(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】向上した締結力調整システムを備えるパイプカップリング
(51)【国際特許分類】
F16L 21/06 20060101AFI20231225BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F16L21/06
F16L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2021516569
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 GB2019052655
(87)【国際公開番号】W WO2020065274
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-28
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516067612
【氏名又は名称】テイラー ケール (カップリング) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TAYLOR KERR (COUPLINGS) LIMITED
【住所又は居所原語表記】6 Alston Drive Bradwell Abbey Milton Keynes Buckinghamshire MK13 9HA United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ イアン リチャード
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02129953(EP,A1)
【文献】特開昭58-021009(JP,A)
【文献】特開2014-228143(JP,A)
【文献】特表2018-517872(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0451092(KR,Y1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0422113(KR,Y1)
【文献】中国実用新案第201242004(CN,Y)
【文献】韓国登録特許第10-1150212(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0883643(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0511414(KR,B1)
【文献】特開2001-193720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0266618(US,A1)
【文献】登録実用新案第3129459(JP,U)
【文献】特開平05-087282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/06
F16L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の自由端部と第2の自由端部との間に縦方向間隙を有し、パイプの周囲に嵌められる管状ケーシングと、
前記
管状ケーシングを前記パイプの外表面に締め付けるための締結力調整システムであって:
第1の端部と第2の端部とを有し、前記
管状ケーシングを前記パイプの周囲に締め付ける少なくとも1つの締結具;
前記
管状ケーシングの第1の自由端部に結合され、前記各締結具の前記第1の端部と係合するよう構成された第1の構成部材;および
前記
管状ケーシングの前記第2の自由端部に摺動可能に結合され、前記各締結具の前記第2の端部と係合するよう構成された第2の構成部材であって、前記各締結具が前記第2の構成部材との係合から径方向に離脱自在である第1の位置から、前記各締結具の前記第2の構成部材との係合が確保されている第2の位置へ縦方向に摺動可能である前記第2の構成部材
を備える前記
締結力調整システムとを備えるパイプカップリング。
【請求項2】
前記締結力調整システムが、前記
管状ケーシングの前記第2の自由端部に結合され、
一つの横断スロットまたは複数の横断スロットを有する管状部をさらに備え、
前記一つの横断スロットまたは前記複数の横断スロットの各々は締結具を収容するよう構成されており、前記第2の構成部材が、前記管状部内を前記第1の位置から前記第2の位置に摺動するよう構成されている、請求項1に記載のパイプカップリング。
【請求項3】
前記各締結具が、平面座面および凹状座面を有し、前記締結具が前記平面座面と係合し、および、前記凹状座面が前記管状部と係合するよう構成された座金を備える、請求項2に記載のパイプカップリング。
【請求項4】
前記第2の構成部材が:
一つの細長凹部または複数の細長凹部であって、締結具のそれぞれの第2の端部に隣接した一部を通すよう各々が構成された前記
一つの細長凹部または前記複数の細長凹部;および、前記
一つの細長凹部または前記複数の細長凹部
の各々の縁部から縦方向に延在して前記
一つの細長凹部または前記複数の細長凹部
の各々の開放側を部分的に遮蔽している少なくとも1つの対応する突部を備え:
前記第1の位置において、前記
一つの細長凹部または前記複数の細長凹部
の各々の非遮蔽部分は、対応する締結具と実質的に縦方向に位置合わせされており;および、前記第2の位置において、前記
一つの細長凹部または前記複数の細長凹部
の各々の遮蔽部分は、前記対応する締結具と実質的に縦方向に位置合わせされている、請求項1、2または3に記載のパイプカップリング。
【請求項5】
前記第1の構成部材が、前記
管状ケーシングの第1の自由端部に対して、縦軸について回動可能に結合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のパイプカップリング。
【請求項6】
前記第1の構成部材が、第1の管状部と、前記第1の管状部内に設けられた少なくとも1つの筒状部とを備え、前記筒状部の各々は、締結具をそれぞれ受ける少なくとも1つの貫通ネジ孔を備え、前記第1の管状部は少なくとも1つの貫通孔を備え、前記貫通孔は各々ネジ穴のそれぞれに対応する、請求項5に記載のパイプカップリング。
【請求項7】
前記第1の管状部が前記
管状ケーシングの縦方向長さに実質的に相当する長さを有し、前記筒状部の各々の長さの合計は前記第1の管状部の長さ未満である、請求項6に記載のパイプカップリング。
【請求項8】
請求項6または7に記載のパイプカップリングであって、前記締結力調整システムが複数の締結具を備え、前記第1の構成部材が複数の筒状部を備え、各筒状部は各締結具に対
応しているパイプカップリング。
【請求項9】
前記締結力調整システムが、前記第1の位置と第2の位置との間における前記第2の構成部材の縦方向の移動を制限するよう構成された少なくとも1つの止め具を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のパイプカップリング。
【請求項10】
前記止め具が、前記
管状ケーシングに取り付けられたピン、および、前記第2の構成部材中における縦方向に細長い溝であって、前記ピンに対して摺動するよう構成された前記細長い溝を含む、請求項9に記載のパイプカップリング。
【請求項11】
前記第2の構成部材が、前記第2の構成部材が前記第1の位置にあることを使用者に示すよう構成された表示を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のパイプカップリング。
【請求項12】
前記管状ケーシングが、
第1ケーシング部分と
、第2ケーシング部分と、前記第1ケーシング部分と前記第2ケーシング部分を蝶番式に結合するよう構成された蝶番とをさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のパイプカップリング。
【請求項13】
前記
第1ケーシング部分および
前記第2ケーシング部分が各々、複数の組み合わされたループを備え、前記蝶番が、前記組み合わされたループを通して挿入されたピンを備える、請求項12に記載のパイプカップリング。
【請求項14】
前記蝶番をまたぐよう前記
管状ケーシング内に位置された蝶番ブリッジプレートをさらに備える、請求項12または13に記載のパイプカップリング。
【請求項15】
前記蝶番ブリッジプレートが、前記蝶番に隣接して、前記
第1ケーシング部分または前記
第2ケーシング部分の一方に結合されている、請求項14に記載のパイプカップリング。
【請求項16】
前記
管状ケーシング内に位置された管状シーリングガスケットをさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のパイプカップリング。
【請求項17】
請求項16に記載のパイプカップリングであって、請求項12~15のいずれか一項に従属する場合、前記管状シーリングガスケットは、第1の端部および第2の端部、ならびに、前記第1の端部および前記第2の端部の間の縦方向分割部を備え、前記第1の端部は、前記
管状ケーシングの前記第1の自由端部および前記第2の自由端部の一方に隣接して結合している、パイプカップリング。
【請求項18】
前記管状シーリングガスケットの前記第1の端部が、ブリッジプレートに結合されており、前記ブリッジプレートは、前記
管状ケーシングの前記第1の自由端部および前記第2の自由端部の一方に隣接して結合されており、ならびに、前記縦方向間隙をまたぐよう構成されている、請求項17に記載のパイプカップリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のパイプの端部同士を接続するためのパイプカップリングに関する。特に、本発明は、パイプの周囲に嵌める管状ケーシングと、このケーシングをパイプの外表面の周囲に締め付けるための締結力調整システムとを備える補修用パイプカップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなカップリングによる端部が平らであるパイプ同士の接続は、パイプの準備の必要性がなく、従って、溶接、ネジ切り、フランジ成形、溝切りまたは肩付け加工などの他の方法よりもより迅速、かつ、経済的である。パイプカップリングがかなりの油圧に耐えることができることも重要な要求である。
【0003】
例えば、欧州特許出願公開第A-2 129 953号明細書には、ケーシング内に位置され、および、ケーシングの自由端部間の縦方向間隙をまたぐ圧延鋼製のブリッジ構成部材が一体化されたパイプカップリングが記載されている。ブリッジ構成部材はケーシングの中心軸について湾曲されており、かつ、ブリッジ構成部材の端部側周縁部がブリッジ構成部材の一部筒状のウェブ部に向かって内方に直角に折り曲げられて、ケーシングの中心軸に向かって内方に突出するフランジが形成されている。使用において、カップリングが締結力調整手段によりパイプの周囲に締め付けられる場合、ブリッジ構成部材は、ケーシング内に完全に載置されて、ケーシング内に配置されたシーリングガスケットの全周縁に圧力分布が均一に適用されるようにする。加えて、ケーシングは圧延鋼ストリップ製であり、これにより、ケーシングを形成するストリップの両自由端部はそれら自体に重なるよう折り返され、ストリップの周縁位置で溶接されて、縦方向間隙の反対側に沿ってループが形成される。これらのループは、ループに挿入されたピンと、ピンを横断する孔を貫通する締結力調整ボルトと一緒になって、締結力調整手段を構成する。
【0004】
加えて、パイプ補修用クランプが公知である。このようなクランプは、損傷を受けたパイプラインの現場での補修が可能となるよう構成されており、従って、一般に、クランプを装着可能とするための蝶番を備える。度々、このようなクランプは、トレンチなどの小さくて狭い空間内における装着が必要とされる。このような補修用クランプの1種が国際公開第2008/065364 A1号パンフレットに記載されており、ここでは、補修用クランプアセンブリは、蝶番式に相互に結合された2つのクランプ部、ならびに、クランプ部同士をパイプラインの損傷を受けた部分について引き寄せるボルトおよびナットの形態である固定手段を備える。ボルトおよびナットは、クランプ部の各々におけるラグに設けられたスロットと係合する。装着の最中に、このような機構には、装着者に対する重要な難題が存在する。ボルトおよびナットはラグとの係合が困難である可能性があり、クランプをパイプラインの周囲に閉じる際に脱落してしまう可能性がある。加えて、および、特に大径のパイプクランプについては、装着者は:1.クランプ部を一緒に維持してボルトおよびナットの係合を達成とすること;2.ボルトおよびナットをラグと係合したままに維持すること;ならびに、3.ラグと十分に係合するまでナットをボルトに締め付けて、クランプ部同士を維持すると共にボルトおよびナットをラグ中に維持すること、の3つの操作を事実上同時に行う必要性がある。これらの3つの操作を同時に行うことはきわめて困難である。
【0005】
他のこのような補修用クランプは米国特許第4,381,020号明細書に記載されており、ここで、補修用クランプは、可撓性バンドであって、各々がバンドの端部のそれぞれに取り付けられた一対のトラニオンローディングバーを備える締結力調整システムを有する可撓性バンドを備える。トラニオンバーの一方は、T-ボルトを受け、ボルトにナットが着けられた状態で、ボルトがトラニオンバーと係合および脱係合可能であるよう構成されている。トラニオンバーの他方は2つの部品で構成されており、各々の部品は可撓性バンドについて部分的に回動可能であり、これにより、ボルトが回転して間隙から離れ、装着を達成することが可能である。この種の補修用クランプもまた、装着が困難である可能性がある。T-ボルトをトラニオンバースロットに入れるためには、手作業によりクランプの端部同士を近づける必要があり、これにはかなりの力と器用さが必要とされる可能性がある。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0100091 A1号明細書にもまた、締結力調整システムを締め付けるためのナットを部分的にボルトに螺合させた状態で、ボルトの係合および脱係合を達成する締結力調整システムを備えたパイプ補修用クランプが開示されている。この締結力調整システムは、ボルトが貫通して係合を達成するための径方向に突出するスロットを備える楔形の突部を有する。ボルトを受けるための貫通孔がバーに形成されており、このバーが凹状の表面を有し、これが楔部における対応する凸状の表面と係合する。
【0007】
これらの凸状および凹状の表面が作用して、ボルトの脱係合が防止される。上記のパイプクランプと同様に、このクランプもまた、装着にはかなりの力と器用さが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
公知のパイプ補修用クランプに伴うこれらの重要な問題に鑑み、本発明は、好ましくはパイプラインの補修に好適である、装着がより容易となる向上した締結力調整システムを有するパイプクランプまたはカップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば:第1の自由端部と第2の自由端部との間に縦方向間隙を有し、パイプの周囲に嵌められる管状ケーシングと;ケーシングをパイプの外表面に締め付けるための締結力調整システムであって:第1の端部と第2の端部とを有し、ケーシングをパイプの周囲に締め付ける少なくとも1つの締結具;ケーシングの第1の自由端部に結合され、各締結具の第1の端部と係合するよう構成された第1の構成部材;および、ケーシングの第2の自由端部に摺動可能に結合され、各締結具の第2の端部と係合するよう構成された第2の構成部材であって、各締結具が前記第2の構成部材との係合から径方向に離脱自在である第1の位置から、各締結具の前記第2の構成部材との係合が確保されている第2の位置へ縦方向に摺動可能である第2の構成部材を備えるシステムとを備えるパイプカップリングが提供されている。
【0010】
固定されていない第1の位置から固定されている第2の位置へ摺動可能な第2の構成部材を備える締結力調整システムを提供することで、より容易に係合される締結力調整システムが有利に実現される。これにより、公知のパイプカップリングシステムよりも容易に装着されるパイプカップリングが実現されている。
【0011】
好ましくは、締結力調整システムは、ケーシングの第2の自由端部に結合され、少なくとも1つの横断スロットを有する管状部をさらに備え、各スロットは締結具をそれぞれ収容するよう構成されており、第2の構成部材は、前記管状部内を第1の位置から第2の位置に摺動するよう構成されている。本実施形態において、第2の構成部材は、鋼、ステンレス鋼、または、ナイロン(ポリアミド)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)もしくはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのプラスチック製であり得る。比較的低い摩擦係数を有するいずれかの他の好適なプラスチックが好適であろう。管状部はステンレス鋼などの金属製であり得る。
【0012】
有利には、このような管状部を提供することで、第2の構成部材が、より容易に、ケーシングと相対的に摺動可能となる。加えて、第2の構成部材が管状部内において摺動する実施形態においては、各締結具は、管状部において作動するよう構成されており、これに、第2の構成部材が軽量、低摩擦材料で形成可能とされている。
【0013】
各締結具は、平面座面および凹状座面を有し、締結具が平面座面と係合し、および、凹状座面が管状部と係合するよう構成された座金を備えることが好ましい。このように、締結具と管状部との間における力がより大きな表面積で伝達され、圧力が低減され得る。締結具に隣接する座金の内表面は環状凹部を備えていてもよく、この環状凹部は、締結具において座金を保持するよう構成された弾性保持構成部材を収容する。有利には、弾性保持構成部材は、装着の最中における締結具に沿った座金の摺動を防止する。このように、座金は、締結具において、締結具の頭部に隣接してその位置が維持され、これにより、締結具が管状部の横断スロット内に位置されると、管状部と係合する位置とされる。
【0014】
第2の構成部材は:少なくとも1つの細長凹部であって、締結具のそれぞれの第2の端部に隣接した一部を通すよう各々が構成された凹部;および、凹部の縁部から縦方向に延在して凹部の開放側を部分的に遮蔽している少なくとも1つの対応する突部を備えていることが好ましい。第1の位置において、凹部の非遮蔽部分は、対応する締結具と実質的に縦方向に位置合わせされており、および、第2の位置において、凹部の遮蔽部分は、対応する締結具と実質的に縦方向に位置合わせされている。このように、突部を締結具と位置合わせし、すなわち、締結具を第2の構成部材中に留めることにより、締結具の位置を固定し、締結具が確保された係合状態で維持される。
【0015】
細長凹部の各々は、締結具の直径の約2倍~締結具の直径の約4倍の縦方向長さを有し得る。好ましくは、細長凹部の縦方向長さは、締結具の直径の約2倍~締結具の直径の約3倍である。より好ましくは、細長凹部の縦方向長さは、締結具の直径の約2.25倍~締結具の直径の約2.75倍である。
【0016】
代替的実施形態において、締結力調整システムが、ケーシングの第2の自由端部に結合され、少なくとも1つの横断スロットを有する管状部をさらに備え、各スロットは締結具をそれぞれ収容するよう構成されており、第2の構成部材は前記管状部内を第1の位置から第2の位置に摺動するよう構成されている場合、第2の構成部材は細長ロッドまたは細長プレートであり得る。この代替的実施形態において、管状部は、第2の構成部材が第1の位置から第2の位置に移動する際に第2の構成部材をガイドするよう構成されたガイド構成部材を備えていてもよい。ガイド構成部材は、管状部の一端の中において嵌まるよう構成されているプラグであって、第2の構成部材を受けるアパーチャを備えるプラグであり得る。第2の構成部材が細長プレートである場合、プレートは、実質的に平坦であり得るか、または、代わりに弧状であり得る。第2の構成部材が細長ロッドである場合には、ロッドは、円形であり得るか、または、いずれかの他の好適な断面輪郭を有し得る。
【0017】
好ましくは、第1の構成部材は、ケーシングの第1の自由端部に対して、縦軸について回動可能に結合されている。第1の構成部材は、第1の管状部と、第1の管状部内に設けられた少なくとも1つの筒状部とを備えていてもよい。好ましくは、筒状部の各々は、それぞれ締結具の第1の端部を受ける少なくとも1つの貫通ネジ孔を備え、第1の管状部は少なくとも1つの貫通孔を備え、貫通孔は各々ネジ穴のそれぞれに対応する。筒状部は各々、ステンレス鋼などの金属製であり得る。あるいは、筒状部は各々、それぞれの締結具の第1の端部を受ける少なくとも1つの係止ナットを備えていてもよい。筒状部が、ナイロン(ポリアミド)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)もしくはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのプラスチック製である場合には、ナットは各々、各筒状部中にオーバーモールドされ得る。第1の管状部はケーシングの縦方向長さに実質的に相当する長さを有し得、筒状部の各々の長さの合計は第1の管状部の長さ未満であり得る。好ましくは、締結力調整システムは複数の締結具を備え、ここで、第1の構成部材が複数の筒状部を備え、各筒状部は各締結具に対応する。
【0018】
有利には、各締結具の第1の端部を受けるよう構成されたネジ穴を形成することにより、パイプに装着する前に、締結具を締結力調整システムに事前に装着することが可能となる。加えて、装着者が各締結具が第2の構成部材と確実に係合可能であるようその位置を調整しなくても、締結力調整システムにおいて、装着プロセスの最中に締結具の位置が維持されることとなる。これにより、効率的で容易な装着プロセスが実現される。
【0019】
締結力調整システムは、第1の位置と第2の位置との間における第2の構成部材の縦方向の移動を制限するよう構成された少なくとも1つの止め具をさらに備えていてもよい。この止め具は、ケーシングに取り付けられたピン、および、第2の構成部材中における縦方向に細長い溝であって、ピンに対して摺動するよう構成された細長い溝を含み得る。あるいは、止め具は、ケーシングの軸方向端部のそれぞれから伸びて第2の構成部材の移動を制限する第1のタブおよび第2のタブを含み得る。
【0020】
有利には、止め具により、装着プロセスの最中に第2の構成部材を正確かつ容易に位置させることが可能となる。装着者は第2の構成部材が止め具と係合するまで第1の位置に向かう方向に第2の構成部材を押すのみでよく、これにより、締結具を第2の構成部材と係合させることが可能となる。締結具が係合したら、装着者は第2の構成部材が止め具と係合するまで第2の位置に向かう反対方向に第2の構成部材を押し、これにより、締結具が係合から離脱することを防止し、すなわち、これらの位置が固定される。
【0021】
第2の構成部材は、第2の構成部材が第1の位置にあることを使用者に示すよう構成された表示を備えていてもよい。あるいは、または、加えて、第2の構成部材は、第2の構成部材が第2の位置にあることを使用者に示すよう構成された表示を備えていてもよい。この表示は、第2の構成部材の一方の端部または両方の端部に形成され得る。この表示は、赤色または緑色などの色であり得る。一実施形態において、第2の構成部材が第1の位置にある場合、この表示を有する第2の構成部材の端部はケーシングの軸方向端部から突出するよう構成されている。本実施形態において、この表示は赤色であり得る。代替的実施形態において、第2の構成部材が第2の位置にある場合、この表示を有する第2の構成部材の端部はケーシングの軸方向端部から突出するよう構成されている。本実施形態において、この表示は緑色であり得る。
【0022】
一実施形態において、第2の構成部材は、ケーシングの縦方向長さと実質的に等しい縦方向長さを有する。従って、第2の位置において、第2の構成部材の両端部は、ケーシングの軸方向端部と実質的に位置合わせされるよう構成されていてもよい。あるいは、第1の位置において、第2の構成部材の両端部は、ケーシングの軸方向端部と実質的に位置合わせされるよう構成されていてもよい。
【0023】
管状ケーシングは、典型的には、ストリップの自由端部の間においてケーシングの縦方向に延びる間隙を有する管に形成された金属または他の材料のストリップにより形成され、ここで、ストリップの自由端部は締結力調整手段によって相互に接合される。一例においては、管状ケーシングを形成するストリップの自由端部は、それら自体に重なるよう折り返され、縦方向間隙と反対側の縁部に沿って溶接されてループが形成される。第1の構成部材および第2の構成部材はループの中に挿入される。締結具のための間隙が設けられるようループにスロットが切られる。代替的実施形態においては、これらのループは金属または他の材料の別個のストリップから形成され、これらの別個のストリップの自由端部の両方がケーシングに溶接されてループが形成される。この代替的実施形態において、別個のストリップは、ケーシングを形成するために、ストリップにおける対応するスロットと係合するよう構成された位置決めタブを備えていてもよい。位置決めタブにより、別個のストリップを溶接のために正確に位置決めすることが可能となる。好ましくは、パイプカップリングは、管状ケーシングの第1の自由端部と第2の自由端部との間の縦方向間隙をまたぐよう、ケーシング内に位置されるブリッジプレートをさらに備える。このブリッジプレートは、管状ケーシングの第1の自由端部または第2の自由端部の一方と結合していることが好ましい。このブリッジプレートは、管状ケーシングの第1の自由端部または第2の自由端部の一方に、溶接、接着、または、はんだ付けされていればよい。ブリッジプレートを管状ケーシングに結合させることにより、パイプカップリングをより容易に装着させることが可能となる。ブリッジプレートは、典型的には、ケーシングと同様の曲率半径を有する一部筒状の形状に形成されることとなる。縦方向間隙のいずれかの側におけるケーシングはブリッジプレートと重なっている。
【0024】
このケーシングは、ウェブ部の軸方向端部から径方向内方に突出して環状のチャネルを画定するフランジを備えるウェブ部を有する全体がU字形断面のものであり得る。
【0025】
パイプカップリングは、内方に突出する把持歯を有し、管状ケーシング中に位置された少なくとも1つの弧状の把持リングをさらに備えていてもよい。好ましくは、把持リングは、完全なリングを形成する。好ましい実施形態においては、重畳して完全なリングを形成する複数の弧状セグメントが設けられる。好ましくは、弧状把持リングの各々は円錐台形状である。
【0026】
把持リングが備えられた実施形態において、このリングは、2つのセグメントで形成されていることが好ましい。これらのセグメントは、把持リングの軸で180°の弧に対応する主セグメントと、把持リングの軸で180°未満の弧に対応する副セグメントを備える。このケーシングは縦方向間隙を伴って形成されており、締結力調整手段は締め付けられた際に縦方向間隙を狭めるよう配置されており、副セグメントは縦方向間隙に隣接して位置されており、および、主セグメントはケーシングの縦方向間隙から離間した側に位置されており、これらの主および副セグメントは、間隙のいずれかの側で互いに重なっている。
【0027】
管状ケーシングは、2つの部分と、これらの2つの部分同士を蝶番式に結合するよう構成された蝶番とをさらに備えていても良い。このように、パイプカップリングは、補修用カップリングとしての使用に好適である。好ましくは、ケーシングの第1部分およびケーシングの第2部分は各々、複数のループであって、組み合されるループを備え、蝶番が、組み合いループを通して挿入されたピンを備える。これらのループは、ケーシングの形成に用いられる金属または他の好適な材料のストリップの指状部分から形成され得、これらの指状部分は、それら自体に重なるよう折り返され、溶接されてループが形成される。ケーシングの各部分における軸方向においてもっとも外側のループは、ループ中に蝶番ピンを確保するために内方に折り曲げ可能とされたタブを備えていてもよい。
【0028】
パイプカップリングが蝶番を備える場合、パイプカップリングは、蝶番をまたぐようケーシング内に位置された蝶番ブリッジプレートをさらに備えていてもよい。蝶番ブリッジプレートは、蝶番に隣接して、ケーシングの第1部分またはケーシングの第2部分の一方に接続されていてもよい。蝶番ブリッジプレートは、スポット溶接などの溶接、はんだ付け、接着剤、または、接続するいずれかの他の好適な手段により接続され得る。蝶番ブリッジプレートは、典型的には、ケーシングと同様の曲率半径を有する一部筒状形状に形成されることとなる。蝶番のいずれかの側におけるケーシングはブリッジプレートと重なっている。
【0029】
好ましくは、パイプカップリングは、ケーシング内に位置された管状シーリングガスケットをさらに備える。蝶番を介して一緒とされている2つの部分からケーシングが形成されている実施形態において、管状シーリングガスケットは、第1の端部および第2の端部、ならびに、第1の端部および第2の端部の間の縦方向分割部を備えていることが好ましい。好ましくは、第1の端部は、ケーシングの第1の自由端部および第2の自由端部の一方に隣接して結合されている。管状シーリングガスケットは、ブリッジプレートに結合されており、ブリッジプレートは、ケーシングの第1の自由端部および第2の自由端部の一方に隣接して結合されており、ならびに、縦方向間隙をまたぐよう構成されていてもよい。このように、このガスケットは、装着の最中、ケーシング内の位置に有利に保持される。この管状シーリングガスケットは、接着剤を用いて、または、溶接によりブリッジプレートに取り付けることが可能である。ブリッジプレートは、ガスケットに取り付けられる領域に複数の孔を備えていてもよく、ガスケットは、少なくとも複数の孔の中に塗布した接着剤によって取り付けられる。接着剤は、ブリッジプレートにおけるガスケットに隣接する面と反対側の面に塗布される液体ゴムであり得る。
【0030】
管状シーリングガスケットと一体化されたブリッジプレートが、摺動可能にケーシングに取り付けられてもよい。ブリッジプレートの軸方向端部の各々は、ケーシングの軸方向端部に隣接する対応する細長スロットと係合するよう構成されたタブを備えていてもよい。有利には、ブリッジプレートをケーシングと相対的に摺動可能とすることにより、パイプカップリングとパイプとの間により強固な結合を実現することが可能となる。これは、ガスケットがケーシングと相対的に移動可能とされており、従って、より容易に圧縮されて、ガスケットとパイプとの間にシールを形成することが可能であるためである。
【0031】
あるいは、この管状ケーシングは、第1の自由端部と第2の自由端部との間に縦方向間隙を有すると共に、第3の自由端部と第4の自由端部との間に縦方向間隙を有する2つの部分をさらに備えていてもよい。ケーシングをパイプの外表面の周囲に締め付ける本明細書に記載のさらなる締結力調整システムは、第3の自由端部と第4の自由端部との間に設けられる。有利には、このようなカップリングは「広範囲」として知られている高い許容範囲を実現して、直径の均一性が低いパイプ同士の結合を可能とする。この代替例においては、締結具は、パイプカップリングを嵌めるために利用できる空間に応じていずれの方向を向いていてもよい。
【0032】
好ましくは、締結力調整システムは複数の締結具を備えている。この締結力調整システムは、用いられる締結具のタイプおよびパイプカップリングのサイズに応じて、2、3、4つまたはそれ以上の締結具を備えていてもよい。理解されるであろうとおり、パイプカップリングが複数の締結具を備える場合、締結具と係合するよう構成されたコンポーネントおよび機構が対応する数で設けられる。
【0033】
本発明のパイプカップリングは、ガラス繊維、コンクリート、および、特にこれらに限定されないが、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を含む多様なプラスチック材料製のパイプのカップリングにおける使用に好適である。本発明のパイプカップリングはまた、鋼、ステンレス鋼、ならびに、鋳鉄およびダクタイル鋳鉄製パイプなどの金属パイプのカップリングにおける使用に好適である。
【0034】
パイプカップリングは、約21mm~約4500mmの外形を有するいずれかのパイプに好適であり得る。本発明のパイプカップリングはまた、典型的には、例えば、BS EN 877:1999に準拠したパイプ許容性を受け入れるものである。
【0035】
本明細書において用いられるところ、「軸方向」という用語はパイプの縦軸により定義される方向を指すために用いられ、および、「径方向」という用語はパイプの半径により定義される方向を指すために用いられる。「基部の」および「遠位の」という用語は、パイプカップリングのコンポーネントまたはコンポーネントの部分の相対的な位置を記載するために用いられる。従って、「基部の」コンポーネントまたはコンポーネントの部分は、「遠位の」コンポーネントまたはコンポーネントの部分よりも、他のコンポーネントに対する結合点に対して近い。
【0036】
以下の明細書において、「軸方向」という用語は、パイプの縦軸により定義される方向を指すために用いられ、および、「径方向」という用語は、パイプの半径により定義される方向を指すために用いられる。
【0037】
本明細書において用いられるところ、「締結具」という用語は、圧縮力を加えて第1の回動構成部材と第2の回動構成部材と同士を引き寄せるためのいずれかの好適な手段を指し、ネジ、標準的なナットもしくはクリンチナットと共に用いられるボルト、リベット、クランプまたはラッチが挙げられる。
【0038】
本開示のさらなる態様によれば、締結具と非平面との間において用いられる座金が提供されており、座金は:締結具を受けるための貫通孔を有する本体であって、締結具と係合するよう構成された第1の平面と、前記平面の反対側の非平面とを備える本体;および、貫通孔の表面における環状凹部に設けられる弾性構成部材を備える。
【0039】
非平面を有する座金を設けることで、座金を、対応する非平面の外表面を有するコンポーネントとの係合に用いることが可能となる。弾性構成部材は、有利なことに、締結具を装着する前において、締結具における座金の位置を確実に維持する。従って、このような座金は、装着が複雑で、困難であり、および/または、空間が限定されている環境における使用に特に好適である。特に好適な一つの使用は、補修用カップリングが、典型的には、小さなトレンチの中において既存のパイプの周囲に装着される、パイプ補修用カップリングに係るものである。
【0040】
弾性構成部材はO-リングであり得る。O-リングは断面円形となる輪郭を有していてもよい。あるいは、O-リングは、正方形、矩形または十字形断面の輪郭を有していてもよい。O-リングは、EPDMゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、または、他のこのような材料から形成され得る。
【0041】
座金の非平面は湾曲面であることが好ましい。好ましくは、湾曲面は実質的に一定の半径を有する。非平面が実質的に一定の半径を有する湾曲面である場合、曲面は好ましくは円を構成する弧であり、この弧は、180度未満、より好ましくは約90度~約150度の角度に対応することが好ましい。
【0042】
座金は、断面円形の輪郭を有することが好ましい。あるいは、座金は、用途に応じていずれかの断面輪郭を有していればよい。例えば、座金は断面正方形となる輪郭を有していてもよい。
【0043】
本明細書において用いられるところ、「好ましくは」、「~され得る」、および、「任意選択により」といった用語は、必須ではないが、特許請求されている主題と組み合わされて本発明の種々の実施形態を構成し得る本発明の特徴を指す。
【0044】
本発明の一態様におけるいずれかの特徴は、いずれかの適切な組み合わせで本発明の他の態様に得され得る。特に、方法の態様は装置の態様に適用され得、逆もまた同様である。さらに、一態様におけるいずれかの、いくつかの、および/または、すべての特徴は、いずれかの他の態様におけるいずれかの、いくつかの、および/または、すべての特徴に、いずれかの適切な組み合わせで適用可能である。
【0045】
本発明のいずれかの態様において記載および定義されている種々の特徴の特定の組み合わせは、独立して実現され、および/または、提供され、および/または、使用されることが可能であることもまた理解されるべきである。
【0046】
本発明はさらに、以下の添付の図面を参照して、単なる一例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、本発明に係るパイプカップリングの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係るパイプカップリングの分解組立図を示す。
【
図3(a)】
図3(a)は、
図1および2に示すパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第2の構成部材を示す。
【
図3(b)】
図3(b)は、
図1および2に示すパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第2の構成部材を示す。
【
図3(c)】
図3(c)は、
図1および2に示すパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第2の構成部材を示す。
【
図4(a)】
図4(a)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの管状部を示す。
【
図4(b)】
図4(b)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの管状部を示す。
【
図4(c)】
図4(c)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの管状部を示す。
【
図5(a)】
図5(a)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第1の構成部材の代替的コンポーネントを示す。
【
図5(b)】
図5(b)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第1の構成部材の代替的コンポーネントを示す。
【
図5(c)】
図5(c)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第1の構成部材の代替的コンポーネントを示す。
【
図5(d)】
図5(d)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第1の構成部材の代替的コンポーネントを示す。
【
図5(e)】
図5(e)は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの第1の構成部材の代替的コンポーネントを示す。
【
図6(a)】
図6(a)は、締結力調整システムの第2の構成部材の第1の構成および第2の構成を示す。
【
図6(b)】
図6(b)は、締結力調整システムの第2の構成部材の第1の構成および第2の構成を示す。
【
図7】
図7は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムの代替的な第2の構成部材を示す。
【
図8】
図8は、
図1および2に示されているパイプカップリングにおいて用いられる締結力調整システムのさらなる代替的な第2の構成部材を示す。
【
図9(a)】
図9(a)は、本開示の一態様に係る座金を示す。
【
図9(b)】
図9(b)は、本開示の一態様に係る座金を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、補修用カップリングとしての使用に好適であるパイプカップリング100を示す。パイプカップリングは、パイプの周囲に嵌められる管状ケーシング102、および、パイプの外表面(図示せず)の周りにケーシング102を締め付けるための締結力調整システム104を含む。管状ケーシングは第1の自由端部と第2の自由端部との間に縦方向間隙を有し、締結力調整システム104は、これらの自由端部を相互に近づくように引き寄せることによりケーシングを締め付けるよう構成されている。ガスケット105がケーシング102中に設けられて、パイプにシールが形成されている。
【0049】
この例において、管状ケーシング102は、蝶番110によって一緒に蝶番式に結合されている2つの部分106および108から形成されている。しかしながら、認識されるであろうとおり、ケーシング102は、単一のストリップからなる材料で形成されていてもよい。
【0050】
締結力調整システム104は、パイプの周囲にケーシングを締め付けるための3つの締結具112,114,116を備えている。設けられる締結具の数はパイプカップリング全体の寸法に応じることとなり、従って、2~6つまたはそれ以上と様々であり得る。締結力調整システムはまた、ケーシングの第1の自由端部に結合された第1の構成部材118と、ケーシングの第2の自由端部に結合された第2の構成部材120とを備える。第2の構成部材120は、管状部122内を摺動可能とされている。ケーシングを形成する材料のストリップの自由端部はそれぞれ折り返されて溶接されて、第1の構成部材および第2の構成部材を確保するためのループ124,126を形成している。ループには、締結具のための間隙としてスロットが設けられている。
【0051】
この例における締結具は、第1の構成部材118のネジ穴に螺合するボルトである。各締結具の頭部側端部には、締結具の頭部と係合する平面座面と、管状部122と係合するよう構成された弧状の非平面座面とを有する鞍の形態を有する座金128,130,132が設けられている。
【0052】
図2は、
図1に示されているパイプカップリングの変形例の分解組立図を示す。パイプカップリング200は、パイプカップリング100に設けられているものと同じ締結力調整システム104を備えるが、ケーシングが異なっている。
【0053】
パイプカップリング200のケーシング202はまた、2つの部分204および206を備える。この変形例において、ケーシングは、パイプカップリング100に係るもののような一体化されたループ部を有さず、別々のループ部208および210を有する。ループ部208および210は、各ケーシング部分204および206の縁部のそれぞれに沿って溶接されている。これにより、対応する凹部216および218と係合するよう構成された凸部212および214をケーシング部分の自由端部に設けることが可能となる。これらの凸部および凹部は必須ではなく、ケーシング102には設けられていないことが理解されるであろう。
【0054】
パイプカップリング100と同様に、上記の通り、パイプカップリング200はまた、ガスケット105を備える。ガスケットには、ケーシングの自由端部間の縦方向間隙をまたぐよう構成されたブリッジプレート220が取り付けられている。同様のブリッジプレートがパイプカップリング100に設けられているが、図示はされていない。ガスケットは縦方向分割部222を有しており、これにより、カップリングを開いて、現場でパイプに装着することが可能である。ブリッジプレート220は、縦方向分割部に隣接するガスケット105の一方の端部に、接着剤、溶接等を用いて取り付けられる。ガスケット105とブリッジプレート220との強固な接着を実現するために、穿孔224がブリッジプレート220に形成されている。ブリッジプレート220の軸方向端部の各々には、ケーシングの軸方向端部に隣接する対応する細長スロット(図示せず)と係合するよう構成されたタブ226が設けられている。このタブは細長スロット内を摺動自在とされている。
【0055】
また、パイプカップリング100と同様に、上記の通り、パイプカップリング200は、ケーシング部分204および206同士を蝶番式に結合する蝶番110を備える。図示のとおり、蝶番は、ケーシング部分204および206の指状部分を折り返してループ228,230を形成することにより形成されており;一旦折り返された指状部分の端部がそれぞれのケーシング部分に溶接されている。ループは、これらが相互に組み合わされ、蝶番ピン232がループ中に挿入可能であり、ケーシング部分同士が蝶番式に結合されるように形成されている。タブ234はループ228,230の軸方向端部に設けられており、蝶番ピン232が挿入されたら内側に折り曲げられて蝶番ピン232をループ中に確保する。蝶番ブリッジプレート236がケーシング中において蝶番に隣接して設けられて、ガスケット105を支持している。蝶番ブリッジプレート236は、スポット溶接等によってケーシング部分204または206の一方に取り付けられている。
【0056】
上面図である
図3(a)、側面図である
図3(b)および斜視図である
図3(c)は、第2の構成部材120をさらに詳細に示す。図示されているとおり、第2の構成部材120は、第2の構成部材120の縦軸に沿って延在する3本の細長凹部300,302,304を有する。細長凹部は各々、凹部の一方の端部から延在する対応する突部306,308,310を備える。これらの突部は部分的に凹部を遮蔽している。凹部および突部は、締結具が凹部の非遮蔽部分、次いで、凹部の遮蔽部分に貫通可能とされる大きさを有する。第2の構成部材は、ナイロン、ABSもしくはPEEKなどの好適なプラスチック製、または、ステンレス鋼などの金属製であり得る。
【0057】
上面図である
図4(a)、側面図である
図4(b)、および、斜視図である
図4(c)は、管状部122をさらに詳細に示す。図示のとおり、管状部122は3つの横断スロット412,414,416を備える。
図1に示すとおり、これらの横断スロットは締結具を通すよう設けられている。管状部122はステンレス鋼などの金属製であり得る。
【0058】
図5(a)は、第1の構成部材118の一部の側面図を示す。この図示されている部分は、締結具をそれぞれ通すための貫通孔500,502,504を有する中空筒状の管から形成されている。第1の構成部材118は、ループ部124中において構成部材の縦軸に沿って回動可能に構成されている。
【0059】
図5(b)、5(c)、5(d)および5(e)は、第1の構成部材のさらなる部分に係る代替を示し、これらはすべて、
図5(a)に示されている部分中に確保されるよう構成されたインサートである。
図5(b)は3つのインサート506,508,510を示し、インサートは各々、締結具のそれぞれを通すためのネジ穴512,514,516を有する。インサート506,508,510は、ステンレス鋼などの金属製であり得る。
図5(c)は、各々が締結具のそれぞれを通す3つのネジ穴520,522,524を有する代替的なインサート518を示す。インサート518は、ステンレス鋼などの金属製であり得る。
図5(d)および
図5(e)は、さらなる代替的なインサート526を示す(
図5(e)は、
図5(d)に示されているインサート526の断面図である)。インサート526は、各々が締結具のそれぞれを受ける3つの係止ナット528,530,532を備える。インサート526の本体は、ナットをオーバーモールドしてインサートを形成するために好適なプラスチックから形成されている。
【0060】
ここで、パイプカップリング100,200および締結力調整システム104の操作を、
図6(a)および
図6(b)を参照して説明する。第2の構成部材120は、管状部122中において、第1の位置(
図6(a)に図示)から第2の位置(
図6(b)に図示)に摺動可能とされている。第2の構成部材120の過度な摺動を防ぐために、溝600が設けられている。ピンまたはネジ等がループ部126の対応する位置に設けられて、溝600がピンに対して摺動するよう構成されている。第1の位置および第2の位置において、ピンは溝600のそれぞれの端部に当接する。
【0061】
図6(a)に示されている第1の位置において、凹部300,302,304の非遮蔽部分は、管状部122における横断スロット412,414,416と位置合わせされている。この位置合わせにより、締結具112,114,116を径方向内側に動かして第2の構成部材と係合させることが可能とされている。ここで理解されることとなるとおり、締結力調整システムにより、内部にパイプが既に設けられているトレンチの内部などの狭い空間においても、パイプカップリング100,200の装着を容易、かつ、迅速に行うことが可能である。蝶番110によりケーシング部分を離間させることが可能であり、締結具を回してケーシングの自由端部間の間隙が開けられる。次いで、カップリングをパイプの周囲に配置し、カップリング同士を閉じる。次いで、締結具を回転させて、第2の構成部材と係合させる(
図6(a)に図示のとおり)。次いで、
図6(b)に示すとおり第2の構成部材を第2の位置に移動させて締結具を第2の構成部材および管状部内において固定する。これにより、パイプカップリングは半装着配置とされ、あとは締結具を締め付けてパイプの周囲に締め付けることのみが必要とされる。
【0062】
第2の構成部材がどちらの配置にあるかを装着者に示すために、第1の端部602には締結力調整システムが非固定であることを示す赤色の部分などの表示が設けられていてもよく、および/または、第2の端部604には、締結力調整システムが固定されていることを示す緑色の部分などの表示が設けられていてもよい。
【0063】
図7は、締結力調整システム104において用いられる第2の構成部材700の代替的実施形態を示す。図示のとおり、第2の構成部材は、管状部122内において摺動可能な湾曲プレートである。ガイドプラグ702が、湾曲プレート700を受けて案内する軸受面を有する管状部122の端部に設けられている。湾曲プレート700は、ステンレス鋼などの金属製であり得る。ガイドプラグ702は、ナイロン、ABSまたはPEEK材料などの好適なプラスチック製であり得る。対応するガイドプラグが、第2の構成部材700を収容する管状部122の他の端部に設けられていてもよい。他のすべての点において、第2の構成部材700を備える締結力調整システムは、上記のとおり操作される。
【0064】
図8は、締結力調整システム104において用いられる第2の構成部材800のさらなる代替的実施形態を示す。図示のとおり、第2の構成部材は、管状部122内において摺動可能な細長ロッドである。ガイドプラグ802は管状部122の端部に設けられ、細長ロッド800を受けて案内する軸受面を有する。ロッド800は、ステンレス鋼などの金属製であり得る。ガイドプラグ802は、ナイロン、ABSまたはPEEK材料などの好適なプラスチック製であり得る。対応するガイドプラグが、第2の構成部材800を収容する管状部122の他の端部に設けられていてもよい。
【0065】
他のすべての点において、第2の構成部材800を備える締結力調整システムは、上記のとおり操作される。
【0066】
図9(a)および
図9(b)は、座金128,130,132をさらに詳細に示す。図示のとおり、第1の平面座面900および第2の非平面座面902が設けられている。環状凹部904が座金の内面に形成されている。この環状凹部はO-リングを収容するよう構成されている。
【0067】
平面座面900は、締結具の頭部と係合するよう構成されており、非平面座面は管状部122と係合するよう成形および構成されている。このような座金は、管状部122を介して締結具によって締結力調整システム104に印加される力をより一様に分散させる。
【0068】
O-リングは、座金と締結具との間で締りばめが実現されるような大きさとされる。このように、座金は締結具に沿った任意の位置で維持され、また、重力の影響のみによっては移動しない。従って、装着前においては、装着者は、座金を締結具の頭部に隣接する位置に移動させることができ、締結具が第2の構成部材120と係合可能となる前に座金の位置を変更する必要なく上記の装着を行うことが可能である。これにより装着プロセスが大きく簡素化される。