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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/17 20200101AFI20231225BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231225BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231225BHJP
【FI】
B60W30/17
G08G1/16 E
G08G1/16 C
B60W60/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020092428
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021187226
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田村 小百合
(72)【発明者】
【氏名】福重 孝志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 明之
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352120(JP,A)
【文献】特開2019-130994(JP,A)
【文献】特開2019-159427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の静止物体の手前で前記自車両が停止したか否かを判定する処理と、
前記静止物体の手前で前記自車両が停止したと判定した場合に、前記自車両が停止している状態で、前記自車両の操向輪を転舵する間の経過時間に対する前記自車両の転舵量を定める第1プロファイルに従って、前記静止物体を回避する方向に前記転舵量が第1目標転舵量に至るまで操向輪を転舵する処理と、
前記転舵量が前記第1目標転舵量に到達した後に、前記自車両を前方に発進させ、走行距離に対する前記転舵量を定める第2プロファイルに従って前記操向輪を転舵しながら前記自車両を走行させることにより、前記静止物体を追い越すように前記自車両を制御する処理と、
をコントローラに実行させることを特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
前記第1プロファイルは、第1区間と、前記第1区間に続く第2区間を含み、
前記第1区間では、一定の変化率で前記転舵量が変化し、
前記第2区間では、前記転舵量は一定の前記第1目標転舵量である、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項3】
前記静止物体の手前で停止した時点の前記自車両と前記静止物体との間の距離が短いほど、より大きな前記第1目標転舵量を設定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走行支援方法。
【請求項4】
前記第2プロファイルは、第3区間と、前記第3区間に続く第4区間と、前記第4区間に続く第5区間と、前記第5区間に続く第6区間と、前記第6区間に続く第7区間と、を含み、
前記第3区間では、前記転舵量は一定の前記第1目標転舵量であり、
前記第4区間では、前記第1目標転舵量からゼロまで一定の変化率で前記転舵量が変化し、
前記第5区間では、前記第1目標転舵量と反対向きの第2目標転舵量まで一定の変化率で前記転舵量が変化し、
前記第6区間では、前記転舵量は一定の第2目標転舵量であり、
前記第7区間では、前記第2目標転舵量からゼロまで一定の変化率で前記転舵量が変化する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項5】
前記静止物体の手前で停止した時点の前記自車両と前記静止物体との間の距離が短いほど、前記第4区間、前記第5区間、又は前記第7区間における転舵量の変化率を大きく設定することを特徴とする請求項4に記載の走行支援方法。
【請求項6】
前記第3区間及び前記第4区間における前記第2プロファイルの面積の合計と、前記第5区間、前記第6区間及び前記第7区間における前記第2プロファイルの面積の合計とが等しいことを特徴とする請求項4又は5に記載の走行支援方法。
【請求項7】
前記第3区間の長さと前記第4区間の長さとの和である切り替えし点距離を、車線幅に応じて動的に定めることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項8】
前記静止物体を追い越した後の進路前方に障害物が存在する場合には、前記障害物が存在しない場合に比べて、前記第3区間の長さと前記第4区間の長さとの和である切り替えし点距離を短くする、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項9】
前記第5区間の開始点における前記自車両の姿勢角を、前記自車両に搭載された物体検出センサの検知角度範囲に応じて定めることを特徴とする請求項4~8のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項10】
前記第2プロファイルに応じて定めた転舵量に応じた旋回曲率と前記自車両が走行する道路の道路曲率との和に基づいて、前記自車両の目標転舵角を算出する、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項11】
前記静止物体を追い越した後の進路の後方から後続車両が接近している場合には、前記後続車両が接近していない場合に比べて、前記第2プロファイルに従って前記自車両を走行させる車速を高く設定する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項12】
自車両の周囲の物体を検出するセンサと、
前記センサによって前記自車両の前方に検出された静止物体の手前で前記自車両が停止したか否かを判定する処理と、前記静止物体の手前で前記自車両が停止したと判定した場合に、前記自車両が停止している状態で、前記自車両の操向輪を転舵する間の経過時間に対する前記自車両の転舵量を定める第1プロファイルに従って、前記静止物体を回避する方向に前記転舵量が所定の第1目標転舵量に至るまで操向輪を転舵する処理と、前記転舵量が前記第1目標転舵量に到達した後に、前記自車両を前方に発進させ、走行距離に対する前記転舵量を定める第2プロファイルに従って前記操向輪を転舵しながら前記自車両を走行させることにより、前記静止物体を追い越すように前記自車両を制御する処理と、実行するコントローラと、
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自車両が走行する走行車線と走行車線に隣接する隣接車線とを含む道路において、走行車線内における自車両の前方に停止する停止車両の位置を認識した場合に、認識した停止車両の位置に応じた目標停止位置で自車両を停止させる車両用走行制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-112911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動操舵制御において、自車両の前方の静止物体を大きな転舵角で回避するために転舵角のフィードバック制御のゲインを大きくすると、追従性は良好になるが車両挙動が不安定になる。反対に、車両挙動を安定させるために追従性を犠牲にすると、目標走行軌道に沿って走行できずにショートカットや大廻りしてしまうことがある。
本発明は、自動操舵制御によって自車両の前方の静止物体を大きな転舵角で回避する際に、車両挙動安定性を低下させずに経路追従性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る走行支援方法では、自車両の前方の静止物体の手前で自車両が停止したか否かを判定する処理と、静止物体の手前で自車両が停止したと判定した場合に、自車両が停止している状態で、自車両の操向輪を転舵する間の経過時間に対する自車両の転舵量を定める第1プロファイルに従って、静止物体を回避する方向に転舵量が第1目標転舵量に至るまで操向輪を転舵する処理と、転舵量が第1目標転舵量に到達した後に、自車両を前方に発進させ、走行距離に対する転舵量を定める第2プロファイルに従って操向輪を転舵しながら自車両を走行させることにより、静止物体を追い越すように自車両を制御する処理と、をコントローラに実行させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動操舵制御によって自車両の前方の静止物体を大きな転舵角で回避する際に、車両挙動安定性を低下させずに経路追従性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の走行支援装置の概略構成図である。
図2A】実施形態の走行支援方法が実施される状況の一例の説明図である。
図2B】時間-曲率プロファイルの一例の説明図である。
図2C】距離-曲率プロファイルの一例の説明図である。
図2D】距離-曲率プロファイルに従って車線変更する走行軌道の一例の説明図である。
図3】実施形態の走行支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態の走行支援方法の実施条件の一例の説明図である。
図5A】右転舵の時間-曲率プロファイルの一例の説明図である。
図5B】左転舵の時間-曲率プロファイルの一例の説明図である。
図5C】車線変更区間距離に応じた時間-曲率プロファイルの設定例の説明図である。
図6】距離-曲率プロファイルの一例の説明図である。
図7A】車線幅に応じた距離-曲率プロファイルの一例の設定例の説明図である。
図7B】切り替えし点距離の算出方法の一例の説明図である。
図8】道路曲率に応じた目標曲率の設定方法の一例の説明図である。
図9】切り替えし点における自車両の姿勢角の設定例の説明図である。
図10】車線変更区間距離に応じた距離-曲率プロファイルの一例の設定例の説明図である。
図11】実施形態の運転支援方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1を参照する。自車両1は、自車両1の走行支援を行う走行支援装置10を備える。走行支援装置10による走行支援には、自車両1の周辺の走行環境に基づいて、運転者が関与せずに自車両1を自動で運転する自動運転制御や、運転者による自車両1の運転を支援する運転支援制御を含んでよい。
運転支援制御には、自車両の操舵装置、駆動装置、制動装置の少なくとも一つを自動的に制御する走行制御を含んでよい。
【0010】
走行支援装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース14と、ナビゲーション装置15と、通信装置16と、コントローラ17と、アクチュエータ18とを備える。図面において地図データベースを「地図DB」と表記する。
物体センサ11は、自車両1に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周辺の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
【0011】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、自車両1が備える各タイヤの回転速度や回転量を検出する車輪センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0012】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
【0013】
地図データベース14は、自動運転用の地図として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という。)を記憶してよい。高精度地図は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という。)よりも高精度の地図データであり、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。
【0014】
例えば、高精度地図は車線単位の情報として、車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報を含む。
車線ノードの情報は、その車線ノードの識別番号、位置座標、接続される車線リンク数、接続される車線リンクの識別番号を含む。車線リンクの情報は、その車線リンクの識別番号、車線の幅員、車線境界線の種類、車線の形状、車線区分線の形状、車線基準線の形状を含む。
【0015】
高精度地図は、車線単位のノード及びリンク情報を含むため、走行ルートにおいて自車両1が走行する車線を特定可能である。高精度地図は、車線の延伸方向及び幅方向における位置を表現可能な座標を有する。高精度地図は、3次元空間における位置を表現可能な座標(例えば経度、緯度及び高度)を有し、車線や上記地物は3次元空間における形状として記述されてもよい。
【0016】
ナビゲーション装置15は、測位装置13等により自車両1の現在位置を認識する。また、乗員の操作に応じて自車両1の目的地を設定し、地図データベース14の地図情報に基づいて現在位置から目的地までの道路単位の予定走行経路を演算する。
ナビゲーション装置15は、演算した予定走行経路の情報をコントローラ17へ出力する。また、ナビゲーション装置15は、演算した予定走行経路に従って乗員に経路案内を行う。
通信装置16は、自車両1の外部の通信装置との間で無線通信を行う。通信装置16による通信方式は、例えば公衆携帯電話網による無線通信や、車車間通信、路車間通信、又は衛星通信であってよい。
【0017】
コントローラ17は、自車両1の走行支援制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ17は、プロセッサ21と、記憶装置22等の周辺部品とを含む。プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置22は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置22は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0018】
以下に説明する走行支援装置10の機能は、例えばプロセッサ21が、記憶装置22に格納されたコンピュータプログラムを実行し、物体センサ11、車両センサ12、測位装置13、地図データベース14、ナビゲーション装置15及び通信装置16と協働することにより実現される。
【0019】
なお、コントローラ17を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ17は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ17はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0020】
アクチュエータ18は、コントローラ17からの制御信号に応じて、自車両の転舵機構、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両の車両挙動を発生させる。アクチュエータ18は、転舵アクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。転舵アクチュエータは、自車両の操向輪の転舵方向及び転舵量を制御する。転舵アクチュエータは、例えば、電動パワーステアリングシステムにおいて操舵補助力を付与する操舵補助モータであってもよく、ステアリングホイールと操向輪とが機械的に分離されたステアリングバイワイヤシステムにおいて操向輪を転舵する転舵モータであってもよい。
アクセル開度アクチュエータは、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両1のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0021】
次に、図2A図2B図2C及び図2Dを参照して実施形態の走行支援装置10による走行支援制御の一例を説明する。
図2Aに、本実施形態による走行支援方法が実施される状況の一例を示す。本実施形態による走行支援方法は、自車両1の前方の静止物体100の手前で自車両1が停止した場合に実行される。
例えば自車両1の自動運転制御の実行中に、自車両1の前方の駐車車両100の手前に停車した場合を想定する。
【0022】
この場合、自車両1と駐車車両100との間の長さDLの区間において、破線101に示すように自車両1の走行車線102から隣接車線103に車線変更して駐車車両100を回避しなければ、自車両1は走行を継続することができない。以下、自車両1と駐車車両100との間の長さDLの区間を「車線変更区間」と表記し、長さDLを「車線変更区間距離」と表記する。
【0023】
車線変更区間距離DLが短い場合には、自車両1の駐車車両100を大きな旋回曲率で(すなわち大きな転舵角で)回避する必要がある。この場合に、旋回曲率(又は転舵角)のフィードバック制御のゲインを大きくして旋回曲率を増加させると、追従性は良好になるが車両挙動が不安定になる。反対に、車両挙動を安定させるために追従性を犠牲にすると、目標走行軌道に沿って走行できずにショートカットや大廻りしてしまうことがある。
【0024】
また、前方注視点と目標走行軌道との乖離量に応じて転舵制御する前方注視点制御により駐車車両100を回避する場合には、前方注視点距離を短くすることによって追従性を向上できる。しかし、この場合にも車両挙動が不安定になる。反対に、車両挙動を安定させるために前方注視点距離を長くすると、目標走行軌道に沿って走行できずにショートカットや大廻りしてしまうことがある。
【0025】
そこで、本実施形態の走行支援方法では、予め設計された目標転舵量(例えば旋回曲率や転舵角であってよい)のプロファイルに基づいて、自車両1の転舵量を制御する。
具体的には、まず、駐車車両100の手前に自車両1が停止した状態で、図2Bに示すような、自車両の操向輪を転舵する間の経過時間に対する転舵量として、旋回曲率ρcを定める時間-曲率プロファイルに従って、駐車車両100を回避する方向に旋回曲率ρc(転舵量)が第1目標曲率ρmax(第1目標転舵量)に至るまで操向輪を転舵する。例えば、左側通行が義務づけられている道路では右側に操向輪を転舵し、右側通行が義務づけられている道路では左側に操向輪を転舵してよい。
【0026】
以下の説明において、右旋回時の旋回曲率を正値とし、左旋回時の旋回曲率を負値とする。第1目標曲率ρmaxの大きさ(すなわち絶対値|ρmax|)は、例えばフル転舵時の旋回曲率の大きさであってよい。
旋回曲率ρは、自車速Vhおよび転舵角δに基づいて、以下の(式1)で算出できる。
ρ=1/{L(1+A・Vh)}×δ/N ・・・(式1)
ここで、L:自車両のホイールベース、A:車両に応じて定められたスタビリティファクタ(正の定数)、N:ステアリングギア比である。
次に、旋回曲率ρcが第1目標曲率ρmaxに到達した後に、自車両1を前方に発進させ、図2Cに示すような、走行距離に対する旋回曲率ρcの変化を定める距離-曲率プロファイルに従って自車両1を走行させながら操向輪を転舵する。距離-曲率プロファイルの形状については後述する。
【0027】
この結果、図2Dに示す走行軌道101に沿って自車両1が走行し、駐車車両100を追い越すように(回避するように)、車線102から隣接車線103へ車線変更する。
このように本実施形態の走行支援方法では、予め設計されたプロファイルに基づいて自車両1の転舵量を制御する。言い換えればフィードフォワード制御により転舵量を制御する。
このため、大きな旋回曲率で自車両1を走行させる場合であっても、車両挙動安定性が低下することはない。これにより、車両挙動安定性を低下させずに経路追従性を向上できる。
なお、時間-曲率プロファイル及び距離-曲率プロファイルは、それぞれ特許請求の範囲に記載の「第1プロファイル」及び「第2プロファイル」の一例である。
【0028】
続いて図3を参照して、走行支援装置10の機能を詳しく説明する。走行支援装置10は、上述の地図データベース14及びアクチュエータ18に加えて、回避支援判定部30と、走行距離判定部31と、前方注視点制御部32と、時間-曲率プロファイル生成部33と、距離-曲率プロファイル生成部34と、制御選択部35と、転舵角制御部36と、車速設定部37と、車速制御部38を備える。
【0029】
回避支援判定部30は、自車両1の前方の静止物体の手前で自車両1が停止した場合に、本実施形態の走行支援方法により静止物体を回避する回避支援制御を実行するか否かを判定する。
図4を参照する。回避支援判定部30は、車両センサ12の検出結果に基づいて自車両1が停止したか否かを判定する。
自車両1が停止したと判定した場合に、回避支援判定部30は、物体センサ11の検出結果に基づいて、自車両1の前方の静止物体である駐車車両100の手前に自車両1が停止したか否かを判定する。
【0030】
例えば、自車両1と駐車車両100との間の車間距離、すなわち車線変更区間の長さ(車線変更区間距離DL)が、所定の閾値範囲(閾値Dt2以上閾値Dt1未満)であるか否かを判定する。
車線変更区間距離DLが閾値Dt2以上閾値Dt1未満である場合に、回避支援判定部30は、回避支援制御を実行すると判定する。車線変更区間距離DLが閾値Dt2未満である場合や、閾値Dt1以上である場合に、回避支援判定部30は、回避支援制御を実行しないと判定する。
【0031】
閾値Dt1は、例えば前方注視点制御により駐車車両100を回避するように転舵制御しても、旋回曲率の増加により車両挙動が不安定にならない車間距離に応じて適宜設定してよい。
車線変更区間距離DLが閾値Dt1以上である場合、例えば走行支援装置10は、前方注視点制御により駐車車両100を回避するように転舵量を制御する。
【0032】
一方で閾値Dt2は、例えば、駐車車両100の手前に自車両1が停止した状態でフル転舵しても、もはや、駐車車両100を回避しきれない車間距離に応じて適宜設定してよい。
車線変更区間距離DLが閾値Dt2未満である場合、例えば走行支援装置10は、自車両1の自動運転制御を停止し、手動運転により自車両1の運転を継続するように運転者に通知する。
【0033】
走行距離判定部31は、車両センサ12の検出結果に基づいて自車両1の走行距離を判定する。
前方注視点制御部32は、前方注視点制御により自車両1の転舵量を制御する。具体的には、前方注視点制御部32は、自車両1の前方に設定された前方注視点と目標走行軌道との乖離量に応じて自車両1の目標転舵量を出力する。
【0034】
前方注視点制御により自車両1の転舵量を制御する場合、回避支援判定部30は、制御選択部35に対して、前方注視点制御部32から出力される目標転舵量(目標旋回曲率ρt)を選択して転舵角制御部36へ出力することを指示する選択指示信号を出力する。
一方、回避支援制御を実行する場合、回避支援判定部30は、制御選択部35に対して、時間-曲率プロファイル生成部33から出力される目標転舵量(目標旋回曲率ρt)を選択して転舵角制御部36へ出力することを指示する選択指示信号を出力する。
制御選択部35は、回避支援判定部30からの選択指示信号に基づいて、前方注視点制御部32からの目標転舵量と、時間-曲率プロファイル生成部33からの目標転舵量とを選択して出力する。
転舵角制御部36は、制御選択部35から出力される目標転舵量となるように、転舵アクチュエータを駆動して操向輪の転舵角を制御する。
【0035】
時間-曲率プロファイル生成部33は、回避支援判定部30が回避支援制御を実行すると判定した場合に、上述の時間-曲率プロファイルを生成する。時間-曲率プロファイル生成部33は、時間-曲率プロファイルに従って、回避支援制御の開始時刻からの経過時間に応じた目標旋回曲率ρtを出力する。
【0036】
図5Aは、右転舵用の時間-曲率プロファイルの一例を示す。実線40は、自車両1が停止した状態で駐車車両100を回避する方向に据え切り転舵するためのプロファイル(以下「据え切りプロファイル」と表記する)である。
据え切りプロファイル40は、例えば、時刻0から時刻t1までの第1区間S1と、第1区間S1に続く時刻t1から時刻t2までの第2区間S2を含んでよい。
【0037】
第1区間S1は、例えば一定の変化率で(言い換えれば一定の転舵速度で)第1目標曲率ρmaxまで旋回曲率ρcが増加する(すなわち絶対値|ρc|が増加する)区間である。
第2区間S2は、旋回曲率ρcが第1目標曲率ρmaxを維持する区間である(すなわち、旋回曲率ρcが固定の区間)である。
なお、第1区間S1における旋回曲率ρcの変化率は適宜変更可能であり、転舵速度の上限(例えば転舵アクチュエータによる転舵速度の上限)を超えないよう設定される。
【0038】
なお、時間-曲率プロファイル生成部33は、据え切り開始前の自車両1の旋回曲率ρc、例えば前方注視点制御により自車両1を駐車車両100の手前に停止した時点の旋回曲率ρcを、前方注視点制御部32から取得してもよい。
時間-曲率プロファイル生成部33は、第1区間S1の開始時刻の旋回曲率ρcが、据え切り開始前の自車両1の旋回曲率ρcとなるように、据え切りプロファイル40を変形する。
【0039】
一点鎖線41は、据え切りプロファイル40に基づく据え切り転舵を中止して、据え切り開始前の曲率へ旋回曲率ρcを戻すためのプロファイル(以下「キャンセルプロファイル」と表記する)である。
キャンセルプロファイル41もまた、2つの区間を含んでよい。先行する第1の区間は、キャンセル開始時刻t3から始まって、据え切り開始前の曲率まで一定の変化率で旋回曲率ρcが減少する(すなわち絶対値|ρc|が減少する)。キャンセル開始時刻t3は適宜変更可能である。
【0040】
後続の第2の区間は、旋回曲率ρcが据え切り開始前の曲率に至る時刻t4から開始する。2番目の区間では、旋回曲率ρcは、据え切り開始前の曲率を維持する。
図5Bは、左転舵用の時間-曲率プロファイルの一例を示す。実線42は、据え切りプロファイルである。
右転舵用の据え切りプロファイル40と同様に、据え切りプロファイル42は、例えば、時刻0から時刻t1までの第1区間S1と、第1区間S1に続く時刻t1から時刻t2までの第2区間S2を含んでよい。
【0041】
第1区間S1では、例えば一定の変化率で負値の第1目標曲率ρminまで旋回曲率ρcが減少する(すなわち絶対値|ρc|が増加する)区間である。第2区間S2では、旋回曲率ρcは第1目標曲率ρminを維持する。
第1区間S1における旋回曲率ρcの変化率は適宜変更可能であり、転舵速度の上限(例えば転舵アクチュエータによる転舵速度の上限)を超えないよう設定される。
【0042】
右転舵用の時間-曲率プロファイルの場合と同様に、時間-曲率プロファイル生成部33は、第1区間S1が開始する時刻の旋回曲率ρcが、据え切り開始前の自車両1の旋回曲率ρcとなるように、据え切りプロファイル42を変形する。
一点鎖線43は、キャンセルプロファイルである。キャンセルプロファイル43もまた、2つの区間を含んでよい。
先行する第1の区間では、キャンセル開始時刻t3から始まって、一定の変化率で据え切り開始前の曲率まで旋回曲率ρcが増加する(すなわち絶対値|ρc|が減少する)。キャンセル開始時刻t3は適宜変更可能である。
後続の第2の区間は、旋回曲率ρcが据え切り開始前の曲率に至る時刻t4から開始する。2番目の区間では、旋回曲率ρcは、据え切り開始前の曲率を維持する。
【0043】
図5Cを参照する。時間-曲率プロファイル生成部33は、第1目標曲率ρmaxを適宜変更してもよい。例えば、時間-曲率プロファイル生成部33は、車線変更区間距離DLに応じて第1目標曲率ρmaxを設定してよい。
具体的には、時間-曲率プロファイル生成部33は、車線変更区間距離DLが短いほど、第1目標曲率ρmaxの絶対値が大きくなるように第1目標曲率ρmaxを設定してよい。第1目標曲率ρminも同様である。
【0044】
図3を参照する。第1区間S1及び第2区間S2において時間-曲率プロファイル生成部33が時間-曲率プロファイルに従って目標旋回曲率ρtを出力している間、回避支援判定部30は、制御選択部35に対して、時間-曲率プロファイル生成部33から出力される目標旋回曲率ρtを選択して転舵角制御部36へ出力することを指示する選択指示信号を出力する。
転舵角制御部36は、自車両1の旋回曲率ρcが、時間-曲率プロファイル生成部33から出力される目標旋回曲率ρtとなるように、転舵アクチュエータを駆動して操向輪の転舵角を制御する。
【0045】
これによって、右方向に転舵する場合には、自車両1が停止した状態で自車両1の旋回曲率ρcが第1目標曲率ρmaxまで変化する。左方向に転舵する場合には、自車両1が停止した状態で自車両1の旋回曲率ρcが第1目標曲率ρminまで変化する。
以下の説明では、簡単のため、自車両1が停止した状態で右方向に転舵した場合についてのみ記載する。自車両1が停止した状態で左方向に転舵した場合には、以下の説明における転舵方向が反対方向になる点を除いて同様である。
【0046】
自車両1の旋回曲率ρcが第1目標曲率ρmaxに至ると、回避支援判定部30は、物体センサ11により検出される自車両1の周辺環境に基づいて、自車両1を発進させることができるか否かを判定する。
例えば、回避支援判定部30は、隣接車線103上を移動して自車両1へ接近する移動物体と、自車両1の前方の隣接車線103上の障害物とが存在するか否かを判定する。これら移動物体や障害物が存在しない場合に、回避支援判定部30は、自車両1を発進させることができると判定し、これら移動物体や障害物が存在しない場合に、自車両1を発進させることができないと判定する。
【0047】
自車両1を発進させることができると判定した場合に回避支援判定部30は、自車両1を発進させる発進指示信号を、距離-曲率プロファイル生成部34に出力する。
発進指示信号を受信すると、距離-曲率プロファイル生成部34は、上述の距離-曲率プロファイルを生成する。
距離-曲率プロファイル生成部34は、走行距離判定部31が判定した走行距離を読み込み、距離-曲率プロファイルに従って目標旋回曲率ρtを出力する。
【0048】
図6は、距離-曲率プロファイルの一例を示す。距離-曲率プロファイルは、例えば、走行距離が0から距離d1までの第3区間S3と、距離d1から距離d2までの第4区間S4と、距離d2から距離d3までの第5区間S5と、距離d3から距離d4までの第6区間S6と、距離d4から距離d5までの第7区間S7を含んでよい。
第3区間S3は、旋回曲率ρcが第1目標曲率ρmaxを維持する区間である(すなわち、旋回曲率ρcが固定の区間)である。
【0049】
続く第4区間S4は、旋回曲率ρcが、第1目標曲率ρmaxからゼロまで走行距離に比例して(すなわち一定の変化率で)旋回曲率ρcが減少する区間である。第4区間S4では旋回曲率ρcの絶対値が減少する。
続く第5区間S5は、旋回曲率ρcが、ゼロから第2目標曲率ρ6まで走行距離に比例して(すなわち一定の変化率で)旋回曲率ρcが減少する区間である。第2目標曲率ρ6の向きは第1目標曲率ρmaxの向きと反対であり(すなわち第1目標曲率ρmaxの符号と第2目標曲率ρ6の符号が異なる)、第5区間S5では、第1区間S1の変化方向と反対方向に旋回曲率ρcが変化して、旋回曲率ρcの絶対値が増加する。
【0050】
続く第6区間S6は、旋回曲率ρcが第2目標曲率ρ6を維持する区間である(すなわち、旋回曲率ρcが固定の区間)である。
続く第7区間S7は、旋回曲率ρcが、第2目標曲率ρ6からゼロまで走行距離に比例して(すなわち一定の変化率で)旋回曲率ρcが増加する区間である。第7区間S7では旋回曲率ρcの絶対値が減少する。
なお、第4区間S4、第5区間S5及び第7区間S7における旋回曲率ρcの変化率は適宜変更可能であり、例えば走行速度に応じて転舵速度の上限(例えば転舵アクチュエータによる転舵速度の上限)を超えないよう設定される。
【0051】
第3区間S3~第7区間S7において距離-曲率プロファイル生成部34が、距離-曲率プロファイルに従って目標旋回曲率ρtを出力している間、回避支援判定部30は、制御選択部35に対して、距離-曲率プロファイル生成部34から出力される目標旋回曲率ρtを選択して転舵角制御部36へ出力することを指示する選択指示信号を出力する。
【0052】
転舵角制御部36は、自車両1の旋回曲率ρcが、距離-曲率プロファイル生成部34から出力される目標旋回曲率ρtとなるように、転舵アクチュエータを駆動して操向輪の転舵角を制御する。
また、車速制御部38は、車速設定部37により設定される車速に基づいて、アクセル開度アクチュエータとブレーキ制御アクチュエータを駆動して、距離-曲率プロファイルに従って転舵されている間の自車両1の車速を制御する。
【0053】
これにより自車両1は、図2Dに示すように、走行軌道101に沿って自車両1が走行し、駐車車両100を追い越すように(回避するように)、車線102から隣接車線103へ車線変更する。
なお車速設定部37は、駐車車両100を追い越した後の進路(例えば隣接車線103)の後方から後続車両が接近している場合には、後続車両が接近していない場合に比べてより高い車速を設定してよい。
【0054】
距離-曲率プロファイル生成部34は、車線変更前(すなわち発進前の停止中の)自車両1の姿勢角と、車線変更後の自車両1の姿勢角とが等しくなるように、距離-曲率プロファイルを設定してよい。なお、自車両1の姿勢角とは自車両1の車体の向きの方位角である。
図6を参照する。車線変更前の姿勢角と、車線変更後の姿勢角とを等しくするには、第3区間S及び第4区間S4における距離-曲率プロファイルの面積の合計(斜線ハッチングされた領域)と、第5区間S5~第7区間S7における距離-曲率プロファイルの面積の合計(梨地ハッチングされた領域)とを等しくすればよい。
【0055】
第4区間S4と第5区間S5との境界の地点は、旋回曲率ρcがゼロ(すなわち転舵角がゼロ)となり、ステアリングホイールが中立位置に戻る地点である。以下、第4区間S4と第5区間S5との境界の地点を「切り替えし点」と表記する。また、自車両1が発進してから切り替えし点までの距離d2(すなわち、第3区間S3と第4区間S4の区間長の合計)を「切り替えし点距離」と表記する。
【0056】
距離-曲率プロファイル生成部34は、自車両1の周辺の環境に応じて切り替えし点距離d2を動的に変更してもよい。例えば距離-曲率プロファイル生成部34は、自車両1の周辺の環境の情報を、物体センサ11による検出結果や、地図データベース14の地図情報から取得してよい。
図7A及び図7Bを参照する。距離-曲率プロファイル生成部34は、自車両1が走行する車線102の車線幅Wに応じて、切り替えし点距離d2を設定してもよい。
【0057】
例えば、実線50は、車線102の車線幅Wが比較的広い場合の距離-曲率プロファイルであり、一点鎖線51は、車線102の車線幅Wが比較的狭い場合の距離-曲率プロファイルである。
距離-曲率プロファイル生成部34は、車線幅Wが比較的広い場合の切り替えし点距離d2aが、車線幅Wが比較的狭い場合の切り替えし点距離d2bよりも長くなるように、距離-曲率プロファイルを生成してもよい。
【0058】
例えば、距離-曲率プロファイル生成部34は、切り替えし点距離d2を以下の(式2)により算出してよい。
d2=(W×Rmin) ・・・(式2)
ただし、Rminは自車両1の最小旋回半径である。
【0059】
また例えば、距離-曲率プロファイル生成部34は、駐車車両100を追い越した後の進路(例えば隣接車線103)の前方に障害物(例えば壁や樹木)が存在する場合には、障害物が存在しない場合に比べて、切り替えし点距離d2が短くなるように距離-曲率プロファイルを生成してもよい。
【0060】
図8を参照する。実線50は、自車両1が走行する車線102が直線路である場合の距離-曲率プロファイルである。
自車両1が走行する車線102がカーブ路である場合には、距離-曲率プロファイル生成部34は、車線102が直線路である場合の距離-曲率プロファイル50により定まる旋回曲率と車線102の道路曲率との和を、目標旋回曲率ρtとして出力してよい。例えば距離-曲率プロファイル生成部34は、道路曲率の情報を地図データベース14の地図情報から取得してよい。
一点鎖線51は、車線102が曲率ρRの右カーブ路である場合の距離-曲率プロファイルを示し、二点鎖線52は、車線102が曲率ρLの左カーブ路である場合の距離-曲率プロファイルを示す。
【0061】
図9は、旋回曲率ρcがゼロとなる切り替えし点における自車両1の姿勢角を示す。また、梨地ハッチングされた領域60は、物体センサ11の検知角度範囲を示す。
距離-曲率プロファイル生成部34は、特定の方向が検知角度範囲60内に入るように、検知角度範囲60に応じて切り替えし点における自車両1の姿勢角を定めてよい。
例えば、隣接車線103が検知角度範囲60内に入るように、自車両1の姿勢角を定めてよい。これにより、隣接車線103を走行して自車両1に接近する後続車両を物体センサ11で検知できるようになる。
【0062】
図10を参照する。距離-曲率プロファイル生成部34は、第4区間S4、第5区間S5及び第7区間S7における走行距離に対する旋回曲率ρcの変化率を適宜変更してもよい。
例えば、車線変更区間距離DLがより短い場合には、より急峻に転舵角を変更できるように、旋回曲率ρcの変化率をより大きくしてよい。実線50は、車線変更区間距離DLが比較的長い場合の距離-曲率プロファイルであり、一点鎖線51は車線変更区間距離DLが比較的短い場合の距離-曲率プロファイルである。
【0063】
第4区間S4、第5区間S5及び第7区間S7における旋回曲率ρcの変化率を変更する場合、距離-曲率プロファイル生成部34は、車線変更区間内で隣接車線103への車線変更が終了し、かつ自車両1の姿勢角の変化量が最小になるように、第1区間S1及び第3区間S3における第1目標曲率ρmax及び第6区間S6における第2目標曲率ρ6を設定する。
【0064】
この結果、車線変更区間距離DLがより短い場合には、第1区間S1及び第3区間S3における第1目標曲率ρmaxの絶対値及び第6区間S6における第2目標曲率ρ6の絶対値がより大きくなる。
図10の例では、車線変更区間距離DLが比較的長い場合の第1目標曲率ρmax1及び第2目標曲率ρ61の絶対値よりも、車線変更区間距離DLが比較的短い場合の第1目標曲率ρmax2及び第2目標曲率ρ62の絶対値の方が大きくなる。
【0065】
(動作)
次に、図11を参照して、実施形態の車両走行支援方法の一例を説明する。
ステップS1において回避支援判定部30は、自車両1が停止したか否かを判定する。自車両1が停止したと判定した場合に、回避支援判定部30は、自車両1の前方の静止物体までの距離である車線変更区間距離DLが閾値Dt2以上であるか否かを判定する。
【0066】
車線変更区間距離DLが閾値Dt2以上でない場合(ステップS1:N)には、駐車車両100を回避しきれないので、回避支援判定部30は、回避支援制御を実行しないと判定する。走行支援装置10は、自車両1の自動運転制御を停止し、手動運転により自車両1の運転を継続するように運転者に通知する。その後に処理は終了する。
車線変更区間距離DLが閾値Dt2以上である場合(ステップS1:Y)に処理はステップS2へ進む。
【0067】
ステップS2において回避支援判定部30は、車線変更区間距離DLが閾値Dt1未満であるか否かを判定する。車線変更区間距離DLが閾値Dt1未満でない場合(ステップS2:N)に回避支援判定部30は、回避支援制御を実行しないと判定し、処理はステップS3へ進む。
ステップS3において走行支援装置10は、前方注視点制御により駐車車両100を回避するように転舵制御する。その後に処理は終了する。
【0068】
ステップS2の判定において車線変更区間距離DLが閾値Dt1未満である場合(ステップS2:Y)に処理はステップS4へ進む。
ステップS4において時間-曲率プロファイル生成部33は、時間-曲率プロファイルを生成する。
ステップS5において転舵角制御部36は、自車両1が停止した状態で、時間-曲率プロファイル生成部33から出力される目標旋回曲率ρtに応じて操向輪の転舵角を制御する。すなわち回避支援制御の据え切り転舵を実行する。
【0069】
ステップS6において回避支援判定部30は、据え切り転舵が完了したか否かを判定する。すなわち、自車両1の旋回曲率ρcが第1目標曲率ρmaxに至ったか否かを判定する。据え切り転舵が完了していない場合(ステップS6:N)に処理はステップS5へ戻る。据え切り転舵が完了した場合(ステップS6:Y)に処理はステップS7へ進む。
【0070】
ステップS7において回避支援判定部30は、自車両1を発進させることができるか否かを判定する。自車両1を発進させることができない場合(ステップS7:N)に処理はステップS7へ戻る。自車両1を発進させることができる場合(ステップS7:Y)に処理はステップS8へ進む。
ステップS8において距離-曲率プロファイル生成部34は、距離-曲率プロファイルを生成する。
【0071】
ステップS9において転舵角制御部36は、距離-曲率プロファイル生成部34から出力される目標旋回曲率ρtに応じて操向輪の転舵角を制御する。また、車速制御部38は、車速設定部37により設定される車速に基づいて、自車両1の車速を制御して自車両1を走行させる。これにより、自車両1の前方の静止物体を回避するように自車両1を車線変更させる。その後に処理は終了する。
【0072】
(実施形態の効果)
(1)回避支援判定部30は、自車両1の前方の静止物体の手前で自車両1が停止したか否かを判定する。静止物体の手前で自車両1が停止したと判定した場合に、時間-曲率プロファイル生成部33と、制御選択部35と、転舵角制御部36は、自車両1が停止している状態で、時間-転舵量(曲率)プロファイルに従って、静止物体を回避する方向に転舵量(旋回曲率)が所定の第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)に至るまで操向輪を転舵する。
【0073】
転舵量(旋回曲率)が第1転舵量(第1目標曲率ρmax)に到達した後に、距離-曲率プロファイル生成部34と、制御選択部35と、転舵角制御部36と、車速制御部38は、自車両1を前方に発進させ、距離-転舵量(曲率)プロファイルに従って操向輪を転舵しながら自車両1を走行させることにより、静止物体を追い越すように自車両1を制御する。
このため、自車両の前方の静止物体を大きな転舵角で回避する場合であっても、車両挙動安定性が低下するのを防止できる。これにより、車両挙動安定性を低下させずに経路追従性を向上できる。
【0074】
(2)時間-転舵量(曲率)プロファイルは、第1区間S1と、第1区間S1に続く第2区間S2を含んでよい。第1区間S1では、一定の変化率で転舵量(旋回曲率)が変化する。第2区間では、転舵量(旋回曲率)は一定の第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)である。
このような時間-転舵量(曲率)プロファイルに基づいて操向輪を転舵することにより、所望の転舵速度で据え切り転舵することができる。
【0075】
(3)時間-曲率プロファイル生成部33は、静止物体の手前で停止した時点の自車両1と静止物体との間の距離DLが短いほど、より大きな第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)を設定してよい。
これにより、静止物体までの距離が短い場合に、より急峻に転舵することができる。
【0076】
(4)距離-転舵量(曲率)プロファイルは、第3区間S3と、第3区間S3に続く第4区間S4と、第4区間S4に続く第5区間S5と、第5区間S5に続く第6区間S6と、第6区間S6に続く第7区間S7と、を含んでよい。第3区間S3では、転舵量(旋回曲率)は一定の第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)である。第4区間S4では、第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)からゼロまで一定の変化率で、転舵量(旋回曲率)が変化する。第5区間S5では、第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)と反対向きの第2目標転舵量(第2目標曲率ρ6)まで一定の変化率で転舵量(旋回曲率)が変化する。第6区間S6では、転舵量(旋回曲率)は一定の第2目標転舵量(第2目標曲率ρ6)である。第7区間S7では、第2目標転舵量(第2目標曲率ρ6)からゼロまで一定の変化率で転舵量(旋回曲率)が変化する。
このような距離-転舵量(曲率)プロファイルに基づいて自車両1を走行させながら操向輪を転舵することで、第1目標転舵量(第1目標曲率ρmax)まで据え切り操舵した状態から、前方の静止物体を回避するように車線変更することができる。
【0077】
(5)静止物体の手前で停止した時点の自車両1と静止物体との間の距離が短いほど、第4区間S4、第5区間S5、又は第7区間S7における転舵量(旋回曲率)の変化率を大きく設定してよい。
これにより、静止物体までの距離が短い場合に、より急峻に転舵することができる。
【0078】
(6)第3区間S3及び第4区間S4における距離-転舵量(曲率)プロファイルの面積の合計と、第5区間S5、第6区間S6及び第7区間S7における距離-転舵量(曲率)プロファイルの面積の合計とが等しくてよい。
これにより車線変更前の姿勢角と、車線変更後の姿勢角とを等しくすることができる。
【0079】
(7)第3区間S3の長さと第4区間S4の長さとの和である切り替えし点距離を、車線幅Wに応じて動的に定めてよい。
これにより、車線幅Wに応じて車線変更することができる。
【0080】
(8)静止物体を追い越した後の進路前方に障害物が存在する場合には、障害物が存在しない場合に比べて、第3区間S3の長さと第4区間S4の長さとの和である切り替えし点距離を短くしてよい。
これにより切り替えし点を動的に変更して障害物に近付かない余裕を持った走行が可能になる。
【0081】
(9)第5区間S5の開始点における自車両1の姿勢角を、自車両1に搭載された物体検出センサの検知角度範囲に応じて定めてもよい。
これにより、後方の安全を確認してから隣接車線に進入できる。
【0082】
(10)距離-転舵量(曲率)プロファイルに応じて定めた転舵量に応じた旋回曲率と自車両1が走行する道路の道路曲率との和に基づいて、自車両1の目標転舵角を算出してもよい。
これにより道路形状に合わせた車線変更が可能になる。
【0083】
(11)静止物体を追い越した後の進路の後方から後続車両が接近している場合には、後続車両が接近していない場合に比べて、距離-転舵量(曲率)プロファイルに従って自車両1を走行させる車速を高く設定してよい。
これにより後方から車両が接近している場合には、後方の車両を待たせないように車線変更できる。
【符号の説明】
【0084】
1…自車両、10…走行支援装置、11…物体センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…ナビゲーション装置、16…通信装置、17…コントローラ、18…アクチュエータ、21…プロセッサ、22…記憶装置、30…回避支援判定部、31…走行距離判定部、32…前方注視点制御部、33…時間-転舵量(曲率)プロファイル生成部、34…距離-転舵量(曲率)プロファイル生成部、35…制御選択部、36…転舵角制御部、37…車速設定部、38…車速制御部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11