(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】共焦点変位計
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01B11/00 B
(21)【出願番号】P 2017115552
(22)【出願日】2017-06-13
【審査請求日】2020-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久我 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祐孝
(72)【発明者】
【氏名】武井 英人
(72)【発明者】
【氏名】末村 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】坂口 富一
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】九鬼 一慶
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102067(JP,A)
【文献】特開2003-290154(JP,A)
【文献】特開2013-253803(JP,A)
【文献】特開2013-68523(JP,A)
【文献】特開2015-36669(JP,A)
【文献】特開2013-174593(JP,A)
【文献】特開2005-98833(JP,A)
【文献】特開2016-80632(JP,A)
【文献】特開2013-61174(JP,A)
【文献】特開2015-72472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 -11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点変位計であって、
複数の波長を有する光を生成する投光用光源と、
前記投光用光源からの光を通過させることによって複数の検出光をそれぞれ出射する複数のピンホールと、
複数の照射スポットを形成するために、前記複数のピンホールの各ピンホールとともに共焦点光学系を構成して、当該ピンホールを介して出射された前記検出光に軸上色収差を発生させるとともに、当該検出光を前記計測対象物に向かって収束させる光学部材と、
前記光学部材を介して前記計測対象物に形成された複数の照射スポットの各照射スポットからの前記検出光のうち、当該各照射スポットに対応する前記複数のピンホールの各ピンホールを通過した検出光をそれぞれ分光し、当該各照射スポットに対応して波長ごとの受光強度からなる受光波形をそれぞれ生成する分光器と、
前記分光器によりそれぞれ生成された複数の受光波形
からピークの強度及びピーク位置を特定し、ピーク強度又はピーク位置の外れ値がある場合には、該当するピークに対応するピークの強度及びピーク位置を除外して代表値を決定する統計処理を行って代表変位を生成する測定制御部とを備えたことを特徴とする共焦点変位計。
【請求項2】
共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点変位計であって、
複数の波長を有する光を生成する投光用光源と、
前記投光用光源からの光を通過させることによって複数の検出光をそれぞれ出射する複数のピンホールと、
複数の照射スポットを形成するために、前記複数のピンホールの各ピンホールとともに共焦点光学系を構成して、当該ピンホールを介して出射された前記検出光に軸上色収差を発生させるとともに、当該検出光を前記計測対象物に向かって収束させる光学部材と、
前記光学部材を介して前記計測対象物に形成された複数の照射スポットの各照射スポットからの前記検出光のうち、当該各照射スポットに対応する前記複数のピンホールの各ピンホールを通過した検出光をそれぞれ分光し、当該各照射スポットに対応して波長ごとの受光強度からなる受光波形をそれぞれ生成する分光器と、
前記分光器によりそれぞれ生成された複数の受光波形に基づいて、当該複数の受光波形の各受光波形のピーク位置から前記計測対象物の変位をそれぞれ求め、当該受光波形のピークに基づく重みにより各変位を統計処理し、代表変位を生成する測定制御部とを備えたことを特徴とする共焦点変位計。
【請求項3】
前記測定制御部は、前記複数の受光波形を重ね合わせた積算波形に基づいてサーチ範囲を特定し、前記複数の受光波形について、受光波形ごとに前記サーチ範囲内のデータ点列に曲線をフィッティングさせて前記ピーク位置を特定することを特徴とする請求項
1又は2に記載の共焦点変位計。
【請求項4】
前記ピーク位置を変位に変換する際の直線性を補正するための補正情報を保持する補正情報記憶部を備え、
前記分光器は、前記複数のピンホールに対応する複数のイメージセンサを有し、各イメージセンサが分光後の検出光を受光して前記受光波形を生成し、
前記測定制御部は、前記補正情報を用いて前記イメージセンサごとに直線性の補正を行って変位を算出することを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の共焦点変位計。
【請求項5】
前記光学部材から出射されなかった検出光に対応する基底波形を保持する基底波形記憶部を備え、
前記分光器は、前記複数のピンホールに対応する複数のイメージセンサを有し、各イメージセンサが分光後の検出光を受光して前記受光波形を生成し、
前記測定制御部は、前記基底波形に基づいて前記イメージセンサごとに前記受光波形から信号波形を抽出し、前記ピーク位置を特定することを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載の共焦点変位計。
【請求項6】
前記分光器は、前記複数のピンホールに対応する複数のイメージセンサを有し、各イメージセンサが分光後の検出光を受光して前記受光波形を生成し、
前記測定制御部は、前記イメージセンサごとに露光量を異ならせて取得した複数の受光波形に基づいて、前記計測対象物の変位を求めることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の共焦点変位計。
【請求項7】
前記複数のピンホールをそれぞれ通過した複数の検出光の一部を光学的に合成して複数の合成光を生成する光学合成部を備え、
前記分光器は、前記複数の合成光をそれぞれ分光して複数の受光波形を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の共焦点変位計。
【請求項8】
共焦点光学系を有するヘッドユニットと、複数の波長を有する光を生成する投光用光源を有する制御装置と、前記投光用光源からの光を前記ヘッドユニットにそれぞれ伝送する複数の光ファイバからなるファイバケーブルとを備える共焦点変位計であって、
前記ヘッドユニットは、複数の照射スポットを形成するために、前記複数の光ファイバの端面の各端面とともに共焦点光学系を構成して、当該端面を介して出射され
た検出光に軸上色収差を発生させるとともに、当該検出光を計測対象物に向かって収束させる光学部材を有し、
前記制御装置は、前記光学部材を介して前記計測対象物に形成された複数の照射スポットの各照射スポットからの前記検出光のうち、当該各照射スポットに対応する前記複数の端面の各端面を通過した検出光をそれぞれ分光し、当該各照射スポットに対応して波長ごとの受光強度からなる受光波形をそれぞれ生成する分光器と、
前記分光器によりそれぞれ生成された複数の受光波形に基づいて、当該複数の受光波形の各受光波形のピーク位置から前記計測対象物の変位をそれぞれ求め、当該受光波形のピークに基づく重みにより各変位を統計処理し、代表変位を生成する測定制御部とを有することを特徴とする共焦点変位計。
【請求項9】
前記統計処理は、前記複数の受光波形に対して、ピーク強度又はピーク位置の最大値、最小値又は平均値を求める処理を含むことを特徴とする請求項1、2又は
8に記載の共焦点変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共焦点変位計に係り、さらに詳しくは、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点変位計の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点変位計は、光源の像が結像する結像面からの反射光に受光する光を絞り込むという共焦点原理と、光源の像に光軸方向の色ずれが生じるという軸上色収差の現象とを利用して計測対象物の変位を計測する光学式の計測装置である。
【0003】
共焦点変位計は、光源からの光を点光源として出射するピンホールと、ピンホールを介して出射された検出光に軸上色収差を発生させ、検出光を計測対象物に向かって収束させる光学部材と、計測対象物からの反射光を分光する分光器とにより構成される。検出光には、複数の波長を有する光、例えば、白色光が用いられる。ピンホールは、光学部材を介して計測対象物に照射された検出光のうち、計測対象物上で合焦しつつ反射された波長の検出光を通過させる。
【0004】
結像面の位置は、軸上色収差により波長ごとに異なるため、ピンホールを通過した検出光の波長を特定することにより、計測対象物の変位が求められる。変位は、予め定められた基準位置から計測対象物までの光軸方向の距離であり、変位を求めることにより、表面の凹凸の深さ又は高さや透明体の厚さ等を測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面の微細な凹凸によって光を乱反射させる粗面体を測定対象とする場合、表面で結像した検出光はランダムな方向に反射されることから、分光後の強度レベルが低下して誤差が大きくなってしまうという問題があった。特に、表面粗さの程度を超えて測定値が測定箇所によって大きくばらつくことがあった。このため、例えば、複数の変位計を用いて複数の測定箇所をそれぞれ計測し、測定値から計測対象物の平坦度を求める際の精度が低かった。
【0006】
また、変位計の位置が僅かにずれると、乱反射の影響によって測定値が大きく変動してしまうという問題もあった。このため、変位計の設置状況によっては測定値が安定しなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、乱反射する測定対象に対する測定精度を向上させることができる共焦点変位計を提供することを目的とする。特に、粗面体の表面粗さの程度を超えて測定値がばらつくのを抑制することができる共焦点変位計を提供することを目的とする。また、変位計の位置ずれに対する測定値の変動を抑制することができる共焦点変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様による共焦点変位計は、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点変位計であって、複数の波長を有する光を生成する投光用光源と、前記投光用光源からの光を通過させることによって複数の検出光をそれぞれ出射する複数のピンホールと、前記複数のピンホールを介してそれぞれ出射された前記複数の検出光に軸上色収差を発生させるとともに、前記複数の検出光を前記計測対象物に向かって収束させる光学部材と、前記光学部材を介して前記計測対象物に照射された前記検出光のうち、前記計測対象物上で合焦しつつ反射されることによって前記複数のピンホールをそれぞれ通過した複数の検出光をそれぞれ分光し、波長ごとの受光強度からなる複数の受光波形を生成する分光器と、前記複数の受光波形を統計処理し、前記複数の受光波形から代表受光波形を生成する測定制御部とを備える。
【0009】
この共焦点変位計では、複数のピンホールに対応して計測対象物上に複数の照射スポットが形成される。これらの照射スポットに対応する複数の受光波形を統計処理して代表受光波形を生成し、変位を求めることにより、表面の局所的な凹凸による乱反射の影響を抑制することができる。このため、測定値が測定箇所によって大きくばらつくのを抑制することができる。特に、粗面体の表面粗さの程度を超えて測定値がばらつくのを抑制することができる。また、共焦点変位計の位置ずれに対する測定値の変動を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2の態様による共焦点変位計は、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点変位計であって、複数の波長を有する光を生成する投光用光源と、前記投光用光源からの光を通過させることによって複数の検出光をそれぞれ出射する複数のピンホールと、前記複数のピンホールを介してそれぞれ出射された前記複数の検出光に軸上色収差を発生させるとともに、前記複数の検出光を前記計測対象物に向かって収束させる光学部材と、前記光学部材を介して前記計測対象物に照射された前記検出光のうち、前記計測対象物上で合焦しつつ反射されることによって前記複数のピンホールをそれぞれ通過した複数の検出光をそれぞれ分光し、波長ごとの受光強度からなる複数の受光波形を生成する分光器と、前記複数の受光波形に基づいて、前記計測対象物の変位をそれぞれ求め、各変位を統計処理し、代表変位を生成する測定制御部とを備える。
【0011】
この共焦点変位計では、複数のピンホールに対応して計測対象物上に複数の照射スポットが形成される。これらの照射スポットに対応する複数の受光波形から計測対象物の変位をそれぞれ求め、各変位を統計処理して代表変位を生成することにより、表面の局所的な凹凸による乱反射の影響を抑制することができる。
【0012】
本発明の第3の態様による共焦点変位計は、上記構成に加え、前記測定制御部が、前記複数の受光波形についてピーク位置をそれぞれ特定するように構成される。
【0013】
この様な構成によれば、複数の照射スポットについてピーク位置がそれぞれ特定されるため、これらのピーク位置から外れ値を除外し、或いは、これらのピーク位置を対応する受光波形に応じて重み付けする等の統計処理を行うことによって測定精度をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の第4の態様による共焦点変位計は、上記構成に加え、前記測定制御部が、前記複数の受光波形を重ね合わせた積算波形に基づいてサーチ範囲を特定し、前記複数の受光波形について、受光波形ごとに前記サーチ範囲内のデータ点列に曲線をフィッティングさせて前記ピーク位置を特定するように構成される。
【0015】
この様な構成によれば、積算波形を用いて特定したサーチ範囲にデータ点列を絞り込んで曲線をフィッティングさせるため、ノイズによる測定値のばらつきを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の態様による共焦点変位計は、上記構成に加え、前記ピーク位置を変位に変換する際の直線性を補正するための補正情報を保持する補正情報記憶部を備え、前記分光器が、前記複数のピンホールに対応する複数のイメージセンサを有し、各イメージセンサが分光後の検出光を受光して前記受光波形を生成し、前記測定制御部が、前記補正情報を用いて前記イメージセンサごとに直線性の補正を行って変位を算出するように構成される。
【0017】
この様な構成によれば、イメージセンサごとに直線性が補正されるため、測定精度をさらに向上させることができる。例えば、表面の反射率が測定箇所によって大きく異なる場合に、反射率が高い照射スポットの影響によって測定精度が低下するのを抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の態様による共焦点変位計は、上記構成に加え、前記光学部材から出射されなかった検出光に対応する基底波形を保持する基底波形記憶部を備え、前記分光器が、前記複数のピンホールに対応する複数のイメージセンサを有し、各イメージセンサが分光後の検出光を受光して前記受光波形を生成し、前記測定制御部が、前記基底波形に基づいて前記イメージセンサごとに前記受光波形から信号波形を抽出し、前記ピーク位置を特定するように構成される。この様な構成によれば、計測対象物以外の部材によって反射された戻り光に影響されることなく、ピーク位置を正しく特定することができる。
【0019】
本発明の第7の態様による共焦点変位計は、上記構成に加え、前記分光器が、前記複数のピンホールに対応する複数のイメージセンサを有し、各イメージセンサが分光後の検出光を受光して前記受光波形を生成し、前記測定制御部が、前記イメージセンサごとに露光量を異ならせて取得した複数の受光波形に基づいて、前記計測対象物の変位を求めるように構成される。
【0020】
この様な構成によれば、露光過多又は露光不足の照射スポットがあっても他の照射スポットに対応する受光波形から変位が求められるため、広いダイナミックレンジを得ることができる。
【0021】
本発明の第8の態様による共焦点変位計は、上記構成に加え、前記複数のピンホールをそれぞれ通過した複数の検出光の一部を光学的に合成して複数の合成光を生成する光学合成部を備え、前記分光器が、前記複数の合成光をそれぞれ分光して複数の受光波形を生成するように構成される。この様な構成によれば、分光器の構成を簡素化することができる。
【0022】
本発明の第9の態様による共焦点変位計は、共焦点光学系を有するヘッドユニットと、複数の波長を有する光を生成する投光用光源を有する制御装置と、前記投光用光源からの光を前記ヘッドユニットにそれぞれ伝送する複数の光ファイバからなるファイバケーブルとを備える共焦点変位計であって、前記ヘッドユニットは、前記複数の光ファイバの端面を介してそれぞれ出射された複数の検出光に軸上色収差を発生させるとともに、前記複数の検出光を計測対象物に向かって収束させる光学部材を有し、前記制御装置は、前記光学部材を介して前記計測対象物に照射された前記検出光のうち、前記計測対象物上で合焦しつつ反射されることによって前記複数の光ファイバの端面をそれぞれ通過した複数の検出光をそれぞれ分光し、波長ごとの受光強度からなる複数の受光波形を生成する分光器と、前記複数の受光波形に基づいて、前記計測対象物の変位を求める測定制御部とを有する。
【0023】
この共焦点変位計では、ヘッドユニット及び制御装置間で光を伝送する複数の光ファイバの端面をそれぞれ共焦点光学系のピンホールとして機能させることができる。また、表面の局所的な凹凸による乱反射の影響を抑制することができるため、測定値がヘッドユニットの位置によって大きくばらつくのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面の局所的な凹凸による乱反射の影響を抑制することができるため、乱反射する測定対象に対する測定精度を向上させることができる。特に、粗面体の表面粗さの程度を超えて測定値がばらつくのを抑制することができる。また、変位計の位置ずれに対する測定値の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態1による共焦点変位計1の一構成例を示したシステム図である。
【
図2】
図1のヘッドユニット2の構成例を模式的に示した断面図である。
【
図3】
図2の光ファイバフェルール22を示した断面図である。
【
図4】
図1の投光用光源41の構成例を模式的に示した断面図である。
【
図5】
図1の分光器43の構成例を模式的に示した説明図である。
【
図6】
図1の測定制御部44内の機能構成の一例を示したブロック図である。
【
図7】
図6の測定制御部44の動作の一例を示した図であり、複数の信号波形Wf1から積算波形Wf2を求めてサーチ範囲SRを特定する様子が示されている。
【
図8】
図6の測定制御部44の動作の一例を示した図であり、直線性を補正するための補正曲線L1~L4が示されている。
【
図9】
図6の測定制御部44における基底波形の除去処理の一例を示したフローチャートである。
【
図10】
図6の測定制御部44の動作の一例を示した図であり、受光波形RLから補正波形BLを除去して信号波形SLを得るまでの様子が示されている。
【
図11】本発明の実施の形態2による共焦点変位計1aの一構成例を示したシステム図である。
【
図12】共焦点変位計1aの他の構成例を示したシステム図である。
【
図13】本発明の実施の形態3による共焦点変位計1bの一構成例を示したシステム図である。
【
図14】共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、投光用光源41aが示されている。
【
図15】共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、投光用光源41bが示されている。
【
図16】共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、投光用光源41cが示されている。
【
図17】共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、投光用光源41d及び41eが示されている。
【
図18】共焦点変位計1の他の構成例を模式的に示した説明図であり、透過型の分光器43aが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本明細書では、便宜上、ヘッドユニットの光軸の方向を上下方向として説明するが、ヘッドユニットの使用時における姿勢や向きを限定するものではない。
【0027】
実施の形態1.
<共焦点変位計1>
図1は、本発明の実施の形態1による共焦点変位計1の一構成例を示したシステム図である。この共焦点変位計1は、ヘッドユニット2、ファイバケーブル3及び制御装置4により構成され、ヘッドユニット2から複数の検出光DLを出射した際の計測対象物Wからの反射光をそれぞれ受光して計測対象物Wの変位を計測する光学式の計測装置である。
【0028】
ヘッドユニット2及び制御装置4は、ファイバケーブル3を介して互いに接続されている。ファイバケーブル3は、複数の光をそれぞれ伝送する複数の光ファイバ31により構成される。ファイバケーブル3の一端には、コネクタ32が設けられ、制御装置4と着脱可能に接続される。
【0029】
ヘッドユニット2は、検出光DLを計測対象物Wに向けて出射し、計測対象物Wからの反射光が入射する光学ユニットであり、屈折レンズ211、回折レンズ212等の光学部材21を備える。この光学部材21は、複数の光ファイバ31の端面からそれぞれ出射された複数の検出光DLに軸上色収差を発生させるとともに、複数の検出光DLを計測対象物Wに向かって収束させる。軸上色収差は、分散による光軸方向の像の色ずれである。
【0030】
共焦点変位計1では、4本の光ファイバ31を介して光がヘッドユニット2にそれぞれ伝送され、ヘッドユニット2から出射された4つの検出光DLによって計測対象物W上に4つの照射スポットが形成される。各光ファイバ31の出射端面は、検出光DLを出射する点光源となるように、投光用光源からの光を通過させるピンホールとして機能するとともに、光学部材21を介して計測対象物Wに照射された検出光DLのうち、計測対象物W上で合焦しつつ反射された波長の検出光を通過させるピンホールとして機能する。
【0031】
制御装置4は、投受光を制御し、複数の照射スポットにそれぞれ対応する複数の反射光に基づいて、計測対象物Wの変位を求める処理ユニットであり、投光用光源41、カプラ42、分光器43、測定制御部44及びメモリ45により構成される。投光用光源41は、複数の波長を有する光、例えば、白色光を検出光DLとして生成する光源装置である。
【0032】
カプラ42は、投光用光源41から入力された光をヘッドユニット2に向けて出力する一方、ヘッドユニット2から入力された検出光DLを分光器43に向けて出力する方向性結合器である。このカプラ42は、一端から2本の光ファイバ421及び422が延び、他端から1本の光ファイバ423が延びるYカプラであり、光ファイバ421の入射端に投光用光源41の光が入力され、光ファイバ422の出射端から分光器43に向けて検出光DLが出射される。また、4本の光ファイバ31に対応して4個のカプラ42が設けられている。
【0033】
分光器43は、複数の光ファイバ31の出射端面をそれぞれ通過した複数の検出光DLをそれぞれ分光し、波長ごとの受光強度からなる受光波形を生成する。この分光器43は、複数の検出光DLをそれぞれ受光し、複数の受光波形を生成する。測定制御部44は、複数の受光波形に基づいて、計測対象物Wの変位を求め、測定値として図示しない表示装置や外部機器へ出力する。メモリ45には、測定条件や各種の補正情報が保持される。
【0034】
なお、カプラ42には、Xカプラを用いてもよい。Xカプラは、Yカプラと比較して端面の反射を抑制し易い。この様な光ファイバカプラは、複数の光ファイバを融着した融着型カプラであるが、ビームスプリッタを用いて光を分割するタイプのカプラであってもよい。
【0035】
<ヘッドユニット2>
図2は、
図1のヘッドユニット2の構成例を模式的に示した断面図であり、光軸Jを含む平面によりヘッドユニット2を切断した場合の切断面が示されている。
図3は、
図2の光ファイバフェルール22を示した断面図であり、中心軸に垂直な平面により光ファイバフェルール22を切断した場合の切断面が示されている。
【0036】
このヘッドユニット2は、筐体20、光学部材21、光ファイバフェルール22及び表示部23により構成される。筐体20は、例えば、有蓋円筒形状の鏡筒であり、中心軸が光軸Jとなっている。光学部材21は、屈折レンズ211及び回折レンズ212により構成される。
【0037】
屈折レンズ211は、光の屈折現象を利用して入射光を集光又は拡散させる光学レンズである。回折レンズ212は、光の回折現象を利用して入射光を集光又は拡散させる光学レンズであり、筐体20の下端開口から露出するように配置されている。
【0038】
この回折レンズ212は、レリーフ型の回折レンズであり、検出光DLの入射面(上面)に微細なレリーフ(起伏)が形成されている。レリーフは、光軸方向の深さが光の波長程度であり、光軸Jを中心とする複数の円環状のパターンが配置される。なお、屈折レンズ211及び回折レンズ212は、いずれも単レンズであるが、それぞれ複数の光学レンズを組み合わせた複レンズであってもよい。また、光学部材21は、屈折レンズ211又は回折レンズ212のいずれか一方だけであっても良い。また、光学部材21には、回折レンズ212のように低アッベ数のレンズ素子を含んでいることが好ましい。
【0039】
光ファイバフェルール22は、ファイバケーブル3を構成する複数の光ファイバ31を保持する保持部材であり、光ファイバ31の出射端が樹脂部材221によって束ねられている。この光ファイバフェルール22は、筐体20の天蓋部から下側に突出させて配置されている。
【0040】
各光ファイバ31は、コア311及びクラッド312により構成され、コア311の端面がピンホールとして機能する。つまり、光ファイバ31のコア311の端面は、光ファイバ31の出射端が配置される空間に比べて径が十分に小さく、光学部材21を介して入射する光を選択的に透過させることができる。屈折レンズ211は、光ファイバフェルール22と回折レンズ212との間に配置されている。各光ファイバ31の出射端面と光学部材21とは、共焦点光学系を構成している。
【0041】
この共焦点光学系は、共焦点原理を利用して受光する光を絞り込むとともに、検出光DLに軸上色収差を生じさせる。このため、光ファイバ31の出射端面を介して出射し、光学部材21を透過した検出光DLは、波長に応じて上下方向の異なる位置に結像する。検出光DLに含まれる波長成分のうち、計測対象物W上に結像した特定の波長成分は、計測対象物Wにより反射され、その反射光が光学部材21を透過して光ファイバ31の出射端面上に結像する。一方、特定の波長成分以外の波長成分に対応する反射光は、光ファイバ31の出射端面上に結像せず、遮断される。
【0042】
この共焦点変位計1では、光ファイバ31の出射端面で反射した光の影響によって測定精度が低下するのを抑制するために、光ファイバフェルール22の出射端面22aが斜めに加工されている。すなわち、出射端面22aは、光ファイバフェルール22の中心軸に垂直な平面に対して傾斜した傾斜面となっている。出射端面22aの傾斜は、例えば、研磨加工によって形成される。また、検出光DLが光ファイバ31の出射端面を通過する際の屈折を考慮して、光ファイバフェルール22は、その中心軸を光軸Jに対して傾斜させて配置されている。
【0043】
ヘッドユニット2から計測対象物Wまでの距離は、例えば、10mm~70mm程度であり、測定範囲MRは、1mm~20mm程度である。この測定範囲MRは、検出光DLの帯域幅に対応し、広い測定範囲MRを確保するために、広帯域の検出光DLが用いられる。検出光DLは、例えば、500nm~700nmの波長成分を含む。
【0044】
表示部23は、ヘッドユニット2とファイバケーブル3との接続部付近に設けられ、光ファイバ33を介して制御装置4内の表示用光源から伝送された表示用の光を利用して各種情報の表示を行う。表示部23は、筐体20の外周面に設けられ、光ファイバ33の出射端、拡散窓231及び反射部材232により構成される。反射部材232は、光ファイバ33の出射端面を介して出射された表示光を拡散窓231に向けて反射させるための光学部材である。拡散窓231は、表示光を拡散させる光学部材からなり、筐体20の外周面から露出している。
【0045】
表示部23の表示は、制御装置4の動作状態、受光波形又は変位の測定値を利用して制御され、運転中におけるシステムエラーの発生、計測対象物Wが測定範囲内にあるか否か、変位の測定値が公差の範囲内であるか否かが表示される。例えば、通信不良などの動作不良がシステムエラーとして表示される。また、変位の測定値が上限閾値を上回っている状態(High)と、変位の測定値が下限閾値を下回っている状態(Low)と、変位の測定値が下限閾値以上上限閾値以下である状態(go)とが識別可能に表示される。また、表示部23には、ヘッドユニット2が適切に設置されたか否かが表示される。
【0046】
ファイバケーブル3は、測定用の光ファイバ31と表示用の光ファイバ33とにより構成される。ヘッドユニット2から延びるファイバケーブル3の一端と制御装置4の筐体に設けられる接続口とを着脱可能に接続するコネクタ32は、両光ファイバ31及び33に共通の接続部材であり、例えば、複数のファイバ保持孔に光ファイバ31及び33がそれぞれ挿通される。
【0047】
<投光用光源41>
図4は、
図1の投光用光源41の構成例を模式的に示した断面図である。この投光用光源41は、レーザ光を蛍光体に照射して白色光を発生させる光源装置であり、LD(レーザーダイオード)411、光学レンズ412,413、フィルタ素子414、蛍光体415、コリメータレンズ416及び結像レンズ417により構成される。
【0048】
LD411は、レーザ光を生成する半導体発光素子である。このレーザ光は、光学レンズ412及び413を介して蛍光体415に集光され、蛍光体415を励起させる。レーザ光は、例えば、波長が450nm以下の青色光又は紫外光である。蛍光体415は、LD411からのレーザ光によって励起され、レーザ光とは異なる波長の蛍光、例えば、黄色の蛍光を発生させる。より好ましくは、広帯域の光を得るために複数種類の蛍光体が混合されている。
【0049】
フィルタ素子414は、LD411からのレーザ光を透過し、蛍光体415からの光を反射する平板状の光学部材である。フィルタ素子414及び蛍光体415を透過したレーザ光と蛍光体415からの蛍光とが混合した白色光がコリメータレンズ416に向けて出射される。
【0050】
コリメータレンズ416は、平行光を得るための光学レンズである。コリメータレンズ416を透過した白色光は、複数の結像レンズ417によってカプラ42ごとの光に分割され、光ファイバ421の入射端にそれぞれ入射される。
【0051】
コリメータレンズ416は、各光ファイバ421にNA(開口数)分の光を入力するために、光ファイバ421のNAの2倍よりも大きいNAを有する。また、色収差を低減させるために、コリメータレンズ416又は結像レンズ417の少なくとも一方には、アクロマートレンズが用いられる。
【0052】
なお、投光用光源41には、広帯域な光を発生する光源、例えば、ハロゲンランプ、スーパーコンティニウム(SC)光を発生するSC光源、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を用いても良い。また、通常の白色LED光でもよい。SC光源は、パルスレーザによる非線形光学効果により、連続かつ広帯域なレーザ光を生成する。
【0053】
<分光器43>
図5は、
図1の分光器43の構成例を模式的に示した説明図であり、反射型の分光器43が示されている。この分光器43は、コリメータレンズ431、回折格子432及び結像レンズ433と、複数のイメージセンサ434とにより構成され、カプラ42の光ファイバ422の出射端から出射された検出光DLをそれぞれ分光する。
【0054】
4本の光ファイバ422の出射端を紙面に垂直な方向、すなわち、上下方向に配列することにより、各出射端から出射された検出光DLを共通の光学部材(コリメータレンズ431、回折格子432及び結像レンズ433)によって分光させている。4本の光ファイバ422の出射端は、例えば、多芯フェルールの一部又は全部を用いて固定される。
【0055】
コリメータレンズ431は、平行光を得るための光学レンズであり、各光ファイバ422の出射端面に対向するように配置される。回折格子432は、波長に応じて異なる角度で検出光DLを反射させる反射型の色分散素子であり、平板形状からなる。結像レンズ433は、回折格子432により分光された複数の検出光DLを複数のイメージセンサ434上にそれぞれ結像させる。なお、コリメータレンズ431及び結像レンズ433は、いずれも単レンズであるが、それぞれ複数の光学レンズを組み合わせた複レンズであってもよい。
【0056】
イメージセンサ434は、例えば、一次元のラインイメージセンサであり、多数の受光素子が直線状に配列される。各受光素子の受光信号によって受光波形が形成される。4本の光ファイバ422にそれぞれ対応する4個のイメージセンサ434は、受光面の向きを一致させた状態で、紙面に垂直な方向に配列される。この様なイメージセンサ434を用いることにより、4つの照射スポットに対応する4つの受光波形を同時に取得することができる。ここでは、4つの独立したイメージセンサ434が1つのパッケージとして形成された撮像素子が用いられる。
【0057】
複数の検出光DLを共通の回折格子432によって分光させる場合、波長に応じて異なる複数の反射角度を含む分光面と交差する方向に検出光DLを配置する必要がある。このため、4本の光ファイバ422の出射端と4つのイメージセンサ434とは、いずれも分光面と交差する方向に配列されている。
【0058】
なお、イメージセンサ434には、多数の受光素子が二次元的に配列された撮像素子を用いてもよい。また、二次元の撮像素子を機能的に分割し、それぞれをラインイメージセンサとして用いるような構成であってもよい。
【0059】
回折格子432は、イメージセンサ434に入射した光が受光面で正反射し、回折格子432により反射されて再度受光されるのを防ぐために、イメージセンサ434の受光面に正対する状態から僅かに傾けて配置される。なお、プリズムを用いて検出光DLを分光させてもよい。
【0060】
光ファイバ422同士のピッチLfとイメージセンサ434同士のピッチLiとの比は、コリメータレンズ431の焦点距離fc及び結像レンズ433の焦点距離fiの比と一致している必要がある。すなわち、関係式Li/Lf=fi/fcを満たす必要がある。
【0061】
この分光器43では、コリメータレンズ431、結像レンズ433、ピッチLi等の寸法誤差を吸収させるために、光ファイバ422の出射端を保持する多芯フェルールに対し、光軸を中心として回転させる相対ピッチ調整手段が設けられる。この相対ピッチ調整手段により、光ファイバ422の出射端間の距離をイメージセンサ434の配置間隔に対して調整することができる。
【0062】
<測定制御部44>
図6は、
図1の測定制御部44内の機能構成の一例を示したブロック図である。この測定制御部44は、信号波形抽出部441、サーチ範囲特定部442、ピーク位置特定部443、変位算出部444及び統計値演算部445により構成される。
【0063】
信号波形抽出部441は、分光器43から複数の受光波形を取得し、各受光波形から信号波形を抽出する。イメージセンサ434には、多数の受光素子が直線状に配列されていることから、受光素子ごとの受光量を示す受光強度データが配列方向の位置に関連づけて管理される。受光波形は、受光素子の配列方向の位置を画素位置と呼ぶことにすれば、それぞれが画素位置に関連づけられた多数の受光強度データからなる。
【0064】
計測対象物以外の部材によって反射された戻り光の影響によって測定精度が低下するのを抑制するために、受光波形から基底波形を除去する処理が行われる。信号波形は、受光波形から基底波形を除去することによって得られる。基底波形は、ヘッドユニット2の光学部材21から出射されなかった検出光DLに対応する波形である。基底波形は、例えば、予め登録された登録波形に対し、露光条件や投光条件を考慮して基準波形を求め、この基準波形から補正波形として求められる。
【0065】
サーチ範囲特定部442は、イメージセンサ434のノイズによる測定値のばらつきを抑制するために、複数の受光波形を重ね合わせた積算波形を生成し、積算波形に基づいて、ピーク位置を探索するためのサーチ範囲を特定する。このサーチ範囲特定部442は、イメージセンサ434ごとに取得される複数の信号波形を加算することによって積算波形を生成する。サーチ範囲は、例えば、受光強度の積算値が所定の閾値を超えている画素位置の範囲として特定される。この様なサーチ範囲を用いてピーク位置を特定することにより、反射率が低い計測対象物Wに対する測定精度を向上させることができる。
【0066】
ピーク位置特定部443は、複数の受光波形について、受光波形ごとにサーチ範囲内のデータ点列に曲線をフィッティングさせてピーク位置を特定する。このピーク位置特定部443は、イメージセンサ434ごとに取得される複数の信号波形について、信号波形ごとにサーチ範囲内のデータ点列に対し、所定の曲線をフィッティングさせ、曲線上の最大点の画素位置としてピーク位置を特定する。曲線をフィッティングは、回帰演算によって行われる。
【0067】
変位算出部444は、複数の受光波形についてそれぞれ特定されたピーク位置に基づいて、計測対象物Wの変位を算出し、統計値演算部445へ測定値として出力する。統計値演算部445は、予め定められた統計処理により計測対象物Wの変位を算出し、測定結果として出力する。
【0068】
統計値演算部445は、例えば、複数の受光波形を統計処理し、これらの複数の受光波形から代表受光波形を生成する。代表受光波形のピーク位置から変位量が求められる。統計処理では、複数の受光波形について、ピーク強度やピーク位置の最大値、最小値又は平均値が求められ、或いは、外れ値を除外して代表値が求められる。
【0069】
また、統計値演算部445は、複数の受光波形に基づいて、計測対象物Wの変位をそれぞれ求め、各変位を統計処理し、代表変位を生成する。具体的には、複数の信号波形に対応する複数のピーク位置について、それぞれ変位量を求め、これらの変位量の平均値を求める処理や、複数のピーク位置から外れ値を除外して変位量の平均値を求める処理が統計処理として行われる。また、複数の変位量について、対応する受光強度に応じて重み付けし、加重平均を求める処理が統計処理として行われる。重みは、例えば、信号波形のピーク強度や信号波形の幅に応じて定められる。これらの統計処理を行うことにより、変位の測定精度を向上させることができる。
【0070】
メモリ45には、ピーク位置を変位に変換する際の直線性を補正するための補正情報が保持される。変位算出部444は、この補正情報を用いてイメージセンサ434ごとに直線性の補正を行って変位を算出する。
【0071】
また、測定制御部44は、広いダイナミックレンジを実現するために、イメージセンサ434ごとに露光量を異ならせて複数の受光波形を取得し、取得した複数の受光波形に基づいて計測対象物Wの変位を求める。露光量の調整は、例えば、イメージセンサ434の露光時間を変化させ、或いは、受光信号を増幅する際のゲインを変化させることによって行われる。
【0072】
この様な構成を採用することにより、露光過多又は露光不足の照射スポットがあっても他の照射スポットに対応する受光波形から変位が求められるため、広いダイナミックレンジを得ることができる。また、計測対象物Wの反射率が大きく変動しても途切れることなく測定値を出力することができる。
【0073】
さらに、ガラス等の透明体の厚さ測定において、表面と裏面とで反射率が大きく異なる場合、表面に対して最適化した露光時間で取得した受光波形と、裏面に対して最適化した露光時間で取得した受光波形とを用いて厚さを求めることができる。つまり、1回のサンプリングもしくは少ないサンプリングによって厚さを高精度に測定することができる。
【0074】
図7は、
図6の測定制御部44の動作の一例を示した図であり、複数の信号波形Wf1から積算波形Wf2を求めてサーチ範囲SRを特定する様子が示されている。4つのイメージセンサ434の出力をライン1~4と呼んで区別すると、信号波形Wf1は、ラインごとに取得される。これらの信号波形Wf1には、イメージセンサ434のノイズ成分が含まれることから、受光強度のピーク位置を特定して変位量を求めると、変位量がノイズ成分の影響によってばらつくことになる。
【0075】
積算波形Wf2は、ライン1~4について信号波形Wf1を重ね合わせることによって得られ、元の信号波形Wf1に比べ、SN比が2倍程度改善され、静止分解能を向上させることができる。よって、ピークの誤検出を防ぐことができ、安定した測定が可能となる。各信号波形Wf1についてピーク位置を探索する際のサーチ範囲SRは、この積算波形Wf2に基づいて定められる。サーチ範囲SRは、例えば、ピーク強度aの半値幅として定められる。
【0076】
図8は、
図6の測定制御部44の動作の一例を示した図であり、直線性を補正するための補正曲線L1~L4が示されている。補正曲線L1~L4は、画素位置を変位に変換する際の変換特性を表す曲線であり、理想的な直線に対するずれがラインごとに示されている。
【0077】
複数の検出光DLを光学的に合成し、その合成光を分光して1つの受光波形を得る方法では、直線性が照射スポットごとに異なることに起因して直線性が正しく補正されないという問題があった。例えば、表面の反射率が照射スポットの位置によって大きく異なる場合、反射率が高い照射スポットの影響で補正量が決まるため、直線性がずれてしまう。
図8の例では、ピーク位置における補正曲線L1の補正量(b1-b0)の絶対値が他の補正曲線L2~L4の補正量(b2-b0)、(b3-b0)及び(b4-b0)に比べて大きく、特定の照射スポットに対応する補正量で補正しても直線性が正しく補正されない。
【0078】
共焦点変位計1では、イメージセンサ434ごとに直線性の補正を行って変位量が算出されるため、表面の反射率が測定箇所によって大きく異なる計測対象物Wであっても、直線性を正しく補正することができる。
【0079】
図9のステップS101~S108は、
図6の測定制御部44における基底波形の除去処理の一例を示したフローチャートである。
図10は、
図6の測定制御部44の動作の一例を示した図であり、受光波形RLから補正波形BLを除去して信号波形SLを得るまでの様子が示されている。図中の(a)には、受光波形RLが示され、(b)には、基底波形BLが示され、(c)には、信号波形SLが示されている。受光波形RL、基底波形BL及び信号波形SLは、横軸を画素位置とし、縦軸を受光強度としてそれぞれ描画されている。
【0080】
まず、測定制御部44は、基底波形BLを登録波形として登録し(ステップS101)、この登録波形に基づいて重み係数W1を算出する(ステップS102)。重み係数W1は、例えば、2つの登録波形の積和演算によって求められる。
【0081】
次に、測定制御部44は、受光波形RLを取得し(ステップS103)、登録波形と受光波形RL取得時の露発光状態とに基づいて基準波形を算出する(ステップS104)。また、測定制御部44は、受光波形RLと登録波形とに基づいて重み係数W2を算出する(ステップS105)。重み係数W2は、例えば、受光波形RLと登録波形との積和演算によって求められる。
【0082】
次に、測定制御部44は、重み係数W1及びW2から補正係数を算出し(ステップS106)、基準波形に補正係数を乗算して補正波形を算出する(ステップS107)。測定制御部44は、受光波形RLから補正波形を減算することにより、信号波形を抽出する(ステップS108)。
【0083】
受光波形RLには、短波長側と長波長側とに鋭いピークが形成され、これらのピーク間には、受光強度が緩やかに変化する1つのピークが形成されている。短波長側のピーク波形は、蛍光体励起用のレーザ光に対応する受光波形である。長波長側のピーク波形は、信号波形SLに対応する。短波長側のピーク波形と緩やかに変化するピーク波形とは、基底波形BLに対応する。光量の強い光、例えば、レーザを用いた光を光源とすることにより、基底波形BLの強度も高くなる。
【0084】
画素位置p1は、短波長側のピーク波形の影響を除去するために、当該ピーク波形よりも長波長側に予め定められる。画素位置p2は、長波長側の影響を除去するために予め定められる。信号波形SLは、計測対象物Wからの反射光に対応する受光波形であり、受光波形RLから基底波形BLを減算することによって求められる。
【0085】
投光用光源41にレーザ光源を用い、そのレーザ光とレーザ光によって励起された蛍光体415からの蛍光との混合光を検出光DLとして使用することにより、検出光DLの光量は極めて大きい。このため、計測対象物W以外の部材による反射光の影響が無視できない。この計測対象物W以外の部材による反射光に対応する受光波形が基底波形BLであり、受光波形RLでは、基底波形BLの存在により、信号波形SLのピーク位置P3がずれるという問題があった。
【0086】
受光波形RLから信号波形SLを抽出し、ピーク位置p3を特定することにより、計測対象物W以外の部材によって反射された戻り光に影響されることなく、ピーク位置を正しく特定することができる。
【0087】
本実施の形態によれば、4つの照射スポットに対応する4つの受光波形を用いて変位を求めることから、表面の局所的な凹凸による乱反射の影響を抑制することができる。このため、測定値が測定箇所によって大きくばらつくのを抑制することができる。特に、粗面体の表面粗さの程度を超えて測定値がばらつくのを抑制することができる。また、共焦点変位計1の位置ずれに対する測定値の変動を抑制することができる。
【0088】
実施の形態2.
実施の形態1では、4つの照射スポットに対応して4つのカプラ42が設けられ、計測対象物Wによって反射された4つの検出光DLがそれぞれ独立に分光される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、2つのカプラがそれぞれ計測対象物Wからの2つの検出光DLを合成して合成光を分光器43へ出力する場合について説明する。
【0089】
図11は、本発明の実施の形態2による共焦点変位計1aの一構成例を示したシステム図である。この図では、測定制御部44及びメモリ45が省略されている。共焦点変位計1aは、
図1の共焦点変位計1と比較すれば、制御装置4aが2つのカプラ46を備えている点で異なる。
【0090】
カプラ46は、一端から2本の光ファイバ461及び462が延び、他端から2本の光ファイバ463及び464が延びるXカプラである。このカプラ46は、2本の光ファイバ31の出射端面(ピンホール)をそれぞれ通過した2つの検出光DLを光学的に合成して合成光を生成する光学合成部である。光ファイバ461の入射端には、投光用光源41の光が入力され、光ファイバ463及び464の出射端からヘッドユニット2に向けてそれぞれ出力される。一方、計測対象物Wによって反射され、ヘッドユニット2及びファイバケーブル3を介して伝送された2つの検出光DLは、光ファイバ463及び464の出射端にそれぞれ入力され、その合成光が光ファイバ462の出射端から分光器43に向けて出射される。
【0091】
分光器43は、2つの合成光をそれぞれ分光して2つの受光波形を生成する。この分光器43には、2本の光ファイバ462にそれぞれ対応する2個のイメージセンサ434が設けられる。また、ヘッドユニット2内の光ファイバフェルール22は、共通のカプラ46に接続された2本の光ファイバ31について、出射端の光軸方向における位置が一致するように配置される。この様な構成によれば、分光器43の構成を簡素化することができる。
【0092】
図12は、共焦点変位計1aの他の構成例を示したシステム図であり、カプラ46による合成光をカプラ47によって2つの分岐させる制御装置4bが示されている。この図では、ヘッドユニット2、測定制御部44及びメモリ45が省略されている。制御装置4bは、
図11の制御装置4aと比較すれば、2つのカプラ47を備えている点で異なる。
【0093】
カプラ47は、一端から2本の光ファイバが延び、他端から1本の光ファイバが延びるYカプラであり、カプラ46からの合成光が他端の光ファイバに入力され、その分岐光が一端の2本の光ファイバから分光器43に向けてそれぞれ出射される。この様な構成であっても、表面粗さの程度を超えて測定値がばらつくのを抑制することができる。
【0094】
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、ヘッドユニット2及び制御装置4間で光を伝送する複数の光ファイバ31の端面をそれぞれ共焦点光学系のピンホールとして機能させる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、光ファイバを用いることなく、投光用光源からの光がピンホールに誘導され、計測対象物Wによって反射され、ピンホールを通過した検出光が分光器43に誘導される場合について説明する。
【0095】
図13は、本発明の実施の形態3による共焦点変位計1bの一構成例を示したシステム図である。この図では、測定制御部44及びメモリ45が省略されている。この共焦点変位計1bは、投光用光源11、集光レンズ12,14、ビームスプリッタ13、ピンホール部材15、光学部材21、分光器用レンズ16及び分光器43により構成される。
【0096】
集光レンズ12及び14は、投光用光源11から出射された光をピンホール部材15の2つのピンホールに集光させる光学レンズである。ピンホール部材15は、微小なピンホール(開口)を有する平板状の遮光部材であり、投光用光源11からの光がピンホールを通過することによって2つの検出光DLを出射する。
【0097】
光学部材21は、ピンホール部材15の2つのピンホールからそれぞれ出射された2つの検出光DLに軸上色収差を発生させるとともに、2つの検出光DLを計測対象物Wに向かって収束させる。ピンホール部材15及び光学部材21が共焦点光学系である。
【0098】
ビームスプリッタ13は、投光用光源11からの光を透過させる一方、計測対象物Wによって反射され、光学部材21及びピンホール部材15を通過した検出光DLを分光器43に向けて反射させる光学部材である。このビームスプリッタ13は、集光レンズ12と集光レンズ14との間に配置される。
【0099】
ビームスプリッタ13により反射された2つの検出光DLは、分光器用レンズ16を介して分光器43にそれぞれ入射される。共焦点変位計1bでは、2つのピンホールに対応して計測対象物W上に2つの照射スポットが形成される。これらの照射スポットに対応する2つの受光波形を用いて変位を求めることから、表面の局所的な凹凸による乱反射の影響が平均化され、測定値が測定箇所によって大きくばらつくのを抑制することができる。
【0100】
なお、実施の形態1~3では、レーザ光を蛍光体415に照射して投光用の白色光を発生させ、コリメータレンズ416及び結像レンズ417を用いて光ファイバ421の入射端に白色光を入射させる場合の例について説明したが、本発明は、投光用光源の構成をこれに限定するものではない。例えば、投光用光源は、白色光を生成するLED(発光ダイオード)を用いて光ファイバ421の入射端に白色光を直接に入射させるような構成であってもよい。
【0101】
図14は、共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、光ファイバフェルール52の入射端面がLED51の発光面に対向するように配置された投光用光源41aが示されている。光ファイバフェルール52は、光ファイバ421の入射端を保持する保持部材である。このLED51の発光面には、3本の光ファイバ421に対応する3つの光ファイバフェルール52が配置されている。
【0102】
図15は、共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、コリメータレンズ416を用いずに蛍光体415からの白色光を光ファイバ421の入射端に入射させる投光用光源41bが示されている。この投光用光源1bは、
図4の投光用光源41と比較すれば、コリメータレンズ416を備えていない点で異なる。
【0103】
フィルタ素子414及び蛍光体415を透過したレーザ光と蛍光体415からの蛍光とが混合した白色光は、複数の結像レンズ417に向けて出射される。結像レンズ417を透過した白色光は、光ファイバ421の入射端に入射される。
【0104】
図16は、共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図であり、蛍光体415からの白色光をビームスプリッタ418によって反射させて光ファイバ421の入射端に入射させる投光用光源41cが示されている。この投光用光源1cは、LD411、光学レンズ412,413、フィルタ素子414、蛍光体415、ビームスプリッタ418及び結像レンズ419により構成される。
【0105】
ビームスプリッタ418は、LD411からのレーザ光を透過させる一方、フィルタ素子414により反射されたレーザ光と蛍光体415からの蛍光とが混合した白色光を複数の結像レンズ419に向けて反射させる光学部材である。このビームスプリッタ418は、光学レンズ412と光学レンズ413との間に配置される。結像レンズ419を透過した白色光は、光ファイバ421の入射端に入射される。
【0106】
図17は、共焦点変位計1の他の構成例を示した断面図である。図中の(a)には、フィルタ素子414及び蛍光体415を透過した白色光と蛍光体415によって反射された白色光とをそれぞれ光ファイバ421の入射端に入射させる投光用光源41dが示されている。この投光用光源41dは、
図4の投光用光源41と比較すれば、ビームスプリッタ418及び結像レンズ419を備えている点で異なる。
【0107】
図中の(b)には、蛍光体415によって屈折された白色光と蛍光体415によって反射された白色光とをそれぞれ光ファイバ421の入射端に入射させる投光用光源41eが示されている。この投光用光源1eは、(a)の投光用光源41dと比較すれば、フィルタ素子414、蛍光体415、コリメータレンズ416及び結像レンズ417の配置が異なる。フィルタ素子414及び蛍光体415は、LD411、光学レンズ412及び413の光軸に対し、傾斜させて配置されている。
【0108】
また、実施の形態1~3では、反射型の分光器43の例について説明したが、本発明は、分光器の構成をこれに限定するものではない。例えば、透過角度に応じて異なる波長成分に入射光を分光する透過型の分光器を用いてもよい。
【0109】
図18は、共焦点変位計1の他の構成例を模式的に示した説明図であり、透過型の分光器43aが示されている。この分光器43aは、
図5の分光器43と比較すれば、回折格子435が透過型である点で異なる。回折格子435は、透過角度に応じて異なる波長成分に入射光を分光する。
【0110】
また、実施の形態1~3では、ヘッドユニット2の共焦点光学系が計測対象物W上に4つの照射スポットを形成する場合の例について説明したが、本発明は共焦点光学系の構成をこれに限定するものではない。例えば、共焦点光学系が2,3又は5以上のピンホールを有し、計測対象物W上に2,3又は5以上の照射スポットを形成するような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 共焦点変位計
2 ヘッドユニット
20 筐体
21 光学部材
211 屈折レンズ
212 回折レンズ
22 光ファイバフェルール
3 ファイバケーブル
31 光ファイバ
32 コネクタ
4 制御装置
41 投光用光源
42 カプラ
43 分光器
432 回折格子
434 イメージセンサ
44 測定制御部
441 信号波形抽出部
442 サーチ範囲特定部
443 ピーク位置特定部
444 変位算出部
445 統計値演算部
45 メモリ