(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】スライドファスナーの防犯構造
(51)【国際特許分類】
A44B 19/30 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
A44B19/30
(21)【出願番号】P 2020152402
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-08-02
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513174047
【氏名又は名称】松田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠一
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216977(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194708(JP,U)
【文献】特開2019-216978(JP,A)
【文献】特表2019-514599(JP,A)
【文献】特開2009-90037(JP,A)
【文献】特開2010-57689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0161230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのスライドファスナーを上下に重ねて配置し、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を保持するため、開口方向が異なる上下のスライダー間の距離を確保する施錠部を備えるスライドファスナー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナーの防犯構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーはリュックサックやスクールバッグ、スポーツバッグなどの開口部に広く用いられている。またテントの出入り口や最近では配送荷物の不在時受取り用収納袋などにも使われている。
【0003】
カバン類は、学校の教室やスポーツ施設、宿泊施設などで所有者の目が届かないところに置かれる場合もある。スライドファスナーは誰にでも簡単に開けることができることから、悪意ある他人による内容物の窃盗や異物の挿入など悪戯を受けることもあり、防犯対策が必要とされている。
【0004】
カバン類の防犯対策として、特許文献1ではスライダーの引き手に錠孔を設け、カバンと複数のスライダーの引き手を南京錠で施錠して開口部が開かないようにしている。
【0005】
特許文献2では、向かい合うスライダーが連結する構造をしており、連結した状態では開口部が開かないようにしている。
【0006】
特許文献3では上下のスライドファスナーの開口部の位置をずらし、上にあるスライドファスナーが開いても、下のスライドファスナーを覆い隠すように重ねてあり、下にあるスライダーを操作し難くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3114912号公報
【文献】特開2020-74939号公報
【文献】実用新案登録第3194708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スライダーとカバンやスライダー同士を南京錠などで施錠しても、そこにわずかな隙間があると、その隙間部分にある布をスライドファスナーと直角横方向に引っ張ったり垂直奥行方向に押したりすると、スライダー間の距離を保ったまま周辺の布がその隙間に引き寄せられ、
図2に示すようにお菓子袋を開けたような状態になり開口部が開いてしまう。
【0009】
特許文献3で示したスライドファスナーを複数重ねた構造でも、上のスライドファスナーから順に開ければ、手間や時間は掛かるが簡単に開いてしまう。
【0010】
本発明は、スライダー部分の布を横に引っ張ったり奥行方向に押したりしても、開口部が開かないスライドファスナー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
2つのスライドファスナーを上下に重ねて配置し、開口方向が異なる上下のスライダーを距離を確保して施錠し、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を作る。
【0012】
上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を保持する手段として、スライドファスナーの各部に錠孔などの施錠部を設ける。その施錠部を固定するためには、南京錠などの施錠器具を利用しても良い。
【発明の効果】
【0013】
上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を保持することで、スライダー部分の布が横に引っ張られたり奥行方向に押されたりしても周辺の布が引き寄せられる隙間ができないため、お菓子袋を開けたような開口状態にはならない。開口方向が異なる上下のスライダー間の距離を確保したままスライダーを移動しても、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域が移動するだけで、開口部は開かない。
【0014】
施錠をしていない状態では、スライダーが向い合せに2つ対になっているスライドファスナーと同様に使用でき、開口部を大きく開ける事ができる。また上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域が確保できれば、上下のスライドファスナーの開口側が重なる長さは短くても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】垂直横方向に引っ張られ開口する従来のスライドファスナー
【
図4】本発明のスライドファスナー構造 施錠状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の材質や形状等は、特に発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0017】
本実施例では上下のスライドファスナーの引き手の長さを違えることで、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を確保する例を示す。
【0018】
図1に施錠をしていない状態を示す。2つのスライドファスナーを開口方向が異なる向きに上下に重ねて配置し、下側のスライドファスナー10の引き手12は、上側のスライドファスナー11の引き手13より長くする。引き手12、13の先端には南京錠のシャックルを通す錠孔14、15が設けてある。
【0019】
図3と
図4で施錠した状態を示す。
図3では上側のスライドファスナー11で隠れた下側のスライドファスナー10を点線で表している。
図4は
図3の状態を側面から見た図である。
【0020】
施錠時には、引き手12は下側のスライドファスナー10が閉じている方向に倒す。上側のスライダー17は、下側のスライダー16をスライドファスナー11で覆い隠し上下の引き手の錠孔14、15が重なる位置まで移動して、上側のスライドファスナー11が開いている方向に引き手13を倒す。
【0021】
この状態で上下の引き手の錠孔14、15に南京錠4のシャックル5を通して施錠し2つのスライダー16、17の距離を確保して、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を作る。
【0022】
上側のスライドファスナー11の開口側では下側のスライドファスナー10が閉じている。スライダー17とスライダー16との間が、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域である。下側のスライドファスナー10の開口側では上側のスライドファスナー11が閉じている。上下に重ねたスライドファスナー全体でみると、わずかにでも開口している隙間は存在しない。
【0023】
南京錠のシャックル部分の遊びや上下に重ねたスライドファスナーの奥行方向の空間を使ってスライダー間を近づけたとしても、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域が確保できる程度に引き手の長さを考慮すれば、南京錠を外さない限り開口部を開くことはできない。
【実施例2】
【0024】
図5に、引き手の形状を工夫して、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域を確保する例を示す。下側のスライドファスナーの引き手20には、上側のスライドファスナーの引き手21を通す穴22が設けてある。上側のスライドファスナーの引き手21には、錠孔23が設けてある。引き手20は下側スライドファスナーが閉じている方向に倒し、引き手21は上側スライドファスナーが開いている方向に倒す。この状態で引き手21を引き手20の穴22に通し、引き手21の錠孔23に南京錠のシャックルを通して施錠する。
【0025】
この引き手の形状であれば、南京錠のシャックルの長さによる遊びは、上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域に対して影響しない。引き手21が引き手20の穴22を長く通過すれば、それだけ上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域は増すことになる。
【実施例3】
【0026】
図6にスライダー側の実施例を示す。下側のスライドファスナーの引き手24には錠孔26を設ける。上側のスライドファスナーのスライダー25には開口側の先端に錠孔27を設ける。引き手24を下側スライドファスナーの閉じている方向に倒した状態で、錠孔26と27に南京錠のシャックルを通して施錠すれば上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域が確保できる。
【0027】
上下のスライドファスナーの閉じている部分が重なる領域が保持できれば、このようにスライダーに施錠のための錠孔や引き手の通し穴を設けても良い。
【符号の説明】
【0028】
1…スライダー間の隙間、
2…隙間部分の布、
3…対のスライダー、
4…南京錠、
5…南京錠のシャックル、
10…下側のスライドファスナー、
11…上側のスライドファスナー、
12、20、24…下側のスライドファスナーの引き手、
13、21…上側のスライドファスナーの引き手、
14、15、23、26、27…錠孔、
16、17…スライダー、
22…引き手21を通す穴、
25…上側のスライドファスナーの錠孔付きスライダー。