(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】非水電解質リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231225BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2017505390
(86)(22)【出願日】2016-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2016057525
(87)【国際公開番号】W WO2016143844
(87)【国際公開日】2016-09-15
【審査請求日】2019-03-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2015046924
(32)【優先日】2015-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 肇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】槇 文彦
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】井上 信一
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061653(WO,A1)
【文献】特開2013-235786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式が、Li
xNi
yCo
1-y-zAl
zO
2(但し、0.9≦x≦1.1、0.8≦y≦0.95、0.0
1≦z≦0.05)である複合酸化物からなる正極活物質を使用した非水電解質リチウム二次電池の、測定温度20℃、放電レート0.1C、電圧範囲4.25-2.5Vで放電させたときの初期放電容量が192mAh/g以上であり、かつ該非水電解質リチウム二次電池の、測定温度20℃、放電レート1Cで100回繰り返し充放電したときの放電容量維持率が94%以上であるアスペクト比≧0.9の非水電解質リチウム二次電池用正極活物質を製造する方法であって、
ニッケル化合物とコバルト化合物の水溶液を、窒素ガス雰囲気下でアルカリを添加しながら、50リットルの反応槽の場合において撹拌翼先端速度3.0~5.5m/sで撹拌して窒素ガスを該水溶液中に巻き込みつつ、ニッケルとコバルトの共沈水酸化物を生成し、該共沈水酸化物を脱水、乾燥した後、該共沈水酸化物と、リチウム化合物と、アルミニウム化合物を乾式混合し、該混合物を酸化性雰囲気下で焼成することを特徴とする非水電解質リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項2】
リチウム化合物の粒子が、10~50μmであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項3】
焼成を、730~780℃で5~20時間行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質リチウム二次電池用正極材活物質の製造方法に関し、特に、高容量で、充放電サイクル特性に優れた長寿命を有する二次電池とすることができる該正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質リチウム二次電池は、ノート型パソコンや携帯電話等のモバイル機器・パワーツール用電源等の様々な用途で使用されており、低炭素社会の構築やエネルギーセキュリティの面からその用途は今後もさらに拡大することが予想され、その高性能化が切望されている。
【0003】
リチウム二次電池は、近年では、ハイブリッド自動車や電気自動車(以下、これらをまとめてEVと記す)用電源としての需要が急速に拡大しつつあり、これをEV用電源とする場合には、特に、高容量で長寿命であることが望まれる。このようなことから、リチウム二次電池の材料面での改良が急務となっている。リチウム二次電池を構成する材料のうち、正極活物質としては、コバルト(Co)を主成分としたLiCoO2が広く使われており、EV用電源としての需要が急速に拡大しつつある現状では、希少金属であるCoは資源的に枯渇の不安があり、また、コストも高くなることが懸念される。
【0004】
LiCoO2に代わる正極活物質としては、Mnを主成分としたLiMn2O4やNi-Co-Mn三元系複合酸化物からなる正極活物質があるが、これらの正極活物質は電池特性に一長一短があり、パワーツールやEV用電源としての要求に対しては十分に答えられていないのが現状である。
【0005】
このような状況下において、充放電電圧が高く、充放電容量も大きいNiを主体としたLixNiyCo1-y-zAlzO2
(以下、この組成式で示される複合酸化物をLi-Co-Ni-Al系複合酸化物と記すこともある)を正極活物質として用いるリチウム二次電池が検討されており、従来、高容量化や、充放電維持率等の改善のために、例えば、LiNiO2正極活物質の表面にZnとAlとを含む酸化物を被着させて導電性を向上させ、長寿命化する技術(特許文献1)、圧縮前後の比表面積の変化率、及び硫酸イオンの含有率を小さくすることにより、Li-Ni-Co-Al系複合酸化物の充放電容量や、充填性と保存性を向上させる技術(特許文献2)等をはじめとして、LixNiyCo1-y-zAlzO2粉末に対する種々の改良技術が提案されている。
【0006】
上記特許文献1及び2において提案されているLixNiyCo1-y-zAlzO2正極活物質は、結晶構造を安定化させるために、表面修飾剤からなるコーティング層を作製することにより、電子電導性を向上させて、高容量で長寿命化を図ろうとしているが、未だ十分な効果を得るには至っておらず、市場では常に従来のものよりも電池特性のより良好なリチウム二次電池用正極材の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-129258号公報
【文献】特開2008-166269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リチウム二次電池の正極材として用いたときに、高容量で充放電維持率に優れた非電解質リチウム二次電池とすることができる、上記正極活物質の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、高容量で長寿命を得るためには正極活物質等の高充填密度化が重要であるとの基本に立ち、これを実現する上で、
(1)正極活物質を球形に近い粒子とすること、
(2)しかも全粒子において組成や形状が均一であること、
(3)更には上記の球形粒子は極めて小さい微粒子ではなく或る程度の大きさを有し、かつ高い粒子強度を有すること、
が重要であるとの知見を得た。
【0010】
次いで、上記知見を念頭に置いて更なる検討を重ねた結果、上記のような粒子特性を有するLi-Co-Ni-Al系複合酸化物からなる正極活物質を製造するには、
(11)二次粒子であるNi-Co共沈水酸化物の製造工程において、該粒子を微細化する要因である酸化雰囲気下ではなく、不活性雰囲気下での製造が必要であること、(12)上記Ni-Co共沈水酸化物粒子とLi化合物及びAl化合物との混合を、乾式で行うことができれば、正極活物質粒子の強度を一層向上させることができるばかりか、従来の湿式混合に比して混合工程のコストはもとより、混合工程に続く焼成工程のコストも大幅に低減すること、(13)乾式で良好な混合(二次粒子の隙間にLi粒子を、均一に万遍なく入り込ませる)を行うためには、二次粒子が前記(1)~(3)の粒子特性を備えることと共に、Li粒子の大きさを調整することが重要であること、
の知見を得た。
【0011】
本発明の製造方法は、以上の知見に基づくもので、本発明の製造方法における非水電解質リチウム二次電池用正極活物質は、(1)Li-Ni-Co-Al系複合酸化物を正極材とする非水電解質リチウム二次電池であって、測定温度20℃、放電レート0.1Cで放電させたときの初期放電容量が192mAh/g以上、好ましくは195mAh/g以上であり、(2)測定温度20℃、放電レート1Cで前記非水電解質リチウム二次電池を100回繰り返し充放電した時の放電容量維持率が94%以上で、(3)上記複合酸化物の組成式は、LixNiyCo1-y-zAlzO2(但し、0.9≦x≦1.1、0.8≦y≦0.95、0.01≦z≦0.05)であって、(4)上記複合酸化物粒子は、アスペクト比≧0.9であることを特徴とする。
【0012】
以上の本発明の非水電解質リチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、
(5)Niの化合物及びCoの化合物が溶解した水溶液をN2ガス雰囲気下でアルカリを添加しながら、例えば50リットルの反応槽の場合において撹拌翼先端速度3.0~5.5m/sで撹拌してN2ガスを該水溶液中に巻き込みつつNiとCoの共沈水酸化物を生成し、該共沈水酸化物を脱水、乾燥した後、Li化合物と、Al化合物を乾式混合し、該混合物を酸化性雰囲気下において焼成することを特徴とし、
このとき、(6)NiとCoの共水酸化物と混合するLi化合物の粒子は、10~50μmであってよく、(7)焼成は、730~780℃で5~20時間行ってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明におけるLi-Ni-Co-Al系複合酸化物からなる正極活物質は、非水電解質リチウム二次電池に使用することにより、該電池の初期放電容量は192mAh/g以上もの高容量となり、しかも充放電維持率が向上し、高容量・長寿命のリチウム二次電池とすることができる。
また、本発明における正極活物質は、各正極活物質粒子の長軸と短軸の長さの比率(アスペクト比)が0.9より大きく、粒子形状が球状に近いため、リチウム二次電池の正極材に加工した際、正極活物質の充填密度を大にすることができる。
加えて、本発明の製造方法によれば、NiとCoの共沈水酸化物粒子(二次粒子)を、球形に近い形状で、かつ高強度にすることができる。
しかも、上記共沈水酸化物と混合するLi化合物の粒子の大きさを調整することにより、該共沈水酸化物の粒子特性との相乗により、乾式混合によっても、均一な組成と均一な球形形状を有する正極活物質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の正極活物質、及び従来(既存)の正極活物質をそれぞれ使用したリチウム二次電池の充放電曲線の一例である。
【
図2】本発明の正極活物質、及び従来の正極活物質をそれぞれ使用したリチウム二次電池を繰り返し充放電した時のサイクル特性の一例である。
【
図3】本発明の一実施例で得られた正極活物質におけるNi-Co共沈水酸化物のSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【
図4】本発明の他の実施例で得られた正極活物質におけるNi-Co共沈水酸化物のSEM写真である。
【
図5】従来の正極活物質におけるNi-Co共沈水酸化物のSEM写真である。
【
図8】本発明の製造方法における焼成時の温度条件と従来法における焼成時の温度条件を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の正極活物質は、Li-Co-Ni-Al系複合酸化物、組成式はLixNiyCo1-y-zAlzO2(但し、0.9≦x≦1.1、0.8≦y≦0.95、0.01≦z≦0.05)で表され、これを使用して特定の電池特性(高容量で長寿命)を有する非水電解質リチウム二次電池を得る。
【0016】
図1は、本発明の正極活物質と、従来の正極活物質をそれぞれ正極材として用いた各リチウム二次電池を、測定温度20℃、放電レート0.1C(CはCレートを表し、電池の全容量を1時間で放電させる電流値を1Cレートという)で充放電した時の充放電曲線の一例を示すグラフである。
図1において、横軸は容量(mAh/g)、縦軸は電圧(V)を示し、曲線aが本発明の正極活物質を用いた場合、曲線bが従来の正極活物質を用いた場合である。
なお、各充放電曲線は、電圧4.25~2.5Vの範囲で測定しており、上記の従来の正極活物質は、本出願人による市販品(以下、既存品と言うこともある)を使用している。
【0017】
図1から解るように、曲線bに示す従来の正極活物質を正極材として使用したリチウム二次電池は、初期放電容量がおよそ180mAh/gであるのに対し、曲線aに示す本発明の正極活物質を正極材として使用したリチウム二次電池は、初期放電容量がおよそ200mAh/gであり、曲線bの従来の正極活物質を用いたものに比べて著しく放電容量が大きいリチウム二次電池を得ることができる。
【0018】
図2は、
図1に示した充放電特性を有する各リチウム二次電池を、放電レート1Cで繰り返し充放電した時のサイクル特性を示すグラフである。
図2において、横軸は充放電のサイクル回数、縦軸は放電容量維持率、すなわち1回目(初期放電時)の放電容量に対する所定サイクル回数の充放電を終えた際の放電容量の割合(%)を示し、曲線a及び曲線bは、
図1と同様、それぞれ正極材として本発明の正極活性物質を用いたリチウム二次電池、及び従来の正極活物質を用いたリチウム二次電池のサイクル特性を示す。
【0019】
図2に示すように、100回の充放電を繰り返した後の放電容量維持率は、曲線bの従来の正極活物質を使用したリチウム二次電池では80数%であるのに対して、曲線aの本発明の正極活物質を使用したリチウム二次電池では94%以上であることが解る。従って本発明の正極活物質を使用すれば、充放電のサイクル特性が良好で、しかも寿命が著しく延長したリチウム二次電池を提供することができる。
【0020】
図3,
図4及び
図5はそれぞれ、本発明のNi-Co共沈水酸化物(二次粒子)(
図3,4)と、本出願人による既存の二次粒子(
図5)のSEM写真を示している。
図3(A),(B)及び
図4(1)~(6)(A),(B)から明らかなように、本発明の二次粒子は、全粒子が、アスペクト比≧0.9のほぼ球形状で、表面が極めて滑らかであるのに対し、
図5(A),(B)から明らかなように、既存の二次粒子は、アスペクト比が本発明の二次粒子に比して小さく、よって歪んだ粒子形状を呈し、しかも全粒子の形状が均一となっていないことに加え、表面のザラ付き感も際立っている。
【0021】
図6及び
図7はそれぞれ、
図3に示す本発明の二次粒子及び
図5に示す既存の二次粒子を使用して得られる正極活物質粒子のSEM写真である。
図6(A),(B)、
図7(A),(B)から解るように、正極活物質の粒子特性は、共沈水酸化物の二次粒子の粒子特性に依存するところが大であり、
図3に示す本発明の共沈酸化物の二次粒子を使用して得られる正極活物質の粒子は、
図6(A)に示すようにほぼ球形で、
図6(B)に示すように、全粒子が均一な粒子形状となっており、しかも表面状態も滑らかである(すなわち、Li及びAlの微粒子が二次粒子の表面の隙間に均一に万遍なく被着して表面性状を滑らかにしていると考えられる)のに対し、
図5に示す既存の二次粒子を使用して得られる既存の正極活物質は、
図7(A)に示すように、歪のある粒子形状を呈し、
図7(B)に示すように、全粒子において均一な形状とは言い難く、表面状態も本発明の正極活物質に比して滑らかではない。
なお、後述の実施例から明らかなように、
図4(1)~(6)に示す本発明の共沈水酸化物の二次粒子を使用して得られる正極活物質も、
図6(A),(B)と同様の粒子特性を示す。
【0022】
図6(A),(B)に示すような、表面滑らかで、ほぼ球形の粒子特性を有する正極活物質であれば、
図7(A),(B)に示すような、ランダムで、ザラ付き感のある形状の粒体に比べ、当然に、電池内への充填率が高まり、多量の充填ができる。
これらの結果として、本発明の正極活物質を二次電池の正極材として使用した場合、正極材に加工した際の充填率を高めることができ、体積当たりのエネルギー密度の高い二次電池を得ることができるのみならず、長寿命特性をも得ることができる。
【0023】
上記の正極活物質は、本発明の製造方法により、Ni-Coの共沈水酸化物(二次粒子)を得、これにAl化合物とLi化合物を乾式混合(粉体間混合)し、次いで焼成することによって製造される。
【0024】
本発明の二次粒子(Ni-Co共沈水酸化物)を、上記の粒子特性を有して製造するには、Ni化合物とCo化合物を溶解した水溶液(以下、Ni-Co水溶液)を調製する。
Ni及びCoの各化合物としては、それぞれNi及びCoの硫酸塩、硝酸塩、塩化物等の水溶性の化合物が使用される。Ni化合物とCo化合物との割合は、それぞれのモル比でNi:Co=95:5~75:25程度、好ましくは80:20~85:15である。
【0025】
上記のNi・Co水溶液を反応槽内に投入し、該槽内にN2ガスを通気し、さらに上記Ni・Co水溶液中にアルカリを添加しながら、該水溶液を攪拌する。
【0026】
このとき、上記の反応槽内は大気圧程度、55~65℃程度、アンモニア濃度11~13g/L程度、pH11~13程度とし、撹拌は、槽内のN2ガスが水溶液内に巻き込まれる程度、例えば50リットル(以下、リットルを「L」、ミリリットルを「mL」)の反応槽の場合、撹拌翼先端速度3.0~5.5m/s程度で行うことが適している。
本発明においては、このような撹拌条件を目安として、N2ガスが水溶液内に巻き込まれる実際の撹拌条件を設定すればよい。
N2ガスが巻き込まれる条件下でNiとCoの共沈水酸化物が生成されると、該共沈水酸化物は、アスペクト比が0.9以上の略球形に近い粒子状を呈することができる。
この共沈水酸化物の生成を、N2ガスではなく、従来の空気が巻き込まれる条件で行うと、その理由は必ずしも明らかではないが、粒子表面が酸化されることに起因して球形にはならず、ランダムな粒子状となってしまう。
なお、上記の反応槽には、邪魔板(バッフル)や中板を設けるなどして、N2ガスの巻き込みを、より行われ易いようにしてもよい。
また、上記のアルカリは、NaOH、アンモニアイオン供給源(NH4OH、(NH4)2SO4等)が使用され、特に、入手が容易で、微調整が容易など取り扱い性に優れたNaOHと(NH4)2SO4の併用が好ましい。
【0027】
このようにして、前記反応槽で生成したNi・Co共沈水酸化物を含むスラリーを、脱水、乾燥して得た粒子状のNi-Coの共沈水酸化物が、本発明の正極活物質を製造する際の原料の1つに供される。上記のスラリーは、脱水後、95~120℃程度で乾燥される。
乾燥後の粒子状のNi-Coの共沈水酸化物は、例えば
図3や
図4に示すように、そのアスペスト比が0.9以上の略球形に近い形状を呈し、各粒子はなめらかな表面性状を有する。
【0028】
次いで、上記のようにして得られた略球形粒子状のNi-Co共沈水酸化物(二次粒子)と、Al化合物と、Li化合物を化学量論的に組成式LixNiyCo1-y-zAlzO2(但し、0.9≦x≦1.1、0.8≦y≦0.95、0.01≦z≦0.05)の関係を満たす割合で、乾式混合し、原料混合物(本発明の正極活物質の前駆体)を調製する。
なお、この混合には、一般的な混合装置、例えば水平円筒型やV型、ダブルコーン型、立方体型等の混合装置が使用できる。
等をはじめとする公知の各種の用途に用いることが可能である。
【0029】
上記のAl化合物としては、酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩等、高温で酸化物になり得るAlの化合物が用いられ、Li化合物としては、水酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物等、高温で酸化物になり得るLiの化合物が用いられる。
特に、乾式混合により、各原料をより均一に、すなわち全粒子の形状はもとより組成もが均一になるようにするためには、Li化合物が平均粒径10~50μm程度、好ましくは25~35μm程度の水酸化リチウムを使用するのが適している。なお、Al化合物は、平均粒径が10μm以下の市販されているもので十分である。この程度の粒径であれば、引き続く焼成工程でAlを十分に固溶させ、良好な反応性を得ることができる。特に、平均粒径の極めて小さい酸化アルミニウムを用いれば、優れた品質のLixNiyCo1-y-zAlzO2を得ることできる。
また、乾式混合時の混合条件は、常温・常圧・閉鎖(粉体混合装置の原料投入部等を閉じる等の)条件下で、0.5~1.5時間程度混合することが望ましい。
【0030】
上記のようにして調製した原料混合物を、酸化性雰囲気下
、730~780℃で、5~20時間焼成する。
焼成終了後、焼成炉外で急冷してもよいし、炉内で徐冷してもよい。
上記温度に達するまでの昇温条件は、特に制限しないが、例えば炉の昇温開始から5~15時間、好ましくは8~12時間程度で昇温する。
本発明は、混合した各原料との反応性が向上するため、従来より昇温速度が倍以上も速く、かつ焼成温度は低く抑えることができる。
なお、本発明法と従来法の昇温・焼成態様の一例を、
図7に示す。
図7中、aが本発明法による態様、bが従来法による態様である。
【実施例】
【0031】
〔Ni-Co共沈水酸化物(二次粒子)の合成〕
Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の合成:
室温下でNiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を84:16としてNi-Co水溶液を調整した。
一方、蓋付、オーバーフロー口付のSUS製反応槽(内容量50L)に純水を入れ、60℃で、攪拌機を稼働させた。この状態を保持しつつ、N
2ガスを導入し、上記のNi-Co水溶液と、(NH
4)
2SO
4とNaOH水溶液を滴下し、撹拌翼先端速度4.1m/sで撹拌を継続した。
この撹拌中、反応槽内に通気しているN
2ガスが、継続して上記水溶液中に巻き込まれるのが確認できた。
また、(NH
4)
2SO
4は、上記槽内の水溶液がアンモニア濃度12.0g/Lとなるように、NaOHは、上記槽内の水溶液がpH12.0となるように滴下を調整した。
得られた沈殿物を、スラリー状態で取り出し、脱水後、110℃で16時間乾燥し、Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を得た。
得られた二次粒子〔1〕は、
図3(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0032】
Ni-Co共沈水酸化物〔11〕の合成:
(1)NiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を80:20とし、得られたNi-Co水溶液とNaOH水溶液との、N
2ガス導入下での撹拌速度を、撹拌翼先端速度で3.0m/sとする以外は、上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の合成と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔111〕を得た。この撹拌中、N
2ガスは、継続して上記水溶液中に巻き込まれていた。
得られた二次粒子〔111〕は、
図4(1)(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0033】
(2)NiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を80:20とし、得られたNi-Co水溶液と、(NH
4)
2SO
4とNaOH水溶液との、N
2ガス導入下での撹拌速度を、撹拌翼先端速度で5.5m/sとする以外は、上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕合成と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔112〕を得た。この撹拌中、N
2ガスは、継続して上記水溶液中に巻き込まれていた。
得られた二次粒子〔112〕は、
図4(2)(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0034】
Ni-Co共沈水酸化物〔12〕の合成:
(3)NiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を95:5とし、得られたNi-Co水溶液と、(NH
4)
2SO
4とNaOH水溶液との、N
2ガス導入下での撹拌速度を、撹拌翼先端速度で3.0m/sとする以外は、上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の合成と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔121〕を得た。この撹拌中、N
2ガスは、継続して上記水溶液中に巻き込まれていた。
得られた二次粒子〔121〕は、
図4(3)(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0035】
(4)NiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を95:5とし、得られたNi-Co水溶液と、(NH
4)
2SO
4とNaOH水溶液との、N
2ガス導入下での撹拌速度を、撹拌翼先端速度で5.5m/sとする以外は、上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の合成と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔122〕を得た。この撹拌中、N
2ガスは、継続して上記水溶液中に巻き込まれていた。
得られた二次粒子〔122〕は、
図4(4)(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0036】
Ni-Co共沈水酸化物〔13〕の合成:
(5)NiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を75:25とし、得られたNi-Co水溶液と、(NH
4)
2SO
4とNaOH水溶液との、N
2ガス導入下での撹拌速度を、撹拌翼先端速度で3.0m/sとする以外は、上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の合成と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔131〕を得た。この撹拌中、N
2ガスは、継続して上記水溶液中に巻き込まれていた。
得られた二次粒子〔131〕は、
図4(5)(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0037】
(6)NiSO
4とCoSO
4のNi:Coのモル比を75:25とし、得られたNi-Co水溶液と、(NH
4)
2SO
4とNaOH水溶液との、N
2ガス導入下での撹拌速度を、撹拌翼先端速度で5.5m/sとする以外は、上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の合成と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔132〕を得た。この撹拌中、N
2ガスは、継続して上記水溶液中に巻き込まれていた。
得られた二次粒子〔132〕は、
図4(6)(A),(B)に示すように、アスペクト比が0.9より大のほぼ球状の粒子で、かつ表面滑らかであった。
【0038】
Ni-Co共沈水酸化物〔2〕の合成:
前記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の製造に際して、反応槽内のNiSO
4とCoSO
4の水溶液を、攪拌機により撹拌翼先端速度2.7m/sで撹拌する以外は、前記Co-Ni共沈水酸化物〔1〕と同様にしてNi-Co共沈水酸化物[2]を得た。
この撹拌中、反応槽内に通気しているN
2ガスは、上記〔1〕の撹拌時に比べて、極く少量ではあったが、僅かに巻き込まれていることは確認された(反応槽内バッフルの効果によりN
2ガス巻き込みに起因する気泡の発生が上記〔1〕の40~60%程度、平均して50%程度確認された)。
得られた二次粒子〔2〕は、
図3(A),(B)と
図5(A),(B)の中間的で、
図5(A)、(B)に近い性状を有する粒子形状を呈していた。
【0039】
Ni-Co共沈水酸化物〔3〕の合成:
前記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕の製造に際して、反応槽内にN
2ガスを通気することなく、空気中で撹拌を継続した以外は上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕と同様にしてNi-Co共沈水酸化物〔3〕を得た。
得られた二次粒子〔3〕は、
図5(A),(B)に示すような、歪みとザラ付き感がある粒子形状を呈し、全粒子が不均一な形状であった。
【0040】
〔実施例1〕
950g(モル比0.97)の上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕、16.0g(モル比0.03)のアルミナ(平均粒子径:10μm)、及び445g(モル比1.03)の水酸化リチウム(平均粒子径:30μm)の各原料紛体をリボンブレンダーで1時間乾式混合した。
混合後、電気炉にて、750℃で、昇温時間を含めて20時間、酸化性雰囲気下で焼成、焼成後、炉内温度が200℃になった時点で、炉外に取り出し、室温まで放冷した。このときの焼成態様を
図8のaに示した。
このようにして組成式Li
1.03Ni
0.82Co
0,15Al
0,03O
2、Ni:Co:Alのモル比(各元素のグラム原子数の比)82:15:3の正極活物質〔1〕を得た。
得られた正極活物質〔1〕形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
【0041】
次いで、正極活物質〔1〕を使用した以外は従来と同様にしてリチウム二次電池〔1〕を作製し、この電池を測定温度20℃、電圧範囲4.25~2.5Vの間、電圧レート1Cで、100回の充放電を繰り返した。
その時の初期容量(放電容量)、及び放電容量維持率(初期放電時の放電容量に対する100回後の放電時の放電容量の割合)を表1に示す。
【0042】
〔
比較例1〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔2〕を使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔2〕を製造した。
得られた正極活物質〔2〕は、
図6(A),(B)と
図7(A),(B)の中間的で
図7(A),(B)に近い性状を有する粒子形状を呈していた。
この正極活物質〔2〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔2〕を作製した。
得られたリチウム二次電池〔2〕について、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表1に合わせて示す。
【0043】
〔
比較例2〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔3〕を使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔3〕を製造した。
得られた正極活物質〔3〕は、
図7(A),(B)に近い性状の粒子形状を呈していた。
この正極活物質を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔3〕を作製した。
得られたリチウム二次電池〔3〕について、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表1に合わせて示す。
【0044】
〔比較例
3〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕950g(モル比0.97)、平均粒子径10μmのアルミナ27.0g(モル比0.05)、及び平均粒子径30μmの水酸化リチウム445g(モル比1.03)を、従来と同様の湿式混合(耐圧容器を用い、水に溶解後、10.7KPaに減圧し撹拌して湿式混合)を行い、脱水、乾燥した。
次いで、790℃で、昇温時間を含めて48時間の焼成を行う以外は、実施例1と同様にして正極活物質〔4〕を作製した。
得られた正極活物質〔4〕は、
図7(A),(B)に示すような粒子形状を呈していた。
この正極活物質〔4〕を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔4〕を作製した。
得られたリチウム二次電池〔4〕について、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表1に合わせて示す。
【0045】
〔比較例4〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を用い、焼成を790℃で行う以外は実施例1と同様にして正極活物質〔5〕を製造した。
この正極活物質を用いた以外は実施例1と同様にして比較例3のリチウム二次電池〔5〕を作製した。
得られたリチウム二次電池〔5〕について、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表1に合わせて示す。
【0046】
〔比較例5〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を用い焼成を、710℃で行う以外は実施例1と同様にして正極活物質〔6〕を製造した。
この正極活物質〔6〕を用いた以外は実施例1と同様にして比較例4のリチウム二次電池〔6〕を作製した。
得られたリチウム二次電池〔6〕について、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表1に合わせて示す。
【0047】
【0048】
〔実施例
2〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平粒子径10μmの水酸化リチウムを使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-1〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-1〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-1〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-1〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-1〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0049】
〔
比較例6〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平均粒子径10μmの水酸化リチウムを使用し、焼成温度を710℃とした以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-2〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-2〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-2〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-2〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-2〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0050】
〔
比較例7〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平均粒子径10μmの水酸化リチウムを使用し、焼成温度を790℃とし、焼成時間は昇温時間を含めて5時間とした以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-3〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-3〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-3〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
【0051】
〔実施例
3〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平均粒子径25μmの水酸化リチウムを使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-3〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-3〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-3〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-3〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-3〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0052】
〔実施例
4〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平均粒子径35μmの水酸化リチウムを使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-4〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-4〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-4〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-4〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-4〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0053】
〔
比較例8〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平均粒子径50μmの水酸化リチウムを使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-5〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-5〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-5〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-5〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-5〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0054】
〔
比較例9〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し平均粒子径50μmの水酸化リチウムを使用し、焼成温度を710℃とした以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-6〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-6〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-6〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-6〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-6〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0055】
〔
比較例10〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕を使用し、平均粒子径50μmの水酸化リチウムを使用し、焼成温度を790℃とし、焼成時間は昇温時間を含めて5時間とした以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-7〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-7〕は、実施例1と同じ組成式、同じNi:Co:Alのモル比であった。
得られた正極活物質〔1-7〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-7〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-7〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0056】
〔実施例
5〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕950g(モル比0.97)、アルミナ(平均粒子径:10μm)16.0g(モル比0.03)、及び水酸化リチウム(平均粒子径:30μm)398g(モル比0.91)とする以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-8〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-8〕は、組成式Li
0.91Ni
0.82Co
0.15Al
0.03O
2、Ni:Co:Alのモル比82:15:3であった。
得られた正極活物質〔1-8〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-8〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-8〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0057】
〔実施例
6〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕950g(モル比0.97)、アルミナ(平均粒子径:10μm)16.0g(モル比0.03)、及び水酸化リチウム(平均粒子径:30μm)438g(モル比1.00)とする以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-9〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-9〕は、組成式Li
1.00Ni
0.82Co
0.15Al
0.03O
2、Ni:Co:Alのモル比82:15:3であった。
得られた正極活物質〔1-9〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-9〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-9〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0058】
〔実施例
7〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔121〕を使用し、平均粒子径30μmの水酸化リチウムを使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔121-1〕を製造した。
得られた正極活物質〔121-1〕は、組成式Li
1.03Ni
0.92Co
0.05Al
0.03O
2、Ni:Co:Alのモル比92:5:3であった。
得られた正極活物質〔121-1〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔121-1〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔121-1〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0059】
〔実施例
8〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔122〕を使用し、平均粒子径30μmの水酸化リチウムを使用した以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔122-1〕を製造した。
得られた正極活物質〔122-1〕は、組成式Li
1.03Ni
0.92Co
0.05Al
0.03O
2、Ni:Co:Alのモル比92:5:3であった。
得られた正極活物質〔122-1〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔122-1〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔122-1〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0060】
〔実施例
9〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕950g(モル比0.99)、アルミナ(平均粒子径:10μm)5.2g(モル比0.01)、及び水酸化リチウム(平均粒子径:30μm)390g(モル比0.91)とする以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-10〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-10〕は、組成式Li
0.91Ni
0.83Co
0.16Al
0.01O
2、Ni:Co:Alのモル比83:16:1であった。
得られた正極活物質〔1-10〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-10〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-10〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0061】
〔実施例
10〕
上記Ni-Co共沈水酸化物〔1〕950g(モル比0.95)、アルミナ(平均粒子径:10μm)27.3g(モル比0.05)、及び水酸化リチウム(平均粒子径:30μm)460g(モル比1.03)とする以外は実施例1の正極活物質と同様にして正極活物質〔1-11〕を製造した。
得られた正極活物質〔1-11〕は、組成式Li
1.03Ni
0.80Co
0.15Al
0.05O
2、Ni:Co:Alのモル比80:15:5であった。
得られた正極活物質〔1-11〕の形状は、
図6(A),(B)に示すように、そのアスペクト比が0.9より大のほぼ球状であった。
この正極活物質〔1-11〕を正極材として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池〔1-11〕を作製し、実施例1と同様の初期容量、及び放電容量維持率を求め、結果を表2に合わせて示す。
【0062】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の正極活物質は、リチウム二次電池の正極材として使用することによって、従来のリチウム二次電池に比べて、高充放電容量と長寿命を備えたリチウム二次電池を得ることができる。
よって、本発明の正極活物質によれば、常に高容量を要求されるEV用電源、パソコンや携帯電話用電源、バックアップ電源等をはじめとする公知の各種の用途に用いることが可能である。