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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】レゾルバ信号検出回路及びその検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023083551
(22)【出願日】2023-05-21
【審査請求日】2023-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506148017
【氏名又は名称】アトセンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】小澤 優哉
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127409(JP,A)
【文献】特開2011-151705(JP,A)
【文献】特開2001-208812(JP,A)
【文献】Smartcoder AU6805 ユーザーズマニュアル,第2版,日本,多摩川精機株式会社,2015年10月17日,p.6-8,10-12,14,45-48,URL:https://www.tamagawa-seiki.co.jp/assets/img/downloads/soft/MNL000542W00_AU6805_20151017.pdf?_gl=1*17wimb3*_up*MQ..*_ga*MTM1ODQ4MTUzOS4xNjk5NTc0MjE3*_ga_T4VKX05125*MTY5OTU3NDIxNi4xLjAuMTY5OTU3NDIxNi4wLjAuMA..
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00~ 5/252
G01B 7/00
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイル及び出力コイルを備えるレゾルバとレゾルバからモータの回転角度に対応する角度信号を受信するレゾルバデジタル変換器との間から分岐された複数対の分岐線と、
複数対の分岐線のうち少なくとも一対の出力分岐線を介して、レゾルバの出力コイルから一対の角度信号を差動信号として入力し、シングルエンド信号を出力する検出回路と、
検出回路に接続されて、検出回路からのシングルエンド信号を増幅又は減衰させる反転増幅回路と、
反転増幅回路に接続されて、反転増幅回路にて増幅又は減衰されたシングルエンド信号のノイズを除去するローパスフィルタ回路と、
ローパスフィルタ回路に接続されて、ローパスフィルタ回路にてノイズ除去されたシングルエンド信号を差動信号に変換して出力する差動出力回路と、を備えることを特徴とするレゾルバ信号検出回路。
【請求項2】
複数対の分岐線は、レゾルバデジタル変換器から励磁コイルに入力する励磁信号を分岐する一対の励磁信号分岐線を含み、
励磁信号は、レゾルバデジタル変換器から一対の励磁信号分岐線を介して、差動信号として検出回路に入力される請求項1に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項3】
出力コイルは、
正弦波信号を角度信号として出力する正弦波コイルと、
正弦波コイルの正弦波信号に対し実質的に90°位相がずれた余弦波信号を角度信号として出力する余弦波コイルと、を備え、
複数対の分岐線は、
レゾルバデジタル変換器から励磁コイルに入力する励磁信号を分岐する一対の励磁信号分岐線と、
正弦波コイルからレゾルバデジタル変換器に入力する正弦波信号を分岐する一対の出力分岐線としての一対の正弦波信号分岐線と、
余弦波コイルからレゾルバデジタル変換器に入力する余弦波信号を分岐する一対の出力分岐線としての一対の余弦波信号分岐線と、を備える請求項1に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項4】
検出回路は、
一対の励磁信号分岐線を介して励磁コイルに接続された第1検出回路と、
一対の正弦波信号分岐線を介して正弦波コイルに接続された第2検出回路と、
一対の余弦波信号分岐線を介して余弦波コイル7に接続された第3検出回路と、を備え、
第1検出回路に対し、第1反転増幅回路、第1ローパスフィルタ回路、及び第1差動出力回路が直列接続された、励磁信号処理部を構成し、
第2検出回路に対し、第2反転増幅回路、第2ローパスフィルタ回路、及び第2差動出力回路が直列接続された、正弦波信号処理部を構成し、
第3検出回路に対し、第3反転増幅回路、第3ローパスフィルタ回路、及び第3差動出力回路が直列接続された、余弦波信号処理部を構成する、請求項3に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項5】
検出回路は、計装アンプであって、又は検出アンプと検出抵抗とから構成された計装アンプに相当する回路であって、レゾルバ信号検出回路内部の検出回路電位を基準として、シングルエンド信号を出力する請求項1に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項6】
反転増幅回路は、検出回路に一端が接続された入力抵抗と、入力抵抗の他端に接続された反転入力端子を有しかつレゾルバ信号検出回路内部の検出回路電位に接続された非反転入力端子を有する増幅アンプと、増幅アンプの反転入力端子及び出力端子に一端及び他端が各接続された帰還抵抗と、を備え、
帰還抵抗は可変抵抗である請求項1に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項7】
ローパスフィルタ回路は、フィルタアンプ、フィルタ抵抗及びコンデンサから構成されたバターワースフィルタ回路である請求項1に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項8】
差動出力回路は、完全差動アンプを含む回路であって、又は差動変換アンプ及び差動変換抵抗から構成された差動変換回路であって、シングルエンド信号を差動信号に変換するときオフセット電圧を印加するオフセット電圧入力部を含む請求項1に記載のレゾルバ信号検出回路。
【請求項9】
励磁コイル及び出力コイルを備えるレゾルバが、モータの回転角度に対応した角度信号をレゾルバデジタル変換器に出力する過程と、
レゾルバとレゾルバデジタル変換器との間から分岐する複数対の分岐線のうち少なくとも一対の出力分岐線を介して、検出回路が、レゾルバの出力コイルから一対の角度信号を差動信号として入力し、シングルエンド信号を出力する過程と、
検出回路に接続された反転増幅回路が、検出回路からのシングルエンド信号を増幅又は減衰させる過程と、
反転増幅回路に接続されたローパスフィルタ回路が、反転増幅回路にて増幅又は減衰されたシングルエンド信号のノイズを除去する過程と、
ローパスフィルタ回路に接続された差動出力回路が、ローパスフィルタ回路にてノイズ除去されたシングルエンド信号を差動信号に変換して出力する過程と、を含むことを特徴とするレゾルバ信号検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの回転角度を計測するレゾルバユニットから、既存の制御用レゾルバ信号に影響を与えずに回転角度情報を分離検出する、レゾルバ信号検出回路及びその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリン自動車等の排出ガスによる大気汚染、地球温暖化等の環境問題が深刻化する中、電気自動車(Electric Vehicle:EV)が急速に普及している。電気自動車は、搭載されたバッテリ(電池)の電気エネルギにより電動モータを駆動させて走行し、電動モータの回転を制御することにより、電気自動車の走行速度が制御される。電動モータの回転を効率良く制御するために、回転角度を正確に計測する必要があるが、回転角度計測装置(回転角度センサ)としてレゾルバが知られている。
【0003】
図8は、1相励磁2相出力式のレゾルバ80と、レゾルバデジタル変換器(RDC)90と、制御用IC95とから構成されるレゾルバユニット200を例示する。レゾルバ80の励磁コイル5は、固定子(ステータ)に設けられ、RDC90から信号線5a,5bを介し任意周波数の差動交流信号(励磁信号)が供給される一次励磁コイル5-1と、モータに同軸接続された回転子(ロータ)に設けられ、一次励磁コイル5-1に磁気接続されて交流信号を発生する二次励磁コイル5-2とを備える。レゾルバ80の正弦波コイル6は、固定子に設けられ、二次励磁コイル5-2から励磁信号と同一周波数の搬送波を受信し、回転子の回転角度に対応したサイン波を搬送波に載せた正弦波信号(サイン波及び搬送波を含む)を、信号線6a,6bを介しRDC90に出力する。レゾルバ80の余弦波コイル7は、固定子に設けられ、二次励磁コイル5-2から励磁信号と同一周波数の搬送波を受信し、回転子の回転角度に対応しかつ正弦波信号のサイン波に対し実質的に90°位相がずれたコサイン波を搬送波に載せた余弦波信号(コサイン波及び搬送波を含む)を、信号線7a,7bを介しRDC90に出力する。
【0004】
図8に示すRDC90は、レゾルバ80の励磁コイル5に供給する任意周波数の差動交流信号と、正弦波コイル6及び余弦波コイル7から出力される正弦波信号及び余弦波信号とから、モータの回転角度及び回転速度を計算し、デジタル信号として制御用IC95に出力する。制御用IC95は、RDC90から入力された回転角度及び速度のデジタル信号に基づき、図示しないインバータに制御信号を送信しモータの回転速度を制御する。
【0005】
電気自動車(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電動二輪車を含む)のモータ開発者は、研究開発やベンチマーク(性能比較をするための指標構築)のために他社又は自社モータのレゾルバからレゾルバ信号を分離検出して解析したい状況が存在する。しかし、RDC90及び制御用IC95は通常、図8のようにエンジンコントロールユニット(ECU)210として一体に組み込まれ、レゾルバ信号をECU210からレゾルバユニット200外に非破壊で分離検出することはできない。また、ブラックボックス化されたECU210内部で如何なる制御処理が実行されているか不明である。具体的には、インバータからモータへ出力する制御信号波形が、如何なるレゾルバ信号による如何なる回転角度に基づくのか不明である。
【0006】
特許文献1の波形測定器は、レゾルバ信号を分離検出する従来技術として、レゾルバに入力される励磁信号のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、ゼロクロスが検出されてからΔt後にレゾルバが出力する回転角に応じて振幅が変化する角度検出信号を保持するホールド部と、保持した角度検出信号に基づき回転角を算出する角度演算部とを備える。特許文献1では、レゾルバとECUとの間から、レゾルバ信号(励磁信号、第1検出信号及び第2検出信号)を、各単線により分岐する波形測定器を図示するが、分岐の具体的構成を開示しない。
【0007】
特許文献1のように分岐線を単線とする場合、分岐線のグランドをレゾルバ及びECUと共通にする必要があり、この場合、ノイズ発生により、モータ制御用のレゾルバ信号(制御用レゾルバ信号)に悪影響を与える。また、単純に分岐しただけでは、経路増加により制御用レゾルバ信号の電流が不足し、既存のECUにて正確な回転角度計測ができない。即ち特許文献1の波形測定器では、既存の回転角度計測に悪影響なくレゾルバ信号を分離検出できない。
【0008】
一方、レゾルバ80とRDC90との間の一対の信号線5a,5b;6a,6b;7a,7bから、差動プローブを用いレゾルバ信号の波形を分離検出する方法が考えられる。差動プローブは、2点間の差電圧信号を、2本のプローブ及び各プローブに接続された伝送線を通じオシロスコープ等の波形計測機に送信する機器である。しかし、差動プローブは、一対の差動入力が抵抗を介し内部でグランド接続されているため、抵抗値によってはノイズが入りその影響によりレゾルバ信号の波形を正確に計測できない。
【0009】
前記のとおり従来は、レゾルバから角度情報を分離検出しようとしても、一体化ECU内のRDCからレゾルバ信号を分離検出することが事実上不可能であった。換言すると、既存レゾルバユニットの信号線から単純に分岐するだけの従来の波形測定器では、制御用レゾルバ信号がその分岐手段によるノイズ、インピーダンスの影響を受け、RDCがエラーを検知する。また、差動プローブによる検出では、ノイズの影響によりレゾルバ信号の波形を正確に計測できない。即ち従来技術では、既存レゾルバユニットを動作させながらその外部に角度信号を分離検出できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-127409公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、既存レゾルバユニットの制御用レゾルバ信号に影響を与えず角度信号を分離検出して、レゾルバユニット外で利用できるレゾルバ信号検出回路及びその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のレゾルバ信号検出回路は、励磁コイル5及び出力コイル6,7を備えるレゾルバ80とレゾルバ80からモータの回転角度に対応する角度信号を受信するレゾルバデジタル変換器90との間から分岐された複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dと、複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dのうち少なくとも一対の出力分岐線6c,6d;7c,7dを介して、レゾルバ80の出力コイル6,7から一対の角度信号を差動信号として入力し、シングルエンド信号を出力する検出回路10と、検出回路10に接続されて、検出回路10からのシングルエンド信号を増幅又は減衰させる反転増幅回路20と、反転増幅回路20に接続されて、反転増幅回路20にて増幅又は減衰されたシングルエンド信号のノイズを除去するローパスフィルタ回路30と、ローパスフィルタ回路30に接続されて、ローパスフィルタ回路30にてノイズ除去されたシングルエンド信号を差動信号に変換して出力する差動出力回路40と、を備える。
【0013】
本発明のレゾルバ信号検出回路100では、角度信号の分離検出を、レゾルバユニット200(レゾルバ80及びレゾルバデジタル変換器90)のグランド9電位を基準とした単線によらず、一対の出力分岐線6c,6d;7c,7dよって、一対の差動信号として検出回路10に分離検出する。これにより本発明では、レゾルバユニット200内の制御用レゾルバ信号に対し電流低下、ノイズ等の悪影響を与えず、レゾルバ80及びレゾルバデジタル変換器90を正常動作させながら、レゾルバユニット200の外部にて、レゾルバ80から角度信号を高精度に分離検出できる。
【0014】
本発明のレゾルバ信号検出回路100の実施形態では、複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dは、レゾルバデジタル変換器90から励磁コイル5に入力する励磁信号を分岐する一対の励磁信号分岐線5c,5dを含み、励磁信号は、レゾルバデジタル変換器90から一対の励磁信号分岐線5c,5dを介して、差動信号として検出回路10に入力される。
出力コイル6,7は、正弦波信号を角度信号として出力する正弦波コイル6と、正弦波コイル6の正弦波信号に対し実質的に90°位相がずれた余弦波信号を角度信号として出力する余弦波コイル7と、を備え、複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dは、レゾルバデジタル変換器90から励磁コイル5に入力する励磁信号を分岐する一対の励磁信号分岐線5c,5dと、正弦波コイル6からレゾルバデジタル変換器90に入力する正弦波信号を分岐する一対の出力分岐線としての一対の正弦波信号分岐線6c,6dと、余弦波コイル7からレゾルバデジタル変換器90に入力する余弦波信号を分岐する一対の出力分岐線としての一対の余弦波信号分岐線7c,7dと、を備える。
検出回路10は、一対の励磁信号分岐線5c,5dを介して励磁コイル5に接続された第1検出回路10と、一対の正弦波信号分岐線6c,6dを介して正弦波コイル6に接続された第2検出回路10と、一対の余弦波信号分岐線7c,7dを介して余弦波コイル7に接続された第3検出回路10と、を備え、第1検出回路10に対し、第1反転増幅回路20、第1ローパスフィルタ回路30、及び第1差動出力回路40が直列接続された、励磁信号処理部105を構成し、第2検出回路10に対し、第2反転増幅回路20、第2ローパスフィルタ回路30、及び第2差動出力回路40が直列接続された、正弦波信号処理部106を構成し、第3検出回路10に対し、第3反転増幅回路20、第3ローパスフィルタ回路30、及び第3差動出力回路40が直列接続された、余弦波信号処理部107を構成する。
検出回路10は、計装アンプ11,10aであって、又は検出アンプ12,13,14と検出抵抗R19-R29とから構成された計装アンプ11に相当する回路10bであって、レゾルバ信号検出回路100内部の検出回路電位Vgを基準として、シングルエンド信号を出力する。
反転増幅回路20は、検出回路10に一端が接続された入力抵抗R1と、入力抵抗R1の他端に接続された反転入力端子を有しかつレゾルバ信号検出回路100内部の検出回路電位Vgに接続された非反転入力端子を有する増幅アンプ21と、増幅アンプ21の反転入力端子及び出力端子に一端及び他端が各接続された帰還抵抗R3と、を備え、帰還抵抗R3は可変抵抗である。
ローパスフィルタ回路30は、フィルタアンプ31、フィルタ抵抗R5-R9及びコンデンサC1,C2から構成されたバターワースフィルタ回路である。
差動出力回路40は、完全差動アンプ41を含む回路40aであって、又は差動変換アンプ42,43及び差動変換抵抗R31-R45から構成された差動変換回路40bであって、シングルエンド信号を差動信号に変換するときオフセット電圧を印加するオフセット電圧入力部45,46を含む。
【0015】
本発明のレゾルバ信号検出方法は、励磁コイル5及び出力コイル6,7を備えるレゾルバ80が、モータの回転角度に対応した角度信号をレゾルバデジタル変換器90に出力する過程と、レゾルバ80とレゾルバデジタル変換器90との間から分岐する複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dのうち少なくとも一対の出力分岐線6c,6d;7c,7dを介して、検出回路10が、レゾルバ80の出力コイル6,7から一対の角度信号を差動信号として入力し、シングルエンド信号を出力する過程と、検出回路10に接続された反転増幅回路20が、検出回路10からのシングルエンド信号を増幅又は減衰させる過程と、反転増幅回路20に接続されたローパスフィルタ回路30が、反転増幅回路20にて増幅又は減衰されたシングルエンド信号のノイズを除去する過程と、ローパスフィルタ回路30に接続された差動出力回路40が、ローパスフィルタ回路30にてノイズ除去されたシングルエンド信号を差動信号に変換して出力する過程と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレゾルバ信号検出回路は、電気自動車用のモータ及びレゾルバユニットを正常動作させながら、モータの回転角度情報として角度信号(検出レゾルバ信号)をレゾルバユニット外で取得して、モータ出力性能を正確に評価できる。また本発明では、モータを搭載した自動車の走行中にも角度信号を非破壊で分離検出でき、モータ回転角度・速度を、走行時の騒音、振動、路面状況、トルク等のデータと共に計測して、有益な走行データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のレゾルバ信号検出回路を示すブロック図
図2】本発明のレゾルバ信号検出回路を示す回路図
図3】検出回路の実施形態を示す回路図
図4】差動出力回路の実施形態を示す回路図
図5】本発明のレゾルバ信号検出回路により処理された検出レゾルバ信号を示す波形図
図6】従来の検出手段(グランド共通の単線分岐検出)による検出レゾルバ信号を示す波形図
図7】従来の検出手段(差動プローブ検出)による検出レゾルバ信号を示す波形図
図8】レゾルバユニットを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のレゾルバ信号検出回路の実施形態を図1図8を参照して説明する。下記実施形態は例示であって本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は、レゾルバユニット200に分岐接続された本発明のレゾルバ信号検出回路100を概略示するブロック図である。図1に示すレゾルバ信号検出回路100は、レゾルバ80とレゾルバデジタル変換器(RDC)90との間の信号線5a,5b;6a,6b;7a,7bから分岐された複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dと、4段の回路、即ち検出回路10、反転増幅回路20、ローパスフィルタ回路30、及び差動出力回路40とを備える。
【0019】
第1段の検出回路10は、レゾルバ80とエンジンコントロールユニット(ECU)210との間から、複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dのうち少なくとも一対の出力分岐線6c,6d;7c,7dを介して、レゾルバ80の出力コイル6,7から出力される一対の角度信号を差動信号として入力し、他の一対の分岐線(励磁信号分岐線)5c,5dを介して、RDC90から出力される一対の励磁信号を差動信号として入力し、シングルエンド信号を出力する。検出回路10によって、レゾルバユニット200内の制御用レゾルバ信号の電流に影響を与えず角度信号を含む検出レゾルバ信号を検出できる。本明細書では、励磁信号、正弦波信号(サイン波及び搬送波を含む)及び余弦波信号(コサイン波及び搬送波を含む)からなるレゾルバ信号について、分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dにより分離検出される信号を検出レゾルバ信号といい、RDC90に入出力される信号を制御用レゾルバ信号という。また、レゾルバ信号のうち回転角度情報を含む信号(正弦波信号及び余弦波信号)を角度信号という。
【0020】
第2段の反転増幅回路20は、検出回路10に接続されて、検出回路10からのシングルエンド信号を任意振幅に増幅又は減衰させる。第3段のローパスフィルタ回路30は、反転増幅回路20に接続されて、反転増幅回路20にて増幅又は減衰されたシングルエンド信号の高周波ノイズを除去する。第4段の差動出力回路40は、ローパスフィルタ回路30に接続されて、ローパスフィルタ回路30にてノイズ除去されたシングルエンド信号を差動信号に変換して出力する。これにより、角度信号を含む検出レゾルバ信号をレゾルバユニット200外で利用可能とする。
【0021】
モータの回転角度に対応する角度信号を出力するレゾルバ80は、RDC90から搬送波として励磁信号が供給される励磁コイル5と、回転角度に依存したサイン波を搬送波に載せた正弦波信号を角度信号としてRDC90に出力する正弦波コイル(出力コイル)6と、正弦波コイル6の正弦波信号に含まれるサイン波に対し実質的に90°位相がずれたコサイン波を搬送波に載せた余弦波信号を、角度信号としてRDC90に出力する余弦波コイル(出力コイル)7とを備える1相励磁2相出力式レゾルバ80(図8)である。1相励磁2相出力式に限らず、2相励磁1相出力式レゾルバ(図示せず)も使用できる。
【0022】
図1のとおり、レゾルバ80とRDC90との間の信号線5a,5b;6a,6b;7a,7bから分岐された複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dは、RDC90から励磁コイル5に入力する励磁信号を分岐する一対の励磁信号分岐線5c,5dと、正弦波コイル6からRDC90に入力する正弦波信号を分岐する一対の出力分岐線としての一対の正弦波信号分岐線6c,6dと、余弦波コイル7からRDC90に入力する余弦波信号を分岐する一対の出力分岐線としての一対の余弦波信号分岐線7c,7dとを備える。これにより本実施形態では、レゾルバ80とRDC90との間の制御用レゾルバ信号(モータ制御用の励磁信号、正弦波信号及び余弦波信号)に悪影響を与えず、レゾルバ80及びRDC90を正常に動作させながら、各一対の励磁信号、正弦波信号及び余弦波信号の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dを通じ、レゾルバユニット200外において、検出レゾルバ信号として励磁信号、正弦波信号及び余弦波信号を高精度に取り出すことができる。特に、従来技術(グランド共通の単線分岐検出、差動プローブ検出)により励磁信号の信号線5a,5bから検出レゾルバ信号を分離検出すると、信号線5a,5bにおける電流低下、ノイズ等の影響を励磁信号が受け励磁コイル5を励磁できなくなりレゾルバ80から角度信号を正常出力できない。これに対し、本実施形態では、図1のとおり一対の励磁信号分岐線5c,5dを備え、励磁信号がRDC90から励磁信号分岐線5c,5dを介し高インピーダンスの検出回路10に差動信号として入力されるため、励磁コイル5へ励磁できなくなる従来技術の欠点を回避できる。
【0023】
図1に示すレゾルバ信号検出回路100では、検出回路10は、一対の励磁信号分岐線5c,5dを介し励磁コイル5に接続された第1検出回路10と、一対の正弦波信号分岐線6c,6dを介し正弦波コイル6に接続された第2検出回路10と、一対の余弦波信号分岐線7c,7dを介し余弦波コイル7に接続された第3検出回路10とを備える。レゾルバ信号検出回路100では、第1検出回路10に対し、第1反転増幅回路20、第1ローパスフィルタ回路30、及び第1差動出力回路40が直列接続された励磁信号処理部105を構成し、第2検出回路10に対し、第2反転増幅回路20、第2ローパスフィルタ回路30、及び第2差動出力回路40が直列接続された正弦波信号処理部106を構成し、第3検出回路10に対し、第3反転増幅回路20、第3ローパスフィルタ回路30、及び第3差動出力回路40が直列接続された余弦波信号処理部107を構成する。
【0024】
図2は、レゾルバ信号検出回路100の具体的な回路図を例示する。励磁信号処理部105、正弦波信号処理部106及び余弦波信号処理部107の各内部構成は、電気的及び機械的に実質的同一のため、シンプルな回路構成を実現し、製造コストを低減できる。図2では、簡略化のために、前記処理部105,106,107のうち一内部構成のみ例示し、以下、「第1」、「第2」及び「第3」の記載を省略し、単に「検出回路10」、「反転増幅回路20」、「ローパスフィルタ回路30」及び「差動出力回路40」と表す。
【0025】
図2に示す検出回路10,10aは、計装アンプ11であって、レゾルバ80から一対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dを通じ差動信号(検出レゾルバ信号)を2個の入力端子から入力し、レゾルバ信号検出回路100内部の検出回路電位Vgを基準として、シングルエンド信号を出力端子から出力する。計装アンプ11は、検出レゾルバ信号の振幅が大きい場合を考慮し、減衰機能を有するものが好ましい。図2に示す計装アンプ11(及び後述図3の計装アンプ11に相当する回路10b)は、その高い入力インピーダンス特性によって、レゾルバ80から検出回路10への電流の流れ込みを最小限に抑えつつ微弱な角度信号をレゾルバユニット200外部に分離検出する。また、検出回路10では、その基準電位を、レゾルバユニット200のグランド9と共通にせず、レゾルバ信号検出回路100内部の検出回路電位Vgを基準としてシングルエンド信号を出力する。従って、本実施形態では、レゾルバユニット200の電流低下を回避し、グランド9共通によるノイズ発生を回避して、レゾルバユニット200を正常動作させながら、角度信号を分離検出できる。
【0026】
本実施形態では、図2の計装アンプ11(又は後述図3の検出アンプ12,13)に直接、角度信号を入力して高インピーダンス入力を実現する。入力インピーダンスについて、理想的なオペアンプは無限大だが、実際は数100MΩ~数100GΩである。この値は、レゾルバ80及びRDC90の入出力インピーダンス(数100Ω)に対し十分大きく、本実施形態の検出回路10,10a,10bでは、浮遊信号としての角度信号を高インピーダンスにより少ない電流で分離検出し、レゾルバ80及びRDC90での制御用レゾルバ信号に影響を与えない。
【0027】
図3は、検出回路10の他の実施形態として、検出アンプ(オペアンプ)12-14と検出抵抗(抵抗)R19-R29とから構成された計装アンプ11に相当する回路(3アンプ型差動アンプ回路)10bを示す。具体的には、一対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dから差動信号(検出レゾルバ信号)が各非反転入力端子に入力される2個のオペアンプ12,13を備え、各オペアンプ12,13の出力端子は、抵抗R19,R25を介し反転入力端子に各帰還接続され、かつ抵抗R21,R27を介しオペアンプ14の一対の入力端子に各接続される。オペアンプ14の出力端子は、抵抗R23を介し反転入力端子に帰還接続され、オペアンプ14の非反転入力端子は、抵抗R29を介し検出回路電位Vgに接続される。図3では3個のオペアンプ12-14の回路10bを示すが、部品点数が少なく低コスト化できる2個のオペアンプにより計装アンプ11に相当する回路(2アンプ型差動アンプ回路)(図示せず)を構成してもよい。
【0028】
図2に示す反転増幅回路20は、検出回路10に一端が接続された入力抵抗R1と、入力抵抗R1の他端に接続された反転入力端子を有しかつレゾルバ信号検出回路100内部の検出回路電位Vgに接続された非反転入力端子を有する増幅アンプ(オペアンプ)21と、オペアンプ21の反転入力端子及び出力端子に両端が接続された帰還抵抗R3とを備え、帰還抵抗R3は可変抵抗である。反転増幅回路20は、入力抵抗R1を帰還抵抗R3で除し正負反転させた値(-R1/R3)を増幅率とし、検出回路10からのシングルエンド信号の振幅を増幅又は減衰させる。帰還抵抗R3の抵抗値を調節し任意増幅率に変更し、反転増幅回路20から出力される信号の振幅を制御できる。検出回路10出力から差動出力回路40入力までのシングルエンド信号は、レゾルバ信号検出回路100内の基準電位Vgを基準として反転増幅回路20で増幅されて、差動出力回路40からの出力信号の振幅が決定される。
【0029】
図2に示すローパスフィルタ回路30は、ノイズ除去回路であって、フィルタアンプ(オペアンプ)31、フィルタ抵抗(抵抗)R5-R9及びコンデンサC1,C2から構成された多重帰還型ローパスフィルタ回路であり、2次のバターワースフィルタ回路である。具体的には図2のとおり、一端が反転増幅回路20に接続された抵抗R5と、抵抗R5の他端に各一端が接続された抵抗R7,R9及びコンデンサC1と、抵抗R9の他端に一端が接続されたコンデンサC2と、抵抗R7及びコンデンサC2の各他端に反転入力端子が接続されたオペアンプ31とを備える。オペアンプ31の出力端子は、その反転入力端子に対し、抵抗R9,R7を介し及びコンデンサC2を介し帰還接続される。オペアンプ31の非反転入力端子及びコンデンサC1の他端は、基準電位Vgに各接続される。抵抗及びコンデンサの積分回路段数により決まるローパスフィルタ回路の次数について、本発明では、図2に示す2次に限らず1次以上の何れでもよい。また、ローパスフィルタ回路30は、オペアンプ31によるアクティブフィルタに限らず、抵抗、コンデンサ及びコイルから構成されるパッシブフィルタでもよい。
【0030】
図2に示す差動出力回路40は、完全差動アンプ41を含む回路40aであって、具体的には、ローパスフィルタ回路30に一端が接続された抵抗R11と、検出回路電位Vgに一端が接続された抵抗R13と、抵抗R11,R13の各他端に反転入力端子及び非反転入力端子が各接続された完全差動アンプ41とを備える。完全差動アンプ41の2個の出力端子は、その反転及び非反転入力端子に対し、抵抗R15,R17を介し各帰還接続される。これにより完全差動アンプ41を含む回路40a(及び後述図4の差動出力回路40b)は、レゾルバユニット200と同様の差動信号を検出レゾルバ信号としてレゾルバユニット200外で復元できる。また、ローパスフィルタ回路30からのシングルエンド信号を差動信号に変換するとき、完全差動アンプ41(及び差動変換アンプ42,43)に対しオフセット電圧(調整電圧)Vosを印加するオフセット電圧入力部45,46を含む。オフセット電圧入力部45,46によるオフセット電圧Vosの印加により、差動出力回路40の後段に接続される、図示しない単電源駆動レゾルバデジタル変換器(RDC)に差動信号を直接入力でき、回転角度を正確に計測できる。
【0031】
図4は、差動出力回路40の他の実施形態として、差動変換アンプ(オペアンプ)42,43及び差動変換抵抗(抵抗)R31-R45から構成された差動変換回路40bを示す。具体的には、ローパスフィルタ回路30に各一端が接続された抵抗R33,R41と、検出回路電位Vgに各一端が接続された抵抗R31,R39と、抵抗R31,R33の各他端に反転入力端子及び非反転入力端子が各接続されたオペアンプ42と、抵抗R39,R41の各他端に反転入力端子及び非反転入力端子が各接続されたオペアンプ43とから構成される。オペアンプ42の出力端子は、その反転入力端子に対し抵抗R35を介し帰還接続され、オペアンプ43の出力端子は、その非反転入力端子に対し抵抗R43を介し帰還接続される。差動変換回路40bはまた、オペアンプ42,43の非反転及び反転入力端子が、抵抗R37,R45を介しオフセット電源に接続された、オフセット電圧入力部46を備える。
【0032】
完全差動アンプ41を含む回路40aのゲインは抵抗R11-R17の値により、差動変換回路40bのゲインは抵抗R31,R35,R41,R43の値により、各設定される。差動出力回路40とその出力先との高精度なインピーダンスマッチングが要求されるため、抵抗がパッケージング化された固定ゲインの差動出力回路40が好ましい。図1及び図2では、レゾルバ信号検出回路100の後段を示さないが、差動出力回路40は図示しないRDCに接続されて、対象モータの回転角度及び回転速度の数値が算出される。
【0033】
図4の差動出力回路40bでは、2個のオペアンプ42,43を並列配置したが、他の実施形態として、2個の第1及び第2オペアンプを直列配置した回路(図示せず)により差動出力を得てもよい。具体的には、第1オペアンプの出力を、一方の差動出力にすると共に第2オペアンプの入力とし、第2オペアンプの出力を他方の差動出力とする構成である。図2及び図4の差動出力回路40,40a,40bでは、オフセット電圧入力部45,46を示すが、例えばデータロガー若しくは高機能オシロスコープの演算機能を用い角度計算する場合、又はパーソナルコンピュータ(PC)により角度信号データを取得し計算を後にする場合は、差動出力回路40,40a,40bでのオフセット電圧Vos印加は不要である。
【0034】
以下、本発明のレゾルバ信号検出方法の実施形態を説明する。
レゾルバ信号検出方法では、回転角度を計測するレゾルバユニット200の通常動作として、レゾルバデジタル変換器(RDC)90が、レゾルバ80の励磁コイル5に励磁信号を供給し、レゾルバ80が、出力コイル6,7から、モータの回転角度に対応した角度信号をRDC90に出力する。具体的には、励磁信号と同一周波数の搬送波とレゾルバ80の回転角度に依存したサイン波とを含む正弦波信号を、出力コイルの正弦波コイル6から出力し、励磁信号と同一周波数の搬送波と正弦波信号のサイン波に対し実質的に90°位相がずれたコサイン波とを含む余弦波信号を、出力コイルの余弦波コイル7から出力する。
【0035】
図2に示す第1段の検出回路10では、レゾルバ80とRDC90との間の信号線5a,5b;6a,6b;7a,7bから分岐された図1に示す複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dを介して、一対の角度信号を含む検出レゾルバ信号を差動信号として分離検出する。具体的には、一対の励磁信号分岐線5c,5dを介し、RDC90から励磁コイル5に入力する励磁信号を分離検出し、一対の正弦波信号分岐線6c,6dを介し、正弦波コイル6からRDC90に入力する正弦波信号を分離検出し、一対の余弦波信号分岐線7c,7dを介し、余弦波コイル7からRDC90に入力する余弦波信号を分離検出する。検出回路10では、計装アンプ11,10aにより、又は検出アンプ12-14と検出抵抗R19-R29とから構成された回路10bにより、例えばゲイン設定を1としてシングルエンド信号を出力する。
【0036】
図2に示す第2段の反転増幅回路20は、その前段の検出回路10からシングルエンド信号を入力し、シングルエンド信号は、入力抵抗R1を介し増幅アンプ(オペアンプ)21の反転入力端子に入力される。オペアンプ21の出力信号は、可変抵抗R3を介し負帰還され、反転増幅回路20は、所望の増幅率(-R1/R3)に増幅又は減衰したシングルエンド信号を出力する。
【0037】
図2に示す第3段のローパスフィルタ回路(バターワース回路)30では、その前段に接続された反転増幅回路20から、増幅又は減衰されたシングルエンド信号を入力して、高周波ノイズを除去する。ローパスフィルタ回路30は、前段の反転増幅回路20と同様に反転回路を構成し、ローパスフィルタ回路30から出力されるシングルエンド信号は、非反転信号に戻る。ローパスフィルタ回路30では、フィルタ抵抗R5,R7,R9及びコンデンサC1,C2により遮断特性(カットオフ周波数)及び位相特性(位相変化)を設定できる。カットオフ周波数とは、信号の通過利得が通過域から3dB低下する周波数を意味し、位相変化とは、入出力信号の位相差を意味する。本実施形態では、例えばR5、R7及びR9の各抵抗値を5.6kΩ、12kΩ及び5.6kΩとし、コンデンサの各静電容量C1及びC2を680pF及び220pFとして、カットオフ周波数(=1/(2π(C1・C2・R7・R9)0.5))を50kHzに設定し、カットオフ周波数50kHzにおける位相変化(遅れ位相)を-90°に設定する。また、レゾルバ80の回転数が20000rpm(電気角の周波数330Hz)を基準として、周波数400Hzの信号に対し位相変化を0.1°以下に抑える設計とする。更に、レゾルバ信号検出回路100に後続するRDCの変換精度を担保するため、典型的な励磁信号周波数10kHzでの位相変化を40°以下に抑える設計とする。
【0038】
図2に示す第4段の差動出力回路40では、その前段に接続されたローパスフィルタ回路30にてノイズ除去されたシングルエンド信号を、抵抗R11を通じ完全差動アンプ(オペアンプ)41の反転入力端子に入力し差動信号に変換して、オペアンプ41の出力端子からRDC(図示せず)に対し、レゾルバユニット200の差動信号に対応する差動信号を出力する。RDCでは、出力された差動信号から回転角度及び回転速度の実際の数値を算出するが、0V中心の差動信号では正確な回転角度等を計算できないため、差動出力回路40では、オフセット電圧Vos(例えば2.5V)を印加し得る。RDCにおいて計算された回転角度等の数値は、デジタル信号(シリアル信号、パラレル信号等)や速度パルス(エンコーダ用のABZ相信号等)として、制御用IC、計測用IC等(図示せず)に送信され、モータ制御の評価に利用できる。
【0039】
前記実施形態では、差動出力回路40,40a,40bを示すが、ローパスフィルタ回路30から直接シングルエンド信号を出力して、オシロスコープ、PC等により、回転角度の数値を算出してもよい。
【0040】
以下、レゾルバ80から出力された角度信号(余弦波信号)の電圧波形について及びRDC90のエラー発報について、本発明による実施例と従来技術による比較例とを対比させて説明する。実施例及び比較例では、余弦波信号を評価するが、三対の信号線5a,5b;6a,6b;7a,7bは各対互いに同一であり、三対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dも各対互いに同一であり、また励磁信号、正弦波信号及び余弦波信号の各処理部105,106,107は互いに同一回路構成のため、励磁信号及び正弦波信号も余弦波信号と同様の評価結果が得られると考える。
【0041】
[評価システム]
レゾルバユニット200に分岐接続した本発明のレゾルバ信号検出回路100(図1及び図2)の後段に、図示しないRDC(多摩川精機(株)製U6805)を接続した構成を実施例評価システムとした。一方、レゾルバ信号検出回路100を設けない図8のレゾルバユニット200を比較例評価システムとした。実施例評価システム及び比較例評価システムのレゾルバユニット200は、レゾルバ(多摩川精機(株)製)80とRDC(アトセンス(株)製RDC-100)90とを含む。RDC90は、レゾルバ信号のデジタル変換機能と共に、回転角度出力、回転速度出力、エラー発報(信号劣化・信号喪失)等の機能を有する。
【0042】
[実施例1]
実施例評価システム(図1)において、本発明のレゾルバ信号検出回路100処理後の計測点A2-B2間の電圧波形(角度信号)をオシロスコープにより計測した(実施例1)。具体的には、プローブを使用せず、余弦波信号処理部107処理後の計測点A2-B2間の差動信号を差動入力アンプにてシングルエンド信号とし絶縁アンプにて絶縁してBNC端子を通じオシロスコープにより計測した。レゾルバ信号検出回路100後段のRDCへの入力のために、レゾルバ信号検出回路100の最大出力値が3.2Vp-p程度になるように、反転増幅回路20の可変抵抗R3を調整した。
【0043】
[比較例1]
比較例評価システム(図8)において、信号線7aの計測点A1とRDC90グランド9の計測点Gとの間の電圧波形(角度信号)を、パッシブプローブを使用しオシロスコープにより計測した(比較例1)。比較例1の電圧波形は、前記特許文献1に示す従来の検出手段、即ちECUとグランド共通の単線分岐検出手段における電圧波形に相当する。
【0044】
[比較例2]
比較例評価システム(図8)において、一対の信号線7a,7bの計測点A1-B1間の電圧波形(角度信号)を、差動プローブを使用しオシロスコープにより計測した(比較例2)。
【0045】
A2-B2間計測によりレゾルバ信号検出回路100を介しA1-B1間を計測することと同等の実施例1と、一方を計測点G(グランド9)に接続しA1を計測する比較例1と、A1-B1間を計測する比較例2とは、実質同一位置での計測といえる。また、一対の信号線7a,7b上のA1-B1間の電圧波形は、制御用レゾルバ信号の電圧波形に相当する。従って、実施例1(本発明)、比較例1(グランド共通の単線分岐検出)及び比較例2(差動プローブ検出)の各電圧波形(角度信号を含む検出レゾルバ信号)の計測によって、各条件における制御用レゾルバ信号に対する影響の有無を確認できる。
【0046】
[評価結果:実施例1]
実施例1(計測点A2-B2間)の電圧波形図を図5ア及びイに表す。横軸を時間、縦軸を電圧値とする(図6図7も同じ)。図5ア(横軸:-25ms~25ms)より、鮮明なコサイン波が計測され、図5アを拡大した図5イ(横軸:-100μs~100μs)より、ノイズが殆ど無い搬送波が計測された。実施例1では、RDC90から、信号劣化、信号喪失を知らせるエラー発報が無かった。
【0047】
[評価結果:比較例1]
比較例1(計測点A1-G間)の電圧波形図を図6ア及びイに表す。図6ア(横軸:-20ms~20ms)及び図6イ(横軸:-200μs~200μs)より、ノイズが多く計測された。比較例1では、RDC90から、ノイズによる信号劣化を知らせるエラー発報が高頻度で有った。
【0048】
[評価結果:比較例2]
比較例2(計測点A1-B1間)の電圧波形図を図7ア及びイに表す。図7ア(横軸:-50ms~50ms)より、比較的鮮明なコサイン波が計測され、図7アを拡大した図7イ(横軸:-200μs~200μs)より、コサイン波の内側に表れる搬送波の極大部にノイズが計測された。比較例2では比較例1同様に、RDC90から、ノイズによる信号劣化を知らせるエラー発報が高頻度で有った。
【0049】
[考察]
比較例1(グランド共通の単線分岐検出)の電圧波形に図6のようにノイズが表れるのは、ECU210と共通にしたグランド9からのノイズ流入が原因と考えられる。比較例2(差動プローブ検出)の電圧波形に図7のようにノイズが表れるのは、差動プローブからのノイズ流入が原因と考えられる。これらのノイズ流入により信号が劣化し、比較例1及び比較例2では信号劣化のエラーがRDC90から発報されたと考えられる。
【0050】
[結論]
実施例1では、鮮明な電圧波形が計測され(図5)かつRDC90のエラー発報が無かったため、本発明のレゾルバ信号検出回路100では、RDC90に入出力される制御用レゾルバ信号に悪影響を与えることなく、ノイズが除去された鮮明な角度信号を分離検出できることを確認できた。
比較例1ではノイズが多く計測され(図6)、比較例2ではノイズが計測され(図7)、共にRDC90からエラー発報が高頻度で有った。このため、従来技術である、ECU210とグランド共通の単線検出(比較例1)及び差動プローブによる検出(比較例2)は、制御用レゾルバ信号に悪影響を与え、鮮明な角度信号を分離検出できないことを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によるレゾルバ信号検出回路は、レゾルバユニットの制御用レゾルバ信号に影響を与えずモータの角度信号を差動信号として入力するため、レゾルバ以外、例えば磁気式エンコーダ、差動信号式通信、ホイートストンブリッジ等の信号検出に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
5・・励磁コイル、 6・・出力コイル(正弦波コイル)、 7・・出力コイル(余弦波コイル)、 5c,5d・・分岐線(励磁信号分岐線)、 6c,6d・・分岐線(出力分岐線、正弦波信号分岐線)、 7c,7d・・分岐線(出力分岐線、余弦波信号分岐線)、 10・・検出回路(第1検出回路10、第2検出回路10、第3検出回路10)、 10a,11・・計装アンプ、 10b・・計装アンプに相当する回路、 12,13,14・・検出アンプ(オペアンプ)、 20・・反転増幅回路、 21・・増幅アンプ(オペアンプ)、 30・・ローパスフィルタ回路、 31・・フィルタアンプ(オペアンプ)、 40・・差動出力回路、 40a・・完全差動アンプを含む回路、 41・・完全差動アンプ、 45,46・・オフセット電圧入力部、 80・・レゾルバ、 90・・レゾルバデジタル変換器(RDC)、 100・・レゾルバ信号検出回路、 105・・励磁信号処理部、 106・・正弦波信号処理部、 107・・余弦波信号処理部、 200・・レゾルバユニット、 C1,C2・・コンデンサ、 R1・・入力抵抗(抵抗)、 R3・・帰還抵抗(抵抗)、 R5-R9・・フィルタ抵抗(抵抗)、 R19-R29・・検出抵抗(抵抗)、 Vg・・検出回路電位、
【要約】
【課題】既存の制御用レゾルバ信号に影響を与えず角度信号を分離検出してレゾルバユニット外で利用できる。
【解決手段】レゾルバ信号検出回路100は、レゾルバ80とレゾルバデジタル変換器90との間から分岐された複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dと、複数対の分岐線5c,5d;6c,6d;7c,7dのうち少なくとも一対の出力分岐線6c,6d;7c,7dを介して、レゾルバ80の出力コイル6,7から一対の角度信号を差動信号として入力し、シングルエンド信号を出力する検出回路10と、検出回路10からのシングルエンド信号を増幅又は減衰させる反転増幅回路20と、反転増幅回路20にて増幅又は減衰されたシングルエンド信号のノイズを除去するローパスフィルタ回路30と、ローパスフィルタ回路30にてノイズ除去されたシングルエンド信号を差動信号に変換して出力する差動出力回路40とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8