(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】地中障害物撤去方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/08 20060101AFI20231225BHJP
E21B 7/20 20060101ALI20231225BHJP
E21B 7/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
E02D13/08
E21B7/20
E21B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2023142018
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301072306
【氏名又は名称】株式会社遠藤工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-331562(JP,A)
【文献】特開2008-111240(JP,A)
【文献】実開昭56-163188(JP,U)
【文献】特開昭61-266723(JP,A)
【文献】特開平02-085416(JP,A)
【文献】特開2007-113359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/08
E21B 7/20
E21B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の障害物を撤去するための地中障害物撤去方法であって、
地中の前記障害物より上方に縦孔を形成する縦孔形成工程と、
前記縦孔形成工程後、前記障害物の上方に近付けて前記縦孔に孔壁保護管を挿入する孔壁保護工程と、
前記孔壁保護工程後、前記孔壁保護管に前記孔壁保護管の中心軸線と中心軸線を平行にしてさや管を挿入し前記さや管の下端を前記障害物の上方に近付けて設置するさや管設置工程と、
前記さや管設置工程後、下端に削岩部を有するロッドを前記さや管の内部に挿入し、前記ロッドを前記さや管の内部で中心軸線方向に往復運動させて前記削岩部で前記障害物を破砕する障害物破砕工程と、
前記障害物破砕工程後、前記さや管から前記ロッドを引き抜くロッド引抜工程と、
前記ロッド引抜工程後、前記さや管を前記孔壁保護管内の以前に設置された位置から水平方向にずれた位置で前記孔壁保護管の前記中心軸線と前記さや管の前記中心軸線を平行にして前記さや管の前記下端を前記障害物の上方に近付けて設置するさや管移動工程と、
前記さや管移動工程後、前記障害物破砕工程と前記ロッド引抜工程と前記さや管移動工程とを繰り返す破砕繰返し工程と、
前記破砕繰返し工程後、前記さや管から前記ロッドを引き抜き、前記さや管を前記孔壁保護管から引き抜くさや管引抜工程とを、
有することを特徴とする地中障害物撤去方法。
【請求項2】
前記孔壁保護管の開口部に設置される基部と、前記基部に設けられ互いに平行に伸びる複数のさや管とを有するさや管装置を有し、
前記さや管設置工程において、前記さや管装置の前記基部を前記孔壁保護管の前記開口部に設置し、前記孔壁保護管に前記孔壁保護管の前記中心軸線と前記さや管の前記中心軸線を平行にして複数の前記さや管を挿入し前記さや管の前記下端を前記障害物の上方に近付けて設置し、
前記ロッド引抜工程後、以前に前記ロッドを挿入した前記さや管の他のさや管の内部に前記ロッドを挿入し、前記ロッドを前記他のさや管の内部で中心軸線方向に往復運動させて前記削岩部で前記障害物を破砕する障害物破砕他工程と、
前記障害物破砕他工程後、前記他のさや管から前記ロッドを引き抜くロッド引抜他工程とを有し、
前記さや管移動工程において、前記ロッド引抜他工程後、前記基部を前記開口部に沿って回転させて設置し、
前記破砕繰返し工程において、前記障害物破砕工程と前記ロッド引抜工程と前記障害物破砕他工程と前記ロッド引抜他工程と前記さや管移動工程とを繰り返すことを、
特徴とする請求項1記載の地中障害物撤去方法。
【請求項3】
前記基部は前記孔壁保護管の開口部に沿って回転可能に設置されることを、特徴とする請求項2記載の地中障害物撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の障害物を撤去するための地中障害物撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたコンクリートや岩石などの障害物を撤去するため、ダウンザホールハンマ工法が一般に用いられている。しかし、ダウンザホールハンマ工法は、比較的安定した地盤で孔壁保護を行わずに施工する場合に適用される。孔壁保護を行いながら障害物を撤去する方法として、リーダに沿って上下動可能に配備され、夫々独立して駆動する第1及び第2回転駆動装置と、第1回転駆動装置に連繋され、下端に切断歯が設けられた円筒状の第1ケーシングと、第2回転駆動装置に連繋されると共に、第1ケーシングに嵌装され、下端に切断歯が設けられた円筒状の第2ケーシングとを具える障害物撤去掘削装置を用いた障害物撤去掘削方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の障害物撤去掘削方法では、障害物撤去の際または外側の第1ケーシングおよび内側の第2ケーシングを引き抜く際、孔壁周囲の岩塊玉石や転石が崩壊し孔内に新たな障害物を生じるおそれがあるという課題があった。また、第1ケーシングおよび第2ケーシングによる障害物撤去作業により騒音が発生するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、障害物撤去の際に新たな障害物を生じにくく、かつ障害物撤去作業による騒音を低減することができる地中障害物撤去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る地中障害物撤去方法は、地中の障害物を撤去するための地中障害物撤去方法であって、地中の前記障害物より上方に縦孔を形成する縦孔形成工程と、前記縦孔形成工程後、前記障害物の上方に近付けて前記縦孔に孔壁保護管を挿入する孔壁保護工程と、前記孔壁保護工程後、前記孔壁保護管に前記孔壁保護管の中心軸線と中心軸線を平行にしてさや管を挿入し前記さや管の下端を前記障害物の上方に近付けて設置するさや管設置工程と、前記さや管設置工程後、下端に削岩部を有するロッドを前記さや管の内部に挿入し、前記ロッドを前記さや管の内部で中心軸線方向に往復運動させて前記削岩部で前記障害物を破砕する障害物破砕工程と、前記障害物破砕工程後、前記さや管から前記ロッドを引き抜くロッド引抜工程と、前記ロッド引抜工程後、前記さや管を前記孔壁保護管内の以前に設置された位置から水平方向にずれた位置で前記孔壁保護管の前記中心軸線と前記さや管の前記中心軸線を平行にして前記さや管の前記下端を前記障害物の上方に近付けて設置するさや管移動工程と、前記さや管移動工程後、前記障害物破砕工程と前記ロッド引抜工程と前記さや管移動工程とを繰り返す破砕繰返し工程と、前記破砕繰返し工程後、前記さや管から前記ロッドを引き抜き、前記さや管を前記孔壁保護管から引き抜くさや管引抜工程とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る地中障害物撤去方法では、障害物破砕工程で孔壁保護管に挿入されたさや管の内部でロッドを往復運動させてロッドの下端の削岩部でさや管の下方の障害物を破砕する。ロッド引抜工程でさや管からロッドを引き抜き、さや管移動工程でさや管を水平方向にずれた位置に設置する。破砕繰返し工程で障害物破砕工程とロッド引抜工程とさや管移動工程とを繰り返す。こうして、孔壁保護管の下方にある障害物を破砕する。障害物の破砕はさや管の下方で行われ、さや管は孔壁保護管の内部に設置されるので、障害物撤去の際やさや管の移動の際に孔壁周囲の岩塊玉石や転石は崩壊しにくく、孔内に新たな障害物を生じにくい。また、障害物撤去作業による騒音をさや管および孔壁保護管で遮り、低減することができる。
本発明において、障害物は、例えばコンクリートや岩石、硬質岩盤などである。
本発明において、前記孔壁保護管内の以前に設置された位置とは、前記さや管設置工程で設置された位置であり、破砕繰返し工程においてはさらに前記さや管移動工程で設置された位置である。
【0008】
孔壁保護管は、縦孔の孔壁に沿って設置されることが好ましい。さや管移動工程では、さや管が孔壁保護管の内周に10cm以内で接するよう設置され、さや管の軌跡が隣り合う軌跡と重なりながら孔壁保護管の内周を一周し、一周したさや管の軌跡により包囲される内側がさや管の軌跡で埋まるようさや管が設置されることが好ましい。
【0009】
本発明に係る地中障害物撤去方法において、前記孔壁保護管の開口部に設置される基部と、前記基部に設けられ互いに平行に伸びる複数のさや管とを有するさや管装置を有し、前記さや管設置工程において、前記さや管装置の前記基部を前記孔壁保護管の前記開口部に設置し、前記孔壁保護管に前記孔壁保護管の前記中心軸線と前記さや管の前記中心軸線を平行にして複数の前記さや管を挿入し前記さや管の前記下端を前記障害物の上方に近付けて設置し、前記ロッド引抜工程後、以前に前記ロッドを挿入した前記さや管の他のさや管の内部に前記ロッドを挿入し、前記ロッドを前記他のさや管の内部で中心軸線方向に往復運動させて前記削岩部で前記障害物を破砕する障害物破砕他工程と、前記障害物破砕他工程後、前記他のさや管から前記ロッドを引き抜くロッド引抜他工程とを有し、前記さや管移動工程において、前記ロッド引抜他工程後、前記基部を前記開口部に沿って回転させて設置し、前記破砕繰返し工程において、前記障害物破砕工程と前記ロッド引抜工程と前記障害物破砕他工程と前記ロッド引抜他工程と前記さや管移動工程とを繰り返すことが好ましい。
【0010】
この場合、さや管装置を用いることにより、さや管設置工程で複数のさや管を容易に設置することができ、さや管移動工程でさや管を水平方向にずれた位置に容易に設置することができる。複数のさや管を同時に設置できるので、さや管移動工程の回数を減らし、作業効率の向上を図ることができる。
【0011】
なお、複数のさや管は、2本であっても3本以上であってもよい。2本の場合、基部を孔壁保護管の開口部に設置したとき、さや管の中心軸線を挟んで対称位置に設置されるよう基部に設けられていることが好ましい。3本以上の場合、基部を孔壁保護管の開口部に設置したとき、さや管の中心軸線の周囲に均等に配置されるよう基部に設けられていることが好ましい。
本発明において、障害物破砕工程および障害物破砕他工程では、ロッドを往復運動させるとともに回転運動も行うことが好ましい。
本発明において、障害物破砕他工程で、以前に前記ロッドを挿入した前記さや管の他のさや管とは、障害物破砕工程でロッドを挿入したさや管の他のさや管であり、さや管が3本以上の場合の破砕繰返し工程においてはさらに以前の障害物破砕他工程でロッドを挿入したさや管の他のさや管である。
【0012】
本発明に関するさや管装置は、地中の前記障害物より上方に形成される縦孔に挿入された孔壁保護管の開口部に沿って回転可能に設置される基部と、前記基部に設けられ前記開口部に前記基部を設置したとき前記孔壁保護管に挿入されて前記孔壁保護管の長さ方向に互いに平行に伸びる複数のさや管とを、有することを特徴とする。
本発明に関するさや管装置は、地中障害物撤去方法で複数のさや管の設置を容易にし、さや管の水平方向にずれた位置への設置を容易にすることができる。また、さや管移動の回数を減らし、作業効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、障害物撤去の際に新たな障害物を生じにくく、かつ障害物撤去作業による騒音を低減することができる地中障害物撤去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法の工程を示す説明図である。
【
図2】
図1の地中障害物撤去方法の工程に続く工程を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法による施工箇所の(A)説明平面図、(B)障害物破砕工程の施工順序を示す掘削割付図である。
【
図5】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法およびバイブロハンマ工法による鋼矢板打設方法を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法およびパイルオーガ工法による鋼矢板打設方法を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法および油圧パイルハンマ工法による鋼管杭打設方法を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法による段階的に示す掘削割付図である。
【
図9】本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法による鋼矢板打設のための掘削割付図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1~
図4は、本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法を示している。
まず、
図3に示すように、撤去する障害物Gが埋設された箇所を挟む位置に2本の導杭1をバイブロハンマにより鉛直方向に打ち込む。次に、
図4(A)に示すように、導杭1の上部に四角形の導枠2を設置する。障害物Gは、例えば硬質岩盤である。
【0016】
図1(A)に示すように、油圧オーガ3を用いて導枠2の内側で地中の障害物Gより上方に縦孔を形成する(縦孔形成工程)。縦孔形成工程後、
図1(B)に示すように、バイブロハンマ4により障害物Gの上方に近付けて縦孔に孔壁保護管11を挿入する(孔壁保護工程)。
図1(C)に示すように、孔壁保護管11は、縦孔の孔壁に沿って設置される。孔壁保護管11は、一例で長さ4.0m、直径700mmである。孔壁保護工程後、
図1(D)に示すように、孔壁保護管11に孔壁保護管11の中心軸線と中心軸線を平行にしてさや管12を挿入し、さや管12の下端を障害物Gの上方に近付けて設置する(さや管設置工程)。
【0017】
さや管設置工程では、さや管装置20を用いる。さや管装置20は、基部と複数(一例で2本)のさや管12とを有する。基部は、互いに平行な2本の支持部材を有している。基部は、孔壁保護管11の上端で支持可能であり、孔壁保護管11の開口部に沿って回転可能に孔壁保護管11の上端に設置される。さや管12は、2本の支持部材に上部が挟まれ、支持部材に固定されている。さや管12は、一例で長さ3.0m、直径約270mmである。
【0018】
さや管装置20の基部より下側のさや管12には、孔壁保護管11の内周に沿って摺動可能に嵌合する複数の円板21が互いに間隔をあけて設けられている。円板21には垂直に伸びてさや管12に固定されたリブが固定され、円板21はさや管12の中心軸線に対し垂直に設けられている。円板21には円板21の中心に対し点対称の位置に同径の2個の孔が形成されており、さや管12は各孔に挿入されている。さや管設置工程では、孔壁保護管11の上端の開口部にさや管装置20の基部を設置する。これにより、複数のさや管12は孔壁保護管11に挿入されて孔壁保護管11の長さ方向に互いに平行に伸びる。
【0019】
さや管設置工程後、
図1(D)(E)に示すように、下端に削岩部13を有するロッド14をさや管12の内部に挿入し、ロッド14をさや管12の内部で中心軸線方向に往復運動させて削岩部13で障害物Gを破砕する(障害物破砕工程)。
図3は、地中障害物を撤去している状態を示す。下端に削岩部13を有するロッド14は、例えば、
図3に示すようなダウンザホールハンマから成る。ダウンザホールハンマは、一例で長さ9.0m、直径約220mmである。ダウンザホールハンマは油圧オーガ3に取り付けられ、高圧コンプレッサを噴射し回転運動と往復運動(ピストン運動)とにより破砕・掘削・穿孔することができる。障害物Gの破砕は、障害物Gの下部まで破砕掘削するように行う。細かく破砕された岩の粉は、エアブローにより地上ではなく、孔壁保護管11の内部に集積し、掘削完了した縦孔に間詰充填されて周囲の岩塊玉石や転石の崩壊を防止するのに役立つ。エアブローによる水と掘削粉は、孔壁保護管11の内部に集積されるので、構造物や周辺地盤への影響が少ない。さや管12の内部で破砕・掘削・穿孔を行うことにより、掘削空気量を少なくし吐出圧力を高め、掘削時間を短縮することができる。
【0020】
障害物破砕工程後、さや管12からロッド14を引き抜く(ロッド引抜工程)。ロッド引抜工程後、以前にロッド14を挿入したさや管12(すなわち、障害物破砕工程でロッド14を挿入したさや管12)の他のさや管12の内部にロッド14を挿入し、ロッド14を他のさや管12の内部で中心軸線方向に往復運動させて削岩部13で障害物Gを破砕する(障害物破砕他工程)。障害物破砕他工程後、他のさや管12からロッド14を引き抜く(ロッド引抜他工程)。
【0021】
ロッド引抜他工程後、さや管装置20の基部を孔壁保護管11の開口部に沿って回転させて設置し、さや管12を以前に設置された位置(すなわち、孔壁保護管11内のさや管設置工程で設置された位置)から水平方向にずれた位置で孔壁保護管11の中心軸線とさや管12の中心軸線を平行にしてさや管12の下端を障害物Gの上方に近付けて設置する(さや管移動工程)。このとき、さや管12が孔壁保護管11の内周に例えば10cm以内で接するよう設置され、さや管12の軌跡が隣り合う軌跡と重なりながら孔壁保護管11の内周を一周し、一周したさや管12の軌跡により包囲される内側がさや管12の軌跡で埋まるようさや管12が移動して設置されることが好ましい。さや管移動工程でさや管装置20の基部を孔壁保護管11の開口部に沿って回転させるとき、円板21が孔壁保護管11の内周に沿って摺動するため、孔壁保護管11の中心軸線を中心として円板21を回転させ、さや管12を移動させることができる。例えば、
図4(A)に示すように、2本のさや管12を60度ずつ2度回転させることにより中央を除いて孔壁保護管11の下方全体にさや管12を設置させることができる。
【0022】
さや管移動工程後、障害物破砕工程とロッド引抜工程と障害物破砕他工程とロッド引抜他工程とさや管移動工程とを繰り返す(破砕繰返し工程)。破砕繰返し工程において、障害物破砕他工程では、障害物破砕工程でロッド14を挿入したさや管12の他のさや管12でかつ以前の障害物破砕他工程でロッド14を挿入したさや管12の他のさや管12の内部にロッド14を挿入する。
また、破砕繰返し工程において、さや管移動工程では、さや管設置工程で設置された位置から水平方向にずれた位置でかつ以前のさや管移動工程で設置された位置から水平方向にずれた位置にさや管12を設置する。
破砕繰返し工程後、さや管12からロッド14を引き抜き、さや管12を孔壁保護管11から引き抜く(さや管引抜工程)。さや管引抜工程後、
図2(F)に示すように、油圧ショベル5により孔壁保護管11内に埋め戻し砂6を投入する。
【0023】
1本の孔壁保護管11で下方の障害物Gの破砕が完了したならば、離れた位置に縦孔を形成し、上記の工程を繰り返す。次に、
図2(G)に示すように、縦孔から孔壁保護管11を引き抜く。そして、
図4(B)に示すように、各縦孔7の間に縦孔7を形成し、各縦孔7を水平方向に連続させる。
図2(H)に示すように、連続した縦孔7の位置で油圧パイルハンマ8などを用いて鋼管杭9などを打ち込むことができる。
【0024】
本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法では、さや管装置20を用いることにより、さや管設置工程で複数のさや管12を容易に設置することができ、さや管移動工程でさや管12を水平方向にずれた位置に容易に設置することができる。複数のさや管12を同時に設置できるので、さや管移動工程の回数を減らし、作業効率の向上を図ることができる。
また、地表上部地盤が軟弱で崩壊しやすい場合や掘削精度を確保する必要がある場合にも施工可能となる。
【0025】
障害物破砕工程では、孔壁保護管11に挿入されたさや管12の内部でロッド14を往復運動させてロッド14の下端の削岩部13でさや管12の下方の障害物Gを破砕する。ロッド引抜工程でさや管12からロッド14を引き抜き、さや管移動工程でさや管12を水平方向にずれた位置に設置する。破砕繰返し工程で障害物破砕工程とロッド引抜工程とさや管移動工程とを繰り返す。こうして、孔壁保護管11の下方にある障害物Gを破砕する。障害物Gの破砕はさや管12の下方で行われ、さや管12は孔壁保護管11の内部に設置されるので、障害物撤去の際やさや管12の移動の際に孔壁周囲の岩塊玉石や転石は崩壊しにくく、孔内に新たな障害物Gを生じにくい。また、障害物撤去作業による騒音や振動をさや管12および孔壁保護管11で遮り、低減することができる。孔壁保護管11をシートなどの蓋材で覆って作業を行った場合、さらに騒音や振動を低減することができる。
【0026】
なお、複数のさや管12は、2本であっても3本以上であってもよい。2本の場合、さや管装置20の基部を孔壁保護管11の開口部に設置したとき、さや管12は、さや管12の中心軸線を挟んで対称位置に設置されるようさや管装置20の基部に設けられていることが好ましい。3本以上の場合、さや管12は、さや管装置20の基部を孔壁保護管11の開口部に設置したとき、さや管12の中心軸線の周囲に均等に配置されるようさや管装置20の基部に設けられていることが好ましい。さや管12が3本以上の場合、破砕繰返し工程において、移動後のさや管12すべてにロッド14を挿入して障害物Gを破砕するまで、障害物破砕他工程とロッド引抜他工程とを繰り返すようにする。
【0027】
なお、本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法は、
図5に示すバイブロハンマ工法による鋼矢板打設、
図6に示すパイルオーガ工法による鋼矢板打設、
図7に示す油圧パイルハンマ工法による鋼管杭打設などに適用することができ、その他の土木工事に適用されてもよい。
本発明の実施の形態の地中障害物撤去方法は、例えば、
図8に示すように、(1)先攻掘削、(2)先攻掘削完了、(3)後攻掘削、(4)後攻掘削完了の順に段階的に進めることができる。一例では、
図9に示すように地中障害物を撤去して、鋼矢板打設のための掘削を行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
G 障害物、1 導杭、2 導枠、3 油圧オーガ、4 バイブロハンマ、
5 油圧ショベル、6 埋め戻し砂、7 縦孔、8 油圧パイルハンマ、9 鋼管杭、
11 孔壁保護管、12 さや管、13 ロッド、14 削岩部、
20 さや管装置、21 円板
【要約】
【課題】障害物撤去の際に新たな障害物Gを生じにくく、かつ障害物撤去作業による騒音を低減することができる地中障害物撤去方法およびさや管装置を提供する。
【解決手段】地中の障害物Gより上方に縦孔を形成する。縦孔に孔壁保護管11を挿入する。孔壁保護管にさや管12を挿入し設置する。障害物破砕工程で下端に削岩部13を有するロッド14をさや管の内部に挿入し、ロッドをさや管の内部で中心軸線方向に往復運動させて削岩部で障害物を破砕する。障害物破砕工程後、ロッド引抜工程でさや管からロッドを引き抜く。ロッド引抜工程後、さや管移動工程でさや管を水平方向にずれた位置で設置する。さや管移動工程後、破砕繰返し工程で障害物破砕工程とロッド引抜工程とさや管移動工程とを繰り返す。破砕繰返し工程後、さや管からロッドを引き抜き、さや管を孔壁保護管から引き抜く。
【選択図】
図1