(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ガンを処置するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231225BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20231225BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231225BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K31/60
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020545877
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2018082429
(87)【国際公開番号】W WO2019101956
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(73)【特許権者】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】グリセリ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】トゥラン,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ブナスール・グリセリ,アンネリーズ
(72)【発明者】
【氏名】デステルケ,クリストフ
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516754(JP,A)
【文献】Principles of Tissue Engineering, 2014, p.511-529,<http://dx.doi.org/10.1016/B978-0-12-398358-9.00026-4>
【文献】Cell Stem Cell, 2018.4, Vol.22, pp.501-513
【文献】Journal of Ovarian Research, 2015, Vol.8, #68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 31/60
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるガンの治療
的又は予防
的処置のための
同時、個別又は逐次投与用の医薬を調製するための、(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)不活
性化
された胎児細胞の集団を含有するワクチン組成物との組み合わせの使用であって、
該胎児細胞が、処置すべきガンと同じ細胞分化
経路(内胚葉、中胚葉、又は外胚葉)で
分化されており、
該胎児細胞が、多能性を喪失しておりかつ分化経路に従事し始めている細胞であり、該胎児細胞が、初期又は後期胎児マーカーを発現し、
該胎児細胞が、多能性の特徴であるマーカー
を枯渇しており、
該細胞は照射によって不活性化され、不活性化
された細胞が、増殖及び組織形成をすることができない
、使用。
【請求項2】
前記集団の細胞が、前記被験体の前記ガン
の細胞によっても発現される1つ以上の胎児抗原を発現する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記不活化
された胎児細胞の集団が、オルガノイドである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記胎
児細胞が、
a
.多能性幹細胞の集団を分化させる工程であって、
該多能性幹細胞は、患者の特定のガンに関係する系統経路(内胚葉、中胚葉、又は外胚葉)に向かう胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞(iPSC)であり、該多能性細胞が、
突然変異誘発剤の存在下で
場合によりエクスパンション
されたものである、
工程、
b.
そのように分化させた細胞をエクスパンションさせる工程、
c.場合により、エクスパンション中に突然変異誘発剤に曝露して、該集団の細胞において遺伝子の突然変異誘発を誘導する工程、
d.該集団の細胞の少なくとも70%が胎児マーカーを発現し、多能性の特徴であるマーカーが枯渇
していることを検証する工程、
e.場合により、該集団の細胞が、被験体のガン細胞に存在する少なくとも1つの腫瘍関連抗原(TAA)又はネオ抗原を発現することを検証する工程、
f.該細胞が
その分裂能力を喪失するように、該細胞を不活
性化する工程
を含むプロセスにより得られたものである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記突然変異誘発剤が、化学突然変異誘発剤及び放射線突然変異誘発剤(X線、紫外線)からなる群より選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記突然変異誘発剤が、ENU、活性酸素種、脱アミノ化剤、多環式芳香族炭化水素、芳香族アミン及びアジ化ナトリウムからなる群より選択される、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、バルプロ酸(VPA)、ボリノスタット、パノビノスタット、ギビノスタット、ベリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、プラクチノスタット、チダミド、キシノスタット及びアベキシノスタットからなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記不活性化
された胎
児細胞が、ヒト
由来胎児造
血細胞
であり、前記集団における細胞が、ARHGEF10L、TRIM66、NKAIN、ITGAGGT1、PDZD、MUC4、MUC2、NECAB3、MNT、GLTSCR1、COPZ2、ZFP36、MIB2、ABCC12、IGFN1、LRRK2、RIN3、GGT1、ANK2、HDAC7、MUC20、SDCCAG3、DNAI1、BTNL9、ABTB2、MC2R、DOCK4、FSD1L、CRP、PPP1R3A、SLC22A17、PITPNM1、A2M、CTDSP2、IFNA14、KIF5C、THNSL2、GTF3C3、NRXN1、MED26、FNBP1、TMCO3、ING1、ZNF292、RBL1、CD109、FOXRED2、PLIN2、ZNF85、SESN1、CENPE、BTBD7、STOM、ZNF317、TET1、LRBA、MED4、CDC27、BCR、HPRT1、NASP、及びMSH2からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子において、
エクスパンション後に少なくとも0.1%の突然変異率を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記不活性化
された胎
児細胞が、
ヒト由来胎児腎細胞
であり、前記集団における細胞が、以下の群:TRAPPC4、MX1、ITSN1、DNAJC7、TAF15、TMEM88、CRYM、PRTG、TYRO3 C12ORF60、FJX1、ADM、FAM45A、ASS1、CA2、ZFHX4、CLVS1、NRG1、EZH2、SLC22A23、MSH5、FBN2、GTF2H2、LIX1、HESX1、FZD5、LRP2、RHOQ、NUAK2、ILF2、ACP6、RPL5、NMNAT1、ID1、U2AF2、KLHL14、CDH2、GREB1L、ARRDC4、THBS1、BMP4、LRIG3、SOX5、SF1、LGR4、MGEA5、BCORL1、STOM、GLIS3、ANXA1、KDM4C、SDC2、TMEM130、MAGI2、GLI3、HEY2、TPBG、ID4、MYLIP、ENC1、EGR1、CDH6、NPY1R、SEL1L3、LRAT、CLDN1、CEP97、BHLHE40、ARL5A、ARL4C、ZNF385B、LYPD1、B3GNT7、INSIG2、ARHGAP29、NOTCH2、及びIFI16から選択される少なくとも1つの胎児抗原を発現する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記不活性化
された胎
児細胞が、
肺胎児細胞であり、前記集団中の細胞が、以下の群:AIM2、AQP4、AURKA、BMP5、CDCA7、CEP55、CYP4B1、DACH1、EMP2、EPB41L4A、GJB2、MAOA、MELK、MKI67、NEBL、NFIA、PHF19、RNF144B及びUHRF1から選択される少なくとも1つの胎児抗原を発現する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ガンが、肝ガン、膀胱ガン腫、乳ガン腫、子宮頸ガン腫、胆管ガン腫、結腸直腸ガン腫、胃肉腫、神経膠腫、膠芽腫、肺ガン腫、リンパ腫、急性及び慢性リンパ性及び骨髄性白血病、黒色腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、卵巣ガン腫、膵臓ガン腫、前立腺ガン腫、胃ガン腫、腎ガン腫、頭頸部腫瘍、並びに固形腫瘍及び造血器悪性腫瘍の全てのサブタイプからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学分野におけるものであり、より具体的には、本発明は、抗ガンワクチン併用療法に関する。
【0002】
特に、本発明は、複数のネオ抗原を提示する胎児幹細胞を含む組成物を生産する方法及びガン細胞ワクチンの調製において有用なそれらに関する。
【背景技術】
【0003】
ガン幹細胞(CSC)は、腫瘍持続及び再発に反応する自己複製ガン細胞の少数集団であり、従来の処置に対して耐性である可能性がある。これらのCSCは、最近、乳房、結腸、頭頸部ガン腫を含む様々な起源の固形腫瘍において証明され、新たな治療ターゲットに相当する。それらのCSCは、ヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と発現を共有する多数の胚性抗原を発現することが示されている。それらの胚性抗原のいくつかの発現はまた、腫瘍形成及び/又は腫瘍進行に関連する分化ガン細胞において見出されている。さらに、ガンはまた、多能性細胞において発現されない胎児抗原を発現する。
【0004】
過去10年間、ガン処置アプローチは、ターゲット療法から免疫介入ストラテジに進歩し、生存並びにガン関連罹患率及び死亡率に関する前例のない利益が得られた。しかしながら、免疫チェックポイント阻害剤の有効性及び臨床利益は証明されているにもかかわらず、腫瘍特異的免疫反応及びガン細胞自律性合図に影響を与える免疫調節因子により引き起こされる多数の部分応答因子及び一次耐性腫瘍(「先天性耐性」)がある。PD-1/PD-L1遮断に対する初期反応の後、進行及び再発中の多数のガンにおいて、獲得耐性が起こる。PD1/PDL-1遮断に対する獲得耐性の基礎となる機構は、獲得体細胞突然変異(ミュータノーム)を伴うネオ抗原状況の進化(枯渇T細胞のエピジェネティック安定性を伴う進化的腫瘍免疫微小環境(TIME))により引き起こされる。
【0005】
ガン生殖細胞系抗原は、胚及び胎児発生中に発現されるタンパク質であり、これらのエピジェネティックコントロール抗原は、多くのガンの様々な部分において再発現され得る。これまでに、胚性抗原、例えばガン胎児性抗原(CEA)、アルファフェトプロテイン又はガン/精巣抗原(NY-ESO-1)をターゲティングするために、いくつかのヒトガンワクチン試験が設定されている。ガン生殖系列抗原NY-ESO-1のHLA*0201エピトープのT細胞抗原レセプター(TCR)を発現するように遺伝子操作された自己リンパ球の養子細胞移入は、転移性黒色腫を有するいくつかの患者において持続的な腫瘍退縮をもたらした。残念ながら、エスケープ突然変異体及び新規体細胞ネオ抗原の急速な出現、並びに一価ガンワクチンの一般的な非効率性により、1つの抗原のみのターゲティングは、強力な抗腫瘍免疫反応を生成して腫瘍拒絶を媒介するために十分ではないことが示された。
【0006】
再生医療における幹細胞の可能性に対する最近の関心は、ESCに表現型的及び機能的に類似する未分化iPSCに加えて、十分に定義された未分化ESC株も広く利用可能にした。
【0007】
幹細胞性シグネチャを有するガンは、強力な免疫抑制性腫瘍微小環境からの内在性経路及び誘導因子に続発するクロマチンランドスケープの重大な変化を伴うゲノム可塑性を示す。未分化前駆細胞に脱分化するそれらの能力は、CMHクラスIのダウンレギュレーション及び共阻害分子発現のアップレギュレーションを伴う胎児発生由来の遺伝子の再発現を腫瘍クローンに付与する。
【0008】
したがって、幹細胞シグネチャを有するガンを予防及び/又は処置するための新たなアプローチが引き続き必要である。幹細胞突然変異体ネオエピトープに対するワクチン接種は、養子移入T細胞又は免疫学的チェックポイント遮断により活性化された細胞の免疫反応を強化するために使用され得る。
【0009】
この及び他の必要性は、本開示の主題により全体的又は部分的に対処される。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ガンを患っている被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療量の(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)免疫原性エレメントを含有するワクチン組成物とを同時投与、個別投与又は逐次投与する工程を含む、方法に関する。好ましくは、免疫原性エレメントは、不活性化胎児細胞の集団であり、胎児細胞は、有利には、処置すべきガンと同じ細胞分化系統である。本発明は、特に、特許請求の範囲により規定される。
【0011】
一実施態様では、本発明は、被験体におけるガンの処置において使用するための、(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)不活化胎児細胞の集団を含有するワクチン組成物との組み合わせに関する。別の実施態様では、ワクチンは、不活化胎児細胞の集団からなる。特に、集団の細胞は、被験体のガン細胞によっても発現される1つ以上の目的の抗原を発現する。特定の実施態様では、不活化胎児細胞の集団は、オルガノイドであるか、又はオルガノイドに由来する(すなわち、オルガノイドの3D構造を破壊することにより得られたものである)。
【0012】
胎児幹細胞は、
a.患者の特定のガンに関係する経路に向けて多能性細胞の集団を分化させる工程、
b.このように分化させた細胞をエクスパンションさせる工程、
c.場合により、エクスパンション中に突然変異誘発剤に曝露して、該集団の細胞において遺伝子の突然変異誘発を誘導する工程、
d.該集団の細胞の少なくとも70%が胎児マーカーを発現することを検証する工程、
e.場合により、該集団の細胞が、被験体のガン細胞に存在する少なくとも1つの腫瘍関連抗原(TAA)又はネオ抗原を発現することを検証する工程、
f.該細胞が分裂能力を喪失するように、該細胞を不活化する工程
を含むプロセスにより得られたものである場合が好ましい。
【0013】
突然変異誘発が実施される場合、突然変異誘発剤は、化学突然変異誘発剤及び放射線突然変異誘発剤(X線、紫外線)からなる群より選択される場合が好ましい。特に、突然変異誘発剤は、ENU、活性酸素種、脱アミノ化剤、多環式芳香族炭化水素、芳香族アミン及びアジ化ナトリウムからなる群より選択される。
【0014】
好ましい実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、バルプロ酸(VPA)、ボリノスタット、パノビノスタット、ギビノスタット、ベリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、プラクチノスタット、チダミド、キシノスタット及びアベキシノスタットからなる群より選択される。
【0015】
本発明はまた、iPS由来胎児造血系統から得られた不活性化胎児幹細胞を含む不活性化細胞の組成物であって、集団中の細胞が、エクスパンション後に、
【表1】
からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子において、少なくとも0.1%の突然変異率を示す、組成物に関する。これらの遺伝子は、一般的に、急性白血病、特に急性骨髄性白血病において発現される。
【0016】
本発明はまた、iPS由来腎臓オルガノイド中に不活性化胎児幹細胞を含む不活化胎児細胞の組成物であって、集団中の細胞が、以下の群:
【表2】
から選択される少なくとも1つの胎児抗原を発現する、組成物に関する。これらの遺伝子は、一般的に、c-Met突然変異に関連するか又は関連しない原発性成人腎ガン腫において発現される。
【0017】
本発明はまた、iPS由来肺オルガノイド中に不活性化胎児幹細胞を含む不活化胎児細胞の組成物であって、集団中の細胞が、以下の群:AIM2、AQP4、AURKA、BMP5、CDCA7、CEP55、CYP4B1、DACH1、EMP2、EPB41L4A、GJB2、MAOA、MELK、MKI67、NEBL、NFIA、PHF19、RNF144B及びUHRF1から選択される少なくとも1つの胎児抗原を発現する、組成物に関する。これらの遺伝子は、一般的に、成人肺ガン腫において発現される。
【0018】
本発明はまた、ワクチン組成物であって、
a.不活性化胎児幹細胞の集団と
b.免疫反応及び/又はMHC I発現を刺激する薬剤と
を含むワクチン組成物に関する。
【0019】
特に、不活化胎児幹細胞は、突然変異誘発胎児幹細胞を含有する。特にガンが胎児幹細胞シグネチャを有する場合、それは、被験体におけるガンの処置に使用され得る。
【0020】
また、本発明の一部は、本明細書中に開示されるワクチン組成物と、免疫化に関する指示を提供する情報リーフレットとを含む、キットである。
【0021】
本発明はまた、同時投与、個別投与又は逐次投与により被験体におけるガンを処置するために使用するための、i)不活性化胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する化合物との組み合わせ調製物に関する。これは、ガンが、膀胱ガン腫、乳ガン腫、子宮頸ガン腫、胆管ガン腫、結腸直腸ガン腫、胃肉腫、神経膠腫、肺ガン腫、リンパ腫、急性及び慢性リンパ性及び骨髄性白血病、黒色腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、卵巣ガン腫、膵臓ガン腫、前立腺ガン腫、胃ガン腫、腎ガン腫、頭頸部腫瘍、並びに固形腫瘍及び造血器悪性腫瘍の全てのサブタイプからなる群より選択される場合に使用され得る。
【0022】
治療量の組成物(不活化胎児細胞集団及びアジュバント)を、それを必要とする患者に投与する処置方法も開示され、本発明の一部である。
【0023】
本出願では、全ての遺伝子は、当業者に公知のそれらの名称で示されている。このような名称から、任意の検索エンジン(一般検索エンジンを含む)を使用することにより、又はガン遺伝子のライブラリーを維持するために特異的なデータベース、例えばCOSMICデータベース(英国のSanger Instituteにより開発されたCatalogue Of Somatic Mutations In Cancer)又はCancer Genome Atlas(米国のNCBIにより維持されているTCGA)において遺伝子及びタンパク質の配列を見出し得る。これらのデータベースは、ガン細胞において発現される抗原をコードする様々な配列を再編成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】c-MET突然変異IPSCの腎臓オルガノイド特異化中に同定されたトランスクリプトーム。PB56(c-MET突然変異IPSC)とEB56(親c-Met IPSC由来の胚体由来胎児腎臓オルガノイド)との間でディファレンシャルに発現される遺伝子の発現ヒートマップ(ユークリッド距離)。
【
図2】cMET-IPSCのトランスクリプトームと原発性乳頭状腎ガン腫(PRCC)サンプルのものとの間のメタ分析のベン図。PRCC発現プロファイルにおける胚体胎児腎臓オルガノイドトランスクリプトームシグネチャのp値は、フィッシャーの超幾何検定により計算した。
【
図3】IPSCの分化後に得られる培養ヒト造血胎児幹細胞(EB)における、HADCi(VPA)の存在下及び非存在下におけるCMHクラスI及びIIの発現。
【
図4】BCR-ABL陽性IPSCにおいて突然変異原剤により誘導されたヒト由来造血胎児幹細胞におけるゲノム変異体。親BCR-ABL陽性IPSCと比較して、エクソームシークエンシングによる、ゲノム変異体により影響を受けることが見出された遺伝子のベン図。3つの異なる実験条件を試験した:ゲノム不安定性を有しない派生造血EB(青色)、ENUにより誘導されたゲノム不安定性を有する初期継代の派生胎児造血EB(緑色)、ENUにより誘導されたゲノム不安定性を有する後期継代の派生胎児造血EB(赤色)。
【
図5】AMLトランスクリプトーム(GSE10358)と比較した、ENUで処理したIPSCS BCR-ABLのトランスクリプトーム実験において123個の遺伝子に対して実施した教師なし主成分分析。AML患者ブラストトランスクリプトーム分析に統合された「ディッシュにおける急性転化(blast crisis in dish)」モデルにおける影響を受けた123個の遺伝子は、予後識別を予測する(ログランクp値=1E-4)。小さな灰色の斑点:G2予後良好AML。大きな黒色の斑点:G1予後不良AML。横座標:要因分析(主成分分析)の任意単位で表される第1次元;縦座標:要因分析(主成分分析)の任意単位で表される第2次元。
【
図6】予後良好及び不良シグネチャを有するAML患者の全生存。上の曲線:予後良好AML(G2)。下の曲線:予後不良AML(G1)。横座標:全生存の確率;縦座標:月単位で表される時間。
【
図7】19個の共通遺伝子を示す、iPSCから得られた肺オルガノイドと肺ガンとの間のシグネチャ。
【
図8】MHC1 HLA-ABCの発現を評価するために使用したHDACiの濃度。
【
図9】CML由来IPSC(PB32)上における、HADCiの存在下及び非存在下におけるMHC1 HLA ABCの発現。左パネル:APCとカップリングしたMHC I HLA-ABCモノクローナル抗体を使用して、4つの異なるHDACiで処理したiPSC(PB32)のDMSOコントロールに対するRFI平均の正規化。縦座標:RF/MHC1蛍光倍率。右パネル:4つの異なるHDACiに曝露したCML由来IPSC(PB32)のDMSOコントロールに対して正規化したMHC1発現の%。縦座標:DMSOコントロールに対して正規化した陽性APC蛍光の%。
【
図10】ゲノム変化を有しないIPSC(PB33)上における、HADCiの存在下及び非存在下におけるMHC1 HLA ABCの発現。左パネル:APCとカップリングしたMHC I HLA-ABCモノクローナル抗体を使用して、4つの異なるHDACiで処理したIPSC(PB33)のDMSOコントロールに対するRFI平均の正規化。縦座標:RF/MHC1蛍光倍率。右パネル:4つの異なるHDACiに曝露したIPSC(PB33)のDMSOコントロールに対して正規化したMHC1発現の%。縦座標:DMSOコントロールに対して正規化した陽性APC蛍光の%。
【
図11】マウスIPSCS、マウスESC、移植Pan02及びマウス内胚葉前駆細胞(EndoPC)のトランスクリプトーム実験において392個の遺伝子に対して実施した教師なし主成分分析。横座標:要因分析(主成分分析)の任意単位で表される第1次元;縦座標:要因分析(主成分分析)の任意単位で表される第2次元。
【
図12】マウスIPSCS、マウスESC、移植Pan02及びマウス内胚葉前駆細胞(EndoPC)の間の359個の遺伝子を用いて実施した遺伝子発現ヒートマップ及び教師なし分類。
【
図13】マウス線維芽細胞、iPSC及びEndoPC上におけるRT PCRによる多能性遺伝子の発現。マウスiPSC及び初代マウスC57BL/6線維芽細胞と比較した、EndoPCにおける定量的RT-PCRによるiPSC濃縮遺伝子の発現。OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、CMYC、KLF4及びアルカリホスファターゼ(ALP)を含む7つの異なる因子を定量し、続いて、miPSCに見られるmRNAレベル(100の値)に対して正規化した。縦座標:任意単位で表されるmRNAの相対発現。横座標、左から右へ一群のバー:(i)m線維芽細胞;(ii)EndoPC;(iii)miPSC。バーの各群について、左から右へ:(i)OCT4、(ii)SOX2、(iii)NANOG、(iv)LIN 28、(v)cMYC、(vi)KLF4、(vii)ALP。
【
図14】ESCと比較した、フローサイトメトリー分析によるEndoPCにおけるmESCマーカーSSEA-1の発現。左パネル:mESC(CK35);右パネル:EndoPC。縦座標:任意単位で表される蛍光シグナル強度(log)。横座標:シグナルの大きさ。
【
図15】0.5及び4時間後に実施した、100ng/ml IL6あり又はなしでエクスパンションさせたPan02上におけるSTAT3、pSTAT3(Y705)及びβアクチンのウエスタンブロット分析。Pan02細胞を以下のものと共にインキュベーションした(列、左から右へ):(i)IL-6なし、Jak阻害剤なし、(ii)IL-6なし、Jak阻害剤なし、(iii)IL-6、Jak阻害剤なし、(iv)IL-6、Jak阻害剤なし、(v)IL-6、Jak阻害剤、(vi)IL-6、Jak阻害剤。行、上から下へ:(i)p-Stat3 Y705、(ii)Stat3、(iii)β-アクチン。
【
図16】未処置マウスと比較した、EndoPCの2回の追加免疫でワクチン接種したマウスの全生存(n=8)。縦座標:生存率;横座標:日数で表される時間。
【
図17】コントロールマウスと比較した、処置マウスの膵臓における表面強度を測定する生物発光による関心領域(ROI)の定量。縦座標:任意単位で表される関心領域(ROI)表面強度。
【
図18】この図は、多能性幹細胞由来の胎児幹細胞を得るための異なる工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明:
【0026】
本発明者らは、HDACiと胎児幹細胞の集団との併用が、腫瘍細胞に対する免疫系の相乗的かつ効率的な応答をもたらしたことを示した。本発明者らはまた、ベリノスタット、エンチネスタット、レビテラセタム及びバルプロ酸を含む様々なHDAC阻害剤(HDACi)が、胎児幹細胞の集団と相乗的に作用して、腫瘍細胞に対する効率的な免疫反応を生じさせることができたことを示した。本発明者らはまた、(i)照射内胚葉前駆細胞(EndoPC)などの胎児幹細胞と(ii)バルプロ酸などのHDACiとの組み合わせによる、膵臓ガンなどのガンに罹患している個体のワクチン接種が、腫瘍の劇的な阻害及び生存率の有意な改善をもたらしたことを示した。
【0027】
実際、本発明者らは、胎児ネオ抗原の供給源として人工iPSC由来の胎児幹細胞をワクチンとして使用して、腫瘍細胞により共有される様々な胎児抗原に対する免疫反応を生成し得、この反応は、多能性細胞で得られる反応よりも特異的であり得ると仮説をたてた。本発明者らはさらに、HDACi(例えば、バルプロ酸)と組み合わせた胎児幹細胞によるマウスのワクチン接種が免疫系を強化すると仮説をたて、これが、副作用及び自己免疫疾患の形跡を伴わずに効率的な免疫及び抗腫瘍反応を誘導したことを実証することができた。
【0028】
先行技術文献の説明
【0029】
国際公開第2012/122629号は、HDACiと、腫瘍抗原:AFP)、ガン胎児性抗原(CEA)、CA125、Her2、ドーパクロムトートメラーゼ(DCT)、GP100、MARTI、MAGEタンパク質、NY-ESOl、HPV E6及びHPV E7からなる群より選択される抗原を発現するウイルス性腫瘍溶解性ワクチンとの組み合わせを開示している。HDACiは、(ウイルスに由来するか又はウイルスにより発現される)ウイルス抗原により誘導される一次免疫反応の後に二次免疫反応を増加させる免疫モデュレーターである。
【0030】
Bartlett et al(Molecular Cancer 2013, 12:103)は、治療用ガンワクチンとしての腫瘍溶解性ウイルス(OV)を開示している。OVを備える免疫刺激遺伝子は、特に、自然免疫を一時的に阻害してOVの感染及び拡散を促進するHDAC阻害剤との共投与により、動物モデル及びヒト患者において強力な抗腫瘍免疫を誘導する。したがって、HDAV阻害剤(HDACi)の役割は、ベクターがより効率的に増殖することを可能にすることにより、免疫反応を増加させることである。
【0031】
Bridle et al(Molecular Therapy vol. 21 no. 4, 887-894 apr. 2013)は、HDAC阻害が一次免疫反応を抑制し、二次免疫反応を増強し、腫瘍免疫療法中の自己免疫を無効化することを開示している。しかしながら、この結果は、様々な悪性腫瘍に適用可能な治療薬としての腫瘍溶解性ウイルス(OV)の文脈において得られたものであり、HDACiが、腫瘍溶解性ワクチンベクターに対して誘導される一次免疫反応を損ない、その結果として生じる二次反応を増強することができたことを示しているにすぎない。
【0032】
Wu et al(J Ovarian Res. 2015 Oct 24;8:68)は、いかなるアジュバントも使用せずに、幹細胞において豊富な確立された卵巣ガン細胞株を、所定のガンに対するワクチンとして使用している。
【0033】
国際公開第2016/065330号は、被験体における固形腫瘍又は血液悪性腫瘍を処置するための、細胞毒性ペイロード;(ii)野生型若しくは遺伝子改変ウイルス;(iii)野生型若しくは遺伝子改変細菌;又は(iv)それらの2つ以上の組み合わせを含む改変幹細胞の使用を開示している。この説明では、使用され得る可能性がある幹細胞のリストを提供しているが、これらの細胞の実際の性質又は特徴に関するいかなる詳細もない。この文献には、ガンに対する免疫反応を生成するためにHDACiを追加することは記載及び示唆されていない。
【0034】
国際公開第2017/027757号は、被験体におけるガンを処置するための天然痘ワクチンの使用であって、幹細胞をこのワクチンに追加し得る、使用を開示している。この説明では、使用され得る可能性がある幹細胞のリストを提供しているが、これらの細胞の実際の性質又は特徴に関するいかなる詳細もない。この文献には、ガンに対する免疫反応を生成するためにHDACiを追加することは記載及び示唆されていない。
【0035】
欧州特許出願公開第2599860号明細書は、誘導前駆ガン幹細胞又は誘導悪性幹細胞である誘導ガン幹細胞であって、6つの遺伝子POU5F1、NANOG、SOX2、ZFP42、LIN28及びTERTを発現し;(a)内因性腫瘍抑制遺伝子の突然変異、又は(b)内因性ガン関連遺伝子の発現増加のいずれかである異常を有する誘導ガン幹細胞を開示している。発現遺伝子を考慮すると、この細胞は胎児細胞ではない。特に、POU5F1及びNANOGは、非分化及び多能性のマーカーである。
【0036】
Zheng et al(Oncol Rep. 2017 Mar;37(3):1716-1724)は、肝幹細胞(HSC)又は胚性幹細胞(ESC)によるワクチン接種を比較している。HSCは成体マウスの肝臓から単離されたので、胎児細胞ではない。さらに、この研究では、他のアジュバント、特にHDACiは使用されていなかった。
【0037】
国際公開第2017/202949号は、ガンを処置するための、多能性細胞とHDACiとの併用を開示している。多能性細胞は胎児細胞とは異なるものであり、胎児細胞及びガンにおいて発現されるいくつかの抗原を発現しない。
【0038】
要約すると、上記文献はいずれも、ガンに対する治療用又は予防用ワクチンとしての、(突然変異している可能性がある)不活性化胎児細胞の集団とアジュバント(特に、HDACi、又はMHC I発現を刺激)との特定の組み合わせを開示していない。
【0039】
胎児細胞組成物及び使用方法
【0040】
本発明は、免疫原として胎児細胞の集団を使用し、このようなものにも関する。
【0041】
本文脈では、胎児細胞の集団は、細胞培養物として維持される細胞の集団に対応するが、細胞が器官を作り始めたオルガノイドであって、細胞の3D空間組織が観察され得る、オルガノイドも包含する。
【0042】
分化は、より特殊化された細胞が、あまり特殊化されていない細胞から形成されるプロセスであることに注意されたい。それは、継続的なプロセスである。多能性細胞(胚性幹細胞又はiPS)から開始して、細胞は多能性を喪失し、1つの分化様式に従事し、完全に分化した特殊化細胞において成熟する。いくつかの器官では、分化プロセス中に、複数の細胞がオルガノイドを作るであろう。
【0043】
多能性細胞の分化の誘導及び指令は、当業者に公知である。多能性細胞からの発生又はオルガノイドが記載されているWu et al(Cell. 2016 Jun 16;165(7):1572-1585)、Fatehullah et al(Nat Cell Biol. 2016 Mar;18(3):246-54)又はSasaki and Clevers(Curr Opin Genet Dev. 2018 Sep 24;52:117-122)を引用し得る。目的の様々な組織において多能性細胞を分化させる方法及び条件が記載及び教示されている複数の他の論文がある。
【0044】
胎児細胞集団の定義
【0045】
胎児細胞は、分化経路(内胚葉、中胚葉、外胚葉)に従事し始めているので、その多能性を喪失した細胞である。
【0046】
該細胞は胎児マーカー(以下を参照のこと)を発現し、多能性マーカーを発現しないので、細胞の集団が胎児細胞の集団であるかを決定することが可能である。
【0047】
本発明の集団は、多数の細胞(少なくとも0.5×106個の細胞、より好ましくは少なくとも1×106個の細胞、より好ましくは少なくとも2×106個の細胞又は5×106個の細胞又は5×106個超)を含有する。
【0048】
細胞の集団が胎児細胞の集団であるかを決定するために、
(a)集団の細胞が多能性遺伝子(又はマーカー)を本質的に発現しないことを決定しなければならず、
(b)集団の細胞により発現される胎児遺伝子(又はマーカー)の存在を決定しなければならない。
【0049】
特定の実施態様では、胎児細胞集団の細胞は、以下のようなものである。
(a)未分化多能性自己複製細胞(胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞)において典型的に発現される遺伝子を発現する細胞がないか又は10%未満である。これは、好ましくは、フローサイトメトリーにより、より具体的にはFACS(蛍光活性化細胞選別)により決定される;そして
(b)集団が、3つの生殖細胞層に由来するコミットした分化前駆体又は3Dオルガノイド組織の形態であるかにかかわらず、集団中の細胞の少なくとも70%、より好ましくは75%超、より好ましくは80%超が前駆体/胎児マーカーを発現する。
【0050】
細胞の10%未満が成体組織マーカーを発現する場合も好ましい。成体組織マーカーは、成体細胞において発現されるマーカー(タンパク質又は遺伝子)である。
【0051】
上記割合は、所定のマーカーを発現する集団中の細胞の割合に関する。例として、未分化多能性自己複製細胞において典型的に発現されるマスター遺伝子の低発現(<10%)は、以下にさらに説明されているように、集団の細胞の10%未満が調査対象の遺伝子を発現することを示す。
【0052】
発現されるマーカーは、分化プロセス中に変動することに注意されたい。その結果として、細胞の胎児性質に関連するいくつかのマーカーは、分化プロセスの初期に(すなわち、多能性の喪失直後に)発現されるが、いくつかのマーカーは、プロセスの後期に(すなわち、成体細胞の成熟前に)発現される。これらの胎児マーカーの発現の欠如は、細胞がそれらの胎児特徴を喪失し、それらが分化成体細胞に成熟したことを示す表現型をおそらく獲得したことを示す。
【0053】
(a)多能性遺伝子が集団の細胞により発現されないことを決定するために、遺伝子発現及び/又は免疫細胞化学評価を使用することが可能である。目的は、未分化多能性自己複製細胞(胚性幹細胞及び人工多能性幹細胞)において典型的に発現されるマスター遺伝子の欠如又は低発現を示すことである。
【0054】
特に、
a)多能性のマーカーのポジティブコントロールとしてiPS細胞の集団を使用し得、
b)ターゲット集団及びiPS細胞集団における一連の多能性遺伝子の発現レベルを比較し得る。
【0055】
多能性遺伝子の発現レベルが、iPS細胞集団におけるこれらの遺伝子の発現レベルの10%未満、より好ましくは5%未満である場合、又は細胞の10%未満、より好ましくは5%未満が遺伝子を発現する場合、ターゲット集団の細胞は多能性遺伝子を発現しないと考慮される。任意の定量方法、例えばRT PCR若しくはフローサイトメトリー又は免疫組織染色が使用され得る。細胞のFACS(蛍光活性化細胞選別)を使用することが好ましい。この方法では、集団の細胞の10%未満がこれらの多能性遺伝子を発現する。
【0056】
多能性細胞により発現される複数のマーカーがある。実際、これらの多能性マーカーの発現は相関するので、細胞がその多能性特徴を喪失すると、それはこれらのマーカーの発現も喪失するであろう。その結果として、多能性細胞により発現される複数の遺伝子(多能性遺伝子)が当技術分野で公知であるが、多数のこのようなものを研究する必要はない。
【0057】
より詳細には、NANOG、POU5F1(Oct4)、SSEA4、Tra-1-81及びTra-1-60からなる群より選択される少なくとも1つの多能性遺伝子の発現を研究することが好ましい。
【0058】
一実施態様では、1つの細胞内(例えば、OCT4又はNanog)と1つの細胞外(例えば、SSEA-4又はTra-1-60又はTra-1-81)との組み合わせは、測定の精度を改善するために使用され得る。
【0059】
しかしながら、これらの遺伝子の3つ、4つ又はさらには5つの遺伝子を調査する場合もある。
【0060】
集団におけるこれらのマーカーを発現する細胞の割合の決定は、当技術分野で利用可能な抗体を用いてFACS法により容易に実施される。マルチプレックス実験においてこの分析を実施することさえ可能である。
【0061】
複数の遺伝子を研究する場合、集団において多能性と考慮される細胞の割合は、各マーカーを有する細胞の割合の平均を取ることにより決定される。
【0062】
例として、遺伝子(1)を発現する所定の集団の細胞の割合が6%であり、遺伝子(2)を発現する所定の集団の細胞の割合が5%である場合、集団は5.5%の多能性細胞(5%及び6%の平均)を含有すると考慮され、所定の集団は、上記条件(a)を満たしたと考慮されるであろう。
【0063】
集団の細胞が胎児遺伝子を発現し、条件(b)を満たすことを決定するために、それらが分化経路の1つに入った場合に細胞により発現される遺伝子(マーカー、タンパク質又は抗原)を検出することが必要である。
【0064】
神経胎児細胞:
初期神経外胚葉前駆体:TP63、MASH1、Notch1、Sox1、Sox2、Musashi 2、Musashi 1、Nestin、Pax6、MUC18、BMI1、Mash1、FABP7、Nucleostemin
【0065】
造血胎児細胞
造血中胚葉前駆体:Brachyury(T)、MIXL1、cryptic、GATA1、LMO2、ACE、SCL(Tal1)、HoxA9、Fli1
【0066】
腎臓胎児細胞:
腎臓中胚葉前駆体:WT1、HOXD11、SIX2、SALL1、WT1、PAX2、OSR1、PAX8、LHX1、GATA3、HOXB7
【0067】
肝臓胎児細胞:
肝臓内胚葉前駆体:SOX17、HNF3B、HNF6、Fox-A2、HNF1B、GATA4、AFP、LGR5
【0068】
膵臓胎児細胞:
膵臓内胚葉前駆体 SOX17、Fox-A2、CXCR4、GATA4、HNF1B、HNF4A、PDX1、HNF6、PROX1、Ngn3、NeuroD1、PAX6、SYP、SOX9、NKX2-2、NKX6-1、P48、LGR5、HB9
【0069】
腸胎児細胞
腸内胚葉前駆体:CDX2、TCF-2、SOX9、NMYC、ID2、SOX2、PAX8、Nkx2.1、LGR5
【0070】
肺胎児細胞
肺内胚葉前駆体:CXCR4、SOX17、FOXA2、NKX2.1、PAX9、TBX1、SOX2、SOX9、ID2、Foxj1、Scgb1a1、Foxj1
【0071】
甲状腺胎児細胞
甲状腺内胚葉前駆体:CXCR4、SOX17、FOXA2、Pax8、HHEX、Nkx2-1
【0072】
他の胎児細胞
筋芽細胞前駆体:Pax7、Pax3、Myf5
軟骨細胞前駆体:オステオネクチン、Sox9
骨芽細胞前駆体:Runx2、ALP、Osx、オステオポンチン、オステオカルシン
【0073】
上記遺伝子は全て、当技術分野で公知であり、各分化経路及び各組織オルガノイドに特異的である。初期又は後期前駆体におけるこれらの胎児遺伝子は、完全に分化した成体細胞において発現されない。示されているように、それらの配列は、広く利用可能な公開データベースにおいて見られ得る。
【0074】
その結果として、これらのマーカーは初期個体発生のマーカーであり、これらのマーカーを有する細胞が完全成体成熟細胞ではないという事実を反映する。それらは依然として、胎児発達段階の前駆細胞であるが、これは、それらが依然として様々なタイプの成熟細胞を生じさせ得ることを意味する。
【0075】
本発明の文脈では、胎児細胞集団を得るために、当業者は、公知の方法にしたがって、分化経路の1つの中で多能性細胞(例えば、胚性幹細胞又はiPS細胞)の分化を誘導するものとする。
【0076】
多能性の喪失は、細胞の少なくとも90%における上記マーカーの発現の喪失をチェックすることにより検証される。
【0077】
当業者により選択される分化経路に応じて、細胞集団における上記特異的胎児マーカーの存在をチェックすることが可能である。
【0078】
これを行うために、当業者は、FACS分析を使用して、所定の経路の胎児マーカーを発現する細胞の割合を測定し、細胞の少なくとも70%がこれらのマーカーの少なくとも1つを発現することを検証することにより、割合を計算するであろう。マルチプレックスFACS分析の使用はまた、1つを超えるマーカーを発現する細胞の数を特定することを可能にする。換言すれば、これは、いかなるこれらのマーカーも発現しない細胞の割合が30%を超えないことを意味する。これはまた、FACS分析により容易に決定される。
【0079】
細胞の分化経路に関する予備知識を持たずに、細胞集団が胎児性のものであるかを決定することも可能である。
【0080】
細胞集団が本発明の胎児細胞集団であるかをチェックするために、細胞が、上記多能性マーカーの1つ以上を発現するか(及び集団における前記マーカーを発現する細胞の割合)を最初に調査するものとする。細胞の10%未満が上記マーカーを発現する場合、当業者は、集団の細胞による胎児マーカーの発現を調査し得る。
【0081】
細胞の形態学/組織学は、細胞系統コミットメントに関する情報を当業者に提供し得るので、最初のチェックのためにいくつかのマーカーを選択することを可能にする。しかしながら、細胞系統コミットメントに関する予備知識を持たずに、細胞の胎児性質段階を検証することも可能である。
【0082】
そうするために、集団の細胞由来のRNAを抽出し、逆転写し、場合により増幅し、上記胎児マーカーのプローブを含有する任意のDNAチップ又はアレイに適用し得る。特に、低密度アレイ(LDA)を使用し得る。これは、胎児マーカーの存在を決定するだけではなく、(細胞集団由来のRNAにより「オンにされる」プローブに応じて)これらのマーカーを定性すること(すなわち、集団の細胞の分化経路を決定すること)も可能にする。
【0083】
分化経路が公知であれば、この特定の細胞系統分化経路の特異的マーカーを用いたFACS分析を実施して、集団におけるこれらのマーカーを発現する細胞の割合を定量し得る。
【0084】
胎児細胞集団の使用
【0085】
腫瘍細胞では、胎児抗原が発現され得ることが長く示唆されている(Ting et al, Proc Natl Acad Sci USA. 1972 Jul; 69(7): 1664-1668)。
【0086】
今回、本発明者らは、被験体におけるガンの予防的又は治療的処置のために、本明細書中に開示される胎児細胞の集団を使用することが可能であることを実証した。本発明者らは、ガンの発症及び発達が、被験細胞における突然変異であって、脱分化を誘導し、それらに分化経路を逆行させて新たな「胎児様」特徴に至らせ、このようなものの増殖につながる突然変異によるものであり得るか又はそれにより促進され得るとの仮説をたてる。その結果として、このような細胞は、成熟完全分化成体細胞において発現されない胎児マーカーを発現する。さらに、これらの細胞は高速で分裂するので、これは、ネオ抗原とも称される突然変異抗原を作る突然変異を誘導する。一般に、ガン間では(少なくとも同じ分化経路(外胚葉、内胚葉又は中胚葉)に由来する器官のガン間では)、腫瘍細胞の胎児抗原又はネオ抗原が共有されることに実際に留意すべきである。
【0087】
外胚葉経路からは、器官が表皮皮膚細胞、ニューロン、グリア細胞、神経堤;色素細胞である。
【0088】
中胚葉経路からは、器官が心筋、骨格筋細胞、腎臓(尿細管)、赤血球、(腸内)平滑筋である。
【0089】
内胚葉経路からは、肺細胞(特に、肺胞)、甲状腺細胞、膵臓細胞、肝細胞を引用し得る。
【0090】
最後に、ガン細胞の微小環境は、一般に、Tリンパ球の作用を阻害するので、免疫系にとって好ましいものである。
【0091】
これらの胎児細胞集団の不活化細胞を、好ましくはHDACiと共に、又はMHC I分子の発現を増加させる化合物と共に投与することにより、被験体(好ましくはヒトであるが、別の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ又はウマであり得る)における集団の細胞上に存在する胎児抗原に対する、及びしたがって腫瘍細胞に対する免疫反応を誘導し、それにより、ガンの退縮をもたらすことが可能になるであろう。それは、固形腫瘍及び血液の腫瘍の両方に有効である。
【0092】
実際、ガン細胞は、本明細書中で開示及び特性評価されている胎児集団の細胞により発現されるものなどの抗原(マーカー)を発現し得る。
【0093】
その結果として、胎児細胞の集団(胎児集団)は、患者の免疫系をプライミングして、ガンと十分かつ効率的に闘うことができるようにするために使用され得る。
【0094】
本発明者らは、HDACi(又はMHC-1発現を増加させる薬剤)及び不活性化胎児細胞の集団の両方を使用した場合の相乗効果の存在に気付いたが、これは、後述する1つ以上によるものであると考えられる:
i)免疫反応を活性化/強化する、胎児細胞及び腫瘍細胞上のMHCクラスI発現の増加(胎児及びネオ抗原のより良好な提示)
ii)これらの抗原/ネオ抗原に対する特異的免疫反応を誘導する、脱メチル化によるガン幹細胞(CSC)及び腫瘍細胞における胎児抗原/ネオ抗原の増加
iii)CD4+及び/若しくはCD8+、並びに/又はCD8+PD1-Tリンパ球を腫瘍にリクルートし、腫瘍を免疫反応性にする、ケモカイン発現の増加
iv)腫瘍を免疫反応性にする、腫瘍微小環境における制御性Tリンパ球及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の減少。
【0095】
異なる経路を考慮して、胎児細胞の集団は、肺、膵臓、腎臓、乳房、血液、胃腸、甲状腺、前立腺、脳(特に、膠芽腫)胃、肝臓、骨、卵巣ガンの処置に使用され得る。処置すべきガンと同じ細胞分化系統に従事する胎児細胞の集団を選択するものとする。
【0096】
このような胎児細胞集団の使用は、所定のガンにおいて発現されるか又は異なるガンに共通する少なくとも10個、より一般には少なくとも50個又は少なくとも100個、500個又はさらには1000個の胎児又はネオ抗原を送達することを可能にする。
【0097】
胎児細胞は、この突然変異により脱レギュレーションされる胎児遺伝子(BRCA、cMET、RET、APCなど)を発現する家族性ガンの素因である突然変異であって、血統のガンにおいて共有される突然変異を含有し得、例えば、c-Met突然変異を含有する血液細胞から得られたiPS細胞は、腎臓ガンに存在するc-Met突然変異を含有する腎臓オルガノイドとして誘導され得る。
【0098】
胎児細胞組成物(以下を参照のこと)を調製する場合の突然変異誘発剤の使用は、集団の細胞の遺伝子に突然変異(例えば、ミスセンス又はフレームシフト突然変異)を導入して、ネオ抗原が発現される。
【0099】
特に、本発明者らは、慢性骨髄性白血病(CML)の細胞から得られ、ENUで突然変異され、造血胎児細胞に由来するiPS細胞が、急性骨髄性白血病(AML)に存在する抗原を含有することを示した。
【0100】
患者を処置するために、
i)被験体のガンの生検から、このようなガンの抗原特異的シグネチャを取得し得、
ii)工程i)において決定された抗原の少なくとも1つを発現する細胞を含有する不活性化胎児細胞の集団を選択し得、
iii)HDACi、又はMHC I発現を増加させる薬剤と一緒に、この集団を患者に投与し得る。
【0101】
工程i)は、当技術分野で利用可能なツールを使用して、当技術分野で公知の方法により実施される。
【0102】
シグネチャは、特に、
-ガン細胞において発現される遺伝子を決定すること(エクソームシークエンシング)、
-遺伝子をガン特異的遺伝子のデータベースと比較すること(特に、COSMICデータベース(英国のSanger Instituteにより開発されたCatalogue Of Somatic Mutations In Cancer)又はCancer Genome Atlas(米国のNCBIにより維持されているTCGA)を引用し得る)(これらのデータベースは、ガン細胞において発現される抗原をコードする様々な配列を再編成する)、
-エクソーム及びデータベースの両方に存在する遺伝子をガンの抗原特異的シグネチャとして選択することにより取得される。
【0103】
工程ii)は、胎児細胞集団のエクソームを実施し、ガンの抗原特異的シグネチャの遺伝子の少なくとも1つが、胎児細胞集団から得られたエクソームに存在することを検証することにより実施される。
【0104】
別の実施態様では、
i)被験体のガンの生検から、このようなガンの抗原特異的シグネチャを取得し得、
ii)工程i)において決定された抗原の少なくとも1つを一般に発現する細胞を含有する不活性化胎児細胞の集団を選択し得、
iii)HDACi、又はMHC I発現を増加させる薬剤と一緒に、この集団の抽出物を患者に投与し得る。
【0105】
この実施態様では、抽出物は、全RNA、mRNA、DNA、タンパク質抽出物、溶解物、凍結乾燥抽出物、凍結乾燥物又は乾燥細胞、エクソソーム、細胞外微小胞及びアポトーシス小体から選択される。
【0106】
別の実施態様では、
i)被験体のガンの生検から、このようなガンの抗原特異的シグネチャを取得し得、
ii)工程i)において決定された抗原の少なくとも1つを一般に発現する細胞を含有する不活性化胎児細胞の集団を選択し得、
iii)HDACi、又はMHC I発現を増加させる薬剤の存在下で、ii)の集団又はこのような集団の抽出物でin vitroプライミングされたT細胞又は抗原提示細胞の集団を患者に投与し得る。
【0107】
特定の実施態様では、前記集団は、
a.患者の特定のガンに関係する経路に向けて多能性細胞の集団を分化させること(ここで、多能性細胞は、突然変異誘発剤の存在下で場合によりエクスパンションされたものである)、
b.このように分化させた細胞をエクスパンションさせること、
c.場合により、エクスパンション中に突然変異誘発剤に曝露して、該集団の細胞における遺伝子の突然変異誘発を誘導すること、
d.該集団の細胞の少なくとも70%が胎児マーカーを発現することを検証すること、
e.場合により、該集団の細胞が、被験体のガン細胞に存在する少なくとも1つのガン又はネオ抗原を発現することを検証すること、
f.該細胞が分裂能力を喪失するように、該細胞を不活化すること
により得られたものである。
【0108】
本発明の胎児細胞集団の使用は特に興味深い。実際、これらの細胞は、ガン細胞により発現されやすい多数の胎児抗原を含有する。
【0109】
本発明はまた、患者におけるガンの処置に使用されることを目的とする細胞の集団を開発及び生産する方法に関する。
【0110】
前記方法は、以下の工程を含む。
a)場合により、ガンの生検を実施する工程、
b)患者由来のガン生検から回収された細胞を分析して、ガン細胞により発現される胎児及びガンマーカーを同定する工程、
c)患者の特定のガンに関連する経路を通して、多能性細胞の集団を分化させる工程(例えば、患者が腎臓ガンを有する場合、腎臓経路の分化を誘導する)、
d)場合により、突然変異を分化細胞の集団に導入する工程:このような工程は任意選択的であるが、好ましくは実施される。集団の細胞により発現される抗原の多様性を増加させ、細胞への曝露により免疫系の能力を改善し、その細胞の突然変異の存在下でさえガン細胞をコントロールすることを意図している。突然変異率は、細胞集団の1つ以上の遺伝子の配列をチェックすることによりコントロールされ得る。集団内の所定の遺伝子の突然変異配列の存在を同定し、定量する、例えば集団における遺伝子の配列と比較することが可能である。例えば、所定の遺伝子の0.1%の突然変異率は、集団においてこの遺伝子について同定された配列の0.1%が突然変異を有することを示す。
e)場合により、集団の細胞が、被験体のガン細胞に存在する少なくとも1つのガン又はネオ抗原を発現することを検証する工程、
f)細胞が分裂能力を喪失するように、細胞を不活化する工程。これは、細胞集団の全部又は一部を患者に投与した後に、in vivoにおける細胞の増殖を回避するためである。
【0111】
細胞集団が得られたら、その全部又は一部は、好ましくはHDACi、又はMHC Iの発現を刺激する化合物の存在下で、動物(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)に投与され得る。上記のように、全ての方法において、不活化胎児細胞集団若しくはその抽出物、又は前記集団若しくはその抽出物でプライミングされたTリンパ球若しくは抗原提示細胞を投与し得る。
【0112】
特定の実施態様では、工程c)の多能性細胞は、患者の細胞から発生したiPS細胞(人工多能性幹細胞)である。これは、胎児細胞を患者に投与する場合に交差免疫のリスクを減少させ得る。実際、非胎児抗原は免疫系により認識されないのに対して、(集団の細胞上及びガン細胞上に存在する)胎児抗原は認識される。
【0113】
あるいは、本発明は、患者を処置するための方法であって、
a)場合により、ガンの生検を実施する工程、
b)患者由来のガン生検から回収された細胞を分析して、ガン細胞により発現される胎児及びガンマーカーを同定する工程、
c)患者の特定のガンに関連する分化経路に従事し、かつ場合により突然変異誘発された不活性化胎児細胞の集団を選択する工程、
d)HDACi、又はMHC I発現を刺激し若しくは増加させる化合物、細胞を患者に投与する工程
を含む、方法に関する。
【0114】
特定の実施態様では、胎児細胞は肺分化経路に従事する。したがって、それらは、肺について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、肺ガンの処置に特に適合する。
【0115】
特定の実施態様では、胎児細胞は甲状腺分化経路に従事する。したがって、それらは、甲状腺について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、甲状腺ガンの処置に特に適合する。
【0116】
特定の実施態様では、胎児細胞は腎臓分化経路に従事する。したがって、それらは、腎臓について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、腎臓ガンの処置に特に適合する。
【0117】
特定の実施態様では、胎児細胞は造血分化経路に従事する。したがって、それらは、造血細胞について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、血液ガン(白血病)の処置に特に適合する。
【0118】
特定の実施態様では、胎児細胞は肝臓分化経路に従事する。したがって、それらは、肝臓について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、肝臓ガンの処置に特に適合する。
【0119】
特定の実施態様では、胎児細胞は腸分化経路に従事する。したがって、それらは、腸について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、胃腸ガンの処置に特に適合する。
【0120】
特定の実施態様では、胎児細胞は膵臓分化経路に従事する。したがって、それらは、膵臓について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、膵臓ガンの処置に特に適合する。
【0121】
特定の実施態様では、胎児細胞は神経分化経路に従事する。したがって、それらは、ニューロン又は脳について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、脳ガン(特に、神経膠芽腫)の処置に特に適合する。
【0122】
特定の実施態様では、胎児細胞は骨分化経路に従事する。したがって、それらは、骨芽細胞について上記に示されているマーカーを発現するであろう。これらの細胞は、骨ガンの処置に特に適合する。
【0123】
免疫反応を改善するためのHDACi
【0124】
第1の態様では、本発明は、被験体におけるワクチン組成物の有効性を増加させるための方法であって、前記ワクチン組成物と一緒にHDACiを前記被験体に投与する工程を含む、方法に関する。特に、HDACiは、ワクチン組成物に追加される。
【0125】
本発明はまた、被験体におけるガンの処置において使用するための、(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)免疫原性エレメントを含有するワクチン組成物との組み合わせに関する。いくつかの実施態様によれば、本発明は、同時投与、個別投与又は逐次投与による被験体におけるガンの処置において使用するための、(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)免疫原性エレメントを含有するワクチン組成物との組み合わせに関する。
【0126】
本発明はまた、被験体におけるガンを処置するための医薬組成物を調製するための、(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)免疫原性エレメントを含有するワクチン組成物との組み合わせの使用に関する。いくつかの実施態様によれば、本発明は、同時投与、個別投与又は逐次投与で、被験体におけるガンを処置するための医薬組成物を調製するための、(i)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)と(ii)免疫原性エレメントを含有するワクチン組成物との組み合わせの使用に関する。
【0127】
本明細書中で使用される場合、用語「有効性の増加」は、ワクチン組成物の免疫原性の増加、ワクチン組成物に対する免疫反応の増加、又はワクチン組成物により生成される免疫反応の増加を指す。これは、HDACiの非存在下で生成された免疫反応と比較され得る。
【0128】
ワクチン組成物は、1つ以上の目的の抗原に対する免疫反応を被験体に発生させることを意図する免疫原性エレメントを含む。目的の抗原は、それに対する免疫反応が望まれる任意の抗原であり、自己(例えば、ガン細胞由来の抗原)又は外因性(例えば、細菌、ウイルス若しくは寄生虫のタンパク質)由来の任意のペプチド、タンパク質、他のタイプの抗原(例えば核酸、糖、リポ多糖類)などを含む。
【0129】
したがって、本発明は、アジュバントとしての、特にワクチン組成物に対する免疫反応を増加させるためのHDACiの使用、並びにアジュバントとして、又はワクチン組成物に対する免疫反応を増加させるために使用するためのHDACiに関する。本発明はまた、目的の抗原に対する免疫反応を被験体に発生させることを意図して、1つ以上の目的の抗原を含有するワクチン組成物の製造のためのHDACiの使用に関する。
【0130】
本明細書中に開示される方法及び使用は、ワクチン組成物がガンワクチン組成物である場合、すなわち、ガン細胞により発現される目的の抗原を含有する場合に特に興味深い。特に、前記方法及び使用は、特に免疫抑制性腫瘍微小環境(すなわち、サイトカイン及び分子シグナルの発現、並びに免疫寛容細胞のリクルートがあり、ガン抗原に対する免疫細胞の効力が減少する)の腫瘍に非常に適合する。この理論により縛られるものではないが、HDACiの存在は、おそらくは、腫瘍中、その付近又はその周囲に存在する細胞中で免疫抑制効果を有する遺伝子の発現を改変することにより、腫瘍微小環境を改変して、ガン細胞と闘うように免疫細胞が増強されることを可能にすると仮定される。
【0131】
本明細書中に記載される方法はまた、ワクチン組成物の投与後数日間にわたってHDACiを投与する工程を含み得る。HDACiのこの連続投与は、免疫細胞が腫瘍を「乗っ取る(take over)」ことができるために十分長い時間にわたって微小環境改変を維持するために有用であり得る。一般に、HDACiのこのさらなる連続投与は、ワクチン投与後少なくとも3日間及び最大1カ月間にわたる適切な用量のHDACiの毎日の投与からなるであろう。しかしながら、さらなるHDACi投与が少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも約2週間にわたって実施される場合が好ましい。
【0132】
ワクチン組成物は、1つ以上の目的の抗原に対する免疫反応を被験体に発生させることを意図する免疫原性エレメント(本明細書中では免疫原性化合物とも称される)を含有する。
【0133】
この免疫原性エレメントは、抗原(又は複数の抗原)であり得る。この抗原は、上記に見られるように、ターゲット細胞(これは、宿主細胞並びに細菌細胞、寄生虫病原体又はウイルス粒子を含むことが意図される)に応じて、任意の形態であり得る。それはまた、当技術分野で公知の任意のアジュバント(免疫刺激剤)、例えばアルム又はフロイントの完全若しくは不完全アジュバントで製剤化され得る。
【0134】
別の実施態様では、免疫原性化合物は細胞組成物由来の抽出物であり、前記組成物の細胞は目的の抗原を発現する。細胞抽出物は、不溶性物質、例えば膜フラグメント、小胞及び核を除去するために遠心分離された溶解細胞であって、したがって、主に細胞質ゾルからなる、溶解細胞であり得る。別の実施態様では、抽出物は、特定の技術を使用して特定の成分を枯渇又は濃縮させるように作製されたものである(例えば、超音波処理は、大きな膜フラグメントを、抽出物中に残存する小さな粒子に破壊するために使用され得るか、又は高速遠心分離は、最小の不溶性成分を除去するために使用され得る)。細胞抽出物は、任意の化学的又は機械的作用、例えば圧力、蒸留、蒸発により得られる。
【0135】
別の実施態様では、免疫原性エレメントは細胞組成物であり、前記組成物の細胞は目的の抗原を発現する。特定の実施態様では、細胞の膜は、(MHC-1経路を通じて抗原の提示が行われるように)保存される。特定の実施態様では、細胞は、下記のように不活性化される。特定の実施態様では、細胞は、下記胎児幹細胞、ガン幹細胞、ウイルス感染細胞又は細菌細胞である。別の実施態様では、免疫原性エレメントは、目的の抗原によりin vitroプライミングされた抗原提示細胞(APC)を含む細胞組成物である。この組成物は、抗原及び抗原提示細胞(APC)から作られた抗原提示細胞ワクチンである。抗原提示細胞は、それらの表面に主要組織適合複合体(MHC)と複合体形成した抗原を提示する細胞である。樹状細胞(DC)は、抗原をヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞の両方、マクロファージ又はB細胞に提示することができるので、本発明の文脈において好ましいそれらを引用し得る。これらのAPCは、天然細胞又は操作された細胞であり得る。特に、人工抗原提示細胞の開発の進歩が概説されているEggermont et al(Trends in Biotechnology, 2014, 32, 9, 456-465)を引用し得る。APCを使用して抗ガンワクチンを開発する方法は当技術分野で広く提案されており、当業者に公知である。
【0136】
別の実施態様では、免疫原性エレメントは実際に抗原を含有しないが、例えば、目的の抗原を提示する抗原提示細胞への曝露により目的の抗原に対してin vitroプライミングされたT細胞リンパ球の組成物からなる。その結果として、この組成物は、目的の抗原に対する免疫反応をin vivoで開始させることができる。この戦略は「T細胞の養子移入」と称され得、このような養子移入T細胞はin vivoで長期間存続し、リンパ系区画と血管区画の間を容易に遊走することが公知である(Bear et al, J Biomed Biotechnol. 2011;2011:417403; Melief et al, J Clin Invest. 2015;125(9):3401-3412)。
【0137】
いくつかの実施態様では、HDACiは、免疫原性エレメントを含有するワクチン組成物と組み合わせて投与される。前記投与は、免疫原性エレメントが胎児幹細胞の組成物である実施態様について以下に開示されているように、同時、個別又は逐次であり得る。胎児幹細胞の組成物について開示されている以下の記載は全て、上記に開示されている任意の免疫原性エレメントを含むワクチンに等しく適用可能であることに留意すべきである。
【0138】
胎児幹細胞は、上述したように、非常に侵襲性のガンにおいても見られるネオ抗原を発現するので、本明細書中は、このような胎児幹細胞の組成物と一緒のHDAC阻害剤(特に、バルプロ酸)を強調する。その結果として、免疫原性エレメントが何であれ、上記及びさらには下記のように、目的の抗原が、ガン細胞により発現されるネオ抗原である場合が好ましい。
【0139】
特定の実施態様では、免疫原性エレメントは細胞組成物であり、以下でさらに詳細に開示されているように、胎児細胞組成物は、多能性幹細胞及び胎児細胞の不活性化から得られたものである。
【0140】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫原性エレメント」は、免疫系を刺激する化合物を指す。本発明の文脈では、免疫原性エレメントは、
a.目的の抗原、
b.胎児幹細胞組成物、
b.細胞組成物からの抽出物であって、前記組成物の細胞が目的の抗原を発現する抽出物、
c.細胞組成物であって、前記組成物の細胞が目的の抗原を発現する細胞組成物、
d.目的の抗原によりin vitroプライミングされた抗原提示細胞を含む細胞組成物、又は
e.目的の抗原を提示する抗原提示細胞への曝露により、目的の抗原に対してin vitroプライミングされたT細胞リンパ球
からなる群より選択される。
【0141】
特定の実施態様では、免疫原性エレメントは細胞組成物であり、細胞組成物は、多能性幹細胞(ESC及びiPSC)のin vitro分化により得られたものである。より具体的には、免疫原性エレメントは、分化によりESC及びiPSCから得られた胎児幹細胞の集団である。
【0142】
処置が治療的処置である本発明の方法。
【0143】
処置が予防的処置である本発明の方法。
【0144】
組み合わせ調製物を用いて、ガンを患っている被験体を処置する方法
【0145】
第2の態様では、本発明は、ガンを患っている被験体を処置する方法であって、前記被験体に、組み合わせ調製物として治療量のi)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化群から選択される化合物とを同時投与、個別投与又は逐次投与する工程を含む、方法に関する。
【0146】
特定の実施態様では、MHC I経路を通じてネオ抗原を提示するように細胞を培養し、特に、集団に存在するいくつかの細胞が突然変異されている。胎児細胞と組み合わせて使用される化合物はまた、多能性幹細胞の多分化能を保存しない。特定の実施態様では、胎児細胞の投与後、MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する化合物(好ましくは、組み合わせて最初に投与されたものと同じものであるが、別のものの可能性がある)を投与して、免疫反応を増強する。
【0147】
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」又は「処置」は、遺伝性家族性ガン症候群などのガンにかかる高い素因リスクがあるか又はガンにかかっていると疑われる被験体、並びに病気であるか又はガン若しくは医学的症状を患っていると診断された被験体の処置を含む予防的又は防止的処置及び治癒的又は疾患改変的処置の両方を指し、臨床的再発の抑制を含む。処置は、ガン若しくは再発性ガンの1つ以上の症候を予防し、治癒し、その発症を遅延させ、その重症度を減少させ若しくは改善するために、又はこのような処置の非存在下で予想されるものを超えて被験体の生存を延長させるために、ガンを有するか又は最終的にガンを獲得し得る被験体に投与され得る。「治療レジメン」は、病気の処置のパターン、例えば、治療中に使用される投薬のパターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含み得る。語句「導入レジメン」又は「導入期間」は、疾患の初期処置に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの初期期間中に高レベルの薬物を被験体に提供することである。導入レジメンは、「ローディングレジメン」(これは、維持レジメン中に医師が用い得るよりも多くの用量の薬物を投与すること、維持レジメン中に医師が薬物を投与するよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含み得る)を(部分的又は全体的に)用い得る。語句「維持レジメン」又は「維持期間」は、病気の処置中に被験体の維持のために、例えば被験体を長期間(数カ月間又は年年間)にわたって寛解に保つために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、持続的治療(例えば、一定間隔(例えば、毎週、毎月、毎年など)で薬物を投与する)又は間欠的治療(例えば、断続的処置、間欠的処置、再発時の処置、又は特定の所定の基準(例えば、疼痛、疾患徴候など)の達成時の処置)を用い得る。
【0148】
本明細書中で使用される場合、用語「同時投与」は、同じ経路による同時又は実質的に同時の2つの活性成分の投与を指す。用語「個別投与」は、異なる経路による同時又は実質的に同時の2つの活性成分の投与を指す。用語「逐次投与」は、異なる時間による2つの活性成分の投与を指し、投与経路は、同一又は異なるものである。
【0149】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、任意の哺乳動物、例えば齧歯類、ネコ、イヌ並びに非ヒト及びヒト霊長類を指す。特に、本発明では、被験体は、胎児様幹細胞抗原の発現を有するガンに罹患しているか又は罹患しやすいヒトである。
【0150】
本明細書中で使用される場合、用語「集団」は、細胞の総数の大部分(例えば、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、さらにより優先的には少なくとも約90%)が目的の細胞の特定の特徴(例えば、胎児幹細胞マーカー)を有する細胞の集団を指す。
【0151】
本明細書中で使用される場合、用語「胎児幹細胞の集団」は、発生の初期段階に出現する一時的な前駆体である胎児細胞の集団を指す。この種の集団は、同種、異種又は同系多能性幹細胞(ESC及びiPSC)の分化により、in vitroで複製され得る。胎児集団細胞は、多能性に関する遺伝子の喪失を特徴とし、以下の遺伝子
【表3】
の少なくとも20%の喪失を伴う。特に、胎児幹細胞はまた、成体分化細胞の系統特異的遺伝子の発現の欠如を特徴とする。
【0152】
特定の実施態様では、胎児幹細胞の集団は、脱分化手順による、又は小分子を使用したトランス分化技術による、及び/又は特定の転写因子の過剰発現による成体体細胞の直接変換により得れ得る。これらのいわゆる「誘導胎児集団細胞」は、胎児遺伝子の獲得と、成体細胞の系統特異的遺伝子の喪失とを特徴とする。全ての胎児集団細胞は、それぞれ外胚葉、内胚葉及び中胚葉前駆体である3つの胚葉に由来する。これらの胎児遺伝子は、
1)内胚葉前駆細胞では、少なくともSOX17、CXCR4、FOXA1、FOXA2、FOXA3、HHEX、GATA4、GATA6、HNF1B、HNF4A、TF、ALB、TBX3、AFP、TTR、CER1、MIXL1、LHX1、GSC、PAX9、NEPN、SHH、PYY、MNX1、KITL、CLDN4、CLDN8、GFPT2、KRT19、SORCS2、EPPK1、NEDD9、PLAT、VTN、PDX1、TMPRSS4、CLIC6、RIPK4、CLDN8、ST1Aにより;
2)外胚葉前駆細胞では、少なくともPCGF4、PAX6、PAX7、CXCR4、SOX1、SOX2、SOX10、ITGB1、FABP7、NES、FUT4、PROM1、MELK、MSI1、MAP2、DCX、NCAM1、TUBB3、SLC1A3、CD44、S100B、VIM、GFAP、CNP、OLIG2、CA2、CSPG4、TAZ、MSX1、SPARC、ID2、NES、NKX2.2、NKX6-1、FOXP2、FOXD3、ZIC1により;及び
3)中胚葉前駆細胞では、少なくともBrackury(T)、MIXL1、SNAI1、SNAI2,HLX、EOMES,MESP1、MESP2、TBX6,MEST、NKX2-5、KDRにより
表される。
【0153】
典型的には、胎児集団細胞は、成体段階において発現されない胎児発生遺伝子を発現する。これらの胎児遺伝子は、コミットした胎児細胞系統又は分化組織、例えば3Dオルガノイド構造又は胚様体又はスフェロイド又は細胞凝集体に関連付けられる。これらの胎児細胞は、神経幹細胞、ニューロン、肝細胞様細胞、肝芽細胞、ネフロン腎前駆細胞、膵臓内胚葉前駆体、胆管細胞、造血前駆体、血管芽細胞、間葉系幹細胞、内皮細胞、心筋細胞、神経堤前駆体、乳房上皮細胞、腸又は結腸オルガノイド、肺オルガノイド、腎臓オルガノイド、脳オルガノイドであり得る。
【0154】
本明細書中で使用される場合、用語「多能性」は、適切な条件下で、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)に由来し、特定の細胞系統特徴を有する全ての細胞型への分化を受けることができる子孫を生じる能力を有する細胞を指す。用語「多能性」は、正常胚性幹細胞(ESC)又は非常に小さな胚様幹細胞(VSEL)、又は成体体細胞(ASC)の全ての供給源及び細胞起源から再プログラム化された、操作された人工多能性幹細胞(iPSC)を含む。
【0155】
多能性幹細胞は、出生前、出生後又は成体生物の組織の胎児発達に寄与する。当技術分野で認められている標準的な試験は、細胞集団の多能性、例えば8~12週齢のSCIDマウスにおいて奇形腫を形成する能力、及び様々な多能性幹細胞の特徴を確立するために使用される。より具体的には、ヒト多能性幹細胞は、以下の非限定的なリストからのマーカーの少なくともいくつか(少なくとも3つ、より一般には少なくとも4つ又は5つ)及び場合により全てを発現する:SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、アルカリフォスファターゼ(ALP)、Sox2、E-カドヘリン、UTF-I、Oct4、Lin28、Rex1、Nanog、TERC、TERT。
【0156】
多能性幹細胞は、伝統的には、胚発生の胚盤胞段階から生じ、おそらくは胎盤を除く全てのタイプの胎児細胞及び成体細胞に発生する能力を有する。胚性多能性幹細胞(ESC)は、一般に、50~150細胞の4~5日齢の受精後胚盤胞から単離され得る。ESCは無限のex vivo増殖が可能であるが、それらは胚発生中にin vivoで一時的に存在するにすぎない。様々な動物(ヒトを含む)ESC株、例えばNIH承認細胞株WAO9ヒトESCなどは、WiCell Research Institute, Madison, Wisから商業的に得られ得る。Cecol-14などのヒトESC株は、例えばCecolfes, Bogota, Colombiaから商業的に得られ得る。当然のことながら、所望により、他の胚性幹細胞株が使用され得る。
【0157】
本明細書中で使用される場合、用語「胚性幹細胞」は、ヒトの多能性細胞(すなわち、hESC)を指す。hESCは、前胚盤胞期胚から単離される。別の実施態様では、hES細胞は、少なくとも部分的に分化した細胞(例えば、多分化能性細胞)の脱分化により調製され、実際には全能性である。hESCを調製する方法は周知であり、例えば米国特許第5,843,780号明細書、米国特許第6,200,806号明細書、米国特許第7,029,913号明細書、米国特許第5,453,357号明細書、米国特許第5,690,926号明細書、米国特許第6,642,048号明細書、米国特許第6,800,480号明細書、米国特許第5,166,065号明細書、米国特許第6,090,622号明細書、米国特許第6,562,619号明細書、米国特許第6,921,632号明細書及び米国特許第5,914,268号明細書、米国特許出願公開第2005/0176707号明細書、国際公開第2001085917号に教示されている。本発明の文脈では、ヒト胚性幹細胞(hESC)は、Chung et al 2008に記載されている技術にしたがって、胚破壊を伴わずに樹立される。
【0158】
特定の実施態様では、本発明の胎児集団細胞は、in vitro方法により、例えばESC及びiPSCなどの多能性幹細胞の分化により得られる。本明細書中で使用される場合、用語「人工多能性幹細胞」は、Yamanakaにより最初に開示された当技術分野で公知の方法を使用して、再プログラム化手順により非多能性細胞から人工的に誘導される多能性幹細胞を指す(特に、国際公開第2012/060473号、国際特許出願第PCT/JP2006/324881号、国際特許出願第PCT/JP02/05350号、米国特許第9,499,797号明細書、米国特許第9,637,732号明細書、米国特許第8,158,766号明細書、米国特許第8,129,187号明細書、米国特許第8,058,065号明細書、米国特許第8,278,104号明細書)。要約すると、体細胞は、規定の因子、例えばOct4、Sox2、Klf4及びc-My又はOct4、Sox2、Lin28及びNanogの異所的発現により、人工多能性幹細胞(iPSC)に再プログラム化される。特定の実施態様では、人工多能性幹細胞は、哺乳動物、特に(限定されないが)、齧歯類、ブタ、ネコ、イヌ及び非ヒト霊長類並びにヒトに由来する。
【0159】
iPSCは、様々な起源の正常体細胞(線維芽細胞、血液細胞、ケラチノサイト・・・)から、並びに様々な疾患、例えば体性ガン又は遺伝性ガン(白血病、膠芽腫、黒色腫、乳ガン...)及び遺伝性疾患から成功裏に生成されている。細胞再プログラム化は、小さな化合物の有無にかかわらず、可変技術(例えば、組み込みレンチウイルス/レトロウイルス及び非組み込みベクター、例えばセンダイウイルス、エピソームベクター、合成mRNA、アデノウイルス、rAAV、リコンビナントタンパク質...)により実施され得る。小分子は、エピジェネティック改変因子として作用する(すなわち、一部の遺伝子の発現を改変する)ことにより、マウス及びヒトiPSCの誘導及び質を増強するために使用され得る。
【0160】
例証として、BIX01294(BIX、G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤)、酪酸ナトリウム(NaB、ヒストンデアセチラーゼHDAC阻害剤)又はS-アデノ-シルホモシステイン(SAH、DNA脱メチル化剤)、5-アザシチジン(5-AZA、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤)を引用し得、バルプロ酸(VPA、別のヒストンデアセチラーゼ阻害剤)もまた、正常iPSCの再プログラム化及び質を改善する。完全再プログラム化真正iPSCは、自己複製能を有する胚性幹細胞と同様に多能性遺伝子を発現し、無制限幹細胞(又は幹細胞様)供給源に相当する。ESC及びIPSCは、スケーラブルな幹細胞供給源を可能にする複数の及び無制限の継代中に反復的に増幅され得る。多能性能力は、多能性遺伝子の高レベル発現を保存することにより、許容培養条件で積極的に維持される。これらの方法は当技術分野で公知である。特定の培養条件及び方法は、安定ゲノムを複製することを可能にするが、それにもかかわらず、いくつかのエクソーム突然変異及びエピゲノム改変が記載されている(Gore A and al. Nature 2011)。
【0161】
本明細書中で使用される場合、用語「体細胞」は、生殖系列細胞(精子及び卵)を除く任意の体細胞を指す。本明細書中で使用される場合、用語「同種細胞」は、同じ種に由来するが遺伝的に異なる細胞を指す。本明細書中で使用される場合、用語「同系又は自己細胞」は、同じ種及び同じ遺伝的背景に由来する細胞を指す。本明細書中で使用される場合、用語「異種細胞」は、異なる種に由来する遺伝的に異なる細胞を指す。特定の実施態様では、幹細胞は、哺乳動物、限定されないが、齧歯類、ブタ、ネコ、イヌ及び霊長類(ヒトを含む)に由来し得る。
【0162】
胎児幹細胞組成物を生産するための方法:
【0163】
第3の態様では、本発明は、胎児細胞組成物を生産するための方法であって、
i)多能性幹細胞分化後に、集団中の抗原のMHC I提示を誘導する薬剤の存在下で胎児幹細胞
ii)該胎児幹細胞を、該細胞を不活性化する不活性化剤に曝露する工程;
iii)分化した不活性化胎児幹細胞を回収及びコンディショニングする工程
を含む、方法に関する。
【0164】
特定の実施態様では、胎児幹細胞エンベロープ完全性は、工程ii)において維持される。別の実施態様では、胎児幹細胞は不活性化され、細胞由来産物、例えば細胞抽出物が得られる。上記方法にしたがって生産された細胞組成物は、本明細書中に開示される方法にしたがって、ガン処置に使用され得る。
【0165】
胎児幹細胞の調製
【0166】
胎児幹細胞又は胎児オルガノイドは、多能性幹細胞から、分化を誘導した後に、古典的な方法により(例えば、2D又は3D培養系における小分子、形態形成及び成長因子を使用した規定の培養条件で)得られる。胎児幹細胞又はオルガノイドは、多能性マーカーを喪失する。典型的には、胎児幹細胞又はオルガノイドは、多能性の特徴である以下の遺伝子の少なくとも20%が枯渇している:
【表4】
【0167】
MHC I抗原提示のための薬剤
【0168】
人工iPSC又はESC細胞から得られた胎児幹細胞又はオルガノイドは、分化後に、MHC I経路を通じて抗原の提示を改善する薬剤の存在下で維持される。このような改善された発現は、薬剤の存在下又は非存在下で細胞の表面におけるMHC I分子の数を比較することによりチェックされ得る。
【0169】
このような薬剤は当技術分野で公知であり、特にヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)を引用し得る。この活性を有する多くの産物が当技術分野で公知であり、これらのHDACiの中で、特にバルプロ酸塩(VPA又はバルプロ酸、CAS番号99-66-1)を引用し得る。(VPAと同じ作用様式を有する)使用され得る他のHDACiは、特に、ボリノスタット、ロミデプシン・キダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、パノビノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ジビノスタット又はキジノスタットである。
【0170】
これらの薬剤は、多能性幹細胞分化後に、胎児幹細胞に許容的な細胞培養培地中に存在する。
【0171】
胎児細胞の不活化
【0172】
本発明において使用される胎児幹細胞は不活化される。本明細書中で使用される場合、用語「不活性化された」及びその文法的変形は、生きているが増殖不能にされた(すなわち、有糸分裂的に不活性化された)細胞(例えば、胎児細胞)を指す。当業者は、限定されないが、化学薬剤への曝露、照射及び/又は凍結乾燥を含む当技術分野で公知の技術を使用し得る。被験体への投与時に胎児細胞が分裂不能であるので、被験体において胎児組織を形成し得ないように、胎児幹細胞は不活性化され得る。複数の細胞の文脈では、あらゆる細胞が増殖不能である必要はないと理解される。したがって、本明細書中で使用される場合、語句「被験体における組織形成を防止するために十分な程度に不活性化された」は、in vitro培養により確認したように照射胎児幹細胞がもはや分裂しなかったために、被験体への投与後に胎児組織が形成しないような、全体としての集団における不活性化の程度を指す。複数の細胞における1つ以上の細胞が被験体において実際に増殖可能である場合であっても、胎児組織が形成し得る前に、宿主の免疫系はそれらの細胞を破壊すると仮定することに留意すべきである。増殖及び組織形成のこのような不能は、機能的及び非機能的免疫系を有するマウスにおける試験により確認され得る。
【0173】
いくつかの実施態様では、「不活性化」細胞は死滅細胞である。別の実施態様では、不活性化細胞は、全細胞溶解物、胎児幹細胞又はオルガノイド由来のエクソソーム、濃縮ガン幹ネオ抗原、全精製ガン幹ネオ抗原、DNA、mRNA及びタンパク質抽出物、凍結乾燥された全細胞懸濁液、細胞溶解物の画分(例えば、膜画分、細胞質画分)、又はそれらの組み合わせである。マウスのワクチン接種が、バルプロ酸又は別のHDACiと組み合わせて胎児幹細胞を用いて行われる場合、不活性化胎児幹細胞は依然として、免疫反応を刺激することができる。このワクチン接種は、副作用及び自己免疫疾患の証拠を伴わずに、ガン腫に対する効率的な免疫及び抗腫瘍応答を誘導することができる。
【0174】
典型的には、胎児幹細胞を不活性化するために、それらは、致死量の放射線(例えば、5~100Gyの単一画分)に曝露され得る。細胞が生存不能にされる限り、胎児細胞に送達される正確な放射線量及び線量の長さは重要ではない。
【0175】
細胞の回収及びコンディショニング。
【0176】
前記方法の回収工程は、細胞培養物を洗浄し、細胞を任意の適切な培地、例えば任意の臨床グレードの細胞培地に再懸濁する1つ(又は複数)の工程を含む。使用前に細胞組成物を保存することができるように、細胞のコンディショニングは、細胞を凍結又は凍結乾燥することを含み得る。
【0177】
胎児幹細胞の突然変異及びネオ抗原の発現
【0178】
多能性細胞は、遺伝的に非常に安定な細胞であることに注意されたい。実際、それらは胚発生過程の非常に初期に存在し、それらは胚発生のために増加しなければならないので、これらの細胞は、胚において均一性を有するために、突然変異が起こりにくいことが重要である。
【0179】
その結果として、それらの遺伝子含有量(すなわち、集団の細胞の95%超が同じ遺伝的背景を示す)を考慮すると、多能性細胞の集団中に存在する細胞は、一般に非常に均一である。
【0180】
iPSCを調製する場合、いくつかの細胞の選択的利点が複数回の継代中に生じ、これが、後期継代で特定の突然変異を示すiPSCクローンの集団につながるが、細胞ゲノムの配列は100%近く類似する。
【0181】
しかしながら、複数回の継代後、iPSCは、hESCのように安定である(Hussein SM and al, Nature 2011)。培養誘発性(適応性)突然変異は、長期培養時に非常に少数の遺伝的変化で獲得されるであろう(Hussein SM and al, Bioessays, 2013)。
【0182】
しかしながら、処置細胞材料上における胚性ネオ抗原の変異性を増加させるために、多能性幹細胞において突然変異を誘導することができることが好ましい。突然変異多能性幹細胞由来の派生胎児幹細胞は、主に侵襲性ガンに見られる組織特異的胎児ネオ抗原を明らかにするために使用される。このようにして、それは、免疫系がこれらの突然変異胎児細胞により提示される胎児ネオ抗原に対するT細胞であって、ガン細胞並びに腫瘍の成長中にその後の変異を受けるものと闘うことができる、T細胞を生成する可能性を増加させるであろう。
【0183】
これは、ガン幹細胞の増殖及び進行中にDNA複製エラー及び/又は環境傷害に起因する体細胞遺伝子変化の蓄積に起因するガンと闘うために役立ち得る。これらの変化は、発ガン及びゲノム不安定化突然変異を開始させるガン駆動突然変異を含む。この増加したゲノム不安定性は、増加した薬剤耐性を有する、より侵襲的なクローンの選択につながるクローン進化をもたらす。
【0184】
したがって、細胞は、突然変異誘発剤、すなわち、生物の遺伝物質、通常はDNAを変化させて、自然バックグラウンドレベルを上回る突然変異の頻度を増加させる物理的又は化学的薬剤に曝露され得る。
【0185】
突然変異原は、物理的突然変異原及び化学的突然変異原からなる群より選択され得る。
【0186】
物理的突然変異原の中で、以下を引用し得る:
-DNA破損及び他の損傷を引き起こし得る電離放射線、例えばX線、ガンマ線及びアルファ粒子。特に、コバルト60及びセシウム137からの放射線を引用し得る。照射線のレベルは、細胞の不活性化のために使用されるレベルよりもかなり低くなければならず、当業者により設計され得る。
-波長が260nmを上回る紫外光線(これは、未修正のままにすると複製のエラーを引き起こし得る)。
-又は放射性崩壊、例えばDNA中の14C。
【0187】
化学的突然変異原の中で、以下を引用し得る:
-反応性酸素種(ROS)、例えばスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素;
-脱アミノ剤、例えば、亜硝酸(シトシンをウラシルに変換することによりトランジション突然変異を引き起こし得る);
-多環式芳香族炭化水素(PAH)(これは、ジオール-エポキシドに活性化されるとDNAに結合し得る);
-アルキル化剤、例えばエチルニトロソウレア(ENU、CAS番号759-73-9)、マスタードガス又は塩化ビニル;
-芳香族アミン及びアミド、例えば2-アセチルアミノフルオレン;
-植物からのアルカロイド、例えばビンカ種由来のもの;
-臭素、及び臭素を含有するいくつかの化合物;
-アジ化ナトリウム;
-ブレオマイシン;
-紫外線と組み合わせたソラレン;
-ベンゼン;
-複製中にDNA塩基を置換し、トランジション突然変異を引き起こし得る塩基アナログ;
-挿入剤、例えば臭化エチジウム、プロフラビン、ダウノルビシン;
-金属、例えばヒ素、カドミウム、クロム、ニッケル及び突然変異原性であり得るそれらの化合物。
【0188】
特定の実施態様では、細胞が、特にガン関連ネオ抗原において(一般に細胞ごとに異なり、それにより不均一集団につながる)ランダム突然変異を有する多能性細胞の集団を得るであろう。
【0189】
本発明者らは、DNA損傷依存性アポトーシスをトリガーせずに、多能性細胞においてDNA複製エラーを誘導することを可能にする培養条件を設計することが可能であることを示した。
【0190】
上記のように、胚発生の初期段階中に導入される突然変異は可能な限り少数であるはずであるため、多能性細胞は天然に非常に安定であることから、これは特に驚くべきことである。この結果、これらの細胞では、DNA修復機構は非常に効率的であり、それにより、ほとんどの欠陥を修正し及び/又はこれらの欠陥を修正することが可能ではない場合にアポトーシスを誘導する。
【0191】
特定の実施態様では、開始集団の多能性幹細胞をエクスパンションさせ、(当技術分野で公知のように)2D又は3Dオルガノイド培養系において許容培地を用いて胎児系統に分化させて、胎児特異的組織発達を誘導する。これらの条件では、一般に、少量のエクソーム突然変異を観察するであろう(エクソーム当たり5~10個の突然変異)。
【0192】
次いで、突然変異誘発化合物手段を用いて多能性幹細胞をin vitroで培養して、上記に列挙されているものなどの多能性幹細胞内のゲノム不安定性を誘導して増加させる。DNA損傷は、二重鎖切断(DSB)のマーカーとしてのγH2AXのリン酸化により十分に確認される。ESC又はIPSCでは、ゲノム不安定性の指標としてのより多数の小核だけではなく、γH2AX陽性細胞の割合及びγH2AX病巣の頻度の両方が増加した。次いで、突然変異多能性幹細胞を増幅し、2D又は3Dオルガノイド培養系において胎児系統に分化させて、胎児特異的組織発達を誘導する。分化中、胎児細胞では、一連の体細胞突然変異が選択的に発現される。これらの組織又は系統特異的体細胞突然変異は、成長及び生存利点を促進し、系統に特異的である。
【0193】
一実施態様では、また、分化後に得られた胎児細胞を突然変異性化合物と共にin vitroで培養して、体細胞突然変異を誘導し得る。
【0194】
好ましい薬剤は、ブレオマイシン、ENU、アルキル化剤、アクチノマイシンD、ROS調節剤、UV、H2O2、電離放射線(ガンマ線、X線)であり、これらは全て、培養中に蓄積する多能性幹細胞における突然変異率の誘導及び増強を可能にするであろう。
【0195】
特定の実施態様では、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)は、<50μg/mlの用量における少なくとも7~60日間の長期培養中に、新規突然変異を作り、処置多能性幹細胞におけるネオ抗原のレベルを増強することが示されている。胎児幹細胞において選択的に発現されたこれらの体細胞突然変異は、ガンにおいて報告されているものと類似する。したがって、特に培地中で細胞をHDACiと共に培養する場合に細胞の多能性を維持しながら、長期培養時の選択的利点から、高い突然変異率を有する多能性幹細胞におけるDNA損傷に応答して多様な突然変異を蓄積することが可能である。培養液中のHDACiの存在は、活性ヒストン(H3K4me3及びH3K9ac)の増加を保存する。分化後、突然変異多能性幹細胞由来の胎児細胞は、許容培養培地及びHDACiで維持される。より高レベルのネオ抗原を発現する細胞は、非突然変異多能性幹細胞由来の胎児細胞と比較される。
【0196】
本明細書中に記載される組成物及び方法の別の実施態様では、突然変異は、高レベルのゲノム不安定性を促進する遺伝子を用いた細胞の遺伝子改変を通じて、多能性幹細胞において誘導される。特に、適切な阻害剤、例えばNER/BER/DSBR/MMR阻害剤を使用して、DNA修復及び複製に関与する遺伝子又はシグナル伝達経路の活性を削除し又は減少させ得る。増加したDNA損傷に関連するゲノム不安定性を誘導するこれらの方法は、DNA修復関連遺伝子又はシグナル伝達経路、例えばDNAポリメラーゼデルタ複合体、ミスマッチ修復(MMR)、塩基切除修復(BER)、ヌクレオチド切除修復(NER)、相同組換え(HR)、DSBR又はNEJHを不活性化又はノックダウンする「ベクター」を使用することにより又は「遺伝子改変」により実施され得る。DNA修復遺伝子の他の例は、DNApkC、Ku70、Rad51、Brca1又はBrca2である。
【0197】
他の実施態様では、多能性幹細胞は、遺伝子改変若しくは化学的p53、例えばPifithrin-mu、Nutlin-3により、又は細胞生存を増強する化合物、例えばY-27632(p160-Rho関連コイルドキナーゼ(ROCK)の選択的阻害剤)を使用することにより、アポトーシス関連遺伝子、例えばp53を抑制するように改変される。
【0198】
特定の実施態様では、多能性幹細胞の集団は、
i)例えば、炎症性毛細血管拡張症、ブルーム症候群、コケイン症候群、ファンコニ貧血、ヴェルナー症候群、色素性乾皮症、ナイメーヘン破損症候群を含むDNA修復疾患;
ii)ゲノム不安定性を伴う遺伝性家族性ガン症候群、例えばリンチ症候群(MLH1、MSH2、MSH6、PMS1及びPMS2を含むMMR遺伝子の突然変異を伴う遺伝性非ポリポーシス結腸直腸ガン)、TP53遺伝子又はCHEK2の突然変異を伴うリー・フラウメニ、BRCA1/2遺伝子の欠損又は突然変異を伴う遺伝性乳ガン及び卵巣ガン(HBOC)症候群、APC遺伝子の突然変異を伴う家族性腺腫様ポリポーシス(FAP);c-Met突然変異を伴う腎細胞ガン腫;RET突然変異を伴う甲状腺髄様ガン;
iii)転座(T9;22)、Jak突然変異を伴うCMLのような体細胞発ガン誘導性ゲノム不安定性
に関連するゲノム変化を既に含有していた患者から単離された細胞などの体細胞から生成された。
【0199】
特定の実施態様では、多能性幹細胞は、疾患に関連するゲノム変化を含有する体細胞に由来する。典型的には、ゲノム変化は、転座(t9:22)、欠失(BRCA1/2)又は突然変異(BRCA、RET、c-Met)であり得る。これらの多能性幹細胞由来の胎児幹細胞は、胎児レベルでゲノム変化を再現する。
【0200】
特定の実施態様では、多能性幹細胞(iPSC)の集団は、ガン細胞株又は患者特異的ガン細胞から生成される。派生胎児幹細胞又はオルガノイドは、原発性ガンにおいて報告されているものと類似する、胎児レベルでガン表現型及び遺伝子型を再現する。別の実施態様では、多能性幹細胞は、「ベクター」を使用することにより、複数の非ランダムガン幹関連ネオ抗原を過剰発現するように遺伝子改変される。特定の実施態様では、多能性幹細胞の集団、胎児幹細胞又はオルガノイドは、「ゲノム編集」技術により、複数の突然変異及びガン幹細胞特異的ネオ抗原(少なくとも1つ)を発現するように遺伝子改変される。遺伝子改変胎児幹細胞又はオルガノイドは、原発性ガンにおいて報告されているものと類似するガン遺伝子型を再現する。本発明は、RNAガイドマルチプレックスゲノム編集、改変、発現の阻害及び他のRNAベース技術による複数のネオ抗原の導入により、多能性幹細胞及び胎児細胞又はオルガノイドを提供する組成物及び方法を提供する。
【0201】
本明細書中で使用される用語「ゲノム編集」は、特に、cas9媒介性ゲノム編集のためのガイドRNAを含むRNA媒介性遺伝子操作を指す。このガイドRNA(gRNA)は、エンドヌクレアーゼcas9と共にトランスフェクションされる。ガイドRNAは、足場及びターゲットに相補的なスペーサー配列を提供する。別の実施態様では、遺伝子操作配列は、Crispr-Cas9系の使用により当技術分野における標準的な方法にしたがって遺伝子サイレンシングのために設計されたsiRNA又はマイクロRNA配列であり得る。Crispr-Cas系を作製及び使用するための組成物及び方法は当技術分野で公知であり、特に、米国特許第8,697,359号明細書に記載されている。
【0202】
特定の実施態様では、多能性幹細胞又は派生胎児細胞の集団は、アルキル化剤で処理される。本明細書中で使用される場合、用語「アルキル化剤」は、ある分子から別のものに1つ以上のアルキル基を追加する物質を指す。この処理は、TILs及びTh1/Th2細胞性免疫のオリゴクローナルエクスパンションを増加させることにより、優れた免疫反応を提供するネオ抗原において新たな突然変異を作る。本発明では、アルキル化剤は、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、アルキルスルホナート、トリアジン、エチレンイミン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。ナイトロジェンマスタードの非限定的な例としては、メクロレタミン(Lundbeck)、クロラムブシル(GlaxoSmithKline)、シクロホスファミド(Mead Johnson Co.)、ベンダムスチン(Astellas)、イホスファミド(Baxter International)、メルファラン(Ligand)、メルファランフルフェンアミド(Oncopeptides)及びそれらの薬学的に許容し得る塩が挙げられる。ニトロソウレアの非限定的な例としては、ストレプトゾシン(Teva)、カルムスチン(Eisai)、ロムスチン(Sanofi)及びそれらの薬学的に許容し得る塩が挙げられる。アルキルスルホナートの非限定的な例としては、ブスルファン(Jazz Pharmaceuticals)及びその薬学的に許容し得る塩が挙げられる。トリアジンの非限定的な例としては、ダカルバジン(Bayer)、テモゾロミド(Cancer Research Technology)及びそれらの薬学的に許容し得る塩が挙げられる。エチレンイミンの非限定的な例としては、チオテパ(Bedford Laboratories)、アルトレタミン(MGI Pharma)及びそれらの薬学的に許容し得る塩が挙げられる。他のアルキル化剤としては、ProLindac(Access)、Ac-225BC-8(Actinium Pharmaceuticals)、ALF-2111(Alfact Innovation)、トロンフォスファミド(Baxter International)、MDX-1203(Bristol-Myers Squibb)、チオウレイドブチロニトリル(CellCeutix)、ミトブロニトール(Chinoin)、ミトラクトール(Chinoin)、ニムスチン(Daiichi Sankyo)、グルホスファミド(Eleison Pharmaceuticals)、HuMax-TAC及びPBD ADCの組み合わせ(Genmab)、BP-C1(Meabco)、トレオサルファン(Medac)、ニフルチモックス(Metronomx)、トシル酸インプロスルファン(Mitsubishi tanabe Pharma)、ラニムスチン(Mitsubishi tanabe Pharma)、ND-01(NanoCarrier)、HH-1(Nordic Nanovector)、22P1G細胞及びイホスファミドの組み合わせ(Nuvilex)、エストラムスチンリン酸(Pfizer)、プレドニマスチン(Pfizer)、ルルビネクテジン(PharmaMar)、トラベクテジン(PharmaMar)、アルトレアタミン(Sanofi)、SGN-CD33A(Seattle Genetics)、フォテムスチン(Servier)、ネダプラチン(Shionogi)、ヘプタプラチン(Sk Holdings)、アパジクオン(Spectrum Pharmaceuticals)、SG-2000(Spirogen)、TLK-58747(Telik)、ラロムスチン(Vion Pharmaceuticals)、プロカルバジン(Alkem Laboratories Ltd.)及びそれらの薬学的に許容し得る塩が挙げられる。別の実施態様では、アルキル化剤は、メクロレタミン(Lundbeck)、クロラムブシル(GlaxoSmithKline)、シクロホスファミド(Mead Johnson Co.)、ストレプトゾシン(Teva)、ダカルバジン(Bayer)、チオテパ(Bedford Laboratories)、アルトレタミン(MGI Pharma)、それらの薬学的に許容し得る塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。別の実施態様では、アルキル化剤は、ProLindac(Access)、Ac-225BC-8(Actinium Pharmaceuticals)、ALF-2111(Alfact Innovation)、ベンダムスチン(Astellas)、イホスファミド(Baxter International)、トロンフォスファミド(Baxter International)、MDX-1203(Bristol-Myers Squibb)、テモゾロマイド(Cancer Research Technology)、チオウレイドブチロニトリル(CellCeutix)、ミトブロニトール(Chinoin)、ミトラクトール(Chinoin)、ニムスチン(Daiichi Sankyo)、カルムスチン(Eisai)、グルホスファミド(Eleison Pharmaceuticals)、HuMax-TAC及びPBD ADCの組み合わせ(Genmab)、ブスルファン(Jazz Pharmaceuticals)、メルファラン(Ligand)、BP-C1(Meabco)、トレオサルファン(Medac)、ニフルチモックス(Metronomx)、トシル酸インプロスルファン(Mitsubishi tanabe Pharma)、ラニムスチン(Mitsubishi tanabe Pharma)、ND-01(NanoCarrier)、HH-1(Nordic Nanovector)、22P1G細胞及びイホスファミドの組み合わせ(Nuvilex)、メルファランフルフェンアミド(Oncopeptides)、エストラムスチンリン酸(Pfizer)、プレドニマスチン(Pfizer)、ルルビネクテジン(PharmaMar)、トラベクテジン(PharmaMar)、アルトレアタミン(Sanofi)、ロムスチン(Sanofi)、SGN-CD33A(Seattle Genetics)、フォテムスチン(Servier)、ネダプラチン(Shionogi)、ヘプタプラチン(Sk Holdings)、アパジクオン(Spectrum Pharmaceuticals)、SG-2000(Spirogen)、TLK-58747(Telik)、ラロムスチン(Vion Pharmaceuticals)、プロカルバジン(Alkem Laboratories Ltd.)、それらの薬学的に許容し得る塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0203】
特定の実施態様では、多能性幹細胞の集団は、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU、CAS番号759-73-9)で処理される。ENUは以下の化学式C3H7N3O2を有し、エチル基を核酸中の核酸塩基に転移することによる高度に強力な突然変異原である。
【0204】
上記のように、突然変異誘発剤の目的は、エクスパンション中にランダム突然変異を多能性幹細胞の遺伝子に導入することである(突然変異の導入は、細胞の複製及び分裂中に起こる)。多能性幹細胞の集団は、成長の利点を提供し得る突然変異であって、培養適合を促進するために選択される突然変異を獲得する。多能性幹細胞由来の胎児細胞の集団は、許容培養培地中で胎児細胞の成長及び生存を促進する突然変異を獲得する。
【0205】
特定の実施態様では、ENUが使用される場合、それは、少なくとも7日間、より好ましくは少なくとも15日間、より好ましくは少なくとも20日間、より好ましくは少なくとも30日間、より好ましくは少なくとも40日間、好ましくは少なくとも50日間又はさらに少なくとも60日間適用され得る。
【0206】
突然変異原の適用後、細胞は洗浄され(突然変異原が化学的薬剤である場合)、MHC-1発現に好ましい薬剤、特にHDACiの存在下でさらにインキュベーションされ得る。この薬剤はまた、好ましくは突然変異誘発剤の適用中に存在する。
【0207】
したがって、突然変異原が、胎児細胞において発現されるいくつかの胎児遺伝子の突然変異(すなわち、非同義語、ナンセンス、フレームシフト、停止、獲得、スプライス変異体、CNV、SNV)を誘導し、したがって、胎児抗原(全ゲノム内の新たなネオ抗原)の多様性を増加させることが観察及びチェックされ得る。したがって、これは、増強された免疫原性を有するワクチン組成物であって、迅速かつ頻繁な突然変異が存在する侵襲性ガンに対する広範な免疫反応を刺激することができるワクチン組成物の可能性を増加させるであろう。
【0208】
実際、進行中に腫瘍細胞により発現される抗原における新規体細胞突然変異を伴ってクローン進化が起こるいくつかのガンについては、効率的な免疫反応を得ることは困難であり得る。したがって、免疫反応は、ガンの突然変異ロード及び免疫原性ネオ抗原に依存するであろう。したがって、突然変異原の使用による胎児細胞集団における特異的突然変異の生成は、ワクチン接種により免疫系に提示される抗原の多様性の増加につながるであろう。
【0209】
その結果として、突然変異胎児抗原に対するプライミングT細胞であってこのような細胞の分裂中にガン細胞において出現し、これらの細胞に対する免疫反応を加速及び改善するプライミングT細胞が既に存在するであろう。
【0210】
特定の実施態様では、最初に、古典的な方法により(例えば、2D又は3D培養系における小分子、形態形成及び成長因子を使用した規定の培養条件で)、多能性幹細胞を分化させ得、次いで、突然変異原(例えば、ENU)で処理して、胎児ネオ抗原を発現させる。
【0211】
胎児幹細胞の改変
【0212】
特定の実施態様では、多能性幹細胞の集団は、多能性細胞ゲノム内の遺伝子組み込みを使用することにより、免疫反応を刺激する化合物を過剰発現するように遺伝子改変される。典型的には、第1の工程では、多能性幹細胞の集団を単離及びエクスパンションさせる。第2の工程では、目的の遺伝子を組み込み型ウイルスベクター、例えばレトロウイルス又はレンチウイルスにパッケージングする。第3の工程では、目的の遺伝子を含有する組み込みウイルスベクターを多能性幹細胞の集団に移入し、胎児幹細胞に分化させる。
【0213】
特定の実施態様では、胎児幹細胞の集団又はオルガノイドは、MHC発現及び/又は免疫反応を刺激するタンパク質の遺伝子で改変される。これらの化合物は、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、腫瘍壊死因子(TNF)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、それらの機能的フラグメント並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0214】
本発明により企図されるインターフェロン(IFN)としては、一般的なタイプのIFN、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(IFN-β)及びIFN-ガンマ(IFN-γ)が挙げられる。IFNは、例えば、それらの成長を遅らせ、より正常な挙動の細胞へのそれらの発達を促進し、及び/又はそれらの抗原産生を増加させることにより、ガン細胞に対して直接的に作用して、免疫系がガン細胞を認識及び破壊するのを容易にし得る。IFNはまた、例えば、血管新生を減速させ、免疫系を強化し、並びに/又はナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージを刺激することにより、ガン細胞に対して間接的に作用し得る。リコンビナントIFN-アルファは、Roferon(Roche Pharmaceuticals)及びIntron A(Schering Corporation)として市販されている。
【0215】
本発明により企図されるインターロイキンとしては、IL-2、IL-4、IL-11及びIL-12が挙げられる。市販のリコンビナントインターロイキンの例としては、Proleukin(登録商標)(IL-2;Chiron Corporation)及びNeumega(登録商標)(IL-12;Wyeth Pharmaceuticals)が挙げられる。Zymogenetics, Inc.(Seattle, Wash.)は、現在、リコンビナント型のIL-21(これもまた、本発明の組み合わせにおける使用について企図される)を試験している。
【0216】
本発明により企図されるコロニー刺激因子(CSF)としては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF又はサルグラモスチム)及びエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)が挙げられる。1つ以上の成長因子による処理は、伝統的な化学療法を受けている被験体における新たな血液細胞の生成を刺激するために役立ち得る。したがって、CSFによる処理は、化学療法に関連する副作用の減少において役立ち得、より高用量の化学療法剤の使用を可能にし得る。様々なリコンビナントコロニー刺激因子が市販されており、例えば、Neupogen(登録商標)(G-CSF;Amgen)、Neulasta(ペグフィルグラスチム;Amgen)、Leukine(GM-CSF;Berlex)、Procrit(エリスロポエチン;Ortho Biotech)、Epogen(エリスロポエチン;Amgen)、Arnesp(エリスロポエチン)である。
【0217】
その最も広い意味では、「ベクター」は、細胞へのオリゴヌクレオチドの移入を促進することが可能な任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下で生じるであろう分解の程度と比べて減少した分解で、核酸を細胞に輸送する。一般に、本発明において有用なベクターとしては、限定されないが、ネイキッドプラスミド、非ウイルス送達系(エレクトロポレーション、ソノポレーション、カチオントランスフェクション剤、リポソームなど)、ファージミド、ウイルス、核酸配列の挿入又は取り込みにより操作されたウイルス又は細菌供給源に由来する他のビヒクルが挙げられる。ウイルスベクターは好ましいタイプのベクターであり、限定されないが、以下のウイルス由来の核酸配列を含む:RNAウイルス、例えばレトロウイルスなど(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス及びレンチウイルス由来ベクター)、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン-バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス。命名されていないが当技術分野で公知の他のベクターを容易に用い得る。
【0218】
典型的には、本発明の文脈では、ウイルスベクターとしては、アデノウイルス及びアデノ随伴(AAV)ウイルスが挙げられ、これらは、ヒトの遺伝子治療における使用について既に承認されているDNAウイルスである。実際、それぞれが異なる組織指向性を有する12個の異なるAAV血清型(AAV1~12)が公知である(Wu, Z Mol Ther 2006; 14:316-27)。リコンビナントAAVは、依存性パルボウイルスAAVに由来する(Choi, VW J Virol 2005; 79:6801-07)。アデノ随伴ウイルス型1~12は、複製欠損性であるように操作され得、広範囲の細胞タイプ及び種に感染することができる(Wu, Z Mol Ther 2006; 14:316-27)。それはさらに、熱及び脂質溶媒の安定性;造血細胞を含む多様な系統の細胞における高いトランスダクション頻度;及び重複感染阻害の欠如により、複数の一連のトランスダクションが可能になるなどの利点を有する。加えて、選択圧の非存在下において、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、組織培養で100継代を超えて追跡されており、これは、アデノ随伴ウイルスゲノム組み込みが比較的安定な事象であることを示唆する。アデノ随伴ウイルスはまた、染色体外的に機能し得る。
【0219】
他のベクターとしては、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは当技術分野で広く記載されており、当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 1989を参照のこと。過去数年間、プラスミドベクターは、in vivoで抗原コード遺伝子を細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されている。それらは、ウイルスベクターの多くと同じ安全性懸念を有しないので、これに特に有利である。しかしながら、宿主細胞と適合するプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内で作動可能にコードされる遺伝子からペプチドを発現し得る。いくつかの一般に使用されるプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40及びpBlueScriptが挙げられる。他のプラスミドは当業者に周知である。加えて、プラスミドは、制限酵素及びライゲーション反応を使用してDNAの特定のフラグメントを除去及び付加するように注文設計され得る。プラスミドは、様々な非経口、粘膜及び局所経路により送達され得る。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内、皮内、皮下又は他の経路により注射され得る。それはまた、鼻腔内スプレー又は点鼻、直腸坐薬及び経口により投与され得る。好ましくは、前記DNAプラスミドは、眼内方法(硝子体内、網膜下、脈絡膜上...)を通じて注射される。それはまた、遺伝子銃を使用して表皮又は粘膜表面中に投与され得る。プラスミドは水溶液で与えられ得、金粒子上で乾燥され得、又は限定されないが、リポソーム、デンドリマー、コクリエート及びマイクロカプセル化を含む別のDNA送達系に結合され得る。
【0220】
特定の実施態様では、胎児幹細胞の集団は、相同組換えによる19番染色体のAAVS1遺伝子座への導入遺伝子、例えばsiRNAの導入により改変される。
【0221】
本明細書中で使用される場合、用語「相同組換え」は、染色体又はゲノム上の特定の遺伝子を人工的に改変するための遺伝子ターゲティング手段を指す。染色体上のターゲット配列のものと相同な部分を有するゲノムフラグメントが細胞に導入される場合、この用語は、導入されたゲノムフラグメントと染色体上のそれに対応する遺伝子座との間でヌクレオチド配列相同性に基づいて起こる組換えを指す。
【0222】
また、用語「遺伝子改変」は、染色体上の所望の遺伝子の遺伝子座における外因性DNAの挿入、外因性DNAによる遺伝子の一部若しくは全部の置換又は遺伝子の欠失を指す。より具体的には、遺伝的改変は、外因性DNAフラグメントの挿入(すなわち、「ノックイン」)(この場合、フラグメントが、特定の遺伝子座の遺伝子の発現と併せて発現されるか又は構成的に発現されるような様式で、内因性DNA配列は保持される)、又は内因性DNA配列を改変する遺伝子配列の一部若しくは全体の置換、欠失若しくは破壊(すなわち、「ノックアウト」)を指す。
【0223】
人工染色体を細胞に導入するための方法の例としては、リン酸カルシウム沈殿法(Graham et al., (1973) Virology 52: 456-467、Wigler et al., (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 76 1373-1376及びCurrent Protocols in Molecular Biology Vol.1, Wiley Inter-Science, Supplement 14, Unit 9.1.1-9.1.9 (1990))、ポリエチレングリコールを使用した融合方法(米国特許第4,684,611号明細書)、リポフェクチンなどの脂質担体を使用した方法(Teifel et al., (1995) Biotechniques 19: 79-80、Albrecht et al., (1996) Ann. Hematol. 72: 73-79; Holmen et al., (1995) In Vitro Cell Dev. Biol. Anim. 31: 347-351、Remy et al., (1994) Bioconjug. Chem. 5: 647-654、Le Bolc’h et al., (1995) Tetrahedron Lett. 36: 6681-6684、Loeffler et al., (1993) Meth. Enzymol, 217: 599-618及びStrauss (1996) Meth. Mol. Biol. 54: 307-327)、エレクトロポレーション、及び微小核体との融合のための方法(米国特許第5,240,840号明細書、米国特許第4,806,476号明細書、米国特許第5,298,429号明細書及び米国特許第5,396,767号明細書、Fournier (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78: 6349-6353及びLambert et al., (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 5907-59)が挙げられる。
【0224】
胎児幹細胞の集団
【0225】
したがって、上記方法を用いて、本発明者らは、より効率的な抗腫瘍免疫をトリガーするであろう一部又は全部の胎児遺伝子内に新たな胎児エピトープを発現する胎児幹細胞の集団を得た。したがって、第4の態様では、本発明は、上記方法にしたがって得られた幹細胞の集団に関する。N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)で前処理された多能性幹細胞由来の胎児幹細胞の集団は、非突然変異多能性幹由来の(すなわち、ENUによる前処理なしの)胎児細胞の集団と比較して増加した数の新規突然変異を示す。これらの胎児ネオ抗原は、原発性ガンに関連する。したがって、この集団もまた本発明の主題である。
【0226】
このようにして得られた集団は、特に、以下の遺伝子について、胎児幹細胞が多能性に関する遺伝子を少なくとも20%喪失していることを特徴とする。
【表5】
【0227】
成体分化細胞の系統特異的遺伝子の発現の欠如。
【0228】
したがって、本発明は、胎児幹細胞を含む細胞の組成物であって、前記集団中の細胞が胎児ネオ抗原を提示する、組成物に関する。胎児ネオ抗原の体細胞突然変異率は、突然変異誘発剤への曝露後の多能性幹細胞のマスターバンクに由来する胎児幹細胞集団において認定される。さらなるエクスパンションが実施される場合、これらの体性胎児ネオ抗原の安定性は、このようなさらなるエクスパンションの前又は後に認定される。胎児幹細胞又はオルガノイドにおける突然変異率は、派生胎児細胞又はオルガノイドにおいて発現される胎児ネオ抗原から選択される少なくとも1つの遺伝子の少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%又はさらには少なくとも50%である。所定の遺伝子の突然変異率は、遺伝子のDNAをシークエンシングし、ネイティブ配列(優勢配列はネイティブ「野生型」配列であるので、これは、本質的に主として存在する配列である)に関して、突然変異を含有するコピーの割合を計算することにより明確に計算される。
【0229】
ヒト由来胎児造血幹細胞(すなわち、突然変異原剤によるex vivo処理後のヒト造血胚体に由来する)は、胎児ネオ抗原を発現した。これらの胎児ネオ抗原は、少なくとも以下の群を特徴とする:
【表6】
【0230】
特定の実施態様では、多能性幹細胞由来のヒト胎児腎臓オルガノイドは、原発性成人腎ガン腫において報告されているガン遺伝子に一般に関連する腎前駆体において胎児抗原を発現する。これらの特性評価された胎児遺伝子は、少なくとも以下の群に対応する:
【表7】
【0231】
突然変異誘発剤への多能性細胞の曝露は、このような細胞のゲノムにおけるランダム突然変異の出現をトリガーするであろう。したがって、このような曝露から生じる集団は、胎児幹細胞の集団(これは本質的により均一であり、原発性ガンゲノムにおいて報告されているガンネオ抗原に限定される)と比較して不均一である。
【0232】
さらなる実施態様では、本発明は、胎児幹細胞を含む細胞の組成物であって、前記集団中の細胞が、以下の特徴:
1)ゲノム改変により胎児幹細胞に遺伝的に導入された少なくとも1つの(又は上記に見られるようにそれ以上の)ガン関連ネオ抗原突然変異、
2)ガンゲノムに限定される突然変異タイプの組み合わせであって、突然変異原剤により誘導され、培養胎児幹細胞において選択的利点により濃縮される、組み合わせ
の1つ以上を含む胎児幹細胞の集団において突然変異状況を示す、組成物に関する。
【0233】
突然変異原プロセスは、胎児幹細胞株において新規ゲノム突然変異及び遺伝子モザイクのレベルの増加を引き起こす。遺伝子の突然変異の分析は、好ましくは、NGS、エクソーム、RNAseq又は全ゲノムシーケンシング、CGHアレイ、SNPアレイにより、胎児幹細胞集団における誘発ガン関連「ミュータノーム」シグネチャの大規模ゲノム分析により実施される。トランスクリプトームプロファイリングと組み合わせた全エクソームシークエンシングは、発現タンパクをコードするミュータノームの記述を可能にする。
【0234】
ゲノム体細胞異常及びネオ抗原は、少なくとも2つの当技術分野で公知のバイオインフォマティクス分析用アルゴリズムを使用することにより同定される。突然変異原剤の適用後の全ゲノムにおける総突然変異の保有率は、アウトプット胎児幹細胞におけるより高い突然変異及び/又はCNVロードを確認するであろう。
【0235】
定性的及び定量的基準は、記載されているように、胎児幹細胞における遺伝子モザイク内で各細胞集団を定義することを可能にするであろう:
【0236】
定性的基準としては、以下のものが挙げられる:
-突然変異誘発後の胎児幹細胞ゲノムにおけるそれらの存在と、突然変異誘発あり及びなしの場合の親多能性幹細胞におけるそれらの欠如とに関して定義された、獲得された新規分子体細胞変化(突然変異、CNV又はSNV)の同定;
-各新規突然変異(すなわち、非同義、ナンセンス、スプライス変異体、CNV、SNV)の分類、及び原発性患者特異的ガン又はガンゲノム(データベース、すなわちTCGA、ICGC、COSMICより)と胎児幹細胞遺伝子(これは、正常な成体細胞又は組織に存在しない)との間のそれらの重複検出による検証。
【0237】
このような定量的基準としては、以下のものが挙げられる:
-全ゲノムにおけるこれらの新規体細胞突然変異(偽発見率信頼値FDR≦0.05)及び新規CNV/SNV(FDR<10%)の保有率は、各胎児幹細胞集団又はオルガノイドについて定義されている;
-少なくとも3個超の異なる胎児遺伝子における検証突然変異の存在;
-クローン選択及びエクスパンション後に、又は継代数(深さ50倍から100倍及びターゲットエクソームカバレッジの80~98%)に関して、少なくとも0.1%超又は上記に見られる他の割合(最大50%)の対立遺伝子頻度で、各新規安定体細胞突然変異の突然変異率;
-突然変異誘発又は遺伝子改変前のインプット胎児幹細胞と比較して少なくとも90%超の発現率である安定胎児幹細胞マーカーの発現及び遺伝子発現ベースのアッセイ;
-HDACi、特にVPAの非存在下で維持された胎児細胞集団と比較して少なくとも50%、一般には最大90%増加している、細胞表面におけるMHC I分子の発現(例えば、FACSにより決定)。
【0238】
ワクチン組成物
【0239】
上記胎児幹細胞の集団は、ワクチン組成物において使用され得る。したがって、第5の態様では、本発明は、上記に開示される胎児幹細胞の集団と、免疫反応及び/又はMHC I発現を刺激する薬剤とを含む、ワクチン組成物に関する。
【0240】
特に、それらの増殖能力を抑制し、場合により細胞抽出物を得るために、このような胎児幹細胞は不活性化され、場合により突然変異される。
【0241】
免疫反応を刺激する薬剤は、当技術分野で公知のアジュバント(免疫刺激剤)であり得る。それは、好ましくは、(0.2mM~4mMに含まれる用量範囲で使用される)HDACiである。このようなHDACiが使用される場合、別のアジュバントも使用され得る。
【0242】
本発明はまた、このようなワクチン組成物を含有するデバイス(例えば、シリンジ)であって、HDACi化合物及び細胞組成物の同時投与に使用され得る、デバイスに関する。
【0243】
このようなワクチン組成物は、被験体の治癒のために、ガン細胞(免疫原性ネオ抗原、ドライバー又はパッセンジャー突然変異を発現するガン細胞;エピジェネティックに脱分化した細胞のような前駆体、胎児及び胚遺伝子を発現する腫瘍開始細胞)に対する治療用ワクチンとして、又は特にこれらのガンにかかりやすい被験体におけるこのようなガンの発症を予防するための予防用ワクチンとして使用され得る。
【0244】
素因遺伝子は、例えば、以下のものである(Lindor et al, 2008 Journal of the National Cancer Institute Monographs, No. 38, Concise Handbook of Familial Cancer Susceptibility Syndromes, Second Editionを参照のこと):
乳房/卵巣:BRCA1、BRCA2、PALB2、RAD51
リンチ症候群:MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM
遺伝性乳頭状腎細胞ガン腫:FH、MET
コーデン症候群:PTEN、PIK3CA
ファンコニ病:FANC
フォン・ヒッペル・リンドウ病:VHL
悪性黒色腫:CDKN2A、MITF、BAP1、CDK4
内分泌腺新生物:MEN1、RET、CDKN1B
神経線維腫症:NF1、NF2、LZTR1、SMARCB1、SPRED1
遺伝性褐色細胞腫傍神経節腫:SDH、TMEM127、MAX、EPAS1
家族性腺腫性ポリポーシス:APC、MUTYH
網膜芽腫:RB1
バート・ホッグ・デューベ症候群:FLCN
ブルーム症候群:BLM
カーニー症候群:PRKAR1A
ゴーリン症候群:PTCH1
リー・フラウメニ症候群:TP53、CHEK2
ナイメーヘン症候群:NBN
ポイツ・ジェガース症候群:STK11
家族性若年性ポリポーシス:BMPR1A、SMAD4
色素性乾皮症:XP
【0245】
このリストは限定的なものではない。
【0246】
特定の実施態様では、ガン幹細胞ワクチン製品は、凍結乾燥後の細胞溶解物の混合物、濃縮多ガン幹ネオ抗原の混合物、精製ガン幹ネオ抗原、胎児幹細胞由来のエクソソーム、人工胎児幹細胞及びオルガノイド由来のDNA、RNA、タンパク質又は多ペプチドを含む。これらは、上記に開示される免疫原性剤であり、HDACiの存在下で製剤化される。
【0247】
別の実施態様では、ガン幹細胞ワクチン製品は、アジュバントエフェクターとして使用される操作された照射胎児幹細胞由来の上清GMP培地と混合される。
【0248】
特定の実施態様では、この組成物中の派生胎児細胞は不活性化されている(すなわち、もはや増殖し得ない)。
【0249】
本発明の派生胎児幹細胞及びオルガノイドの組成物は、上記に開示される方法のいずれかにより得られやすい。
【0250】
この組成物中の派生胎児細胞は遺伝的に不均一であり、突然変異原を使用した場合に特定の体細胞突然変異を有するので、当技術分野で公知の方法にしたがって生産された派生胎児細胞組成物であって、遺伝的により均一な派生胎児細胞組成物とは異なることに留意されたい。
【0251】
培養培地における、胎児遺伝子の発現を維持してMHC I提示を増加させる薬剤の存在は、表面上により多くのこれらのMHC I分子を有する細胞をもたらすので、突然変異原の非存在下で培養した場合、派生胎児細胞の集団は、当技術分野で公知の方法を用いて生産された派生胎児細胞の集団とは異なる。
【0252】
本明細書中で使用される場合、用語「MHC I発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物」は、免疫原性を刺激することが可能な化合物を指す。このような化合物は、MHC発現及び/又は免疫反応の活性化剤と称される。用語「MHC」は、外来分子(抗原と呼ぶ)を認識するために細胞表面上に存在する主要組織適合性複合体を指す。MHCは抗原に結合し、それらを免疫分子(例えば、リンパ球T及びB)に提示する。用語「免疫反応」は、抗原への免疫系の免疫学的応答を指す。免疫反応を活性化することにより、FoxP3亜集団及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の集団が減少し、逆にNK集団が増加する。本発明の文脈では、腫瘍に対する免疫反応は、腫瘍の細胞中又は上に存在する抗原に対する細胞傷害性T細胞応答を含む。いくつかの実施態様では、細胞傷害性T細胞応答は、CD8+T細胞により媒介される。典型的には、本発明の文脈では、MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する抗原は、上記胎児幹細胞の集団上に存在する分子に対応する。MCH発現及び/又は免疫系を活性化する化合物は、胎児遺伝子又は免疫原性ネオ抗原である。用語「ネオ抗原」又は「ネオ抗原性」は、ゲノムによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させる少なくとも1つの突然変異から生じる抗原のクラスを意味する。
【0253】
本発明の文脈では、化合物は、サイトカイン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤及びヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤からなる群より選択される。
【0254】
特定の実施態様では、MHC発現及び/又は免疫反応の活性化因子は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。
【0255】
本明細書中で使用される場合、用語ヒストン「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」はHDACiとも称され、ヒストンデアセチラーゼの機能に干渉する化合物のクラスを指す。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ガンの転写レギュレーション及び病因において重要な役割を果たす。典型的には、HDACの阻害剤は転写をモデュレーションし、細胞成長停止、分化及びアポトーシスを誘導する。HDACiはまた、ガン処置(放射線治療薬及び化学療法薬物を含む)において使用される治療剤の細胞傷害性効果を増強する。
【0256】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤はバルプロ酸(VPA)である。
【0257】
用語「バルプロ酸」は2-プロピルペンタン酸(C
8H
16O
2)を指し、それは当技術分野で以下のCAS番号及び式99-66-1を有する:
【化1】
【0258】
バルプロ酸の生物学的活性は複数である(Chateauvieux et al, J. Biomed. Biotechnol, 2010, pii: 479364. doi: 10.1155 / 2010/479364)。バルプロ酸は、神経伝達物質GABA(ガンマアミノ酪酸)増強阻害活性に影響を及ぼす。いくつかの作用機構が示唆されている。バルプロ酸は、特にGABA代謝であり:GABA、GABAトランスアミノ酪酸(LAMP)の分解、GABA合成の増強を阻害し、及びその代謝回転を改変する。加えて、バルプロ酸は特定のイオンチャンネルを遮断し、N-メチル-D-アスパラギン酸により媒介される興奮を低下させ、Na+及びCa2+を含むイオンチャネル(電位依存性L型CACNA1型C、D、N及びF)の活性を遮断する。
【0259】
本発明の文脈では、バルプロ酸は、胎児幹細胞と共有されるガン胎児幹細胞ネオ抗原を発現するガンに対する免疫反応を強化するための免疫刺激剤として使用される。
【0260】
より具体的には、VPAは、ガン幹細胞区画上のMHC Iの発現を刺激及び増強して、いくつかの腫瘍細胞におけるネオ抗原含有量を増加させるために使用される。胎児幹細胞上におけるMHC Iのより高発現は、APC/樹状細胞へのMHC I関連ネオ抗原の提示を増強して、TH1免疫反応を誘導することを可能にする。より高レベルのケモカイン(CXCL9、CXCL10)は、腫瘍へのT細胞のリクルートを増強することを可能にする。
【0261】
本発明は、VPA及び/又は5アザシチジンなどのHADCiの存在下で派生胎児幹細胞において、並びにクロマチン再構築による胎児抗原の発現及びケモカイン発現(CXCL9、CXCL1)を通して腫瘍細胞において、ネオ抗原含有量を増加させる方法に関する。
【0262】
特に、in vivoで被験体を処置するために使用される場合、本発明の組成物及びワクチンにより、腫瘍容積の長期持続的低下を得るように、腫瘍の微小環境を改変し、腫瘍中へのT細胞のリクルートを促進することを可能にする。
【0263】
これは、胎児幹細胞ワクチン及びVPA同時投与の相乗効果によるものであり、これは、ワクチン注射後(例えば、少なくとも15日間)、HDACiが患者にさらに投与された場合に更に改善される。
【0264】
実施例は、胎児幹細胞ワクチン及びVPAの両方による組み合わせ処置により、腫瘍免疫抑制を逆転させ、(腫瘍及び脾臓中の)TRegを減少させ、脾臓におけるT CD4及びCD8発現PD-1のより少ない割合を伴う腫瘍中にT CD4+及びCD8+リンパ球をリクルートしつつ、Th1/Th2細胞性免疫を伴うTILを増加させ、FoxP3 TReg亜集団を減少させることにより優れた抗腫瘍応答を提供することを示す。
【0265】
VPAはc-Myc発現レベルをダウンレギュレーションし、潜在的にガン細胞及び腫瘍開始細胞のアポトーシス及びオートファジーを誘導し得る。VPAは、オートファゴソーム交差提示を介して適応免疫反応を強化し得る。
【0266】
VPAの周知の他の作用は、リンパ節における炎症サイトカイン、例えばIL6、IL8、TNFaインターロイキン(IL)-1β、IL-17などの減少である。
【0267】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤はスベロイルアニリドヒドロキサム酸であり、ボリノスタット(N-ヒドロキシ-N’-フェニルオクタンジアミド)とも称され、2006年に米国食品医薬品局(FDA)により承認された最初のヒストンデアセチラーゼ阻害剤であった(Marchion DC et al 2004; Valente et al 2014)。
【0268】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤はパノビノスタット(LBH-589)であり、2015年にFDA承認を受けており、Valente et al 2014に記載されている構造を有する。
【0269】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤はギビノスタット(ITF2357)であり、欧州連合においてオーファン薬物として承認されている(Leoni et al 2005; Valente et al 2014)。
【0270】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤はベリノスタットであり、ベレオダック(PXD-101)とも称され、2014年にFDA承認を受けている(Ja et al 2003; Valente et al 2014)。
【0271】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤はエンチノスタット(SNDX-275又はMS-275として)である。この分子は、以下の化学式(C21H20N4O3)を有し、Valente et al 2014に記載されている構造を有する。
【0272】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式(C23H20N6O)(Valente et al 2014)を有するモセチノスタット(MGCD01030)である。
【0273】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式(C20H30N4O2)及びDiermayr et al 2012に記載されている構造を有するプラシノスタット(SB939)である。
【0274】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式(C22H19FN4O2)を有するチダミド(CS055/HBI-8000)である。
【0275】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式(C21H26N6O2)を有するキシノスタット(JNJ-26481585)である。
【0276】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式(C21H23N3O5)を有するアベキシノスタット(PCI24781)である(Valente et al 2014)。
【0277】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式(C20H19FN6O2)を有するCHR-3996である(Moffat D et al 2010; Banerji et al 2012)。
【0278】
特定の実施態様では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、以下の化学式((C18H20N2O3)を有するAR-42である(Lin et al 2010)。
【0279】
特定の実施態様では、MHC発現の活性化因子はDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。
【0280】
本明細書中で使用される場合、用語「DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤」は、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)と相互作用し、それらの活性を阻害することができる化合物を指す。DNMTはDNAへのメチル基の転移を触媒する酵素である。DNAメチル化は、多種多様な生物学的機能を果たす。全ての公知のDNAメチルトランスフェラーゼは、メチルドナーとしてS-アデノシルメチオニン(SAM)を使用する。
【0281】
特定の実施態様では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、当技術分野で以下の化学式(C8H12N4O5)及び構造を有する5-アザ-2-デオキシシチジンとしても公知のアザシチジンである(Kaminskas et al 2004; Estey et al 2013)。
【0282】
特定の実施態様では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、以下の式(C8H12N4O4)を有する5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても公知のデシタビンである(Kantarjian et al 2006)。
【0283】
特定の実施態様では、MHC発現及び/又は免疫反応の活性化因子は、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤又はDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。本明細書中で使用される場合、用語「ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤」は、DNAメチル化に加わるzeste相同体1(EZH1)及び2(EZH2)遺伝子のエンハンサーによりコードされるヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ酵素と相互作用することが可能な化合物を指す。EZH2は、補因子S-アデノシル-L-メチオニンを使用することにより、リジン27でヒストンH3へのメチル基の付加を触媒する。
【0284】
特定の実施態様では、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤は3-デアザネプラノシンA(DZNep、C-c3Ado)である。DZNep、C-c3Adoは、当技術分野で以下の化学式C12H14N4O3及びCAS番号102052-95-9を有する。
【0285】
特定の実施態様では、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はUNC1999及び不活性なアナログ化合物である。UNC1999は、当技術分野で以下の化学式C33H43N7O2及びCAS番号1431612-23-5を有する。
【0286】
特定の実施態様では、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はUNC2400及び不活性なアナログ化合物である。UNC2400は、当技術分野で以下の化学式C35H47N7O2及びCAS番号1433200-49-7を有する。
【0287】
特定の実施態様では、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はタゼメトスタット(EPZ6438、E7438)である。タゼメトスタットは、当技術分野で以下の化学式C34H44N4O4及びCAS番号1403254-99-8を有する。
【0288】
特定の実施態様では、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はトリフルオロアセタート(EPZ011989)である。トリフルオロアセタートは、当技術分野で以下の化学式CF3COONa及びCAS番号2923-18-4を有する。
【0289】
特定の実施態様では、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はEPZ005687である。EPZ005687は、当技術分野で以下の化学式C32H37N5O3及びCAS番号1396772-26-1を有する。
【0290】
特定の実施態様では、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はGSK343である。GSK343は、当技術分野で以下の化学式C31H39N7O2及びCAS番号1346704-33-3を有する。
【0291】
特定の実施態様では、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はGSK126である。GSK126は、当技術分野で以下の化学式C31H38N6O2及びCAS番号1346574-57-9を有する。
【0292】
特定の実施態様では、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はGSK2816126である。GSK2816126は、当技術分野で以下の化学式C31H38N6O2及びCAS番号1346574-57-9を有する。
【0293】
特定の実施態様では、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼ酵素阻害剤はZLD1039である。ZLD1039は、当技術分野で以下の化学式C36H48N6O3及びCAS番号1826865-46-6を有する。
【0294】
特定の実施態様では、HDACi及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の両方が使用される。実際、VPA及び5-アザシチジン(DNA及びRNA中に取り込まれ得るヌクレオシドシチジンのアナログ)の併用は、ネオ抗胚性抗原の再発現に対する相乗効果につながることが示されている。
【0295】
HDACiは、治療効率量で投与される。VPAについては、それは10~15mg/kg/日、60mg/kg/日までであり得る。VPAの血漿レベルは、好ましくは通常許容される治療範囲(50~100μg/ml)であるべきである。
【0296】
さらなる態様では、本発明の方法は、ヒト胎児幹細胞と発現を共有する多数の胎児抗原を発現するガンを処置するために好適である(例えば、NACC1、BLM、WDR33、DAZAP1、CDK1、CDC45、ZNF165、XRCC5、SMARCAD1、AIMP2、CKS1B...)。
【0297】
本明細書中で使用される場合、用語「胎児幹細胞を発現するガン」は、本明細書中に開示される方法、ワクチン及び組成物により好ましくはターゲティングされるガンであり、ヒト胎児幹細胞と発現を共有する多数の胎児抗原を発現するガン幹細胞を指す。典型的には、ガンは、膀胱ガン腫、乳ガン腫、子宮頸ガン腫、胆管ガン腫、結腸直腸ガン腫、胃肉腫、神経膠腫、肺ガン腫、リンパ腫、急性及び慢性リンパ性及び骨髄性白血病、黒色腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、卵巣ガン腫、膵臓ガン腫、前立腺ガン腫、胃ガン腫、腎臓ガン腫、頭頸部腫瘍、並びにすべての固形腫瘍及び造血器悪性腫瘍からなる群より選択される。この組成物中の細胞は、性質が不均一であることに留意すべきである。より具体的には、したがって、突然変異原を使用した場合、当技術分野で公知の方法にしたがって培養された多能性細胞組成物(これは均一である)とは異なる。
【0298】
本明細書中で使用される場合、用語「投与する」又は「投与」は、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達及び/又は本明細書中に記載される若しくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達の方法などにより、物質が体外に存在する場合(例えば、組み合わせ調製物)に、物質を被験体に注射するか又は別様に物理的に送達する行為を指す。疾患又はその症候を処置する場合、その物質の投与は、典型的には、疾患又はその症候の発症の後に生じる。疾患又はその症候を予防する場合、その物質の投与は、典型的には、疾患又はその症候の発症の前に生じる。
【0299】
特定の実施態様では、ワクチン組成物(胎児幹細胞+MHC提示を刺激する薬剤)を皮下注射する。注射は、同じ注射時点で、又は異なる注射時点で、同じシリンジ中で、異なるシリンジ中で、同時、逐次的、個別であり得る...
【0300】
特定の実施態様では、追跡処置(MHC I及び/又は免疫系を刺激する化合物、例えばHDACi、特にVPAの投与)は、経口経路により投与される。
【0301】
「治療有効量」は、治療利益を被験体に与えるために必要な活性剤の最小量を意図する。例えば、被験体への「治療有効量」は、障害に罹患することに関連付けられる病理学的症候、疾患進行又は生理学的状態における改善又は屈服への耐性を誘導するか、向上させるか、又は他の方法により引き起こす量である。本発明の化合物の1日総使用量は健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが理解されよう。任意の特定の被験体のための特定の治療有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物、被験体の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食事;投与の時間、投与の経路及び用いられる特定の化合物の排泄速度;処置の期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物;及び医学分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために要求されるレベルより低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、十分に当業者の範囲内である。しかしながら、産物の1日投与量は、1日当たり、成人1人当たり0.01~1000mgの広い範囲にわたって変動し得る。典型的には、組成物は、処置される被験体への投与量の対症的な調整のために、活性成分 0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgを含有する。医薬は、典型的には、活性成分 約0.01mg~約500mg、好ましくは活性成分 約1mg~約100mgを含有する。薬物の有効量は、通常、0.0002mg/kg~約20mg/kg体重/日、特に約0.001mg/kg~7mg/kg体重/日の投与量レベルで供給される。
【0302】
特定の実施態様では、本発明の方法は、放射線治療、ターゲット治療、免疫療法又は化学療法の1つ以上をさらに含む。典型的には、医師は、放射線治療、ターゲット治療、免疫療法又は化学療法と共に、組み合わせ調製物としてのi)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物とを被験体に投与することを選ぶことができ得る。
【0303】
いくつかの実施態様では、被験体は、組み合わせ調製物としてのi)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物と、並びに化学療法剤を投与される。
【0304】
用語「化学療法剤」は、腫瘍成長を阻害するために有効な化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤(例えば、チオテパ及びシクロホスファミド);アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン);なアジリジン(例えば、ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ及びウレドーパ);エチレンアミン及びメチロールメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリメチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファラミド及びトリメチロールメラミンを含む);アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カルノプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロンフォスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシン(11及びカリケアマイシン211、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)を参照のこと);ダイネミシン(ダイネミシンAを含む);エスペラミシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノノマイシン、カラビシン、カンニノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU));葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテプテテリン、トリメトレキセート);プリンアナログ(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン);ピリミジンアナログ(例えば、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなど;アンドロゲン(例えば、カルテストロン、プロピオン酸ドロスタノロン、エピチオスタノール、メピトステスタン、テストラクトン);抗副腎薬(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);葉酸補充剤(例えば、フミン酸);アセグラトン;アルドホスファルニドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンティナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラシン;ペントスチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロムトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」)シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、フランス、アントニー);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノヴァントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸塩;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容し得る塩、酸又は誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用をレギュレーション又は阻害するよう作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲンなど(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston)を含む);並びに抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンなどの;並びに上記のいずれかの薬学的に許容し得る塩、酸又は誘導体もこの定義に含まれる。
【0305】
いくつかの実施態様では、被験体は、組み合わせ調製物としてのi)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物と、並びにターゲットガン治療体を投与される。
【0306】
ターゲットガン治療体は、ガンの成長、進行及び伝播に含まれる特定の分子(「分子ターゲット」)に干渉することによりガンの成長及び伝播を遮断する薬物又は他の物質である。ターゲットガン治療体は、「分子ターゲット薬物」、「分子ターゲット治療」、「高精度医療」又は類似の名称で称されることもある。いくつかの実施態様では、ターゲット治療は、チロシンキナーゼ阻害剤を被験体に投与することからなる。用語「チロシンキナーゼ阻害剤」は、レセプター及び/又は非レセプターチロシンキナーゼの選択的又は非選択的阻害剤として作用する様々な治療的薬剤又は薬物のいずれかを指す。チロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は当技術分野で周知であり、米国特許出願公開第2007/0254295号明細書(これは、その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。チロシンキナーゼ阻害剤に関連する化合物は、チロシンキナーゼ阻害剤の効果を再現し、例えば、関連化合物は、チロシンキナーゼシグナル伝達経路の異なるメンバーに作用して、そのチロシンキナーゼのチロシンキナーゼ阻害剤と同じ効果をもたらすことが当業者に理解されよう。本発明の実施態様の方法において使用するための好適なチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物の例としては、限定されないが、ダサチニブ(BMS-354825)、PP2、BEZ235、サラカチニブ、ゲフィチニブ(Iressa)、スニチニブ(Sutent;SU11248)、エルロチニブ(Tarceva;OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、イマチニブ(Gleevec;STI571)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(Zactima;ZD6474)、ベバシズマブ(avastin)、MK-2206(8-[4-アミノシクロブチル]フェニル)-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン塩酸)誘導体、それらのアナログ及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明において使用するために好適なさらなるチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、例えば、米国特許出願公開第2007/0254295号明細書、米国特許第5,618,829号明細書、米国特許第5,639,757号明細書、米国特許第5,728,868号明細書、米国特許第5,804,396号明細書、米国特許第6,100,254号明細書、米国特許第6,127,374号明細書、米国特許第6,245,759号明細書、米国特許第6,306,874号明細書、米国特許第6,313,138号明細書、米国特許第6,316,444号明細書、米国特許第6,329,380号明細書、米国特許第6,344,459号明細書、米国特許第6,420,382号明細書、米国特許第6,479,512号明細書、米国特許第6,498,165号明細書、米国特許第6,544,988号明細書、米国特許第6,562,818号明細書、米国特許第6,586,423号明細書、米国特許第6,586,424号明細書、米国特許第6,740,665号明細書、米国特許第6,794,393号明細書、米国特許第6,875,767号明細書、米国特許第6,927,293号明細書及び米国特許第6,958,340号明細書(これらは全て、その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。特定の実施態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与され、少なくとも1つの第I相臨床試験、より好ましくは少なくとも1つの第II相臨床試験、さらにより好ましくは少なくとも1つの第III相臨床試験の対象であり、最も好ましくは少なくとも1つの血液学的又は腫瘍学的徴候についてFDAにより承認されている小分子キナーゼ阻害剤である。このような阻害剤の例としては、限定されないが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ二、BMS-599626(AC-480)、ネラチニブ、KRN-633、CEP-11981、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、AZM-475271、CP-724714、TAK-165、スニチニブ、バタラニブ、CP-547632、バンデタニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、タンデトニブ、ミドスタウリン、エンザスタウリン、AEE-788、パゾパニブ、アクチニビブ、モタセニブ、OSI-930、セディラニブ、KRN-951、ドビチニブ、セリシクリブ、SNS-032、PD-0332991、MKC-I(RO-317453、R-440)、ソラフェニブ、ABT-869、ブリバニブ(BMS-582664)、SU-14813、テラチニブ、SU-6668、(TSU-68)、L-21649、MLN-8054、AEW-541及びPD-0325901が挙げられる。
【0307】
いくつかの実施態様では、被験体は、組み合わせ調製物としてのi)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物と、並びに免疫チェックポイント阻害剤を投与される。
【0308】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫チェックポイント阻害剤」は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を完全に又は部分的に低下、阻害、干渉又はモデュレーションする分子を指す。チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化又は機能をレギュレーションする。多数のチェックポイントタンパク質が公知であり、例えばCTLA-4及びそのリガンドCD80並びにCD86;並びにそのリガンドPDL1及びPDL2を伴うPD1である(Pardoll, Nature Reviews Cancer 12: 252-264, 2012)。これらのタンパク質は、T細胞応答の同時刺激又は阻害相互作用に関与する。免疫チェックポイントタンパク質は、自己寛容並びに生理学的免疫反応の期間及び大きさをレギュレーション及び維持する。免疫チェックポイント阻害剤は抗体を含むか又はそれに由来する。いくつかの実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ)、抗PDL1抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、抗BTLA抗体及び抗B7H6抗体からなる群より選択される抗体である。抗CTLA-4抗体の例は、米国特許第5,811,097号明細書;米国特許第5,811,097号明細書;米国特許第5,855,887号明細書;米国特許第6,051,227号明細書;米国特許第6,207,157号明細書;米国特許第6,682,736号明細書;米国特許第6,984,720号明細書;及び米国特許第7,605,238号明細書に記載されている。1つの抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)である。いくつかの実施態様では、抗CTLA-4抗体は、CTLA-4に結合する完全ヒトモノクローナルIgG抗体であるイピリムマブ(10D1、MDX-D010としても公知である)である。別の免疫チェックポイントタンパク質はプログラム細胞死1(PD-1)である。PD-1及びPD-L1遮断薬の例は、米国特許第7,488,802号明細書;米国特許第7,943,743号明細書;米国特許第8,008,449号明細書;米国特許第8,168,757号明細書;米国特許第8,217,149号明細書並びに国際公開第03042402号、国際公開第2008156712号、国際公開第2010089411号、国際公開第2010036959号、国際公開第2011066342号、国際公開第2011159877号、国際公開第2011082400号及び国際公開第2011161699号に記載されている。いくつかの実施態様では、PD-1遮断薬としては、抗PD-L1抗体が挙げられる。特定の他の実施態様では、PD-1遮断薬としては、抗PD-L1抗体及び同様の結合タンパク質、例えばニボルマブ(MDX 1106、BMS 936558、ONO 4538)(PD-1に結合し、そのリガンドPD-L1及びPD-L2によりPD-1の活性化をブロックする完全ヒトIgG4抗体);ラムロリツズマブ(MK-3475又はSCH 900475)(PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体;CT-011(PD-1に結合するヒト化抗体);B7-DCの融合タンパク質であるAMP-224;抗体Fc部分;PD-L1(B7-H1)遮断のためのBMS-936559(MDX-1105-01)が挙げられる。他の免疫チェックポイント阻害剤としては、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤、例えばIMP321(可溶性Ig融合タンパク質)が挙げられる(Brignone et al., 2007, J. Immunol. 179:4202-4211)。他の免疫チェックポイント阻害剤としては、B7阻害剤(例えば、B7-H3及びB7-H4阻害剤)が挙げられる。特に、抗B7-H3抗体MGA271(Loo et al., 2012, Clin. Cancer Res. July 15 (18) 3834)。TIM3(T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3)阻害剤も挙げられる(Fourcade et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2175-86及びSakuishi et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2187-94)。いくつかの実施態様では、Nicholas P. Restifo, Mark E. Dudley and Steven A. Rosenberg(“Adoptive immunotherapy for cancer: harnessing the T cell response, Nature Reviews Immunology, Volume 12, April 2012)により記載されているように、免疫療法的処置は養子免疫療法からなる。養子免疫療法では、患者の循環リンパ球又は腫瘍浸潤リンパ球をin vitroで単離され、リンフォカイン(例えば、IL-2)により活性化され、再投与される(Rosenberg et al., 1988; 1989)。活性化リンパ球は、最も好ましくは、血液サンプルからより早期に単離されて、in vitroで活性化(又は「エクスパンション」)された患者自身の細胞である。
【0309】
いくつかの実施態様では、被験体は、組み合わせ調製物としてのi)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物と、並びに放射線療法剤を投与される。
【0310】
本明細書中で使用される場合、用語「放射線療法剤」は、限定されないが、ガンを処置又は寛解するために有効であることが当業者に公知である任意の放射線療法剤を指すことを意図する。例えば、放射線療法剤は、近接照射療法又は放射性核種療法において投与されるような薬剤であり得る。このような方法は、1つ以上のさらなるガン療法(例えば、限定されないが、化学療法及び/又は別の放射線療法)の投与を場合によりさらに含み得る。
【0311】
医薬組成物及びワクチン組成物
【0312】
上記MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する化合物と胎児幹細胞の集団とは、薬学的に許容し得る賦形剤、及び場合により徐放性マトリックス、例えば生分解性ポリマーなどと組み合わせて医薬組成物を形成し得る。
【0313】
「薬学的に」又は「薬学的に許容し得る」は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与された場合に、有害な、アレルギー性の又は他の不都合な反応を産生しない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容し得る担体又は賦形剤は、任意の型の非毒性の固体、半固体若しくは液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は製剤補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与のための本発明の医薬組成物は、有効成分を単独又は他の有効成分と組み合わせて、単位投与形態で、従来の医薬的支持体との混合物として、動物及びヒトに投与され得る。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒及び経口懸濁液又は溶液、舌下及び頬側投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下腔内及び鼻腔内投与形態並びに直腸投与形態を含む。典型的には、医薬組成物は、注射することが可能な製剤のための、薬学的に許容し得るビヒクルを含有する。これらは、特に、等張性の無菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、若しくは塩化マグネシウムなど又はこのような塩の混合物)、又は乾燥した特に凍結乾燥した組成物(場合に応じて、滅菌水又は生理食塩水の添加時に注射溶液の構成を可能にする)であり得る。注射使用のための好適な医薬形態は、滅菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、形態は無菌でなければならず、簡単な注射可能性が存在する程度にまで流動性でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、微生物(例えば、細菌及び真菌)の汚染作用に対して保存されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容可能な塩として本発明の化合物を含む溶液は、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と好適に混合された水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物中並びに油中で調製され得る。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。ポリペプチド(又はそれをコードする核酸)は、中性又は塩形態の組成物に製剤化され得る。薬学的に許容し得る塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を含み、無機酸(例えば塩酸若しくはリン酸)、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第2鉄)、及び有機塩基(例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン)から誘導され得る。担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物及び植物油を含む溶媒又は分散液であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用により、分散液の場合において要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールによりもたらされ得る。多くの場合では、等張剤(例えば、糖又は塩化ナトリウム)を含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中における使用によりもたらされ得る。滅菌注射溶液は、要求に応じて、上記に列挙されている他の成分のいくつかと適切な溶媒中に要求量の活性ポリペプチドを組み入れ、その後に濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本的な分散媒質及び上に列挙するものからの、要求される他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み入れることにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合では、好ましい調製方法は、有効成分+以前に滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。製剤化により、溶液は、投薬製剤と適合する様式で、治療有効量で投与される。製剤は、様々な剤形(例えば、上記注射用溶液の型)で簡単に投与され得るが、薬物放出カプセルなども用いられ得る。水溶液による非経口投与では、例えば、溶液は必要に応じて好適に緩衝化し、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水又はグルコースを用いて等張にすべきである。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与のために好適である。これに関連して、用られ得る滅菌水性媒質は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1つの投与量は、等張性NaCl溶液 1ml中に溶解され、皮下注入液 1000mlに添加されるか、又は提示された注入部位に注射され得る。投与量のいくらかの変動は、処置される被験体の状態に応じて必然的に生じるであろう。投与責任者は、任意の事象において、個々の被験体のための適切な用量を決定するであろう。
【0314】
より具体的には、胎児幹細胞の集団とMHC発現及び/又は免疫反応を活性化する化合物とは、ワクチン組成物で製剤化される。したがって、本発明は、i)胎児幹細胞の集団とii)MHC発現及び/又は免疫反応を活性化する群より選択される化合物とを含むワクチン組成物に関する。
【0315】
特定の実施態様では、本発明のワクチン組成物は、i)胎児幹細胞とii)バルプロ酸とを含む。
【0316】
特定の実施態様では、本発明のワクチン組成物は、i)特に突然変異原剤又は遺伝子改変により増強されたネオ抗原を発現する胎児幹細胞とii)バルプロ酸とを含む。
【0317】
組成物はまた、5アザシチジンを含み得る。
【0318】
また、本発明のワクチン組成物は、上記のように、ガンを患っている被験体において使用され得る。
【0319】
本発明のワクチン組成物は、免疫原性組成物と同様の様式において、上記生理学的賦形剤を用いて製剤化され得る。例えば、薬学的に許容し得るビヒクルとしては、限定されないが、リン酸緩衝食塩水、蒸留水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン)、様々な型の湿潤剤、無菌溶液などが挙げられる。アジュバント、例えばムラミルペプチド(例えば、MDP)、IL-12、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルム及び/又はモンタニド(登録商標)などがワクチンで使用され得る。
【0320】
本発明のワクチン組成物は、皮下(s.c)、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)又は静脈内(i.v.)注射、経口投与及び鼻腔内投与又は吸入投与により投与され得る。ワクチンの投与は、通常、単回用量である。あるいは、最初に、本発明のワクチンの投与が行われ(初回ワクチン接種)、続いて、幹細胞の同じ集団、免疫系を刺激する化合物若しくはそれらの組み合わせによる、及び/又は放射線治療、ターゲット治療、免疫療法若しくは化学療法のさらなる1つ以上を伴う、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、32、33、34,35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77,78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100回のリコール(その後の投与)が行われる。
【0321】
ワクチン組成物はまた、キットで提供される。キットは、ワクチン組成物と、免疫化に関する指示を提供する情報リーフレットとを含む。キットはまた、産物の投与のための全ての材料を含む。
【0322】
本発明は、以下の図面及び実施例によりさらに説明される。しかしながら、これらの実施例及び図面は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0323】
実施例1:
c-MET突然変異を有する派生腎臓オルガノイド(derived renal oragnoids)からの胎児抗原の特性評価。
【0324】
本発明者らは、センダイウイルス媒介性多能性遺伝子移入を使用して、タイプ1乳頭状腎ガン腫(PRCC)を有するドナー由来の血液細胞を再プログラム化することにより、遺伝性c-MET突然変異を有するiPSC株を樹立した。本発明者らは、胎児細胞から構成される腎臓オルガノイドへのc-MET iPSCの分化を誘導するための3D培養系を設計した。本発明者らは、iPSC由来腎臓オルガノイドが、糸球体及び尿細管構造を有する腎前駆体のマーカーを発現したことを実証した。透過型電子顕微鏡分析により、管状構造における密着結合の存在が確認された。腎臓オルガノイド(EB56)及び親多能性幹細胞(PB56)において、遺伝子アレイ分析を実施した。c-met突然変異を有するiPSC(PB56)と、コミットしたネフロン前駆体を含有する派生胎児腎臓オルガノイドとの間の生成物アルゴリズムをランク付けすることによる教師付き分析により、ディファレンシャルに発現される196個の遺伝子プローブを同定することができた:148個は、EB56では、IPSC PB56と比較してダウンレギュレーションされることが見出され、それらの少数の48個は、EB56では、IPSC PB56と比較してアップレギュレーションされることが見出された(
図1)。これは、胎児腎臓オルガノイドがiPSCからの多能性遺伝子を喪失し、コミットした腎組織に関する胎児遺伝子を獲得したことを裏付けている。
【0325】
PRCC RNAseqサンプルに対して実施したc-MET状況による教師付き機械学習により、最小誤差の誤分類で1333個の予測遺伝子を特性評価することができた。c-MET突然変異IPSCシグネチャとPRCCシグネチャとの間のメタ分析により、IPSCプロファイルの有意な濃縮がc-MET突然変異PRCC腫瘍状況を予測することが明らかになった(濃縮倍率:5.68;p値<2.2E-16)(
図2)。原発性成人腎ガン腫に存在する報告されているガン遺伝子に一般に関連する腎前駆体由来の特性評価された胎児遺伝子は、少なくとも以下の群にある:
【表8】
【0326】
これらの結果は、c-MET突然変異IPSC由来の胎児腎臓オルガノイドが、少なくとも77個の共通ガン関連胎児ネオ抗原を発現する乳頭状腎細胞ガン腫をモデル化して、c-met突然変異に関連する腎ガン腫のためのガン細胞ワクチン製品又は細胞抽出物を調製することを可能にする適切な胎児細胞であることを裏付けている。
【0327】
実施例2
急性骨髄性白血病(AML)を有する派生胎児造血幹細胞における共通ミュータノーム。
【0328】
本発明者らは、疾患の進行をモデル化するために、慢性骨髄性白血病の人工多能性細胞(IPSC)モデルを開発した。慢性骨髄性白血病進行中にBCR-ABL融合タンパク質発現は増加し、この現象は、ゲノム不安定性を誘導し、急性骨髄性白血病につながるブラストトランスフォーメーションに適合する二次ゲノム事象の出現を促進することが周知である。
【0329】
Bcr-Ablガン遺伝子を有するヒト多能性幹細胞を培養し、突然変異原剤(ENU)でエクスパンションさせて、ゲノムの不安定性を誘導し、連続分裂中の体細胞突然変異を増強した。成長及びモルフォゲンの存在下で胚体(EB)の技術を使用することにより、コミットした造血前駆体胎児細胞を生産した。血管芽細胞段階に対応する2~3日目の胚体(EB)、芽細胞コロニー、及び4~20日目のEBを分析した。FACS分析により、造血マーカーCD34、C43、CD45について、造血EBを特性評価した。CFCの数をカウントし、CFCのタイプを分析することによるコロニー形成アッセイにより、造血能力を確認した。本発明者らは、ENUがゲノム不安定性を誘導し、培養液中、再生芽球造血骨髄前駆体を用いてディッシュ中で、急性転化を再現することを可能にしたことを示す。FACS分析により説明されているように、培養造血EB中のVPAの存在は、より低いCMHクラスII効率でCMHクラスIの量を増強させた(
図3)。
【0330】
ENUに曝露した後、初期継代(>20継代)のIPSC及び後期継代(>100継代)のIPSCから得られた16日目の派生胎児造血EB前駆体に対して、遺伝子アレイ、エクソーム及びCGHアレイを実施した。ゲノム不安定性を有する又は有しない分化胚体、並びに初期及び後期継代で培養したIPSC由来のEBと比較して、親IPSCのDNAに対して、全エクソーム分析を実施した。HG19ゲノムバージョンに対してアライメントしたCASAVAパイプラインを使用してIllumina Technologiesのペアエンドシーケンシングにより、次世代シーケンシングを実施した。EXACデータベースの一般的なヒト集団について、0.01未満の頻度で、ゲノム変異体を選択した。
【0331】
本発明者らは、0.10超の対立遺伝子頻度差で、造血EBにおけるゲノム変異を親IPSCと比較した。
図4及び表1に示されているように、BCR-ABL陽性IPSCから生成された造血EBにおいて、数個のゲノム変異を同定した:14個の遺伝子は、9つのミスセンス単一ヌクレオチド変異により、及び5つのフレームシフトにより影響を受けたことが見出された。
【0332】
他方、ENUへの曝露後、IPSC(20継代未満及び100継代超)は造血胎児幹細胞(EB)に分化し、ミュータノームシグネチャを、ENUなしの親IPSC由来の派生EBと比較した。ENUは、造血EBにおけるゲノム不安定性、多数のゲノム変異及び体細胞突然変異を誘導することが示された。重要なことに、本発明者らは、初期継代及び後期継代のIPSC由来の派生造血EBにおいて類似の突然変異を見出したが、これは、iPSCのスケーラブルなエクスパンション中のミュータノームが安定であることを示している(
図4及び表1)。
【0333】
ENUで処理したIPSC由来のEBでは、コードミスセンス及びストップゲイン及びフレームシフトを含む合計123個のゲノム変異が見出された。これらのゲノム変異は、少なくとも以下のもので原発性急性白血病において一般的に発現及び報告される:
【表9】
【0334】
AML患者ブラストトランスクリプトーム分析に統合された「ディッシュにおける急性転化」モデルにおける影響を受けたこれら123個の遺伝子は、全生存の予後識別(p値=0.00000187、
図5)を予測する(ログランクp値=1E-4、
図6)。
【0335】
これらの結果は、IPSC由来造血EBにおけるゲノム変異により影響を受けたネオ抗原が、AMLにおいて発現される類似の胎児ネオ抗原を再現することを裏付けている。したがって、ワクチン製品、例えば照射細胞又は細胞抽出物(AND、ARN、タンパク質)又はネオエピトープ及びペプチド調製物は、この改変人工胎児造血細胞から生産され得る。したがって、この関連胎児造血細胞を使用して、ワクチン接種処置戦略により急性白血病に対する免疫反応を刺激し得る。
【表10】
【0336】
実施例3
肺ガンを有する派生胎児肺オルガノイドにおける共通遺伝子発現
【0337】
本発明者らは、肺ガンシグネチャを予測するために、IPSC由来の肺オルガノイド(したがって胎児細胞から構成される)のトランスクリプトーム分析を調査した:偽発見率(FDR)によるマルチテスト修正後のLIMMAアルゴリズムは、選別細胞と0~5継代の細胞培養物との間で8372個の可変遺伝子を同定した。併せて、SAMアルゴリズムは、肺腫瘍と正常肺組織との間でディファレンシャルに発現される5619個の遺伝子を見出した(FDR<0.05、n=246のサンプル)。スタンフォードが同定した一個抜きアルゴリズム(leave one out algorithm)の機械学習を用いて、肺胞オルガノイドと肺ガンシグネチャとの間の交差に関するネステッド分析を調整した。最小9%未満の誤分類誤差で、19個の予測遺伝子の共通シグネチャが見出された(
図7)。
【0338】
実施例4
HDAC阻害剤はワクチンの免疫原性を増加させる
【0339】
ワクチンとして使用される細胞におけるMHC Iのより高発現は、APC/樹状細胞へのMHC I関連ネオ抗原の提示を増強して、TH1免疫反応を誘導することを可能にするであろう。この目的のために、本発明者らは、4つの異なるHDACiを試験して、2つの独立したiPSC上におけるMHC1の発現を増加させるそれらの能力をチェックした。遺伝子変化を有しない1つのiPSC(PB33)、及びCML疾患を有する患者から生産したBCR-ABLの融合産物に関する1つのiPSC(PB32)。
【0340】
ベリノスタット、エンチネスタット、レビテラセタム及びバルプロ酸を含む4つのHDACiを1~1.5μMの用量で試験した(
図8)。24時間の培養後にフローサイトメトリー分析によりMHC1 HLA ABCの発現を定量したところ、両方のIPSCについて、MHC1が23~52%増加したことが示された(
図9及び10、右パネル)。各細胞株について、DMSOコントロールに対する相対蛍光強度(RFI)平均の正規化は、MHC1の0.84~2.45倍の増加を示す(
図9及び10、左パネル)。
【0341】
実施例5
バルプロ酸(VPA)と組み合わせた自己内胚葉前駆細胞によるワクチン接種は、膵管腺ガン(PDAC)に対する抗腫瘍応答を生成する。
【0342】
本発明者らは、Oct4/Sox2/cMyc/Kfl4転写因子を発現するウイルスベクターを使用することにより、マウス尾線維芽細胞由来iPSC及びマウス分化肝細胞から内胚葉前駆細胞(EndoPC)を樹立した。これらの前駆体は胎児細胞である。EndoPCの膵臓腫瘍発現プロファイルを強調するために、マウス胚性幹細胞(D3)に関連するマウス尾線維芽細胞由来のiIPSCの幹細胞発現プロファイルと比較して、そのトランスクリプトームを、同系C57BL/6マウスに移植したPan02細胞に関連付けた。複合的なクロスバッチ正規化トランスクリプトームマトリックスにより、10
-4未満の閾値のp値で、群間で500回のパーミュテーションを実行して、4つのサンプル群間の教師付きANOVAを実施した。4つの実験条件間で、3230個の遺伝子識別子のリストは有意に変動することが見出された(データは示さず)。2回目では、これらの可変発現プロファイルに対して、SAM教師付きアルゴリズムを用いた結果、以下の群間で有意にディファレンシャルに発現される遺伝子を見出した:(EndoPC+Pan02 in vivo)対(D3-ES+マウスiPSC)(1%未満のFDR)。これらの分析を用いて、EndoPCの膵臓腫瘍遺伝子発現プロファイルは、教師なし主成分分析(
図11)だけではなく、このプロファイルの遺伝子発現ヒートマップに対して実施した教師なしクラスタリング(ピアソン距離、完全法、
図12)によっても、有意に個別化された実験群(P値=1.138249e-10)を可能にする359個の遺伝子識別子を含むことが見出された。これらの結果は、EndoPCでは、膵臓腫瘍発現プロファイルが強調されている可能性があることを示唆している。
【0343】
本発明者らはまた、ユニークな分子シグネチャをプロセシングするEndoPCがマウスiPSCとは異なるものであり、定量的RT-PCRにより、多能性維持に関与する遺伝子、例えばOCT4、SOX2、NANOG、LIN28、CMYC、KLF4及びアルカリホスファターゼ(ALP)について陰性であることが見出されたことを実証した(
図13)。これらの後者の結果は、発生段階特異的胚性抗原(SSEA)-1発現の欠如を示すフローサイトメトリー分析により確認された(
図14)。加えて、EndoPCは、PDX1、HNF4A、HNF1B、HNF1A、FOXA2、FOXA3を含むいくつかの遺伝子をPan02と共有し(データは示さず)、それらの増殖及び自己複製能力について、IL-6/JAK/STAT3シグナル伝達経路に依存する。IL-6/JAK/STAT3軸を評価するために、100ng/ml IL-6、及びJAK阻害剤の存在下のIL-6でPan02及びEndoPCの両方を処理した。
【0344】
両細胞株におけるこの経路の活性化は、IL-6に応じたチロシン705におけるSTAT3のリン酸化と相関していた(
図15は、Pan02細胞のみの結果を示す)。JAK阻害剤を添加し、30分間及び4時間の曝露した後の、ウエスタンブロット分析によるTyr-705-phospho-STAT3形態の検出は、強く阻害された。加えて、IL-6/JAK/STAT3軸の活性化は、βカテニン及びTCF4 mRNAのアップレギュレーションに関連していた(データは示さず)。
【0345】
次いで、本発明者らは、VPAと組み合わせた照射EndoPCによるワクチン接種が、同系PDACマウスモデルにおける膵臓ガンに対して有効であるかを調査した。ワクチン接種は、80グレイの線量で照射した2×106個のEndoPCの2つの懸濁液を皮下経路により注射することからなるものであった。
【0346】
ルシフェラーゼ遺伝子を発現する2×10
6個のPan02Luc細胞を膵臓の尾部に同所注射(orthotropic injection)する7及び14日前に、前記細胞を注射した。2回のワクチン追加免疫を受けたマウス(n=8)は、チャレンジの日に、飲料水中用量 0.40mMのVPAを投与された。同時に、未ワクチン接種マウスは、VPAなしで同じ数のガンPan02Luc細胞を投与された。本発明者らは、未ワクチン接種マウスとは対照的に、マウスへの照射EndoPCの事前注射後において生存率の有意な改善を発見した(
図16)。本発明者らはまた、PBSコントロール群ではPon02腫瘍が漸進的に成長したのに対して、顕著なことに、EndoPCによる免疫は腫瘍成長の遅延をもたらし、処置群における平均腫瘍サイズは、コントロール群と比較して統計的に有意差があったことを見出した。生物発光により表面強度を測定する関心領域(ROI)を体系的に定量したところ、腫瘍チャレンジ後4日目から、ワクチン処置群の腫瘍の劇的な阻害が示された(
図17)。
【0347】
本出願を通して、様々な参考文献が、本発明が関係する技術水準を説明する。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に援用される。
【0348】
参考文献:
【0349】
特許文献
欧州特許出願公開第2599860号明細書
国際特許出願第PCT/JP2006/324881号、国際特許出願第PCT/JP02/05350号
米国特許出願公開第2005/0176707号明細書
米国特許第5,843,780号明細書;米国特許第6,200,806号明細書;米国特許第7,029,913号明細書;米国特許第5,453,357号明細書;米国特許第5,690,926号明細書;米国特許第6,642,048号明細書;米国特許第6,800,480号明細書;米国特許第5,166,065号明細書;米国特許第6,090,622号明細書;米国特許第6,562,619号明細書;米国特許第6,921,632号明細書;米国特許第5,914,268号明細書;米国特許第9,499,797号明細書;米国特許第9,637,732号明細書;米国特許第8,158,766号明細書;米国特許第8,129,187号明細書;米国特許第8,058,065号明細書;米国特許第8,278,104号明細書;米国特許第8,697,359号明細書;米国特許第4,684,611号明細書;米国特許第5,240,840号明細書;米国特許第4,806,476号明細書;米国特許第5,298,429号明細書;米国特許第5,396,767号明細書;米国特許第5,811,097号明細書;米国特許第5,811,097号明細書;米国特許第5,855,887号明細書;米国特許第6,051,227号明細書;米国特許第6,207,157号明細書;米国特許第6,682,736号明細書;米国特許第6,984,720号明細書;米国特許第7,605,238号明細書;米国特許第7,488,802号明細書;米国特許第7,943,743号明細書;米国特許第8,008,449号明細書;米国特許第8,168,757号明細書;米国特許第8,217,149号明細書
国際公開第2012/122629号;国際公開第2016/065330号;国際公開第2017/027757号;国際公開第2017/202949号;国際公開第2001/085917号;国際公開第2012/060473号;国際公開第03/042402号;国際公開第2008/156712号;国際公開第2010/089411号;国際公開第2010/036959号;国際公開第2011/066342号;国際公開第2011/159877号;国際公開第2011/082400号及び国際公開第2011/161699号
【0350】