IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図1
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図2
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図3
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図4
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図5
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図6
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図7
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図8
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図9
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図10
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図11
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図12
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図13
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図14
  • 特許-ガス分析システムおよびプログラム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ガス分析システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20231225BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20231225BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G01N30/86 F
G01N30/88 G
G06N3/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019227400
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021096159
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302031454
【氏名又は名称】東海電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】都築 伴三
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056664(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164140(JP,U)
【文献】特開平02-022550(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092837(WO,A1)
【文献】米国特許第06212938(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 27/60 -27/92
G06N 10/00 -99/00
G06F 18/00 -99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報を使用してサンプルガスのガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータとしての単純化データを生成するデータ単純化部と、
前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するニューラルネットワークとしてのガス分析ニューラルネットワークによって、前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するガス分析部と
を備え、
前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度に基づいた値として、前記情報に示される前記成分の前記リテンションタイムに対応する前記値のみを含み、
前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに含まれる、前記成分の前記リテンションタイムを含む特定の時間範囲における検知強度の最大値から、このリテンションタイムより前の全ての時間範囲における検知強度の最小値が差し引かれることによって取得された相対的な検知強度を、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度に基づいた前記値として含むことを特徴とするガス分析システム。
【請求項2】
前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するニューラルネットワークとしてのデータ修正ニューラルネットワークによって、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するデータ修正部を備え、
前記ガス分析部は、前記データ修正部による修正後の前記単純化データに基づいて前記ガス分析ニューラルネットワークによって前記サンプルガスの分析を実行することを特徴とする請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項3】
ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報を使用してサンプルガスのガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータとしての単純化データを生成するデータ単純化部と、
前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するニューラルネットワークとしてのガス分析ニューラルネットワークによって、前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するガス分析部と
を備え、
前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度に基づいた値として、前記情報に示される前記成分の前記リテンションタイムに対応する前記値のみを含み、
少なくとも、2つの前記成分の前記リテンションタイムに対応する前記値を互いに入れ替えることによって、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するニューラルネットワークとしてのデータ修正ニューラルネットワークによって、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するデータ修正部を備え、
前記ガス分析部は、前記データ修正部による修正後の前記単純化データに基づいて前記ガス分析ニューラルネットワークによって前記サンプルガスの分析を実行することを特徴とすガス分析システム。
【請求項4】
前記ガス分析ニューラルネットワークに学習を実行させるガス分析学習部を備え、
前記ガス分析学習部は、前記サンプルガスの前記ガスクロマトグラムのデータが前記データ単純化部によって単純化されて前記データ修正部によって修正された前記単純化データと、このサンプルガスに対する人による分析の結果との組み合わせを使用して、前記ガス分析ニューラルネットワークに教師有り学習を実行させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガス分析システム。
【請求項5】
ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報を使用してサンプルガスのガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータとしての単純化データを生成するデータ単純化部をコンピューターに実現させ、
前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度に基づいた値として、前記情報に示される前記成分の前記リテンションタイムに対応する前記値のみを含み、
前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに含まれる、前記成分の前記リテンションタイムを含む特定の時間範囲における検知強度の最大値から、このリテンションタイムより前の全ての時間範囲における検知強度の最小値が差し引かれることによって取得された相対的な検知強度を、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度に基づいた前記値として含むことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報を使用してサンプルガスのガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータとしての単純化データを生成するデータ単純化部と、
前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するニューラルネットワークとしてのガス分析ニューラルネットワークによって、前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するガス分析部と
をコンピューターに実現させるプログラムであって、
前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度に基づいた値として、前記情報に示される前記成分の前記リテンションタイムに対応する前記値のみを含み、
前記プログラムは、少なくとも、2つの前記成分の前記リテンションタイムに対応する前記値を互いに入れ替えることによって、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するニューラルネットワークとしてのデータ修正ニューラルネットワークによって、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するデータ修正部を前記コンピューターに実現させ、
前記ガス分析部は、前記データ修正部による修正後の前記単純化データに基づいて前記ガス分析ニューラルネットワークによって前記サンプルガスの分析を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを分析するガス分析システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス分析システムとして、ガスからガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフと、ガスクロマトグラフによって生成されたガスクロマトグラムに基づいてニューラルネットワークによってガスの臭気を判定するコンピューターとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-056664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガス分析システムにおいては、ガスクロマトグラムにおける全てのサンプリング時間の検知強度をニューラルネットワークに入力するので、ガスの臭気の判定に不要な多数の検知強度がニューラルネットワークに入力されることになり、その結果、ガスの臭気の判定の正解率が高くないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができるガス分析システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス分析システムは、ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報を使用してサンプルガスのガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータとしての単純化データを生成するデータ単純化部と、前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するニューラルネットワークとしてのガス分析ニューラルネットワークによって、前記単純化データに基づいて前記サンプルガスの分析を実行するガス分析部とを備え、前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度として、前記情報に示される前記リテンションタイムに対応する検知強度のみを含むことを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明のガス分析システムは、ガス分析ニューラルネットワークによるサンプルガスの分析において重要度が低いデータを含まない単純化データを使用して、ガス分析ニューラルネットワークに教師有り学習を実行させることができるので、ガス分析ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【0008】
本発明のガス分析システムにおいて、前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに含まれる複数の検知強度に基づいた相対的な検知強度を、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度として含んでも良い。
【0009】
この構成により、本発明のガス分析システムは、サンプルガスに対してガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフの個体に依存する、ガスクロマトグラムのベースラインのばらつきの影響を低減した単純化データを生成することができるので、ガス分析ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【0010】
本発明のガス分析システムは、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するニューラルネットワークとしてのデータ修正ニューラルネットワークによって、前記単純化データを適切な前記単純化データに自動的に修正するデータ修正部を備え、前記ガス分析部は、前記データ修正部による修正後の前記単純化データに基づいて前記ガス分析ニューラルネットワークによって前記サンプルガスの分析を実行しても良い。
【0011】
この構成により、本発明のガス分析システムは、サンプルガスに対してガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフの個体に依存するリテンションタイムのばらつきが単純化データに与える影響を、データ修正ニューラルネットワークによる修正によって低減することができるので、ガス分析ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【0012】
本発明のガス分析システムは、前記ガス分析ニューラルネットワークに学習を実行させるガス分析学習部を備え、前記ガス分析学習部は、前記サンプルガスの前記ガスクロマトグラムのデータが前記データ単純化部によって単純化されて前記データ修正部によって修正された前記単純化データと、このサンプルガスに対する人による分析の結果との組み合わせを使用して、前記ガス分析ニューラルネットワークに教師有り学習を実行させても良い。
【0013】
この構成により、本発明のガス分析システムは、ガスクロマトグラフの個体に依存するリテンションタイムのばらつきによる影響がデータ修正ニューラルネットワークによる修正によって低減された単純化データを使用して、ガス分析ニューラルネットワークに教師有り学習を実行させるので、ガス分析ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【0014】
本発明のプログラムは、ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報を使用してサンプルガスのガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータとしての単純化データを生成するデータ単純化部をコンピューターに実現させ、前記単純化データは、前記ガスクロマトグラムに基づいた検知強度として、前記情報に示される前記リテンションタイムに対応する検知強度のみを含むことを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明のプログラムを実行するコンピューターは、サンプルガスの分析を実行するニューラルネットワークとしてのガス分析ニューラルネットワークによるサンプルガスの分析において重要度が低いデータを含まない単純化データを使用して、ガス分析ニューラルネットワークに教師有り学習を実行させることができるので、ガス分析ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス分析システムおよびプログラムは、ニューラルネットワークによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るガス分析システムの構成図である。
図2図1に示すコンピューターのブロック図である。
図3図2に示すガス辞書の一例を示す図である。
図4】サンプルガスを分析する場合の図2に示すコンピューターの動作のフローチャートである。
図5図4に示すデータ単純化工程のフローチャートである。
図6図1に示すガスクロマトグラフによって生成されたガスクロマトグラムの一例を示す図である。
図7図1に示すガスクロマトグラフによって生成されたガスクロマトグラムのデータに基づいて生成される各種のデータの一例を示す図である。
図8図5に示すデータ単純化工程において生成される棒グラフデータの一例を示す図である。
図9図5に示すデータ単純化工程において生成される単純化データの一例を示す図である。
図10図4に示すデータ修正工程の一例を示す図である。
図11図4に示すガス分析工程の一例を示す図である。
図12図2に示すデータ修正ニューラルネットワークに学習を実行させるデータ修正学習方法のフローチャートである。
図13図12に示すデータ修正学習方法において表示される棒グラフデータの一例の一部を示す図である。
図14】(a)図12に示すデータ修正学習方法による修正前の単純化データの一例を示す図である。 (b)図12に示すデータ修正学習方法による修正後の単純化データの一例を示す図である。
図15図2に示すガス分析ニューラルネットワークに学習を実行させるガス分析学習方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施の形態に係るガス分析システムの構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るガス分析システム10の構成図である。
【0021】
図1に示すように、ガス分析システム10は、分析対象の気体であるサンプルガスからガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフ20と、サンプルガスの分析の結果を表示するための例えばPC(Personal Computer)などのコンピューター30とを備えている。ガス分析システム10は、サンプルガスの分析としてサンプルガスのにおいを判定する臭気判定システムである。
【0022】
ガスクロマトグラフ20は、キャリアガスが圧縮されて貯蔵されている圧縮タンク21と、圧縮タンク21に接続されていて、サンプルガスを注入するための注射器90からサンプルガスが注入されるための注入部22と、注入部22に接続されていて、注入部22でキャリアガスにサンプルガスが混合されたガスとしての混合ガスを成分(以下「成分ガス」という。)毎に分離するためのガス分離カラム23と、ガス分離カラム23に接続されていて、ガス分離カラム23から流入する成分ガスを検出する検出器24とを備えている。
【0023】
図2は、コンピューター30のブロック図である。
【0024】
図2に示すように、コンピューター30は、種々の操作が入力される例えばキーボード、マウスなどの操作デバイスである操作部31と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部32と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部33と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部34と、コンピューター30全体を制御する制御部35とを備えている。
【0025】
コンピューター30は、サンプルガスの分析の結果を表示部32に表示することができる。
【0026】
記憶部34は、ガスを分析するためのプログラムとしてのガス分析プログラム34aを記憶している。ガス分析プログラム34aは、例えば、コンピューター30の製造段階でコンピューター30にインストールされていても良いし、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体からコンピューター30に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター30に追加でインストールされても良い。
【0027】
記憶部34は、ガスの各種の情報を示すガス辞書34bを記憶している。
【0028】
図3は、ガス辞書34bの一例を示す図である。
【0029】
図3に示すガス辞書34bは、ガスの成分ガス毎のリテンションタイムと、成分ガスのID(以下「ガスID」という。)との組み合わせを、ガスのカテゴリーのID(以下「カテゴリーID」という。)毎に格納している。ここで、ガスのカテゴリーは、例えば、コーヒーのにおいを含むガス、養鶏場のにおいを含むガスなど、においの種類によって分けられている。例えば、カテゴリーIDが「34」であるカテゴリーは、果物のうち「りんご」、「みかん」、「ばなな」および「すいか」のいずれかのにおいを含むガスのカテゴリーである。
【0030】
図2に示すように、記憶部34は、ガスのカテゴリーIDと、ガスのカテゴリーの内容との対応関係を示すカテゴリー情報34cを記憶している。また、記憶部34は、成分ガスのガスIDと、成分ガスの名称との対応関係をガスのカテゴリー毎に示す成分ガス情報34dを記憶している。
【0031】
制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、制御部35のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部35のCPUは、記憶部34または制御部35のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0032】
制御部35は、ガス分析プログラム34aを実行することによって、ガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムのデータを単純化することによって、単純化されたデータ(以下「単純化データ」という。)を生成するデータ単純化部35aと、データ単純化部35aによって生成された単純化データを適切な単純化データに自動的に修正するニューラルネットワークとしてのデータ修正ニューラルネットワーク35bと、データ単純化部35aによって生成された単純化データをデータ修正ニューラルネットワーク35bによって適切な単純化データに自動的に修正するデータ修正部35cと、データ修正部35cによる修正後の単純化データに基づいてサンプルガスの分析を実行するニューラルネットワークとしてのガス分析ニューラルネットワーク35dと、データ修正部35cによる修正後の単純化データに基づいてガス分析ニューラルネットワーク35dによってサンプルガスの分析を実行するガス分析部35eと、データ修正ニューラルネットワーク35bに学習を実行させるデータ修正学習部35fと、ガス分析ニューラルネットワーク35dに学習を実行させるガス分析学習部35gとを実現する。
【0033】
次に、サンプルガスを分析する場合のコンピューター30の動作について説明する。
【0034】
図4は、サンプルガスを分析する場合のコンピューター30の動作のフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、データ単純化部35aは、対象のサンプルガスに対してガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムのデータを単純化することによって単純化データを生成するデータ単純化工程を実行する(S101)。
【0036】
次いで、データ修正部35cは、S101のデータ単純化工程によって生成された単純化データをデータ修正ニューラルネットワーク35bによって適切な単純化データに自動的に修正するデータ修正工程を実行する(S102)。
【0037】
次いで、ガス分析部35eは、S102のデータ修正工程による修正後の単純化データに基づいてガス分析ニューラルネットワーク35dによってサンプルガスの分析を実行するガス分析工程を実行して(S103)、図4に示す動作を終了する。
【0038】
図5は、図4に示すデータ単純化工程のフローチャートである。図6は、ガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムの一例を示す図である。図7は、ガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムのデータに基づいて生成される各種のデータの一例を示す図である。
【0039】
なお、図6に示すガスクロマトグラムと、図7に示すデータとは、それぞれ別々の例である。すなわち、図7に示すデータは、図6に示すガスクロマトグラムとは異なるガスクロマトグラムのデータに基づいて生成されたデータである。また、図7に示すデータは、一部のリテンションタイムに対応する情報が省略して描かれているが、実際には、図示している情報の他にも、多くのリテンションタイムに対応する情報を含んでいる。
【0040】
図5に示すように、データ単純化部35aは、ガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムのデータと、このガスクロマトグラムの対象のガスのカテゴリーIDとを記憶する(S121)。例えば、ガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムは、例えば、図6に示すようなものである。図6に示すガスクロマトグラムにおけるベースラインの値やリテンションタイムの値は、ガスクロマトグラフ20の個体に依存する値である。すなわち、ガスクロマトグラフ20と、ガスクロマトグラフ20以外のガスクロマトグラフとでは、ガスクロマトグラムにおけるベースラインの値やリテンションタイムの値が異なる可能性がある。データ単純化部35aは、S121の処理において、ガスクロマトグラムのデータとして、リテンションタイムと、リテンションタイム毎の検知強度とからなるデータを例えば図7に示すように記憶する。また、データ単純化部35aは、S121の処理において、ガスクロマトグラムの対象のガスのカテゴリーIDとして、例えば操作部31を介して入力されたカテゴリーIDを記憶する。
【0041】
データ単純化部35aは、S121の処理の後、S121において記憶したカテゴリーIDにガス辞書34bにおいて対応付けられているガスIDを、S121において記憶したデータに追加する(S122)。データ単純化部35aは、S122の処理において、ガス辞書34bにおけるガスIDを、ガス辞書34bにおいてこのガスIDに対応付けられているリテンションタイムに対応付けて、例えば図7に示すように記憶する。
【0042】
データ単純化部35aは、S122の処理の後、S121において記憶したガスクロマトグラムのデータのうち、局所的な上端になるピークとしての山頂が存在するリテンションタイムを検出する(S123)。例えば、データ単純化部35aは、リテンションタイムを1つずつ対象にしていき、対象のリテンションタイムにおける検知強度が、対象のリテンションタイムの2つ前のリテンションタイムにおける検知強度に特定の値を加算した値と、対象のリテンションタイムの2つ後のリテンションタイムにおける検知強度に特定の値を加算した値とのいずれよりも大きい場合に、対象のリテンションタイムに山頂が存在すると判定する。ここで、特定の値は、図7に示すデータにおいては例えば50である。データ単純化部35aは、S123の処理において、例えば、図7に示すデータのうち、山頂の検知強度を示すmax値をリテンションタイムに対応付けて記憶する。図7に示すmax値は、山頂が存在するリテンションタイムに対しては、このリテンションタイムに対応付けられている検知強度を対応付け、山頂が存在しないリテンションタイムに対しては0を対応付ける。
【0043】
データ単純化部35aは、S123の処理の後、山頂が存在するリテンションタイムにおける相対的な検知強度、すなわち、濃度値を算出する(S124)。例えば、データ単純化部35aは、山頂が存在するリテンションタイム、すなわち、max値が0より大きいリテンションタイムを1つずつ対象にしていき、対象のリテンションタイムの2つ前のリテンションタイムから、対象のリテンションタイムの2つ後のリテンションタイムまでのリテンションタイムの範囲における検知強度の最大値から、対象のリテンションタイムより前の全てのリテンションタイムの範囲における検知強度の最小値を差し引くことによって、山頂が存在するリテンションタイムにおける濃度値を取得する。データ単純化部35aは、S124の処理において、例えば、図7に示すデータのうち、各リテンションタイムにおける濃度値をリテンションタイムに対応付けて記憶する。ここで、データ単純化部35aは、山頂が存在しないリテンションタイムにおける濃度値を0とする。
【0044】
データ単純化部35aは、S124の処理の後、ガスクロマトグラムを棒グラフ化したデータ(以下「棒グラフデータ」という。)を算出する(S125)。例えば、データ単純化部35aは、リテンションタイムを1つずつ対象にしていき、対象のリテンションタイムの2つ前のリテンションタイムから、対象のリテンションタイムの2つ後のリテンションタイムまでのリテンションタイムの範囲における検知強度の合計値が0より大きい場合に、対象のリテンションタイムの2つ前のリテンションタイムから、対象のリテンションタイムの2つ後のリテンションタイムまでのリテンションタイムの範囲における検知強度の最大値を、対象のリテンションタイムの、棒グラフデータにおける濃度値として取得する。一方、データ単純化部35aは、対象のリテンションタイムの2つ前のリテンションタイムから、対象のリテンションタイムの2つ後のリテンションタイムまでのリテンションタイムの範囲における検知強度の合計値が0より大きくない場合には、対象のリテンションタイムの、棒グラフデータにおける濃度値として0を決定する。データ単純化部35aは、S125の処理において、例えば、図7に示すデータのうち、各リテンションタイムの、棒グラフデータにおける濃度値を記憶する。
【0045】
図8は、図5に示すデータ単純化工程において生成される棒グラフデータの一例を示す図である。
【0046】
データ単純化部35aは、図5に示すデータ単純化工程において、図6に示すガスクロマトグラムに基づいて図8に示す棒グラフデータを生成する。すなわち、図6に示すアナログ的な波形を示すガスクロマトグラムは、傾斜部分が削除されて、図8に示すデジタル的な波形を示す棒グラフデータに変換される。なお、傾斜部分のデータは、例えば、ガスクロマトグラフ20において使用されるガス分離カラム23の種類および温度と、ガスクロマトグラフ20において使用されるキャリアガスの種類および流量とによって変化するデータであり、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるサンプルガスの分析において重要度が低いデータである。
【0047】
図5に示すように、データ単純化部35aは、S125処理の後、ガスクロマトグラムのデータを単純化した単純化データを生成する(S126)。すなわち、データ単純化部35aは、S126において、S122においてデータに追加したガスIDと、このガスIDに対応付けられているリテンションタイムに、S125において対応付けられた濃度値とを対応付けたデータを単純化データとして生成する。
【0048】
図9は、図5に示すデータ単純化工程において生成される単純化データ81の一例を示す図である。
【0049】
図9に示す単純化データ81は、図7に示すデータのうち、S122において追加されたガスIDと、このガスIDに対応付けられた、棒グラフデータにおける濃度値とからなるデータと、S121において記憶したカテゴリーIDとからなるデータである。なお、図9に示す単純化データ81は、一部のガスIDに対応する情報が省略して描かれているが、実際には、図示している情報の他にも、多くのガスIDに対応する情報を含んでいる。
【0050】
図5に示すように、データ単純化部35aは、S126処理の後、図5に示すデータ単純化工程を終了する。
【0051】
なお、S123、S124およびS125の処理において、対象のリテンションタイムの2つ前のリテンションタイムと、対象のリテンションタイムの2つ後のリテンションタイムとが処理の基準として使用されている。この「2つ」という数は、例えば、ガスクロマトグラフ20におけるリテンションタイムの誤差に基づいて決定されている。すなわち、ガスクロマトグラフ20におけるリテンションタイムの誤差が±N%である場合、N%分に相当するリテンションタイムが2つ分のリテンションタイムである。したがって、何個分のリテンションタイムが処理の基準として使用されるかは、実際には、ガスクロマトグラフ20におけるリテンションタイムの誤差に基づいて決定される。
【0052】
図10は、図4に示すデータ修正工程の一例を示す図である。
【0053】
図10に示すように、データ修正部35cは、データ単純化工程によって生成された例えば図9に示す単純化データ81を、データ修正ニューラルネットワーク35bによって適切な単純化データに自動的に修正する。データ修正ニューラルネットワーク35bの設定項目には、入力側のノードの数を示す入力ノード数と、隠れノードの数を示す隠れノード数と、出力側のノードの数を示す出力ノード数と、活性化関数に何を使用するかということと、最適化として何を使用するかということと、Batch normalizationの使用の有無と、Weight decayの使用の有無と、Dropoutの使用の有無と、入力のデータおよび出力の正解データからなる学習データ毎の教師有り学習の繰り返しの回数を示す教師学習繰返し回数とが含まれている。図10に示すデータ修正ニューラルネットワーク35bは、入力ノード数がガス1~ガスnまでのn個と、カテゴリーの1個との合計n+1個であり、隠れノード数が20個であり、出力ノード数がガス1~ガスnまでのn個と、カテゴリーの1個との合計n+1個であり、活性化関数がReLUであり、最適化がAdamであり、Batch normalizationを使用し、Weight decayを使用し、Dropoutを使用し、教師学習繰返し回数が10000回である。
【0054】
図10に示す例では、単純化データにおいて、ガス1の値と、ガス2の値とが互いに入れ替えられるように修正されている。
【0055】
図11は、図4に示すガス分析工程の一例を示す図である。
【0056】
図11に示すように、ガス分析部35eは、データ修正工程による修正後の単純化データに基づいてガス分析ニューラルネットワーク35dによってサンプルガスの分析を実行する。ガス分析ニューラルネットワーク35dの設定項目には、入力ノード数と、隠れノード数と、出力ノード数と、活性化関数に何を使用するかということと、最適化として何を使用するかということと、Batch normalizationの使用の有無と、Weight decayの使用の有無と、Dropoutの使用の有無と、教師学習繰返し回数とが含まれている。図11に示すガス分析ニューラルネットワーク35dは、入力ノード数がガス1~ガスnまでのn個と、カテゴリーの1個との合計n+1個であり、隠れノード数が20個であり、出力ノード数が「りんご」、「みかん」、「ばなな」および「すいか」の4個であり、活性化関数がReLUであり、最適化がAdamであり、Batch normalizationを使用し、Weight decayを使用し、Dropoutを使用し、教師学習繰返し回数が10000回である。
【0057】
図11に示す例では、サンプルガスの臭気の判定の結果として、「みかん」が出力されている。
【0058】
次に、データ修正ニューラルネットワーク35bに学習を実行させる方法(以下「データ修正学習方法」という。)について説明する。
【0059】
図12は、データ修正学習方法のフローチャートである。
【0060】
図12に示すように、データ修正学習部35fは、S101(図4参照。)の処理と同様に、対象のサンプルガスに対してガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムのデータを単純化するデータ単純化工程を実行する(S141)。
【0061】
次いで、データ修正学習部35fは、S141のデータ単純化工程によって生成された棒グラフデータを、S141のデータ単純化工程によって棒グラフデータに対応付けられたガスIDを付して、表示部32に表示する(S142)。
【0062】
図13は、データ修正学習方法において表示される棒グラフデータの一例の一部を示す図である。
【0063】
図13に示す棒グラフデータには、山頂に相当する部分に対応付けられているガスIDが付されている。なお、谷底に相当する部分に対応付けられているガスIDは表示されなくても良い。
【0064】
図12に示すように、S142の処理の後、S142において表示された棒グラフデータに不適切な成分ガスが存在するか否かが専門家によって判断される(S143)。
【0065】
不適切な成分ガスが存在しないとS143において判断されると、データ修正学習部35fは、S141のデータ単純化工程によって生成した単純化データを、入力のデータにするとともに、出力の正解データにもすることによって、データ修正ニューラルネットワーク35bに教師有り学習を実行させて(S144)、図12に示すデータ修正学習方法を終了する。
【0066】
不適切な成分ガスが存在するとS143において判断されると、不適切な成分ガスの修正が可能であるか否かが専門家によって判断される(S145)。ここで、専門家は、S142において表示された棒グラフデータに存在する不適切な成分ガスの全てについて、対象の不適切な成分ガスに対応するリテンションタイムの近傍のリテンションタイムに対応する成分ガスに、対象の不適切な成分ガスと入れ替えることが適切なものが存在する場合に、不適切な成分ガスの修正が可能であると判断する。一方、専門家は、S142において表示された棒グラフデータに存在する不適切な成分ガスの少なくとも1つについて、対象の不適切な成分ガスに対応するリテンションタイムの近傍のリテンションタイムに対応する成分ガスに、対象の不適切な成分ガスと入れ替えることが適切なものが存在しない場合に、不適切な成分ガスの修正が可能ではないと判断する。
【0067】
不適切な成分ガスの修正が可能ではないとS145において判断されると、図12に示すデータ修正学習方法は終了する。
【0068】
不適切な成分ガスの修正が可能であるとS145において判断されると、専門家による修正が実行される(S146)。ここで、専門家は、S142において表示された棒グラフデータに存在する不適切な成分ガスの全てについて、対象の不適切な成分ガスに対応するリテンションタイムの近傍のリテンションタイムに対応する成分ガスのうち、対象の不適切な成分ガスと入れ替えることが適切なものを、対象の不適切な成分ガスと入れ替えることによって修正する。
【0069】
図14(a)は、データ修正学習方法による修正前の単純化データの一例を示す図である。図14(b)は、データ修正学習方法による修正後の単純化データの一例を示す図である。
【0070】
図14(a)に示す単純化データは、S146の処理によって、例えば図14(b)に示す単純化データに修正される。図14(b)に示す単純化データは、図14(a)に示す単純化データにおいてガス3の値と、ガス4の値とが互いに入れ替えられるように修正されている。なお、図14に示す単純化データは、一部のガスIDに対応する情報が省略して描かれているが、実際には、図示している情報の他にも、多くのガスIDに対応する情報を含んでいる。
【0071】
図12に示すように、S146の処理が終了すると、データ修正学習部35fは、S141のデータ単純化工程によって生成した単純化データを入力のデータにするとともに、S146による修正後の棒グラフデータから得られる単純化データを出力の正解データにすることによって、データ修正ニューラルネットワーク35bに教師有り学習を実行させて(S147)、図12に示すデータ修正学習方法を終了する。
【0072】
次に、ガス分析ニューラルネットワーク35dに学習を実行させる方法(以下「ガス分析学習方法」という。)について説明する。
【0073】
図15は、ガス分析学習方法のフローチャートである。
【0074】
図15に示すように、ガス分析学習部35gは、S101(図4参照。)の処理と同様に、対象のサンプルガスに対してガスクロマトグラフ20によって生成されたガスクロマトグラムのデータを単純化するデータ単純化工程を実行する(S161)。
【0075】
次いで、ガス分析学習部35gは、S102(図4参照。)の処理と同様に、S161のデータ単純化工程によって生成された単純化データをデータ修正ニューラルネットワーク35bによって適切な単純化データに自動的に修正するデータ修正工程を実行する(S162)。
【0076】
次いで、対象のサンプルガスのにおいが専門家によって判定される(S163)。
【0077】
S163の処理が終了すると、ガス分析学習部35gは、S162のデータ修正工程による修正後の単純化データを入力のデータにするとともに、S163による判定の結果を出力の正解データにすることによって、ガス分析ニューラルネットワーク35dに教師有り学習を実行させて(S164)、図15に示すガス分析学習方法を終了する。
【0078】
以上に説明したように、ガス分析システム10における単純化データは、ガスクロマトグラムに基づいた検知強度として、ガス辞書34bに示されるリテンションタイムに対応する検知強度のみを含む。この構成により、ガス分析システム10は、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるサンプルガスの分析において重要度が低いデータを含まない単純化データを使用して、ガス分析ニューラルネットワーク35dに教師有り学習を実行させる(S164)ことができるので、例えばガス分析ニューラルネットワーク35dによる過学習を防止することができ、その結果、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるサンプルガスの分析の正解率を向上することができる。
【0079】
ガス分析システム10は、サンプルガスに対してガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフ20の個体に依存するリテンションタイムのばらつきが単純化データに与える影響を、データ修正ニューラルネットワーク35bによるS102における修正によって低減することができるので、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【0080】
ガス分析システム10において、単純化データは、ガスクロマトグラムに含まれる複数の検知強度に基づいた相対的な検知強度、すなわち、濃度値を、ガスクロマトグラムに基づいた検知強度として含んでいる。この構成により、ガス分析システム10は、サンプルガスに対してガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフ20の個体に依存する、ガスクロマトグラムのベースラインのばらつきの影響を低減した単純化データを生成する(S101)ことができるので、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるガスの分析の正解率を向上することができる。なお、ガス分析システム10は、ガス辞書34bに示されるリテンションタイムに対応する検知強度として、ガスクロマトグラムに含まれる複数の検知強度に基づいた相対的な検知強度である濃度値ではなく、ガスクロマトグラムに含まれる検知強度のまま、単純化データに含めても良い。
【0081】
ガス分析システム10は、ガスクロマトグラフ20の個体に依存するリテンションタイムのばらつきによる影響がデータ修正ニューラルネットワーク35bによるS162における修正によって低減された単純化データを使用して、ガス分析ニューラルネットワーク35dに教師有り学習を実行させる(S164)ので、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるガスの分析の正解率を向上することができる。
【0082】
ガス分析システム10は、ガス分析ニューラルネットワーク35dによるガスの分析の正解率を向上することができるので、ガス分析ニューラルネットワーク35dに実行させる必要がある教師有り学習の回数を低減することができ、その結果、ガス分析ニューラルネットワーク35dの教師有り学習に必要な、ガスクロマトグラフ20によるサンプルガスの測定の回数を低減することができる。ここで、ガスクロマトグラフ20によるサンプルガスの測定には、時間および費用がかかる。したがって、ガス分析システム10は、時間および費用の消費を抑えることができる。
【0083】
ガス分析システム10は、単純化データに基づいてガス分析ニューラルネットワーク35dによってサンプルガスの分析を実行するので、ガス分析ニューラルネットワーク35dにおけるサンプルガスの分析のための計算時間を短縮することができる。
【0084】
ガス分析システム10は、本実施の形態において、教師有り学習の方法として、図12および図15に示すように、1つの学習データ毎に都度学習するオンライン学習を採用している。しかしながら、教師有り学習の方法は、オンライン学習以外の方法でも良い。例えば、ガス分析システム10は、教師有り学習の方法として、多数の学習データを一括で学習するバッチ学習を採用しても良い。
【0085】
ガス分析システム10は、本実施の形態において、サンプルガスのにおいを判定する臭気判定システムである。しかしながら、ガス分析システム10は、サンプルガスの分析として、においの判定以外の分析を実行するシステムでも良い。
【符号の説明】
【0086】
10 ガス分析システム
30 コンピューター
34a ガス分析プログラム(プログラム)
34b ガス辞書(ガスの成分毎のリテンションタイムを示す情報)
35a データ単純化部
35b データ修正ニューラルネットワーク
35c データ修正部
35d ガス分析ニューラルネットワーク
35e ガス分析部
35g ガス分析学習部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15