(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/70 20060101AFI20231225BHJP
B23Q 5/28 20060101ALI20231225BHJP
B23Q 1/38 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B23Q1/70
B23Q5/28 B
B23Q1/38 Z
(21)【出願番号】P 2019211048
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】植村 圭二
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102903(JP,A)
【文献】特開2007-266585(JP,A)
【文献】特開昭62-248148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00- 1/76
B23Q 5/28
B23B 3/22
B23B17/00-23/04
B24B41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な軸線を中心に回転されるとともに、軸受を介してその軸線の方向に移動されるスピンドルユニットを設けた工作機械であって、
前記軸受は油静圧軸受であり、
前記スピンドルユニットの両側にリニアモータを設け、そのリニアモータによってスピンドルユニットを前記軸線に沿って移動させるように構成し
、
前記スピンドルユニットの重心を前記リニアモータの上下方向の厚さの範囲内に設定した工作機械。
【請求項2】
水平な軸線を中心に回転されるとともに、軸受を介してその軸線の方向に移動されるスピンドルユニットを設けた工作機械であって、
前記軸受は油静圧軸受であり、
前記スピンドルユニットの両側にリニアモータを設け、そのリニアモータによってスピンドルユニットを前記軸線に沿って移動させるように構成し
、
前記スピンドルユニットの重心を前記リニアモータにおける移動側部材の上下方向の厚さの範囲内に設定した工作機械。
【請求項3】
前記油静圧軸受を前記リニアモータの下方に配置した請求項
1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記スピンドルユニットのスピンドル及びモータを同スピンドルユニットの移動体に支持するとともに、その移動体に前記リニアモータの移動側部材を設けた請求項
2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記移動体を金属セラミックス複合材料によって構成した請求項
4に記載の工作機械。
【請求項6】
油静圧軸受を介して第1軸線を中心に回転されるとともに、同じく油静圧軸受を介して前記第1軸線と直交する第2軸線の方向に移動される回転テーブルが備えられた回転テーブルユニットと、前記第1軸線及び第2軸線と直交する第3軸線を中心に回転されるとともに、油静圧軸受を介してその第3軸線の方向に移動されるスピンドルユニットとを設けた工作機械であって、
前記スピンドルユニットの両側にリニアモータを設け、そのリニアモータによってスピンドルユニットを前記第3軸線に沿って移動させるように構成し、前記スピンドルユニットの重心を前記リニアモータの上下方向の厚さの範囲内に設定した工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークなどを支持するスピンドルを備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の工作機械においては、水平面内において延在するスピンドルを有するとともに、そのスピンドルを有するコラムがスピンドルの延長方向に移動可能に支持されている。そして、コラムは、スピンドルと同方向に延在する送りネジの回転によって移動される。送りネジはコラムの下部であって、ベッドの上面に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の工作機械においては、コラムの移動を駆動する送りネジがスピンドルの下方に位置している。このため、送りネジは、コラムの重心の下方に位置し、送りネジによる移動駆動力は、スピンドルを傾斜させるモーメントとして作用する。特に、送りネジはネジピッチなどの精度誤差が生じていると、コラムの移動精度の低下に加えて、コラムに傾きが生じるおそれがある。このため、加工精度が低下する結果となる。
【0005】
本発明の目的は、加工精度を向上できる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明においては、水平な軸線を中心に回転されるとともに、軸受を介してその軸線の方向に移動されるスピンドルユニットを設けた工作機械であって、前記スピンドルユニットの両側にリニアモータを設け、そのリニアモータによってスピンドルユニットを前記軸線に沿って移動させるように構成したことを特徴とする。
【0007】
以上のように構成された工作機械においては、スピンドルユニットを往復駆動するためのリニアモータがスピンドルユニットの両側に位置するため、スピンドルユニットの移動において、同スピンドルユニットに偏荷重が作用することはほとんどない。従って、スピンドルユニットはピッチングなどによって傾いたりすることなく、水平面上を円滑かつ正確に移動されて、加工精度を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工作機械として、高い加工精度を得ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】旋盤ユニットを前部側の斜め上から見た斜視図。
【
図2】旋盤ユニットを後部側の斜め下から見た斜視図。
【
図8】
図6とは直交する方向で切断した旋盤の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態の工作機械は、旋盤において具体化したものである。
【0011】
図1及び
図2に示すように、旋盤21を有する旋盤ユニット10は、工場の床面などの据え付け面(図示しない)上に設置される設置台11を備えており、この設置台11は、その下面3箇所に設置部材12を有している。すなわち、設置部材12は、前部側に2箇所,後部側に1箇所設けられている。これらの設置部材12は、それぞれ傾斜状のカム面13の作用によって高さ調節可能である。従って、各設置部材12の高さ調節によって、旋盤ユニット10の高さ及び傾きを調節できる。
【0012】
図1及び
図2に示すように、設置台11の上面の3箇所にはエアダンパよりなる吸振装置14を上端に設けた一対の前部支持脚15及び単一の後部支持脚16が立設されている。前部支持脚15及び後部支持脚16はそれぞれ各設置台11を通る垂直軸線(Y軸)上に位置している。そして、吸振装置14の上端の受け板17上に前記旋盤21が支持されている。従って、旋盤21は3箇所の支持脚15,16により3点で支持されている。
【0013】
以下に、前記旋盤21の構成を説明する。
図1及び
図6に示すように、旋盤21は、ベッド22を備えており、そのベッド22の前部側には左右両側を開放した凹部232を有するテーブル支持部23が形成されるとともに、後部側には平板状の天板28を有するスピンドル支持部24が形成されている。ベッド22は、鋳造によって全体が一体形成されている。
図6に示すように、テーブル支持部23の上面231及びスピンドル支持部24の天板28の上面241は同一平面上に位置している。テーブル支持部23の凹部232の左右開放部は、端板27によって閉塞されている。
【0014】
図1,
図4~
図6に示すように、テーブル支持部23には回転テーブルユニット25が設けられるとともに、スピンドル支持部24にはスピンドルユニット26が設けられている。
【0015】
前記回転テーブルユニット25は以下のように構成されている。
図6及び
図7に示すように、テーブル支持部23の凹部232の内側においてZ軸方向に対向する一対の面にはX軸方向に延びるガイド面としての上部段差301が形成されている。上部段差301には回転テーブルユニット25のテーブル側移動体32がX軸方向においてガイドされて移動可能に支持されている。
【0016】
すなわち、
図7に示すように、テーブル側移動体32は、板状体を構成して、全体として四角板状をなし、その対向する一対の辺の下面部と、同辺の側面と、同辺の上面部にそれぞれ油が供給される被ガイド面としての第1油静圧軸受31が配置されている。そして、下面の第1油静圧軸受31が上部段差301の底面に、側面の第1油静圧軸受31が上部段差301の垂直面にそれぞれ油膜を介して支持されている。テーブル支持部23の上面には、X軸方向に延びる一対のガイド部材45が支持されており、このガイド部材45の下面に第1油静圧軸受31が油膜を介して支持されている。第1油静圧軸受31により直線移動油静圧軸受が構成されている。テーブル側移動体32の上面には後述する回転テーブル39との間に位置するスペーサ44が取り付けられている。
【0017】
前記上部段差301の下側に下部段差302が形成されており、この下部段差302と前記テーブル側移動体32との間にはリニアモータ33が介在されている。すなわち、下部段差302にリニアモータ33の固定側部材が設けられ、テーブル側移動体32にリニアモータ33の可動側部材が設けられている。そして、リニアモータ33の駆動力よりテーブル側移動体32がX軸方向に移動される。
【0018】
テーブル側移動体32の中心部にはガイド面としての支持孔42が貫設されており、その支持孔42の内周面及び支持孔42の上下の周縁部にそれぞれ被ガイド面としての環状をなすとともに、油が供給される第2油静圧軸受35が形成されている。第2油静圧軸受35により垂直(Y軸)な回転軸線上において回転軸36が支持されている。回転軸36には環状凹部43が形成されており、その環状凹部43の内上面が第2油静圧軸受35の上面に、環状凹部43の内底部周面が第2油静圧軸受35の側面に、環状凹部43の内下面が第2油静圧軸受35の下面にそれぞれ油膜を介して支持されている。第2油静圧軸受35が回転油静圧軸受を構成している。
【0019】
テーブル側移動体32の下面と回転軸36の下端部との間には回転モータ37が配置されており、この回転モータ37により回転軸36が自身の垂直軸線を中心に回転される。
第1油静圧軸受31と、第2油静圧軸受35とは同一高さに配置されており、回転モータ37は、その第1油静圧軸受31及び第2油静圧軸受35の下方に配置されている。
【0020】
回転軸36の上端には回転テーブル39が取り付けられている。この回転テーブル39上にバイト201などの工具が支持される。本実施形態においては、バイト201の先端が回転テーブル39の回転中心を通るY軸方向の軸線上に位置している。
【0021】
図1,
図4及び
図7に示すように、前記第1油静圧軸受31及び第2油静圧軸受35と同じ高さの位置において、テーブル支持部23の前面には中央部を緩やかな湾曲状に窪ませた変形調節部41が突出形成されており、その両端には変形調節部41よりも前方に突出する端部材46が図示しないボルトによって形成されている。両方の端部材46には互いに逆螺旋方向のネジ孔が形成されており、この両ネジ孔には、断面六角形をなす調節ロッド47の両端の雄ネジが螺合されている。従って、この調節ロッド47はターンバックル機能を有しており、調節ロッド47を回転させることにより、逆ネジの作用によって、前記両方の端部材46間の間隔が微調節される。48,49は緩み止めのためのナットである。この間隔微調節により、テーブル支持部23の湾曲度合いを微調節でき、その結果、上部段差301の垂直面間の間隔を微調節できて、テーブル側移動体32の移動経路の位置を微調節できる。
【0022】
前記スピンドルユニット26は以下のように構成されている。
図1,
図3及び
図9に示すように、前記スピンドル支持部24の上面にはユニット台51が載置固定されており、このユニット台51の両側には受け部52が一体形成されている。
図6及び
図8に示すように、両受け部52には、スピンドル側移動体54のスライダ55が第3油静圧軸受53を介してZ軸方向に移動可能に支持されている。すなわち、スライダ55の下面及び外端面に油が供給されて前記第3油静圧軸受53になっており、受け部52の底面及び垂直面は、油膜を介して第3油静圧軸受53を支持し、スピンドル側移動体54がZ軸方向に移動される。
【0023】
スピンドル側移動体54は、金属セラミックス複合材料によって構成されている。この金属セラミックス複合材料は、軽量化と強靭性の双方を得るために、例えば、鋳鉄中に炭化ケイ素の粉末を分散混合させたものである。スピンドル側移動体54にはスピンドル軸受56が支持されている。
【0024】
スピンドル側移動体54はリニアモータ61によってZ軸への移動が駆動される。このリニアモータ61の永久磁石(図示しない)を有する固定側部材612がユニット台51側に、扁平コイル(図示しない)を有する移動側部材611がスピンドル側移動体54側に位置する。移動側部材611は、固定側部材612の細隙613の内部に位置している。なお、固定側部材612に扁平コイルを設け、移動側部材611に永久磁石を設けてもよく、あるいは、両部材612,611に扁平コイルを設けてもよい。
【0025】
図6及び
図7に示すように、スピンドル軸受56には回転モータ57によって回転されるスピンドル58がZ軸方向の軸線上において支持されており、その先端にはエアチャック59が設けられている。エアチャック59の先端にワーク202がチャックされる。
【0026】
そして、
図8に示すように、スピンドルユニット26の重心αは、前記リニアモータ61の細隙613の上下間隔の範囲内に位置しており、本実施形態においては、重心αは、細隙613内における前記移動側部材611の厚さの範囲内の中央に位置している。
【0027】
次に、前記ベッド22,ユニット台51及びその関連構成について詳細に説明する。
図3及び
図7に示すように、ユニット台51の前端部がテーブル支持部23の上方に位置している。
【0028】
図5,
図6及び
図8に示すように、ベッド22の左右両側端には下方に向かって側板部71が一体形成されている。テーブル支持部23の下方において、両側板部71の下端間には前部下板部72が一体形成されている。スピンドル支持部24の下方において、両側板部71の下端間には膨出部としての後部下板部78が一体形成されている。
【0029】
図2及び
図6に示すように、前記前部下板部72の下面における左右両端部,すなわち回転テーブル39の左右(X軸方向)移動方向の両端部の2箇所には前部脚連結部73が形成されている。この前部脚連結部73が前記支持脚15の上端の前記受け板17上に載置されて、ボルト(図示しない)によって受け板17に連結される。前記後部下板部78の後端部には透設部76が形成されており、この透設部76と対向するように、スピンドル支持部24の天板28の下面には後部脚連結部77が形成されている。この後部脚連結部77は、スピンドル58の下方に位置し、前記スピンドル軸受56の移動領域であって、左右の第3油静圧軸受53間の中央位置と対応している。この後部脚連結部77が前記後部支持脚16の上端の前記受け板17上に載置されて、ボルト(図示しない)によって連結される。後部脚連結部77は前部脚連結部73より上方の高いところに位置している。
【0030】
従って、旋盤21は、X軸方向の同一高さの2箇所において前部支持脚15によって支持されるとともに、両前部支持脚15間の中央を通るZ軸方向の1箇所において後部支持脚16によって支持されている。また、旋盤21は、前部支持脚15及び後部支持脚16により前後方向において後部側が高くなる高低差を設けて支持されている。
【0031】
図6~
図8に示すように、前記後部下板部78は、前記前部脚連結部73と後部脚連結部77との間に配置されるとともに、前後方向及び左右方向において曲面状であるほぼ円弧状に膨らむ形状に形成されている。本実施形態においては、このように、前後方向及び左右方向においてほぼ円弧状に膨らむ形状を球面状とする。
【0032】
図6及び
図8に示すように、ベッド22は天板28,側板部71及び後部下板部78で囲まれた空洞95を有している。ベッド22の内部には、複数の補強壁81,82,83が介在されている。前記ユニット台51の下面には、一対の傾斜壁85と、両傾斜壁85の下端間に位置する架設部86とよりなる補強部が形成されており、架設部86は天板28の上面に当接している。ユニット台51の内部には複数の横壁90が形成されている。ユニット台51の両側下部には側方に突出する板部91が形成されており、この板部91とユニット台の側壁との間には複数の補強リブ92が一体形成されている。
【0033】
図1,
図6,
図8に示すように、ベッド22及びユニット台51には、円形や三角形などの適宜な形状の重量軽減用の透孔88が形成されている。
次に、以上のように構成された旋盤21の作用を説明する。
【0034】
例えば、ワーク202をその前面が凸曲面や凹曲面となるように切削する場合には、スピンドル58の回転により、ワーク202をチャックするエアチャック59が回転するとともに、リニアモータ61によりスピンドルユニット26がZ軸方向に移動される。これと同時に、回転テーブル39がY軸を中心に旋回されながら、回転テーブルユニット25がX軸方向に往復移動される。従って、バイト201の先端がY軸を中心に回転されながら、そのバイト201がX軸方向に往復移動され、ワーク202がZ軸方向に往復移動される。このようにして、ワーク202に対して凸曲面や凹曲面を切削することができる。従って、スピンドルユニット26のZ軸方向への移動及び回転テーブルユニット25のX軸方向への移動の速度,タイミング,ストロークなどを適宜に設定するとともに、回転テーブル39の回転速度や回転範囲などを適宜に設定すれば、ワーク202を各種の形状に加工できる。
【0035】
本実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)水平なZ軸を中心に回転されるスピンドル58を有するとともに、第3油静圧軸受53を介してそのZ軸の方向に移動されるスピンドルユニット26の両側にリニアモータ61が設けられている。そして、そのリニアモータ61によってスピンドルユニット26が前記Z軸に沿って移動される。従って、前述した特許文献1の工作機械とは異なり、スピンドルユニット26の両側から駆動力が付与されるため、スピンドルユニット26に対する偏荷重が小さくなる。従って、スピンドルユニット26をピッチングやローリングなどによって傾くことなく、Z軸に沿って円滑かつ正確に移動させることができる。よって、加工精度を向上させることができる。
【0036】
(2)スピンドルユニット26の重心αが前記リニアモータ61における移動側部材611の上下方向の厚さの範囲内に設定されているため、スピンドルユニット26のZ軸方向への移動において、スピンドルユニット26に作用する偏荷重がほとんど作用しなくなる。従って、スピンドルユニット26の傾きをほとんど皆無にして、スピンドルユニット26をZ軸に沿って円滑かつ正確に移動させることができる。このため、加工精度を向上させることができる。
【0037】
(3)スピンドルユニット26の第3油静圧軸受53がリニアモータ61の下方に配置されているため、スピンドルユニット26の重量がリニアモータ61の下方で受けられる。よって、リニアモータ61における偏荷重が生じることを抑制できる。
【0038】
(4)スピンドル側移動体54が金属セラミックス複合材料によって構成されているため、そのスピンドル側移動体54を軽量化できる。このため、スピンドルユニット26を移動させるための駆動力を小さくできて、リニアモータ61として消費電力が小さく、小型のものを使用できる。また、スピンドルユニット26全体を軽量化できるため、スピンドルユニット26の移動における始動及び停止の際の慣性負荷を小さくできる。このため、前記の始動及び停止の際の傾きを小さくできて、加工精度を向上できる。また、スピンドルユニット26を軽量化できるため、振動が生じた場合におけるスピンドルユニット26の振幅を小さくすることができて、前記と同様に加工精度を向上できる。
【0039】
(5)スピンドルユニット26の移動を駆動するリニアモータ61がスピンドルユニット26の両側に位置しているため、スピンドルユニット26の移動を駆動するリニアモータや送りネジなどがスピンドルユニットの下部に配置されている構成と比較してスピンドルユニットの全高を低くできる。このため、旋盤全体を小型化できる。
【0040】
(6)スピンドルユニット26の全高を低くできるため、スピンドルユニット26の配置位置を回転テーブル39に対して装置の全高をそれほど高くすることなく、無理なく上側の位置に設定できる。このため、ユニット台51の前端を前方へオーバーハングさせて、スピンドルユニット26の前進端を回転テーブル39に対して近接させることができる。従って、装置の加工位置をコンパクト化できるとともに、各種の加工に対する自在性を向上できて、汎用性の高い旋盤とすることができる。
【0041】
(7)旋盤21が3点で支持されるため、同旋盤21を支持脚15,16を介して安定支持することができる。従って、本実施形態においては、高精度加工を維持できる。
(8)旋盤21のベッド22の底部における前部支持脚15及び後部支持脚16の支持位置に高低差が設けられて、後部側が高くなっている。このため、ベッド22における後部支持脚16の取付座の位置がベッド22の重心に近くなり、前後の支持位置に高低差が設けられていない場合と比較して、スピンドルユニット26が移動した場合における旋盤のベッド22の揺れを抑えることができて、加工精度の低下を防止できる。
【0042】
(9)ベッド22の前部のテーブル支持部23には凹部232が形成されて、その凹部232内に回転テーブルユニット25が収容されている。このため、回転テーブル39の位置を低くできる。そして、その回転テーブルユニット25には板状のテーブル側移動体32が設けられており、このテーブル側移動体32の外周面及び支持孔42にそれぞれ第1油静圧軸受31及び第2油静圧軸受35が設けられている。そして、第1油静圧軸受31と第2油静圧軸受35とは同じ高さの位置に配置されている。このため、回転テーブルユニット25の上下寸法を小さくできる。その結果、前記回転テーブル39の高さをさらに低くできる。そのため、回転テーブル39上のバイト201の位置を低くでき、従って、ワーク202を支持するスピンドル58の位置を低くできる。これらのことから、旋盤21全体を薄く、小型軽量化できる。これによって、旋盤21の固有振動の幅が小さくなって、加工精度を向上できる。また、旋盤21を小型軽量化できるため、旋盤21の工場内における設置場所の制約が少なくなり、取り扱いが容易になる。
【0043】
(10)ベッド22のスピンドル支持部24の下面側に位置する後部下板部78が後方に向かう上昇カーブを描いているため、後部下板部78が上昇カーブを描くことなく直線状をなす場合とは異なり、ベッド22を小形化できる。また、ベッド22のスピンドル支持部24の下方が空洞95になっている。従って、ベッド22を軽量化できる。このため、前記と同様に、旋盤21の固有振動の幅が小さくなる。
【0044】
(11)ベッド22のスピンドル支持部24の下方に空洞95が形成されていても、その空洞95の内壁面には、補強壁81などが形成されているため、ベッド22の剛性を維持できる。また、後部下板部78が縦横に円弧状に湾曲形成されているため、言い換えれば、球状に形成されているため、ベッド22の剛性をさらに向上できる。
【0045】
(12)スピンドルユニット26などの重量による負荷が後部下板部78にその引っ張り荷重として作用するが、後部下板部78は前後方向に円弧状をなしているため、その引っ張り荷重に対して有効に抗することができて、前記負荷によるベッド22の変形は適切に抑制される。
【0046】
(13)設置台11の後部側の支持脚16を受ける後部脚連結部77を前部側の支持脚15を受ける前部脚連結部73より高い位置に配置したことにより、ベッド22の側面形状を後方に向かって上昇収束する形状にできる。このため、前記のようにベッド22の小形・軽量化に寄与できる。
【0047】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・スピンドルユニットの重心αをリニアモータの上下方向の厚さの範囲内に設定すること。このように構成しても、前記実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
・前記実施形態とは逆に、スピンドル支持部24に回転砥石などの工具を支持し、回転テーブル39にワークを支持すること。
【0049】
・本実施形態を旋盤以外の工作機械において具体化すること。例えば、スピンドル側にドリルなどの工具を、回転テーブル側にワークを支持するようにすること。
・ベッド22とユニット台51とを一体形成すること。
【0050】
・各部の油静圧軸受を、コロ軸受,エア軸受などの他の種類の軸受に変更すること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握されるが、請求項に記載されていない技術的思想は以下の通りである。
【0051】
(A)ベッドの上面にテーブルユニットとスピンドルユニットとを設けた工作機械であって、
前記ベッドの下面において、前記スピンドルユニットのスピンドルの軸方向と直交する方向の2箇所に第1荷重受け部を設けるとともに、前記スピンドルユニットの軸と対応する1箇所に第2荷重受け部を設け、前記第1荷重受け部と第2荷重受け部との間における前記ベッドの下面に曲面状の膨出部を設けた工作機械。
【0052】
(B)前記テーブルユニットを前記スピンドルの軸方向と直角をなす方向に移動可能にするとともに、前記第1荷重受け部をテーブルの移動範囲の両端部に対応して配置した請求項1に記載の工作機械。
【0053】
(C)前記スピンドルユニットの支持部をテーブルユニットの支持部より高い位置に配置し、前記第2荷重受け部を前記第1荷重受け部より高い位置に配置した請求項2に記載の工作機械。
【0054】
(D)前記スピンドルユニットのスピンドル及びモータを同スピンドルユニットの移動体に支持するとともに、その移動体に前記リニアモータの移動側部材を設けた請求項3に記載の工作機械。
【符号の説明】
【0055】
21…旋盤、22…ベッド、23…テーブル支持部、23…スピンドル支持部、25…回転テーブルユニット、26…スピンドルユニット、32…移動体、33…リニアモータ、39…回転テーブル、54…移動体、58…スピンドル、61…リニアモータ、78…後部下板部、232…凹部、611…移動側部材、α…重心。