(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】煙警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20231225BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231225BHJP
G01N 21/3504 20140101ALI20231225BHJP
【FI】
G08B17/10 H
G08B17/00 G
G01N21/3504
(21)【出願番号】P 2019068691
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小金丸 和幸
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226657(JP,A)
【文献】特開2010-271894(JP,A)
【文献】特開2019-008521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部に煙流入用の煙流入口が形成された筐体と、該筐体内に設けられ、一対の発光素子および受光素子からなる光学素子を備えた煙検出部および電池とを有し、前記煙検出部と前記電池とが水平面上に配置された煙警報器において、前記光学素子と前記筐体の外周壁との間に、前記光学素子の光軸と前記電池の長手方向の中心軸とがほぼ平行になるように前記
電池を配置し、
前記光学素子の光軸と前記電池の長手方向の中心軸とが一致するように前記電池を前記光学素子の裏側に設けたことを特徴とする煙警報器。
【請求項2】
前記電池を筐体に2つ設け、一方の電池を前記受光素子の裏側に前記受光素子の光軸と前記電池の長手方向の中心軸とが一致するように設け、他方の電池を前記発光素子の裏側に前記発光素子の光軸と電池の長手方向の中心軸とが一致するように設けたことを特徴とする請求項1記載の煙警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を内蔵した煙警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図を用いて従来の煙警報器について説明する。
図3は煙警報器の縦断面を示した概略図である。
100が警報器本体であり、この本体の先端側には、外気が流入される開口部を有する煙検知部101を備える。この煙検知部101は、その内部に、発光を行う発光素子LDと、発光素子LDの散乱光を受光する受光素子PDとが収容され、煙検知部101内部の空間が煙検出空間として機能する。
そして、発光素子LD及び受光素子PDそれぞれは、警報器本体100に内蔵された回路基板102にそのリード端子が接続されて、回路基板102に搭載された演算回路と電気的に接続される。この回路基板102には、電池ケース104に設けられた電池103によって電源が供給されている。この煙感知器は、電池103によって駆動される、図示しないスピーカを有しており、火災時にはスピーカから火災警報を行うものであり、一般に住警器または火災警報器と呼ばれる。
このような警報器では、煙検出部101が警報器本体100から突出していることから、360度どの方向から煙が流れてきても、煙検出部101にスムーズに煙が流入する。しかし、近年、警報器の薄型化が要望され、天井面から煙検出部が突出しないタイプの警報器が開発されてきている。この薄型タイプの煙警報器について特許文献2を用いて説明する。
図4は煙警報器の縦断面図で、設置面である天井900に取付ベース1を介して煙警報器のケース2が取り付けられている。このケース2は、裏ケース21と表ケース22とから構成され、ケース2内に煙検出部34が設けられることで、ケース2から煙検出部を突出させない薄型の構造となっている。
図5は煙警報器の水平断面図で、裏ケース21の高さ方向の中間で切断した図面である。
図5において煙検出部34の内部に設けられるのが、一対の発光素子と受光素子である。紙面において、煙検出部の上方向には、電池を収容した電池ケース616が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-271894号公報
【文献】WO2017/073562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような薄型の煙警報器は高さが低いため美観上は好ましいが、
図3で示した煙検出部が突出するタイプに比べて煙の流入特性が劣っている。これは、電池(電池ケース)と煙検出部が同じ水平面上に位置するため、電池ケースが配置された方向からの煙が検出部に流入しにくくなるためである。
より詳しく説明すると、電池ケース616は、煙検出部34に対して横置きに設置されているので、紙面において、上方向から下側に向かって煙が流れると、その煙は電池ケースにあたり、煙検出部への流れを規制する障害物となるのである。このため、薄型の煙警報器においては、煙誘導部材632などを複数設けて、煙検出部への煙流入特性を高める必要があり、本体内部の構造が複雑になってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
側部に煙流入用の煙流入口が形成された筐体と、該筐体内に設けられ、一対の発光素子および受光素子からなる光学素子を備えた煙検出部および電池とを有し、煙検出部と電池とが水平面上に配置された煙警報器において、光学素子と筐体の外周壁との間に、光学素子の光軸と電池の長手方向の中心軸とがほぼ平行になるように電池を配置し、光学素子の光軸と電池の長手方向の中心軸とが一致するように電池を光学素子の裏側に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、煙警報器の筐体内における電池の配置を煙検出部に対して横置きでなく、電池の長手方向の中心軸と光学素子の光軸とがほぼ平行となるように電池を配置した。このため、電池によって規制させる煙の流れを電池を横置きする場合に比べ、減らすことができる。特に電池は光学素子の裏側という煙の流入特性の悪い部分に配置されるので、電池によって煙の流入特性が悪くことを最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の煙警報器の縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の煙警報器の水平断面図である。
【
図3】従来の煙警報器の縦断面を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1、
図2を用いて、本発明の実施形態の煙警報器について説明する。
図1は煙警報器の縦断面図、
図2は、煙警報器の水平断面図である。
煙警報器1の筐体3は、本体5と保護カバー7とから構成されている。本体5はほぼ円板状であり、本体5に有底筒状の保護カバー7を取付けることで、高さの低い薄型の円筒体からなる筐体3が構成される。筐体3の側部、つまり保護カバー7の側壁を構成する外周壁には、煙流入用の煙流入口7Cが形成されている。なお、本体5を有底筒状として、その外周壁に煙流入口を形成するようにしてもよい。筐体3を構成する本体5は、ベース9を介して天井に取り付けられる。
筐体3内には、煙検出部、電池、回路基板、図示しないスピーカなどが設けられる。ここで
図2の煙警報器の水平断面図を用いて、電池などの内部配置について説明する。なお、
図2は、
図1で示した煙警報器1の3つある真ん中の煙流入口7Cあたりで切断した図面である。
円形状の煙検出部11は、筐体3のほぼ中心に設けられる。煙検出部11は、一対の発光素子LEDおよひ受光素子PDからなる光学素子を備える。光学素子の周囲には、J字形状のラビリンス部材が複数形成されている。
煙検出部11と筐体3の外周壁との間には空間が設けられ、この空間上に電池13や図示しないスピーカが設けられる。なお、
図1に示すように、煙検出部11と電池13とは、高さ方向において同じ位置、言い換えれば、水平面上の同じ位置に配置されている。
煙検出部11と筐体3の外周壁との間の空間に、
図5の従来例で示したように電池を煙検出部に対して横置きに設置すると、煙検出部11への煙の流れを遮ることになるので、本実施形態では、電池13は煙検出部11に対して縦置きに設置する。ここで縦置きとは、横置きに対して垂直関係となる置き方で、電池13の長手方向と煙検出部11が面しない置きかたである。
より具体的には、光学素子(LED,PD)と筐体3の外周壁との間の空間に、光学素子の光軸と電池13の長手方向の中心軸13Aとが一致するように、電池13を配置するものである。なお厳密に光学素子の光軸と電池13の長手方向の中心軸とを一致させなくてもよく、それらの軸がほぼ平行になるように電池を配置するようにしてもよい。
【0009】
本発明によれば、煙警報器の筐体内における電池の配置を煙検出部11に対して横置きでなく、電池13の長手方向の中心軸と光学素子の光軸とがほぼ一致するように電池13を配置した。このため、電池13がある側から煙が流れてきても、煙は電池の幅の狭い短手方向の部分にしかあたらず、煙の流れをあまり邪魔しない。従って、電池13によって規制させる煙の流れを電池13を横置きする場合に比べ、減らすことができる。
なお、電池13の本数は1つあればよいが、電池13を筐体3内に2つ設ける場合には、一方の電池を受光素子PDの裏側に配置して、受光素子PDの光軸と電池13の長手方向の中心軸13Aとが一致するように電池13を設ける。そして、他方の電池13を発光素子LEDの裏側に配置して、発光素子LEDの光軸と電池13の長手方向の中心軸13Aとが一致するように電池13を設けることが好ましい。
【0010】
電池13は、煙検出部11と筐体3の外周壁との間の空間において、縦置きであれば、どこに設けてもよいが、特に、光学素子の裏側に配置することが望ましい。これは、煙検出部11は、360度どの方向からも煙の流入特性が同じという訳でなく、特に発光素子のある発光部と受光素子のある受光部の方向からの煙の流れに対して、流入特性が悪くなるためである。なぜなら煙検出部13において、発光部と受光部のある箇所は、発光部と受光部とが塞がれた部分であって、他の周りの部分に比べ、煙が流入しにくい形状となるからである。
このように、光学素子の裏側という元から煙の流入特性の悪い部分に電池13を配置することで、電池13の存在によって煙の流入特性が悪くなることを最小限に抑えることが可能となる。このため筐体内に煙導入用の部材を複数かつ複雑に配置する必要もなくなる。
【0011】
なお電池13を2つ設ける場合には、電池自体の大きさを小さくできる。特に電池の幅(短手方向の長さ)を発光部または受光部の幅と同じ大きさか、それよりも小さい電池を使用すれば、電池による煙の流れの規制量をほとんどなくすことが可能となる。
【0012】
また電池を本発明のように配置する場合には、電池の大きさによっては、筐体3自体が大きくなるという不具合が生じる可能性があるので電池の本数を増やすことで、電池の長さ(長手方向の長さ)が短いものを利用し、例えば、そのような電池を3本以上筐体内に設けることで、筐体自体が大きくならないようにしてもよい。なお電池は、電池そのままの状態を示したが、当然に電池収納ケースに設けてもよい。
【0013】
また煙検出部の受光部の裏側には一部空間があるので、その空間に電池の先端部を位置させることで、筐体の大型化を防ぐようにしてもよい。
【0014】
以上のように煙流入特性を悪化させる要因となる電池収納部と光学素子の部分を同じ方向に配置することで、全方向の煙流入特性の安定を図ることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 煙警報器、 3 筐体、 5 本体、 7 保護カバー、 7C 煙流入口、
9 ベース、 11 煙検出部、 13 電池、 13A 中心軸、