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  • 特許-電子装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231225BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20231225BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01L21/78 M
B81C1/00
B24B27/06 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019066503
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167276
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】林下 英司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 徹
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-223446(JP,A)
【文献】特開2006-228810(JP,A)
【文献】特開2005-175148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0311118(US,A1)
【文献】特許第4151164(JP,B2)
【文献】特開2008-193034(JP,A)
【文献】特開2006-173153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B81C 1/00
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に開口部を有する電子部品と、前記開口部を覆うように前記電子部品の前記第1面に貼り付けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第1粘着性樹脂層を有する第1粘着性フィルムと、前記電子部品の第2面に貼りつけられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第2粘着性樹脂層を有する第2粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記第1粘着性フィルムおよび前記第2粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、前記電子部品を前記第1粘着性フィルムとともにダイシングする工程(B)と、
外部刺激を与えることにより前記第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、個片化した前記電子部品から前記第1粘着性フィルムを剥離する工程(C)と、
外部刺激を与えることにより前記第2粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、前記第2粘着性フィルムから、個片化した前記電子部品をピックアップする工程(D)と、
この順に含み、
前記ダイシングはダイシングブレードを用いて行う電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(C)では、前記第2粘着性フィルムは前記電子部品の前記第2面に貼りついた状態を維持している電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置の製造方法において、
前記第1粘着性樹脂層が加熱により粘着力が低下する層であり、
前記第2粘着性樹脂層が光照射により粘着力が低下する層である電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子装置の製造方法において、
前記第1粘着性樹脂層および前記第2粘着性樹脂層は、それぞれ加熱により粘着力が低下する層であり、
前記第1粘着性樹脂層は前記第2粘着性樹脂層よりも低温で粘着力が低下する電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電子装置の製造方法において、
前記第1粘着性樹脂層は、第1光の照射により粘着力が低下する層であり、
前記第2粘着性樹脂層は、第2光の照射により粘着力が低下する層であり、
前記第1光と前記第2光は波長が異なるか、または光を照射する面が異なる電子装置の製造方法。
【請求項6】
第1面に開口部を有する電子部品と、前記開口部を覆うように前記電子部品の前記第1面に貼り付けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第1粘着性樹脂層を有する第1粘着性フィルムと、前記電子部品の第2面に貼りつけられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第2粘着性樹脂層を有する第2粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記第1粘着性フィルムおよび前記第2粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、前記電子部品を前記第1粘着性フィルムとともにダイシングする工程(B)と、
外部刺激を与えることにより前記第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、個片化した前記電子部品から前記第1粘着性フィルムを剥離する工程(C)と、
を含み、
前記第1粘着性樹脂層および前記第2粘着性樹脂層は、それぞれ加熱により粘着力が低下する層であり、
前記第1粘着性樹脂層は前記第2粘着性樹脂層よりも低温で粘着力が低下する電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(C)では、前記第2粘着性フィルムは前記電子部品の前記第2面に貼りついた状態を維持している電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項またはに記載の電子装置の製造方法において、
外部刺激を与えることにより前記第2粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、前記第2粘着性フィルムから、個片化した前記電子部品をピックアップする工程(D)をさらに含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程において、半導体基板等の電子部品を複数の電子部品にダイシングする工程がある。
このダイシング工程では、例えば、電子部品が粘着性フィルム上に貼り付けられた状態で、電子部品をダイシングして複数の電子部品を得る。
【0003】
このようなダイシング工程に用いられる粘着性フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2019-16634号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有し、幅20mmのダイシングテープ試験片について初期チャック間距離100mm、23℃、および引張速度10mm/分の条件で行われる引張試験において歪み値20%で生ずる第1引張応力に対する、幅20mmのダイシングテープ試験片について初期チャック間距 離100mm、23℃、および引張速度1000mm/分の条件で行われる引張試験において歪み値20%で生ずる第2引張応力の比の値が、1.4以上である、ダイシングテープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-16634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、従来の電子装置の製造方法に関し、以下のような課題を見出した。ダイシング工程では、ダイシングブレードやレーザー光を用いて電子部品をダイシングして複数の電子部品を得ている。ダイシングブレードを用いたダイシング工程では、電子部品の切断で生じる切りくずを除去するために、一般的に研削水を用いる。
ところで、ダイシングされる電子部品の中には、開口部を有するものがあり、ダイシング工程の際に、研削水等の水分が開口部から電子部品内に浸入してしまう懸念があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品への水分の侵入が抑制された電子装置を安定的に得ることが可能な電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、外部刺激により粘着力が低下する粘着性フィルムにより電子部品の開口部を覆った状態で、電子部品のダイシング工程をおこなうことにより、電子部品への水分の侵入が抑制された電子装置を安定的に得ることができることを見出して、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法が提供される。
【0010】
[1]
第1面に開口部を有する電子部品と、上記開口部を覆うように上記電子部品の上記第1面に貼り付けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第1粘着性樹脂層を有する第1粘着性フィルムと、上記電子部品の第2面に貼りつけられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第2粘着性樹脂層を有する第2粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記第1粘着性フィルムおよび上記第2粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、上記電子部品を上記第1粘着性フィルムとともにダイシングする工程(B)と、
外部刺激を与えることにより上記第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、個片化した上記電子部品から上記第1粘着性フィルムを剥離する工程(C)と、
含む電子装置の製造方法。
[2]
上記[1]に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(C)では、上記第2粘着性フィルムは上記電子部品の上記第2面に貼りついた状態を維持している電子装置の製造方法。
[3]
上記[1]または[2]に記載の電子装置の製造方法において、
外部刺激を与えることにより上記第2粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、上記第2粘着性フィルムから、個片化した上記電子部品をピックアップする工程(D)をさらに含む電子装置の製造方法。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記第1粘着性樹脂層が加熱により粘着力が低下する層であり、
上記第2粘着性樹脂層が光照射により粘着力が低下する層である電子装置の製造方法。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記第1粘着性樹脂層および上記第2粘着性樹脂層は、それぞれ加熱により粘着力が低下する層であり、
上記第1粘着性樹脂層は上記第2粘着性樹脂層よりも低温で粘着力が低下する電子装置の製造方法。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記第1粘着性樹脂層は、第1光の照射により粘着力が低下する層であり、
上記第2粘着性樹脂層は、第2光の照射により粘着力が低下する層であり、
上記第1光と上記第2光は波長が異なるか、または光を照射する面が異なる電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品への水分の侵入が抑制された電子装置を安定的に得ることが可能な電子装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とはアクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0014】
1.電子装置の製造方法
はじめに、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。図1は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の3つの工程を少なくとも備えている。
(A)第1面10Aに開口部15を有する電子部品10と、開口部15を覆うように電子部品10の第1面10Aに貼り付けられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第1粘着性樹脂層を有する第1粘着性フィルム20と、電子部品10の第2面10Bに貼りつけられ、かつ、外部刺激により粘着力が低下する第2粘着性樹脂層を有する第2粘着性フィルム30と、を備える構造体50を準備する工程
(B)第1粘着性フィルム20および第2粘着性フィルム30に貼り付けられた状態で、電子部品10を第1粘着性フィルム20とともにダイシングする工程
(C)外部刺激を与えることにより第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、個片化した電子部品10から第1粘着性フィルム20を剥離する工程
【0015】
上述したように、本発明者の検討によれば、従来の電子装置の製造方法に関し、以下のような課題を見出した。ダイシング工程では、ダイシングブレードやレーザー光を用いて電子部品をダイシングして複数の電子部品を得ている。ダイシングブレードを用いたダイシング工程では、電子部品の切断で生じる切りくずを除去するために、一般的に研削水を用いる。
ところで、例えばマイクロフォンや圧力センサーはセンサー部が空気と接するために開口部がある。こうした開口部を有する電子部品は、ダイシング工程の際に、研削水等の水分が開口部から電子部品内に浸入してしまう懸念があった。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、外部刺激により粘着力が低下する粘着性フィルムにより電子部品の開口部を覆った状態で、電子部品のダイシング工程をおこなうことにより、電子部品への水分の侵入が抑制された電子装置を安定的に得ることができることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本実施形態に係る電子装置の製造方法によれば、第1粘着性フィルム20により電子部品10の開口部15を覆った状態で、電子部品10のダイシング工程をおこなうことにより、電子部品10への水分の侵入することができる。さらに、この第1粘着性フィルム20は外部刺激により粘着力が低下するため、ダイシング工程後に容易に剥離することができる。
以上のように、本実施形態に係る電子装置の製造方法によれば、電子部品への水分の侵入が抑制された電子装置を安定的に得ることが可能となる。
【0016】
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0017】
(工程(A))
工程(A)では、開口部15を有する電子部品10と、開口部15を覆うように電子部品10の第1面10Aに貼り付けられた第1粘着性フィルム20と、電子部品10の第2面10Bに貼りつけられた第2粘着性フィルム30と、を備える構造体50を準備する。
【0018】
このような構造体50は、例えば、開口部15を有する電子部品10に第1粘着性フィルム20および第2粘着性フィルム30を貼り付けることにより得ることができる。
開口部15を有する電子部品10としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム-ヒ素、ガリウム-リン、ガリウム-ヒ素-アルミニウム等の半導体基板(例えば、ウェハ)が挙げられる。
また、半導体基板としては、表面に回路が形成された半導体基板を用いることが好ましい。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、基板に機械要素部品のセンサ・アクチュエータ・電子回路などを集積化したデバイス、いわゆるMEMSの製造に好適に用いることができる。
また、開口部15を有する電子部品10としては、例えば、マイクロフォン、加速度センサー、角速度センサー、圧力センサー、フローセンサー、マイク、インクジェットプリンタヘッド等が挙げられる
【0019】
第1粘着性フィルム20および第2粘着性フィルム30の貼り付けは、人の手で行なってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行なう。
貼り付け時の温度には特に制限はないが、25℃~80℃が好ましい。
また、貼り付け時の圧力については特に制限はないが、0.3MPa~0.5MPaが好ましい。
【0020】
(工程(B))
次に、第1粘着性フィルム20および第2粘着性フィルム30に貼り付けられた状態で、電子部品10を第1粘着性フィルム20とともにダイシングする。
ここでいう「ダイシング」は、電子部品10に対してこの電子部品10の厚さと同じ深さの切れ込みを設けることによって電子部品10を分断し、複数の分断された電子部品10を得る操作(以下、「フルカットダイシング」ともいう)をいう。
上記ダイシングは、例えば、先端が先細り形状であるダイシングブレードを用いて行うことができる。
【0021】
ダイシングがフルカットダイシングである場合には、ダイシングによって電子部品10が複数の電子部品10に分断される。
なお、工程(B)における電子部品10には、フルカットダイシングより得られる分断された複数の電子部品10を含む。
【0022】
(工程(C))
次に、外部刺激を与えることにより第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、個片化した電子部品10から第1粘着性フィルム20を剥離する。ここで、工程(C)では、第2粘着性フィルム30は電子部品10の第2面10Bに貼りついた状態を維持していることが好ましい。これにより、個片化した電子部品10から第1粘着性フィルム20を安定的に剥離することができる。また、後述の工程(D)において、電子部品10のピックアップ性を向上させることができる。
【0023】
外部刺激としては、例えば、熱や光等が挙げられる。
例えば、第1粘着性フィルム20に対して光(例えば、紫外線等の放射線)を照射し、第1粘着性樹脂層を架橋させることで、電子部品10に対する第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させることができる。
あるいは、第1粘着性フィルム20を加熱し、第1粘着性樹脂層に含まれる膨張性球あるいは気体発生成分より発生する気体を膨張させて、第1粘着性樹脂層と電子部品10との接触面積を低下させること、または接着剤成分を架橋反応させることにより、電子部品10に対する第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させることができる。
光は、例えば、第1粘着性フィルム20の第1粘着性樹脂層側の面とは反対側の面から照射される。
光として紫外線を用いる場合、第1粘着性フィルム20に対して照射する紫外線の線量は、100mJ/cm以上が好ましく、350mJ/cm以上がより好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、第1粘着性フィルム20の粘着力を十分に低下させることができ、その結果、電子部品10表面に糊残りが発生することをより抑制することができる。
また、第1粘着性フィルム20に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm以下であり、好ましくは1200mJ/cm以下である。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプやLEDを用いておこなうことができる。
【0024】
(工程(D))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(B)または工程(C)の後に、外部刺激を与えることにより第2粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、次いで、第2粘着性フィルム30から、個片化した電子部品10をピックアップする工程(D)をさらにおこなってもよい。ここで、電子部品10から第1粘着性フィルム20を安定的に剥離する観点から、工程(D)は工程(C)の後に行うことが好ましい。
このピックアップにより、第2粘着性フィルム30から電子部品10を剥離することができる。電子部品10のピックアップは、公知の方法で行うことができる。
【0025】
外部刺激としては、例えば、熱や光等が挙げられる。
例えば、第2粘着性フィルム30に対して光(例えば、紫外線等の放射線)を照射し、第2粘着性樹脂層を架橋させることで、電子部品10に対する第2粘着性樹脂層の粘着力を低下させることができる。
あるいは、第2粘着性フィルム30を加熱し、第2粘着性樹脂層に含まれる膨張性球あるいは気体発生成分より発生する気体を膨張させて、第2粘着性樹脂層と電子部品10との接触面積を低下させること、または接着剤成分を架橋反応させることにより、電子部品10に対する第2粘着性フィルム30の粘着力を低下させることができる。
光は、例えば、第2粘着性フィルム30の第2粘着性樹脂層側の面とは反対側の面から照射される。
光として紫外線を用いる場合、第2粘着性フィルム30に対して照射する紫外線の線量は、100mJ/cm以上が好ましく、350mJ/cm以上がより好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、第2粘着性樹脂層の粘着力を十分に低下させることができ、その結果、電子部品10表面に糊残りが発生することをより抑制することができる。
また、第2粘着性フィルム30に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm以下であり、好ましくは1200mJ/cm以下である。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプやLEDを用いておこなうことができる。
【0026】
工程(D)では、第2粘着性フィルム30における電子部品10が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する電子部品10間の間隔を拡大させた状態で、第2粘着性フィルム30から電子部品10を剥離することが好ましい。
こうすることにより、隣接する電子部品10間の間隔が拡大するため、第2粘着性フィルム30から電子部品10をピックアップし易くなる。さらに、第2粘着性フィルム30の面内方向の拡張によって生じる、電子部品10と第2粘着性フィルム30とのずり応力により、電子部品10と第2粘着性フィルム30との粘着力が低下するため、第2粘着性フィルム30から電子部品10をピックアップし易くなる。
【0027】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0028】
例えば、工程(D)を行った後、得られた電子部品10を回路基板に実装する工程や、ワイヤボンディング工程、封止工程等の電子装置の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程をさらに行ってもよい。
【0029】
2.粘着性フィルム
以下、本実施形態に係る第1粘着性フィルム20および第2粘着性フィルム30(以下、まとめて粘着性フィルムと呼ぶ。)について説明する。
【0030】
本実施形態に係る粘着性フィルムは、例えば、基材層と、基材層の一方の面に設けられた粘着性樹脂層(以下、第1粘着性樹脂層および第2粘着性樹脂層をまとめて粘着性樹脂層と呼ぶ。)と、を備える。
【0031】
本実施形態に係る粘着性フィルム全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスの観点から、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下である。
【0032】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルムを構成する各層について説明する。
【0033】
<基材層>
基材層は、粘着性フィルムの取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、透明性や機械的強度、価格等のバランスに優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0034】
基材層は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0035】
基材層の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは1μm以上500μm以下、より好ましくは5μm以上300μm以下、さらに好ましくは10μm以上250μm以下である。
基材層は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0036】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層は、基材層の一方の面側に設けられる層であり、外部刺激により粘着力が低下する層である。
ここで、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層としては、例えば、加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の粘着性樹脂層や、光(例えば放射線)により粘着力が低下する光剥離型の粘着性樹脂層等が挙げられる。
【0037】
加熱剥離型の粘着性樹脂層としては、例えば、気体発生成分を含む加熱膨張型粘着剤、膨張して粘着力を低減できる熱膨張性の微小球を含む加熱膨張型粘着剤、熱により接着剤成分が架橋反応することで接着力が低下する加熱架橋型粘着剤等により構成された粘着性樹脂層が挙げられる。
【0038】
本実施形態において、加熱剥離型の粘着性樹脂層に使用される粘着剤は、例えば150℃を超える温度で加熱することで接着力が低下または喪失する粘着剤である。例えば、150℃以下では剥離せず、150℃を超える温度で剥離する材料を選択することができ、電子装置の製造工程中に粘着性フィルムが電子部品から剥離しない程度の接着力を有していることが好ましい。
ここで、150℃を超える温度で加熱することで接着力が低下または喪失することは、例えば、粘着性樹脂層側をステンレス板に貼り付け、140℃で1時間の加熱処理をおこない、次いで、150℃を超える温度で2分間加熱した後に測定される、ステンレス板からの剥離強度により評価することができる。150℃を超える温度で加熱する際の具体的な加熱温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度よりも高い温度に設定され、発生する気体や熱膨張性の微小球の種類によって適宜設定される。本実施形態において、接着力が喪失するとは、例えば、23℃、引張速度300mm/分の条件で測定される180°剥離強度が0.5N/25mm未満になる場合をいう。
【0039】
加熱膨張型粘着剤に使用される気体発生成分としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、メルドラム酸誘導体等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等の無機系発泡剤や、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等の有機系発泡剤等も用いることができる。気体発生成分は粘着性樹脂に添加されていてもよく、粘着性樹脂に直接結合されていてもよい。
【0040】
加熱膨張型粘着剤に使用される熱膨張性の微小球としては、例えば、マイクロカプセル化されている発泡剤を用いることができる。このような熱膨張性の微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球等が挙げられる。上記殻を構成する材料として、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。熱膨張性の微小球は、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法等により製造することができる。
熱膨張性の微小球は粘着性樹脂に添加することができる。
【0041】
気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量は、加熱剥離型の粘着性樹脂層の膨張倍率や接着力の低下性等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、加熱剥離型の粘着性樹脂層中の粘着性樹脂100質量部に対して、例えば1質量部以上150質量部以下、好ましくは10質量部以上130質量部以下、さらに好ましくは12質量部以上100質量部以下である。
気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度が、150℃を超える温度になるように設計することが好ましい。
【0042】
加熱剥離型粘着剤を構成する粘着性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0043】
粘着性樹脂層に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(a2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0044】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0045】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)を形成するモノマー(a1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を形成するモノマー(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、モノマー単位(a2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、モノマー単位(a1)、モノマー単位(a2)以外に、2官能性モノマー単位(a3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0048】
2官能性モノマー単位(a3)を形成するモノマー(a3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製、商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、モノマー単位(a3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0050】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0052】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0053】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0054】
本実施形態に係る粘着性樹脂層は、粘着性樹脂に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤は、粘着性樹脂が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0055】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数が粘着性樹脂中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0056】
また、光剥離型の粘着性樹脂層を構成する粘着剤としては、光により粘着力を低下させ光架橋型粘着剤を用いることができる。光架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層は、光の照射により架橋して粘着力が著しく減少する。光としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
光架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0057】
光架橋型粘着剤を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアマイド、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0058】
光架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系粘着剤等の粘着剤と、架橋性化合物(炭素-炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0059】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2-プロペニルジ-3-ブテニルシアヌレート、2-ヒドロキシエチルビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、粘着剤が、ポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を有する光架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0060】
架橋性化合物の含有量は、粘着剤100質量部に対して5~100質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0061】
光重合開始剤としては、光を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0062】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0063】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0064】
本実施形態に係る粘着性フィルムにおいて、第1粘着性樹脂層が加熱により粘着力が低下する層であり、第2粘着性樹脂層が光照射により粘着力が低下する層である態様が好ましい。こうすることで、工程(C)において、第2粘着性樹脂層の粘着力の低下を抑制しながらも、加熱により第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させ、第1粘着性フィルム20から電子部品10をより安定的に剥離することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る粘着性フィルムにおいて、第1粘着性樹脂層および第2粘着性樹脂層は、それぞれ加熱により粘着力が低下する層であり、第1粘着性樹脂層は第2粘着性樹脂層よりも低温で粘着力が低下する態様であってもよい。こうすることで、工程(C)において第2粘着性樹脂層の粘着力の低下が起き難い加熱温度で第1粘着性樹脂層の粘着力を低下させることが可能となる。よって、工程(C)において、第2粘着性樹脂層の粘着力の低下を抑制することができ、第1粘着性フィルム20から電子部品10をより安定的に剥離することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る粘着性フィルムにおいて、第1粘着性樹脂層と第2粘着性樹脂層がともに光照射により粘着力が低下する層であり、粘着力低下がおきる波長がそれぞれ異なる態様であってもよい。こうすることで、工程(C)において、第1光の照射により第1粘着性樹脂層は低下するが、第2粘着性樹脂層の粘着力低下は抑制され、第1粘着性フィルム20から電子部品10をより安定的に剥離することができる。続く工程で第2光の照射により、第2粘着性樹脂層の粘着力を低下させることができる。
また、第1粘着性樹脂層と第2粘着性樹脂層がともに光照射により粘着力が低下する層であり、光をあてる方向を変える態様であってもよい。すなわち、工程(C)は第1粘着性樹脂層側から光をあて、工程(D)は第2粘着性樹脂層側から光をあてることにより、照射する波長が同じであっても、工程(C)において第2粘着性樹脂層の粘着力の低下を抑制することができる。
【0067】
粘着性樹脂層の厚さは特に制限されないが、例えば、5μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0068】
粘着性樹脂層は、例えば、基材層上に粘着剤塗布液を塗布する方法や、セパレータ上に形成した粘着性樹脂層を基材層上に移着する方法等により形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
また、基材層と粘着性樹脂層とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層とフィルム状の粘着性樹脂層とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0069】
<その他の層>
本実施形態に係る粘着性フィルムは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、基材層と粘着性樹脂層との間に、例えば凹凸吸収層、衝撃吸収層、易接着層等がさらに設けられていてもよい。
また、本実施形態に係る粘着性フィルムは、粘着性樹脂層上に離型フィルムをさらに積層させてもよい。離型フィルムとしては、例えば、離型処理が施されたポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0071】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10 電子部品
10A 第1面
10B 第2面
15 開口部
20 第1粘着性フィルム
30 第2粘着性フィルム
50 構造体
図1