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  • 特許-皮膚疾患改善剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】皮膚疾患改善剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9062 20060101AFI20231225BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20231225BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61K36/9062
A61K36/899
A61P17/00
A61P17/04
A61P37/08
A61K8/9794
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023116012
(22)【出願日】2023-07-14
【審査請求日】2023-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514082295
【氏名又は名称】マスダ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(74)【代理人】
【識別番号】100076576
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 公博
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸次
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-008646(JP,A)
【文献】特開2001-316275(JP,A)
【文献】特開2009-107983(JP,A)
【文献】特開2010-195747(JP,A)
【文献】特開2012-219031(JP,A)
【文献】特開2012-246226(JP,A)
【文献】特開2020-200309(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0103808(KR,A)
【文献】特表2021-519806(JP,A)
【文献】株式会社丸源,FRAGRANCE JOURNAL,2005年,3月号,pp. 112-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 8/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
月桃を真空抽出装置で減圧にし、前記真空抽出装置における真空度がゲージ圧で-90kPa~-98kPaであり、前記真空抽出装置における真空抽出の温度が、真空抽出対象原料である月桃の入っている原料用容器内の温度で30~45℃で月桃の真空抽出液を分離採取した月桃の細胞液と、
別途、マコモを真空抽出装置で減圧にし、前記真空抽出装置における真空度がゲージ圧で-90kPa~-98kPaであり、前記真空抽出装置における真空抽出の温度が、真空抽出対象原料であるマコモの入っている原料用容器内の温度で30~45℃でマコモの真空抽出液を分離採取したマコモの細胞液とを混合することを特徴とするアトピー性皮膚炎、くすみ及び乾燥肌からなる群から選ばれる1種以上の症状の緩和に用いられる皮膚疾患改善剤の製造方法。
【請求項2】
月桃の細胞液とマコモの細胞液の割合が、月桃の細胞液100重量部に対し、マコモの細胞液が10~100重量部の割合で混合することを特徴とする請求項1に記載の皮膚疾患改善剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月桃を用いた、アトピー性皮膚炎、くすみ、及び、乾燥肌、などの皮膚疾患の改善剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
月桃は、沖縄県を含む亜熱帯地方に群生する、ショウガ科ハミョウガノ属の植物であり、高さ2~3mで成長の度合いにより根、茎、葉、花、果実を有する。
本発明で用いる月桃とは根より上の部分を使用する。したがって以下、本発明においては、特許請求の範囲の文言も含めて「月桃」とは月桃の根を除いた部分意味し、従って、特に断らない限り、月桃の茎、葉、花、果実のいずれか1つ以上を本発明では「月桃」と略称する。
【0003】
月桃は、漢方薬として、健胃整腸、食欲増進、毒虫刺され、咳止めなどの効果があるとされている。
【0004】
ところで、従来よりアトピー性皮膚炎、くすみ、乾燥肌などの皮膚疾患の改善剤は種々提案されている。
【0005】
特にアトピー性皮膚疾患の改善剤は、湿疹、じんましん、痒疹、火傷、虫刺され、あせも、かぶれ、くすみ、などの皮膚疾患の改善剤とともにより注目されており(下記特許文献1および2)、ステロイド剤が特に有効であるがステロイド剤は長期使用などの場合に重篤な副作用があることが知られている(下記特許文献1の[0004]および下記特許文献2)の[0003]参照)。本発明は天然植物を原料とすることにより、安全で長期の使用にも安心して使用できる皮膚疾患改善剤及びその製造方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-197471号公報
【文献】特許第6590233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は天然植物を原料とすることにより、安全で長期の使用にも安心して使用できる皮膚疾患改善剤の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の皮膚疾患改善剤の製造方法は、月桃を真空抽出装置で減圧にし、前記真空抽出装置における真空度がゲージ圧で-90kPa~-98kPaであり、前記真空抽出装置における真空抽出の温度が、真空抽出対象原料である月桃の入っている原料用容器内の温度で30~45℃で月桃の真空抽出液を分離採取した月桃の細胞液と、
別途、マコモを真空抽出装置で減圧にし、前記真空抽出装置における真空度がゲージ圧で-90kPa~-98kPaであり、前記真空抽出装置における真空抽出の温度が、真空抽出対象原料であるマコモの入っている原料用容器内の温度で30~45℃でマコモの真空抽出液を分離採取したマコモの細胞液とを混合することを特徴とするアトピー性皮膚炎、くすみ及び乾燥肌からなる群から選ばれる1種以上の症状の緩和に用いられる皮膚疾患改善剤の製造方法である。
【0010】
マコモ(真菰)は、イネ科の植物であり、これに黒穂菌が寄生してマコモの肥大化した茎が形成されることがあるがこの部分はマコモダケと称される。本発明で用いるマコモとは葉の部分を使用する。したがって以下、本発明においては、特許請求の範囲の文言も含めて「マコモ」とはマコモの葉を意味し、従って、特に断らない限り、マコモの葉を本発明では「マコモ」と略称する。したがって、「マコモの細胞液」とは、マコモの葉から真空抽出により採取した真空抽出液である細胞液を意味する。
【0011】
(2)前記(1)項に記載の皮膚疾患改善剤の製造方法においては、月桃の細胞液とマコモの細胞液の割合が、月桃の細胞液100重量部に対し、マコモの細胞液が10~100重量部の割合であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の皮膚疾患改善剤の製造方法は、月桃を真空抽出して得られる真空抽出液である月桃の細胞液を有効成分として含有する皮膚疾患改善剤を真空抽出装置に入れて真空抽出するという簡便な手段で容易に得られ、抽出のための抽出用溶媒や薬物なども使用しないので分離の必要がなく、これらの薬品が混入する恐れもない。しかも天然植物を原料とすることにより、安全で長期の使用にも安心して使用できる皮膚疾患改善剤を提供できる。本発明方法によれば月桃の細胞液を真空抽出液状物として採取でき、採取された真空抽出液状物はそのまま皮膚疾患改善剤として用いることができる。もちろん、製剤形態を特定のものにするため、本来の薬理効果に損傷を与えない限り、慣用的に用いられる成分を必要なら添加してクリーム状その他の適宜の製剤形態にしてもよい。
【0013】
尚、本発明方法で得られた月桃の真空抽出液である細胞液は、そのままの状態でもサラサラの液ではなく若干の粘性を帯びたしっとりした液状であるので、真空抽出で採取したそのままの状態でも、患部に塗布して使用する場合にも好都合である。
【0014】
(2)更に本発明の皮膚疾患改善剤の製造方法は、前記(2)項に記載したように、月桃を真空抽出装置で減圧にし、月桃の細胞液を分離採取した月桃の細胞液と、別途、マコモの細胞液を真空抽出装置で減圧にし、マコモの細胞液を分離採取したマコモの細胞液とを混合することにより、皮膚疾患改善効果とかゆみを抑える機能が発揮され好ましい。
【0015】
真空抽出する前の原料段階で月桃とマコモを混合してから真空抽出せずに、それぞれ別個に真空抽出してそれぞれ抽出により得られた細胞抽出液を必要な割合で混合してもちいることが好ましい。その理由は、それぞれ各原料を採取した時期や、採取場所などによってもそれぞれ含まれる細胞液の量や、真空抽出で採取される量も異なってくるので、原料段階での混合割合が、目標とする月桃の細胞液とマコモの細胞液の混合割合になるように調整することが難しいので、月桃とマコモを原料段階で混合して細胞液を採取することは避け、月桃の真空抽出による細胞液の抽出と、マコモの真空抽出による細胞液の抽出とは、別々に行って別々にそれぞれの細胞液を採取し、各採取した細胞液を、必要に応じ、目的の割合で混合でき好ましい。
【0016】
そして本発明においては、マコモは、茎などの部分であるマコモダケなどは使用せず、葉であるマコモを使用するので、マコモの真空抽出物はマコモの葉の細胞液で形成され、マコモダケに含まれる黒穂菌などは含まれないので好ましい。
【0017】
また、前記(1)項又は(2)項に記載の本発明の皮膚疾患改善剤の製造方法においては、前記真空抽出装置における真空抽出の温度が月桃の細胞液を分離採取する場合も、マコモの細胞液を分離採取する場合も、それぞれ月桃又はマコモである真空抽出対象原料の入っている原料容器内の温度で30~45℃である態様とすることにより、前記それぞれの項で記載した月桃やマコモの細胞抽出物の有効成分を分解することなく容易に採取でき好ましい。
【0018】
抽出温度があまり高すぎると細胞抽出物の有効成分の分解が生じやすくなり、抽出温度があまり低すぎると抽出効率が低下する傾向になるので、上記範囲の温度が好ましい。
【0019】
また、前記真空抽出装置における真空度がゲージ圧で-90kPa~-98kPaである好ましい態様とすることにより、前記それぞれの項で記載した月桃の細胞液やマコモの細胞液が月桃やマコモから固液分離されて容易に採取でき好ましい。
【0020】
(3)また、前記(3)項に記載のごとく、月桃の細胞液に更にマコモの細胞液を混合する場合においては、月桃の細胞液とマコモの細胞液の割合が、月桃の細胞液100重量部に対し、マコモの細胞液が10~100重量部の割合であることが、かゆみを抑える機能が発揮されるとともに、月桃の細胞液の割合が少なくなりすぎて、皮膚疾患改善機能が低下することもなく好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の月桃の細胞液やマコモの細胞液である真空抽出液の採取装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の月桃の細胞液は、月桃(根より上の地上部分、すなわち茎、葉、花、果実のいずれか少なくとも1種以上)を真空抽出機などを使用して比較的低温で真空にし、排気される細胞液の蒸気(蒸発液)を冷却することにより液状にして採取できる。月桃がかなり乾燥したり枯れてしまっているものは細胞液が採取できない可能性があるので比較的新鮮なものを用いることが好ましい。
【0023】
真空抽出における温度は月桃原料を入れた場合の容器内の温度で30~45℃の比較的低温が好ましく、より好ましくは30~40℃である。真空抽出装置における真空度は特に限定するものではないが、ゲージ圧でー90kPa~―98kPa、より好ましくは-92kPa~-95kPaであることが好ましい。なお、ゲージ圧とは大気圧を0としそれより低圧の場合がマイナス、大気圧より高い場合がプラスになる。
【0024】
原料となる月桃はなるべく新鮮なものを用いることが好ましい。また、特に限定するものではないが、真空抽出する場合に、用いる月桃は小さめにカットしておくと細胞液の採取がより効率的に採取できる。
【0025】
真空抽出機の真空ポンプは特に限定するものではないが、水エジェクターポンプが好適なポンプの一つである。
【0026】
細胞液の採取方法は、特に限定するものではないが、例えば、図1に示したように原料となる月桃を真空ポンプ6で減圧にされる原料用容器1に入れて当該容器1と真空ポンプ6をつなぐ配管2,5,7.8等の途中に、すなわち配管2と5の間に冷却部(コンデンサー)3とコンデンサーで凝縮された月桃の細胞液を溜める回収槽11を設けておき、回収槽11に月桃の細胞液が適宜溜まったときに、配管7と8のあいだの3方バルブ9で配管7と8の連通を遮断し真空吸引を止めて、配管7と配管14を連通させて、回収槽11内を常圧にして、細胞液が溜まった回収槽11の下側にあるバルブ13を開けて細胞液12を採取するなどの方法が挙げられる。冷却部(コンデンサー)3には適宜の冷却媒体が配管4から導入され配管4´から排出される。配管4´から排出された冷却媒体は図示していないが通常、冷却ユニットで再冷却され、配管4から冷却部(コンデンサー)3に繰り返し供給される。10は排気用の配管である。冷却部3の冷却温度は、月桃などの細胞液など採取目的物の蒸気が液滴になる温度範囲であればよく、真空度にもよるが、例えば5℃~25℃の範囲が好ましい。なお原料用容器1内の温度は、30~45℃が好ましく、より好ましくは30~40℃が好ましい。この温度をあまりに高くしすぎると、細胞抽出液の有効成分の分解を招く恐れがでてくる。またあまりに低くしすぎると、真空抽出による抽出液の採取効率が低下する傾向が出てくるので、上記範囲が好ましい。
【0027】
また、必要に応じ細胞液を溜める回収槽11の周囲に冷却用ジャケット(図示せず)を設けておいて、例えば前記コンデンサー3と同じ程度の温度範囲で冷却しておいてもよい。
【0028】
本発明の月桃の細胞液を有効成分として含有する皮膚疾患改善剤には、更に、必要に応じてマコモの真空抽出物である細胞液を含有させることができる。マコモの細胞液を混合する場合には、特に限定するものではないが、月桃の細胞液100重量部に対し、マコモの細胞液が10~100重量部の割合が好ましい。
【0029】
マコモの細胞液を含有させることにより皮膚疾患に多いかゆみを抑えることができ好ましい。マコモの細胞液の混合割合があまりに多すぎると、月桃の細胞液が薄まることになり、月桃の細胞液の機能が十分発揮されなくなるので、マコモの細胞液の割合は、上記範囲が好ましい。
【0030】
マコモの細胞液の真空抽出装置や製造条件(温度、圧力、使用装置)は、上述した月桃の真空抽出液の真空抽装置や製造条件と同様でよい。但し、真空抽出する前の原料段階で月桃とマコモを混合して真空抽出することもできるが、それぞれ各原料を採取した時期や、採取場所などによってもそれぞれ含まれる細胞液の量や、真空抽出で採取される量も異なってくるので、原料段階での混合割合が、目標とする月桃の細胞液とマコモの細胞液の混合割合になるように調整することが難しいので、月桃とマコモを原料段階で混合して細胞液を採取することは避け、月桃の真空抽出による細胞液の抽出と、マコモの真空抽出による細胞液の抽出とは、別々に行って別々にそれぞれの細胞液を採取し、各採取した細胞液を、必要に応じ、目的の割合で混合して使用することが好ましい。
【0031】
更に、前記本発明の月桃の細胞液、又は、前記本発明の月桃の細胞液とマコモの細胞液との混合物に、必要に応じ、ユウカリ、セイタカアワダチソウ、キクラゲ、ヒバ、ムクナマメから選ばれた少なくとも1種の真空抽出液(以下、これらを「第3成分」と略称する。)とミネラル水の真空抽出液とを混合してもよい。
【0032】
ユウカリの真空抽出成分は皮膚疾患改善機能を助長する機能があり、セイタカアワダチソウの真空抽出成分も皮膚疾患改善機能を助長する機能があり、キクラゲの真空抽出成分は、肌の色を明るくし、しわ改善機能が見られ、ヒバの真空抽出成分は、紫外線吸収機能を有し、ムクナマメの真空抽出成分は、血行を良好にし、皮膚疾患改善に寄与するなどの機能があり、これらの機能を有する皮膚疾患改善剤を容易に製造でき好ましい。
【0033】
前記第3成分の使用量はその種類によって異なるので一概に規定しがたく特に限定するものではないが、月桃の細胞液100重量部に対し第3成分5~100重量部程度である。
【0034】
第3成分の真空抽出液を得るには、真空抽出処理の装置や処理条件は、月桃の真空抽出処理の場合と同様であり、装置としては図1に示した真空抽出装置と同じ装置が使用でき、第3成分を製造する条件も、月桃の真空抽出処理の場合と同様であり、原料を入れた場合の容器内の温度で30~45℃より好ましくは30~40℃で、真空抽出装置における真空度は特に限定するものではないが、ゲージ圧で-90kPa~-98kPa、より好ましくは-92kPa~-95kPaである。
【0035】
第3成分を使用する場合は、ミネラル水の真空抽出液も濃度を調整するため混合されるが、混合割合は、ミネラル水の真空抽出液以外の全重量100重量部に対し、ミネラル水の真空抽出液5~100重量部程度である。
【0036】
ミネラル水としては、特に限定はなく、通常のミネラルウオーターが使用できる。当然のことながら、ミネラルウオーターと言えばミネラル成分が溶け込んだ飲用可能な水であり、例えば、井戸水、湧水、伏流水などを原料として食品衛生法などによる安全基準を満たすミネラルウオーターや、人工的にミネラル成分を精製水などに溶かし込んだミネラルウオーターなどが挙げられる。これらのミネラル水は、一旦、真空抽出処理したミネラル水を使用することが必要であり、真空抽出処理していないミネラル水は、ユウカリ、セイタカアワダチソウ、キクラゲ、ヒバ、ムクナマメから選ばれた少なくとも1種の真空抽出液(第3成分)と溶け合わないので、用いるミネラル水も、真空抽出処理しておくことが必要である。真空抽出処理の装置や処理条件は、月桃の真空抽出処理の場合と同様であり、原料を入れた場合の容器内の温度で30~45℃より好ましくは30~40℃で、真空抽出装置における真空度は特に限定するものではないが、ゲージ圧で-90kPa~-98kPa、より好ましくは-92kPa~-95kPaである。
【0037】
本発明の真空抽出液に、必要に応じ、更にグリセリン又はキサンタンガムを保湿剤として添加してもよい。かかる保湿剤を含有することにより肌の状態をしっとりとした良好な状態に保つことができ好ましい。
【0038】
グリセリンの場合は、月桃真空抽出液100重量部に対し、グリセリン10重量部以下が好ましく、多すぎると皮膚の油成分が除かれて、保湿成分としての機能が発揮されにくい。下限は特に限定するものではないが、保湿剤としての機能を発揮するにはグリセリン3重量部以上が好ましい。
【0039】
キサンタンガムの場合は、月桃真空抽出液100重量部に対し、キサンタンガム0.1重量部以下が好ましく、多すぎると硬くなり液状として使用しにくくなる。下限は特に限定するものではないが、保湿剤としての機能を発揮するにはキサンタンガム0.05重量部以上が好ましい。
【0040】
以上説明したように、本発明の皮膚疾患改善剤は、化学薬品や溶剤で抽出したものではなく、前述した植物を原料として採取したものであり、溶剤などの不純物が不必要に残留することがなく好ましい。
【0041】
そして、本発明の真空抽出液は、いわゆる化学的に合成された薬品と異なり天然物由来であるので、長期間使用しても副作用もなく安心して使用できるばかりでなく、天然物由来の皮膚疾患の改善剤としては、皮膚疾患の改善効果が優れている。また、本発明の真空抽出液からなる皮膚疾患改善剤は、雑菌濾過可能な除菌フィルター例えば孔径2μmの除菌フィルターを通し、オゾン殺菌、場合によれば紫外線殺菌をしておくと容器に本発明の皮膚疾患改善剤を蓋を閉めて常温常圧下で長期間(半年以上)腐敗しないことを確認している。
【0042】
そして本発明の皮膚疾患改善剤は、皮膚に塗布した場合に皮膚への浸透性が良好である。
【0043】
本発明の皮膚疾患改善剤はアトピー性皮膚炎、くすみ、又は、乾燥肌などの症状の緩和に用いることができる。特に、天然植物由来の成分でありながら、ステロイド成分を使用せずにアトピー性皮膚炎などの治療に有効であることは画期的である。
【0044】
製剤形態としては、特に限定するものではないが、皮膚外用剤の場合、採取したままの液状のままが皮膚に浸透しやすく好ましく、また、スプレー剤、ローション剤、乳剤、の形態にしてもよいが、特に採取した液状の真空抽出液をポンプ式スプレー容器に入れたスプレータイプにしておくと皮膚に塗布するのに指などに一旦つけてから患部に塗布する必要がなく皮膚を擦るなどがなく好適である。
【0045】
本発明の皮膚疾患改善剤は、多量に使用しても副作用がないので、塗布量も症状に応じ適宜調整して使用すればよく、特に制限はないが、1日2回程度(症状に応じて1日1回でもよい)、1回につき皮膚面積10cmに対し細胞液量換算で1~6g程度、好ましくは3~5g程度が挙げられる。
【0046】
皮膚外用剤の場合、患部に投与する前に、患部を洗ってから本発明の皮膚疾患改善剤を投与するとより有効である。
【0047】
なお、本発明の目的を達成でき、有効成分の機能を阻害しない場合には、他の薬剤を適宜組み合わせて用いてもよい。
【実施例
【0048】
本発明の理解を容易にするために、以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
図1に示したような装置を用い長さ約2cmに切った新鮮な月桃(葉、茎、果実)を密閉し得る容器1に入れて容器1内の温度35℃で真空ポンプ6として水エジェクター真空ポンプを用い最高-95kPa減圧にし、当該容器1と真空ポンプ6をつなぐ配管2、5等の途中に存在する冷却部(コンデンサー)3で10℃で冷却し、回収槽11にたまった月桃の真空中出物である細胞液を採取した。同様にして製造したマコモの真空抽出による細胞液を月桃の細胞液100重量部に対し、50重量部の割合で混合し、得られた月桃の細胞液とマコモの細胞液の混合物をポンプ式スプレー容器に入れ、顔のほうれい線近傍に発生した皮膚のくすみに、1日2回(朝と晩)で1回分が患部面積10cmあたりおよそ3gで1週間スプレーした後の患部の状態のくすみが小さく薄くなっていることを確認した。1週間程度の使用でもひどいくすみが改善されてくすみの面積が小さくなっていることが認められる。
【0050】
(実施例2)
腕に生じたアトピー性皮膚炎で炎症部(湿疹)が8点観測される患者の腕に実施例1と同様にして製造した皮膚疾患改善剤の入っているポンプ式スプレー容器でアトピー性皮膚炎の患者の腕に、1日2回(朝と晩)で1回分が患部面積10cmあたりおよそ5gの割合で塗布し、1週間スプレーした後の患部の状態を観測した。その結果、アトピー性皮膚炎による皮膚疾患がたった1週間程度の使用でも炎症部が3点に減少し、1週間程度の使用でもアトピー性皮膚炎の炎症が比較的改善されていることがわかった。
【0051】
(実施例3)
皮膚がカサカサでかゆみのある乾燥肌の人の腕に実施例1で製造した月桃の真空中出物である細胞液(マコモの真空中出物である細胞液が混合されていない月桃の真空中出物単独の細胞液)を乾燥肌の患者の腕全体に本発明方法で得られた月桃の真空中出物単独の細胞液を各1日2回(朝と晩)で1回分が患部面積10cmあたりおよそ5gの割合で塗布し1週間後の皮膚の状況を観察した結果、かゆみも軽減しカサカサ感がほとんどなくなってスムーズな肌の状態になっていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の月桃などの細胞液を有効成分として含有する皮膚疾患改善剤の製造方法は、アトピー性皮膚炎、くすみ、及び、乾燥肌、などの皮膚疾患の改善剤の簡便な製法として有用であり、真空抽出装置に入れて真空抽出するという簡便な手段でこれら皮膚疾患の改善剤を容易に製造でき、抽出のための抽出用溶媒や薬物なども使用しないのでこれらを分離する必要もなく、これらの薬品が混入する恐れもない製造方法を提供でき、製薬業などに利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 原料用容器
2、5、7、8、14 配管
3 冷却部(コンデンサー)
4、4´ 冷却媒体用配管
6 真空ポンプ
9 3方バルブ
10 排気用の配管
11 細胞液を溜める回収槽
12 細胞液
13 バルブ
【要約】
【課題】 安全で長期の使用にも安心して使用できる皮膚疾患改善剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、月桃を真空抽出装置で減圧にし、その真空抽出物である月桃の細胞液を分離採取する月桃の細胞液を有効成分として含有するアトピー性皮膚炎、くすみ及び乾燥肌からなる群から選ばれる1種以上の症状の緩和に用いられる皮膚疾患改善剤の製造方法を提供する。
【選択図】図1








図1