(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】樹脂及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20231222BHJP
C08L 33/24 20060101ALI20231222BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20231222BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C08L33/04
C08L33/24
C09D11/00
C08F20/10
(21)【出願番号】P 2023104191
(22)【出願日】2023-06-26
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2022106733
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小滝 智博
(72)【発明者】
【氏名】稲見 有莉
(72)【発明者】
【氏名】新井 智之
(72)【発明者】
【氏名】飯島 恭一
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/015125(WO,A1)
【文献】特開2009-263622(JP,A)
【文献】特開2015-024508(JP,A)
【文献】特開2004-203996(JP,A)
【文献】特開2022-085427(JP,A)
【文献】特開2013-018951(JP,A)
【文献】特開2005-272790(JP,A)
【文献】特開2013-223958(JP,A)
【文献】特開2019-142057(JP,A)
【文献】特開2018-141101(JP,A)
【文献】特開2023-066997(JP,A)
【文献】特開2015-080903(JP,A)
【文献】特開2009-197194(JP,A)
【文献】国際公開第2022/009640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00-33/26
C09D 201/00
C08F 20/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分の含有量が5.0質量%以下である非水系樹脂組成物であって、
樹脂と有機溶媒とを含有し、
前記樹脂は、以下のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有し、
前記樹脂は、アクリル系樹脂又はアクリルアミド系樹脂であり、
前記モノマーAは、重合体全量中50%以上の割合で含有する
非水系樹脂組成物
(但し、光を照射することにより硬化する光硬化性インクジェットインクであるものを除く。)。
モノマーA:環構造として脂環構造、及び/又は複素環構造を有し、下記式(1)のR
2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下であり、下記式(1)のR
2で定義される化学構造部分について計算される側鎖部分のモル体積が170以下であるモノマー
CH
2=C(R
1)-R
2 ・・・式(1)
(R
1は水素又はメチル基である)
【請求項2】
前記樹脂のTgは、10℃以上120℃以下である
請求項1に記載の非水系樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂の重量平均分子量は、5000以上100000以下である
請求項1又は2に記載の非水系樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂基材の表面に塗布され、該表面に樹脂を含む塗膜を形成するのに使用される
請求項1又は2に記載の非水系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物として、各種の色材を溶剤に溶解又は分散させたインク組成物や、記録物の表面にオーバーコート層を形成するためのオーバーコートインク等の各種組成物には、基材の表面に耐擦性等を付与するために樹脂を含有することが知られている。
【0003】
このような樹脂には、水、又は水と水溶性有機溶剤中に分散させた分散性樹脂を含む樹脂分散体が知られている。例えば、特許文献1には、有機酸を用いて一部又は全部を中和したアミノ基含有アクリルモノマー、及びアルキル(メタ)アクリレートを主体とする単量体をカチオン系又はノニオン系乳化剤の存在下で乳化重合して得られるアクリル樹脂エマルジョンに関する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1には、このアクリル樹脂エマルジョンは、耐水性に優れていることが記載されている。
【0005】
また、水を含まない有機溶剤中に溶解させて使用される樹脂についても知られている。例えば、特許文献2には、顔料(A)と、所定のアクリル系樹脂を含むベース塗料組成物(非水性インク組成物)に関する技術が記載されている。
【0006】
特許文献2には、このベース塗料組成物は、意匠性、密着性及び耐水性に優れたベース塗膜を形成することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-322218号公報
【文献】特開2022-060947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、各種基材の表面に塗布される樹脂組成物は、基材に対して密着させる必要があることから基材に対する密着性が要求される。
【0009】
一方、このような樹脂組成物は、記録物の巻き取り後に背面への裏移りが生じることがある。このため、このような樹脂組成物には耐ブロッキング性が要求される。
【0010】
本発明は、樹脂組成物に含有されることで、その塗布表面に密着性と耐ブロッキング性を有する樹脂組成物の塗膜を形成することができる樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)以下のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有し、
前記モノマーAを、重合体全量中50%以上の割合で含有する
樹脂。
モノマーA:環構造として脂環構造、及び/又は複素環構造を有し、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下であり、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算される側鎖部分のモル体積が170以下であるモノマー
CH2=C(R1)-R2 ・・・式(1)
(R1は水素又はメチル基である)
【0013】
(2)Tgは、10℃以上120℃以下である
(1)に記載の樹脂。
【0014】
(3)重量平均分子量は、5000以上100000以下である
(1)又は(2)に記載の樹脂。
【0015】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂を含有する
樹脂組成物。
【0016】
(5)樹脂基材の表面に塗布され、該表面に樹脂を含む塗膜を形成するのに使用される
(4)に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂は、樹脂組成物に含有されることで、その塗布表面に密着性と耐ブロッキング性を有する樹脂組成物の塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
≪樹脂≫
本実施の形態に係る樹脂は、以下のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有することを特徴とする。なお、本明細書では、重合体とは、1種類のモノマーから構成された単重合体であっても2種類以上のモノマーから構成された共重合体いずれをも含む概念として使用される。
【0020】
モノマーA:環構造として脂環構造、及び/又は複素環構造を有し、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下であり、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算される側鎖部分のモル体積が170以下であるモノマー
【0021】
従来、プロピレン樹脂のようなオレフィン系樹脂に対して、密着性の高い塗膜を形成することは必ずしも容易ではなく、例えば、オレフィン系樹脂の表面にコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理等の表面処理を施し、その後、表面処理が施されたオレフィン系樹脂の表面に樹脂組成物を塗布して塗膜を形成することが一般的であった。しかしながら、このような表面処理を施したオレフィン系樹脂であったとしても、密着性の高い塗膜を形成することは容易ではなく、2液硬化型のインキやプライマーを用いるなど、表面処理に加えて、さらに密着性を向上させる手段を併用する必要があった。
【0022】
ところが、驚くべくことに、このようなモノマーAを重合体全量中50%以上の割合で構成単位として含む重合体を含有する本実施の形態に係る樹脂を含有する樹脂組成物であれば、表面処理を施していないようなオレフィン系樹脂のような密着性の高い塗膜を形成することが困難であった基材(記録媒体)に対しても高い密着性を有し、さらに耐ブロッキング性を有する塗膜を形成できることが本発明者らの研究により明らかとなった。
【0023】
本実施の形態に係る樹脂を含有する樹脂組成物は、表面処理を施していないオレフィン系樹脂に対しても密着性の高い塗膜を形成することが可能であるが、特に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理等の表面処理が施されたオレフィン系樹脂の表面に対して特に高い密着性を有する。
【0024】
本明細書では、構成モノマーとは、便宜上、重合体を構成する反応前の単量体であって、エチレン性不飽和多重結合等の反応基を有する重合性化合物を意味するものとして説明するが、実際には、モノマーを構成単位として含むときには、反応前の単量体の状態で含まれるものではなく、多重結合のうちの一つの結合は重合して失われて、重合体を構成する重合後の単量体として含まれることとなる。
【0025】
また、モノマーは、エチレン性不飽和多重結合等の反応基を有する単量体の重合性化合物であればよく、本明細書ではオリゴマーと称されるような分子量の大きな単量体であってもモノマーと称する。
【0026】
以下、この重合体を構成するモノマーA、及びその他のモノマーについて説明する。
【0027】
(モノマーA)
モノマーAとは、環構造として脂環構造、及び/又は複素環構造を有し、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下であり、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算される側鎖部分のモル体積が170以下であるモノマーである。
【0028】
モノマーの側鎖部分にこのような環構造を有することにより、密着性の高い塗膜を形成することが困難であったオレフィン系基材等を含む種々の基材(記録媒体)に対して高い密着性を有し、さらに耐ブロッキング性を有する塗膜を形成することができる。
【0029】
脂環構造とは、3つ以上の炭素間単結合で構成された単環化合物であるシクロアルカン(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン)や、多環化合物であるシクロアルカン(ジシクロペンタン、ノルボルナン、アダマンタン)等が挙げられる。
【0030】
複素環構造とは、環の中に炭素と1つ以上の他の元素(例えば、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、ケイ素からなる群より選択される少なくとも1以上)を含む環式化合物である。
【0031】
また、これらのモノマーAの中でも、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下である。
【0032】
CH2=C(R1)-R2 ・・・式(1)
(R1は水素又はメチル基である)
【0033】
ここで、側鎖部分SP値とは、式(1)の「-R2」部分のSP値(solubility parameter)を意味し、SP値と同様に「-R2」を構成する官能基を分解し、そのΔEoh(cal/mol)の合計値をAと定義し、そのΔV(cm3/mol)の合計値をBと定義したときの√(A/B)値を意味する。なお、ΔEohとΔVは各置換基固有の数値であり、Fedorsの数値を参考とした。例えば、ブチルアクリレート(または、ブチルメタクリレート)である場合には、「-R2」は、「-COO-(CH2)3-CH3」となるので、以下の表1のΔEohとΔVを使用して計算すると、側鎖部分SP値=√((1125+1180×3+4300)/(33.5+16.1×3+(18.0))))=9.48となる。
【0034】
【0035】
モノマーAの側鎖部分SP値を所定範囲内の重合体を樹脂組成物に含有することで、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する塗膜を形成することが可能となる。
【0036】
高分子を含む塗膜の物性はしばしば塗膜に含まれる高分子の主鎖よりもむしろ高分子の側鎖部分によって大きく影響を受けることが本発明者らの研究により明らかとなった。式(1)の「-R2」部分のSP値である側鎖部分SP値を所定範囲に制御されたモノマーを構成単位として含むことで、塗膜の物性に影響を与えることが可能となり、本発明の効果を奏する塗膜を形成することが可能となると考えられる。
【0037】
そして、一般にSP値は物質の親和性を相対的に示す値であり、近しいものほど親和性が向上する。側鎖SP値を以上の範囲とするモノマーAを使用することで、基材に対して親和性が向上し高い密着性を有する塗膜を形成することができると考えられる。
【0038】
なお、側鎖部分SP値は、8.0以上であることが好ましく、8.5以上であることがより好ましく、9.5以上であることがさらに好ましい。側鎖部分SP値は、11.0以下であることが好ましく、10.5以下であることがより好ましく、10.0以下であることがさらに好ましい。側鎖部分SP値は、8.0以上11.0以下であることが好ましく、8.5以上10.5以下であることがより好ましく、9.5以上10.0以下であることがさらに好ましい。
【0039】
また、これらのモノマーAの中でも、式(1)の構造部分の「-R2」部分のモル体積を側鎖部分のモル体積と定義したときに、側鎖部分のモル体積は、特に限定されないが、170以下であることが好ましい。ここで、側鎖部分のモル体積とは、式(1)の「-R2」部分のモル体積を意味し、側鎖SP値の計算と同様に、Fedorsの数値を参考として構成する官能基を分解し、そのΔV(cm3/mol)の合計値を算出した値を意味する。側鎖部分のモル体積が170以下であることで、モノマーAの「-R2」部分が嵩高くなりすぎないので、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する塗膜を形成することが可能となる。
【0040】
また、このモノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、1.0以上4.8以下である。「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」は、疎水性の指標であり、「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」が所定以上(すなわち、疎水性が相対的に高いモノマー)を構成単位として含むことにより、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する塗膜を形成することが可能となる。
【0041】
なお、モノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、1.5以上であることが好ましく、1.9以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。このモノマーBの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、4.8以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。モノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、1.5以上4.8以下であることが好ましく、1.9以上4.5以下であることがより好ましく、2.5以上4.0以下であることがさらに好ましい。
【0042】
また、このモノマーAは、そのモノマーAのホモポリマーのTgが60℃以上であることが好ましい。そのモノマーAのホモポリマーのTgが60℃以上であることで、得られる記録物の耐ブロッキング性を向上させることが可能となる。モノマーAは、そのモノマーAのホモポリマーのTgが120℃以下であることが好ましい。そのモノマーAのホモポリマーのTgが120℃以下であることにより、基材に対する樹脂塗膜の追従性が向上し、より高い密着性を有する樹脂組成物の塗膜を形成することができる。このモノマーAは、そのモノマーAのホモポリマーのTgが60℃以上が120℃以下であることが好ましい。
【0043】
モノマーAとしては、シクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:2.760±0.226、Tg:19℃、側鎖部分のモル体積:113.5cm3/mol)、シクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:3.179±0.252、Tg:83℃、側鎖部分のモル体積:113.5cm3/mol)、4-アクリロイルモルフォリン(側鎖部分SP値:12.95、LogP:-0.689±0.441、Tg:145℃、側鎖部分のモル体積:76.5cm3/mol)、ジシクロペンタニルアクリレート(側鎖部分SP値:10.31、LogP:3.957±0.244、Tg:120℃、モル体積:141.5cm3/mol)、ジシクロペンタニルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.31、LogP:4.375±0.266、Tg:175℃、側鎖部分のモル体積:141.5cm3/mol)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.37、LogP:1.399±0.340、Tg:60℃、側鎖部分のモル体積:101.2cm3/mol)、ビニルシクロヘキサン(側鎖部分SP値:8.54、LogP:3.799±0.193、Tg:134℃、側鎖部分のモル体積:95.5cm3/mol)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.08、LogP:4.570±0.243、Tg:81℃、側鎖部分のモル体積:177.7cm3/mol)、n-ブチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.35、LogP:5.243±0.255、側鎖部分のモル体積:178.2cm3/mol)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:1.032±0.361、Tg:27℃、側鎖部分のモル体積:136.4cm3/mol),ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:13.02、LogP:1.230±0.281、Tg:93℃、モル体積:106.4cm3/mol),シクロオクチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9,67、LogP:4.233±0.253、モル体積:145.7cm3/mol)、シクロヘプチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9,80、LogP:3.706±0.252、モル体積:129.6cm3/mol)、シクロペンチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.18、LogP:2.652±0.252、モル体積:97.4cm3/mol)、シクロブチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.63、LogP:2.125±0.252、モル体積:83.3cm3/mol)、シクロプロピルメタクリレート(側鎖部分SP値:11.07、LogP:1.598±0.252、モル体積:67.2cm3/mol)、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.08、LogP:4.570±0.243、Tg:81℃、モル体積:177.7cm3/mol),tert-ブチル-4-エチニルシクロヘキサン(側鎖部分SP:8.04、LogP:5.609±0.219、モル体積:159.7cm3/mol)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.12、LogP:4.212±0.254、Tg:52℃、側鎖部分のモル体積:161.6cm3/mol)等を挙げることができる。この中でも、モノマーAはアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーであることが好ましい。これらのモノマーAは単独で使用しても良いし、複数のモノマーAを組み合わせもよい。なお括弧内の「側鎖部分SP値」とは、式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値を意味し、括弧内の「LogP」とは、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)を意味し、括弧内の「Tg」とはそのモノマーのホモポリマーのTgを意味し、「側鎖部分のモル体積」とは、式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるモル体積を意味する。
【0044】
なお、モノマーAは2個以上のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを含んでいてもよいが、モノマーAは1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーのみから構成されることが好ましい。これにより、形成される塗膜の柔軟性が向上するので、例えば樹脂基材のような柔軟性の高い基材に対して追従しつつ高い密着性を有する塗膜を形成できるようになる。
【0045】
構成モノマーであるモノマーAの含有量は、重合体全量中50%以上の割合で含有する。これにより、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する塗膜を形成することが可能となる。構成モノマーであるモノマーAの含有量は、とくに限定されるものではないが、モノマーAの含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
(その他のモノマー)
本実施の形態に係る樹脂に含まれる重合体は、モノマーAとは異なるその他のモノマーを構成単位として含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。その他のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)クリレート、等を挙げることができる。これらのその他のモノマーは単独で使用しても良いし、複数のモノマーを組み合わせもよい。
【0047】
例えば、カルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体に対して、そのカルボニル基と反応しうる官能基を有する化合物を架橋剤として添加することで、重合体を含む樹脂に架橋構造を導入することができる。このため、このようなカルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物を使用することで、得られる塗膜の耐摩擦性を向上させることができる。
【0048】
このようなカルボニル基を含むモノマーのうち、カルボニル基含有1官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、2-(アクリロイルアミノ)-2-メチル-4-ペンタノン(側鎖部分SP値:12.04、LogP:0.037±0.287)、アクリルアルデヒド(側鎖部分SP値:15.47、LogP:0.263±0.283)、N-エテニルホルムアミド(側鎖部分SP値:19.72、LogP:0.525±0.215)、メチルエテニルケトン(側鎖部分SP値:10.91、LogP:0.142±0.249)、エチルエテニルケトン(側鎖部分SP値:10.34、LogP:0.652±0.249)、アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル(側鎖部分SP値:11.73、LogP:0.331±0.356)、メタクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル(側鎖部分SP値:11.73、LogP:0.750±0.385)、アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)プロピル(側鎖部分SP値:11.43、LogP:0.635±0.350)、アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)プロピル(側鎖部分SP値:11.43、LogP:1.054±0.378)、などが挙げられる。しかしながら、これらのモノマーは、「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」が0~1.1であり相対的に親水性が高いモノマーである。このようにカルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物であると、得られる塗膜の耐溶剤性が相対的に低下する傾向がある。このため、本実施の形態に係る樹脂は、カルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有してもよいが、特に架橋剤を添加して重合体を含む樹脂に架橋構造を導入するのでなければ、カルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有しないことが好ましい。
【0049】
なお、その他のモノマーは2個以上のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを含んでいてもよいが、その他のモノマーは1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーのみから構成されることが好ましい。これにより、形成される塗膜の柔軟性が向上するので、例えば樹脂基材のような柔軟性の高い基材に対して追従しつつ高い密着性を有する塗膜を形成できるようになる。
【0050】
その他のモノマーの含有量は、とくに限定されるものではないが、その他のモノマーの含有量の上限は、重合体全量中40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
[重合体]
本実施の形態に係る樹脂は、モノマーAを構成単位として含む重合体を含有する。このような重合体を樹脂組成物に含有されることで、その塗布表面に密着性と耐ブロッキング性を有する樹脂組成物の塗膜を形成することができる。
【0052】
この重合体は、モノマーをバルク重合、溶液重合等の従来公知のラジカル重合法、アニオン重合、グループトランスファー重合(GTP)、配位アニオン重合等の公知の重合方法により得ることができる。なかでもこの重合体は、溶液重合物であることが好ましい。
【0053】
モノマーを上記の重合法により重合して重合体を得る場合には、重合開始剤、重合調整剤、架橋剤等の他の成分を適宜用いてもよい。
【0054】
重合開始剤としては、例えば、アルキルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p-メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2′-アゾビスイソブチレート、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4′-アゾビス-4-シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2′-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2′-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2′-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕-プロピオンアミド}、2,2′-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p-メタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0055】
重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0056】
重合調整剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;n-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0057】
重合調整剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。重合調整剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。重合調整剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0058】
架橋剤は使用してもよいが、使用しないこと(すなわち、樹脂は、架橋剤を含有しないこと)が好ましい。架橋剤を含有しない重合体を樹脂組成物中に分散または溶解させることにより、重合体の分散安定性を向上させることが可能となって、結果として保存安定性をさらに向上させることが可能となる。さらに、重合体を含む樹脂に架橋構造を導入しないようにすることで、形成される塗膜の柔軟性が向上するので、例えば樹脂基材のような柔軟性の高い基材に対して追従するような延伸性を有する塗膜を形成できるようになる。
【0059】
架橋剤を含有する場合、架橋剤としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジヒドラジドの他、炭酸ポリヒドラジド、脂肪族、脂環族、芳香族ビスセミカルバジド、芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸のポリヒドラジド、芳香族炭化水素のジヒドラジド、ヒドラジン-ピリジン誘導体およびマレイン酸ジヒドラジドなどの不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド等が挙げられる。
【0060】
架橋剤の使用量は、適宜調整されればよいが、モノマー100質量部に対して、2質量部未満であることが好ましく、1質量部未満であることがより好ましく、0.5質量部未満であることがさらに好ましい。
【0061】
本実施の形態に係る樹脂は、このようにして得られたモノマーAを構成単位として含む重合体を含む、モノマーAの種類や含有量を適宜変更することで、樹脂のTgを制御することができる。
【0062】
この重合体を含有する樹脂のTgは、10℃以上120℃以下であることが好ましい。樹脂のTgが10℃以上であることで、得られる記録物の耐ブロッキング性が向上する。樹脂のTgが120℃以下であることで、基材に対する樹脂塗膜の追従性が向上するため、効果的に密着性と耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0063】
なお、この重合体を含有する樹脂のTgは、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、40℃以上であることがさらになお好ましい。この重合体を含有する樹脂のTgは、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがさらに好ましく、85℃以下であることがさらに好ましく、80℃以下であることがさらになお好ましい。重合体を含有する樹脂のTgは、10℃以上120℃以下であることが好ましく、20℃以上100℃であることがより好ましく、30℃以上90℃以下であることがさらに好ましく、40℃以上85℃以下であることがさらに好ましく、40℃以上80℃以下であることがさらになお好ましい。
【0064】
モノマーAを構成単位として含む重合体を含む樹脂の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂(スチレン-アクリル系樹脂等のような重合体も含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂からなる群より選択される1つ以上の樹脂あるいは重合樹脂を含むものあるいはこれらの混合物を含むものを用いることができる。これらの中でもアクリル系樹脂を含むものであることが好ましい。
【0065】
樹脂の重量平均分子量は、密着性と耐ブロッキング性及び延伸性の観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上がさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、密着性と耐ブロッキング性及び樹脂組成物の溶液粘度の観点から、100000以下が好ましく、70000以下がより好ましく、50000以下がさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、5000以上100000以下が好ましく10000以上70000以下がより好ましく、20000以上50000以下がさらに好ましい。なお、本実施形態において樹脂の分子量は、重量平均分子量Mwを示すものであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値であり、東ソー(株)製の「HLC-8320GPC」にて、校正曲線用ポリスチレンスタンダードを標準にして測定することができる。
【0066】
≪3.樹脂組成物≫
本実施の形態に係る樹脂組成物は、上記の樹脂を含有する。この樹脂組成物は、上記の特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有しているため、基材(記録媒体)や記録物等の表面にこの樹脂組成物を塗布することにより、密着性と耐ブロッキング性を有する塗膜を形成することができる。なお、本明細書において、「樹脂組成物」とは樹脂又は樹脂分散体を含有する組成物(樹脂含有組成物又は樹脂含有インク組成物とも称される)であることを意味し、任意成分として後述する有機溶媒等を含むことで液状(インク状)となった組成物を含む意味として使用する。
【0067】
なお、本実施の形態に係る樹脂組成物は、色材を含有する着色インクであってもよい。本明細書において「色材」とは、染料及び顔料を含むものであり、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色のような画像を形成する着色インクに含まれる染料又は顔料や、ホワイトインクに含まれる白色染料又は白色顔料や、メタリックインクに含まれる光輝性顔料をも含む概念として使用する。
【0068】
この着色インクは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色のような画像を形成する着色インクであってもよい。また、着色インクは、白色色材を含むホワイトインクであってもよく、光輝性顔料を含むメタリックインク等であってもよい。
【0069】
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、色材を含有しないクリアインクであってもよいし、基材等の表面にプライマー層を形成するためのプライマー剤であってもよいし、記録物等の表面にオーバーコート層を形成するためのオーバーコートインクであってもよく、塗料やコーティング剤と称されるものであってもよい。
【0070】
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、水分を実質的に含有しない非水系樹脂組成物であってもよい。本実施の形態に係る樹脂組成物が非水系樹脂組成物である場合、樹脂組成物の水分の含有量は、樹脂組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量以下%であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
以下、本実施の形態に係る樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0072】
[樹脂]
樹脂は、上記の特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂を使用することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる樹脂を含有してもよい。樹脂としては、具体的には、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる樹脂であって、アクリル系樹脂(スチレン-アクリル系樹脂等のような共重合体も含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体シリコーン(シリコン)樹脂、セルロース系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等)からなる群より選択される1つ以上の樹脂あるいは共重合樹脂を含むものあるいはこれらの混合物を含むものを用いることができる。この中でも、アクリル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂を含むものが好ましい。
【0074】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。アクリル系樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、本実施の形態に係る樹脂組成物として好ましいアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体であって、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる樹脂である。又、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」「パラロイドB60」「パラロイドB66」「パラロイドB82」等の商品名のうち、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる商品名の樹脂を入手して使用することができる。
【0075】
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーからなる単独重合体であっても重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよい。塩化ビニル系樹脂の共重合体としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体の重合物である。塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体等、及びそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、日信化学工業(株)社から「ソルバインC」、「ソルバインCL」、「ソルバインCNL」、「ソルバインCLL」、「ソルバインCLL2」、「ソルバインCLL3」、「ソルバインC5R」、「ソルバインTA2」、「ソルバインTA3」、「ソルバインA」、「ソルバインAL」、「ソルバインTA5R」、「ソルバインM5」等の商品名のうち、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる商品名の樹脂を入手して使用することができる。
【0076】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体の重合することにより得ることができる。重合する方法は、従来公知の重合方法であればよい。重合する方法は、乳化重合または懸濁重合であることが好ましく、懸濁重合であることがより好ましい。
【0077】
セルロース系樹脂とは、セルロースを原料として生物的または化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する樹脂である。例えば、セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂等のセルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ニトロセルロース樹脂及びそれらの混合物が挙げられる。上記セルロース樹脂としてはEASTMAN社の「CAB551-0.01」「CAB551-0.2」、「CAB553-0.4」、「CAB531-1」、「CAB381-0.1」、「CAB381-0.5」、「CAB381-2」、「CAB381-20」「CAP504」、「CAP482-0.5」等の商品名のうち、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる商品名の樹脂を入手して使用することができる。
【0078】
ポリエステル系樹脂とは、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリエステル系樹脂は、変性されたポリエステル系樹脂を含んでもよい。ポリエステル系樹脂としては、東洋紡社の「VYLON226」、「VYLON270」、「VYLON560」、「VYLON600」、「VYLON630、「VYLON660」、「VYLON885」、「VYLONGK250」、「VYLONGK810」、「VYLON GK890」等やユニチカ社の「elitleUE-3200」「elitleUE-3285」、「elitleUE-3320」、「elitleUE-9800」、「elitleUE-9885」等の商品名のうち、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる商品名の樹脂を入手して使用することができる。
【0079】
ポリウレタン系樹脂とは、アルコール成分とイソシアネート成分を共重合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルやポリエーテルやカプロラクトンにより変性されたポリウレタン系樹脂を含んでもよい。上記のポリウレタン系樹脂としては、荒川化学工業社の「ユリアーノKL-424」、「ユリアーノKL-564」、「ユリアーノKL-593」、「ユリアーノ3262」等やDIC社の「パンデックス372E」、「パンデックス390E」、「パンデックス394E」、「パンデックス304」、「パンデックス305E」、「パンデックスP-870」、「パンデックスP-910」、「パンデックスP-895」、「パンデックス4030」、「パンデックス4110」等の商品名のうち、モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる商品名の樹脂を入手して使用することができる。
【0080】
また、モノマーAを構成成分として含有する重合体を単独で使用しても良いが、これらのアクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂を混合して使用しても良い。これらの樹脂の含有比率により、樹脂組成物に要求される発色、乾燥性、塗膜物性、印字適性等の要求を満たすように制御することができる。モノマーAを構成単位として含む重合体とは異なる樹脂を混合する場合、これらの混合比は特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。
【0081】
樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂の含有量の下限は、樹脂組成物全量中0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上がさらになお好ましい。樹脂の含有量の上限は、樹脂組成物全量中20質量%以下であることが好ましく、17.5質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂の含有量の範囲は、樹脂組成物全量中0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上17.5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがさらになお好ましい。
【0082】
[有機溶媒]
本実施の形態に係る樹脂組成物は、有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒は、色材等を分散又は溶解することができるものである。なお、この有機溶媒とは、必ずしも含有成分を全て溶解するための溶媒である必要はなく、含有成分の少なくとも一部を分散する分散媒であってもよい。
【0083】
有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類;3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類;ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、イソブチルアミド、ペンタンアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、N-メチルブタンアミド、N-メチルイソブチルアミド、N-メチルペンタンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド、N-エチルプロパンアミド、N-エチルブタンアミド、N-エチルイソブチルアミド、N-エチルペンタンアミド、N-プロピルホルムアミド、N-プロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-プロピルブタンアミド、N-プロピルイソブチルアミド、N-プロピルペンタンアミド、N-イソプロピルホルムアミド、N-イソプロピルアセトアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N-イソプロピルブタンアミド、N-イソプロピルイソブチルアミド、N-イソプロピルペンタンアミド、N-ブチルホルムアミド、N-ブチルアセトアミド、N-ブチルプロパンアミド、N-ブチルブタンアミド、N-ブチルイソブチルアミド、N-ブチルペンタンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルブタンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルペンタンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド、N,N-ジエチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルペンタンアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N,N-ジプロピルブタンアミド、N,N-ジプロピルイソブチルアミド、N,N-ジプロピルペンタンアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルプロパンアミド、N,N-ジイソプロピルブタンアミド、N,N-ジイソプロピルイソブチルアミド、N,N-ジイソプロピルペンタンアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジブチルアセトアミド、N,N-ジブチルプロパンアミド、N,N-ジブチルブタンアミド、N,N-ジブチルイソブチルアミド、N,N-ジブチルペンタンアミド、N-エチル-N-メチルホルムアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、N-エチル-N-メチルプロパンアミド、N-エチル-N-メチルブタンアミド、N-エチル-N-メチルイソブチルアミド、N-エチル-N-メチルペンタンアミド、N-メチル-N-プロピルホルムアミド、N-メチル-N-プロピルアセトアミド、N-メチル-N-プロピルプロパンアミド、N-メチル-N-プロピルブタンアミド、N-メチル-N-プロピルイソブチルアミド、N-メチル-N-プロピルペンタンアミド、N-エチル-N-プロピルホルムアミド、N-エチル-N-プロピルアセトアミド、N-エチル-N-プロピルプロパンアミド、-メチル-N-(1-メチルエチル)ホルムアミド、N-ヒドロキシプロピル-N-メチルアセトアミド、N-エチル-N-プロピルブタンアミド、N-エチル-N-プロピルイソブチルアミド、N-エチル-N-プロピルペンタンアミド、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、テキサノール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,4-ジオキサン等を含む。)等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル等のモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のアセテート類;γ-ブチロラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、γ,γ-ジメチル-γ-ブチロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-クロトラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、6-メチルバレロラクトン等のラクトン類、2,3-ブチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチルなどの二塩基酸エステル類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、β-ラクタム、δ-ラクタム、ε-カプロラクタム、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム、2-ヒドロキシルエチルピロリドン、N-2-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、3-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物;スルホラン等の環状化合物、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリン、N-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ヒドロキシルエチルモルフォリン、4-アセチルモルホリンなどのモルホリン類、テルペン系溶剤などが挙げられる。この中でも、樹脂組成物が所望の静的表面張力になるように有機溶媒を選択することが好ましい。これらの単独、又はそれらを2種以上併用して用いることができる。
【0084】
[色材]
本実施の形態に係る樹脂組成物には色材を含有してもよい。本実施の形態に係る樹脂組成物は、色材を含有することは必須の構成ではないが、色材を含有することで、所望の画像パターンを形成するような着色インクにすることや、その下地層となるようなホワイトインクやメタリックインク等にすることが可能となる。色材としては、染料であっても顔料であってもよい。
【0085】
本実施の形態に係る樹脂組成物において、使用することのできる顔料は特に限定されず、従来の樹脂組成物に使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施の形態に係る樹脂組成物は、色材を含有しなくともよい。本実施の形態に係る樹脂組成物において顔料を用いる場合には、分散剤や分散助剤(顔料誘導体)を使用することで、顔料の分散安定性を向上させることができる。また、樹脂の中に顔料または染料を含ませて使用してもよい。
【0086】
顔料としては、従来インク組成物(着色インク)に使用されている顔料、例えば、無機顔料、又は有機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ペリノン系有機顔料、アゾメチン系有機顔料、アントラキノン系有機顔料(アントロン系有機顔料)、キサンテン系有機顔料、ジケトピロロピロール系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、レーキ顔料やカーボンブラック等が挙げられる。
【0087】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、48:2、48:3、49、52、53、57、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、176、177、180、184、185、192、202、206、208、209、213、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0088】
本実施の形態に係るインクにおいて、用いることのできる染料の具体例としては、アゾ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、メロシアニン系染料、スチルベン系染料、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、フルオラン系染料、スピロピラン系染料、フタロシアニン系染料、インジゴイド等のインジゴ系染料、フルギド系染料、ニッケル錯体系染料、及びアズレン系染料が挙げられる。
【0089】
また、無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
【0090】
本実施の形態に係る樹脂組成物において、含有することのできる顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、体積平均粒子径が5nm以上の範囲内であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましい。体積平均粒子径が上記の下限値以上であることで、得られる塗膜の耐光性を向上させることができる。体積平均粒子径が500nm以下の範囲内であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが更に好ましい。顔料の平均分散粒径の範囲は、5nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましく、20nm以上400nm以下の範囲内であることがより好ましく、30nm以上350nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。なお、本実施形態において、顔料の体積平均粒子径は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて25℃の条件下で測定した体積基準累積50%粒子径(D50)である。なお、本明細書において「体積基準累積50%粒子径(D50)」とは、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味する。「体積基準累積50%粒子径(D50)」は、「体積平均粒子径D50」または「メジアン(メディアン)径」ともいう場合がある。
【0091】
本実施の形態に係る樹脂組成物において、顔料の含有量としては、所望の画像を形成可能であれば特に限定されるものではなく適宜調整されるものである。具体的には、顔料の種類によっても異なるが、顔料の含有量の上限は、樹脂組成物全量中0.05質量%以上の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上の範囲であることがより好ましい。顔料の含有量の下限は、樹脂組成物全量中20質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以下の範囲であることがより好ましい。顔料の含有量の範囲は、樹脂組成物全量中0.05質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。顔料の含有量が0.05質量%以上の範囲、又は20質量%以下の範囲内であることにより、顔料の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができる。
【0092】
本実施の形態に係る樹脂組成物は、顔料として光輝性顔料を含有してもよい。光輝性顔料としては、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の単体金属;金属化合物;合金およびそれら混合物の少なくとも1種である金属含有光輝性顔料や、雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス、二酸化ケイ素、金属酸化物、金属化合物、およびそれらの積層等の真珠光沢や干渉光沢を有するパール顔料を挙げることができる。
【0093】
本実施の形態に係る樹脂組成物に光輝性顔料を含有する場合、光輝性顔料は平板状(微細板状、鱗片状等とも表される)であることが好ましい。これにより、被体により好適な金属調の光沢を付与することができる。
【0094】
本実施の形態に係る樹脂組成物に色材(染料、顔料、光輝性顔料を含む)を含有する場合、色材の含有量は、とくに限定されるものではないが、色材の含有量の下限は、樹脂組成物全量中0.05質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。本実施の形態に係る樹脂組成物に色材を含有する場合、色材の含有量の上限は、樹脂組成物全量中20.0質量%以下であることが好ましく、17.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以下であることがさらに好ましい。本実施の形態に係る樹脂組成物に色材を含有する場合、色材の含有量の範囲は、樹脂組成物全量中0.05質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以上17.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。色材の含有量が0.05質量%以上、又は20質量%以下の範囲内であることにより、色材の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができる。
【0095】
[分散剤]
本実施の形態に係る樹脂組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。ここで分散剤とは、顔料表面の一部に付着することで樹脂組成物内での顔料の分散性を向上させる機能を有する樹脂又は界面活性剤のことを意味する。分散剤としては、着色インク等の樹脂組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PA4401、4402、PA4403、4570、7411、7477、PX4700、PX4701(BASF社製)、TREPLUS D-1200、D-1410、D-1420、MD-1000(大塚化学社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、などが用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000、76400、76500、86000、88000、J180、J200(ルーブリゾール社製)、TEGO Dispers652、655、685、688、690(エボニック・ジャパン社製)などが用いられる。好ましい分散剤としては、PB881、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PX4700、PX4701、Solsperse20000、24000、32000、33000、33500、34000、35200、39000、71000、76500、86000、88000、J180、J200、TEGO Dispers655、685、688、690などが用いられる。これらの単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
【0096】
上記の分散剤の中でもポリカプロラクトン系分散剤を使用することが好ましい。有機溶剤としてN,N-ジエチルホルムアミド等のアミド系溶剤を使用した場合には、N,N-ジエチルホルムアミド等のアミド系溶剤を含む樹脂組成物中での顔料の分散性を効果的に分散させることが可能となって、樹脂組成物に固形物が発生することを効果的に抑制することができる。
【0097】
分散剤の含有量は、特に制限されないが、分散剤の含有量の下限は、樹脂組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。顔料分散剤の含有量の上限は、樹脂組成物中の顔料100質量部に対して150質量部以下であることが好ましく、125質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、樹脂組成物中での顔料の分散性を効果的に分散させることが可能となって、樹脂組成物に固形物が発生することを効果的に抑制することができる。
【0098】
[分散助剤]
本実施の形態に係る樹脂組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。分散助剤は色材(顔料)の表面に吸着し、官能基が樹脂組成物中の有機溶剤や分散剤との親和力を高め、分散安定性を向上させる。分散助剤としては、有機顔料残基に酸性基、塩基性基、中性基などの官能基を有する公知の顔料誘導体を用いることができる。
【0099】
[界面活性剤]
本実施の形態に係る樹脂組成物においては、例えばインクジェット吐出する場合でのノズル部やチューブ内等の機器内での樹脂組成物の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ記録媒体(基材)との濡れ性を向上させる目的で、界面活性剤を添加してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90、TG-740W(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等、フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)等、シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-313、315N、322、326、331、347、348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等、アセチレングリコール系界面活性剤としては、具体例として、サーフィノール(登録商標)82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィン(登録商標)STG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)等が例示される。
【0100】
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。
【0101】
[その他の成分]
本実施の形態に係る樹脂組成物は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、表面調整剤、スリップ剤、レベリング剤(アクリル系やシリコン系等)、消泡剤、pH調整剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、BHA(2,3-ブチル-4-オキシアニソール)、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)等が例示される。また、紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。また、エポキシ化物の具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、およびエポキシヘキサヒドロフタレートなどが例示され、具体的にはアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A(ADEKA社製)等が例示される。多価カルボン酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸などが例示される。
【0102】
<樹脂組成物の調製方法>
本実施の形態に係る樹脂組成物の製造方法は、有機溶剤と、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する樹脂と必要に応じてその他の成分(例えば色材等)をペイントシェイカーを用いて混合することにより製造することができる。この際、ジルコニアビーズにて各成分を分散させてもよい。また、得られた樹脂組成物は、必要に応じて脱気処理する等して所望の溶存酸素量や溶存窒素量に調整してもよい。
【0103】
本実施の形態に係る樹脂組成物を、基材の表面に塗布する方法は、特に制限はされず、例えば、インクジェット方式、グラビア方式、フレキソ方式、スプレー方式、スクリーン方式、コーター方式等を挙げることができる。この中でも、インクジェット方式が好ましい。インクジェット方式であれば、電子上の所望の画像の基材の任意の場所へ吐出して所望の画像を形成することが可能である。
【0104】
本実施の形態に係る樹脂組成物の表面張力は、特に限定されないが、本実施の形態に係る樹脂組成物の25℃での表面張力の上限は、40.0mN/m以下が好ましく、35.0mN/m以下がより好ましく、32.0mN/m以下がさらに好ましい。本実施の形態に係る樹脂組成物の25℃での表面張力の下限は、19.0mN/m以上が好ましく、20.0mN/m以上がより好ましく、21.0mN/m以上がさらに好ましい。本実施の形態に係る樹脂組成物の25℃での表面張力の範囲は、19.0mN/m以上40.0mN/m以下が好ましく、20.0mN/m以上35.0mN/m以下がより好ましく、21.0mN/m以上32.0mN/m以下がさらに好ましい。
【0105】
≪4.インクセット≫
上記の樹脂組成物は、着色インクであっても、メタリックインク等であっても、色材を含有しないクリアインクであっても、プライマー剤であっても、オーバーコートインクであっても、塗料やコーティング剤と称されるものであってもよい。本実施の形態に係るインクセットは、これらの組成物を組み合わせたインクセットとしてもよい。
【0106】
本実施の形態に係るインクセットは、インクセットに含まれる少なくとも1つの組成物が上記の特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物であればよい。例えば、組成物Aと組成物Bとを含むインクセットにおいて、樹成物Aが上記の特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物であり、組成物Bが上記の特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物とは異なる組成物であってもよい。また、組成物Aと組成物Bいずれもが上記の特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物であってもよい。3種類以上の組成物を含むインクセットにおいても同様である。
【0107】
本実施の形態に係るインクセットとしては、例えば、色材を含有する着色インク組成物とオーバーコートインクを含むインクセットや、色材を含有する着色インク組成物とプライマーを含むインクセットを挙げることができる。
【0108】
また、色材を含有する着色インク同士を組み合わせたインクセットであってもよく、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色(例えば、オレンジインク、グリーンインク、ブルーインク、レッドインク)や淡色(例えば、ライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインク)の着色インク組成物のような複数の組成物を組み合わせたインクセットであってもよい。また、白色色材を含有する白色インク組成物と、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、を含むインクセットや、白色色材を含有する白色インク組成物と、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの中間色インク組成物や淡色インク組成物を含むインクセットであってもよい。さらに、光輝性顔料を含むメタリックインクと、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、を含むインクセットや、光輝性顔料を含むメタリックインクと、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの中間色インク組成物や淡色インク組成物を含むインクセットであってもよい。
【0109】
≪5.記録方法≫
本実施の形態に係る記録方法は、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物を基材上に塗布する記録方法である。
【0110】
特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物であればその塗布表面に密着性と耐ブロッキング性を有する樹脂組成物の塗膜を形成することができる。
【0111】
本実施の形態に係る樹脂組成物を、基材の表面に塗布する方法は、特に制限はされず、例えば、インクジェット方式、グラビア方式、フレキソ方式、スプレー方式、スクリーン方式、コーター方式等を挙げることができる。この中でも、インクジェット方式が好ましい。インクジェット方式であれば、基材上の任意の場所へ吐出することが可能である。
【0112】
また、本実施の形態に係る記録方法は、表面処理された樹脂基材の表面に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂を含有する樹脂組成物を塗布する工程を含むことが好ましい。特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂は、樹脂組成物に含有されることにより、種々の基材に対しても高い密着性を有する塗膜を形成できるものであるが、この基材の表面に対して表面処理を施すことにより、基材に対してさらに高い密着性を有する塗膜を形成することが可能である。
【0113】
表面処理された樹脂基材の表面に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂を含有する樹脂組成物を塗布する工程は、表面処理された樹脂基材の表面に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂を含有する樹脂組成物をインクジェット吐出する吐出工程であることが好ましい。
【0114】
なお、表面処理された樹脂基材を得るために、本実施の形態に係る記録方法は、予め基材の表面に対して表面処理を施す前処理工程を含んでいてもよい。
【0115】
この前処理工程における表面処理の方法としては、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、シランカップリング処理等の表面処理を挙げることができる。2つ以上の表面処理を組み合わせてもよい。
【0116】
前処理を施す基材としては、特に限定されるものではないが、樹脂基材であることが好ましく、オレフィン系樹脂であることが特に好ましい。オレフィン系樹脂においては、無延伸であってもよいし、一軸延伸や二軸延伸等の延伸されたものであってもよい。
【0117】
また、本実施の形態に係る記録方法は、基材の表面に塗布された樹脂組成物に対して乾燥処理を施す乾燥工程を備えていてもよい。これにより、印刷時の加熱温度を調節するとともに、記録物の生産性を向上させることができる。
【0118】
基材の表面に塗布された樹脂組成物を乾燥させる方法としては、例えば、インクジェット記録装置等の装置に備えられるプレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等の加温機構により乾燥させる方法や、記録物の表面に対して熱風や常温等の風を送風する送風機構であっても、赤外線などにより記録物の表面を加熱する輻射線照射機構であってもよい。また、これらの加温機構を複数組み合わせるものであってもよい。
【0119】
具体的には、本実施の形態に係る記録方法では、記録物の表面が110℃以下となるように乾燥させることが好ましく、90℃以下となるように乾燥させることがより好ましく、70℃以下となるように乾燥させることがさらに好ましい。また、本実施の形態に係る記録方法では、記録物の表面が30℃以上となるように乾燥させることが好ましく、35℃以上となるように乾燥させることがより好ましく、40℃以上となるように乾燥させることがさらに好ましい。本実施の形態に係る記録方法では、記録物の表面が30℃以上110℃以下となるように乾燥させることが好ましく、35℃以上90℃以下となるように乾燥させることがより好ましく、記録物の表面が40℃以上70℃以下となるように乾燥させることがさらに好ましい。
【0120】
また、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物をインクジェット吐出する場合、そのインクジェット吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれの方式であってもよい。
【0121】
≪6.記録物の製造方法≫
上述した記録方法は、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物を基材上に塗布する記録物の製造方法と定義することもできる。
【0122】
≪7.記録物≫
上記の実施形態の記録物の製造方法により製造された記録物を構成する各層について説明する。具体的に、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物、又は上記のインクセットに含まれる樹脂組成物が基材上に塗布された記録物である。以下、記録物を構成する媒体(記録媒体)や樹脂組成物の層について説明する。
【0123】
本実施の形態に係る記録物に含まれる基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板、ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0124】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0125】
特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂を含有する樹脂組成物は、オレフィン系樹脂に対しても高い密着性を有する塗膜を形成できるものであるため、基材(記録媒体)がオレフィン系樹脂であることが好ましい。この中でも特に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、又はシランカップリング処理等の表面処理が施されたオレフィン系樹脂の表面に対して特に高い密着性を有する。なお、オレフィン系樹脂においては、無延伸であってもよいし、一軸延伸や二軸延伸等の延伸されたものであってもよい。
【0126】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、合成紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0127】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0128】
[樹脂組成物の塗膜]
樹脂組成物の塗膜とは、特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物に含まれる溶媒が揮発することにより形成される。例えば、樹脂組成物に色材を含有した場合には、所望の画像を形成する加飾層やその下地層となる。なお、本明細書において「塗膜」の形状は、例えば平板状や層状に限定されるものではなく、凹凸を有するものであってもよく、一部に孔が形成されているものであってもよいし、例えば表面の一部に塗膜が形成されているものであってもよい。また、吸収性基材に吸収されて実質的に樹脂組成物の塗膜が基材の一部のような状態になっているものも便宜上、樹脂組成物の塗膜と表記する。
【0129】
特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物をプライマーとする場合には、基材上に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物(プライマー)を塗布し、その上に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物(着色インク)を塗布してもよいし、基材上に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物(プライマー)を塗布し、その上に特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物(着色インク)とは異なる組成物(着色インク)を塗布してもよい。
【0130】
また、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物をオーバーコートインクとする場合には、記録物の表面に形成されるオーバーコート層となる。なお、この場合、記録物が備える記録層を形成する樹脂組成物は、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物であってもよいし、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物とは異なる組成物であってもよい。
【0131】
≪8.装置≫
本実施の形態に係る装置は特に制限はされないが、特定のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有する上記の樹脂組成物、又は上記のインクセットに含まれる樹脂組成物が使用される印刷機などが挙げられる。例えば、インクジェット記録装置、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、スプレー印刷機、スクリーン印刷機、ブレードコーターやダイコーターなどの各種コーターなどを挙げることができる。
【0132】
これらの中でも、インクジェット記録装置であれば、基材上の任意の場所へ吐出することが可能であることからより好ましい。
【0133】
なお、装置に上記の樹脂組成物、又は上記インクセットに含まれる樹脂組成物を供給するために収容容器が搭載される。これらの収容容器は、とくに限定されず、例えば、インクボトル、パウチ、バッグインボックス、ドラム等の容器を挙げることができる。また、これらの容器をさらにカートリッジ等に収容したものであってもよい。収容容器の材質としては、とくに限定されず、従来公知の樹脂製であってもよいし、その一部の金属材料を含む材質(例えば、アルミ蒸着層を備えたアルミパウチ)であってもよい。
【0134】
またこの装置には、樹脂組成物の吐出後に樹脂組成物を乾燥する乾燥機構を備えることが好ましい。これにより印刷時の記録物の表面温度を調製して、それぞれの樹脂組成物に含まれる揮発成分を効果的に除去することが可能となる。
【0135】
乾燥機構は、被記録媒体を乾燥できるものであれば特に限定されないが、プレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等のヒーター、輻射線照射、送風機構(熱風や常温の風等)、の何れかが好ましい。
【0136】
また、それぞれの吐出部における吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれの方式であってもよい。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0138】
1.樹脂の合成
[実施例1]
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルを100.0質量部仕込み、窒素雰囲気下で95℃に昇温した後、そこへシクロヘキシルアクリレート100.0質量部、及びパーブチルO(日油株式会社製)1.60質量部を混合した溶液を2時間かけて連続的に滴下した。その後、95℃を保持し、滴下終了から30分毎に4回パーブチルO(日油株式会社製)0.50質量部の追加添加を行った。その後、3.5時間の熟成を行い、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルを77.5質量部加えて希釈した。希釈後、室温まで冷却することで樹脂1の溶液を得た。得られた樹脂1の重量平均分子量、固形分、粘度、その他塗膜物性を下記表に示す。
【0139】
[実施例2~13]
実施例1において、モノマーの種類と配合量、および重合開始剤の配合量を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂2~樹脂13の溶液を得た。得られた樹脂2~樹脂13の重量平均分子量、固形分、粘度、その他塗膜物性を下記表に示す。
【0140】
[比較例1~4]
実施例1において、モノマーの種類と配合量を下記表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂14~樹脂17の溶液を得た。得られた樹脂14~樹脂17の重量平均分子量、固形分、粘度、その他塗膜物性を下記表に示す。
【0141】
2.樹脂(樹脂分散体)の評価
上記実施例及び比較例で得られた樹脂につき、次のように評価を行った。
(固形分)
実施例及び比較例の樹脂について固形分の重量を測定した。具体的には、実施例及び比較例の樹脂(樹脂分散体)を150℃オーブンにて2時間加熱し、加熱後の樹脂の質量を測定した。
【0142】
(粘度)
実施例及び比較例の樹脂について粘度を測定した。具体的には、実施例及び比較例の樹脂(樹脂分散体)について、25℃、B型粘度計を使用して粘度を測定した。
【0143】
(重量平均分子量)
実施例及び比較例の樹脂について重量平均分子量を測定した。具体的には、実施例及び比較例の樹脂について、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてGPC測定装置(東ソー(株)製、「HLC-8320GPC」)にてゲル浸透クロマトグラフにより重量平均分子量を測定した。
【0144】
3.樹脂組成物の調製
5質量%の上記樹脂と、有機溶剤として、30.4質量%のジエチレングリコールジエチルエーテルと、40.0質量%のジエチレングリコールメチルエチルエーテルと、10.0質量%のジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、10.0質量%のN,N-ジエチルホルムアミドと、分散剤として、1.5質量%のSolsperse33000と、界面活性剤として、0.1質量%のBYK-331と、色材として、3.0質量%のカーボンブラックとを混合して実施例及び比較例の樹脂から樹脂組成物を調製した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて顔料および分散剤を有機溶剤中に分散させた顔料分散体を作製し、その他成分を各割合になるよう樹脂組成物を調整した。
【0145】
4.樹脂組成物の評価
(耐溶剤性)
実施例及び比較例の樹脂を含有する樹脂組成物について耐溶剤性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の樹脂を含有する樹脂組成物を被印刷基材(表面改質処理基材コロナ処理OPPの表面にインクジェット吐出して印字濃度100%のベタ画像の記録物を製造し、60℃で8分乾燥後、室温で1日乾燥させた。その後、樹脂組成物の塗布面の塗膜に対して学振型摩擦堅牢度試験機II型、加重1kg、当布:質量濃度70%のエタノール水溶液に浸した金巾3号の条件で塗膜の外観を観察した。下記評価基準(塗膜外観指標)により塗膜の外観を評価した(表中、耐溶剤性と表記)。
【0146】
評価基準
◎:100回後に外観変化無し
〇:75回後に外観変化無し・100回後にやや外観変化有り
△:25回後に外観変化無し・50回後にやや外観変化有り
×:25回後に外観変化有り(実用範囲外)
【0147】
(耐ブロッキング性)
実施例及び比較例の樹脂を含有する樹脂組成物について耐ブロッキング性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の樹脂を含有する樹脂組成物を被印刷基材(表面改質処理基材コロナ処理OPP)の表面にインクジェット吐出して印字濃度100%のベタ画像の記録物を製造し、60℃で8分乾燥後、室温で1日乾燥させた。その表面と非記録面を重ね合わせ、50℃湿度80%で3kg/cm2の荷重を18時間加えた後に素早く引き剥がし、以下の基準で耐ブロッキング性を評価した。
評価基準
A:非記録面への塗膜移行なし、剥離音もない
B:非記録面への塗膜移行なし、剥離音がわずかにある
C:非記録面への塗膜移行なし、剥離音がある
D:非記録面への塗膜移行なし、剥離時に抵抗があり、剥離音がある
E:非記録面に塗膜が移行 (実用範囲外)
【0148】
(密着性)
実施例及び比較例の樹脂を含有する樹脂組成物について密着性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の樹脂組成物を被印刷基材(表面改質処理基材コロナ処理OPP(表中、コロナ処理OPPと表記)、未処理基材未処理OPP(表中、未処理OPPと表記))にバーコーター#6を用いて塗工し、60℃8分乾燥後、塗工部分にセロハンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)、ニチバン社製」)を十分に押し当てた後、セロハンテープを剥離した。そして、塗工面の剥がれ具合を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって密着性を評価した。
【0149】
評価基準
A:画像が全く剥がれなかった。
B:画像が僅かに剥がれた。
C:剥がれた画像の面積の方が、剥がれずに残った画像の面積よりも小さかった。
D:剥がれた画像の面積の方が、剥がれずに残った画像の面積よりも大きかった。
E:画像が全て剥がれた。(実用範囲外)
【0150】
(延伸性)
実施例及び比較例の樹脂(樹脂分散体)を含有する樹脂組成物について延伸性を評価した。具体的には、被印刷基材(糊付きポリ塩化ビニルフィルム)にバーコーター#6を用いて塗工し、60℃で8分間乾燥させた。その後、樹脂組成物が塗工された基材を1.5cm×9.0cmの縦長の長方形に切り取り離型紙をはずした。上部と下部を固定し全体を0.1mm/minの速度で引き延ばした。塗膜に割れなどの変化があった点で中断し、その時の延伸率を評価した。
【0151】
評価基準
◎:延伸率150%以上
〇:延伸率130%以上150%未満
△:延伸率120%以上130%未満
×:延伸率120%未満(実用範囲外)
【0152】
【0153】
表中「CHA」とは、シクロヘキシルアクリレートである。
表中「CHMA」とは、シクロヘキシルメタクリレートである。
表中「DCPMA」とは、ジシクロペンタニルメタクリレートである。
表中「THFMA」とは、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。
表中「ACMO」とは、アクリロイルモルフォリンである。
表中「TBCHA」とは、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレートである。
表中「MMA」とは、メチルメタクリレートである。
表中「BMA」とは、ブチルメタクリレートである。
表中「BA」とは、ブチルアクリレートである。
表中「Mw」とは、重量平均分子量である。
表中「Mn」とは、数平均分子量である。
表中「コロナ処理OPP」とは、表面に対してコロナ処理が施されたポリプロピレン系樹脂基材(ポリオレフィン系樹脂基材)である。
表中「未処理OPP」とは、未処理のポリプロピレン系樹脂基材(ポリオレフィン系樹脂基材)である。
【0154】
上記表から分かるように、特定のモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂は、樹脂組成物に含有されることで、その塗布表面に密着性と耐ブロッキング性に優れた樹脂組成物の塗膜を形成することができることが分かる。
【0155】
この中でも、樹脂のTgが10℃以上120℃以下の範囲である実施例1~8の樹脂は、実施例9の樹脂と比較して、密着性と耐ブロッキング性に優れていた。また、実施例10の樹脂と比較して、樹脂組成物として含有されることで、耐ブロッキング性に優れた塗膜を形成することができた。
【0156】
また、樹脂の重量平均分子量が5000~100000の範囲である実施例3の樹脂は、実施例11、12の樹脂と比較して、樹脂組成物として含有されることで、密着性と耐ブロッキング性に優れた塗膜を形成することができた。
【0157】
また、モノマーAの含有量が重合体全量中70質量%以上の割合で含有する実施例2、3の樹脂は、実施例13の樹脂と比較して、樹脂組成物として含有されることで、密着性と耐ブロッキング性に優れた塗膜を形成することができた。
【0158】
一方、モノマーAの含有量は、重合体全量中50%未満の割合で含有する比較例1の樹脂やモノマーAを含有しない重合体を含有する比較例2~4の樹脂は、樹脂組成物として含有されても、密着性と耐ブロッキング性に優れた塗膜を形成することができていない。
【要約】
【課題】樹脂組成物に含有されることで、その塗布表面に密着性と耐ブロッキング性を有する樹脂組成物の塗膜を形成することができる樹脂を提供する。
【解決手段】以下のモノマーAを構成単位として含む重合体を含有し、
前記モノマーAは、重合体全量中50%以上の割合で含有する
樹脂。
モノマーA:環構造として脂環構造、及び/又は複素環構造を有し、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下であり、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算される側鎖部分のモル体積が170以下であるモノマー
CH2=C(R1)R2 ・・・式(1)
(R1は水素又はメチル基である)
【選択図】なし