(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】HAPSの移動及び旋回を考慮した特定チャネルに限定したフットプリント固定制御
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0456 20170101AFI20231225BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20231225BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20231225BHJP
H04B 7/185 20060101ALI20231225BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20231225BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20231225BHJP
【FI】
H04B7/0456 100
H04B7/06 950
H04B7/08 800
H04B7/185
H04W16/28
H04W84/06
(21)【出願番号】P 2021023618
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】田代 晃司
(72)【発明者】
【氏名】星野 兼次
(72)【発明者】
【氏名】長手 厚史
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080459(JP,A)
【文献】特開2021-19335(JP,A)
【文献】特開2020-036070(JP,A)
【文献】須藤 渉一、星野 兼次、太田 喜元,HAPSシステムにおけるフットプリント固定を実現するサービスリンクアンテナの試作及び評価,電子情報通信学会2020年通信ソサイエティ大会講演論文集1,2020年09月01日,p.111,B-1-111
【文献】須藤 渉一、星野 兼次、太田 喜元,HAPSシステムにおけるサービスリンクのフットプリント制御技術の検討,電子情報通信学会2019年通信ソサイエティ大会講演論文集1,2019年08月27日,p.148,B-1-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0456
H04B 7/06
H04B 7/08
H04B 7/185
H04W 16/28
H04W 84/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と無線通信する上空滞在型の通信中継装置であって、
前記端末装置と間で無線通信が可能なサービスリンクのセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報を取得する情報取得部と、
前記アレーアンテナを介して送信される下りリンクの送信信号に対して周波数領域のビームフォーミングのためのプリコーディングを適用する処理を含むベースバンド処理と前記アレーアンテナを介して受信された上りリンクの受信信号に対して周波数領域のビームフォーミングのためのポストコーディングを適用する処理とを行う基地局処理部と、を備え、
前記基地局処理部は、
前記サービスリンクに用いられる下りリンクの無線リソースのうち、前記セルに対して形成される単一又は複数の制御用ビームを介して通信を行う制御通信用の無線リソース部分について、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記制御用ビームに対応するフットプリントの位置を固定するように前記周波数領域のビームフォーミングのためのプリコーディングを行うフットプリント固定制御を実行し、
前記制御通信用の無線リソース部分以外の下りリンクの無線リソース部分については、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づくフットプリント固定制御を実行せず、
前記サービスリンクに用いられる上りリンクの無線リソースのうち、前記セルに対して形成される単一又は複数の制御用ビームを介して上りリンクの通信を行う制御通信用の無線リソース部分について、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記制御用ビームに対応するフットプリントの位置を固定するように前記周波数領域のビームフォーミングのためのポストコーディングを行うフットプリント固定制御を実行し、
前記制御通信用の無線リソース部分以外の上りリンクの無線リソース部分については、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づくフットプリント固定制御を実行せず、
前記フットプリント固定制御では、事前に設定した目標点に対して制御用ビームのメインビームが向くようにビームフォーミングを行う、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
請求項1の通信中継装置において、
前記下りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、同期信号(SS)及び報知チャネル(PBCH)が割り当てられる無線リソース部分を含み、
前記下りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)が割り当てられる無線リソース部分と、前記端末装置から前記セルへの初期アクセス完了前の物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)が割り当てられる無線リソース部分とを含む、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項3】
請求項1又は2の通信中継装置において、
前記上りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)が割り当てられる無線リソース部分を含み、
前記上りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)が割り当てられる無線リソース部分と、前記端末装置から前記セルへの初期アクセス完了前の物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)が割り当てられる無線リソース部分とを含む、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの通信中継装置において、
サービスエリアの位置を基準にした前記通信中継装置の予測移動経路における互いに異なる複数組の位置及び姿勢それぞれに対応づけてビームフォーミング(BF)ウェイトを予め計算して保存し、前記保存している複数組の位置及び姿勢それぞれに対応するビームフォーミング(BF)ウェイトから、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢に対応するビームフォーミング(BF)ウェイトを選択する、ことを特徴とする通信中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HAPS等の上空滞在型の通信中継装置におけるサービスリンクのセルのフットプリントの固定制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、HAPS等の上空滞在型の通信中継装置と、その上空滞在型の通信中継装置で形成されるセル内に位置する複数の端末装置(以下「UE」ともいう。)との間の通信として、massive MIMO(以下「mMIMO」ともいう。)伝送方式の通信が知られている。mMIMOは、多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナを用いてデータ送受信を行うことにより大容量・高速通信を実現する無線伝送技術であり、各UEの通信環境に応じてUEごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。
【0003】
上記UEごとにビームを向けて通信するmMIMO伝送方式の通信を行う場合であっても、基地局からセル内に向けて周期的に送信される同期信号(SS)や主要無線パラメータを通知する報知チャネル(PBCH)の信号等のセル接続開始に必要な制御関連信号はセル内のすべてのUEに届く必要がある。そのため、第5世代の移動通信システムでは、SS及びPBCHのブロック(以下「SSB」という。)を一単位として定義し、セルを構成する複数のエリア部分に対して互いに異なる複数のビーム(以下「SSBビーム」ともいう。)を切り替えながら、SSBビームを介してSS及びPBCH等の制御関連信号を各UEに送信する(Beam Sweeping)技術が採用されている(非特許文献1,非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0046387号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】武田 和晃,その他5名,”5Gにおける物理レイヤ要素技術と高周波数帯域利用に関する検討状況”,NTT DOCOMO テクニカル・ジャーナル,Vol.25,No.3(Oct. 2017)
【文献】R.Manoharan,“5G NR Beam Management and Beam Scheduling (everything about the beams)”,[online],2018年7月12日,Linked in,[2021年1月21日検索],インターネット<https://www.linkedin.com/pulse/5g-nr-beam-management-scheduling-everything-beams-ramalingam>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記HAPSなどの上空滞在型の通信中継装置では、その通信中継装置が位置している成層圏等での気流や気圧などの影響により姿勢や位置が変動するため、地上(又は海上)に形成されるセルのSSBビームのフットプリントが移動・変形する。例えば、通信中継装置(HAPS)の機体がヨー回転すると、セル(サービスエリア)内の多数の端末装置がBFR(Beam Failure Recovery)による接続復帰動作を行うことが想定され(非特許文献2参照)、このBFRによる制御信号の増加が課題となる。また、通信中継装置(HAPS)の機体がロール回転したりピッチ回転したりした場合も、セル(サービスエリア)内の多数の端末装置が上記BFRによる接続復帰動作を行うことが想定され(非特許文献2参照)、このBFRによる制御信号の増加が課題となる。更に、この場合は、多くの端末装置がサービスエリア外となることが想定され、通信の断絶が課題となる。
【0007】
また、第5世代等の次世代の移動通信システムにおいて広帯域化がますます加速している。このような広帯域化された周波数帯域の全域に対して上記セルのフットプリントの固定のためのビームの制御を行おうとする場合、基地局処理装置における回路規模及び消費電力が増大するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る通信中継装置は、端末装置と無線通信する上空滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記端末装置と間で無線通信が可能なサービスリンクのセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報を取得する情報取得部と、前記アレーアンテナを介して送信される下りリンクの送信信号に対して周波数領域のビームフォーミングのためのプリコーディングを適用する処理を含むベースバンド処理を行う基地局処理部と、を備える。前記基地局処理部は、前記サービスリンクに用いられる下りリンクの無線リソースのうち、前記セルに対して形成される単一又は複数の制御用ビームを介して通信を行う制御通信用の無線リソース部分について、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記制御用ビームに対応するフットプリントの位置を固定するように前記周波数領域のビームフォーミングのためのプリコーディングを行うフットプリント固定制御を実行し、前記制御通信用の無線リソース部分以外の下りリンクの無線リソース部分については、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づくフットプリント固定制御を実行しない。
【0009】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記基地局処理部は、前記制御通信用の無線リソース部分以外の下りリンクの無線リソース部分のうち、前記セルに在圏する複数の端末装置のそれぞれとの間で個別ビームを介して下りリンクの通信を行う個別通信用の無線リソース部分について、前記端末装置ごとに周波数領域の個別通信用ビームフォーミングのためのプリコーディングを行ってもよい。
【0010】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記下りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、同期信号(SS)及び報知チャネル(PBCH)が割り当てられる無線リソース部分を含んでもよい。
【0011】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記下りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)が割り当てられる無線リソース部分と、前記端末装置から前記セルへの初期アクセス完了前の物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)が割り当てられる無線リソース部分とを含んでもよい。
【0012】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記フットプリント固定制御では、前記制御通信用の無線リソース部分の帯域に限定して、前記送信信号に対して周波数領域のビームフォーミング(BF)ウェイトを適用するデジタルビームフォーミング制御を行ってもよい。
【0013】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記フットプリント固定制御では、事前に設定した目標点に対して前記制御用ビームのメインビームが向くように、前記制御通信用の無線リソース部分で送信される変調シンボルの位相及び振幅が制御されてもよい。
【0014】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記ビームフォーミング(BF)ウェイトは、前記アレーアンテナの形状の情報と、前記通信中継装置の位置及び姿勢の情報とに基づいて算出されてもよい。
【0015】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、サービスエリアの位置を基準にした前記通信中継装置の予測移動経路における互いに異なる複数組の位置及び姿勢それぞれに対応づけて、前記ビームフォーミング(BF)ウェイトを予め計算して保存し、前記保存している複数組の位置及び姿勢それぞれに対応するビームフォーミング(BF)ウェイトから、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢に対応するビームフォーミング(BF)ウェイトを選択してもよい。
【0016】
前記第1の態様に係る通信中継装置において、前記基地局処理部のベースバンド処理は、前記アレーアンテナを介して受信された受信信号に対して周波数領域のビームフォーミングのためのポストコーディングを適用する処理を含み、前記基地局処理部は、前記サービスリンクに用いられる上りリンクの無線リソースのうち、前記セルに対して形成される単一又は複数の制御用ビームを介して上りリンクの通信を行う制御通信用の無線リソース部分について、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記制御用ビームに対応するフットプリントの位置を固定するように前記周波数領域のビームフォーミングのためのポストコーディングを行うフットプリント固定制御を実行し、前記制御通信用の無線リソース部分以外の上りリンクの無線リソース部分については、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づくフットプリント固定制御を実行しなくてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様に係る通信中継装置は、端末装置と無線通信する上空滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記端末装置と間で無線通信が可能なサービスリンクのセルを形成する複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報を取得する情報取得部と、前記アレーアンテナを介して受信された上りリンクの受信信号に対して周波数領域のビームフォーミングのためのポストコーディングを適用する処理を含むベースバンド処理を行う基地局処理部と、を備える。前記基地局処理部は、前記サービスリンクに用いられる上りリンクの無線リソースのうち、前記セルに対して形成される単一又は複数の制御用ビームを介して上りリンクの通信を行う制御通信用の無線リソース部分について、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づいて、前記制御用ビームに対応するフットプリントの位置を固定するように前記周波数領域のビームフォーミングのためのポストコーディングを行うフットプリント固定制御を実行し、前記制御通信用の無線リソース部分以外の上りリンクの無線リソース部分については、前記通信中継装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報に基づくフットプリント固定制御を実行しない。
【0018】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、前記基地局処理部は、前記制御通信用の無線リソース部分以外の上りリンクの無線リソース部分のうち、前記セルに在圏する複数の端末装置のそれぞれとの間で個別ビームを介して上りリンクの通信を行う個別通信用の無線リソース部分について、前記端末装置ごとに周波数領域の個別通信用ビームフォーミングのためのポストコーディングを行ってもよい。
【0019】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、前記上りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)が割り当てられる無線リソース部分を含んでもよい。
【0020】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、前記上りリンクの制御通信用の無線リソース部分は、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)が割り当てられる無線リソース部分と、前記端末装置から前記セルへの初期アクセス完了前の物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)が割り当てられる無線リソース部分と、を含んでもよい。
【0021】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、前記フットプリント固定制御では、前記制御通信用の無線リソース部分の帯域に限定して、前記受信信号に対して周波数領域のビームフォーミング(BF)ウェイトを適用するデジタルビームフォーミング制御を行ってもよい。
【0022】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、前記フットプリント固定制御では、事前に設定した目標点に対して前記制御用ビームのメインビームが向くように、前記制御通信用の無線リソース部分で受信された変調シンボルの位相及び振幅が制御されてもよい。
【0023】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、前記ビームフォーミング(BF)ウェイトは、前記アレーアンテナの形状の情報と、前記通信中継装置の位置及び姿勢の情報とに基づいて算出されてもよい。
【0024】
前記上りリンクのフットプリント固定制御を実行する第1の態様に係る通信中継装置及び第2の態様に係る通信中継装置において、サービスエリアの位置を基準にした前記通信中継装置の予測移動経路における互いに異なる複数組の位置及び姿勢それぞれに対応づけて、前記ビームフォーミング(BF)ウェイトを予め計算して保存し、前記保存している複数組の位置及び姿勢それぞれに対応するビームフォーミング(BF)ウェイトから、前記情報取得部で取得した前記通信中継装置の位置及び姿勢に対応するビームフォーミング(BF)ウェイトを選択してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上空滞在型の通信中継装置の移動及び姿勢変化があっても、サービスエリアを構成するセル内で制御チャネルなどに割り当てられる特定の無線リソース部分が用いられる制御用ビームのフットプリントの移動及び変形が抑制され、セル内の端末装置との間の制御信号の増加及び通信の断絶を抑制できるとともに、基地局処理部の回路規模及び消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係るHAPSを含む通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図。
【
図4】実施形態のHAPSのサービスリンクのアレーアンテナの一例を示す斜視図。
【
図5】実施形態のHAPSのサービスリンクのアレーアンテナの他の例を示す斜視図。
【
図6】HAPSのアレーアンテナを用いたmassive MIMOにおけるビームフォーミングの一例を示す説明図。
【
図7】実施形態のHAPSのサービスリンクのセルに形成される複数のSSBビームの一例を示す説明図。
【
図8】
図7の複数のSSBビームの時間軸上における切り替えの一例を示す説明図。
【
図9】下りリンクの無線リソースにおけるSSBビームに関連する物理チャネルの配置の一例を示す説明図。
【
図10】上りリンクの無線リソースにおけるSSBビームに関連する物理チャネルの配置の一例を示す説明図。
【
図11】実施形態のHAPSのヨー回転前の状態の一例を示す説明図。
【
図12】比較参考例に係るHAPSのヨー回転によるSSBビームのフットプリントの変化の一例を示す説明図。
【
図13】実施形態のHAPSのロール回転前の状態の一例を示す説明図。
【
図14】比較参考例に係るHAPSのロール回転によるSSBビームのフットプリントの変化の一例を示す説明図。
【
図15】実施形態のHAPSにおけるフットプリント固定制御対象のSSBビーム関連チャネルとフットプリント固定制御対象外の各UEの初期アクセル後の共有チャネルの時間軸上の切り替えの一例を示す説明図。
【
図16】実施形態のHAPSのヨー回転時におけるSSBビームのフットプリント固定制御の効果一例を示す説明図。
【
図17】実施形態のHAPSのロール回転時におけるSSBビームのフットプリント固定制御の効果一例を示す説明図。
【
図18】HAPSの位置を基準にした座標系における方位角及び仰角の定義を示す説明図。
【
図19】実施形態のHAPSの中継通信局の主要構成の一例を示すブロック図。
【
図20】
図19の中継通信局の基地局処理部における下りリンク(DL)送信部の主要構成の一例を示すブロック図。
【
図21】
図19の中継通信局の基地局処理部における上りリンク(UL)受信部の主要構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、地上又は海上に向けてセルを形成し、セルに在圏する複数の端末装置(UE)との間でmassive MIMO(以下「mMIMO」ともいう。)の無線通信を行う上空滞在型の通信中継装置(HAPS)を備え、機体の移動及び姿勢変化があっても、サービスエリアを構成するセル内で制御チャネルを含むSSBなどに割り当てられる特定の無線リソース部分が用いられるSSBビーム(制御用ビーム)のフットプリントの移動及び変形が抑制され、セル内のUEとの間の制御信号の増加及び通信の断絶を抑制できるとともに、基地局処理部の回路規模及び消費電力の低減を図ることができる通信システム(HAPSシステム)である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代等の次世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。
【0028】
図1は、実施形態に係るHAPS(上空滞在型の通信中継装置)を含む通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の通信システム(以下「HAPSシステム」ともいう。)は、上空滞在型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)、(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)10を備えている。HAPS10は、所定高度の空域に位置して3次元セル100Cを形成する。HAPS10は、自律制御又は外部からの制御により地面又は海面から所定高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体(例えば、ソーラープレーン、飛行船、ドローン、気球)に、中継通信局が搭載されたものである。なお、上空滞在型の通信中継装置は、人工衛星に中継通信局が搭載されたものであってもよい。また、本実施形態の通信システムは、HAPS10が通信する一又は複数の端末装置を含んでもよいし、後述のゲートウェイ局(フィーダ局)を含んでもよい。
【0029】
HAPS10が位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0030】
HAPSは一般的な人工衛星の飛行高度よりも低く、地上や海上の基地局よりも高い場所を飛行するため、衛星通信よりも小さい伝搬ロスでありながら、高い見通し率を確保できる。この特徴から、HAPSから地上又は海上のセルラ携帯端末等のユーザ装置である端末装置(移動局)61に対して通信サービスを提供することも可能である。通信サービスをHAPSから提供することで、これまで多数の地上又は海上の基地局でカバーされていた広いエリアを少数のHAPSで一度にカバーできるため、低コストで安定した通信サービスを提供できるメリットがある。
【0031】
HAPS10の中継通信局は、利用者の端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)という。)と無線通信するためのビームを地面(又は海面)に向けて形成することにより、UE61と無線通信可能な3次元セル100Cを形成する。この3次元なセル100Cの地上(又は海上)におけるフットプリント100Fからなるサービスエリア10Aの半径は、例えば数10[km]~100[km]である。
【0032】
なお、本実施形態において、HAPS10の中継通信局は、複数の3次元セル(例えば、3セル又は7セル)を形成し、その複数の3次元セルの地上(又は海上)における複数のフットプリントからなるサービスエリア10Aを形成してもよい。
【0033】
HAPS10の中継通信局は、例えば、地上(又は海上)側の移動通信網80のコアネットワークに接続され上空を向いたアンテナ71を有する中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)である。HAPS10の中継通信局は、地上又は海上に設置されたフィーダ局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS10とフィーダ局70との間の通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0034】
HAPS10は、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS10はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理を自律制御してもよい。
【0035】
また、HAPS10の浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理は、移動通信網80の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)によって制御できるようにしてもよい。管理装置は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS10は、管理装置からの制御情報を受信したり管理装置に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。また、HAPS10は、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理に関する情報、HAPS10の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS10の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS10の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS10の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0036】
図2は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS10の一例を示す斜視図である。
図2のHAPS10は、ソーラープレーンタイプのHAPSであり、長手方向の両端部側が上方に反った主翼部101と、主翼部101の短手方向の一端縁部にバス動力系の推進装置としての複数のモータ駆動のプロペラ103とを備える。主翼部101の上面には、太陽光発電機能を有する太陽光発電部としての太陽光発電パネル(以下「ソーラーパネル」という。)102が設けられている。また、主翼部101の下面の長手方向の2箇所には、板状の連結部104を介して、ミッション機器が収容される複数の機器収容部としてのポッド105が連結されている。各ポッド105の内部には、ミッション機器としての中継通信局110と、バッテリー106とが収容されている。また、各ポッド105の下面側には離発着時に使用される車輪107が設けられている。ソーラーパネル102で発電された電力はバッテリー106に蓄電され、バッテリー106から供給される電力により、プロペラ103のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。
【0037】
図3は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS10の他の例を示す斜視図である。
図3のHAPS10は、無人飛行船タイプのHAPSであり、ペイロードが大きいため大容量のバッテリーを搭載することができる。HAPS10は、浮力で浮揚するためのヘリウムガス等の気体が充填された飛行船本体201と、バス動力系の推進装置としてのモータ駆動のプロペラ202と、ミッション機器が収容される機器収容部203とを備える。機器収容部203の内部には、中継通信局110とバッテリー204とが収容されている。バッテリー204から供給される電力により、プロペラ202のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。なお、飛行船本体201の上面に、太陽光発電機能を有するソーラーパネルを設け、ソーラーパネルで発電された電力をバッテリー204に蓄電するようにしてもよい。
【0038】
なお、以下の実施形態では、UE61と無線通信する上空滞在型の通信中継装置が、
図2のソーラープレーンタイプのHAPS10及び無人飛行船タイプのHAPS20のいずれの一方の場合について図示して説明するが、上空滞在型の通信中継装置は
図3の無人飛行船タイプのHAPS10でもよい。また、以下の実施形態は、HAPS10以外の他の上空滞在型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0039】
また、HAPS10とフィーダ局としてのゲートウェイ局(以下「GW局」と略す。)70を介した固定基地局との間のリンクFL(F),FL(R)を「フィーダリンク」といい、HAPS10とUE61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、HAPS10とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS10を経由してUE61に向かう通信の下りリンクを「フォワードリンク」FL(F)といい、UE61からHAPS10を経由してGW局70に向かう通信の上りリンクを「リバースリンク」FL(R)ともいう。
【0040】
中継通信局110を介したUE61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局110を介したUE61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。
【0041】
また、本実施形態のサービスリンクの無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、多素子のアレーアンテナを用いて複数のUE61のそれぞれに対して同時にビームフォーミング伝送を行うmassive MIMO(多入力多出力:Multi-Input Multi-Output)伝送方式を用いている。mMIMO伝送方式を用いることにより、各UE61の通信環境に応じてUE61ごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。
【0042】
図4及び
図5はそれぞれ、本実施形態のHAPS10におけるmMIMO伝送方式に用いることができる多素子で構成されるアレーアンテナ130の一例を示す斜視図である。
【0043】
図4のアレーアンテナ130は、平板状のアンテナ基体を有し、そのアンテナ基体の平面状のアンテナ面に沿って多数のパッチアンテナなどのアンテナ素子130aが互いに直交する軸方向に二次元的に配列された平面型のアレーアンテナである。
【0044】
図5のアレーアンテナ130は、円筒状又は円柱状のアンテナ基体を有し、そのアンテナ基体の第1アンテナ面としての円周側面の軸方向及び周方向のそれぞれに沿って多数のパッチアンテナなどのアンテナ素子130aが配置されたシリンダー型のアレーアンテナである。
図5のアレーアンテナ130では、図示のように、第2アンテナ面としての底面に沿って複数のパッチアンテナなどのアンテナ素子130aが円形状に配置されていてもよい。また、
図5におけるアンテナ基体は、多角筒状又は多角円柱状のアンテナ基体であってもよい。
【0045】
なお、アレーアンテナ130の形状、並びに、アンテナ素子の数、種類及び配置は、
図4及び
図5に例示したものに限定されない。
【0046】
図6は、HAPS10のアレーアンテナ130を用いたmMIMO伝送方式におけるビームフォーミングの一例を示す説明図である。
図6のHAPS10のアレーアンテナ130とサービスエリア10A(セル100Cのフットプリント100F)との間のサービスリンクSLにおいて、mMIMO伝送方式を用いて、各UE61の通信環境に応じて、各UE61に対して個別に適切なビーム100Bを向けて通信するビームフォーミングを行うことにより、通信品質を改善することができる。
【0047】
図7は、本実施形態のHAPS10のサービスリンクのセル100Cに形成される複数のSSBビーム100B(1)~100B(3)の一例を示す説明図である。
図8は、
図7の複数のSSBビーム100B(1)~100B(3)の時間軸上における切り替えの一例を示す説明図。各UE61に対して個別にビーム100Bを向けて通信するmMIMO伝送方式の通信においても、HAPS10からセル100C内に向けて周期的に送信される同期信号(SS)や主要無線パラメータを通知する報知チャネル(PBCH)等のセル接続開始に必要な制御関連信号は、セル100C内のすべてのUE61に届く必要がある。そのため、本実施形態では、
図7及び
図8に示すように無線リソースにおけるSS及びPBCHのブロックを一単位としたSSBを一つの単位として定義し、セル100Cを構成する複数のエリア部分(以下「SSBエリア」という。)に対して互いに異なる複数の制御用ビームとしてのSSBビーム100B(1)~100B(3)を切り替えながら、SS及びPBCH等の無線通信制御に関する制御関連信号を各UE61に送信している。
【0048】
図9は、下りリンクの無線リソースにおけるSSBビーム100B(1)~100B(3)に関連する物理チャネル(SSBビーム関連チャネル)の配置の一例を示す説明図である。
図9の例では、1msのスロット及び15kHzのサブキャリアを一単位として定義される下りリンクのリソースブロックに割り当てられる物理チャネルのうち、図中のハッチングを付したSS(同期信号)及びPBCH(物理下りリンク報知チャネル)からなるSSBと、PDCCH(物理下りリンク制御チャネル)と、初期アクセス完了前のPDSCH(物理下りリンク共有チャネル)が、SSBビーム100B(1)~100B(3)に関連する物理チャネル(SSBビーム関連チャネル)である。これらのSSBビーム関連チャネルに割り当てられるリソースブロック(RB)が、下りリンクの制御通信用の無線リソース部分である。他の初期アクセス完了以降のPDSCH(物理下りリンク共有チャネル)は、mMIMO伝送方式の下りリンク通信に用いられるUE個別のビームが適用される物理チャネルである。
【0049】
図10は、上りリンクの無線リソースにおけるSSBビーム100B(1)~100B(3)に関連する物理チャネル(SSBビーム関連チャネル)の配置の一例を示す説明図である。
図10の例では、1msのスロット及び15kHzのサブキャリアを一単位として定義される上りリンクのリソースブロックに割り当てられる物理チャネルのうち、図中のハッチングを付したPRACH(物理ランダムアクセスチャネル)と、PUCCH(物理上りリンク制御チャネル)と、初期アクセス完了前のPUSCH(物理上りリンク共有チャネル)が、SSBビーム100B(1)~100B(3)に関連する物理チャネル(SSBビーム関連チャネル)である。これらのSSBビーム関連チャネルに割り当てられるリソースブロック(RB)が、上りリンクの制御通信用の無線リソース部分である。他の初期アクセス完了以降のPUSCH(物理上りリンク共有チャネル)は、mMIMO伝送方式の上りリンク通信に用いられるUE個別のビームが適用される物理チャネルである。
【0050】
このようにSSBビーム100B(1)~100B(3)を介してSS、PBCH等の制御関連信号を送信するHAPS10は、そのHAPS10が位置している成層圏等での気流や気圧などの影響により姿勢や位置が変動する。そのため、HAPS10によって地上(又は海上)に形成されるセル100Cの各SSBビームに対応するフットプリントが移動・変形し、次に示すように制御信号の増加や通信の断絶が発生するおそれがある。
【0051】
図11は、実施形態のHAPS10のヨー回転前の状態の一例を示す説明図である。
図11に例示する飛行船型のHAPS10では、単一のセルに対して互いに異なる向きの3つのSSBビーム100B(1)~100B(3)が形成され、サービスエリア10A内に、SSBビーム100B(1)~100B(3)に対応する3分割のフットプリント100F(1)~100F(3)が位置する。
【0052】
図12は、比較参考例に係るHAPS10のヨー回転によるSSBビームのフットプリントの変化の一例を示す説明図である。
図11に例示したHAPS10が図中の左回転方向に角度θyawだけヨー回転すると、
図12に示すようにSSBビーム100B(1)~100B(3)も同じ角度θyawだけ回転し、SSBビーム100B(1)~100B(3)に対応するフットプリント100F’(1)~100F’(3)も角度θyawだけ回転して位置がシフトする。このフットプリントのシフトによって受信対象のSSBビームが変化したエリア100X(1)~100X(3)内に位置する多くのUE61は、前述のBFRによる接続復帰動作を行うことが想定され、BFRによる制御信号が増加するおそれがある。
【0053】
図13は、実施形態のHAPS10のロール回転前の状態の一例を示す説明図である。
図13に例示するソーラープレーン型のHAPS10では、単一のセルに対して互いに異なる向きの3つのSSBビーム100B(1)~100B(3)が形成され、サービスエリア内に、SSBビーム100B(1)~100B(3)に対応する3分割のフットプリント100F(1)~100F(3)が位置する。なお、
図13では、説明の都合上、フットプリント100F(1)~100F(3)を図中横方向に並べて示している。
【0054】
図14は、比較参考例に係るHAPS10のロール回転によるSSBビームのフットプリントの変化の一例を示す説明図である。
図13に例示したHAPS10が図中の左回転方向に角度θrollだけロール回転すると、
図14に示すようにSSBビーム100B(1)~100B(3)も同じ角度θrollだけ回転し、SSBビーム100B(1)~100B(3)に対応するフットプリント100F’(1)~100F’(3)が図中右方向にシフト移動するとともにサイズも変化する。このフットプリントのシフト及びサイズ変化によって受信対象のSSBビームが変化したエリア100X(2)、100X(3)内に位置する多くのUE61は、前述のBFRによる接続復帰動作を行うことが想定され、BFRによる制御信号が増加するおそれがある。また、SSBビーム100B(1)に対応するフットプリント100F’(1)から外れたエリア100X(1)は、サービスエリア外になるため、エリア100X(1)内に位置する多くのUE61は、HAPS10との通信が断絶してしまう。
【0055】
また、本実施形態のHAPS10を備える移動通信システムにおいて広帯域化された周波数帯域の全域に対してセル100Cのフットプリントの固定のためのビーム制御を行おうとすると、HAPS10の基地局処理部119における回路規模及び消費電力が増大するおそれがある。
【0056】
本実施形態において、上記HAPS10の移動及び姿勢変化がある場合のセル100C内のUE61との間の制御信号の増加及び通信の断絶を抑制するとともに、基地局処理部119の回路規模及び消費電力の低減を図るために、以下に示すように、セル100Cに形成される複数のSSBビーム100B(1)~100B(3)に限定してフットプリント固定制御を行っている。
【0057】
図15は、本実施形態のHAPS10におけるフットプリント固定制御対象のSSBビーム関連チャネル(例えば、SSB、PDCCH及び初期アクセス完了前のPDSCH)と、フットプリント固定制御対象外の各UE61の初期アクセル後の共有チャネル(例えば、初期アクセス完了以降のPDSCH)の時間軸上の切り替えの一例を示す説明図である。
図15に示すように、本実施形態のHAPS10では、下りリンクの場合、SSBビーム100B(1)~100B(3)を介してセル100C内のUE61に周期的なSS及びPBCH、初期アクセス完了前のPDSCH等を送信するSSBビーム関連チャネルの無線リソース部分(所定のスロット及びサブキャリアのRB)に限定して、HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御が実行される。同様に、上りリンクの場合、SSBビーム100B(1)~100B(3)を介してセル100C内のUE61からPRACH、初期アクセス完了前のPUSCH等を送信するSSBビーム関連チャネルの無線リソース部分(所定のスロット及びサブキャリアのRB)に限定して、HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御が実行される。
【0058】
一方、下りリンクにおけるUE個別ビームを介してセル100C内の各UE61に送信される初期アクセス完了以降のPDSCH等の他の共有チャネルの無線リソース部分(RB)については、UE個別ビームの制御がフットプリント固定制御を兼ねるので、上記HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御が実行されない。また同様に、上りリンクにおけるUE個別ビームを介してセル100C内の各UE61から受信する初期アクセス完了以降のPUSCH等の他の共有チャネルの無線リソース部分(RB)については、UE個別ビームの制御がフットプリント固定制御を兼ねるので、上記HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御が実行されない。
【0059】
上記HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御は、基地局処理部119で実行される。下りリンクの送信時のフットプリント固定制御は、例えば、アレーアンテナ130を介してされる周波数領域の送信信号に対して送信用のビームフォーミングウェイト(以下「BFウェイト」という。)を適用するデジタルビームフォーミング制御である。また、上りリンクの受信時のフットプリント固定制御は、例えば、アレーアンテナ130を介して受信された周波数領域の受信信号に対してSSBビーム受信用のBFウェイトを適用するデジタルビームフォーミング制御である。
【0060】
複数のSSBビーム100B(1)~100B(3)のそれぞれに対するフットプリント固定制御(周波数領域のデジタルビームフォーミング制御)は、下りリンク及び上りリンクの両方について実行される必要がある。
【0061】
例えば、下りリンクの場合、事前に設定した地上(又は海上)のセル100Cの3箇所の目標地点のそれぞれに対して送信時のSSBビーム100Bのメインビームが向くように、SSBビーム100Bに関連付けられたSS、PBCH、初期アクセス完了前のPDSCH等を送信するSSBビーム関連チャネルの無線リソース(RB)で送信される変調シンボルにBFウェイトが適用されて変調シンボルの位相及び振幅が制御される。
【0062】
また、上りリンクの場合、事前に設定した地上(又は海上)のセル100Cの3箇所の目標地点のそれぞれに対して受信時のSSBビーム100Bのメインビームが向くように、SSBビーム100Bに関連付けられたPRACH、初期アクセス完了以降のPDSCH等のSSBビーム関連チャネルの無線リソース(RB)で受信された変調シンボルにBFウェイトが適用されて変調信号の位相及び振幅が制御される。
【0063】
上記BFウェイトは、アレーアンテナ130の形状及びアンテナ素子130aの配列に関するアンテナ情報と、HAPS10の位置及び姿勢の少なくとも一方のHAPS本体情報と、に基づいて算出される。BFウェイトの算出に用いるHAPS本体情報は、HAPS10の位置の情報のみであってもよいし、HAPS10の姿勢の情報のみであってもよいし、HAPS10の位置及び姿勢の両方の情報であってもよい。HAPS10の位置の情報は、HAPS10の絶対位置(例えば、緯度、経度及び高度)であってもよいし、対象のサービスエリアの目標地点に対する相対位置情報であってもよい。HAPS10の姿勢の情報は、例えば、HAPS10の基準姿勢に対するヨー回転角度(鉛直軸を中心とした機体の回転角度)、ロール回転角度(進行方向軸を中心とした機体の回転角度)及びピッチ回転角度(進行方向と直交する水平軸を中心とした機体の回転角度)の少なくとも一つであってもよい。
【0064】
本実施形態のHAPS10によれば、上記SSBビーム関連チャネルの無線リソース部分(RB)に限定して実行される、HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御により、例えば、
図16に示すようにHAPS10がヨー回転してもSSBビーム100B(1)~100B(3)のフットプリント100F(1)~100F(3)の位置は固定されて維持される。従って、HAPS10のヨー回転に起因した前述のBFRによる制御信号の増加を抑制できる。また、
図17に示すようにHAPS10がロール回転してもSSBビーム100B(1)~100B(3)のフットプリント100F(1)~100F(3)の位置は固定されて維持される。従って、HAPS10のロール回転に起因した前述のBFRによる制御信号の増加を抑制でき、HAPS10との通信の断絶も発生しない。
【0065】
しかも、本実施形態のHAPS10によれば、UE個別ビームを介してセル100C内の各UE61に送信される初期アクセス完了以降のPDSCH等の他の共有チャネルの無線リソース部分(RB)については、上記HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御が実行されない。また、UE個別ビームを介してセル100C内の各UE61から受信される初期アクセス完了以降のPUSCH等の他の共有チャネルの無線リソース部分(RB)については、上記HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくフットプリント固定制御が実行されない。従って、セル100C全体の帯域についてフットプリント固定制御を行う場合とは異なり、HAPS10の基地局処理部119における回路規模及び消費電力の増大を抑制できる。
【0066】
図18は、HAPS10の位置を基準にした座標系における方位角φ及び仰角θの定義を示す説明図である。事前に設定した目標点に対応する方位角φ及び仰角θの方向に前記制御用ビームのメインビームが向くような制御を行うためには、上記送信用のBFウェイト及び上記受信用のBFウェイトを、例えば次の公開公報に記載されているように計算してもよい(特開2020-036070号公報(出願番号:特願2018-158192)参照)。
【0067】
なお、上記BFウェイトは、HAPS10の移動及び姿勢変化の情報に基づくSSBビームのフットプリント固定制御を実行するタイミングに計算して用いてよいし、HAPS10の複数の位置及び姿勢について事前に計算しておいてもよい。例えば、サービスエリアの位置を基準にしたHAPS10の予測移動経路における互いに異なる複数組の位置及び姿勢それぞれに対応づけて、BFウェイトを予め計算して保存し、その保存している複数組の位置及び姿勢それぞれに対応する複数のBFウェイトから、後述の位置・姿勢情報取得部120で取得したHAPS10の現在の位置及び姿勢に対応するBFウェイトを選択してもよい。
【0068】
図19は、本実施形態のHAPS10の中継通信局110の主要構成の一例を示すブロック図である。
図19の中継通信局110は、基地局タイプの中継通信局の例である。中継通信局110は、サービスリンク用アンテナ部111と、送受信部112と、フィーダリンク用アンテナ部113と、送受信部114と、監視制御部116と、電源部117と、モデム部118と、基地局処理部119と、位置・姿勢情報取得部120とを備える。
【0069】
サービスリンク用アンテナ部111は、地上(又は海上)に向けて放射状のビームを形成するアレーアンテナを有し、UE61と通信可能な3次元セル100Cを形成する。送受信部112は、サービスリンク用アンテナ部111とともに第一無線通信部を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、サービスリンク用アンテナ部111を介して、3次元セル100Cに在圏するUE61に無線信号を送信したりUE61から無線信号を受信したりする。
【0070】
サービスリンク用アンテナ部111及び送受信部112は、アレーアンテナ130を介して複数のUE61のそれぞれから、UE61を識別可能な上りリンク信号を受信する上りリンク(UL)受信部としても機能する。
【0071】
フィーダリンク用アンテナ部113は、地上(又は海上)のフィーダ局70と無線通信するための指向性アンテナを有する。送受信部114は、フィーダリンク用アンテナ部113とともに第二無線通信部を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、フィーダリンク用アンテナ部113を介して、フィーダ局70に無線信号を送信したりフィーダ局70から無線信号を受信したりする。
【0072】
監視制御部116は、例えばCPU及びメモリ等で構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、HAPS10内の各部の動作処理状況を監視したり各部を制御したりする。特に、監視制御部116は、制御プログラムを実行することにより、プロペラ103,202を駆動するモータ駆動部141を制御して、HAPS10を目標位置へ移動させ、また、目標位置近辺に留まるように制御する。
【0073】
電源部117は、バッテリー106,204から出力された電力をHAPS10内の各部に供給する。電源部117は、太陽光発電パネル等で発電した電力や外部から給電された電力をバッテリー106,204に蓄電させる機能を有してもよい。
【0074】
モデム部118は、例えば、フィーダ局70からフィーダリンク用アンテナ部113及び送受信部114を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、基地局処理部119側に出力するデータ信号を生成する。また、モデム部118は、基地局処理部119側から受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、フィーダリンク用アンテナ部113及び送受信部114を介してフィーダ局70に送信する送信信号を生成する。
【0075】
基地局処理部119は、例えば、LTE/LTE-Advancedの標準規格又は第5世代などの次世代の標準規格に準拠した方式に基づいてベースバンド処理を行う機能(例えば、e-NodeB、g-NodeBなどの機能)を有する。
【0076】
基地局処理部119は、例えば、3次元セル100Cに在圏するUE61からサービスリンク用アンテナ部111及び送受信部112を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、モデム部118側に出力するデータ信号を生成する。また、基地局処理部119は、モデム部118側から受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、サービスリンク用アンテナ部111及び送受信部112を介して3次元セル100CのUE61に送信するベースバンド信号(IQ信号)を生成する。
【0077】
更に、基地局処理部119は、下りリンク及び上りリンクの両方について、前述のSSBビーム100B(1)~100B(3)に対するフットプリント固定制御(周波数領域のデジタルビームフォーミング制御)を実行する。
【0078】
また、基地局処理部119におけるベースバンド処理は、セル100Cに在圏する複数のUEのそれぞれとの間でUE個別ビームを介して下りリンクの通信を行う個別通信用の無線リソース部分(例えば、初期アクセス完了以降のPDSCHが割り当てられたRB)について、UE61ごとに周波数領域の個別通信用ビームフォーミングのためのプリコーディングを適用する処理を含む。
【0079】
また、基地局処理部119におけるベースバンド処理は、セル100Cに在圏する複数のUEのそれぞれとの間でUE個別ビームを介して上りリンクの通信を行う個別通信用の無線リソース部分(例えば、初期アクセス完了以降のPUSCHが割り当てられたRB)について、UE61ごとに周波数領域の個別通信用ビームフォーミングのためのポストコーディング(「デコーディング」ともいう。)を適用する処理を含む。
【0080】
位置・姿勢情報取得部120は、HAPS10の位置の情報、姿勢の情報、又は、その両方の情報を取得する。例えば、本実施形態の位置・姿勢情報取得部120は、HAPS10に組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサなどの出力に基づいて、HAPS10の位置及び姿勢の両方の情報を取得する。
【0081】
図20は、
図19の中継通信局110の基地局処理部119における下りリンク(DL)送信部1190の主要構成の一例を示すブロック図である。なお、
図20では、本実施形態に関係する主要構成のみが図示されており、UE61との間の通信に必要な他の構成部分については図示を省略されている。
【0082】
図20において、下りリンク(DL)送信部1190は、第1のプリコーディング部1191と、第2のプリコーディング部1192と、複数の周波数/時間変換部1193とを備える。
【0083】
第1のプリコーディング部(以下「SSBプリコーディング部」という。)1191は、セル100内のSSBビーム100B(1)~100B(3)に対するフットプリント固定制御を伴うビームフォーミングのためのプリコーディング処理を行う。例えば、SSBビーム100B(1)~100B(3)のそれぞれを介して各SSBエリアに送信されるSS、PBCH、初期アクセス完了前PDSCHなどのSSBビーム関連チャネルの送信シンボルSSB1,SSB2,SSB3は、フットプリント固定制御対象の所定のRBに割り当てられ、SSBプリコーディング部1191に順次入力される。SSBプリコーディング部1191は、SSBビーム関連チャネルの送信シンボルが入力されると、その送信シンボルが送信されるSSBエリアに対応する前記フットプリント固定制御が適用されたBFウェイトを、当該送信シンボルに乗算することにより、アレーアンテナ130の複数のアンテナ素子130aに対する複数の周波数領域のIQ信号を生成する。複数の周波数領域のIQ信号はそれぞれ、上記所定のRBに対応するサブキャリアを用いてOFDM変調(サブキャリア変調)された後、対応する周波数/時間変換部1193に入力される。
【0084】
第2のプリコーディング部(以下「UEプリコーディング部」という。)1192は、セル100内のUE61それぞれに対してUE個別ビームを向けるためのプリコーディング処理を行う。例えば、複数のUE61に送信されるSSBビーム関連チャネル以外の物理チャネル(例えば、初期アクセス完了前PDSCH)の複数のUE宛の送信シンボルはそれぞれ、フットプリント固定制御対象外の所定のRB(UE個別のRB)に割り当てられ、UEプリコーディング部1192に並列入力される。UEプリコーディング部1192は、複数のUE宛の送信シンボルが入力されると、前記フットプリント固定制御が適用されていないUEごとのBFウェイトを、当該複数のUE宛の送信シンボルに乗算することにより、アレーアンテナ130の複数のアンテナ素子130aに対する複数の周波数領域のIQ信号を生成する。UEごとのBFウェイトは、例えばUE61から受信したCSI(チャネル状態情報)に基づいて計算することができる。複数の周波数領域のIQ信号はそれぞれ、上記所定のRBに対応するサブキャリアを用いてOFDM変調(サブキャリア変調)された後、対応する周波数/時間変換部1193に入力される。
【0085】
複数の周波数/時間変換部1193は、アレーアンテナ130の複数のアンテナ素子130aのそれぞれに対応するように設けられている。複数の周波数/時間変換部1193はそれぞれ、例えばIFFT(逆フーリエ高速変換)により、第1のプリコーディング部1191及び第2のプリコーディング部1192から出力された複数のアンテナ素子130aに対応する複数の周波数領域のIQ(同位相-直交位相)信号を複数の時間領域のIQ信号に変換する。各周波数/時間変換部1193から出力された時間領域のIQ信号は、送受信部112(
図19参照)に供給される。
【0086】
図21は、
図19の中継通信局110の基地局処理部119における上りリンク(UL)受信部1195の主要構成の一例を示すブロック図である。なお、
図21では、本実施形態に関係する主要構成のみが図示されており、UE61との間の通信に必要な他の構成部分については図示を省略されている。
【0087】
図21において、上りリンク(DL)受信部1195は、複数の周波数/時間変換部1196と、第1のポストコーディング部1197と、第2のポストコーディング部1198と、を備える。
【0088】
複数の周波数/時間変換部1196は、アレーアンテナ130の複数のアンテナ素子130aのそれぞれに対応するように設けられている。複数の周波数/時間変換部1196はそれぞれ、例えばFFT(高速フーリエ変換)により、複数のアンテナ素子130aで受信されて送受信部112(
図19参照)から出力された複数の時間領域の受信信号を、複数の周波数領域のIQ(同位相-直交位相)信号に変換する。複数の周波数/時間変換部1196から出力された複数の周波数領域のIQ信号はそれぞれ、OFDM復調処理が施された後、第1のポストコーディング部1197及び第2のポストコーディング部1198のそれぞれに供給される。
【0089】
第1のポストコーディング部(以下「SSBポストコーディング部」という。)1197は、セル100内のSSBビーム100B(1)~100B(3)に対するフットプリント固定制御を伴うビームフォーミングのためのポストコーディング処理を行う。例えば、複数の周波数/時間変換部1196からSSBポストコーディング部1197に入力された複数の周波数領域の受信信号(IQ信号)はそれぞれ、SSBビーム100B(1)~100B(3)を介して各SSBエリアから受信したPRACH、PUCCH、初期アクセス完了前PUSCHなどのSSBビーム関連チャネルの受信シンボルの信号を含む。SSBポストコーディング部1197は、各SSBエリアに対応する前記フットプリント固定制御が適用されたBFウェイトを、当該受信信号に順次乗算することにより、フットプリント固定制御対象の所定のRBに割り当てられたPRACH、PUCCH、初期アクセス完了前PUSCHなどのSSBビーム関連チャネルの受信シンボルを分離して出力する。
【0090】
第2のポストコーディング部(以下「UEポストコーディング部」という。)1198は、セル100内のUE61それぞれに対してUE個別ビームを向けるためのポストコーディング処理を行う。例えば、複数の周波数/時間変換部1196からUEポストコーディング部1198に入力された複数の周波数領域の受信信号(IQ信号)はそれぞれ、各UE個別ビームを介して受信した各UE61からの受信シンボル(例えば、初期アクセス完了後のPUSCHの受信シンボル)の信号を含む。UEポストコーディング部1198は、前記フットプリント固定制御が適用されていないUEごとのBFウェイトを、当該受信信号に乗算することにより、各UE61からの受信シンボルを分離して出力する。
【0091】
以上、本実施形態によれば、HAPS10の移動及び姿勢変化があっても、サービスエリアを構成するセル100C内で制御チャネルなどに割り当てられる特定の無線リソース部分が用いられるSSBビーム(制御用ビーム)100B(1)~100B(3)のフットプリントの移動及び変形が抑制され、セル100C内のUE61との間のBFRによる制御信号の増加及び通信の断絶を抑制できるとともに、基地局処理部119の回路規模及び消費電力の低減を図ることができる。
【0092】
なお、上記実施形態におけるSSBビーム100B(1)~100B(3)のフットプリント固定制御は、HAPS10が自立的に判断して行ってもよいし、遠隔制御装置やサーバ等の外部装置からの制御指令によって行ってもよい。また、上記SSBビーム100B(1)~100B(3)のフットプリント固定制御は所定の時間間隔で定期的に行ってもよいし、HAPS10の移動距離又は姿勢変化が所定よりも大きくなったときに行ってもよい。
【0093】
また、上記実施形態におけるSSBビームの数は1、2、又は4以上であってもよい。
【0094】
また、本発明は、無線リソース(時間・周波数リソース)あたりのUE数(ユーザ数)に関係なく適用できるものである。また、本発明は、ある特定の無線リソース(時間・周波数リソース)を単一のUEが利用するシングルユーザ伝送(例えば、SU-MIMO伝送)、及び、ある特定の無線リソース(時間・周波数リソース)を複数のUEが利用するマルチユーザ伝送(例えば、MU-MIMO伝送)の両方において適用可能である。
【0095】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS10等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0096】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、中継通信局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0097】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0098】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0099】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0100】
10 :HAPS(通信中継装置)
10A :サービスエリア
70 :GW局(フィーダ局)
71 :アンテナ
80 :移動通信網
100B(1)~100B(3) :SSBビーム
100C :セル
100F(1)~100F(3) :SSBビームのフットプリント
100F’(1)~100F’(3) :変化後のSSBビームのフットプリント
100X(1)~100(X) :SSBビームが変化したエリア
110 :中継通信局
111 :サービスリンク用アンテナ部
112 :送受信部
113 :フィーダリンク用アンテナ部
114 :送受信部
116 :監視制御部
117 :電源部
118 :モデム部
119 :基地局処理部
120 :姿勢情報取得部
130 :アレーアンテナ
130a :アンテナ素子
1190 :下りリンク(DL)送信部
1191 :第1のプリコーディング部(SSBプリコーディング部)
1192 :第2のプリコーディング部(UEプリコーディング部)
1193 :周波数/時間変換部
1195 :上りリンク(UL)受信部
1196 :周波数/時間変換部
1197 :第1のポストコーディング部(SSBポストプリコーディング部)
1198 :第2のポストコーディング部(UEポストコーディング部)