(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】車両のタイヤの圧力を評価する方法
(51)【国際特許分類】
B60C 23/00 20060101AFI20231225BHJP
B60C 23/06 20060101ALI20231225BHJP
G01L 17/00 20060101ALI20231225BHJP
B60C 23/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B60C23/00 A
B60C23/06 A
B60C23/06 D
G01L17/00 301G
B60C23/04 160Z
(21)【出願番号】P 2021536100
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2019061079
(87)【国際公開番号】W WO2020128938
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】102018000020212
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521268163
【氏名又は名称】マセラティ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MASERATI S.P.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ,トンマーゾ
(72)【発明者】
【氏名】フォルメンティン,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ポッツァート,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】サヴァレージ,セルジオ マッテオ
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-076702(JP,A)
【文献】特開2005-007972(JP,A)
【文献】特開2006-084424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/00
B60C 23/06
G01L 17/00
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)のタイヤ(T1-T4)の圧力を評価する方法であって、
それぞれの前記タイヤ(T1-T4)において、前記タイヤが関連付けられる車輪(W1-W4)の角速度を示す信号またはデータを取得するステップと、
取得された前記信号またはデータのサブセットを選択するステップであって、データの前記サブセットは、車両の直線並進状態において取得された信号またはデータを含む、選択するステップと、
第1のタイヤ(T1;T3)のタイヤ圧力と相関する量の値と、第2のタイヤ(T2;T4)のタイヤ圧力に相関する前記量の値の比較によって、車両(V)の同じ車軸に属するそれぞれのペアの車輪(W1,W2,W3,W4)のタイヤ(T1,T2,T3,T4)の圧力関係を特定するステップであって、前記第1のタイヤ(T1;T3)の前記タイヤ圧力と相関する前記量と、前記第2のタイヤ(T2;T4)の前記タイヤ圧力と相関する前記量の比は、前記第1及び第2のタイヤが関連付けられる前記車輪(W1;W3;W2;W4)の前記角速度を示す前記信号またはデータに基づいて計算される、特定するステップと、
前記車両の第1の車軸に属する第1のペアのタイヤ(T1,T2)の前記第1及び第2のタイヤの圧力に相関する前記量の平均値と、前記車両の第2の車軸に属する第2のペアのタイヤ(T3,T4)の前記第1及び第2のタイヤの圧力に相関する前記量の平均値の比較によって、前記車両(V)の一対の車軸のタイヤのペア(T1,T2,T3,T4)の圧力関係を特定するステップであって、前記車両の前記第1の車軸に属する前記第1のペアのタイヤ(T1,T2)の前記第1及び第2のタイヤの圧力と相関する前記量の平均値と、前記車両の前記第2の車軸に相関する前記第2のペアのタイヤ(T3,T4)の前記第1及び第2のタイヤの圧力と相関する前記量の平均値の比は、前記タイヤのペアが関連付けられた前記車両の前記車軸の前記車輪(W1,W2;W3,W4)の平均角速度を示す信号またはデータに基づいて及び地面での駆動輪の前記タイヤのペアの滑りを示す量に基づいて計算される、特定するステップと、を備え、
前記タイヤ圧力に相関する前記量は、前記車輪の取得された前記角速度から計算された、前記タイヤが取り付けられた前記車輪の回転半径である、方法。
【請求項2】
地面での前記駆動輪の前記タイヤのペアの滑りを示す前記量は、地面での前記駆動輪のグリップ指数と前記車両の長手方向の加速度の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両の後車軸に属する前記車輪(W3,W4)の回転半径の平均値と前記車両の前車軸に属する前記車輪(W1,W2)の回転半径の平均値の比は、関係
【数1】
に従って計算され、
ここで、
-ω
fは、前記前輪(W1,W2)の平均角速度であり、
-ω
rは、前記後輪(W3,W4)の平均角速度であり、
-R
fは、前記前輪(W1,W2)の平均回転半径であり、
-R
rは、前記後輪(W3,W4)の平均回転半径であり、
-
【数2】
でLは、前記車両(V)のホイールベースであり、l
fは、前記車両(V)の前半分の前記ホイールベースであり、
【数3】
であり、
μは、長手方向の摩擦係数であり、
-
【数4】
でα
xは、前記車両(V)の長手方向の加速度であり、αは水平並進平面に対する前記車両(V)の傾きであり、
-cV
2
xは、空気力学力であり、
-Mは、前記車両(V)の質量であり、
-F
rollは、回転力である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のタイヤが関連付けられる前記車輪の回転半径R
1と前記第2のタイヤが関連付けられる前記車輪の回転半径R
2の比は、関係
【数5】
に従って計算され、
ここでω
1は、前記第1のタイヤが関連付けられる前記車輪の角速度であり、ω2は、前記第2のタイヤが関連付けられる前記車輪の角速度であり、前記車輪の滑りは、ゼロまたは同じであり、前記車両の操舵角はゼロであると仮定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
実タイヤ圧力値(T1-T4)と前記タイヤが関連付けられる対応する車輪回転半径(W1-W4)の対応する公称値は、タイヤモデルとタイヤ摩耗状態の中の少なくとも1つのパラメータの関数として要求される、学習ステップを備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1のタイヤ(T1)が関連付けられる前記車輪(W1)の回転半径の値と第2のタイヤ(T2)が関連付けられる前記車輪(W2)の回転半径の値の前記比較は、前記第1のタイヤ(T1)が関連付けられる前記車輪(W1)の回転半径の公称値と、前記第2のタイヤ(T2)が関連付けられる車輪(W2)の回転半径の公称値が比較され、
前記車両の第1の車軸に属する前記車輪(W1,W2)の回転半径の平均値と、前記車両の第2の車軸に属する前記車輪(W3,W4)の回転半径の平均値の前記比較は、前記車両の前記第1の車軸に属する前記車輪(W1,W2)の回転半径の公称の平均値と前記車両の前記第2の車軸に属する前記車輪(W3,W4)の回転半径の公称の平均値が比較される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記比較の終わりにおいて、比較値の差が所定のしきい値より大きいならば、タイヤの収縮状態を決定するステップを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記比較の終わりにおいて、比較値の差が所定のしきい値より大きいならば、同じ車軸の車輪(W1,W2,W3,W4)と関連付けられる一対のタイヤ(T1,T2,T3,T4)の収縮状態を特定するステップを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記所定のしきい値は、地面での前記駆動輪のグリップ指数、または前記車両(V)の長手方向の速度、または両方の関数として可変である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記直線車両並進状態は、-車両の並進の間-前記車両のブレーキシステムの動作または前記車両の駆動輪へのトルクの変動を示す信号またはデータ、または前記車両の操舵角またはハンドルの回転角を示す信号またはデータを要求することによって決定される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記車両(V)の少なくとも1つのタイヤ(T1-T4)の圧力測定を要求するステップを備える、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法を実行するようにプログラムされた、車両(V)のタイヤ圧力(T1-T4)を評価する処理システム。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の車両のタイヤの圧力を評価する方法を実行する1またはそれ以上のコードモジュールを備える、処理システムによって実行可能なコンピュータプログラムまたはプログラム群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤの圧力を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ圧力監視システム(TPMS)は、車両にますます用いられ、それらの動作のモードは、例えば欧州共同指令ECE-R24及び米国の規則FMVSS138の下で規制される。TPMSシステムは、よりドライブ安全を確実にし、空気圧不足のタイヤによって引き起こされる高燃料消費を避け、誤った走行圧力における使用による異常なタイヤの摩耗を避けることを含む重要な機能を実行する。
【0003】
タイヤ圧力監視システムは、一般的に、車両の搭載エレクトロニクスに統合され、常にタイヤの圧力を監視する。タイヤの空気の漏出または収縮の場合において、-部分的であってでも-ユーザインタフェースは、発生を知らせる。
【0004】
車両が動いている一方で、タイヤ圧力が通常以下であるとき、車両のドライバに警告するように設計された現在利用可能な2つのタイプのタイヤ圧力監視システム、直接測定システムと間接測定システムがある。直接測定システムは、搭載管理システムと通信できるそれぞれのタイヤの圧力センサ配置(一般的にタイヤバルブに一体化されて)を提供する。間接測定システムは、例えば車輪の角速度など、タイヤの空気圧と実質的に相関する別の物理量に基づいて、1つのタイヤの圧力を(絶対値においてまたは他のタイヤに対して)評価する。
【0005】
直接測定システムにおいて、絶対圧力測定は、中央受信機または前記データを分析し、ユーザに利用可能な情報表示に関連する信号を送るように配置された制御モジュール(単純なインジケータまたはグラフィカルユーザインターフェース上で完全な圧力及び場合によっては温度情報を含む画面である)に圧力データを送信することができるそれらのそれぞれのアンテナに送信される。直接圧力測定の利点は、圧力の小さな変動に対する感度、車両が走行する前でさえ、いつでも各タイヤの圧力を測定できることである。しかしながら、不利に、これらのシステムは、高価であり、繰り返し車輪のリムに取り付けられ取り外される(例えば、タイヤが1年のシーズンに従って替えられる必要があるとき)タイヤに設置されるのに不適切である。
【0006】
しかしながら、調整によって与えられたタイヤの異常な収縮または膨張状態を検出する要求は、より緩く、イベントの発生後、少なくとも10分のオーダのかなり長い期間の異常な収縮状態の認識及び車両及びタイヤのタイプに期待される公称値の20%以上の収縮率を提供することに限定される。
【0007】
これらの理由において、ハイブリッドタイヤ圧力監視システムは、また普及し、いくつかのタイヤに直接圧力を測定し、間接に他の膨張状態を評価するように構成された限られた数の圧力センサ(通常2)を備える。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、信頼でき、丈夫で効率の良いタイヤ圧力評価ができ、従来技術の直接タイプの監視システムの欠点を避ける、間接またはハイブリッドタイヤ圧力監視システムを提供することである。
【0009】
本発明に従って、この目的は、請求項1に参照された特徴を有する車両のタイヤの圧力を評価する方法によって達成される。
【0010】
特定の実施形態は、従属請求項の主題を形成し、その内容は、本記載の不可欠な部分として理解されるべきである。
【0011】
車両のタイヤの圧力を評価するシステム及び請求されたコンピュータプログラムは、また、本発明の主題である。
【0012】
要するに、本発明は、タイヤ圧力の間接測定の原理に基づき、それにより車両のタイヤの相対圧力は、例えばタイヤが取り付けられた車輪の角速度など、それ自体タイヤに相関する物理パラメータの測定から推定され、各タイヤの空気圧は、車輪によって推定される回転半径に相関し、回転半径は、車輪の角速度から推定できる。
【0013】
本発明によって導入された改善は、車両の直線並進状態で測定された車輪の角速度に基づき及び地面での駆動輪のタイヤのペアの滑りを示す量に基づき当該評価を実行することからなる。車両のタイヤの相対圧力は、1つのタイヤの回転半径の値と他のタイヤの回転半径の値の比較によって車両の同じ車軸に属する車輪の少なくとも1つ、好ましくはそれぞれのペアのタイヤの圧力比を特定することによって、及び車両の第1の車軸に属するタイヤの第1のペアの回転半径の平均値と車両の第2の車軸に属するタイヤの第2のペアの回転半径の平均値の比較によって車両の一対の車軸のタイヤのペア圧力比を特定することによって評価される。
【0014】
有利な実施形態において、タイヤの少なくとも1つの圧力センサの設置により、車両のタイヤの絶対圧力を見積もることができる。
【0015】
さらに有利な実施形態において、学習段階において、タイヤの実際の圧力値と車輪の回転半径の対応する公称値は例えばタイヤモデル、タイヤの摩耗状態、車両の負荷状態など、例えば少なくとも1つのパラメータに従って、要求される。1つのタイヤの回転半径の値と他のタイヤの回転半径の値の比較及び車両の第1の車軸に属するタイヤの第1のペアの回転半径の平均値と車両の第2の車軸に属するタイヤの第2のペアの回転半径の平均値の比較は、車輪の回転半径の公称値に基づいて計算される対応する量とそれぞれ比較され、それにより少なくとも1つのタイヤの収縮の状態が、比較の結果として、比較値の差が好ましくは地面での駆動輪のグリップ指数及び車両の長手方向の速度の関数として可変である、収縮の状態の検出のための所定のしきい値より大きいならば決定される。
【0016】
本発明のさらなる特性及び利点は、添付された図面を参照して非限定の例として提供されるその実施形態の次の詳細な記載にさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の主題である車両のタイヤ圧力を評価するシステムの一般ブロック表示である。
【
図2】本発明に従う車両のタイヤ圧力を評価する3つの指数システムのブロック図である。
【
図3】本発明の方法で用いられる運動学的車両モデルである。
【
図4a-4b】車両の前車軸と後車軸のそれぞれタイヤの収縮状態の検出を示すグラフである。
【
図5】本発明の方法に用いられるさらなる運動学的車両モデルである。
【
図6】本発明に従う方法の基礎にある物理量を示す。
【
図7】実験条件下での車両の長手方向の加速度に影響を与えるパラメータの傾向を示すグラフである。
【
図9】前車軸タイヤに対する後車軸タイヤの相対収縮状態の検出を示すグラフを示す。
【
図10】グリップ状態の関数として相対収縮指数の変動を示すグラフである。
【
図11】
図10に示される相対収縮指数の変動の関数としてタイヤの収縮を検出するしきい値の傾向を示すグラフである。
【
図12】異なるグリップ状態の収縮指数の傾向を示す。
【
図13】収縮状態を検出するしきい値曲線の経時的な傾向と共に、4つの車輪の車両の全てのタイヤの収縮指数と示されたグリップ状態の経時的な傾向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、車両Vは、4つの車輪W1-W4及びT1-T4として示されるそれぞれタイヤの関連付けられた圧力評価システムを備えた基本的な線で示される。当該車輪の角速度を検出するための角速度センサを含む車輪W1-W4に関連付けられたそれぞれセンサ装置S1-S4、車輪と関連付けられた任意の圧力センサ装置SP、及びセンサ装置S1-S4及び場合によっては存在するならばセンサ装置SPとそのそれぞれの入力において接続される処理ユニットPを備える。
【0019】
少なくとも1つの表示装置Dは、処理ユニットPに接続され、少なくとも1つのタイヤの異常な膨張を車両のユーザに示すように構成される。
【0020】
処理ユニットPは、以後より記載されるように車両のタイヤ圧力を評価する方法を実行するようにプログラムされる。
【0021】
一般的に次の関係に従って、識別される1またはそれ以上のタイヤの膨張圧力の間接指数を表す少なくとも1つの量を測定するために、例えばセンサS1-S4から車両に搭載されて利用可能な信号またはデータを用いることが知られている。
I=f(P)
ここでIは、空気圧指数量であり、Pは、空気圧である。
【0022】
もし関数fが指数Iから完全に知られているならば、
P=f-1(I)
として圧力Pを直接導き出すことができる。
【0023】
この理想状態は、関係fが例えばタイヤモデル、タイヤの摩耗状態、車両の負荷状態など、多くの未知の変動要因によって影響されるので決して満たされない。
【0024】
しかしながら、例えば搭載圧力センサSPによる、または車庫において圧力を測定することによる、既知の方法によって取得されたタイヤの実際の圧力値において指数Iの公称値を学習すること及び当該指数の測定値が収縮状態の検出のための所定のしきい値より大きい量において公称値と異なるならば、タイヤの収縮を特定することができる。
【0025】
本発明に従う車両のタイヤ圧力を評価する3つの指数システムが
図2に示される。
【0026】
そこに、搭載CANネットワークで実行される少なくとも1つの信号、好ましくは複数の信号またはデータは、10で集合的に示される。データ選択モジュールは、12で示され、-現在の好ましい実施形態において-車両の直線並進状態で検出される信号またはデータを含む当該信号またはデータのサブセットを発生することによってCANネットワークによって提供される信号またはデータ10を選択するように配置される。指数計算モジュール14は、選択モジュール12の下流に配置され、以下に記載されるように選択された信号またはデータに基づいて圧力値の所定の指数の値を計算するように構成される。モジュール14と並列に、モジュール16は、選択された信号またはデータに基づいて車両の駆動輪のタイヤのペアの地面での滑りを示す量を検出するように配置される。指標滑り量を測定する指数計算モジュール14及びモジュール16の下流において、圧力評価モジュール18は、モジュール16によって測定される車両の駆動輪のタイヤのペアの地面での滑りに従って指数計算モジュール14から受信されるデータに基づいて、タイヤ圧力の評価データを得るために提供される。
【0027】
圧力評価モジュール18は、少なくとも1つのタイヤの異常な膨張の指標信号を少なくとも視覚的に示すために少なくとも1つの当該表示装置Dを制御する。
【0028】
車輪の回転半径は、一般的な関係に従って、タイヤの圧力に依存することが知られている。
R=R(P)
ここで、Rは、車輪の回転半径を示す。
【0029】
一緒に2つの車輪の角速度を比較して、相対半径は、すなわち、半径の比が計算される、半径の比は、次の関係に従って、別のタイヤに対する1つのタイヤの相対膨張の指数である。
【数1】
ここで、ω
iとω
jは、それぞれi番目の車輪とj番目の車輪の角速度であり、R
iとR
jは、それぞれi番目の車輪とj番目の車輪の回転半径であり、R
ijは、回転半径は等しい、すなわちそれぞれのタイヤの膨張レベル、したがってその圧力値は、知られていない絶対圧力値と無関係に等しい条件で、状態の単一の値を仮定する当該回転半径の比の指標指数である。
【0030】
前述の考えにより、3つの指数に基づいて、1、2または3つのタイヤの収縮が検出できるが、同時に4つ全てのタイヤではない、システムを作り出すことができる。
【0031】
【数2】
によって、車両の同じ車軸に属する第1の車輪W1と第2の車輪W2の回転半径の比の評価は、例の場合において前車軸が示され、当該車軸の車輪の収縮についての情報を提供する。
【0032】
【数3】
によって、車両の同じ車軸に属する第1の車輪W3と第2の車輪W4の回転半径の比の評価は、例の場合において後車軸が示され、当該車軸の車輪の収縮についての情報を提供する。
【0033】
【数4】
によって、車両の後車軸に属する後車輪W3,W4の平均回転半径と車両の前車軸に属する前車輪W1,W2の平均回転半径の比の評価が示され、同じ車軸の両方の車輪の同時の収縮についての情報を提供する。
【0034】
例えば、前述の式でそれぞれR
1及びR
2として示される第1の車輪W1と第2の車輪W2の回転半径の比の場合において、次の3つの理想の場合が生じる:
【数5】
右前車輪W2のタイヤに対して左前車輪W1のタイヤの相対収縮、前車輪のタイヤの相対しない収縮、または左前車輪W1のタイヤに対する右前車輪W2のタイヤの相対収縮に対応する。
【0035】
実際に、両方のタイヤの公称圧力において、状態R
12=1は、異なる垂直負荷が車輪に作用するまたはタイヤは、異なる摩耗状態または製造誤差を有するので、生じない。このさらなる一般の場合において、次の状態を参照することが適切である:
【数6】
【数7】
【数8】
ここで、当該車輪の回転半径の比は、既知の膨張状態下で、予備学習段階で取得されるこの比の公称値と比較される。
【0036】
【数9】
【数10】
【数11】
とδは、膨張状態を検出するしきい値であり、次の状態が得られる:
(1)
【数12】
【数13】
【数14】
これは、それぞれ車輪W2の右前タイヤに対する車輪W1の左前タイヤの相対収縮の状態、前車輪タイヤの間の相対しない収縮の状態、及び車輪W1の左後タイヤに対する車輪W2の右前タイヤの相対収縮の状態を示す。
(2)
【数15】
【数16】
【数17】
これは、それぞれ車輪W4の右後タイヤに対する車輪W3の左後タイヤの相対収縮の状態、後車輪タイヤの間の相対しない収縮の状態、及び車輪W4の左後タイヤに対する車輪W4の右後タイヤの相対収縮の状態を示す。
(3)
【数18】
【数19】
これは、それぞれ車輪W3とW4の後タイヤに対する車輪W1とW2の前タイヤの相対収縮の状態及び車輪W1とW2の前タイヤに対する車輪W3とW4の後タイヤの相対収縮の状態を示す。
(4)
【数20】
【数21】
これは、それぞれ車輪W2の前タイヤに対する車輪W1,W3及びW4のタイヤの相対収縮の状態と車輪W1の前タイヤに対する車輪W2,W3及びW4のタイヤの相対収縮の状態を示す。
(5)
【数22】
【数23】
これは、それぞれ車輪W4の後タイヤに対する車輪W1,W2及びW3のタイヤの相対収縮の状態と、車輪W3の後タイヤに対する車輪W1,W2及びW4のタイヤの相対収縮の状態を示す。
【0037】
前述の指数の計算は、車両の並進パラメータ及び例えば
図3で示される車両運動学的モデルを参照して定義される次の関係に従って、車輪の角速度など、測定可能な量を参照する:
【数24】
及び
【数25】
ここで、ω
iは、i=1,2,3,4のそれぞれの車輪W1-W4の角速度であり、λ
iは、i=1,2,3,4のそれぞれの車輪W1-W4の滑りであり、V
x及びV
yは、それぞれ車両の重心に加えられる長手方向及び横方向の速度成分であり、L
f及びL
rは、それぞれ車両の車軸の前及び後トラック幅であり、l
f及びl
rは、それぞれ車両の前及び後半分ホイールベースであり、
は、車両の並進の方向の時間の導関数であり、δは、車両のハンドルの操舵角である。
【0038】
それぞれの車輪W1-W4の角速度は、例えば車両ABSシステムのセンサなど、フォニックホイールタイプの車輪回転センサによって測定され、それぞれの車輪W1-W4の滑りは、測定された車輪の速度から計算され、長手方向の速度は、車輪の速度の平均として計算され、車両の車軸の前及び後トラック幅及び車両の前及び後半分ホールベースは既知であり、車両のハンドルの操舵角は、エンコーダによって測定される。角速度の信号またはデータ、滑り、長手方向及び横の速度、ヨー及びステアリングは、集合的に
図2の10で示され、搭載CANネットワークによって取得される。
【0039】
後輪駆動車を想定すると、前輪W1、W2の滑りはなく、すなわちλ
1=λ
2=0、及び直線並進、それにより
ここで後車輪駆動滑りの均一の推定、すなわちλ
3=λ
4があり、前の方程式は次に単純化され、
【数26】
次が得られる。
【数27】
【0040】
ここで参照された推定は、選択モジュール12によって取得される信号またはデータを選択することによって達成され、有利に前及び後輪の回転半径の比
【数28】
及び
【数29】
は、例えば0.1Hzでフィルタリングされ、すなわち
【数30】
で、測定の量子化及びセンサの運動状態による高周波ノイズを取り除く。
【0041】
図4a及び4bにおいて、3つのグラフは、再生産され、例として、車輪W1-W4とそれぞれ関連付けられるタイヤの収縮状態を示す、それぞれ-上から下へ-前輪の回転半径の比R
12の経時的な傾向、後輪の回転半径の比R
34の経時的な傾向及びデジタル異常信号D1-D4の経時的な傾向を示す(表記Rは、真の半径を示す一方で、表記
は、Rの見積もりを示す。半径の値Rは、利用可能でないので、説明の過程で参照される度に値
として理解されるべきである)。
図4aは、時間t
0において、車輪W1の回転半径の0.2%の変動(0.7mmに対応する)が、車輪W1に関連付けられるタイヤの収縮の状態として解釈される、車輪W2の回転半径に対して検出され、低いロジックレベルから高いロジックレベルに異常信号D1の切替によって示される場合を示す。
図4bは、時間t
0において、車輪W4の回転半径に対する車輪W3の回転半径の0.2%の変動(0.7mmに対応する)が検出され、車輪W3と関連付けられるタイヤの収縮の状態として解釈され、初期値が-所定のタイヤのモデルの場合に-δ=0.0012である収縮状態の検出のためのしきい値δとの比較によって、低いロジックレベルから高いロジックレベルへ異常信号D3の切替によって信号を送られる。
【0042】
図5に描かれる運動学的車両モデルを参照して、前輪の平均回転半径と後輪の平均回転半径の次の関係が定義される。
【数31】
ここでR
fは、前輪W1及びW2の平均回転半径であり、R
rは、後輪W3及びW4の平均回転半径であり、
【数32】
及び
【数33】
である。
【0043】
-上記それらと同様に-車両は、後輪駆動車であると仮定すると、前輪W1及びW2の滑りはなく、すなわちλ
f=0であり、直線並進で、
ここで駆動輪の滑りの均一な仮定があり、すなわちλ
3=λ
4であり、前述の方程式は、次に単純化され、
【数34】
後輪の長手方向の滑り成分λ
rを評価する必要がある。
【0044】
これをするため、次の考えが用いられ、理解を容易にするために、
図6に示される車両Vと関連付けられる物理量を参照する。
【0045】
Pacejka曲線の直線領域で動作すると仮定すると、前の長手方向の力F
xは、式
【数35】
によって与えられ、ここでF
zrは、
【数36】
によって与えられる後輪の垂直に作用する力である。ここで、第2項は、長期間の移動に渡る荷重伝達の影響が実質的に無視できるので無視でき、
【数37】
μは、長手方向の力と法線力の比に対応する長手方向の摩擦係数である。
【0046】
F
drag,F
slope及びF
rollでそれぞれ空気力、非水平面を走行する車両の場合に関連する傾斜力と、回転力を示す。これらは、全て理想的に長手方向の前進力F
xと反対の方向に車両の重心に加えられる。ここで
【数38】
であり、
【数39】
と認識され、ここでMは、車両の質量であり、a
xはその長手方向の加速度であり、
【数40】
によって与えられ、長手方向の加速度信号は、並進の水平面に対する車両の傾斜が角度αあるため補償されない。
【0047】
上記式から、
【数41】
及び
【数42】
を推定し、ここで、
【数43】
を考慮すると、
1つは、
【数44】
を得る。ここで、R
r/R
fは、見積もられた指数であり、
は、1/μ
1に比例する車両のグリップ指数である。ここでさらに、
【数45】
を書くことができ、ここでパラメータc/M及びF
roll/Mは、例えば車両の質量、車輪のタイプ(例えば、道路との相互作用を決定するタイヤ組成物、車輪サイズ)、道路プロファイル、風速、車両の屋根の貨物キャリアまたはバーの存在による車両の空気力学プロファイルの全ての変化など、不確実な要因に依存し、推測的に知ることができないが、構成段階において決定され、予備試験結果に基づいて統計的に見積もられる。
【0048】
パラメータc/M及びF
roll/Mは、構成された加速度計を手段として車両の加速度と、車両の車輪に結合されたエンコーダを手段として及び回帰分析の既知の方法を適用することによって車両の長手方向の速度を測定することによって所定の車両において、実験的に予備校正の間得られる。例えば、発明者は、
【数46】
【数47】
として試験で用いられる試作品の車両において、パラメータc/M及びF
roll/Mを見積もり、実施された異なる試験の間の最大誤差を最小化し、その結果は、
図7のグラフに示され、描かれた4つの曲線は、車両が停止から始まり、その後減速するコーストダウンテストを示し、コーストダウンテストは、特定の車両において摩擦パラメータと抵抗を特定することが当業者に知られている。
【0049】
前の関係の合成表現は、
【数48】
であり、ここでω
f/ω
r及びa
x_correctedは、測定されたまたは測定可能な信号またはいくつかの測定の結果に基づいて計算されるデータでさえある一方で、R
rf及び
は、例えば、
図8の例として表される、再帰的最小自乗法など、例えば回帰分析の既知の方法を適用することによって、見積もられるパラメータである。
【0050】
図9は、例として、-上から下へ-それぞれ集合的にR
rfで示される後輪の平均回転半径と前輪の平均回転半径の比の経時的な傾向と、車輪W1-W4のそれぞれ関連付けられるタイヤの収縮の状態を示す異常なデジタル信号D1-D4の経時的な傾向を示す2つのグラフを示す。
図9は、時間t
0において、後輪W3及びW4の平均回転半径の0.3%の変動(約1mmに対応する)後輪W3及びW4と関連付けられるタイヤの収縮の状態として解釈される前輪W1及びW2の回転半径に対して検出され、所定の値がタイヤモデルの関数である、収縮状態の検出のためのしきい値δ
rfとの比較によって低いロジックレベルから高いロジックレベルに異常信号D3,D4の切替によって信号が送られる。
【0051】
予備的に識別可能で一定であるが、例えば車両の重量、ホイールタイプ、道路プロファイル、風速、車両の空気力学プロファイルの変更など、複数の要因によってその現在の値に影響を与えるパラメータc/M及びF
roll/Mに基づくa
x_correctedは、潜在的に、R
rfの推定誤差を導入する、車両の現在の速度に依存する誤差によって影響を与えられることに留意することが重要である。学習段階を推定することは、高いグリップ(理想)の状態で実施され、加速度の補償不確定性によるR
rfの推定誤差は、
【数49】
として表現され、ここで、
は、学習段階の高グリップの状態のグリップ指数であり、
は、見積もりプロセスの現在の実行状態のグリップ指数であり、
は、最悪の場合のA
xの値の誤差である。
【0052】
実験状態を考えると、発明者は、パラメータc/M及びF
roll/Mの不確実性へのR
rfの感度は、曲線Lが低グリップの状態の車両の長手方向の速度の関数として変動R
rfの傾向を示し、曲線Hが、高グリップの状態の車両の長手方向の速度の関数としてR
rfの変動の傾向を示す、
図10のグラフに示されるように、低グリップの状態で増幅されることを発見した。
【0053】
したがって、低グリップ及び高速の状態で、圧力値の許容誤差を増す、すなわち検出許容誤差を緩和することが都合が良く、この状態は、有利にモジュール16によって提供される車両の駆動輪のタイヤのペアの地面での滑りを示すデータに基づいて及びCAN10ネットワークによって提供される車両の現在の長手方向の速度データに基づいて圧力を評価するモジュール18によって実行される。
【0054】
図11において、車両の長手方向の速度及びグリップ状態の関数として、R
rfの変動の曲線L、Hの傾向は、高グリップの状態及び130km/hまでの速度において少なくとも20%の収縮状態の検出、低グリップの状態及び100km/hまでの速度において少なくとも40%の収縮状態の検出、及び考えられる不確実性(風速、道路状態及び空力学の変動に関連する不確実性を除く)による誤検知がないことを確実にするために、車両のグリップ状態及び現在の速度に適合される収縮状態の検出のためのしきい値δの展開を表す2つの曲線δ
20とδ
40に重ねて示される。
【0055】
本発明者は、例えばオフロードのドライブで遭遇する低グリップ状態など、低グリップ状態は、また高グリップ領域Hと低グリップ領域Lの間の通路および異なるグリップ状態の例として指数R
12)で想定される値の分布の経時的な指数R
12及びR
34の傾向をそれぞれ示す
図12aと12bに示されるように、指数R
12及びR
34の傾向も影響を与えることを知った。
図12bのグラフは、特に高グリップの状態の指数R
12によって想定される値の第1の分布Hと低グリップの状態の指数R
12によって想定される値の第2の分布Lを示し、分布Lは、より大きな標準偏差(さらに雑音のある指数R
12を示す)と分布Hの平均値から逸脱した及び垂線Tによって表されるしきい値δ
20と近い平均値を表す。
【0056】
図13は、収縮状態の検出のためのしきい値曲線δ
+及びδ
-の経時的な傾向と共に、以下グラフの曲線Gによって表される収縮指数R
12、R
34及びR
rfとグリップ状態の経時的な傾向を示し、そのステップ変動は、グリップ状態の変動の検出によって決定され、例として、
【数50】
に等しい値を仮定する。
【0057】
この理由において、好ましくは、グリップ状態の変化の検出は、例えば0.999(例えば指数R
rfを得る目的で回帰分析に採用可能なf
f=0.9999の代わりに)に等しい忘却係数f
fで再帰的最小自乗法の適用において、曲線
【数51】
の回帰分析を実行することによってできる限り急速であるべきである。
【0058】
必然的に、前のセクションに記載された3つの指数アプローチに従う車両のタイヤの圧力を評価するシステムの実行により、1、2または3のタイヤの収縮の検出ができるが、同時に4つ全てのタイヤの検出ができず、タイヤの圧力の絶対値が特定されないので、本発明のシステムにさらなる改良が任意に
図1に示されるセンサSPによって提供されるタイヤの少なくとも1つの実際の圧力の信号または測定データを用いてなされる。
【0059】
タイヤの少なくとも1つの実際の圧力の認識により、3つの指数(R12,R34,Rrf)と公称の基準圧力より低い単一のセンサにより測定された圧力の決定によって見つけられた異常のない状態が同時に満たされるならば、車両の4つ全てのタイヤの収縮状態を見積もることができる。
【0060】
さらに少なくとも1つの実タイヤ圧力の認識により、名目上の学習条件で、全てのタイヤが同じ公称圧力値Pnを有し、比例パラメータKが全てのタイヤタイプで一定であり、タイヤモデルのK値のテーブルから得られることを仮定して、一般関係Pi=K*Ri+P0に従って、タイヤの圧力と相対車輪の回転半径の間の直線関係を仮定して、他のタイヤの圧力の絶対値を見積もることができる。
【0061】
最初の概算として、したがって、次の関係に従って全てのタイヤの圧力の絶対値を見積もることができる。
【数52】
ここで、P
1は、圧力センサSPが装備されたタイヤ(例において車輪W1と関連付けられるタイヤ)の直接に測定された実際の圧力値であり、車輪W1の回転半径と車輪W3それぞれW4の回転半径の関係の指数R
13とR
14は、関係:
【数53】
に従ってモジュール14によって計算される指数R
12,R
34,R
rfから計算される。
【0062】
前の議論の本発明において提供された実施形態は純粋に例示的で非限定的であることに留意すべきである。当業者は、しかしながら本明細書に概説されている原則から逸脱せずに、したがって本特許に含まれる異なる実施形態で本発明を容易に実施することができる。
【0063】
これは特に後輪駆動車軸を前輪駆動車軸と交換することによって、または4輪駆動車両の場合において説明される方法を適用する及び説明される方法を車軸当たり3以上の車輪または3以上の車軸を有する車両に拡張する可能性に適用する。
【0064】
明白に、本発明の原則を損なうことなく、実施形態及び実施の詳細は、添付された特許請求の範囲に定義されるように本発明の保護の範囲から逸脱することなく、非限定の例として純粋に記載され、描かれた実施形態及び実施の詳細に対して大きく変更することができる。