(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】非向精神性カンナビノイドを含有する包接物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20231225BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20231225BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20231225BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20231225BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20231225BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20231225BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20231225BHJP
A61P 17/00 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/73
A61K8/9789
A61K31/05
A61K31/352
A61K31/353
A61K47/40
A61K47/69
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2022512476
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2020090347
(87)【国際公開番号】W WO2020238642
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】201910463263.9
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521481681
【氏名又は名称】漢義生物科技(北京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】孫武興
(72)【発明者】
【氏名】譚▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】張景
(72)【発明者】
【氏名】金倩
(72)【発明者】
【氏名】王曙賓
(72)【発明者】
【氏名】▲しぃん▼俊波
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0263954(US,A1)
【文献】特表2019-512019(JP,A)
【文献】国際公開第2003/070775(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/070774(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183011(WO,A1)
【文献】Cyclodextrin-enabled Cannabinoid Formulations,CYCLODEXTRIN NEWS,2018年,Vol. 32, No. 2,pp. 1-15
【文献】Journal of Drug Delivery Science and Technology,2019年03月19日,Vol. 51,pp. 337-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/185
A61K 47/69
A61K 47/40
A61K 31/05
A61K 31/353
A61K 8/9789
A61K 8/34
A61K 8/49
A61K 8/73
A61P 17/00
A61K 31/352
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非向精神性カンナビノイドを含有する包接物の調製方法であって、
ステップ(1)大麻
抽出物を有機試薬で溶解し、大麻
抽出物の溶液を得ることと、
ステップ(2)
包接剤を秤量し、水に溶解して
包接剤溶液を得ることと、
ステップ(3) (2)で得られた
包接剤溶液に(1)で得られた溶液を滴下して加え、25℃
~80℃
で攪拌した後、室温まで冷却して冷蔵し、ろ過してフィルターケーキ1を回収することと
、
ステップ(4) ステップ(3)で得られたフィルターケーキ1を水-有機
試薬混合液で撹拌溶解
し、ろ過してフィルターケーキ2を回収することと、
ステップ(5) ステップ(4)で得られたフィルターケーキ2を真空下で乾燥し、非精神作用カ
ンナビノイドを含む包接化合物を取得することと、を含み、
ステップ(1)の大麻抽出物は、生薬原料に対して抽出、抽出液濃縮、純化、濃縮を行って
得たエキスであり、
前記生薬原料は、大麻花及び/又は大麻葉であり、
ステップ(3)では、前記包接剤はシクロデキストリン又はその誘導体であり、
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ
-シクロデキストリンから選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わせたものであ
り、
前記シクロデキストリン誘導体は、2-ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、3-ヒド
ロキシプロピルシクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、カルボキシメチルシ
クロデキストリン、シクロデキストリン硫酸エステル、シクロデキストリンリン酸エステ
ル、シクロデキストリン硝酸エステル、シクロデキストリン-エピクロロヒドリン架橋ポ
リマー、から選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わせたものであり、
ステップ(1)及び
(4)では、前記有機試薬は、エタノール、メタノール、イソプロパノール
、酢酸エチル、及びアセトンから独立して選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合
わせたものであり、
ステップ(2)の前記包接剤とステップ(1)の前記大麻抽出物の生薬原料との重量比が0.01
~10:1であり、
ステップ(2)の前記水とステップ(1)の前記大麻抽出物の生薬原料との重量比が10~40:1
であり、
前記包接物には向精神性カンナビノイドが含まれていない、前記向精神性カンナビノイド
は、THC、THCVである、
非向精神性カンナビノイドを含有する包接物の調製方法。
【請求項2】
ステップ(3)では、前記撹拌温度は50
~70℃であり、
ステップ(3)では、前記撹拌時間は0.5
~4時間であり、
ステップ(3)では、前記冷蔵時間は12
~24時間であり、
ステップ(4)では、前記水-有機
試薬混合液中、水と有機溶媒との体積比は1:1
~5であり
、
ステップ(4)では、前記撹拌温度は20
~30℃であり、
ステップ(4)では、前記撹拌時間は0.5
~3時間である、ことを特徴とする請求項1記載の
調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漢方薬化学及び製剤の技術分野に関し、具体的には、非向精神性カンナビノイ
ドを含有する包接物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包接物は分子が全部又は部分的に別の分子の空隙構造に包接された特殊な複合物であり
、該複合物は医薬品分子と包接材料分子をファンデルワールス力で結合したものであり、
包接対象の分子は被包接剤又はゲスト分子と呼ばれ、空隙構造を有する分子は包接剤又は
ホスト分子と呼ばれる。包接物の調製技術は、医薬品製剤技術として高速な発展を遂げて
おり、難溶性医薬品のバイオアベイラビリティ向上、医薬品の安定性向上、味のマスキン
グ、油性医薬品の固体化、医薬品の不良な臭気や味のマスキング、放出速度調整、医薬品
の刺激性や毒性、副作用低減などにおいて、重要な役割を果たす。
【0003】
大麻中のポリフェノール系成分はその主要な活性成分であるが、このような成分は光安
定性に劣り、酸化されやすく、現在、分離された化合物には、主成分として、カンナビジ
オール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジバリン(CBD
V)、カンナビゲロール(CBG)、Δ9-テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、
カンナビノール(CBN)、カンナビクロメン(CBC)などの種類が含まれる。上記の
主成分の構造式は以下のとおりである。
【0004】
カンナビジオール(CBD)
カンナビゲロール(CBG)
カンナビジバリン(CBDV)
Δ
9-テトラヒドロカンナビバリン(THCV)
カンナビノール(CBN)
テトラヒドロカンナビノール(THC)
カンナビクロメン(CBC)
これらのうち、CBD、CBDV、CBG、CBCは大麻中の非精神活性成分、即ち非
向精神性カンナビノイドであり、THCV、CBN、THCは大麻中の向精神性成分、即
ち向精神性カンナビノイドである。
【0005】
従来技術では、非向精神性カンナビノイドの分離純化方法は主にTHCだけを除去する
技術である。例えば特許出願CN106278828Aは、エタノールを抽出溶媒とし、
クロマトグラフィー技術と組みを合併し大麻中のTHCを除去し、カンナビジオールの有
効成分だけを保留することを開示しており、CN107337586Aは、中国麻(即ち
大麻)からのカンナビジオールの抽出方法を開示し、この方法は、マクロ多孔性吸着樹脂
を用いてカンナビジオールを吸着し、さらに薄層クロマトグラフィー技術によって純化し
てTHCを含まないカンナビジオールを得ることを開示し、CN103739585Aは
、産業用大麻からのジヒドロカンナビノール(CBD)抽出プロセスを開示し、このプロ
セスは、クロマトグラフィー分離によりCBDを純化する。従来技術では、現在のところ
、CBN、THC、THCVなどの非向精神性カンナビノイドを同時に除去することがで
きない。ただし、THCだけを除去し、THCV、CBNを同時に除去できないと、カン
ナビノイド系医薬品の開発や使用が一定程度で制限されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠陥を解決するために、本発明は、非向精神性カンナビノイドを含有する包
接物及びその調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、原料として大麻抽出物と包接剤を含み、生薬原料量基準で、前
記包接剤と大麻抽出物の生薬原料との重量比が0.01~10:1(例えば0.01:1
、0.1:1、1:1、3:1、5:1、8:1、10:1)である非向精神性カンナビ
ノイドを含有する包接物を提供する。
【0008】
さらに、前記大麻抽出物は非向精神性カンナビノイドと向精神性カンナビノイドを含む
。
【0009】
さらに、前記包接物には向精神性カンナビノイドが実質的に含まれておらず、ここで、
「実質的に含まれていない」とは、前記包接物中の向精神性カンナビノイドの含有量が0
.01%(質量百分率)(さらに0.001%未満)未満であることを意味し、好ましく
は、前記包接物中、向精神性カンナビノイドが含まれておらず、即ち、前記包接物中の向
精神性カンナビノイドの含有量が0である。
【0010】
さらに、前記包接物は、大麻抽出物溶液を包接剤溶液に滴下して、撹拌し、沈殿を分離し
て水-有機溶媒混合液で溶解し、さらに沈殿を分離して真空乾燥させることにより得られ
る。
【0011】
さらに、前記非向精神性カンナビノイドは、カンナビジオール、カンナビジバリン、カ
ンナビゲロール、カンナビクロメンのうちの1種又は2種以上を含む。
【0012】
さらに、前記向精神性カンナビノイドは、テトラヒドロカンナビノール、Δ9-テトラ
ヒドロカンナビバリン、及びカンナビノールを含む。
【0013】
さらに、前記包接剤は、シクロデキストリン又はその誘導体である。
【0014】
さらに、上記のシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキスト
リン、及びγ-シクロデキストリンから選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合
わせたものである。
【0015】
さらに、上記のシクロデキストリン誘導体は、2-ヒドロキシプロピルシクロデキスト
リン、3-ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、メチル化
シクロデキストリン、低分子量β-シクロデキストリンポリマー(例えば分子量3000
~6000Da)、カルボキシメチルシクロデキストリン、シクロデキストリン硫酸エス
テル、シクロデキストリンリン酸エステル、シクロデキストリン硝酸エステル、シクロデ
キストリン-エピクロロヒドリン架橋ポリマー、及びマクロシクロデキストリンシリーズ
から選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わせたものである。
【0016】
本発明の一実施例では、前記包接剤はβ-シクロデキストリンである。
【0017】
本発明の別の実施例では、前記包接剤は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキスト
リン又は3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0018】
さらに、前記包接剤溶液は包接剤の水溶液であり、水と上記の大麻抽出物の生薬原料と
の重量比が10~40:1(例えば10:1、15:1、20:1、30:1、35:1
、40:1)である。
【0019】
本発明の一実施例では、前記大麻抽出物は、大麻抽出物の生薬原料に対して抽出、抽出
液濃縮、純化、濃縮を行って得たエキスである。
【0020】
さらに、前記大麻抽出物の生薬原料は、大麻葉、大麻花、大麻根、大麻藁、及び大麻種
子から選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わせたものである。
【0021】
本発明の一実施例では、前記大麻抽出物の生薬原料は大麻花及び/又は大麻葉である。
【0022】
さらに、前記滴下ステップの温度は25℃~80℃、好ましくは50~70℃(例えば
50、55、60、65、70℃)である。
【0023】
さらに、前記撹拌ステップの温度は25℃~80℃、好ましくは50~70℃(例えば
50、55、60、65、70℃)である。
【0024】
さらに、前記撹拌時間は0.5~4時間(例えば0.5、1、2、3、4時間)である
。
【0025】
さらに、前記水-有機溶媒混合液中、水と有機溶媒との体積比は1:1~5(例えば1
:1、1:2、1:3、1:4、1:5)である。
【0026】
さらに、前記水-有機溶媒混合液中、有機溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロ
パノール、酢酸エチル、及びアセトンから選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み
合わせたものである。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記水-有機溶媒混合液は水-エタノール混合液(例えば5
0%~80%のエタノール溶液)である。
【0028】
さらに、前記包接物は、非向精神性カンナビノイドとシクロデキストリン又はその誘導
体(例えばβ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)を含み、前記非向精神性カンナビ
ノイドの全含有量が50%以上(例えば50%~60%)であり、且つ、前記包接物中、
向精神性カンナビノイドが含まれていない。
【0029】
別の態様では、本発明は、
大麻抽出物を有機試薬で溶解して、大麻抽出物溶液を得るステップ(1)と、
包接剤を秤量して水に溶解し、包接剤溶液を得るステップ(2)と、
ステップ(1)で得た溶液を、ステップ(2)で得た包接剤溶液に緩やかに滴下し、2
5℃~80℃で撹拌し、室温に降温して冷蔵し、ろ過してろ過ケーキ1を収集するステッ
プ(3)と、
ステップ(3)で得たろ過ケーキ1に水-有機溶媒混合液を加えて撹拌して溶解し、ろ
過してろ過ケーキ2を収集するステップ(4)と、
ステップ(4)で得たろ過ケーキ2を真空乾燥させ、非向精神性カンナビノイドを含有
する包接物を得るステップ(5)とを含む、非向精神性カンナビノイドを含有する包接物
の調製方法を提供する。
【0030】
本発明では、ステップ(1)の大麻抽出物は、生薬原料から抽出されるカンナビノイド
成分(向精神性カンナビノイドと非向精神性カンナビノイドを含み、これらのうち、向精
神性カンナビノイドは、テトラヒドロカンナビノール、カンナビノール、Δ9-テトラヒ
ドロカンナビバリンのうちの1種又は2種以上を含む)を含有する抽出物である。本発明
の一実施形態では、ステップ(1)の大麻抽出物は、生薬原料に対して抽出、抽出液濃縮
、純化、濃縮を行って得たエキスである。
【0031】
さらに、前記大麻抽出物の生薬原料は、大麻葉、大麻花、大麻根、大麻藁、及び大麻種
子から選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わせたものである。
【0032】
本発明の一実施例では、前記大麻抽出物の生薬原料は大麻花及び/又は大麻葉である。
【0033】
本発明の一実施例では、上記の純化はカラムクロマトグラフィーによる純化である。
【0034】
さらに、ステップ(1)の大麻抽出物は以下のステップで調製される。生薬原料をエタ
ノール溶液で抽出して抽出液を得て、抽出液を濃縮させ、カラムクロマトグラフィーによ
り溶出し、溶出液を濃縮させる。ここで、エタノール溶液の濃度は60~95%(v/v
、例えば60%、70%、75%、80%、90%、95%)であってもよく、カラムク
ロマトグラフィーに使用されるクロマトグラフィーカラム充填剤はスチレン系マクロポー
ラス樹脂であってもよく、溶出は、水、50~60%エタノール、80~90%エタノー
ルで順次溶出し、80-90%エタノール溶出液を収集することを含んでもよい。
【0035】
また、ステップ(1)の大麻抽出物は、従来技術における大麻抽出物を用いるか、又は
従来の調製方法で調製されてもよい。
【0036】
さらに、ステップ(1)における有機溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノ
ール、酢酸エチル、及びアセトンから選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わ
せたものである。
【0037】
さらに、前記包接剤はシクロデキストリン又はその誘導体である。
【0038】
さらに、上記のシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキスト
リン、及びγ-シクロデキストリンから選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合
わせたものである。
【0039】
さらに、上記のシクロデキストリン誘導体は、2-ヒドロキシプロピルシクロデキスト
リン、3-ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、メチル化
シクロデキストリン、低分子量β-シクロデキストリンポリマー(例えば分子量3000
~6000Da)、カルボキシメチルシクロデキストリン、シクロデキストリン硫酸エス
テル、シクロデキストリンリン酸エステル、シクロデキストリン硝酸エステル、シクロデ
キストリン-エピクロロヒドリン架橋ポリマー、及びマクロシクロデキストリンシリーズ
から選ばれる1種又は2種以上を任意の割合で組み合わせたものである。
【0040】
本発明の一実施例では、前記包接剤はβ-シクロデキストリンである。
【0041】
本発明の別の実施例では、前記包接剤は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキスト
リン又は3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0042】
さらに、ステップ(2)の包接剤とステップ(1)の大麻抽出物の生薬原料(例えば大
麻花及び/又は大麻葉)との重量比が、0.01~10:1(例えば0.01:1、0.
1:1、1:1、3:1、5:1、8:1、10:1)である。
【0043】
さらに、ステップ(2)の水とステップ(1)の大麻抽出物の生薬原料(例えば大麻花
及び/又は大麻葉)との重量比が、10~40:1(例えば10:1、15:1、20:
1、30:1、35:1、40:1)である。
【0044】
さらに、ステップ(3)の溶解は加熱撹拌して溶解し又は室温撹拌して溶解しであり、
ここで、加熱温度は50~70℃(例えば50、55、60、65、70℃)であっても
よい。
【0045】
さらに、ステップ(3)では、撹拌温度は50~70℃(例えば50、55、60、6
5、70℃)である。
【0046】
さらに、ステップ(3)では、撹拌時間は0.5~4時間(例えば0.5、1、2、3
、4時間)である。
【0047】
さらに、ステップ(3)では、冷蔵時間は12~24時間(例えば12、16、20、
24時間)である。
【0048】
さらに、ステップ(4)の水-有機溶媒混合液中、水と有機溶媒との体積比は1:1~
5(例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5)である。
【0049】
さらに、ステップ(4)の水-有機溶媒混合液中、有機溶媒は、エタノール、メタノー
ル、イソプロパノール、酢酸エチル、及びアセトンから選ばれる1種又は2種以上を任意
の割合で組み合わせたものである。
【0050】
本発明の一実施形態では、ステップ(4)の水-有機溶媒混合液は水-エタノール混合
液(例えば50%~80%のエタノール溶液)である。
【0051】
さらに、ステップ(4)では、撹拌温度は20~30℃(例えば20、25、30℃、
例えば室温)である。
【0052】
さらに、ステップ(4)では、撹拌時間は0.5~3時間(例えば0.5、1、2、3
時間)である。
【0053】
別の態様では、本発明は、上記の包接物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物
をさらに提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、医薬品、医療美容製品及び化粧品の調製における上記の包接
物の使用をさらに提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、医薬品、医療美容製品及び化粧品の調製における上記の包接
物の調製方法の使用をさらに提供する。
【0056】
本発明における大麻は、様々な産地からの各亜種の大麻であってもよく、インド、中央
アジア、ブータン、ネパール、シッキム、中国産の大麻、sativaやindica亜
種を含むが、これらに制限されない。
【0057】
本発明では、各種の試薬は必要に応じて、検出、医療用、薬品用基準の中国産又は輸入
の試薬を使用してもよい。
【0058】
大麻中の向精神性成分を効果的に除去するために、本発明では、初めて包接物の調製技
術を向精神性カンナビノイド系成分の除去プロセスに用いる。本発明は、包接技術によっ
てCBD、CBDV、CBG、CBCなどの非向精神性カンナビノイドを高選択性で優先
的に包接することができ、一方、THCV、CBN、THCなどの向精神性カンナビノイ
ドについては、選択的な包接作用が弱く、水又は水-有機溶媒混合液によりろ過、洗浄さ
れて除去しやすく、したがって、非向精神性成分を大量で保留することができ、洗浄した
包接物では、非向精神性成分の安定性が大幅に向上し、且つ後続の製剤の成形に有利であ
る。
【0059】
本発明は、非向精神性カンナビノイドを濃縮して純化して含有する調製方法、及び調製
した非向精神性カンナビノイドを含有する包接物を提供する。使用する原料や補助材料、
試薬や機器は低コストで入手しやすく、しかも、得られる包接物はそのまま製剤の中間体
として利用可能であり、このため、後続の製剤の成形に有利であり、使用される操作及び
方法は簡単であり、工業化の実現が容易であり、医薬分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の実施例1のステップ(2)におけるエタノール溶液の液体クロマトグラムを示す。
【
図2】本発明の実施例1のステップ(5)におけるろ液1の液体クロマトグラムを示す。
【
図3】本発明の実施例1のステップ(5)におけるろ液2の液体クロマトグラムを示す。
【
図4】本発明の実施例1のステップ(5)におけるろ過ケーキ2の真空乾燥物の液体クロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
別に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は本発明
の当業者が一般に理解する定義と同じであり、例えば、本発明に記載の以下の略語及びこ
れらに対応する物質は以下のとおりである。
【0062】
CBDV カンナビジバリン
CBD カンナビジオール
CBG カンナビゲロール
CBN カンナビノール
THCV Δ9-テトラヒドロカンナビバリン
THC テトラヒドロカンナビノール
CBC カンナビクロメン
本発明では、用語「カンナビノイド」とは、大麻植物に特有のアルキル基とモノテルペ
ン基の分子構造を含有する二次代謝産物、例えば、CBD、THC、CBDV、CBG、
THCV、CBN、CBCなど(例えば「陳しぇん、楊明、郭鴻彦.大麻植物中のカンナ
ビノイド成分の研究発展、植物学報、2011、46(2):197-205」に記載)
である。向精神性物質とは、人間の感情や行動に影響を与え、意識状態を変え、依存性を
引き起こす化学物質であり、本発明では、用語「向精神性カンナビノイド」とは、上記の
向精神性を有するカンナビノイド、例えばTHC、CBN、THCVなどであり、一方、
「非向精神性カンナビノイド」とは、上記の向精神性を持っていないカンナビノイド、例
えばCBD、CBDV、CBG、CBCなどである。
【0063】
用語「生薬」とは、加工されない又は簡単に加工された天然植物類、動物類や鉱物類の
漢方薬である。本発明では、前記大麻抽出物の生薬は大麻薬用材料であり、その薬用部位
には葉、花、根、藁、種子などが含まれる。
【0064】
本発明の技術内容をより明確に理解するために、以下の実施例をもって詳細に説明し、
その目的は本発明の内容をよりよく理解するために過ぎず、本発明の特許範囲を制限する
ものではない。
【0065】
実施例1
非向精神性カンナビノイドを含有する包接物の調製ステップは以下のとおりである。
(1)大麻花葉の薬用材料10kgに75%エタノール100kgを加え、室温で撹拌
しながら1時間抽出し、2回抽出した後、抽出液をを合併し、密度1.014(50℃)
となるまで減圧濃縮させ、スチレン系マクロポーラス樹脂カラムで純化し、ローディング
終了後、30分間静置して吸着させ、次に、カラム体積に対して5倍の精製水、カラム体
積に対して3倍の55%エタノール、体積に対して6倍の85%エタノールを用いて順次
溶出し、85%エタノール溶出液を収集して、減圧濃縮させてエキスとした。
(2)ステップ(1)で得たエキスに適量の95%(v/v、下同)エタノールを加え
、撹拌して溶解し、エタノール溶液を得た。
(3)β-シクロデキストリン50kgを秤量して、精製水300kgを加え、60℃
で加熱して撹拌して溶解し、包接剤溶液を得た。
(4)ステップ(2)で得たエタノール溶液をステップ(3)で得た包接剤溶液に緩や
かに滴下し、60℃の条件で保温しながら滴下終了まで4h撹拌し、室温に降温して18
h冷蔵した。
(5)ステップ(4)で得た冷蔵液をろ過し、ろ液1とろ過ケーキ1を収集して、ろ過
ケーキ1を65%エタノールに加え、30℃で撹拌してろ過ケーキを1h溶解し、ろ過し
てろ液2とろ過ケーキ2を収集し、ろ過ケーキ2を真空乾燥させ、非向精神性カンナビノ
イドの包接物を得た。
(6)ステップ(2)で得たエタノール溶液、ステップ(5)で得たろ液1、ろ液2及
びろ過ケーキ2の真空乾燥物中のCBDV、CBD 、CBG、THCV、及びTHCな
どの成分の含有量をそれぞれ検出した。
サンプルの検出分析方法は以下のとおりである。
クロマトグラフィー条件及びシステム適合性試験:オクタデシルシラン結合シリカゲル
を充填剤、0.1%ギ酸水溶液を移動相A、0.1%ギ酸アセトニトリルを移動相Bとし
て、以下の溶出プロセスに従って溶出を行い、検出波長は220nmであった。理論段数
はCBDピーク換算で5000以上であった。
溶出時間が0~6分間である場合、移動相の体積濃度としては、移動相Aが30%であ
り、移動相Bが残量であり、溶出時間が6~12分間である場合、移動相の体積濃度とし
ては、移動相Aが30%から23%に勾配変化し、移動相Bが残量であり、溶出時間が1
2~22分間である場合、移動相の体積濃度としては、移動相Aが23%であり、移動相
Bが残量であり、溶出時間が22~22.2分間である場合、移動相の体積濃度としては
、移動相Aが23%から30%に勾配変化し、移動相Bが残量であり、溶出時間が22.
2~26分間である場合、移動相の体積濃度としては、移動相Aが30%であり、移動相
Bが残量であった。
対照品溶液の調製:CBD対照品を精密に秤量し、メタノールを加えて1mlあたり対
照品0.15mgを含む溶液とし、CBDV対照品を精密に秤量し、メタノールを加えて
1mlあたり対照品0.01mgを含む溶液とし、THCV対照品を精密に秤量し、メタ
ノールを加えて1mlあたり対照品0.01mgを含む溶液とし、CBG対照品を精密に
秤量し、メタノールを加えて1mlあたり対照品0.01mgを含む溶液とし、THC対
照品を精密に秤量し、メタノールを加えて1mlあたり対照品0.01mgを含む溶液と
し、CBC対照品を精密に秤量し、メタノールを加えて1mlあたり対照品0.01mg
を含む溶液とした。
試験品溶液の調製:(1)エタノール溶液又はろ液1.5mlにメタノールを加えて5
mlに定容し、微多孔ろ過膜(0.45μm)でろ過し、二次ろ液として得た。(2)ろ
過ケーキ2.5gにメタノールを加えて50mlに定容し、微多孔ろ過膜(0.45μm
)でろ過し、二次ろ液として得た。
測定法:対照品溶液と試験品溶液を10μlずつ精密に吸い取り、液体クロマトグラフ
に注入して測定した。
エタノール溶液検出クロマトグラムが
図1に示すように、ここで、保留時間及び対応す
る物質は以下のとおりである。5.105:CBDV、8.099:CBG、8.517
:CBD、8.384:THCV、15.354:THC、19.106:CBC。
ろ液1の検出クロマトグラムが
図2に示すように、ここで、保留時間及び対応する物質
は以下のとおりである。5.111:CBDV、8.253:CBG、8.536:CB
D、9.402:THCV、15.367:THC。
ろ液2の検出クロマトグラムが
図3に示すように、ここで、保留時間及び対応する物質
は以下のとおりである。5.101:CBDV、8.518:CBD、9.3976:T
HCV、15.363:THC、19.099:CBC。
ろ過ケーキ2の乾燥物の検出クロマトグラムが
図4にすように、ここで、保留時間及び
対応する物質は以下のとおりである。5.073:CBDV、8.049:CBG、8.
467:CBD、19.011:CBC。
結果:本実施例で調製される非向精神性カンナビノイドの包接物中、カンナビノイド系
物質の全含有量は55.5%であり、THCV及びTHCは検出されなかった。
【0066】
実施例2
非向精神性カンナビノイドを含有する包接物の調製ステップは以下のとおりである。
(1)大麻花葉の薬用材料10kgに95%エタノール100kgを加え、室温で撹拌
しながら0.5時間抽出し、4回抽出した後、抽出液をを合併し、密度1.014(50
℃)となるまで減圧濃縮させ、スチレン系マクロポーラス樹脂カラムで純化し、ローディ
ング終了後、30分間静置して吸着させ、次に、カラム体積に対して5倍の精製水、カラ
ム体積に対して3倍の55%エタノール、体積に対して6倍の85%エタノールを用いて
順次溶出し、85%エタノール溶出液を収集して、減圧濃縮させてエキスとした。
(2)ステップ(1)で得たエキスに適量の95%イソプロパノールを加え、撹拌して
溶解し、イソプロパノール溶液を得た。
(3)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン10kgを秤量して、精製水
100kgを加え、70℃で加熱して撹拌して溶解し、包接剤溶液を得た。
(4)ステップ(2)で得たイソプロパノール溶液を、ステップ(3)で得た包接剤溶
液に緩やかに滴下し、70℃の条件で保温しながら滴下終了まで0.5h撹拌し、撹拌し
ながら室温に降温した後、12h冷蔵した。
(5)ステップ(4)で得た冷蔵液をろ過し、ろ液1とろ過ケーキ1を収集して、ろ過
ケーキ1を80%イソプロパノールに加え、20℃で撹拌してろ過ケーキを3h溶解し、
ろ過してろ液2とろ過ケーキ2を収集し、ろ過ケーキ2を真空乾燥させ、非向精神性カン
ナビノイドの包接物を得た。
(6)ステップ(5)で得たろ過ケーキ2の真空乾燥物中のCBDV、CBD、CBG
、THCV、及びTHCなどの成分の含有量を検出し、検出方法及びステップについては
、実施例1の関連方法及びステップを参照した。
結果:本実施例で調製された非向精神性カンナビノイドの包接物中、カンナビノイド系
物質の全含有量は50.5%であり、THCV及びTHCは検出されなかった。
【0067】
実施例3
非向精神性カンナビノイドを含有する包接物の調製ステップは以下のとおりである。
(1)大麻花葉の薬用材料10kgに75%エタノール150kgを加え、室温で撹拌
しながら1時間抽出し、3回抽出した後、抽出液をを合併し、密度1.014(50℃)
となるまで減圧濃縮させ、スチレン系マクロポーラス樹脂カラムで純化し、ローディング
終了後、30分間静置して吸着させ、次に、カラム体積に対して5倍の精製水、カラム体
積に対して3倍の55%エタノール、体積に対して6倍の85%エタノールを用いて順次
溶出し、85%エタノール溶出液を収集して、減圧濃縮させてエキスとした。
(2)ステップ(1)で得たエキスに適量のアセトンを加え、撹拌して溶解し、アセト
ン溶液を得た。
(3)3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン100kgを秤量し、精製水
400kgを加え、50℃で加熱して撹拌して溶解し、包接剤溶液を得た。
(4)ステップ(2)で得たアセトン溶液を、ステップ(3)で得た包接剤溶液に緩や
かに滴下し、50℃の条件で保温しながら滴下終了まで2h撹拌し、室温に降温した後、
24h冷蔵した。
(5)ステップ(4)で得た冷蔵液をろ過し、ろ液1とろ過ケーキ1を収集して、ろ過
ケーキ1に50%アセトンを加え、25℃で撹拌してろ過ケーキを0.5h溶解し、ろ過
してろ液2とろ過ケーキ2を収集し、ろ過ケーキ2を真空乾燥させ、非向精神性カンナビ
ノイドの包接物を得た。
(6)ステップ(5)で得たろ過ケーキ2の真空乾燥物中のCBDV、CBD、CBG
、THCV及びTHCなどの成分の含有量を検出し、検出方法及びステップについては、
実施例1の関連方法及びステップを参照した。
結果:本実施例で調製された非向精神性カンナビノイドの包接物中、カンナビノイド系
物質の全含有量は52.4%であり、THCV及びTHCは検出されなかった。
【0068】
実施例4
非向精神性カンナビノイドを含有する包接物の調製ステップは以下のとおりである。
(1)産業用大麻花葉の原料薬用材料10kgを準備し、中国特許CN1095683
89Aの実施例1の実験ステップ(1)~(7)を参照して、大麻抽出物エキスを調製し
た。
(2)ステップ(1)で得たエキスに適量のエタノールを加え、撹拌して溶解し、エタ
ノール溶液を得た。
(3)β-シクロデキストリン30kgを秤量し、精製水200kgを加え、65℃で
加熱して撹拌して溶解し、包接剤溶液を得た。
(4)ステップ(2)で得たアセトン溶液を、ステップ(3)で得た包接剤溶液に緩や
かに滴下し、65℃の条件で保温しながら滴下終了まで4h撹拌し、室温に降温した後、
20h冷蔵した。
(5)ステップ(4)で得た冷蔵液をろ過し、ろ液1とろ過ケーキ1を収集して、ろ過
ケーキ1に80%エタノールを加えて25℃で撹拌してろ過ケーキを1.5h溶解し、ろ
過してろ液2とろ過ケーキ2を収集し、ろ過ケーキ2を真空乾燥させ、非向精神性カンナ
ビノイドの包接物を得た。
(6)ステップ(5)で得たろ過ケーキ2の真空乾燥物中のCBDV、CBD、CBG
、THCV及びTHCなどの成分の含有量を検出し、検出方法及びステップについては、
実施例1の関連方法及びステップを参照した。
結果:本実施例で調製された非向精神性カンナビノイドの包接物中、カンナビノイド系
物質の全含有量は65.8%であり、THCV及びTHCは検出されなかった。一方、中
国出願CN109568389Aに記載により、実施例1で得た大麻抽出物中、THCV
は4.1%含有されており、このことから、本発明の方法を用いて調製された水和物は、
非精神性カンナビノイドを高選択性で保留し、向精神性カンナビノイドを除去できること
が分かった。
【0069】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の精神
及び原則を逸脱することなく行われる全ての修正、同等置換などは、本発明の特許範囲に
含まれるべきである。