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特許7407974移送用コンプレッサおよびこれを用いた高圧ガスステーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】移送用コンプレッサおよびこれを用いた高圧ガスステーション
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/10 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
F04B39/10 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022569375
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046816
(87)【国際公開番号】W WO2022130511
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】504181177
【氏名又は名称】野澤 司
(73)【特許権者】
【識別番号】508193231
【氏名又は名称】張 林峰
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】野澤 司
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-148417(JP,A)
【文献】米国特許第05092745(US,A)
【文献】中国実用新案第201314285(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タンクを結ぶ経路に置かれ、シリンダ内を圧縮チャンバーと吸気チャンバーに区分するピストンを有し、ピストンには吸気チャンバーから圧縮チャンバー方向にのみ開弁可能なチェックバルブを設け、前記圧縮チャンバーのアウトレットには出口方向へのみ開弁可能なチェックバルブと、前記吸気チャンバーのインレットにはチャンバー内へのみ開弁可能なチェックバルブとを設け、前記ピストンには両チャンバー内容積を可変とするアクチュエータを接続したことを特徴とする高圧ガス用コンプレッサ。
【請求項2】
前記ピストンのワンサイクルで吸気と圧縮が同時に行われ、複数回連続して吸気を行うことによって、前記圧縮チャンバーの圧縮率を複数倍に高めることができることを特徴とする請求項1に記載の高圧ガス用コンプレッサ。
【請求項3】
前記吸気チャンバーに供給される供給タンクの気体圧力が低減しても連続して出力タンクに高圧の気体を充填できることを特徴とする請求項1に記載の高圧ガス用コンプレッサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のコンプレッサを備えた高圧ガスステーション。
【請求項5】
輸送用タンクの気体圧力が低減しても、連続して保管タンクに高圧の気体を移送できることを特徴とする請求項4に記載の高圧ガスステーション。
【請求項6】
保管タンクの気体圧力が低減しても、連続してガス自動車への給油タンクに高圧の気体を移送できることを特徴とする請求項4に記載のコンプレッサを備えた高圧ガスステーション。
【請求項7】
一つ以上の高圧タンクを結ぶ経路にコンプレッサを配置し、前記コンプレッサはシリンダ内を圧縮チャンバーと吸気チャンバーに区分するピストンを有し、ピストンには吸気チャンバーから圧縮チャンバー方向にのみ開弁可能なチェックバルブを設け、前記圧縮チャンバーのアウトレットには出口方向へのみ開弁可能なチェックバルブと、前記吸気チャンバーのインレットにはチャンバー内へのみ開弁可能なチェックバルブとを設け、前記ピストンには両チャンバー内容積を可変とするアクチュエータを接続してなり、前記コンプレッサの前記インレットには一方の高圧タンクを接続し、前記アウトレットには他方の高圧タンクを接続してなる高圧ガスステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は入口圧力の変動幅が大きく出口圧力が超高圧になる高圧ガス移送用のコンプレッサおよびこれを用いた高圧ガスステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6160876号「ハニカムコアがパネル表面と平行に配置されているハニカム構造体、およびその製造方法」はハニカム構造による高圧ガスタンクの製造方法を開示している。加えて、特許第6160876号は超高圧ガスステーションのアイデアも示している。輸送用および保管用の高圧ガスタンクは高圧ガスステーションの経営・管理において不可欠である。特許第6160876号は輸送用および保管用の高圧ガスタンクとしてハニカム構造のガスタンクを提示した。ハニカム構造のガスタンクの評価は水圧試験によって立証されている。さらに、高圧ガスステーションに不可欠なものは、輸送用ガスタンクから保管用ガスタンクまで高圧のガスを移送するコンプレッサである。高圧コンプレッサもまた特許第6160876号は提示しているが、高圧コンプレッサの機械的な構造は示されていない。
【0003】
高圧ガスが充填されたタンクとガスが充填されていない空のタンクの二つのガスタンクを単純に接続しても、高圧ガスの全てのガスを空のタンクに移送することはできない。高圧のガスタンクと移送されたガスタンクの内部圧力が等しくなると、高圧ガスの移送は止まるからである。高圧のガスタンクから移送先のガスタンクまで高圧縮されたガスを移送するには、移送用コンプレッサが必要である。
【0004】
従来技術では、高圧コンプレッサに多段階ピストン方式のコンプレッサが使用される。多段階ピストン方式とは2組のピストンの組み合わせである。初めのピストンと2番目のピストンは直列に接続される。初めのピストンの圧縮比はおよそ「20:1」である。2番目のピストンの圧縮比はおよそ「2:1」である。結果として、多段階ピストンは合計でおよそ「40:1」の圧縮比を得ることができる。2番目のピストンの圧縮比を拡大できない理由は以下の通りである。
【0005】
(1)例えば、0.1MPaガスから、4.0MPaの高圧ガスが多段階コンプレッサによって作られると想定する。圧縮された高圧ガスは高圧ガスタンクに格納される。1番目のコンプレッサのシリンダ容積は1000ccであると仮定し、圧縮比は20:1とする。
(2)最初(1番目)のコンプレッサで圧縮されたガスは、2番目のコンプレッサのシリンダに入る。この場合、1番目のコンプレッサから排出される。圧縮されたガスの容量と圧力は、50ccと2.0MPaである。2番目のコンプレッサのシリンダ容積を100ccとすると、2番目のシリンダ内部の圧力は1.0MPaになる。従って、2番目のコンプレッサの容積が50ccを超えることは意味がない。
(3)2番目のコンプレッサの圧縮比が2:1であるとき、2番目のコンプレッサによって作られた圧縮ガスの容量と圧力は、25ccと4.0MPaである。このような小さいコンプレッサで圧縮比を拡大することは現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6160876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとしている問題は、特許第6160876号の不完全な高圧ガスステーションを完成させる新技術を開発することである。一言でこの問題を説明することは難しい。説明図を使用して説明する。図12は特許第6160876号から想定される高圧ガスステーションの概念図である。
【0008】
高圧ガスステーションは移動用の輸送用タンク20、このタンク20に脱着される接続バルブ21、接続バルブ21を末端に有する移送ライン22、移送ライン22の途中に設けられた3-ウェイバルブ23、この3-ウェイバルブ23により切り替えられるバイパスライン24と移送用コンプレッサ36を介して保管ガス高圧ライン26とが設けられている。保管ガス高圧ライン26は保管タンク27に接続され、保管タンク27の出口には加圧用コンプレッサ37を介して加圧ライン29が接続され、加圧ライン29に給油用タンク30が接続され、更に、給油用タンク30の出口には給油用高圧ライン31を介して給油バルブ32が設けられている。これによってガス自動車33への給油ができる。なお、管理棟34、および敷地35が設けられている。
【0009】
図12における高圧ガスステーションの概念は以下の通りである。
(1)輸送用タンク20の初期圧力を60MPaと仮定する。保管タンク27の圧力を60MPaと仮定する。給油用タンク30の圧力を80MPaと仮定する。移送用コンプレッサ36の圧縮比を20:1と仮定する。加圧用コンプレッサ37の圧縮比を20:1と仮定する。
(2)図12の高圧ガスステーションにおいて、輸送用タンク20から保管タンク27まで60MPaの高圧ガスを移送には2つの方法がある。輸送用タンク20に充填された60MPaの高圧ガスはガスの供給ベースから輸送される。
(a)ひとつは輸送用タンク20、接続バルブ21、移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、および保管ガス高圧ライン26から保管タンク27へ直送されるラインである。
(b)別のひとつは輸送用タンク20、接続バルブ21、移送ライン22、3-ウェイバルブ23、移送用コンプレッサ36、および保管ガス高圧ライン26から保管タンク27へのラインである。
(3)移送用コンプレッサ36は輸送用タンク20で輸送されてきた高圧ガスを保管タンク27に加圧して移送する。保管タンク27の圧力は60MPaである。
(4)移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、移送用コンプレッサ36、保管ガス高圧ライン26、および保管タンク27は地下に設置される。
(5)保管タンク27に格納されている60MPaの高圧ガスは、加圧ライン29を通って加圧用コンプレッサ37によって80MPaの給油用タンク30に加圧されて移送される。
(6)加圧用コンプレッサ37、加圧ライン29、および給油用タンク30は地下に設置される。
(7)給油用タンク30に収納された80MPaの高圧ガスは、給油用高圧ライン31を通して給油バルブ32によってガス自動車33に給油される。
【0010】
輸送用タンク20はガス供給ベースからガスステーションまでの輸送用ガスタンクである。輸送用タンク20は特許第6160876号から想定されるハニカム構造高圧タンクで作られる。輸送用タンク20の初期圧力は60MPaと仮定される。
【0011】
接続バルブ21は移送ライン22への開閉バルブである。移送ライン22は3-ウェイバルブ23に接続する。3-ウェイバルブ23はバイパスライン24と移送用コンプレッサ36への切り替えバルブである。バイパスライン24と移送用コンプレッサ36は保管ガス高圧ライン26に接続する。3-ウェイバルブ23から出ているバイパスライン24は保管ガス高圧ライン26の途中に接続される。
【0012】
3-ウェイバルブ23がバイパスライン24に開かれているとき、輸送用タンク20のガスは直接保管ガス高圧ライン26に流れる。移送用コンプレッサ36は保管ガス高圧ライン26に接続する。保管ガス高圧ライン26は保管タンク27に接続する。移送用コンプレッサ36は輸送用タンク20の高圧ガスを保管タンク27に移送する。
【0013】
保管タンク27は、輸送用タンク20によってガス供給ベースから輸送された高圧のガスを保管するするガスタンクである。この保管タンク27は、輸送用タンク20と同様、特許第6160876号から想定されるハニカム構造高圧タンクで作られる。加圧用コンプレッサ37は高圧のパイプラインによって保管タンク27に接続される。加圧用コンプレッサ37は保管タンク27の高圧ガスを80MPaに加圧する。80MPaに加圧された高圧ガスは加圧ライン29を通して給油用タンク30に送られる。加圧ライン29は80MPaかそれ以上の高圧に耐える高圧のパイプラインである。
【0014】
給油用タンク30は80MPaと仮定される超高圧のガスタンクである。給油用タンク30は、ガス自動車33に給油するための高圧ガスを収納する。この給油用タンク30は特許第6160876号から想定されるハニカム構造高圧タンクで作られる。給油用高圧ライン31は給油用タンク30に接続される。給油用高圧ライン31は給油用タンク30に収納されている高圧ガスを給油バルブ32に移送する超高圧ガスのパイプラインである。給油バルブ32は高圧ガスをガス自動車33に給油する圧力調整バルブである。ガス自動車33は天然ガスや水素ガスなどの車載用ガスタンクを保有する乗り物である。ガス自動車33のガスタンクは60MPaであると仮定される。管理棟34と敷地35はガスステーションの管理棟と敷地である。
【0015】
図12で示される高圧ガスステーションのシステムは良く機能するように見える。しかし、それは従来の技術では機能を十分に実現させない。理由は以下の通りである。
(1)ガス自動車33の車載ガスタンクに60MPaの高圧ガスを給油するため、給油用タンク30の内部圧力は80MPaを維持することが望ましい。
(2)給油用タンク30の超高圧ガスは加圧用コンプレッサ37によって保管タンク27から供給される。加圧用コンプレッサ37は従来技術における圧縮比20:1のピストン式コンプレッサであると仮定する。
(3)保管タンク27の内部の圧力が60MPaであるとき、加圧用コンプレッサ37は60MPaの高圧ガスから80MPaの超高圧ガスを容易に作ることができるので、80MPaのガスを給油用タンク30に供給するのは容易である。
(4)例えば、60MPa、1000ccの高圧ガスは80MPa、750ccの超高圧ガスになる。圧縮比は1.33:1.0である。加圧用コンプレッサ37の圧縮比はこの値より大きい。
(5)しかし、保管タンク27から高圧のガスを給油用タンク30に供給し続けるとき、保管タンク27の内部圧力は徐々に減少する。保管タンク27の圧力が4.0MPaかそれ以下になると、加圧用コンプレッサ37は80MPaの超高圧ガスを給油用タンク30に供給することができなくなる。つまり、保管タンク27に残っている4.0MPa以下の高圧ガスは完全にデッドストックとなる。4.0MPaはおよそ40気圧である。
(6)もしコンプレッサに圧縮比40:1の多段階ピストンを使用するならば、保管タンク27の圧力が2.0MPaに減少するまで使用することが可能である。しかし、多段階ピストンは1番目のピストンと2番目のピストンの組み合わせである。保管タンク27の圧力が4.0MPa以上あるとき、多段階ピストンの2番目のピストンは役に立たない障害物となる。
【0016】
また、輸送用タンク20と保管タンク27との関係も同様である。計算を単純にするため、輸送用タンク20の内部圧力を60MPaであると仮定し、保管タンク27の内部圧力をゼロであると仮定する。そして、輸送用タンク20の容積を3000リットルと仮定し、保管タンク27の容積を同じく3000リットルであると仮定する。簡単にいえば、3000リットル、60MPaの高圧ガスが輸送タンクから空の地下タンクまで移される場合を想定する。この移送が従来技術で行われる場合、それは以下になる。
(1)輸送用タンク20はガスの供給ベースからガスステーションまで運ばれる。
(2)輸送用タンク20は接続バルブ21によって移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、移送用コンプレッサ36、保管ガス高圧ライン26、および保管タンク27に接続される。
(3)接続バルブ21が開かれるとき、60MPaの高圧ガスは移送ライン22を通って3-ウェイバルブ23まで移動する。
(4)3-ウェイバルブ23がバイパスライン24に開かれるとき、60MPaの高圧ガスはバイパスライン24と保管ガス高圧ライン26を通して保管タンク27に流入する。
(5)輸送用タンク20と保管タンク27の容積は同じなので、輸送用タンク20の高圧ガスは保管タンク27の内部圧力が30MPaになると流れるのを止める。
(6)輸送用タンク20に残った30MPaの高圧ガスはデッドストックとして輸送用タンク20に残される。保管タンク27の内部の圧力は、30MPaに止まって、60MPaに達しない。つまり、単にバイパス弁を開くことによって輸送タンクの高圧ガスを地下タンクに輸送することは不可能である。
【0017】
次に、従来技術のピストン式コンプレッサがこの課題に挑戦する。入口圧力が大きく変動しても、ピストン式コンプレッサは有効である。
(1)移送用コンプレッサ36は圧縮比20:1の従来技術のピストン式コンプレッサであると仮定する。
(2)移送用コンプレッサ36は30MPaの高圧ガスから60MPaの高圧ガスを容易に作ることができるので、輸送用タンク20の内部圧力が30MPaであるとき、30MPaの高圧ガスを保管タンク27に移送することは簡単である。30MPa、1000ccの高圧ガスは60MPa、500ccの高圧ガスになる。圧縮比は2:1である。移送用コンプレッサ36の圧縮比はこの値より大きい。
(3)しかし、輸送用タンク20から高圧ガスを保管タンク27に供給し続けるとき、輸送用タンク20の内部圧力は徐々に減少する。輸送用タンク20の圧力が3.0MPaかそれ以下になると、移送用コンプレッサ36は60MPaの高圧ガスを保管タンク27に供給することができなくなる。
(4)つまり、輸送用タンク20に残っている3.0MPa以下の高圧のガスは完全デッドストックとなる。3.0MPaはおよそ30気圧である。
(5)もしコンプレッサに圧縮比40:1の多段階ピストンを使用するならば、輸送用タンク20の圧力が1.50MPaに減少するまで使用することは可能である。しかしながら、多段階ピストンは2個のピストンの組み合わせである。輸送用タンク20の圧力が3.0MPa以上あるとき、多段階ピストンの2番目のピストンは役に立たない障害物となる。
【発明が解決するための手段】
【0018】
ここに説明される発明は、高圧ガスを移送するための新しく発明されたコンプレッサであり、そのコンプレッサによって高圧ガソリンスタンドの機能を実現させる。新しく発明されたコンプレッサはひとつのピストンによって多段階ピストンの機能を実現させるコンプレッサである。
【0019】
従来技術のピストン式コンプレッサは、「発明が解決しようとする課題」によって説明される高圧ガスステーションを実現させるには不十分である。新方式のコンプレッサが必要である。しかし、従来技術のピストン方式は完全に役に立たないというわけではない。それは入口圧力の変動幅が大きく、出口圧力が高圧になるところでかなり効果的である。本発明のコンプレッサが2番目のピストンなしで多段階ピストンの機能を得ることができるならば、上記の問題を解決することができる。つまり、ひとつのピストンで多段階ピストン方式の機能を持つコンプレッサを発明できれば、図12で示される高圧ガスステーションを実現することが可能となる。
【0020】
ひとつのピストンによって多段階コンプレッサの機能を得るには、ふたつの加圧室が必要である。不可能に見えるが、それは不可能ではない。実際、ツーサイクルエンジン(2工程期間)はエンジンピストンの後ろに加圧室を持っている。ピストン&シリンダの場合、複動式シリンダと呼ばれる。
【0021】
しかし、2行程機関のメカニズムを高圧のコンプレッサに適用することは危険である。この発明は、ピストンを動かすのにリニアアクチュエータ(リニアアクチュエータ)かリニアモータを使用する。クランク&ピストンと比べて、リニアアクチュエータは急速加圧に劣る。しかしながら高圧ガスステーションによる給油は、ガスステーションの高圧ガスとガス自動車の車載タンク間の圧力差によって給油されるので、移送用コンプレッサが急速に高圧ガスを加圧する必要はない。従って、図1におけるコンプレッサに要求される能力は即効ではなく、継続パワーである。リニアアクチュエータやリニアモータは駆動装置の簡便さに優れている。駆動装置の簡便さは、構造的強度を強化することを容易にする。
【0022】
この発明の原理は2行程機関と同じである。つまり、吸気と圧縮が同時に、ピストンのワンサイクルによって行われる。
具体的には、本発明に係るコンプレッサは、シリンダ内を圧縮チャンバーと吸気チャンバーに区分するピストンを有し、ピストンには吸気チャンバーから圧縮チャンバー方向にのみ開弁可能なチェックバルブを設け、前記圧縮チャンバーのアウトレットには出口方向へのみ開弁可能なチェックバルブと、前記吸気チャンバーのインレットにはチャンバー内へのみ開弁可能なチェックバルブとを設け、前記ピストンには両チャンバー内容積を可変とするアクチュエータを接続したことを特徴とする。
【0023】
斯かる構成において、前記ピストンのワンサイクルで吸気と圧縮が同時に行われ、複数回連続して吸気を行うことによって、前記圧縮チャンバーの圧縮率を複数倍に高めることができることを特徴としている。また、このコンプレッサにおいて、前記吸気チャンバーに供給される供給タンクの気体圧力が低減しても連続して出力タンクに高圧の気体を充填できることを特徴としている。
【0024】
本発明に係る高圧ガスステーションは、前記構成のコンプレッサを備えた高圧ガスステーションとしたものである。また、この場合において、輸送用タンクの気体圧力が低減しても、連続して保管タンクに高圧の気体を移送できるようにした。更に、前記保管タンクの気体圧力が低減しても、連続してガス自動車への給油タンクに高圧の気体を移送できることを特徴としている。一つ以上の高圧タンクを結ぶ経路にコンプレッサを配置し、このコンプレッサはシリンダ内を圧縮チャンバーと吸気チャンバーに区分するピストンを有し、ピストンには吸気チャンバーから圧縮チャンバー方向にのみ開弁可能なチェックバルブを設け、前記圧縮チャンバーのアウトレットには出口方向へのみ開弁可能なチェックバルブと、前記吸気チャンバーのインレットにはチャンバー内へのみ開弁可能なチェックバルブとを設け、前記ピストンには両チャンバー内容積を可変とするアクチュエータを接続してなり、このコンプレッサの前記インレットには一方の高圧タンクを接続し、前記アウトレットには他方の高圧タンクを接続したことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】コンプレッサの概念構成を示す断面図である。
図2】同コンプレッサの吸気-1のプロセス図を示す。
図3】同コンプレッサの吸気-2のプロセス図を示す。
図4】同コンプレッサの移送-1のプロセス図を示す。
図5】同コンプレッサの移送-2のプロセス図を示す。
図6】同コンプレッサの圧縮-1のプロセス図を示す。
図7】同コンプレッサの圧縮-2のプロセス図を示す。
図8】同コンプレッサの移送-3のプロセス図を示す。
図9】同コンプレッサの移送-4のプロセス図を示す。
図10】同コンプレッサの圧縮-3のプロセス図を示す。
図11】本発明に係る高圧ガスステーションの概念図を示す。
図12】従来の高圧ガスステーションの概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の具体化は上で説明された図面と関連して以下に説明される。以下に図面を参照して、発明に係る移送用コンプレッサとこれを用いた超高圧ガスステーションの具体的な実施例について説明する。このコンプレッサはただひとつのピストンによって多段階ピストンの機能を実現させる。
【0027】
図1は複機能コンプレッサ1の概念図を示す。複機能コンプレッサ1はシリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、および出力タンク14で構成される。
【0028】
シリンダ2はシングルピストン形式コンプレッサのシリンダである。シリンダ2は高圧ガスを封入することができる。ピストン3はシングルピストン形式コンプレッサのピストンである。ピストン3は高圧のガスを加圧することができる。ピストンロッド4はピストン3を運転するピストンロッドである。ピストンロッド4は直線運動だけを行う。リニアアクチュエータ5は直線方向のみにピストンロッド4を運転する作動装置である。リニアアクチュエータ5は電気駆動ボール・ネジかリニアモータで動かされる装置である。
【0029】
供給タンク13は輸送用の高圧ガスタンクである。供給タンク13の初期圧力を60MPaであると仮定する。出力タンク14は、ガス自動車に給油するための高圧ガスタンクである。出力タンク14の内部圧力は80MPaを保つと仮定する。ガス自動車は図1に示されていない。複機能コンプレッサ1の圧縮比を20:1であると仮定する。
【0030】
入口パイプ6は供給タンク13と複機能コンプレッサ1を結ぶ高圧のパイプである。出口パイプ7は複機能コンプレッサ1と出力タンク14を結ぶ高圧のパイプラインである。入口バルブ8はチェックバルブである。入口バルブ8は複機能コンプレッサ1の入口(インレット)に置かれる。入口バルブ8が片道チェックバルブなので、供給タンク13の高圧のガスは供給タンク13から複機能コンプレッサ1まで一方向に流れる。出口バルブ9はチェックバルブである。出口バルブ9は複機能コンプレッサ1の出口(アウトレット)に置かれる。出口バルブ9が片道チェックバルブなので、複機能コンプレッサ1の圧縮ガスは複機能コンプレッサ1から出力タンク14まで一方向に流れる。
【0031】
複機能コンプレッサ1のシリンダ2はピストン3によって2つのチャンバーに分割される。ひとつは吸気チャンバー11であり、もう片方が圧縮チャンバー12である。吸気チャンバー11と圧縮チャンバー12は中間バルブ10を通して接続される。中間バルブ10は片道チェックバルブである。中間バルブ10はピストン3の耐力壁に置かれる。中間バルブ10は複数個であることが望ましい。中間バルブ10が片道チェックバルブであるので、吸気チャンバー11の中の圧縮されたガスは吸気チャンバー11から圧縮チャンバー12まで一方向だけに流れる。
【0032】
本発明の原理は二行程機関と同じである。つまり、吸気と圧縮が同時にピストンのワンサイクルで行われる。しかしながら、同時に吸気の過程と圧縮の過程について説明するとき、それは複雑になり過ぎる。このパラグラフは吸気過程について説明する。吸気過程は以下の通りである。
【0033】
図2は吸気-1のプロセスチャートを示す。吸気-1のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、吸入ガス15、およびピストン動作16で構成される。
【0034】
吸入ガス15は供給タンク13から供給されるガスである。供給タンク13の初期圧力は60MPaであると仮定される。ピストン動作16はピストン3とピストンロッド4の動向である。ピストン動作16の方向は矢印の向きで示される。
【0035】
図2で示される吸気-1の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印の向きに動く。
(a)吸気チャンバー11の容積は大きくなる。
(b)圧縮チャンバー12の容積は小さくなる。
(2) 吸気チャンバー11の容積が大きくなると、以下の出来事が入口バルブ8、吸気チャンバー11、および供給タンク13に起こる。
(a)吸気チャンバー11の内部圧力が供給タンク13の内部圧力より小さくなる。
(b)入口バルブ8は開かれる。
(c)吸気チャンバー11は供給タンク13から入口パイプ6を通って吸気チャンバー11に流れ込むガスで満たされる。
(3) 圧縮チャンバー12の容積が小さくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、および圧縮チャンバー12に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部圧力は吸気チャンバー11の内部圧力より大きくなる。
(b)中間バルブ10は閉じられる。
(c)圧縮チャンバー12の中のガスはピストン3によって圧縮される。
(d)圧縮チャンバー12の内部圧力は、より大きくなる。
【0036】
図3は吸気-2のプロセスチャートを示す。吸気-2のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、吸入ガス15、およびピストン動作16で構成される。
【0037】
吸入ガス15は供給タンク13から供給されるガスである。吸入ガス15の量が増加するに従って、供給タンク13の内部圧力は徐々に減少する。ピストン動作16はピストン3とピストンロッド4の動向である。ピストン動作16の方向は矢印の向きに示され、図3におけるピストン動作16はリニアアクチュエータ5の左端に止まっている。
【0038】
図3に示される吸気-2の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印の向きに動いて、リニアアクチュエータ5の左端に止まる。
(a)圧縮チャンバー12の容積は最も小さくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は最も大きくなる。
(2) 圧縮チャンバー12の容積が最も小さくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、および圧縮チャンバー12に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部の圧力は吸気チャンバー11の内部の圧力より大きくなる。
(b)中間バルブ10は閉じられた状態を保つ。
(c)圧縮チャンバー12の中のガスはピストン3によって最大限に圧縮される。
(d)圧縮チャンバー12の内部圧力は最も大きくなる。
(3) 吸気チャンバー11の容積が最も大きくなると、以下の出来事が入口バルブ8、吸気チャンバー11、および供給タンク13に起こる。
(a)入口バルブ8が開く。
(b)吸気チャンバー11は供給タンク13から入口バルブ8を通って吸気チャンバー11に流れ込むガスで最大限に満たされると、吸気チャンバー11の内部圧力が供給タンク13の内部圧力と同じになり、入口バルブ8は閉じられる。
(4) 吸入ガス15は供給タンク13から抽出されたガスである。吸入ガス15の量が増加するのに従って、供給タンク13の内部の圧力は徐々に減少する。
【0039】
図4は移送-1のプロセスチャートを示す。移送-1のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、吸入ガス15、移送ガス17、およびピストン動作16で構成される。
【0040】
吸入ガス15は図3に示される前過程で吸気チャンバー11の中に残されているガスである。移送ガス17はピストン3と中間バルブ10の働きで吸気チャンバー11から圧縮チャンバー12に移送されるガスである。
【0041】
図4で示される移送-1の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印の方向に動く。
(a)吸気チャンバー11の容積は小さくなる。
(b)圧縮チャンバー12の容積は大きくなる。
(2) 吸気チャンバー11の容積が小さくなると、以下の出来事が入口バルブ8、吸気チャンバー12、および供給タンク13に起こる。
(a)吸気チャンバー11を満たしていたガスはピストン3によって圧縮される。
(b)吸気チャンバー11の内部圧力は供給タンク13の内部圧力より大きくなる。
(c)入口バルブ8は閉じる。
(3) 圧縮チャンバー12の容積が大きくなり吸気チャンバー11の容積が小さくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、および圧縮チャンバー12に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部圧力は吸気チャンバー11の内部圧力より小さくなる。
(b)中間バルブ10は開かれる。
(c)吸気チャンバー11の吸入ガス15は中間バルブ10を通って圧縮チャンバー12に流れ込み、移送ガス17となる。
(4) 圧縮チャンバー12の容積が大きくなると、以下の出来事が出口バルブ9、圧縮チャンバー12、および出力タンク14に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部圧力は出力タンク14の内部圧力より小さくなる。
(b)出口バルブ9は閉じられる。
【0042】
図5は移送-2のプロセスチャートを示す。移送-2のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、移送ガス17、およびピストン動作16で構成される。
【0043】
移送ガス17は吸気チャンバー11から圧縮チャンバー12に移送されるガスである。
【0044】
図5で示される移送-2の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印の向きに動いて、リニアアクチュエータ5の右端に止まる。
(a)圧縮チャンバー12の容積は最も大きくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は最も小さくなる。
(2) 圧縮チャンバー12の容積が最も大きくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、および圧縮チャンバー12に起こる。
(a)ピストン3とピストンロッド4がリニアアクチュエータ5の右端で止まるまで、中間バルブ10は開いている。
(b)ピストン3とピストンロッド4がリニアアクチュエータ5の右端で止まるまで、移送ガス17は吸気チャンバー11から圧縮チャンバー12に移される。
(3) 吸気チャンバー11の容積が最も小さくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、および圧縮チャンバー12に起こる。
(a)吸気チャンバー11の容積は最も小さくなる。
(b)吸気チャンバー11と圧縮チャンバー12の内部圧力が同じになるので、中間バルブ10は閉じられる。
(4) 吸気チャンバー11から移送される移送ガス17は図3において供給タンク13から抽出されたガスである。
【0045】
この発明の原理は二行程機関と同じである。つまり、吸気と圧縮が同時に、ピストンのワンサイクルで行われる。しかしながら、本発明の目的はただひとつのピストンによって多段階ピストンの機能を得ることである。このパラグラフは圧縮の過程について説明する。圧縮の過程は以下の2つのケースが存在する。
(1) ケース(その1)は圧縮チャンバーの内部圧力が出力タンクの内部圧力より大きくなる場合である。
(2) ケース(その2)は圧縮チャンバーの内部圧力が出力タンクの内部圧力ほど大きくならない場合である。
【0046】
始めに、ケース(その1)について説明する。図6は圧縮-1のプロセスチャートを示す。
圧縮-1のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、圧縮ガス18、ピストン動作16、および吸入ガス15で構成される。
【0047】
圧縮ガス18は吸気チャンバー11から圧縮チャンバー12に移送されて圧縮チャンバー12の中に残っているガスである。圧縮チャンバー12の内部圧力は吸気チャンバー11の内部圧力より大きくなるので、中間バルブ10は閉じられる。圧縮ガス18はピストン3によって徐々に圧縮される。吸入ガス15は供給タンク13から抽出されるガスである。吸入ガス15の量が増加するに従って、供給タンク13の内部圧力は徐々に減少する。
【0048】
図6に示される圧縮-1の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印方向に動く。
(a)圧縮チャンバー12の容積は小さくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は大きくなる。
(2) 圧縮チャンバー12の容積が小さくなり、吸気チャンバー11の容積が大きくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、圧縮ガス18および出力タンク14に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部圧力は吸気チャンバー11の内部の圧力より大きくなる。
(b)中間バルブ10は閉じられる。
(c)圧縮チャンバー12の中のガスはピストン3によって圧縮される。
(d)圧縮チャンバー12の内部圧力はどんどん大きくなる。
(e)圧縮チャンバー12の内部圧力が出力タンク14の内部圧力より小さいときには、出口バルブ9は開いていない。
(f)圧縮チャンバー12の内部圧力が出力タンク14の内部圧力より大きくなると、出口バルブ9は徐々に開き、圧縮ガス18が出力タンク14に排出される。
(3) 吸気チャンバー11の容積が大きくなると、以下の出来事が入口バルブ8、吸気チャンバー11、吸入ガス15および供給タンク13に起こる。
(a)吸気チャンバー11の内部圧力が供給タンク13の内部圧力より小さくなる。
(b)入口バルブ8は開いていく。
(c)吸気チャンバー11は供給タンク13から入口バルブ8を通って吸気チャンバー11に流入する吸入ガス15で満たされる。
(d)供給タンク13の圧力は徐々に減少する。
ケース(その1)の場合、複機能コンプレッサは吸気-1、吸気-2、移送-1、移送-2および圧縮-1を繰り返すことによって、供給タンクから出力タンクまで吸入ガスを移送することができる。つまり、新しく発明された複機能コンプレッサは圧縮チャンバーの内部圧力が出力タンクの内部圧力より小さくなるまで、途中になんの障害物もなしに、供給タンクから出力タンクまで吸入ガスを移送することができる。
【0049】
次に、ケース(その2)について説明する。図7は圧縮-2のプロセスチャートを示す。圧縮-2のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、圧縮ガス18、ピストン動作16、および吸入ガス15で構成される。
【0050】
圧縮ガス18は吸気チャンバー11から圧縮チャンバー12に移送されて圧縮チャンバー12の中に残っているガスである。圧縮チャンバー12の内部圧力は吸気チャンバー11の内部圧力より大きいので、中間バルブ10は閉じられる。ピストン動作16がリニアアクチュエータ5の左端で停止するとき、圧縮ガス18はピストン3によって最大限に圧縮される。
【0051】
ケース(その2)はケース(その1)より複雑である。わかり易くするため、具体的な数値を使用することによって説明する。まず、複機能コンプレッサの圧縮比を20:1、出力タンクの内部圧力を80MPa、そして供給タンクの内部圧力を4.0MPaであると仮定する。図7で示される圧縮-2の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印方向に動いて、リニアアクチュエータ5の左端に停止する。
(a)圧縮チャンバー12の容積は最も小さくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は最も大きくなる。
(2) 圧縮チャンバー12の容積が最も小さく、吸気チャンバー11の容積が最も大きくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、出口バルブ9、および出力タンク14に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部圧力は吸気チャンバー11の内部圧力より大きい。
(b)中間バルブ10は閉じられた状態を保つ。
(c)圧縮チャンバー12の圧縮ガス18はピストン3によって最大限に圧縮される。
(d)複機能コンプレッサ1の圧縮比は20:1であると仮定されている。
(e)圧縮ガス18はほとんど80MPaとなる。しかしながら、それは80MPaの出力タンク14の圧力ほど大きくはない。
(f)出口バルブ9は開かれない。
(3) 吸気チャンバー11の容積が最も大きくなると、以下の出来事が入口バルブ8、吸気チャンバー11、および供給タンク13に起こる。
(a)吸気チャンバー11の容積が大きくなると吸気チャンバー11の内部圧力が低下して入口バルブ8が開く。
(b)吸気チャンバー11は供給タンク13からの吸入ガス15で最大限に満たされる。
(c)吸気チャンバー11の内部圧力は供給タンク13とほとんど同じになるので、吸気チャンバー11内部の吸入ガス15圧力はほとんど4.0MPaである。
(d)吸入ガス15は供給タンク13から抽出されたガスである。吸入ガス15の量が増加するのに従って、供給タンク13の内部圧力は徐々に減少する。
(4) 結果として、圧縮ガス18は圧縮チャンバー12に残っている、そして、吸気チャンバー11の内部は吸入ガス15で満たされる。
(a)圧縮ガス18はほとんど80MPaであるが、出力タンク14に排出されるほど圧力は高くない。
(b)吸入ガス15はほとんど4.0MPaである。
【0052】
続けてケース(その2)について説明する。図8は移送-3のプロセスチャートを示す。移送-3のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、圧縮ガス18、ピストン動作16、および吸入ガス15で構成される。
【0053】
圧縮ガス18は圧縮チャンバー12の内部に残っているガスである。圧縮ガス18の初期圧力は80MPaであるが、圧縮チャンバー12が広がるにつれて4.0MPa程度に減少する。吸入ガス15は吸気チャンバー11の内部に残されたガスである。吸入ガス15の初期圧力は4.0MPaであるが、吸気チャンバー11が縮まるにつれて80MPa程度にまで増大する。ピストン動作16はピストン3とピストンロッド4の動向である。ピストン動作16が右方向に動いていくとき、圧縮チャンバー12は大きくなり、そして、吸気チャンバー11は小さくなる。
【0054】
図8で示される移送-3の過程は以下の通りである。図8は吸入ガス15の圧力が圧縮ガス18の圧力より大きくなる瞬間を示す。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印方向に動いている。
(a)圧縮チャンバー12の容積は大きくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は小さくなる。
(2) 圧縮チャンバー12の容積が吸気チャンバー11の容量より大きくなると、以下の出来事が中間バルブ10、吸気チャンバー11、および圧縮チャンバー12に起こる。
(a)圧縮チャンバー12の内部圧力が吸気チャンバー11の内部圧力より小さくなる。
(b)中間バルブ10が開かれる。
(c)吸気チャンバー11の吸入ガス15は圧縮チャンバー12に流入し、圧縮ガス18と混合する。
【0055】
更にケース(その2)について説明する。図9は移送-4のプロセスチャートを示す。移送-4のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、混合ガス19、吸入ガス15およびピストン動作16で構成される。
【0056】
図9はピストンロッド4がピストン動作16の矢印方向に動いて、リニアアクチュエータ5の右端に止まる瞬間を示す。混合ガス19は圧縮チャンバー12の内部に残されたガスと、吸気チャンバー11からの吸入ガス15が混合されたガスである。
【0057】
図9に示される移送-4の過程は以下の通り。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印方向に動いて、リニアアクチュエータ5の右端で止まる。
(a)圧縮チャンバー12の容積は最も大きくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は最も小さくなる。
(2) 吸気チャンバー11の容積が最も小さくなると次の現象が起こる。
(a)吸気チャンバー11の内部圧力は圧縮チャンバー12の内部圧力より大きくなる。
(b)吸気チャンバー11の吸入ガス15は圧縮チャンバー12に流入し、混合ガス19となる。
(c)吸入ガス15の圧力と混合ガス19の圧力が等しくなると中間バルブ10は閉じられる。
(3) 正確に混合ガス19の圧力を計算することは簡単ではない。しかし、概略の計算は可能である。
(a)混合ガス19の初期圧力は4.0MPaである。
(b)供給タンク13の内部圧力は4.0MPaであると仮定しているので、吸入ガス15の初期圧力はほとんど4.0MPaである。
(c)ゆえに、図9における混合ガス19の圧力はほとんど8.0MPaであると推定される。
【0058】
図10は圧縮-3のプロセスチャートを示す。圧縮-3のプロセスチャートは複機能コンプレッサ1、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、リニアアクチュエータ5、入口パイプ6、出口パイプ7、入口バルブ8、出口バルブ9、中間バルブ10、吸気チャンバー11、圧縮チャンバー12、供給タンク13、出力タンク14、圧縮ガス18、ピストン動作16、および吸入ガス15で構成される。
【0059】
図10はピストンロッド4がピストン動作16の矢印方向に動いて、リニアアクチュエータ5の左端に止まる瞬間を示す。圧縮ガス18は図9に示された混合ガス19をピストン3で圧縮したガスである。吸入ガス15は供給タンク13から新たに供給されるガスである。
【0060】
圧縮-3の過程は以下の通りである。
(1) ピストンロッド4はピストン動作16の矢印方向に動いて、リニアアクチュエータ5の左端に止まる。
(a)圧縮チャンバー12の容積は最も小さくなる。
(b)吸気チャンバー11の容積は最も大きくなる。
(2) 圧縮チャンバー12の容積が最も小さくなると、以下の出来事が圧縮チャンバー12、出口バルブ9、および出力タンク14に起こる。
(a)初期の圧縮ガス18は8.0MPaであると推定されている。
(b)圧縮チャンバー12の圧縮ガス18はピストン3によって最大限に圧縮される。
(c)複機能コンプレッサ1の圧縮比は20:1であると仮定されている。従って、圧縮ガス18は160MPaにまで圧縮される。
(d)圧縮ガス18の圧力が出力タンク14の圧力である80MPaより大きくなるとき、出口バルブ9を通って出力タンク14に流入する。
(3) 新発明のコンプレッサは2度吸気をすることによって排気の圧力を2倍にすることができる。吸気の回数に制限はない。
【0061】
図11は実施形態に係る高圧ガスステーションの概念図を示す。高圧ガスステーションは輸送用タンク20、接続バルブ21、移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、移送用コンプレッサ25、保管ガス高圧ライン26、保管タンク27、加圧用コンプレッサ28、加圧ライン29、給油用タンク30、給油用高圧ライン31、給油バルブ32、ガス自動車33、管理棟34、および敷地35で構成される。
【0062】
移送用コンプレッサ25と加圧用コンプレッサ28は図1で示される複機能コンプレッサ1と同じである。
【0063】
図11における高圧ガスステーションの概念は以下の通りである。
(1) 輸送用タンク20の初期内部圧力を60MPaと仮定する。保管タンク27の内部圧力を60MPaと仮定する。給油用タンク30の内部圧力を80MPaと仮定する。移送用コンプレッサ25の圧縮比を20:1と仮定する。加圧用コンプレッサ28の圧縮比を20:1と仮定する。
(2) 図11における高圧ガスステーションにおいて、輸送用タンク20から保管タンク27まで60MPaの高圧ガスを移送するには2つのラインがある。60MPaの高圧ガスはガス供給ベースから運ばれるとする。
(a)ひとつは輸送用タンク20、接続バルブ21、移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、および保管ガス高圧ライン26から保管タンク27へのラインである。
(b)別のひとつは輸送用タンク20、接続バルブ21、移送ライン22、3-ウェイバルブ23、移送用コンプレッサ25、および保管ガス高圧ライン26から保管タンク27へのラインである。
(3) 移送用コンプレッサ25は輸送用タンク20のガスを保管タンク27に加圧して移送する。保管タンク27の圧力は60MPaである。
(4) 移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、移送用コンプレッサ25、保管ガス高圧ライン26、および保管タンク27は地下に設置される。
(5) 保管タンク27に格納された60MPaのガスは、加圧ライン29を通って80MPaの給油用タンク30に加圧用コンプレッサ28によって加圧され移送される。
(6) 加圧用コンプレッサ28、加圧ライン29、および給油用タンク30は地下に設置される。
(7) 給油用タンク30に格納された80MPaの高圧ガスは給油用高圧ライン31を通して給油バルブ32からガス自動車33に給油される。
【0064】
輸送用タンク20はガスの供給ベースから高圧ガスステーションまでの輸送用ガスタンクである。輸送用タンク20は特許第6160876号から想定されるハニカム構造高圧ガスタンクで作られる。
【0065】
接続バルブ21は移送ライン22への開閉バルブである。移送ライン22は3-ウェイバルブ23に接続する。3-ウェイバルブ23はバイパスライン24と移送用コンプレッサ25への切り替えバルブである。バイパスライン24と移送用コンプレッサ25は保管ガス高圧ライン26に接続する。3-ウェイバルブ23からのバイパスライン24は保管ガス高圧ライン26の途中に接続される。3-ウェイバルブ23が保管ガス高圧ライン26に開かれているとき、輸送用タンク20のガスは直接保管ガス高圧ライン26に流れる。移送用コンプレッサ25は保管ガス高圧ライン26に接続する。保管ガス高圧ライン26は保管タンク27に接続する。移送用コンプレッサ25は輸送用タンク20のガスを保管タンク27に移送する。
【0066】
保管タンク27は、輸送用タンク20によってガス供給ベースから輸送されてくる高圧ガスを格納するための高圧ガスタンクである。保管タンク27は特許第6160876号から想定されるハニカム構造高圧ガスタンクで作られる。加圧用コンプレッサ28はパイプラインで保管タンク27に接続される。加圧用コンプレッサ28は保管タンク27のガスを80MPaに加圧する。80MPaに加圧されたガスは加圧ライン29を通して給油用タンク30に送られる。加圧ライン29は80MPa以上の高圧に耐えるパイプラインである。
【0067】
給油用タンク30は運用圧力80MPaと仮定される超高圧ガスタンクである。給油用タンク30は、ガス自動車33に給油するガスを格納する。給油用タンク30は特許第6160876号から想定されるハニカム構造高圧ガスタンクで作られる。給油用高圧ライン31は給油用タンク30に接続される。給油用高圧ライン31は給油用タンク30に蓄積されている高圧ガスを給油バルブ32に分配する超高圧ガスのパイプラインである。給油バルブ32はガス自動車33に高圧ガスを給油するバルブである。ガス自動車33は車載タンクに天然ガスや水素ガスを格納する乗り物である。ガス自動車33の車載ガスタンクは60MPaであると仮定される。管理棟34と敷地35はガスステーションの管理棟とガスステーションの境界線である。
【0068】
図11で示される高圧ガスステーションのシステムは、ガス自動車に高圧ガスを給油する機能を実現する具体例である。本発明によるコンプレッサは保管タンクから供給されるコンプレッサへの吸気圧力が徐々に低下する条件でも圧縮された気体の排出圧力を一定に保つ能力を持つ。ガス自動車に高圧のガスを給油し続ける過程は以下の通りである。
(1) ガス自動車33の車載ガスタンクに60MPaの高圧ガスに給油するためには、給油用タンク30の内部圧力が80MPaを維持することが望ましい。
(2) 給油用タンク30のガスは加圧用コンプレッサ28によって保管タンク27から供給される。加圧用コンプレッサ28は図1の複機能コンプレッサ1である。本発明による複機能コンプレッサ1はピストン式コンプレッサである。その圧縮比を20:1と仮定する。
(3) 保管タンク27の内部圧力が60MPaであるとき、加圧用コンプレッサ28は60MPaの高圧ガスから80MPaの超高圧ガスを容易に作ることができるので、80MPaのガスを給油用タンク30に供給することは簡単である。
(4) 1000ccと60MPaの高圧のガスは750ccと80MPaの超高圧ガスになる。その場合の圧縮比はわずか「1.33:1」である。
(5) 保管タンク27からのガスを給油用タンク30に供給し続けるとき、保管タンク27の内部圧力は徐々に減少する。
(6) 従来技術では、保管タンク27の圧力が4.0MPa以下になった場合、単一のピストン式コンプレッサでは80MPaの超高圧ガスを給油用タンク30に供給することは不可能である。つまり、保管タンク27に残っている4.0MPa以下の高圧ガスは完全にデッドストックとなる。
(7) 従来技術には、圧縮比が40:1である多段階ピストン方式のコンプレッサが存在する。ガス給油システムに多段階ピストンコンプレッサを使用するとき、保管タンク27の圧力が2.0MPaに減少するまで、コンプレッサは保管タンク27のガスを80MPaに圧縮することが可能である。しかしながら、多段階ピストンは2個のピストンの組み合わせである。保管タンク27の圧力が2.0MPa以上であるとき、多段階ピストンの2番目のピストンは全く役に立たない障害物となる。
(8) 本発明では、移送用コンプレッサ25と加圧用コンプレッサ28は図1で示された複機能コンプレッサ1である。複機能コンプレッサ1は、2度吸気をすることによって排気の圧力を2倍にすることが可能である。吸気の回数に制限はない。従って、保管タンク27の圧力が4.0MPa以下になっても、加圧用コンプレッサ28は80MPaのガスを給油用タンク30に供給しつづけることが可能である。複機能コンプレッサ1は、ピストン3を2回動かすことで、2.0MPaの圧力を80MPaに圧縮することが可能である。さらに、複機能コンプレッサ1は、ピストン3を3回動かすことによって、1.3MPaの圧力を80MPaに加圧することが可能である。複機能コンプレッサ1は2個のピストンの組み合わせではないので、ガス給油システムに全く障害はない。
【0069】
輸送用タンク20と保管タンク27との関係もまた同様である。計算を簡単にするため、輸送用タンク20の内部圧力は60MPaであると仮定する。保管タンク27の内部圧力をゼロであると仮定する。そして、輸送用タンク20の容積を3000リットルであると仮定する。また保管タンク27の容積を同じく3000リットルとする。簡単に言えば、60MPa、3000リットルの高圧ガスを輸送タンクから空の地下タンクに移送する場合を考える。この仕事が新発明のコンプレッサで行われると、それは以下になる。
(1) 輸送用タンク20はガス供給ベースからガスステーションに輸送される。
(2) 輸送用タンク20は接続バルブ21によって移送ライン22、3-ウェイバルブ23、バイパスライン24、移送用コンプレッサ25、保管ガス高圧ライン26、および保管タンク27に接続される。
(3) 接続バルブ21が開かれると、60MPaの高圧のガスは移送ライン22を通って3-ウェイバルブ23にまで動いていく。
(4) 3-ウェイバルブ23がバイパスライン24に向かって開かれるとき、60MPaの高圧のガスはバイパスライン24と保管ガス高圧ライン26を通して保管タンク27に流入する。
(5) 輸送用タンク20と保管タンク27の容積が同じと仮定してあるので、輸送用タンク20の高圧ガスは、保管タンク27の内部圧力が30MPaになると流入を停止する。
(6) 30MPaの高圧のガスはデッドストックとして輸送用タンク20に残される。保管タンク27の内部圧力は、30MPaで停止して、60MPaに達しない。つまり単にバイパス弁を開くことによってのみでは、輸送用タンクの全ての高圧ガスを地下タンクに移送することは不可能である。
【0070】
バイパス弁だけで輸送用タンクの高圧ガスを地下タンクに移送することは不可能であることは前節で証明された。本発明のコンプレッサはこの課題に挑戦する。
(1) 移送用コンプレッサ25を図1における複機能コンプレッサ1であると仮定する。また、圧縮比を20:1と仮定する。
(2) 輸送用タンク20の内部圧力が30MPaである場合、移送用コンプレッサ25が30MPaの高圧ガスから60MPaの高圧ガスを容易に作ることが可能であるので、30MPaのガスを保管タンク27に移送することは簡単である。1000cc、30MPaの高圧ガスは500cc、60MPaの高圧ガスになる。圧縮比は2:1である。
(3) 輸送用タンク20から保管タンク27にガスを移送し続けると、輸送用タンク20の圧力は徐々に減少していく。しかし輸送用タンク20の圧力が3.0MPa以下になっても、移送用コンプレッサ25は3.0MPa以下のガスを保管タンク27に輸送することができる。
(4) 図1における複機能コンプレッサ1は、ピストン3を2回動かすことによって、1.5MPaのガスを60MPaに圧縮することが可能である。また、ピストン3を3回動かすことによって1.0MPaのガスを60MPaに圧縮することが可能である。
(5) 複機能コンプレッサ1は2個のピストンの組み合わせではないので、ガス給油システムに障害物にもならない。また、コンプレッサの入口圧力が大きく変化しても本発明のコンプレッサは有効である。
【0071】
本発明のコンプレッサの形状や目的は様々に変更されることが考えられる。本発明の精神は、ただひとつのピストン&シリンダによって多段階ピストン方式の機能を実現させるコンプレッサである。加えて、本発明のコンプレッサは入口圧力の変動幅が大きく、出口圧力に高圧の圧縮気体が必要になる場合に応用できる。本発明はその具体化に関して添付図面を添えて完全に説明されたが、様々な変化と変更が当業者よって明らかになるのに注意されたい。そのような変化と変更は追加された請求によって定義され、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1……複機能圧縮機(コンプレッサ)、2……シリンダ、3……ピストン、4……ピストンロッド、5……リニアアクチュエータ、6……入口パイプ、7……出口パイプ、8……入口バルブ(チェックバルブ)、9……出口バルブ(チェックバルブ)、10……中間バルブ(チェックバルブ)、11……吸気チャンバー、12……圧縮チャンバー、13……供給タンク(高圧タンク)、14……出力タンク(高圧タンク)、15……吸入ガス、16……ピストン動作、17……移送ガス、18……圧縮ガス、19……混合ガス、20……輸送用タンク、21……接続バルブ、22……移送ライン、23……3-ウェイバルブ、24……バイパスライン、25……移送用コンプレッサ、26……保管ガス高圧ライン、27……保管タンク、28……加圧用コンプレッサ、29……加圧ライン、30……給油用タンク、31……給油用高圧ライン、32……給油バルブ、33……ガス自動車、34……管理棟、35……敷地。
図1
図2
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図12