(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231225BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B41J2/175 175
B41J2/175 167
B41J2/175 133
B41J2/01 401
B41J2/175 115
B41J2/01 451
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2019148861
(22)【出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勇治
(72)【発明者】
【氏名】松下 和正
(72)【発明者】
【氏名】村岡 千秋
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296535(JP,A)
【文献】特開2019-098526(JP,A)
【文献】特開2015-163483(JP,A)
【文献】特開2018-140570(JP,A)
【文献】特開2018-008513(JP,A)
【文献】特開2019-188736(JP,A)
【文献】特開2014-159106(JP,A)
【文献】特開2016-030386(JP,A)
【文献】特開2014-046610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0012645(US,A1)
【文献】中国実用新案第206394243(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を補充するための補充口を有し、液体を収容する液体収容容器と、
前記液体収容容器に収容されている液体の情報を記憶する収容液体情報の記憶部と、
前記液体収容容器に補充される液体の情報を記憶する補充液体情報の記憶部と、
前記液体収容容器から供給された液体を吐出するための液体吐出ヘッドと、
前記収容液体情報の記憶部に記憶された情報と前記補充液体情報の記憶部に記憶された情報とに基づいて、液体吐出装置の動作を制御する制御部と、
を有し、
前記収容液体情報は、前記液体収容容器に収容されている液体の種類と色の少なくとも一方に関する情報を含み、前記補充液体情報は、前記液体収容容器に補充される液体の種類と色の少なくとも一方に関する情報を含み、
前記制御部は、前記収容液体情報の記憶部に記憶された情報と前記補充液体情報の記憶部に記憶された情報とに基づいて、前記液体収容容器の前記補充口を覆う部材を開放可能な状態と開放不能な状態とに選択的に切り替える
第1の制御と、前記液体収容容器に収容されている液体の種類または色と、前記液体収容容器に補充される液体の種類または色とが不一致の場合に、液体吐出ヘッドを液体吐出不能になるように
する第2の制御とを同時に行うことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記収容液体情報の記憶部に記憶された情報と前記補充液体情報の記憶部に記憶された情報とに基づいて、前記液体収容容器に収容されている液体の種類または色と、前記液体収容容器に補充される液体の種類または色とが不一致の場合に、ユーザに対して警告を行う、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記収容液体情報は、前記液体収容容器に収容されている液体の使用量、収容期間、蒸発率のうちの少なくとも1つに関する情報を含む、請求項1
または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記収容液体情報の記憶部は、前記液体収容容器に収容されている液体の使用量と収容期間とに関する情報を少なくとも記憶し、
前記制御部は、前記収容液体情報の記憶部に記憶された、前記液体収容容器に収容されている液体の使用量と収容期間とに関する情報から、当該液体の蒸発率に関する情報を計算する、請求項
3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記収容液体情報の記憶部に記憶されている、前記液体収容容器に収容されている液体の使用量と収容期間とに関する情報、または当該液体の蒸発率と、前記補充液体情報の記憶部に記憶されている、前記液体収容容器に補充される液体の補充量と前回補充時からの経過時間とに関する情報、または当該液体の蒸発率とから、前記制御部は、前記液体収容
容器に収容されている液体の蒸発率を計算する、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記収容液体情報の記憶部は、前記液体収容容器の温度測定結果に基づく温度履歴を記憶し、前記制御部は、前記液体収容容器に収容されている液体の蒸発率の計算に前記温度履歴を利用する、請求項
5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記液体収容容器に収容されている液体の蒸発率に関する情報に基づいて、前記液体吐出ヘッドの記録前の回復動作の強度を高める、請求項
3から
6のいずか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記液体収容容器に収容されている液体の蒸発率に関する情報に基づいて、前記液体吐出ヘッドの予備吐出の頻度と回数と強度の少なくとも1つを大きくする、請求項
3から
7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記液体収容容器に収容されている液体の蒸発率に関する情報に基づいて、前記液体吐出ヘッドの駆動電圧と駆動波形の少なくとも一方を大きくする、請求項
3から
8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体収容容器と前記液体吐出ヘッドとを接続する液体供給チューブをさらに含む、請求項1から
9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置は、液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに供給する液体を収容する液体収容容器とを有する。液体吐出ヘッドから外部に液体を吐出することで、画像などの記録が行われる。液体収容容器としては、収容している液体の残量が減ると容器そのものが交換される着脱可能なカートリッジタイプの容器と、収容している液体の残量が減ると外部から液体が補充される固定タイプの容器とがある。固定タイプの液体収容容器は、液体が補充される補充口を有している。補充口は通常はキャップなどで塞がれている。液体を補充する際には、キャップを取り外して補充口を露出させ、露出した補充口に外部容器(例えばボトル)の一部を差し込み、ボトル内の液体を液体収容容器に移す。
【0003】
固定タイプの液体収容容器を有する液体吐出装置において、例えばシアン用の収容容器にイエローの液体が補充されるなど、予め想定されていない液体が液体収容容器に補充されるおそれがある。想定外の液体が液体収容容器に補充された場合、記録動作に影響がでたり、液体吐出装置が損傷したりするおそれがある。そこで、特許文献1には、ボトルに付された2次元コードを携帯情報端末で読み取って管理サーバーに送信し、ボトルに収容された液体の情報を管理サーバーにおいて認証する構成が開示されている。管理サーバーにおいてNGが認められると、携帯情報端末にその旨が表示される。また、特許文献2には、インクパックに貼付されたRFタグと印刷装置の通信部との間で通信し、RFタグに記憶されているインク色情報や使用情報が、印刷装置の制御部で参照される構成が開示されている。参照の結果、無効なインクパックであると判定されると、表示や音声によって警告される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-39225号公報
【文献】特開2016-30386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載された構成では、ボトル内の液体が想定外の液体であることが判明すると、携帯情報端末や印刷装置の表示部や発音部等によって警告される。しかし、ユーザがそれらの警告に気付かずに、想定外の液体を液体収容容器に補充してしまい、記録動作への影響が生じるおそれは依然として存在する。また、特許文献1,2に記載された構成では、想定されている液体が、例えば蒸発が進むなどして、ボトルやインクパック等の外部容器に不適切な状態で収容されていることは認識できない。従って、種類や色は適切である液体が、このように不適切な状態で補充されて、やはり記録動作に影響がでることがある。このように、特許文献1,2に記載された構成でも、液体の補充に起因する課題の防止には限界がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、液体収容容器に想定外の種類または不適切な状態の液体が補充され、液体補充に起因する課題が発生することを抑制できる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、液体を補充するための補充口を有し、液体を収容する液体収容容器と、液体収容容器に収容されている液体の情報を記憶する収容液体情報の記憶部と、液体収容容器に補充される液体の情報を記憶する補充液体情報の記憶部と、液体収容容器から供給された液体を吐出するための液体吐出ヘッドと、収容液体情報の記憶部に記憶された情報と補充液体情報の記憶部に記憶された情報とに基づいて、液体吐出装置の動作を制御する制御部と、を有し、前記収容液体情報は、前記液体収容容器に収容されている液体の種類と色の少なくとも一方に関する情報を含み、前記補充液体情報は、前記液体収容容器に補充される液体の種類と色の少なくとも一方に関する情報を含み、前記制御部は、前記収容液体情報の記憶部に記憶された情報と前記補充液体情報の記憶部に記憶された情報とに基づいて、前記液体収容容器の前記補充口を覆う部材を開放可能な状態と開放不能な状態とに選択的に切り替える第1の制御と、前記液体収容容器に収容されている液体の種類または色と、前記液体収容容器に補充される液体の種類または色とが不一致の場合に、液体吐出ヘッドを液体吐出不能になるようにする第2の制御とを同時に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体吐出装置によると、液体収容容器に想定外の種類または不適切な状態の液体が補充され、液体補充に起因する課題が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の液体吐出装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示す液体収容容器の液体補充時の斜視図である。
【
図4】
図1に示す液体吐出装置の制御系統を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示す液体吐出装置における補充液体情報確認シーケンスのフローチャートである。
【
図6】
図5のシーケンスに続くフラグ確認シーケンスのフローチャートである。
【
図7】
図6のシーケンスに続く補充液体の蒸発率取得シーケンスのフローチャートである。
【
図8】
図7のシーケンスに続く収容液体の蒸発率計算シーケンスのフローチャートである。
【
図9】
図8のシーケンスに続くボトル情報更新シーケンスのフローチャートである。
【
図10】
図9のシーケンスに続く記録動作前蒸発率更新シーケンスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1及び
図2に、本発明の一実施形態の液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置を示す。
図1は、インクジェット記録装置6(「記録装置」とも称する)の斜視図である。
図2は、記録装置6の内部構成を模式的に示す縦断面図である。記録装置6は、第1給送部1、第2給送部2、記録部3、および液体供給部4を有する。第1給送部1は、給送ローラ10を用いて記録媒体Sの束から1枚ずつ記録媒体Sを分離して、第2給送部2に供給する。第2給送部2は、第1給送部1の搬送方向下流側に設けられ、給送ローラ10から給送された記録媒体Sを、搬送ローラ11および排紙ローラ12などを用いてさらに搬送する。搬送ローラ11と排紙ローラ12との間には、搬送される記録媒体Sを鉛直方向の下方から支持するプラテン13が備えられている。
【0011】
記録部3は、
図2に示すように、記録媒体Sの搬送方向と直交する方向に往復移動するキャリッジ14と、このキャリッジ14に搭載された液体吐出ヘッド15とを備える。液体吐出ヘッド15は、図示しないが、液体(インク)を吐出する複数の吐出口が配列された吐出部を有する。吐出部を構成する複数の吐出口はそれぞれ、エネルギー発生素子を内包する圧力室と連通しており、外部に開口している。エネルギー発生素子は、電力が供給されて駆動されると、熱などの吐出エネルギーを発生して圧力室内の液体に付与する。エネルギーを付与された液体は吐出口から記録媒体に向けて吐出する。エネルギー発生素子としては、発熱抵抗素子や圧電素子などが挙げられる。記録データに従って、各エネルギー発生素子への電力印加と記録媒体Sの搬送とを行うことにより、記録媒体Sに所望の画像や文字や模様等を記録する。
【0012】
液体供給部4は、固定タイプの液体収容容器16と、液体収容容器16に連通する液体流路17と、液体流路17と液体吐出ヘッド15とを接続する可撓性の液体供給チューブ19と、を含む。液体収容容器16には、液体残量の検知機構23と、サーミスタ24とが設けられている。液体残量の検知機構23は、例えば6本のステンレス棒からなる。隣り合うステンレス棒同士の間に液体が存在する場合には、ステンレス棒同士が液体を介して導通する。隣り合うステンレス棒同士の間に液体が存在しない場合には、ステンレス棒同士は導通しない。長さが一定ではない複数のステンレス棒を、好ましくは長さの順番に並べて配置して、どのステンレス棒まで導通して、どのステンレス棒には導通しないかを調べることにより、液面の高さが推定できる。それにより、液体収容容器16内に収容されている液体の量がわかる。サーミスタ24は、液体収容容器16の内部の温度を測定することができる。
【0013】
液体収容容器16には、液体吐出ヘッド15の吐出口から吐出する液体が収容されている。液体吐出ヘッド15から液体を吐出した後に、液体吐出ヘッド15が負圧になると、液体収容容器16内に貯留された液体が、液体流路17および液体供給チューブ19を介して液体吐出ヘッド15に供給される。このとき、液体収容容器16には、液体吐出ヘッド15へ供給された液体とほぼ同量の空気が、液体収容容器16の鉛直方向上方に設けられた大気連通口(不図示)から流入する。尚、本明細書における鉛直方向とは、記録装置6の使用時における方向であり、
図2では例えば液体吐出ヘッド15に対して、給送ローラ10は鉛直方向下方にある。
【0014】
本実施形態の記録装置6は、異なる色の複数種類の液体(インク)を吐出して記録媒体Sにカラー画像を記録するカラープリンタである。そのため、液体吐出ヘッド15には、複数種類の液体のそれぞれに応じた複数の吐出部が設けられている。本実施形態では、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクを吐出する4つの吐出部が設けられている。同様に、4種類の液体をそれぞれ収納する4種類の液体収容容器16が設けられている。
図1に、シアンの液体を収容する液体収容容器16Cと、マゼンタの液体を収容する液体収容容器16Mと、イエローの液体を収容する液体収容容器16Yeと、ブラックの液体を収容する液体収容容器16Bkとが示されている。
【0015】
液体収容容器16には、液体収容容器16の内部(液体収容室9)に液体を補充するための補充口5が設けられている。通常、補充口5はキャップ21で塞がれている。液体収容容器16に液体を補充する際には、例えば
図3に示すように、まず記録装置6の全面に設けられているカバー8を前方へと開き、補充口5に取り付けられているキャップ21を取り外す。そして補充口5を露出させて、露出させた補充口5に外部容器であるボトル20の注入口を差し込む。続いてボトル20を押すなどして、ボトル20内の液体を補充口5から液体収容容器16へ注入する。このようにして、液体収容容器16の内部に液体が補充される。
図3に示されている構成では、キャップ21につまみが設けられている。ただし、キャップ21は、補充口5に取り付けられて補充口5を塞ぐことができ、かつ補充口5から取り外されて補充口5を露出させることができるものであれば、どのような構成であってもよい。キャップ21は、補充口5から取り外されると、液体収容容器16とつながらずに独立するものであってもよいが、補充口5から取り外しても液体収容容器16と一部でつながって離脱しない構成のキャップを設けることもできる。また、ボトル20も、ボトル20を押す(例えば握る)ことで液体を補充するものでなくてもよい。ボトル20を補充口5に取り付けることで、ボトル20と液体収容容器16との間に液体用と気体用の2本の流路ができ、ボトル20を押さなくてもスムーズに気液交換が行われながら液体が補充されるようなものであってもよい。
【0016】
記録装置6には、文字等を表示するパネル7aと操作キー7b等とを有する表示部7が設けられている。パネル7aの表示をユーザが視認することで、液体残量などを確認することができる。例えば液体収容容器16に収容されている液体が所定量以下となったときに、表示部7のパネル7aに液体収容容器16内の液体が所定量以下であり液体の補充が必要なことを表示してユーザに知らせる。表示部7はこのような形態に限定されるものではなく、例えば表示部7がパネル7aのみからなる構成であってもよい。
【0017】
図4に、記録装置6の制御系統のブロック図を示す。記録装置6の制御系統の中心はASIC(Application Specific Integrated Circuit)400である。ASIC400は、複数の入出力ポート、演算ユニット、制御ユニット等を含み、記録装置6を構成する各ユニットと相互に通信して記録装置6全体の動作を制御するメインの制御部である。
記録装置6は、ASIC400に接続されている、液体吐出ヘッド15と、液体吐出ヘッド15用の回復ユニット500と、液体収容部の制御ユニット600と、液体吐出ヘッド15の走査ユニット800と、記録媒体用の搬送ユニット850とを有する。走査ユニット800は前述したキャリッジ14を含み、液体吐出ヘッド15を搭載したキャリッジ14が記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復移動可能になっている。搬送ユニット850は、前述した給送ローラ10を含む第1給送部1と、搬送ローラ11、排紙ローラ12、プラテン13等を含む第2給送部2とを有している。
【0018】
記録装置6は、ASIC400にそれぞれ接続されている、表示制御部700と、外部入力部900と、を有する。表示制御部700は、前述したように、例えば液体収容容器16に収容されている液体の残量を表示部7のパネル7aに表示させる。外部入力部900は、例えば吐出すべき液体の種類や補充すべき液体の種類等を、ユーザが指定するために用いられる。
記録装置6は、ASIC400にそれぞれ接続されている、補充液体情報の記憶部200と収容液体情報の記憶部300とを有する。補充液体情報の記憶部200には、補充液体情報の取得部100が接続されている。補充液体情報の取得部100は、補充液体に関する情報を取得し、補充液体情報の記憶部200は、補充液体情報の取得部100が取得した情報を記憶する。収容液体情報の記憶部300には、収容液体情報の取得部350が接続されている。収容液体情報の取得部350は、液体収容容器16に収容された液体に関する情報を取得し、収容液体情報の記憶部300は、収容液体情報の取得部350が取得した情報を記憶する。本実施形態の補充液体情報の記憶部200および収容液体情報の記憶部300は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)によって構成されている。ただし、その他の手段、例えばASIC400内のレジスタやSROM(Static Random Access Memory)などによって、補充液体情報の記憶部200や収容液体情報の記憶部300を構成することもできる。
【0019】
本実施形態の補充液体情報の取得部100は、RFID(Radio Frequency Identification)用のリーダライター(不図示)を有する。リーダライターは、外部容器(例えばボトル20)に設けられたRFIDタグ(不図示)をスキャンすることでRFIDタグに記憶された情報を取得する。ただし、他の手段によって液体収容容器16に補充される液体の情報を取得してもよい。例えば、補充液体情報の取得部100は光学的コードリーダー(不図示)を有していてもよい。光学的コードリーダーは、ボトル20、またはボトル20に同梱されたメディア(不図示)に表示された、2次元コードであるQRコード(登録商標、不図示)、もしくはバーコード(不図示)をスキャンして、補充される液体の情報を取得する。
【0020】
別の例では、補充液体情報の取得部100は、赤外線通信モジュール(不図示)を有していてもよい。ユーザはスマートフォン(不図示)等で、ボトル20、またはボトル20に同梱されたメディアに表示されたQRコードもしくはバーコード等をスキャンして、補充される液体の情報を取得する。その後、赤外線通信モジュールはスマートフォンから赤外線通信を介して、補充される液体の情報を取得する。
さらに別の例では、補充液体情報の取得部100は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)モジュール(不図示)を有していてもよい。ユーザはスマートフォン等で、ボトル20、またはボトル20に同梱されたメディアに表示されたQRコードもしくはバーコード等をスキャンして、補充される液体情報を取得する。その後、BLEモジュールはスマートフォンからBLE通信を介して、補充される液体の情報を取得する。
さらに別の例では、補充液体情報の取得部100は、光学的コードリーダーおよびLAN(Local Area Network)モジュール(不図示)を有していてもよい。ユーザはスマートフォン等で、ボトル20、または同梱されたメディアに表示されたQRコードもしくはバーコード等をスキャンして、補充される液体の情報を取得する。その後、スマートフォンは、ネットワークを介して、別に用意されたサーバー(不図示)にボトル20の情報を送信する。サーバーはボトル20に紐づけられた情報を格納している。その後、光学的コードリーダーが、ボトル20、またはボトル20に同梱されたメディアに表示されたQRコードもしくはバーコード等をスキャンして、LANモジュールがネットワークを介して、補充される液体の情報を取得する。
また、外部入力部900、すなわち無線通信または有線通信を介した情報入力手段や、外部機器の入力手段が、補充液体情報の取得部100を兼ねていてもよい。即ち、補充液体情報の取得部は、無線通信を介した情報入力手段、有線通信を介した情報入力手段、または外部機器の入力手段の少なくともいずれかによって、補充液体情報を取得する。例えば、ユーザが、ボトル20、またはボトル20と同梱されたメディアに記載された、補充される液体の情報を外部入力部900から入力することで、記録装置6は補充液体に関する情報を取得する。
【0021】
このように、ボトル20,またはボトル20に同梱されたメディアには、補充液体情報の取得部100によって読み取られるRFIDタグ、QRコード、バーコード等の情報媒体が設けられている。RFIDタグ、QRコード、バーコード等は、以下に例示するような、ボトル20内の補充液体の情報を表示または記憶している。そのような情報の例は、型番MPN、色CL、ロット番号LN、内容量NET、注入日時ID、標準使用期限ED、初回開封日時OD1、初回補充量S1、2回目の開封日時OD2、2回目の補充量S2、想定蒸発率AE等である。なお、初回開封日時OD1に基づいて初回補充時から現在日時までの経過時間(経過日数)を求めて記憶したり、2回目の開封日時OD2に基づいて前回補充時(2回目補充時)から現在日時までの経過時間(経過日数)を求めて記憶したりすることもできる。そして、RFIDタグ、QRコード、バーコード等には、未使用フラグF1、使用中フラグF2、使い切りフラグF3が設定されている。すなわち、本実施形態では、補充する液体の種類や色だけでなく、内容量NET、注入日時ID、標準使用期限ED、初回開封日時OD1、初回補充量S1、2回目の開封日時OD2、2回目の補充量S2、想定蒸発率AE等も記憶されている。後述するが、それらの情報を利用することによって補充する液体の状態を知ることができ、例えば液体の粘度など液体吐出性能の変化をもたらすような状態の変化を、それらの情報から推察することができる。こうして推察した状態の変化に基づいて、液体吐出性能を維持できるように吐出条件を調整することで、良好な液体吐出の維持を実現することができる。補充液体情報の取得部100は、前述した例に限られず、ボトル20に付随する情報媒体の種類に応じて、光学的手段、電磁気手段、力学的手段またはその他の手段の少なくともいずれか等によって、補充液体情報を取得する。
【0022】
また、本実施形態では、補充する液体に関する情報が記憶されているだけでなく、液体収容容器16に収容されている液体についての情報も記憶されている。収容液体情報の記憶部300には、液体収容容器16に収容されている液体に関する以下のような情報が記憶されている。すなわち、収容液体の型番MPN、色CL、ロット番号LN、液体残量RA、想定蒸発率AE等が記憶されている。さらに、液体収容容器の温度履歴TH、収容液体の使用量の履歴UH、液体補充履歴SH、最新補充日時LSD、最新動作日時LMD、キャップ開放時間COT、液体の収容期間AP等も記憶されている。そして、収容液体情報の記憶部300には、正常使用可能フラグF4、使用注意フラグF5、使用警告フラグF6、使用禁止フラグF7、記録装置保護フラグF8が設定されている。本実施形態では、液体収容容器16に収容されている液体についての情報が記憶されているため、それらと補充される液体の情報とを対比することができる。この対比によって、液体補充の前後における液体の状態の変化が推定でき、補充後の液体吐出が補充前の液体吐出と概ね同様な結果になるように、補充後の液体吐出の条件を調整することができる。液体補充後には、収容液体の情報を上書き(アップデート)することで、次回の液体補充に備えることができる。このように、本実施形態では、補充される液体の情報のみを記憶するのではなく、補充される前に液体収容容器に収容されている液体の情報も記憶しているため、液体補充の前後で液体吐出状態が変化しないように調整できる。さらに、複数回の液体補充を経て継続的に吐出する液体の状態を確認して、概ね一定の液体吐出状態を維持するような制御が行える。
【0023】
具体的には、液体収容容器16へ液体が補充される際に、ASIC400は、ボトル20に付随する情報媒体に記憶されている補充される液体に関する情報を取得するように、補充液体情報の取得部100を動作させる。本実施形態では、液体収容容器16はキャップ保持部22を有し、キャップ保持部22はASIC400によって液体補充フラグF9がオンにならない限り、キャップ21を取り外すことができないようにキャップを保持する。液体補充フラグF9は、補充液体情報の取得部100(例えばリーダーライター)が情報媒体(例えばRFIDタグ)の情報を読み取ることでオンになる。キャップ21が取り外され、再度取り付けられた際に、液体補充フラグF9はオフになる。液体補充フラグF9と連動して、キャップ21を開放可能な状態と開放不能な状態とを選択的にとることができる構成としては、従来から公知の様々な機構を採用可能である。
ただし他の手段によって、液体収容容器16に補充される液体の情報を取得するようにしてもよい。例えば、カバー8にカバー保持部(不図示)を設け、前述したキャップ保持部22と同様に、液体補充フラグF9がオンにならない限り、カバー8を取り外すことができない構成にしてもよい。いずれの構成でも、本実施形態では、液体補充フラグF9がオンである場合にのみ、補充口5を覆う部材(キャップ21またはカバー8)を開放可能であり、液体収容容器16の補充口5を露出させることができる。液体補充フラグF9がオフである場合には、補充口5を覆う部材を開放できず、補充口5を露出させることができない。
【0024】
他の例では、液体補充フラグF9がオンであってキャップ21もしくはカバー8が開放できる時に、補充液体の情報を補充液体情報の取得部100へ提供するようにユーザに促す表示を表示部7によって行ってもよい。
他の例では、液体が新規に補充された場合に、補充液体の情報が提供されるまで、記録動作を禁止してもよい。液体補充フラグF9がオフである場合には、液体吐出ヘッドが液体吐出不能になるように制御することも可能である。
【0025】
以下に、液体の補充の前後において、良好で概ね一定な液体吐出を維持できるようにするための、各種情報に基づく制御の例を示す。
図5には、補充液体情報確認シーケンスのフローを示す。ASIC400は、補充液体情報の記憶部200から、ボトル20内の補充液体の型番MPNと色CLとを読み出す。次にASIC400は、収容液体情報の記憶部300から、液体収容容器16に収容されている液体の型番MPNと色CLとを読み出す。そして、補充液体情報の記憶部200から読み出した補充液体の型番MPNおよび色CLと、収容液体情報の記憶部300から読み出した収容液体の型番MPNおよび色CLとを比較する。型番MPNと色CLのどちらか一方でも、補充液体と収容液体とで不一致である場合には、液体補充フラグF9をオフのままにしてシーケンスを終了する。液体補充フラグF9がオフのままであるため、キャップ21またはカバー8を取り外すことができず、液体の補充が物理的に阻止される。
型番MPNと色CLの両方が補充液体と収容液体とで一致する場合には、液体補充フラグF9をオンにして、
図6に示されているフラグ確認シーケンスに移行する。液体補充フラグF9がオンになることにより、前述したようにキャップ21やカバー8を取り外すことが可能になり、補充口5を開放して液体補充できる状態になる。なお、本実施形態においては、収容液体情報の記憶部300に記憶されている型番MPNおよび色CLは、記録装置6の仕様に基づき、記録装置6の製造工程において適正な値が書き込まれている。
【0026】
次に、
図6に示されているフラグ確認シーケンスを実行する。フラグ確認シーケンスにおいて、ASIC400は、補充液体情報の記憶部200から、補充する液体の未使用フラグF1、使用中フラグF2、使い切りフラグF3を取得する。使い切りフラグF3がオンである場合には、液体補充フラグF9はオフのままにしてシーケンスを終了する。未使用フラグF1と使用中フラグF2がいずれもオンの場合には、表示部7にエラーメッセージを表示し、液体補充フラグF9をオフのままにして、シーケンスを終了する。未使用フラグF1と使用中フラグF2のいずれか一方がオンである場合は、
図7に示されている、補充液体の蒸発率取得シーケンスに移行する。なお、
図6には示していないが、ASIC400が補充液体情報の記憶部200から標準使用期限EDを読み出し、現在日時と比較して、既に標準使用期限EDを超過している場合には、ユーザに警告を与えてもよい。
【0027】
次に、
図7に示されている補充液体の蒸発率取得シーケンスを実行する。ASIC400は、補充液体情報の記憶部200から型番MPNと注入日時IDとを読み出す。さらに、ASIC400は型番MPNに紐付けられているボトル20の想定温度を読み出す。次にASIC400は、現在日時と注入日時IDとからボトル保管期間を算出する。ASIC400は、レジスタ内に格納された蒸発テーブルを参照し、ボトル保管期間とボトルの想定温度とから、補充液体の想定蒸発率AEを導出する。この際、未使用フラグF1がオンの場合には未使用時の蒸発テーブルを、使用中フラグF2がオンの場合には使用時の蒸発テーブルを、それぞれ参照する。こうして導出した補充液体の想定蒸発率AEを、ASIC400は収容液体情報の記憶部300に収容液体の想定蒸発率AEとして記憶させる。この時点で、液体補充フラグF9はオンであるため、キャップ21やカバー8を外すことが可能であり、液体収容容器16への液体の補充が可能である。
【0028】
次に、
図8に示されている収容液体の蒸発率計算シーケンスを実行する。ASIC400は、
図2に示す液体残量の検知機構23によって、液体収容容器16内の液体補充前の液体量(残量RA)と、実際に液体を補充した後の液体量とを求める。液体の補充を行う前後の液体量の差を算出して補充液体量として記憶する。次にASIC400は、補充液体情報の記憶部200から補充液体の想定蒸発率AEを、収容液体情報の記憶部300から補充前の収容液体の想定蒸発率AEを、それぞれ取得する。そして、ASIC400は以下の計算式によって液体収容容器16の液体補充後の液体の想定蒸発率AEを算出する。
(補充後の収容液体の蒸発率)=((補充前の収容液体の想定蒸発率)×(補充前の液体量)+(補充液体の想定蒸発率)×(補充液体量))÷(補充後の液体量)
ASIC400は、収容液体情報の記憶部300の使用量履歴UHに、液体補充前の液体量と補充前の収容液体の想定蒸発率AEとロット番号LNをスタック形式で書込む。そして、収容液体情報の記憶部300に記憶されている収容液体に関する情報を、補充液体情報の記憶部200に記憶されている補充液体に関する情報で上書き(アップデート)する。すなわち、前述した数式で算出した補充後の収容液体の蒸発率AEにより、収容液体情報の記憶部300に記憶されている想定蒸発率AEを上書きする。また、補充液体情報の記憶部200のロット番号LNを、収容液体情報の記憶部300のロット番号LNとして上書きする。未使用フラグF1がオンの場合には、補充液体情報の記憶部200の型番MPNおよび色CLを、収容液体情報の記憶部300の型番MPNおよび色CLとして上書きする。
なお、収容液体の想定蒸発量AEを、前記した方法以外の方法で好適に計算することもできる。例えば、液体残量の検知機構23がない場合には、ASIC400が計算した液体残量RAを補充前の液体量として設定し、補充液体情報の記憶部200の内容量NETと初回補充量S1および2回目の補充量S2との差分を補充後の液体量として設定してもよい。また、液体収容容器16が収容できる液体量の最大値を、補充後の液体量として設定してもよい。
【0029】
次に、
図9に示されているボトル情報更新シーケンスを実行する。ASIC400は、未使用フラグF1がオンの場合には、情報媒体(例えばRFIDタグ)の未使用フラグF1をオフにし、使用中フラグF2をオンに書き換える。更に、現在日時を初回開封日時OD1として、補充液体量を初回補充量S1として、それぞれ書き込む。使用中フラグF2がオンの場合には、現在日時を2回目の開封日時OD2として、補充液体量を2回目の補充量S2として、それぞれ書き込む。それから、初回補充量S1および2回目の補充量S2の合計と、内容量NETとを比較し、初回補充量S1および2回目の補充量S2の合計が内容量NETを上回った場合に、使用中フラグF2をオフにして、使い切りフラグF3をオンにする。本実施形態では、1つのボトル20から液体を補充する回数、すなわち想定開封回数は2回であると設定している。しかし、想定開封回数が3回以上であると、更に好適な制御が可能である。ASIC400は、定期的にサーミスタ24の温度測定結果を取得し、収容液体情報の記憶部300の液体収容容器の温度履歴THを更新する。
【0030】
記録動作を実施する前にASIC400は、収容液体情報の記憶部300の想定蒸発率AEを更新する。
図10に記録動作前の蒸発率更新シーケンスのフローを示す。本実施形態ではASIC400は、収容液体情報の記憶部300から液体収容容器の温度履歴THと最新動作日時LMDとを読み出す。最新の補充時から後に記録動作が実施されていない場合には、最新補充日時LSDを読み出す。次に、ASIC400は現在日時と最新動作日時LMDまたは最新補充日時LSDとを比較し、前回使用時からの経過日数を算出する。ASIC400は、レジスタに格納された蒸発進行テーブルを参照し、液体収容容器の温度履歴THと前回使用時からの経過日数とに基づいて、収容液体の想定蒸発進行率を導出する。次にASIC400は想定蒸発率AEに想定蒸発進行率を加算して、それを現在の想定蒸発率AEとして設定する。ASIC400は、こうして求めた現在の想定蒸発率AEによって想定蒸発率AEを、現在日時によって最新動作日時LMDをそれぞれ上書きする。
【0031】
ASIC400は、想定蒸発率AEに応じて、正常使用可能フラグF4、使用注意フラグF5、使用警告フラグF6、使用禁止フラグF7のいずれかをオンにし、それ以外をオフにする。本実施形態では、想定蒸発率AEが10%以下の場合には正常使用可能フラグF4をオンにする。想定蒸発率AEが10%より大きく20%以下の場合には使用注意フラグF5をオンにする。想定蒸発率AEが20%より大きく30%以下の場合には使用警告フラグF6をオンにする。想定蒸発率AEが30%よりも大きい場合には使用禁止フラグF7をオンにする。また、現在の液体残量RAが規定量以下である場合には、正常使用可能フラグF4、使用注意フラグF5、使用警告フラグF6、使用禁止フラグF7をすべてオフにして、記録装置保護フラグF8をオンにする。ただし、その他の方法で収容液体の想定蒸発量AEを好適に更新することもできる。例えば、サーミスタ24が設けられていない場合には、一般的な環境温度である25℃によって、収容液体情報の記憶部300の液体収容容器の温度履歴THを更新してもよい。
【0032】
記録動作を実施する際に、ASIC400は、正常使用可能フラグF4、使用注意フラグF5、使用警告フラグF6、使用禁止フラグF7、記録装置保護フラグF8を参照する。使用禁止フラグF7または記録装置保護フラグF8がオンである場合には、ASIC400は記録装置6の記録動作を禁止する。正常使用可能フラグF4がオンである場合には、ASIC400は記録装置6に通常の記録動作を行わせる。
使用注意フラグF5がオンである場合には、ASIC400は、液体吐出ヘッド15において液体を吐出させるためのエネルギーを大きくするように制御する。例えば、液体吐出ヘッド15のエネルギー発生素子に印加する駆動電圧を、通常の記録動作時(例えば24V)よりも高く(例えば25Vに)する。他には、液体吐出前に吐出口内の液体を排出するための吸引回復動作の頻度と強度を、通常時(例えば25日に1回、10秒程度)よりも大きく(例えば15日に1回、20秒程度に)する。吸引回復動作における吸引圧を通常の記録動作時よりも大きく(例えば1.1倍に)する。記録動作前に実施する予備吐出の回数を、通常時(例えば100回)よりも多く(例えば250回)実施する。また、記録動作中に実施する予備吐出の時間間隔および回数を、通常時(例えば2秒おきに5回)よりも頻繁かつ多数(例えば1秒おきに7回)実施する。記録動作中に実施する予備吐出の強度を、通常時よりも高めてもよい(例えば吐出のためのエネルギーを大きくしてもよい)。それにより、液体吐出状態を通常の液体吐出状態に近づくようにする。
使用警告フラグF6がオンである場合には、使用注意フラグF5がオンである場合の処理に加えて、エネルギー発生素子に印加する駆動波形(駆動パルス)の幅を、通常時(例えば幅0.8μsの矩形波)よりも大きく(例えば幅1.0μsの矩形波に)する。また、1回の走査時に許容される液体吐出量の最大値(閾値)を、通常時の0.8倍に抑える。さらに、キャリッジ14の走査速度を半分に抑え、液体の吐出周波数の最大値を通常時(例えば15kHz)の半分(例えば7.5kHz)にする。それにより、液体吐出状態を通常の液体吐出状態に近づくようにする。
【0033】
なお、液体の蒸発率が高い場合に、前述したのとは別の方法によって記録動作への影響を好適に回避することもできる。例えば、記録画像データを、記録装置6が有する液体の色情報に変換する変換テーブルを、液体の蒸発率に応じて補正してもよい。また、記録画像データを液体の打ち込み量に変換する変換テーブルを、液体の蒸発率に応じて補正してもよい。また、記録画像データ自体を変換する変換テーブルを用意しておき、その変換テーブルを用いて、液体の蒸発率に応じて記録画像データを変換してもよい。
記録動作中、ASIC400は記録に要した液体量を記憶し、記録終了後に液体残量RAを更新する。記録に要した液体量は、記録前の回復動作の種類および回数や、予備吐出の回数や、記録時の吐出の回数から算出される。
【0034】
実験的に、補充用液体を収容した外部容器(ボトル20)を一旦開封して注入口を開放した後に、この注入口をキャップによって緩やかに封止した状態で、温度25℃、湿度15%の環境下で放置した。それから注入口を再度開放して、液体吐出装置6の液体収容容器16の補充口5にボトル20の注入口を挿入して、ボトル20内の液体を液体収容容器16内に注入した。従来の液体吐出装置においてこの実験を行ったところ、ボトル20内の補充液体の種類や色は適正であるため、液体の補充は支障なく行え、特別な処理は行われなかった。しかし、液体吐出を行って高濃度のパターンを形成したところ、かすれたパターン画像が形成された。これは、注入口が一旦開放されてから緩やかに封止された状態で、温度25℃、湿度15%の環境下で放置されたことにより、補充液体が変質したことが原因であると考えられる。しかし、従来の液体吐出装置では、補充液体の種類や色のみを確認して液体の補充を行っているため、前述したような変質は見逃されたと考えられる。
【0035】
一方、前述したのと同様に、注入口を一旦開放した後に緩やかに封止して、温度25℃、湿度15%の環境下で放置したボトル20を用いて、本実施形態の液体吐出装置6の液体収容容器16に液体補充を行った。そのようにして液体補充を行った本実施形態の液体吐出装置6において、液体を吐出して高濃度のパターンを形成したところ、かすれ等は発生しなかった。その理由の一つは、本実施形態では、補充液体の種類MPNや色CLだけでなく、内容量NET、注入日時ID、標準使用期限ED、初回開封日時OD1、初回補充量S1、2回目の開封日時OD2、2回目の補充量S2、想定蒸発率AEが確認されることである。特に、想定蒸発率AEが高い場合には、液体中の水分量が少なく粘度が高いことが想定される。そこで、液体吐出のためのエネルギーを大きくするなどして、多少粘度が高くても良好に液体吐出できるようにして、液体吐出量があまり低下しないように制御する。その結果、画像のかすれが抑えられる。それにより、本実施形態では、最適な条件下でなかったとしても、良好な画像形成が実現できるようになる。さらに、想定蒸発率AEが著しく高い場合には記録を中止させることで、かすれ等の発生を防止する。
【0036】
また、本実施形態では、外部容器であるボトル20内の補充液体の情報のみを記憶するではなく、液体収容容器16に既に収容されている液体の情報も記憶している。補充液体の情報と収容液体の情報とを利用して、想定蒸発率AE等の情報を随時更新することができる。それにより、環境変化等に伴う液体の特性の変化に適宜に対応して、液体吐出の条件を変更するなどして比較的良好な記録を続行できる。
【0037】
なお、本実施形態では、補充液体の色や種類(型番)が収容液体の色や種類と異なる場合には、直ちに液体補充タグF9をオフにして、キャップ21またはカバー8が取り外せないようにする。すなわち、ボトル20内に例えば蒸発が進みすぎた液体が存在する場合に、物理的に液体補充不能にする。従って、ユーザが表示や警告に気付くか気付かないかに関わらず、このような液体が補充されることが防げる。
【符号の説明】
【0038】
5 補充口
6 液体吐出装置(インクジェット記録装置)
15 液体吐出ヘッド
16 液体収容容器
200 補充液体情報の記憶部
300 収容液体情報の記憶部
400 制御部(ASIC)