(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】位置推定方法及び位置推定装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20231225BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20231225BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20231225BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20231225BHJP
【FI】
G01C21/28
G09B29/00 A
G09B29/10 A
G01S17/93
(21)【出願番号】P 2019237812
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】武田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199333(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
G09B 29/00
G09B 29/10
G01S 17/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されたセンサにより前記自車両の周囲の物体の自車両に対する3次元位置情報である第1位置情報を取得し、
前記自車両への前記センサの取付位置に基づいて、前記自車両が走行する路面
上の点の自車両に対する3次元位置情報である第2位置情報を生成し、
前記自車両の周囲の物体及び前記自車両が走行する路面
上の点の既知の3次元位置情報を有する地図情報と、前記第1位置情報及び前記第2位置情報とを比較し
、
前記地図情報と前記第1位置情報及び前記第2位置情報との間の誤差の総和が小さくなるように前記自車両の位置を算出することにより、前記自車両の位置を推定する、
ことを特徴とする位置推定方法。
【請求項2】
前記自車両の接地部位の位置、前記自車両の直下の範囲、前記自車両の直下の範囲に所定のマージンを加えた範囲、又は前記自車両が占める車幅方向の位置範囲の路面の前記第2位置情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の位置推定方法。
【請求項3】
前記自車両の移動量を取得し、
前記移動量に基づいて前記第1位置情報を補正して蓄積し、
前記第2位置情報及び蓄積した前記第1位置情報と前記地図情報とを比較して前記自車両の位置を推定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置推定方法。
【請求項4】
前記センサにより検出された前記路面の前記第1位置情報が前記自車両の位置推定に十分であるか否かを判定し、
前記路面の前記第1位置情報が前記自車両の位置推定に十分である場合に、前記地図情報と比較する前記第2位置情報を低減する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の位置推定方法。
【請求項5】
前記路面の平面度を推定し、
前記平面度が閾値未満の場合に前記地図情報と比較する前記第2位置情報を低減する、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の位置推定方法。
【請求項6】
前記第1位置情報及び前記第2位置情報と前記地図情報の合致度を算出し、
前記合致度が比較的低い場合には、前記合致度が比較的高い場合よりも、前記地図情報と比較する前記第2位置情報を生成する範囲又は密度を小さくする、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の位置推定方法。
【請求項7】
前記センサは、前記自車両の周囲の物体を水平方向に走査して前記第1位置情報を取得することを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の位置推定方法。
【請求項8】
自車両に搭載されて、前記自車両の周囲の物体の自車両に対する3次元位置情報である第1位置情報を取得するセンサと、
前記自車両への前記センサの取付位置に基づいて、前記自車両が走行する路面
上の点の自車両に対する3次元位置情報である第2位置情報を生成し、前記自車両の周囲の物体及び前記自車両が走行する路面
上の点の既知の3次元位置情報を有する地図情報と、前記第1位置情報及び前記第2位置情報とを比較し
、前記地図情報と前記第1位置情報及び前記第2位置情報との間の誤差の総和が小さくなるように前記自車両の位置を算出することにより、前記自車両の位置を推定するコントローラと、
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定方法及び位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等のセンサを自車両に搭載し、センサにより検出された情報と地図情報とを比較して、自車両の現在位置の推定を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/180096号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサにより取得した自車両の周囲の物体の3次元位置情報が十分でないと、鉛直方向の自車両の位置の推定精度や、ロール角、ピッチ角の推定精度が低下するおそれがある。この結果、水平方向の自車両の位置の推定精度にも影響を及ぼす恐れがある。
本発明は、センサにより取得した自車両の周囲の物体の3次元位置情報が十分でない場合の自車両の位置の推定精度の低下を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による位置推定方法では、自車両に搭載されたセンサにより自車両の周囲の物体の自車両に対する3次元位置情報である第1位置情報を取得し、自車両へのセンサの取付位置に基づいて、自車両が走行する路面の自車両に対する3次元位置情報である第2位置情報を生成し、自車両の周囲の物体及び自車両が走行する路面の既知の3次元位置情報を有する地図情報と、第1位置情報及び第2位置情報とを比較して自車両の位置を推定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一形態によれば、センサにより取得した自車両の周囲の物体の3次元位置情報が十分でない場合の自車両の位置の推定精度の低下を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の位置推定装置を搭載した車両の概略構成の一例のブロック図である。
【
図2A】センサによる3次元位置情報を用いた位置推定において鉛直方向の推定精度が低下する理由の説明図である。
【
図2B】センサによる3次元位置情報を用いた位置推定において鉛直方向の推定精度が低下する理由の説明図である。
【
図2C】センサによる3次元位置情報を用いた位置推定において水平方向の推定精度が低下する理由の説明図である。
【
図3】実施形態の位置推定方法の一例の説明図である。
【
図4】位置推定装置の概略構成の一例のブロック図である。
【
図5】自車両の移動量に基づく点群データの補正の説明図である。
【
図6A】仮想点群の設定範囲の第1例の説明図である。
【
図6B】仮想点群の設定範囲の第2例の説明図である。
【
図6C】仮想点群の設定範囲の第3例の説明図である。
【
図7A】仮想点群の設定範囲の第4例の説明図である。
【
図7B】仮想点群の設定範囲の第5例の説明図である。
【
図8】点群データ及び仮想点群データと地図点群データとを比較して自車両の位置を推定する処理の一例の説明図である。
【
図9】実施形態の位置推定方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1を参照する。以下、移動体の一例として車両の現在位置を推定する場合について説明するが、本発明は車両に限らず様々な移動体の現在位置の推定に広く適用することができる。
自車両1には、位置推定装置10が搭載される。位置推定装置10は、物体センサ11と、地図データベース12と、測位装置13と、車両センサ14と、コントローラ15を備える。
図1において地図データベースを「地
図DB」と表記する。
図4においても同様である。
【0010】
物体センサ11は、自車両1の周囲の物体表面の位置を検出して、検出位置の3次元位置情報を出力するセンサである。
例えば物体センサ11は、LIDARや、レーザレーダ、ミリ波レーダ、ソナーなどの測距センサを備えてもよい。また、物体センサ11は、自車両1に搭載されたカメラであってもよい。例えば物体センサ11として、自車両1の周囲の物体を水平方向に走査して物体の3次元位置情報を取得するセンサを使用してもよい。
【0011】
例えば物体センサ11は、取得した自車両1の周囲の物体表面の自車両に対する3次元位置情報を、3次元の点群データとしてコントローラ15へ出力する。物体センサ11により取得される3次元位置情報は、特許請求の範囲に記載の「第1位置情報」の一例である。なお、物体センサ11により取得される3次元位置情報は、物体センサ11の位置(すなわち自車両1の位置)を基準とする相対位置情報であり、自車両1の位置を中心とする車両座標系で表現される。
なお、物体センサ11による3次元位置情報は、必ずしも点群データに限定される必要はなく、例えば画像特徴点や明示的なランドマークの位置情報であってもよい。
【0012】
地図データベース12は、カメラ、LIDARや、レーザレーダ、ミリ波レーダ、ソナーなどセンサを用いて取得された道路及びその周辺に存在する既知の物体や道路の路面の位置を示す3次元位置情報により構成される地図情報のデータベースである。地図データベース12は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどの所定の記憶装置に記憶される。地図データベース12を構成する3次元位置情報は、例えば3次元点群データや、3次元点群データから位置推定のために抽出された各種形態の情報(特徴点、物標、ランドマーク、統計による近似値)であってよい。
【0013】
地図データベース12に格納される3次元位置情報は、所定の処理座標系(例えば、地図座標系や世界座標系)で表現されており、地図上の位置を示す。一方で、物体センサ11により取得される3次元位置情報は、物体センサ11の位置(すなわち自車両1の位置)を基準とする相対位置情報であり、自車両1の位置を中心とする車両座標系で表現される。
以下、地図情報を構成する点群データを「地図点群データ」と表記し、物体センサ11により取得される点群データを「センサ点群データ」と表記する。
【0014】
測位装置13は、自車両1の現在位置を測定する。測位装置13は、例えば全地球型測位システム(GNSS)受信機を備えてよい。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であり、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。
【0015】
車両センサ14は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ14には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、自車両1が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両1のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0016】
コントローラ15は、物体センサ11によるセンサ点群データと地図データベース12に格納される地図点群データとに基づいて、自車両1の現在の3次元位置と3軸方向の向き(すなわち6自由度の位置及び姿勢)を推定する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。
以下、コントローラ15による自車両1の現在の3次元位置と3軸方向の向きの推定を、単に「位置推定」と表記することがある。
【0017】
コントローラ15は、プロセッサ16と、記憶装置17等の周辺部品とを含む。プロセッサ16は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置17は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置17は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するコントローラ15の機能は、例えばプロセッサ16が、記憶装置17に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0018】
なお、コントローラ15を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ15は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ15はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0019】
次に、コントローラ15による位置推定の一例を説明する。
図2A及び
図2Bを参照する。物体センサ11により取得されるセンサ点群データ21と地図点群データとを照合して自車両1の位置推定を行う場合に、取得したセンサ点群データ21が十分でないことにより、自車両1の鉛直方向位置が不明になるおそれがある。
例えば、LIDARには、視野角が狭いセンサ(いわゆるラインスキャナ)などがあり、このセンサで得られる情報は平面状に分布する点群情報となり、例えば鉛直方向に関する情報が縮退する。
【0020】
すると、例えば
図2A及び
図2Bに示すように、鉛直方向に沿った形状変化が少ない物体20のセンサ点群データ21が得られた場合に、このセンサ点群データ21と地図点群データとを比較しても自車両1の鉛直方向位置が不明になり、鉛直方向の自車両1の位置の推定精度が低下するおそれがある。
【0021】
このように、自車両1の鉛直方向位置の精度が低下すると、水平方向位置の推定精度の低下を招く恐れがある。
図2Cを参照してその理由の一例を説明する。
例えば、鉛直方向位置が異なる物体表面22及び23は、物体センサ11による測距方向における位置が異なる。このため、自車両1の鉛直方向位置の精度が低下したことにより、誤って物体表面22のセンサ点群データ21と物体表面23の地図点群データとを比較して自車両1の位置を推定すると、水平方向位置の推定精度も低下する。
【0022】
そこで、実施形態の位置推定方法では、自車両1の下には必ず路面があり、路面の位置は自車両1への物体センサ11の取付位置に基づいて推定できることに着目する。
図3を参照する。コントローラ15は、自車両1への物体センサ11の取付位置に基づいて、自車両1が走行する路面24の3次元位置情報25a、25b、25c及び25dを仮想的に生成する。3次元位置情報25a~25dは、特許請求の範囲に記載の「第2位置情報」の一例である。
3次元位置情報25a~25dは、物体センサ11により取得される3次元位置情報と同様に、物体センサ11の位置(すなわち自車両1の位置)を基準とする相対位置情報であり、自車両1の位置を中心とする車両座標系で表現される。
【0023】
例えばコントローラ15は、路面24への自車両1の接地点から物体センサ11までの高さHに基づいて、3次元位置情報25a~25dを生成してよい。
例えばコントローラ15は、3次元位置情報25a~25dを、路面24の3次元位置を表す3次元点群データとして生成する。以下、コントローラ15によって生成された路面24の点群データを「仮想点群データ」と表記する。
【0024】
コントローラ15は、物体センサ11により取得される3次元位置情報及びコントローラ15が生成した路面24の3次元位置情報と地図情報とを比較して、自車両1の位置を推定する。
例えばコントローラ15は、センサ点群データ及び仮想点群データと、地図点群データ
と、を比較して自車両1の位置を推定する。
【0025】
このように、実施形態の位置推定方法では、物体センサ11により取得される3次元位置情報21と地図情報との比較に加えて、物体センサ11の取付位置に基づいて仮想的に生成した路面24の3次元位置情報と25a~25d地図情報とを比較して自車両1の位置を推定する。これにより地図情報と比較する鉛直方向に関する位置情報を増加できる。
この結果、物体センサ11による3次元位置情報が十分でなくても、鉛直方向の自車両1の位置の推定精度や、ロール角、ピッチ角の推定精度の低下を軽減できる。また、鉛直方向の位置精度の低下に伴う水平方向の位置精度の低下も軽減できる。
【0026】
以下、位置推定装置10の機能の一例を詳しく説明する。以下、物体センサ11により得られる3次元位置情報や地図データベース12を構成する3次元位置情報が3次元点群データである例について説明する。しかしながら本発明はこのような形態に限定されるものではなく、上記の通り3次元位置情報として画像特徴点、物標、ランドマーク、統計による近似値を用いることができる。
図4を参照する。コントローラ15は、点群データ取得部30と、点群データ格納部31と、移動量演算部32と、点群データ補正部33と、仮想点群追加部34と、位置推定部35を備える。
【0027】
点群データ取得部30は、物体センサ11からセンサ点群データ21を取得する。点群データ取得部30は、取得したセンサ点群データ21を点群データ格納部31に格納する。例えば点群データ格納部31は、
図1に示す記憶装置17に確保された記憶領域であってよい。地図データベース12が記憶される記憶装置に、点群データ格納部31のための記憶領域を確保してもよい。
移動量演算部32は、前回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得した時点tpから今回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得する時点tcまでの自車両1の移動量を演算する。例えば移動量演算部32は、時点tpから時点tcまでの自車両1の位置と姿勢(方向)の変化を自車両1の移動量として演算する。
例えば、移動量演算部32は、測位装置13による測位結果や、車両センサ14からの車両信号によるオドメトリに基づいて自車両1の移動量を演算する。
【0028】
点群データ補正部33は、前回の処理サイクル及びそれ以前に(すなわち今回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得する時点tcよりも前に)取得され点群データ格納部31に格納されたセンサ点群データ21を、移動量演算部32が演算した移動量で補正して、点群データ格納部31に蓄積する。
図5を参照して点群データ補正部33によるセンサ点群データ21の補正処理の一例を説明する。参照符号1は、今回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得する時点tcにおける自車両の位置を示す。
【0029】
一方で、破線40は前回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得した時点tpにおける自車両1の位置を示す。丸プロット21は、時点tpにおいてセンサ点群データが示す位置を示す。
上記の通り、センサ点群データは車両座標系上の座標、すなわち自車両1を基準とする相対位置で表現されている。このため、時点tpから時点tcまでの間に参照符号1で示す位置へ自車両1が移動すると、センサ点群データ21が示す位置は、四角プロット41で示す位置へ変化する。時点tcの自車両1の位置を基準とする相対位置41は、時点tpの位置40を基準とする相対位置21と同一である。
点群データ補正部33は、四角プロット41で示す相対位置を表すセンサ点群データ21を、時点tcにおける自車両1の位置を基準にして丸プロット21で示す相対位置を示す点群データへ補正する。
【0030】
図4を参照する。仮想点群追加部34は、自車両1への物体センサ11の取付位置に基づいて、自車両1が走行する路面24の位置を示す仮想点群データ25a~25dを仮想的に生成する。仮想点群データ25a~25dは、自車両1の位置推定において地図点群データと比較する点群データに追加される。仮想点群データ25a~25dを総称して「仮想点群データ25」と表記すことがある。
仮想点群追加部34は、仮想点群データ25の鉛直方向の座標を、路面24への自車両1の接地点から物体センサ11までの高さHに基づいて演算する。
【0031】
仮想点群追加部34は、例えば
図6A~6C及び
図7Bに示す水平面内範囲42に1つ以上の仮想点群データ25を生成る。例えば仮想点群追加部34は、これらの範囲42に分布するように、仮想点群データ25を生成してよい。
例えば、仮想点群追加部34は、仮想点群データ25の水平面内位置を範囲42内に位置するように適宜決定し、高さHに基づいて鉛直方向位置を演算してよい。
【0032】
図6Aを参照する。例えば仮想点群追加部34は、自車両1の下の路面24はほぼ平面であると仮定して、自車両1の直下の範囲42を、仮想点群データ25の生成範囲として設定してよい。この場合、例えば仮想点群追加部34は、自車両1の直下の範囲42に等間隔に分布するように仮想点群データ25を配置してもよく、不均等に仮想点群データ25を配置してもよい。例えば、自車両1の接地部位の位置に近いほど密に、遠くなるほど疎らになるように仮想点群データ25を配置してもよい。
また、例えば仮想点群追加部34は、
図6Bに示すように、自車両1の直下の範囲に所定のマージンを加えた範囲42を、仮想点群データ25の生成範囲として設定してよい。
この場合、例えば仮想点群追加部34は、マージンが加えられた範囲42に等間隔に分布するように仮想点群データ25を配置してもよく、不均等に仮想点群データ25を配置してもよい。例えば、自車両1の直下の位置に近いほど密に、遠くなるほど疎らになるように仮想点群データ25を配置してもよい。また、自車両1の接地部位の位置に近いほど密に、遠くなるほど疎らになるように仮想点群データ25を配置してもよい。
【0033】
また
図6Cに示すように、例えば自車両1が占める車幅方向の位置範囲に亘って延在し、自車両1の現在位置から後方に延びる範囲42に分布するように、仮想点群データ25を生成してよい。
この場合、例えば仮想点群追加部34は、後方に延びる範囲42に等間隔に分布するように仮想点群データ25を配置してもよく、不均等に仮想点群データ25を配置してもよい。例えば、自車両1の直下の位置に近いほど密に、遠くなるほど疎らになるように仮想点群データ25を配置してもよい。また、自車両1の接地部位の位置に近いほど密に、遠くなるほど疎らになるように仮想点群データ25を配置してもよい。
また例えば、仮想点群追加部34が、自車両1の直下の範囲42に仮想点群データ25を生成し、点群データ補正部33が、自車両1の移動量で仮想点群データ25を補正して蓄積することにより、
図6Cに示す範囲42に分布する仮想点群データ25を生成してもよい。
【0034】
また仮想点群追加部34は、
図7Aに示すように路面24に対する自車両1の接地部位の位置に、仮想点群データ25a及び25bを生成してよい。仮想点群追加部34は、自車両1への物体センサ11の取付位置に基づいて自車両1の接地部位の位置を算出する。
また仮想点群追加部34は、
図7Bに示すように路面24に対する自車両1の接地部位の位置の軌跡が占める範囲42に分布するように、仮想点群データ25を生成してよい。
例えば、仮想点群追加部34が、自車両1の接地部位の位置に仮想点群データ25を生成し、点群データ補正部33が、自車両1の移動量で仮想点群データ25を補正して蓄積することにより、
図7Bに示す範囲42に分布する仮想点群データ25を生成してよい。
【0035】
なお、仮想点群追加部34は、仮想点群データ25を生成する際に、点群データ取得部30が取得したセンサ点群データ21や、点群データ格納部31に蓄積されたセンサ点群データ21に、自車両1の位置推定に十分な路面24の点群データが含まれているか否かを判定してよい。
仮想点群追加部34は、十分な路面24の点群データがセンサ点群データ21に含まれていない場合に仮想点群データ25を生成(追加)し、十分な路面24の点群データがセンサ点群データ21に含まれている場合には、仮想点群データ25を生成(追加)しないか、または、生成する仮想点群データ25を低減してもよい。これにより、地図点群データと比較される仮想点群データ25が低減される。この結果、計算負荷を軽減できる。
【0036】
具体的には、仮想点群追加部34は、物体センサ11の取付位置から路面24までの高さHを求め,高さHとの高低差が一定値以下のセンサ点群データ21が所定数以上ある場合に、十分な路面24のセンサ点群データ21があると判定してよい。
または、センサ点群データ21を取得した範囲を等間隔の複数セルに分割し、各セルにおいてセンサ点群データ21が示す形状が水平面と平行か否かを判定し、センサ点群データ21が示す形状が水平面と平行であるセルが一定数以上ある場合に、十分な路面24のセンサ点群データ21があると判定してもよい。
【0037】
また、仮想点群追加部34は、仮想点群データ25を生成する際に、自車両1の直下の路面24の平面度を推定してよい。
仮想点群追加部34は、平面度が許容範囲にある場合(例えば平面度が閾値以上の場合)に仮想点群データ25を生成(追加)し、平面度が許容範囲にない場合(例えば平面度が閾値未満の場合)には、仮想点群データ25を生成(追加)しないか、または、生成する仮想点群データ25を低減してもよい。これにより、地図点群データと比較される仮想点群データ25が低減される。
このため、路面24が平坦であるとの仮定が成立しない個所で仮想点群データ25を生成することによる、位置推定の精度低下を防止できる。
【0038】
例えば、仮想点群追加部34は、自車両1の直下の路面24の形状が平面近似できるかどうかを判断し、平面近似できないと判断した場合は、仮想点群データ25を生成しない、又は仮想点群データ25を低減してよい。
具体的には、仮想点群追加部34は、段差を乗り越えたか、近傍の路面24の曲率が十分小さいかに基づいて、平面近似できるか否かを判定してよい。仮想点群追加部34は、加速度センサなどにより鉛直方向に大きな加速度変化が生じたか否かによって段差の乗り越えを判断してよい。仮想点群追加部34は、鉛直方向加速度やピッチ角の時系列に基づいて路面24の曲率を推定してよい。
【0039】
位置推定部35は、センサ点群データ及び仮想点群データと、地図点群データと、を比較して自車両1の位置を推定する。以下、位置推定部35による位置推定の一例を説明する。
位置推定部35は、前回の処理サイクルで推定した自車両1の処理座標系上の位置(すなわち地図上の位置)を、移動量演算部32が演算した移動量で補正して自車両1の現在の仮位置を決定する。
【0040】
位置推定部35は、自車両1の処理座標系上の位置が仮位置であると仮定して、センサ点群データ及び仮想点群データが示す相対位置情報を、処理座標系上の絶対位置情報に変換する。
図8に、処理座標系におけるセンサ点群データ21a、21b、…及び仮想点群データ25…の位置を示す。
位置推定部35は、センサ点群データ21a、21b、…及び仮想点群データ25…の各々に対応する地図点群データM1、M2、M3…の組合せを選択する。
【0041】
位置推定部35は、センサ点群データ21a、21b、…及び仮想点群データ25…と、地図点群データM1、M2、M3…との間の誤差の大きさ(距離)D1、D2、D3…を算出し、誤差の総和S=D1+D2+D3+…を算出する。
位置推定部35は、数値解析により、総和Sが最小となる地図点群データM1、M2、M3…の組合せと自車両1の位置及び姿勢を算出して、自車両1の現在位置(地図上の位置)の推定値として決定する。
【0042】
また、位置推定部35は、センサ点群データ21a、21b、…及び仮想点群データ25…と、地図点群データM1、M2、M3…との間の合致度(マッチング度)Dmを算出する。
例えば、位置推定部35は、最小の総和Sが小さいほど高い合致度Dmを算出してよい。例えば、位置推定部35は、最小の総和Sの減少関数に基づいて合致度Dmを算出してよい。また例えば位置推定部35は、最小の総和Sの増加関数の逆数(例えば最小の総和Sの逆数)を合致度Dmとして算出してよい。
【0043】
実際には、位置推定部35は、既存のICP(iterative closest point)、NDT(Normal Distribution Transform)、やカルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、粒子フィルタ、情報フィルタ、あるいは、ニュートン法、レーベンバーク・マルカート法などに基づいて、自車両1の現在位置の推定値と合致度Dmとを算出してよい。
【0044】
仮想点群追加部34は、合致度Dmに応じて生成する仮想点群データ25の密度を調整して(変化させて)もよく、合致度Dmに応じて仮想点群データ25を生成する水平方向範囲の広さを調整して(変化させて)もよい。
例えば仮想点群追加部34は、合致度Dmが低いほど、生成する仮想点群データ25の密度を下げてよい。また、合致度Dmが低いほど、仮想点群データ25を生成する水平方向範囲を狭くしてもよい。
【0045】
合致度Dmが低い仮想点群データ25を多数生成すると、このような仮想点群データ25に過度にマッチングし、正しい推定を行うことができなくなるからである。また、仮想点群追加部34は、合致度Dmが所定値より低い場合に仮想点群データ25にノイズを加え、合致度Dmが引くほどノイズを増やしてもよい。このような方法によっても、合致度Dmが低い仮想点群データ25との過度のマッチングを抑制できる。
仮想点群データ25を生成する水平方向範囲を狭くする場合には、例えば車幅方向範囲を狭くしてよい。一般的な路面は、水はけのために路端に向かって表面高さが低くなるように形成されており、車幅方向に向かって自車両1の接地位置から離れるにつれて接地位置との高低差が増加するからである。
【0046】
仮想点群追加部34は、今回の処理サイクルで算出した合致度Dmに応じて、次回以降の処理サイクルで生成する仮想点群データ25の密度及び/又は水平方向範囲を調整しても(変化させても)よい。
または、仮想点群追加部34は、密度及び/又は水平方向範囲を調整して(変化させて)今回の処理サイクルで用いる仮想点群データ25を再度生成し、位置推定部35が位置推定をやり直してもよい。
また、合致度Dmに応じて仮想点群データ25の密度及び/又は水平方向範囲を小さくする場合には、位置推定部35は、生成済みの仮想点群データ25の中から位置推定に用いる仮想点群データ25を選択して、より小さな密度及び/又は水平方向範囲の仮想点群データ25を用いて位置推定をやり直してもよい。
【0047】
(動作)
次に
図9を参照して、実施形態の位置推定方法の一例を説明する。
ステップS1において移動量演算部32は、前回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得した時点tpから今回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得する時点tcまでの自車両1の移動量を演算する。
【0048】
ステップS2において点群データ補正部33は、前回の処理サイクル及びそれ以前に(すなわち今回の処理サイクルでセンサ点群データ21を取得する時点tcよりも前に)取得され点群データ格納部31に格納されたセンサ点群データ21を、移動量演算部32が演算した移動量で補正して、点群データ格納部31に蓄積する。
ステップS3において点群データ取得部30は、物体センサ11からセンサ点群データ21を取得して、点群データ格納部31に格納する。
【0049】
ステップS4において点群データ補正部33は、点群データ格納部31に蓄積されたセンサ点群データ21に、自車両1の位置推定に十分な路面24の点群データが含まれているか否かを判定する。十分な路面24のセンサ点群データ21がある場合(ステップS4:Y)には、点群データ補正部33が仮想点群データ25を生成せずに、処理はステップS5へ進む。
ステップS5において位置推定部35は、センサ点群データ21と地図点群データとを比較して自車両1の位置を推定する。その後に処理はステップS10へ進む。
【0050】
一方で、ステップS4において十分な路面24のセンサ点群データ21がない場合(ステップS4:N)に処理はステップS6へ進む。
ステップS6において仮想点群追加部34は、自車両1の直下の路面24の平面度を推定し、平面度が許容範囲にあるか否かを判定する。平面度が許容範囲にない場合(ステップS6:N)に、点群データ補正部33が仮想点群データ25を生成せずに、処理はステップS5へ進む。
ステップS5において位置推定部35は、センサ点群データ21と地図点群データとを比較して自車両1の位置を推定する。その後に処理はステップS10へ進む。
【0051】
一方で、ステップS6において平面度が許容範囲にある場合(ステップS6:Y)に処理はステップS7へ進む。
ステップS7において仮想点群追加部34は、自車両1への物体センサ11の取付位置に基づいて、自車両1が走行する路面24の位置を示す仮想点群データ25を仮想的に生成する。
ステップS8において位置推定部35は、センサ点群データ21及び仮想点群データ25と、地図点群データと、を比較して自車両1の位置を推定する。また、位置推定部35は、センサ点群データ21及び仮想点群データ25と、地図点群データとの間の合致度(マッチング度)Dmを算出する。
【0052】
ステップS9において仮想点群追加部34は、合致度Dmに応じて生成する仮想点群データ25の密度を調整する。及び/又は、合致度Dmに応じて仮想点群データ25を生成する水平方向範囲を調整する。その後に処理はステップS10へ進む。
ステップS10において位置推定装置10は、自車両1のイグニッションスイッチ(IGN)がオフになったか否かを判定する。イグニッションスイッチがオフにならない場合(ステップS10:N)に処理はステップS1に戻る。イグニッションスイッチがオフになった場合(ステップS10:Y)に処理は終了する。
【0053】
(実施形態の効果)
(1)点群データ取得部30は、自車両1に搭載された物体センサ11により自車両1の周囲の物体の自車両1に対する3次元位置情報である第1位置情報を取得する。仮想点群追加部34は、自車両1への物体センサ11の取付位置に基づいて、自車両1が走行する路面24の自車両1に対する3次元位置情報である第2位置情報を生成する。位置推定部35は、自車両1の周囲の物体及び自車両1が走行する路面の既知の3次元位置情報を有する地図情報と、第1位置情報及び第2位置情報とを比較して自車両1の位置を推定する。
【0054】
これにより、第1位置情報のみを用いて自車両1の位置推定を行った場合には鉛直方向の自車両の位置や、ロール角、ピッチ角の推定精度が低くなっても、第1位置情報に加えて第2位置情報を用いて自車両1の位置を推定することにより、鉛直方向位置や、ロール角、ピッチ角の推定精度を向上できる。これにより、鉛直方向位置や、ロール角、ピッチ角の推定精度の低下を軽減できる。
【0055】
(2)仮想点群追加部34は、自車両1の接地部位の位置、自車両1の直下の範囲、自車両1の直下の範囲に所定のマージンを加えた範囲、又は自車両1が占める車幅方向の位置範囲の路面24の第2位置情報を生成する。
路面24が平坦である場合には、上記範囲において路面24の第2位置情報を精度良く生成することができる。この結果、鉛直方向位置や、ロール角、ピッチ角の推定精度を向上できる。
【0056】
(3)移動量演算部32は、自車両1の移動量を取得する。点群データ補正部33は、移動量に基づいて第1位置情報を補正して点群データ格納部31に蓄積する。位置推定部35は、点群データ格納部31に蓄積した第1位置情報及び第2位置情報を地図情報と比較して自車両1の位置を推定する。
これにより、複数回の処理サイクルで取得した第1位置情報を用いて自車両1の位置を推定することが可能になるため、自車両1の位置の推定精度を向上できる。
【0057】
(4)仮想点群追加部34は、物体センサ11により検出された路面24の第1位置情報が自車両1の位置推定に十分であるか否かを判定し、路面24の第1位置情報が自車両1の位置推定に十分である場合に、地図情報と比較する第2位置情報を低減する。
これにより、第1位置情報によって十分な精度で自車両1の位置を推定できれば、第2位置情報の生成、及び地図情報と第2位置情報との比較を省略して、処理負荷を軽減できる。
【0058】
(5)仮想点群追加部34は、路面の平面度を推定し、平面度が閾値未満の場合に地図情報と比較する第2位置情報を低減する。
これにより、路面24が平坦であるとの仮定が成立しない個所で生成した第2位置情報による位置推定の精度低下を防止できる。
【0059】
(6)位置推定部35は、第1位置情報及び第2位置情報と地図情報の合致度を算出する。仮想点群追加部34は、合致度が比較的低い場合には、合致度が比較的高い場合よりも、地図情報と比較する第2位置情報を生成する範囲又は密度を小さくする。
第2位置情報と地図情報の合致度が低い個所は、第2位置情報を生成するのに適していないと考えられる。したがって、このような箇所では地図情報と比較する第2位置情報を低減することで、合致度を向上させて位置測定の精度を向上できる。
【0060】
(7)物体センサ11は、自車両1の周囲の物体を水平方向に走査して第1位置情報を取得する。
本発明によれば、水平方向に走査する物体センサ11を用いて、鉛直方向に関する情報が縮退した第1位置情報を取得しても、鉛直方向の自車両1の位置の推定精度や、ロール角、ピッチ角の推定精度の低下を軽減できる。また、鉛直方向の位置精度等の低下に伴う水平方向の位置精度の低下も軽減できる。
【符号の説明】
【0061】
1…自車両、10…位置推定装置、11…物体センサ、12…地図データベース、13…測位装置、14…車両センサ、15…コントローラ、16…プロセッサ、17…記憶装置、30…点群データ取得部、31…点群データ格納部、33…点群データ補正部、34…仮想点群追加部、35…位置推定部