(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】強化繊維用サイジング剤及び強化繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/165 20060101AFI20231225BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
D06M13/165
D06M15/53
(21)【出願番号】P 2023147503
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2023-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 岳人
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102899899(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102899900(CN,A)
【文献】特開2018-040075(JP,A)
【文献】国際公開第2023/018224(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)、及び非イオン性界面活性剤(B)を含有する強化繊維用サイジング剤であって、
前記非イオン性界面活性剤(B)が下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)を含むものであることを特徴とする強化繊維用サイジング剤。
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1):下記一般式(1)で示されるアルコール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上100モル以下付加させた化合物。
【化1】
(化1において、
R
1:二重結合を1つ以上有する炭素数10以上20以下の炭化水素基。)
【請求項2】
前記樹脂(A)が、エポキシ樹脂(A1)を含むものである請求項1に記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項3】
前記強化繊維用サイジング剤の不揮発分における前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有割合が1質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤(B)が、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)を含むものである請求項1に記載の強化繊維用サイジング剤。
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2):前記一般式(1)で示されるアルコール以外の芳香族アルコールに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加させた化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の強化繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする強化繊維。
【請求項6】
前記強化繊維が、炭素繊維、又はガラス繊維である請求項5に記載の強化繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛羽を低減できる強化繊維用サイジング剤及びそれにより得られた強化繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維等の強化繊維及び母材として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等のマトリックス樹脂を含む材料として繊維強化樹脂複合材料が知られ、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。炭素繊維等の強化繊維及びマトリックス樹脂との界面の接着性等を向上させるためにサイジング剤を強化繊維に付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来より、例えば特許文献1に開示の炭素繊維用サイジング組成物が知られている。特許文献1は、エポキシ樹脂等の集束剤、並びに非イオン界面活性剤としてジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物を含む炭素繊維用サイジング組成物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の強化繊維用サイジング剤は、強化繊維用サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽の低減効果が不十分であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、非イオン性界面活性剤として所定の芳香族アルコールの(ポリ)オキシアルキレン誘導体を含む強化繊維用サイジング剤がまさしく好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の強化繊維用サイジング剤では、樹脂(A)、及び非イオン性界面活性剤(B)を含有する強化繊維用サイジング剤であって、前記非イオン性界面活性剤(B)が下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)を含むものであることを特徴とする。
【0008】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1):下記一般式(1)で示されるアルコール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上100モル以下付加させた化合物。
【0009】
【化1】
(化1において、
R
1:二重結合を1つ以上有する炭素数10以上20以下の炭化水素基。)
態様2は、態様1に記載の強化繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)が、エポキシ樹脂(A1)を含むものである。
【0010】
態様3は、態様1又は2に記載の強化繊維用サイジング剤において、前記強化繊維用サイジング剤の不揮発分における前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有割合が1質量%以上50質量%以下である。
【0011】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の強化繊維用サイジング剤において、前記非イオン性界面活性剤(B)が、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)を含むものである。
【0012】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2):前記一般式(1)で示されるアルコール以外の芳香族アルコールに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加させた化合物。
【0013】
態様5の強化繊維は、態様1~4のいずれか一態様に記載の強化繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする。
態様6は、態様5に記載の強化繊維において、前記強化繊維が、炭素繊維、又はガラス繊維である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強化繊維用サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例欄における接着性評価のための複合材界面特性評価装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の強化繊維用サイジング剤(以下、単にサイジング剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態のサイジング剤は、樹脂(A)及び後述する非イオン性界面活性剤(B)を含有する。
【0017】
(樹脂(A))
本実施形態のサイジング剤に供される樹脂(A)は、サイジング剤が付与される強化繊維の用途等に応じて適宜公知のものから選択される。樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、ポリアクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、繊維強化樹脂複合材料に適用される場合、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる観点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:商品名:jER828,jER1002,jER1001、ナガセケムテックス社製:商品名:デナコールEX-421)、ビニルエステル樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、エチレンオキサイド2mol付加ビスフェノールAアクリル酸付加物、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸)、ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製:商品名:スーパーフレックス740、第一工業製薬社製:商品名:スーパーフレックス650、ADEKA社製:商品名:アデカボンライターHUX-564、トーヨーポリマー社製:商品名:MELUSI6900)、変性ポリプロピレン樹脂(丸芳化学社製:商品名:MGP-1650)、変性ポリプロピレン樹脂(東邦化学工業社製:商品名:ハイテックP-9018)、ポリエステル樹脂(東洋紡社製:商品名:バイロナールMD-1480、三洋化成工業社製)、ポリエステル樹脂(三洋化成工業社製:商品名:ニューポールBPE-20(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物)とマレイン酸で水酸基価/酸価=4/3のモル比になるように仕込み、エステル化したポリエステル樹脂)、ポリエステル樹脂(三洋化成工業社製:商品名:ニューポールBPE-40(ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物)とフマル酸で水酸基価/酸価=5/4のモル比になるように仕込み、エステル化したポリエステル樹脂)、ポリエステル樹脂(三洋化成工業社製:商品名:ニューポールBPE-100(ビスフェノールAのエチレンオキサイド10モル付加物)とアジピン酸で水酸基価/酸価=6/5のモル比になるように仕込み、エステル化したポリエステル樹脂)、ポリアクリル樹脂(無水マレイン酸とメタクリル酸n-ブチルの共重合体のアンモニア中和物、アクリル酸と2-ヒドロキシエチルアクリルアミドの共重合体のナトリウム中和物)、フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製:商品名:YP-50S)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物とジアミノジフェニルエーテルのポリイミド樹脂前駆体、ポリアミド樹脂(東レ社製:商品名:AQナイロンP-95)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とフマル酸のポリエーテルエステル樹脂、エポキシ樹脂とメタクリル酸のビニルエステル樹脂、平均分子量2000のポリエチレングリコールとジメチルテレフタレートとラウリルアルコールの共重合物(ポリエーテルエステル樹脂)等が挙げられる。
【0019】
強化繊維が繊維強化樹脂複合材料に適用される場合、サイジング剤に配合される樹脂の種類は、接着性の向上、リサイクル性の向上等の観点より繊維強化樹脂複合材料を構成する母材の種類を考慮して選択されてもよい。
【0020】
サイジング剤の不揮発分中における樹脂(A)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。かかる含有割合が10質量%以上の場合、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。かかる樹脂(A)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。かかる含有割合が90質量%以下の場合、サイジング剤の安定性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0021】
なお、サイジング剤の不揮発分とは、測定試料を105℃で2時間加熱処理した後の残渣を示す(以下、同様)。
(非イオン性界面活性剤(B))
本実施形態に供される非イオン性界面活性剤(B)は、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)を含んで構成される。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)により、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。また、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。
【0022】
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1))
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)は、下記一般式(1)で示される芳香族アルコール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上100モル以下付加させた化合物である。
【0023】
【化2】
(化2において、
R
1:二重結合を1つ以上有する炭素数10以上20以下の炭化水素基。)
R
1を構成する二重結合を1つ以上有する炭化水素基としては、二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、炭化水素基としては、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有してもよい。また、炭化水素基の炭素数は、炭素数10以上20以下、好ましくは12以上18以下、より好ましくは14以上16以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0024】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばデセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0025】
炭化水素基中に二重結合を2つ有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばデカジエニル基、ウンデカジエニル基、ドデカジエニル基、トリデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ペンタデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、ヘプタデカジエニル基、オクタデカジエニル基、イコサジエニル基等が挙げられる。
【0026】
炭化水素基中に二重結合を3つ有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばデカトリエニル基、ウンデカトリエニル基、ドデカトリエニル基、トリデカトリエニル基、テトラデカトリエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘキサデカトリエニル基、ヘプタデカトリエニル基、オクタデカトリエニル基、イコサトリエニル基等が挙げられる。
【0027】
芳香族アルコールに付加されるエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドのみを付加しても、プロピレンオキサイドのみを付加しても、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの両方を付加してもよい。アルキレンオキサイドが二種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。また、アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの他に、ブチレンオキサイド等が付加されてもよい。
【0028】
アルキレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上100モル以下、好ましくは2モル以上60モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における芳香族アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0029】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の具体例としては、例えばカルダノール、3-[(8Z,11Z)-8,11,14-ペンタデカトリエニル]フェノール等に対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。なお、原料となる芳香族モノアルコールは、化学合成されたものであってもよく、カシューナッツ殻液から得られるカルダノールのような天然由来の混合物であってもよい。
【0030】
これらの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2))
本実施形態に供される非イオン性界面活性剤(B)は、下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)を含むものであることが好ましい。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)は、一般式(1)で示されるアルコール以外の芳香族アルコールに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加させた化合物である。サイジング剤が(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)を含むことにより、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。
【0031】
一般式(1)で示されるアルコール以外の芳香族アルコールの具体例としては、例えばフェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等が挙げられる。
【0032】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは1モル以上60モル以下、より好ましくは2モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における芳香族アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0033】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)の具体例としては、例えばトリスチレン化フェノールに対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、ジスチレン化フェノールに対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、ノニルフェノールに対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。
【0034】
これらの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(その他の非イオン性界面活性剤(B3))
さらに、上述した(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)及び(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)以外のその他の非イオン性界面活性剤(B3)を配合してもよい。
【0035】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体等のポリオキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。
【0036】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0037】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0039】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0040】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の原料として用いられる脂肪族アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0041】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド等が挙げられる。
【0042】
ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とのブロック共重合体は、親水性の低いポリオキシプロピレン鎖及び親水性の高いポリオキシエチレン鎖を有し、界面活性作用を有するものであれば特に限定されない。分子中におけるポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の数は特に限定されず、例えば1つのポリオキシプロピレン鎖と1つのポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体であってもよく、ポリオキシプロピレン鎖とそれを挟む2つのポリオキシエチレン鎖からなるポロキサマー系界面活性剤であってもよい。ポリオキシエチレン鎖を形成するエチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上200モル以下が挙げられる。ポリオキシプロピレン鎖を形成するプロピレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上100モル以下が挙げられる。
【0043】
その他の非イオン性界面活性剤(B3)の具体例としては、例えばテトラデシルアルコールに対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、ドデシルアルコールに対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、イソトリデシルアルコールに対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、硬化ヒマシ油に対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、ポリエチレングリコールとオレイン酸とを反応させたエステル、ソルビタンモノオレアート等が挙げられる。
【0044】
これらのその他の非イオン性界面活性剤(B3)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
サイジング剤の不揮発分中における非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。かかる含有割合が10質量%以上の場合、サイジング剤の安定性を向上できる。かかる非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。かかる含有割合が90質量%以下の場合、樹脂(A)の配合量を増加させることによりサイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0045】
サイジング剤の不揮発分中における(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が0.5質量%以上の場合、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。かかる(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。かかる含有割合が55質量%以下の場合、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0046】
サイジング剤に配合される全非イオン性界面活性剤(B)中における(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有割合(B1/B)の下限は、適宜設定されるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。かかる含有割合が1質量%以上の場合、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。サイジング剤に配合される全非イオン性界面活性剤(B)中における(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有割合(B1/B)の上限は、適宜設定されるが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。かかる含有割合が90質量%以下の場合、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0047】
サイジング剤の不揮発分中における(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。かかる含有割合が1質量%以上の場合、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。かかる(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。かかる含有割合が40質量%以下の場合、効率的にサイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0048】
上記第1実施形態のサイジング剤によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)第1実施形態のサイジング剤では、樹脂(A)、及び上述した(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)を含む非イオン性界面活性剤(B)を含有するように構成した。したがって、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽を低減できる。また、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。
【0049】
(1-2)サイジング剤が上述した(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2)を含む場合、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性をより向上できる。
<第2実施形態>
次に本発明に係る強化繊維を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態と同様の構成が適用される。
【0050】
本実施形態の強化繊維は、第1実施形態のサイジング剤を強化繊維に付着させることにより得られる。付着量(溶媒を含まない)については特に制限はないが、強化繊維にサイジング剤として0.01質量%以上10質量%以下となるよう付着させたものが好ましい。かかる数値範囲に規定することにより、強化繊維に対する付着斑を低減させて、上述したサイジング剤の機能を十分に発揮できる。
【0051】
(強化繊維)
本実施形態において適用される強化繊維の種類としては、特に限定されず、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等の無機繊維が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点からガラス繊維、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類としては、例えばアクリル繊維を原料として得られたPAN系炭素繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系炭素繊維、リサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維が挙げられる。
【0052】
第1実施形態のサイジング剤を強化繊維に付着させるには、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法等が挙げられる。サイジング剤を付着させた強化繊維は、続いて公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。
【0053】
(繊維強化樹脂複合材料)
上記のように得られたサイジング剤を付着させた強化繊維は、主として母材としてのマトリックス樹脂に含浸させることにより得られる繊維強化樹脂複合材料に適用される。繊維強化樹脂複合材料を製造する際、強化繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態を採用できる。
【0054】
マトリックス樹脂は、繊維強化樹脂複合材料の目的、用途等に応じて公知のものから適宜選択される。マトリックス樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリル樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂の具体例としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。
【0055】
マトリックス樹脂は、接着性の向上、リサイクル性の向上等の観点からサイジング剤に含まれる樹脂の種類を考慮して選択されてもよい。
本実施形態の強化繊維によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
(2-1)本実施形態の強化繊維では、樹脂(A)及び上述した非イオン性界面活性剤(B)を含有するサイジング剤が強化繊維に付着している。したがって、毛羽が低減された強化繊維が得られる。よって、強化繊維の製造特性を向上できる。また、樹脂との接着性を向上できる強化繊維が得られる。よって、強化繊維とマトリックス樹脂との優れた接着性により、特に機械特性等の各種特性に優れる繊維強化樹脂複合材料が得られる。
【0057】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態のサイジング剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、サイジング剤の性能を維持する観点、強化繊維に対する付与性向上等の観点から、その他の成分として、水又は有機溶媒、平滑剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合することを妨げるものではない。
【0058】
・上記実施形態のサイジング剤が適用される分野は、特に限定されない。例えばマトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料(CFRP)の他、コンクリートの補強用繊維等に適用してもよい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0060】
試験区分1(サイジング剤の調製)
(実施例1)
実施例1のサイジング剤は、樹脂(A)として三菱ケミカル社製:商品名:jER828(エポキシ樹脂(A1-1))を48部、並びに非イオン性界面活性剤(B)としてカルダノールA1モルに対し、エチレンオキサイド(以下、EOという)5モルを付加させた化合物(B1-1)を40部、トリスチレン化フェノール1モルに対し、EO30モルとプロピレンオキサイド(以下、POという)5モルをランダムに付加させた化合物(B2-1)を6部、及びテトラデシルアルコール1モルに対し、EO10モルとPO5モルをランダムに付加させた化合物(B3-1)6部をビーカーに加えてよく混合し、実施例1のサイジング剤を調製した。
【0061】
(実施例2~43、比較例1~4)
実施例2~43及び比較例1~4の各サイジング剤は、表1,2に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0062】
各例のサイジング剤中における樹脂(A)の種類と含有量、及び非イオン性界面活性剤(B)の種類と含有量は、表1,2の「樹脂(A)」欄、「非イオン性界面活性剤(B)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0063】
【0064】
【表2】
表1,2に記載する樹脂(A)、及び非イオン性界面活性剤(B)の詳細は以下のとおりである。
【0065】
<樹脂(A)>
下記表3に記載される樹脂を使用した。
【0066】
【表3】
なお、表1,2中の樹脂(A)の含有量は、樹脂原料中の有効成分の含有量を示す。
【0067】
<非イオン性界面活性剤(B)>
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1))
B1-1:カルダノールA1モルに対し、EO5モルを付加させた化合物
B1-2:カルダノールB1モルに対し、EO15モルを付加させた化合物
B1-3:カルダノールA1モルに対し、EO30モルを付加させた化合物
B1-4:カルダノールB1モルに対し、EO45モルを付加させた化合物
B1-5:カルダノールA1モルに対し、PO15モルを付加させたものに、EO25モルを付加させた化合物
B1-6:カルダノールA1モルに対し、EO10モルとPO15モルをランダムに付加させたものに、PO1モルを付加させた化合物
B1-7:カルダノールB1モルに対し、EO20モルとPO20モルをランダムに付加させた化合物
B1-8:カシューナッツ殻液100部に対し、EOを300部を付加させた化合物(上記一般式(1)で示されるアルコール1モルに対しEOの付加モル数は約10モル)
※カルダノールAは、東北化工社製のLB-7000(カルダノール90質量%とカードル10質量%の混合物)を使用した。カルダノールの側鎖の炭化水素基は、不飽和結合の数が0個のペンタデシル基が5質量%、不飽和結合の数が1個のペンタデセニル基が35質量%、不飽和結合の数が2個のペンタデカジエニル基が20質量%、不飽和結合の数が3個のペンタデカトリエニル基が40質量%の割合を示す。表1,2に記載される(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有量は、上記一般式(1)由来の化合物の含有量割合を示す。
【0068】
カルダノールBは、東北化工社製のLB-7250(カルダノール95質量%とカードル5質量%の混合物)を使用した。カルダノールの側鎖の炭化水素基は、不飽和結合の数が0個のペンタデシル基が5質量%、不飽和結合の数が1個のペンタデセニル基が35質量%、不飽和結合の数が2個のペンタデカジエニル基が20質量%、不飽和結合の数が3個のペンタデカトリエニル基が40質量%の割合を示す。表1,2に記載される(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有量は、上記一般式(1)由来の化合物の含有量割合を示す。
【0069】
カシューナッツ殻液は、東北化工社製のCNSL(モノマー中においてカルダノール82質量%とカードル18質量%の混合物)を使用した。カルダノールの側鎖の炭化水素基は、不飽和結合の数が0個のペンタデシル基が5質量%、不飽和結合の数が1個のペンタデセニル基が35質量%、不飽和結合の数が2個のペンタデカジエニル基が20質量%、不飽和結合の数が3個のペンタデカトリエニル基が40質量%の割合を示す。表1,2に記載される(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)の含有量は、上記一般式(1)由来の化合物の含有量割合を示す。
【0070】
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(B2))
B2-1:トリスチレン化フェノール1モルに対し、EO30モルとPO5モルをランダムに付加させた化合物
B2-2:トリスチレン化フェノール1モルに対し、EO30モルとPO6モルをランダムに付加させた化合物
B2-3:トリスチレン化フェノール1モルに対し、PO10モルを付加させたものに、EO30モルを付加させた化合物
B2-4:ジスチレン化フェノール1モルに対し、EO27モルとPO3モルをランダムに付加させた化合物
B2-5:ジスチレン化フェノール1モルに対し、EO27モルとPO4モルをランダムに付加させた化合物
B2-6:トリスチレン化フェノール1モルに対し、PO5モルを付加させたものに、EO20モルを付加させた化合物
B2-7:ノニルフェノール1モルに対し、EO10モルを付加させた化合物
(その他の非イオン性界面活性剤(B3))
B3-1:テトラデシルアルコール1モルに対し、EO10モルとPO5モルをランダムに付加させた化合物
B3-2:ドデシルアルコール1モルに対し、EO10モルを付加させた化合物
B3-3:イソトリデシルアルコール1モルに対し、PO20モルを付加させたものに、EO20モルを付加させた化合物
B3-4:硬化ヒマシ油1モルに対し、EO25モルを付加させた化合物
B3-5:ポリエチレングリコール(数平均分子量600)1モルとオレイン酸1.5モルとを反応させたエステル
B3-6:ソルビタンモノオレアート
試験区分2(評価)
(毛羽)
調製した各例のサイジング剤を水希釈し、固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をストランド状の炭素繊維又はガラス繊維に不揮発分として2%付与されるように浸漬法にて給油することで各例のサイジング剤が付与されたストランド状の繊維を調製した。
【0071】
次に、直径2mmのクロムめっきされたステンレス棒を、その表面を得られた繊維束が120°の接触角で接触しながら通過するように、ジグザグに15mm間隔で5本配置した。このステンレス棒間に繊維束をジグザグにかけ、1kg重の張力をかけた。巻き取りロール直前で繊維束を、1kg重の荷重をかけた10cm×10cmのウレタンフォーム2枚で挟み、1m/分の速度で5分間擦過させた。この間にスポンジに付着した毛羽の質量を測定して、以下の評価基準で評価した。結果を表1,2の「毛羽」欄に示す。
【0072】
・毛羽の評価基準
◎(良好):0.10mg/m未満
○(可):0.10mg/m以上、0.20mg/m未満
×(不可):0.20mg/m以上
(接着性)
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力(界面せん断強度とする)により評価した。
図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0073】
前記評価のために調製した繊維束から1本の繊維を取り出し、この繊維12を板状の四角枠状のホルダー11に緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製の商品名jER828とトリエチレンテトラミン)を、直径が約100μmの樹脂滴13となるように繊維12に付着させ、150℃の雰囲気下で15分間加熱して固定した。
【0074】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0075】
樹脂滴13が固定されている繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される荷重が計測される。
【0076】
ホルダー11を5mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が繊維12から剥離する際に生じる最大荷重Fを、ロードセル15にて計測した。
【0077】
計測した値を用いて、下記の数1により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を求めた。平均値より以下の基準で接着性について評価を行った。結果を表1,2の「接着性」欄に示す。
【0078】
【数1】
数1において、
F:繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大荷重(N)、
D:繊維12の直径(m)、
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
【0079】
・接着性の評価
◎(良好):界面せん断強度が50MPa以上
○(可):界面せん断強度が40MPa以上、50MPa未満
×(不可):界面せん断強度が40MPa未満
表1,2の結果から、本発明によれば、サイジング剤が付与された強化繊維の毛羽の低減効果を向上できる。また、サイジング剤が付与された強化繊維と樹脂との接着性を向上できる。
【符号の説明】
【0080】
10…複合材界面特性評価装置
11…ホルダー
12…繊維
13…樹脂滴
14…接着剤
15…ロードセル
16…基板
17,18…ブレード
【要約】
【課題】毛羽を低減できる強化繊維用サイジング剤及びそれにより得られた強化繊維を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂(A)、及び非イオン性界面活性剤(B)を含有する強化繊維用サイジング剤であって、前記非イオン性界面活性剤(B)が下記の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)を含むものであることを特徴とする。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(B1)は、下記一般式(1)で示されるアルコール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上100モル以下付加させた化合物を示す。下記化1において、R
1は、二重結合を1つ以上有する炭素数10以上20以下の炭化水素基を示す。
(化1)
【選択図】なし