(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】法面作業車
(51)【国際特許分類】
E02F 5/00 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
E02F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2023515420
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2021015797
(87)【国際公開番号】W WO2022224292
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390040073
【氏名又は名称】岡本 俊仁
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 俊仁
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218794(JP,A)
【文献】特開2017-145087(JP,A)
【文献】特開2013-119739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、
操縦席を備える作業車本体と、前記作業車本体に設けられ、かつ前記操縦席にいる作業者の操作によって制御状態が変わる走行装置と、前記作業車本体に設けられたウインチと、前記走行装置に接続されていると共に、前記走行装置を駆動させる走行装置用アクチュエーターと、前記ウインチに接続されていると共に、前記ウインチを駆動させるウインチ用アクチュエーターと、前記走行装置用アクチュエーター及び前記ウインチ用アクチュエーターにオイルを供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプと前記走行装置用アクチュエーターの間に設けられた流量調節弁と、前記流量調節弁を制御する制御手段とで構成され、
少なくとも前記制御手段又は前記流量調節弁の一方は、前記法面作業車が前記法面に位置する時、前記法面作業車が前記法面から落下しないように前記オイルの供給を調節でき
、
前記制御手段は、前記作業車本体の傾きを感知するセンサーを備え、前記作業車本体の傾きに応じて、前記走行装置用アクチュエーターへのオイル供給量を制御することを特徴とする法面作業車。
【請求項2】
前記作業車本体には、前記操縦席を有する作業機械が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の法面作業車。
【請求項3】
前記走行装置用アクチュエーター、前記ウインチ用アクチュエーター、前記油圧ポンプ、前記流量調節弁及び前記制御手段はそれぞれ1対設けられ、一方の油圧ポンプは、一方の走行装置に接続する一方の走行装置用アクチュエーターに一方の流量調節弁を介してオイルを供給するととともに、一方のウインチに接続する一方のウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、他方の油圧ポンプは、他方の走行装置に接続する他方の走行装置用アクチュエーターに他方の流量調節弁を介してオイルを供給するとともに、他方のウインチに接続する他方のウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、前記一方の流量調節弁は一方の制御手段によって制御され、前記他方の流量調節弁は他方の制御手段によって制御されることを特徴とする
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の法面作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面を移動して削孔等の作業を行う法面作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面において、ウインチのワイヤーで牽吊されて法面等を走行し、法面において作業を行う法面作業車としては、「無限軌道、ウインチ及び作業機械を備える車体と、この車体のベース板の後部寄りの部位に取付けられたエンジンと、このエンジンの駆動によって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの加圧された作動油を油圧供給ホースを介して供給される油圧駆動装置と、この油圧駆動装置から加圧された作動油を前記車体の走行装置等に供給する法面作業車」が知られている。
【0003】
また、ウインチと走行装置に同じ油圧回路を用いるとともに、油圧を自動で制御可能にする法面作業車用油圧バルブとしては、「法面作業車の走行装置用油圧アクチュエータ及びウインチ用油圧アクチュエータと、これらを作動させるためのオイルを圧送する油圧ポンプの間に設けられた法面作業車用油圧バルブであって、該法面作業車用油圧バルブは、バルブ本体と、該バルブ本体に形成されたピストン摺動用孔と、該ピストン摺動用孔に摺動可能に設けられたピストンと、該ピストンを原点位置に復帰させる原点復帰機構と、前記バルブ本体に前記ピストン摺動用孔を貫通するように形成された走行装置用オイル流路と、前記バルブ本体に前記ピストン摺動用孔を貫通するように形成されたウインチ用オイル流路と、前記ピストン摺動用孔の両端をそれぞれ密封状態で塞ぐ封止手段とで構成され、前記封止手段は、前記ウインチ用オイル流路側へ突出する位置決め片を備え、前記ピストンは前記原点位置では前記位置決め片と前記ピストンの端部が当接するとともに、前記ピストンは、前記走行装置用オイル流路とウインチ用オイル流路が前記ピストン摺動用孔を介して連通しないように封止できるシール部を有するとともに、ウインチ用オイル流路に流れるオイルの圧力が高くなると、前記走行装置用オイル流路のオイルの流れを阻害するように摺動することを特徴とする法面作業車用油圧バルブ」が知られている(特許文献2)。
【0004】
しかし、このようなバルブを用いた法面作業車を用いた場合、法面の傾斜に自動的に対応し、適切な油圧に調整することができるものの、法面作業車を運転している作業者が適宜油圧の配分を変えることができず、やや作業の効率が低下するおそれがあるものであった。
【0005】
一方、作業者がウインチ及び走行装置両方の油圧を任意に調整できる場合には、ウインチの油圧を必要以上に低下させてしまい、法面に法面作業車を保持する力が低下し、法面作業車が落下してしまう危険性があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-119739号公報
【文献】特許第6726475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、法面において効率よく移動や作業ができるとともに、安全性の高い法面作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の法面作業車は、法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、操縦席を備える作業車本体と、前記作業車本体に設けられ、かつ前記操縦席にいる作業者の操作によって制御状態が変わる走行装置と、前記作業車本体に設けられたウインチと、前記走行装置に接続されていると共に、前記走行装置を駆動させる走行装置用アクチュエーターと、前記ウインチに接続されていると共に、前記ウインチを駆動させるウインチ用アクチュエーターと、前記走行装置用アクチュエーター及び前記ウインチ用アクチュエーターにオイルを供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプと前記走行装置用アクチュエーターの間に設けられた流量調節弁と、前記流量調節弁を制御する制御手段とで構成され、少なくとも前記制御手段又は前記流量調節弁の一方は、前記法面作業車が前記法面に位置する時、前記法面作業車が前記法面から落下しないように前記オイルの供給を調節でき、前記制御手段は、前記作業車本体の傾きを感知するセンサーを備え、前記作業車本体の傾きに応じて、前記走行装置用アクチュエーターへのオイル供給量を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の法面作業車の前記作業車本体には、前記操縦席を有する作業機械が設けられていることを特徴とする。
【0010】
【0011】
請求項3に記載の法面作業車の前記走行装置用アクチュエーター、前記ウインチ用アクチュエーター、前記油圧ポンプ、前記流量調節弁及び前記制御手段はそれぞれ1対設けられ、一方の油圧ポンプは、一方の走行装置に接続する一方の走行装置用アクチュエーターに一方の流量調節弁を介してオイルを供給するととともに、一方のウインチに接続する一方のウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、他方の油圧ポンプは、他方の走行装置に接続する他方の走行装置用アクチュエーターに他方の流量調節弁を介してオイルを供給するとともに、他方のウインチに接続する他方のウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、前記一方の流量調節弁は一方の制御手段によって制御され、前記他方の流量調節弁は他方の制御手段によって制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、操縦席にいる作業者の手動操作によって走行装置に供給されるオイル供給量を調節することができるので、法面の傾斜に合わせて適宜走行装置へ供給するオイルを調節することができ、効率よく法面上を移動することができる。
(2)制御手段又は流量調節弁は、法面作業車が前記法面から落下しないように前記オイルの供給を調整することができるため、ウインチの牽引力がなくなり法面作業車が誤って落下することを防止することができる。
(3)請求項2に記載の発明においては、前記(1)~(2)と同様な効果が得られるとともに、法面において重機を用いて種々の作業を行うことができる。
(4)請求項3に記載の発明においては、前記(1)~(3)と同様な効果が得られるとともに、左右の走行装置等を別個に制御・駆動できるので、より効率よく法面上を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至
図5は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図6乃至
図8は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
図9及び
図10は本発明の第3の実施形態示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、左右方向とは
図2(平面視)における左右方向であり、前後方向とは
図1における左右方向、上下方向とは
図1における上下方向をいう。
【0015】
図1乃至
図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は主に少なくとも40度以上の急斜面状の法面2で作業可能な法面作業車で、該法面作業車1は走行可能な作業車本体3と、該作業車本体3に設けられた油圧ショベル等の操縦席4を有する作業機械5とで構成されている。
【0016】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、作業者が手動操作可能な操縦席4を有する作業機械5を備える作業車本体3と、前記作業車本体3に設けられた左右1対の走行装置6と、前記作業車本体3に設けられた左右1対のウインチ7と、前記左右1対の走行装置6にそれぞれ接続され、前記走行装置6を駆動させる走行装置用アクチュエーター8と、前記左右1対のウインチ7にそれぞれ接続され、前記ウインチ7を駆動させるウインチ用アクチュエーター9と、前記1対の走行装置用アクチュエーター8及び前記1対のウインチ用アクチュエーター9にオイルを供給する油圧ポンプ10と、油圧ポンプ10を作動させるためのエンジン11と、前記油圧ポンプ10と前記走行装置用アクチュエーター8の間に設けられた流量調節弁12と、前記操縦席4から操作でき、前記流量調節弁12を制御する制御手段13とで構成されている。
【0017】
作業機械5は、作業車本体3の上部に設けられており、本実施形態では、作業車本体3の前方の上部に突出するように形成された支持台14に一端部が枢支ピン15を介して、他端部が上下方向に回動可能に取付けられたベース板16と、このベース板16上に取付けられ、駆動アーム17やバケット18、走行装置6及び制御手段13を操作する操縦席4と、この操縦席4の前端部に取付けられた駆動アーム17と、この駆動アーム17の先端部に着脱可能に取付けられた作業アタッチメントとしてのバケット18やブレーカー等を備えており、法面2上でいわゆる油圧ショベルと同様の作業を行うことができる。
【0018】
走行装置6は、本実施形態では、無限軌道6が用いられており、これらの無限軌道6は前記油圧ポンプ10に接続された走行装置用アクチュエーター8により駆動する。なお、本発明においては油圧ポンプ10と走行装置用アクチュエーター8の間に流量調節弁12が設けられており、操縦席4から制御手段13を操作することによりこの流量調節弁12の開度を調節することができる。
【0019】
作業車本体3の後方側の左右部位には、1対のウインチ7が設けられている。このウインチ7にはそれぞれワイヤー19が備えられており、このワイヤー19を法面2の上部の主アンカー20に固定してウインチ7を巻き上げることにより、急角度の法面2であっても走行することができるものである。本発明では傾斜が40度以上の急斜面状の法面を想定しているが、例えば略垂直の壁面のような法面2であっても2つのウインチ7に接続されたワイヤー19で支持することにより作業車本体3を法面2の任意の位置に位置させ、作業することができる。
【0020】
このウインチ7は、前記油圧ポンプ10に接続されたウインチ用アクチュエーター9により駆動する。
【0021】
ところで、この油圧ポンプ10を作動させるためのエンジン11は、作業車本体3に回転可能に設けられている。このようにエンジン11を設けることにより、法面2を移動する場合であっても、エンジン11は重力によって常時略水平状態を維持することができ、エンジン11の焼付き等を防止することができる。
【0022】
本実施形態の油圧回路21は、
図3に示すように、油圧ポンプ10が走行装置6に接続された走行装置用アクチュエーター8及びウインチ7に接続されたウインチ用アクチュエーター9へ圧力媒体としてのオイルを供給するように構成されている。
【0023】
また、本実施形態では、油圧ポンプ10と走行装置用アクチュエーター8を接続する流路に流量調節弁12を設け、この流量調節弁12を制御する制御手段13を備えている。
この流量調節弁12は、本実施形態ではニードル弁12を用いており、このニードル弁12の開度を調節する制御手段13が操縦席4に設けられている。制御手段13は、例えば法面の傾斜角度を入力して走行装置用アクチュエーター8へのオイル供給量を設定するものや、流量調節弁12の開度を入力して走行装置用アクチュエーター8へのオイル供給量を設定するもの等が考えられる。
【0024】
ニードル弁としては、電動ニードル弁を用い、電気的に操縦席4から制御することが望ましいが、例えば運転席からニードル弁12のハンドルを直接操作することで制御する制御手段13としてもよい。
【0025】
この制御手段13は、前記作業車本体3が法面2に位置する時、前記作業車本体3が法面2から落下しないように走行装置用アクチュエーター8へのオイルの供給を制限(調節)するように設定されている。
【0026】
すなわち、流量調節弁12は操縦席4から、例えば該操縦席4又は該操縦席4の近傍の操作パネル4a付近に設けられている制御手段13を介して制御可能であるが、略垂直に近い法面2等に法面作業車1が位置している状態で制御手段13を操作し、走行装置6へのオイル供給を増大させる(ウインチ7へのオイル供給を減少させる)操作をした場合には、その操作を無効とし、前記走行装置用アクチュエーター8へのオイル供給量を増大させる制御を阻害することで法面作業車1が落下することを防止する。
【0027】
具体的には、前記作業車本体3に設けられ、作業車本体3の傾きを感知するジャイロセンサー等のセンサー22が制御手段13に接続されており、前記作業車本体3の傾きに応じて流量調節弁12の開度の最大値を制御し、前記走行装置用アクチュエーター8へのオイル供給量の最大値を制御するように構成するとよい。なお、作業車本体3の後部や作業車本体3の後端部に設けられた排土板等にも平坦面や緩斜面との接触を感知する接触センサーやエリアセンサー等を設け、作業車本体3の傾き等が変わっていなくても、前記接触センサー等により作業車本体3が平坦面等に接触したことを検知した場合に、制御手段13が流量調節弁12の開度の最大値を制御し、走行装置5により多くオイルを供給するように制御できるようにしてもよい。
一方、ウインチ用アクチュエーター9へのオイル供給量の増大については制限する必要はない。
【0028】
なお、「落下する」とは、作業者が怪我をする又は法面作業車1が破損する速度以上で法面作業車1が下方へ移動することをいい、法面作業車1がきわめてゆっくり下方へ移動するような状態は、ここでいう「落下」には含まれない。
【0029】
このような流量調節弁12及び制御手段13を用いることにより、法面2が急角度から垂直に近いような角度になった場合に、操縦席4から制御手段13を用いて流量調節弁12の開度を手動で調整し、走行装置6へのオイルの供給を少なくする又はほとんどない状態とすることにより、ウインチ7を駆動させて法面作業車1(作業車本体3)を上方へ移動させることができるとともに、制御手段13の誤操作を行ったとしても、法面作業車1が法面2から落下し、作業者が怪我をすることや法面作業車1等が破損することを防止することができる。
【0030】
ところで、制御手段13を用いて法面作業車1が前記法面2から落下しないように前記オイルの供給を調節しているが、例えば開度を全開にしてもウインチ用アクチュエーター9に十分なオイルが供給され、法面作業車1が法面2から落下しないような流量調節弁12を用いてもよい。この場合には、制御手段13及びセンサー22を用いなくても流量調節弁12単体で法面作業車1の落下を防止することができる。
【0031】
走行装置6及びウインチ7以外の油圧機器、例えば作業機械5を作動させる油圧ポンプについては、別途設けることが望ましい。
【0032】
法面2で作業を行なう場合、法面作業車1を法面2の下部に位置させ、左右のウインチ7のワイヤー19の先端部を法面上部の主アンカー20に固定する。このとき、
図4に示すように、ワイヤー19を平面視において逆ハの字状になるように固定することが望ましい。主アンカー20にワイヤー19を固定したら、制御手段13を操作して流量調節弁12を制御し、油圧ポンプ10から圧送されるオイルを適切な配分となるように設定する。次に油圧ポンプ10を作動させ、ウインチ7を巻き上げるとともに、走行装置6を作動させて法面作業車1を前進させる。
【0033】
ところで、本実施形態では、作業車本体3の前方側の左右部位に設けられたワイヤーフェアリーダー19aを介してワイヤー19を主アンカー20に固定している。
作業位置に法面作業車1が到着したら、作業機械5により法面上で作業を行う。
なお、法面2の途中で傾斜が変わる場合には、その都度法面2の傾斜に合わせて制御手段13を操作し、流量調節弁は12を制御する。
【0034】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図6乃至
図10に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
図6乃至
図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、前記油圧ポンプ10、10A、前記流量調節弁12、12A及び前記制御手段13、13Aをそれぞれ1対設け、一方の油圧ポンプ10は、一方の走行装置6(例えば作業車本体3の左側に設けられた走行装置6)に接続する一方の走行装置用アクチュエーター8に一方の流量調節弁12を介してオイルを供給ととともに、一方のウインチ7(例えば作業車本体3の左側に設けられたウインチ7)に接続する一方のウインチ用アクチュエーター9へオイルを供給し、他方の油圧ポンプ10Aは、他方の走行装置6A(例えば作業車本体3の右側に設けられた走行装置6A)に接続する他方の走行装置用アクチュエーター8Aに他方の流量調節弁12Aを介してオイルを供給ととともに、他方のウインチ7A(例えば作業車本体3の左側に設けられたウインチ7A)に接続するウインチ用アクチュエーター9Aへオイルを供給する油圧回路21Aにした点で、このような法面作業車1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0036】
本実施形態では、作業車本体3の左側に設けられた走行装置6に接続する走行装置用アクチュエーター8と油圧ポンプ10の間に設けられた一方の流量調節弁12は制御手段13によって制御される。
【0037】
また、作業車本体3の右側に設けられた走行装置6Aに接続する走行装置用アクチュエーター8Aと油圧ポンプ10Aの間他方の流量調節弁12Aは制御手段13Aによって制御される。
【0038】
このように一方と他方の走行装置6、6Aやウインチ7、7Aをそれぞれ個別に駆動させ、流量調節弁12、12Aをそれぞれ制御手段13、13Aによって制御できるので、より効率よく法面2上を移動することができる。
【0039】
図9及び
図10に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、作業機械を備えず、作業車本体3の上部に走行装置6及び制御手段13を操作可能な操縦席4Aを有する作業台23のみを設け、作業機械5を備えないように構成した点で、このような法面作業車1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0040】
本実施形態の法面作業車1Bは、作業車本体3の支持台14に枢支ピン15及びベース板16を介して作業台23が設けられており、この作業台23に操縦者や作業者が乗り、法面2上で作業を行う場合等に用いられる。ところで、ベース板16は作業台23の底面も兼ねており、作業台23の周囲には作業者が落下することを防止するための柵が設けられている。
なお、本発明の実施形態において、走行装置として無限軌道を用いるものについて説明したが、例えば、油圧アクチュエーターで駆動するタイヤ等を走行装置として用いてもよい。
【0041】
また、作業機械として、いわゆる油圧ショベルを備えるものについて説明したが、例えば削孔装置、クレーン、杭打機、ブレーカー等のいわゆる重機を用いてもよい。
【0042】
ところで、本発明の実施形態においては、作業車本体の左右部位に走行装置及びウインチを作動させる油圧ポンプを配置し、左側の油圧ポンプによって左側の走行装置及びウインチを作動させ、右側の油圧ポンプによって右側の走行装置及びウインチを作動させていたが、左側の油圧ポンプによって右側の走行装置及びウインチを作動させ、右側の油圧ポンプによって左側の走行装置及びウインチを作動させてもよく、油圧ポンプを配置する位置も適宜変更できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明はウインチのワイヤーで牽吊されて法面等の急斜面の傾斜地で各種の作業を行なう場合に使用される法面作業車を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B:法面作業車、 2:法面、
3:作業車本体、 4、4A:操縦席、
5:作業機械、 6:走行装置、
7:ウインチ、 8:走行装置用アクチュエーター、
9:ウインチ用アクチュエーター、 10:油圧ポンプ、
11:エンジン、 12、12A:流量調節弁、
13、13A:制御手段、 14:支持台、
15:枢支ピン、 16:ベース板、
17:駆動アーム、 18:バケット、
19:ワイヤー、 20:主アンカー、
21、21A:油圧回路、 22:センサー、
23:作業台。