(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】単純ヘルペスウイルスを治療するためのCRISPR/CAS関連方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231225BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20231225BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231225BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231225BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20231225BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231225BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A61K31/7105
A61K38/16
A61K48/00
A61P27/02
A61P31/22
C12N5/10
C12N15/86 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2018542995
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 US2016059502
(87)【国際公開番号】W WO2017075475
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517372508
【氏名又は名称】エディタス・メディシン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フリートラント, アリ イー.
(72)【発明者】
【氏名】オドネル, ペンローズ
(72)【発明者】
【氏名】バンクロット, デーヴィッド エー.
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】飯室 里美
【審判官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/126927(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/070083(WO,A1)
【文献】ウイルス,2001,Vol.51,p.29-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
BIOSIS/MEDLINE/CAplus/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム編集のためのキットであって、
(i)RL2遺伝子及びRS1遺伝子からなる群から選択される単純ヘルペスウイルス(HSV)ウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子であって、前記標的指向性ドメインが、配列番号23519、配列番号23587、配列番号23583、配列番号23580、配列番号23571、配列番号23569、配列番号23527、配列番号23531、配列番号23489、配列番号23535、配列番号3363、配列番号3362、配列番号2522、配列番号2515、又は配列番号243から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか、又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む、gRNA分子;並びに
(ii)Cas9分子
を含むキット。
【請求項2】
前記標的指向性ドメインは、HSV標的位置の約500bp、約450bp、約400bp、約350bp、約300bp、約250bp、約200bp、約150bp、約100bp、約50bp、約25bp、又は約10bp以内に二本鎖切断又は一本鎖切断を形成し、それにより前記HSVウイルス遺伝子を変更するように構成されている、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記HSVウイルス遺伝子の前記変更は、前記HSVウイルス遺伝子をノックアウトすること、前記HSVウイルス遺伝子をノックダウンすること、又は前記HSVウイルス遺伝子を同時にノックアウト及びノックダウンすることを含む、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記標的指向性ドメインは、前記HSVウイルス遺伝子のコード化領
域を標的とするように構成されて
いる、請求項1から3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記Cas9分子は、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子である、請求項1から4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子は、NGGのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識し、又は前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子は、NNGRRT(配列番号204)又はNNGRRV(配列番号205)のいずれかのPAMを認識する、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記Cas9分子は、酵素的に活性なCas9(eaCas9)分子、酵素的に不活性なCas9(eiCas9)分子、及びeiCas9融合タンパク質からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
(a)前記eaCas9分子は、HNH様ドメイン切断活性を含むが、N末端RuvC様ドメイン切断活性を含まないか又は顕著なN末端RuvC様ドメイン切断活性を含まない;
(b)前記eaCas9分子は、HNH様ドメインニッカーゼである;
(c)前記eaCas9分子は、N末端RuvC様ドメイン切断活性を含むが、HNH様ドメイン切断活性を含まないか又は顕著なHNH様ドメイン切断活性を含まない;又は
(d)前記eaCas9分子は、N末端RuvC様ドメインニッカーゼである
請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記Cas9分子は、野生型Cas9分子、変異Cas9分子、又はそれらの組合せを含み、任意選択的に、前記変異Cas9分子は、D10、E762、D986、H840、N854、N863、及びN580からなる群から選択される突然変異を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記gRNA
分子は、モジュール型gRNA分子又はキメラgRNA分子である、請求項1から9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
前記gRNA分子は、5’から3’に向かって、
標的指向性ドメイン、
第1の相補性ドメイン、
連結ドメイン、
第2の相補性ドメイン、
近位ドメイン、及び
尾部ドメイン
を含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
前記連結ドメインは、長さが25個ヌクレオチド以下である、請求項
11に記載のキット。
【請求項13】
前記近位及び尾部ドメインは、合計で、長さが、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、又は少なくとも40個のヌクレオチドである、請求項
11又は
12に記載のキット。
【請求項14】
2、3、又は4つのgRNA分子を含む、請求項1から
13のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
細胞内の前記HSVウイルス遺伝子を変更するために使用され、任意選択的に、前記細胞は、HSVに感染している、請求項1から
14のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
RL2遺伝子及びRS1遺伝子からなる群から選択されるHSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子であって、前記標的指向性ドメインが、配列番号23519、配列番号23587、配列番号23583、配列番号23580、配列番号23571、配列番号23569、配列番号23527、配列番号23531、配列番号23489、配列番号23535、配列番号3363、配列番号3362、配列番号2522、配列番号2515、又は配列番号243から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか、又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む、gRNA分子を含む、組成物。
【請求項17】
1、2、3、又は4つのgRNA分子を含む、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1つのCas9分子をさらに含む、請求項
16又は
17に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つのCas9分子は、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子である、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つのCas9分子は、野生型Cas9分子、変異Cas9分子、又はそれらの組合せを含む、請求項
18又は
19に記載の組成物。
【請求項21】
前記変異Cas9分子は、D10、E762、D986、H840、N854、N863、及びN580からなる群から選択される突然変異を含む、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
前記化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子は、NGGのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識する;又は、前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子は、NNGRRT(配列番号204)又はNNGRRV(配列番号205)のいずれかのPAMを認識する、請求項
19から
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
細胞内の前記HSVウイルス遺伝子を変更するために使用され、任意選択的に、前記細胞は、HSVに感染している、請求項
16から
22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
インビトロでゲノム編集するためのベクターであって、RL2遺伝子及びRS1遺伝子からなる群から選択されるHSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子をコードするポリヌクレオチドであって、前記標的指向性ドメインが、配列番号23519、配列番号23587、配列番号23583、配列番号23580、配列番号23571、配列番号23569、配列番号23527、配列番号23531、配列番号23489、配列番号23535、配列番号3363、配列番号3362、配列番号2522、配列番号2515、又は配列番号243から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか、又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む、gRNA分子をコードするポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項25】
Cas9分子をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項
24に記載のベクター。
【請求項26】
少なくとも1つのCas9分子は、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子である、請求項
25に記載のベクター。
【請求項27】
少なくとも1つのCas9分子は、野生型Cas9分子、変異Cas9分子、又はそれらの組合せを含む、請求項
25又は
26に記載のベクター。
【請求項28】
前記変異Cas9分子は、D10、E762、D986、H840、N854、N863、及びN580からなる群から選択される突然変異を含む、請求項
27に記載のベクター。
【請求項29】
前記化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子は、NGGのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識する、又は前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子は、NNGRRT(配列番号204)又はNNGRRV(配列番号205)のいずれかのPAMを認識する、請求項
26から
28のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項30】
前記ベクターは、ウイルスベクターである、請求項
24から
29のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項31】
細胞内の前記HSVウイルス遺伝子を変更するために使用され、任意選択的に、前記細胞は、HSVに感染している、請求項
24から
30のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項32】
細胞内のRL2遺伝子及びRS1遺伝子からなる群から選択されるHSVウイルス遺伝子を変更するためのインビトロ方法であって、前記細胞に、
(i)前記HSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子、及び少なくともCas9分子を含むゲノム編集系、
(ii)前記HSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子をコードするポリヌクレオチド、及びCas9分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、又は
(iii)前記HSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子、及び少なくともCas9分子を含む組成物
のうちの1つを投与することを含み、
前記標的指向性ドメインが、配列番号23519、配列番号23587、配列番号23583、配列番号23580、配列番号23571、配列番号23569、配列番号23527、配列番号23531、配列番号23489、配列番号23535、配列番号3363、配列番号3362、配列番号2522、配列番号2515、又は配列番号243から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか、又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む、インビトロ方法。
【請求項33】
前記変更は、前記HSVウイルス遺伝子をノックアウトすること、若しくは前記HSVウイルス遺伝子をノックダウンすること、又は前記HSVウイルス遺伝子を同時にノックアウト及びノックダウンすることを含む、請求項
32に記載のインビトロ方法。
【請求項34】
前記細胞は、HSVに感染している、請求項
32又は
33に記載のインビトロ方法。
【請求項35】
前記Cas9分子は、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9分子又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9分子である、請求項
32から
34のいずれか一項に記載のインビトロ方法。
【請求項36】
RL2遺伝子及びRS1遺伝子からなる群から選択されるHSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子であって、前記標的指向性ドメインが、配列番号23519、配列番号23587、配列番号23583、配列番号23580、配列番号23571、配列番号23569、配列番号23527、配列番号23531、配列番号23489、配列番号23535、配列番号3363、配列番号3362、配列番号2522、配列番号2515、又は配列番号243から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか、又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む、gRNA分子。
【請求項37】
請求項
16から
23のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項
24から
31のいずれか一項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項38】
上皮細胞、神経細胞、及び視細胞からなる群から選択される、請求項
37に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2015年10月30日に出願された米国特許仮出願第62/249071号、及び2015年10月30日に出願された米国特許仮出願第62/249159号の優先権を主張するものである。これら文献の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利に関する宣言
本発明は、国立衛生研究所により交付された助成金第1R43A1120302-01号に基づく政府支援によりなされたものである。政府は、本発明にある特定の権利を有する。
【0003】
配列表
本明細書は、配列表を参照する(2016年10月28日に「2016-10-28_084177_0133_ST25.txt」というファイル名の.txtファイルとして電子的に提出された)。この2016-10-28_084177_0133_ST25.txtファイルは、2016年10月28日に生成され、サイズは、11,189,396バイトである。配列表の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本開示は、標的核酸配列を編集するための、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を編集するためのCRISPR/CAS関連方法、組成物、及びゲノム編集系、並びに単純ヘルペスウイルス(HSV)に関連するそれらの応用に関する。
【背景技術】
【0005】
単純ヘルペスウイルス(HSV)、例えば単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)及び単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、遍在性で感染力の強い病原体である。HSV-1は、一般的に、口及び粘膜の間欠性有痛水疱形成を引き起こす。HSV-2は、一般的に、性器部に間欠性有痛水疱形成を引き起こす。HSVは、生涯にわたる再発性のウイルス反応性の発作を引き起こす場合がある。
【0006】
人口の大半は、幼年期にHSV-1感染症を発症する。成年期までに米国人口の最大80%がHSV-1に感染する。新たなHSV-1感染症は、100人年当たり1.6症例の割合で生じる(Langenberg等、1999; New England Journal of Medicine 341:1432-1438)。HSV-1感染症の最も重度な顕現症状としては、例えば、角膜炎、脳炎、及び脳膜炎が挙げられる。
【0007】
HSV-2感染は、世界中で5億人を超える。各年、最大2300万人が、新たに感染している。米国では、成人5人中およそ1人が、HSV-2感染に血清反応陽性を示す(Xu等、第42回米国感染症学会の抄録739、2004年9月30日)HSV-2の発生率は増加している。1976年以来、米国における成人のHSV-2血清陽性の存在は30%増加している(Fleming等、New England Journal of Medicine 1997; 337:1105-11)。HSV-2による感染は、特に活動性病変を有する患者では、HIV感染の獲得リスクを増加させる。
【0008】
HSV-1及び/又はHSV-2による感染は、恒久的である。HSV-1又はHSV-2による初感染後、ウイルスは、宿主の生涯にわたって継続する潜伏感染を確立する。HSV-1による初感染は、一般的に、唇、口、及び鼻を含む、口の粘膜の有痛水疱形成を引き起こす。HSV-1初感染が、肛門性器部に影響を及ぼして、性器及び肛門部の粘膜の有痛水疱形成を引き起こすことは、それほど一般的ではない。HSV-2による初感染は、一般的に、肛門性器部の粘膜の有痛水疱形成を引き起こす。HSV-2初感染が、口に影響を及ぼして、唇、口、及び鼻の粘膜の有痛水疱形成を引き起こすことは、それほど一般的ではない。
【0009】
初感染後、HSV-1及びHSV-2は、全ての対象で潜伏感染を確立する。潜伏感染の確立後、HSV-1又はHSV-2の再活性化は、対象の生涯にわたって任意の時点で生じ得る。HSV-1又はHSV-2の再活性化は、高齢者、並びにがんを有する個体、HIV/AIDを有する個体、及び実質臓器移植又は造血幹細胞移植を受けた個体を含む免疫不全個体で生じる可能性がより高い。
【0010】
HSV-1及びHSV-2は両方とも、眼ヘルペスを引き起こす。歴史的に、HSV-1は、大多数の眼ヘルペス感染症の原因因子である。しかしながら、近年、HSV-2関連眼感染症の発症率が、世界的に増加している。
【0011】
HSV-1又はHSV-2による眼感染症は、眼の上皮に影響を及ぼし、角膜炎を引き起こす場合がある。角膜炎は、眼ヘルペスの最も一般的な形態である。HSV関連角膜炎は、先進国世界の感染性失明の最も一般的な原因である(Dawson等、Suvey of Ophthalmology 1976; 21(2): 121-135)。世界的に、HSV関連眼科疾患はおよそ150万症例が、HSV関連失明又は重度単眼視力障害は40,000症例が、毎年発生している(Krawczyk等、Public Library of Science One 2015; 10(1): e0116800。Farooq及びShukla 2012; Survey of Ophthalmology 57(5): 448-462)。米国では、眼HSV感染症の発症率は増加していると考えられる(Liesegangら、1989, Archives of Ophthalmology 107:1155-1159。Baratzら、2009, Investigations in Ophthalmologic Visual Science 50 e-abstract 5044)。米国では、上皮角膜炎は、100,000人年当たりの症例数が15.6件であり、つまり1年当たりの症例数がおよそ50,000件である(Farooq及びShukla 2012; Survey of Ophthalmology 57(5): 448-462)。
【0012】
また、眼ヘルペスは、網膜に影響を及ぼし、網膜炎を引き起こす場合がある。HSV関連網膜炎が生じる頻度は、HSV関連角膜炎ほど高くないが、恒久的視覚損傷のリスクは遥かにより高い。HSV関連網膜炎は、成体に影響を及ぼすことが最も多く、急性網膜壊死(ARN)を引き起こす場合がある。ARNは、対象の50%超に恒久的視覚損傷を引き起こす(Roy等、Ocular Immunology and Inflammation 2014; 22(3):170-174)。
【0013】
新生仔は、重度HSV-1及びHSV-2感染症を発症する特別なリスクのある集団である。この疾患は、出産中に母親から胎仔へと伝染する。母子感染の可能性は、母親が妊娠中に、一次HSV-1又はHSV-2感染症を発症した場合、最も高い。新生仔ヘルペスの発症率は、100,000出産当たりおよそ4-30件である(Brown ZA等、2003; Journal of the American Medical Association; 289(2): 203-209.Dinh T-H等、2008; Sexually Transmitted Disease; 35(1): 19-21)。新生仔は、重度HSV関連角膜炎、網膜炎、脳炎、及び/又は脳膜炎を発症する場合がある。新生仔眼ヘルペスは、即時性の恒久的視力喪失をもたらす場合がある。眼HSVにより、新生仔は、後にARNを発症するリスクに曝される。HSV-1又はHSV-2を治癒又は予防する治療法はない。主に急性感染中に療法剤が投与される。一次HSV-1又はHSV-2感染症は、アシクロビル、バラシクロビル、及びファムシクロビルを含む抗ウイルス療法剤で治療することができる。こうした療法剤は、ウイルス排出を低減し、疼痛を減少させ、病変の治癒時間を向上させることができる。再活性化された潜伏感染症は、治療せずに解消する場合があり(自然治癒する場合がある)、又は抗ウイルス療法剤で治療してもよい。抗ウイルス療法剤は、最近のHSV-1又はHSV-2感染症又は再活性化を有する母親の出産中を含むある特定の状況では、予防的に投与してもよい。
【0014】
HSV-1及びHSV-2感染症を予防するためのワクチンが開発中である。しかしながら、比較臨床試験では、ワクチン接種効力は限定的である。HSV-1感染症及びHSV-2感染症両用の最近のワクチンは、HSV-1感染症の予防には35%しか有効ではなかった(Belsheら、2012; New England Journal of Medicine 366(1): 34-43)。
【0015】
抗レトロウイルス療法剤の進歩にも関わらず、HSV-1及びHSV-2感染症を治療、予防、及び/又は低減する、特に、角膜炎及び網膜炎を含む、HSV-1及びHSV-2関連眼感染症を治療、予防、及び/又は低減する必要性が依然として存在する。HSV-1及びHSV-2眼感染症を治癒、予防、又は治療することができる療法剤は、現行の標準治療よりも優れているだろう。
【発明の概要】
【0016】
本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物は、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症、例えば、眼感染症の治療、予防、及び/又は低減を提供する。
【0017】
本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物を使用して、例えば、HSV-1又はHSV-2ウイルス遺伝子の一又は複数を変更(ノックアウト及び/又はノックダウン)することにより、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つをノックアウト及び/又はノックダウンすることにより、単純ヘルペス1型(HSV-1)及び/又は単純ヘルペス2型(HSV-2)により引き起こされる眼感染症を含む単純ヘルペスウイルス眼感染症又はその症状の治療、予防、及び/又は低減を提供することができる。RL2は、LAT遺伝子、並びに潜伏、再活性化、及び溶解感染中のHSV-1ウイルス遺伝子発現の制御に関連するオープンクロマチン領域を含む(J. Gen. Virol. 2008 Jan; 89 (Pt 1): 68-77)。
【0018】
本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子をノックアウトすることにより、HSV-1及び/又はHSV-2により引き起こされる眼感染症を含む単純ヘルペスウイルス眼感染症又はその症状の治療、予防、及び/又は低減を提供する。本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子をノックダウンすることにより、HSV-1及び/又はHSV-2により引き起こされる眼感染症を含む単純ヘルペスウイルス眼感染症又はその症状の治療、予防、及び/又は低減を提供する。本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を同時にノックアウト及びノックダウンすることにより、HSV-1及び/又はHSV-2により引き起こされる眼感染症を含む単純ヘルペスウイルス眼感染症又はその症状の治療、予防、及び/又は低減を提供する。
【0019】
本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、又はLAT遺伝子内の一又は複数の位置を変更して、それを破壊及び/又は感染細胞から消失させることにより、HSV-1及び/又はHSV-2により引き起こされる眼感染症を含む単純ヘルペスウイルス眼感染症又はその症状の治療、予防、及び/又は低減を提供する。
【0020】
一態様では、本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物を使用して、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つの発現を変更、例えばノックアウト又はノックダウンして、上記遺伝子、例えば上記遺伝子の非コード化又はコード化領域を変更することにより、HSV-1又はHSV-2感染症を、治療、予防、及び/又は低減することができる。
【0021】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つのコード配列、例えばコード化領域(本明細書では、コード配列とも呼ばれる)を、発現の変更並びにノックアウト及び/又はノックダウンの標的とする。ある特定の実施態様では、コード化領域は、初期コード化領域、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つである。例えば、限定ではないが、本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物を使用して、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つを変更し、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つコード配列、例えばイントロン又はエクソン配列を標的とすることにより、HSV-1又はHSV-2感染症を、治療、予防、及び/又は低減する。ある特定の実施態様では、上記遺伝子、例えば、RS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の1、2、若しくは3つのコード配列を標的として、例えば、RS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の1、2、若しくは3つに、突然変異(例えば、挿入若しくは欠失)を含む変更を導入することにより、RS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の1、2、若しくは3つをノックアウト及び/若しくはノックダウンして、例えば、RS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の1、2、若しくは3つの発現を消失させ;並びに/又はRS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の1、2、若しくは3つの一若しくは複数のコピーをノックアウトする。ある特定の実施態様では、本方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つに、挿入又は欠失を含む変更をもたらす。
【0022】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つの初期コード配列を標的として、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つをノックアウト又はノックダウンする。ある特定の実施態様では、標的化は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のコピーに影響を及ぼす。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト又はノックダウン手法により、1つ、2つ、又は全ての機能性RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子産物の発現が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、本方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1、2、又は3つに、挿入又は欠失を含む変更をもたらす。
【0023】
別の態様では、本方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、5’UTR、3’UTR、ポリアデニル化シグナル、及び/又はオープンクロマチン領域。ある特定の実施態様では、上記遺伝子、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の非コード配列を標的として、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子に、突然変異(例えば、挿入又は欠失)を含む変更を導入することにより、上記遺伝子をノックアウトし、例えば、上記遺伝子の発現を消失させ、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のコピーをノックアウトする。ある特定の実施態様では、本方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子に、挿入又は欠失を含む変更をもたらす。
【0024】
ある特定の実施態様では、RS1遺伝子を変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)するとは、(1)RS1遺伝子発現を低減若しくは消失させること、(2)RS1遺伝子によりコードされるタンパク質、転写制御因子ICP4の活性及び/若しくは機能を妨害すること、又は(3)転写制御因子ICP4タンパク質の細胞内、血清内、及び/若しくは実質内レベルを低減若しくは消失させることを指す。
【0025】
ある特定の実施態様では、RL2遺伝子を変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)するとは、(1)RL2遺伝子発現を低減若しくは消失させること、(2)RL2遺伝子によりコードされるICP0タンパク質の活性及び/若しくは機能を妨害すること、並びに/又は(3)ICP0タンパク質の細胞内、血清内、及び/若しくは実質内レベルを低減若しくは消失させることを指す。
【0026】
ある特定の実施態様では、LAT遺伝子を変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)するとは、(1)LAT遺伝子発現を低減若しくは消失させること、(2)LAT遺伝子によりコードされるタンパク質の活性及び/若しくは機能を妨害すること、並びに/又は(3)LAT遺伝子によりコードされるタンパク質の細胞内、血清内、及び/若しくは実質内レベルを低減若しくは消失させることを指す。
【0027】
ある特定の実施態様では、本開示の方法、ゲノム編集系、及び組成物は、Cas9分子(例えば、酵素的に活性なCas9(eaCas9)、例えばCas9ヌクレアーゼ又はCas9ニッカーゼ)又は下記に記載されているようなCas9-融合タンパク質により媒介される一又は複数のヌクレオチドの挿入又は欠失により、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を破壊することを含む変更をもたらす。このタイプの変更は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を「ノックアウトする」とも呼ばれる。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックアウトは、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子に、突然変異(例えば、挿入又は欠失)を含む変更を導入することにより、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のコピーをノックアウトすることを含む。ある特定の実施態様では、変更は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子における挿入又は欠失を含む。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト手法は、例えば、Cas9分子(例えば、eaCas9分子)又はCas9-融合タンパク質を含むCRISPR/Cas系を使用して、非相同末端結合(NHEJ)により媒介される。ある特定の実施態様では、Cas9分子又はCas9-融合タンパク質は、Cas9変異体、例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9変異体又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト手法により、機能性RL2遺伝子産物の発現が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト手法により、機能性LAT遺伝子産物の発現が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト手法により、機能性RS1遺伝子産物の発現が低減又は消失される。
【0028】
ある特定の実施態様では、本開示の方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子にヌクレオチド挿入又は欠失を含まないRS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現の変更をもたらす。このタイプの変更は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を「ノックダウンする」とも呼ばれる。ある特定の実施態様では、この手法は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現の低減、減少、抑制、又は消失を生じさせる。ある特定の実施態様では、標的化ノックダウン手法は、Cas9分子(例えば、酵素的に不活性なCas9(eiCas9)分子)又はCas9-融合タンパク質(例えば、eiCas9融合タンパク質(例えば、転写リプレッサードメイン又はクロマチン修飾タンパク質と融合されているeiCas9))を含むCRISPR/Cas系により媒介され、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の転写を変更する(例えば、転写をブロック、低減、又は減少させる)。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の非コード化領域(例えば、エンハンサー領域、プロモーター領域、5’UTR、3’UTR、ポリアデニル化シグナル、及び/又はオープンクロマチン領域)を標的として、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現を変更する。ある特定の実施態様では、RL2遺伝子のオープンクロマチン領域を標的として、RL2遺伝子の発現を変更する。ある特定の実施態様では、転写調節領域、例えば、プロモーター領域(例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の転写を制御するプロモーター領域)を標的として、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現を変更(例えば、ノックダウン)する。ある特定の実施態様では、一又は複数のgRNA分子は、eiCas9分子又はeiCas9融合タンパク質を、転写調節領域、例えばプロモーター領域(例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の転写を制御するプロモーター領域)の十分に近くへと標的化して、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現を低減、減少、又は抑制するように構成されている標的指向性ドメインを含む。ある特定の実施態様では、RL2遺伝子のコード化領域を標的として、RL2遺伝子の発現を変更(例えば、ノックダウン)する。ある特定の実施態様では、RS1遺伝子のコード化領域を標的として、RS1遺伝子の発現を変更(例えば、ノックダウン)する。ある特定の実施態様では、LAT遺伝子のコード化領域を標的として、LAT遺伝子の発現を変更(例えば、ノックダウン)する。ある特定の実施態様では、eiCas9分子は、Cas9変異体、例えば、化膿レンサ球菌Cas9変異体又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。ある特定の実施態様では、標的化ノックダウン手法により、機能性RL2遺伝子産物の発現が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト手法により、機能性LAT遺伝子産物の発現が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、標的化ノックアウト手法により、機能性RS1遺伝子産物の発現が低減又は消失される。
【0029】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンは、HSV感染症を治癒する。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンは、HSV感染症の機能的治癒をもたらす。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンは、HSV感染症に対する持続的ウイルス応答に結び付く。
【0030】
ある特定の実施態様では、対象ゲノムに組み込まれることが知られているRS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の領域を、ノックダウンの標的とする。ある特定の実施態様では、対象ゲノムに組み込まれないことが知られているRS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の領域を、ノックアウトの標的とする。ある特定の実施態様では、本方法は、対象ゲノムに組み込まれないRS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の領域をノックアウトすることを含む。
【0031】
RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックアウト、ノックダウン、並びに同時ノックアウト及びノックダウンは、HSV感染力、複製、パッケージングを低減することができ、したがってHSV感染症を治療、予防、及び/又は低減することができる。RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現のノックアウト、ノックダウン、並びに同時ノックアウト及びノックダウンは、以下のいずれかを単独で又は組合せで引き起こすことができる:HSV DNA産生の減少、ウイルス感染力の減少、ウイルス粒子のパッケージングの減少、ウイルス排出の減少、並びに/又はRS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子によりコードされるウイルスタンパク質、例えばICP0及び/又はICP4タンパク質の産生の減少。ある特定の実施態様では、本方法は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の2つの異なる領域を同時に1)ノックアウト及び2)ノックダウンすること、例えば、1)対象ゲノムに組み込まれるRS1、RL2、又はLAT遺伝子の領域をノックダウンすること、及び2)対象ゲノムに組み込まれないRS1、RL2、又はLAT遺伝子の異なる領域をノックアウトすることを含む。
【0032】
本開示の主題は、RS1遺伝子、RL2遺伝子、及びLAT遺伝子からなる群から選択される単純ヘルペスウイルス(HSV)ウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子;及びCas9分子を含むゲノム編集系を提供する。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、HSV標的位置の約500bp、約450bp、約400bp、約350bp、約300bp、約250bp、約200bp、約150bp、約100bp、約50bp、約25bp、又は約10bp以内に二本鎖切断又は一本鎖切断を形成し、それにより上記HSVウイルス遺伝子を変更するように構成されている。ある特定の実施態様では、上記HSVウイルス遺伝子の変更は、上記HSVウイルス遺伝子をノックアウトすること、上記HSVウイルス遺伝子をノックダウンすること、並びに前記HSVウイルス遺伝子を同時にノックアウト及びノックダウンすることを含む。
【0033】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、HSVウイルス遺伝子のコード化領域又は非コード化領域を標的とするように構成されており、非コード化領域は、HSVウイルス遺伝子のプロモーター領域、エンハンサー領域、イントロン、3’UTR、5’UTR、又はポリアデニル化シグナル領域を含み、コード化領域は、HSVウイルス遺伝子の初期コード化領域を含む。
【0034】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、配列番号208-58749から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0035】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RS1遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号208-2509からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0036】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RS1遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号7098-9292からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0037】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RL2遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号21324-22744からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0038】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RL2遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号26613-28037からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0039】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 LAT遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号31730-32746からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0040】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 LAT遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号35617-36926からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0041】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RS1遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号2510-7073からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0042】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RS1遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号9293-13614からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0043】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RL2遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号22745-26601からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0044】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RL2遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号28038-31720からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0045】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 LAT遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号32747-35600からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0046】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 LAT遺伝子をノックアウトし、標的指向性ドメインは、配列番号36927-40871からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0047】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RS1遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号13637-14794からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0048】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RS1遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号17753-18784からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0049】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RL2遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号40886-42078からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0050】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RL2遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号49498-50652からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0051】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 LAT遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号45340-46479からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0052】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、化膿レンサ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 LAT遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号53858-55056からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0053】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RS1遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号14795-17741からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0054】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RS1遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号18785-21311からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0055】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 RL2遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号42079-45315からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0056】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 RL2遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号50653-53824からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0057】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-1 LAT遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号46480-49479からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0058】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、黄色ブドウ球菌Cas9分子であり、ゲノム編集系は、HSV-2 LAT遺伝子をノックダウンし、標的指向性ドメインは、配列番号55057-58731からなる群から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は3つ以内のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0059】
ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9分子は、NGGのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識する。
【0060】
ある特定の実施態様では、黄色ブドウ球菌Cas9分子は、NNGRRT(配列番号204)又はNNGRRV(配列番号205)のいずれかのPAMを認識する。
【0061】
本開示の主題は、RS1、RL2、又はLAT遺伝子の標的ドメイン(「標的配列」とも呼ばれる)に相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子、例えば、単離された又は非天然のgRNA分子を提供する。本開示の主題は、そのようなgRNA分子を含む組成物を提供する。さらに、本開示の主題は、そのようなgRNA分子を含むベクターを提供する。加えて、本開示の主題は、本開示のゲノム編集系、ベクター、又は組成物を含む細胞を提供する。ある特定の実施態様では、細胞は、上皮細胞、神経細胞、及び視細胞からなる群から選択される。
【0062】
ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインは、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の十分に近くに、切断事象、例えば二本鎖切断又は一本鎖切断をもたらして、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更、例えば、NHEJに関連する変更を可能にするように構成されている。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、切断事象、例えば二本鎖又は一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されている。切断、例えば二本鎖又は一本鎖切断は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流又は下流に配置されてもよい。ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインは、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の500ヌクレオチド以内に(例えば、500、400、300、250、200、150、100、80、60、40、20、又は10ヌクレオチド以内に)、二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象をもたらすように構成されている。
【0063】
ある特定の実施態様では、第2の標的指向性ドメインを含む第2のgRNA分子は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の十分に近くに、切断事象、例えば二本鎖切断又は一本鎖切断をもたらして、単独で又は第1のgRNA分子により配置された切断との組合せのいずれかで、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更、例えば、NHEJに関連する変更を可能にするように構成されている。ある特定の実施態様では、第1及び第2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、切断事象、例えば二本鎖又は一本鎖切断が、各々のgRNA分子毎に独立して、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断、例えば二本鎖又は一本鎖切断は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の両側に配置される。ある特定の実施態様では、切断、例えば二本鎖又は一本鎖切断は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の一方の側、例えば上流又は下流に配置される。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の500ヌクレオチド以内に(例えば、500、400、300、250、200、150、100、80、60、40、20、又は10ヌクレオチド以内に)、二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象をもたらすように構成されている。
【0064】
ある特定の実施態様では、一本鎖切断には、下記で考察されているような第2のgRNA分子により配置された追加の一本鎖切断が伴う。例えば、標的指向性ドメインは、切断事象、例えば2つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、第1及び第2のgRNA分子は、Cas9分子又はCas9-融合タンパク質、例えばCas9ニッカーゼを誘導する場合、一本鎖切断には、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更をもたらすように互いに対して十分に近い位置に、第2のgRNA分子により配置された追加の一本鎖切断が伴うように構成されている。ある特定の実施態様では、例えば、Cas9分子又はCas9-融合タンパク質がニッカーゼである場合、第1及び第2のgRNA分子は、第2のgRNA分子により配置された一本鎖切断が、第1のgRNA分子により配置された切断の10、20、30、40、又は50ヌクレオチド以内であるように構成されている。ある特定の実施態様では、2つのgRNA分子は、異なる鎖の同じ位置に又は互いの少数ヌクレオチド以内に切断を配置して、例えば本質的に二本鎖切断を模倣するように構成されている。
【0065】
ある特定の実施態様では、二本鎖切断には、下記で考察されているような第2のgRNA分子により配置された追加の二本鎖切断が伴っていてもよい。例えば、第1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流、例えば、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されており、第2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の下流、例えば、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されている。
【0066】
ある特定の実施態様では、二本鎖切断には、第2のgRNA分子及び第3のgRNA分子により配置された2つの追加の一本鎖切断が伴っていてもよい。例えば、第1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流、例えば、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されており、第2及び第3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、2つの一本鎖切断が、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置又はHSV RS1標的位置、の下流、例えば、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、第1、第2、及び第3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、切断事象、例えば二本鎖又は一本鎖切断が、各々のgRNA分子毎に独立して配置されるように構成されている。
【0067】
ある特定の実施態様では、第1及び第2の一本鎖切断には、第3のgRNA分子及び第4のgRNA分子により配置された2つの追加の一本鎖切断が伴っていてもよい。例えば、第1及び第2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、2つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流、例えば、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されており、第3及び第4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、2つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の下流、例えば、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、第1、第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の500ヌクレオチド以内に(例えば、500、400、300、250、200、150、100、80、60、40、20、又は10ヌクレオチド以内に)、二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象をもたらすように構成されている。
【0068】
ある特定の実施態様では、複数のgRNAを使用して、(1)近傍の2つの一本鎖切断;(2)例えば、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に隣接する2つの二本鎖切断(例えば、一片のDNAを除去するための、例えば、欠失突然変異を生成するため、又は遺伝子に、例えばコード化領域に、例えば初期コード化領域に1つよりも多くのインデルを生成するため);(3)HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に隣接する1つの二本鎖切断及び2つの対のニック(例えば、一片のDNAを除去するための、例えば、欠失を挿入するため);又は(4)一位置の各側に2つずつ、4つの一本鎖切断を生成する場合、それらは、同じHSV RL2標的位置又はHSV LAT標的位置又はHSV RS1標的位置を標的とする。ある特定の実施態様では、複数のgRNAを使用して、1つよりも多くのHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置を標的としてもよい。
【0069】
ある特定の実施態様では、第1のgRNA分子の標的指向性ドメイン及び第2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的核酸分子の逆鎖に相補的である。ある特定の実施態様では、上記gRNA分子及び第2のgRNA分子は、PAMが外側に向くように構成されている。
【0070】
ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインは、標的ドメインの、反復エレメント、例えばAluリピートを含むがそれらに限定されない、望ましくない標的染色体エレメントを回避するように構成されている。gRNA分子は、本明細書に記載のような第1、第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子であってもよい。
【0071】
ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインは、事前に選択されたヌクレオチド、例えばコード化領域のヌクレオチドが変更されないように、そのヌクレオチドから十分に遠くに切断事象を配置するように構成されている。ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインは、エクソン配列の変更又は望ましくないスプライシング事象を回避するために、イントロン/エクソン境界又は天然スプライスシグナルから十分に遠くに、イントロン切断事象を配置するように構成されている。gRNA分子は、本明細書に記載のような第1、第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子であってもよい。
【0072】
ある特定の実施態様では、HSV1 RS1標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号208-2509及び2510-7073から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0073】
ある特定の実施態様では、HSV2 RS1標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号7098-9292及び9293-13614から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0074】
ある特定の実施態様では、HSV1 RL2標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号21324-22744及び22745-26601から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0075】
ある特定の実施態様では、HSV2 RL2標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号26613-28037及び28038-31720から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0076】
ある特定の実施態様では、HSV1 LAT標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号31730-32746及び32747-35600から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0077】
ある特定の実施態様では、HSV2 LAT標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号35617-36926及び36927-40871から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0078】
ある特定の実施態様では、HSV1 RS1標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号13637-14794及び14795-17741から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0079】
ある特定の実施態様では、HSV2 RS1標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号17753-18784及び18785-21311から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0080】
ある特定の実施態様では、HSV1 RL2標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号40886-42078及び42079-45315から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0081】
ある特定の実施態様では、HSV2 RL2標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号49498-50652及び50653-53824から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0082】
ある特定の実施態様では、HSV1 LAT標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号45340-46479及び46480-49479から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0083】
ある特定の実施態様では、HSV2 LAT標的ノックアウト位置を標的とするgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号53858-55056及び55057-58731から選択されるヌクレオチド配列と同一であるか又は1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、若しくは5つ以下のヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含む。
【0084】
ある特定の実施態様では、gRNA分子は、単分子の又はキメラのgRNA分子である。
【0085】
ある特定の実施態様では、本開示のgRNA分子の標的指向性ドメインは、長さが、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドである。
【0086】
ある特定の実施態様では、gRNA分子は、5’から3’に向かって、標的指向性ドメイン(「コアドメイン」及び任意選択的に「二次的ドメイン」を含む)、第1の相補性ドメイン、連結ドメイン、第2の相補性ドメイン、及び近位ドメインを含む。ある特定の実施態様では、gRNA分子は、尾部ドメインをさらに含む。ある特定の実施態様では、近位ドメイン及び尾部ドメインは、単一ドメインとして一緒になっている。
【0087】
ある特定の実施態様では、gRNA分子は、長さが25個ヌクレオチド以下の連結ドメイン;長さが合計で少なくとも20、30、35、又は40個のヌクレオチドである近位及び尾部ドメイン;及び長さが16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個ヌクレオチドと等しいか又はそれよりも大きな標的指向性ドメインを含む。
【0088】
切断事象、例えば二本鎖又は一本鎖切断は、Cas9分子又はCas9-融合タンパク質により生成することができる。Cas9分子又はCas9-融合タンパク質は、酵素的に活性なCas9(eaCas9)分子、例えば、標的核酸に二本鎖切断を形成するeaCas9分子であってもよく、又は標的核酸に一本鎖切断を形成するeaCas9分子(例えば、ニッカーゼ分子)であってもよい。ある特定の実施態様では、eaCas9分子は、Cas9変異体であってもよい。例えば、限定ではないが、Cas9変異体は、化膿レンサ球菌Cas9変異体であってもよく、又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。Cas9分子又はCas9融合-タンパク質に加えて、本明細書で開示されている他のヌクレアーゼを使用して、切断事象を生成してもよい。
【0089】
ある特定の実施態様では、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、二本鎖切断を触媒する。
【0090】
ある特定の実施態様では、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、HNH様ドメイン切断活性を含むが、N末端RuvC様ドメイン切断活性を有していないか又は顕著なN末端RuvC様ドメイン切断活性を有していない。この場合、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、HNH様ドメインニッカーゼであり、例えば、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、D10に突然変異、例えばD10Aを含む。ある特定の実施態様では、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、N末端RuvC様ドメイン切断活性を含むが、HNH様ドメイン切断活性を有しないか又は顕著なHNH様ドメイン切断活性を有していない。ある特定の実施態様では、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、N末端RuvC様ドメインニッカーゼであり、例えば、eaCas9分子は、H840に突然変異、例えばH840Aを含む。ある特定の実施態様では、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、N末端RuvC様ドメインニッカーゼであり、例えば、eaCas9分子又はeaCas9-融合タンパク質は、N863に突然変異、例えばN863Aを含む。
【0091】
ある特定の実施態様では、一本鎖切断は、gRNA分子の標的指向性ドメインが相補的である標的核酸の鎖に形成される。ある特定の実施態様では、一本鎖切断は、gRNA分子の標的指向性ドメインが相補的である鎖以外の標的核酸の鎖に形成される。
【0092】
さらに、本開示の主題は、(a)本開示のgRNA分子、例えば、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の、RS1、RL2、又はLAT遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸組成物、例えば、単離された又は非天然の核酸組成物、例えばDNAを提供する。
【0093】
ある特定の実施態様では、核酸組成物は、(b)本明細書に記載のようなCas9分子又はCas9-融合タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、eiCas9分子である。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、eaCas9分子である。ある特定の実施態様では、Cas9分子、例えばeiCas9分子又はeaCas9分子は、Cas9変異体、例えば、化膿レンサ球菌Cas9変異体又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。
【0094】
Cas9分子又はCas9-融合タンパク質は、ニッカーゼ分子、酵素的に活性なCas9(eaCas9)分子、或いはeaCas9-融合タンパク質、例えば、標的核酸に二本鎖切断を形成するeaCas9分子若しくはeaCas9-融合タンパク質、及び/又は標的核酸に一本鎖切断を形成するeaCas9分子若しくはeaCas9-融合タンパク質であってもよい。ある特定の実施態様では、一本鎖切断は、gRNA分子の標的指向性ドメインが相補的である標的核酸の鎖に形成される。ある特定の実施態様では、一本鎖切断は、gRNA分子の標的指向性ドメインが相補的である鎖以外の標的核酸の鎖に形成される。
【0095】
ある特定の実施態様では、核酸組成物は、(c)(i)RS1、RL2、又はLAT遺伝子の第2の標的配列に相補的な標的指向性ドメインを有する、本明細書に記載の第2のgRNA分子をコードする第3のヌクレオチド配列、及び任意選択的に(c)(ii)RS1、RL2、又はLAT遺伝子の第3の標的配列に相補的な標的指向性ドメインを有する、本明細書に記載の第3のgRNA分子をコードする配列、及び任意選択的に(c)(iii)RS1、RL2、又はLAT遺伝子の第4の標的配列に相補的な標的指向性ドメインを有する、本明細書に記載の第4のgRNA分子をコードする配列をさらに含む。
【0096】
ある特定の実施態様では、(a)及び(b)は、同じ核酸分子、例えば同じベクター、例えば同じウイルスベクター、例えば同じアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又はレンチウイルス(LV)ベクターに存在している。ある特定の実施態様では、核酸分子は、LVベクターである。ある特定の実施態様では、核酸分子は、AAVベクターである。記載されている組成物及び方法のいずれかに使用することができる例示的なAAVベクターとしては、AAV2ベクター、修飾AAV2ベクター、AAV3ベクター、修飾AAV3ベクター、AAV6ベクター、修飾AAV6ベクター、AAV8ベクター、及びAAV9ベクターが挙げられる。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、eiCas9分子である。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、eaCas9分子である。ある特定の実施態様では、Cas9分子、例えば、eiCas9分子又はeaCas9分子は、Cas9変異体、例えば、化膿レンサ球菌Cas9変異体又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。
【0097】
ある特定の実施態様では、(a)は、第1の核酸分子、例えば第1のベクター、例えば第1のウイルスベクター、例えば第1のAAVベクター又は第1のLVベクターに存在し、(b)は、第2の核酸分子、例えば第2のベクター、例えば第2のベクター、例えば第2のAAVベクター又は第2のLVベクターに存在する。第1及び第2の核酸分子は、AAVベクターであってもよい。ある特定の実施態様では、第1及び第2の核酸分子は、LVベクターであってもよい。
【0098】
ある特定の実施態様では、(a)及び(c)(i)は、1つの核酸分子、例えば1つのベクター、例えば1つのウイルスベクター、例えば1つのAAVベクター又はLVベクターに存在する。ある特定の実施態様では、核酸分子は、AAVベクターである。ある特定の実施態様では、核酸分子は、LVベクターである。ある特定の実施態様では、(a)及び(c)(i)は、異なるベクターに存在する。ある特定の実施態様では、(a)は、第1の核酸分子、例えば第1のベクター、例えば第1のウイルスベクター、例えば第1のAAVベクター又はLVベクターに存在し、(c)(i)は、第2の核酸分子、例えば第2のベクター、例えば第2のベクター、例えば第2のAAVベクター又は第2のLVベクターに存在する。ある特定の実施態様では、第1及び第2の核酸分子は、AAVベクターである。ある特定の実施態様では、第1及び第2の核酸分子は、LVベクターである。
【0099】
ある特定の実施態様では、(a)、(b)、及び(c)(i)の各々は、1つの核酸分子、例えば1つのベクター、例えば1つのウイルスベクター、例えばAAVベクター又はLVベクターに存在する。ある特定の実施態様では、核酸分子は、AAVベクターである。ある特定の実施態様では、核酸分子は、LVベクターである。ある特定の実施態様では、(a)、(b)、及び(c)(i)の1つは、第1の核酸分子、例えば第1のベクター、例えば第1のウイルスベクター、例えば第1のAAVベクター又はLVベクターにコードされており、(a)、(b)、及び(c)(i)の第2及び第3は、第2の核酸分子、例えば第2のベクター、例えば第2のベクター、例えば第2のAAVベクター又はLVベクターにコードされている。第1及び第2の核酸分子は、AAVベクターであってもよく、又はLVベクターであってもよい。
【0100】
ある特定の実施態様では、(a)は、第1の核酸分子、例えば第1のベクター、例えば第1のウイルスベクター、第1のAAVベクター又はLVベクターに存在し、(b)及び(c)(i)は、第2の核酸分子、例えば第2のベクター、例えば第2のベクター、例えば第2のAAVベクター又はLVベクターに存在する。第1及び第2の核酸分子は、AAVベクターであってもよく、又はLVベクターであってもよい。
【0101】
ある特定の実施態様では、(b)は、第1の核酸分子、例えば第1のベクター、例えば第1のウイルスベクター、例えば第1のAAVベクター又はLVベクターに存在し、(a)及び(c)(i)は、第2の核酸分子、例えば第2のベクター、例えば第2のベクター、例えば第2のAAVベクター又はLVベクターに存在する。第1及び第2の核酸分子は、AAVベクターであってもよく、又はLVベクターであってもよい。
【0102】
ある特定の実施態様では、(c)(i)は、第1の核酸分子、例えば第1のベクター、例えば第1のウイルスベクター、例えば第1のAAVベクター又はLVベクターに存在し、(b)及び(a)は、第2の核酸分子、例えば第2のベクター、例えば第2のベクター、例えば第2のAAVベクター又はLVベクターに存在する。第1及び第2の核酸分子は、AAVベクターであってもよい。ある特定の実施態様では、第1及び第2の核酸分子は、LVベクターであってもよい。
【0103】
ある特定の実施態様では、(a)、(b)、及び(c)(i)の各々は、異なる核酸分子、例えば異なるベクター、例えば異なるウイルスベクター、例えば異なるAAVベクター又はLVベクターに存在する。例えば、(a)は、第1の核酸分子にあってもよく、(b)は、第2の核酸分子にあってもよく、(c)(i)は、第3の核酸分子にあってもよい。第1、第2、及び第3の核酸分子は、AAVベクターであってもよい。ある特定の実施態様では、第1、第2、及び第3の核酸分子は、LVベクターであってもよい。
【0104】
ある特定の実施態様では、第3及び/又は第4のgRNA分子が存在する場合、(a)、(b)、(c)(i)、(c)(ii)、及び(c)(iii)の各々は、1つの核酸分子、例えば1つのベクター、例えば1つのウイルスベクター、例えばAAVベクター又はLVベクターに存在してもよい。ある特定の実施態様では、核酸分子は、AAVベクターである。ある特定の実施態様では、核酸分子は、LVベクターである。ある特定の実施態様では、(a)、(b)、及び(c)(i)、(c)(ii)、及び(c)(iii)の各々は、異なる核酸分子、例えば異なるベクター、例えば異なるウイルスベクター、例えば異なるAAVベクター又は異なるLVベクターに存在していてもよい。さらなる実施態様では、(a)、(b)、(c)(i)、(c)(ii)、及び(c)(iii)の各々は、1つよりも多くの核酸分子に存在していてもよいが、5つ未満の核酸分子、例えばAAVベクター又はLVベクターに存在していてもよい。
【0105】
ある特定の実施態様では、第2のgRNA分子は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の十分に近くに、切断事象、例えば二本鎖切断又は一本鎖切断をもたらして、単独で又は第1のgRNA分子により配置された切断との組合せのいずれかで、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更、例えば、NHEJに関連する変更を可能にするように構成されている。
【0106】
ある特定の実施態様では、第3のgRNA分子は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の十分に近くに、切断事象、例えば二本鎖切断又は一本鎖切断をもたらして、単独で又は第1の及び/若しくは第2のgRNA分子により配置された切断との組合せのいずれかで、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更、例えば、NHEJに関連する変更を可能にするように構成されている。
【0107】
ある特定の実施態様では、第4のgRNA分子は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の十分に近くに、切断事象、例えば二本鎖切断又は一本鎖切断をもたらして、単独で又は第1のgRNA分子、第2のgRNA分子、及び/若しくは第3のgRNA分子により配置された切断との組合せのいずれかで、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更、例えば、NHEJに関連する変更を可能にするように構成されている。
【0108】
ある特定の実施態様では、第2のgRNAは、第1のgRNA分子と同じHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置を標的とするように選択される。ある特定の実施態様では、第3のgRNA及び第4のgRNAは、第1及び第2のgRNA分子と同じHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置を標的とするように選択される。
【0109】
第2、第3、及び第4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、配列番号208-58749に示されているヌクレオチド配列から独立して選択することができる。第2、第3、又は第4のgRNA分子は、モジュール型gRNA分子であってもよく、又はキメラgRNA分子であってもよい。
【0110】
本明細書に記載の核酸組成物内に存在する一又は複数の核酸及び/又は核酸組成物は、(a)のgRNA分子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター、例えば本明細書に記載のプロモーターを含んでいてもよい。核酸及び/又は核酸組成物は、(c)の第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された第2のプロモーター、例えば、本明細書に記載のプロモーターをさらに含んでいてもよい。上記プロモーター及び第2のプロモーターは、互いに異なる。ある特定の実施態様では、上記プロモーター及び第2のプロモーターは同じである。
【0111】
本明細書に記載の核酸組成物は、(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター、例えば、本明細書に記載のプロモーターをさらに含んでいてもよい。
【0112】
本開示の主題は、(a)本開示のgRNA分子、例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子を含む組成物をさらに提供する。ある特定の実施態様では、組成物は、本明細書に記載のような(b)Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)又はCas9-融合タンパク質をさらに含む。ある特定の実施態様では、Cas9分子、例えば、eaCas9分子又はeiCas9は、Cas9変異体であってもよい。例えば、限定ではないが、Cas9変異体は、化膿レンサ球菌Cas9変異体であってもよく、又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。ある特定の実施態様では、組成物は、(c)第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子、例えば、本明細書に記載のような第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子をさらに含む。ある特定の実施態様では、組成物は、医薬組成物である。本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、本明細書に記載の方法に従って、対象のHSV-1又はHSV-2感染症を治療、予防、及び/又は低減するために使用することができる。
【0113】
本開示の主題は、細胞内のRS1遺伝子、RL2遺伝子、及びLAT遺伝子からなる群から選択されるHSVウイルス遺伝子を変更するための方法であって、細胞に、
(i)HSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子、及び少なくともCas9分子を含むゲノム編集系、
(ii)HSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子をコードするポリヌクレオチド、及びCas9分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、又は
(iii)HSVウイルス遺伝子の標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子、及び少なくともCas9分子を含む組成物
のうち1つを投与することを含む方法をさらに提供する。
【0114】
別の態様では、本明細書には、細胞のRS1、RL2、又はLAT遺伝子を変更するための、例えば、細胞の標的核酸の構造を変更するための、例えば、細胞の標的核酸の配列を変更するための方法であって、細胞を、(a)本開示のgRNA分子;及び(b)Cas9分子(例えば、eaCas9分子)又はCas9-融合タンパク質、例えば本明細書に記載のようなCas9分子;及び(c)任意選択的に、RS1、RL2、又はLAT遺伝子を標的とする第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子、例えば本明細書に記載のような第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子と接触させることを含む方法が開示されている。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、Cas9変異体であってもよい。
【0115】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2を罹患しているか又は発症する可能性の高い対象に由来する細胞と接触させることを含む。細胞は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に突然変異を有することから利益を得ると考えられる対象に由来していてもよい。
【0116】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、インビボで実施してもよい。
【0117】
ある特定の実施態様では、本明細書に記載されているような細胞を変更するための方法は、接触ステップの前に、細胞のHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の配列に関する情報を獲得することを含む。細胞のHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の配列に関する情報の獲得は、RS1、RL2、若しくはLAT遺伝子の一又は複数、又はRS1、RL2、若しくはLAT遺伝子の部分を配列決定することによるものであってもよい。
【0118】
ある特定の実施態様では、本方法の接触ステップは、細胞を、(a)(b)、及び(c)のうちの少なくとも1つを発現する核酸組成物、例えばベクター、例えばAAVベクター又はLVベクターと接触させることを含む。ある特定の実施態様では、本方法の接触ステップは、細胞を、(a)(b)、及び(c)の各々を発現する核酸組成物、例えばベクター、例えばAAVベクター又はLVベクターと接触させることを含む。ある特定の実施態様では、本方法の接触ステップは、細胞に、(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質と、(a)のgRNA分子、並びに任意選択的に第2のgRNA分子(c)(i)、並びにさらに任意選択的に第3のgRNA分子(c)(ii)及び/又は第4のgRNA分子(c)(iii)をコードする核酸組成物とを送達することを含む。
【0119】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、細胞を、(a)(b)、(c)、及び(d)のうちの少なくとも1つを発現する核酸組成物、例えばベクター、例えばAAVベクター又はLVベクターと接触させることを含む。ある特定の実施態様では、本方法の接触ステップは、細胞を、(a)(b)、及び(c)の各々を発現する核酸組成物、例えばベクター、例えばAAVベクターと接触させることを含む。ある特定の実施態様では、本方法の接触ステップは、細胞に、(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質、(a)のgRNA分子をコードする核酸組成物及び(d)の鋳型核酸、並びに任意選択的に第2のgRNA分子(c)(i)、並びにさらに任意選択的に第3のgRNA分子(c)(iv)及び/又は第4のgRNA分子(c)(iii)を送達することを含む。
【0120】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、細胞を、本明細書に記載のような、核酸組成物、例えばベクター、例えばAAVベクター、例えばAAV2ベクター、修飾AAV2ベクター、AAV3ベクター、修飾AAV3ベクター、AAV6ベクター、修飾AAV6ベクター、AAV8ベクター、又はAAV9ベクターと接触させることを含む。ある特定の実施態様では、ベクターは、LVベクターである。
【0121】
ある特定の実施態様では、接触させることは、細胞に、タンパク質又はmRNAとしての(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質、並びに(a)のgRNA分子及び任意選択的に(c)の第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子をコードする核酸組成物を送達することを含む。
【0122】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、細胞に、タンパク質又はmRNAとしての(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質、RNAとしての(a)のgRNA分子、並びに任意選択的にRNAとしての(c)の第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子を送達することを含む。
【0123】
ある特定の実施態様では、接触させることは、細胞に、RNAとしての(a)のgRNA分子、任意選択的にRNAとしての(c)の第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子、並びに(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質をコードする核酸組成物を送達することを含む。
【0124】
本開示の主題は、HSV-1及び/又はHSV-2を罹患しているか又は発症する可能性が高い対象を、対象の標的核酸の構造、例えば配列を変更することにより、治療、予防、及び/又は低減するための方法であって、対象(又は対象に由来する細胞)を、
(a)本開示のgRNA分子、例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子を標的とするgRNA分子;
(b)Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)又はCas9-融合タンパク質、例えば、本明細書で開示されているCas9分子;並びに
任意選択的に(c)(i)RS1、RL2、又はLAT遺伝子を標的とする第2のgRNA分子、例えば、本明細書で開示されている第2のgRNA分子、及び
さらに任意選択的に(c)(ii)第3のgRNA分子、及びまたさらに任意選択的に(c)(iii)RL2又はLAT又はRS1遺伝子を標的とする第4のgRNA、例えば、本明細書で開示されている第3及び第4のgRNA分子
と接触させることを含む方法をさらに提供する。
【0125】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に、例えばNHEJにより、突然変異を導入することを含む。
【0126】
ある特定の実施態様では、対象の細胞を、インビボで(例えば、静脈内送達により)、(a)、(b)、並びに任意選択的に(c)(i)、さらに任意選択的に(c)(ii)、及びまたさらに任意選択的に(c)(iii)と接触させる。
【0127】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、対象を、本明細書に記載の核酸組成物、例えばベクター、例えばAAVベクター又はLVベクター、例えば、(a)、(b)、並びに任意選択的に(c)(i)、さらに任意選択的に(c)(ii)、及びまたさらに任意選択的に(c)(iii)のうちの少なくとも1つをコードする核酸組成物と接触させることを含む。
【0128】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、対象に、タンパク質又はmRNAとしての(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質と、(a)、並びに任意選択的に(c)(i)、さらに任意選択的に(c)(ii)、及びまたさらに任意選択的に(c)(iii)をコードする核酸組成物とを送達することを含む。
【0129】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、対象に、タンパク質又はmRNAとしての(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質、RNAとしての(a)のgRNA分子、並びに任意選択的にRNAとしての(c)(i)の第2のgRNA、さらに任意選択的に(c)(ii)、及びまたさらに任意選択的に(c)(iii)を送達することを含む。
【0130】
ある特定の実施態様では、接触ステップは、対象に、RNAとしての(a)のgRNA分子、任意選択的にRNAとしての(c)(i)の第2のgRNA、さらに任意選択的に(c)(ii)、及びまたさらに任意選択的に(c)(iii)、(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質をコードする核酸組成物を送達することを含む。
【0131】
本方法が、(1)NHEJにより、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、若しくはHSV LAT標的位置に突然変異を導入すること、又は(2)RS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の一又は複数の発現を、例えばプロモーター領域を標的とすることによりノックダウンすることを含む場合、(b)のCas9分子又はCas9-融合タンパク質、及び少なくとも1つのgRNA分子、例えば、(a)のgRNA分子が、接触ステップに含まれる。
【0132】
本開示の主題は、本明細書に記載のgRNA分子、核酸組成物、又は組成物、並びに細胞、例えば、HSV-1及び/若しくはHSV-2を有するか若しくは発症する可能性の高い対象、又はHSV RL2標的位置若しくはHSV LAT標的位置若しくはHSV RS1標的位置での突然変異から利益を得ると考えられる対象に由来する細胞を含む反応混合物を提供する。
【0133】
本開示の主題は、(a)本明細書に記載のgRNA分子又はgRNA分子をコードする核酸組成物、及び以下の一又は複数を含むキットを提供する:
(b)Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)又はCas9-融合タンパク質、例えば、本明細書に記載のCas9分子、又はCas9をコードする核酸若しくはmRNA;
(c)(i)第2のgRNA分子、例えば、本明細書に記載の第2のgRNA分子、又は(c)(i)をコードする核酸;
(c)(ii)第3のgRNA分子、例えば、本明細書に記載の第3のgRNA分子、又は(c)(ii)をコードする核酸;又は
(c)(iii)第4のgRNA分子、例えば、本明細書に記載の第4のgRNA分子、又は(c)(iii)をコードする核酸。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、Cas9変異体であってもよい。例えば、限定ではないが、Cas9変異体は、化膿レンサ球菌Cas9変異体であってもよく、又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。
【0134】
ある特定の実施態様では、キットは、(a)、(b)、(c)(i)、(c)(ii)、及び(c)(iii)の一又は複数をコードする核酸、例えばAAVベクター又はLVベクターを含む。
【0135】
本開示の主題は、例えば、本明細書に記載されているような、HSV-1及び/又はHSV-2感染症の発病又は進行を治療、予防、低減、又は遅延するための方法に従って、対象のHSV-1及び/又はHSV-2感染症の発病又は進行を治療、予防、低減、又は遅延するために使用するためのgRNA分子、例えば本明細書に記載のgRNA分子を提供する。
【0136】
ある特定の実施態様では、gRNA分子は、Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)又はCas9-融合タンパク質、例えば、本明細書に記載のCas9分子と組み合わせて使用される。例えば、限定ではないが、Cas9分子又はCas9-融合タンパク質は、Cas9変異体である。例えば、限定ではないが、Cas9変異体は、化膿レンサ球菌Cas9変異体であってもよく、又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。それに加えて又はその代わりに、ある特定の実施態様では、gRNA分子は、第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子、例えば本明細書に記載の第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子と組み合わせて使用される。
【0137】
本開示の主題は、例えば、本明細書に記載されているような、HSV-1及び/又はHSV-2感染症の発病又は進行を治療、予防、低減、又は遅延するための方法に従って、対象のHSV-1及び/又はHSV-2の発病又は進行を治療又は遅延するための医薬の製造における、gRNA分子、例えば本明細書に記載のgRNA分子の使用を提供する。
【0138】
ある特定の実施態様では、医薬は、Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)又はCas9-融合タンパク質、例えば、本明細書に記載のCas9分子を含む。それに加えて又はその代わりに、ある特定の実施態様では、医薬は、第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子、例えば本明細書に記載の第2、第3、及び/又は第4のgRNA分子を含む。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、Cas9変異体であってもよい。例えば、限定ではないが、Cas9変異体は、化膿レンサ球菌Cas9変異体であってもよく、又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。
【0139】
また、本明細書で開示されているような、gRNA分子、ゲノム編集系、方法、組成物、反応混合物、及びキットは、抑制性gRNA分子、例えば、本明細書で開示されている抑制性gRNA分子を含んでいてもよい。
【0140】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似した又は等価な方法及び物質を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び物質は、下記に記載されている。本明細書で言及されている刊行物、特許出願、特許、及び他の文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、物質、方法、及び例は、説明のためのものに過ぎず、限定は意図されていない。
【0141】
数値及びアルファベットの見出し及び副見出しを含む見出しは、構成及び表示のためのものであり、限定は意図されていない。
【0142】
本発明の他の特徴及び利点は、発明を実施するための形態、図面、及び特許請求の範囲から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【
図1A】例示的なgRNAを示す図である。化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes(S.pyogenes))に部分的に由来する(又は部分的に配列がモデル化されている)、二重鎖構造としてのモジュール型gRNA分子(出現順にそれぞれ配列番号39及び40)を示す。
【
図1B】例示的なgRNAを示す図である。二重鎖構造としての、化膿レンサ球菌に部分的に由来する単分子gRNA分子(配列番号41)を示す。
【
図1C】例示的なgRNAを示す図である。二重鎖構造としての、化膿レンサ球菌に部分的に由来する単分子gRNA分子(配列番号42)を示す。
【
図1D】例示的なgRNAを示す図である。二重鎖構造としての、化膿レンサ球菌に部分的に由来する単分子gRNA分子(配列番号43)を示す。
【
図1E】例示的なgRNAを示す図である。二重鎖構造としての、化膿レンサ球菌に部分的に由来する単分子gRNA分子(配列番号44)を示す。
【
図1F】例示的なgRNAを示す図である。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus(S.thermophilus))に部分的に由来する、二重鎖構造としてのモジュール型gRNA分子(出現順にそれぞれ配列番号45及び46)を示す。
【
図1G】例示的なgRNAを示す図である。化膿レンサ球菌及びS.サーモフィルスのモジュール型gRNA分子(出現順にそれぞれ配列番号39、45、47、及び46)のアラインメントを示す。
【
図1H】例示的なgRNAを示す図である。単分子gRNA分子の追加の例示的構造を示す。二重鎖構造としての、化膿レンサ球菌に部分的に由来する単分子gRNA分子(配列番号42)の例示的な構造を示す。
【
図1I】例示的なgRNAを示す図である。単分子gRNA分子の追加の例示的構造を示す。二重鎖構造としての、黄色ブドウ球菌に部分的に由来する単分子gRNA分子(配列番号38)の例示的な構造を示す。
【
図2A】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図2B】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図2C】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図2D】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図2E】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図2F】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図2G】Cas9配列のアラインメントを描写する図である(Chylinski 2013)。N末端RuvC様ドメインは囲まれており、「Y」で示される。他の2つのRuvC様ドメインは囲まれており、「B」で示される。HNH様ドメインは囲まれており、「G」で示される。Sm:S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号1);Sp:S.ピオゲネス(S.pyogenes)(配列番号2);St:S.サーモフィラス(S.thermophilus)(配列番号4);及びLi:L.イノキュア(L.innocua)(配列番号5)。「モチーフ」(配列番号14)は、4つの配列をベースとしたコンセンサス配列である。全ての4つの配列で保存された残基は、1文字のアミノ酸略語で示され、「*」は、4つの配列のいずれかの対応する位置に見出される任意のアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。
【
図3A】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのN末端RuvC様ドメインのアラインメントを示す図である(配列番号52-95、120-123)。
【
図3B】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのN末端RuvC様ドメインのアラインメントを示す図である(配列番号52-95、120-123)。
図3Bの最後の行は、4つの高度に保存された残基を同定する。
【
図4A】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのN末端RuvC様ドメインの配列の外れ値を除外したアラインメントを示す図である(配列番号52-123)。
【
図4B】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのN末端RuvC様ドメインの配列の外れ値を除外したアラインメントを示す図である(配列番号52-123)。
図4Bの最後の行は、3つの高度に保存された残基を同定する。
【
図5A】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのHNH様ドメインのアラインメントを示す図である(配列番号124-198)。
【
図5B】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのHNH様ドメインのアラインメントを示す図である(配列番号124-198)。
【
図5C】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのHNH様ドメインのアラインメントを示す図である(配列番号124-198)。
図5Cの最後の行は、保存された残基を同定する。
【
図6A】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのHNH様ドメインの配列の外れ値を除外したアラインメントを示す図である(配列番号124-141、148、149、151-153、162、163、166-174、177-187、194-198)。
【
図6B】Chylinski 2013に開示されたCas9分子からのHNH様ドメインの配列の外れ値を除外したアラインメントを示す図である(配列番号124-141、148、149、151-153、162、163、166-174、177-187、194-198)。
図6Bの最後の行は、3つの高度に保存された残基を同定する。
【
図7】例示的なgRNA配列(配列番号42)を使用した、gRNAドメイン用語体系を説明する図である。
【
図8A】S.ピオゲネスのCas9のドメイン構成の概略図を提供する図である。
図8Aは、Cas9の2つのローブ(認識(REC)及びヌクレアーゼ(NUC)ローブ)に関連するアミノ酸位置を含むCas9ドメインの構成を示す。
【
図8B】S.ピオゲネスのCas9のドメイン構成の概略図を提供する図である。
図8Bは、83種のCas9オーソログにわたる各ドメインのパーセント相同性を示す。
【
図9】pAF025プラスミドマップの概略図である。
【
図10A】プラスミドpAF025中のHSV-1標的配列のCas9が媒介する切断を示す図である。(A)は、表18に列挙したgRNAによるRL2/LATのHSV1標的ノックダウンを示す(実施例3を参照)。
【
図10B】プラスミドpAF025中のHSV-1標的配列のCas9が媒介する切断を示す図である。(B)は、表19に列挙したRS1のHSV1標的ノックダウンを示す(実施例3を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0144】
開示を明瞭にするために、限定のためではないが、発明を実施するための形態を、以下のサブセクションに分割する:
1.定義
2.単純ヘルペスウイルス
3.HSV関連眼感染症を治療、予防、及び/又は低減するための方法
4.RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を変更するための方法
5.ガイドRNA(gRNA)分子
6.gRNAを設計するための方法
7.Cas9分子
8.候補分子の機能的な分析
9.ゲノム編集手法
10.標的細胞
11.送達、製剤化及び投与経路
12.修飾されたヌクレオシド、ヌクレオチド、及び核酸
【0145】
1.定義
本明細書で使用される場合、用語「約」又は「およそ」は、当業者により決定される、特定の値の許容される誤差範囲内であることを意味し、その値がどのように測定又は決定されたかに、つまり測定システムの限界に部分的に依存する場合がある。例えば、「約」は、当技術分野での1実施当たり、3標準偏差以内であることを意味してもよく、又は3標準偏差を超えていることを意味してもよい。或いは、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、及びさらにより好ましくは最大1%の範囲を意味してもよい。或いは、特に生物学的な系又はプロセスの場合、この用語は、値の10倍以内、好ましくは5倍以内、及びより好ましくは2倍以内を意味する場合がある。
【0146】
本明細書で使用される場合、「ゲノム編集系」は、RNA誘導型DNA編集活性を有する任意の系を指す。本開示のゲノム編集系は、天然CRISPR系:ガイドRNA(gRNA)及びRNA誘導型ヌクレアーゼから構成される少なくとも2つの成分を含む。これら2つの成分は、細胞内の特定の核酸配列と結合し、例えば、一本鎖切断(SSB又はニック)、二本鎖切断(DSB)、及び/又は点突然変異の一又は複数を製作することにより、その核酸配列の又はその核酸配列周辺のDNAを編集することが可能な複合体を形成する。
【0147】
ゲノム編集系は、種々の実施態様では、(a)一又は複数のCas9/gRNA複合体、及び(b)細胞内で結合して、一又は複数のCas9/gRNA複合体を形成することが可能である、別々のCas9分子及びgRNAを含んでいてもよい。本開示によるゲノム編集系は、結合してCas9/gRNA複合体を形成することができるCas9及び/又はgRNAのコード配列を含む一又は複数のヌクレオチド(例えば、RNA、DNA)によりコードされていてもよく、遺伝子編集系をコードする一又は複数のヌクレオチドは、本明細書に記載のようなベクターにより運搬されてもよい。
【0148】
ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、RS1遺伝子、RL2遺伝子、及びLAT遺伝子からなる群から選択されるHSVウイルス遺伝子を標的とする。本開示のゲノム編集系は、一又は複数のHSVウイルス遺伝子、例えば、RS1遺伝子、RL2遺伝子、及び/又はLAT遺伝子を変更(ノックアウト又はノックダウン)するために使用することができる。
【0149】
ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、RS1遺伝子を標的とする。ある特定の実施態様では、RS1遺伝子は、ヒトRS1遺伝子である。ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、RL2遺伝子を標的とする。ある特定の実施態様では、RL2遺伝子は、ヒトRL2遺伝子である。ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、LAT遺伝子を標的とする。ある特定の実施態様では、LAT遺伝子は、ヒトLAT遺伝子である。ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、RS1、RL2、及びLAT遺伝子の2つ又は3つを標的とする。
【0150】
ある特定の実施態様では、RS1遺伝子を標的とするゲノム編集系は、RS1遺伝子の標的ドメイン(「標的配列」とも呼ばれる)に相補的な標的指向性ドメインを含む第1のgRNA分子又はそれをコードするポリヌクレオチド、及び少なくとも1つのCas9分子又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様では、RS1遺伝子を標的とするゲノム編集系は、RS1遺伝子の第2の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメインを含む第2のgRNA分子、又はそれをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。RS1遺伝子を標的とするゲノム編集系は、RS1遺伝子を標的とする第3及び第4のgRNA分子をさらに含んでいてもよい。
【0151】
ある特定の実施態様では、RL2遺伝子を標的とするゲノム編集系は、RL2遺伝子の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメインを含む第1のgRNA分子又はそれをコードするポリヌクレオチド、及び少なくとも1つのCas9分子又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様では、RL2遺伝子を標的とするゲノム編集系は、RL2遺伝子の第2の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメインを含む第2のgRNA分子、又はそれをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。RL2遺伝子を標的とするゲノム編集系は、RL2遺伝子を標的とする第3及び第4のgRNA分子をさらに含んでいてもよい。
【0152】
ある特定の実施態様では、LAT遺伝子を標的とするゲノム編集系は、LAT遺伝子の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメインを含む第1のgRNA分子又はそれをコードするポリヌクレオチド、及び少なくとも1つのCas9分子又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様では、LAT遺伝子を標的とするゲノム編集系は、LAT遺伝子の第2の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメインを含む第2のgRNA分子、又はそれをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。LAT遺伝子を標的とするゲノム編集系は、LAT遺伝子を標的とする第3及び第4のgRNA分子をさらに含んでいてもよい。
【0153】
ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、細胞内で、又はインビトロ若しくはインビボ接触で実施される。ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、医薬、例えば一又は複数の標的遺伝子(例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子)を修飾するための医薬、又はHSV感染(HSV-1又はHSV-2感染)を治療、予防、及び/又は低減するための医薬に使用される。ある特定の実施態様では、ゲノム編集系は、療法剤に使用される。
【0154】
「標的遺伝子」は、本明細書中に使用される場合、既知又は推定上の遺伝子産物をコードする任意のヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施態様では、標的遺伝子は、HSVウイルス遺伝子である。本明細書で使用される場合、「HSVウイルス遺伝子」は、(HSV-1又はHSV-2)RS1遺伝子、(HSV-1又はHSV-2)RL2遺伝子、又は(HSV-1又はHSV-2)LAT遺伝子を指す。
【0155】
「HSV1 RS1標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性RS1遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV1のRS1遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子の非コード化領域にある。
【0156】
「HSV2 RS1標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性RS1遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV2のRS1遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子の非コード化領域にある。
【0157】
「HSV RS1標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性RS1遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV(例えばHSV-1又はHSV-2)のRS1遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子の非コード化領域にある。
【0158】
「HSV1 RS1標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性RS1遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV1のRS1遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、RS1遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0159】
「HSV2 RS1標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性RS1遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV2のRS1遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、RS1遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0160】
「HSV RS1標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性RS1遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV(例えばHSV-1又はHSV-2)のRS1遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、RS1遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、RS1遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0161】
「HSV RS1標的位置」は、本明細書で使用される場合、HSV RS1標的ノックダウン位置及び/又はHSV RS1標的ノックアウト位置を含む。
【0162】
「HSV1 RL2標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性RL2遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV1のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子の非コード化領域にある。
【0163】
「HSV2 RL2標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性RL2遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV2のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子の非コード化領域にある。
【0164】
「HSV RL2標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性RL2遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV(例えばHSV-1又はHSV-2)のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子の非コード化領域にある。
【0165】
「HSV1 RL2標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性RL2遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV1のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、RL2遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0166】
「HSV2 RL2標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性RL2遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV2のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、RL2遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0167】
「HSV RL2標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性RL2遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV(例えばHSV-1又はHSV-2)のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、RL2遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、RL2遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0168】
「HSV RL2標的位置」は、本明細書で使用される場合、HSV RL2標的ノックアウト位置及び/又はHSV RL2標的ノックダウン位置を含む。
【0169】
「HSV1 LAT標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性LAT遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV1のLAT遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子の非コード化領域にある。
【0170】
「HSV2 LAT標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性LAT遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV2のLAT遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子のコード化領域(例えば、初期コード化領域)にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子の非コード化領域にある。
【0171】
「HSV LAT標的ノックアウト位置」は、本明細書で使用される場合、NHEJ媒介性変更により変更すると、機能性LAT遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV(例えば、HSV-1又はHSV-2)のLAT遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子コード化領域、例えば、初期コード化領域にある。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子の非コード化領域にある。
【0172】
「HSV1 LAT標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性LAT遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV1のLAT遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、LAT遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0173】
「HSV2 LAT標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性LAT遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV2のLAT遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、LAT遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0174】
「HSV LAT標的ノックダウン位置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のeiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とすると、機能性LAT遺伝子産物の発現の低減又は消失がもたらされる、HSV(例えばHSV-1又はHSV-2)のRL2遺伝子内の位置を指す。ある特定の実施態様では、転写が低減又は消失される。ある特定の実施態様では、上記位置は、LAT遺伝子のプロモーター領域にある(例えば、LAT遺伝子のプロモーター領域内の位置が、eiCas9又はeiCas9-融合タンパク質により標的とされる)。
【0175】
「HSV LAT標的位置」は、本明細書で使用される場合、HSV LAT標的ノックアウト位置及び/又はHSV LAT標的ノックダウン位置を指す。
【0176】
「ドメイン」は、本明細書で使用される場合、タンパク質又は核酸のセグメントを記述するために使用される。別様の指定がない限り、ドメインは、いかなる特定の機能的特性も有する必要はない。
【0177】
2つの配列間の相同性又は配列同一性(これら用語は、本明細書では同義的に使用される)の計算は、以下のように実施される。比較を最適化するために配列をアラインする(例えば、アラインメントを最適化するために、第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又両方にギャップを導入してもよく、比較のために非相同性配列を無視してもよい)。ギャップペナルティを12に設定し、ギャップ伸長ペナルティを4に設定し、フレームシフトギャップペナルティを5に設定し、Blossum62スコアリングマトリックスを用いて、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用した場合のベストスコアとして、最適アラインメントを決定する。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占められている場合、その分子は、その位置が同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列により共有される同一性位置の数の割合である。
【0178】
「抑制性gRNA分子」は、本明細書で使用される場合、細胞又は対象内に導入されるCRISPR/Cas系の成分をコードする配列を含む核酸に、標的ドメインに相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子を指す。制御gRNAは、内因性の細胞又は対象配列を標的としない。ある特定の実施態様では、抑制性gRNA分子は、(a)Cas9分子をコードする核酸;(b)RS1、RL2、又はLAT遺伝子を標的とする標的指向性ドメインを含むgRNA(標的遺伝子gRNA)をコードする核酸;又はCRISPR/Cas成分をコードする1つよりも多くの核酸に、例えば(a)及び(b)の両方に、標的配列と相補的な標的指向性ドメインを含む。ある特定の実施態様では、CRISPR/Cas成分をコードする、例えば、Cas9分子又は標的遺伝子gRNAをコードする核酸分子は、抑制性gRNA標的指向性ドメインと相補的な1つよりも多くの標的ドメインを含む。ある特定の実施態様では、抑制性gRNA分子は、Cas9分子と複合体を形成し、例えば切断により又は核酸との結合により、標的とされた核酸のCas9媒介性不活化をもたらし、CRISPR/Cas系成分の産生の停止又は低減をもたらす。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、2つの複合体を形成する。1つは、標的遺伝子gRNAと共にCas9分子を含む複合体であり、この複合体は、RS1、RL2、又はLAT遺伝子を変更することができる。もう1つは、抑制性gRNA分子と共にCas9分子を含む複合体であり、この複合体は、CRISPR/Cas系成分、例えばCas9分子又は標的遺伝子gRNA分子のさらなる産生を防止するように作用することができる。ある特定の実施態様では、抑制性gRNA分子/Cas9分子複合体は、調節領域配列、例えば、Cas9分子をコードする配列、Cas9分子の転写領域、エクソン、又はイントロンをコードする配列に作動可能に連結されたプロモーターに結合するか又はその切断を促進する。ある特定の実施態様では、抑制性gRNA分子/Cas9分子複合体は、調節領域配列、例えば、gRNA分子、又はgRNA分子をコードする配列に作動可能に連結されたプロモーターに結合するか又はその切断を促進する。ある特定の実施態様では、抑制性gRNA、例えばCas9標的指向性抑制性gRNA分子、又は標的遺伝子gRNA-標的指向性抑制性gRNA分子は、Cas9分子/標的遺伝子gRNA分子複合体媒介性遺伝子標的化の効果を制限する。ある特定の実施態様では、抑制性gRNAは、Cas9分子/標的遺伝子gRNA分子複合体の活性に対して、経時的な発現レベルの、又は他の制限をも課す。ある特定の実施態様では、抑制性gRNAは、オフターゲット活性又は他の望ましくない活性を低減する。ある特定の実施態様では、抑制性gRNA分子は、Cas9系の成分の産生を阻害し、例えば、完全に又は実質的に完全に阻害し、それによりその活性を制限又は抑制する。
【0179】
「モジュレーター」は、本明細書で使用される場合、対象分子又は遺伝子配列の活性(例えば、酵素活性、転写活性、又は翻訳活性)、量、分布、又は構造を変更することができる実体、例えば薬物を指す。ある特定の実施態様では、モジュレーションは、切断すること、例えば共有結合若しくは非共有結合を切断すること、又は共有結合若しくは非共有結合を形成すること、例えば、ある部分を対象分子に結合させること含む。ある特定の実施態様では、モジュレーターは、対象分子の三次元、二次、三次、又は四次構造を変更する。モジュレーターは、対象活性を増加、減少、開始、又は消失させることができる。
【0180】
「大型分子」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2、3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100kDの分子量を有する分子を指す。大型分子としては、タンパク質、ポリペプチド、核酸、生物製剤、及び炭水化物が挙げられる。
【0181】
「ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、100個未満のアミノ酸残基を有する、アミノ酸のポリマーを指す。ある特定の実施態様では、「ポリペプチド」は、50、20、又は10個未満のアミノ酸残基を有する。
【0182】
「Cas9分子」又は「Cas9ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、gRNA分子と相互作用し、gRNA分子と協同して、標的ドメイン(「標的配列」とも呼ばれる)、ある特定の実施態様ではPAM配列を含む部位に局在することができる分子又はポリペプチドをそれぞれ指す。Cas9分子及びCas9ポリペプチドとしては、天然Cas9分子及びCas9ポリペプチドの両方、並びに、例えば少なくとも1つのアミノ酸残基が参照配列と異なる遺伝子操作、変更、又は修飾されたCas9分子又はCas9ポリペプチド、例えば、最も類似する天然Cas9分子が挙げられる。
【0183】
ある特定の実施態様では、Cas9分子は、NGG PAM配列を認識する野生型化膿レンサ球菌Cas9である。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、NGAG PAM配列、NGCG PAM配列、NGGG PAM配列、NGTG PAM配列、NGAA PAM配列、NGAT PAM配列、又はNGAC PAM配列を認識する化膿レンサ球菌Cas9 EQR変異体である。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、NGCG PAM配列、NGCA PAM配列、NGCT PAM配列、又はNGCC PAM配列を認識する化膿レンサ球菌Cas9 VRER変異体である。ある特定の実施態様では、Cas9分子は、NNGRRT PAM配列又はNNGRRV PAM配列を認識する野生型黄色ブドウ球菌Cas9である。
【0184】
「参照分子」は、本明細書で使用される場合、修飾又は候補分子が比較される分子を指す。例えば、参照Cas9分子は、修飾又は候補Cas9分子が比較されるCas9分子を指す。同様に、参照gRNAは、修飾又は候補gRNAが比較されるgRNA分子を指す。修飾又は候補分子は、配列(例えば、修飾又は候補分子は、参照分子とX%の配列同一性又は相同性を有していてもよい)又は活性(例えば、修飾又は候補分子は、参照分子の活性のX%を有していてもよい)に基づいて、参照分子と比較してもよい。例えば、参照分子がCas9分子である場合、修飾又は候補分子は、参照Cas9分子のヌクレアーゼ活性の10%以下を有すると特徴付けることができる。参照Cas9分子の例としては、天然未修飾Cas9分子、例えば、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、又は髄膜炎菌(N.meningitidis)に由来する天然Cas9分子が挙げられる。ある特定の実施態様では、参照Cas9分子は、それが比較されている修飾又は候補Cas9分子と最も近い配列同一性又は相同性を有する天然Cas9分子である。ある特定の実施態様では、参照Cas9分子は、修飾又は候補Cas9分子に到達するように突然変異がなされている天然又は既知配列を有する親分子である。
【0185】
「置き換え」又は「置き換えられる」は、分子の修飾に関して本明細書で使用される場合、過程を限定する必要はなく、置き換え実体が存在することを示すに過ぎない。
【0186】
「小分子」は、本明細書で使用される場合、約2kD未満、例えば約2kD未満、約1.5kD未満、約1kD未満、又は約0.75kD未満の分子量を有する化合物を指す。
【0187】
「対象」は、本明細書で使用される場合、ヒト又は非ヒト動物のいずれを意味していてもよい。この用語は、これらに限定されないが、哺乳動物(例えば、ヒト、他の霊長類、ブタ、げっ歯動物(例えば、マウス及びラット又はハムスター)、ウサギ、モルモット、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、及びヤギ)を含む。ある特定の実施態様では、対象はヒトである。他の実施態様では、対象は家禽である。
【0188】
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、本明細書で使用される場合、(a)疾患を阻害すること、つまりその発症又は進行を停止又は防止すること、(b)疾患を緩和すること、つまり疾患状態の退縮を引き起こすこと、(c)疾患の一又は複数の症状を緩和すること、及び(d)疾患を治癒することを含む、哺乳動物、例えばヒトの疾患の治療を意味する。
【0189】
「予防する」、「予防すること」、及び「予防」は、本明細書で使用される場合、(a)疾患を回避又は排除すること、(b)疾患に対する素因に影響を及ぼすこと、(c)疾患の少なくとも1つの症状の発症を予防又は遅延させることを含む、哺乳動物、例えばヒトの疾病の予防を意味する。
【0190】
「X」は、アミノ酸配列の状況にて本明細書で使用される場合、別様の指示がない限り、任意のアミノ酸(例えば、20種の天然アミノ酸のいずれか)を指す。
【0191】
2.単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、少なくとも2つの型:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)及び単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に分類される。HSV-1及びHSV-2は、それぞれ、ヒトヘルペスウイルス1(HHV-1)及びヒトヘルペスウイルス(HHV-2)としても知られている。
【0192】
ヘルペスウイルスの構造は、(エンベロープ)と呼ばれる脂質二分子膜で包まれている正20面体タンパク質ケージ(カプシド)内に封入されている比較的大きな二本鎖の直鎖DNAゲノムを含む。エンベロープは、テグメントを介してカプシドと接合している。この完全粒子は、ビリオンとしても知られている(Mettenleiterら、(2006) Curr. Opin. Microbiol. 9 (4): 423-429)。HSV-1及びHSV-2は各々、それらのゲノム内に、少なくとも74個の遺伝子(又はオープンリーディングフレーム、ORF)、又は94個の推定ORFによる84個ものユニークタンパク質コード遺伝子を含む(McGeochら、(2006) Virus Res. 117 (1): 90-104;Rajcaniら、(2004) Virus Genes 28 (3): 293-310)。これら遺伝子は、ウイルスのカプシド、テグメント、及びエンベロープの形成、並びにウイルスの複製及び感染力の調節に関与する様々なタンパク質をコードする。
【0193】
HSV-1及びHSV-2のゲノムは複雑であり、各々が複数のウイルス遺伝子を含む2つのユニーク領域、つまりロングユニーク領域(UL)及びショートユニーク領域(US)を含む。前初期遺伝子は、例えば、初期及び後期ウイルス遺伝子の発現を制御するタンパク質をコードする。初期遺伝子は、例えば、DNA複製及びある特定のエンベロープ糖タンパク質の産生に関与する酵素をコードする。後期遺伝子は、例えば、ビリオン粒子を形成するタンパク質をコードする。HSV遺伝子の転写は、感染宿主のRNAポリメラーゼIIにより触媒される(McGeochら、(2006) Virus Res. 117 (1): 90-104)。
【0194】
宿主細胞内へのHSVの侵入には、宿主細胞の表面にある受容体(例えば、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、ネクチン-1、又は3-O硫酸化ヘパラン硫酸)と、エンベロープウイルスの表面にあるいくつかの糖タンパク質(例えば、糖タンパク質B(gB)、糖タンパク質C(gC)、糖タンパク質D(gD)、糖タンパク質H(gH)、及び糖タンパク質L(gL))との相互作用が関与する。エンベロープは、細胞表面の特定の受容体と結合すると、宿主細胞膜と融合して、細孔を形成し、ウイルスはそこから宿主細胞に侵入することになる。また、ウイルスは、受容体に結合した後にエンドサイトーシスされる場合があり、エンドソームで融合が生じ得る。ウイルスカプシドは、細胞質に侵入した後、細胞核に輸送される。カプシドは、核の核進入孔に付着すると、カプシドポータルからそのDNA内容物を放出する。細胞の感染後、例えば前初期、初期、及び後期の、ヘルペスウイルスタンパク質のカスケードがもたらされる。
【0195】
HSVは、休眠状態であるが、潜伏感染として知られている持続的形態で持続し得る。細胞の潜伏感染中、HSVは、潜伏関連転写物(LAT)RNAを発現する。LATは、宿主細胞ゲノムを制御し、自然な細胞死機序を妨害することができる。宿主細胞を維持することにより、LAT発現は、ウイルスの蓄積場所を保存し、それにより、非潜伏に特徴的である、その後の通常は症候的な周期的再発又は「勃発」が可能になる。再発が症候的であるか否かに関わらず、ウイルス排出が生じて、さらなる感染がもたらされる。ヘルペスウイルスDNAは、溶解感染に関連する遺伝子のトランス活性化因子であるICP4をコードする遺伝子を含む(Pinnojiら、(2007) Virol. J. 4: 56)。ヒトニューロンタンパク質ニューロン制限的サイレンシング因子(NRSF)又はヒトリプレッサーエレメントサイレンシング転写因子(REST)は、ICP4遺伝子を取り囲むエレメントに結合し、この遺伝子からの転写開始を防止するヒストン脱アセチル化を導くことができ、それにより、溶解サイクルに関与する他のウイルス遺伝子の転写が防止される(Pinnojiら、(2007) Virol. J. 4: 56;Bedadalaら、(2007) Cell Res. 17 (6): 546-555)。ICP4タンパク質合成の阻害は、ICP4遺伝子からNRSFを解離させるウイルスタンパク質ICP0により元に戻し、したがってウイルスDNAのサイレンシングを防止することができる(Roizmanら、(2005) Cell Cycle 4 (8): 1019-21)。
【0196】
2.1 HSV感染
単純ヘルペスウイルスは、皮膚及び粘膜内の上皮細胞に感染することにより宿主に侵入する。最も一般的には、HSV-1は、口、唇、及び鼻の上皮を含む、口腔咽頭部の上皮細胞に感染することにより宿主に侵入する。最も一般的には、HSV-2は、性器及び肛門の上皮を含む、肛門性器部の上皮細胞に感染することにより宿主に侵入する。しかしながら、HSV-1は、肛門性器部に一次感染する場合があり、HSV-2は、口腔咽頭部に一次感染する場合がある。
【0197】
HSV-1は、口及び粘膜の間欠性びらんを引き起こす。HSV-1は、遍在性で感染力の強い病原体である。HSV-1による初感染は、一般的に、唇及び口の粘膜の有痛水疱形成を引き起こす。
【0198】
HSV-2は、性感染ウイルスである。HSV-2は、最も一般的には、陰部ヘルペスとして知られている。HSV-2による初感染は、一般的に、性器部に有痛水疱形成を引き起こす。この疾患は、生涯にわたる再発性のウイルス反応性発作を引き起こす。この疾患は、感染力が強く、特に活動性病変を有する患者では、HIV感染の獲得リスクを増加させる。
【0199】
HSV-1及びHSV-2感染症は、宿主の生涯にわたって持続する。初感染中、このウイルスは、口腔咽頭部及び肛門-性器部の細胞に感染して、影響を受けた領域に有痛小水疱を引き起こすことが最も多い。HSV感染の再活性化は、口腔咽頭部又は肛門-性器部に生じることが最も多い。しかしながら、眼及び中枢神経系の再活性化感染症は、それぞれ失明及び恒久的な神経学的障害に結び付く場合があるため、最も重度で損傷性のHSV徴候である。一次及び再活性化感染症は、恒久的な神経学的後遺症及び失明を引き起こす場合がある。また、HSV-2は、対象のHIV発症リスクを増加させる。HSV-1及び/又はHSV-2感染症を治療、予防、及び/又は低減するための方法に対する多大な必要性が存在する。
【0200】
単純ヘルペスウイルスは、上皮細胞内で、ウイルス合成に必要な酵素及び結合タンパク質をコードする前初期遺伝子を産生する。初感染後、ウイルスは、感覚後根神経節(DRG)への逆行性輸送により感覚神経軸索を移動する。HSV-1は、主に三叉神経DRGに移動するが、初感染の部位に応じて他の感覚神経節に移動する場合がある。HSV-2は、主に、仙骨内に位置する感覚DRGに移動するが、一次感染の部位に応じて他の感覚神経節に移動する場合がある。DRG内で、ウイルスは潜伏感染を確立する。潜伏感染は、宿主の生涯にわたって持続する。DRG細胞内で、ウイルスが脱殻し、ウイルスDNAは、核内に輸送され、潜伏に関連する重要なウイルスRNAが転写される(LAT RNAを含む)。
【0201】
一次感染中、対象は、一般的には、4-15日間継続する口腔部又は肛門-性器部の有痛水疱形成を経験する。びらんは、最も一般的には、HSV-1一次感染では、唇、歯ぐき、及び鼻粘膜に関与する。それほど一般的ではないが、HSV-1一次感染は、肛門-性器部に関与する場合がある。HSV-2一次感染は、最も一般的には、膣、陰唇、頚部、陰茎、陰嚢、肛門、及び大腿付近の皮膚を含む、肛門-性器部に関与する。それほど一般的ではないが、HSV-2一次感染は、口腔咽頭部に関与する。希ではあるが、HSV-1及びHSV-2一次感染症は、眼、中枢神経系、指及び爪の基部(疱疹性ひょう疽)に関与する場合がある。HSV-1感染症は、主として唾液及び/又は性的活動を介して伝染する。HSV-2感染症は、主として性的活動を介して伝染するが、唾液を介して伝染する場合もある。HSV感染症の水疱は、破裂して、感染力の非常に強い透明な流体を放出する場合がある。一次感染症には、発熱、悪寒、及び筋肉痛を含むインフルエンザ様疾病が伴う。
【0202】
宿主免疫防御は、HSV感染症と戦いにとって非常に重要である。病原体の認識及び除去には、CD4+T細胞及びCD8+細胞が関与する。HIVを有する対象、臓器移植後に免疫抑制剤が投与されている対象、及び免疫系が発達中である新生仔を含む、T細胞応答障害を有する対象は、HSV-1及びHSV-2感染症の最も重度の徴候を示しやすい。
【0203】
潜伏感染の再活性化は、一般的にそれほど重度ではなく、継続期間はより短い場合もある。HSV-1感染症の再活性化は、口腔部に影響を及ぼすことが最も多いが、肛門-性器部、眼、中枢神経系(CNS)、手指爪、及び咽頭部を含む、他の領域にも影響を及ぼす場合がある。HSV-2感染の再活性化は、肛門-性器部に影響を及ぼすことが最も多いが、口腔部、眼、中枢神経系(CNS)、手指爪、及び咽頭部を含む、他の領域にも影響を及ぼす場合がある。HSV-1又はHSV-2感染のいずれの再活性化も、角膜炎(上皮角膜炎、間質性角膜炎、及び円板状角膜炎)を含む眼科疾患を引き起こす場合がある。一般的に、HSV-1及びHSV-2の眼科的徴候としては、疼痛、流涙、目の充血、及び光過敏が挙げられる。ほとんどのHSV関連眼感染は、恒久的な視覚損傷を起こさずに解消する。しかしながら、眼ヘルペス感染症は、希にではあるが、瘢痕化、細菌病原体による二次感染、及び希にではあるが失明を引き起こす場合がある。また、HSV-1又はHSV-2感染症のいずれの再活性化も、網膜炎を引き起こす場合がある。HSV関連網膜炎は、希ではあるが重度であり、恒久的失明のリスクは高い。
【0204】
新生仔は、重度HSV-1及びHSV-2感染症を発症する特別なリスクのある集団である。この疾患は、出産中に母親から胎仔へと伝染する。母子感染の可能性は、母親が妊娠中に一次HSV感染症を発症した場合、最も高い。新生仔ヘルペスの発症率は、100,000出産当たりおよそ4-30件である。新生仔は、重度HSV-1又はHSV-2脳炎及び/又は脳膜炎を発症する場合がある。抗ウイルス療法剤によりすぐに治療した場合でも、HSV-1又はHSV-2に感染した新生仔が恒久的な神経学的後遺症を有する率は、顕著である。HSV脳炎又は脳膜炎を有する幼仔を、高用量の抗ウイルス療法剤で治療した研究では、死亡率が4%であることが見出され、生存者の69%が、恒久的な神経学的後遺症を有していた(Kimberlinら、Pediatrics. 2001; 108: 230-238)。
【0205】
一次HSV-1又はHSV-2感染症は、アシクロビル、バラシクロビル、及びファムシクロビルを含む抗ウイルス療法剤で治療することができる。こうした療法剤は、ウイルス排出を低減し、疼痛を減少させ、病変の治癒時間を向上させることが実証されている。再活性化された潜伏感染症は、治療せずに解消する場合があり(自然治癒する場合がある)、又は抗ウイルス療法剤で治療してもよい。療法剤は、主に急性感染中に投与される。治癒的治療又は予防的治療は存在しない。療法剤は、最近のHSV-1又はHSV-2に感染症又は再活性化を有する母親の出産中を含む、ある特定の状況では、予防的に投与される場合がある。
【0206】
HSV-1又はHSV-2感染症を予防する有効な療法剤は存在しない。活動性感染中の抗ウイルス療法剤の使用及びコンドームの使用は、感染率をおよそ50%減少させる。
【0207】
ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)獲得率は、HSV-2に血清反応陽性である対象で劇的に増加する。HIV-1による感染リスクは、HSV-2を有する対象で3倍を超えている。抗ウイルス剤は、HIV獲得リスクの低減に効果がない。
【0208】
2.2 HSV関連眼疾患
HSV感染症、例えば、眼のHSV-1及び/又はHSV-2感染症は、一次又は再活性化感染症のいずれの場合も、HSV関連眼疾患と呼ばれる。HSV関連眼疾患は、最も一般的には、角膜炎、間質性角膜炎、及び/又は円板状角膜炎として知られている前眼房の感染症を引き起こす。HSV関連眼疾患は、より希だが、網膜炎として知られている後眼房の感染症を引き起こす場合がある。HSV-1角膜炎は、鋭い痛みがあり、不快である。HSV-1角膜炎は、希な例では、瘢痕化、細菌病原体による二次感染、及び希ではあるが失明を引き起こす場合がある。HSV関連網膜炎は、HSV関連眼疾患の希な徴候であるが、恒久的な視覚損傷のリスクは遙かにより高い。
【0209】
再活性化感染症は、三叉神経(第5脳神経)の眼枝に沿って眼内への、三叉神経節から眼内へのウイルスの順行性輸送により、眼で生じる。また、ウイルスの再活性化は、角膜内から生じる場合がある。三叉神経節内での潜伏は、2つの機序の1つにより確立される。第1に、HSV-1又はHSV-2は、眼(眼感染後の)から三叉神経節内への三叉神経に沿った逆行性輸送により移動する場合がある。或いは、HSV-1又はHSV-2は、口腔粘膜、性器部、又は他の外眼性部位に感染した後の血行性拡散により三叉神経節に拡散する場合がある。三叉神経節の潜伏感染を確立した後、ウイルスは、任意の時点で、特に免疫不全宿主の場合、三叉神経に沿った眼内への順行性移動により、感染を再確立することができる。
【0210】
眼ヘルペスは、後眼房に影響を及ぼす場合、網膜炎を引き起こす。成体では、HSV網膜炎の大多数の症例は、HSV-1が原因である(Peposeら、Ocular Infection and Immunity 1996; Mosby 1155-1168)。新生仔及び仔どもでは、HSV網膜炎の大多数の症例は、HSV-2が原因である(Peposeら、Ocular Infection and Immunity 1996; Mosby 1155-1168)。HSV関連網膜炎は、急性網膜壊死(ARN)に結び付く場合があり、急性網膜壊死は、治療しないと2週間以内に網膜を破壊することになる(Banerjee及びRouse, Human Herpesviruses 2007; Cambridge University Press, Chapter 35)。治療した場合でさえ、ARN後の恒久的な視覚損傷リスクは、50%を超える(Royら、Ocular Immunology and Inflammation 2014; 22(3): 170-174)。
【0211】
角膜炎は、眼ヘルペスの最も一般的な形態である。HSV角膜炎は、樹枝状角膜炎、間質性角膜炎、眼瞼炎、及び結膜炎として顕在化する場合がある。HSV関連角膜炎の大多数は、HSV-1が原因であり、症例の58%を占める(Dawsonら、Suvey of Ophthalmology 1976; 21(2): 121-135)。HSV関連角膜炎症例の残り、つまり症例のおよそ42%は、HSV-2が占める。米国では、再発性又は一次HSV関連角膜炎感染症の症例は、年間でおよそ48,000件である(Liesegangら、1989; 107(8): 1155-1159)。HSV関連角膜炎の全症例のうち、対象のおよそ1.5-3%が、重度の恒久的な視力障害を経験する(Wilhelmusら、Archives of Ophthalmology 1981; 99(9): 1578-82)。対象のHSV関連眼疾患による恒久的な視覚損傷のリスクは、眼関連HSV再活性化の回数が増加すると共に増加する。
【0212】
全体的に、間質性角膜炎は、角膜炎症例のおよそ15%に相当し、角膜炎による恒久的な視覚損傷のリスクが最も高いことと関連している。間質性角膜炎は、瘢痕化及び不正乱視をもたらす。最近の眼HSV感染症は、間質性感染症の発症リスクを増加させる。これは、以前に眼HSV感染症を有していた対象が、再活性化時に恒久的な視覚損傷のリスクが高くなることを意味する。仔どもでは、角膜炎の全症例の最大60%が、間質性角膜炎である。したがって、仔どもには、特に、HSV関連角膜炎による恒久的な視覚損傷のリスクがある。1950-1982年の米国における遡及研究では、新たな又は再発性の間質性角膜炎の症例は、100,000人年当たりおよそ2.6症例であり、つまり、間質性角膜炎の年間症例は、およそ8,000症例であることが判明した(Liesegangら、1989; 107(8): 1155-1159)。2002年のフランスにおけるより最近の研究では、新たな又は再発性の間質性角膜炎症例の発症率は、100,000当たり9.6であると推定された(Labetoulleら、Ophthalmology 2005; 112(5):888-895)。HSV関連角膜炎の発症率は、先進国世界では増加しつつある可能性がある(Farooq及びShukla 2012; Survey of Ophthalmology 57(5): 448-462)。
【0213】
本明細書に記載のゲノム編集系、組成物、及び方法は、HSV-1及び/又はHSV-2眼感染症を治療、予防、及び/又は低減するために使用することができ、HSV-1及び/又はHSV-2眼感染症としては、これらに限定されないが、HSV-1間質性角膜炎、HSV-1樹枝状角膜炎、HSV-1眼瞼炎、HSV-1結膜炎、HSV-1網膜炎、HSV-2間質性角膜炎、HSV-2樹枝状角膜炎、HSV-2眼瞼炎、HSV-2結膜炎、及びHSV-2網膜炎が挙げられる。
【0214】
3.HSV関連眼感染症を治療、予防、及び/又は低減するための方法
本明細書には、本明細書に記載の方法、ゲノム編集系、及び組成物を使用して、HSV関連眼感染症を治療、予防、及び/又は低減するために手法が開示されている。HSV関連眼感染症は、HSV-1及び/又はHSV-2感染により引き起こされる場合がある。例えば、限定ではないが、本明細書に記載の方法、ゲノム編集系、組成物は、HSV-1感染症、HSV-2感染症、又はHSV-1及びHSV-2感染症の両方を、治療、予防、及び/又は軽減するために使用することができる。
【0215】
HSV-1及びHSV-2のRS1、RL2、及びLAT遺伝子は、ウイルス感染、増殖、及び構築、並びに潜伏の維持及び潜伏からのウイルス再活性化に関連する。これら遺伝子のいずれかを単独で又は組合せでノックアウト又はノックダウンすることにより、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を低減することができる。HSV-1又はHSV-2ウイルスは、身体内の個別の局所領域にて潜伏を確立するため、無力化治療を潜伏領域に送達する局所送達に非常に適している。個別の領域(一又は複数)(例えば、三叉神経後根神経節、角膜、頚部後根神経節、又は仙椎後根神経節)の標的指向性ノックアウトは、HSV-1及び/又はHSV-2ウイルスを無力化することにより潜伏感染を低減又は消失させることができる。
【0216】
本明細書には、ウイルス遺伝子をノックアウト又はノックダウンすることによりHSV-1及び/又はHSV-2感染症を治療、予防、及び/又は低減するための手法が記載されている。本明細書に記載の方法は、以下のHSV-1及び/又はHSV-2コード遺伝子:RL2、LAT、及びRS1、又はそれらの任意の組合せ(例えば任意の単一の遺伝子、例えばRL2、例えばLAT、例えばRS1、又は任意の2つの遺伝子、例えばRL2及びLAT、例えばRL2及びRS1、例えばRS1及びLAT、又はこれら3つの遺伝子)をノックアウト又はノックダウンすることを含む。2つの変更事象(例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の発現のノックダウン又はノックアウト)がある場合、2つの変更事象は、順次に又は同時に生じてもよい。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックアウトは、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンの前に生じる。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックアウトは、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンと同時である。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックアウトは、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンの後である。ある特定の実施態様では、変更の効果は相乗的である。
【0217】
RL2は、遺伝子ICP0、遺伝子発現のトランス活性化因子である775個アミノ酸のタンパク質をコードする。RL2遺伝子は、ヘルペスウイルスにより発現される5つの前初期遺伝子の1つである。ICP0は遅延初期及び後期遺伝子の発現の活性化に関与する(Lees-Millerら、1996, Journal of Virology 70(11): 7471-7477)。ICP0は、神経毒性に関与すると考えられている。細胞培養では、ICP0は、潜伏からの再活性化に必要であることが見出されている(Leibら、1989, Journal of Virology 63:759-768)。RL2を発現しない欠失突然変異体は、複製することができないことがインビトロで示されている(Sacks及びSchaffer 1987, Journal of Virology 61(3):829-839)。ある特定の実施態様では、RL2のノックアウトは、HSV-1及び/又はHSV-2が潜伏から再活性化する能力を無力化することができる。ある特定の実施態様では、RL2のノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2が複製する能力を無力化することができる。ある特定の実施態様では、RL2のノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2が感染する能力及び/又は神経組織で潜伏感染を確立する能力を無力化することができる。
【0218】
LATは、潜伏期中にヘルペスウイルスにより発現される唯一の遺伝子をコードする。潜伏期は、ウイルスが、宿主組織、多くの場合、三叉神経節又は仙骨神経節を含む神経組織に静止感染を確立する時間である。LATは、ヘルペスウイルス感染症の再活性化に関与し、ウイルスが、上皮及び他の組織に再感染することを可能にすると考えられている。ある特定の実施態様では、LATのノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2遺伝子潜伏及び/又は再活性化を無力化し、HSV-1及び/又はHSV-2が、潜伏感染を維持及び/又は潜伏感染後に再活性化する能力を妨害することができる。ある特定の実施態様では、LAT発現のノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2による潜伏感染を消失させる。ある特定の実施態様では、LAT発現のノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を治療及び/又は治癒するための期間を短縮する。
【0219】
RS1は、HSV-1及びHSV-2による前初期遺伝子の発現に重要な役割を果たす。RS1は、ヘルペスウイルスにより発現される5つの前初期遺伝子の1つであり、主要な転写制御因子である。RS1は、ウイルスタンパク質ICP4をコードする。ICP4は、HSV-1及びHSV-2により産生される初期及び後期遺伝子の両方の全体的な発現の調節に重要である。RS1遺伝子は、HSV-1及びHSV-2で類似している。
【0220】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2遺伝子発現を無力化し、ウイルス複製、構築、成熟、パッケージング、又は感染の一又は複数を低減する。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子発現のノックアウトは、HSV-1及び/又はHSV-2感染症の継続期間を短縮する。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子発現のノックアウト又はノックダウンは、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を治療又は治癒する。
【0221】
ある特定の実施態様では、眼関連HSV再活性化の継続期間、回数、及び/又は頻度の低減は、HSV-1及び/又はHSV-2に感染した対象の恒久的な視覚損傷のリスクを減少させることができる。
【0222】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を個々に又は組合せでノックアウト及び/又はノックダウンすることにより、HSV-1及び/又はHSV-2を、抗ウイルス療法剤に、より感受性にすることができる。重要な遺伝子の突然変異は、HSV-1、HSV-2、及び他のウイルスを、抗ウイルス剤による治療に、より感受性にすることができる(Zhouら、Journal of Virology 2014; 88(19): 11121-11129)。RL2及びLAT及び/又はRS1遺伝子を個々に又は組合せでノックアウト又はノックダウンすることは、抗ウイルス療法剤と組み合わせて、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を治療、予防、及び/又は低減することができる。本明細書に記載の組成物及び方法を、抗ウイルス療法剤、例えば、本明細書に記載の別の抗HSV-1療法剤又は抗HSV-2療法剤と組み合わせて、HSV-1又はHSV-2感染症を治療、予防、及び/又は低減することができる。
【0223】
1つの手法では、標的化ノックアウト又はノックダウンとして、例えば、RS1、RL2、及びLAT遺伝子の1つ、2つ、又は3つを標的として、例えばウイルス遺伝子制御、ウイルス遺伝子転写、ウイルスゲノム複製、ウイルス潜伏遺伝子の発現、及びウイルスカプシド形成を含む、一又は複数のウイルス機能を阻害する。ある特定の実施態様では、上記手法は、1つのHSV-1及び/又はHSV-2遺伝子(例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子)をノックアウトすることを含む。ある特定の実施態様では、上記手法は、1つのHSV-1及び/又はHSV-2遺伝子(例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子)をノックダウンすることを含む。ある特定の実施態様では、上記手法は、2つのHSV-1及び/又はHSV-2遺伝子、例えばRL2及びLAT遺伝子の両方、例えばRL2及びRS1遺伝子の両方、例えばRS1及びLAT遺伝子の両方をノックアウトすることを含む。ある特定の実施態様では、上記手法は、2つのHSV-1及び/又はHSV-2遺伝子、例えばRL2及びLAT遺伝子の両方、例えばRL2及びRS1遺伝子の両方、例えばRS1及びLAT遺伝子の両方をノックダウンすることを含む。ある特定の実施態様では、上記手法は、3つのHSV-1及び/又はHSV-2遺伝子、例えば、RL2、LAT及びRS1遺伝子の3つを全てノックアウトすることを含む。ある特定の実施態様では、上記手法は、3つのHSV-1及び/又はHSV-2遺伝子、例えば、3つのRS1、RL2、又はLAT遺伝子を全てノックダウンすることを含む。
【0224】
ある特定の実施態様では、一又は複数のウイルス機能、例えばウイルス遺伝子制御、ウイルス遺伝子転写、ウイルスゲノム複製、及びウイルスカプシド形成を阻害することにより、一次又は再発性感染症の継続期間を減少させるか、及び/又はウイルス粒子の排出を減少させる。また、対象は、疾病の継続期間の短縮、性的パートナーへの伝染リスクの減少、妊娠している場合は胎仔への伝染リスクの減少、並びに/又はHSV-1及び/若しくはHSV-2の完全なクリアランス(治癒)の可能性を経験する場合がある。
【0225】
一又は複数の標的遺伝子(例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子)の一又は複数のコピー(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000個、又はそれよりも多くのコピー)のノックアウト又はノックダウンは、疾患発症前に、又は疾患発症後に、好ましくは疾患経過の初期に実施することができる。
【0226】
ある特定の実施態様では、本方法は、疾患発症前に対象の治療を開始することを含む。
【0227】
ある特定の実施態様では、本方法は、疾患発症後に対象の治療を開始することを含む。
【0228】
ある特定の実施態様では、本方法は、疾患発症後に、例えば、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を発症した1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、24、36、48カ月後、又はそれよりも後に、対象の治療を開始することを含む。ある特定の実施態様では、本方法は、疾患発症後に、例えば、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を発症した1、2、3、4、5、10、15、20、25、40、50、又は60年後に、対象の治療を開始することを含む。
【0229】
ある特定の実施態様では、本方法は、疾患の進行期に、例えば急性期又は潜伏期中に、対象の治療を開始することを含む。ある特定の実施態様では、本方法は、中枢神経系、眼、口腔咽頭部、性器部、及び/又は他の領域に影響を及ぼす疾患の重症急性期に、対象の治療を開始することを含む。
【0230】
まとめると、疾患のどの病期で対象の治療を開始したとしても、疾患の治癒が向上し、疾患の継続期間が減少し、対象に有益であると予想される。
【0231】
ある特定の実施態様では、本方法は、疾患進行前に対象の治療を開始することを含む。ある特定の実施態様では、本方法は、疾患の初期段階に、例えば、対象がHSV-1及び/若しくはHSV-2と接触したか、又はHSV-1及び/若しくはHSV-2と接触したと考えられる時点で、対象の治療を開始することを含む。
【0232】
ある特定の実施態様では、本方法は、疾患進行前に対象の治療を開始することを含む。ある特定の実施態様では、本方法は、疾患の初期段階に、例えば、対象が、HSV-1及び/又はHSV-2感染症に陽性の検査結果が出たが、徴候又は症状を示していない時点で、対象の治療を開始することを含む。
【0233】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2感染症に合致又は関連する以下の所見の一又は複数の出現時に治療を開始することを含む:発熱、頭痛、体の痛み、肛門性器の水疱形成、口腔内潰瘍形成、脳炎、又は角膜炎。
【0234】
ある特定の実施態様では、本方法は、例えば、幼仔、仔ども、成体、又は若年成体の、例えば口腔又は口腔咽頭部に又はその周辺に有痛水疱形成が出現した時点で、対象の治療を開始することを含む。
【0235】
ある特定の実施態様では、本方法は、例えば、幼仔、仔ども、成体、又は若年成体に、肛門-性器部の有痛水疱形成、性器潰瘍、及び/又は風邪様症状が出現した時点で、対象の治療を開始することを含む。
【0236】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/若しくはHSV-2脳膜炎並びに/又はHSV-1及び/若しくはHSV-2脳炎が疑われる対象の治療を開始することを含む。
【0237】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2脳膜炎及び/又は脳炎と合致又は関連する以下の症状の一又は複数の出現時に治療を開始することを含む:発熱、頭痛、嘔吐、羞明、発作、意識レベル低下、嗜眠、又は傾眠。
【0238】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV脳膜炎及び/又は脳炎と合致又は関連する以下の徴候のいずれかの出現時に治療を開始することを含む:HSV-1及び/又はHSV-2のCSF培養陽性、CSFのWBC上昇、頚部硬直/ブルジンスキー徴候陽性。ある特定の実施態様では、本方法は、EEG、CSF試験、MRI、CSF検体のPCR、及び/又は脳生検検体のPCRにおける、HSV-1及び/又はHSV-2脳炎及び/又は脳膜炎と合致する徴候を示す患者の治療を開始することを含む。
【0239】
ある特定の実施態様では、本方法は、眼部HSV-1及び/又はHSV-2と合致又は関連する以下の症状のいずれかの出現時に治療を開始することを含む:疼痛、羞明、霧視、流涙、発赤/充血、視力喪失、飛蚊症、又は閃光。
【0240】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2角膜炎としても知られている眼部HSV-1及び/又はHSV-2と合致又は関連する以下の眼科的検査に関する所見のいずれかの出現時に治療を開始することを含む:角膜上皮の小さな隆起した透明な小胞;角膜表面の凸凹又は点状上皮びらん;濃厚間質浸潤液;潰瘍形成;壊死;局所性、多巣性、又はびまん性の細胞浸潤;免疫リング;新血管新生;又はあらゆるレベルの角膜のゴースト血管。
【0241】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2網膜炎又は急性網膜壊死と合致又は関連する以下の眼科的検査に関する所見のいずれかの出現時に治療を開始することを含む:視力低下;ブドウ膜炎;硝子体炎;強膜充血;前房及び/又は硝子体腔の炎症;硝子体のくもり;視神経浮腫;末梢網膜白化;網膜裂孔;網膜剥離;網膜壊死;細動脈鞘形成及び細動脈狭窄を含む、動脈病変を伴う閉塞性脈管障害の証拠。
【0242】
ある特定の実施態様では、本方法は、眼、口腔咽頭部、肛門-性器部、又は中枢神経系のいずれかのHSV-1又はHSV-2感染症と合致又は関連する症状及び/又は徴候の出現時に治療を開始することを含む。ある特定の実施態様では、HSV-1又はHSV-2感染症が疑われる場合、疾患経過の初期にHSV-1及び/又はHSV-2感染症の治療を開始することが有益である。
【0243】
ある特定の実施態様では、本方法は、子宮にて治療を開始することを含む。ある特定の実施態様では、対象は、母子感染のリスクが高い。
【0244】
ある特定の実施態様では、本方法は、活性HSV-1及び/若しくはHSV-2感染症を有するか、又は最近の一次HSV-1及び/若しくはHSV-2感染症を有する母親の場合、妊娠中に治療を始めることを含む。
【0245】
ある特定の実施態様では、本方法は、臓器移植前に又は臓器移植直後に治療を開始することを含む。
【0246】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2との接触が疑われる場合に、治療を開始することを含む。
【0247】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV脳炎又は脳膜炎が疑われる場合、予防的に治療を開始することを含む。
【0248】
ある特定の実施態様では、HIV陽性対象及び移植後対象は両方とも、免疫不全により、HSV脳炎及び脳膜炎を含む重度HSV-1及び/又はHSV-2活性化又は再活性化を経験する場合があることが考慮される。また、新生仔には、出産中の母子感染による重度HSV脳炎のリスクがある。一又は複数のウイルス機能、例えばウイルス遺伝子制御、ウイルス遺伝子転写、ウイルスゲノム複製、及びウイルスカプシド形成の阻害は、重度HSV-1及び/又はHSV-2感染症のリスクがある上記集団に、優れた防御を提供することができる。対象は、HSV-1及び/若しくはHSV-2脳炎率の低下、並びに/又はHSV-1及び/又はHSV-2脳炎後の重度神経学的後遺症率の低下を経験する場合があり、それにより生活の質が著しく向上するだろう。
【0249】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2感染症を罹患しているか又はHSV-1及び/又はHSV-2感染症の重度徴候を発症するリスクのある対象、例えば、新生仔、HIVを有する対象、例えば臓器移植後に免疫抑制剤療法を受けている対象、がんを有する対象、化学療法を受けている対象、化学療法を受けている対象、放射線療法を受けている対象、放射線療法を受けることになる対象の治療を開始することを含む。
【0250】
ある特定の実施態様では、HIV陽性対象及び移植後対象は両方とも、免疫不全により、HSV脳炎及び脳膜炎を含む、重度HSV-1及び/又はHSV-2活性化又は再活性化を経験する場合がある。また、新生仔には、出産中の母子感染による重度HSV脳炎のリスクがある。必須ウイルス機能、例えばウイルス遺伝子制御、ウイルス遺伝子転写、ウイルス潜伏遺伝子の発現、ウイルスゲノム複製、及びウイルスカプシド形成の阻害は、重度HSV-1及び/又はHSV-2感染症のリスクがある上記集団に、優れた防御を提供することができる。対象は、HSV-1及び/若しくはHSV-2脳炎率の低下、並びに/又はHSV-1及び/又はHSV-2脳炎後の重度神経学的後遺症率の低下を経験する場合があり、それにより生活の質が著しく向上するだろう。
【0251】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2に陽性の検査結果を示す対象の治療を開始することを含む。
【0252】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2感染症に陽性の検査結果を示す対象の治療を開始することを含む。HSV-1及び/又はHSV-2感染症は、例えば、ウイルス培養、直接蛍光抗体研究、皮膚生検、PCR、血液血清学的検査、CSF血清学的検査、CSF PCR、又は脳生検を使用して検査することができる。ある特定の実施態様では、本方法は、診断的硝子体切除、網膜内生検、又は水性液体のPCR、硝子体試料のPCRによりHSV-2感染症に陽性の検査結果を示す対象の治療を開始することを含む。
【0253】
ある特定の実施態様では、本方法は、HSV-1及び/又はHSV-2に接触し、HSV感染症の重度続発症のリスクが高い対象の治療を開始することを含む。
【0254】
ある特定の実施態様では、細胞は、一又は複数の標的遺伝子、例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子を編集することにより(例えば、突然変異を導入することにより)操作される。ある特定の実施態様では、一又は複数の標的遺伝子(例えば、本明細書に記載の一又は複数のRS1、RL2、又はLAT遺伝子)の発現は、例えばインビボで、調節される。
【0255】
ある特定の実施態様では、本方法は、アデノ随伴ウイルス(AAV)によりgRNA分子を送達することを含む。ある特定の実施態様では、本方法は、レンチウイルス(LV)によりgRNA分子を送達することを含む。ある特定の実施態様では、本方法は、ナノ粒子によりgRNA分子を送達することを含む。
【0256】
ある特定の実施態様では、本方法は、対象に、第2の抗ウイルス療法剤又は治療剤、例えば、本明細書に記載の抗HSV-1又は抗HSV-2療法剤又は治療剤を投与することをさらに含む。本組成物及びもう一方の療法剤又は治療剤は、任意の順序で投与することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、一又は複数の追加の療法剤又は治療剤と同時に、その前に、又はその後で投与することができる。ある特定の実施態様では、2つ又はそれよりも多くの療法剤又は治療剤の効果は、相乗的である。例示的な抗HSV-1及び抗HSV-2療法剤及び治療剤としては、これらに限定されないが、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビル、又はワクチンが挙げられる。
【0257】
4.RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子を変更するための方法
本明細書に開示されているように、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子は、本明細書に記載のようなゲノム編集系、組成物、及び方法により変更することができる。
【0258】
本明細書で考察されている方法、ゲノム編集系、及び組成物は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)を提供する。
【0259】
本明細書に開示されているように、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置は、例えば、本明細書に記載されているCRISPR-Cas9を媒介とする方法、ゲノム編集系、及び組成物を使用して、遺伝子編集により、単独で又は組合せで変更することができる。HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)は、例えば、
(1)RS1、RL2、又はLAT遺伝子のノックアウト、
(a)RS1、RL2、若しくはLAT遺伝子の初期コード化領域の近傍又はRS1、RL2、若しくはLAT遺伝子の初期コード化領域内での、一又は複数のヌクレオチドの挿入又は欠失(例えば、NHEJ媒介性挿入又は欠失)、又は
(b)RS1、RL2、又はLAT遺伝子の少なくとも部分を含むゲノム配列(一又は複数)の欠失(例えば、NHEJ媒介性欠失)、或いは
(2)非コード化領域、例えば、RS1、RL2、又はLAT遺伝子のプロモーター領域を標的とすることにより、eiCas9分子又はeiCas9-融合タンパク質により媒介されるRS1、RL2、又はLAT遺伝子のノックダウン
により達成することができる。
【0260】
手法は全て、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)をもたらす。RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1つ又は両方の変更に関連する場合がある例示的な機序としては、これらに限定されないが、非相同末端結合(例えば、古典的又は選択的)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)、相同組換え修復(例えば、内因性ドナー鋳型媒介性)、SDSA(合成依存性鎖アニーリング)、一本鎖アニーリング、又は一本鎖侵入が挙げられる。
【0261】
ある特定の実施態様では、本明細書に記載の方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の初期コード化領域の近くに、一又は複数の切断を導入する。ある特定の実施態様では、本明細書に記載の方法、ゲノム編集系、及び組成物は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の少なくとも部分に隣接するように2つ又はそれよりも多くの切断を導入する。2つ又はそれよりも多くの切断は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の少なくとも部分を含むゲノム配列を除去する(例えば、欠失させる)。ある特定の実施態様では、本明細書に記載の方法は、HSV RL2及び/又はHSV LAT及び/又はRS1標的ノックダウン位置のプロモーター領域を標的とすることにより、eiCas9分子又はeiCas9-融合タンパク質により媒介される、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のノックダウンを含む。本明細書に記載の方法は全て、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の変更(例えば、ノックアウト又はノックダウン)をもたらす。
【0262】
4.1 RS1、RL2、又はLAT遺伝子にインデル又は欠失を導入することによる、RS1、RL2、又はLAT遺伝子のノックアウト
ある特定の実施態様では、本方法は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のHSV RS1標的ノックアウト位置、HSV RL2標的ノックアウト位置、又はHSV LAT標的ノックアウト位置(例えば、初期コード化領域)の近傍に、一又は複数のヌクレオチドの挿入又は欠失を導入することを含む。本明細書中に記載されているように、ある特定の実施態様では、本方法は、切断誘導性インデルが、HSV RL2標的ノックアウト位置又はHSV LAT標的ノックアウト位置(例えば、初期コード化領域)に及んでいると合理的に予想することができるように、HSV RL2標的ノックアウト位置又はHSV LAT標的ノックアウト位置の初期コード化領域の十分に近くに(例えば、5’又は3’のいずれかに)、一又は複数の切断(例えば、一本鎖切断又は二本鎖切断)を導入することを含む。切断のNHEJ媒介性修復は、HSV RL2標的ノックアウト位置若しくはHSV LAT標的ノックアウト位置の初期コード化領域の近傍に、又はHSV RL2標的ノックアウト位置若しくはHSV LAT標的ノックアウト位置の初期コード化領域内に、インデルのNHEJ媒介性導入を可能にする。
【0263】
ある特定の実施態様では、本方法は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の少なくとも部分を含むゲノム配列の欠失を導入することを含む。本明細書に記載されているように、一実施態様では、本方法は、2つの二本鎖切断を、RL2、LAT、又はRS1標的位置の一方は5’に、他方は3’に(つまり、隣接して)導入することを含む。1つの実施態様では、2つのgRNA、例えば単分子(若しくはキメラ)又はモジュール型gRNA分子は、2つの二本鎖切断を、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子のRL2、LAT、又はRS1標的ノックアウト位置の反対側に配置するように構成されている。
【0264】
ある特定の実施態様では、一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に導入される(例えば、1つのgRNA分子により配置される)。ある特定の実施態様では、単一のgRNA分子を(例えば、Cas9ニッカーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に一本鎖切断を生成し、例えば、gRNA分子は、一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流(例えば、上流200bp以内)又は下流(例えば、下流200bp以内)のいずれかに配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断は、反復エレメント、例えばAluリピート等の望ましくない標的染色体エレメントを回避するように配置される。
【0265】
ある特定の実施態様では、二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に導入される(例えば、1つのgRNA分子により配置される)。ある特定の実施態様では、単一のgRNA分子を(例えば、Cas9ニッカーゼ以外のCas9ヌクレアーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に二本鎖切断を生成し、例えば、gRNA分子は、二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流(例えば、上流200bp以内)又は下流(例えば、下流200bp以内)のいずれかに配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断は、反復エレメント、例えばAluリピート等の望ましくない標的染色体エレメントを回避するように配置される。
【0266】
ある特定の実施態様では、2つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に導入される(例えば、2つのgRNA分子により配置される)。ある特定の実施態様では、2つのgRNA分子を(例えば、1つ又は2つのCas9ニッカーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に2つの一本鎖切断を生成し、例えば、gRNA分子は、一本鎖切断の両方が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流(例えば、上流200bp以内)又は下流(例えば、下流200bp以内)に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、2つのgRNA分子を(例えば、2つのCas9ニッカーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に2つの一本鎖切断を生成し、例えば、gRNA分子は、1つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流(例えば、上流200bp以内)に配置され、第2の一本鎖切断が、下流(例えば、下流200bp以内)に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断は、反復エレメント、例えばAluリピート等の望ましくない標的染色体エレメントを回避するように配置される。
【0267】
ある特定の実施態様では、2つの二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に導入される(例えば、2つのgRNA分子により配置される)。ある特定の実施態様では、2つのgRNA分子を(例えば、Cas9ニッカーゼではない1つ又は2つのCas9ヌクレアーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に隣接するように2つの二本鎖切断を生成し、例えば、gRNA分子は、1つの二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流(例えば、上流200bp以内)に配置され、第2の二本鎖切断が、下流(例えば、下流200bp以内)に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断は、反復エレメント、例えばAluリピート等の望ましくない標的染色体エレメントを回避するように配置される。
【0268】
ある特定の実施態様では、1つの二本鎖切断及び2つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に導入される(例えば、3つのgRNA分子により配置される)。ある特定の実施態様では、3つのgRNA分子を(例えば、Cas9ニッカーゼ以外のCas9ヌクレアーゼ及び1つ又は2つのCas9ニッカーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に隣接するように1つの二本鎖切断及び2つの一本鎖切断を生成する。例えば、gRNA分子は、二本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流又は下流(上流又は下流200bp以内)に配置され、2つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の反対側の部位に、例えば、上流又は下流(例えば、上流又は下流200bp以内)に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断は、反復エレメント、例えばAluリピート等の望ましくない標的染色体エレメントを回避するように配置される。
【0269】
ある特定の実施態様では、4つの一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に又はその近傍に導入される(例えば、4つのgRNA分子により配置される)。ある特定の実施態様では、4つのgRNA分子を(例えば、1つ又はそれよりも多くのCas9ニッカーゼと共に)使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に隣接するように4つの一本鎖切断を生成し、例えば、gRNA分子は、第1及び第2の一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の上流(例えば、上流200bp以内)に、第3及び第4の一本鎖切断が、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の下流(例えば、下流200bp以内)に配置されるように構成されている。ある特定の実施態様では、切断は、反復エレメント、例えばAluリピート等の望ましくない標的染色体エレメントを回避するように配置される。
【0270】
ある特定の実施態様では、2つ又はそれよりも多くの(例えば、3つ又は4つの)gRNA分子が、1つのCas9分子又はCas9-融合タンパク質と共に使用される。ある特定の実施態様では、2つ又はそれよりも多くの(例えば、3つ又は4つの)gRNAが、2つ又はそれよりも多くのCas9分子と共に使用される場合、少なくとも1つのCas9分子は、他のCas9分子とは異なる種に由来する。例えば、2つのgRNA分子が、2つのCas9分子と共に使用される場合、一方のCas9分子は、1つの種に由来していてもよく、他方のCas9分子は、異なる種に由来していてもよい。必要に応じて、両方のCas9種を使用して、一本鎖又は二本鎖切断を生成する。
【0271】
4.2. RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の少なくとも部分を含むゲノム配列又は複数のゲノム配列を欠失すること(例えば、NHEJ媒介性欠失)による、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のノックアウト
ある特定の実施態様では、本方法は、RS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の少なくとも部分を含むゲノム配列、又はRS1、RL2、及び/若しくはLAT遺伝子の少なくとも部分を含む複数のゲノム配列を欠失すること(例えば、NHEJ媒介性欠失)を含む。ある特定の実施態様では、本方法は、2つの二本鎖切断を、1つは、HSV RS1標的ノックアウト位置、HSV RL2標的ノックアウト位置、又はHSV LAT標的ノックアウト位置の5’に(つまり、隣接して)及び他方は3’に導入することを含む。ある特定の実施態様では、2つのgRNA、例えば単分子(若しくはキメラ)又はモジュール型gRNA分子は、2つの二本鎖切断を、RL2遺伝子のHSV RL2標的ノックアウト位置の反対側に配置するように構成されている。ある特定の実施態様では、2つのgRNA、例えば単分子(若しくはキメラ)又はモジュール型gRNA分子は、2つの二本鎖切断を、LAT遺伝子のHSV LAT標的ノックアウト位置の反対側に配置するように構成されている。ある特定の実施態様では、2つのgRNA、例えば単分子(若しくはキメラ)又はモジュール型gRNA分子は、2つの二本鎖切断を、RS1遺伝子のHSV RS1標的ノックアウト位置の反対側に配置するように構成されている。
【0272】
4.3. 酵素的に不活性なCas9(eiCas9)分子又はeiCas9-融合タンパク質により媒介される、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のノックダウン
標的化ノックダウン手法により、機能性RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子産物の発現が低減又は消失される。本明細書に記載されているように、ある特定の実施態様では、標的化ノックダウンは、酵素的に不活性なCas9(eiCas9)分子又はeiCas9-融合タンパク質(例えば、転写リプレッサードメイン又はクロマチン修飾タンパク質と融合されたeiCas9)が、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の1つ、2つ、又は3つを標的とすることにより媒介される。
【0273】
本明細書で考察されている方法及び組成物を使用し、転写調節領域、例えば、プロモーター領域(例えば、RS1、RL2、及びLAT遺伝子の一又は複数の転写を調節するプロモーター領域)を標的とすることにより、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数の発現を変更して、HSV-1又はHSV-2感染症を治療又は予防することができる。ある特定の実施態様では、プロモーター領域を標的として、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数の発現をノックダウンする。標的化ノックダウン手法により、機能性RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子産物の発現が低減又は消失される。
【0274】
ある特定の実施態様では、一又は複数のeiCas9sを使用して、一又は複数の内因性転写因子の結合をブロックすることができる。ある特定の実施態様では、eiCas9を、クロマチン修飾タンパク質に融合させてもよい。クロマチンの状態を変更することにより、標的遺伝子の発現の減少がもたらされる場合がある。一又は複数のクロマチン修飾タンパク質に融合されている一又は複数のeiCas9sを使用して、クロマチンの状態を変更することができる。
【0275】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数の発現のeiCas9媒介性低減は、RS1、RL2、及び/又はLAT RNAの転写の低減及び/又は停止を引き起こす。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数の発現のeiCas9媒介性低減は、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子によりコードされているHSV-1又はHSV-2タンパク質、例えば、ICP0タンパク質及び/又はLATタンパク質及び/又は転写制御因子ICP4タンパク質の翻訳の低減及び/又は停止に結び付く。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数の発現のeiCas9媒介性低減は、以下のいずれかを、単独で又は組合せでもたらす:HSV DNA産生の減少、HSV排出の減少、HSV複製の減少、ウイルス感染力の低下、ウイルス粒子パッケージングの減少、ウイルスタンパク質、例えばICP0タンパク質、例えば転写制御因子ICP4タンパク質の産生の減少。
【0276】
ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のノックダウンは、HSV-1又はHSV-2感染症を治癒する。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のノックダウンは、HSV-1又はHSV-2感染症の機能的治癒に結び付く。ある特定の実施態様では、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一又は複数のノックダウンは、HSV-1又はHSV-2感染症に対する持続的ウイルス応答に結び付く。急性発症中の標的化ノックダウン手法は、ウイルス排出、複製を減少させることができ、それは、炎症減少に結び付き、眼に対する損傷を減少させることができる。ある特定の実施態様では、eiCas9分子は、本明細書に開示されているようなCas9変異体であってもよい。例えば、限定ではないが、Cas9変異体は、化膿レンサ球菌Cas9変異体であってもよく、又は黄色ブドウ球菌Cas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様では、化膿レンサ球菌Cas9変異体は、VRER変異体である。
【0277】
5.ガイドRNA(gRNA)分子
gRNA分子は、この用語が本明細書で使用される場合、標的核酸と複合体を形成するgRNA分子/Cas9分子の特異的標的指向性又は誘導性を容易にする核酸を指す。gRNA分子は、単分子(単一RNA分子を有する)(例えば、キメラ)であってもよく、又はモジュール型(1つよりも多くの、典型的には2つの別々のRNA分子)であってもよい。本明細書で提供されているgRNA分子は、標的ドメイン(「標的配列」とも呼ばれる)と完全に又は部分的に相補的な核酸配列を含むか、からなるか、又はから本質的になる標的指向性ドメインを含む。ある特定の実施態様では、gRNA分子は、例えば、第1の相補性ドメイン、連結ドメイン、第2の相補性ドメイン、近位ドメイン、尾部ドメイン、及び5’伸長ドメインを含む、一又は複数の追加のドメインをさらに含む。これらドメインの各々は、下記で詳細に考察されている。ある特定の実施態様では、gRNA分子のドメインの一又は複数は、例えば化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、又はS.サーモフィルスに由来する天然配列と同一であるか又は配列相同性を共有するヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施態様では、gRNA分子のドメインの一又は複数は、例えば化膿レンサ球菌又は黄色ブドウ球菌に由来する天然配列と同一であるか又は配列相同性を共有するヌクレオチド配列を含む。
【0278】
いくつかの例示的なgRNA構造は、
図1A-1Iに提供されている。gRNAの三次元形態、又は活性形態の鎖内若しくは鎖間相互作用に関して、相補性の高い領域は、
図1A-1I及び本明細書で提供されている他の図では、二本鎖として示されることがある。
図7には、gRNAドメイン用語体系が、tracrRNA由来領域に1つのヘアーピンループを含む配列番号42のgRNA配列を使用して説明されている。ある特定の実施態様では、gRNAは、この領域に、1つよりも多くの(例えば、2つ、3つ、又はそれよりも多くの)ヘアーピンループを含んでいてもよい(例えば、
図1H-1Iを参照)。
【0279】
ある特定の実施態様では、単分子又はキメラgRNAは、好ましくは、5’から3’に向かって、
RL2、LAT、又はRS1遺伝子の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメイン、例えば、配列番号208-58749から選択されるヌクレオチド配列を含む標的指向性ドメイン、
第1の相補性ドメイン、
連結ドメイン、
第2の相補性ドメイン(第1の相補性ドメインと相補的である)、
近位ドメイン、及び
任意選択的に尾部ドメイン
を含む。
【0280】
ある特定の実施態様では、モジュール型gRNAは、
好ましくは、5’から3’に向かって、
RL2、LAT、又はRS1遺伝子の標的ドメインに相補的な標的指向性ドメイン、例えば、配列番号208-58749から選択されるヌクレオチド配列を含む標的指向性ドメイン、及び
第1の相補性ドメインを含む第1の鎖;並びに
好ましくは、5’から3’に向かって、
任意選択的に5’伸長ドメイン、
第2の相補性ドメイン、
近位ドメイン、及び
任意選択的に尾部ドメインを含む第2の鎖
を含む。
【0281】
5.1 標的指向性ドメイン
標的指向性ドメイン(ガイド配列とも呼ばれることがある)は、RL2、LAT、又はRS1遺伝子の標的核酸配列に相補的であるか又は部分的に相補的である核酸配列を含むか、からなるか、又はから本質的になる。標的指向性ドメインの全て又は部分が相補的であるか又は部分的に相補的であるRL2、LAT、又はRS1遺伝子の核酸配列は、本明細書では標的ドメインと呼ばれる。
【0282】
標的指向性ドメインを選択するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Fu 2014; Sternberg 2014を参照)。本明細書に記載の方法、組成物、及びキットに使用するための好適な標的指向性ドメインの例は、配列番号208-58749に示されているヌクレオチド配列を含む。
【0283】
標的ドメインを含む標的核酸の鎖は、標的指向性ドメイン配列に相補的であるため、本明細書では相補鎖と呼ばれる。標的指向性ドメインは、gRNA分子の一部であるため、チミン(T)ではなくウラシル(U)塩基を含むが、gRNA分子をコードするあらゆるDNA分子は、ウラシルではなくチミンを含んでいてもよい。標的指向性ドメイン/標的ドメイン対では、標的指向性ドメインのウラシル塩基は、標的ドメインのアデニン塩基と対を形成することになる。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインと標的ドメインとの相補性の程度は、Cas9分子が標的核酸を標的とすることを可能にするのに十分である。
【0284】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、コアドメイン及び任意選択的な二次的ドメインを含む。これら実施態様のある特定の態様では、コアドメインは、二次的ドメインの3’側に位置し、これら実施態様のある特定の態様では、コアドメインは、標的指向性ドメインの3’末端に又は近くに位置する。これら実施態様のある特定の態様では、コアドメインは、標的指向性ドメインの3’末端にある約8-約13個のヌクレオチドからなるか又はから本質的になる。ある特定の実施態様では、コアドメインのみが、標的ドメインの対応する部分に相補的であるか又は部分的に相補的であり、これら実施態様のある特定の態様では、コアドメインは、標的ドメインの対応する部分と完全に相補的である。ある特定の実施態様では、二次的ドメインも、標的ドメインの部分に相補的であるか又は部分的に相補的である。ある特定の実施態様では、コアドメインは、標的ドメインのコアドメイン標的に相補的であるか又は部分的に相補的であり、二次的ドメインは、標的ドメインの二次的ドメイン標的に相補的であるか又は部分的に相補的である。ある特定の実施態様では、コアドメイン及び二次的ドメインは、標的ドメインのそれぞれの対応する部分と同じ程度の相補性を有する。ある特定の実施態様では、コアドメインとその標的との相補性の程度、及び二次的ドメインとその標的との相補性の程度は異なっていてもよい。これら実施態様のある特定の態様では、コアドメインは、二次的ドメインよりもその標的との相補性の程度が高くてもよく、他の態様では、二次的ドメインは、コアドメインよりも高い相補性の程度を有していてもよい。
【0285】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン及び/又は標的指向性ドメイン内のコアドメインは、長さが3-100、5-100、10-100、又は20-100個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメイン又はコアドメインは、長さが、3-15、3-20、5-20、10-20、15-20、5-50、10-50、又は20-50個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン及び/又は標的指向性ドメイン内のコアドメインは、長さが、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン及び/又は標的指向性ドメイン内のコアドメインは、長さが、6+/-2、7+/-2、8+/-2、9+/-2、10+/-2、10+/-4、10+/-5、11+/-2、12+/-2、13+/-2、14+/-2、15+/-2、又は16+-2、20+/-5、30+/-5、40+/-5、50+/-5、60+/-5、70+/-5、80+/-5、90+/-5、又は100+/-5個のヌクレオチドである。
【0286】
標的指向性ドメインがコアドメインを含む、ある特定の実施態様では、コアドメインは、長さが、3-20個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、コアドメインは、長さが、5-15又は8-13個のヌクレオチドである。標的指向性ドメインが二次的ドメインを含む、ある特定の実施態様では、二次的ドメインは、長さが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のヌクレオチドである。標的指向性ドメインが、長さが8-13個のヌクレオチドであるコアドメインを含む、ある特定の実施態様では、それぞれ、標的指向性ドメインは、長さが、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、又は16個のヌクレオチドであり、二次的ドメインは、長さが、13-18、12-17、11-16、10-15、9-14、8-13、7-12、6-11、5-10、4-9、又は3-8個のヌクレオチドである。
【0287】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと完全に相補的である。同様に、標的指向性ドメインがコアドメイン及び/又は二次的ドメインを含む場合、ある特定の実施態様では、コアドメイン及び二次的ドメインの一方又は両方は、標的ドメインの対応する部分と完全に相補的である。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと部分的に相補的であり、標的指向性ドメインがコアドメイン及び/又は二次的ドメインを含むこれら実施態様のある特定の態様では、コアドメイン及び二次的ドメインの一方又は両方は、標的ドメインの対応する部分と部分的に相補的である。これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメイン又は標的指向性ドメイン内のコアドメイン若しくは標的指向性ドメインの核酸配列は、標的ドメインと、又は標的ドメインの対応する部分と、少なくとも約80%、約85%、約90%、又は約95%相補的である。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン及び/又は標的指向性ドメイン内のコア若しくは二次的ドメインは、標的ドメイン又はその部分と相補的でない一又は複数のヌクレオチドを含み、これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメイン及び/又は標的指向性ドメイン内のコア若しくは二次的ドメインは、標的ドメインと相補的ではない1、2、3、4、5、6、7、又は8個のヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様では、コアドメインは、標的ドメインの対応する部分と相補的ではない1、2、3、4、又は5個のヌクレオチドを含む。標的指向性ドメインが、標的ドメインと相補的ではない一又は複数のヌクレオチドを含む、ある特定の実施態様では、上記非相補性ヌクレオチドの一又は複数は、標的指向性ドメインの5’又は3’末端の5個ヌクレオチド以内に位置する。これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメインは、その5’末端、3’末端、又はその5’及び3’末端の両方の5個ヌクレオチド以内に、標的ドメインと相補的ではない1、2、3、4、又は5個ヌクレオチドを含む。標的指向性ドメインが、標的ドメインと相補的ではない2つ又はそれよりも多くのヌクレオチドを含む、ある特定の実施態様では、上記非相補性ヌクレオチドの2つ又はそれよりも多くは、互いに隣接しており、これら実施態様のある特定の態様では、2つ又はそれよりも多くの連続する非相補性ヌクレオチドは、標的指向性ドメインの5’又は3’末端の5個ヌクレオチド以内に位置する。ある特定の実施態様では、2つ又はそれよりも多くの連続する非相補性ヌクレオチドは両方とも、標的指向性ドメインの5’又は3’末端から5個ヌクレオチドよりも遠くに位置する。
【0288】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン、コアドメイン、及び/又は二次的ドメインは、一切の修飾を含まない。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン、コアドメイン、及び/又は二次的ドメイン、又はそれらの中の一若しくは複数のヌクレオチドは、これらに限定されないが、下記に示されている修飾を含む修飾を有する。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン、コアドメイン、及び/又は二次的ドメインの一又は複数のヌクレオチドは、2’修飾(例えば、リボースの2’位における修飾)、例えば、2-アセチル化、例えば2’メチル化を含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインの骨格は、ホスホロチオエートで修飾されていてもよい。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン、コアドメイン、及び/又は二次的ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、標的指向性ドメイン及び/又は標的指向性ドメインを含むgRNAを、より分解され難くするか、又はより生体適合にする、例えば、免疫原性を低下させる。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン及び/又はコア若しくは二次的ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、又は8つ、又はそれよりも多くの修飾を含み、これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメイン及び/又はコア若しくは二次的ドメインは、それらのそれぞれの5’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つの修飾、及び/又はそれらのそれぞれの3’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つの修飾を含む。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメイン及び/又はコア若しくは二次的ドメインは、2つ又はそれよりも多くの連続するヌクレオチドに修飾を含む。
【0289】
標的指向性ドメインがコア及び二次的ドメインを含む、ある特定の実施態様では、コア及び二次的ドメインは、同数の修飾を含む。これら実施態様のある特定の態様では、両ドメインは修飾を含まない。他の実施態様では、コアドメインは、二次的ドメインよりも多くの修飾を含むか、又はその逆である。
【0290】
ある特定の実施態様では、コア又は二次的ドメイン内を含む、標的指向性ドメイン内の一又は複数のヌクレオチドの修飾は、標的指向性効果を妨害しないように選択される。それは、下記に示されているような系を使用して修飾候補を試験することにより評価することができる。選択された長さ、配列、相補性の程度、又は修飾の程度を有する標的指向性ドメイン候補を有するgRNAを、下記に示されているような系を使用して評価することができる。標的指向性ドメイン候補を、単独で又は一若しくは複数の他の変化候補と共にのいずれかで、選択した標的と共に機能することが知られているgRNA分子/Cas9分子系に配置し、評価することができる。
【0291】
ある特定の実施態様では、修飾ヌクレオチドの全てが、標的ドメインに存在する対応するヌクレオチドと相補的であり、ハイブリダイズすることが可能である。ある特定の実施態様では、1、2、3、4、5、6、7、又は8個、又はそれよりも多くの修飾ヌクレオチドは、標的ドメインに存在する対応するヌクレオチドに相補的でなく、又はハイブリダイズすることが可能でない。
【0292】
5.2 第1及び第2の相補性ドメイン
第1及び第2の相補性(それぞれ、crRNA由来ヘアピン配列及びtracrRNA由来ヘアピン配列とも呼ばれることがある)ドメインは、互いに完全に又は部分的に相補的である。ある特定の実施態様では、相補性の程度は、2つのドメインが、少なくともいくつかの生理学的条件下で二本鎖領域を形成するのに十分である。ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインと第2の相補性ドメインとの相補性の程度は、gRNAの他の特性と併せて、Cas9分子が標的核酸を標的とすることを可能にするのに十分である。第1及び第2の相補的ドメインの例は、
図1A-1Gに示されている。
【0293】
ある特定の実施態様では(例えば、
図1A-1Bを参照)、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、対応する相補性ドメインとの相補性を欠如する一又は複数のヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、対応する相補性ドメインとの相補性を有していない1、2、3、4、5、又は6個のヌクレオチドを含む。例えば、第2の相補性ドメインは、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドと対を形成しない1、2、3、4、5、又は6個のヌクレオチドを含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、対応する相補性ドメインと相補的でない第1又は第2の相補性ドメインのヌクレオチドは、第1の相補性ドメインと第2の相補性ドメインとの間で形成される二本鎖からループアウトする。これら実施態様のある特定の態様では、非対合ループアウトは、第2の相補性ドメインに位置し、これら実施態様のある特定の態様では、非対合領域は、第2の相補性ドメインの5’末端から1、2、3、4、5、又は6個のヌクレオチドから始まる。
【0294】
ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインは、長さが、5-30、5-25、7-25、5-24、5-23、7-22、5-22、5-21、5-20、7-18、7-15、9-16、又は10-14個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、第1の相補性ドメインは、長さが、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインは、長さが、5-27、7-27、7-25、5-24、5-23、5-22、5-21、7-20、5-20、7-18、7-17、9-16、又は10-14個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、第2の相補性ドメインは、長さが、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第1及び第2の相補性ドメインは、各々独立して、長さが、6+/-2、7+/-2、8+/-2、9+/-2、10+/-2、11+/-2、12+/-2、13+/-2、14+/-2、15+/-2、16+/-2、17+/-2、18+/-2、19+/-2、又は20+/-2、21+/-2、22+/-2、23+/-2、又は24+/-2個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインは、第1の相補性ドメインよりも長く、例えば、2、3、4、5、又は6個のヌクレオチドだけ長い。
【0295】
ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、各々独立して、3つのサブドメイン:5’から3’方向に、5’サブドメイン、中央サブドメイン、及び3’サブドメインを含む。ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインの5’サブドメイン及び3’サブドメインは、それぞれ、第2の相補性ドメインの3’サブドメイン及び5’サブドメインと完全に又は部分的に相補的である。
【0296】
ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインの5’サブドメインは、長さが4-9個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、5’ドメインは、長さが4、5、6、7、8、又は9個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインの5’ドメインは、長さが、3-25、4-22、4-18、又は4-10個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、5’ドメインは、長さが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインの中央サブドメインは、長さが1、2、又は3個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインの中央サブドメインは、長さが1、2、3、4、又は5個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインの3’ドメインは、長さが、3-25、4-22、4-18、又は4-10個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、3’ドメインは、長さが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインの3’サブドメインは、長さが4-9個、例えば、4、5、6、7、8、又は9個のヌクレオチドである。
【0297】
第1及び/又は第2の相補性ドメインは、天然若しくは基準の第1及び/若しくは第2の相補性ドメインと相同性を共有していてもよく、又は天然若しくは基準の第1及び/若しくは第2の相補性ドメインに由来していてもよい。これら実施態様のある特定の態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、天然若しくは基準の第1及び/若しくは第2の相補性ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、若しくは約95%の相同性を有しているか、又は1、2、3、4、5、若しくは6個以下のヌクレオチドが、天然若しくは基準の第1及び/若しくは第2の相補性ドメインと異なる。これら実施態様のある特定の態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、化膿レンサ球菌又は黄色ブドウ球菌に由来する第1及び/又は第2の相補性ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、又は約95%相同性を有していてもよい。
【0298】
ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、一切の修飾を含んでいない。他の実施態様では、第1及び/若しくは第2の相補性ドメイン又はその中の一若しくは複数のヌクレオチドは、これらに限定されないが、下記に示されている修飾を含む修飾を有する。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインの一又は複数のヌクレオチドは、2’修飾(例えば、リボースの2’位における修飾)、例えば、2-アセチル化、例えば2’メチル化を含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインの骨格は、ホスホロチオエートで修飾されていてもよい。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、第1及び/若しくは第2の相補性ドメイン又は第1及び/若しくは第2の相補性ドメインを含むgRNAを、より分解され難くするか、又はより生体適合にする、例えば、免疫原性を低下させる。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、各々独立して、1、2、3、4、5、6、7、又は8つ、又はそれよりも多くの修飾を含み、これら実施態様のある特定の態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、各々独立して、それらのそれぞれの5’末端、3’末端、又はそれらの5’及び3’末端の両方の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つの修飾を含む。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、各々独立して、それらのそれぞれの5’末端、3’末端、又はそれらの5’及び3’末端の両方の5個ヌクレオチド以内に修飾を含まない。ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインは、2つ又はそれよりも多くの連続するヌクレオチドに修飾を含む。
【0299】
ある特定の実施態様では、第1及び/又は第2の相補性ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、標的指向性効果を妨害しないように選択される。それは、下記に示されているような系で修飾候補を試験することにより評価することができる。選択された長さ、配列、相補性の程度、又は修飾の程度を有する第1及び/又は第2の相補性ドメイン候補を有するgRNAを、下記に示されているような系で評価することができる。相補性ドメイン候補を、単独で又は一若しくは複数の他の変化候補と共にのいずれかで、選択した標的と共に機能することが知られているgRNA分子/Cas9分子系に配置し、評価することができる。
【0300】
ある特定の実施態様では、第1及び第2の相補性ドメインにより形成される二本鎖領域は、長さが、あらゆるループアウト又は非対合ヌクレオチドは除外して、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、又は22bpである。
【0301】
ある特定の実施態様では、第1及び第2の相補性ドメインは、二本鎖になると、11対のヌクレオチドを含む(例えば、配列番号48のgRNAを参照)。ある特定の実施態様では、第1及び第2の相補性ドメインは、二本鎖になると、15対のヌクレオチドを含む(例えば、配列番号50のgRNAを参照)。ある特定の実施態様では、第1及び第2の相補性ドメインは、二本鎖になると、16対のヌクレオチドを含む(例えば、配列番号51のgRNAを参照)。ある特定の実施態様では、第1及び第2の相補性ドメインは、二本鎖になると、21対のヌクレオチドを含む(例えば、配列番号29のgRNAを参照)。
【0302】
ある特定の実施態様では、一又は複数のヌクレオチドを、第1の相補性ドメインと第2の相補性ドメインとの間で交換して、ポリU配列を除去する。例えば、配列番号48のgRNAのヌクレオチド23及び48又はヌクレオチド26及び45を交換して、それぞれ配列番号49又は31のgRNAを生成してもよい。同様に、配列番号29のgRNAのヌクレオチド23及び39を、ヌクレオチド50及び68と交換して、配列番号30のgRNAを生成してもよい。
【0303】
5.3 連結ドメイン
連結ドメインは、単分子又はキメラgRNAの第1の相補性ドメインと第2の相補性ドメインとの間に配置されており、それらを連結する役目を果たす。
図1B-1Eには、連結ドメインの例が提供されている。ある特定の実施態様では、連結ドメインの一部は、crRNA由来領域に由来し、別の一部は、tracrRNA由来領域に由来する。
【0304】
ある特定の実施態様では、連結ドメインは、第1及び第2の相補性ドメインを共有結合で連結する。これら実施態様のある特定の態様では、連結ドメインは、共有結合からなるか又は共有結合を含む。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、第1及び第2の相補性ドメインを非共有結合で連結する。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、長さが、10個又はそれよりも少数のヌクレオチド、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチドである。他の実施態様では、連結ドメインは、長さが、10個よりも多くのヌクレオチド、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個、又はそれよりも多くのヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、長さが、2-50、2-40、2-30、2-20、2-10、2-5、10-100、10-90、10-80、10-70、10-60、10-50、10-40、10-30、10-20、10-15、20-100、20-90、20-80、20-70、20-60、20-50、20-40、20-30、又は20-25個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、長さが、10+/-5、20+/-5、20+/-10、30+/-5、30+/-10、40+/-5、40+/-10、50+/-5、50+/-10、60+/-5、60+/-10、70+/-5、70+/-10、80+/-5、80+/-10、90+/-5、90+/-10、100+/-5、又は100+/-10個のヌクレオチドである。
【0305】
ある特定の実施態様では、連結ドメインは、天然配列、例えば、第2の相補性ドメインの5’にあるtracrRNAの配列と相同性を共有するか又は由来する。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、本明細書に開示されている連結ドメイン、例えば、
図1B-1Eの連結ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%相同性を有するか、又は1、2、3、4、5、又は6個以下のヌクレオチドが異なる。
【0306】
ある特定の実施態様では、連結ドメインは一切の修飾を含まない。他の実施態様では、連結ドメイン又はその中の一若しくは複数のヌクレオチドは、これらに限定されないが、下記に示されている修飾を含む修飾を有する。ある特定の実施態様では、連結ドメインの一又は複数のヌクレオチドは、2’修飾(例えば、リボースの2’位における修飾)、例えば、2-アセチル化、例えば2’メチル化を含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、連結ドメインの骨格は、ホスホロチオエートで修飾されていてもよい。ある特定の実施態様では、連結ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、連結ドメイン及び/又は連結ドメインを含むgRNAを、より分解され難くするか、又はより生体適合にする、例えば、免疫原性を低下させる。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8つ、又はそれよりも多くの修飾を含み、これら実施態様のある特定の態様では、連結ドメインは、その5’及び/又は3’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つの修飾を含む。ある特定の実施態様では、連結ドメインは、2つ又はそれよりも多くの連続するヌクレオチドに修飾を含む。
【0307】
ある特定の実施態様では、連結ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、標的指向性効果を妨害しないように選択される。それは、下記に示されているような系で修飾候補を試験することにより評価することができる。選択された長さ、配列、相補性の程度、又は修飾の程度を有する連結ドメイン候補を有するgRNAを、下記に示されているような系で評価することができる。連結ドメイン候補を、単独で又は一若しくは複数の他の変化候補と共にのいずれかで、選択した標的と共に機能することが知られているgRNA分子/Cas9分子系に配置し、評価することができる。
【0308】
ある特定の実施態様では、連結ドメインは、二本鎖領域を、典型的には、第1の相補性ドメインの3’末端及び/又は第2の相補性ドメインの5’末端に隣接して、又はその1、2、若しくは3個ヌクレオチド以内に含む。これら実施態様のある特定の態様では、連結領域の二本鎖領域は、長さが、10+/-5、15+/-5、20+/-5、20+/-10、又は30+/-5bpである。ある特定の実施態様では、連結ドメインの二本鎖領域は、長さが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15bpである。ある特定の実施態様では、連結ドメインの二本鎖領域を形成する配列は、完全に相補性である。他の実施態様では、二本鎖領域を形成する配列の一方又は両方は、もう一方の二本鎖配列と相補的でない一又は複数のヌクレオチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8個のヌクレオチド)を含む。
【0309】
5.4 5’伸長ドメイン
ある特定の実施態様では、本明細書で開示されているようなモジュール型gRNAは、5’伸長ドメイン、つまり、第2の相補性ドメインの5’に一又は複数の追加のヌクレオチドを含む(例えば、
図1Aを参照)。ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、長さが、2-10個若しくはそれよりも多くの、2-9、2-8、2-7、2-6、2-5、又は2-4個のヌクレオチドであり、これら実施態様のある特定の態様では、5’伸長ドメインは、長さが、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、又はそれよりも多くのヌクレオチドである。
【0310】
ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインヌクレオチドは、修飾、例えば、下記に提供されているタイプの修飾を含まない。しかしながら、ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、一又は複数の修飾、例えば、より分解を受け難くするか、又はより生体適合にする、例えば、免疫原性を低下させる修飾を含む。例として、5’伸長ドメインの骨格は、ホスホロチオエートで、又は下記に示されているような他の修飾で修飾することができる。ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインのヌクレオチドは、2’修飾(例えば、リボースの2’位における修飾)、例えば、2-アセチル化、例えば2’メチル化、又は下記に示されているような他の修飾を含んでいてもよい。
【0311】
ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、又は8つもの修飾を含むことができる。ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、例えば、モジュール型gRNA分子では、その5’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つもの修飾を含む。ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、例えば、モジュール型gRNA分子では、その3’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つもの修飾を含む。
【0312】
ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、2つの連続するヌクレオチドに、例えば、5’伸長ドメインの5’末端の5個ヌクレオチド以内であるか、5’伸長ドメインの3’末端の5個ヌクレオチド以内であるか、又は5’伸長ドメインの一方の若しくは両方の末端から5個ヌクレオチド若しくはそれよりも離れている2つの連続するヌクレオチドに修飾を含む。ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインの5’末端の5個ヌクレオチド以内、5’伸長ドメインの3’末端の5個ヌクレオチド以内、又は5’伸長ドメインの一方の若しくは両方の末端から5個ヌクレオチド若しくはそれよりも離れている領域内で、どの連続する2つのヌクレオチドも修飾されていない。ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインの5’末端の5個ヌクレオチド以内、5’伸長ドメインの3’末端の5個ヌクレオチド以内、又は5’伸長ドメインの一方の若しくは両方の末端から5個ヌクレオチド若しくはそれよりも離れている領域内で、どのヌクレオチドも修飾されていない。
【0313】
5’伸長ドメインの修飾は、gRNA分子効果を妨害しないように選択することができる。それは、下記に示されているような系で修飾候補を試験するにより評価することができる。選択された長さ、配列、相補性の程度、又は修飾の程度を有する5’伸長ドメイン候補を有するgRNAを、下記に示されているような系で評価することができる。5’伸長ドメイン候補を、単独で又は一若しくは複数の他の変化候補と共にのいずれかで、選択した標的と共に機能することが知られているgRNA分子/Cas9分子系に配置し、評価することができる。
【0314】
ある特定の実施態様では、5’伸長ドメインは、基準の5’伸長ドメイン、例えば、天然の、例えば、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、若しくはS.サーモフィルスの5’伸長ドメイン、又は本明細書に記載の、例えば、
図1A-1Gの5’伸長ドメインと、少なくとも約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、若しくは約95%相同性を有するか、又は1、2、3、4、5、若しくは6個以下のヌクレオチドが異なる。
【0315】
5.5 近位ドメイン
図1A-1Gには、近位ドメインの例が提供されている。
【0316】
ある特定の実施態様では、近位ドメインは、長さが、5-20個又はそれよりも多くのヌクレオチドであり、例えば、長さが、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドである。これら実施態様のある特定の態様では、近位ドメインは、長さが、6+/-2、7+/-2、8+/-2、9+/-2、10+/-2、11+/-2、12+/-2、13+/-2、14+/-2、14+/-2、16+/-2、17+/-2、18+/-2、19+/-2、又は20+/-2個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、近位ドメインは、長さが、5-20、7-18、9-16、又は10-14個のヌクレオチドである。
【0317】
ある特定の実施態様では、近位ドメインは、天然の近位ドメインと相同性を共有していてもよく、又は天然の近位ドメインに由来していてもよい。これら実施態様のある特定の態様では、近位ドメインは、本明細書に開示されている近位ドメイン、例えば、
図1A-1Gに示されているものを含む、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、若しくはS.サーモフィルスの近位ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、若しくは約95%相同性を有するか、又は1、2、3、4、5、若しくは6個以下のヌクレオチドが異なる。
【0318】
ある特定の実施態様では、近位ドメインは一切の修飾を含まない。他の実施態様では、近位ドメイン又はその中の一若しくは複数のヌクレオチドは、これらに限定されないが、下記に示されている修飾を含む修飾を有する。ある特定の実施態様では、近位ドメインの一又は複数のヌクレオチドは、2’修飾(例えば、リボースの2’位における修飾)、例えば、2-アセチル化、例えば2’メチル化を含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、近位ドメインの骨格は、ホスホロチオエートで修飾されていてもよい。ある特定の実施態様では、近位ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、近位ドメイン及び/又は近位ドメインを含むgRNAを、より分解され難くするか、又はより生体適合にする、例えば、免疫原性を低下させる。ある特定の実施態様では、近位ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、又は8つ、又はそれよりも多くの修飾を含み、これら実施態様のある特定の態様では、近位ドメインは、その5’及び/又は3’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つの修飾を含む。ある特定の実施態様では、近位ドメインは、2つ又はそれよりも多くの連続するヌクレオチドに修飾を含む。
【0319】
ある特定の実施態様では、近位ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、標的指向性効果を妨害しないように選択される。それは、下記に示されているような系で修飾候補を試験することにより評価することができる。選択された長さ、配列、相補性の程度、又は修飾の程度を有する近位ドメイン候補を有するgRNAを、下記に示されているような系で評価することができる。近位ドメイン候補を、単独で又は一若しくは複数の他の変化候補と共にのいずれかで、選択した標的と共に機能することが知られているgRNA分子/Cas9分子系に配置し、評価することができる。
【0320】
5.6 尾部ドメイン
広範囲の尾部ドメインが、本明細書に開示されているgRNA分子での使用に好適である。
図1A及び1C-1Gには、そのような尾部ドメインの例が提供されている。
【0321】
ある特定の実施態様では、尾部ドメインは存在しない。他の実施態様では、尾部ドメインは、長さが、1-100個又はそれよりも多くのヌクレオチドであり、例えば、長さが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、長さが、1-5、1-10、1-15、1-20、1-50、10-100、20-100、10-90、20-90、10-80、20-80、10-70、20-70、10-60、20-60、10-50、20-50、10-40、20-40、10-30、20-30、20-25、10-20、又は10-15個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、長さが、5+/-5、10+/-5、20+/-10、20+/-5、25+/-10、30+/-10、30+/-5、40+/-10、40+/-5、50+/-10、50+/-5、60+/-10、60+/-5、70+/-10、70+/-5、80+/-10、80+/-5、90+/-10、90+/-5、100+/-10、又は100+/-5個のヌクレオチドである。ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、天然尾部ドメイン又は天然尾部ドメインの5’末端と相同性を共有していてもよく、又は由来していてもよい。これら実施態様のある特定の態様では、近位ドメインは、本明細書に開示されている尾部ドメイン、例えば、
図1A及び1C-1Gに示されているものを含む、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、又はS.サーモフィルスの天然尾部ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、若しくは約95%相同性を有するか、又は1、2、3、4、5、若しくは6個以下のヌクレオチドが異なる。
【0322】
ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、互いに相補的であり、少なくともいくつかの生理学的条件下で二本鎖領域を形成する配列を含む。これら実施態様のある特定の態様では、尾部ドメインは、尾部二本鎖領域を形成することができる尾部二本鎖ドメインを含む。ある特定の実施態様では、尾部二本鎖領域は、長さが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12bpである。ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、尾部二本鎖ドメインの3’に、二本鎖を形成しない一本鎖ドメインを含む。これら実施態様のある特定の態様では、一本鎖ドメインは、長さが、3-10個のヌクレオチド、例えば、長さが、3、4、5、6、7、8、9、10個、又は4-6個のヌクレオチドである。
【0323】
ある特定の実施態様では、尾部ドメインは一切の修飾を含まない。他の実施態様では、尾部ドメイン又はその中の一若しくは複数のヌクレオチドは、これらに限定されないが、下記に示されている修飾を含む修飾を有する。ある特定の実施態様では、尾部ドメインの一又は複数のヌクレオチドは、2’修飾(例えば、リボースの2’位における修飾)、例えば、2-アセチル化、例えば2’メチル化を含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、尾部ドメインの骨格は、ホスホロチオエートで修飾されていてもよい。ある特定の実施態様では、尾部ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、尾部ドメイン及び/又は尾部ドメインを含むgRNAを、より分解され難くするか、又はより生体適合にする、例えば、免疫原性を低下させる。ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、又は8つ、若しくはそれよりも多くの修飾を含み、これら実施態様のある特定の態様では、尾部ドメインは、その5’及び/又は3’末端の5個ヌクレオチド以内に、1、2、3、又は4つの修飾を含む。ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、2つ又はそれよりも多くの連続するヌクレオチドに修飾を含む。
【0324】
ある特定の実施態様では、尾部ドメインの一又は複数のヌクレオチドの修飾は、標的指向性効果を妨害しないように選択される。それは、下記に示されている修飾候補を試験することにより評価することができる。選択された長さ、配列、相補性の程度、又は修飾の程度を有する尾部ドメイン候補を有するgRNAを、下記に示されているような系を使用して評価することができる。尾部ドメイン候補を、単独で又は一若しくは複数の他の変化候補と共にのいずれかで、選択した標的と共に機能することが知られているgRNA分子/Cas9分子系に配置し、評価することができる。
【0325】
ある特定の実施態様では、尾部ドメインは、インビトロ又はインビボでの転写方法と関連するヌクレオチドを3’末端に含む。gRNAのインビトロ転写にT7プロモーターが使用される場合、これらヌクレオチドは、DNA鋳型の3’末端の前に存在する任意のヌクレオチドであってもよい。ある特定の実施態様では、gRNA分子は、DNA鋳型からインビトロで転写することにより調製される3’ポリA尾部を含む。ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインの5’ヌクレオチドは、グアニンヌクレオチドであり、DNA鋳型は、標的指向性ドメインに対応する配列のすぐ上流に位置するT7プロモーター配列を含み、T7プロモーター配列の3’ヌクレオチドは、グアニンヌクレオチドではない。ある特定の実施態様では、gRNA分子の標的指向性ドメインの5’ヌクレオチドは、グアニンヌクレオチドではなく、DNA鋳型は、標的指向性ドメインに対応する配列のすぐ上流に位置するT7プロモーター配列を含み、T7プロモーター配列の3’ヌクレオチドは、グアニンヌクレオチド以外のヌクレオチドの下流にあるグアニンヌクレオチドである。
【0326】
インビボ転写にU6プロモーターが使用される場合、これらヌクレオチドは、配列UUUUUUであってもよい。H1プロモーターが転写に使用される場合、これらヌクレオチドは、配列UUUUであってもよい。別のpol-IIIプロモーターが使用される場合、これらヌクレオチドは、例えばpol-IIIプロモーターの終止シグナルに応じて、種々の数のウラシル塩基であってもよく、又は別の塩基を含んでいてもよい。
【0327】
ある特定の実施態様では、近位及び尾部ドメインは一緒になって、配列番号32、33、34、35、36、又は37に示されている配列を含むか、からなるか、又はから本質的になる。
【0328】
5.7 例示的な単分子/キメラgRNA
ある特定の実施態様では、本明細書に開示されているようなgRNAは、構造:5’[標的指向性ドメイン]-[第1の相補性ドメイン]-[連結ドメイン]-[第2の相補性ドメイン]-[近位ドメイン]-[尾部ドメイン]-3’を有し、
標的指向性ドメインは、コアドメイン及び任意選択的に二次的ドメインを含み、長さが10-50個のヌクレオチドであり、
第1の相補性ドメインは、長さが5-25個のヌクレオチドであり、ある特定の実施態様では、本明細書で開示されている基準の第1の相補性ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、又は約95%相同性を有し、
連結ドメインは、長さが1-5個のヌクレオチドであり、
第2の相補性ドメインは、長さが5-27個のヌクレオチドであり、ある特定の実施態様では、本明細書で開示されている基準の第2の相補性ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、又は約95%相同性を有し、
近位ドメインは、長さが5-20個のヌクレオチドであり、ある特定の実施態様では、本明細書で開示されている基準の近位ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、又は約95%相同性を有し、
尾部ドメインは存在しないか、又はヌクレオチド配列は、長さが1-50個のヌクレオチドであり、ある特定の実施態様では、本明細書で開示されている基準の尾部ドメインと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、又は約95%相同性を有する。
【0329】
ある特定の実施態様では、本明細書で開示されているような単分子gRNAは、好ましくは、5’から3’に向かって、
例えば10-50個のヌクレオチドを含む標的指向性ドメイン、
例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドを含む第1の相補性ドメイン、
連結ドメイン、
第2の相補性ドメイン、
近位ドメイン、及び
尾部ドメイン
を含み、
(a)近位及び尾部ドメインは、合計で、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含むか、
(b)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドがあるか、又は
(c)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的な、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドがある。
【0330】
ある特定の実施態様では、(a)、(b)、及び/又は(c)の配列は、天然gRNAの対応する配列と、又は本明細書に記載のgRNAと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%相同性を有する。
【0331】
ある特定の実施態様では、近位及び尾部ドメインは、合計で、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0332】
ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドがある。
【0333】
ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドがある。
【0334】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメイン又はその部分と相補的な又は部分的に相補的な、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個ヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個の連続するヌクレオチド)からなるか、から本質的になるか、又は含み、例えば、標的指向性ドメインは、長さが、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドである。これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメインは、標的指向性ドメインの全長、標的ドメインの全長、又は両方にわたって、標的ドメインと相補的である。
【0335】
ある特定の実施態様では、本明細書で開示されている単分子又はキメラgRNA分子(標的指向性ドメイン、第1の相補的ドメイン、連結ドメイン、第2の相補的ドメイン、近位ドメイン、及び任意選択的に尾部ドメインを含む)は、配列番号42に示されているアミノ酸配列を含み、標的指向性ドメインは、20個のN(残基1-20)として列挙されているが、長さは、16から26個までのヌクレオチドの範囲であってもよく、最後の6残基(残基97-102)は、U6プロモーターの終止シグナルであるが、存在していなくともよく、又は数がより少なくてもよい。ある特定の実施態様では、単分子又はキメラgRNA分子は、化膿レンサ球菌gRNA分子である。
【0336】
ある特定の実施態様では、本明細書で開示されている単分子又はキメラgRNA分子(標的指向性ドメイン、第1の相補的ドメイン、連結ドメイン、第2の相補的ドメイン、近位ドメイン、及び任意選択的に尾部ドメインを含む)は、配列番号38に示されているアミノ酸配列を含み、標的指向性ドメインは、20個のN(残基1-20)として列挙されているが、長さは、16から26個までのヌクレオチドの範囲であってもよく、最後の6残基(残基97-102)は、U6プロモーターの終止シグナルであるが、存在していなくともよく、又は数がより少なくてもよい。ある特定の実施態様では、単分子又はキメラgRNA分子は、黄色ブドウ球菌gRNA分子である。
【0337】
例示的キメラgRNAsの配列及び構造は、
図1H-1Iにも示されている。
【0338】
5.8 例示的なモジュール型gRNA
ある特定の実施態様では、本明細書で開示されているモジュール型gRNAは、
好ましくは、5’から3’に向かって、
例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドを含む標的指向性ドメイン、
第1の相補性ドメインを含む第1の鎖;並びに
好ましくは、5’から3’に向かって、
任意選択的に5’伸長ドメイン、
第2の相補性ドメイン、
近位ドメイン、及び
尾部ドメインを含む第2の鎖
を含み、
(a)近位及び尾部ドメインは、合計で、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含むか、
(b)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドがあるか、又は
(c)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的な、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドがある。
【0339】
ある特定の実施態様では、(a)、(b)、又は(c)の配列は、天然gRNAの対応する配列と、又は本明細書に記載のgRNAと、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%相同性を有する。
【0340】
ある特定の実施態様では、近位及び尾部ドメインは、合計で、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0341】
ある特定の実施態様では、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドがある。ある特定の実施態様では、第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的な、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドがある。
【0342】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個の連続するヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個のヌクレオチドである。
【0343】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメイン又はその部分と相補的な、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個ヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26個の連続するヌクレオチド)からなるか、から本質的になるか、又は含む。これら実施態様のある特定の態様では、標的指向性ドメインは、標的指向性ドメインの全長、標的ドメインの全長、又は両方にわたって、標的ドメインと相補的である。
【0344】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する16個のヌクレオチド(例えば、16個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが16個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0345】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する16個のヌクレオチド(例えば、16個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが16個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0346】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する16個のヌクレオチド(例えば、16個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが16個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0347】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する17個のヌクレオチド(例えば、17個の連続ヌクレオチド)を有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが17個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0348】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する17個のヌクレオチド(例えば、17個の連続ヌクレオチド)を有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが17個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0349】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する17個のヌクレオチド(例えば、17個の連続ヌクレオチド)を有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが17個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0350】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する18個のヌクレオチド(例えば、18個の連続ヌクレオチド)を有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが18個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0351】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する18個のヌクレオチド(例えば、18個の連続ヌクレオチド)を有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが18個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0352】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する18個のヌクレオチド(例えば、18個の連続ヌクレオチド)を有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが18個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0353】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する19個のヌクレオチド(例えば、19個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが19個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0354】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する19個のヌクレオチド(例えば、19個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが19個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0355】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する19個のヌクレオチド(例えば、19個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが19個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0356】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する20個のヌクレオチド(例えば、20個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが20個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0357】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する20個のヌクレオチド(例えば、20個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが20個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0358】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する20個のヌクレオチド(例えば、20個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが20個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0359】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する21個のヌクレオチド(例えば、21個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが21個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0360】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する21個のヌクレオチド(例えば、21個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが21個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0361】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する21個のヌクレオチド(例えば、21個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが21個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0362】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する22個のヌクレオチド(例えば、22個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが22個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0363】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する22個のヌクレオチド(例えば、22個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが22個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0364】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する22個のヌクレオチド(例えば、22個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが22個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0365】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する23個のヌクレオチド(例えば、23個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが23個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0366】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する23個のヌクレオチド(例えば、23個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが23個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0367】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する23個のヌクレオチド(例えば、23個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが23個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0368】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する24個のヌクレオチド(例えば、24個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが24個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0369】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する24個のヌクレオチド(例えば、24個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが24個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0370】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する24個のヌクレオチド(例えば、24個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが24個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0371】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する25個のヌクレオチド(例えば、25個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが25個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0372】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する25個のヌクレオチド(例えば、25個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが25個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0373】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する25個のヌクレオチド(例えば、25個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが25個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0374】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する26個のヌクレオチド(例えば、26個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが26個ヌクレオチドであり、近位及び尾部ドメインは、合計すると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドを含む。
【0375】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する26個のヌクレオチド(例えば、26個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが26個ヌクレオチドであり、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53個のヌクレオチドが存在する。
【0376】
ある特定の実施態様では、標的指向性ドメインは、標的ドメインと相補性を有する26個のヌクレオチド(例えば、26個の連続ヌクレオチド)を含むか、有するか、又はからなり、例えば、標的指向性ドメインは、長さが26個ヌクレオチドであり、第1の相補性ドメインの対応するヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドの3’側に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54個のヌクレオチドが存在する。
【0377】
5.9 gRNA送達
本明細書で提供されている方法のある特定の実施態様では、本方法は、本明細書に記載のような一又は複数の(例えば、2、3、又は4つの)gRNA分子を送達することを含む。これら実施態様のある特定の態様では、gRNA分子は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は吸入により送達される。ある特定の実施態様では、gRNA分子は、ゲノム編集系のCas9分子と共に送達される。
【0378】
6. gRNAを設計するための方法
本明細書に記載されているgRNAに使用するための標的指向性ドメインを選択、設計、及び検証するための方法が提供される。また、gRNAに組み込むための例示的な標的指向性ドメインが、本明細書で提供されている。
【0379】
標的配列を選択及び検証するための方法並びにオフターゲット分析は、以前に記載されている(例えば、Mali 2013; Hsu 2013; Fu 2014; Heigwer 2014; Bae 2014; Xiao 2014を参照)。例えば、ソフトウェアツールを使用して、ユーザの標的配列に対応する潜在的標的指向性ドメインの選択を最適化し、例えば、ゲノムにわたる総オフターゲット活性を最小限に抑えることができる。オフターゲット活性は、切断以外であってもよい。化膿レンサ球菌Cas9を使用して考え得る各標的指向性ドメインを選択する場合、ツールにより、ある特定の個数までの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個)ミスマッチ塩基対を含むゲノムにわたるオフターゲット配列(NAG又はNGG PAMのいずれかに先行する)を全て同定することができる。各オフターゲット配列の切断効率は、例えば、実験的に導出した重み付きスキームを使用して予測することができる。その後、考え得る各標的指向性ドメインを、その総予測オフターゲット切断に応じてランク付けする。上位ランクの標的指向性ドメインは、最大のオンターゲット切断及び最小のオフターゲット切断を有する可能性が高いものである。また、他の機能、例えば、CRISPR構築用の自動試薬設計、オンターゲットSurveyorアッセイ用のプライマー設計、及び次世代配列決定法によるオフターゲット切断のハイスループット検出及び定量化用のプライマー設計が、ツールに含まれていてもよい。標的指向性ドメイン候補及びそれら標的指向性ドメインを含むgRNAは、当技術分野で公知であるか及び/又は本明細書に示されているような方法を使用して、機能的に評価することができる。
【0380】
非限定的な例として、DNA配列探索アルゴリズムを使用して、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、及び髄膜炎菌Cas9と共に使用するためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定した。化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌標的の場合、17量体及び20量体標的指向性ドメインを設計し、黄色ブドウ球菌標的の場合は、18量体、19量体、20量体、21量体、22量体、23量体、及び24量体標的指向性ドメインを設計した。gRNA設計は、公開ツールcas-offinder(Bae 2014)に基づく特注gRNA設計ソフトウェアを使用して実施した。このソフトウェアは、ガイドのゲノムワイドオフターゲット傾向を算出した後、それらに得点を付ける。典型的には、17から24個までの長さの範囲のガイドの場合、完全一致から7つのミスマッチまでの範囲の一致が考慮される。オフターゲット部位を計算的決定したら、ウェブインターフェースを使用して、各ガイドの合計スコアを算出し、表形式出力に要約する。PAM配列に隣接する潜在的標的部位の同定することに加えて、ソフトウェアは、選択した標的部位と、1、2、3つ、又は3つよりも多くのヌクレオチドが異なる全てのPAM隣接配列も同定する。各遺伝子のゲノムDNA配列をUCSCゲノムブラウザから得、公的に入手可能なRepeatMaskerプログラムを使用して、配列を反復エレメントについてスクリーニングした。RepeatMaskerは、反復エレメント及び複雑さの低い領域について、入力DNA配列を探索する。出力は、所与のクエリー配列に存在する反復に関する詳細な注釈である。
【0381】
同定後、標的指向性ドメインを、標的部位との距離、それらの直交性、及び5’Gの存在に基づいて(関連するPAM、例えば、野生型の化膿レンサ球菌Cas9分子の場合は、NGG PAM;野生型の黄色ブドウ球菌Cas9分子の場合は、NNGRRT(配列番号204)若しくはNNGRRV(配列番号205)PAM、又は野生型の髄膜炎菌Cas9分子の場合は、NNNNGATT若しくはNNNNGCTT PAM;化膿レンサ球菌Cas9 EQR変異体の場合は、NGAG、NGCG、NGGG、NGTG、NGAA、NGAT、及びNGACからなる群から選択されるPAM;或いは化膿レンサ球菌Cas9 VRER変異体の場合は、NGCG、NGCA、NGCT、及びNGCCからなる群から選択されるPAMを含む、ヒトゲノムにおける類似一致を同定することに基づいて)ティアへとランク付けした。直交性は、標的配列とのミスマッチ数が最少であるヒトゲノムにおける配列の数を指す。「高レベルの直交性」又は「良好な直交性」は、例えば、ヒトゲノムに目的標的の他に同一配列を有しておらず、且つ標的配列に1つ又は2つのミスマッチを含む一切の配列を有していない20量体標的指向性ドメインを指す場合がある。良好な直交性を有する標的指向性ドメインは、オフターゲットDNA切断を最小限にするために選択される。
【0382】
標的指向性ドメインは、単一gRNAヌクレアーゼ切断及び二重gRNA対「ニッカーゼ」戦略の両方で同定された。標的指向性ドメインを選択するための、及びどの標的指向性ドメインを二重gRNA対「ニッカーゼ」戦略に使用することができるかを決定するための基準は、以下の2点を考慮することに基づく。
(1)PAMが外側を向き、D10A Cas9ニッカーゼによる切断が、5’オーバーハングをもたらすことができるように、標的指向性ドメイン対がDNAに配向されていること、及び
(2)二重ニッカーゼ対による切断が、妥当な頻度で介在配列全体の欠失をもたらすことになると想定されること。しかしながら、また、二重ニッカーゼ対による切断は、gRNAのうちの1つのみの部位にインデル突然変異をもたらす場合もある。対メンバー候補が配列全体を除去する効率の程度を、1つの標的指向性ドメインの標的部位にインデル突然変異が引き起こされることと比較して、試験することができる。
【0383】
6.1 HSV-1 RS1遺伝子のノックアウトに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-1 RS1遺伝子をノックアウトするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0384】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌では、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であることに基づいて選択した。
【0385】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRT(配列番号204)であることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0386】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表1に要約されている。
【0387】
6.2 HSV-2 RS1遺伝子のノックアウトに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-2 RS1遺伝子をノックアウトするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0388】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌では、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であることに基づいて選択した。
【0389】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0390】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表2に要約されている。
【0391】
6.3 HSV-1 RL2遺伝子のノックアウトに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-1 RL2遺伝子をノックアウトするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0392】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌では、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であることに基づいて選択した。
【0393】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0394】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表3に要約されている。
【0395】
6.4 HSV-2 RL2遺伝子のノックアウトに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-2 RL2遺伝子をノックアウトするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0396】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌では、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であることに基づいて選択した。
【0397】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、標的部位(例えば、開始コドン)の500bp以内(例えば、下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位(例えば、開始コドン)との距離、例えば、コード配列の残り部分以内であること、例えば、コード配列の最初の500bpの下流(例えば、+500(開始コドンに対して)から終止コドンまでの任意の位置)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0398】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表4に要約されている。
【0399】
6.5 HSV-1 LATイントロンのノックアウトに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-1 LATイントロンをノックアウトするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0400】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であることに基づいて選択した。
【0401】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0402】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表5に要約されている。
【0403】
6.6 HSV-2 LATイントロンのノックアウトに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-2 LATイントロン遺伝子をノックアウトするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0404】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であることに基づいて選択した。
【0405】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの最初の500bp以内であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、LATイントロンの残りの部分以内であること、例えば、LATイントロンの最初の500bpの下流であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0406】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表6に要約されている。
【0407】
6.7 HSV-1 RS1遺伝子のノックダウンに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-1 RS1遺伝子をノックダウンするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0408】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長することに基づいて選択した。
【0409】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0410】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表7に要約されている。
【0411】
6.8 HSV-2 RS1遺伝子のノックダウンに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-2 RS1遺伝子をノックダウンするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0412】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長することに基づいて選択した。
【0413】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長すること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0414】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表8に要約されている。
【0415】
6.9 HSV-1 RL2遺伝子のノックダウンに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-1 RL2遺伝子をノックダウンするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0416】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長することに基づいて選択した。
【0417】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0418】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表9に要約されている。
【0419】
6.10 HSV-2 RL2遺伝子のノックダウンに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-2 RL2遺伝子をノックダウンするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長することに基づいて選択した。
【0420】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長すること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、開始コドンの追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、開始コドンの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0421】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表10に要約されている。
【0422】
6.11 HSV-1 LAT遺伝子のノックダウンに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-1 LAT遺伝子をノックダウンするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0423】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長することに基づいて選択した。
【0424】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0425】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表11に要約されている。
【0426】
6.12 HSV-2 LAT遺伝子のノックダウンに使用される標的指向性ドメイン
本明細書に開示されている方法を用いてHSV-2 LAT遺伝子をノックダウンするためのgRNAに使用される標的指向性ドメインを同定し、化膿レンサ球菌では5つのティア、黄色ブドウ球菌では7つのティア、及び髄膜炎菌では5つのティアへとランク付けした。
【0427】
化膿レンサ球菌及び髄膜炎菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)高レベルの直交性に基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)5’Gの存在に基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長することに基づいて選択した。
【0428】
黄色ブドウ球菌の場合、ティア1のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、(3)5’Gの存在、及び(4)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、(2)高レベルの直交性、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア3のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア4のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。ティア5のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、(2)5’Gの存在、及び(3)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア6のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRTであることに基づいて選択した。ティア7のgRNA分子の標的指向性ドメインは、(1)標的部位との距離、例えば、転写開始点(TSS)の追加の500bp以内(例えば、上流又は下流)であること、例えば、TSSの1kb上流及び下流に伸長すること、及び(2)PAMがNNGRRVであることに基づいて選択した。なお、ティアは、非包括的である(各gRNAは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づくgRNAは同定されなかった。
【0429】
なお、ティアは、非包括的である(各標的指向性ドメインは、戦略毎に1回だけ列挙されている)。ある特定の例では、特定のティアの基準に基づく標的指向性ドメインは同定されなかった。同定された標的指向性ドメインは、下記の表12に要約されている。
【0430】
本明細書に記載されているgRNA分子の一又は複数、例えば、表1-12に記載されている標的指向性ドメインを含むものを、少なくとも1つのCas9分子(例えば、化膿レンサ球菌Cas9分子及び/又は黄色ブドウ球菌Cas9分子)と共に使用し、一本鎖又は二本鎖切断を形成することができ、例えば、Cas9ニッカーゼ分子と共に使用して、一本鎖切断を生成するか、又はCas9ヌクレアーゼ分子と共に使用して、二本鎖切断を生成することができる。
【0431】
ある特定の実施態様では、単一gRNA分子を使用し、Cas9ニッカーゼを標的として、RS1、RL2、又はLAT標的位置の近傍に一本鎖切断を生成する場合、例えば、このgRNAは、RS1、RL2、又はLAT標的位置の上流(例えば、上流500bp以内)又は下流(例えば、下流500bp以内)のいずれかを標的とするために使用される。
【0432】
ある特定の実施態様では、単一gRNA分子を使用し、Cas9ヌクレアーゼを標的として、RL2、LAT、又はRS1標的位置の近傍に二本鎖切断を生成する場合、例えば、このgRNAは、RS1、RL2、又はLAT標的位置の上流(例えば、上流500bp以内)又は下流(例えば、下流500bp以内)のいずれかを標的とするために使用される。
【0433】
ある特定の実施態様では、2つ又はそれよりも多くの(例えば、3つ又は4つの)gRNA分子を、1つのCas9分子又はCas9-融合タンパク質と共に使用する。ある特定の実施態様では、2つ又はそれよりも多くの(例えば、3つ又は4つの)gRNAを、2つ又はそれよりも多くのCas9分子又はCas9-融合タンパク質と共に使用する場合、少なくとも1つのCas9分子は、他のCas9分子とは異なる種に由来する。2つのgRNAが、2つのCas9分子を標的とするために使用されるように設計されている場合、1つのCas9は、一方の種であってもよく、第2のCas9は、異なる種に由来していてもよい。必要に応じて、両方のCas9種を使用して、一本鎖又は二本鎖切断を生成する。
【0434】
表1-12に記載されている任意の上流gRNAは、表1-12に記載されている任意の下流gRNAと対を形成することができる。一方の種のCas9と共に使用するために設計されている上流gRNAが、異なる種に由来するCas9と共に使用するために設計されている下流gRNAと対を形成する場合、必要に応じて、両方のCas9種を使用して、一本鎖又は二本鎖切断を生成する。
【0435】
7.Cas9分子
本明細書に記載される方法及び組成物において、様々な種のCas9分子を使用することができる。本明細書における開示の多くはS.ピオゲネス、S.アウレウス及び髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のCas9分子を対象とするが、本明細書に列挙された他の種のCas9タンパク質に由来する、又はそれらに基づくCas9分子も同様に使用することができる。これらとしては、例えば、アシドボラックス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、アクチノバチルス・スイス(Actinobacillus suis)、アクチノミセス属(Actinomyces)種、シクリフィラス・デニトリフィカンス(cycliphilus denitrificans)、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・スミチイ(Bacillus smithii)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス属(Bacteroides)種、ブラストピレルラ・マリーナ(Blastopirellula marina)、ブラジリゾビウム属(Bradyrhizobium)種、ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、カンジダトス・プニセイスピリラム(Candidatus Puniceispirillum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム・アクコレンス(Corynebacterium accolens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、コリネバクテリウム・マツルショッティ(Corynebacterium matruchotii)、ディノロセオバクター・シバエ(Dinoroseobacter shibae)、ユーバクテリウム・ドリクム(Eubacterium dolichum)、ガンマプロテオバクテリア(gamma proteobacterium)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・スプトルム(Haemophilus sputorum)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter canadensis)、ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、イリオバクター・ポリトロプス(Ilyobacter polytropus)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア科(Listeriaceae bacterium)細菌、メチロシスティス属(Methylocystis)種、メチロサイナス・トリコスポリウム(Methylosinus trichosporium)、モビルンカス・ムリエリス(Mobiluncus mulieris)、ナイセリア・バシリフォルミス(Neisseria bacilliformis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・フラベッセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア属(Neisseria)種、ナイセリア・ワズワージイ(Neisseria wadsworthii)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)種、パルビバクラム・ラバメンチボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ファスコラークトバクテリウム・スクシナツテンス(Phascolarctobacterium succinatutens)、ラルストニア・シジギイ(Ralstonia syzygii)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドブラム属(Rhodovulum)種、シモンシエラ・ムエレリ(Simonsiella muelleri)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)種、スポロラクトバチルス・ビネアエ(Sporolactobacillus vineae)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、連鎖球菌属(Streptococcus)種、サブドリグラヌラム(Subdoligranulum)種、チストレラ・モビリス(Tistrella mobilis)、トレポネーマ属(Treponema)種、又はフェルミネフォロバクター・エイセニアエ(Verminephrobacter eiseniae)からのCas9分子が挙げられる。
【0436】
7.1 Cas9ドメイン
結晶構造は、ガイドRNA(例えば、crRNA及びtracrRNAの合成融合体)(Nishimasu 2014;Anders 2014)を用いて、2つの異なる天然細菌のCas9分子(Jinek 2014)及びS.ピオゲネスのCas9に関して決定された。
【0437】
天然Cas9分子は、2つのローブ:認識(REC)ローブ及びヌクレアーゼ(NUC)ローブを含み、これらのそれぞれは、本明細書に記載されるドメインをさらに含む。
図8A-8Bは、一次構造での重要なCas9ドメインの構成の概略図を提供する。この開示にわたり使用される各ドメインに包含されるドメインの名称及びアミノ酸残基の番号付けは、上述した通りである(Nishimasu 2014)。アミノ酸残基の番号付けは、S.ピオゲネスからのCas9を参照してなされている。
【0438】
RECローブは、アルギニンリッチの架橋へリックス(BH)、REC1ドメイン、及びREC2ドメインを含む。RECローブは、他の公知のタンパク質と構造的な類似性を共有しておらず、これは、RECローブがCas9特異的な機能性ドメインであることを示す。BHドメインは、長いαへリックスであり、アルギニンリッチな領域であり、S.ピオゲネスのCas9の配列のアミノ酸60-93を含む。REC1ドメインは、リピートの認識:アンチリピート二重鎖、例えばgRNA又はtracrRNAの認識にとって重要であり、したがって、標的配列を認識することによるCas9活性にとって重要である。REC1ドメインは、S.ピオゲネスのCas9の配列のアミノ酸94から179及び308から717に、2つのREC1モチーフを含む。これらの2つのREC1ドメインは、直鎖状の一次構造ではREC2ドメインで分離されているが、三次構造にアセンブルされてREC1ドメインを形成する。またREC2ドメイン又はその部分も、リピート:アンチリピート二重鎖の認識において役割を果たす場合がある。REC2ドメインは、S.ピオゲネスのCas9の配列のアミノ酸180-307を含む。
【0439】
NUCローブは、RuvCドメイン、HNHドメイン、及びPAM相互作用(PI)ドメインを含む。RuvCドメインは、レトロウイルスのインテグラーゼスーパーファミリーメンバーと構造的な類似性を共有しており、一本鎖、例えば標的核酸分子の非相補鎖を切断する。RuvCドメインは、S.ピオゲネスのCas9の配列のそれぞれアミノ酸1-59、718-769、及び909-1098における、3つのスプリットRuvCモチーフ(RuvCI、RuvCII、及びRuvCIII、これらは、一般的に当該技術分野でRuvCIドメイン、又はN末端RuvCドメイン、RuvCIIドメイン、及びRuvCIIIドメインと称されることが多い)からアセンブルされる。REC1ドメインと類似して、3つのRuvCモチーフは、一次構造では、他のドメインで直線的に分離されているが、しかしながら三次構造では、3つのRuvCモチーフがアセンブルし、RuvCドメインを形成している。HNHドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと構造的な類似性を共有しており、一本鎖、例えば標的核酸分子の相補鎖を切断する。HNHドメインは、RuvCIIモチーフとIIIモチーフとの間に存在しており、S.ピオゲネスのCas9の配列のアミノ酸775-908を構成する。PIドメインは、標的核酸分子のPAMと相互作用しており、S.ピオゲネスのCas9の配列のアミノ酸1099-1368を構成する。
【0440】
7.1.1 RuvC様ドメイン及びHNH様ドメイン
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、HNH様ドメイン及びRuvC様ドメインを含み、これらの実施態様の特定のものにおいて、切断活性は、RuvC様ドメイン及びHNH様ドメインに依存する。Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、RuvC様ドメイン及びHNH様ドメインの一又は複数を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、RuvC様ドメイン、例えば後述されるRuvC様ドメイン、及び/又はHNH様ドメイン、例えば後述されるHNH様ドメインを含む。
【0441】
RuvC様ドメイン
ある特定の実施態様において、RuvC様ドメインは、一本鎖、例えば標的核酸分子の非相補鎖を切断する。Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、1を超えるRuvC様ドメイン(例えば、1、2、3又はそれより多くのRuvC様ドメイン)を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、RuvC様ドメインは、少なくとも5、6、7、8アミノ酸の長さであるが、20、19、18、17、16又は15アミノ酸以下の長さである。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、約10から20アミノ酸、例えば約15アミノ酸の長さのN末端RuvC様ドメインを含む。
【0442】
7.1.2 N末端RuvC様ドメイン
いくつかの天然Cas9分子は、1を超えるRuvC様ドメインを含み、切断は、N末端RuvC様ドメインに依存する。したがって、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、N末端RuvC様ドメインを含んでいてもよい。例示的なN末端RuvC様ドメインは、後述される。
【0443】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式I:
D-X1-G-X2-X3-X4-X5-G-X6-X7-X8-X9(配列番号20)
[式中、
X1は、I、V、M、L、及びTから選択され(例えば、I、V、及びLから選択され);
X2は、T、I、V、S、N、Y、E、及びLから選択され(例えば、T、V、及びIから選択され);
X3は、N、S、G、A、D、T、R、M、及びFから選択され(例えば、A又はN);
X4は、S、Y、N、及びFから選択され(例えば、S);
X5は、V、I、L、C、T、及びFから選択され(例えば、V、I及びLから選択され);
X6は、W、F、V、Y、S、及びLから選択され(例えば、W);
X7は、A、S、C、V、及びGから選択され(例えば、A及びSから選択され);
X8は、V、I、L、A、M、及びHから選択され(例えば、V、I、M及びLから選択され);
X9は、あらゆるアミノ酸から選択されるか又は存在しない(例えば、T、V、I、L、Δ、F、S、A、Y、M、及びRから選択されるか、又は例えば、T、V、I、L、及びΔから選択される)]
のアミノ酸配列を含むN末端RuvC様ドメインを含む。
【0444】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、配列番号20の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0445】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、切断能を有する。他の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、切断能がない。
【0446】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式II:
D-X1-G-X2-X3-S-X5-G-X6-X7-X8-X9、(配列番号21)
[式中、
X1は、I、V、M、L、及びTから選択され(例えば、I、V、及びLから選択され);
X2は、T、I、V、S、N、Y、E、及びLから選択され(例えば、T、V、及びIから選択され);
X3は、N、S、G、A、D、T、R、M及びFから選択され(例えば、A又はN);
X5は、V、I、L、C、T、及びFから選択され(例えば、V、I及びLから選択され);
X6は、W、F、V、Y、S、及びLから選択され(例えば、W);
X7は、A、S、C、V、及びGから選択され(例えば、A及びSから選択され);
X8は、V、I、L、A、M、及びHから選択され(例えば、V、I、M及びLから選択され);
X9は、あらゆるアミノ酸から選択されるか又は存在しない(例えば、T、V、I、L、Δ、F、S、A、Y、M、及びRから選択されるか、又は例えばT、V、I、L、及びΔから選択される)]
のアミノ酸配列を含むN末端RuvC様ドメインを含む。
【0447】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、配列番号21の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0448】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、式III:
D-I-G-X2-X3-S-V-G-W-A-X8-X9(配列番号22)
[式中、
X2は、T、I、V、S、N、Y、E、及びLから選択され(例えば、T、V、及びIから選択され);
X3は、N、S、G、A、D、T、R、M、及びFから選択され(例えば、A又はN);
X8は、V、I、L、A、M、及びHから選択され(例えば、V、I、M及びLから選択され);
X9は、あらゆるアミノ酸から選択されるか又は存在しない(例えば、T、V、I、L、Δ、F、S、A、Y、M、及びRから選択されるか、又は例えばT、V、I、L、及びΔから選択される)]
のアミノ酸配列を含む。
【0449】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、配列番号22の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0450】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、式IV:
D-I-G-T-N-S-V-G-W-A-V-X(配列番号23)
[式中、
Xは、非極性アルキルアミノ酸又はヒドロキシルアミノ酸であり、例えば、Xは、V、I、L、及びTから選択される(例えば、Cas9分子は、
図2A-2Gに示されるN末端RuvC様ドメイン(Yとして描写されている)を含んでいてもよい)]
のアミノ酸配列を含む。
【0451】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、配列番号23の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0452】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、本明細書で開示された、例えば
図3A-3Bで開示されたN末端RuvC様ドメインの配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。ある特定の実施態様において、
図3A-3Bで同定された高度に保存された残基の1つ、2つ、3つ又は全ては、存在する。
【0453】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインは、本明細書で開示された、例えば
図4A-4Bで開示されたN末端RuvC様ドメインの配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。ある特定の実施態様において、
図4A-4Bで同定された高度に保存された残基の1つ、2つ、又は全ては、存在する。
【0454】
7.1.3 追加のRuvC様ドメイン
N末端RuvC様ドメインに加えて、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、一又は複数の追加のRuvC様ドメインを含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、2つの追加のRuvC様ドメインを含む。ある特定の実施態様において、追加のRuvC様ドメインは、少なくとも5アミノ酸の長さ、例えば15アミノ酸未満の長さ、例えば、5から10アミノ酸の長さ、例えば、8アミノ酸の長さである。
【0455】
追加のRuvC様ドメインは、式V:
I-X1-X2-E-X3-A-R-E(配列番号15)
[式中、
X1は、V又はHである;
X2は、I、L又はVである(例えば、I又はV);及び
X3は、M又はTである]
のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0456】
ある特定の実施態様において、追加のRuvC様ドメインは、式VI:
I-V-X
2-E-M-A-R-E(配列番号16)
[式中、
X
2は、I、L又はVである(例えば、I又はV)(例えば、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gに示される追加のRuvC様ドメイン(Bとして描写されている)を含んでいてもよい)]
のアミノ酸配列を含む。
【0457】
追加のRuvC様ドメインは、式VII:
H-H-A-X1-D-A-X2-X3(配列番号17)
[式中、
X1は、H又はLである;
X2は、R又はVであり;
X3は、E又はVである]
のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0458】
ある特定の実施態様において、追加のRuvC様ドメインは、アミノ酸配列:H-H-A-H-D-A-Y-L(配列番号18)を含む。
【0459】
ある特定の実施態様において、追加のRuvC様ドメインは、配列番号15-18の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0460】
ある特定の実施態様において、N末端RuvC様ドメインに隣接する配列は、式VIII:
K-X1’-Y-X2’-X3’-X4’-Z-T-D-X9’-Y(配列番号19)
[式中、
X1’は、K及びPから選択され;
X2’は、V、L、I、及びFから選択され(例えば、V、I及びL);
X3’は、G、A及びSから選択され(例えば、G);
X4’は、L、I、V、及びFから選択され(例えば、L);
X9’は、D、E、N、及びQから選択され;
Zは、N末端RuvC様ドメインであり、例えば、上述したように、例えば5から20アミノ酸を有するN末端RuvC様ドメインである]
のアミノ酸配列を有する。
【0461】
7.1.4 HNH様ドメイン
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、一本鎖相補的ドメイン、例えば、二本鎖核酸分子の相補鎖を切断する。ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、少なくとも15、20、又は25アミノ酸の長さ、ただし40、35、又は30アミノ酸以下の長さであり、例えば、20から35アミノ酸の長さ、例えば25から30アミノ酸の長さである。例示的なHNH様ドメインは、後述される。
【0462】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式IX:
X1-X2-X3-H-X4-X5-P-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-N-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-N(配列番号25)
[式中、
X1は、D、E、Q及びNから選択され(例えば、D及びE);
X2は、L、I、R、Q、V、M、及びKから選択され;
X3は、D及びEから選択され;
X4は、I、V、T、A、及びLから選択され(例えば、A、I及びV);
X5は、V、Y、I、L、F、及びWから選択され(例えば、V、I及びL);
X6は、Q、H、R、K、Y、I、L、F、及びWから選択され;
X7は、S、A、D、T、及びKから選択され(例えば、S及びA);
X8は、F、L、V、K、Y、M、I、R、A、E、D、及びQから選択され(例えば、F);
X9は、L、R、T、I、V、S、C、Y、K、F、及びGから選択され;
X10は、K、Q、Y、T、F、L、W、M、A、E、G、及びSから選択され;
X11は、D、S、N、R、L、及びTから選択され(例えば、D);
X12は、D、N及びSから選択され;
X13は、S、A、T、G、及びRから選択され(例えば、S);
X14は、I、L、F、S、R、Y、Q、W、D、K、及びHから選択され(例えば、I、L及びF);
X15は、D、S、I、N、E、A、H、F、L、Q、M、G、Y、及びVから選択され;
X16は、K、L、R、M、T、及びFから選択され(例えば、L、R及びK);
X17は、V、L、I、A及びTから選択され;
X18は、L、I、V、及びAから選択され(例えば、L及びI);
X19は、T、V、C、E、S、及びAから選択され(例えば、T及びV);
X20は、R、F、T、W、E、L、N、C、K、V、S、Q、I、Y、H、及びAから選択され;
X21は、S、P、R、K、N、A、H、Q、G、及びLから選択され;
X22は、D、G、T、N、S、K、A、I、E、L、Q、R、及びYから選択され;及び
X23は、K、V、A、E、Y、I、C、L、S、T、G、K、M、D、及びFから選択される]
のアミノ酸配列を有するHNH様ドメインを含む。
【0463】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、配列番号25の配列と、少なくとも1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0464】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、切断能を有する。ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、切断能がない。
【0465】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式X:
X1-X2-X3-H-X4-X5-P-X6-S-X8-X9-X10-D-D-S-X14-X15-N-K-V-L-X19-X20-X21-X22-X23-N(配列番号26)
[式中、
X1は、D及びEから選択され;
X2は、L、I、R、Q、V、M、及びKから選択され;
X3は、D及びEから選択され;
X4は、I、V、T、A、及びLから選択され(例えば、A、I及びV);
X5は、V、Y、I、L、F、及びWから選択され(例えば、V、I及びL);
X6は、Q、H、R、K、Y、I、L、F、及びWから選択され;
X8は、F、L、V、K、Y、M、I、R、A、E、D、及びQから選択され(例えば、F);
X9は、L、R、T、I、V、S、C、Y、K、F、及びGから選択され;
X10は、K、Q、Y、T、F、L、W、M、A、E、G、及びSから選択され;
X14は、I、L、F、S、R、Y、Q、W、D、K及びHから選択され(例えば、I、L及びF);
X15は、D、S、I、N、E、A、H、F、L、Q、M、G、Y、及びVから選択され;
X19は、T、V、C、E、S、及びAから選択され(例えば、T及びV);
X20は、R、F、T、W、E、L、N、C、K、V、S、Q、I、Y、H、及びAから選択され;
X21は、S、P、R、K、N、A、H、Q、G、及びLから選択され;
X22は、D、G、T、N、S、K、A、I、E、L、Q、R、及びYから選択され;及び
X23は、K、V、A、E、Y、I、C、L、S、T、G、K、M、D、及びFから選択される]
のアミノ酸配列を含むHNH様ドメインを含む。
【0466】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、配列番号26の配列と、1、2、3、4、又は5つの残基が異なっている。
【0467】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式XI:
X1-V-X3-H-I-V-P-X6-S-X8-X9-X10-D-D-S-X14-X15-N-K-V-L-T-X20-X21-X22-X23-N(配列番号27)
[式中、
X1は、D及びEから選択され;
X3は、D及びEから選択され;
X6は、Q、H、R、K、Y、I、L、及びWから選択され;
X8は、F、L、V、K、Y、M、I、R、A、E、D、及びQから選択され(例えば、F);
X9は、L、R、T、I、V、S、C、Y、K、F、及びGから選択され;
X10は、K、Q、Y、T、F、L、W、M、A、E、G、及びSから選択され;
X14は、I、L、F、S、R、Y、Q、W、D、K、及びHから選択され(例えば、I、L及びF);
X15は、D、S、I、N、E、A、H、F、L、Q、M、G、Y、及びVから選択され;
X20は、R、F、T、W、E、L、N、C、K、V、S、Q、I、Y、H、及びAから選択され;
X21は、S、P、R、K、N、A、H、Q、G、及びLから選択され;
X22は、D、G、T、N、S、K、A、I、E、L、Q、R、及びYから選択され;及び
X23は、K、V、A、E、Y、I、C、L、S、T、G、K、M、D、及びFから選択される]
のアミノ酸配列を含むHNH様ドメインを含む。
【0468】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、配列番号27の配列と、1、2、3、4、又は5つの残基が異なっている。
【0469】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式XII:
D-X2-D-H-I-X5-P-Q-X7-F-X9-X10-D-X12-S-I-D-N-X16-V-L-X19-X20-S-X22-X23-N(配列番号28)
[式中、
X2は、I及びVから選択され;
X5は、I及びVから選択され;
X7は、A及びSから選択され;
X9は、I及びLから選択され;
X10は、K及びTから選択され;
X12は、D及びNから選択され;
X16は、R、K、及びLから選択され;
X19は、T及びVから選択され;
X20は、S、及びRから選択され;
X22は、K、D、及びAから選択され;
X23は、E、K、G、及びNから選択される(例えば、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、本明細書に記載されるHNH様ドメインを含んでいてもよい)]
のアミノ酸配列を有するHNH様ドメインを含む。
【0470】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、配列番号28の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。
【0471】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、式XIII:
L-Y-Y-L-Q-N-G-X1’-D-M-Y-X2’-X3’-X4’-X5’-L-D-I-X6’-X7’-L-S-X8’-Y-Z-N-R-X9’-K-X10’-D-X11’-V-P(配列番号24)
[式中、
X1’は、K及びRから選択され;
X2’は、V及びTから選択され;
X3’は、G及びDから選択され;
X4’は、E、Q及びDから選択され;
X5’は、E及びDから選択され;
X6’は、D、N、及びHから選択され;
X7’は、Y、R、及びNから選択され;
X8’は、Q、D、及びNから選択され;
X9’は、G及びEから選択され;
X10’は、S及びGから選択され;
X11’は、D及びNから選択され;
Zは、HNH様ドメイン、例えば、上述したようなHNH様ドメインである]
のアミノ酸配列を含む。
【0472】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、配列番号24の配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっているアミノ酸配列を含む。
【0473】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、本明細書で開示された、例えば
図5A-5Cで開示されたHNH様ドメインの配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。ある特定の実施態様において、
図5A-5Cで同定された高度に保存された残基の1つ又は両方は、存在する。
【0474】
ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、本明細書で開示された、例えば
図6A-6Bで開示されたHNH様ドメインの配列と、1つの、ただし2、3、4、又は5つ以下の残基が異なっている。ある特定の実施態様において、
図6A-6Bで同定された高度に保存された残基の1つ、2つ、又は3つ全ては、存在する。
【0475】
7.2 Cas9活性
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、標的核酸分子を切断することが可能である。典型的には、野生型Cas9分子は、標的核酸分子の両方の鎖を切断する。ヌクレアーゼの切断(又は他の特性)を変更するように、例えば、ニッカーゼであるか、又は標的核酸を切断する能力が欠如したCas9分子又はCas9ポリペプチドを提供するように、Cas9分子及びCas9ポリペプチドを操作することができる。標的核酸分子を切断することが可能なCas9分子又はCas9ポリペプチドは、本明細書ではeaCas9(酵素的に活性なCas9)分子又はeaCas9ポリペプチドと称される。
【0476】
ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、以下の酵素活性:
ニッカーゼ活性、すなわち核酸分子の一本鎖、例えば非相補鎖又は相補鎖を切断する能力;
二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち二本鎖核酸の両方の鎖を切断し、二本鎖切断を作り出す能力であって、ある特定の実施態様において、2つのニッカーゼ活性の存在である、能力;
エンドヌクレアーゼ活性;
エキソヌクレアーゼ活性;及び
ヘリカーゼ活性、すなわち二本鎖核酸のらせん構造をほどく能力
の一又は複数を含む。
【0477】
ある特定の実施態様において、酵素的に活性なCas9(「eaCas9」)分子又はeaCas9ポリペプチドは、両方のDNA鎖を切断し、二本鎖切断をもたらす。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、1つの鎖のみ、例えば、gRNAがハイブリダイズする鎖、又はgRNAがハイブリダイズする鎖に相補的な鎖を切断する。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、HNHドメインに関連する切断活性を含む。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、RuvCドメインに関連する切断活性を含む。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、HNHドメインに関連する切断活性及びRuvCドメインに関連する切断活性を含む。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、活性な、又は切断能を有するHNHドメイン、及び不活性な、又は切断能がないRuvCドメインを含む。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、不活性な、又は切断能がないHNHドメイン、及び活性な、又は切断能を有するRuvCドメインを含む。
【0478】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、gRNA分子と相互作用する能力を有し、gRNA分子と共に、コア標的ドメインに局在するが、標的核酸を切断することができないか、又は効率的な速度で切断することができない。切断活性を有さない又は実質的な切断活性を有さないCas9分子は、本明細書では、酵素的に不活性なCas9(「eiCas9」)分子又はeiCas9ポリペプチドと称される。例えば、eiCas9分子又はeiCas9ポリペプチドは、切断活性を欠如しているか、又は本明細書に記載されるアッセイによって測定した場合、実質的に参照Cas9分子又はeiCas9ポリペプチドの切断活性より低い切断活性、例えば、20、10、5、1又は0.1%未満の切断活性を有していてもよい。
【0479】
7.3 標的化及びPAM
Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、gRNA分子と相互作用することができ、ある特定の実施態様においてPAM配列である標的ドメインを含む部位に、gRNA分子と協調して局在する。ある特定の実施態様において、本発明の開示のCas9分子又はCas9ポリペプチド(例えば、eaCas9又はeiCas9)は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開第2015/089465号に開示されたgRNAを使用して標的化され得る。ある特定の実施態様において、国際公開第2015/089465号に開示されたgRNAを使用して標的化されるCas9分子又はCas9ポリペプチドは、S.ピオゲネスのCas9である。ある特定の実施態様において、国際公開第2015/089465号に開示されたgRNAを使用して標的化されるCas9分子又はCas9ポリペプチドは、S.アウレウスのCas9である。
【0480】
ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドの、標的核酸と相互作用してそれを切断する能力は、PAM配列依存性である。PAM配列は、標的核酸中の配列である。ある特定の実施態様において、標的核酸の切断は、PAM配列の上流で起こる。異なる細菌種からのeaCas9分子は、異なる配列モチーフ(例えば、PAM配列)を認識することができる。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのeaCas9分子は、配列モチーフNGGを認識し、標的核酸配列の、その配列から1から10、例えば3から5bp上流の切断を指示する(例えば、Mali 2013を参照)。
【0481】
ある特定の実施態様において、Cas9分子は、S.ピオゲネスのCas9 EQR変異体又はS.ピオゲネスのCas9 VRER変異体である。
【0482】
ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9 EQR変異体は、NGAG、NGCG、NGGG、NGTG、NGAA、NGAT又はNGACのPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5塩基対上流で標的核酸配列の切断を指示する。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9 EQR変異体は、NGAGのPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5塩基対上流で標的核酸配列の切断を指示する。Kleinstiver等、NATURE 2015;523(7561):481-5を参照されたい。
【0483】
ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9 VRER変異体は、NGCG、NGCA、NGCT PAM、又はNGCCのPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5塩基対上流で標的核酸配列の切断を指示する。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9 VRER変異体は、NGCGの配列モチーフを認識し、その配列から1から10、例えば3から5塩基対上流で標的核酸配列の切断を指示する。Kleinstiver Kleinstiver等、NATURE 2015;523(7561):481-5を参照されたい。
【0484】
ある特定の実施態様において、S.サーモフィラスのCas9分子は、NGGNG(配列番号199)及び/又はNNAGAAW(W=A又はT)(配列番号200)のPAM配列を認識し、これらの配列から1から10、例えば、3から5bp上流で標的核酸配列の切断を指示する(例えば、Horvath 2010;Deveau 2008を参照) 。
【0485】
ある特定の実施態様において、S.ミュータンスのCas9分子は、NGG及び/又はNAAR(R=A又はG)(配列番号201)のPAM配列を認識し、この配列から1から10、例えば、3から5bp上流の標的核酸配列の切断を指示する(例えば、Deveau 2008を参照)。
【0486】
ある特定の実施態様において、S.アウレウスのCas9分子は、NNGRR(R=A又はG)(配列番号202)のPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5bp上流で標的核酸配列の切断を指示する。
【0487】
ある特定の実施態様において、S.アウレウスは、NNGRRN(R=A又はG)(配列番号203)のPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5bp上流で標的核酸配列の切断を指示する。ある特定の実施態様において、S.アウレウスのCas9分子は、NNGRRT(R=A又はG)(配列番号204)のPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5bp上流で標的核酸配列の切断を指示する。ある特定の実施態様において、S.アウレウスのCas9分子は、NNGRRV(R=A又はG)(配列番号205)のPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5bp上流で標的核酸配列の切断を指示する。
【0488】
ある特定の実施態様において、髄膜炎菌のCas9分子は、NNNNGATT又はNNNGCTTのPAM配列を認識し、その配列から1から10、例えば3から5塩基対上流で標的核酸配列の切断を指示する。例えば、Hou等、PNAS 初期版 2013、1-6を参照されたい。
【0489】
Cas9分子のPAM配列を認識する能力は、例えば上述したような形質転換アッセイを使用して決定することができる(Jinek 2012)。上述の実施態様において、Nは、いずれのヌクレオチド残基であってもよく、例えばA、G、C、又はTのいずれかであってもよい。
【0490】
本明細書で論じられるように、Cas9分子は、Cas9分子のPAMの特異性を変更するように操作することができる。
【0491】
例示的な天然Cas9分子がこれまでに記載されている(例えば、Chylinski 2013を参照)。このようなCas9分子としては、クラスター1の細菌ファミリー、クラスター2の細菌ファミリー、クラスター3の細菌ファミリー、クラスター4の細菌ファミリー、クラスター5の細菌ファミリー、クラスター6の細菌ファミリー、クラスター7の細菌ファミリー、クラスター8の細菌ファミリー、クラスター9の細菌ファミリー、クラスター10の細菌ファミリー、クラスター11の細菌ファミリー、クラスター12の細菌ファミリー、クラスター13の細菌ファミリー、クラスター14の細菌ファミリー、クラスター15の細菌ファミリー、クラスター16の細菌ファミリー、クラスター17の細菌ファミリー、クラスター18の細菌ファミリー、クラスター19の細菌ファミリー、クラスター20の細菌ファミリー、クラスター21の細菌ファミリー、クラスター22の細菌ファミリー、クラスター23の細菌ファミリー、クラスター24の細菌ファミリー、クラスター25の細菌ファミリー、クラスター26の細菌ファミリー、クラスター27の細菌ファミリー、クラスター28の細菌ファミリー、クラスター29の細菌ファミリー、クラスター30の細菌ファミリー、クラスター31の細菌ファミリー、クラスター32の細菌ファミリー、クラスター33の細菌ファミリー、クラスター34の細菌ファミリー、クラスター35の細菌ファミリー、クラスター36の細菌ファミリー、クラスター37の細菌ファミリー、クラスター38の細菌ファミリー、クラスター39の細菌ファミリー、クラスター40の細菌ファミリー、クラスター41の細菌ファミリー、クラスター42の細菌ファミリー、クラスター43の細菌ファミリー、クラスター44の細菌ファミリー、クラスター45の細菌ファミリー、クラスター46の細菌ファミリー、クラスター47の細菌ファミリー、クラスター48の細菌ファミリー、クラスター49の細菌ファミリー、クラスター50の細菌ファミリー、クラスター51の細菌ファミリー、クラスター52の細菌ファミリー、クラスター53の細菌ファミリー、クラスター54の細菌ファミリー、クラスター55の細菌ファミリー、クラスター56の細菌ファミリー、クラスター57の細菌ファミリー、クラスター58の細菌ファミリー、クラスター59の細菌ファミリー、クラスター60の細菌ファミリー、クラスター61の細菌ファミリー、クラスター62の細菌ファミリー、クラスター63の細菌ファミリー、クラスター64の細菌ファミリー、クラスター65の細菌ファミリー、クラスター66の細菌ファミリー、クラスター67の細菌ファミリー、クラスター68の細菌ファミリー、クラスター69の細菌ファミリー、クラスター70の細菌ファミリー、クラスター71の細菌ファミリー、クラスター72の細菌ファミリー、クラスター73の細菌ファミリー、クラスター74の細菌ファミリー、クラスター75の細菌ファミリー、クラスター76の細菌ファミリー、クラスター77の細菌ファミリー、又はクラスター78の細菌ファミリーのCas9分子が挙げられる。
【0492】
例示的な天然Cas9分子としては、クラスター1の細菌ファミリーのCas9分子が挙げられる。例としては、S.アウレウス、S.ピオゲネス(例えば、SF370、MGAS10270、MGAS10750、MGAS2096、MGAS315、MGAS5005、MGAS6180、MGAS9429、NZ131及びSSI-1株)、S.サーモフィラス(例えば、LMD-9株)、S.シュードポルシナス(S.pseudoporcinus)(例えば、SPIN 20026株)、S.ミュータンス(例えば、UA159、NN2025株)、S.マカカエ(S.macacae)(例えば、NCTC11558株)、S.ガロリティカス(S.gallolyticus)(例えば、UCN34、ATCC BAA-2069株)、S.エキネス(S.equines)(例えば、ATCC 9812、MGCS124株)、S.ディスダラクチア(S.dysdalactiae)(例えば、GGS124株)、S.ボビス(S.bovis)(例えば、ATCC 700338株)、S.アンギノサス(S.anginosus)(例えば、F0211株)、S.アガラクチア(S.agalactiae)(例えば、NEM316、A909株)、リステリア・モノサイトゲネス(例えば、F6854株)、リステリア・イノキュア(L.イノキュア、例えば、Clip11262株)、エンテロコッカス・イタリカス(Enterococcus italicus)(例えば、DSM15952株)、又はエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(例えば、1,231,408株)のCas9分子が挙げられる。
【0493】
追加の例示的なCas9分子は、髄膜炎菌のCas9分子(Hou等、PNAS 初期版 2013、1-6)及びS.アウレウスのcas9分子である。
【0494】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、
本明細書に記載されるいずれかのCas9分子配列、又は天然Cas9分子配列、例えば本明細書に列挙された(例えば、配列番号1、2、4-6、又は12)若しくはChylinski 2013に記載された種からのCas9分子と、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の相同性を有するアミノ酸配列;
上記Cas9分子と比較した場合、アミノ酸残基の約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、又は約40%以下が異なっているアミノ酸配列;
上記Cas9分子と、少なくとも1、2、5、10又は20アミノ酸、ただし100、80、70、60、50、40又は30アミノ酸以下が異なっているアミノ酸配列;又は
上記Cas9分子と同一なアミノ酸配列
を含む。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、以下の活性:ニッカーゼ活性;二本鎖切断活性(例えば、エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ活性);ヘリカーゼ活性;又はgRNA分子と共に標的核酸に局在化する能力の一又は複数を含む。
【0495】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gのコンセンサス配列のアミノ酸配列のいずれかを含み、「*」は、S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9分子のアミノ酸配列において対応する位置に見出されるあらゆるアミノ酸を示し、「-」は、非存在を示す。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列の配列と、少なくとも1つの、ただし2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸残基が異なっている。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、配列番号2の配列と、少なくとも1つの、ただし2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸残基が異なっている。
【0496】
多数のCas9分子の配列の比較から、ある特定の領域が保存されていることが示される。これらは、以下の通りに同定される:
領域1(残基1から180、又は領域1’のケースでは残基120から180)
領域2(残基360から480);
領域3(残基660から720);
領域4(残基817から900);及び
領域5(残基900から960)。
【0497】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、生物学的に活性な分子、例えば、本明細書に記載される少なくとも1つの活性を有するCas9分子を提供するのに十分な追加のCas9分子配列と共に、領域1-5を含む。ある特定の実施態様において、領域1-5のそれぞれは、独立して、本明細書に記載されるCas9分子又はCas9ポリペプチド、例えば
図2A-2Gからの配列の対応する残基と、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の相同性を有する。
【0498】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、領域1と称されるアミノ酸配列を含み、領域1は、
S.ピオゲネスのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸1-180と(番号付けは、
図2に記載のモチーフ配列に従っており、
図2A-2Gに記載の4つのCas9配列中の残基の52%は保存されている)、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の相同性を有するか;
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はリステリア・イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸1-180と、少なくとも1、2、5、10又は20アミノ酸、ただし90、80、70、60、50、40又は30アミノ酸以下が異なっているか;又は
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸1-180と同一である。
【0499】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、領域1’と称されるアミノ酸配列を含み、領域1’は、
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸120-180(
図2に記載の4つのCas9配列中の残基の55%は保存されている)と、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の相同性を有するか;
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸120-180と、少なくとも1、2、又は5アミノ酸、ただし35、30、25、20又は10アミノ酸以下が異なっているか;又は
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸120-180と同一である。
【0500】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、領域2と称されるアミノ酸配列を含み、領域2は、
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸360-480(
図2に記載の4つのCas9配列中の残基の52%は保存されている)と、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の相同性を有するか;
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸360-480と、少なくとも1、2、又は5アミノ酸、ただし35、30、25、20又は10アミノ酸以下が異なっているか;又は
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸360-480と同一である。
【0501】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、領域3と称されるアミノ酸配列を含み、領域3は、
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸660-720(
図2に記載の4つのCas9配列中の残基の56%は保存されている)と、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の相同性を有するか;
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸660-720と、少なくとも1、2、又は5アミノ酸、ただし35、30、25、20又は10アミノ酸以下が異なっているか;又は
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸660-720と同一である。
【0502】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、領域4と称されるアミノ酸配列を含み、領域4は、
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸817-900(
図2A-2Gに記載の4つのCas9配列中の残基の55%は、保存されている)と、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の相同性を有するか;
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸817-900と、少なくとも1、2、又は5アミノ酸、ただし35、30、25、20又は10アミノ酸以下が異なっているか;又は
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸817-900と同一である。
【0503】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、領域5と称されるアミノ酸配列を含み、領域5は、
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸900-960(
図2A-2Gに記載の4つのCas9配列中の残基の60%は、保存されている)と、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の相同性を有するか;
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸900-960と、少なくとも1、2、又は5アミノ酸、ただし35、30、25、20又は10アミノ酸以下が異なっているか;又は
S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸900-960と同一である。
【0504】
7.4 操作された又は変更されたCas9
本明細書に記載されるCas9分子及びCas9ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性(例えば、エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ活性);ヘリカーゼ活性;gRNA分子と機能的に会合する能力;及び核酸上の部位(例えば、PAM認識及び特異性)を標的化する(又はそこに局在する)能力などの多数の特性のいずれを有していてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、これらの特性の全て又はサブセットを含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、gRNA分子と相互作用する能力を有し、gRNA分子と協調して核酸中の部位に局在する。他の活性、例えば、PAMの特異性、切断活性、又はヘリカーゼ活性は、Cas9分子及びCas9ポリペプチドにおいてより広く変更が可能である。
【0505】
Cas9分子は、操作されたCas9分子及び操作されたCas9ポリペプチドを含む(操作とは、この文脈で使用される場合、単にCas9分子又はCas9ポリペプチドが参照配列と異なっていることを意味し、プロセス又は起源の限定は意味しない)。操作されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、変更された酵素特性、例えば、変更されたヌクレアーゼ活性(天然又は他の参照Cas9分子と比較した場合)、又は変更されたヘリカーゼ活性を含んでいてもよい。本明細書で論じられるように、操作されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、ニッカーゼ活性を有していてもよい(二本鎖ヌクレアーゼ活性とは対照的に)。ある特定の実施態様において、操作されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、そのサイズを変更する変更を有していてもよく、例えば、一又は複数の、又は全てのCas9活性に有意な作用を与えずに、例えば、そのサイズを低減するアミノ酸配列の欠失を有していてもよい。ある特定の実施態様において、操作されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、PAM認識に影響を与える変更を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、操作されたCas9分子は、内因性の野生型PIドメインによって認識されるもの以外のPAM配列を認識するように変更される。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、天然Cas9分子からの配列において異なるが、一又は複数のCas9活性において有意な変更がないものでもよい。
【0506】
所望の特性を有するCas9分子又はCas9ポリペプチドは、多数の方法で作製することができ、例えば、所望の特性を有する変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチドが提供されるような、親の、例えば天然Cas9分子又はCas9ポリペプチドの変更で作製することができる。例えば、親のCas9分子、例えば天然又は操作されたCas9分子と比べた一又は複数の突然変異若しくは差を導入することができる。このような突然変異及び差は、置換(例えば、保存的置換又は非必須アミノ酸の置換);挿入;又は欠失を含む。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、参照、例えば親のCas9分子と比べて、一又は複数の突然変異若しくは差、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40又は50個の突然変異、ただし200、100、又は80個未満の突然変異を含んでいてもよい。
【0507】
ある特定の実施態様において、一又は複数の突然変異は、Cas9活性、例えば本明細書に記載されるCas9活性に実質的な作用を有さない。ある特定の実施態様において、一又は複数の突然変異は、Cas9活性、例えば本明細書に記載されるCas9活性に実質的な作用を有する。
【0508】
7.5 切断が修飾されたCas9
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、天然Cas9分子と異なっている切断特性、例えば、最も近い相同性を有する天然Cas9分子と異なっている切断特性を含む。例えば、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、天然Cas9分子、例えばS.ピオゲネスのCas9分子と、以下のように異なっていてもよい:例えば、天然Cas9分子(例えば、S.ピオゲネスのCas9分子)と比較した場合、二本鎖核酸の切断をモジュレートする、例えば減少又は増加させるその能力(エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ活性);例えば、天然Cas9分子(例えば、S.ピオゲネスのCas9分子)と比較した場合、核酸の一本鎖、例えば核酸分子の非相補鎖又は核酸分子の相補鎖の切断をモジュレートする、例えば減少又は増加させるその能力(ニッカーゼ活性);又は核酸分子、例えば二本鎖又は一本鎖核酸分子を切断する能力がなくなっていてもよい。
【0509】
ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、以下の活性:N末端RuvC様ドメインに関連する切断活性;HNH様ドメインに関連する切断活性;HNH様ドメインに関連する切断活性、及びN末端RuvC様ドメインに関連する切断活性の一又は複数を含む。
【0510】
ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、活性な、又は切断能を有するHNH様ドメイン(例えば、本明細書に記載されるHNH様ドメイン、例えば、配列番号24-28)及び不活性な、又は切断能がないN末端RuvC様ドメインを含む。例示的な不活性な、又は切断能がないN末端RuvC様ドメインは、N末端RuvC様ドメインにおけるアスパラギン酸の突然変異を有していてもよく、例えば、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列の9位におけるアスパラギン酸、又は配列番号2の10位におけるアスパラギン酸が、例えばアラニンで置換されていてもよい。ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、N末端RuvC様ドメインにおいて野生型と異なっており、標的核酸を切断しないか、又は有意に低い効率で、例えば本明細書に記載されるアッセイによって測定した場合、例えば参照Cas9分子の切断活性の約20%、約10%、約5%、約1%又は約0.1%未満で切断する。参照Cas9分子は、天然非修飾のCas9分子、例えば天然Cas9分子、例えばS.ピオゲネス、S.アウレウス、又はS.サーモフィラスのCas9分子などであってもよい。ある特定の実施態様において、参照Cas9分子は、最も近い配列同一性又は相同性を有する天然Cas9分子である。
【0511】
ある特定の実施態様において、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、不活性な、又は切断能がないHNHドメイン及び活性な、又は切断能を有するN末端RuvC様ドメイン(例えば、本明細書に記載されるRuvC様ドメイン、例えば、配列番号15-23)を含む。例示的な不活性な、又は切断能がないHNH様ドメインは、以下の一又は複数における突然変異を有していてもよい:HNH様ドメインにおけるヒスチジン、例えば
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列の856位に示されるヒスチジンが、例えばアラニンで置換されていてもよく;HNH様ドメインにおける一又は複数のアスパラギン、例えば
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列の870位に示されるアスパラギン及び/又は
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列の879位に示されるアスパラギンが、例えばアラニンで置換されていてもよい。ある特定の実施態様において、eaCas9は、HNH様ドメインにおいて野生型と異なっており、標的核酸を切断しないか、又は有意に低い効率で、例えば、本明細書に記載されるアッセイによって測定した場合、例えば参照Cas9分子の切断活性の約20%、約10%、約5%、約1%又は約0.1%の効率で切断する。参照Cas9分子は、天然非修飾のCas9分子、例えば天然Cas9分子、例えばS.ピオゲネス、S.アウレウス、又はS.サーモフィラスのCas9分子などであってもよい。ある特定の実施態様において、参照Cas9分子は、最も近い配列同一性又は相同性を有する天然Cas9分子である。
【0512】
ある特定の実施態様において、例示的なCas9活性は、PAMの特異性、切断活性、及びヘリカーゼ活性の一又は複数を含む。突然変異は、例えば、一又は複数のRuvCドメイン、例えば、N末端RuvCドメイン;HNHドメイン;RuvCドメイン及びHNHドメインの外側の領域に存在していてもよい。ある特定の実施態様において、突然変異は、RuvCドメインに存在する。ある特定の実施態様において、突然変異は、HNHドメインに存在する。ある特定の実施態様において、突然変異は、RuvCドメイン及びHNHドメインの両方に存在する。
【0513】
S.ピオゲネスのCas9配列と比べてRuvCドメインにおいて生じ得る例示的な突然変異としては、D10A、E762A、及び/又はD986Aが挙げられる。S.ピオゲネスのCas9配列と比べてHNHドメインにおいて生じ得る例示的な突然変異としては、H840A、N854A、及び/又はN863Aが挙げられる。S.アウレウスのCas9配列と比べてRuvCドメインにおいて生じ得る例示的な突然変異としては、D10Aが挙げられる(例えば配列番号10を参照)。S.アウレウスのCas9配列と比べてHNHドメインにおいて生じ得る例示的な突然変異としては、N580Aが挙げられる(例えば配列番号11を参照)。
【0514】
特定の配列、例えば置換が、一又は複数の活性、例えば標的化活性、切断活性などに影響を与える可能性があるかどうかは、例えば突然変異が保存的であるかどうかを評価することによって評価又は予測することができる。ある特定の実施態様において、「非必須」アミノ酸残基は、Cas9分子の文脈で使用される場合、Cas9活性(例えば、切断活性)を失わせることなく、又はより好ましくは実質的に変更することなく、Cas9分子、例えば天然Cas9分子、例えばeaCas9分子の野生型配列から変更することができる残基であり、それに対して「必須」アミノ酸残基を変化させることは、実質的な活性(例えば、切断活性)の損失を引き起こす。
【0515】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、天然Cas9分子と異なっている切断特性、例えば、最も近い相同性を有する天然Cas9分子と異なっている切断特性を含む。例えば、Cas9分子は、天然Cas9分子、例えば、S.アウレウス又はS.ピオゲネスのCas9分子と、以下のように異なっていてもよい:例えば、天然Cas9分子(例えば、S.アウレウス又はS.ピオゲネスのCas9分子)と比較した場合、二本鎖切断における切断をモジュレートする、例えば減少又は増加させるその能力(エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ活性);例えば、天然Cas9分子(例えば、S.アウレウス又はS.ピオゲネスのCas9分子)と比較した場合、核酸の一本鎖、例えば核酸分子の非相補鎖又は核酸分子の相補鎖の切断をモジュレートする、例えば減少又は増加させるその能力(ニッカーゼ活性)を含むか;又は核酸分子、例えば二本鎖又は一本鎖核酸分子を切断する能力がなくなっていてもよい。ある特定の実施態様において、ニッカーゼは、配列番号10の配列(D10A)又は配列番号11の配列(N580A)を含む、S.アウレウスのCas9由来のニッカーゼである(Friedland 2015)。
【0516】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子は、以下の活性:RuvCドメインに関連する切断活性;HNHドメインに関連する切断活性;HNHドメインに関連する切断活性、及びRuvCドメインに関連する切断活性の一又は複数を含むeaCas9分子である。
【0517】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、以下の配列:
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列の固定された配列に対応する配列が、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列における固定された残基の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、又は約20%以下で異なっている配列;及び
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列における「*」によって同定された残基に対応する配列が、天然Cas9分子、例えば、S.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、又はL.イノキュアのCas9分子の対応する配列と、「*」の残基の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%以下で異なっている、配列
を含む。
【0518】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列における「*」によって表された一又は複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、又は200アミノ酸残基)においてS.ピオゲネスの配列と異なる一又は複数のアミノ酸(例えば、置換)を有する
図2A-2Gに開示されたS.ピオゲネスのCas9のアミノ酸配列を含む、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドである。
【0519】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列における「*」によって表された一又は複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、又は200アミノ酸残基)においてS.サーモフィラスの配列と異なる一又は複数のアミノ酸(例えば、置換)を有する
図2A-2Gに開示されたS.サーモフィラスのCas9のアミノ酸配列を含む、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドである。
【0520】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列における「*」によって表された一又は複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、又は200アミノ酸残基)においてS.ミュータンスの配列と異なる一又は複数のアミノ酸(例えば、置換)を有する
図2A-2Gに開示されたS.ミュータンスのCas9のアミノ酸配列を含む、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドである。
【0521】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチドは、
図2A-2Gに開示されたコンセンサス配列における「*」によって表された一又は複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、又は200アミノ酸残基)においてL.イノキュアの配列と異なる一又は複数のアミノ酸(例えば、置換)を有する
図2A-2Gに開示されたL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列を含む、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドである。
【0522】
ある特定の実施態様において、変更されたCas9分子又はCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドは、例えば、2つ又はそれより多くの異なるCas9分子の融合体、例えば、異なる種の2つ又はそれより多くの天然Cas9分子の融合体であってもよい。例えば、1つの種の天然Cas9分子の断片が、第2の種のCas9分子の断片に融合していてもよい。一例として、N末端RuvC様ドメインを含むS.ピオゲネスのCas9分子の断片が、HNH様ドメインを含むS.ピオゲネス(例えば、S.サーモフィラス)以外の種のCas9分子の断片に融合していてもよい。
【0523】
7.6 PAM認識が変更されたか又はPAM認識がないCas9
天然Cas9分子は、特異的なPAM配列、例えばS.ピオゲネス、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、及びS.アウレウスに関して、例えば上述されたPAM認識配列を認識することができる。
【0524】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、天然Cas9分子と同じPAMの特異性を有する。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドは、天然Cas9分子に関連していないPAMの特異性、又はそれと最も近い配列相同性を有する天然Cas9分子に関連していないPAMの特異性を有する。例えば、天然Cas9分子を変更して、例えばPAM認識を変更してもよく、例えば、オフターゲット部位を減少させる、及び/若しくは特異性を改善するために、Cas9分子又はCas9ポリペプチドが認識するPAM配列を変更してもよいし、又はPAM認識の必要性をなくしてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドを変更して、例えば、PAM認識配列の長さを増加させてもよいし、及び/又は同一性のレベルが高くなるまでCas9の特異性を改善してもよいし(例えば、gRNA配列とPAM配列との間で約98%、約99%又は約100%のマッチ)、例えば、オフターゲット部位を減少させてもよいし、及び/又は特異性を増加させてもよい。ある特定の実施態様において、PAM認識配列の長さは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10又は15アミノ酸の長さである。ある特定の実施態様において、Cas9の特異性は、gRNA配列とPAM配列との間で少なくとも約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の相同性を必要とする。異なるPAM配列を認識する及び/又は低下したオフターゲット活性を有するCas9分子又はCas9ポリペプチドは、定向進化を使用して生成することができる。Cas9分子の定向進化に使用することができる例示的な方法及び系は、記載されている(例えば、Esvelt 2011を参照)。候補Cas9分子は、例えば後述される方法によって評価することができる。
【0525】
7.7 サイズが最適化されたCas9
本明細書に記載される操作されたCas9分子及び操作されたCas9ポリペプチドとしては、分子のサイズを低下させるがそれでもなお所望のCas9特性、例えば本質的に自然のコンフォメーション、Cas9のヌクレアーゼ活性、及び/又は標的核酸分子認識を保持する欠失を含むCas9分子又はCas9ポリペプチドが挙げられる。一又は複数の欠失及び任意選択的に一又は複数のリンカーを含むCas9分子又はCas9ポリペプチドが本明細書で提供され、この場合、リンカーは、欠失の両側にあるアミノ酸残基間に配置される。参照Cas9分子において好適な欠失を同定するための方法、欠失及びリンカーを有するCas9分子を生成するための方法、及びこのようなCas9分子を使用するための方法は、この文書を再検討すれば当該技術分野の当業者に明らかであると予想される。
【0526】
欠失を有するCas9分子、例えばS.アウレウス又はS.ピオゲネスのCas9分子は、対応する天然Cas9分子より小さく、例えば、それより少ない数のアミノ酸を有する。より小さいサイズのCas9分子は、送達方法に関するフレキシビリティーを増加させることができ、それによってゲノム編集に関する有用性を増加させる。Cas9分子は、結果生じる本明細書に記載されるCas9分子の活性に実質的に影響を与えない、又はそのような活性を減少させない一又は複数の欠失を含んでいてもよい。本明細書に記載される欠失を含むCas9分子に保持される活性としては、以下:
ニッカーゼ活性、すなわち、核酸分子の一本鎖、例えば非相補鎖又は相補鎖を切断する能力;
二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち二本鎖核酸の両方の鎖を切断し、二本鎖切断を作り出す能力であって、ある特定の実施態様において、2つのニッカーゼ活性の存在である、能力;
エンドヌクレアーゼ活性;
エキソヌクレアーゼ活性;
ヘリカーゼ活性、すなわち二本鎖核酸のらせん構造をほどく能力;及び
核酸分子、例えば標的核酸又はgRNAの認識活性
の一又は複数が挙げられる。
【0527】
本明細書に記載されるCas9分子の活性は、本明細書に又は当該技術分野において記載される活性アッセイを使用して評価することができる。
【0528】
7.8 欠失に好適な領域の同定
Cas9分子の欠失に好適な領域は、様々な方法によって同定することができる。様々な細菌種からの天然オーソロガスなCas9分子は、選択されたCas9オーソログにわたりタンパク質の3次元コンフォメーションに関して保存のレベルを検査するために、S.ピオゲネスのCas9(Nishimasu 2014)の結晶構造上にモデル化することができる。Cas9活性に関与する領域、例えば標的核酸分子及び/又はgRNAとの接触面から空間的に遠位に配置された、あまり保存されていない領域又は保存されていない領域は、Cas9活性に実質的に影響を及ぼしたり又はCas9活性を減少させたりしない欠失に関する候補である領域又はドメインとなる。
【0529】
7.9 Cas9分子をコードする核酸
Cas9分子又はCas9ポリペプチド、例えばeaCas9分子又はeaCas9ポリペプチドをコードする核酸が本明細書で提供される。Cas9分子又はCas9ポリペプチドをコードする例示的な核酸は、これまでに記載されている(例えば、Cong 2013; Wang 2013; Mali 2013; Jinek 2012を参照)。
【0530】
ある特定の実施態様において、Cas9分子又はCas9ポリペプチドをコードする核酸は、合成核酸配列であってもよい。例えば、合成核酸分子は、例えば本明細書に記載されるように、化学的に修飾されていてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9のmRNAは、以下の特性:キャッピング、ポリアデニル化、5-メチルシチジン及び/又はシュードウリジンでの置換のうち一又は複数、例えば全てを有する。
【0531】
加えて、又は代替として、合成核酸配列は、コドンが最適化されていてもよく、例えば、少なくとも1つの共通していないコドン又はあまり共通していないコドンが、共通のコドンで置き換えられる。例えば、合成核酸は、最適化されたメッセンジャーmRNA、例えば、本明細書に記載される、例えば、哺乳動物発現系での発現に最適化されたメッセンジャーmRNAの合成を指示することができる。
【0532】
加えて、又は代替として、Cas9分子又はCas9ポリペプチドをコードする核酸は、核局在化配列(NLS)を含んでいてもよい。核局在化配列は、当該技術分野で公知である。
【0533】
S.ピオゲネスのCas9分子をコードする例示的なコドンが最適化された核酸配列は、配列番号3に記載される。S.ピオゲネスのCas9分子の対応するアミノ酸配列は、配列番号2に記載される。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9分子は、S.ピオゲネスのCas9変異体である。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9変異体は、配列番号208に記載の配列を有するEQR変異体である。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9変異体は、配列番号209に記載の配列を有するVRER変異体である。
【0534】
S.アウレウスのCas9分子をコードする例示的なコドンが最適化された核酸配列は、配列番号7-9、206及び207に記載される。ある特定の実施態様において、Cas9分子は、D10A突然変異を含むS.アウレウスの突然変異Cas9分子である。ある特定の実施態様において、D10A突然変異を含むS.アウレウスの突然変異Cas9分子は、配列番号10に記載の配列を有する。ある特定の実施態様において、Cas9分子は、N580突然変異を含むS.アウレウスの突然変異Cas9分子である。ある特定の実施態様において、N580突然変異を含むS.アウレウスの突然変異Cas9分子は、配列番号11に記載の配列を有する。S.アウレウスのCas9分子のアミノ酸配列は、配列番号6に記載される。
【0535】
上記のCas9配列のいずれかがC末端でペプチド又はポリペプチドと融合している場合、終止コドンが除去され得ることが理解される。
【0536】
7.10 他のCas分子及びCasポリペプチド
様々な種類のCas分子又はCasポリペプチドを使用して、本明細書で開示された発明を実施することができる。ある特定の実施態様において、タイプIIのCas系のCas分子が使用される。ある特定の実施態様において、他のCas系のCas分子が使用される。例えば、タイプI又はタイプIIIのCas分子を使用することができる。例示的なCas分子(及びCas系)がこれまでに記載されている(例えば、Haft 2005及びMakarova 2011を参照)。また例示的なCas分子(及びCas系)は、表13にも示される。
【0537】
8.候補分子の機能的な分析
候補Cas9分子、候補gRNA分子、候補Cas9分子/gRNA分子複合体は、当該技術分野で公知の方法によって、又は本明細書に記載されるようにして評価することができる。例えば、Cas9分子のエンドヌクレアーゼ活性を評価するための例示的な方法がこれまでに記載されている(Jinek 2012)。
【0538】
8.1 結合及び切断アッセイ:Cas9のエンドヌクレアーゼ活性の試験
標的核酸に結合して切断するCas9分子/gRNA分子複合体の能力は、プラスミド切断アッセイで評価することができる。このアッセイにおいて、合成又はインビトロで転写されたgRNA分子を、95℃に加熱し、室温にゆっくり冷却させることによって、反応の前に予めアニールさせる。自然の又は制限消化で線形化したプラスミドDNA(300ng(約8nM))を、10mMのMgCl2含有又は非含有のCas9プラスミド切断バッファー(20mMのHEPES、pH7.5、150mMのKCl、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTA)中で、精製したCas9タンパク質分子(50-500nM)及びgRNA(50-500nM、1:1)と共に37℃で60分インキュベートする。5×DNAローディングバッファー(30%グリセロール、1.2%SDS、250mMのEDTA)で反応を止め、0.8又は1%アガロースゲル電気泳動によって分離し、エチジウムブロマイド染色によって可視化する。得られた切断産物は、Cas9分子が、両方のDNA鎖を切断するのか、又は2つの鎖のうち1つのみを切断するのかを示す。例えば、直鎖状DNA産物は、両方のDNA鎖の切断を示す。ニックが入れられた開いた環状産物は、2つの鎖のうち1つのみの切断を示す。
【0539】
代替として、標的核酸に結合して切断するCas9分子/gRNA分子複合体の能力は、オリゴヌクレオチドDNA切断アッセイで評価することができる。このアッセイにおいて、DNAオリゴヌクレオチド(10pmol)を、50μLの反応液で、1×T4ポリヌクレオチドキナーゼ反応バッファー中の5ユニットのT4ポリヌクレオチドキナーゼ及び~3-6pmol(~20-40mCi)の[γ-32P]-ATPと共に37℃で30分インキュベートすることによって放射標識する。熱不活性化(65℃で20分間)の後、カラムを介して反応液を精製し、取り込まれなかった標識を除去する。標識されたオリゴヌクレオチドを等モル量の非標識相補的オリゴヌクレオチドと95℃で3分アニーリングさせ、続いてゆっくり室温に冷却することによって、二重鎖基質(100nM)が生成する。切断アッセイのために、gRNA分子を、95℃で30秒加熱し、続いて室温にゆっくり冷却することによってアニールさせる。Cas9(500nMの最終濃度)を、切断アッセイバッファー(20mMのHEPES、pH7.5、100mMのKCl、5mMのMgCl2、1mMのDTT、5%グリセロール)中のアニールしたgRNA分子(500nM)と共に総体積9μLでプレインキュベートする。1μLの標的DNA(10nM)の添加によって反応を開始させ、37℃で1時間インキュベートする。20μLのローディング色素(ホルムアミド中、5mMのEDTA、0.025%SDS、5%グリセロール)の添加によって反応液をクエンチし、95℃で5分加熱する。切断産物を7M尿素を含有する12%変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、ホスホイメージングによって可視化する。得られた切断産物は、相補鎖、非相補鎖、又は両方が切断されるのかどうかを示す。
【0540】
これらのアッセイの一方又は両方を使用して、候補gRNA分子又は候補Cas9分子の適性を評価することができる。
【0541】
8.2 結合アッセイ:Cas9分子の標的DNAへの結合の試験
Cas9分子の標的DNAへの結合を評価するための例示的な方法は、これまでに、例えばJinek等、SCIENCE 2012;337(6096):816-821に記載されている。
【0542】
例えば、電気泳動移動度シフトアッセイでは、脱イオン水中で各鎖(10nmol)を混合し、95℃で3分加熱し、室温にゆっくり冷却することによって、標的DNA二重鎖が形成される。全てのDNAは、1×TBEを含有する8%天然ゲルで精製される。UVシャドーイングによってDNAバンドを可視化し、切り出し、DEPC処理したH2Oにゲル断片を浸すことによって溶出させる。溶出したDNAをエタノール沈殿させ、DEPC処理したH2Oに溶解させる。T4ポリヌクレオチドキナーゼを37℃で30分使用して、DNAサンプルの5’末端を[γ-32P]-ATPで標識する。ポリヌクレオチドキナーゼを65℃で20分熱変性させ、カラムを使用して取り込まれなかった放射標識を除去する。結合アッセイを、10μLの総体積で、20mMのHEPES、pH7.5、100mMのKCl、5mMのMgCl2、1mMのDTT及び10%グリセロールを含有するバッファー中で実行する。Cas9タンパク質分子を、等モル量の予めアニールさせたgRNA分子と共にプログラム化し、100pMから1μMまで滴定する。放射標識したDNAを、20pMの最終濃度まで添加する。サンプルを37℃で1時間インキュベートし、4℃で1×TBE及び5mMのMgCl2を含有する8%天然ポリアクリルアミドゲルで分離する。ゲルを乾燥させ、ホスホイメージングによってDNAを可視化する。
【0543】
8.3 示差走査蛍光定量法(DSF)
Cas9-gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体の熱安定性は、DSFを介して測定することができる。この技術は、結合RNA分子、例えばgRNAの添加などの好都合な条件下で増加させることができるタンパク質の熱安定性を測定する。
【0544】
このアッセイは、2つの異なるプロトコール、すなわちgRNA:Cas9タンパク質の最良の化学量論的な比率を試験する1つのプロトコール、及びRNP形成にとって最良の溶液条件を決定する別のプロトコールを使用して実行される。
【0545】
RNP複合体を形成する最良の溶液を決定するために、Cas9の2uM水溶液+10×SYPRO Orange(登録商標)(Life Technologies、カタログ番号S-6650)を384ウェルのプレートに分配する。次いで様々なpH及び塩を有する溶液で希釈した等モル量のgRNAを添加する。室温で10分インキュベートし、短時間の遠心分離で全ての気泡を除去した後、Bio-Rad CFXマネージャーソフトウェアを備えたBio-Rad CFX384(商標)Real-Time System C1000 Touch(商標)サーマルサイクラーを使用して、10秒毎に温度を1℃ずつ上昇させながら20℃から90℃への勾配を実行する。
【0546】
第2のアッセイは、上記のアッセイ1からの最適なバッファー中で様々な濃度のgRNAを2uMのCas9と共に混合し、384ウェルのプレート中で室温で10分インキュベートすることからなる。等体積の最適なバッファー+10×SYPRO Orange(登録商標)(Life Technologies、カタログ番号S-6650)を添加し、プレートをMicroseal(登録商標)B接着剤(MSB-1001)で密封する。短時間の遠心分離で全ての気泡を除去した後、Bio-Rad CFXマネージャーソフトウェアを備えたBio-Rad CFX384(商標)Real-Time System C1000 Touch(商標)サーマルサイクラーを使用して、10秒毎に温度を1℃ずつ上昇させながら20℃から90℃への勾配を実行する。
【0547】
9.ゲノム編集手法
例えば本明細書に記載される手法又は経路の一又は複数を使用して、例えばNHEJを使用した、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子、例えば、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の一方又は両方の対立遺伝子の標的化された変更(例えば、ノックアウト)のための、組成物、ゲノム編集系及び方法が本明細書に記載される。また、RS1、RL2、及び/又はLAT遺伝子の標的化されたノックダウンのための方法も本明細書に記載される。
【0548】
9.1 遺伝子標的化のためのNHEJ手法
本明細書で提供される方法のある特定の実施態様では、NHEJが媒介する変更を使用して、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置を変更する。本明細書に記載されるように、ヌクレアーゼによって誘導された非相同末端結合(NHEJ)を使用して、遺伝子特異的なノックアウトを標的化することができる。またヌクレアーゼによって誘導されたNHEJを使用して、目的の遺伝子における配列挿入物を除去する(例えば、欠失させる)こともできる。
【0549】
ある特定の実施態様において、本明細書に記載される方法に関連するゲノム変更は、ヌクレアーゼによって誘導されたNHEJ及びNHEJ修復経路のエラーを生じやすい性質に頼っている。NHEJは、2つの末端を一緒に結合させることによってDNA中の二本鎖切断を修復するが、一般的に、2つの適合性を有する末端が、正確にはそれらが二本鎖切断によって形成されているために完全にライゲートした場合のみ、元の配列が復元される。二本鎖切断のDNA末端は酵素的なプロセシングの対象であることが多く、結果として、末端の再結合の前に一方又は両方の鎖でヌクレオチドの付加又は除去が生じる。それにより、NHEJ修復部位のDNA配列における挿入及び/又は欠失(インデル)突然変異の存在がもたらされる。これらの突然変異の3分の2は、典型的には読み枠を変更し、それゆえに非機能性タンパク質を生産する。加えて、読み枠を維持するが、有意な量の配列を挿入したり又は欠失させたりする突然変異が、タンパク質の機能性を破壊することができる。重要な機能性ドメイン中の突然変異は、タンパク質の重要ではない領域中の突然変異ほど許容できない可能性があるため、これは遺伝子座依存性である。
【0550】
NHEJによって生成したインデル突然変異は事実上予測不可能であるが、所与の切断部位において、ある特定のインデル配列が好まれ、おそらくマイクロホモロジーを有する小さい領域のために集団中で過剰に存在する。欠失の長さは、広く変更することができ、最も一般的には1-50bpの範囲であるが、100-200bpより長い長さに達していてもよい。挿入は、より短い傾向があり、切断部位に隣接して取り囲む配列の短い重複を含むことが多い。しかしながら、大きい挿入が達成される場合もあり、これらのケースにおいて、挿入された配列はしばしば、ゲノムの他の領域又は細胞中に存在するプラスミドDNAに由来したものであった。
【0551】
NHEJは、突然変異誘発性のプロセスであるため、特異的な最終配列の生成が必要ではない限り、小さい配列モチーフ(例えば、長さが50ヌクレオチド未満又はそれに等しいモチーフ)を欠失させるのにも使用することができる。標的配列に近い二本鎖切断が標的化される場合、NHEJ修復によって生じた欠失突然変異が不要なヌクレオチドに及ぶことが多く、それにより不要なヌクレオチドが除去される。より大きいDNAセグメントの欠失のために、2つの二本鎖切断を導入すること、すなわち配列のそれぞれの側に1つずつ二本鎖切断を導入することにより、末端間にNHEJを引き起こして、介在配列全体を除去することができる。この方法で、数百キロベースもの大きさのDNAセグメントを欠失させることができる。これらの手法の両方は、特異的なDNA配列を欠失させるのに使用することができるが、NHEJのエラーを生じやすい性質のために、それでもなお修復部位においてインデル突然変異が生じる場合がある。
【0552】
両方の二本鎖を切断するeaCas9分子及び一本鎖、又はニッカーゼ、eaCas9分子は、本明細書に記載される方法及び組成物において、NHEJが媒介するインデルを生成するのに使用することができる。目的の遺伝子の初期コード化領域に標的化されたNHEJが媒介するインデルを使用して、目的の遺伝子をノックアウトする(すなわち、目的の遺伝子の発現をなくす)ことができる。例えば、目的の遺伝子の初期コード化領域は、コード配列の第1のエクソン内の転写開始部位直後の配列、又は転写開始部位の500bp以内(例えば、500、450、400、350、300、250、200、150、100又は50bp未満)の配列を含む。
【0553】
9.1.1 標的位置に対する二本鎖又は一本鎖切断の配置
NHEJが媒介するインデルを誘導する目的でgRNA及びCas9ヌクレアーゼが二本鎖切断を生成するある特定の実施態様において、gRNA、例えば単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNA分子は、1つの二本鎖切断を標的位置のヌクレオチドの近傍に配置するように構成されている。ある特定の実施態様において、切断部位は、標的位置から0-30bpの間(例えば、標的位置から、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1bp未満)である。
【0554】
NHEJが媒介するインデルを誘導する目的でCas9ニッカーゼと複合体化した2つのgRNAが2つの一本鎖切断を誘導するある特定の実施態様において、2つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、標的位置のヌクレオチドのNHEJ修復をもたらすように2つの一本鎖切断を配置するように構成されている。ある特定の実施態様において、gRNAは、異なる鎖の同じ位置に又は互いの少数ヌクレオチド内に切断を配置して、本質的に二本鎖切断を模倣するように構成されている。ある特定の実施態様において、より近いニックは、標的位置から0-30bpの間(例えば、標的位置から、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1bp未満)であり、2つのニックは、互いに25-55bp以内(例えば、25から50、25から45、25から40、25から35、25から30、50から55、45から55、40から55、35から55、30から55、30から50、35から50、40から50、45から50、35から45、又は40から45bpの間)であり、互いに100bp以下(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20又は10bp以下)離れている。ある特定の実施態様において、gRNAは、一本鎖切断が標的位置のヌクレオチドのいずれかの側に存在するように構成されている。
【0555】
両方の二本鎖を切断するeaCas9分子及び一本鎖、又はニッカーゼ、eaCas9分子は、本明細書に記載される方法及び組成物において、標的位置の両方の側の切断を生成するのに使用することができる。二本鎖又は対になった一本鎖の切断を標的位置の両方の側で生成して、2つの切断間の核酸配列(例えば、欠失した状態の2つの切断の間の領域)を除去することができる。ある特定の実施態様において、2つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、二本鎖切断を標的位置の両方の側に配置するように構成されている。代替の実施態様において、3つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、二本鎖切断(すなわち、1つのgRNAとcas9ヌクレアーゼとの複合体)を配置するように構成され、標的位置のどちらの側にも2つの一本鎖切断又は対になった一本鎖切断(すなわち、2つのgRNAとCas9ニッカーゼとの複合体)を配置するように構成されている。ある特定の実施態様において、4つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、標的位置のどちらの側にも一本鎖切断の2つの対(すなわち、2つのgRNAとCas9ニッカーゼとの複合体の2つの対)が生成するように構成されている。二本鎖切断又は対になったより近い2つの一本鎖ニックは、理想的には標的位置の0-500bp以内(例えば、標的位置から450、400、350、300、250、200、150、100、50又は25bp以下)であってもよい。ニッカーゼが使用される場合、対になった2つのニックは、互いに25-55bp以内(例えば、25から50、25から45、25から40、25から35、25から30、50から55、45から55、40から55、35から55、30から55、30から50、35から50、40から50、45から50、35から45、又は40から45bpの間)であり、互いに100bp以下(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10bp以下)離れている。
【0556】
9.2 HDR修復、HDRが媒介するノックイン、及び鋳型核酸
本明細書で提供される方法のある特定の実施態様において、HDRが媒介する配列変更は、外因的に提供される鋳型核酸(本明細書では、ドナーコンストラクトとも称される)を使用して、RS1、RL2又はLAT遺伝子中の一又は複数のヌクレオチドの配列を変更するのに使用される。ある特定の実施態様において、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置のHDRが媒介する変更は、外因的に提供されるドナー鋳型又は鋳型核酸を用いたHDRによって起こる。例えば、ドナーコンストラクト又は鋳型核酸は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更をもたらす。ある特定の実施態様において、プラスミドドナーは、相同組換えのための鋳型として使用される。ある特定の実施態様において、一本鎖ドナー鋳型は、標的配列とドナー鋳型との間のHDRの代替方法(例えば、一本鎖アニーリング)によるHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更のための鋳型として使用される。HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置のドナー鋳型により実行される変更は、Cas9分子による切断に依存する。Cas9による切断は、二本鎖切断又は2つの一本鎖切断を含んでいてもよい。
【0557】
ある特定の実施態様において、HDRが媒介する配列変更は、外因的に提供される鋳型核酸を使用しないで、RS1、RL2又はLAT遺伝子中の一又は複数のヌクレオチドの配列を変更するのに使用される。ある特定の実施態様において、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更は、内因性のゲノムドナー配列を用いたHDRによって起こる。例えば、内因性のゲノムドナー配列は、RL2、LAT、又はRS1標的位置の変更をもたらす。ある特定の実施態様において、内因性のゲノムドナー配列は、標的配列と同じ染色体に配置される。ある特定の実施態様において、内因性のゲノムドナー配列は、標的配列と異なる染色体に配置される。内因性のゲノムドナー配列によるHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更は、Cas9分子による切断に依存する。Cas9による切断は、二本鎖切断又は2つの一本鎖切断を含んでいてもよい。
【0558】
本明細書で提供される方法のある特定の実施態様において、HDRが媒介する変更は、RL2、LAT、又はRS1遺伝子中の単一のヌクレオチドを変更するのに使用される。これらの実施態様は、1つの二本鎖切断又は2つの一本鎖切断のいずれかを利用する場合がある。ある特定の実施態様において、単一のヌクレオチド変更は、(1)1つの二本鎖切断、(2)2つの一本鎖切断、(3)切断が標的位置のそれぞれの側で起こる2つの二本鎖切断、(4)二本鎖切断と2つの一本鎖切断とが標的位置のそれぞれの側で起こる1つの二本鎖切断及び2つの一本鎖切断、(5)一本鎖切断の対が標的位置のそれぞれの側で起こる4つの一本鎖切断、又は(6)1つの一本鎖切断を使用して取り込まれる。
【0559】
一本鎖鋳型核酸(例えば、ドナー鋳型)が使用されるある特定の実施態様において、標的位置は、代替のHDRによって変更されてもよい。
【0560】
HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置のドナー鋳型により実行される変更は、Cas9分子による切断に依存する。Cas9による切断は、ニック、二本鎖切断、又は2つの一本鎖切断、例えば標的核酸の各鎖につき1つの一本鎖切断を含んでいてもよい。標的核酸に切断を導入した後、切断末端で切除がなされ、結果として一本鎖のオーバーハングを有するDNA領域が生じる。
【0561】
規範的なHDRでは、標的核酸に対する相同配列を含む二本鎖ドナー鋳型が導入されるが、この二本鎖ドナー鋳型は、標的核酸に直接取り込まれるか、又は標的核酸の配列を変えるための鋳型として使用されるかのいずれでもよい。切断での切除の後、修復は、異なる経路によって、例えば二重のホリディジャンクションモデル(又は二本鎖切断修復、すなわちDSBR経路)又は合成依存性鎖アニーリング(SDSA)経路によって進行させることができる。二重のホリディジャンクションモデルでは、標的核酸の2つの一本鎖オーバーハングによるドナー鋳型中の相同配列への鎖侵入が起こり、結果として2つのホリディジャンクションを有する中間体の形成が生じる。ジャンクションは、侵入鎖の末端から新しいDNAが合成されるにつれて移動して、切除の結果生じるギャップを満たす。新たに合成されたDNAの末端が切除された末端にライゲートされると、ジャンクションが分解され、結果として標的核酸の変更が生じる。ジャンクションが分解するときにドナー鋳型との交差が起こる可能性がある。SDSA経路では、1つのみの一本鎖オーバーハングがドナー鋳型に侵入し、侵入鎖の末端から新しいDNAが合成されて、切除の結果生じるギャップを満たす。次いで新たに合成されたDNAは残存する一本鎖オーバーハングにアニールし、新しいDNAが合成されて、ギャップを満たし、鎖がライゲートされて、変更されたDNA二重鎖が産生される。
【0562】
代替HDRにおいて、一本鎖ドナー鋳型、例えば鋳型核酸が導入される。所望の標的位置を変更するための標的核酸におけるニック、一本鎖切断、又は二本鎖切断は、Cas9分子、例えば本明細書に記載されるCas9分子によって媒介され、切断における切除は、一本鎖オーバーハングを出現させるためになされる。HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置を変更するために鋳型核酸の配列を取り込むことは、典型的には、上述したようにSDSA経路によってなされる。
【0563】
鋳型核酸に関する追加の詳細は、国際出願PCT/US2014/057905における「鋳型核酸」というタイトルのセクションIVで提供されている。
【0564】
ある特定の実施態様において、二本鎖切断は、HNH様ドメインに関連する切断活性、及びRuvC様ドメイン、例えばN末端RuvC様ドメインに関連する切断活性を有するCas9分子、例えば野生型Cas9によって実行される。このような実施態様は、単一のgRNAのみを必要とする。
【0565】
ある特定の実施態様において、1つの一本鎖切断、又はニックは、ニッカーゼ活性を有するCas9分子、例えば、本明細書に記載されるようなCas9ニッカーゼ(例えばD10A Cas9ニッカーゼなど)によって実行される。ニックが入れられた標的核酸は、alt-HDRのための基質であり得る。
【0566】
ある特定の実施態様において、2つの一本鎖切断、又はニックは、ニッカーゼ活性、例えば、HNH様ドメインに関連する切断活性又はN末端RuvC様ドメインに関連する切断活性を有するCas9分子によって実行される。このような実施態様は通常、2つのgRNA、すなわち各一本鎖切断の配置につき1つずつのgRNAを必要とする。ある特定の実施態様において、ニッカーゼ活性を有するCas9分子は、gRNAがハイブリダイズする鎖を切断するが、gRNAがハイブリダイズする鎖に相補的な鎖は切断しない。ある特定の実施態様において、ニッカーゼ活性を有するCas9分子は、gRNAがハイブリダイズする鎖を切断しないが、gRNAがハイブリダイズする鎖に相補的な鎖を切断する。
【0567】
ある特定の実施態様において、ニッカーゼは、HNH活性を有し、例えば、RuvC活性が不活性化されたCas9分子、例えばD10に突然変異を有する、例えばD10A突然変異を有するCas9分子(例えば配列番号10を参照)である。D10Aは、RuvCを不活性化し、それゆえにCas9ニッカーゼは、HNH活性(のみ)を有し、gRNAがハイブリダイズする鎖(例えば、その上にNGG PAMを有さない相補鎖)で切断を行うことができる。ある特定の実施態様において、H840突然変異、例えばH840A突然変異を有するCas9分子は、ニッカーゼとして使用することができる。H840Aは、HNHを不活性化し、それゆえにCas9ニッカーゼは、RuvC活性(のみ)を有し、非相補鎖(例えば、NGG PAMを有し、その配列がgRNAと同一である鎖)で切断を行う。ある特定の実施態様において、N863突然変異、例えばN863A突然変異を有するCas9分子は、ニッカーゼとして使用することができる。N863Aは、HNHを不活性化し、それゆえにCas9ニッカーゼは、RuvC活性(のみ)を有し、非相補鎖(NGG PAMを有し、その配列がgRNAと同一である鎖)で切断を行う。ある特定の実施態様において、N580突然変異、例えばN580A突然変異を有するCas9分子は、ニッカーゼとして使用することができる。N580Aは、HNHを不活性化し、それゆえにCas9ニッカーゼは、RuvC活性(のみ)を有し、非相補鎖(NGG PAMを有し、その配列がgRNAと同一である鎖)で切断を行う。
【0568】
2つの一本鎖ニックを配置するためにニッカーゼ及び2つのgRNAが使用されるある特定の実施態様において、1つのニックが標的核酸のプラス鎖上にあり、1つのニックが標的核酸のマイナス鎖上にある。PAMは、外側に面していてもよい。gRNAは、gRNAが約0-50、0-100、又は0-200ヌクレオチド離れるように選択することができる。ある特定の実施態様において、2つのgRNAの標的指向性ドメインに相補的な標的配列間にオーバーラップはない。ある特定の実施態様において、gRNAは、オーバーラップしておらず、50、100、又は200ヌクレオチド離れている。ある特定の実施態様において、2つのgRNAの使用は、例えばオフターゲット結合を減少させることによって特異性を増加させることができる(Ran 2013)。
【0569】
ある特定の実施態様において、単一のニックは、HDR、例えばalt-HDRを誘導するのに使用することができる。ある特定の実施態様において、単一のニックは、所与の切断部位においてNHEJに対するHRの比率を増加させるのに使用することができる。ある特定の実施態様において、一本鎖切断は、前記gRNAの標的指向性ドメインが相補的である標的核酸の鎖中に形成される。ある特定の実施態様において、一本鎖切断は、前記gRNAの標的指向性ドメインが相補的である鎖以外の標的核酸の鎖中に形成される。
【0570】
9.2.1 標的位置に対する二本鎖又は一本鎖切断の配置
鎖の1つにおける二本鎖切断又は一本鎖切断は、所望の領域中に変更が産生されているHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に十分近いと予想される。ある特定の実施態様において、その距離は、50、100、200、300、350又は400ヌクレオチド以下である。ある特定の実施態様において、末端切除中にエキソヌクレアーゼが媒介する除去に供される領域内に標的位置が存在するように、切断は、標的位置に十分近いと予想される。HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置と切断との距離が大きすぎると、変更が求められる配列が末端切除に含まれない可能性があり、それゆえにそのような配列が変更されない可能性があるが、これは、ある特定の実施態様において、ドナー配列、外因的に提供されるドナー配列又は内因性のゲノムドナー配列のどちらかが、末端切除領域内の配列の変更にのみ使用されるためである。
【0571】
ある特定の実施態様において、本明細書に記載される方法は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の近くに一又は複数の切断を導入する。これらの実施態様のある特定のものにおいて、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置に隣接する2つ又はそれより多くの切断が導入される。2つ又はそれより多くの切断は、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置を含むゲノム配列を除去する(例えば、欠失させる)。本明細書に記載される全ての方法は、RS1、RL2、又はLAT遺伝子内のHSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の変更をもたらす。
【0572】
ある特定の実施態様において、gRNA標的指向性ドメインは、切断事象、例えば二本鎖又は一本鎖切断を、変更、例えば突然変異が求められる領域の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置するように構成されている。切断、例えば二本鎖又は一本鎖切断は、変更、例えば突然変異が求められる領域の上流又は下流に配置されていてもよい。ある特定の実施態様において、切断は、変更が求められる領域内、例えば少なくとも2つの突然変異ヌクレオチドによって画定される領域内に配置される。ある特定の実施態様において、切断は、変更が求められる領域に直接隣接して、例えば突然変異のすぐ上流又は下流に配置される。
【0573】
ある特定の実施態様において、以下で論じられるように、一本鎖切断には、第2のgRNA分子により配置された追加の一本鎖切断が伴う。標的指向性ドメインは、例えば、切断事象、例えば2つの一本鎖切断が、標的位置の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、又は200ヌクレオチド以内に配置されるように結合する。ある特定の実施態様において、第1及び第2のgRNA分子は、Cas9ニッカーゼをガイドする場合、一本鎖切断には、互いに十分近い第2のgRNAにより配置された追加の一本鎖切断が伴うように構成され、それにより所望の領域の変更を得ることができる。ある特定の実施態様において、第1及び第2のgRNA分子は、例えばCas9がニッカーゼである場合、前記第2のgRNAにより配置された一本鎖切断が前記第1のgRNA分子により配置された切断の10、20、30、40、又は50ヌクレオチド以内であるように構成されている。ある特定の実施態様において、2つのgRNA分子は、異なる鎖の同じ位置に又は互いの少数ヌクレオチド内に切断を配置して、例えば本質的に二本鎖切断を模倣するように構成されている。
【0574】
HDRが媒介する配列変更を誘導する目的でgRNA(単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNA)及びCas9ヌクレアーゼが二本鎖切断を誘導するある特定の実施態様において、切断部位は、標的位置から、0-200bpの間(例えば、0から175、0から150、0から125、0から100、0から75、0から50、0から25、25から200、25から175、25から150、25から125、25から100、25から75、25から50、50から200、50から175、50から150、50から125、50から100、50から75、75から200、75から175、75から150、75から125、75から100bp)である。ある特定の実施態様において、切断部位は、標的位置から、0-100bpの間(例えば、0から75、0から50、0から25、25から100、25から75、25から50、50から100、50から75又は75から100bp)である。
【0575】
ある特定の実施態様において、オーバーハングと共に切断を生成するのにニッカーゼを使用することによって、HDRを促進することができる。理論に拘束されることは望まないが、オーバーハングの一本鎖の性質は、例えばNHEJとは対照的に、HDRによって切断を修復する細胞の可能性を強化することができる。特異的に、ある特定の実施態様において、第1のニッカーゼを第1の標的配列に標的化する第1のgRNAと、第1の標的配列とは逆のDNA鎖上にあり、第1のニックからオフセットされている第2の標的配列に、第2のニッカーゼを標的化する第2のgRNAとを選択することによって、HDRは促進される。
【0576】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の標的指向性ドメインは、予め選択されたヌクレオチドから十分に離れてヌクレオチドが変更されない切断事象を配置するように構成されている。ある特定の実施態様において、gRNA分子の標的指向性ドメインは、エクソンを有する配列の変更又は不要なスプライシング事象を回避するために、イントロン/エクソンの境界、又は天然スプライスシグナルから十分に離れてイントロンの切断事象を配置するように構成されている。gRNA分子は、本明細書に記載されるように、第1、第2、第3及び/又は第4のgRNA分子であり得る。
【0577】
9.2.2 互いに関連する第1の切断及び第2の切断の配置
ある特定の実施態様において、以下で論じられるように、二本鎖切断には、第2のgRNA分子により配置された追加の二本鎖切断が伴ってもよい。
【0578】
ある特定の実施態様において、二本鎖切断には、第2のgRNA分子及び第3のgRNA分子により配置された2つの追加の一本鎖切断が伴ってもよい。
【0579】
ある特定の実施態様において、第1及び第2の一本鎖切断には、第3のgRNA分子及び第4のgRNA分子によって配置された2つの追加の一本鎖切断が伴ってもよい。
【0580】
2つ又はそれより多くの切断事象、例えば標的核酸中の二本鎖又は一本鎖切断を配置するのに2つ又はそれより多くのgRNAが使用される場合、2つ又はそれより多くの切断事象は、同一又は異なるCas9タンパク質によってなされてもよい。例えば、2つの二本鎖切断を配置するのに2つのgRNAが使用される場合、両方の二本鎖切断を作り出すのに単一のCas9ヌクレアーゼを使用することができる。2つ又はそれより多くの一本鎖切断(ニック)を配置するのに2つ又はそれより多くのgRNAが使用される場合、2つ又はそれより多くのニックを作り出すのに単一のCas9ニッカーゼを使用することができる。少なくとも1つの二本鎖切断及び少なくとも1つの一本鎖切断を配置するのに2つ又はそれより多くのgRNAが使用される場合、2つのCas9タンパク質を使用することができ、ここで2つのCas9タンパク質は、例えば、1つはCas9ヌクレアーゼであり、1つはCas9ニッカーゼである。ある特定の実施態様において、2つ又はそれより多くのCas9タンパク質を使用して、2つ又はそれより多くのCas9タンパク質を逐次的に送達することにより、標的核酸中の所望の位置における一本鎖切断の特異性に対する二本鎖切断の特異性を制御することができる。
【0581】
ある特定の実施態様において、第1のgRNA分子の標的指向性ドメイン及び第2のgRNA分子の標的指向性ドメインは、標的核酸分子の逆の鎖に相補的である。ある特定の実施態様において、gRNA分子及び第2のgRNA分子は、PAMが外側に向くように構成されている。
【0582】
ある特定の実施態様において、2つのgRNAは、互いに予め選択された距離の2つの位置でCas9が媒介する切断を指示するように選択される。ある特定の実施態様において、2つの切断点は、標的核酸の逆の鎖にある。ある特定の実施態様において、2つの切断点は、平滑末端化された切断を形成し、他の実施態様において、2つの切断点は、DNA末端が1つ又は2つのオーバーハング(例えば、一又は複数の5’オーバーハング及び/又は一又は複数の3’オーバーハング)を含むようにオフセットされる。ある特定の実施態様において、各切断事象は、ニックである。ある特定の実施態様において、ニックは、それらが二本鎖切断機構によって認識される切断を形成するのに十分な程度に互いに近い(例えばSSBr機構によって認識されるのとは対照的に)。ある特定の実施態様において、ニックは、それらがHDRの基質であるオーバーハングを作り出すのに十分な程度に離れており、すなわち切断の配置は、数回の切除を経たDNA基質を模倣する。例えば、ある特定の実施態様において、ニックは、前進的な切除のための基質であるオーバーハングが作り出されるように間隔を開けている。ある特定の実施態様において、2つの切断は、互いの25-65ヌクレオチド以内で間隔を開けている。2つの切断は、例えば、互いの約25、30、35、40、45、50、55、60、又は65ヌクレオチドであり得る。2つの切断は、例えば、互いの少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、又は65ヌクレオチドであり得る。2つの切断は、例えば、互いの最大で約30、35、40、45、50、55、60、又は65ヌクレオチドであり得る。ある特定の実施態様において、2つの切断は、互いの約25-30、30-35、35-40、40-45、45-50、50-55、55-60、又は60-65ヌクレオチドである。
【0583】
ある特定の実施態様において、切除された切断を模倣する切断は、3’オーバーハング(例えば、DSB及びニックによって生成したものであり、ここでニックは、3’オーバーハングを残す)、5’オーバーハング(例えば、DSB及びニックによって生成したものであり、ここでニックは、5’オーバーハングを残す)、3’及び5’オーバーハング(例えば、3つの切断によって生成したもの)、2つの3’オーバーハング(例えば、互いにオフセットしている2つのニックによって生成したもの)、又は2つの5’オーバーハング(例えば、互いにオフセットしている2つのニックによって生成したもの)を含む。
【0584】
HDRが媒介する変更を誘導する目的で、Cas9ニッカーゼと複合体化した2つのgRNA(独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNA)が2つの一本鎖切断を誘導するある特定の実施態様において、より近いニックは、標的位置から、0-200bpの間(例えば、0から175、0から150、0から125、0から100、0から75、0から50、0から25、25から200、25から175、25から150、25から125、25から100、25から75、25から50、50から200、50から175、50から150、50から125、50から100、50から75、75から200、75から175、75から150、75から125、又は75から100bp)であり、2つのニックは、理想的には、互いの25-65bp以内(例えば、25から50、25から45、25から40、25から35、25から30、30から55、30から50、30から45、30から40、30から35、35から55、35から50、35から45、35から40、40から55、40から50、40から45bp、45から50bp、50から55bp、55から60bp、又は60から65bp)であり、互いに100bp以下離れていてもよい(例えば、互いに90、80、70、60、50、40、30、20、10、又は5bp以下離れている)。ある特定の実施態様において、切断部位は、標的位置から、0-100bpの間(例えば、0から75、0から50、0から25、25から100、25から75、25から50、50から100、50から75、又は75から100bp)である。
【0585】
ある特定の実施態様において、2つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、二本鎖切断を標的位置の両方の側に配置するように構成されている。ある特定の実施態様において、3つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、二本鎖切断(すなわち、1つのgRNAとcas9ヌクレアーゼとの複合体)を配置するように構成され、標的位置のどちらの側にも2つの一本鎖切断又は対になった一本鎖切断(すなわち、2つのgRNAとCas9ニッカーゼとの複合体)を配置するように構成されている。ある特定の実施態様において、4つのgRNA、例えば、独立して、単分子(又はキメラ)又はモジュラーgRNAは、標的位置のどちらの側にも一本鎖切断の2つの対(すなわち、2つのgRNAとCas9ニッカーゼとの複合体の2つの対)が生成するように構成されている。二本鎖切断又は対になったより近い2つの一本鎖ニックは、理想的には標的位置の0-500bp以内(例えば、標的位置から、450、400、350、300、250、200、150、100、50又は25bp以下)であってもよい。ニッカーゼが使用される場合、対になった2つのニックは、ある特定の実施態様において、互いの25-65bp以内(例えば、25から55、25から50、25から45、25から40、25から35、25から30、50から55、45から55、40から55、35から55、30から55、30から50、35から50、40から50、45から50、35から45、40から45bp、45から50bp、50から55bp、55から60bp、又は60から65bpの間)であり、互いに100bp以下(例えば、90、80、70、60、50、40、30、又は20又は10bp以下)離れている。
【0586】
Cas9分子を切断に標的化するのに2つのgRNAが使用される場合、Cas9分子の異なる組合せが想定される。ある特定の実施態様において、第1のgRNAは、第1のCas9分子を第1の標的位置に標的化するのに使用され、第2のgRNAは、第2のCas9分子を第2の標的位置に標的化するのに使用される。ある特定の実施態様において、第1のCas9分子は、標的核酸の第1の鎖にニックを作り出し、第2のCas9分子は、逆の鎖にニックを作り出し、結果として二本鎖切断(例えば、平滑末端化された切断又はオーバーハングを有する切断)が起こる。
【0587】
1つの一本鎖切断を1つの鎖に標的化し、第2の一本鎖切断を逆の鎖に標的化するために、ニッカーゼの異なる組合せを選択することができる。組合せを選択する場合、1つの活性RuvC様ドメインを有するニッカーゼと、1つの活性HNHドメインを有するニッカーゼとが存在することを考慮に入れてもよい。ある特定の実施態様において、RuvC様ドメインは、標的核酸分子の非相補鎖を切断する。ある特定の実施態様において、HNH様ドメインは、一本鎖相補的ドメイン、例えば二本鎖核酸分子の相補鎖を切断する。一般的に、両方のCas9分子が同じ活性ドメインを有する(例えば、両方が活性RuvCドメインを有するか、又は両方が活性HNHドメインを有する)場合、標的の逆の鎖に結合する2つのgRNAを選択することができる。より詳細には、ある特定の実施態様において、第1のgRNAは、標的核酸の第1の鎖と相補的であり、活性RuvC様ドメインを有するニッカーゼと結合し、そのニッカーゼに、その第1のgRNAに非相補的な鎖、すなわち標的核酸の第2の鎖を切断させる。第2のgRNAは、標的核酸の第2の鎖と相補的であり、活性RuvC様ドメインを有するニッカーゼと結合し、そのニッカーゼに、その第2のgRNAに非相補的な鎖、すなわち標的核酸の第1の鎖を切断させる。逆に言えば、ある特定の実施態様において、第1のgRNAは、標的核酸の第1の鎖と相補的であり、活性HNHドメインを有するニッカーゼと結合し、そのニッカーゼに、その第1のgRNAに相補的な鎖、すなわち標的核酸の第1の鎖を切断させる。第2のgRNAは、標的核酸の第2の鎖と相補的であり、活性HNHドメインを有するニッカーゼと結合し、そのニッカーゼに、その第2のgRNAに相補的な鎖、すなわち標的核酸の第2の鎖を切断させる。別のアレンジメントにおいて、1つのCas9分子が活性RuvC様ドメインを有し、他のCas9分子が活性HNHドメインを有する場合、両方のCas9分子のgRNAが標的核酸の同じ鎖に相補的であってもよく、それにより、活性RuvC様ドメインを有するCas9分子が非相補鎖を切断することができ、HNHドメインを有するCas9分子が相補鎖を切断することができ、結果として二本鎖切断が生じる。
【0588】
9.2.3 ドナー鋳型の相同性アーム
例えば切除された一本鎖オーバーハングによるドナー鋳型内の相補的領域の発見を可能にするために、相同性アームは、少なくとも末端切除が起こる可能性がある領域まで伸長すると予想される。全体の長さは、例えばプラスミドのサイズ又はウイルスパッケージングの限界などのパラメーターによって限定され得る。ある特定の実施態様において、相同性アームは、繰り返しの要素、例えばAluリピート又はLINEリピートまで伸長しない。
【0589】
例示的な相同性アームの長さとしては、少なくとも50、100、250、500、750、1000、2000、3000、4000、又は5000ヌクレオチドが挙げられる。ある特定の実施態様において、相同性アームの長さは、50-100、100-250、250-500、500-750、750-1000、1000-2000、2000-3000、3000-4000、又は4000-5000ヌクレオチドである。
【0590】
鋳型核酸は、この用語が本明細書で使用される場合、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の構造を変更するのにCas9分子及びgRNA分子と共に使用することができる核酸配列を指す。ある特定の実施態様において、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置は、一又は複数のヌクレオチドが付加される標的核酸上の、2つのヌクレオチド間の部位、例えば隣接するヌクレオチド間の部位であってもよい。代替として、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置は、鋳型核酸によって変更される一又は複数のヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0591】
ある特定の実施態様において、標的核酸は、典型的には切断部位又は切断部位の近くに、鋳型核酸の配列の一部又は全てを有するように修飾される。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、一本鎖である。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、二本鎖である。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、DNA、例えば二本鎖DNAである。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、一本鎖DNAである。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、Cas9及びgRNAと同じベクターバックボーン、例えばAAVゲノム、プラスミドDNA上にコードされている。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、インビボでベクターバックボーンから切り出され、例えば、鋳型核酸は、gRNA認識配列が隣接する。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、内因性のゲノム配列を含む。
【0592】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、HDR事象に参加することによって標的位置の構造を変更する。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、標的位置の配列を変更する。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、修飾された、又は天然に存在しない塩基の標的核酸への取り込みをもたらす。
【0593】
典型的には、鋳型配列は、標的配列が媒介する破損又は標的配列との触媒による組換えを受ける。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、eaCas9が媒介する切断事象によって切断される標的配列上の部位に対応する配列を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、第1のCas9が媒介する事象で切断される標的配列上の第1の部位、及び第2のCas9が媒介する事象で切断される標的配列上の第2の部位の両方に対応する配列を含む。
【0594】
鋳型核酸は、典型的には、以下の成分:
[5’相同性アーム]-[置き換え配列]-[3’相同性アーム]
を含む。
【0595】
相同性アームは染色体への組換えをもたらし、したがって望ましくない要素、例えば突然変異又はシグネチャーを、置き換え配列で置き換える。ある特定の実施態様において、相同性アームは、最も遠位の切断部位に隣接する。
【0596】
ある特定の実施態様において、5’相同性アームの3’末端は、置き換え配列の5’末端の隣の位置にある。ある特定の実施態様において、5’相同性アームは、置き換え配列の5’末端から、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、又は5000ヌクレオチド5’に伸長していてもよい。
【0597】
ある特定の実施態様において、3’相同性アームの5’末端は、置き換え配列の3’末端の隣の位置にある。ある特定の実施態様において、3’相同性アームは、置き換え配列の3’末端から、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、又は5000ヌクレオチド3’に伸長していてもよい。
【0598】
ある特定の実施態様において、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置における一又は複数のヌクレオチドを変更するために、相同性アーム、例えば5’及び3’相同性アームがそれぞれ、最も遠位のgRNAに隣接する配列の約1000bp(例えば、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置のいずれかの側における配列の1000bp)を含んでいてもよい。
【0599】
ある特定の実施態様において、一方又は両方の相同性アームは、ある特定の配列リピート要素、例えばAluリピート又はLINE要素などを回避するために、短くなっていてもよい。例えば、5’相同性アームは、配列リピート要素を回避するために、短くなっていてもよい。ある特定の実施態様において、3’相同性アームは、配列リピート要素を回避するために、短くなっていてもよい。ある特定の実施態様において、5’及び3’相同性アームの両方は、ある特定の配列リピート要素などを回避するために、短くなっていてもよい。
【0600】
ある特定の実施態様において、HSV RS1標的位置、HSV RL2標的位置、又はHSV LAT標的位置の配列を変更するための鋳型核酸は、一本鎖オリゴヌクレオチド、例えば、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)として使用するために設計されてもよい。ssODNを使用する場合、5’及び3’相同性アームの長さは、約200bpまでの範囲であってもよく、例えば、少なくとも25、50、75、100、125、150、175、又は200bpの長さである。それより長い相同性アームも、ssODNに関してオリゴヌクレオチド合成を改善し続けるために可能である。ある特定の実施態様において、それより長い相同性アームは、化学合成以外の方法によって、例えば、長い二本鎖核酸を変性させ鎖の1つを精製することによって、例えば、固体基質に固定された鎖特異的配列に関する親和性によって作製される。
【0601】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸が、相同性部分をニックの5’方向に(すなわち、ニックが入れられた鎖の5’方向に)伸長させた場合、alt-HDRは、より効率的に進行する。したがって、ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、より長い相同性アーム及びより短い相同性アームを有し、より長い相同性アームは、ニックの5’にアニールすることができる。ある特定の実施態様において、ニックの5’方向にアニールすることができるアームは、ニックから、又は置き換え配列の5’若しくは3’末端から、少なくとも25、50、75、100、125、150、175、又は200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、又は5000ヌクレオチドである。ある特定の実施態様において、ニックの5’方向にアニールすることができるアームは、ニックの3’方向にアニールすることができるアームより、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、又は約50%長い。ある特定の実施態様において、ニックの5’方向にアニールすることができるアームは、ニックの3’方向にアニールすることができるアームより、少なくとも2倍、3倍、4倍、又は5倍長い。ssDNA鋳型が無傷の鎖又はニックが入れられた鎖にアニールできるかどうかに応じて、ニックの5’方向にアニールする相同性アームは、それぞれssDNA鋳型の5’末端又はssDNA鋳型の3’末端にあってもよい。
【0602】
同様に、ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、鋳型核酸がニックの5’方向に相同性部分を伸長させるように、5’相同性アーム、置き換え配列、及び3’相同性アームを有する。例えば、5’相同性アーム及び3’相同性アームは、実質的に同じ長さであってもよいが、置き換え配列は、ニックの3’方向よりもニックの5’方向にさらに伸長していてもよい。ある特定の実施態様において、置き換え配列は、ニックの3’末端よりもニックの5’末端に、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、2倍、3倍、4倍、又は5倍さらに伸長する。
【0603】
ある特定の実施態様において、alt-HDRは、鋳型核酸の中心にニックがある場合、より効率的に進行する。したがって、ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、本質的に同じサイズの2つの相同性アームを有する。例えば、鋳型核酸の第1の相同性アームは、鋳型核酸の第2の相同性アームの約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、又は約1%以内の長さを有していてもよい。
【0604】
同様に、ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、鋳型核酸がニックのいずれかの側で実質的に同じ距離伸長するように、5’相同性アーム、置き換え配列、及び3’相同性アームを有する。例えば、相同性アームは、異なる長さを有していてもよいが、置き換え配列は、これを相殺するように選択されてもよい。例えば、置き換え配列は、ニックの3’方向に伸長するよりも長くニックから5’方向にさらに伸長していてもよいが、ニックの相同性アームの5’は、これを相殺するためにニックの相同性アームの3’より短い。その逆も可能であり、例えば、置き換え配列は、ニックの5’方向に伸長するよりも長くニックから3’方向にさらに伸長していてもよいが、ニックの相同性アームの3’は、これを相殺するためにニックの相同性アームの5’より短い。
【0605】
9.2.4 鋳型核酸
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、二本鎖である。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、一本鎖である。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、一本鎖部分及び二本鎖部分を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、ニック及び/又は置き換え配列のいずれかの側に、約50から100bp、例えば、55から95、60から90、65から85、又は70から80bpの相同性を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100bpの、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。
【0606】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約150から200bp、例えば、155から195、160から190、165から185、又は170から180bpの、ニック及び/又は置き換え配列の相同性部分の3’を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、又は200bpの、ニック又は置き換え配列の相同性部分の3’を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、又は10bp未満の、ニック又は置き換え配列の相同性部分の5’を含む。
【0607】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約150から200bp、例えば、155から195、160から190、165から185、又は170から180bpの、ニック及び/又は置き換え配列の相同性部分の5’を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、又は200bpの、ニック又は置き換え配列の相同性部分の5’を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、又は10bp未満の、ニック又は置き換え配列の相同性部分の3’を含む。
【0608】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、例えば、付加され得る、又は標的核酸中の変化の鋳型になり得る一又は複数のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。他の実施態様において、鋳型核酸は、標的位置を修飾するのに使用できるヌクレオチド配列を含む。
【0609】
鋳型核酸は、置き換え配列を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、5’相同性アームを含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、3’相同性アームを含む。
【0610】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、直鎖状二本鎖DNAである。その長さは、例えば、約150-200bp、例えば、約150、160、170、180、190、又は200bpであり得る。その長さは、例えば、少なくとも150、160、170、180、190、又は200bpであり得る。ある特定の実施態様において、その長さは、150、160、170、180、190、又は200bpを超えない。ある特定の実施態様において、二本鎖鋳型核酸は、約160bp、例えば、約155-165、150-170、140-180、130-190、120-200、110-210、100-220、90-230、又は80-240bpの長さを有する。
【0611】
鋳型核酸は、直鎖状一本鎖DNAであってもよい。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、(i)標的核酸のニックが入れられた鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、(ii)標的核酸の無傷の鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、(iii)標的核酸のプラス鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、(iv)標的核酸のマイナス鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、又は前述したものの1つより多くである。その長さは、例えば、約150-200ヌクレオチド、例えば、約150、160、170、180、190、又は200ヌクレオチドであり得る。その長さは、例えば、少なくとも150、160、170、180、190、又は200ヌクレオチドであり得る。ある特定の実施態様において、長さは、150、160、170、180、190、又は200ヌクレオチドを超えない。ある特定の実施態様において、一本鎖鋳型核酸は、約160ヌクレオチド、例えば、約155-165、150-170、140-180、130-190、120-200、110-210、100-220、90-230、又は80-240ヌクレオチドの長さを有する。
【0612】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、環状二本鎖DNA、例えばプラスミドである。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、置き換え配列及び/又はニックのいずれかの側において、約500から1000bpの相同性を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000bpの、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、少なくとも300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000bpの、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000bp以下の、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。
【0613】
ある特定の実施態様において、一方又は両方の相同性アームは、ある特定の配列リピート要素、例えばAluリピート、LINE要素などを回避するために、短くなっていてもよい。例えば、5’相同性アームは、配列リピート要素を回避するために、短くなっていてもよいし、一方で3’相同性アームは、配列リピート要素を回避するために、短くなっていてもよい。ある特定の実施態様において、5’及び3’相同性アームの両方は、ある特定の配列リピート要素などを回避するために、短くなっていてもよい。
【0614】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、アデノウイルスベクター、例えばAAVベクターであり、例えばssDNA分子は、AAVカプシド中へのパッケージングを可能にする長さ及び配列を有する。ベクターは、例えば5kb未満であってもよく、カプシドへのパッケージングを促進するITR配列を含有していてもよい。ベクターは、統合欠陥性である。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、置き換え配列及び/又はニックのいずれかの側において、約150から1000ヌクレオチドの相同性を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000ヌクレオチドの、ニック若しくは置き換え配列の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、少なくとも100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000ヌクレオチドの、ニック若しくは置き換え配列の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、最大で100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000ヌクレオチドの、ニック若しくは置き換え配列の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。
【0615】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、レンチウイルスベクター、例えば、IDLV(統合欠陥性のレンチウイルス)である。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、置き換え配列及び/又はニックのいずれかの側において、約500から1000bpの相同性を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、約300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000bpの、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、少なくとも300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000bpの、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000bp以下の、ニック若しくは置き換え配列の相同性部分の5’、ニック若しくは置き換え配列の3’、又はニック若しくは置き換え配列の5’及び3’の両方を含む。
【0616】
ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、Cas9が鋳型核酸を認識しそれを切断しないように、一又は複数の突然変異、例えばサイレント突然変異を含む。鋳型核酸は、変更しようとする細胞のゲノム中の対応する配列と比べて、例えば少なくとも1、2、3、4、5、10、20、又は30個のサイレント突然変異を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、変更しようとする細胞のゲノム中の対応する配列と比べて、最大で2、3、4、5、10、20、30、又は50個のサイレント突然変異を含む。ある特定の実施態様において、cDNAは、Cas9が鋳型核酸を認識しそれを切断しないように、一又は複数の突然変異、例えばサイレント突然変異を含む。鋳型核酸は、変更しようとする細胞のゲノム中の対応する配列と比べて、例えば少なくとも1、2、3、4、5、10、20、又は30個のサイレント突然変異を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、変更しようとする細胞のゲノム中の対応する配列と比べて、最大で2、3、4、5、10、20、30、又は50個のサイレント突然変異を含む。
【0617】
ある特定の実施態様において、5’及び3’相同性アームはそれぞれ、置き換え配列に対応するヌクレオチドに隣接する配列の長さを含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、5’相同性アーム及び3’相同性アームが隣接する置き換え配列を含み、ここで5’相同性アーム及び3’相同性アームは、それぞれ独立して、10又はそれより多くの、20又はそれより多くの、50又はそれより多くの、100又はそれより多くの、150又はそれより多くの、200又はそれより多くの、250又はそれより多くの、300又はそれより多くの、350又はそれより多くの、400又はそれより多くの、450又はそれより多くの、500又はそれより多くの、550又はそれより多くの、600又はそれより多くの、650又はそれより多くの、700又はそれより多くの、750又はそれより多くの、800又はそれより多くの、850又はそれより多くの、900又はそれより多くの、1000又はそれより多くの、1100又はそれより多くの、1200又はそれより多くの、1300又はそれより多くの、1400又はそれより多くの、1500又はそれより多くの、1600又はそれより多くの、1700又はそれより多くの、1800又はそれより多くの、1900又はそれより多くの、又は2000又はそれより多くのヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、5’相同性アーム及び3’相同性アームが隣接する置き換え配列を含み、ここで5’相同性アーム及び3’相同性アームは、それぞれ独立して、少なくとも50、100、又は150ヌクレオチドを含むが、繰り返しの要素を含むほど長くない。ある特定の実施態様において、鋳型核酸は、それぞれ独立して5から100、10から150、又は20から150ヌクレオチドを含む5’相同性アーム及び3’相同性アームが隣接する置き換え配列を含む。ある特定の実施態様において、置き換え配列は、任意選択的に、プロモーター及び/又はポリAシグナルを含んでいてもよい。
【0618】
9.3 一本鎖アニーリング
一本鎖アニーリング(SSA)は、標的核酸中に存在する2つのリピート配列間の二本鎖切断を修復する別のDNA修復プロセスである。SSA経路によって利用されるリピート配列は、一般的に、30ヌクレオチドより大きい長さを有する。切断末端での切除は、標的核酸の両方の鎖にリピート配列を出現させるためになされる。切除後、リピート配列を含有する一本鎖オーバーハングは、リピート配列の不適切なアニーリング、例えばそれ自体へのアニーリングを防ぐために、RPAタンパク質でコーティングされる。RAD52は、オーバーハング上のリピート配列のそれぞれに結合し、相補的リピート配列のアニーリングが可能になるように配列を並べる。アニーリング後、オーバーハングの一本鎖のフラップは切断される。新しいDNA合成が全てのギャップを埋め、ライゲーションがDNA二重鎖を復元する。プロセシングの結果として、2つのリピート間のDNA配列が欠失する。欠失の長さは、利用される2つのリピートの配置、及び切除の経路又はプロセシビリティー(processivity)などの多くの因子に依存する場合がある。
【0619】
HDR経路とは対照的に、SSAは、標的核酸配列を変更するのに鋳型核酸を必要としない。その代わりに、相補的リピート配列が利用される。
【0620】
9.4 他のDNA修復経路
9.4.1 SSBR(一本鎖切断修復)
ゲノム中の一本鎖切断(SSB)は、上記で論じられたDSB修復メカニズムとは異なるメカニズムであるSSBR経路によって修復される。SSBR経路は、4つの主要な段階:SSB検出、DNA末端プロセシング、DNAギャップの充填、及びDNAライゲーションを有する。より詳細な説明はCaldecott 2008に示されており、ここでは要約を示す。
【0621】
第1の段階において、SSBが生じると、PARP1及び/又はPARP2が切断を認識し、修復機構を動員する。DNA切断におけるPARP1の結合及び活性は一過性であり、損傷部位におけるSSBrタンパク質複合体の限局的な蓄積又は安定性を促進することによってSSBrを促進するようである。ほぼ間違いなく、これらのSSBrタンパク質の中でも最も重要なものは、XRCC1であり、これは、DNA3’及び5’末端のクリーニングに関与するタンパク質などのSSBrプロセスの複数の酵素的な成分と相互作用する、それを安定化させる、及びそれを刺激する分子の足場として機能する。例えば、XRCC1は、末端プロセシングを促進する数種のタンパク質(DNAポリメラーゼベータ、PNK、並びに3つのヌクレアーゼ、APE1、APTX、及びAPLF)と相互作用する。APE1は、エンドヌクレアーゼ活性を有する。APLFは、エンドヌクレアーゼ及び3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を示す。APTXは、エンドヌクレアーゼ及び3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0622】
全てではないとしてもほとんどのSSBの3’及び/又は5’末端は「損傷を受けている」ため、この末端プロセシングはSSBRの重要な段階である。末端プロセシングは、一般的に、末端がライゲーション可能になるように、損傷を受けた3’末端をヒドロキシル化された状態に復元すること、及び/又は損傷を受けた5’末端をリン酸部分に復元することを含む。損傷を受けた3’末端をプロセシングできる酵素としては、PNKP、APE1、及びTDP1が挙げられる。損傷を受けた5’末端をプロセシングできる酵素としては、PNKP、DNAポリメラーゼベータ、及びAPTXが挙げられる。またLIG3(DNAリガーゼIII)も、末端プロセシングに関与する可能性がある。末端がクリーニングされると、ギャップの充填を起こすことができる。
【0623】
DNAギャップ充填の段階で、典型的に存在するタンパク質は、PARP1、DNAポリメラーゼベータ、XRCC1、FEN1(フラップエンドヌクレアーゼ1)、DNAポリメラーゼデルタ/エプシロン、PCNA、及びLIG1である。2つのギャップ充填方法、すなわちショートパッチ修復及びロングパッチ修復がある。ショートパッチ修復は、失われている単一のヌクレオチドの挿入を含む。一部のSSBでは、「ギャップ充填」は、2つ又はそれより多くのヌクレオチドの入れ替えを継続することができる(12塩基までの入れ替えが報告されている)。FEN1は、入れ替えられた5’残基を除去するエンドヌクレアーゼである。Polβなどの複数のDNAポリメラーゼがSSBの修復に関与しており、DNAポリメラーゼの選択は、SSBの源及びタイプの影響を受ける。
【0624】
第4の段階において、LIG1(リガーゼI)又はLIG3(リガーゼIII)などのDNAリガーゼが、末端の結合を触媒する。ショートパッチ修復はリガーゼIIIを使用し、ロングパッチ修復はリガーゼIを使用する。
【0625】
SSBRは、時には、複製と共役している。この経路は、CtIP、MRN、ERCC1、及びFEN1の一又は複数を含み得る。SSBRを促進する可能性がある追加の因子としては、aPARP、PARP1、PARP2、PARG、XRCC1、DNAポリメラーゼb、DNAポリメラーゼd、DNAポリメラーゼe、PCNA、LIG1、PNK、PNKP、APE1、APTX、APLF、TDP1、LIG3、FEN1、CtIP、MRN、及びERCC1が挙げられる。
【0626】
9.4.2 MMR(ミスマッチ修復)
細胞は、3つの除去修復経路:MMR、BER、及びNERを含有する。除去修復経路は、典型的にはDNAの1つの鎖における損傷部位を認識し、次いでエキソ/エンドヌクレアーゼが損傷部位を除去し、1-30ヌクレオチドのギャップを残し、それに続いてDNAポリメラーゼによってギャップが充填され、最終的にリガーゼでシールされるという共通の特徴を有する。より完全な図は、Li、Cell Research(2008)18:85-98に示されており、ここでは要約を提供する。
【0627】
ミスマッチ修復(MMR)は、誤って対合したDNA 塩基に作動する。
【0628】
MSH2/6又はMSH2/3複合体の両方は、ミスマッチ認識及び修復の開始において重要な役割を果たすATPアーゼ活性を有する。MSH2/6は、塩基-塩基ミスマッチを優先的に認識し、1又は2ヌクレオチドの誤った対合を同定するが、MSH2/3は、より大きいIDの誤った対合を優先的に認識する。
【0629】
hMLH1は、hPMS2とヘテロ二量体化して、ATPアーゼ活性を有し、MMRの複数の工程にとって重要なhMutLαを形成する。hMLH1は、EXO1を含む3’ニックにより指示されるMMRにおいて重要な役割を果たすPCNA/複製因子C(RFC)依存性エンドヌクレアーゼ活性を有する。(EXO1は、HR及びMMRの両方に参加するものである)。hMLH1は、ミスマッチによって引き起こされる切り出しの終結を調節する。リガーゼIは、この経路に関連するリガーゼである。MMRを促進する可能性がある追加の因子としては、EXO1、MSH2、MSH3、MSH6、MLH1、PMS2、MLH3、DNAPold、RPA、HMGB1、RFC、及びDNAリガーゼIが挙げられる。
【0630】
9.4.3 塩基除去修復(BER)
塩基除去修復(BER)経路は、細胞周期にわたり活性であり、主としてゲノムから小さいへリックスを歪めない塩基損傷部位を除去することに関与する。対照的に、関連するヌクレオチド除去修復経路(次のセクションで論じられる)は、嵩高なへリックスを歪める損傷部位を修復する。より詳細な説明は、Caldecott、Nature Reviews Genetics 9、619-631(August 2008)に示されており、ここでは要約を示す。
【0631】
DNA塩基が損傷すると、塩基除去修復(BER)が始まり、そのプロセスは、5つの主要な工程:(a)損傷を受けたDNA塩基の除去;(b)それに続く塩基部位の切開;(c)DNA末端のクリーンアップ;(d)修復ギャップへの所望のヌクレオチドの挿入;及び(e)DNA骨格中の残存するニックのライゲーションに簡易化することができる。これらの最後の工程は、SSBRに類似している。
【0632】
第1の工程において、損傷特異的なDNAグリコシラーゼは、塩基を糖リン酸骨格に連結するN-グリコシド結合の切断を介して損傷を受けた塩基を切り出す。次いで関連するリアーゼ活性を有するAPエンドヌクレアーゼ-1(APE1)又は二官能性DNAグリコシラーゼがホスホジエステル骨格を切開し、DNA一本鎖切断(SSB)を作り出した。BERの第3の工程は、DNA末端のクリーンアップを含む。BERの第4の工程は、修復ギャップに新しい相補的ヌクレオチドを付加するPolβによって行われ、最終的な工程で、XRCC1/リガーゼIIIが、DNA骨格中の残存するニックをシールする。これにより、ショートパッチBER経路が完了し、損傷を受けたDNA塩基の大多数(~80%)が修復される。しかしながら、工程3における5’末端が末端プロセシング活性に耐性である場合、Polβによる1つのヌクレオチド挿入後、次いで複製型DNAポリメラーゼ、Polδ/εへのポリメラーゼスイッチが起こり、次いで~2-8つより多くのヌクレオチドがDNA修復ギャップに付加される。これは、プロセシビリティー因子である増殖性細胞核抗原(PCNA)と共にフラップエンドヌクレアーゼ-1(FEN-1)によって認識され切り出される5’フラップ構造を作り出す。次いでDNAリガーゼIがDNA骨格中の残存するニックをシールし、ロングパッチBERを完了させる。BER経路を促進する可能性がある追加の因子としては、DNAグリコシラーゼ、APE1、Polb、Pold、Pole、XRCC1、リガーゼIII、FEN-1、PCNA、RECQL4、WRN、MYH、PNKP、及びAPTXが挙げられる。
【0633】
9.4.4 ヌクレオチド除去修復(NER)
ヌクレオチド除去修復(NER)は、DNAから嵩高なへリックスを歪める損傷部位を除去する重要な切り出しメカニズムである。NERに関する追加の詳細は、Marteijn等、Nature Reviews Molecular Cell Biology 15、465-481(2014)に示されており、ここでは要約を示す。NERは、2つのより小さい経路:グローバルゲノムNER(GG-NER)及び転写共役修復NER(TC-NER)を包含する広範な経路である。GG-NER及びTC-NERは、DNA傷害の認識に異なる因子を使用する。しかしながら、それらは、損傷部位の切開、修復、及びライゲーションに同じ機構を利用する。
【0634】
損傷が認識されたら、細胞は、損傷部位を含有する短い一本鎖DNAセグメントを除去する。エンドヌクレアーゼXPF/ERCC1及びXPG(ERCC5によってコードされる)は、損傷部位のいずれかの側において、損傷を受けた鎖を切断することによって損傷部位を除去し、結果として22-30ヌクレオチドの一本鎖ギャップが生じる。次に、細胞は、DNAギャップ充填の合成及びライゲーションを実行する。このプロセスに関与するものは、PCNA、RFC、DNA Polδ、DNA Polε又はDNA Polκ、及びDNAリガーゼI又はXRCC1/リガーゼIIIである。複製細胞は、DNA polε及びDNAリガーゼIを使用する傾向があるが、非複製細胞は、ライゲーション工程を実行するために、DNA Polδ、DNA Polκ、及びXRCC1/リガーゼIII複合体を使用する傾向がある。
【0635】
NERは、以下の因子:XPA-G、POLH、XPF、ERCC1、XPA-G、及びLIG1を含み得る。転写共役NER(TC-NER)は、以下の因子:CSA、CSB、XPB、XPD、XPG、ERCC1、及びTTDAを含み得る。NER修復経路を促進する可能性がある追加の因子としては、XPA-G、POLH、XPF、ERCC1、XPA-G、LIG1、CSA、CSB、XPA、XPB、XPC、XPD、XPF、XPG、TTDA、UVSSA、USP7、CETN2、RAD23B、UV-DDB、CAK部分複合体、RPA、及びPCNAが挙げられる。
【0636】
9.4.5 鎖間架橋(ICL)
ICL修復経路と呼ばれる特定の経路は、鎖間架橋を修復する。鎖間架橋、又は異なるDNA鎖における塩基間の共有結合による架橋は、複製又は転写中に起こる可能性がある。ICL修復は、複数の修復プロセスの調整、特には、核酸分解活性、損傷乗り越え合成(TLS)、及びHDRの調整を含む。架橋された塩基のいずれかの側におけるICLを切り出すためにヌクレアーゼが動員され、一方でTLS及びHDRは、切断された鎖を修復するように調整される。ICL修復は、以下の因子:エンドヌクレアーゼ、例えば、XPF及びRAD51C、エンドヌクレアーゼ、例えばRAD51など、損傷乗り越えポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼゼータ及びRev1)、及びファンコーニ貧血(FA)タンパク質、例えば、FancJを含み得る。
【0637】
9.4.6 他の経路
哺乳動物には、数種の他のDNA修復経路が存在する。
【0638】
損傷乗り越え合成(TLS)は、欠陥のある複製事象の後に残った一本鎖切断を修復するための経路であり、損傷乗り越えポリメラーゼ、例えば、DNA polβ及びRev1を含む。
【0639】
エラーのない複製後修復(PRR)は、欠陥のある複製事象の後に残った一本鎖切断を修復するための別の経路である。
【0640】
9.5 標的化されたノックダウン
DNAレベルで遺伝子(例えば、aRS1、RL2、又はLAT遺伝子)を突然変異させることにより発現を永続的になくすCRISPR/Casが媒介する遺伝子ノックアウトとは異なり、CRISPR/Casノックダウンは、人工転写因子の使用を介した遺伝子発現の一時的な低減を可能にする。Cas9タンパク質のDNA切断ドメインの両方において主要な残基を突然変異させること(例えばD10A及びH840A突然変異)は、触媒的に不活性なCas9(eiCas9、またデッド(dead)Cas9又はdCas9としても公知)分子の生成をもたらす。触媒的に不活性なCas9は、gRNAと複合体を形成し、そのgRNAの標的指向性ドメインによって特定されたDNA配列に局在するが、標的DNAを切断しない。エフェクタードメイン、例えば転写抑制ドメインへのdCas9の融合は、gRNAによって特定されたあらゆるDNA部位へのエフェクターの補充を可能にする。酵素的に不活性な(eiCas9)Cas9分子それ自体は、コード配列における初期領域に動員されれば、転写をブロックすることができるが、転写抑制ドメイン(例えばKRAB、SID又はERD)をCas9に融合させ、標的ノックダウン位置に、例えば開始コドンの3’の配列の1000bp以内に、又は遺伝子(例えば、RL2、LAT、又はRS1遺伝子)の開始コドンの5’のプロモーター領域の500bp以内にそれを補充することによって、よりロバストな抑制を達成することができる。プロモーターのDNアーゼI高感受性部位(DHS)を標的化することにより、これらの領域がCas9タンパク質により接近しやすくなり、さらに内因性転写因子のための部位を内包する可能性もより高くなることから、より効率的な遺伝子の抑制又は活性化をもたらす可能性がある。特に遺伝子抑制のために、内因性転写因子の結合部位をブロックすることが、遺伝子発現の下方調節に役立つと予想される。ある特定の実施態様において、一又は複数のeiCas9分子を使用して、一又は複数の内因性転写因子の結合をブロックすることができる。ある特定の実施態様において、eiCas9分子は、タンパク質を修飾するクロマチンに融合していてもよい。クロマチンの状態を変更することは、標的遺伝子の発現低下をもたらすことができる。タンパク質を修飾する一又は複数のクロマチンに融合した一又は複数のeiCas9分子を使用して、クロマチンの状態を変更することができる。
【0641】
ある特定の実施態様において、gRNA分子は、公知の転写応答要素(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)、公知の上流活性化配列(UAS)、及び/又は標的DNAの発現を制御できると推測される未知の若しくは公知の機能を有する配列に標的化され得る。
【0642】
CRISPR/Casが媒介する遺伝子ノックダウンは、不要な対立遺伝子の発現又は転写を低減させるのに使用することができる。ある特定の実施態様において、遺伝子の永続的な破壊は、理想的ではない。これらの実施態様において、部位特異的な抑制が、発現を一時的に低減したり又はなくしたりするのに使用することができる。ある特定の実施態様において、Casリプレッサーのオフターゲット作用は、Casヌクレアーゼのオフターゲット作用ほど深刻ではない場合があるが、これは、ヌクレアーゼはあらゆるDNA配列を切断して突然変異を引き起こすことができるが、それに対してCasリプレッサーは、活発に転写された遺伝子のプロモーター領域を標的化する場合にのみ作用をもたらすことができるためである。しかしながら、ヌクレアーゼが媒介するノックアウトは永続的である一方で、抑制は、Casリプレッサーが細胞中に存在する期間しか持続しない可能性がある。リプレッサーが存在しなくなったら、内因性転写因子及び遺伝子調節要素が、発現をその天然状態まで回復させる可能性がある。
【0643】
9.6 ゲノム編集方法におけるgRNAの例
本明細書に記載されるgRNA分子を、二本鎖切断又は一本鎖切断を生成するCas9分子と共に使用して、標的核酸、例えば標的位置又は標的遺伝学的シグネチャーの配列を変更することができる。これらの方法において有用なgRNA分子は、後述される。
【0644】
ある特定の実施態様において、gRNA、例えばキメラgRNAは、以下の特性の一又は複数を含むように構成されている;
(a)gRNA、例えばキメラgRNAが、例えば二本鎖切断を作製するCas9分子を標的化する場合、二本鎖切断を、(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500ヌクレオチド以内に、又は(ii)標的位置が末端切除領域以内にあるほど十分に近くに配置できること、;
(b)gRNA、例えばキメラgRNAが、少なくとも16ヌクレオチドの標的指向性ドメイン、例えば(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、又は(xi)26ヌクレオチドの標的指向性ドメインを有すること;及び
(c)(i)近位及び尾部ドメインが、一緒になったとき、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌の尾部及び近位ドメイン、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチドを含むこと;
(c)(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチドが存在すること;
(c)(iii)それに対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54ヌクレオチドが存在すること;
(c)(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドの長さであること、例えばそれが、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌の尾部ドメイン、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの少なくとも10、15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドを含むこと;又は
(c)(v)尾部ドメインが、天然尾部ドメイン、例えば天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、又は髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド又は全てを含むこと。
【0645】
ある特定の実施態様において、gRNAは、以下の特性:a及びb(i);a及びb(ii);a及びb(iii);a及びb(iv);a及びb(v);a及びb(vi);a及びb(vii);a及びb(viii);a及びb(ix);a及びb(x);a及びb(xi);a及びc;a、b、及びc;a(i)、b(i)、及びc(i);a(i)、b(i)、及びc(ii);a(i)、b(ii)、及びc(i);a(i)、b(ii)、及びc(ii);a(i)、b(iii)、及びc(i);a(i)、b(iii)、及びc(ii);a(i)、b(iv)、及びc(i);a(i)、b(iv)、及びc(ii);a(i)、b(v)、及びc(i);a(i)、b(v)、及びc(ii);a(i)、b(vi)、及びc(i);a(i)、b(vi)、及びc(ii);a(i)、b(vii)、及びc(i);a(i)、b(vii)、及びc(ii);a(i)、b(viii)、及びc(i);a(i)、b(viii)、及びc(ii);a(i)、b(ix)、及びc(i);a(i)、b(ix)、及びc(ii);a(i)、b(x)、及びc(i);a(i)、b(x)、及びc(ii);a(i)、b(xi)、又はc(i);a(i)、b(xi)、及びc(ii)を含むように構成されている。
【0646】
ある特定の実施態様において、gRNA、例えばキメラgRNAは、以下の特性の一又は複数を含むように構成されている;
(a)gRNAの一方又は両方が、例えば一本鎖切断を作製するCas9分子を標的化する場合、一本鎖切断を、(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500ヌクレオチド以内に、又は(ii)標的位置が末端切除領域以内にあるほど十分に近くに配置できること;
(b)一方又は両方が、少なくとも16ヌクレオチドのx、例えば(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、又は(xi)26ヌクレオチドの標的指向性ドメインを有すること;及び
(c)(i)近位及び尾部ドメインが、一緒になったとき、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌の尾部及び近位ドメイン、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチドを含むこと;
(c)(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチドが存在すること;
(c)(iii)それに対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54ヌクレオチドが存在すること;
(c)(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドの長さであること、例えばそれが、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌の尾部ドメイン、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの少なくとも10、15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドを含むこと;又は
(c)(v)尾部ドメインが、天然尾部ドメイン、例えば天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、又は髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド又は全てを含むこと。
【0647】
ある特定の実施態様において、gRNAは、以下の特性:a及びb(i);a及びb(ii);a及びb(iii);a及びb(iv);a及びb(v);a及びb(vi);a及びb(vii);a及びb(viii);a及びb(ix);a及びb(x);a及びb(xi);a及びc;a、b、及びc;a(i)、b(i)、及びc(i);a(i)、b(i)、及びc(ii);a(i)、b(ii)、及びc(i);a(i)、b(ii)、及びc(ii);a(i)、b(iii)、及びc(i);a(i)、b(iii)、及びc(ii);a(i)、b(iv)、及びc(i);a(i)、b(iv)、及びc(ii);a(i)、b(v)、及びc(i);a(i)、b(v)、及びc(ii);a(i)、b(vi)、及びc(i);a(i)、b(vi)、及びc(ii);a(i)、b(vii)、及びc(i);a(i)、b(vii)、及びc(ii);a(i)、b(viii)、及びc(i);a(i)、b(viii)、及びc(ii);a(i)、b(ix)、及びc(i);a(i)、b(ix)、及びc(ii);a(i)、b(x)、及びc(i);a(i)、b(x)、及びc(ii);a(i)、b(xi)、及びc(i);a(i)、b(xi)、及びc(ii)を含むように構成されている。
【0648】
ある特定の実施態様において、gRNAは、HNH活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばRuvC活性が不活性化されたCas9分子、例えばD10に突然変異を有する、例えばD10A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。ある特定の実施態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばHNH活性が不活性化されたCas9分子、例えば、840に突然変異を有する、例えばH840Aを有するCas9分子と共に使用される。ある特定の実施態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばHNH活性が不活性化されたCas9分子、例えば、N863に突然変異を有する、例えばN863A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。ある特定の実施態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばHNH活性が不活性化されたCas9分子、例えば、N580に突然変異を有する、例えばN580A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。
【0649】
ある特定の実施態様において、gRNAの対、例えば第1及び第2のgRNAを含むキメラgRNAの対は、以下の特性の一又は複数を含むように構成されている;
(a)gRNAの一方又は両方が、例えば一本鎖切断を作製するCas9分子を標的化する場合、一本鎖切断を、(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500ヌクレオチド以内に、又は(ii)標的位置が末端切除領域以内にあるほど十分に近くに配置できること;
(b)一方又は両方が、少なくとも16ヌクレオチドの標的指向性ドメイン、例えば(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、又は(xi)26ヌクレオチドの標的指向性ドメインを有すること;
(c)(i)近位及び尾部ドメインが、一緒になったとき、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌の尾部及び近位ドメイン、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチドを含むこと;
(c)(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3’に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、又は53ヌクレオチドが存在すること;
(c)(iii)それに対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的な第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3’に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54ヌクレオチド、例えば、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、又は54ヌクレオチドが存在すること;
(c)(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドの長さであること、例えばそれが、天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、若しくは髄膜炎菌の尾部ドメイン、又はそれらと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド以下が異なっている配列からの少なくとも10、15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドを含むこと;又は
(c)(v)尾部ドメインが、天然尾部ドメイン、例えば天然S.ピオゲネス、S.アウレウス、又は髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド又は全てを含むこと;
(d)gRNAが、標的核酸にハイブリダイズする場合、それらが、0-50、0-100、0-200、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30又は少なくとも50ヌクレオチドで分離されるように構成されていること;
(e)第1のgRNA及び第2のgRNAによって作製された切断が、異なる鎖上にあること;及び
(f)PAMが外側に面していること。
【0650】
ある特定の実施態様において、gRNAの一方又は両方は、以下の特性:a及びb(i);a及びb(ii);a及びb(iii);a及びb(iv);a及びb(v);a及びb(vi);a及びb(vii);a及びb(viii);a及びb(ix);a及びb(x);a及びb(xi);a及びc;a、b、及びc;a(i)、b(i)、及びc(i);a(i)、b(i)、及びc(ii);a(i)、b(i)、c、及びd;a(i)、b(i)、c、及びe;a(i)、b(i)、c、d、及びe;a(i)、b(ii)、及びc(i);a(i)、b(ii)、及びc(ii);a(i)、b(ii)、c、及びd;a(i)、b(ii)、c、及びe;a(i)、b(ii)、c、d、及びe;a(i)、b(iii)、及びc(i);a(i)、b(iii)、及びc(ii);a(i)、b(iii)、c、及びd;a(i)、b(iii)、c、及びe;a(i)、b(iii)、c、d、及びe;a(i)、b(iv)、及びc(i);a(i)、b(iv)、及びc(ii);a(i)、b(iv)、c、及びd;a(i)、b(iv)、c、及びe;a(i)、b(iv)、c、d、及びe;a(i)、b(v)、及びc(i);a(i)、b(v)、及びc(ii);a(i)、b(v)、c、及びd;a(i)、b(v)、c、及びe;a(i)、b(v)、c、d、及びe;a(i)、b(vi)、及びc(i);a(i)、b(vi)、及びc(ii);a(i)、b(vi)、c、及びd;a(i)、b(vi)、c、及びe;a(i)、b(vi)、c、d、及びe;a(i)、b(vii)、及びc(i);a(i)、b(vii)、及びc(ii);a(i)、b(vii)、c、及びd;a(i)、b(vii)、c、及びe;a(i)、b(vii)、c、d、及びe;a(i)、b(viii)、及びc(i);a(i)、b(viii)、及びc(ii);a(i)、b(viii)、c、及びd;a(i)、b(viii)、c、及びe;a(i)、b(viii)、c、d、及びe;a(i)、b(ix)、及びc(i);a(i)、b(ix)、及びc(ii);a(i)、b(ix)、c、及びd;a(i)、b(ix)、c、及びe;a(i)、b(ix)、c、d、及びe;a(i)、b(x)、及びc(i);a(i)、b(x)、及びc(ii);a(i)、b(x)、c、及びd;a(i)、b(x)、c、及びe;a(i)、b(x)、c、d、及びe;a(i)、b(xi)、及びc(i);a(i)、b(xi)、及びc(ii);a(i)、b(xi)、c、及びd;a(i)、b(xi)、c、及びe;a(i)、b(xi)、c、d、及びeを含むように構成されている。
【0651】
ある特定の実施態様において、gRNAは、HNH活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばRuvC活性が不活性化されたCas9分子、例えばD10に突然変異を有する、例えばD10A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。ある特定の実施態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばHNH活性が不活性化されたCas9分子、例えば、H840に突然変異を有する、例えばH840A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。ある特定の実施態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばHNH活性が不活性化されたCas9分子、例えば、N863に突然変異を有する、例えばN863A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。ある特定の実施態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えばHNH活性が不活性化されたCas9分子、例えば、N580に突然変異を有する、例えばN580A突然変異を有するCas9分子と共に使用される。
【0652】
10.標的細胞
Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)又はCas9融合タンパク質及びgRNA分子、例えばCas9分子/gRNA分子複合体は、細胞を操作する、例えば多種多様の細胞における標的核酸を編集するのに使用することができる。
【0653】
ある特定の実施態様において、細胞は、一又は複数の標的遺伝子、例えばHSV-1又はHSV-2遺伝子、例えばRS1、RL2及び/又はLAT遺伝子の1つ、2つ、又は3つを編集すること(例えば、そこに突然変異を導入すること)によって操作される。ある特定の実施態様において、細胞を、HSV-1及び/又はHSV-2で感染させる。ある特定の実施態様において、細胞は、HSV-1及び/又はHSV-2感染を有する対象由来である。ある特定の実施態様において、細胞又は対象は、HSV-1及び/又はHSV-2の潜伏感染を有する。ある特定の実施態様において、一又は複数の標的遺伝子(例えば、本明細書に記載される一又は複数の標的遺伝子、例えばRS1、RL2及び/又はLAT遺伝子の1つ、2つ、又は3つ)の発現が、例えばインビボでモジュレートされる。
【0654】
本明細書に記載されるCas9及びgRNA分子は、標的細胞、例えば本明細書に記載される細胞に送達することができる。ある特定の実施態様において、標的細胞は、上皮細胞であり、例えば、中咽頭の上皮細胞(例えば鼻、歯肉、唇、舌又は咽頭の上皮細胞など)、指若しくは指の爪の基部の上皮細胞、又は肛門-性器部の上皮細胞(例えば陰茎、陰嚢、陰門、膣、頚部、肛門又は大腿部の上皮細胞など)である。ある特定の実施態様において、標的細胞は、ニューロン性細胞であり、例えば、脳神経節ニューロン(例えば三叉神経節ニューロン、例えば、動眼神経の神経節ニューロン、例えば、外転神経の神経節ニューロン、例えば滑車神経の神経節ニューロン)、例えば頸神経節ニューロン、例えば仙骨神経の神経節ニューロン、感覚神経節ニューロン、皮質ニューロン、小脳ニューロン又は海馬ニューロンである。ある特定の実施態様において、標的細胞は、視細胞であり、例えば眼の上皮細胞、例えば眼瞼の上皮細胞、例えば結膜細胞、例えば結膜上皮細胞、例えば角膜実質細胞、例えば角膜縁の細胞、例えば角膜上皮細胞、例えば角膜間質細胞、例えば毛様体の細胞、例えば強膜の細胞、例えばレンズの細胞、例えば脈絡膜の細胞、例えば網膜細胞、例えば桿体光受容体細胞、例えば錐体光受容体細胞、例えば網膜色素上皮細胞、例えば水平細胞、例えば無軸索細胞、例えば神経節細胞である。
【0655】
11.送達、製剤化及び投与経路
成分、例えばCas9分子、一又は複数のgRNA分子(例えば、Cas9分子/gRNA分子複合体)、及びドナー鋳型核酸、又は3つ全ては、様々な形態で送達、製剤化、又は投与することができる。例えば表14及び15を参照されたい。ある特定の実施態様において、Cas9分子、一又は複数のgRNA分子(例えば、2つのgRNA分子)は、ゲノム編集系において一緒に存在する。ある特定の実施態様において、Cas9分子をコードする配列、及び2つ又はそれより多くの(例えば、2、3、4、又はそれより多くの)異なるgRNA分子をコードする配列は、同じ核酸分子、例えばAAVベクター上に存在する。ある特定の実施態様において、Cas9分子をコードする2つの配列、及び2つ又はそれより多くの(例えば、2、3、4、又はそれより多くの)異なるgRNA分子をコードする配列は、同じ核酸分子、例えばAAVベクター上に存在する。Cas9又はgRNA成分が、送達のためのDNAとしてコードされている場合、DNAは、典型的には制御領域を含んでいてもよく、例えば発現を実行するためのプロモーターを含む。Cas9分子配列に有用なプロモーターとしては、CMV、EFS、EF-1a、MSCV、PGK、及びCAG、骨格アルファアクチンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼプロモーター、ジストロフィンプロモーター、アルファミオシン重鎖プロモーター、及び平滑筋アクチンプロモーターが挙げられる。ある特定の実施態様において、プロモーターは、構成的プロモーターである。ある特定の実施態様において、プロモーターは、組織特異的なプロモーターである。gRNAに有用なプロモーターとしては、T7.H1、EF-1a、7SK、U6、U1及びtRNAプロモーターが挙げられる。成分の発現を調整するために、類似の又は類似していない強度を有するプロモーターを選択することができる。Cas9分子をコードする配列は、核局在化シグナル(NLS)、例えばSV40NLSを含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、Cas9分子をコードする配列は、少なくとも2つの核局在化シグナルを含む。ある特定の実施態様において、Cas9分子又はgRNA分子のためのプロモーターは、独立して、誘導性、組織特異的、又は細胞特異的プロモーターであってもよい。表14は、どのように成分を製剤化、送達、又は投与できるかの例を提供する。
【0656】
表15に、Cas系の成分、例えば本明細書に記載されるCas9分子成分及びgRNA分子成分のための様々な送達方法を要約する。
【0657】
11.1 Cas9分子及び/又は一又は複数のgRNA分子のDNAベースの送達
Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)、gRNA分子、ドナー鋳型核酸、又はそれらの(例えば、2つの又は全ての)あらゆる組合せをコードする核酸組成物は、当該技術分野で公知の方法によって、又は本明細書に記載されるようにして、対象に投与したり又は細胞に送達したりすることができる。例えば、Cas9をコードする及び/又はgRNAをコードするDNA、加えてドナー鋳型核酸は、例えば、ベクター(例えば、ウイルス又は非ウイルスベクター)、非ベクターベースの方法(例えば、裸のDNA又はDNA複合体を使用する)、又はそれらの組合せによって送達することができる。
【0658】
Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)及び/又はgRNA分子をコードする核酸組成物は、標的細胞(例えば、本明細書に記載される標的細胞)による取り込みを促進する分子(例えば、N-アセチルガラクトサミン)にコンジュゲートされていてもよい。ドナー鋳型分子も同様に、標的細胞(例えば、本明細書に記載される標的細胞)による取り込みを促進する分子(例えば、N-アセチルガラクトサミン)にコンジュゲートされていてもよい。
【0659】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードするDNAは、ベクター(例えば、ウイルスベクター/ウイルス又はプラスミド)によって送達される。
【0660】
ベクターは、Cas9分子及び/若しくはgRNA分子、並びに/又は標的化される領域(例えば、標的配列)に対して高い相同性を有するドナー鋳型をコードする配列を含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、ドナー鋳型は、標的配列の全て又は一部を含む。例示的なドナー鋳型は、修復鋳型、例えば遺伝子補正鋳型、又は遺伝子突然変異鋳型、例えば、点突然変異(例えば、単一ヌクレオチド(nt)置換)鋳型)である。ベクターはまた、例えばCas9分子配列に融合したシグナルペプチド(例えば、核局在化、核小体局在化、又はミトコンドリア局在化のための)をコードする配列を含んでいてもよい。例えば、ベクターは、Cas9分子をコードする配列に融合した核局在化配列(例えば、SV40由来)を含んでいてもよい。
【0661】
一又は複数の調節/制御要素、例えばプロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、内部リボソーム侵入部位(IRES)、2A配列、及びスプライスアクセプター又はドナーがベクターに含まれていてもよい。ある特定の実施態様において、プロモーターは、RNAポリメラーゼII(例えば、CMVプロモーター)によって認識される。他の実施態様において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIII(例えば、U6プロモーター)によって認識される。ある特定の実施態様において、プロモーターは、調節されたプロモーター(例えば、誘導性プロモーター)である。ある特定の実施態様において、プロモーターは、構成的プロモーターである。ある特定の実施態様において、プロモーターは、組織特異的なプロモーターである。ある特定の実施態様において、プロモーターは、ウイルスプロモーターである。ある特定の実施態様において、プロモーターは、非ウイルスプロモーターである。
【0662】
ある特定の実施態様において、ベクター又は送達ビヒクルは、ウイルスベクター(例えば、組換えウイルス生成のための)である。ある特定の実施態様において、ウイルスは、DNAウイルス(例えば、dsDNA又はssDNAウイルス)である。ある特定の実施態様において、ウイルスは、RNAウイルス(例えば、ssRNAウイルス)である。ある特定の実施態様において、ウイルスは、分裂細胞に感染する。他の実施態様において、ウイルスは、非分裂細胞に感染する。例示的なウイルスベクター/ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが挙げられる。
【0663】
ある特定の実施態様において、ウイルスは、分裂細胞に感染する。他の実施態様において、ウイルスは、非分裂細胞に感染する。ある特定の実施態様において、ウイルスは、分裂及び非分裂細胞の両方に感染する。ある特定の実施態様において、ウイルスは、宿主ゲノムに統合されていてもよい。ある特定の実施態様において、ウイルスは、例えばヒトで低下した免疫性を有するように操作される。ある特定の実施態様において、ウイルスは、複製能を有する。他の実施態様において、ウイルスは、複製欠損性であり、例えば、他の遺伝子で置き換えられた又は欠失した、ビリオン複製及び/又はパッケージングの追加ラウンドに必要な遺伝子のための一又は複数のコード化領域を有する。ある特定の実施態様において、ウイルスは、一又は複数のCas9分子及び/又は一又は複数のgRNA分子の一過性発現を引き起こす。他の実施態様において、ウイルスは、長期にわたる、例えば、少なくとも1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、9カ月、1年、2年の、若しくは永続的な、一又は複数のCas9及び/又は一又は複数のgRNA分子の発現を引き起こす。ウイルスのパッケージング容量は、例えば、少なくとも約4kbから少なくとも約30kbまで様々であってもよく、例えば、少なくとも約5kb、10kb、15kb、20kb、25kb、30kb、35kb、40kb、45kb、又は50kbである。
【0664】
ある特定の実施態様において、ウイルスベクターは、特異的な細胞型又は組織を認識する。例えば、ウイルスベクターは、異なる/代替のウイルスエンべロープ糖タンパク質を有するシュードタイプウイルスベクター;細胞型特異的な受容体を有する操作されたウイルスベクター(例えばペプチドリガンド、単鎖抗体、又は増殖因子などの標的化リガンドを取り入れるための、例えば一又は複数のウイルスエンべロープ糖タンパク質の遺伝学的修飾);及び/又は一方の末端がウイルス糖タンパク質を認識し、他方の末端が標的細胞表面の部分を認識する二重特異性を有する分子架橋(例えば、リガンド-受容体、モノクローナル抗体、アビジン-ビオチン及び化学的なコンジュゲーション)を有するように操作されたウイルスベクターであってもよい。
【0665】
例示的なウイルスベクター/ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが挙げられる。
【0666】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする配列は、組換えレトロウイルスによって送達される。ある特定の実施態様において、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス)は、逆転写酵素、例えば宿主ゲノムへの統合を可能にする逆転写酵素を含む。ある特定の実施態様において、レトロウイルスは、複製能を有する。他の実施態様において、レトロウイルスは、複製欠損性であり、例えば、他の遺伝子で置き換えられた、又は欠失した、ビリオン複製及びパッケージングの追加ラウンドに必要な遺伝子のための一又は複数のコード化領域を有する。
【0667】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、組換えレンチウイルスによって送達される。ある特定の実施態様において、ドナー鋳型核酸は、組換えレトロウイルスによって送達される。例えば、レンチウイルスは、複製欠損性であり、例えばウイルス複製に必要な一又は複数の遺伝子を含まない。
【0668】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、組換えアデノウイルスによって送達される。ある特定の実施態様において、ドナー鋳型核酸は、組換えアデノウイルスによって送達される。ある特定の実施態様において、アデノウイルスは、ヒトにおいて低下した免疫性を有するように操作される。
【0669】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、組換えAAVによって送達される。ある特定の実施態様において、ドナー鋳型核酸は、組換えAAVによって送達される。ある特定の実施態様において、AAVは、宿主細胞、例えば本明細書に記載される標的細胞のゲノムにそのゲノムを取り込ませない。ある特定の実施態様において、AAVは、宿主細胞、例えば本明細書に記載される標的細胞のゲノムにそのゲノムの少なくとも一部を取り込ませることができる。ある特定の実施態様において、AAVは、自己相補的なアデノ関連ウイルス(scAAV)、例えば、一緒にアニールして二本鎖DNAを形成する両方の鎖をパッケージングしているscAAVである。開示された方法で使用することができるAAV血清型としては、AAV1、AAV2、修飾されたAAV2(例えば、Y444F、Y500F、Y730F及び/又はS662Vでの修飾)、AAV3、修飾されたAAV3(例えば、Y705F、Y731F及び/又はT492Vでの修飾)、AAV4、AAV5、AAV6、修飾されたAAV6(例えば、S663V及び/又はT492Vでの修飾)、AAV8、AAV8.2、AAV9、AAVrh10が挙げられ、さらに、シュードタイプAAV、例えばAAV2/8、AAV2/5及びAAV2/6なども、開示された方法で使用することができる。ある特定の実施態様において、本明細書に記載される方法で使用することができるAAVカプシドは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh32/33、AAV.rh43、AAV.rh64R1、又はAAV7m8からのカプシド配列である。
【0670】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、再操作されたAAVカプシドに送達され、例えば、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh32/33、AAV.rh43、又はAAV.rh64R1からのカプシド配列と、約50%又はそれより高い、例えば、約60%又はそれより高い、約70%又はそれより高い、約80%又はそれより高い、約90%又はそれより高い、又は約95%又はそれより高い配列相同性を有する再操作されたAAVカプシドに送達される。
【0671】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、キメラAAVカプシドによって送達される。ある特定の実施態様において、ドナー鋳型核酸は、キメラAAVカプシドによって送達される。例示的なキメラAAVカプシドとしては、これらに限定されないが、AAV9i1、AAV2i8、AAV-DJ、AAV2G9、AAV2i8G9、又はAAV8G9が挙げられる。
【0672】
ある特定の実施態様において、AAVは、自己相補的なアデノ関連ウイルス(scAAV)、例えば、一緒にアニールして二本鎖DNAを形成する両方の鎖をパッケージングしているscAAVである。
【0673】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードするDNAは、ハイブリッドウイルス、例えば本明細書に記載されるウイルスの一又は複数のハイブリッドによって送達される。ある特定の実施態様において、ハイブリッドウイルスは、AAV(例えば、あらゆるAAV血清型を有する)と、ボカウイルス、B19ウイルス、ブタAAV、ガチョウAAV、ネコAAV、イヌAAV、又はMVMとのハイブリッドである。
【0674】
パッケージング細胞は、標的細胞に感染することが可能なウイルス粒子を形成するのに使用される。例示的なパッケージング細胞としては、アデノウイルスをパッケージングできる293細胞、及びレトロウイルスをパッケージングできるψ2又はPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは通常、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージングするプロデューサー細胞株によって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージングとそれに続く宿主又は標的細胞(適切な場合)への統合に必要な最小のウイルス配列を含有しており、他のウイルス配列は、発現させようとするタンパク質、例えばCas9分子に関する成分、例えば2つのCas9成分をコードする発現カセットで置き換えられる。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、典型的には、パッケージング及び宿主又は標的細胞での遺伝子発現に必要なAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。失われたウイルスの機能は、「Triple Transfection Protocol」に記載されているように、パッケージング細胞株及び/又はアデノウイルスからのE2A、E4、及びVA遺伝子を含有するプラスミド、及びAAVからのRep及びCap遺伝子をコードするプラスミドによって、トランス型で供給することができる。その後、他のAAV遺伝子、すなわちrep及びcapをコードするがITR配列が欠失したヘルパープラスミドを含有する細胞株中に、ウイルスDNAがパッケージングされる。ある特定の実施態様において、ウイルスDNAは、アデノウイルスからのE1A及び/又はE1B遺伝子を含有するプロデューサー細胞株中にパッケージングされる。さらに細胞株を、ヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染させる。ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス又はHSV)又はヘルパープラスミドは、AAVベクターの複製、及びITRを有するヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列が欠如しているために有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスでの汚染は、例えばアデノウイルスがAAVより高い感受性を示す熱処理によって低減することができる。
【0675】
ある特定の実施態様において、ウイルスベクターは、細胞型及び/又は組織タイプの認識が可能である。例えば、ウイルスベクターは、異なる/代替のウイルスエンべロープ糖タンパク質を有するシュードタイプウイルスベクター;細胞型特異的な受容体を有する操作されたウイルスベクター(例えばペプチドリガンド、単鎖抗体、増殖因子などの標的化リガンドを取り入れるための、例えばウイルスエンべロープ糖タンパク質の遺伝学的修飾);及び/又は一方の末端がウイルス糖タンパク質を認識し、他方の末端が標的細胞表面の部分を認識する二重特異性を有する分子架橋(例えば、リガンド-受容体、モノクローナル抗体、アビジン-ビオチン及び化学的なコンジュゲーション)を有するように操作されたウイルスベクターであってもよい。
【0676】
ある特定の実施態様において、ウイルスベクターは、細胞型特異的な発現を達成する。例えば、組織特異的プロモーターは、導入遺伝子(Cas9及びgRNA)の発現を標的細胞にだけ制限するように構築することができる。またベクターの特異性も、導入遺伝子発現のマイクロRNA依存性の制御によって媒介され得る。ある特定の実施態様において、ウイルスベクターは、ウイルスベクターと標的細胞膜との融合効率を増加させている。例えば、融合能を有するヘマグルチン(HA)などの融合タンパク質を取り込むことにより、細胞へのウイルス取り込みを増加させることができる。ある特定の実施態様において、ウイルスベクターは、核局在化能力を有する。例えば、核のエンベロープの破壊を必要とし(細胞分裂中に)、それゆえに非分裂細胞に感染できないウイルスは、ウイルスのマトリックスタンパク質中に核局在化ペプチドを取り込ませて非増殖細胞の形質導入が可能になるように変更されてもよい。
【0677】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、非ベクターベースの方法(例えば、裸のDNA又はDNA複合体を使用する)によって送達される。例えば、DNAは、例えば、有機的に修飾されたシリカ又はケイ酸塩(Ormosil)、エレクトロポレーション、一過性の細胞圧縮又はスクイージング(例えば、Lee等、2012、Nano Lett 12: 6322-27に記載された通り)、ジーンガン、ソノポレーション、マグネトフェクション、脂質媒介トランスフェクション、デンドリマー、無機ナノ粒子、リン酸カルシウム、又はそれらの組合せによって送達することができる。
【0678】
ある特定の実施態様において、エレクトロポレーションを介した送達は、カートリッジ、チャンバー又はキュベット中で、細胞を、Cas9及び/又はgRNAをコードするDNAと混合すること、及び規定の持続時間及び振幅の一又は複数の電気的インパルスを適用することを含む。ある特定の実施態様において、エレクトロポレーションを介した送達は、カートリッジ、チャンバー又はキュベットに混合物を供給するデバイス(例えばポンプ)に接続された容器中で細胞がCas9及び/又はgRNAをコードするDNAと混合される系を使用して実行され、ここで一又は複数の規定の持続時間及び振幅の電気的インパルスが適用され、その後、細胞が第2の容器に送達される。
【0679】
ある特定の実施態様において、Cas9及び/又はgRNAをコードする核酸配列は、ベクターベースの方法と非ベクターベースの方法との組合せによって送達される。ある特定の実施態様において、ドナー鋳型核酸は、ベクターベースの方法と非ベクターベースの方法との組合せによって送達される。例えば、ビロソームを、不活性化ウイルス(例えば、HIV又はインフルエンザウイルス)と混合されたリポソームと併用すると、例えば呼吸器上皮細胞において、ウイルス又はリポソーム方法のいずれか単独より効率的な遺伝子移入をもたらすことができる。
【0680】
ある特定の実施態様において、送達ビヒクルは、非ウイルスベクターである。ある特定の実施態様において、非ウイルスベクターは、無機ナノ粒子である。例示的な無機ナノ粒子としては、例えば、磁気ナノ粒子(例えば、Fe3MnO2)及びシリカが挙げられる。ナノ粒子の外面は、ペイロードの結合(例えば、コンジュゲーション又は閉じ込め)を可能にする正電荷を有するポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリセリン)とコンジュゲートされていてもよい。ある特定の実施態様において、非ウイルスベクターは、有機ナノ粒子(例えば、ナノ粒子内部へのペイロードの閉じ込め)である。例示的な有機ナノ粒子としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされた中性ヘルパー脂質を共に含むカチオン脂質、及びプロタミン、及び脂質膜でコーティングされた核酸複合体を含有するSNALPリポソームが挙げられる。
【0681】
以下の表16に、遺伝子移入のための例示的な脂質を示す。
【0682】
以下の表17に、遺伝子移入のための例示的なポリマーを示す。
【0683】
ある特定の実施態様において、ビヒクルは、ナノ粒子及びリポソーム、例えば、細胞特異的な抗原、モノクローナル抗体、単鎖抗体、アプタマー、ポリマー、糖類(例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc))、及び細胞透過性ペプチドの標的細胞の更新を増加させるように標的化された修飾を有する。ある特定の実施態様において、ビヒクルは、融合性でありエンドソームを不安定化するペプチド/ポリマーを使用する。ある特定の実施態様において、ビヒクルは、酸によって誘発されるコンフォメーション変化(例えば、カーゴのエンドソーム回避を促進するための)を受ける。ある特定の実施態様において、例えば細胞区画中での放出のために、刺激によって切断可能なポリマーが使用される。例えば、還元性の細胞環境中で切断されるジスルフィドベースのカチオン性ポリマーを使用することができる。
【0684】
ある特定の実施態様において、送達ビヒクルは、生物学的な非ウイルス送達ビヒクルである。ある特定の実施態様において、ビヒクルは、弱毒化した細菌(例えば、浸潤性であるが病原及び導入遺伝子の発現を防ぐために弱毒化されるように、天然に又は人工的に操作された細菌(例えば、リステリア・モノサイトゲネス、ある特定のサルモネラ属の株、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、及び改変された大腸菌)、特異的な組織を標的化するための栄養及び組織特異的親和性を有する細菌、標的の組織特異性を変更するための修飾された表面タンパク質を有する細菌)である。ある特定の実施態様において、ビヒクルは、遺伝子修飾されたバクテリオファージ(例えば、大きいパッケージング容量、より低い免疫原性を有する、哺乳動物プラスミドを維持する配列を含有する、標的化するリガンドを取り込んでいる、操作されたファージ)である。ある特定の実施態様において、ビヒクルは、哺乳動物ウイルス様粒子である。例えば、修飾されたウイルス粒子を生成することができる(例えば、「空の」粒子の精製、それに続くエクスビボにおける所望のカーゴを用いたウイルスアセンブリによって)。またビヒクルは、標的組織特異性を変更するために標的化リガンドを取り込むようにも操作することができる。ある特定の実施態様において、ビヒクルは、生物学的なリポソームである。例えば、生物学的なリポソームは、ヒト細胞由来のリン脂質ベースの粒子(例えば、赤血球ゴーストであり、これは、球状構造に分解した対象由来の赤血球であり(例えば、組織の標的化は、様々な組織又は細胞特異的リガンドの結合によって達成できる)、又は分泌性エキソゾーム、すなわちエンドサイトーシスの起点を有する対象(すなわち患者)由来の膜結合型ナノベシクル(30-100nm)(例えば、様々な細胞型から産生することができ、それゆえにリガンド標的化の必要なく細胞に取り込ませることができる)である。
【0685】
ある特定の実施態様において、Cas系の成分、例えば、本明細書に記載されるCas9分子の成分若しくは成分及び/又はgRNA分子の成分若しくは成分以外の一又は複数の核酸分子(例えば、DNA分子)が送達される。ある特定の実施態様において、核酸分子は、Cas系の成分の一又は複数が送達されるのと同時に送達される。ある特定の実施態様において、核酸分子は、Cas系の成分の一又は複数が送達される前又は後に(例えば、約30分、1時間、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、又は4週間未満)送達される。ある特定の実施態様において、核酸分子は、Cas系の成分の一又は複数、例えばCas9分子の成分及び/又はgRNA分子の成分が送達される手段とは異なる手段によって送達される。核酸分子は、本明細書に記載される送達方法のいずれかによって送達することができる。例えば、核酸分子は、ウイルスベクター、例えば統合欠陥性のレンチウイルスによって送達することができ、Cas9分子の成分(複数可)及び/又はgRNA分子の成分(複数可)は、例えば、核酸(例えばDNA)によって引き起こされる毒性を低減できるようなエレクトロポレーションによって送達することができる。ある特定の実施態様において、核酸分子は、治療用タンパク質、例えば本明細書に記載されるタンパク質をコードする。ある特定の実施態様において、核酸分子は、RNA分子、例えば本明細書に記載されるRNA分子をコードする。
【0686】
11.2 Cas9分子をコードするRNAの送達
Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)及び/又はgRNA分子をコードするRNAは、細胞、例えば本明細書に記載される標的細胞に、当該技術分野で公知の方法によって、又は本明細書に記載されるようにして送達することができる。例えば、Cas9をコードする及び/又はgRNAをコードするRNAは、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、一過性の細胞圧縮又はスクイージング(例えば、Lee等、2012、Nano Lett 12: 6322-27に記載された通り)、脂質媒介トランスフェクション、ペプチド媒介送達、又はそれらの組合せによって送達することができる。Cas9をコードする及び/又はgRNAをコードするRNAは、標的細胞(例えば、本明細書に記載される標的細胞)による取り込みを促進するための分子にコンジュゲートされていてもよい。
【0687】
ある特定の実施態様において、エレクトロポレーションを介した送達は、カートリッジ、チャンバー又はキュベット中で、細胞を、Cas9分子(例えば、eaCas9分子、eiCas9分子又はeiCas9融合タンパク質)をコードするRNA及び/又はgRNA分子とドナー鋳型核酸分子あり又はなしで混合すること、及び規定の持続時間及び振幅の一又は複数の電気的インパルスを適用することを含む。ある特定の実施態様において、エレクトロポレーションを介した送達は、カートリッジ、チャンバー又はキュベットに混合物を供給するデバイス(例えばポンプ)に接続された容器中で、細胞が、Cas9分子(例えば、eaCas9分子、eiCas9分子又はeiCas9融合タンパク質)をコードするRNA及び/又はgRNA分子と、ドナー鋳型核酸分子あり又はなしで混合される系を使用して実行され、ここで一又は複数の規定の持続時間及び振幅の電気的インパルスが適用され、その後、細胞が第2の容器に送達される。Cas9をコードする及び/又はgRNAをコードするRNAは、標的細胞(例えば、本明細書に記載される標的細胞)による取り込みを促進するための分子にコンジュゲートされていてもよい。
【0688】
11.3 Cas9分子タンパク質の送達
Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)は、当該技術分野で公知の方法によって、又は本明細書に記載されるようにして細胞に送達することができる。例えば、Cas9タンパク質分子は、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、一過性の細胞圧縮又はスクイージング(例えば、Lee等、2012、Nano Lett 12: 6322-27に記載された通り)、脂質媒介トランスフェクション、ペプチド媒介送達、又はそれらの組合せによって送達することができる。送達は、gRNAをコードするDNA又はgRNAを伴っていてもよい。Cas9タンパク質は、標的細胞(例えば、本明細書に記載される標的細胞)による取り込みを促進する分子にコンジュゲートされていてもよい。
【0689】
ある特定の実施態様において、エレクトロポレーションを介した送達は、カートリッジ、チャンバー又はキュベット中で、細胞を、Cas9分子(例えば、eaCas9分子、eiCas9分子又はeiCas9融合タンパク質)及び/又はgRNA分子と、ドナー核酸あり又はなしで混合すること、及び規定の持続時間及び振幅の一又は複数の電気的インパルスを適用することを含む。ある特定の実施態様において、エレクトロポレーションを介した送達は、カートリッジ、チャンバー又はキュベットに混合物を供給するデバイス(例えばポンプ)に接続された容器中で細胞がCas9分子(例えば、eaCas9分子、eiCas9分子又はeiCas9融合タンパク質)及び/又はgRNA分子と混合される系を使用して実行され、ここで一又は複数の規定の持続時間及び振幅の電気的インパルスが適用され、その後、細胞が第2の容器に送達される。Cas9をコードする及び/又はgRNAをコードするRNAは、標的細胞(例えば、本明細書に記載される標的細胞)による取り込みを促進するための分子にコンジュゲートされていてもよい。
【0690】
11.4 Cas9分子タンパク質及びgRNAのRNP送達
ある特定の実施態様において、Cas9分子及びgRNA分子は、リボ核タンパク質(RNP)送達を介して標的細胞に送達される。ある特定の実施態様において、Cas9分子は、タンパク質として提供され、gRNA分子は転写又は合成されたRNAとして提供される。gRNA分子は、化学合成によって生成することができる。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、標的細胞への送達前に、好適な条件下でCas9分子タンパク質とのRNP複合体を形成する。RNP複合体は、当該技術分野で公知のあらゆる好適な方法によって、例えば、エレクトロポレーション、脂質媒介トランスフェクション、タンパク質又はDNAベースのシャトル、機械的な力、又は液圧の力によって、標的細胞に送達することができる。ある特定の実施態様において、RNP複合体は、エレクトロポレーションによって標的細胞に送達される。
【0691】
11.5 投与経路
全身性の投与様式としては、経口及び非経口経路が挙げられる。非経口経路としては、例として、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、皮内、皮下、鼻腔内及び腹腔内経路が挙げられる。全身的に投与される成分は、上皮又はニューロン性細胞に成分を標的化するように修飾又は製剤化されていてもよい。
【0692】
局所投与様式としては、例として、髄腔内、脊髄内、脳室内、及び実質内(例えば、脳実質又は脊髄に)が挙げられる。
【0693】
ある特定の実施態様において、局所投与様式としては、三叉神経のレベルにおける後根神経節への実質内投与が挙げられる。ある特定の実施態様において、局所投与様式としては、仙骨神経の神経節のレベルにおける後根神経節への実質内投与が挙げられる。ある特定の実施態様において、局所投与様式としては、腰神経節のレベルにおける後根神経節への実質内投与が挙げられる。ある特定の実施態様において、局所投与様式としては、胸部神経節のレベルにおける後根神経節への実質内投与が挙げられる。ある特定の実施態様において、局所投与様式としては、頸神経節、例えば上頸神経節、例えば中頸神経節、例えば下頸神経節のレベルにおける後根神経節への実質内投与が挙げられる。ある特定の実施態様において、局所投与様式としては、脳神経節、例えば脳神経節I-XIIのレベルにおける後根神経節への実質内投与が挙げられる。
【0694】
ある特定の実施態様において、より有意に少ない量の成分(全身的な手法と比較して)が、局所的に投与される場合、全身投与(例えば、静脈内)される場合と比較して作用を発揮する可能性がある。局所投与様式は、治療的有効量の成分が全身投与される場合に起こり得る毒性の副作用発生の可能性を低減するか又はなくすことができる。
【0695】
ある特定の実施態様において、本明細書に記載される成分は、上皮細胞、例えば中咽頭の上皮細胞(例えば鼻、歯肉、唇、舌又は咽頭の上皮細胞など)、指又は指の爪の基部の上皮細胞、又は肛門-性器部の上皮細胞(例えば陰茎、陰門、膣又は肛門の上皮細胞など)に送達される。ある特定の実施態様において、本明細書に記載される成分は、眼(例えば、角膜上皮、例えば角膜実質、例えば上及び下眼瞼の上皮、例えばレンズなど)に送達される。
【0696】
投与は、定期的なボーラスとして、又は内部リザーバ若しくは外部リザーバからの(例えば静脈内バッグからの)連続的注入として提供されてもよい。成分は、局所的に、例えば持続放出薬物送達デバイスからの連続放出によって投与されてもよい。
【0697】
投与は、内部リザーバからの(例えば、眼内又は眼外の位置に配置されたインプラント(米国特許第5443505号及び5766242号を参照)からの)又は外部リザーバからの(例えば静脈内バッグからの)連続的注入として提供されてもよい。成分は、局所的に、例えば、眼の内壁に固定化された持続放出薬物送達デバイスからの、又は脈絡膜への標的化された経強膜制御放出を介した連続放出によって投与されてもよい(例えば、PCT/US00/00207、PCT/US02/14279、Ambati等(2000) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 41:1181-1185、及びAmbati等(2000) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 41:1186-1191を参照)。成分を眼の内部に局所投与するのに好適な様々なデバイスが当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第6251090号、6299895号、6416777号、6413540号、及びPCT/US00/28187を参照されたい。
【0698】
ある特定の実施態様において、成分は、長期にわたる放出を許容するように製剤化されてもよい。放出系としては、生分解性材料又は取り込まれた成分を拡散によって放出する材料のマトリックスを挙げることができる。成分は、放出系内で均一に又は不均一に分配されていてもよい。様々な放出系が有用であり得るが、しかしながら適切な系の選択は、特定の適用によって必要な放出速度に依存すると予想される。非分解性及び分解性放出系の両方を使用することができる。好適な放出系としては、ポリマー及びポリマーマトリックス、非ポリマーマトリックス、又は無機及び有機の賦形剤及び希釈剤、例えば、これらに限定されないが、炭酸カルシウム及び糖(例えば、トレハロース)などが挙げられる。放出系は、天然又は合成であり得る。しかしながら、合成放出系が好ましく、なぜなら一般的にそれらは、より信頼性が高く、より再現可能であり、より高度に規定された放出プロファイルを生じるためである。放出系材料は、異なる分子量を有する成分が、材料を介した拡散又は材料の分解によって放出されるように選択することができる。
【0699】
代表的な合成生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、例えばポリ(アミノ酸)及びポリ(ペプチド)など;ポリエステル、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、及びポリ(カプロラクトン)など;ポリ(無水物);ポリオルトエステル;ポリカーボネート;並びにそれらの化学的誘導体(置換、化学基、例えばアルキル、アルキレンの付加、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者によって常套的に作製される他の修飾)、コポリマー並びにそれらの混合物が挙げられる。代表的な合成非分解性ポリマーとしては、例えば、ポリエーテル、例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(テトラメチレンオキシド)など;ビニルポリマー、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、例えばメチル、エチル、他のアルキル、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸など、並びに例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、及びポリ(酢酸ビニル)などの他のもの;ポリ(ウレタン);セルロース及びその誘導体、例えばアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、エステル、ニトロセルロース、及び様々な酢酸セルロースなど;ポリシロキサン;並びにそれらのあらゆる化学的誘導体(置換、化学基、例えばアルキル、アルキレンの付加、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者によって常套的に作製される他の修飾)、コポリマー並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0700】
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)ミクロスフェアも、注射に使用することができる。典型的には、ミクロスフェアは、中空のスフェアを形成するように構造化された乳酸及びグリコール酸のポリマーで構成されている。スフェアは、およそ15-30ミクロンの直径であってもよく、本明細書に記載される成分をローディングすることができる。
【0701】
11.6 成分の二峰性又は差次的な送達
Cas系の成分、例えばCas9分子又はCas9融合タンパク質の成分及びgRNA分子の成分の別個の送達、より特定には異なる様式での成分の送達は、例えば組織特異性及び安全性を改善することによって、性能を強化することができる。ある特定の実施態様において、Cas9分子は、Cas9変異体である。例えば、これらに限定されないが、Cas9変異体は、S.ピオゲネスのCas9変異体又はS.アウレウスのCas9変異体であってもよい。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9変異体は、EQR変異体である。ある特定の実施態様において、S.ピオゲネスのCas9変異体は、VRER変異体である。
【0702】
ある特定の実施態様において、Cas9分子(例えば、eaCas9又はeiCas9分子)又はCas9融合タンパク質及びgRNA分子は、異なる様式によって、又は時には本明細書で差次的な様式と称される様式によって送達される。異なる又は差次的な様式は、本明細書で使用される場合、対象の成分の分子、例えばCas9分子、又はgRNA分子に異なる薬力学的又は薬物動態学的特性を付与する送達様式を指す。例えば、送達様式は、例えば選択された区画、組織、又は臓器中に、異なる組織分布、異なる半減期、又は異なる一時的な分布をもたらすことができる。
【0703】
いくつかの送達様式、例えば、細胞中、又は細胞の子孫中で存続する核酸ベクターによる送達、例えば細胞の核酸への自律的な複製又は挿入による送達は、より持続的な成分の発現及び成分の存在をもたらす。例としては、ウイルス、例えばアデノ関連ウイルス又はレンチウイルスによる送達が挙げられる。
【0704】
例として、成分、例えばCas9分子及びgRNA分子は、体内における、又は特定の区画、組織若しくは臓器中における送達される成分の結果生じる半減期又は持続性の点で異なる様式によって送達することができる。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、このような様式によって送達することができる。Cas9分子の成分は、体内における、又は特定の区画又は組織若しくは臓器中における持続性又は曝露をより少なくする様式によって送達することができる。
【0705】
より一般的には、ある特定の実施態様において、第1の送達様式は、第1の成分を送達するのに使用され、第2の送達様式は、第2の成分を送達するのに使用される。第1の送達様式は、第1の薬力学的又は薬物動態学的特性を付与する。第1の薬力学的特性は、例えば、体内、区画、組織又は臓器中における成分又は成分をコードする核酸の分布、持続性、又は曝露であり得る。第2の送達様式は、第2の薬力学的又は薬物動態学的特性を付与する。第2の薬力学的特性は、例えば、体内、区画、組織又は臓器中における成分又は成分をコードする核酸の分布、持続性、又は曝露であり得る。
【0706】
ある特定の実施態様において、第1の薬力学的又は薬物動態学的特性、例えば、分布、持続性又は曝露は、第2の薬力学的又は薬物動態学的特性より制限される。
【0707】
ある特定の実施態様において、第1の送達様式は、薬力学的又は薬物動態学的特性、例えば分布、持続性又は曝露を最適化する、例えば最小化するように選択される。
【0708】
ある特定の実施態様において、第2の送達様式は、薬力学的又は薬物動態学的特性、例えば分布、持続性又は曝露を最適化する、例えば最大にするように選択される。
【0709】
ある特定の実施態様において、第1の送達様式は、比較的持続的な要素、例えば核酸、例えばプラスミド又はウイルスベクター、例えばAAV又はレンチウイルスの使用を含む。このようなベクターは比較的持続的であるため、それらから転写された生成物は、比較的持続的であると予想される。
【0710】
ある特定の実施態様において、第2の送達様式は、比較的一過性の要素、例えばRNA又はタンパク質を含む。
【0711】
ある特定の実施態様において、第1の成分は、gRNAを含み、送達様式は、比較的持続的であり、例えばgRNAは、プラスミド又はウイルスベクター、例えばAAV又はレンチウイルスから転写される。これらの遺伝子はタンパク質産物をコードしておらず、gRNAは単独で作用できないため、このような遺伝子の転写は、生理的な重要性はほとんどないと予想される。第2の成分、Cas9分子(例えばeaCas9分子又はeiCas9分子)は、一過性の方式で、例えばmRNA又はタンパク質として送達され、完全なCas9分子/gRNA分子複合体のみが存在し、短期間で活性であることを確実にする。
【0712】
さらに成分は、異なる分子形態で、又は安全性及び組織特異性を強化するように互いに補い合う異なる送達ベクターを用いて送達することができる。
【0713】
差次的な送達様式の使用は、性能、安全性及び有効性を強化することができる。例えば、最終的に起こるオフターゲット修飾を低減することができる。あまり持続的ではない様式による免疫原性の成分、例えばCas9分子(例えば、eaCas9又はeiCas9分子)又はCas9融合タンパク質の送達は、バクテリア由来Cas酵素からのペプチドがMHC分子によって細胞表面上に提示されると、免疫原性を低減することができる。2部構成の送達系は、これらの欠点を軽減することができる。
【0714】
差次的な送達様式は、成分を異なるがオーバーラップする標的領域に送達するのに使用することができる。活性複合体の形成は、標的領域のオーバーラップの外側で最小化される。したがって、ある特定の実施態様において、第1の成分、例えばgRNA分子は、第1の空間的な分布、例えば組織分布をもたらす第1の送達様式によって送達される。第2の成分、例えばCas9分子(例えばeaCas9分子又はeiCas9分子)は、第2の空間的な分布、例えば組織分布をもたらす第2の送達様式によって送達される。ある特定の実施態様において、第1の様式は、リポソーム、ナノ粒子、例えば、ポリマーナノ粒子、及び核酸、例えばウイルスベクターから選択される第1の要素を含む。第2の様式は、所定の群から選択される第2の要素を含む。ある特定の実施態様において、第1の送達様式は、第1の標的化する要素、例えば細胞特異的な受容体又は抗体を含み、第2の送達様式はその要素を含まない。実施態様において、第2の送達様式は、第2の標的化する要素、例えば第2の細胞特異的な受容体又は第2の抗体を含む。
【0715】
Cas9分子(例えば、eaCas9分子又はeiCas9分子)をウイルス送達ベクター、リポソーム、又はポリマーナノ粒子で送達すると、単一の組織のみを標的化することが望ましい可能性がある場合でも、複数の組織に送達され複数の組織で治療活性が生じる可能性がある。2部構成の送達系は、この問題を解決し、組織特異性を強化することができる。gRNA分子及びCas9分子は、異なるがオーバーラップする組織親和性を有する別々の運搬手段にパッケージングされる場合、両方のベクターによって標的化される組織でのみ、十分機能的な複合体が形成される。
【0716】
11.7 エクスビボの送達
ある特定の実施態様において、表14に記載されるゲノム編集系の各成分を細胞に導入し、次いでこれを例えば対象に導入し、細胞を対象から取り出し、エクスビボで操作し、次いで対象に導入する。成分を導入する方法としては、例えば表15に記載される送達方法のいずれかを挙げることができる。
【0717】
12.修飾されたヌクレオシド、ヌクレオチド、及び核酸
修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドが、核酸中に、例えば特にgRNA中に存在していてもよく、さらにはRNAの他の形態、例えばmRNA、RNAi、又はsiRNA中にも存在していてもよい。本明細書に記載される場合、「ヌクレオシド」は、五炭糖分子(ペントース又はリボース)又はそれらの誘導体、及び有機塩基、プリン若しくはピリミジン、又はそれらの誘導体を含有する化合物と定義される。本明細書に記載される場合、「ヌクレオチド」は、リン酸基をさらに含むヌクレオシドと定義される。
【0718】
修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは、
(i)ホスホジエステル骨格結合中の、結合していないリン酸と酸素の一方若しくは両方及び/又は結合しているリン酸と酸素の一若しくは複数の、変更、例えば置き換え;
(ii)リボースの糖の成分、例えばリボースの糖における2’ヒドロキシルの成分の変更、例えば置き換え;
(iii)リン酸部分の「デホスホ」リンカーでの大規模な置き換え;
(iv)天然核酸塩基の修飾又は置き換え;
(v)リボース-リン酸骨格の置き換え又は修飾;
(vi)オリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端の修飾、例えば、末端リン酸基の除去、修飾若しくは置き換え又は部分のコンジュゲーション;及び
(vii)糖の修飾
の一又は複数を含んでいてもよい。
【0719】
上記で列挙した修飾を組み合わせて、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの修飾を有し得る修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドを提供することができる。例えば、修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドは、修飾された糖及び修飾された核酸塩基を有していてもよい。ある特定の実施態様において、gRNAの塩基毎に修飾されており、例えば、全ての塩基が修飾されたリン酸基を有し、例えば全てがホスホロチオエート基である。ある特定の実施態様において、単分子又はモジュラーgRNA分子のリン酸基の全て、又は実質的に全てが、ホスホロチオエート基で置き換えられている。
【0720】
ある特定の実施態様において、修飾されたヌクレオチド、例えば修飾を有するヌクレオチドは、本明細書に記載される場合、核酸、例えば「修飾された核酸」に取り込まれていてもよい。ある特定の実施態様において、修飾された核酸は、1つ、2つ、3又はそれより多くの修飾されたヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様において、修飾された核酸中の位置の、少なくとも5%(例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%)が、修飾されたヌクレオチドである。
【0721】
非修飾の核酸は、例えば細胞のヌクレアーゼによる分解を受けやすい場合がある。例えば、ヌクレアーゼは、核酸ホスホジエステル結合を加水分解することができる。したがって、ある特定の実施態様において、本明細書に記載される修飾された核酸は、例えばヌクレアーゼに対する安定性を導入するために、一又は複数の修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドを含有していてもよい。
【0722】
ある特定の実施態様において、本明細書に記載される修飾されたヌクレオシド、修飾されたヌクレオチド、及び修飾された核酸は、インビボ及びエクスビボの両方で細胞の集団に導入される場合、自然免疫応答の低減を示す可能性がある。用語「自然免疫応答」は、一般的にウイルス又は細菌起源の一本鎖核酸などの外因性核酸に対する細胞応答を含み、サイトカイン発現及び放出の誘導、特にインターフェロン、及び細胞死を含む。ある特定の実施態様において、本明細書に記載される修飾されたヌクレオシド、修飾されたヌクレオチド、及び修飾された核酸は、主溝の相互作用パートナーと核酸との結合を破壊することができる。ある特定の実施態様において、本明細書に記載される修飾されたヌクレオシド、修飾されたヌクレオチド、及び修飾された核酸は、インビボ及びエクスビボの両方で細胞の集団に導入される場合、自然免疫応答の低減を示し、さらに主溝の相互作用パートナーと核酸との結合を破壊することもできる。
【0723】
12.1 化学基の定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、直鎖状又は分岐状の飽和した炭化水素基を指すことを意味する。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、ペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが挙げられる。アルキル基は、1から約20、2から約20、1から約12、1から約8、1から約6、1から約4、又は1から約3個の炭素原子を含有していてもよい。
【0724】
「アリール」は、本明細書で使用される場合、単環式又は多環式(例えば、2、3又は4つの縮合環を有する)芳香族炭化水素、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、インダニル、インデニルなどを指す。ある特定の実施態様において、アリール基は、6から約20個の炭素原子を有する。
【0725】
「アルケニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族基を指す。
【0726】
「アルキニル」は、本明細書で使用される場合、2-12個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を指し、一又は複数の三重結合を有することを特徴とする。アルキニル基の例としては、これらに限定されないが、エチニル、プロパルギル、及び3-ヘキシニルが挙げられる。
【0727】
「アリールアルキル」又は「アラルキル」は、本明細書で使用される場合、アルキルの水素原子がアリール基で置き換えられたアルキル部分を指す。アラルキルとしては、1つを超える水素原子がアリール基で置き換えられた基が挙げられる。「アリールアルキル」又は「アラルキル」の例としては、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、9-フルオレニル、ベンズヒドリル、及びトリチル基が挙げられる。
【0728】
「シクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、3から12個の炭素を有する、環式、二環式、三環式、又は多環式非芳香族炭化水素基を指す。シクロアルキル部分の例としては、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0729】
「ヘテロシクリル」は、本明細書で使用される場合、複素環式環系の一価の基を指す。代表的なヘテロシクリルとしては、これらに限定されないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル(oxazepinyl)、チアゼピニル、及びモルホリニルが挙げられる。
【0730】
「ヘテロアリール」は、本明細書で使用される場合、ヘテロ芳香環系の一価の基を指す。ヘテロアリール部分の例としては、これらに限定されないが、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピロリル、フラニル、インドリル、チオフェニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、キノリル、及びプテリジニルが挙げられる。
【0731】
12.2 リン酸骨格の修飾
12.2.1 リン酸基
ある特定の実施態様において、修飾されたヌクレオチドのリン酸基は、酸素の一又は複数を異なる置換基で置き換えることによって修飾されていてもよい。さらに、修飾されたヌクレオチド、例えば修飾された核酸中に存在する修飾されたヌクレオチドは、非修飾のリン酸部分の本明細書に記載されるような修飾されたリン酸での大規模な置き換えを含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、リン酸骨格の修飾は、非荷電リンカー又は非相称的な電荷分布を有する電荷を有するリンカーのいずれかをもたらす変更を含んでいてもよい。
【0732】
修飾されたリン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノリン酸塩、ボラノリン酸エステル、ホスホン酸水素(hydrogen phosphonate)、ホスホロアミデート、アルキル又はホスホン酸アリール 及び リン酸トリエステルが挙げられる。ある特定の実施態様において、リン酸骨格部分中の架橋されていないリン酸と酸素原子の一方は、以下の群:硫黄(S)、セレン(Se)、BR3(式中Rは、例えば水素、アルキル、又はアリールであってもよい)、C(例えばアルキル基、アリール基など)、H、NR2(式中Rは、例えば水素、アルキル、又はアリールであってもよい)、又はOR(式中Rは、例えばアルキル又はアリールであってもよい)のいずれかで置き換えられていてもよい。非修飾のリン酸基中のリン原子は、非キラルである。しかしながら、架橋されていない酸素の1つを上記した原子又は原子の基の1つで置き換えることは、リン原子をキラルにする可能性があり、すなわちこの方法で修飾されたリン酸基中のリン原子は不斉中心である。不斉リン原子は、「R」配置(本明細書ではRp)又は「S」配置(本明細書ではSp)のいずれかを有していてもよい。
【0733】
ホスホロジチオエートは、硫黄で置き換えられた架橋されていない酸素の両方を有する。ホスホロジチオエートにおけるリン中心は非キラルであり、そのためオリゴリボヌクレオチドジアステレオマーの形成は妨げられる。ある特定の実施態様において、一方又は両方の架橋されていない酸素への修飾としてはまた、架橋されていない酸素を、S、Se、B、C、H、N、及びORから独立して選択される基(Rは、例えばアルキル又はアリールであってもよい)で置き換えることも挙げることができる。
【0734】
リン酸リンカーはまた、架橋酸素(すなわち、ホスフェートをヌクレオシドに結合させる酸素)を、窒素(架橋されたホスホロアミデート)、硫黄(架橋されたホスホロチオエート)及び炭素(架橋されたメチレンホスホネート)で置き換えることによっても修飾することができる。置き換えは、いずれかの結合している酸素でなされてもよいし、又は両方の結合している酸素でなされてもよい。
【0735】
12.2.2 リン酸基の置き換え
リン酸基は、リンを含有しないコネクターで置き換えられていてもよい。ある特定の実施態様において、電荷を有するリン酸基は、中性部分で置き換えられていてもよい。
【0736】
リン酸基を置き換えることができる部分の例としては、これらに限定されないが、例えば、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ及びメチレンオキシメチルイミノを挙げることができる。
【0737】
12.2.3 リボリン酸骨格の置き換え
リン酸リンカー及びリボース糖がヌクレアーゼ耐性ヌクレオシド又はヌクレオチドサロゲートで置き換えられた、核酸を模倣できる足場も構築することができる。ある特定の実施態様において、核酸塩基は、サロゲート骨格によって係留することができる。例としては、これらに限定されないが、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン及びペプチド核酸(PNA)ヌクレオシドサロゲートを挙げることができる。
【0738】
12.3 糖の修飾
修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドは、糖基への一又は複数の修飾を含んでいてもよい。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、様々な「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾されていてもよいし又はそれらで置き換えられていてもよい。ある特定の実施態様において、2’ヒドロキシル基への修飾は、ヒドロキシルが脱プロトン化されて2’-アルコキシドイオンの形成を不可能にするため、核酸の安定性を強化することができる。2’-アルコキシドは、リンカーのリン原子への分子内の求核攻撃によって分解を触媒することができる。
【0739】
「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシ又はアリールオキシ(又は、式中「R」は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であってもよい);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CH2CH2O)nCH2CH2OR(式中Rは、例えば、H又は置換されていてもよいアルキルであってもよく、nは、0から20(例えば、0から4、0から8、0から10、0から16、1から4、1から8、1から10、1から16、1から20、2から4、2から8、2から10、2から16、2から20、4から8、4から10、4から16、及び4から20)の整数であってもよい。ある特定の実施態様において、「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾としては、「ロックド」核酸(LNA)を挙げることができ、これは、2’ヒドロキシルが、例えばC1-6アルキレン又はC1-6ヘテロアルキレン架橋によって同じリボース糖の4’炭素に接続することができ、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、又はアミノ架橋;O-アミノ(式中アミノは、例えばNH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、又はポリアミノであってもよい)及びアミノアルコキシ、O(CH2)n-アミノ(式中アミノは、例えばNH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、又はポリアミノであってもよい)を挙げることができる。ある特定の実施態様において、「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾としては、メトキシエチル基(MOE)、(OCH2CH2OCH3、例えばPEG誘導体)を挙げることができる。
【0740】
「デオキシ」修飾としては、水素(すなわち、例えば部分的にdsのRNAのオーバーハング部分における、デオキシリボース糖);ハロ(例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、又はヨード);アミノ(式中アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸であってもよい);NH(CH2CH2NH)nCH2CH2-アミノ(式中アミノは、例えば本明細書に記載される通りであってもよい)、-NHC(O)R(式中Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であってもよい)、シアノ;メルカプト;アルキル-チオ-アルキル;チオアルコキシ;並びにアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルを挙げることができ、これらは、例えば本明細書に記載されるようなアミノで置換されていてもよい。
【0741】
糖基はまた、リボース中の対応する炭素の立体化学的配置と逆の立体化学的配置を有する一又は複数の炭素を含有していてもよい。したがって、修飾された核酸は、糖として例えばアラビノースを含有するヌクレオチドを含んでいてもよい。ヌクレオチド「単量体」は、糖の1’位におけるアルファ結合、例えばアルファ-ヌクレオシドを有していてもよい。修飾された核酸はまた、C-1’に核酸塩基がない「脱塩基」糖を含んでいてもよい。これらの脱塩基糖はさらに、成分である糖原子の一又は複数において修飾されていてもよい。修飾された核酸はまた、L型の一又は複数の糖、例えばL-ヌクレオシドを含んでいてもよい。
【0742】
一般的に、RNAは、酸素を有する5員環である糖基のリボースを含む。例示的な修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、リボース中の酸素の置き換え(例えば、硫黄(S)、セレン(Se)、又はアルキレン、例えばメチレン又はエチレンなどでの置き換え);二重結合の付加(例えば、リボースをシクロペンテニル又はシクロヘキセニルで置き換えるため);リボースの環の縮小(例えば、シクロブタン又はオキセタンの4員環を形成するため);リボースの環の拡張(例えば、追加の炭素又はヘテロ原子、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、及びホスホルアミデート骨格も有するモルホリノなどを有する6又は7員環を形成するため)を挙げることができる。ある特定の実施態様において、修飾されたヌクレオチドとしては、多環式の形態(例えば、トリシクロ;及び「アンロック」の形態、例えばグリコール核酸(GNA)など(例えば、R-GNA又はS-GNA、ここでリボースは、ホスホジエステル結合に取り付けられたグリコール単位で置き換えられている)、トレオース核酸(TNA、ここでリボースは、α-L-トレオフラノシル-(3’→2’)で置き換えられている)を挙げることができる。
【0743】
12.4 核酸塩基における修飾
修飾された核酸に取り込まれ得る本明細書に記載される修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドとしては、修飾された核酸塩基を挙げることができる。核酸塩基の例としては、これらに限定されないが、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が挙げられる。これらの核酸塩基が修飾されるか又は全体が置き換えられて、修飾された核酸に取り込まれ得る修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドを提供することができる。ヌクレオチドの核酸塩基は、プリン、ピリミジン、プリン又はピリミジンアナログから独立して選択することができる。ある特定の実施態様において、核酸塩基としては、例えば、塩基の天然誘導体及び合成誘導体を挙げることができる。
【0744】
12.4.1 ウラシル
ある特定の実施態様において、修飾された核酸塩基は、修飾されたウラシルである。例示的な修飾されたウラシルを有する核酸塩基及びヌクレオシドとしては、これらに限定されないが、シュードウリジン(ψ)、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジン又は5-ブロモ-ウリジン)、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τcm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、5-メチル-ウリジン(m5U、すなわち核酸塩基デオキシチミンを有する)、1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジン、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、キサンチン、及びヒポキサンチンが挙げられる。
【0745】
12.4.2 シトシン
ある特定の実施態様において、修飾された核酸塩基は、修飾されたシトシンである。例示的な修飾されたシトシンを有する核酸塩基及びヌクレオシドとしては、これらに限定されないが、5-アザ-シチジン、6-アザ-シチジン、シュードイソシチジン、3-メチル-シチジン(m3C)、N4-アセチル-シチジン(act)、5-ホルミル-シチジン(f5C)、N4-メチル-シチジン(m4C)、5-メチル-シチジン(m5C)、5-ハロ-シチジン(例えば、5-ヨード-シチジン)、5-ヒドロキシメチル-シチジン(hm5C)、1-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン(s2C)、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン、4-メトキシ-1-メチル-シュードイソシチジン、リシジン(k2C)、α-チオ-シチジン、2’-O-メチル-シチジン(Cm)、5,2’-O-ジメチル-シチジン(m5Cm)、N4-アセチル-2’-O-メチル-シチジン(ac4Cm)、N4,2’-O-ジメチル-シチジン(m4Cm)、5-ホルミル-2’-O-メチル-シチジン(f5Cm)、N4,N4,2’-O-トリメチル-シチジン(m4
2Cm)、1-チオ-シチジン、2’-F-アラ-シチジン、2’-F-シチジン、及び2’-OH-アラ-シチジンが挙げられる。
【0746】
12.4.3 アデニン
ある特定の実施態様において、修飾された核酸塩基は、修飾されたアデニンである。例示的な修飾されたアデニンを有する核酸塩基及びヌクレオシドとしては、これらに限定されないが、2-アミノ-プリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-ハロ-プリン(例えば、2-アミノ-6-クロロ-プリン)、6-ハロ-プリン(例えば、6-クロロ-プリン)、2-アミノ-6-メチル-プリン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシン、7-デアザ-8-アザ-アデノシン、7-デアザ-2-アミノ-プリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノ-プリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチル-アデノシン(m1A)、2-メチル-アデノシン(m2A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、2-メチルチオ-N6-メチル-アデノシン(ms2m6A)、N6-イソペンテニル-アデノシン(i6A)、2-メチルチオ-N6-イソペンテニル-アデノシン(ms2i6A)、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン(io6A)、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン(ms2io6A)、N6-グリシニルカルバモイル-アデノシン(g6A)、N6-スレオニルカルバモイル-アデノシン(t6A)、N6-メチル-N6-スレオニルカルバモイル-アデノシン(m6t6A)、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイル-アデノシン(ms2g6A)、N6,N6-ジメチル-アデノシン(m6
2A)、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイル-アデノシン(hn6A)、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイル-アデノシン(ms2hn6A)、N6-アセチル-アデノシン(ac6A)、7-メチル-アデノシン、2-メチルチオ-アデノシン、2-メトキシ-アデノシン、α-チオ-アデノシン、2’-O-メチル-アデノシン(Am)、N6,2’-O-ジメチル-アデノシン(m6Am)、N6-メチル-2’-デオキシアデノシン、N6,N6,2’-O-トリメチル-アデノシン(m6
2Am)、1,2’-O-ジメチル-アデノシン(m1Am)、2’-O-リボシルアデノシン(リン酸)(Ar(p))、2-アミノ-N6-メチル-プリン、1-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、2’-F-アラ-アデノシン、2’-F-アデノシン、2’-OH-アラ-アデノシン、及びN6-(19-アミノ-ペンタオキサノナデシル)-アデノシンが挙げられる。
【0747】
12.4.4 グアニン
ある特定の実施態様において、修飾された核酸塩基は、修飾されたグアニンである。例示的な修飾されたグアニンを有する核酸塩基及びヌクレオシドとしては、これらに限定されないが、イノシン(I)、1-メチル-イノシン(m1I)、ワイオシン(imG)、メチルワイオシン(mimG)、4-デメチル-ワイオシン(imG-14)、イソワイオシン(imG2)、ワイブトシン(yW)、ペルオキシワイブトシン(o2yW)、ヒドロキシワイブトシン(OHyW)、不完全修飾型(undermodified)ヒドロキシワイブトシン(OHyW*)、7-デアザ-グアノシン、クエオシン(Q)、エポキシクエオシン(oQ)、ガラクトシル-クエオシン(galQ)、マンノシル-クエオシン(manQ)、7-シアノ-7-デアザ-グアノシン(preQ0)、7-アミノメチル-7-デアザ-グアノシン(preQ1)、アルカエオシン(G+)、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン(m7G)、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチル-イノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチル-グアノシン(m’G)、N2-メチル-グアノシン(m2G)、N2,N2-ジメチル-グアノシン(m2
2G)、N2,7-ジメチル-グアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-ジメチル-グアノシン(m2,2,7G)、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、N2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン、α-チオ-グアノシン、2’-O-メチル-グアノシン(Gm)、N2-メチル-2’-O-メチル-グアノシン(m2Gm)、N2,N2-ジメチル-2’-O-メチル-グアノシン(m2
2Gm)、1-メチル-2’-O-メチル-グアノシン(m’Gm)、N2,7-ジメチル-2’-O-メチル-グアノシン(m2,7Gm)、2’-O-メチル-イノシン(Im)、1,2’-O-ジメチル-イノシン(m’Im)、O6-フェニル-2’-デオキシイノシン、2’-O-リボシルグアノシン(リン酸)(Gr(p))、1-チオ-グアノシン、O6-メチル-グアノシン、O6-メチル-2’-デオキシグアノシン、2’-F-アラ-グアノシン、及び2’-F-グアノシンが挙げられる。
【0748】
12.5 例示的な修飾されたgRNAs
ある特定の実施態様において、修飾された核酸は、修飾されたgRNAであってもよい。配列番号208から58749から選択されるヌクレオチド配列を含む標的指向性ドメインを含むあらゆるgRNAを含む本明細書に記載されるgRNAはいずれも、このセクションに従って修飾されていてもよいことが理解されると予想される。
【0749】
上記で論じられたように、一過性で発現又は送達される核酸は、例えば細胞のヌクレアーゼによる分解を受けやすい可能性がある。したがって、一形態において、本明細書に記載される修飾されたgRNA分子は、ヌクレアーゼに対する安定性を導入する一又は複数の修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドを含有していてもよい。ある特定の実施態様において、明細書に記載されるある特定の修飾されたgRNA分子本は、細胞の集団、特に本明細書で開示された細胞の集団に導入される場合、自然免疫応答の低減を示す可能性がある。上述したように、用語「自然免疫応答」は、一般的にウイルス又は細菌起源の一本鎖核酸などの外因性核酸に対する細胞応答を含み、サイトカイン発現及び放出の誘導、特にインターフェロン、及び細胞死を含む。
【0750】
このセクションで論じられた例示的な修飾のいくつかは、gRNA配列内のあらゆる位置に含まれていてもよいが、ある特定の実施態様において、gRNA分子は、その5’末端又はその近くに(例えば、その5’末端の1-10、1-5、又は1-2ヌクレオチド以内に)修飾を含む。ある特定の実施態様において、gRNAは、その3’末端又はその近くに(例えば、その3’末端の1-10、1-5、又は1-2ヌクレオチド以内に)修飾を含む。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、その5’末端又はその近くと、その3’末端又はその近くとの両方に修飾を含む。
【0751】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、5’三リン酸基が欠如している。ある特定の実施態様において、標的指向性ドメインの5’末端は、5’三リン酸基が欠如している。ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、5’capを含む。ある特定の実施態様において、標的指向性ドメインの5’末端は、5’capを含む。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、5’三リン酸基が欠如している。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、標的指向性ドメインを含み、標的指向性ドメインの5’末端は、5’三リン酸基が欠如している。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、5’capを含む。ある特定の実施態様において、gRNA分子は、標的指向性ドメインを含み、標的指向性ドメインの5’末端は、5’capを含む。
【0752】
ある特定の実施態様において、gRNAの5’末端は、真核生物mRNAのcap構造又はcapアナログ(例えば、これらに限定されないが、G(5’)ppp(5’)G capアナログ、m7G(5’)ppp(5’)G capアナログ、又は3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gアンチリバースcapアナログ(ARCA))を含むことによって修飾される。ある特定の実施態様において、5’capは、5’-5’三リン酸結合を介してgRNA分子の残りに連結された修飾されたグアニンヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様において、5’capアナログは、5’-5’三リン酸結合を介して連結された2つの修飾されていてもよいグアニンヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有し、式中:
B
1及びB
1’のそれぞれは、独立して、
であり;
各R
1は、独立して、フェニル又は6員のヘテロアリールで置換されていてもよいC
1-4アルキルであり;
R
2、R
2’、及びR
3’のそれぞれは、独立して、H、F、OH、又はO-C
1-4アルキルであり;
X、Y、及びZのそれぞれは、独立して、O又はSであり;
X’及びY’のそれぞれは、独立して、O又はCH
2である。
【0753】
ある特定の実施態様において、各R1は、独立して、-CH3、-CH2CH3、又は-CH2C6H5である。
【0754】
ある特定の実施態様において、R1は、-CH3である。
【0755】
【0756】
ある特定の実施態様において、R2、R2’、及びR3’のそれぞれは、独立して、H、OH、又はO-CH3である。
【0757】
ある特定の実施態様において、X、Y、及びZのそれぞれは、Oである。
【0758】
ある特定の実施態様において、X’及びY’は、Oである。
【0759】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有する。
【0760】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有する。
【0761】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有する。
【0762】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有する。
【0763】
ある特定の実施態様において、Xは、Sであり、Y及びZは、Oである。
【0764】
ある特定の実施態様において、Yは、Sであり、X及びZは、Oである。
【0765】
ある特定の実施態様において、Zは、Sであり、X及びYは、Oである。
【0766】
ある特定の実施態様において、ホスホロチオエートは、Spジアステレオマーである。
【0767】
ある特定の実施態様において、X’は、CH2であり、Y’は、Oである。
【0768】
ある特定の実施態様において、X’は、Oであり、Y’は、CH2である。
【0769】
ある特定の実施態様において、5’capは、修飾されていてもよい5’-5’四リン酸結合を介して連結された2つの修飾されていてもよいグアニンヌクレオチドを含む。
【0770】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有し、式中:
B
1及びB
1’のそれぞれは、独立して、
であり、
各R
1は、独立して、フェニル又は6員のヘテロアリールで置換されていてもよいC
1-4アルキルであり;
R
2、R
2’、及びR
3’のそれぞれは、独立して、H、F、OH、又はO-C
1-4アルキルであり;
W、X、Y、及びZのそれぞれは、独立して、O又はSであり;
X’、Y’、及びZ’のそれぞれは、独立して、O又はCH
2である。
【0771】
ある特定の実施態様において、各R1は、独立して、-CH3、-CH2CH3、又は-CH2C6H5である。
【0772】
ある特定の実施態様において、R1は、-CH3である。
【0773】
【0774】
ある特定の実施態様において、R2、R2’、及びR3’のそれぞれは、独立して、H、OH、又はO-CH3である。
【0775】
ある特定の実施態様において、W、X、Y、及びZのそれぞれは、Oである。
【0776】
ある特定の実施態様において、X’、Y’、及びZ’のそれぞれは、Oである。
【0777】
ある特定の実施態様において、X’は、CH2であり、Y’及びZ’は、Oである。
【0778】
ある特定の実施態様において、Y’は、CH2であり、X’及びZ’は、Oである。
【0779】
ある特定の実施態様において、Z’は、CH2であり、X’及びY’は、Oである。
【0780】
ある特定の実施態様において、5’capは、修飾されていてもよい5’-5’五リン酸結合を介して連結された、2つの修飾されていてもよいグアニンヌクレオチドを含む。
【0781】
ある特定の実施態様において、gRNA分子の5’末端は、化学式:
を有し、式中:
B
1及びB
1’のそれぞれは、独立して、
であり、
各R
1は、独立して、フェニル又は6員のヘテロアリールで置換されていてもよいC
1-4アルキルであり;
R
2、R
2’、及びR
3’のそれぞれは、独立して、H、F、OH、又はO-C
1-4アルキルであり;
V、W、X、Y、及びZのそれぞれは、独立して、O又はSであり;
W’、X’、Y’、及びZ’のそれぞれは、独立して、O又はCH
2である。
【0782】
ある特定の実施態様において、各R1は、独立して、-CH3、-CH2CH3、又は-CH2C6H5である。
【0783】
ある特定の実施態様において、R1は、-CH3である。
【0784】
【0785】
ある特定の実施態様において、R2、R2’、及びR3’のそれぞれは、独立して、H、OH、又はO-CH3である。
【0786】
ある特定の実施態様において、V、W、X、Y、及びZのそれぞれは、Oである。
【0787】
ある特定の実施態様において、W’、X’、Y’、及びZ’のそれぞれは、Oである。
【0788】
用語「5’cap」は、本明細書で使用される場合、従来のmRNAの5’cap構造に加えて、これらの類似体も包含する。例えば、上記で示された化学構造に包含される5’cap構造に加えて、例えば、メチレン-ビス(ホスホネート)部分を有する四リン酸類似体(例えば、Rydzik, A M等(2009) Org Biomol Chem 7(22):4763-76を参照)、架橋されていない酸素が硫黄で置換された類似体(例えば、Grudzien-Nogalska, E.等(2007) RNA 13(10): 1745-1755を参照)、N7-ベンジル化ジヌクレオシド四リン酸類似体(例えば、Grudzien, E.等(2004) RNA 10(9): 1479-1487を参照)、又はアンチリバースcap類似体(例えば、米国特許第7074596号、並びにJemielity, J.等(2003) RNA 9(9): 1108-1122及びStepinski, J.等(2001) RNA 7(10):1486-1495を参照)を使用することが可能である。また本出願は、OH又はOMeの代わりにハロゲン基を有するcap類似体(例えば、米国特許第8304529号を参照);少なくとも1つのホスホロチオエート(PS)結合を有するcap類似体(例えば、米国特許第8153773号及びKowalska, J.等(2008) RNA 14(6): 1119-1131を参照);及び少なくとも1つのボラノホスフェート又はホスホロセレノエート結合を有するcap類似体(例えば、米国特許第8519110号を参照);及びアルキニル誘導体化5’cap類似体(例えば、米国特許第8969545号を参照)の使用も包含する。
【0789】
一般的に、5’capは、化学合成又はインビトロでのgRNA転写のいずれかの間に含めることができる。ある特定の実施態様において、5’capが使用されず、その代わりにgRNA(例えば、インビトロで転写されたgRNA)が、5’三リン酸基を除去するためのホスファターゼ(例えば、ウシ腸由来アルカリホスファターゼ)での処理によって修飾される。
【0790】
ここで開示された主題は、3’ポリA尾部(本明細書ではポリAトラクトとも称される)を含むgRNAを使用することによる遺伝子編集のための方法、ゲノム編集系及び組成物も提供する。このようなgRNAは、例えば、gRNA分子前駆体のインビトロでの転写後にポリアデノシンポリメラーゼを使用してgRNA分子前駆体にポリA尾部を付加することによって調製することができる。例えば、ある特定の実施態様において、ポリA尾部は、例えば大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリメラーゼを使用して酵素的に付加されてもよい。またポリA尾部を含むgRNAは、DNA鋳型からのインビトロでの転写によって調製することもできる。ある特定の実施態様において、既定の長さを有するポリA尾部は、DNA鋳型にコードされており、RNAポリメラーゼ(例えばT7RNAポリメラーゼなど)を介したgRNAを用いて転写されてもよい。ポリA尾部を有するgRNAはまた、gRNA分子前駆体に相補的なスプリントDNAオリゴヌクレオチド使用又は不使用のRNAリガーゼ又はDNAリガーゼ及びポリAオリゴヌクレオチドを使用して、インビトロでの転写後にポリAオリゴヌクレオチドをgRNA分子前駆体にライゲートすることによって調製することもできる。例えば、ある特定の実施態様において、既定の長さのポリA尾部は、合成オリゴヌクレオチドとして合成され、ガイドRNAに相補的なスプリントDNAオリゴヌクレオチド使用又は不使用のRNAリガーゼ又はDNAリガーゼのいずれか、及びポリAオリゴヌクレオチドを用いてgRNAの3’末端にライゲートされる。またポリA尾部を含むgRNAは、一又は複数のスプリントDNAオリゴヌクレオチド使用又は不使用のRNAリガーゼ又はDNAリガーゼのいずれかによって一緒にライゲートした1つ又は数個の断片中に合成的に調製することもできる。
【0791】
ある特定の実施態様において、ポリA尾部は、50個より少ないアデニンヌクレオチド、例えば、45個より少ないアデニンヌクレオチド、40個より少ないアデニンヌクレオチド、35個より少ないアデニンヌクレオチド、30個より少ないアデニンヌクレオチド、25個より少ないアデニンヌクレオチド又は20個より少ないアデニンヌクレオチドで構成されている。ある特定の実施態様において、ポリA尾部は、5から50個の間のアデニンヌクレオチド、例えば5から40個の間のアデニンヌクレオチド、5から30個の間のアデニンヌクレオチド、10から50個の間のアデニンヌクレオチド、又は15から25個の間のアデニンヌクレオチドで構成されている。ある特定の実施態様において、ポリA尾部は、約20個のアデニンヌクレオチドで構成されている。
【0792】
ここで開示された主題はまた、本明細書に記載される一又は複数の修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドを含むgRNAを使用することによる遺伝子編集のための方法、ゲノム編集系及び組成物(例えば、エクスビボでの遺伝子編集)も提供する。
【0793】
このセクションで論じられた例示的な修飾のいくつかは、gRNA配列内のあらゆる位置に含まれていてもよいが、ある特定の実施態様において、gRNAは、その5’末端又はその近くに(例えば、その5’末端の1-10、1-5、又は1-2ヌクレオチド以内に)修飾を含む。ある特定の実施態様において、gRNAは、その3’末端又はその近くに(例えば、その3’末端の1-10、1-5、又は1-2ヌクレオチド以内に)修飾を含む。ある特定の実施態様において、gRNAは、その5’末端又はその近くと、その3’末端又はその近くとの両方に修飾を含む。
【0794】
ある特定の実施態様において、gRNA分子(例えば、インビトロで転写されたgRNA)は、真核細胞中で発現された遺伝子からの標的ドメインと相補的な標的指向性ドメインを含み、gRNA分子は、その5’末端で修飾されており、3’ポリA尾部を含む。gRNA分子は、例えば、5’三リン酸基が欠如していてもよい(例えば、標的指向性ドメインの5’末端は、5’三リン酸基が欠如している)。ある特定の実施態様において、gRNA(例えば、インビトロで転写されたgRNA)は、5’三リン酸基を除去するためのホスファターゼ(例えば、ウシ腸由来アルカリホスファターゼ)での処理によって修飾されており、本明細書に記載される3’ポリA尾部を含む。代替として、gRNA分子は、5’capを含んでいてもよい(例えば、標的指向性ドメインの5’末端は、5’capを含む)。ある特定の実施態様において、gRNA(例えば、インビトロで転写されたgRNA)は、5’cap構造又はcapアナログ及び本明細書に記載される3’ポリA尾部の両方を含有する。ある特定の実施態様において、5’capは、5’-5’三リン酸結合を介してgRNA分子の残りに連結された修飾されたグアニンヌクレオチドを含む。ある特定の実施態様において、5’capは、修飾されていてもよい5’-5’三リン酸結合を介して連結された2つの修飾されていてもよいグアニンヌクレオチド(例えば、上述した通り)を含む。ある特定の実施態様において、ポリA尾部は、5から50個の間のアデニンヌクレオチド、例えば5から40個の間のアデニンヌクレオチド、5から30個の間のアデニンヌクレオチド、10から50個の間のアデニンヌクレオチド、15から25個の間のアデニンヌクレオチド、30個より少ないアデニンヌクレオチド、25個より少ないアデニンヌクレオチド又は約20個のアデニンヌクレオチドで構成されている。
【0795】
ある特定の実施態様において、ここで開示された主題は、真核細胞中で発現された遺伝子からの標的ドメインと相補的な標的指向性ドメインを含むgRNA分子であって、30個より少ないアデニンヌクレオチド(例えば、25個より少ないアデニンヌクレオチド、15から25個の間のアデニンヌクレオチド、又は約20個のアデニンヌクレオチド)で構成されている3’ポリA尾部を含む、gRNA分子を提供する。ある特定の実施態様において、これらのgRNA分子は、それらの5’末端でさらに修飾されている(例えば、gRNA分子は、5’三リン酸基を除去するためのホスファターゼでの処理によって修飾されているか、又は本明細書に記載される5’capを含むように修飾されている)。
【0796】
ある特定の実施態様において、gRNAは、3’末端のUリボースで修飾されていてもよい。ある特定の実施態様において、gRNAの5’末端及び3’末端のUリボースが、修飾されている(例えば、gRNAは、5’三リン酸基を除去するためのホスファターゼでの処理によって修飾されているか、又は本明細書に記載される5’capを含むように修飾されている)。
【0797】
例えば、Uリボースの2つの末端ヒドロキシル基がアルデヒド基に酸化され、それに伴いリボース環が開環されて、以下に示すような修飾されたヌクレオシドを得ることができる。
式中「U」は、非修飾の又は修飾されたウリジンであってもよい。
【0798】
ある特定の実施態様において、3’末端のUは、以下に示すようにして2’3’環状リン酸で修飾されていてもよい。
式中「U」は、非修飾の又は修飾されたウリジンであってもよい。
【0799】
ある特定の実施態様において、gRNA分子は、例えば本明細書に記載される修飾されたヌクレオチドの一又は複数を取り込むことによって分解に対して安定化されていてもよい3’ヌクレオチドを含有していてもよい。この実施態様において、例えば、ウリジンは、修飾されたウリジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、及び5-ブロモウリジンで、又は本明細書に記載される修飾されたウリジンのいずれかで置き換えられていてもよく、アデノシン、シチジン及びグアノシンは、修飾されたアデノシン、シチジン及びグアノシンで、例えば8位での修飾、例えば8-ブロモグアノシンで、又は本明細書に記載される修飾されたアデノシン、シチジン若しくはグアノシンのいずれかで置き換えられていてもよい。
【0800】
ある特定の実施態様において、糖が修飾されたリボヌクレオチドが、gRNAに取り込まれていてもよく、例えば2’OH-基が、H、-OR、-R(式中Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であってもよい)、ハロ、-SH、-SR(式中Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であってもよい)、アミノ(式中アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロ環アミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸であってもよい);又はシアノ(-CN)から選択される基で置き換えられている。ある特定の実施態様において、リン酸骨格は、本明細書に記載されるように、例えばホスホチオエート基で修飾されていてもよい。ある特定の実施態様において、gRNAのヌクレオチドの一又は複数は、それぞれ独立して修飾された又は非修飾のヌクレオチドであってもよく、このようなヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、2’-糖が修飾された、例えば2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、又は2’-フルオロが修飾された、例えば2’-F又は2’-O-メチル、アデノシン(A)、2’-F又は2’-O-メチル、シチジン(C)、2’-F又は2’-O-メチル、ウリジン(U)、2’-F又は2’-O-メチル、チミジン(T)、2’-F又は2’-O-メチル、グアノシン(G)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2’-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)、及びそれらのあらゆる組合せなどが挙げられる。
【0801】
ある特定の実施態様において、gRNAは、2’OH-基が、同じリボース糖の4’炭素に、例えばC1-6アルキレン又はC1-6ヘテロアルキレン架橋によって接続されていてもよい「ロックド」核酸(LNA)を含んでいてもよく、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、又はアミノ架橋;O-アミノ(式中アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロ環アミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、又はポリアミノであってもよい)及びアミノアルコキシ又はO(CH2)n-アミノ(式中アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロ環アミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、又はポリアミノであってもよい)を挙げることができる。
【0802】
ある特定の実施態様において、gRNAは、修飾されたヌクレオチドを含んでいてもよく、ここで修飾されたヌクレオチドは、多環式(例えば、トリシクロ;及び「アンロック」の形態、例えばグリコール核酸(GNA)など(例えば、R-GNA又はS-GNA、ここでリボースは、ホスホジエステル結合に取り付けられたグリコール単位で置き換えられている)、又はトレオース核酸(TNA、ここでリボースは、α-L-トレオフラノシル-(3’→2’)で置き換えられている)である。
【0803】
一般的に、gRNA分子は、糖基のリボースを含み、これは酸素を有する5員環である。例示的な修飾されたgRNAは、これらに限定されないが、リボース中の酸素の置き換え(例えば、硫黄(S)、セレン(Se)、又はアルキレン、例えばメチレン又はエチレンなどでの置き換え);二重結合の付加(例えば、リボースをシクロペンテニル又はシクロヘキセニルで置き換えるため);リボースの環の縮小(例えば、シクロブタン又はオキセタンの4員環を形成するため);リボースの環の拡張(例えば、追加の炭素又はヘテロ原子、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、及びホスホルアミデート骨格も有するモルホリノなどを有する6又は7員環を形成するため)を含んでいてもよい。糖アナログの変更の大部分は2’位に局在しているが、4’位などの他の部位も修飾に適している。ある特定の実施態様において、gRNAは、4’-S、4’-Se又は4’-C-アミノメチル-2’-O-Me修飾を含む。
【0804】
ある特定の実施態様において、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン、が、gRNAに取り込まれていてもよい。ある特定の実施態様において、O-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシンが、gRNAに取り込まれていてもよい。ある特定の実施態様において、gRNA分子中のヌクレオチドの一若しくは複数又は全てが、デオキシヌクレオチドである。
【0805】
12.6 miRNA結合部位
マイクロRNA(又はmiRNA)は、天然細胞性の19-25ヌクレオチド長さを有する非コードRNAである。それらは、例えばmRNAの3’UTR中の適切なmiRNA結合部位を有する核酸分子に結合し、遺伝子発現を下方調節する。ある特定の実施態様において、この下方調節は、核酸分子の安定性を低減すること又は翻訳を阻害することのいずれかによって起こる。本明細書で開示されたRNA種、例えばCas9をコードするmRNAは、例えばその3’UTR中にmiRNA結合部位を含んでいてもよい。miRNA結合部位は、選択された細胞型における発現の下方調節を促進するように選択することができる。例として、肝臓中に豊富に存在するマイクロRNAであるmiR-122のための結合部位の取り込みは、肝臓中で目的の遺伝子の発現を阻害することができる。
【実施例】
【0806】
以下の実施例は、単なる例示であり、本発明の範囲又は内容を限定することは決して目的としない。
【0807】
実施例1: 候補ガイドRNA(gRNA)の評価
候補gRNAの適性は、この実施例に記載されたようにして評価することができる。キメラgRNAについて記載されているが、この手法は、モジュラーgRNAを評価するのにも使用することができる。
【0808】
ベクターへのgRNAのクローニング
各gRNAにつきオーバーラップするオリゴヌクレオチドの対を設計して得る。オリゴヌクレオチドをアニールし、上流にU6プロモーター及び残部の長いキメラgRNAの配列を含有する消化したベクターバックボーンにライゲートする。プラスミドの配列を検証し、十分な量のトランスフェクション品質のDNAが生成されるように予備調製する。インビボでの転写を駆動させるために(例えばH1プロモーター)又はインビトロでの転写のために(例えば、T7プロモーター)代替のプロモーターを使用してもよい。
【0809】
直鎖状dsDNA分子(STITCHR)におけるgRNAのクローニング
各gRNAにつき単一のオリゴヌクレオチドを設計して得る。U6プロモーター及びgRNA足場(例えばcrRNA及びtracrRNAに由来する配列、例えば第1の相補性ドメイン;連結ドメイン;第2の相補性ドメイン;近位ドメイン;及び尾部ドメインを含む、例えば、標的指向性ドメインを除く全てを含む)を、別々にPCR増幅し、dsDNA分子として精製する。PCR反応には、gRNA特異的オリゴヌクレオチドを使用して、オリゴヌクレオチド中で特定された標的指向性ドメインによって連結されたU6とgRNA足場とを一緒にまとめる。得られたdsDNA分子(STITCHR生成物)を、トランスフェクションのために精製する。インビボでの転写を駆動させるために(例えば、H1プロモーター)、又はインビトロでの転写のために(例えば、T7プロモーター)、代替のプロモーターを使用することができる。あらゆる細菌種からのCas9に適合するgRNAを作り出すのに、あらゆるgRNA足場を使用することができる。
【0810】
試験しようとする各gRNAを、Cas9を発現するプラスミド及び少量のGFP発現プラスミドと共にヒト細胞にトランスフェクトする。予備実験において、これらの細胞は、不死化ヒト細胞株、例えば293T、K562又はU2OSなどであってもよい。代替として、初代ヒト細胞を使用することができる。このケースにおいて、細胞は、結果として生じる治療的な細胞標的にとって重要な場合がある。可能性のある治療標的細胞集団に類似した初代細胞の使用は、内因性のクロマチン及び遺伝子発現の状況下における遺伝子標的化率に関する重要な情報を提供することができる。
【0811】
トランスフェクションは、脂質トランスフェクション(例えばリポフェクトアミン又はFugeneなど)を使用して、又はエレクトロポレーション(例えばLonza Nucleofectionなど)によって実行することができる。トランスフェクション後、GFP発現を、蛍光顕微鏡検査法又はフローサイトメトリーのいずれかによって決定して、一貫した高レベルのトランスフェクションを確認することができる。これらの予備的なトランスフェクションは、異なるgRNA及び異なる標的化手法(17-mer、20-mer、ヌクレアーゼ、二重のニッカーゼなど)を含んでいてもよく、どのgRNA/gRNAの組合せが最大の活性を生じるかを決定することができる。
【0812】
各gRNAでの切断効率は、T7E1タイプのアッセイ又は配列決定によって標的遺伝子座におけるNHEJによって誘導されたインデル形成を測定することによって査定することができる。代替として、他のミスマッチ感受性酵素、例えばCelI/Surveyorヌクレアーゼなども使用することができる。
【0813】
T7E1アッセイに関して、PCRアンプリコンは、およそ500-700bpであり、アンプリコン中に目的の切断部位が非対称的に配置される。増幅、精製及びPCR産物のサイズ検証後、DNAを変性させ、95℃に加熱し、次いでゆっくり冷却することにより再びハイブリダイズさせる。次いでハイブリダイズしたPCR産物を、不完全にマッチしたDNAを認識して切断するT7エンドヌクレアーゼI(又は他のミスマッチ感受性酵素)で消化する。アンプリコンを変性させ再びアニールさせるときに元の鋳型DNA中にインデルが存在する場合、これは、異なるインデルを内包するDNA鎖のハイブリダイゼーションを引き起こし、それゆえに完全にマッチしていない二本鎖DNAが生じる。消化産物は、ゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動によって可視化することができる。以下の方程式:%NHEJ=(1-(1-切断されたものの割合)1/2)を使用して、切断されるDNAの割合(切断産物の密度を、切断産物及び切断されていない産物の密度で割った値)を使用して、NHEJのパーセントを推測することができる。T7E1アッセイは、約2-5%のNHEJまでの感度を有する。
【0814】
T7E1アッセイの代わりに、又はそれに加えて、配列決定を使用することができる。サンガー配列決定の場合、精製されたPCRアンプリコンを、プラスミド骨格にクローニングし、形質転換し、ミニプレップで処理し、単一のプライマーを用いて配列決定する。サンガー配列決定は、T7E1によってNHEJ率を決定した後にインデルの正確な性質を決定するのに使用することができる。
【0815】
また配列決定も、次世代配列決定技術を使用して実行することができる。次世代配列決定を使用する場合、アンプリコンは、300-500bpであってもよく、目的の切断部位は非対称的に配置される。PCR後、例えばハイスループット配列決定(例えばIllumina MiSeq)で使用するために、次世代配列決定のアダプター及びバーコード(例えばIlluminaマルチプレックスアダプター及びインデックス)をアンプリコンの末端に付加することができる。この方法は、極めて低いNHEJ率の検出を可能にする。
【0816】
実施例2: NHEJによる遺伝子標的化の評価
遺伝子標的化効率のさらなる評価のために、最初の試験で最大レベルのNHEJを誘導するgRNAを選択することができる。このケースにおいて、細胞は、対象の疾患に由来する細胞であり、それゆえに重要な突然変異を有する。
【0817】
トランスフェクション後(通常、トランスフェクション後2-3日)、トランスフェクトされた細胞のバルクの集団からゲノムDNAを単離して、PCRを使用して標的領域を増幅することができる。PCR後、所望の突然変異(標的遺伝子のノックアウト又は標的配列モチーフの除去のいずれか)を生成するための遺伝子標的化効率は、配列決定によって決定することができる。サンガー配列決定の場合、PCRアンプリコンは、500-700bpの長さであってもよい。次世代配列決定の場合、PCRアンプリコンは、300-500bpの長さであってもよい。目標が遺伝子の機能をノックアウトすることである場合、配列決定は、何パーセントのウイルスコピーが、遺伝子の機能を破壊すると予想されるフレームシフト又は大きい欠失若しくは挿入を引き起こすNHEJによって誘導されたインデルを受けたかを評価するのに使用することができる。目標が特異的な配列モチーフを除去することである場合、配列決定は、何パーセントのウイルスコピーが、この配列に及ぶNHEJによって誘導された欠失を受けたかを評価するのに使用することができる。
【0818】
実施例3: 合成HSV-1コンストラクトを標的化する個々のgRNAの活性の評価
レポーターとしてHSV-1配列を含有するプラスミドを構築して、標的DNAのCas9媒介切断を測定した。このレポータープラスミド、pAF025は、CMVプロモーターによって駆動する緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする。標的HSV-1配列を、GFPと共にそのN末端でフレーム内に挿入し、それらの間にP2A自己切断ペプチド配列を配置した。
【0819】
公共のツールであるcas-offinderをベースとした特注のガイドRNA設計ソフトウェアを使用してgRNA分子を同定した(Bae等、Bioinformatics. 2014; 30(10): 1473-1475)。この実施例で試験された、並びに表18及び19に列挙した各gRNA分子をSTITCHR生成物として生成し、HEK293FT細胞に、S.アウレウスのCas9を発現するプラスミド(pAF003)と共にトランスフェクトした。pAF003プラスミドは、S.アウレウスのCas9をコードしており、CMVプロモーターによって駆動するN末端及びC末端の核局在化シグナル(NLS)及びC末端の三重のflagタグを有する。gRNA及びCas9をコードするDNAを、Mirus TransIT-293トランスフェクション試薬によって、標的プラスミドpAF025と共に細胞に導入した。トランスフェクションから2日後に、細胞をトリプシン処理によってそれらの増殖プレートから除去し、PBSバッファー中で洗浄し、BD Accuriフローサイトメーターで分析した。
【0820】
図9は、pAF025のプラスミドマップを示す。
図10A-10Bは、プラスミドpAF025中のHSV-1標的配列のCas9媒介切断による、トランスフェクトされた細胞集団の平均蛍光発光(又は相対蛍光単位、RFU)によって測定した場合のGFP発現の低減を示す。表18に、
図10Aに示されるgRNAを列挙し、表19に、
図10Bに示されるgRNAを列挙した。
【0821】
参照による組み込み
本明細書で述べられた全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的且つ個々に参照により組み入れられることが示されたのと同等に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合、本明細書に記載のあらゆる定義を含めて本出願が優先される。
【0822】
均等物
当業者は、常套的な実験を使用するだけで、本明細書に記載される発明の具体的な実施態様の多くの均等物を認識するか又は確認が可能であると予想される。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【配列表】