換ピリミジンの4位での適切なLGへの変換は、当業者によく認識されている。
【0032】
調製及び実施例
以下の調製及び実施例は、本発明を更に説明し、本発明の化合物の典型的な合成を表す。試薬及び出発材料は、容易に入手可能であるか、又は当業者によって容易に合成され得る。調製及び実施例は、限定ではなく例示として記載されており、当業者によって様々な変更がなされ得ることを理解されたい。
【0033】
LC-ES/MSは、AGILENT(登録商標)HP1100液体クロマトグラフィーシステムで実施される。エレクトロスプレー質量分析測定は、HP1100HPLCに接続された質量選択検出器四重極質量分析(Mass Selective Detector quadrupole mass spectrometer)で実施される。LC-MS条件(低pH):カラム:PHENOMENEX(登録商標)GEMINI(登録商標)NX C18 2.1×50mm 3.0μm、勾配:3分でBの5~100%、次に0.75分間でBの100%、カラム温度:50℃+/-10℃、流量:1.2mL/分、溶媒A:0.1%のHCOOHを含む脱イオン水、0.1%のギ酸を含む溶媒B ACN、波長214nm。代替のLC-MS条件(高pH):カラム:XTERRA(登録商標)MS C18カラム2.1×50mm、3.5μm、勾配:0.25分間で溶媒Aの5%、3分で溶媒Bの5%~100%の勾配、及び0.5分間で溶媒Bの100%、又は3分で溶媒Bの10%~100%、及び0.75分間で溶剤Bの100%、カラム温度:50℃+/-10℃、流量:1.2mL/分、溶媒A:10mMのNHHCO pH9、溶媒B ACN、波長:214nm。
【0034】
調製1
4-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロ-フェノキシ)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
【化13】
2-アミノ-4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(500mg、2.4mmol)と4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェノール(616mg、2.9mmol)とを合わせて、マイクロ波バイアルに入れ、ACN(10mL)を添加する。炭酸カリウム(665mg、4.8mmol)を添加し、バイアルを密封し、マイクロ波反応器で1時間160℃で加熱する。反応混合物を冷却し、水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。濾過し、得られた濾液を減圧下で蒸発させる。得られた残留物を、ヘキサン中の5~100%酢酸エチルの勾配を使用して、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を取得する(789mg、89%収率)。ESMS(m/z,79Br/81Br):370/372[M+H]。
【0035】
調製2
2-アミノ-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-オール
【化14】
メタノール中のナトリウムメトキシドの25%溶液(5.5mL、24mmol)を、メタノール(100mL)中のエチル4,4,4-トリフルオロ-2-メチル-3-オキソ-ブタノエート(4g、20mmol)及びグアニジン(1.2g、20mmol)の溶液に添加する。室温で23時間かき混ぜる。減圧下で反応混合物を蒸発させる。得られた白色の固体を水(20mL)に溶解し、酢酸(2mL)で酸性化する。得られた生成物を真空濾過によって回収し、水で2回洗浄し、得られた濾過ケーキを真空下で乾燥して、表題化合物を白色の固体として得る(2.3g、60%収率)。ESMS(m/z):194[M+H]。
【0036】
調製3
4-クロロ-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
【化15】
マイクロ波バイアルで、塩化ホスホリル(5.5mL、59mmol)を2-アミノ-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-オール(2.3g、11.9mmol)に添加する。反応混合物をマイクロ波反応器中、110℃で30分間加熱する。反応混合物を氷上に注ぎ、5MのNaOH水溶液(50mL)で塩基性化し、酢酸エチル(100mL)で抽出する。合わせた抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、得られた濾液を減圧下で蒸発させる。得られた残留物をジクロロメタンに溶解し、ヘキサン中の10~25%酢酸エチルで溶出するシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の蒸発後、表題化合物を白色の固体として得る(813mg、32%収率)。ESMS(m/z,35Cl/37Cl):212/214[M+H]。
【0037】
調製4
4-クロロ-5-ヨード-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
【化16】
酢酸(300mL)中の4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン(5g、25.2mmol)をN-ヨードスクシンイミド(32.0g、138mmol)と0℃で合わせる。得られた混合物を70℃で一晩加熱し、かき混ぜる。反応物を冷却し、水(120mL)でクエンチする。酢酸エチル(100mL×2)で抽出する。合わせた有機層をブライン(50mL×2)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4.8g(53%収率)の表題生成物を黄色の固体として取得する。ES/MS m/z 324[M+H]
【0038】
調製5
4-((2-アミノ-5-ヨード-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)オキシ)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル
【化17】
DMF(35mL)中の4-クロロ-5-ヨード-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン(2.5g、7.0mmol、90質量%)と3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンゾニトリル(1.33g、8.49mmol)とを合わせ、炭酸カリウム(2.88g、20.8mmol)を添加する。反応混合物を90℃で30分間加熱する。反応混合物を冷却し、水(100mL)でクエンチする。酢酸エチル(60mL×2)で抽出し、合わせた有機層をブライン(50mL×2)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、2.6g(76%収率)の表題生成物を白色の固体として取得する。ES/MS m/z 443[M+H]
【0039】
実施例1
4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
【化18】
マイクロ波バイアルで、カリウムtert-ブトキシド(270mg、2.4mmol)を、ACN(8.0mL)中の2-アミノ-4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(395mg、2.0mmol)及び2,6-ジフルオロフェノール(289mg、2.2mmol)の溶液に添加する。反応混合物をマイクロ波反応器中、120℃で30分間加熱する。反応混合物を珪藻土に通して濾過し、濾液を減圧下で蒸発させる。得られた残留物を少量のメタノールを含有するジクロロメタンに溶解し、混合物を、ヘキサン中の5~20%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の結晶性固体として得る(512mg、88%収率)。ESMS(m/z):292[M+H]。
【0040】
実施例2
4-(2,4,6-トリフルオロフェノキシ)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
【化19】
500mLの丸底フラスコで、炭酸カリウム(26.9g、194.7mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(200mL)中の2-アミノ-4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(19.55g、97mmol)及び2,4,6-トリフルオロフェノール(15.2g、97.5mmol)の溶液に添加する。反応混合物を80℃で16時間加熱する。反応混合物を水(500mL)でクエンチし、酢酸エチル(2x500mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(2×800mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、石油エーテル中の0~37%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の蒸発後、表題化合物を黄色の固体として得る(15.9g、53%収率)。ESMS(m/z):310[M+H]。
【0041】
実施例3
4-[2-アミノ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ-3,5-ジフルオロ-ベンゾニトリル
【化20】
マイクロ波バイアルで、4-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロ-フェノキシ)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン(300mg、0.8mmol)、シアン化亜鉛(291mg、2.4mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(188mg、162nmol)を合わせ、N,N-ジメチルホルムアミド(6mL)を添加する。バイアルを密封し、加熱ブロックで一晩100℃に加熱する。反応物を冷却し、水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。濾過し、得られた濾液を減圧下で蒸発させる。得られた残留物を、ヘキサン中の5~100%酢酸エチルの勾配を使用して、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を取得する(200mg、78%収率)。ESMS(m/z):317[M+H]。
【0042】
実施例4
5-メチル-4-(トリフルオロメチル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェノキシ)ピリミジン-2-アミン
【化21】
マイクロ波バイアルで、カリウムtert-ブトキシド(69mg、0.6mmol)を、ACN(2.0mL)中の4-クロロ-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン(106mg、0.5mmol)及び2,4,6-トリフルオロフェノール(84mg、0.6mmol)の溶液に添加する。反応混合物をマイクロ波反応器中、120℃で30分間加熱する。反応混合物を濾過し、得られた濾液を気流下で蒸発させる。得られた残留物を1:1のジクロロメタン/メタノールに溶解し、5~10%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物をオフホワイトの固体として得る(154mg、95%収率)。ESMS(m/z):324[M+H]。
【0043】
実施例5
4-[2-アミノ-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ-3,5-ジフルオロ-ベンゾニトリル
【化22】
1,4-ジオキサン(25mL)中で、4-((2-アミノ-5-ヨード-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)オキシ)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル(1.2g、2.4mmol、純度90%)と、トリメチルボロキシン(2.5g、10mmol、50質量%)とを合わせ、次に炭酸セシウム(2.4g、7.4mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(580mg、0.486855mmol)を添加し、反応物を窒素下で2時間120℃に加熱する。反応混合物を冷却し、水(50mL)でクエンチし、酢酸エチル(50mLx2)で抽出する。有機層を合わせ、ブライン(30mLx2)で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。最初に粗生成物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、次にプレップHPLCによって更に精製する(機器DD、メソッドカラムXtimate C18 150*40mm*10um、調整水(10mMのNHHCO)-ACN開始B 50%、終了B 80%、10分の勾配時間(分)10、100%B、保持時間(分)2、流速60mL/分)。取得した流れを合わせ、濃縮して、大部分のCHCNを除去し、次に凍結乾燥して、481mg(60%収率)の表題化合物を白色の固体として取得する。ES/MS(m/z):331(M+H)。
【0044】
実施例6
4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
【化23】
マイクロ波バイアルで、カリウムtert-ブトキシド(69mg、0.6mmol)を、アセトニトリル(2.0mL)中の4-クロロ-5-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン(106mg、0.5mmol)及び2.6-ジフルオロフェノール(72mg、0.6mmol)の溶液に添加する。反応混合物をマイクロ波反応器中、120℃で30分間加熱する。反応混合物を濾過し、得られた濾液を気流下で蒸発させる。粗生成物を逆相クロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色の固体として得る(124mg、81%収率)。ESMS(m/z):306[M+H]。
【0045】
HTRFによるhMrgX1に対するEC50決定のためのIP1細胞アッセイ
細胞プレーティング:組換えヒトMrgX1受容体を安定して発現するHEK293細胞を、10%熱不活性化FBS(HyClone(商標)、カタログ番号CH30073)で補充したグルタミン(GIBCO(商標)、カタログ番号11960-044)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(HyClone(商標)、カタログ番号SV30010、10,000U/mLのペニシリン、0.85%NaCl中の10,000μg/mLのストレプトマイシン)、20mMのHEPES(GIBCO(商標)、カタログ番号15630122)、及び0.3mg/mLのG418(GIBCO(商標)、カタログ番号11811031)を有するDMEMを含有する成長培地を使用して、培養フラスコ(Corning、T150)中で増大させた。細胞単層が80~90%のコンフルエンスのレベルに達したら、単層を10mLのDPBS(HyClone(商標)、カタログ番号14190-144)で1回洗浄し、TrypLE(商標)発現酵素細胞解離培地(GIBCO(商標)、カタログ番号12605-010)を使用して解離し、10mLのDPBSの添加によって希釈する。解離させた細胞を無菌の50mLのコニカルチューブに移し、300xgでの遠心分離によってペレット化して、成長及び解離培地を除去し、1Mの細胞/mLに希釈して、プレーティング用のDMEMにする。
【0046】
IP1効力及び有効性の決定:試験化合物をDMSOに溶解して、10mMの濃度にし、DMSO中で段階希釈して、10点濃度応答ストック希釈プレートを得る。細胞プレートから成長培地を除去し、ストック10点希釈プレートを培地に希釈し、最大30μMの最終試験濃度より2倍高い濃度で細胞プレートにスタンプする。内因性アゴニストBAM8-22(Tocris-BioScience(登録商標)カタログ番号1763)をEC15に希釈し、最小n=3で独立して決定し、細胞プレートに入れ、120分間室温でインキュベートする。続いて、溶解バッファー中の抗IP1クリプテート及びd2標識IP1の各々の容量の半分を、IP-One Gqキット(CisBioカタログ番号62IPAPEC)で供給し、細胞プレートに添加して、細胞溶解を開始し、暗所で60分間室温でインキュベートする。その時点で、蛍光を、620及び665nm(レーザー励起後、約100μs)で決定する。
【0047】
データ分析:蛍光比を、665nmに対する620nmでの蛍光発光の比として決定し、製造業者の指示に従って、別のプレートで生成されたIP1標準曲線を使用してIP1濃度に変換する。次に、IP1濃度を、化合物濃度の関数としてプロットする。増強剤効力(EC50)を、内因性アゴニストBAM8-22のEC15の存在下で、BAM8-22の飽和濃度によって達成されるIP1濃度の50%の増加をもたらす化合物濃度として定義し、以下の等式を10点CRCに適合させるGenedataソフトウェア(GeneData AG、Basel Switzerland)を使用することによって決定し、式中、yは、所与の化合物濃度に対して決定されたIP1濃度であり、[L]は、試験化合物の濃度を示し、Maxは、BAM8-22の飽和濃度によって達成される最大増加値であり、
Y=Max*[L]/(EC50+[L])
EC50値は、nM単位の幾何平均(SEM、n)として報告される。
【表1】
【0048】
表1は、実施例1~6の化合物についてアッセイで達成された相対EC50及び最大刺激を示し、これらの化合物がhMrgX1の増強剤であることを示す。
【0049】
マウスにおけるKp,uu,brainのインビボ決定
非結合脳-血漿分配係数(Kp,uu,brain)は、血液脳関門(BBB)を通過する化合物の能力を評価するための重要な薬物動態パラメーターの1つである。これは、典型的には、以下の方法論を使用して前臨床種で測定される。Kp,uu,brain値は、BBBに全体に分配する血漿中の遊離薬物の割合を示す。
【0050】
対象:これらの研究の対象は、試験時に生後8~10週の12匹の雄のC57Bl/6マウス(Envigo、Indianapolis,IN,USA)である。マウスを高密度のプラスチックのホームケージ内で4つのグループに収容する。食物及び水は自由に摂取できる。部屋を、30~70%の相対湿度で73°Fに維持し、6:00~18:00の明/暗サイクルに保つ。
【0051】
薬剤:実施例2の化合物を、水中の1%HEC、0.25%TWEEN(登録商標)80、0.05%DOWSIL(商標)ビヒクル中で0.3、1、及び3mg/mlで調製する。懸濁液が形成されるまで、調製した化合物を水浴中で30分間超音波処理する。マウスには、それぞれ3、10、又は30mg/kg用量について10ml/kgで投薬する。
【0052】
投薬及び組織収集:この実験では、投薬グループ当たり4匹のマウスは、実施例2の化合物を3、10、又は30mg/kgのいずれかで経口投与を受ける。投薬後2時間でCO窒息によってマウスを安楽死させ、噴門穿刺によって血漿サンプルを収集し、マウスの脳を除去し、秤量し、ドライアイスで凍結する。血液サンプルを湿った氷上でEDTAチューブに保存し、15k rpmで10分間遠心分離する。血漿を収集し、96ウェルプレートにプレートし、-80℃で凍結させる。
【0053】
薬物動態学的サンプリング:得られた血漿及び脳のサンプルを、LC-MS/MS法(Q2 Solutions、Indianapolis,IN,USA)を使用して、実施例2のために分析する。タンパク質沈殿を使用して血漿サンプルを抽出する。定量下限は25ng/mLであり、定量上限は5000ng/mLである。脳サンプルを均一化し、タンパク質沈殿を使用して分析物を抽出する。定量下限は4ng/gであり、定量上限は200000ng/gである。
【0054】
血漿及び脳タンパク質結合の決定:マウス血漿及び脳ホモジネートタンパク質結合を、他所(Zamek-Gliszczynski et al.,J Pharm Sci,101:1932-1940,2012)に記載されるように、平衡透析を使用してインビトロで決定する。結果は、血漿(fu,plasma)及び脳(fu,brain)で結合していない画分として報告され、次に、以下に記載されるようにKp,uu,brainを計算するために利用される。実施例2のマウスのfu,plasma及びfu,brainをそれぞれ、0.0421及び0.0181であると決定する。
【0055】
分析及び結果:Kp,uu,brainは、以下の発現からの各時点で計算され、個別の成分は、上述の通り実行されたインビトロ及びインビボの測定値の組み合わせから誘導され、
【数1】
式中、Ctotal,brain、Cu,brain、Ctotal,plasma、及びCu,plasmaは、総及び非結合の脳濃度及び血漿濃度であり、fu,brain及びfu,plasmaはそれぞれ、脳内及び血漿内で非結合の画分である。
【表2】
【0056】
非結合血漿濃度及び非結合脳濃度は、血漿及び脳の両方における用量に関連した増加を示し、実施例2の化合物が血液脳関門を通過し、マウスへの経口投与後2時間で中枢透過性を有することを示している。用量グループ全体で、血漿及び脳における曝露には用量比例性があるようである。実施例2の化合物についての平均非結合脳対非結合血漿比(Kp,uu-brain)は、0.506±0.1~0.601±0.0553の範囲であり(平均±SD、グループ当たりn=4)、これは、マウスの脳組織では能動輸送機構が機能していないことを示唆している。