(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】基板ブレイク装置および基板ブレイク方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/033 20060101AFI20231225BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20231225BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20231225BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20231225BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231225BHJP
B26F 3/06 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C03B33/033
B28D5/00 Z
B28D7/04
B26F3/00 Z
H01L21/78 T
B26F3/06
(21)【出願番号】P 2021132553
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
(72)【発明者】
【氏名】市川 克則
(72)【発明者】
【氏名】中田 勝喜
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-173725(JP,A)
【文献】特開2016-198981(JP,A)
【文献】特開2018-176559(JP,A)
【文献】特開平11-157863(JP,A)
【文献】特開昭57-175741(JP,A)
【文献】国際公開第2004/067243(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00-33/14
B28D 1/00-7/04
B26F 1/00-3/16
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクライブラインが形成された基板を、そのスクライブラインに沿ってブレイクする基板ブレイク装置であって、
柱状で良熱伝導性材料からなる複数本の伝熱ロッドと、
前記基板が載置される載置面に前記伝熱ロッドが挿入可能な複数の取付孔が形成された良熱伝導性材料のテーブルと、
前記テーブルの前記載置面と反対面側で前記テーブルに対し熱絶縁されるようにして支持される良熱伝導性材料のプレートと、
前記テーブルを第一設定温度T1にする第一温度設定機構と、
前記プレートを第二設定温度T2にする第二温度設定機構とを備え、
前記各伝熱ロッドは前記テーブルに対し熱絶縁されるとともに、片端側が前記載置面と面一となり、他端側が前記プレートと面接して熱伝導するように保持され、
前記テーブルに形成される前記取付孔の位置は、少なくとも前記基板が前記載置面に載置されたときに前記スクライブラインに相対する複数の位置が含まれるように形成されている基板ブレイク装置。
【請求項2】
前記取付孔は一定間隔をあけて前記載置面に網目状または格子状に形成される請求項1に記載の基板ブレイク装置。
【請求項3】
第一温度設定機構および第二温度設定機構は、一方に電熱ヒータによる加熱機構が用いられ、他方に水冷機構が用いられる請求項1または請求項2のいずれかに記載の基板ブレイク装置。
【請求項4】
前記基板を吸着保持して前記載置面に載置させるとともに、ブレイクされた後の基板を前記載置面から搬出するロボットアームを備えた請求項1~請求項3のいずれかに記載の基板ブレイク装置。
【請求項5】
スクライブラインが形成された基板をテーブルに載置してそのスクライブラインに沿ってブレイクする基板ブレイク方法であって、
前記基板を載置する載置面が第一設定温度T1に設定されるとともに、前記基板を載置したときの前記スクライブラインの位置に相対する前記テーブルの位置に沿って、第一設定温度T1とは異なる第二設定温度T2に設定された複数の領域が間隔をあけて形成されたテーブルを用意し、
前記テーブルの前記載置面に前記スクライブラインを面接させることにより、前記スクライブラインに沿ってブレイクする基板ブレイク方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予めスクライブライン(切溝)を形成したガラス基板を、そのスクライブラインに沿って分断するための基板ブレイク装置並びに基板ブレイク方法に関する。本発明は、例えばテレビ、携帯端末、ゲーム機器等で採用されているフラットパネルディスプレイ(FPD)等に使用されるガラス基板が主な加工対象である。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクライビングホイールによるメカニカルスクライブ、又は、レーザスクライブによりガラス基板(以下単に「基板」という)の表面にスクライブラインを形成し(スクライブ工程)、次工程(ブレイク工程)でこのスクライブラインに沿ってブレイクするようにして基板を分断加工することがなされている。このブレイク工程では、下向き先細り形状(ナイフ状)で長尺のブレイクバーを基板のスクライブラインに沿って押しつけ、基板をV字形に撓ませて分断する手法(例えば特許文献1参照)や、スクライブラインにスチームなどの加熱媒体を吹き付けて熱応力を生じさせることにより、スクライブラインの亀裂を基板厚み方向に浸透させて基板を分断する手法(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-120725号公報
【文献】WO2004-067243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるようなナイフ状のブレイクバーの押しつけによるブレイク手法では、基板上面を押圧することによってV字形に撓ませたときに、押圧荷重のかけ方によっては隣接する分断端面の上端縁部分同士が互いに押し合うように干渉して欠けが生じることがあり、これが起点となって基板表面にひび割れ等が発生したり、端面強度が劣化したりする問題が生じるおそれがあった。また、ブレイク対象となるスクライブラインは、基本的にブレイクバーと同様に直線形状であり、ブレイクバーは直線状のスクライブラインに正確に位置合わせしてブレイクする必要があった。
【0005】
これに対し、特許文献2に記載される熱応力を利用したブレイク手法では、基板と非接触でブレイクを行うものであるため、撓みによって生じる分断端面同士の押し合いによる欠けが発生するおそれがない点で優れているが、スクライブラインから空間的に離れるように配置したノズルからスクライブラインに向けてスチーム等の熱媒体を吹きつけて対流熱伝達を行うためのものであるから、熱の利用効率が悪くて不経済であると共に、吹き付けによって雰囲気気体を舞い上げることになり雰囲気気体にダストが含まれていると製品の歩留まりに悪影響を及ぼすおそれがあった。また、熱源を含む加熱機構の組付け構成が複雑で大型化するといった問題点もあった。
【0006】
更に加えて、上記した何れの場合も、一本のスクライブラインを分断した後、ブレイクバー若しくは熱媒体噴射部に対して基板を相対的に移動させて次のスクライブラインを分断するものであるから、全てのスクライブラインを分断するまでに要する時間をできるだけ短縮することが望まれていた。
【0007】
そこで本発明は上記課題に鑑み、分断端面に欠けが生じるおそれがなく、熱応力を利用したブレイクを採用するものでありながら、熱損失が少なく、しかも作業効率に優れた基板ブレイク装置並びに方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明の基板ブレイク装置は、スクライブラインが形成された基板を、そのスクライブラインに沿ってブレイクする基板ブレイク装置であって、柱状で良熱伝導性材料からなる複数本の伝熱ロッドと、前記基板が載置される載置面に前記伝熱ロッドが挿入可能な複数の取付孔が形成された良熱伝導性材料のテーブルと、前記テーブルの前記載置面と反対面側で前記テーブルに対し熱絶縁されるようにして支持される良熱伝導性材料のプレートと、前記テーブルを第一設定温度T1にする第一温度設定機構と、前記プレートを第二設定温度T2にする第二温度設定機構とを備え、前記各伝熱ロッドは前記テーブルに対し熱絶縁されるとともに、片端側が前記載置面と面一となり、他端側が前記プレートと面接して熱伝導するように保持され、前記テーブルに形成される前記取付孔の位置は、少なくとも前記基板が前記載置面に載置されたときに前記スクライブラインに相対する複数の位置が含まれるように形成されている構成とした。
ここで第一設定温度T1と第二設定温度T2とは、それぞれの温度に接した基板に熱応力差を生じさせることができる程度の温度差であればよい。
【0009】
本発明によれば、テーブルの載置面に基板を載置したときに基板のスクライブラインと相対する位置にある複数の(スクライブラインに沿った)取付孔に対し、予め伝熱ロッドを挿入しておき、各伝熱ロッドの設定温度がプレートからの熱伝導により第二設定温度T2になるようにしておくとともに、テーブルの温度が第一設定温度T1になるようにしておく。この状態で、ブレイクしようとする基板を、そのスクライブラインがテーブルの取付孔に挿入された伝熱ロッドに当接するようにして載置すると、スクライブラインは第一設定温度T1のテーブルに接する領域と、第二設定温度T2の伝熱ロッドに接する領域とが交互に生じるようになり、スクライブラインに沿って熱応力分布が形成されてスクライブラインを分離しようとする分離力が加わることになってブレイクされることになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の複数のスクライブラインに沿った位置の取付穴に伝熱ロッドを挿入しておくことにより、複数のスクライブラインを同時に分断したり、複数の単位基板を同時に切り出したりすることが可能となる。これにより、基板分断に要する時間を短縮して作業効率を高めることができる。また、伝熱ロッドを挿入する位置をスクライブラインに沿わせることで、曲線や屈折線などを含む任意形状のスクライブラインを分断したり、円形などの任意の外形輪郭線を持つ単位基板を切り出すことができる。
更に加えて本発明では、ブレイクバーで基板を撓ませてブレイクするものでないから、ブレイクされた基板分断面に欠け等の欠陥が発生していない高品質の端面を得ることができる。また、基板に面接触による熱伝導で熱応力を与えているので、熱損失を小さく押さえることができると共に、スチーム等の吹き付けによるブレイクで生じるようなダストの舞い上がりや蒸気で濡れた製品表面へのパーティクルの付着を抑制することができるといった効果がある。
【0011】
本発明において、前記取付孔は一定間隔をあけて前記載置面に網目状または格子状に形成されるようにしてもよい。
これにより、伝熱ロッドを挿入する取付孔を選択することにより、直線、曲線を含めて任意の形状のスクライブラインに沿って容易にブレイクすることができる。
【0012】
本発明において、第一温度設定機構および第二温度設定機構は、一方に電熱ヒータによる加熱機構が用いられ、他方に水冷機構が用いられるようにしてもよい。
【0013】
本発明において、前記基板を吸着保持して前記載置面に載置させるとともに、ブレイクされた後の基板を前記載置面から搬出するロボットアームを備えるようにしてもよい。
これにより、基板を載置面に搬送して接触状態を保持すると共に、分断後の基板を載置面から搬出する動作を効率よく行うことができる。
【0014】
また、別の観点からなされた本発明の基板ブレイク方法は、スクライブラインが形成された基板をテーブルに載置してそのスクライブラインに沿ってブレイクする基板ブレイク方法であって、前記基板を載置する載置面が第一設定温度T1に設定されるとともに、前記基板を載置したときの前記スクライブラインの位置に相対する前記テーブルの位置に沿って、第一設定温度T1とは異なる第二設定温度T2に設定された複数の領域が間隔をあけて形成されたテーブルを用意し、前記テーブルの前記載置面に前記スクライブラインを面接させることにより、前記スクライブラインに沿ってブレイクするようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例である基板ブレイク装置の概略的な正面図。
【
図4】
図1のテーブルに伝熱ロッドを取り付ける過程を示す説明図。
【
図6】
図5で示した基板をブレイクする場合の伝熱ロッドの配置図。
【
図7】伝熱ロッドとテーブルとによって基板(のスクライブライン)に形成される加熱領域及び冷却領域を示す説明図。
【
図8】別形態の単位基板を分断する場合の伝熱ロッドの配置図。
【
図9】円形の単位基板を分断する場合の伝熱ロッドの配置図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の詳細を図に基づいて説明する。
図1~
図4は本発明の一実施例である基板ブレイク装置を示す図であり、
図5は分断される基板Wの平面図である。基板Wには、前段工程で互いに直交する縦、横の浅い溝状のスクライブラインSが加工されており、これにより分断後に製品となる複数の、例えば
図5のように6枚の単位基板W1と、周辺の端材Eとに区分けされている。スクライブラインSは、スクライビングホイールを基板表面に押し付けながら転動させるメカニカルスクライブにより加工されるが、これに代えてレーザスクライブで形成することもできる。
【0017】
基板ブレイク装置Aは、分断すべき基板Wを載置して保持する水平なテーブル1と、分断すべき基板Wを吸着保持してテーブル1上に載置させるとともに、分断後の単位基板W1をテーブル面から搬出するロボットアーム(搬送アーム)14とを備えている。
【0018】
テーブル1は、アルミ、銅等のような良熱伝導性の金属材料で形成され、内部を通る循環通路2(水冷ジャケット)に冷水などの冷媒を循環させることにより第一設定温度T1(冷媒温度)に設定できるように形成されている。循環通路2の入口3並びに出口4は配管を介して冷媒源(図示外)に連結されている。冷媒温度は冷媒源の温調装置(図示外)により所望の温度に調整可能にしてある。また、テーブル1の平坦な載置面(上面)には、後述する伝熱ロッド6を嵌め込むことができる多数の取付孔5が上下に貫通して網目状(または格子状)に設けられ、隣接する取付孔5の間は等間隔にしてある。
【0019】
伝熱ロッド6はアルミ、銅等の良熱伝導性の金属材料で形成され、
図4(a)に示すように、取付孔5に着脱可能に嵌め込むことができるように円柱状で形成され、取付孔5に接する外周面は断熱材6aで被覆されている。なお、伝熱ロッド6と取付孔5とを精密加工することによって伝熱ロッド6と取付孔5との間にスペースを設けることで非接触にして熱的に絶縁するようにしてもよい。
また、伝熱ロッド6の上端面の少なくとも一部若しくは全面が平らな面で形成され、
図4(b)に示すように、取付孔5に装着したときに伝熱ロッド6の上面とテーブル1の上面(載置面)とは面一となるように設計されている。さらに、伝熱ロッド6の下端側には後述するプレート8のソケット7(穴)に差し込まれる差込部6bを備えている。
【0020】
テーブル1の下側(載置面とは反対側)には、多数のソケット7を備えたアルミ、銅等の良熱伝導性の金属材料からなるプレート8が、熱絶縁性材料であるセラミック製の連結ボルト9並びにナット10を介して隙間を設けた状態で連結されている。テーブル1とプレート8との隙間は両者間を熱的に絶縁する断熱空間としての役目を果たすものであって、テーブル1とプレート8との間で連結ボルト9の周囲に円筒状の間隔子11を取り付けて隙間が維持されている。
【0021】
上記プレート8に設けられたソケット群7は、上方にあるテーブル1の各取付孔5に相対する位置にそれぞれ配置されている。これにより、伝熱ロッド6をテーブル上面(載置面)から取付孔5に差し込むことでその下部の差込部6bをソケット7に取り付けることができるようにしてあり、伝熱ロッド6とプレート8とは面接触することにより熱伝導可能になってプレート8の熱が伝熱ロッド6に伝達される。プレート8には、電熱ヒータ12が組み込まれており、電熱ヒータ12によって加熱されたプレート8の熱が伝熱ロッド6に伝わって伝熱ロッド6の上面が第二設定温度T2に設定されるように形成されている。なお、電熱ヒータ12は電線13を介して電源(図示外)に接続され、温調装置(図示外)により所望の温度に調整可能にしてある。
【0022】
ロボットアーム14は、基板Wを真空吸着する吸盤15を備えている。本実施例では、分断される6枚の単位基板W1を吸着できるように6個の吸盤が設けられているが、一つの大きな吸盤で6枚の単位基板を吸着できるように形成してもよい。
【0023】
ここでテーブル1の第一設定温度T1およびプレート8(すなわち伝熱ロッド6)の第二設定温度T2について説明する。本実施例では、ブレイク対象の基板Wを接触させることで、スクライブラインに沿って、テーブル1の上面(載置面)に接して冷やされた冷却領域と、伝熱ロッド6に接して温められた加熱領域とに、逆向きの熱応力(圧縮応力と引張応力)を発生させてスクライブラインに強い分離力を生じさせることから、第一設定温度T1、第二設定温度T2に大きな温度差を与えれば、より強い分離力を発生させることができる。
しかしながら、液晶パネル等の基板では、基板に設けられた他の材料(回路、接着剤等)によって加熱可能な温度が制限されており、許容温度以下にする必要がある。また、冷却についても結露しない範囲で冷却するのが望ましい。
したがって、加工対象の基板に許容されている温度範囲内で、設定温度T1、T2を設定する。例えば、テーブル1の第一設定温度T1を露点温度以上となる20°Cとし、伝熱ロッド6(およびプレート8)の第二設定温度T2をそれより十分に高温となる110~60°Cの範囲で設定するようにしている。
【0024】
次に、上記のブレイク装置Aによる基板Wの分断動作について説明する。なお、以下の説明ではロボットアーム14により次々搬送されてテーブル1上に載置される各基板Wは、ロボットアーム(または当接部材等を用いた位置決め手段)により常にテーブル上の同じ位置に正確に位置決めされて載置されるものとする。
まず、
図6に示すように、テーブル1上に載置される基板WのスクライブラインSに相対する位置の取付孔5に、予め伝熱ロッド6を嵌め込んでおく(ハッチング部分が伝熱ロッド6を示す)。この操作は、
図4(a)に示すように、テーブル1の上面から直接差し込むことで、
図4(b)に示すように、プレート8のソケット7に取り付けることができる。
【0025】
伝熱ロッド6をテーブル1にセットした後、テーブル1の循環通路2に冷媒を流してテーブル1を第一設定温度T1(冷媒温度)に冷却すると共に、電熱ヒータ12に通電してプレート8(および伝熱ロッド6)を第二設定温度T2に加熱する。
【0026】
次いで、
図1(a)に示すように、ロボットアーム14で吸着保持した基板Wをテーブル1の上方の定位置に搬送し、
図1(b)にようにロボットアーム14を下降させて基板Wの下面をテーブル1の上面(載置面)に接触させる。接触させる時間は基板の厚みによって異なるが、一般的な基板の場合は2秒程度で十分である。この接触により、基板WのスクライブラインSに沿って相対する位置に伝熱ロッド6が並べて取り付けられているので、スクライブラインSにおける伝熱ロッド6に接触した領域が部分加熱され、スクライブラインSにおけるテーブル面1に接触した領域が部分冷却される。
【0027】
このように基板Wとテーブル1との接触、および、基板Wと伝熱ロッド6との接触によって、基板Wには、
図7に示すように伝熱ロッド6に接触した加熱領域と、伝熱ロッド6の間でテーブル1に接触した冷却領域とがスクライブラインSに沿って交互に隣接して形成される。
これにより、加熱領域では熱膨張によりスクライブラインSに圧縮応力が発生し、冷却領域では熱収縮により引張応力が発生する。この圧縮応力並びに引張応力が互いに隣接する複数箇所で同時に生じることにより、スクライブラインSの亀裂が基板厚み方向に浸透し、その結果、スクライブラインSが完全分断される。これにより基板Wが6枚の単位基板W1と端材Eとに分断される。
【0028】
分断された単位基板W1はロボットアーム14により搬出されて次工程に送られる。残った端材Eは、次のステップで同じロボットアーム14により、或いは図示しない別の端材除去手段(例えば端材を吸引するクリーナ)等によりテーブル1から取り除かれる。
【0029】
このように分断すべきスクライブラインSの形状に沿って伝熱ロッド6をテーブル1の取付孔5に嵌め込んでおくことにより、任意の外形輪郭線を持つ単位基板を熱応力を作用させてブレイクすることができる。例えば
図8に示すように、辺の一部をコの字状に窪ませた輪郭線を持つ単位基板や、
図9に示すような円形の単位基板をスクライブラインSに沿って分断して取り出すこともできる。
【0030】
以上のように本発明の基板ブレイク装置では、基板のスクライブラインに沿った位置に相対する取付孔に伝熱ロッドを嵌め込むことにより、複数のスクライブラインを同時に分断したり、複数の単位基板を同時に切りだしたりすることが可能となる。これにより、基板分断に要する時間を短縮して作業効率を高めることができる。また、伝熱ロッドの取付位置を選択することで、曲線や屈折線などを含む任意形状のスクライブラインを分断したり、円形などの任意の外形輪郭線を持つ単位基板を切り出すことができる。
【0031】
また本発明では、ナイフ状のブレイクバーで基板を撓ませてブレイクするものでないから、ブレイクされた基板分断面に欠け等の欠陥が発生していない高品質の端面を得ることができる。また、基板に面接触による熱伝導で熱応力を与えているので、スチーム等の吹き付けによるブレイクで生じるようなダストの舞い上がりがなく、蒸気で濡れた製品表面へのパーティクルの付着を抑制し、熱損失も小さく抑制することができる。
【0032】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではなく、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
例えば、上記実施例ではテーブル1を冷却し、プレート8を加熱するようにしたが、テーブル1に電熱ヒータを取り付けて加熱し、プレート8を冷却してもよい。また、加熱手段や冷却手段を別の方法に代えてもよい。
また、上記実施例ではテーブル1上に網目状または格子状に多数の取付孔を設けたが、分断すべきスクライブラインS’の形状が常に同じであり変更されることがない場合は、そのスクライブラインS’に沿った位置に相対する位置のみに取付孔を形成し余分な取付孔を設けていない専用テーブルを用いるようにしてもよい。
また、上記実施例では取付孔はすべて円孔としたが、一部または全部を楕円孔や角孔等とするとともに、伝熱ロッドの形状も楕円柱、角柱等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、スクライブラインが形成された基板を、そのスクライブラインに沿ってブレイクする基板ブレイク装置並びに基板ブレイク方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
A ブレイク装置
S スクライブライン
W 基板
W1 単位基板
1 テーブル
2 循環通路(第一温度設定機構)
5 取付穴
6 伝熱ロッド
7 ソケット
8 プレート
12 電熱ヒータ(第二温度設定機構)
14 ロボットアーム(搬送アーム)
15 吸盤