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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】グリセリン分散体及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20231225BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 3/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/04
A61Q1/00
A61Q3/00
A61Q5/00
A61Q19/00
A61Q13/00
A61Q15/00
A61Q17/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021558333
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042243
(87)【国際公開番号】W WO2021100600
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019210425
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391024700
【氏名又は名称】三好化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸夫
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168141(JP,A)
【文献】特開2017-226610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体を基体とし、該無機粉体を有機表面処理剤で被覆することによって、疎水性を付与した疎水化無機粉体と、ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤と、グリセリンとを含有し、
前記ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤におけるアルキル基の炭素数が10~14であり、
前記疎水化無機粉体の含有量が50重量%以上であり、
流動性を有する、
グリセリン分散体。
【請求項2】
前記有機表面処理剤がシリコーン化合物、アルキルシラン、アルキルチタネート、アシル化アミノ酸、脂肪酸、レシチン、エステル油、アクリルポリマー、ウレタンポリマーから選ばれる1種以上の化合物である請求項1に記載のグリセリン分散体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグリセリン分散体を水層成分として配合した化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリン分散体及び化粧料に関する。特に、疎水化無機粉体と、ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤と、グリセリンとを含有するグリセリン分散体、及び当該グリセリン分散体を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄などの無機粉体を基材とした着色顔料や紫外線散乱剤が配合されるが、無機粉体そのものでは強い凝集性を示し、粉っぽい感触や皮膚に対する物理的な刺激を有し、さらに肌上でのすべり性や肌への付着性や密着性も悪い。これらを改善する目的で、化粧料に配合される無機粉体には種々の有機化合物による疎水化表面処理が施され、疎水化無機粉体として配合される。
【0003】
また、近年、水と油の乳化系化粧料では通常油層に疎水化無機粉体を配合しているが、化粧料の効果をより発揮するため、または新しい機能を追加するために水層へも疎水化無機粉体を配合したい要求が多い。この要求を達成するため、疎水化処理されていない無機粉体を水やポリオールへ分散した組成物や疎水化処理した無機粉体を50重量%以上の高濃度に配合した分散組成物が提案されている。疎水化処理されていない無機顔料は水と接触すると金属イオンを放出するので分散工程中で粉体粒子が凝集し分散物の増粘現象が発現して均一な分散組成物を得るのが難しい。また分散後の組成物の経時安定性にも影響を及ぼし経時での安定化も困難である。一方、疎水化処理した無機粉体を水やポリオールに分散するときは粉体粒子表面が親油性のため水との親和性が悪く親水性の界面活性剤で親油性粒子を濡らして分散組成物とするものの溶媒と無機粉体の比重差により経時で沈降し安定性を得るのは難しいのが現状である。ポリオールへの分散組成物としては1,3-ブチレングリコールを分散媒とするものが開示されているが1,3-ブチレングリコールは防腐剤としての機能があり皮膚刺激性や眼刺激性の観点で化粧料への配合量には自主的な制限がある。グリセリンはポリオールの中でも安全性が高く高保湿性を有するためリーブオン化粧品への適用はより好ましい。水を配合しないグリセリンのみを分散媒とする高濃度に疎水化無機粉体を含有した経時安定性に優れた流動する分散組成物は見当たらない。言い換えると疎水化無機粉体の分散性を高める目的、及び分散状態での経時安定性を高める目的で、化粧料には非イオン性界面活性剤及び多価アルコールが配合される。
【0004】
例えば、特許文献1~3には、疎水化無機粉体、非イオン性界面活性剤及び多価アルコール(例えば、1,3-ブチレングリコール)を含む液状分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-137252号公報
【文献】特開2016-108317号公報
【文献】特開2017-210460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明の観点からなされたものである。なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【0007】
特許文献1~3の液状分散体における疎水化無機粉体の分散性や貯蔵安定性は未だ十分ではなく、疎水化無機粉体の有する発色性や透明性、紫外線遮蔽能等の特性向上には解決すべき問題点がある。すなわち、本発明は、疎水化無機粉体の分散性や貯蔵安定性が改善された分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、無機粉体を基体とし、該無機粉体を有機表面処理剤で被覆することによって、疎水性を付与した疎水化無機粉体と、ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤と、グリセリンとを含有するグリセリン分散体が提供される。
【0009】
第1の視点において、ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤におけるアルキル基の炭素数が10~14であることが好ましい。
【0010】
第1の視点において、有機表面処理剤がシリコーン化合物、アルキルシラン、アルキルチタネート、アシル化アミノ酸、脂肪酸、レシチン、エステル油、アクリルポリマー、ウレタンポリマーから選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0011】
第1の視点において、疎水化無機粉体の含有量が50重量%以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の視点によれば、本発明のグリセリン分散体を水層成分として配合した化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各視点によれば、疎水化無機粉体の分散性や貯蔵安定性が改善されたグリセリン分散体及び当該グリセリン分散体を含有する化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本願で使用する用語について説明する。
【0015】
[疎水化無機粉体:成分(A)]
疎水化無機粉体とは、無機粉体を基体とし、当該無機粉体を有機表面処理剤で被覆することによって、疎水性を付与した粉体である。疎水性の評価方法としては200ccガラスビーカーに100ccの精製水を入れスパーテルに採った粉体0.2gを水面より2cmの高さから水面に投下した後、1秒間に2回の速度でスパーテルを使用して50回撹拌した後、30秒間静置する。水中を観察したとき粉体粒子が水層に移行せず浮遊している粉体が好ましい。
【0016】
基体としての無機粉体は、通常化粧料に用いられる無機粉体であれば特に制限されない。例えば、セリサイト、天然マイカ、焼成マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、アルミナ、マイカ、タルク、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、紺青、群青、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、炭化ケイ素、タングステン酸金属塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、クロルヒドロキシアルミニウム、クレー、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、窒化アルミニウム、シリコーンカーバイト、チタン酸コバルト、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト、無機青色系顔料、低次酸化チタン、微粒子酸化チタン、バタフライ状硫酸バリウム、花びら状酸化亜鉛、六角板状酸化亜鉛、テトラポット状酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン被覆ホウケイ酸(ナトリウム/カルシウム)、酸化チタン被覆ホウケイ酸(カルシウム/アルミニウム)、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、ガラスファイバー、アルミナ繊維、等が挙げられる。
【0017】
無機粉体はTi、Zn、Si、Al、Fe、Mg、Ceの少なくとも一つを含む金属酸化物または金属水酸化物の粒子よりなる粉体が好ましい。このような無機粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化鉄、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化セリウム等が挙げられる。これらの無機酸化物粉体粒子に他の酸化物や水酸化物が被覆されていても構わない。
【0018】
有機表面処理剤としては、シリコーン化合物、アルキルシラン、アルキルチタネート、ポリオレフィン、アシル化アミノ酸、脂肪酸、レシチン、エステル油、フラクトオリゴ糖、アクリルポリマー、ウレタンポリマーから選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0019】
シリコーン化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社:KF99PやKF9901、X-24-9171、X-24-9221等)、ジメチコノール、片末端アルコキシシリルジメチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状メチルハイドロジェンシリコーン、アクリルシリコーン、シリコーンアクリル、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、リン酸変性シリコーン等も使用できる。その他としては、信越化学工業社より市販されているものとしてはKF-9908(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)やKF-9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)等も使用できる。
【0020】
アルキルシランとしては、アルキルアルコシキシランが挙げられる。アルキル鎖の長さとして、炭素数で1~18が挙げられ、具体的にはメチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシランやオクタデシルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
アルキルチタネートは、Ti(OR構造を基本骨格とするものであり、Rは互いに独立してアルキル基または有機カルボニル基である化合物が挙げられる。市販のものとしてはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(プレンアクトTTS;味の素ファインテクノ社)などが挙げられる。
【0022】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等で分子中にカルボキシル基を少なくとも1個有するポリオレフィン樹脂を挙げることができる。例えば、特開昭63-179972号公報に記載の公知の化合物で分子量500~40000で融点が40℃以上の低分子ポリエチレンや、ポリプロピレンを酸化して得られる酸化ポリエチレン、マレイン化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン等が挙げられる。
【0023】
アシル化アミノ酸は、炭素数12以上18以下である飽和脂肪酸とアスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、サルコシン、プロリン、ヒドロキシプロリンより選ばれるアミノ酸のアシル化化合物または小麦やえんどう豆等の植物由来のペプチドやシルクペプチド、動物由来のペプチド等の全加水分解物であり、アミノ酸のカルボキシル基は遊離体、又はK、Na、Fe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti等の塩になっているものでも構わない。具体的には、味の素社より市販されているアミソフトCS-11、CS-22、MS-11、HS-11P、HS-21P等、川研ファインケミカル社より市販されているソイポンSLP、ソイポンSCA、アラノンAMP、フランスSEPPIC社より市販されているSEPILIFT DPHP等、日光ケミカル社より市販されているサルコシネートMN等を挙げることができる。これらのアシル化アミノ酸は脂肪酸との組成物の形態でもよい。アシル化リポアミノ酸組成物としては、SEPPIC社より市販されているSEPIFEEL ONE(パルミトイルプロリン、パルミトイルサルコシン、パルミトイルグルタミン酸、パルミチン酸の4成分よりなる組成物)が挙げられる。
【0024】
脂肪酸としては、炭素数が12~22までの直鎖状又は分岐上の飽和又は不飽和脂肪酸で、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、2-エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソベヘン酸等の脂肪酸、或いはそのCa、Mg、Zn、Zr、Al、Ti等の金属塩が挙げられる。
【0025】
レシチンとしては、卵黄、大豆、コーン、菜種、ひまわり等から抽出された天然のレシチン、及び合成レシチンを水素添加したもので、ヨウ素価が15以下の水添レシチンであり、リン酸基を有するグリセライドである。塩の形態にあるものとしては、Al、Mg、Ca、Zn、Zr、Ti等の水不溶性水添レシチン金属塩等が挙げられる。
【0026】
エステル油としては、炭素数1~36の1種又は2種以上のアルコールと、炭素数1~36の1種又は2種以上のカルボン酸とを反応させて得ることができる、総炭素数16以上の酸性エステル化合物を含み、酸価15以上である化合物が好適である。特開2004-51945号公報に示される公知の化合物で具体的には、日清オイリオグループ社より市販されているサラコスMIS(セバシン酸イソステアリル)、サラコスMOD(アゼライン酸オクチルドデカノール)、サラコス1A(アジピン酸オクチルドデカノール)、サラコスHD(ダイマー酸オクチルドデカノール)等が挙げられる。
【0027】
また、エステル油としてはデキストリン脂肪酸エステルも挙げられ、フラクトオリゴ糖としては、デキストリンやフラクトオリゴ糖と脂肪酸とで構成されるエステル或いはその誘導体から選択することができる。具体的には、例えば、特公平5-3844号公報や特開2002-188024号公報に記載の公知の化合物で、千葉製粉社より市販されているレオパールKL、レオパールMKL、レオパールTT、レオパールKE、レオパールTL、レオパールISK等が挙げられる。
【0028】
アクリルポリマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸からなるモノマー1種以上とアクリル酸アルキルの共重合体が挙げられる。INCI名として(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマー等が挙げられる。
【0029】
ウレタンポリマーとしては、ポリウレタン骨格の親水基部を有し、分子中に疎水性部分をもつポリマーが挙げられる。INCI名として(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(アデカノールGT-700:ADEKA社)やビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー(アクペック HU C2002:住友精化社)等が挙げられる。
【0030】
疎水化無機粉体の製造方法は特に限定されず、有機表面処理剤と無機粉体を混合して作製すればよい。混合方法も特に限定されず均一に処理できる混合機を採用すればよい。例えば、ヘンシルミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、エクストルーダー、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ビーズミル等が挙げられる。混合した後、熱風乾燥機やスプレードライヤー、フラッシュドライヤー、コニカルドライヤー等で乾燥することで、疎水化無機粉体を得ることができる。
【0031】
疎水化無機粉体は、1種又は2種以上を化粧料に配合することができる。
【0032】
[ポリグリセリン(PG)系ノニオン界面活性剤:成分(B)]
ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤(非イオン性界面活性剤)とは、親水部としてのポリグリセリン(PG)と、親油部としてのアルキル基をエーテル結合又はエステル結合した界面活性剤である。アルキル基の炭素数は10~14であることが好ましく、直鎖型でも分岐型でも構わない。また、アルキル鎖は飽和型でも不飽和型でも構わない。ポリグリセリン(PG)はグリセリンの3量体以上を言う。さらに、PGとアルキル基の結合数は1(モノ)~3(トリ)である。
【0033】
ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤は下式で定義されるHLBに関して、HLB12~15の範囲のものであることが好ましい。
HLB=(界面活性剤中の親水部の分子量/界面活性剤の分子量)×20
【0034】
一般に入手可能なポリグリセリン系ノニオン界面活性剤でエステルタイプのものは、カプリン酸PG(3)(商品名:TEGOSOFT PC 31;EVONIK社)、ラウリン酸PG(4)(商品名:SYグリスター ML-310;阪本薬品工業社)、ラウリン酸PG(5)(商品名:サンソフトA-121E-C;太陽化学社)、ラウリン酸PG(6)(商品名:SYグリスター ML-500;阪本薬品工業社)、ヤシ油脂肪酸PG(3)(商品名:EMALEX MCCG-3;日本エマルジョン社)、ミリスチン酸PG(5)(商品名:サンソフトA-141E-C;太陽化学社)、ミリスチン酸PG(6)(商品名:NIKKOL Hexaglyn 1-M;日光ケミカルズ社)、ジミリスチン酸PG(10)(商品名:サンソフトQ-142Y-C;太陽化学社)、等が挙げられる。エーテルタイプのものとしては、PG(4)ラウリルエーテル(商品名:ML04;ダイセル社、商品名:サンイーサー L-4;太陽化学社)、PG(6)ミリスチルエーテル(商品名:MM06;ダイセル社)等が挙げられる。例えば、カプリン酸PG(3)などの表記において( )内の数値、すなわち「3」はポリグリセリンの付加モル数を表す。
【0035】
[グリセリン:成分(C)]
グリセリンは化粧料に使用可能なものであれば良く、合成法により製造された合成グリセリンや天然由来の油脂をケン化して製造される天然グリセリンを含む。グリセリンは粘度が非常に高く取扱いに難があるため精製水で濃度を84%~87%に希釈したものや95%以上のものがある。一般に入手可能なものとしては、化粧品用グリセリン85%、化粧品用濃グリセリン(グリセリン95%以上)、日本薬局方グリセリン、日本薬局方濃グリセリン等が挙げられる。これらの中で好ましいグリセリンはグリセリン濃度が95%以上の濃グリセリンである。グリセリンは疎水性粉体を分散させる主溶媒であるがグリセリンの2量体や3量体も疎水性粉体の分散性と流動性を損なわない範囲で混合または置換しても構わない。例えば、ジグリセリン、トリグリセリンが挙げられる。グリセリンに溶解可能な他の水性成分例えば、ブチレングリコールやペンチレングリコール、へキシレングリコール、水等の成分はグリセリンに混合して分散体化すると疎水性粉体の分散性は悪化して分散体の粘度も上昇する。
【0036】
グリセリン分散体の配合比率は(A)有機表面処理剤で被覆された疎水化無機粉体/(B)炭素数が10~14の親水性ポリグリセリン系ノニオン界面活性剤/(C)グリセリン=50.0以上/10.0以下/to100.0(wt%)である。好ましくは、50.0以上/7.5以下/to100.0(wt%)より好ましくは、50.0以上/5.0未満/to100.0(wt%)である。ポリグリセリン系の界面活性剤の安全性は比較的高いが分子量1000以下の界面活性剤を配合する場合は肌への刺激性の観点から出来るだけ少ない配合量が好ましい。
【0037】
グリセリン分散体には、必要に応じて、増粘剤、酸化防止剤や防菌防腐剤、キレート剤、顔料分散剤、感触改良剤等を適宜配合すことができる。
【0038】
グリセリン分散体の製造方法は特に限定されず、上述した成分を混合することにより作製すればよい。混合方法も限定されず、均一に分散させることができる通常の手法を採用すればよい。例えば、ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、1軸混練機、2軸混練機、3本ロールミル等の分散機・混練機等装置を用いることができる。
【0039】
グリセリン分散体を化粧料に配合することで使用感と化粧仕上がり、化粧持続性に優れた化粧料が提供される。
【0040】
化粧料は、化粧料の種類および剤型によって異なるが、本発明グリセリン分散組成物を化粧料全体に対して0.1重量%以上配合できる。疎水化無機粉体を配合する化粧料としては、メークアップ化粧料としては、化粧下地、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、スティックファンデーション、プレストパウダー、フェイスパウダー、白粉、口紅、口紅オーバーコート、リップグロス、コンシーラー、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、マスカラ、水性ネイルエナメル、油性ネイルエナメル、乳化型ネイルエナメル、エナメルトップコート、エナメルベースコート等、スキンケア化粧料としてはエモリエントクリーム、コールドクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、カーマインローション、液状洗顔料、洗顔フォーム、洗顔クリーム、洗顔パウダー、メイククレンジング、ボディグロス、日焼け止め又は日焼け用クリームやローション等、頭髪化粧料としては、ヘアーグロス、ヘアクリーム、ヘアーシャンプー、ヘアリンス、ヘアカラー、ヘアブラッシング剤等、制汗化粧料としてはクリームやローション、パウダー、スプレータイプのデオドラント製品等、その他としてや乳液、石鹸、浴用剤、香水等を挙げることができる。
【0041】
また、化粧料には、通常の化粧料等に用いられる顔料分散剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、皮膜形成剤、保湿剤、増粘剤、染料、顔料、各種薬剤、香料等を適宜配合することができる。
【0042】
グリセリン分散体は疎水性粉体を化粧料の水層へ配合する上で有用である。パウダー系化粧料の場合は水性成分がほとんど配合されないが保湿剤であるグリセリンを配合することで、疎水性粉体を化粧料の水層に配合することが可能になる。また、乳化系化粧用や水系化粧料では水層成分に本発明のグリセリン分散組成物を配合することで着色性や光沢の調整、紫外線遮蔽機能を付与することができる。
【実施例
【0043】
以下に、好適な実施例及び当該実施例に対応する比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではなく、下記の実施例から見いだされる本発明の技術的意義を逸脱しないように、修正、変更、応用(部分的なものを含む)及びそれらの組み合わせが可能である。
【0044】
[グリセリン分散体の調製]
下記に示す実施例1~22及び比較例1~13のグリセリン分散体を調製した。
【0045】
(実施例1)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)61.2gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)18.8gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)670gに投入して60℃にて溶解した。オクチルトリエトキシシラン処理疎水性顔料級酸化チタン(商品名:ALT-TSR-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例1のグリセリン分散体を得た。実施例1のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0046】
(実施例2)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)125gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)27.3gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2302.3gに投入して60℃にて溶解した。オクチルトリエトキシシラン処理疎水性黄酸化鉄(商品名:ALT-YHP-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例2のグリセリン分散体を得た。実施例2のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0047】
(実施例3)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)125gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)27.3gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2302.3gに投入して60℃にて溶解した。オクチルトリエトキシシラン処理疎水性赤酸化鉄(商品名:ALT-MTRZ-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例3のグリセリン分散体を得た。実施例3のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0048】
(実施例4)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)92.8gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)23.1gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)1499.1gに投入して60℃にて溶解した。オクチルトリエトキシシラン処理疎水性黒酸化鉄(商品名:ALT-BHP-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例4のグリセリン分散体を得た。実施例4のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0049】
(実施例5)
PG(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)61.2gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)20gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)918.8gに投入して60℃にて溶解した。ステアロイルグルタミン酸2Na処理疎水性顔料級酸化チタン(商品名:NAI-TSR-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例5のグリセリン分散体を得た。実施例5のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0050】
(実施例6)
PG(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)125gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)27.3gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2302.3gに投入して60℃にて溶解した。ステアロイルグルタミン酸2Na処理疎水性黄酸化鉄(商品名:NAI-YHP-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例6のグリセリン分散体得た。実施例6のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0051】
(実施例7)
PG(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)125gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)27.3gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2302.3gに投入して60℃にて溶解した。ステアロイルグルタミン酸2Na処理疎水性赤酸化鉄(商品名:NAI-RHP-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例7のグリセリン分散体を得た。実施例7のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0052】
(実施例8)
PG(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)92.8gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)25gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)1882.2gに投入して60℃にて溶解した。ステアロイルグルタミン酸2Na処理疎水性黒酸化鉄(商品名:NAI-BHP-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例8のグリセリン分散体を得た。実施例8のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0053】
(実施例9)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)191.5gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)30gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2778.5gに投入して60℃にて溶解した。ジメチルポリシロキサンとハイドロゲンジメチコンの複合処理疎水性微粒子酸化チタン(商品名:SAS-UT-A30;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例9のグリセリン分散体を得た。実施例9のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0054】
(実施例10)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)191.5gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)30gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2778.5gに投入して60℃にて溶解した。ハイドロゲンジメチコン処理疎水性微粒子酸化チタン(商品名:SI-UT-A55;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例10のグリセリン分散体を得た。実施例10のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0055】
(実施例11)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)191.5gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)30gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)2778.5gに投入して60℃にて溶解した。ステアロイルグルタミン酸2Na処理疎水性微粒子酸化チタン(商品名:NAI-Z-300;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例11のグリセリン分散体を得た。実施例11のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0056】
(実施例12)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)157.9gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)25gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)1817.1gに投入して60℃にて溶解した。ジメチコンとオクチルトリエトキシシランの複合処理疎水性微粒子酸化チタン(商品名:SALT-MZ-500;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例12のグリセリン分散体を得た。実施例12のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0057】
(実施例13)
ラウリン酸PG(5)(サンソフトA-121E-C;太陽化学社)157.9gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)25gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)1817.1gに投入して60℃にて溶解した。イソステアリン酸処理疎水性微粒子酸化亜鉛(商品名:MZY-505EX;テイカ社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例13のグリセリン分散体を得た。実施例13のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0058】
(実施例14)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)191.5gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)25gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)1817gに投入して60℃にて溶解した。アルキルシラン処理疎水性微粒子酸化チタン(商品名:STR-40 OTS;堺化学工業社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて30分間混練した後、3本ロールミルで分散して実施例14のグリセリン分散体を得た。実施例14のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0059】
(実施例15)
実施例1のミリスチン酸PG(5)をカプリン酸PG(3)(TEGOSOFT PC-31;EVONIK社)に替えた以外は実施例1と同様に操作して実施例15のグリセリン分散体を得た。実施例15のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0060】
(実施例16)
実施例1のミリスチン酸PG(5)をミリスチン酸PG(6)(HEXAGLYN1-M;日光ケミカルズ社)に替えた以外は実施例1と同様に操作して実施例16のグリセリン分散体を得た。実施例16のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0061】
(実施例17)
実施例1のミリスチン酸PG(5)をジミリスチン酸PG(10)(サンソフトQ-142Y-C;太陽化学社)に替えた以外は実施例1と同様に操作して実施例17のグリセリン分散体を得た。実施例17のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0062】
(実施例18)
実施例1のミリスチン酸PG(5)をトリラウリン酸PG(10)(サンソフトQ-123Y-C;太陽化学社)に替えた以外は実施例1と同様に操作して実施例18のグリセリン分散体を得た。実施例18のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0063】
(実施例19)
実施例1の酸化チタンをセバシン酸イソステアリルとステアロイルグルタミン酸2Naの複合処理疎水性顔料級酸化チタン(商品名:NHS-TSR-10;三好化成株式会社)に替え、更にミリスチン酸PG(5)をヤシ油脂肪酸PG(3)(EMALEX MCCG-3;日本エマルジョン社)に替えた以外は実施例1と同様に操作して実施例19のグリセリン分散体を得た。実施例19のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0064】
(実施例20)
実施例19の酸化チタンを水素添加大豆レシチン処理疎水性顔料級酸化チタンに(商品名:NLI-TSR-10;三好化成株式会社)に替えた以外は実施例19と同様に操作して実施例20のグリセリン分散体を得た。実施例20のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0065】
(実施例21)
実施例20の酸化チタンをジメチルポリシロキサンとステアロイルグルタミン酸2Naの複合処理疎水性顔料級酸化チタンに(商品名:SA/NAI-TSR-10;三好化成株式会社)に替えた以外は実施例20と同様に操作して実施例21のグリセリン分散体を得た。実施例21のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0066】
(実施例22)
実施例1のグリセリンをジグリセリン(ユニグリ G-2;日油社)に替えた以外は実施例1と同様に操作して実施例22のグリセリン分散体を得た。実施例22のグリセリン分散体は流動する高粘性液であった。
【0067】
(比較例1)
パルミチン酸PG(10)(DECAGLYN1-PVEX;日光ケミカル社)61.2gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)21.4gをグリセリン(トリオールVE;高級アルコール社)1203.1gに投入して60℃にて溶解した。オクチルトリエトキシシラン処理疎水性顔料級酸化チタン(商品名:ALT-TSR-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて混練した後、3本ロールミルで分散した。得られた比較例1のグリセリン分散体は固形状であった。
【0068】
(比較例2)
比較例1のパルミチン酸PG(10)をイソステアリン酸PG(10)(DECAGLYN1-ISV;日光ケミカル社)に替えた以外は同様に操作した。得られた比較例2のグリセリン分散体は固形状であった。
【0069】
(比較例3)
比較例1のパルミチン酸PG(10)をジイソステアリン酸PG(10)に替えた以外は同様に操作した。得られた比較例3のグリセリン分散体は固形状であった。
【0070】
(比較例4)
比較例1のパルミチン酸PG(10)をジパルミチン酸PG(10)(Polyaldo 10-2-P;Lonza社)に替えた以外は同様に操作した。得られた比較例4のグリセリン分散体は固形状であった。
【0071】
(比較例5)
比較例1のパルミチン酸PG(10)をジオレイン酸PG(10)(サンソフトQ-172Y-C;太陽化学社)に替えた以外は同様に操作した。得られた比較例5のグリセリン分散体は固形状であった。
【0072】
(比較例6)
比較例1のパルミチン酸PG(10)をジステアリン酸PG(6)(サンソフトQ-182Y-C;太陽化学社)に替えた以外は同様に操作した。得られた比較例6のグリセリン分散体は固形状であった。
【0073】
(比較例7)
比較例1のパルミチン酸PG(10)をトリステアリン酸PG(10)(EMALEX TSG-10;日本エマルジョン社)に替えた以外は同様に操作した。得られた比較例7のグリセリン分散体は固形状であった。
【0074】
(比較例8)
ミリスチン酸PG(5)(サンソフトA-141E-C;太陽化学社)61.2gとフェノキシエタノール(Microcare PE;ソー・ジャパン社)21.4gを1,3ブチレングリコール(ハイシュガーケイン BG;高級アルコール社)1203.1gに投入して60℃にて溶解した。オクチルトリエトキシシラン処理疎水性顔料級酸化チタン(商品名:ALT-TSR-10;三好化成株式会社)3kgに前記溶解液を投入してニーダーミキサーにて混練した後、3本ロールミルで分散した。得られた比較例8の分散体は固形状であった。
【0075】
(比較例9)
比較例8のミリスチン酸PG(5)をポリグリセリル(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)に替えた以外は比較例8と同様に操作した。得られた比較例9の分散体は固形状であった。
【0076】
(比較例10)
実施例9のグリセリンを1,3ブチレングリコール(ハイシュガーケイン BG;高級アルコール社)に替えた以外は実施例9と同様に操作した。得られた比較例10の分散体は固形状であった。
【0077】
(比較例11)
比較例10のミリスチン酸PG(5)をポリグリセリル(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)に替えた以外は比較例10と同様に操作した。得られた比較例11の分散体は固形状であった。
【0078】
(比較例12)
実施例12のグリセリンを1,3ブチレングリコール(ハイシュガーケイン BG;高級アルコール社)に替えた以外は実施例12と同様に操作した。得られた比較例12の分散体は固形状であった。
【0079】
(比較例13)
比較例12のミリスチン酸PG(5)をポリグリセリル(4)ラウリルエーテル(ML04;ダイセル社)に替えた以外は比較例12と同様に操作した。得られた比較例13の分散体は固形状であった。
【0080】
下記表1は、実施例1~22及び比較例1~13のグリセリン分散体の組成の一覧である。
[表1]
【0081】
[グリセリン分散体の粘度、分散性、経時安定性]
上記の実施例1~22及び比較例1~13のグリセリン分散体について、粘度、分散性、経時安定性を評価した。
【0082】
(粘度の評価)
製造直後のグリセリン分散体について、BH型回転粘度計(ブルックフィールド社)を使用して25℃で4号ローター1.5rpm/60secと3rpm/60secの条件で粘度を測定した。(4V1.5/4V3)
【0083】
(分散性の評価)
200ccガラスビーカーに5.0gのグリセリン分散体を採り、合計で100gになるまでイオン交換水を添加した。混合液をディスパーミキサーで1400rpm/1分間で分散した。分散液をスポイトで1g採り、定性ろ紙No.2(150mmφ:アドバンテック社)の真ん中に滴下して、ろ紙に浸み込ませた。1分後にろ紙上にツブが観察されるか否かを評価した。なお、定性ろ紙No.2の目開きは約10μである。評価基準を以下に示す。
〇 :ツブが観察されない。
× :ツブが観察される。
【0084】
(経時安定性試験)
商品名アイボーイ広口ビン100ml(PP製)にグリセリン分散体150gを入れて蓋をして試料とした。試料を50℃の恒温槽に2週間入れた後、取り出し常温で1日放置し、その後の試料の外観と性状を評価した。外観については、離液が生じているか否か、沈降物がビン底に生じているか否かを目視で評価した。また、性状については、沈降物をスパーテルで触りハードケーキ化しているか否かを評価した。評価基準を以下に示す。
〇 :離液や沈降が認められない。
× :上層部に離液が認められる。または、沈降物がハードケーキ化している。
【0085】
下記表2は、実施例1~22及び比較例1~13のグリセリン分散体の粘度、分散性、経時安定性に関する評価結果である。
[表2]
【0086】
(評価結果の考察)
実施例1(分散媒:グリセリン)、実施例22(分散媒:ジグリセリン)及び比較例8(分散媒:ブチレングリコール)の評価結果から、分散媒としてブチレングリコールよりもグリセリン又はジグリセリンを使用した場合に、粘度、分散性、経時安定性が優れることが分かった。
【0087】
また、優れた粘度、分散性、経時安定性が、実施例1~4、9~12、14、16、22(ミリスチン酸PG(5):炭素数14)、実施例5~8(PG(4)ラウリルエーテル:炭素数12)、実施例13(ラウリン酸PG(5):炭素数12)、実施例15(カプリン酸PG(3):炭素数10)、実施例19~21(ヤシ油脂肪酸PG(3):炭素数12を主体とした炭素数8~18)においても実現されることから、PG系ノニオン界面活性剤におけるアルキル基の炭素数は10~14が好ましいことが分かった。また、実施例17(アルキル基の結合数:2)、実施例18(アルキル基の結合数:3)の評価結果から、アルキル基の結合数に関わらず、優れた粘度、分散性、経時安定性が達成されることが分かった。
その一方で、比較例1(パルミチン酸PG(10):炭素数16)、比較例2(イソステアリン酸PG(10):炭素数18)などから、PG系ノニオン界面活性剤におけるアルキル基の炭素数が16~の場合には、炭素数10~14と比較して、粘度、分散性、経時安定性は劣っていた。
【0088】
また、実施例1、15~22のように、本発明のグリセリン分散体には疎水化無機粉体を高濃度で、特に50重量%以上で配合できることが分かった。
【0089】
また、実施例1~22のグリセリン分散体は流動する高粘性液であったのに対し、比較例1~13のグリセリン分散体は固形状であった。すなわち、実施例1~22のグリセリン分散体はべとつきのある液体ではあるが、高濃度に疎水化粉体を配合した固体状の比較例1~13のグリセリン分散体に比べてハンドリング性が良かった。
【0090】
[グリセリン分散体を配合した化粧料]
次に、下記に示す化粧料を調製し、使用感、化粧効果、化粧持続性についての評価を行った。使用感、化粧効果、化粧持続性は、各化粧料を25名の専門パネラーに1日使用してもらい、以下に示す5段階のいずれの評点に値するかを採点してもらってその平均値で評価した。なお、使用感は、すべり性の良さ、ベトツキの無さ、心地よさという観点での評価である。また、化粧効果は、粉っぽさ、塗りムラの無さ、化粧膜の均一性、自然なツヤ感という観点での評価である。また、化粧持続性は、時間経過に伴う色くすみやテカリの発生、粉よれの無さという観点での評価である。
【0091】
(実施例23:O/W型乳化ファンデーション)
[表3]
【0092】
(製造方法)
A:油層成分を良く分散混合する。
B:水層成分を良く分散混合する。
C:前記BにAを加えホモミキサーで乳化してO/W型乳化ファンデーションを得た。
【0093】
本発明のグリセリン分散体を配合したO/W型乳化ファンデーションは使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0094】
(実施例24:水系サンカットローション)
[表4]
【0095】
(製造方法)
A:油層成分を良く分散混合する。
B:水層成分を良く分散混合する。
C:前記BにAを加えホモミキサーで乳化して水系サンカットローションを得た。
【0096】
本発明のグリセリン分散体を配合した水系サンカットローションは使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0097】
(実施例25:O/W型日焼け止め化粧料)
[表5]
【0098】
(製造方法)
A:油層成分を良く分散混合する。
B:水層成分を良く分散混合する。
C:前記BにAを加えホモミキサーで乳化してO/W型日焼け止め化粧料を得た。
【0099】
本発明のグリセリン分散体を配合したO/W型日焼け止め化粧料は使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0100】
(実施例26:パウダーファンデーション)
[表6]
【0101】
(製造方法)
A:粉体成分と油層成分を良く分散混合する。
B:水層成分を良く分散混合する。
C:前記BにAを加えスラリー状とする。
D:Cを金皿に充填し、表面に吸水シートを置き、多孔質吸引ヘッドを用いて吸引圧縮成型する。
E:Dを70℃の恒温槽に一晩放置し、精製水を完全に除去して、パウダーファンデーションを得た。
【0102】
本発明のグリセリン分散体を配合したパウダーファンデーションは使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0103】
(実施例27:水系おしろい)
[表7]
【0104】
(製造方法)
A:粉体成分を良く混合する。
B:水層成分を混合して溶解する。
C:前記BにAを加え良く撹拌して水系おしろいを得た。
【0105】
本発明のグリセリン分散体を配合した水系おしろいは使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0106】
(実施例28:水系アイシャドウ)
[表8]
【0107】
(製造方法)
A:粉体成分を良く混合する。
B:水層成分を混合して溶解する。
C:前記BにAを加え良く撹拌して水系アイシャドウを得た。
【0108】
本発明のグリセリン分散体を配合した水系アイシャドウは使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0109】
(実施例29:水系化粧下地)
[表9]
【0110】
(製造方法)
A:粉体成分を良く混合する。
B:水層成分のBGと前記A成分を混合してローラーで処理する。
C:前記BにAを加え良く撹拌して水系化粧下地を得た。
【0111】
本発明のグリセリン分散体を配合した水系化粧下地は使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0112】
(実施例30:口紅)
[表10]
【0113】
(製造方法)
A:油層成分を良く混合する。
B:粉体成分を前記A成分と混合してホモミキサーで良く分散処理する。
C:BをAに加えて均一に混合する。
D:水層成分を混合して加温した。
E:DをCに加え乳化して口紅を得た。
【0114】
本発明のグリセリン分散体を配合した口紅は使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。
【0115】
(実施例31:制汗剤)
[表11]
【0116】
(製造方法)
A:粉体成分を良く混合する。
B:水層成分混合して溶解する。
C:BにAを加えて混合して制汗剤を得た。
【0117】
本発明のグリセリン分散体を配合した制汗剤は使用性と化粧効果、化粧持続性が良かった。