(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】抗アルファ-4-ベータ-7抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20231222BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2023502654
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 US2021070898
(87)【国際公開番号】W WO2022016198
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-10-31
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ン,イォク-チャン
(72)【発明者】
【氏名】ベナトゥイル,ロレンゾ
(72)【発明者】
【氏名】ビクスビー,ジャクリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デフチャー,タチャーナ
(72)【発明者】
【氏名】ドン,フェン
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス・ジュニア,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン,プリーシ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,リヤンジュイン
(72)【発明者】
【氏名】メンサ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,レニー
(72)【発明者】
【氏名】サフ,ガウタム
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/104893(WO,A1)
【文献】Chang Li et al.,VIROLOGICA SINICA,2014年,Vol. 29, Issue 6,pp. 381-392
【文献】Mathieu Uzzan et al.,Sci. Transl. Med.,2018年,Vol. 10, article eaau4711,pp. 1-15
【文献】Michael C. Sneller et al.,Sci. Transl. Med.,2019年,Vol. 11, article eaax3447,pp. 1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)3つのCDRを含むVH鎖領域;及び(ii)3つのCDRを含むVL鎖領域を含む抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体であって、
VH CDR#1がGFNIKNTYMH(配列番号72)であり;
VH CDR#2がRIDPAKGHTEYAPKFLG(配列番号73)であり;
VH CDR#3がVDV(配列番号74)であり;
VL CDR#1がHASQDISDNIG(配列番号75)であり;
VL CDR#2がHGTNLED(配列番号76)であり;及び
VL CDR#3がVQYAQFPWT(配列番号77)である、
抗ヒトα4β7抗体。
【請求項2】
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFNIKNTYMHWVRQAPGQGLEWIGRIDPAKGHTEYAPKFLGRVTITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCYYVDVWGQGTTVTVSS(配列番号70)
のVH鎖領域;及び
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDISDNIGWLQQKPGKSFKLLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPWTFGGGTKVEIK(配列番号71)
のVL鎖領域
を含む、請求項1に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項3】
IgGである、請求項2に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項4】
カッパ軽定常領域を含む、請求項3に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項5】
IgG1である、請求項4に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項6】
アミノ酸置換D356E及びL358Mを有するバリアントCH3ドメインを含む、請求項5に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項7】
配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号100のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項1に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項8】
配列番号92のアミノ酸配列から、それぞれなる重鎖、及び配列番号100のアミノ酸配列から、それぞれなる軽鎖を含む
抗体である、請求項1に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【請求項9】
配列番号93のアミノ酸配列から、それぞれなる重鎖、及び配列番号100のアミノ酸配列から、それぞれなる軽鎖を含む
抗体である、請求項1に記載の抗ヒトα4β7
モノクローナル抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、これにより参照によってその全体を組み込む。前記ASCIIコピーは、2021年7月14日に作成され、483WO_SL.txtと命名され、サイズは106,797バイトである。
【0002】
本出願は、とりわけ、新規の抗α4β7抗体、この抗体をコードするポリヌクレオチド、この抗体を産生する方法及びこれらの抗体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、世界的に見ると3700万人以上がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しており、流行している人口は増え続けている。抗レトロウイルス併用療法(cART)の出現によりHIVの管理は著しく進歩してきた。cARTは、HIVを抱えている人の生涯を通じて終始一貫して受ける必要がある。cARTはリスクベネフィット限界を有し、さらに、HIV潜伏ウイルス保有宿主を減らさない。生涯処置を必要としなくてもウイルス負荷を検出レベルより低く保つことができる改良処置の重大な必要性が存在する。
【0004】
急性ヒトHIV感染では、高レベルのウイルス複製と感染したCD4+T細胞の甚大な枯渇の両方が、HIV感染に関連する免疫不全の発生に中心的な役割を果たすと考えられている。α4β7は、T細胞(CD4+又はCD8+)、B細胞及び他の免疫細胞上で発現される腸管ホーミングインテグリンであり、HIV感染の病態形成に重要な役割を果たす。α4β7は、ビリオンが感染宿主細胞から出芽するとHIVのエンベロープに組み込まれることも報告されている(Guzzoら、Sci.Immunol.、2017年)。
【0005】
α4β7インテグリンは、T細胞サブセット、B細胞、NK細胞及び他の免疫細胞上で発現されるヘテロ二量体受容体である。このインテグリンは、腸管粘膜の内皮性小静脈上で発現されるそのリガンド粘膜アドレシン細胞接着分子1(MAdCAM-1)に結合することにより、腸管関連リンパ組織(GALT)中へのリンパ球輸送を媒介する。高α4β7発現CD4+T細胞は、in vitroではHIV感染の標的であり(Cicalaら、PNAS 2009年)、この細胞は感染し、したがって、急性HIV感染の間枯渇する(Sivroら、Sci Transl Med 2018年)。HIV感染CD4+細胞に並びにHIVビリオンに存在するα4β7は、GALTへのその輸送を媒介することができると考えられる(Guzzoら、Sci Immunol 2017年)。GALTに向かうCD4+T細胞は、抗レトロウイルス療法の間でも身体において最大のHIV保有宿主を構成する(Brenchley and Douek、Mucosal Immunol 2008年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Guzzoら、Sci.Immunol.、2017年
【文献】Cicalaら、PNAS 2009年
【文献】Sivroら、Sci Transl Med 2018年
【文献】Brenchley and Douek、Mucosal Immunol 2008年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本開示は、ヒトα4β7に特異的に結合する抗α4β7抗体及びその結合断片を提供する。例示的な抗α4β7抗体の重及び軽鎖の例示的なCDRのアミノ酸配列、並びにVH及びVL領域のアミノ酸配列は、下の、発明を実施するための形態で提供される。
【0008】
本開示の抗α4β7抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが本明細書で提供され、ポリヌクレオチドを含むベクターも同様である。さらに、開示された抗α4β7抗体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターで形質転換された原核細胞及びこのベクターをトランスフェクトされた真核細胞並びにヌクレオチド配列を発現するように操作された真核(哺乳動物などの)宿主細胞が本明細書で提供される。宿主細胞を培養し抗体を回収することにより、抗体を産生する方法も提供される。
【0009】
本開示は、HIV感染と診断された、ヒト対象などの対象を抗α4β7抗体を用いて処置する方法を提供する。方法は、一般に、対象に、治療効果を与えるのに有効な本明細書に記載される抗α4β7抗体の量を投与するステップを含む。対象は、HIV感染のいかなる臨床カテゴリーで診断してもよい。
【0010】
本明細書に記載される抗α4β7抗体は、ウイルスタンパク質の代わりにヒトα4β7を標的にするので、HIV突然変異ベースの耐性機構を誘導しない有利な治療アプローチを提供するが、この耐性機構は、HIVの高突然変異頻度のせいでウイルスタンパク質を標的にする処置により発生することが多い。
【0011】
本明細書に提示されるデータに基づいて、本明細書に記載される抗α4β7抗体は、HIV感染と診断された対象に治療効果をもたらすと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マウス抗体Ab-mlによるMAdCAM-1へのHuT78細胞の接着の遮断を示す。
【
図2】MAdCAM-1へのCHOK1-cα4β7(cyno α4β7)細胞接着アッセイを使用してAb-mlの機能的カニクイザル交差反応性を示す。
【
図3】一次ヒトCD4+メモリーT細胞へのヒトMAdCAM-1結合のAb-mlブロッキングを示す。
【
図4】ヒト一次CD4+メモリーT細胞へのマウス-ヒトキメラAb-c1の結合(hα4β7+CD4+CD45RO+)を示す。
【
図5】フローサイトメトリーによる酵母上で示されるヒトα4β7抗原に対するライアビリティー操作ヒト化抗α4β7 Ab-h1.9 scFvクローンの結合を示す。クローンAb-h1.9(a-e)は、親Ab-h1.9と類似する結合を有していた。
【
図6A】45人のHIV+個人及び10人の健康な(HIV-)ドナー由来の試料でのα4β7発現分析を示す。CD4+及びCD8+T細胞上でのα4β7の発現(%として又はMESFにより測定されるレベルとして)はHIV+とHIV-の個人間で比較された。マン・ホイットニーの両側検定により有意に異なる比較だけが図に示されている。T細胞集団は、N+=ナイーブ(CD28+CD45RO-)、CM=セントラルメモリー(CD28+CD45RO+CCR7+)、TM=トランジエントメモリー(CD28+CD45RO+CCR7-)、EM=エフェクターメモリー(CD28-CD45RO+)、TE=ターミナルエフェクター(CD28-CD45RO-);MESF=等可溶性蛍光色素の分子として略記される。
【
図6B】45人のHIV+個人及び10人の健康な(HIV-)ドナー由来の試料でのα4β7発現分析を示す。CD4+及びCD8+T細胞上でのα4β7の発現(%として又はMESFにより測定されるレベルとして)はHIV+とHIV-の個人間で比較された。マン・ホイットニーの両側検定により有意に異なる比較だけが図に示されている。T細胞集団は、N+=ナイーブ(CD28+CD45RO-)、CM=セントラルメモリー(CD28+CD45RO+CCR7+)、TM=トランジエントメモリー(CD28+CD45RO+CCR7-)、EM=エフェクターメモリー(CD28-CD45RO+)、TE=ターミナルエフェクター(CD28-CD45RO-);MESF=等可溶性蛍光色素の分子として略記される。
【
図6C】45人のHIV+個人及び10人の健康な(HIV-)ドナー由来の試料でのα4β7発現分析を示す。CD4+及びCD8+T細胞上でのα4β7の発現(%として又はMESFにより測定されるレベルとして)はHIV+とHIV-の個人間で比較された。マン・ホイットニーの両側検定により有意に異なる比較だけが図に示されている。T細胞集団は、N+=ナイーブ(CD28+CD45RO-)、CM=セントラルメモリー(CD28+CD45RO+CCR7+)、TM=トランジエントメモリー(CD28+CD45RO+CCR7-)、EM=エフェクターメモリー(CD28-CD45RO+)、TE=ターミナルエフェクター(CD28-CD45RO-);MESF=等可溶性蛍光色素の分子として略記される。
【
図6D】45人のHIV+個人及び10人の健康な(HIV-)ドナー由来の試料でのα4β7発現分析を示す。CD4+及びCD8+T細胞上でのα4β7の発現(%として又はMESFにより測定されるレベルとして)はHIV+とHIV-の個人間で比較された。マン・ホイットニーの両側検定により有意に異なる比較だけが図に示されている。T細胞集団は、N+=ナイーブ(CD28+CD45RO-)、CM=セントラルメモリー(CD28+CD45RO+CCR7+)、TM=トランジエントメモリー(CD28+CD45RO+CCR7-)、EM=エフェクターメモリー(CD28-CD45RO+)、TE=ターミナルエフェクター(CD28-CD45RO-);MESF=等可溶性蛍光色素の分子として略記される。
【
図6E】45人のHIV+個人及び10人の健康な(HIV-)ドナー由来の試料でのα4β7発現分析を示す。CD4+及びCD8+T細胞上でのα4β7の発現(%として又はMESFにより測定されるレベルとして)はHIV+とHIV-の個人間で比較された。マン・ホイットニーの両側検定により有意に異なる比較だけが図に示されている。T細胞集団は、N+=ナイーブ(CD28+CD45RO-)、CM=セントラルメモリー(CD28+CD45RO+CCR7+)、TM=トランジエントメモリー(CD28+CD45RO+CCR7-)、EM=エフェクターメモリー(CD28-CD45RO+)、TE=ターミナルエフェクター(CD28-CD45RO-);MESF=等可溶性蛍光色素の分子として略記される。
【
図6F】45人のHIV+個人及び10人の健康な(HIV-)ドナー由来の試料でのα4β7発現分析を示す。CD4+及びCD8+T細胞上でのα4β7の発現(%として又はMESFにより測定されるレベルとして)はHIV+とHIV-の個人間で比較された。マン・ホイットニーの両側検定により有意に異なる比較だけが図に示されている。T細胞集団は、N+=ナイーブ(CD28+CD45RO-)、CM=セントラルメモリー(CD28+CD45RO+CCR7+)、TM=トランジエントメモリー(CD28+CD45RO+CCR7-)、EM=エフェクターメモリー(CD28-CD45RO+)、TE=ターミナルエフェクター(CD28-CD45RO-);MESF=等可溶性蛍光色素の分子として略記される。
【
図7A】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7B】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7C】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7D】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7E】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7F】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7G-1】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図7G-2】Ab-h1.9d-WTを用いたHIVビリオン補足を示す。すべての試験は、ビーズフォーマットでビリオン補足アッセイを用いて行った。Ab-h1.9d-WTは、6種の実験室増殖HIV株(
図7A~7F)を5nM及び15nMで用いて試験し、陰性対照抗体は15nMでのみ試験した。補足された試料中のHIV p24gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。Ab-h1.9d-WTは、10μgの抗体で被覆したビーズを用いて2人のHIV感染個人由来の試料でも試験した(
図7G-1及び7G-2)。デジタルドロプレットPCRにより検出される入力試料(
図7G-1)中の及び補足試料(
図7G-2)中のHIV gagRNAの量はコピー/mLで示される。
【
図8A】FcγRに結合する免疫複合体(異なる抗体を有するHIVビリオン)を示す。免疫複合体は、抗体(Ab-h1.9d-WT、FcγR結合を著しく減少させるLALA突然変異を有するAb-h1.9d、Ab-Vedo及びアイソタイプネガティブコントロール)をHIV NL4-3と一緒にインキュベートすることにより先ず形成され、その後プレート上に固定化されたFcγR上で補足された。FcγRI及びFcγRIIIa(V158)はニッケルプレート上で補足され、FcγRIIa(H131)、FcγRIIa(R131)及びFcγRIIIa(F158)は、検出感度を高めるためのニュートラアビジンプレート上で補足された。検出されるHIV p24 gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。代表的な実験の結果が示されている。
【
図8B】FcγRに結合する免疫複合体(異なる抗体を有するHIVビリオン)を示す。免疫複合体は、抗体(Ab-h1.9d-WT、FcγR結合を著しく減少させるLALA突然変異を有するAb-h1.9d、Ab-Vedo及びアイソタイプネガティブコントロール)をHIV NL4-3と一緒にインキュベートすることにより先ず形成され、その後プレート上に固定化されたFcγR上で補足された。FcγRI及びFcγRIIIa(V158)はニッケルプレート上で補足され、FcγRIIa(H131)、FcγRIIa(R131)及びFcγRIIIa(F158)は、検出感度を高めるためのニュートラアビジンプレート上で補足された。検出されるHIV p24 gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。代表的な実験の結果が示されている。
【
図8C】FcγRに結合する免疫複合体(異なる抗体を有するHIVビリオン)を示す。免疫複合体は、抗体(Ab-h1.9d-WT、FcγR結合を著しく減少させるLALA突然変異を有するAb-h1.9d、Ab-Vedo及びアイソタイプネガティブコントロール)をHIV NL4-3と一緒にインキュベートすることにより先ず形成され、その後プレート上に固定化されたFcγR上で補足された。FcγRI及びFcγRIIIa(V158)はニッケルプレート上で補足され、FcγRIIa(H131)、FcγRIIa(R131)及びFcγRIIIa(F158)は、検出感度を高めるためのニュートラアビジンプレート上で補足された。検出されるHIV p24 gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。代表的な実験の結果が示されている。
【
図8D】FcγRに結合する免疫複合体(異なる抗体を有するHIVビリオン)を示す。免疫複合体は、抗体(Ab-h1.9d-WT、FcγR結合を著しく減少させるLALA突然変異を有するAb-h1.9d、Ab-Vedo及びアイソタイプネガティブコントロール)をHIV NL4-3と一緒にインキュベートすることにより先ず形成され、その後プレート上に固定化されたFcγR上で補足された。FcγRI及びFcγRIIIa(V158)はニッケルプレート上で補足され、FcγRIIa(H131)、FcγRIIa(R131)及びFcγRIIIa(F158)は、検出感度を高めるためのニュートラアビジンプレート上で補足された。検出されるHIV p24 gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。代表的な実験の結果が示されている。
【
図8E】FcγRに結合する免疫複合体(異なる抗体を有するHIVビリオン)を示す。免疫複合体は、抗体(Ab-h1.9d-WT、FcγR結合を著しく減少させるLALA突然変異を有するAb-h1.9d、Ab-Vedo及びアイソタイプネガティブコントロール)をHIV NL4-3と一緒にインキュベートすることにより先ず形成され、その後プレート上に固定化されたFcγR上で補足された。FcγRI及びFcγRIIIa(V158)はニッケルプレート上で補足され、FcγRIIa(H131)、FcγRIIa(R131)及びFcγRIIIa(F158)は、検出感度を高めるためのニュートラアビジンプレート上で補足された。検出されるHIV p24 gagの量は、アッセイされる10μL中pg/mLで示される。代表的な実験の結果が示されている。
【
図9A】THP-1細胞におけるα4β7被覆ビーズのAb-h1.9d-WT媒介取込みのα4β7-及びFc依存性を示す。複合体で3時間処置されたTHP-1細胞における免疫複合体(α4β7被覆ビーズ及び示された抗α4β7又は対照抗体を含有する)の食作用スコアーがプロットされている。
図9Aは、1つの代表的な実験のデータを示す。
【
図9B】THP-1細胞におけるα4β7被覆ビーズのAb-h1.9d-WT媒介取込みのα4β7-及びFc依存性を示す。複合体で3時間処置されたTHP-1細胞における免疫複合体(α4β7被覆ビーズ及び示された抗α4β7又は対照抗体)の食作用スコアーがプロットされている。
図9Bは、3つの独立した実験の正規化されたデータを示す。有意性は、テューキー多重比較検定と連結させた一元配置分散分析を使用して決定された。
****p<0.0001、
***p=0.0001~0.001、
**p=0.001~0.01、
*p=0.01~0.05、ns≧0.05。
【
図9C】THP-1細胞におけるα4β7被覆ビーズのAb-h1.9d-WT媒介取込みのα4β7-及びFc依存性を示す。複合体で3時間処置されたTHP-1細胞における免疫複合体(α4β7被覆ビーズ及び示された抗α4β7又は対照抗体)の食作用スコアーがプロットされている。
図9Cは、イメージサイトメトリーにより得られた、3種の内部移行されたα4β7被覆ビーズとのAb-h1.9d-WT免疫複合体処置細胞の代表的な画像を示す。
【
図10】α4β7+GFP+VLP(ウイルス様粒子)への抗α4β7抗体の結合を示す。VLPへのAbの結合はELISAを使用して判定された。Ab-h1.9d-WT、Ab-h1.9d-LALA及びAb-Vedoは、類似するEC
50値でα4β7+GFP+VLP被覆プレートに結合した。2つの独立した実験の代表的データが示されている。
【
図11A】THP-1細胞によるAb-h1.9d-WT媒介α4β7+GFP+VLP(ウイルス様粒子)取込みのα4β7-及びFc依存性を示す。
図11Aは、フローサイトメトリーにより測定されるGFP+細胞のパーセンテージとしてのTHP-1細胞によるα4β7+GFP+VLP取込みを示す。
図10A~10Bで提示される平均±s.d.はそれぞれ4つ及び3つの独立した実験から収集された。有意性(
****p=5.4×10
-5)は両側スチューデントt検定により計算され、p<0.05は有意であるとみなされる。
【
図11B】THP-1細胞によるAb-h1.9d-WT媒介α4β7+GFP+VLP(ウイルス様粒子)取込みのα4β7-及びFc依存性を示す。
図11Bは、ラトランクリンA(LatA)によるα4β7+GFP+VLP取込みの阻害を示す。
図11Bでは、THP-1細胞はLatAで2時間前処置され、次に
図11Aと同じくVLP及び抗体と一緒にインキュベートされた。
【
図12A】異なる抗体によるα4β7とのHIV gp120の相互作用の阻害を示す。
図12Aは、HIV gp120-V2 WTペプチドへのRPMI 8866細胞の結合を示すが、対照ペプチドには結合しない。RPMI 8866細胞は、細胞表面でα4β7を構成的に発現する。HIV gp120-V2 WTペプチドとHIV gp120-V2対照ペプチドは、α4β7とgp120の間の結合を媒介すると報告されている4個のアミノ酸が対照ペプチドの中では突然変異していることを除いて配列が同一であった。
【
図12B】異なる抗体によるα4β7とのHIV gp120の相互作用の阻害を示す。
図12Bは、異なる抗体によるα4β7を発現するRPMI 8866細胞へのHIV gp120ペプチドの結合の阻害を示す。Ab-h1.9d-WTは、α4β7を発現するRPMI 8866細胞へのHIV gp120-V2 WTペプチドの結合を阻害するのはAb-Vedoよりも強力であった。
【
図13】Ab-h1.9d-WTが結合するヒト及びカニクイザルCD4+及びCD8+T細胞サブセットのパーセンテージを示す。ヒト及びカニクイザルCD4+及びCD8+T細胞へのAb-h1.9d-WTの結合は、フローサイトメトリー分析により評価された。Ab-h1.9d-WTが結合するα4β7+T細胞サブセットのパーセンテージが決定された。データは、3人のヒト及び5頭のカニクイザルドナーから得られた。
【
図14A】種々のインテグリンへのAb-h1.9d-WTの結合特異性を示す。Ab-h1.9d-WTの結合特異性は、ヒト(14A、14C及び14E)又はカニクイザルインテグリン(14B、14D及び14F)を発現する組換え細胞上で評価された。α4β1(
図14C/14D)及びαEβ7(
図14E/14F)インテグリンと比べた標的インテグリンα4β7(
図14A/14B)への結合。Ab-Nata及びエトロリズマブ(etrolizumab)由来Ab-Etroをそれぞれα4及びβ7インテグリン特異的陽性対照として、並びにAb-Ctetをアイソタイプコントロールとして使用した。FACS結合結果は、滴定されたmAbについてのMFIとして表される。N=1。
【
図14B】種々のインテグリンへのAb-h1.9d-WTの結合特異性を示す。Ab-h1.9d-WTの結合特異性は、ヒト(14A、14C及び14E)又はカニクイザルインテグリン(14B、14D及び14F)を発現する組換え細胞上で評価された。α4β1(
図14C/14D)及びαEβ7(
図14E/14F)インテグリンと比べた標的インテグリンα4β7(
図14A/14B)への結合。Ab-Nata及びエトロリズマブ(etrolizumab)由来Ab-Etroをそれぞれα4及びβ7インテグリン特異的陽性対照として、並びにAb-Ctetをアイソタイプコントロールとして使用した。FACS結合結果は、滴定されたmAbについてのMFIとして表される。N=1。
【
図14C】種々のインテグリンへのAb-h1.9d-WTの結合特異性を示す。Ab-h1.9d-WTの結合特異性は、ヒト(14A、14C及び14E)又はカニクイザルインテグリン(14B、14D及び14F)を発現する組換え細胞上で評価された。α4β1(
図14C/14D)及びαEβ7(
図14E/14F)インテグリンと比べた標的インテグリンα4β7(
図14A/14B)への結合。Ab-Nata及びエトロリズマブ(etrolizumab)由来Ab-Etroをそれぞれα4及びβ7インテグリン特異的陽性対照として、並びにAb-Ctetをアイソタイプコントロールとして使用した。FACS結合結果は、滴定されたmAbについてのMFIとして表される。N=1。
【
図14D】種々のインテグリンへのAb-h1.9d-WTの結合特異性を示す。Ab-h1.9d-WTの結合特異性は、ヒト(14A、14C及び14E)又はカニクイザルインテグリン(14B、14D及び14F)を発現する組換え細胞上で評価された。α4β1(
図14C/14D)及びαEβ7(
図14E/14F)インテグリンと比べた標的インテグリンα4β7(
図14A/14B)への結合。Ab-Nata及びエトロリズマブ(etrolizumab)由来Ab-Etroをそれぞれα4及びβ7インテグリン特異的陽性対照として、並びにAb-Ctetをアイソタイプコントロールとして使用した。FACS結合結果は、滴定されたmAbについてのMFIとして表される。N=1。
【
図14E】種々のインテグリンへのAb-h1.9d-WTの結合特異性を示す。Ab-h1.9d-WTの結合特異性は、ヒト(14A、14C及び14E)又はカニクイザルインテグリン(14B、14D及び14F)を発現する組換え細胞上で評価された。α4β1(
図14C/14D)及びαEβ7(
図14E/14F)インテグリンと比べた標的インテグリンα4β7(
図14A/14B)への結合。Ab-Nata及びエトロリズマブ(etrolizumab)由来Ab-Etroをそれぞれα4及びβ7インテグリン特異的陽性対照として、並びにAb-Ctetをアイソタイプコントロールとして使用した。FACS結合結果は、滴定されたmAbについてのMFIとして表される。N=1。
【
図14F】種々のインテグリンへのAb-h1.9d-WTの結合特異性を示す。Ab-h1.9d-WTの結合特異性は、ヒト(14A、14C及び14E)又はカニクイザルインテグリン(14B、14D及び14F)を発現する組換え細胞上で評価された。α4β1(
図14C/14D)及びαEβ7(
図14E/14F)インテグリンと比べた標的インテグリンα4β7(
図14A/14B)への結合。Ab-Nata及びエトロリズマブ(etrolizumab)由来Ab-Etroをそれぞれα4及びβ7インテグリン特異的陽性対照として、並びにAb-Ctetをアイソタイプコントロールとして使用した。FACS結合結果は、滴定されたmAbについてのMFIとして表される。N=1。
【
図15】HEK293細胞におけるAb-h1.9d-WTの非特異的結合評価を示す。HEK293細胞へのAb-h1.9d-WTの非特異的結合はフローサイトメトリー分析により評価された。100μg/mL試験濃度では、陽性対照は高い結合を示し、Ab-h1.9d-WTとアイソタイプコントロールAb-cTetの両方では観察された結合はごくわずかであった。試験mAb(A)に結合するパーセンテージHEK293細胞及び試験mAb(B)による結合強度のMFIが提示される。N=2。
【
図16A】ヒト一次細胞上でのAb-h1.9d-WT又はAb-Vedoとのα4β7複合体の内部移行を示す。
図16Aは、末梢血ヒトドナー由来のCD4+T及びCD8+Tナイーブ細胞上でのAb-h1.9d-WTの内部移行を示す。2人のドナー由来のドットプロットは、処置後18時間で4又は37℃でのAb-h1.9d-WTを用いた処置によるα4β7細胞のパーセンテージを示す。細胞表面に残るα4β7は、Alexa-647標識抗β7 Ab-Etroを用いて検出された。
【
図16B】ヒト一次細胞上でのAb-h1.9d-WT又はAb-Vedoとのα4β7複合体の内部移行を示す。
図16Bは、Ab-h1.9d-WTで処置されたT細胞サブセットにおけるα4β7内部移行(4℃での処置後に観察される発現に関係する減少した表面α4β7発現)の定量化を示す。(N=2人のドナー)。ナイーブ細胞はCD45RA+と定義された。
【
図17A】Ab-h1.9d-WTがヒト一次CD4+T細胞上でMAdCAM-1共刺激シグナルを遮断することを示す。
図17Aでは、アイソタイプコントロールAb及びAb-h1.9d-WTの存在下での抗CD3及びMAdCAM-1によるヒト一次CD4+T細胞の活性化は、フローサイトメトリー分析によりKi67+CD25+細胞(X軸はKi67+、Y軸はCD25+)のパーセンテージとして測定された。このデータは代表的なドナーのものである。
【
図17B】Ab-h1.9d-WTがヒト一次CD4+T細胞上でMAdCAM-1共刺激シグナルを遮断することを示す。
図17Bでは、アイソタイプコントロールAb、Ab-h1.9d-WT及びAb-Vedoの存在下での抗CD3及びMAdCAM-1によるヒト一次CD4+T細胞の活性化は、Ki67+CD25+細胞(Y軸上)のパーセンテージとして測定された。データは6人の個々の健康なドナーのものである。統計分析は、両側パラメトリック対応ありt検定を使用して実施された:
**P<0.01、
****P<0.0001)。
【
図18】Ab-h1.9d-WTがVCAM-1媒介細胞接着を遮断しないことを示す。VCAM-1へのAb-h1.9d-WTによる細胞接着遮断は、HuT78細胞接着アッセイを使用して判定された。Ab-Nata、抗α4mAbは陽性対照としての役目を果たし、Ab-cTetは陰性対照として使用された。発光の減少(RLU)がリガンド遮断のせいで細胞結合の減少を示す代表的なデータが示される。N=3。
【
図19A】フローサイトメトリーにより、Ab-Vedoと比べたヒトFcγR発現細胞へのAb-h1.9d-WTの結合を示す。ヒトFcγRへのAb-h1.9d-WT(
図19A)及びAb-Vedo(
図19B)の結合は、種々の細胞表面ヒトFcγRを発現する操作されたCHO-K1細胞を使用することにより分析され、蛍光の幾何平均により表される。N=1。
【
図19B】フローサイトメトリーにより、Ab-Vedoと比べたヒトFcγR発現細胞へのAb-h1.9d-WTの結合を示す。ヒトFcγRへのAb-h1.9d-WT(
図19A)及びAb-Vedo(
図19B)の結合は、種々の細胞表面ヒトFcγRを発現する操作されたCHO-K1細胞を使用することにより分析され、蛍光の幾何平均により表される。N=1。
【
図20A】Ab-h1.9d-WTのレポーターベースのADCC及びADCP活性を示す。Fc媒介in vitro ADCC及びADCP活性を誘導するAb-h1.9d-WTの能力は、レポーターアッセイにより評価された。(
図20A)操作されたジャーカットヒトFcγRIIIa V158+エフェクターレポーター細胞及びRPMI8866標的細胞を使用した場合のADCC活性;N=2。
【
図20B】Ab-h1.9d-WTのレポーターベースのADCC及びADCP活性を示す。Fc媒介in vitro ADCC及びADCP活性を誘導するAb-h1.9d-WTの能力は、レポーターアッセイにより評価された。(
図20B)操作されたジャーカットヒトFcγRIIa H131+エフェクターレポーター細胞及びRPMI8866標的細胞を使用した場合のADCP活性;N=2。Ab-Rituは、アッセイでの陽性対照として使用された。結果は発光(RLU)により表され;高シグナルはADCC及びADCP活性を示す。
【
図21】Ab-h1.9d-WTのCDC活性を示す。Fc媒介in vitro CDC活性を誘導するAb-h1.9d-WTの能力は、RPMI8866標的細胞及びヒト血清を補体因子の供給源として使用して評価された;N=試験された2ドナー血清。Ab-Rituは陽性対照として使用された。結果はパーセンテージ細胞殺傷として表される;高い細胞殺傷ほどCDC活性を示す。
【
図22】Ab-h1.9d-WTの細胞傷害性ベースのADCC活性を示す。Fc媒介in vitro ADCCを誘導するAb-h1.9d-WTの能力は、FACSベースの細胞傷害性アッセイにおいて、標的細胞としてHuT78を及びエフェクター細胞として2人のドナー由来のヒト一次NK細胞を使用して評価された。標的細胞殺傷(細胞傷害性)は両ドナーについてパーセンテージADCCにより表される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理論に拘束されるものではないが、本発明の実施形態は、以下の2つの主要な作用機構を介してHIV感染に対するウイルス制御を発揮すると仮定される:1)Fab依存性機構:α4β7と、MAdCAM-1及びHIV gp120などのそのリガンドとの相互作用を遮断し、それにより、これらのリガンドのシグナル伝達によって媒介されるCD4+ T細胞の共刺激を阻害し、これらの刺激された細胞におけるHIV複製(Nawazら、Mucosal Immunol.2018、Liviaら、PNAS.2020)、消化器組織のHIV感染(Guzzoら、Sci Immunol.2017)及び細胞間ウイルス伝播(Arthosら、Nat.Immunol.2008)をそれぞれ抑制すること、並びに2)Fc依存性機構:抗α4β7 mAbはα4β7+ HIVビリオンに結合し、免疫複合体を形成し、この免疫複合体は、mAb Fcドメインと、抗原提示細胞(APC)上のFcγRとの相互作用を通じて内部移行し、プロセシングされ、結果として得られたウイルスペプチドが続いてAPCの表面上に提示されて、新しく耐久性のあるHIV特異的免疫反応を誘発して、ウイルス複製を抑制する、「ワクチン接種効果」を誘導すること(Parsonsら、Retrovirology 2018;Naranjo-Gomezら、Curr. Opin. HIV AIDS 2019)。
【0014】
α4β7インテグリンは、通常、そのリガンドに対して低い親和性で休止(不活性)状態にある。活性化されると、これは、高い親和性でそのリガンド(例えば、MAdCAM-1及びgp120)に結合することができる(Yeら、Blood、2012;Lertjuthapornら、PloS One、2018)。HIV感染中、HIV gp120のV2領域におけるモチーフは、MAdCAM-1を模倣し、α4β7に結合することができる(Peachmanら、PloS One、2015)。α4β7とgp120との相互作用は、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)の活性化を誘導し、ウイルス学的シナプスの形成を潜在的に誘導し、それによって、HIVの細胞間伝播を増強する(Arthosら、Nat Immunol 2008)。細胞間伝播は、組織内でのウイルスの拡散を促進するために不可欠であり、ウイルスの伝播には無細胞ウイルスよりも重要である。α4β7に結合すると、本発明の実施形態は、α4β7とgp120との相互作用を破壊することにより、HIVのα4β7媒介性細胞間伝播を低減させ、細胞へのα4β7抗体結合複合体の内部移行を誘導することができる又はα4β7を不活性化することができる。したがって、本発明の実施形態は、組織内のHIV複製及びウイルスの拡散を阻害する能力を示す。
【0015】
ウイルスタンパク質の代わりにα4β7のヒトタンパク質を標的とすることにより、本発明の実施形態は、HIVの高い突然変異頻度のためにウイルスタンパク質を標的とする処置に通常関連するウイルス耐性突然変異の出現を誘導しない。
【0016】
6.1.略語
本明細書に記載されている抗体は、多くの実施形態では、それらのそれぞれのポリペプチド配列によって記載されている。別段の指示がない限り、ポリペプチド配列は、N→C方向において提供されている。
【0017】
本明細書に記載されているポリヌクレオチドは、多くの実施形態では、それらのそれぞれのポリヌクレオチド配列によって記載されている。別段の指示がない限り、5’→3’方向のポリヌクレオチド配列。
【0018】
ポリペプチド配列に関して、以下の表1に示されているように、遺伝的にコードされたアミノ酸についての従来の3文字又は1文字の略語が使用され得る。
【0019】
【0020】
ある特定の配列は、ある特定のクラス(例えば、脂肪族、疎水性など)に属するアミノ酸残基を特定する構造式によって定義される。本明細書で使用される場合、遺伝的にコードされたアミノ酸が属する様々なクラスは、以下の表2に示されている。一部のアミノ酸は、1つより多いクラスに属する場合がある。スルフヒドリル基を含有するシステイン、及び立体構造的に制限されているプロリンには、クラスが割り当てられていない。
【0021】
【0022】
様々な例示的な実施形態を通して使用されている略語は、以下の表3に提供されているものを含む:
【0023】
【0024】
6.2.定義
本明細書で別段の定義がない限り、本開示に関連して使用されている科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、抗体アミノ酸残基の番号付けは、別段の指示がない限り、EU番号付けスキームに従って行われる。
【0026】
6.3.抗α4β7抗体
一態様では、本開示は、α4β7ヘテロ二量体インテグリン受容体(a4b7、LPAM-1、リンパ球パイエル板接着分子1、並びにインテグリンアルファ-4及びインテグリンベータ-7の二量体としても知られている)に特異的に結合する抗体に関する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗体」(Ab)という用語は、特定の抗原、例えば、α4β7に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。一部の実施形態では、本開示の抗α4β7抗体は、ヒトα4β7に結合し、それによって免疫系をモジュレートする。本開示の抗α4β7抗体は、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方において、超可変領域としても知られている、相補性決定領域(CDR)を含む。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。当該技術分野で知られているように、抗体の超可変領域を示すアミノ酸位置/境界は、文脈及び当該技術分野で知られている様々な定義に応じて変化し得る。可変ドメイン内のいくつかの位置は、それらの位置が、ある一連の基準の下では超可変領域内にあると判断され得るのに対して、異なる一連の基準の下では超可変領域外にあると判断され得るという点で、ハイブリッド超可変位置とみなされ得る。また、これらの位置の1つ以上は、拡張された超可変領域にも見出され得る。本開示は、これらのハイブリッド超可変位置における修飾を含む抗体を提供する。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインの各々は、主にβシート構造をとることによって3つのCDRによって接続される4つのFR領域を含み、この3つのCDRは、βシート構造を接続し、場合によってはその一部を形成するループを形成する。各鎖のCDRは、FR領域に近接して一緒に保持され、他の鎖からのCDRとともに、抗体の標的結合部位の形成に寄与する。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health、Bethesda、Md. 1987)を参照のこと。
【0028】
本開示の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体などを含むが、これらに限定されない、ポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作された、及び/又は別様で性質が修飾されたものであってもよい。様々な実施形態では、抗体は、抗体の定常領域の全て又は一部を含む。一部の実施形態では、定常領域は、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)及びIgMから選択されるアイソタイプである。具体的な実施形態では、本明細書に記載されている抗α4β7抗体はIgG1を含む。他の実施形態では、抗α4β7抗体はIgG2を含む。さらに他の実施形態では、抗α4β7抗体はIgG4を含む。本明細書で使用される場合、抗体の「定常領域」には、ヒトIgG1におけるT250Q、L234A、L235A、D356E、L358M、M428L及び/又はA431Gのいずれかなどの、天然の定常領域、アロタイプ又はバリアントが含まれる。
【0029】
抗α4β7抗体の軽定常領域は、カッパ(κ)軽鎖領域又はラムダ(λ)領域であり得る。λ軽鎖領域は、既知のサブタイプ、例えば、λ1、λ2、λ3又はλ4のうちのいずれか1つであり得る。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、カッパ(κ)軽鎖領域を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当該技術分野で利用可能又は公知の任意の手段によって、任意の真核生物、原核生物又はファージのクローンを含む、単一クローンから誘導される。本開示で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え及びファージディスプレイ技術又はそれらの組合せの使用を含む、当該技術分野で公知の多種多様な技術を使用して調製され得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「キメラ」抗体という用語は、ラット又はマウス抗体などの非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列、及び典型的にはヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を指す。
【0032】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものも含むことができる。
【0033】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、又は1つ以上のヒト免疫グロブリンについてのトランスジェニック動物から単離され、内因性の機能的免疫グロブリンを発現しない抗体を含む。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法を含む、当該技術分野で公知の様々な方法によって作製され得る。
【0034】
本開示の抗α4β7抗体は、全長(インタクトな)抗体分子を含む。
【0035】
抗α4β7抗体は、少なくとも1つの定常領域により媒介される生物学的エフェクター機能を変化させるために、その配列が修飾された抗体であり得る。例えば、一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、未修飾抗体と比較して少なくとも1つの定常領域により媒介される生物学的エフェクター機能を低減させるために修飾され得、例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa及び/又はFcγRIIIbなどのFc受容体(FcγR)の1つ以上への結合が低減され得る。FcγR結合は、FcγR相互作用に必要な特定の領域における抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることによって低減され得る(例えば、Canfield及びMorrison、1991、J. Exp. Med. 173:1483~1491;並びにLundら、1991、J. Immunol. 147:2657~2662を参照のこと)。抗体のFcγR結合能力の低減は、オプソニン作用、食作用及び抗原依存性細胞傷害性(「ADCC」)などのFcγR相互作用に依存する他のエフェクター機能も低減させることができる。
【0036】
本明細書に記載されている抗α4β7抗体は、例えば、FcγR相互作用を増強するために、未修飾抗体と比較して、少なくとも1つの定常領域により媒介される生物学的エフェクター機能を獲得又は改善するように修飾された抗体を含む(例えば、米国特許出願第2006/0134709号を参照のこと)。例えば、本開示の抗α4β7抗体は、対応する未修飾定常領域よりも高い親和性で、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa及び/又はFcγRIIIbに結合する定常領域を有することができる。
【0037】
抗α4β7抗体のFcγR結合及び/又はADCCエフェクター機能を修飾することができるさらなる置換は、Fc領域におけるK322A置換又はL234A及びL235A二重置換を含む。例えば、Hezarehら、J. Virol.、75(24):12161~12168(2001)を参照のこと。
【0038】
本開示の抗α4β7抗体は、対応する野生型CH2又はFc領域の結合と比較して、FcγRIIbへの結合を増加させる及び/又はFcγRIIIaへの結合を低減させるアミノ酸置換を含む修飾(又はバリアント)CH2ドメイン又はFcドメイン全体を含むことができる。バリアントCH2又はバリアントFcドメインは、263位、266位、273位及び305位に1つ以上の置換を含むことができる。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、野生型CH2ドメインに対して、V263L、V266L、V273C、V273E、V273F、V273L、V273M、V273S、V273Y、V305K及びV305Wから選択される1つ以上の置換を含む。
【0039】
対応する野生型CH2又はFc領域の結合と比較して、FcγRIIbへの結合の増加及び/又はFcγRIIIaへの結合の低減をもたらすことができるバリアントCH2又はバリアントFcドメインの他の例には、ヒトIgG1におけるS267E又はS267E/L328Fなどの、Vonderheideら、Clin. Cancer Res.、19(5)、1035~1043(2013)に見出されるものが含まれる。
【0040】
ヒトIgG4定常領域を含む抗α4β7抗体は、Fabアーム交換を阻止することが報告されている、S228P突然変異を含むことができる。例えば、Silva,JPら、Journal of Biological Chemistry、290(9)、5462~5469(2015)を参照のこと。
【0041】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、例えば、FcRn相互作用に関与する特定の領域における免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることによって、胎児Fc受容体、FcRnに対するそれらの結合親和性を増加又は減少させる修飾を含む。特定の実施形態では、IgGクラスの抗α4β7抗体は、重鎖定常領域のアミノ酸残基250、314及び428のうちの少なくとも1つが単独で又はそれらの任意の組合せで置換されるように突然変異される。250位については、置換アミノ酸残基は、限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシンを含む、スレオニン以外の任意のアミノ酸残基であり得る。314位については、置換アミノ酸残基は、限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシンを含む、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり得る。428位については、置換アミノ酸残基は、限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシンを含む、メチオニン以外の任意のアミノ酸残基であり得る。Fcエフェクター機能を修飾することが知られている例示的な置換は、Fc置換T250Qと組み合わせて生じ得る、Fc置換M428Lである。適切なアミノ酸置換の追加の具体的な組合せは、米国特許第7,217,797号の表1に特定されている。このような突然変異は、FcRnへの結合を増加させ、抗体を分解から保護し、その半減期を延長させる。
【0042】
ヒトα4β7に対して高い親和性を有する抗α4β7抗体は、治療及び診断用途に望ましい場合がある。したがって、本開示は、ヒトα4β7に対して高い結合親和性を有する抗体を企図する。具体的な実施形態では、抗α4β7抗体は、少なくとも約100nMの親和性でヒトα4β7に結合するが、より高い親和性、例えば、少なくとも約90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.1nM、0.01nM又はさらにそれ以上を示し得る。一部の実施形態では、抗体は、約1pM~約10nM、約100pM~約10nM、約100pM~約1nMの範囲の親和性又は前述の値のいずれかの間の範囲の親和性でヒトα4β7に結合する。
【0043】
ヒトα4β7に対する抗α4β7抗体の親和性は、例えば、限定の目的ではないが、ELISA、等温滴定熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴又は蛍光偏光アッセイなどの、当該技術分野で周知である又は本明細書に記載されている技術を使用して決定され得る。
【0044】
抗α4β7抗体は、一般に、本明細書において(N→Cの順で)、VH CDR#1、VH CDR#2及びVH CDR#3と称される3つの相補性決定領域(「CDR」)を有する可変領域(VH)を含む重鎖、並びに本明細書において(N→Cの順で)、VL CDR#1、VL CDR#2及びVL CDR#3と称される3つの相補性決定領域を有する可変領域(VL)を含む軽鎖を含む。例示的なCDRのアミノ酸配列並びに例示的な抗α4β7の重鎖及び軽鎖のVH及びVL領域のアミノ酸配列が本明細書に提供されている。抗α4β7抗体の具体的な実施形態には、これらの例示的なCDR並びに/又はVH及び/若しくはVL配列、並びにこのような抗体とヒトα4β7の結合について競合する抗体が含まれる。
【0045】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、ヒトへの投与に適している。具体的な実施形態では、抗α4β7抗体は、ヒト化されている。
【0046】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体のCDRのアミノ酸配列は、表4の配列から選択される。
【0047】
【0048】
上記のCDRを有する抗α4β7抗体の具体的な例示的な実施形態は、本明細書に記載されている。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号12、13、14、15、16及び17のCDRを有する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号32、33、34、35、36及び37のCDRを有する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号42、43、44、45、46及び47のCDRを有する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号52、53、54、55、56及び57のCDRを有する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号62、63、64、65、66及び67のCDRを有する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号72、73、74、75、76及び77のCDRを有する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列番号82、83、84、85、86及び87のCDRを有する。
【0049】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、表5の配列から選択されるVH鎖及びVL鎖を含む:
【0050】
【0051】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号10に対応するVH鎖、及び配列が配列番号11に対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号20又は22~23のいずれか1つに対応するVH鎖、及び配列が配列番号25又は27~28のいずれか1つに対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号21のバリアントに対応するVH鎖、及び配列が配列番号26のバリアントに対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号40に対応するVH鎖、及び配列が配列番号41に対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号50に対応するVH鎖、及び配列が配列番号51に対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号60に対応するVH鎖、及び配列が配列番号61に対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号70に対応するVH鎖、及び配列が配列番号71に対応するVL鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号80に対応するVH鎖、及び配列が配列番号81に対応するVL鎖を含む。
【0052】
当業者であれば、本明細書に記載されている抗α4β7抗体におけるVH又はVL配列のある特定の突然変異は、本開示の範囲内の抗α4β7抗体をもたらすことを理解する。突然変異は、有意な抗α4β7活性を保持しながら、本明細書に開示されているVH又はVL配列からのアミノ酸置換、付加又は欠失を含むことができる。したがって、一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、表5に示されている抗体のいずれか1つのVH配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するVH配列を含む。抗α4β7抗体は、表5に示されている抗体のいずれか1つのVH配列と比較して、最大で8個まで、最大で7個まで、最大で6個まで、最大で5個まで、最大で4個まで、最大で3個まで又は最大で2個までの突然変異を有するVH配列を含むことができる。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、表5に示されている抗体のいずれか1つのVH配列と比較して、5個以下、4個以下、3個以下又は2個以下の突然変異を有するVH配列を含むことができる。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、単一のアミノ酸置換を有するVH配列を含む。一部の実施形態では、VH配列における突然変異は、VH CDR#1、VH CDR#2又はVH CDR#3に位置する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、表5に示されている抗体のいずれか1つのVL配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するVL配列を含む。抗α4β7抗体は、表5に示されている抗体のいずれか1つのVL配列と比較して、最大で8個まで、最大で7個まで、最大で6個まで、最大で5個まで、最大で4個まで、最大で3個まで又は最大で2個までの突然変異を有するVL配列を含むことができる。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、表5に示されている抗体のいずれか1つのVL配列と比較して、5個以下、4個以下、3個以下又は2個以下の突然変異を有するVL配列を含むことができる。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、単一のアミノ酸置換を有するVL配列を含む。一部の実施形態では、VL配列における突然変異は、VL CDR#1、VL CDR#2又はVL CDR#3に位置する。
【0053】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、表6の配列から選択される重鎖アミノ酸配列及び/又は軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0054】
【0055】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号90に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号92に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号94に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号96に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号98に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。
【0056】
抗体重鎖のC末端上の1つ以上(例えば、1、2、3又はそれ以上)のアミノ酸残基の切断などの、抗α4β7抗体の配列に対する翻訳後修飾を行って、切断型を生成することができる。
【0057】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号91に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号93に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号95に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号97に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、配列が配列番号99に対応する重鎖、及び配列が配列番号100に対応する軽鎖を含む。
【0058】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、インビトロアッセイにおいて、ヒトα4β7への結合について参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、ヒトα4β7を発現する細胞上でヒトα4β7への結合について競合する。参照抗体は、本明細書に記載されている抗α4β7抗体のいずれかであり得る。一部の実施形態では、参照抗体は、表4~6に提供されている抗体である。一部の実施形態では、参照抗体は、表8に提供されている抗体である。具体的な実施形態では、参照抗体は、抗ヒトα4β7抗体由来のアミノ酸配列を使用して生成された研究グレードの抗体、又はそれと等価のアミノ酸配列を有する抗体、例えば、ベドリズマブから選択される。
【0059】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、1つのα4(配列番号1~2)及び1つのβ7(配列番号3~4)のヒトα4β7ヘテロ二量体に拮抗する、例えば、それを阻害する。α4β7受容体拮抗作用は、多くの機構によって、例えば、ヒトMAdCAM-1(配列番号5)又はヒトVCAM-1(配列番号6)などの、そのリガンドの少なくとも1つによるα4β7の結合を阻害することによって発生し得る。
【0060】
本明細書に記載されている抗α4β7抗体は、ヒトα4β7に結合する。他の種、例えば、サル、例えば、カニクイザル由来のα4β7への結合に対する抗体の交差反応は、生物活性についてサル動物モデルにおいて試験を行うことができるなどの利点を提供することができる。このような動物モデル試験は、抗α4β7抗体をスクリーニングして、有効性に関連する特性、例えば、好ましい薬物動態又は安全性に関連する特性、例えば、肝毒性の減少を選択するために使用され得る。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、カニクイザルα4β7及びヒトα4β7に結合する。
【0061】
競合のためのアッセイには、限定されないが、放射性物質標識イムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチELISA、蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイ及び表面プラズモン共鳴アッセイが含まれる。
【0062】
参照抗体と試験抗体との間の抗体競合アッセイを実施する際に(種又はアイソタイプに関係なく)、最初に、フルオロフォア、ビオチン又は酵素(又はさらに放射性)標識などの検出可能な標識により参照を標識して、その後の同定を可能にすることができる。この場合、ヒトα4β7を発現する細胞は、非標識試験抗体とインキュベートされ、標識された参照抗体が加えられ、結合した標識の強度が測定される。試験抗体が、重複するエピトープに結合することによって標識された参照抗体と競合する場合、強度は、試験抗体を用いずに行われた対照反応と比較して減少する。
【0063】
このアッセイの具体的な実施形態では、アッセイ条件(例えば、特定の細胞密度)下で最大結合の80%(「conc80%」)をもたらす標識された参照抗体の濃度が最初に決定され、競合アッセイが、10×conc80%の標識されていない試験抗体及びconc80%の標識された参照抗体を用いて行われる。
【0064】
阻害は、以下の式に従って計算される阻害定数又はKiとして表すことができる:
Ki=IC50/(1+[参照Ab濃度]/Kd)、
式中、IC50は、参照抗体の結合が50%減少する試験抗体の濃度であり、Kdは、参照抗体の解離定数であり、ヒトα4β7に対するその親和性の尺度である。本明細書に開示されている抗α4β7抗体と競合する抗体は、本明細書に記載されているアッセイ条件下で10pM~10nMのKiを有することができる。
【0065】
様々な実施形態では、試験抗体は、使用される特定のアッセイ条件下で最大結合の80%である参照抗体濃度において、及び参照抗体濃度よりも10倍高い試験抗体濃度において、参照抗体の結合を、少なくとも約20%以上、例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%若しくはさらにそれ以上、又は前述の値のいずれかの間の範囲のパーセンテージ減少させる場合、参照抗体と競合するとみなされる。
【0066】
本開示の別の態様は、ヒトα4β7に特異的に結合することができる抗α4β7抗体結合断片を含む。一部の実施形態では、これらの抗α4β7結合断片は、本明細書に開示されている抗α4β7抗体の少なくとも1つ及び最大で全てのCDRを含む。抗体結合断片の例には、限定ではなく例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、一本鎖Fv断片及び単一ドメイン断片が含まれる。
【0067】
抗α4β7抗体又はその結合断片は、例えば、Jung及びPluckthun、1997、Protein Engineering 10:9、959~966;Yazakiら、2004、Protein Eng. Des Sel. 17(5):481~9. Epub 2004年8月17日;並びに米国特許出願公開第2007/0280931号に記載されているように、そのCDRの1つ以上に挿入された1つ以上のアミノ酸を有することができる。
【0068】
6.4.抗α4β7抗体をコードするポリヌクレオチド、発現系及び抗体を作製する方法
本開示は、抗α4β7抗体についての免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子をコードするポリヌクレオチド分子、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター並びに本開示の抗α4β7抗体を産生することができる宿主細胞を包含する。
【0069】
本開示の抗α4β7抗体は、宿主細胞における免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組換え発現によって調製され得る。抗体を組換え的に発現させるために、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を担持する1つ以上の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトし、それにより、軽鎖及び重鎖が宿主細胞内で発現され、任意選択的に、宿主細胞が培養される培地内に分泌され、その培地から抗体が回収され得る。
【0070】
そのような抗α4β7抗体をコードするポリヌクレオチドを生成するために、軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするDNA断片が最初に得られる。これらのDNAは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、生殖細胞系列DNA又は軽鎖及び重鎖可変配列をコードするcDNAの増幅及び修飾によって得ることができる。
【0071】
抗α4β7抗体に関連するVH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作され得る。これらの操作において、VL又はVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域又は柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。この文脈で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2つのDNA断片が結合されることを意味することを意図する。
【0072】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3及び任意選択的にCH4)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91~3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、ある特定の実施形態では、IgG1又はIgG4である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0073】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野で公知であり(例えば、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91~3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域であり得るが、ある特定の実施形態では、カッパ定常領域である。
【0074】
本開示の抗α4β7抗体を発現させるために、上記のように得られた部分的又は全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように発現ベクターに挿入される。この文脈において、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するという意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味することを意図する。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、別個のベクターに挿入され得る又はより典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。
【0075】
抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合、平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。抗α4β7抗体に関連する軽鎖又は重鎖配列の挿入前に、発現ベクターは既に抗体定常領域配列を担持することができる。例えば、抗α4β7モノクローナル抗体に関連するVH及びVL配列を全長抗体遺伝子に変換する1つのアプローチは、それらを、既に重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をそれぞれコードしている発現ベクターに挿入することであり、それによって、VHセグメントは、ベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントは、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結される。加えて又は代替として、組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子はベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0076】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を担持する。「調節配列」という用語は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。
【0077】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子などの追加の配列を担持することができる。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする。軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態は、外因性DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために一般的に使用されている多種多様な技術、例えば、電気穿孔、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することを意図する。
【0078】
原核又は真核宿主細胞のいずれかにおいて本開示の抗体を発現させることが可能である。ある特定の実施形態では、抗体の発現は、適切に折り畳まれ、免疫学的に活性な抗体を最適に分泌する、真核細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞において実施される。本開示の組換え抗体を発現させるための例示的な哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、Kaufman及びSharp、1982、Mol. Biol. 159:601~621に記載されているDHFR選択可能マーカーとともに使用されている、Urlaub及びChasin、1980、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216~4220に記載されているDHFR- CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現又は宿主細胞が成長する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な時間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して培養培地から回収され得る。宿主細胞はまた、Fab断片又はscFv分子などの、インタクトな抗体の部分を産生するために使用され得る。上記の手順に対する変更は、本開示の範囲内であることが理解される。例えば、本開示の抗α4β7抗体の軽鎖又は重鎖のいずれか(しかし両方ではない)をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましい可能性がある。
【0079】
組換えDNA技術はまた、ヒトα4β7への結合に必要ではない軽鎖及び重鎖のいずれか又は両方をコードするDNAの一部又は全てを除去するために使用され得る。このような切断されたDNA分子から発現される分子も、本開示の抗体に包含される。
【0080】
本開示の抗α4β7抗体の組換え発現のために、本開示の2つの発現ベクター、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクター及び軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターを宿主細胞に同時トランスフェクトすることができる。2つのベクターは、同一の選択可能マーカーを含有することができる又はそれらは、別個の選択可能マーカーを各々含有することができる。代替として、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターが使用され得る。
【0081】
抗α4β7抗体の1つ以上の部分をコードするポリヌクレオチドが得られると、さらなる改変又は突然変異が、例えば、異なるCDR配列を有する抗体、Fc受容体に対する親和性が低下した抗体、又は異なるサブクラスの抗体をコードするポリヌクレオチドを生成するために、コード配列に導入され得る。
【0082】
本開示の抗α4β7抗体はまた、化学合成によって、又は無細胞プラットフォームを使用することによって産生され得る。
【0083】
6.5.抗α4β7抗体の精製
本開示のポリペプチドが、組換え発現によって産生されると、これは、タンパク質の精製のための当該技術分野で公知の任意の方法によって精製され得る。
【0084】
ポリペプチドは、単量体又は二量体として、例えば、2つのポリペプチドを含む抗α4β7抗体として精製され得る。
【0085】
単離されると、抗α4β7抗体はさらに精製され得る。
【0086】
6.6.使用方法
6.6.1.治療利益
本明細書に提供されているデータは、開示されている抗ヒトα4β7抗体が、α4β7に対する好ましい結合親和性、特異性及び効力、並びに初代免疫細胞に対する好ましい結合プロファイル、FcγR結合、並びにヒトα4β7+細胞に対するADCC及びADCP活性の欠如を示すことを実証している。これらの抗ヒトα4β7抗体は、実験室で成長させた異なるHIV株のビリオンにおけるα4β7及び患者のHIV試料からのα4β7に結合し、続いて免疫複合体を形成することが示された。これらの免疫複合体は、異なるFcγRに結合することができ、食作用によってヒト単球細胞系THP-1に取り込まれる。これらの抗体はまた、α4β7と、MadCAM-1及びHIV gp120タンパク質などのそのリガンドとの相互作用を遮断する。したがって、抗α4β7抗体、結合断片及び/又はそれらを含む医薬組成物は、HIV感染のウイルス抑制を誘導するため、又はFc依存性機構及びFab依存性機構によってHIV感染対象におけるウイルス量を減少させるために治療的に使用され得る。一部の実施形態では、HIV感染のウイルス抑制は、HIVウイルスの機能を低下させること、及び/又はHIVウイルスの複製を低下させることを含む。
【0087】
開示された抗ヒトα4β7抗体は、それを必要とする対象においてHIV感染を治療する方法に使用され得る。一部の実施形態では、この方法は、対象におけるウイルス量を減少させることを含む。一部の実施形態では、対象におけるウイルス量は、検出不可能なレベルまで減少する。一部の実施形態では、対象は、HIVに感染したヒト対象である。
【0088】
一部の実施形態では、この方法は、治療利益をもたらすために、HIV感染を有するヒト対象に、α4β7に拮抗する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、HIVビリオンに結合する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、免疫複合体を形成するために、HIV感染を有するヒト対象に、HIVビリオンにおけるα4β7に結合する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、HIVビリオンと免疫複合体を形成する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、これらの免疫複合体は、食作用によってAPCによって取り込まれる。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、α4β7と、MadCAM-1などのそのリガンド及びHIV gp120との相互作用を遮断する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、α4β7とHIV gp120との相互作用を遮断し、細胞間HIV伝播を阻害する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、MadCAM-1又はHIV gp120によって媒介されるCD4 T細胞刺激を遮断する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、MadCAM-1又はHIV gp120によって共刺激されたCD4 T細胞におけるHIV複製を抑制する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、HIV複製のウイルス抑制を誘導する抗α4β7抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、この方法は、HIV感染を有するヒト対象に、免疫媒介性のHIV抑制を誘導する抗α4β7抗体を投与することを含む。
【0089】
6.7.配列表の説明
組み込まれた配列表に開示された配列及びそれらの簡単な説明の相関関係を表7に示す。
【0090】
【実施例】
【0091】
以下の実施例は、本明細書に記載される抗体及び結合断片の例示的実施形態のある特定の特色及び特性を強調しているが、限定ではなく説明目的で提供される。
【0092】
抗体
Ab-h1.9d-WT、陽性対照及びアイソタイプコントロールを含む実施例を通して使用される抗体は表8に収載されている。
【0093】
【0094】
統計
半数阻害濃度(IC50)及び半数効果濃度(EC50)値は、グラフパッドプリズムを使用して濃度応答曲線の非線形回帰解析により決定した。比較の有意性は、マン・ホイットニー両側検定により決定した。注記されたものを除いて、すべての値は、少なくとも3つの独立した実験結果の平均又は標準偏差であった。
【0095】
[実施例1]
7.1.抗ヒトα4β7抗体の産生
7.1.1.ハイブリドーマスクリーニング
ハイブリドーマベースの技法を利用して、マウス抗ヒトα4β7抗体の最初のパネルを産生した。マウスは、アジュバンドに加えてヒトα4β7を発現するHEK293、CHO-K1又はBaF3組換え細胞を用いて免疫した。候補ハイブリドーマ由来抗体の選択は、表9の基準に基づいた。
【0096】
【0097】
機能的ハイブリドーマmAbのパネルはこの選別から同定され、すべての候補が好ましいプロファイルを示した。しかし、齧歯動物交差反応性を有するものはなく、これは、1)ヒトα4/β7がカニクイザルα4/β7に対し96%/97%アミノ酸配列相同性を有するが、ラット及びマウスα4/β7に対しては84%/85%配列相同性しかないこと;及び2)すべての選択された機能的ハイブリドーマmAbはα4β7に対し高度に選択的であり、α4β7ヘテロ二量体上の立体構造的エピトープに結合しうることにより説明しうる。
【0098】
7.1.2.抗体特性評価
200~300mlローラーボトル培養及びプロテインA親和性精製による小規模の抗体産生は、サブクローニングされた安定なハイブリドーマ細胞系で実施した。mAbの純度は、SDS-PAGE及び質量分析により確かめられた。精製された抗体は、アイソフォーム及び種交差反応性を決定するため、結合及び機能アッセイを通じて特性評価した。
【0099】
結合スクリーニング
精製された抗体は、BaF3-hα4β7、BaF3-hαEβ7、BaF3-cαEβ7、BaF3、CHOK1-cα4β7、CHOK1-mα4β7及びCHOK1-hα4β1細胞系を1μg/mlの濃度で用いてFACSによりアイソフォーム及び種交差反応性について特性評価した。例示的mAb Ab-m1のFACSプロファイルを含む、FACSプロファイルは表10にまとめられている。
【0100】
【0101】
機能的検証
精製された抗体は、HuT78細胞におけるMadCAM-1への接着アッセイにより特性評価した。Ab-m1は、MadCAM-1アッセイにおいて潜在的な遮断効力を示し、したがって、機能的に検証した。Ab-m1についての3つの独立した実験のデータは表11にまとめられている。代表的なデータは
図1に示されている。
【0102】
【0103】
機能的特性評価
Ab-m1のさらなる機能的特性評価は、カニクイザル交差反応性について調べるため、CHOK1-cα4β7においてMadCAM-1への接着アッセイを使用して実施した。CHOK1-cα4β7での接着アッセイデータは上の表11にまとめられている。代表的なデータは
図2に示されている。
【0104】
ヒトα4β7へのAb-m1結合の親和性を決定するため、BaF3-hα4β7においてFACSベースの滴定を実施した。EC50が決定され、表12にまとめられている。
【0105】
【0106】
エピトープビニングは、表13に示される50×過剰な非標識Abの存在下でAlexa488フルオロフォアにコンジュゲートされたコンパレータ抗体を使用して競合的FACSにより実施した。Ab-m1は、非標識AbによるAlexa488標識Abの結合阻害のパーセンテージに基づいてベドリズマブ(Ab-Vedo)様グループに属すると特性評価した(表13)。
【0107】
【0108】
候補プロファイリング
ヒトα4β7へのmAb結合の親和性は、一次ヒトCD4+メモリーT細胞において確かめた。Ab-mlは、一次ヒトCD4+メモリーT細胞へのヒトMadCAM-1結合を高効力(IC
50=63.7pM、最大阻害100%、
図3)で遮断することもできた。
【0109】
7.1.3.VH/VLシーケンシング、キメラ抗体産生及び特性評価
ハイブリドーマクローンは回収され、完全ハイブリドーマ培養培地(10%FBSを有するDMEM)において増大した。細胞は、室温で5分間、1000rpmでの遠心分離により収集し、PBS、pH7.4を用いて2回洗浄した。RNAは、Trizolを用いて細胞ペレット(おおよそ1×107細胞)から抽出した。
【0110】
抗体VH及びVL断片は、マウスIgプライマーセット(Novagen、69831-3)を使用してRT-PCRにより、そのハイブリドーマ全RNAから別々に増幅した。適切なサイズの陽性PCR産物は、VH及びVL領域のシーケンシング及び同定のためにTベクターに挿入した(表14)。完全長抗体配列は、VH/VL配列と理論的定常領域配列との組合せを使用して構築した。
【0111】
プライマー設計後、VH/VLは個々に増幅させ、発現ベクター中にクローニングして、相同組換えを経てキメラ抗体構築物を作製した。VH及びVLにおけるCDRのアミノ酸配列は表14に示されている。
【0112】
【0113】
キメラ抗体は、HEK293細胞において一過性トランスフェクションにより産生した。発現後、タンパク質は精製された。キメラ抗体についての高パーセンテージ単量体はSEC-HPLCにより確かめた。
【0114】
Ab-c1は、Ab-m1の可変領域及びヒトIgG1/κ定常領域を有するキメラ抗体である。ヒト一次CD4+CD45RO+T細胞へのAb-c1結合の親和性はFACSにより決定され、1つの代表的なヒト全血から、3.9pMの結合EC
50値であった(
図4及び表15に示される)。MadCAM-1へのα4β7インテグリン結合を遮断するAb-c1の能力は、HuT78細胞及びCHOK1-cα4β7細胞でも評価した(表15)。
【0115】
【0116】
精製されたキメラ抗体Ab-c1は、その結合特異性及びカニクイザル交差反応性を確かめるため、BaF3-hα4β7、BaF3-hαEβ7、BaF3-cαEβ7、BaF3、CHOK1-cα4β7及びCHOK1-hα4β1細胞系を1つの濃度(1μg/ml)で用いてFACSによりさらに特性評価した。試験したキメラのFACSプロファイルは
図16にまとめられている。
【0117】
【0118】
HuT78を使用して、キメラAb-c1が、hα4β7インテグリンへのMadCAM-1媒介接着を遮断することができるかどうかを調べた。表17に示されるように、Ab-c1は、MadCAM-1へのHuT78細胞接着を阻害する能力を示している。
【0119】
CHOK1-cα4β7を使用して、キメラ抗体が、cα4β7へのMadCAM-1媒介接着を阻害できるかどうかを調べた。表17に示されるように、Ab-c1は、MadCAM-1へのCHOK1-cα4β7細胞接着を阻害する能力を示している。
【0120】
【0121】
7.1.4.ヒト化
抗体Ab-m1は、HuT78細胞とヒト一次CD4+Tメモリー細胞の両方での結合及び効力、カニクイザル交差反応性、CDR配列多様性、結合選択性、配列ライアビリティー(すなわち、グリコシル化)及びエピトープ群に基づいて選択された。指定の特徴については表18を参照のこと。
【0122】
【0123】
ヒト化抗体は、表19に従ってVH及びVL断片を組み立て、ヒトIgG1及びカッパ定常領域を組み込むことから設計された。
【0124】
【0125】
これらのヒト化抗α4β7mAbは産生され、十分な発現を有し、SECにより>95%単量体を示した。同一性はMSにより確かめられ、ヒト化抗α4β7の安定性はDSCにより測定された。ヒト化Ab-h1の4種は、MadCAM-1媒介HuT78細胞接着を遮断するその能力について評価され、そのすべてが、1桁の数字又は低い2桁のpM範囲のIC50値を有する強い効力を示した(表20)。
【0126】
【0127】
7.1.5.Ab-h1.9のライアビリティー操作
抗体Ab-h1.9は、脱アミド化、異性化、酸化、グリコシル化、加水分解及び切断に関して減少した化学的ライアビリティーを有するバリアントVH及びVL鎖を産生するために選択された。
【0128】
Ab-h1.9VHの配列は:
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFNIKNTYMHWVRQAPGQGLEWIGRIDPANGHTEYAPKFQGRVTITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCYYVDSWGQGTTVTVSS(配列番号23)であり、
Ab-h1.9VLの配列は:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQGISDNIGWLQQKPGKSFKLLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPWTFGGGTKVEIKR(配列番号28)であり、
選択されたライアビリティー突然変異部位は下線が引かれ、CDRは太字である。ライアビリティーはVH-CDR2、VH-CDR3及びVL-CDR1に存在している。
【0129】
ビオチン化ヒトα4β7細胞外ドメインタンパク質を使用する2ラウンドのライアビリティーフリー抗α4β7クローン選択が実施された。それぞれのライブラリーからのコロニーは配列決定され、いずれかのCDRに追加のライアビリティーを有するコロニーは取り除かれた。それぞれのライブラリーからのクローンは、親Ab-h1.9と比べて、酵母上の表面α4β7抗原への結合についてFACSによりスクリーニングした。
【0130】
親と類似した形で結合すると同定されたライアビリティー操作クローン(
図5)は表21に提示されている。これらのライアビリティー操作クローンはその可変領域と一緒にIgGフォーマットに変換された。
【0131】
【0132】
Ab-h1.9eを通したライアビリティー操作mAb Ab-h1.9aは、FACSによりα4β7発現HuT78細胞への結合について試験した。これらの抗体は結合活性を保持しており、253pM~702pMに及ぶEC50値を有していた。VH-CDR3の大部分(例えば、CDR中のアミノ酸残基の3分の1)がライアビリティー操作mAbでは突然変異していたことを考慮すると、α4β7結合のこの保持は驚きであった。Ab-h1.9dは、最も強力な結合親和性(253pM)を示し、良好な薬物様特性を見せた。
【0133】
ヒトIgG1 Fc LALAフォーマットにおける抗体Ab-h1.9(a)~(e)のタンパク質産生特性も試験し、Ab-h1.9dが優れた特性を示した。
【0134】
7.1.6.抗体
例示的Ab-h1.9d由来IgG1抗体変換は表22に示されている。Ab-h1.9d-HuIgG1は、カノニカルヒト重鎖定常領域を特徴とする配列番号90のHC、及びカノニカルヒトカッパ軽鎖定常領域を特徴とする配列番号100のLCを有するヒトIgG1/カッパ型抗体である。Ab-h1.9d-HuIgG1は、配列番号91のC末端リシン切断型HCも有する場合がある。Ab-h1.9d-WTは、バリアントCH3置換D356E及びL358Mを特徴とする配列番号92のHC、及び配列番号100のLCを有するIgG1/カッパ型抗体である。Ab-h1.9d-WTは、配列番号93のC末端リシン切断型HCも有する場合がある。Ab-h1.9d-LALAは、バリアントCH2置換L234A及びL235A及びバリアントCH3置換D356E及びL358Mを特徴とする配列番号94のHC、並びに配列番号100のLCを有するIgG1/カッパ型抗体である。Ab-h1.9d-LALAは、配列番号95のC末端リシン切断型HCも有する場合がある。Ab-h1.9d-QLは、バリアントCH2置換T250Q、及びバリアントCH3置換D356E、L358M及びM428Lを特徴とする配列番号96のHC、並びに配列番号100のLCを有するIgG1/カッパ型抗体である。Ab-h1.9d-QLは、配列番号97のC末端リシン切断型HCも有する場合がある。Ab-h1.9d-LALA/QLは、バリアントCH2置換T250Q、及びバリアントCH3置換L234A、L235A、D356E、L358M及びM428Lを特徴とする配列番号98のHC、並びに配列番号100のLCを有するIgG1/カッパ型抗体である。Ab-h1.9d-LALA/QLは、配列番号99のC末端リシン切断型HCも有する場合がある。
【0135】
【0136】
産生後、Ab-h1.9d-WTは、抗ヒトα4β7抗体では優れた特性を示し、高特異性(α4β7への低結合)及び望ましいPK/PD(低ADA)力価及び高プラズマ曝露)を実証した。
【0137】
[実施例2]
7.2.健康なドナー又はHIV+個人由来のCD4+及びCD8+T細胞サブセット上でのα4β7発現
7.2.1.材料及び方法
急性HIV感染の間、α4β7発現CD4+T細胞は優先的に感染し、したがって、枯渇する(Sivroら、Sci Transl Med 2018年)。末梢α4β7発現がcARTを受けているHIV+個人において時間とともに回復するかどうかを調べるため、10人の健康な(HIV-)ドナー及び45人のcARTを受けているHIV+個人(年齢:26~66歳、中央値42歳;HIV感染期間:1~36歳、中央値12歳)のPBMC由来のCD4+及びCD8+T細胞サブセット上でのα4β7のパーセンテージ及び発現レベルを、CD3、CD4、CD8、CD28、CD45RO、CCR7及びα4β7についての抗体のカクテルを使用してフローサイトメトリー分析により比較した。CD4+及びCD8+T細胞集団におけるα4β7のパーセンテージ(%)と発現レベル(MESF)の両方を分析した。CD4+及びCD8+T細胞サブセットは、CD28+CD45RO-ナイーブ細胞、CD28-CD45RO-ターミナルエフェクター細胞、CD28-CD45RO+エフェクターメモリー細胞、CD28+CD45RO+CCR7+セントラルメモリー細胞及びCD28+CD45RO+CCR7-トランジエントメモリー細胞と定義された。
【0138】
7.2.2.結果
HIV-及びcARTを受けているHIV+個人の両方で、α4β7を発現している細胞のパーセンテージはメモリーT細胞サブセットと比べるとナイーブCD4+又はCD8+T細胞ではより高く、α4β7発現レベル(MESFにより測定した場合)は、ナイーブ細胞よりもセントラルメモリー、トランジエントメモリー及びエフェクターメモリー細胞上のほうが高かった(
図6A~6F)。末梢CD4+とCD8+T細胞の両方が、HIV-及びHIV+個人において類似するレベルのα4β7を発現した(MESF測定)。この分析は、cARTを受けているHIV+個人間の末梢CD4+又はCD8+T細胞上でのα4β7発現は、高度に変わりやすいが、非感染個人の末梢CD4+又はCD8+T細胞上でのα4β7発現と違ってはいないことを示した。これらの結果は、HIV+個人間の末梢CD4+T細胞でのα4β7発現が、出芽HIVビリオン中へのα4β7の組込みを支援できることを示唆していた。
【0139】
[実施例3]
7.3.Ab-h1.9d-WTでのHIVビリオン補足
7.3.1.材料及び方法
α4β7がHIVビリオンのエンベロープに存在することを確かめるため、及びAb-h1.9d-WTがHIVビリオンのエンベロープ中に組み込まれたα4β7に結合して免疫複合体を形成することができるかどうかを試験するため、Ab-h1.9d-WTを、実験室生育HIV-1株又は公表された方法(Guzzoら、Sci Immunol 2017年)に従ってウイルス血症HIV+個人由来の試料を使用してビリオン補足アッセイ(ビーズフォーマット)において先ず試験した。実験室生育HIV-1株では、異なる群、遺伝子サブタイプ、及び共受容体使用を表す6種の株(BCF06、CMU08、NL4-3、RU507、YBF30及びIIIB)(表23)は、細胞においてα4βの発現を誘導するレチノイン酸(RA)の存在下、活性化された一次ヒトPBMC[例えば、OKT3抗体又はフィトヘマグルチニン(PHA)により活性化される]で作製した。プロテインGコンジュゲート免疫磁気ビーズ(Dynabeads、Thermo Fisher)は、適切な抗体を装備され、次にそれぞれのHIV株のウイルスストック(約2ng p24gag/反応)と一緒にインキュベートした。インキュベーション後、装備されたビーズは洗浄されて未結合ウイルス粒子を取り除き、それに続いてTriton X-100で処置して、p24gag定量化のため補足されたビリオンを溶解した。HIV患者の試料では、試料のウイルス力価(コピー/mL)は、COBAS Taqman 2.0アッセイにより決定した。10μgの適切な抗体を装備されたプロテインGコンジュゲート免疫磁気ビーズを、400μLの患者血清と一緒に2時間インキュベートした。次に、ビーズを洗浄して未結合ウイルス粒子を取り除き、結合したビリオンのRNAは引き続いてQiagenのウイルスRNA抽出キットを製造業者の説明書によって使用して抽出した。患者の試料から補足されたビリオンのコピー数は、引き続いて、HIVサブタイプBではLTR-gagにおける保存された領域を標的にするプライマー及びプローブを使用してデジタルドロプレットPCRにより定量化した。
【0140】
HIVビリオンを補足するための抗体のEC50値を決定するため、Ab-h1.9d-WTを、96ウェルプレーフォーマットに改造されたビリオン補足アッセイにおいて試験した。段階希釈された抗体を予洗されたPierceTMタンパク質G被覆プレート(Thermo Fisher)に添加した。インキュベーション後、プレートを洗浄して未結合抗体を取り除いた。それぞれのHIV株のウイルスストック(おおよそ2ng p24 gag)をそれぞれのウェルに添加してインキュベートした。プレートを洗浄して未結合ウイルス粒子を取り除き、次に、Triton X-100で処置して、p24 gag定量化のために補足されたビリオンを溶解した。HIV p24 gagは、高感度AlphaLISA p24 gag検出キット(Perkin Elmer)により検出した。
【0141】
7.3.2.結果
Ab-h1.9d-WTは、臨床株であれ実験室適応株であれ、補足されたビリオン中のウイルスp24 gagタンパク質により示されるように、試験された6種の実験室生育HIV株すべてからビリオンを補足することができた(
図7A~7F)。補足されたビリオン由来のp24 gagタンパク質の量は、アッセイにおいて使用された抗体濃度(5及び15nM)への用量応答を実証した。陰性対照抗体と反応した試料と比べてAb-h1.9d-WTと反応した試料中のHIV RNAコピー数の数が多いことにより示されるように(
図7G-2)、Ab-h1.9d-WTは、HIV-1患者の試料からもビリオンを補足することができた(
図7G-1に示されるウイルス入力)。
【0142】
Ab-h1.9d-WTは、HIVビリオンを補足するためのそのEC
50値を決定するため、次に96ウェルプレーフォーマットに適合されたビリオン補足アッセイにおいて試験した。EC
50値は試験されたすべてのウイルスについて類似しており、0.12nM(0.019μg/mL)~0.25nM(0.038μg/mL)に及んだ(表23)。同じパネルのウイルスに対して試験された場合、Ab-VedoはHIVビリオンを補足するのにAb-h1.9d-WTほど強力ではなく、EC
50値はそれぞれ個々のウイルスについてAb-h1.9d-WTのEC
50値の約2~3倍であった(表23)。HIV IIIB株は、ビーズフォーマットアッセイを使用してAb-h1.9d-WT(
図7F)及びAb-Vedo(データは示さず)により補足することができたが、そのEC
50値はウイルスストックの低力価のせいでプレートフォーマットアッセイにより決めることはできなかった。
【0143】
【0144】
まとめると、これらのデータにより、試験されたすべての実験室生育HIV株及びHIV-1患者の試料のビリオンにはα4β7が存在することが確かめられ、Ab-h1.9d-WTが、耐久性のあるHIVウイルス制御のための提唱された「予防接種効果」の誘導に必要な一連のステップの第一歩である、免疫複合体を形成するHIVビリオン上のα4β7への結合ではAb-Vedoよりも強力であることが実証された。
【0145】
Ab-h1.9d-WTは、試験されたすべてのHIV株及びHIV-1患者の試料のビリオンのエンベロープ上のα4β7に結合できる強力な抗α4β7抗体である。
【0146】
[実施例4]
7.4.Ab-h1.9d-WTとHIVビリオンの免疫複合体のFcγRへの結合
7.4.1.材料及び方法
Ab-h1.9d-WTとHIVビリオンにより形成される免疫複合体がin vitroでFcγRに結合できるかどうかを試験するため、適切な抗体を先ずHIV NL4-3ウイルス(α4β7の発現を誘導するようにRAの存在下で活性化されたヒトPBMCにおいて調製された)と混合して免疫複合体を形成させ、この複合体を、引き続いて、ニッケル被覆プレート上に固定化されたHisタグ付きFcγR[FcγRI及びFcγRIIIa(V158)では、表32に示されるように、Ab-h1.9d-WTに対して比較的高い親和性を有する]又は検出感度を高めるためニュートラアビジン被覆プレート上に固定化されたビオチン化FcγR[FcγRIIa(H131又はR131)及びFcγRIIIa(F158)では、表32に示されるように、Ab-h1.9d-WTに対して比較的低い親和性を有する]と一緒にインキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄してFcγRに結合しなかった免疫複合体を取り除き、次に、溶解バッファーで処置して、補足された免疫複合体を溶解して、p24 gag定量化のためウイルスタンパク質を放出した。
【0147】
7.4.2.結果
HIVビリオンとWT Fcドメインを有するAb-h1.9d-WTにより形成される免疫複合体は、FcγRに結合しているタンパク質複合体中のHIV p24カプシドタンパク質の存在により示される異なるFcγRに結合することができた(
図8A~8E)。HIVビリオン単独ではFcγRにも(データは示さず)、HIVビリオンとFcγRへのその結合を有意に減少させるそのFcドメイン中に操作されたLALA突然変異を有すること以外Ab-h1.9d-WTと同一の抗体であるAb-h1.9d-LALAにより形成される免疫複合体にも結合しなかった(
図8A~8E)。さらに、HIVビリオンとAb-Vedoにより形成される免疫複合体は、FcγRへの最小結合を示した(
図8A~8E)。これは、Ab-VedoのFcドメイン中の操作された突然変異のせいで、異なるFcγRに対するAb-Vedoの結合親和性がAb-h1.9d-WTよりも有意に低いことと一致している。ヒトFcγRIIa(H131又はR131)及びFcγRIIIa(F158、F176としても知られる)に対するAb-h1.9d-WTの結合親和性がFcγRI及びFcγRIIIa(V158、V176としても知られる)よりも低いせいで(
図19A)、ニッケルプレート上に固定化された対応するHisタグ付きFcγRを使用する代わりに、これらのFcγRによるAb-h1.9d-WTの免疫複合体の補足を増強するため、ビオチン化FcγRIIa(H131又はR131)及びFcγRIIIa(F158)は、ニュートラアビジン被覆プレート上に固定化された。
【0148】
Ab-h1.9d-WTとHIVビリオンにより形成される免疫複合体は、FcγRIIa(ADCPを担当している)を含む異なるFcγRに結合できた。これは、複合体がAPCにより取り込まれてHIV制御のための提唱された「予防接種効果」を誘導することを可能にすると考えられるステップである。
【0149】
[実施例5]
7.5.Ab-h1.9d-WTはTHP-1細胞におけるα4β7被覆ビーズのFc依存性取込みを媒介する
7.5.1.材料及び方法
細胞培養
THP-1細胞は、10%FBS(Sigma)を補充されたRPMI培地(Gibco)において37℃、5%CO2で培養した。細胞は2日又は3日ごとに継代され、500,000~1,000,000細胞/mlの密度で維持した。
【0150】
ビーズ調製
組換えヒトα4β7タンパク質(R&D systems)は、3.5kDa MWCO透析装置(Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用して1×PBS中4℃で一晩透析した。こうして得られたα4β7は、次に、4℃で2時間、100×モル過剰NHS-ビオチン(Thermo Fisher Scientific Inc.)でビオチン化した。過剰なビオチンは、4℃で一晩透析により取り除いた。α4β7被覆ビーズでは、ニュートラアビジン標識蛍光ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.)は、4℃で1~24時間、ビオチン化α4β7と一緒にインキュベートした。ビーズ-タンパク質コンジュゲーション反応は、別段述べられなければ、1mlのストックビーズ当たり2mgのα4β7タンパク質の比で起きた。タンパク質コンジュゲートビーズは、1%BSAを含有する1×PBS(Sigma)で2回洗浄し、次に、使用に先立って100×希釈した。ビーズへのタンパク質のコンジュゲーションの成功は、抗α4β7をアイソタイプコントロール条件と比較する食作用アッセイにおいて確かめた。
【0151】
食作用アッセイ
タンパク質被覆ビーズ及びTHP-1細胞を使用する食作用アッセイは、以前記載された研究(Ackermanら、2011年)から改作した。アッセイは96ウェルプレートで実施した。免疫複合体は、10μlの調製したα4β7被覆ビーズを10μlの示された抗体(10μg/ml)と組み合わせることにより形成した。これらは37℃、5%CO2で1~2時間インキュベートした。THP-1細胞(100,000/ウェル)は、次に、最終体積200μlで、示された時間免疫複合体と一緒にインキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞は、固定化可能なlive/dead染色(ThermoFisher)で染色し、続いてFACSバッファーで洗浄し、固定化した。得られた細胞に関するデータは、BD製のLSR Fortessa X20を使用して収集した。蛍光ビーズ及びlive/dead染色蛍光は、それぞれPE-CF594及びBV510設定を用いて検出した。次に、データはFlowJoソフトウェアを使用して解析した。食作用スコアーは以下の通りに計算した:食作用スコアー=(MFI×パーセントビーズ陽性細胞)/1000。正規化:3つの独立した実験のデータを正規化し、1つのグラフ上にプロットした。正規化するため、「ビーズのみ」条件での1つの複写物は、この値を同じ値で割ることにより1に設定した(それぞれの実験について行った)。他の値はすべてこの正規化値で割って正規化された食作用スコアーを表示し、このスコアーは「ビーズのみ」条件からの倍率変化を表す。
【0152】
イメージングフローサイトメトリー
ビーズの内部移行はイメージングフローサイトメトリーを使用して確かめた。固定化された細胞は、ImagestreamX Mark IIイメージングフローサイトメトリー(Luminex Corp.)上で40×の拡大率及び中度の感度及び中度の速度設定で分析した。蛍光ビーズは、488nm(5mW)/560~595nm(励起/放射)を使用して画像化した。live/dead染色は、405nm(5mW)/430~480nm(励起/放射)を使用して画像化された。明視野像はチャネル2に収集された(カメラ1)。データは、IDEAS解析ソフトウェアv6.1(Luminex Corp.)を使用して解析した。標準ゲート開閉戦略を使用して適切な細胞集団を見つけた。簡単に言えば、フォーカス細胞は、明視野画像鮮明度のため高(>40)勾配RMS(二乗平均平方根)を使用して同定した。単細胞は、明視野像の高アスペクト比及び低オブジェクトエリアにより同定された。細胞オブジェクトエリアは明視野像において同定され、「細胞内マスク」を限定するため細胞境界から4画素が損なわれた。細胞内マスクにおいて陽性蛍光シグナルを有する細胞は、真の内部移行イベントとして同定された。斑点数フィーチャーを使用して、真の内部移行イベントを有する細胞中の内部移行したビーズの数を数えた。真の内部移行イベントを有する少なくとも2000細胞は試料ごとに分析した。
【0153】
統計分析
データはグラフパッドプリズムを使用してプロットした。有意性は、テューキー多重比較検定と連結させた一元配置分散分析を使用して決定した。****p<0.0001、***p=0.0001~0.001、**p=0.001~0.01、*p=0.01~0.05。
【0154】
7.5.2.結果
抗原提示細胞による免疫複合体の取込みは、下流細胞性及び液性免疫を開始するのに重大な意味を持つ。THP-1細胞は、抗体-蛍光ビーズ免疫複合体をFc/FcγR依存的に貪食することが報告されている(Ackermanら、2011年)。したがって、THP-1細胞を使用して、Ab-h1.9d-WTがα4β7被覆蛍光ビーズの食作用を媒介するかどうかを調べた。α4β7-ビーズ/Ab-h1.9d-WT抗体免疫複合体で3時間処置した細胞は、フローサイトメトリーにより、Ab-h1.9d-LALA及びAb-Vedo(フィーチャリングLALA)と比べて蛍光ビーズの有意な取込みを示した(
図9A~9B)。LALA突然変異は、FcγRへのIgG Fcの結合を大幅に低減することが分かっている。これらのデータから、Ab-h1.9d-WTが、α4β7被覆蛍光ビーズを含有する免疫複合体の頑強なFc/FcγR依存性食作用を媒介することが示唆される。
【0155】
Amnis Imagestreamを用いたイメージングフローサイトメトリーを実施して、Ab-h1.9d-WT/α4β7ビーズ免疫複合体がTHP-1細胞に内部移行したことを確かめた。予測通り、蛍光ビーズは、Ab-h1.9d-WT免疫複合体処置後にTHP-1細胞内に局在した(
図9C)。
【0156】
[実施例6]
7.6.THP-1細胞におけるα4β7+GFP+VLP/Ab免疫複合体のAb-h1.9d-WT誘導取込みはα4β7-及びFc依存性である
7.6.1.材料および方法
ELISAによるα4β7発現GFP+ウイルス様粒子(VLP)への抗体結合
α4β7+GFP+VLPは、α4β7 cDNA構築物及びHIVgag-GFP DNA構築物を順次トランスフェクトされたHEK293細胞から生成され、続いて細胞培養上澄みからVLPを精製した。ELISAを実施して、GFP+VLP表面上でのα4β7の発現及び種々の試験Abによる結合特異性を確かめた。簡単に言えば、高結合平底96ウェルプレートのそれぞれのウェルを、PBS中7.5×107粒子/mLの濃度で50μLのα4β7+GFP+VLPを用いて被覆し、4℃で一晩インキュベートした。ウェルはPBS+1%FBSで洗浄し、室温(RT)で30分間100μLのスーパーブロック液で遮断した。3回洗浄後、それぞれのウェルは、RTで1時間、PBS+1%FBS中50μLの4倍段階希釈一次抗体と一緒にインキュベートし、続いて洗浄し、RTで1時間、PBS+1%FBS中50μlのHRPコンジュゲートロバ抗ヒトIgG-Fcγ特異的二次抗体と一緒にインキュベートした。最終洗浄後、TMB基質を発色現像のためにそれぞれのウェルに添加し、反応は2NのH2SO4を添加することにより停止させた。それぞれのウェルについての光学密度(OD)はプレートリーダーにより450nmで測定した。
【0157】
THP-1細胞におけるα4β7+GFP+VLP/抗α4β7免疫複合体の内部移行
α4β7+GFP+VLP取込み実験では、5×104THP-1細胞を平底96ウェルプレートにおいて、最終濃度1μg/mlの抗体及び100μL体積のRPMI、10%FBS中1対100の細胞対粒子比のα4β7+GFP+VLPなしで又はこれと混合した。プレートは、CO2インキュベータにおいて37℃で16時間インキュベートした。次に、細胞を再懸濁して、V字型底96ウェルプレートに移し、遠心分離を通して200μLのPBS、2%FBSで1回洗浄した。細胞ペレットは200μLのPBS、0.5%パラホルムアルデヒドに再懸濁し、フローサイトメトリーによるパーセントGFP+細胞の決定に供した。
【0158】
VLP取込みの阻害では、THP-1細胞(5×106/mL)を、CO2インキュベータにおいて37℃で2時間、最終濃度240nMのラトランクリンA(LatA)を用いて若しくはこれなしで又は0.1%DMSO(対照)を用いて前処置し、続いて上に示された通りに抗体及びα4β7+GFP+VLPと一緒に若しくはこれなしでインキュベートした。
【0159】
7.6.2.結果
THP-1細胞におけるα4β7+GFP+VLP/Ab免疫複合体のAb-h1.9d-WT誘導取込みはα4β7-及びFc依存性である
哺乳動物細胞から生成される組換えウイルス様粒子(VLP)は、0.1~0.2ミクロンに及ぶ動的サイズを有する。したがって、VLPは以前に実験で使用された蛍光標識ビーズよりもサイズがビリオンに類似しており、THP-1細胞によるα4β7+ビリオン/Ab免疫複合体の内部移行/取込みをモデル化するためのツールとして利用された。精製されたα4β7発現GFP+VLPは、ELISAによって、抗α4β7 Abに結合するその能力について評価した。
図10に示されるように、Ab-h1.9d-WT、Ab-h1.9d-LALA及びAb-Vedoはα4β7+GFP+VLPに比較できるほどに類似する結合EC
50値(それぞれ、0.050nM、0.048nM及び0.058nM)で結合し、アイソタイプコントロールAb(抗CMV IgG)はα4β7+GFP+VLPに全く結合しなかった。このデータにより、種々の抗α4β7 Abが、良好な結合親和性及び特異性でα4β7+GFP+VLPに結合できることが示唆される。
【0160】
次に、THP-1細胞によるα4β7+GFP+VLPの取込みは、機能的Fcを用いて又はなしで種々の抗α4β7 Abの存在下で評価した。
図11Aに示されるように、Ab-h1.9d-WT処置は、GFP+細胞の50倍誘導を表すアイソタイプAb対照処置による1.2%GFP+細胞と比べて60%を超えるGFP+THP-1細胞の検出を誘導した。これにより、THP-1細胞によるα4β7+GFP+VLP取込みがAb-h1.9d-WT特異的であり、α4β7発現に依存していることが示唆される。しかし、Ab-h1.9d-LALA又はAb-Vedo(LALA)はTHP-1細胞において最小レベルのVLP取込みしか示さず、これらの細胞による抗α4β7 Ab誘導α4β7+GFP+VLP取込みが、そのα4β7結合Fabドメインに加えて、免疫複合体のFc/FcγR媒介内部移行を可能にする抗体の機能的Fcドメインを必要とすることが示唆される。
【0161】
α4β7+GFP+VLPのAb-h1.9d-WT媒介取込みが、細胞表面FcγRに結合しているだけではなく、本当に内部移行のせいであることを確かめるため、Ab/VLP免疫複合体と一緒のそのインキュベーションに先立って、既知の内部移行阻害剤であるラトランクリンA(LatA)を使用してTHP-1細胞を前処置した。
図11Bに示されるが、非処置の細胞と比べて、LatA処置細胞ではGFP+細胞が40%減少した。これにより、非処置(モック)又はDMSO処置対照において観察される全GFPシグナルの少なくとも40%がTHP-1細胞でのAb-h1.9d-WT依存性VLP内部移行から生じたことが示唆される。
【0162】
[実施例7]
7.7.Ab-h1.9d-WTはHIVに対する中和活性を示さなかった
7.7.1.材料及び方法
HIVビリオンに結合できる一部のAb、例えば、HIV広域中和抗体は、ウイルス感染を遮断することができる。HIVビリオン上のα4β7へのAb-h1.9d-WTの結合が宿主細胞のHIV感染を遮断することができるかどうかを試験するため、TZM-blインジケータ細胞系を使用してウイルス中和アッセイにおいてそのことを評価した(Arrildtら、J Virol 2015年)。
【0163】
HIV中和アッセイ
おおよそ150,000RLU(TZM-bl細胞上でのウイルス滴定により以前決定された)に対応するHIVウイルス(PHA及びRAで調製された)は、段階希釈抗体と一緒にプレインキュベートした。DEAE-デキストランを含有するTZM-bl細胞は、プレインキュベートされたHIVと抗体を含有する混合物に添加され、次に、37℃で48時間インキュベートした。細胞はBright-Glo(Promega)で処置され、ルシフェラーゼシグナルを測定した。
【0164】
7.7.2.結果
表23に示されるHIV株のパネルに対して試験された場合、Ab-h1.9d-WTは50μg/mLまでの濃度でいかなる中和活性も示さず、CD4+結合部位を標的にするHIV広域中和抗体は、試験された群M HIV株のすべて(すなわち、CMU08、NL4-3及びRU570)に対しておおよそ0.1μg/mLの中和IC50値を有していた(データは示されず)。
【0165】
Ab-h1.9d-WTはHIVビリオンに結合するが、HIV感染を中和せず、このことは、α4β7は宿主細胞上ではウイルス受容体ではないという見解と一致している。この知見は、ウイルスにコードされた糖タンパク質ではなくα4β7を標的にするとウイルス耐性機構を回避しうるという仮説を支持する。
【0166】
[実施例8]
7.8.異なる抗体によるα4β7とHIV gp120の相互作用の阻害
7.8.1.材料及び方法
α4β7とHIV gp120の間の相互作用は、LFA-1を活性化し、HIVの細胞間伝播を潜在的に促進することが報告されている(Arthosら、Nat Immunol 2008年)。Ab-h1.9d-WTがこの相互作用を破壊することができるかどうかを試験するため、公表された方法(Peachmanら、PloS One)に従ってプレート上に固定化されたHIV gp120-V2ペプチドに結合するα4β7発現RPMI8866細胞を使用して、α4β7/gp120結合アッセイを設定した。ニュートラアビジン被覆高容量96ウェルプレート(Thermo Fisher)を、ビオチン化HIV gp120-V2 WT又はgp120-V2対照ペプチドで被覆した(表24)。2つのビオチン化ペプチドの配列は、α4β7とgp120の間の結合を媒介することが報告されている4つのアミノ酸が対照ペプチドでは突然変異していることを除いて同一であった。
【0167】
【0168】
抗体-細胞混合物を添加する前に、ペプチド被覆プレートを洗浄して未結合ペプチドを取り除いた。抗体-細胞混合物ストックを作製するため、RPMI8866細胞(8×106細胞/mL)を、最終濃度2mMでMnCl2を補充した冷ブロッキングバッファーに再懸濁して、α4β7の立体構造を活性化した。段階希釈Ab-h1.9d-WT、Ab-Vedo又はアイソタイプネガティブコントロール抗体をMnCl2処置細胞と混合し、混合物をインキュベートした。抗体-細胞混合物(ウェル当たり50μL中2×105細胞)を、gp120ペプチドで被覆されたプレートのそれぞれのウェルに添加し、インキュベートした。プレートを洗浄し、ペプチド被覆プレートに付着した生細胞はCellTiter-Glo 2.0試薬(Promega)により決定した。
【0169】
7.8.2.結果
このアッセイの特異性は、α4β7へのgp120の結合を媒介することが報告されている4アミノ酸に突然変異を宿す固定化されたgp120-V2対照ペプチド(
図12A)への結合ではなく、プレート上に固定化されたHIV gp120-V2 WTペプチドへのα4β7発現RPMI8866細胞の結合により示される(表24)。このアッセイフォーマットにおいて試験された場合、Ab-h1.9d-WTは、HIV gp120-V2 WTペプチドへのRPMI8866細胞の結合を0.022±0.016μg/mLのIC
50値で遮断した(
図12B)。Ab-Vedoは、同じアッセイで試験した場合、Ab-h1.9d-WTのIC
50値よりも高いIC
50値(0.042±0.023μg/mL)を有しており、この相互作用を遮断するのにAb-h1.9d-WTほど強力ではないことを示した(
図12B)。まとめると、これらの結果は、Ab-h1.9d-WTがα4β7とgp120の相互作用を効果的に破壊し、細胞間ウイルス伝播を潜在的に阻害できることを示している。
【0170】
このアッセイフォーマットにおいて試験された場合、Ab-h1.9d-WTは、HIV gp120-V2 WTペプチドへのRPMI8866細胞の結合を0.022±0.016μg/mLのIC
50値で遮断した(
図12B)。これらの結果は、Ab-h1.9d-WTがα4β7とgp120の相互作用を効果的に破壊し、細胞間ウイルス伝播を潜在的に阻害できることを示している。
【0171】
[実施例9]
7.9.α4β7インテグリンを発現するヒト及びカニクイザル細胞へのAb-h1.9d-WTの結合
7.9.1.材料及び方法
Ab-h1.9d-WTの結合は、ECL結合アッセイを使用してHuT78細胞(内在性α4β7を発現するヒトTリンパ腫細胞)上で並びにフローサイトメトリーを使用してヒト及びカニクイザル末梢リンパ球上で評価した。
【0172】
さらに、Ab-h1.9d-WTの結合EC50値が決定され、ヒトとカニクイザル血液由来全、ナイーブ並びにメモリーCD4+及びCD8+T細胞の両方について比較した。
【0173】
ECL細胞結合アッセイ
内在性α4β7を発現するHuT78細胞は、20%のFBS、ペニシリン(50ユニット/mL)/ストレプトマイシン(50μg/mL)を含有するIMDM培地で培養した。HuT78細胞は収集され、1回洗浄し、1.5×106細胞/mLでDPBSに再懸濁した。細胞(50μL中7.5×104)は、MSD高結合プレートのそれぞれのウェルに添加した。6.7%のウシ胎仔血清(DPBSに希釈された)を添加し、プレートは37℃で1時間インキュベートした。上澄みは取り除き、1.5μg/mL~0.000091μg/mL(5%FBS及び1mMのMnCl2を含有するDPBSバッファー中)に及ぶ1対4倍8ポイント希釈を通じて調製された滴定Ab-h1.9d-WT抗体又はアイソタイプコントロールの25μLをそれぞれのウェルに添加し、次に、プレートは37℃で1時間インキュベートした。プレートはDPBSで2回洗浄し、5%のFBS/DPBS/1mM MnCl2中1対500希釈でのヤギ抗ヒトAb sulfoタグの25μLをそれぞれのウェルに添加し、続いて37℃で30分間インキュベートした。細胞はDPBSで2回洗浄し、次に2×MSDリードバッファーTを150μLそれぞれのウェルに添加した。プレートはSector Imager 6000リーダー上で読み取り、結合曲線及び結合EC50値は、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用して生成した。
【0174】
ヒト及びカニクイザル末梢T細胞結合アッセイ
凍結したヒト又はカニクイザルPBMC(標準Ficoll Paque分離法を使用して血液ドナーから単離される)はRPMI1640/10% FBS培地に解凍し、FACSバッファー(DPBS、w/o Ca+2/Mg+2、1%BSA)で1回洗浄し、5%ヤギ血清を含有するFACSバッファーに再懸濁した。約1~2×105(100μL中)を96ウェルU字型底プレートに添加し、氷上で30分間インキュベートした。プレートは遠心分離し、上澄みは取り除いた。5%ヤギ血清及び蛍光色素標識抗体カクテルを含有するFACSバッファーに希釈した5~0.000016μg/mLに及ぶ最終濃度で1対5倍希釈を通じて調製された滴定されたAb-h1.9d-WT又はアイソタイプコントロール(25μL)をそれぞれのウェルに添加し、次に、プレートを氷上で1時間インキュベートした。同時に、補償及びFMO対照も調製した。インキュベーションに続いて、細胞は遠心分離し、FACSバッファーで2回洗浄した。二次抗体(PEコンジュゲート)は、5%ヤギ血清を含有するFACSバッファーに1対2,000希釈し、50μLをそれぞれのウェルに添加した。プレートは氷上で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、PBS中0.5%PFAの200μLに再懸濁した。プレートはFACS(Canto II、BD)上で読み取り、生細胞は、前方及び側方散乱に基づいてゲート開閉した。フローデータ(FCS 3.0ファイル)はFlowJo Version 10ソフトウェアを使用して解析し、結合曲線及び結合EC50値は、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用して生成した。
【0175】
7.9.2.結果
ECL細胞結合
表25にまとめられているように、Ab-h1.9d-WTは、HuT78細胞、ヒト及びカニクイザル血液由来リンパ球についてそれぞれ26pM、130pM、62pMの結合EC50値を示した。
【0176】
【0177】
ヒト及びカニクイザル末梢T細胞結合アッセイ
ヒトとカニクイザル血液由来全、ナイーブ並びにメモリーCD4+及びCD8+T細胞両方に対するAb-h1.9d-WTの結合EC50値は表26に示されている。
【0178】
【0179】
平均結合EC50値は、評価されたすべてのT細胞サブセット上で10~165pMに及ぶ。Ab-h1.9d-WTは、ヒト及びカニクイザルCD4+及びCD8+T細胞又はそのサブセットに非常に類似した形で結合する。なぜならば、それぞれの対応する細胞型についての平均EC50値は、これらの2つの種間で2~3倍しか変動しないからである。
【0180】
ヒト及びカニクイザルCD4+及びCD8+TサブセットへのAb-h1.9d-WTの結合は、Ab-h1.9d-WT結合T細胞サブセットのパーセンテージを比較するためにも分析し、
図13に示されている。全体では、それぞれのT細胞サブセット中のAb-h1.9d-WT結合細胞のパーセンテージは、ヒトとカニクイザルの間で匹敵する。これらの発見は、ヒト及びカニクイザル由来のα4とβ7の両方は高度に相同的である(97%アミノ酸同一性、表27参照)という事実があるので驚くことではなかった。
【0181】
【0182】
さらに、カニクイザルに対するAb-h1.9d-WTの機能的交差反応性は、in vivo研究で確かめた。カニクイザルでAb-h1.9d-WTを繰り返し投与すると、α4β7受容体が完全に占められた時には、末梢血CD4+T細胞数は増加した。これらのデータは、Ab-h1.9d-WTのオンターゲット機能的薬力学的効果を示しており、カニクイザルをAb-h1.9d-WTの毒性学的評価のための薬理学的に妥当な種として支持した。
【0183】
要約すれば、Ab-h1.9d-WTは、ヒトとカニクイザルCD4+及びCD8+Tサブセットの両方に強く結合し、優れたカニクイザル結合交差反応性を実証している。
【0184】
[実施例10]
7.10.Ab-h1.9d-WTのインテグリン結合特異性
7.10.1.材料及び方法
個別のヒト及びカニクイザルヘテロ二量体インテグリンα4β7、α4β1及びαEβ7を発現する組換え細胞により、Ab-h1.9d-WTの結合特異性の評価が可能になった。
【0185】
Ab-h1.9d-WTは、ヒト上皮HEK293細胞への非特異的結合についても評価した。
【0186】
インテグリン結合特異性アッセイ
種々のヒト及びカニクイザルインテグリン(α4β7、α4β1又はαEβ7)発現CHO-K1又はBAF3細胞は、カニクイザルα4β1を除いて、収集し、数を数え、ミリリットル当たり1.5×106細胞の密度でFACSバッファー(DPBS、w/o Ca+2/Mg+2、1%BSA)中で調製した。1.5×105細胞を含有する100μLを、96ウェルU字型底プレートのそれぞれのウェルに添加し、遠心分離して上澄みを取り除いた。FACSバッファー中の滴定されたAb-h1.9d-WT、アッセイ対照又はアイソタイプコントロール(それぞれ100μL)を添加して、細胞ペレットを元に戻した。ウェル内容物は混合し、続いて氷上で1時間インキュベートした。細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、次に、FACSバッファー中1対600希釈二次抗体(ヤギ抗hu IgG Fcγ特異的Alexa Fluor 488)の100μLをそれぞれのウェルに添加して混合させた。プレートは氷上で45分間インキュベートした。続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、PBS中0.5%PFAの200μLに再懸濁した。プレートはFACS(Canto II、BD)上で読み取り、生細胞は、前方及び側方散乱に基づいて測定した。細胞結合抗体についての蛍光強度中央値は、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用して生成した。
【0187】
カニクイザルα4β1を発現するCHO-K1では、それぞれ1対25希釈でのCD29-APC及びCD49d-BV421混合物の25μL並びにFACSバッファー中1対5倍段階希釈により調製されたAb-h1.9d-WT、アッセイ対照又はアイソタイプコントロールの25μLを含有する抗体染色カクテルを、96ウェルU字型底のそれぞれのウェルに添加し、カニクイザルα4β1細胞ペレットを元に戻した。ウェル内容物は混合し、続いて氷上で45分間インキュベートした。併せて、染色対照も調製した。細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、次に、FACSバッファー中1対600希釈二次抗体(ヤギ抗hu IgG Fcγ特異的PE)50μLをそれぞれのウェルに添加して、混合した。プレートは氷上でさらに45分間インキュベートした。続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、PBS中0.5%PFAの200μLに再懸濁した。プレートはFACS(Canto II、BD)上で読み取り、生細胞は、前方及び側方散乱に基づいてゲート開閉した。次に、CD29+CD49d+細胞をゲート開閉して、FlowJoバージョン10ソフトウェアを使用して細胞結合試験抗体について蛍光強度中央値を決定した。データはグラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用してプロットした。
【0188】
非特異的HEK293細胞結合アッセイ
HEK293細胞は完全DMEM(DMEM+10%FBS+1%ピルビン酸Na)で培養した。細胞は、非酵素的解離バッファー(Gibco、Cat13151-014)を使用して収集し、数を数えて、FACSバッファー(2% BSA/PBS)に1.5×106細胞/mLで再懸濁した。96ウェルU字型底プレートのそれぞれのウェルに、7.5×104細胞を分散させた。Ab-h1.9d-WT、陽性対照抗体又はアイソタイプコントロール抗体をそれぞれのウェルに100μg/mLで添加し、氷上で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、FACSバッファー中1対100希釈ヤギ抗huIgG Fc-PE(Jackson、Cat109-116-098)の100μLと一緒に氷上で30分間さらにインキュベートした。続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、200μLのFACSバッファーに再懸濁した。プレートはFACS(Canto II、BD)により読み取った。結合データはグラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用して解析した。
【0189】
7.10.2.結果
インテグリン結合特異性
図14A~14Cに示されるように、Ab-h1.9d-WTはヒトα4β7発現細胞に特異的に結合し、ヒトα4β1発現細胞には結合せず、抗α4mAb、Ab-nataは両インテグリンに確かに結合した。Ab-h1.9d-WTは、抗β7mAb、研究グレードのエトロリズマブについて観察されたはるかに強力な結合と比べてヒトαEβ7発現細胞には最小限に結合した。Ab-h1.9d-WTは、カニクイザルインテグリンには類似する結合特異性プロファイルを示した。これらのデータにより、Ab-h1.9d-WTは、ヒトとカニクイザルα4β7の両方に対し結合特異性を有することが示された。
【0190】
非特異的HEK293細胞結合
Ab-h1.9d-WTは、ヒト上皮HEK293細胞への非特異的結合についても評価した。
図15に示されるように、Ab-h1.9d-WTは、対照抗体に匹敵して、高濃度(100μg/mL)ではHEK293細胞への非特異的結合は全く見せず、陽性対照mAbはこれらの細胞に強い非特異的結合を示した。
【0191】
[実施例11]
7.11.Ab-h1.9d-WTのウサギ及び齧歯動物結合交差反応性
7.11.1.材料及び方法
ウサギ、ラット及びマウスから単離されたPBMCへのAb-h1.9d-WTの結合は、フローサイトメトリーによって評価した。
【0192】
ウサギ及び齧歯動物交差反応性結合アッセイ
ウサギPBMCを解凍し、RPMI1640/10% FBS培地に置き、FACSバッファー(DPBS、w/o Ca+2/Mg+2、1%BSA)で1回洗浄し、5%ヤギ血清を含有するFACSバッファーに再懸濁した。細胞(100μL中1×105)を96ウェルU字型底プレート中に分散させ、氷上で30分間インキュベートした。プレートは遠心分離して上澄みを取り除き、滴定されたAb-h1.9d-WT又はアイソタイプコントロールの25μLプラス1対10希釈CD4-FITC抗体の25μL(AbはすべてFACSバッファーに希釈される)をそれぞれのウェルに添加し、細胞ペレットを元に戻した。ウェル内容物は混合し、続いて氷上で45分間インキュベートした。併せて、適切な染色対照も調製した。続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、二次抗体-PEの50μLを、5%ヤギ血清を含有するFACSバッファーに1対2000希釈で細胞ペレットに添加した。プレートは氷上45分間さらにインキュベートした。細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、PBS中0.5%PFAの200μLに再懸濁した。プレートはFACS(Canto II、BD)上で読み取り、生細胞は、前方及び側方散乱に基づいてゲート開閉した。パーセンテージ抗体結合細胞は、FlowJoバージョン10ソフトウェアを使用して決定し、結合曲線及び結合EC50値はグラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用して生成した。
【0193】
メスC57B/6Nマウス及びメスルイスラットは、それぞれTaconic研究所及びCharles River研究所から受け取った。PBMCはプールされたマウスから単離され、ラット血液はラット動物から単離された。赤血球はRBC溶解バッファー(eBioscience)を使用して溶解した。細胞はPBSで1回洗浄し、5%ヤギ血清を含有するFACSバッファー(DPBS、w/o Ca+2/Mg+2、1%BSA)に再懸濁した。おおよそ2.5×105細胞(100μL)は、96ウェルU字型底プレートに添加し、次に氷上で30分間インキュベートした。適切な蛍光色素コンジュゲート抗体は、Ab-h1.9d-WT又はアイソタイプコントロールに加えて、1対50希釈でマウス細胞(CD3-APC、α4β7-PE又はIgG2a-FITC対照)又はラット細胞(CD3-APC、α4-FITC又はIgG2a-PE対照)に添加した。ウェル内容物は徹底的に混合し、プレートは氷上で1時間インキュベートした。最終濃度は、アイソタイプコントロール及びAb-h1.9d-WTでは10及び1μg/mLであった。続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、二次抗体-PE又は二次抗体-AF488の100μLは1対800希釈でウェルに添加し、ウェルは氷上で45分間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、PBS中0.5%PFAの200μLに再懸濁した。プレートはFACS(Canto II、BD)上で読み取り、生細胞は、前方及び側方散乱に基づいてゲート開閉した。試験抗体又はアイソタイプコントロールに結合したパーセンテージCD3+細胞は、FlowJoバージョン10ソフトウェアを使用して決定し、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用してグラフで表した。
【0194】
7.11.2.結果
表28にまとめたように、Ab-h1.9d-WTは、ヒト及びカニクイザル対応物と比べて、ウサギリンパ球及びCD4+T細胞について類似する結合EC50値を示し、Ab-h1.9d-WTは、ラット又はマウスPBMC(リンパ球及びCD4+T細胞)への測定できるほどの結合は全く示さなかった。
【0195】
【0196】
[実施例12]
7.12.Ab-h1.9d-WT誘導α4β7内部移行
7.12.1.材料及び方法
Ab-h1.9d-WTは、2人のPBMCドナー由来のヒト一次CD4+及びCD8+ナイーブT細胞上で細胞表面α4β7の内部移行を誘導するその能力について調べた。
【0197】
内部移行アッセイ
Ab-h1.9d-WT内部移行は、エトロリズマブの細胞機構を決定するのに使用されたのと類似のFACSプロトコルを使用して調べ定量化した(Lichnogら、Front Pharmacol)。末梢血単核球(PBMC)は、Ficoll Paque(GE 17-1440-03)及びSepMateチューブ(StemCell 85450)を使用して2人の健康な血液ドナー(RBC、Donor KP58219及びKP58239)から単離し、5%DMSOを含有するFBS(Gibco 10438-026)に再懸濁し、液体窒素に凍結保存した。凍結PBMCを解凍し、数を数え、RPMI培地+10% FBS中1×106細胞/mLで元に戻し、100μLの細胞をウェル当たり1×105細胞で蒔いた。次に、蒔いた細胞を4℃でインキュベートする又は37℃、5%CO2インキュベータに30分間置いてプレート温度を順応させた。ヒトPBMCは、1.25μg/mL(最終0.625μg/mL)での2×濃縮、非標識Ab-h1.9d-WT抗体の100μLと一緒に4℃で1時間、前インキュベートさせた。細胞は遠心分離し、洗浄して、200μLのRPMI+10% FBSに再懸濁し、4℃又は37℃、5%CO2で18時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞はFACSバッファー(PBS+1%FBS)で2回洗浄し、次に、AF647標識非競合抗β7抗体と一緒に又はこれなしで、CD4+(Biolegend 317410)、CD8+(Biolegend 344710)及びCD45RA(Biolegend 304130)を用いて30分間染色した。細胞蛍光はフローサイトメトリー(LSR-Fortessa)により獲得した。データは、FlowJo 10ソフトウェアを使用して解析し、パーセンテージ内部移行は、100×[内部移行前の全細胞表面α4β7発現(4℃でMFI)-内部移行後の残りの細胞表面α4β7発現(37℃でMFI)/内部移行前の全細胞表面α4β7発現(4℃でMFI)]により計算した。
【0198】
7.12.2.結果
図16Aに示されるように、内部移行を最小にするために、Ab-h1.9d-WTが4℃でヒトPBMCに結合した18時間後に評価した場合、ドナー1由来のCD4+ナイーブT細胞(CD4+CD45RA
+)の73%及びCD8+のナイーブT細胞(CD8+CD45RA
+)の49%がβ7陽性のままであった。しかし、内部移行を促進するために同じプロトコル下でしかし37℃でのAb-h1.9d-WTインキュベーション後では、CD4+ナイーブT細胞の17%及びCD8+ナイーブT細胞の7%だけがβ7陽性であることが見出された。これらのデータは、Ab-h1.9d-WTに結合した表面α4β7の有意な内部移行は37℃で起こったことを示している。類似する結果がドナー2由来のPBMCを用いて観察された。
図16Bで37℃でのα4β7内部移行の定量化に基づけば(4℃での処置後に観察された発現と比べて減少した表面α4β7発現)、Ab-h1.9d-WTは、α4β7
+ナイーブCD4+とCD8+T細胞の両方でα4β7内部移行を約80%誘導することができた。
【0199】
Ab-h1.9d-WTは、Ab-Vedoと比べてα4β7内部移行を誘導するのがより強力である。
【0200】
[実施例13]
7.13.Ab-h1.9d-WTによるMAdCAM-1リガンド遮断
7.13.1.材料及び方法
MAdCAM-1リガンド遮断アッセイ
FACSベースのアッセイでは、HuT78細胞又はヒトPBMCを収集し、DPBSで1回洗浄し、1.5×106細胞/mLの密度に調整して、FACSバッファー(DPBS、w/o Ca+2/Mg+2、1%BSA/1mM MnCl2)に再懸濁した。1×105(100μL)/ウェルで細胞を96ウェルU字型底プレート中に分散させ、遠心分離して上澄みを取り除いた。滴定したAb-h1.9d-WT又はアイソタイプコントロール(50μL)プラスFACSバッファー中に0.3μg/mLのMAdCAM-1-mFc、2mMのMnCl2及び1対50希釈(30μg/mL)Alexa488コンジュゲート検出Abを含有する50μLの混合物をそれぞれのウェルに添加した。プレートは氷上で1時間インキュベートし、次に遠心分離した。プレートは200μLのFACSバッファーで1回穏やかに洗浄し、細胞は同じバッファーで元に戻した。プレートはFACS(Canto II)により読み取り、生細胞は、前方及び側方散乱ゲート開閉により決定した。フローデータ(FCS 3.0ファイル)は、FlowJoバージョン10ソフトウェアを使用して解析し、結合曲線及び阻害IC50値はグラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用して生成した。
【0201】
プレートベースのアッセイでは、96ウェル平底プレート(Greiner、Cat 655077)を、コーティングバッファー(PBS w/o Ca+2/Mg+2、0.1%BSA)を使用して4℃で一晩、100μLの20μg/mL MAdCAM-1 hFc又はアイソタイプコントロール(最終濃度2μg/ウェル)で被覆した。次の日、プレートを200μLの洗浄バッファー(PBS w/Ca+2/Mg+2、0.1%BSA)で2回洗浄し、次に、ブロッキングバッファー(PBS w/Ca+2/Mg+2、1%BSA)を使用して37℃で1時間遮断した。ブロッキングインキュベーション中、Ab-h1.9d-WT及びアイソタイプコントロールの希釈液を調製し、HuT78細胞を収集した。2×開始濃度は5μg/mLで調製し、次に段階1対4.5 7ポイント希釈(最終濃度は2.5~0.0003μg/mLに及ぶ)は2通り又は3通り実施した。細胞は数え、洗浄し、アッセイ培地(IMDM、1% BSA)に2×106細胞/mLで再懸濁し、これに最終濃度2mMのMnCl2を添加し、100,000細胞を96ウェルプレートのそれぞれのウェルに分散させた。次に、希釈した抗体を細胞に添加し、混合物は37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。MAdCAM-1 hFc被覆プレートからのブロッキング液はデカントし、100μL/ウェルの前インキュベートしたHuT78細胞及びmAb混合物はMAdCAM-1 hFc被覆プレートのそれぞれのウェル中に分配した。プレートは1,000rpmで1分間回転させ、37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。接着プレートはデカントし、150μLの洗浄バッファーで4回穏やかに洗浄した。洗浄後、100μL/ウェルの混合物(50μLのCellTiter-Glo試薬及び50μLのアッセイ培地を含有する)をそれぞれのウェルに添加した。プレートはオービタルシェーカー上に2分間置き、次にRTで10分間インキュベートした。プレート発光は発光プレートリーダー(Topcount、Perkin Elmer)上で読み取った。発光シグナルをプロットし、IC50値はグラフパッドプリズム7.0において4パラメータカーブフィット解析を使用して決定した。
【0202】
7.13.2.結果
Ab-h1.9d-WTは、プレートベースとFACSベースのアッセイの両方を使用して、α4β7発現HuT78細胞及びヒトリンパ球(PBMC)へのMAdCAM-1タンパク質の組換え細胞外ドメインの結合を遮断するその能力について試験した。
【0203】
FACS-及びプレートベースのアッセイを使用することにより、それぞれ50pM及び25pMのIC50値が得られた。
【0204】
さらに、Ab-h1.9d-WTによるヒト血液由来リンパ球へのMAdCAM-1結合の遮断が223pMのIC50値で観察された(表29)。
【0205】
【0206】
これらのデータにより、MAdCAM-1/α4β7相互作用に対するAb-h1.9d-WTの強い阻害効果が実証された。
【0207】
[実施例14]
7.14.Ab-h1.9d-WTはヒト一次CD4+T細胞上でのMAdCAM-1同時刺激を遮断する
7.14.1.材料及び方法
ヒトPBMC及びCD4+T細胞単離
ヒト末梢血単核球(PBMC)は健康なドナーから収集した新鮮な血液から単離された。次に、ヒトCD4+T細胞は、CD4ネガティブセレクションキット(Stem Cell Technologies)を使用してPBMCから単離した。
【0208】
CD4+T細胞活性化及び増殖アッセイ
96ウェル平底組織培養プレートを、HBSS中200ng/ウェル抗CD3抗体(Biolegend)を用いて4℃で一晩被覆した。翌日、抗CD3被覆プレートをHBSSで1回洗浄し、200ng/ウェルのMAdCAM-1(R&D systems)と一緒に37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、プレートは200μlのHBSSで1回洗浄し、50,000CD4+T細胞を、1μg/ml試験抗体の存在下又は非存在下でそれぞれのウェルに添加した。細胞を37℃、5%CO2で96時間培養後、細胞は洗浄し、Live-Dead Aquaバイアビリティー色素(Thermofisher)で染色し、続いて細胞活性化マーカー抗CD25 FITC(クローンMA0251 BD bioscience)及び抗Ki67 APC(Biolegend)で染色した。細胞はフローサイトメーター上で分析し、データはFlowJoソフトウェアで解析した。複数のドナー由来のデータをプロットし、統計解析はグラフパッドプリズムを使用して実施した。有意性は、テューキー多重比較検定と連結させた一元配置分散分析を使用して決定された。****p<0.0001、**p=0.001~0.01。
【0209】
7.14.2.結果
Ab-h1.9d-WTはヒト一次CD4+T細胞上でのMAdCAM-1同時刺激を遮断する
α4β7+CD4+T細胞のMAdCAM-1媒介腸管ホーミングは、GALT(腸管関連リンパ組織)のHIV感染で中心的な役割を果たす。この役割に加えて、MAdCAM-1は同時刺激シグナルをヒト一次CD4+T細胞に伝達し、HIV複製を促進するとも報告されている(Nawazら、Mucosal Immunology 2018年)。HIV感染及び複製はこれらの細胞の代謝的活性化を必要とし、Ab-h1.9d-WTはヒトリンパ球へのMAdCAM-1結合を223pMのIC50値で遮断できる(表35)ので、本発明者らはAb-h1.9d-WTがヒト一次CD4+T細胞上でMAdCAM-1同時刺激シグナルを遮断でき、それにより今度はこれらの細胞においてMAdCAM-1媒介ウイルス複製が阻害されるかどうかを評価した。
【0210】
1人の代表的な健康なドナー由来のヒト一次CD4+T細胞をプレート結合抗CD3単独と一緒に96時間インキュベートすると、細胞の22.6%が活性化されKi67+CD25+表現型を示した(
図17A)。細胞がプレート結合抗CD3及びMAdCAM-1と併せて一緒にインキュベートされると、56.6%のCD4+T細胞が活性化された。これは、MAdCAM-1が同時刺激シグナルを細胞表面α4β7と相互作用することにより媒介されるCD4+T細胞に伝達したことを示している。96時間のインキュベーション中に細胞にAb-h1.9d-WTを添加すると、細胞活性化は20.8%まで減少し、これは抗CD3単独に匹敵するレベルであり、アイソタイプコントロールAbは細胞活性化に対しては全く阻害効果がなかった。データによれば、Ab-h1.9d-WTが、MAdCAM-1が発揮する同時刺激シグナルを効果的に完全に遮断したことが示唆される。アッセイは、5人の追加の個々のドナー由来の一次CD4 T細胞を用いて繰り返し、データは
図17Bにまとめられている。
図17Aにおいて1人の代表的なドナーから得られたデータと一致して、Ab-h1.9d-WTはCD4+T細胞のMAdCAM-1/α4β7媒介同時刺激をほぼ完全に遮断し、アイソタイプコントロールAbには阻害効果は全くなかった。
【0211】
[実施例15]
7.15.Ab-h1.9d-WTのVCAM-1リガンド遮断特異性
7.15.1.材料及び方法
VCAM-1媒介細胞接着アッセイにおけるα4β7/VCAM-1相互作用に対するAb-h1.9d-WTの効果が評価された。
【0212】
VCAM-1リガンド遮断アッセイ
プレート(96ウェル平底型、Greiner、Cat 655077)を、コーティングバッファー(PBS w/o Ca+2/Mg+2、0.1%BSA)を使用して4℃で一晩、20μg/mLのVCAM-1 hFc又はアイソタイプコントロール(最終濃度2μg/ウェル)を100μL用いて1日目に被覆した。2日目、プレートは200μLの洗浄バッファー(PBS w/Ca+2/Mg+2、0.1%BSA)で3回洗浄し、次に、ブロッキングバッファー(PBS w/Ca+2/Mg+2、1%BSA)を使用して37℃で1時間又はそれよりも長く遮断した。ブロッキングインキュベーション中、Ab-h1.9d-WT、Ab-nata及びアイソタイプコントロールの希釈液を調製し、HuT78細胞を収集した。抗体の2×開始濃度は4μg/mLで調製し、次にアッセイ培地(IMDM、1%BSA)中1対4倍段階希釈液を作った。HuT78細胞の数を数え、洗浄しアッセイ培地中2×106細胞/mLで再懸濁し、これに最終濃度2mMのMnCl2を添加し、100,000細胞を96ウェルプレートのそれぞれのウェルに分散させた。次に、希釈した抗体を細胞に添加し、混合物は37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。VCAM-1 hFc被覆プレートからのブロッキング液はデカントし、100μLの前インキュベートしたHuT78細胞及びmAb混合物はVCAM-1 hFc被覆プレートのそれぞれのウェル中に分配した。プレートは37℃、5%CO2で30分間インキュベートし、次に、洗浄バッファーを使用して3回穏やかに洗浄した。洗浄後、100μL/ウェルの混合物(50μLのCellTiter-Glo試薬及び50μLのアッセイ培地を含有する)をそれぞれのウェルに添加した。プレートはオービタルシェーカー上に2分間置き、次にRTで10分間インキュベートした。プレート発光は発光プレートリーダー(Topcount、Perkin Elmer)上で読み取った。発光シグナルをプロットし、グラフパッドプリズム7.0において4パラメータカーブフィット解析を使用してIC50値を決定した。
【0213】
7.15.2.結果
血液リンパ球の腸管ホーミングを可能にするMAdCAM-1へのα4β7結合に加えて、α4β7は内皮細胞上で発現されるVCAM-1にも結合できる(表30)。
【0214】
【0215】
ナタリズマブ、Ab-nata抗α4 mAbは、VCAM-1へのα4β7及びα4β1結合を遮断することができるが、脳への循環リンパ球の輸送を遮断するせいで進行性多巣性白質脳症(PML)を引き起こした。したがって、VCAM-1媒介細胞接着アッセイでのα4β7/VCAM-1相互作用に対するAb-h1.9d-WTの効果の評価は、Ab-nataを陽性対照として使用して調べるための非常に重要な安全パラメータであった。予想通り、Ab-nataは、VCAM-1媒介HuT78細胞接着を56pMの平均IC
50値で遮断した。これとは対照的に、Ab-h1.9d-WTは、VCAM-1により媒介されるHuT78細胞接着の検出できるほどの遮断を全く示さなかった(
図18)。
【0216】
Ab-h1.9d-WTはα4β7/MAdCAM-1相互作用を高い効力で選択的に遮断するが、α4β7/VCAM-1相互作用の阻害は全く示さない。
【0217】
[実施例16]
7.16.ヒト及びカニクイザルFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa及びFcRnに対するAb-h1.9d-WT結合親和性
7.16.1.材料及び方法
Ab-h1.9d-WTは、抗体IgG1対照であるトラスツズマブと比べて、組換えヒト及びカニクイザルFcγR細胞外ドメイン(ECD)タンパク質のパネルへのその結合親和性についてBIAcoreにより評価した。
【0218】
ヒトFcγRへのAb-h1.9d-WT結合も、種々の細胞表面ヒトFcγRを発現するように操作されたCHO-K1細胞を使用することによりフローサイトメトリーを介して評価した。
【0219】
ヒト及びカニクイザルFcRnへのAb-h1.9d-WTの結合は、組換えヒト及びカニクイザルFcRn ECDタンパク質を使用してBIAcoreによりpH6.0及びpH7.4で評価した(表31)。
【0220】
【0221】
ヒト及びカニクイザルFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIIa表面プラズモン共鳴(SPR)結合アッセイ
Hisタグ付きヒトFcγRに対するAb-h1.9d-WTの結合速度論は、抗His補足を使用して25℃でBiacoreT200計器(GE Healthcare)上で行うSPR測定により決定した。10mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)中25μg/mLまで希釈されたおおよそ10000RUのマウス抗His抗体(R&D)を、標準アミンカップリングキットを製造業者の説明書に従って使用してCM5バイオセンサーチップ中に固定化した。バイオセンサー表面の未反応部分は1Mのエタノールアミンで遮断した。フローセル1上の活性化及び非活性化表面は参照として使用された。チップ調製及び結合動力学測定はアッセイランニングバッファー、HBS-EP+(10mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のTween20)中で行われた。次に、ヒト及びカニクイザルFcγRは、補足レベル250~500RUに達するまでフローセル2上で補足された。Ab-h1.9d-WT試料は、50μL/分の流速で1~5分間(ヒト及びカニクイザルFcγRIIb及びFcγRIIaでは1分間、ヒトFcγRIIIaでは2分間並びにヒト及びカニクイザルFcγRI&カニクイザルFcγRでは5分間)すべてのフローセル上に注入された。分析物濃度は、ヒト及びカニクイザルFcγRI、カニクイザルFcγRIIIでは0.78~200nM、ヒト及びカニクイザルFcγRIIでは46.9~12000nM並びにFcγRIIでは7.8~4000nM(2倍段階希釈)の範囲に及んだ。バッファーのみ注入はダブル参照のために含まれた。結合FcγR解離は、1~5分間(FcγRIIb、FcγRIIaでは1分間、FcγRIIIaでは3分間及びFcγRIでは5分間)モニターされた。チップ表面は、8チャネルすべてにわたり流速100μL/分で2秒間、注入された100mMのHClを用いて再生させた。同じCM5チップを使用する3つの実験はそれぞれの試料について実行した。これら3実験の結果は平均された。
【0222】
ヒトFcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa細胞結合アッセイ
CHO-K1発現hFcγR細胞は150cm2培養フラスコで生育し、特定量のフルオロフォア、CellTrace CFSE商標及びCellTrace Violet商標(Molecular Probes)を製造業者の説明書に従って負荷させ、それぞれの系について独特の蛍光フットプリント(バーコード法)を確立した。系を混合し、RPMI1640/2mMのL-グルタミン/10%の超低IgG熱不活化FBS(結合培地)中異なる濃度(0、0.01、0.1、1、10、50、100、及び250μg/mL)で単量体Ab-h1.9d-WTと一緒に4℃で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞はPBS、pH7.4(w/o Ca+2/Mg+2)で2回洗浄し、細胞結合Ab-h1.9d-WTを検出するために、結合培地中のAF647に連結した二次抗体(F(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG(H+L)と一緒に4℃で15分間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞はPBS、pH7.4(w/o Ca+2/Mg+2)でさらに2回洗浄した。細胞表面蛍光はフローサイトメトリーアナライザー(LSR-Fortessa)を使用して検出し記録した。記録された蛍光データはFlowJoソフトウェアバージョン10(Tristar)を使用して解析され、CHO-K1 hFcγR細胞へのAb-h1.9d-WT結合はAF647の蛍光の幾何平均として報告された(Ab-h1.9d-WT濃度の関数としてのgMFIの結合曲線が作成された)。
【0223】
ヒト及びカニクイザルFcRn表面プラズモン結合アッセイ
FcRn結合アッセイでは、Ab-h1.9d-WTは、CM5チップアミンカップリング上に製造業者のプロトコルに従って750RUの密度まで直接固定化した。ヒト及びカニクイザルFcRn組換えタンパク質は、5.5~12000nM(3倍段階希釈)に及ぶ濃度で、50μL/分の流速で1分間すべてのフローセル上に注入され、続いて1分間解離された。表面はHBS-EP+pH7.4の15秒間の注入で再生させた。試料は調製され、2種類のランニングバッファーMES EP+pH6.0及びHBS-EP+pH7.4で流された。異なるCM5チップを使用する3つの実験をそれぞれの試料について実行した(それぞれが2通り)。これら3実験の結果は平均させた。すべての試料に結合するヒトFcγRI、FcγRIIIa(F158)、FcγRIIIa(V158)及びカニクイザルFcγRI、FcγRIIIからのデータは、一定のRmaxを有する1対1グローバル動力学モデルにフィットさせた。すべての試料に結合するヒトFcγRIIb、FcγRIIa(H131)、FcγRIIa(R131)、カニクイザルFcγRIIa、FcγRIIb及びFcRnからのデータは、定常状態親和性モデルにフィットさせた。Biacore T200評価ソフトウェアバージョン2.0を使用してFcγR及びFcRnデータをフィットさせた。
【0224】
7.16.2.結果
ヒト及びカニクイザルFcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIIa結合
結合動力学パラメータは表32(ヒトについて)及び表33(カニクイザルについて)にまとめられている。
【0225】
【0226】
Ab-h1.9d-WT及びトラスツズマブは、hFcγRIとhFcγRII(H131)の両方に類似する測定できるほどの結合親和性を、hFcγRII(R131)及びhFcγRIIb受容体へのもっと弱い結合を有していた。Ab-h1.9d-WT及びトラスツズマブは、hFcγRIIIa(F158/V158)に測定できるほどの結合親和性を有し、予想された通り、V158多形性バリアントにはより高い親和性を有していた。
【0227】
【0228】
Ab-h1.9d-WTとトラスツズマブの両方が、カニクイザルFcγRIとカニクイザルFcγRIIIの両方への結合を見せたが、カニクイザルFcγRIIaとカニクイザルFcγRII受容体では、おそらくこれらの受容体へのその弱い結合のせいで測定できるほどの結合パラメータを決めることはできなかった。
ヒトFcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa細胞結合アッセイ
Ab-h1.9d-WTは、ヒトFcγR1及びFcγRIIa(V176)多形性バリアントへの最も高い結合を示したが、他のヒトFcγR[FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa(F176)及びFcγRIIIb]への結合は比較的低かった(
図19A~19B)。
【0229】
ヒト及びカニクイザルFcRn表面プラズモン結合アッセイ
Ab-h1.9d-WTは、酸性条件(pH6.0)下ではヒト及びカニクイザルFcRnへの測定できるほどの結合を見せたが、中性pH(pH7.4)では測定できるほどの結合はなかった(表34)。FcRn結合特性は対照(トラスツズマブ)に匹敵していた。
【0230】
【0231】
[実施例17]
7.17.Ab-h1.9d-WT in vitro ADCC、ADCP及びCDC活性
7.17.1.材料及び方法
Ab-h1.9d-WTは、天然のα4β7/CD20発現RPMI8866細胞を標的細胞として、hFcγRIIIa(V158)又はhFcγRIIa(H131)を発現するレポータージャーカット細胞をエフェクター細胞として使用してvitro ADCC及びADCP活性について評価した。このジャーカット細胞系は、レポーターとしてホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを有していた。抗CD20mAbであるAb-Rituは、これらのアッセイでは陽性対照として使用した。
【0232】
さらに、Ab-h1.9d-WTは、α4β7/CD52発現HuT78細胞を標的細胞として、ヒト一次NK細胞をエフェクター細胞として、Campath(抗CD52)を陽性対照抗体として使用する細胞傷害性ベースのADCCアッセイにおいて評価した。
【0233】
ADCCレポーターアッセイ
標的α4β7発現RPMI8866細胞を生育し培養培地(RPMI1640、2mMのL-グルタミン及び10%のFBS)に維持した。対数期細胞を収集し、数を数え、洗浄して、6×105細胞/mLストックでアッセイ培地(低IgG血清を含有するRPMI1640)に再懸濁し、使用準備ができるまで37℃、5%CO2に置いた。Ab-h1.9d-WT及び対照mAbは30μg/mLの3×開始濃度で調製し、次に、Costar3956希釈プレートに1対100で段階(2pt.)希釈した。抗体(25μL)は、プレートレイアウトに従って等容積の標的RPMI8866細胞(25μL)と2通り混合した。エフェクタージャーカット細胞(ヒトFcγRIIIa V158バリアント及びPromega商標社製のホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定的に発現する)を急速解凍し、アッセイ培地中3×106細胞/mLに調整した。次に、ジャーカットエフェクター(25μL)をRPMI8866標的及び抗体を含有する96ウェルアッセイプレートに添加した。対照ウェルは、培地単独、エフェクター(E)及び標的(T)単独、E+T、E+mAb(30μg/mL)又はT+mAb(30μg/mL)を含んだ。すべてのウェルはプレートレイアウトに従ってウェル当たり75μLに調整した。最終細胞数は、5対1のE対T比に応じて、75,000ジャーカットエフェクター細胞/ウェル及び15,000RPMI8866標的細胞/ウェルであった。ウェル当たりの最終抗体濃度は、67nM(10μg/mL)、0.67nM(0.1μg/mL)及び0.0067nM(0.001μg/mL)であった。プレートは37℃、5%CO2で6時間インキュベートし、その間Bio-Glo商標バッファー及び基質(Cat7110)は使用に先立ってRTに平衡させた。インキュベーション終了時、Bio-Glo基質はバッファーで元に戻して酵素/基質溶液(Bio-Glo試薬)を形成させた。等容積の75μL/ウェルBio-Gloをすべてのウェルに添加した。次に、プレートをRTで10分間インキュベートした。プレート発光は発光プレートリーダー(Topcount、Perkin Elmer)上で読み取った。発光シグナルは、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用してRLUとしてプロットした。
【0234】
ADCPレポーターアッセイ
標的α4β7発現RPMI8866細胞を生育し培養培地(RPMI1640、2mMのL-グルタミン及び10%のFBS)に維持した。対数期細胞を収集し、数を数え、洗浄して、2×105細胞/mLストックでアッセイ培地(低IgG血清を含有するRPMI1640)に再懸濁し、使用準備ができるまで37℃、5%CO2に置いた。Ab-h1.9d-WT及び対照mAbは30μg/mLの3×開始濃度で調製し、次に、Costar3956希釈プレートに1対100で段階(2pt.)希釈した。抗体(25μL)は、プレートレイアウトに従って等容積の標的細胞(25μL)と2通り混合した。エフェクタージャーカット細胞(ヒトFcγRIIIa H131バリアント及びPromega商標社製のホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定的に発現する)を急速解凍し、アッセイ培地中1×106細胞/mLに調整した。次に、ジャーカットエフェクター(25μL)をRPMI8866標的及び抗体を含有する96ウェルアッセイプレートに添加した。対照ウェルは、培地単独、エフェクター(E)及び標的(T)単独、E+T、E+mAb(30μg/mL)又はT+mAb(30μg/mL)を含んだ。すべてのウェルはプレートレイアウトに従ってウェル当たり75μLに調整した。最終細胞数は、5対1のE対T比に応じて、25,000ジャーカットエフェクター細胞/ウェル及び5,000標的細胞/ウェルであった。ウェル当たりの最終抗体濃度は、67nM(10μg/mL)、0.67nM(0.1μg/mL)及び0.0067nM(0.001μg/mL)であった。プレートは37℃、5%CO2で6時間インキュベートし、その間Bio-Glo商標バッファー及び基質(Cat7110)は使用に先立ってRTに平衡させた。インキュベーション終了時、Bio-Glo基質はバッファーで元に戻して酵素/基質溶液(Bio-Glo試薬)を形成させた。等容積の75μL/ウェルBio-Gloをすべてのウェルに添加した。次に、プレートをRTで10分間インキュベートした。プレート発光は発光プレートリーダー(Topcount、Perkin Elmer)上で読み取った。発光シグナルは、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用してRLUとしてプロットした。
【0235】
CDCアッセイ
RPMI8866細胞を生育し培養培地(RPMI1640、2mMのL-グルタミン及び10%のFBS)に維持した。対数期細胞を収集し、数を数え、洗浄して、4×106細胞/mLストックでアッセイ培地(RPMI1640マイナスフェノールレッド、Cat11835-030)に再懸濁し、使用準備ができるまで37℃、5%CO2に置いた。Ab-h1.9d-WT及び対照mAbは、Costar3956希釈プレートにおいて45μg/mL及び0.45μg/mLの3×開始濃度で調製した。ヒトドナー血清(HMN19169及びHMN19170)を冷ランニング水を使用して解凍し直ちに氷上に置いた。抗体、対照(25μL)及び培地をアッセイプレート(Costar 3599)に添加した。ドナー血清(それぞれ25μL)、標的細胞(25μL)及び希釈mAb(25μL)を、33%血清補体、1×105細胞及び15μg/mL mAbを含有するウェル当たり75μLの最終容積で混合した。次に、プレートは37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。インキュベーション後、1.5mg/mLの5×ストック溶液での細胞透過性色素(Sigma;Resazurinナトリウム塩)を、DPBSに1対5で希釈し、25μLの色素をそれぞれのウェルに添加した。プレートはさらに16時間インキュベートし、次に、吸光度(545/600)をClariostarプレートリーダーを使用して読み取った。パーセンテージ標的特異的細胞溶解は、式:100-100×[(mAbインキュベーションでの吸光度)/(対照吸光度)]を使用してExcelで計算し、結果はグラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用してプロットした。
【0236】
ADCC細胞傷害性アッセイ
標的α4β7発現HuT78細胞を収集し、PBS(w/o Ca+2/Mg+2、1%BSA)で2回洗浄し、1×107細胞/mLでPBSに再懸濁し、次に、RTで8分間、最終濃度2μMでCFSEを用いて標識した。インキュベーション後、FBSを10%最終濃度で添加して、標識化をクエンチした。細胞は、RPMI+10%FBS培地で2回洗浄し、次にCFSE標識化HuT78細胞は、10μg/mLで2×濃度のAb-h1.9d-WT又は対照抗体の100μLと一緒に、96ウェルV字型底プレートにおいて37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。続いて、100μLの2.5×105NK(FcγRIIIa V158+)エフェクター細胞(200U/mLでIL-2と一緒に前インキュベートした)を5対1比で標的細胞に添加した。ウェル内容物は徹底的に混合し、続いてCO2インキュベーターにおいて37℃で5時間インキュベートした。NK及びHuT78細胞混合物はPBSで2回洗浄し、1μLのFVD色素/mLを含有する無アジド及び無タンパク質PBSを用いて1×106細胞/mLで再懸濁し、RTで20分間インキュベートした。細胞はFACSバッファーで2回洗浄し、PBS中0.5%のPFAの200μLに再懸濁し、プレートはFACS(CantoII、BD)上で読み取った。フローデータ(FCS 3.0ファイル)は、FlowJoバージョン10ソフトウェアを使用することにより解析した。すべてのHuT78標的細胞(live及びdead)はゲート開閉させて全標的細胞集団内の%dead標的を決定した。%ADCC計算に使用される式は、%ADCC=100×[(E+T+Ab)混合物中の%dead標的-(E+T)ミックス中の%dead標的]/[100-(E+T)ミックス中の%dead標的]であった。パーセンテージADCCは、グラフパッドプリズム7.0ソフトウェアを使用してグラフで示した。
【0237】
7.17.2.結果
ADCCレポーター活性、ADCPレポーター活性及びCDC
予想通りに、Ab-Rituは強い濃度依存性in vitro ADCC及びADCP活性を示したが、Ab-h1.9d-WT及びアイソタイプコントロールは、試験された3種の濃度(10、0.1、0.001μg/mL)ではこれらの活性のどれも示さなかった(
図20A及び20B)。3種の陰性対照アッセイ条件、すなわち、標的及びエフェクター単独、標的プラス抗体、並びにエフェクタープラス抗体では最小シグナルのみが検出された(データは示さず)。Ab-Rituは、RPMI8866細胞上、0.15及び15μg/mL(100nM)で強いin vitro CDC活性も示し、Ab-h1.9d-WT及びアイソタイプコントロールは、2つのヒト血清ドナーを使用して対応する濃度でCDCシグナルを示さなかった(
図21)。
【0238】
ADCC細胞傷害性
このin vitroアッセイでは、Campath(Ab-Alem)は標的細胞に対して強い細胞傷害性を示した。これとは対照的に、Ab-h1.9d-WTは、アッセイを、FcγRIIIa V158遺伝子型を用いて2人の異なるドナーから単離されたNKエフェクター細胞を使用して実施した場合、10μg/mL(67nM)濃度ではいかなるin vitro細胞傷害性も誘導しなかった(
図22)。したがって、Ab-h1.9d-WTは上に示されるように(実施例12)ヒトFcγRに結合するが、in vitroでは非感染α4β7+細胞に対して望ましくないFc媒介ADCC、ADCP及びCDC活性を誘導しない。
【0239】
[実施例18]
7.18.標的上のAb-h1.9d-WT結合部位のホモロジーモデリング
7.18.1.材料及び方法
α4β7へのAb-h1.9d-WTの結合様式はホモロジーモデリングにより調べた。別の抗α4β7抗体ベドリズマブとの複合体中の組換えヒトα4β7細胞外ドメインタンパク質の結晶構造は、公表されている(Yuら、J Cell Biol 2012年)。そのデータ及びAb-h1.9d-WTのFab領域の独特の配列に基づいて、ベンチマーク抗体ベドリズマブ及びAMG181と比べた候補抗体の結合様式のモデリングに取りかかった。
【0240】
7.18.2.結果
in vitro特性評価データと一致して、ハイブリドーマAb-m1のヒト化バリアントでありAb-h1.9d-WTの親であるAb-h1.9及び2種のベンチマークmAbは、主にβ7サブユニットとの相互作用を通じて、しかし、僅かではあるが、α4サブユニットとも相互作用をしてα4β7に結合する。このモデルにより、α4β1への結合の欠如及びαEβ7への非常に低い結合が説明される。興味深いことに、このモデルにより、Ab-h1.9がα4サブユニット上でわずかに多くの残基に結合する点で、Ab-h1.9と2つのベンチマークmAbの間の微妙な違いが示唆される。モデルで明白である重複するエピトープにより、Ab-h1.9とベドリズマブは、その標的への結合を巡って競合するはずであると予想される。実際、FACSベースの結合競合研究では、Ab-m1は、α4β7+細胞へのAb-Vedo結合と競合することができ、Ab-m1とAb-Vedoは類似する結合エピトープに結合することを示していた(表13)。
【0241】
7.19.考察
HIV+及びHIV-個人由来の末梢ヒトCD4+及びCD8+T細胞サブセット上でのα4β7の発現レベルは同等であり、HIV+個人由来のCD4+T細胞でのα4β7発現が、出芽HIVビリオン中へのα4β7の組込みを支持できることを示唆している。
【0242】
Ab-h1.9d-WTは、試験されたすべての実験室生育HIV株及びHIV患者の試料のビリオンのエンベロープ上のα4β7に結合できる強力な抗α4β7抗体である。Ab-h1.9d-WTとHIVビリオンにより形成される免疫複合体は、そのFcドメインを通じて異なるFcγRに結合でき、これは、Ab-h1.9d-WTが食作用によりAPCに取り込まれて、HIV制御のための提唱されている「予防接種効果」を誘導することができるステップであった。
【0243】
Ab-h1.9d-WTはHIVビリオンに結合するが、HIV感染を中和せず、このことは、α4β7が宿主細胞上のウイルス受容体ではないという考えと一致している。HIVウイルスエンベロープ上の宿主タンパク質であるα4β7インテグリンを標的にすることにより、Ab-h1.9d-WTは、HIV広域中和抗体などのウイルスエンベロープ中のHIVウイルス性にコードされたgp120/41糖タンパク質を標的にする他の抗体と比べて耐性に対するより高い障壁を示す可能性がある。
【0244】
Ab-h1.9d-WTは、Fab依存性機構を通じてα4β7とMadCAM-1又はHIV gp120などのそのリガンドの間の相互作用を破壊でき、MadCAM-1又はgp120により媒介されるCD4 T細胞同時刺激を阻害し、これらの刺激された細胞でのHIV複製を潜在的に阻害する。
【0245】
Ab-h1.9d-WTは、α4β7とHIV gp120の間の相互作用を破壊するその能力を通じて、Fab媒介機構による細胞間HIVウイルス伝播を潜在的に阻害することができる。
【0246】
Ab-h1.9d-WTと比べた場合、Ab-Vedoのほうが、HIVビリオンを補足しα4β7とHIV gp120の間の相互作用を破壊する活性が低いことを示した。さらに、Ab-VedoはHIVビリオンと結合して免疫複合体を形成することができたが、これらの免疫複合体は、Fc機能を低減するAb-Vedo Fcドメインでの操作された突然変異のせいで、Ab-h1.9d-WTにより形成される複合体よりもはるかに低い親和性でFcγRに結合した。
【0247】
ベドリズマブは、HIV研究のための2つの臨床試験で中程度の効力を示した。この効力は、Fab依存性に帰すことができる(例えば、MadCAM-1及びHIV gp120などのそのリガンドとの相互作用を破壊するα4β7への抗体結合、したがって、CD4 T細胞同時刺激及びこれらの刺激された細胞でのHIV複製、並びに細胞間ウイルス伝播を阻害する)が、Fc依存性作用機序に帰すことはできない。FcγRに対するベドリズマブの結合親和性が減少するため、ベドリズマブはFc依存性機構を媒介することが不十分になる。これとは対照的に、Ab-h1.9d-WTは、無傷のFc機能性を有しており、そのFc依存性作用機序を通じて維持されたHIVウイルス抑制を誘導するその能力ではベドリズマブとは明確に区別されうる。新たな耐久性のあるHIV特異的免疫応答(予防接種効果)を誘導するためには、APC上のFcγRへのHIVビリオンと抗α4β7抗体(無傷のFcドメインを有する)により形成される免疫複合体の結合が必要になる。実際、Ab-h1.9d-WTは、THP-1細胞においてα4β7被覆ビーズ又はα4β7発現GFP+VLP(ウイルス様粒子)の取込みをα4β7-及びFc依存的に媒介することができる。まとめると、Ab-h1.9d-WTは、Fc依存性又はFab依存性である機構を含む、HIV制御のためのいくつかの提唱されている作用機序での活性を示している。したがって、Ab-h1.9d-WTは、α4β7に対するそのより高い親和性及び「予防接種効果」を誘導するその無傷のFc機能性のために、HIVウイルス負荷の維持された低減のためにはベドリズマブよりも強力な作用物質であると予想される。
【0248】
網羅的なin vitro特性評価からのAb-h1.9d-WTの主要な特質は表35にまとめられている。
【0249】
【0250】
Ab-h1.9d-WTは、α4β7に結合するがα4β1には結合せずαEβ7には最小限に結合するアンタゴニスト抗α4β7ヒトIgG1/κモノクローナル抗体である。Ab-h1.9d-WTは、ヒトとカニクイザルCD4+及びCD8+Tサブセットの両方に強く結合し、優れたカニクイザル結合交差反応性を示す。しかし、Ab-h1.9d-WTは齧歯動物PBMCには結合しない。Ab-h1.9d-WTは、α4β7/VCAM-1相互作用を阻害せずにα4β7/MAdCAM-1相互作用を高い効力で選択的に遮断する。Ab-h1.9d-WTは、ヒト一次CD4+T細胞のMAdCAM-1媒介同時刺激を遮断することができる。ヒトIgG1について予測されるように、Ab-h1.9d-WTは、in vitroで未感染α4β7+細胞に対してADCC、ADCP及びCDC活性の引き金を引かずにヒトFcγRに結合する(in vivoでのFc媒介「予防接種効果」)に不可欠な必要条件)。Ab-h1.9d-WTによるin vitro Fcエフェクター活性の欠如は、抗体誘導標的内部移行に起因する減少した細胞表面α4β7発現により部分的に説明しうる。さらに、Ab-h1.9d-WTは、THP-1細胞においてα4β7被覆ビーズ又はα4β7発現GFP+VLP(ウイルス様粒子)の取込みをα4β7依存的に及びFc依存的に媒介することができる。Ab-h1.9d-WTは、臨床候補に必要な意図されたin vitro薬理学的特性を見せる。
【0251】
本開示で提供されるように、Ab-h1.9d-WTは、ベドリズマブとは区別され、それから改良されている強力なα4β7選択的アンタゴニストである。Ab-Vedoと比べたAb-h1.9d-WTの鍵となる特性は表36~40に示され表41にまとめられている。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
表39-BIAcoreによるAb-Vedoと比べたヒトFcγRに対するAb-h1.9d-WTの結合親和性
【0256】
【0257】
表40-BIAcoreによるAb-Vedoと比べたカニクイザルFcγRに対するAb-h1.9d-WTの結合親和性
【0258】
【0259】
表41-Ab-Vedoと比べたAb-h1.9d-WTの鍵となる特性
【0260】
【0261】
α4β7に対するそのより良好な結合親和性及びFc媒介エフェクター機能の引き金を引かずにヒトFcγRに結合するその能力などの、Ab-h1.9d-WTの主要なパラメータは、ベドリズマブとの重要な区別要因であり、これらの特性はベドリズマブよりも改良された効力を駆動すると期待される。Ab-h1.9d-WTは、抗α4β7臨床候補に必要なin vitro薬理学的特性も有する。
【0262】
8.例示的実施形態
種々の特定の実施形態が説明され記載されており、一部は下に表されているが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることが可能であることは認識されている。
1.(i)3つのCDRを含むVH鎖領域;及び(ii)3つのCDRを含むVL鎖領域を含む抗ヒトα4β7抗体であって、
VH CDR#1がGFNIKNTYMH(配列番号72)であり;
VH CDR#2がRIDPAKGHTEYAPKFLG(配列番号73)であり;
VH CDR#3がVDV(配列番号74)であり;
VL CDR#1がHASQDISDNIG(配列番号75)であり;
VL CDR#2がHGTNLED(配列番号76)であり;及び
VL CDR#3がVQYAQFPWT(配列番号77)である、
抗ヒトα4β7抗体。
2.EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFNIKNTYMHWVRQAPGQGLEWIGRIDPAKGHTEYAPKFLGRVTITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCYYVDVWGQGTTVTVSS(配列番号70)
のVH鎖領域;及び
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQDISDNIGWLQQKPGKSFKLLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPWTFGGGTKVEIK(配列番号71)
のVL鎖領域
を含む、実施形態1に記載の抗ヒトα4β7抗体。
3.ヒト化されている、実施形態1又は2に記載の抗ヒトα4β7抗体。
4.IgGである、実施形態1~3のいずれかに記載の抗ヒトα4β7抗体。
5.カッパ軽定常領域を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の抗ヒトα4β7抗体。
6.IgG1である、実施形態1~5のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
7.アミノ酸置換D356E及びL358Mを有するバリアントCH3ドメインを含む、実施形態1~6のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
8.配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号100のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
9.アミノ酸置換L234A及び/又はL235Aを有するバリアントCH2ドメインを含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
10.アミノ酸置換T250Qを有するバリアントCH2ドメイン、及び/又はアミノ酸置換M428Lを有するバリアントCH3ドメインを含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
11.抗ヒトα4β7抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、抗体が、(i)3つのCDRを含むVH鎖領域;及び(ii)3つのCDRを含むVL鎖領域を含み、
VH CDR#1がGFNIKNTYMH(配列番号72)であり;
VH CDR#2がRIDPAKGHTEYAPKFLG(配列番号73)であり;
VH CDR#3がVDV(配列番号74)であり;
VL CDR#1がHASQDISDNIG(配列番号75)であり;
VL CDR#2がHGTNLED(配列番号76)であり;及び
VL CDR#3がVQYAQFPWT(配列番号77)である、
ポリヌクレオチド。
12.実施形態11に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
13.実施形態12に記載のベクターをトランスフェクトされた真核宿主細胞。
14.実施形態11に記載のポリヌクレオチドを発現するように操作された真核宿主細胞。
15.哺乳動物宿主細胞である、実施形態13又は14に記載の真核宿主細胞。
16.抗ヒトα4β7抗体を産生する方法であって、(a)実施形態15に記載の真核宿主細胞を培養するステップと(b)抗ヒトα4β7抗体を回収するステップを含む方法。
17.実施形態12に記載のベクターで形質転換された原核宿主細胞。
18.実施形態17に記載のポリヌクレオチドを発現するように操作された原核宿主細胞。
19.細菌宿主細胞である、実施形態18に記載の原核宿主細胞。
20.抗ヒトα4β7抗体を産生する方法であって、(a)実施形態19に記載の原核宿主細胞を培養するステップと(b)抗ヒトα4β7抗体を回収するステップを含む方法。
21.HIV感染対象においてHIV感染のウイルス抑制を誘導する方法であって、ある量の、実施形態1~10のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体を対象に投与するステップを含む方法。
22.ウイルス抑制が免疫媒介される、実施形態21に記載の方法。
23.HIV感染対象においてHIV感染を処置する方法であって、ある量の、実施形態1~10のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体を対象に投与するステップを含む方法。
24.HIVを抑制する、抗ヒトα4β7抗体。
25.HIV複製及び/又はHIV感染を阻害する、実施形態24に記載の抗ヒトα4β7抗体。
26.ヒトα4β7を発現する細胞上でヒトα4β7を不活化する及び/又はヒトα4β7の活性化を減少させる、実施形態24に記載の抗ヒトα4β7抗体。
27.ヒトα4β7を発現する細胞上でヒトα4β7の内部移行を誘導する、実施形態24に記載の抗ヒトα4β7抗体。
28.CD4 T細胞同時刺激を阻害する、実施形態24に記載の抗ヒトα4β7抗体。
29.CD4 T細胞同時刺激が、MAdCAM-1又はHIV gp120により媒介される、実施形態28に記載の抗ヒトα4β7抗体。
30.CD4 T細胞でのHIV複製を阻害する、実施形態25に記載の抗ヒトα4β7抗体。
31.CD4 T細胞が、MAdCAM-1刺激CD4 T細胞又はHIV gp120刺激CD4 T細胞である、実施形態30に記載の抗ヒトα4β7抗体。
32.α4β7とそのリガンドの少なくとも1つの相互作用を破壊する、実施形態24に記載の抗ヒトα4β7抗体。
33.α4β7リガンドがMAdCAM-1である、実施形態32に記載の抗ヒトα4β7抗体。
34.α4β7リガンドがHIV gp120である、実施形態32に記載の抗ヒトα4β7抗体。
35.HIVのgp120媒介細胞間伝播を阻害する、実施形態34に記載の抗ヒトα4β7抗体。
36.HIVビリオンに結合する、実施形態24に記載の抗ヒトα4β7抗体。
37.HIVビリオンへの抗体結合が免疫複合体を形成する、実施形態36に記載の抗ヒトα4β7抗体。
38.免疫複合体が細胞上のFcγRに結合する、実施形態37に記載の抗ヒトα4β7抗体。
39.免疫複合体が抗原提示細胞(APC)上のFcγRに結合する、実施形態37に記載の抗ヒトα4β7抗体。
40.免疫複合体が食作用によりAPCに取り込まれる、実施形態39に記載の抗ヒトα4β7抗体。
41.HIV特異的免疫応答を誘導する、実施形態40に記載の抗ヒトα4β7抗体。
42.HIVに対する予防接種効果を誘導する、実施形態40又は41に記載の抗ヒトα4β7抗体。
43.HIV特異的免疫応答が、HIV感染個人においてHIVのウイルス制御をもたらす、実施形態41に記載の抗ヒトα4β7抗体。
44.ウイルス制御がウイルス負荷の減少をもたらす、実施形態43に記載の抗ヒトα4β7抗体。
45.ウイルス制御が、より低いウイルスセットポイントをもたらす、実施形態43に記載の抗ヒトα4β7抗体。
46.ウイルス制御が、抗レトロウイルス処置中断(ATI)後のウイルスリバウンドの遅延をもたらす、実施形態43に記載の抗ヒトα4β7抗体。
47.Ab-m1、Ab-c1、Ab-h1.1、Ab-h1.2、Ab-h1.3、Ab-h1.4、Ab-h1.5、Ab-h1.6、Ab-h1.7、Ab-h1.8、Ab-h1.9、Ab-h1.9a、Ab-h1.9b、Ab-h1.9c、Ab-h1.9d若しくはAb-h1.9eから選択される抗体由来の6つの相補性決定領域(CDR)のセット又は可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を有する、実施形態24~46のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
48.HIVを抑制する、実施形態1~10のいずれか一つに記載の抗ヒトα4β7抗体。
49.HIV複製及び/又はHIV感染を阻害する、実施形態48に記載の抗ヒトα4β7抗体。
50.ヒトα4β7を発現する細胞上でヒトα4β7を不活化する及び/又はヒトα4β7の活性化を減少させる、実施形態48に記載の抗ヒトα4β7抗体。
51.ヒトα4β7を発現する細胞上でヒトα4β7の内部移行を誘導する、実施形態48に記載の抗ヒトα4β7抗体。
52.CD4 T細胞同時刺激を阻害する、実施形態48に記載の抗ヒトα4β7抗体。
53.CD4 T細胞同時刺激が、MAdCAM-1又はHIV gp120により媒介される、実施形態52に記載の抗ヒトα4β7抗体。
54.CD4 T細胞でのHIV複製を阻害する、実施形態49に記載の抗ヒトα4β7抗体。
55.CD4 T細胞が、MAdCAM-1刺激CD4 T細胞又はHIV gp120刺激CD4 T細胞である、実施形態54に記載の抗ヒトα4β7抗体。
56.α4β7とそのリガンドの少なくとも1つの相互作用を破壊する、実施形態48に記載の抗ヒトα4β7抗体。
57.α4β7リガンドがMAdCAM-1である、実施形態56に記載の抗ヒトα4β7抗体。
58.α4β7リガンドがHIV gp120である、実施形態56に記載の抗ヒトα4β7抗体。
59.HIVのgp120媒介細胞間伝播を阻害する、実施形態58に記載の抗ヒトα4β7抗体。
60.HIVビリオンに結合する、実施形態48に記載の抗ヒトα4β7抗体。
61.HIVビリオンへの抗体結合が免疫複合体を形成する、実施形態60に記載の抗ヒトα4β7抗体。
62.免疫複合体が細胞上のFcγRに結合する、実施形態61に記載の抗ヒトα4β7抗体。
63.免疫複合体が抗原提示細胞(APC)上のFcγRに結合する、実施形態61に記載の抗ヒトα4β7抗体。
64.免疫複合体が食作用によりAPCに取り込まれる、実施形態63に記載の抗ヒトα4β7抗体。
65.HIV特異的免疫応答を誘導する、実施形態64に記載の抗ヒトα4β7抗体。
66.HIVに対する予防接種効果を誘導する、実施形態64又は65に記載の抗ヒトα4β7抗体。
67.HIV特異的免疫応答が、HIV感染個人においてHIVのウイルス制御をもたらす、実施形態64又は65に記載の抗ヒトα4β7抗体。
68.ウイルス制御がウイルス負荷の減少をもたらす、実施形態67に記載の抗ヒトα4β7抗体。
69.ウイルス制御が、より低いウイルスセットポイントをもたらす、実施形態67に記載の抗ヒトα4β7抗体。
70.ウイルス制御が、抗レトロウイルス処置中断(ATI)後のウイルスリバウンドの遅延をもたらす、実施形態67に記載の抗ヒトα4β7抗体。
71.先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体を含む医薬組成物。
【配列表】