(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20231225BHJP
【FI】
H04N23/60 500
(21)【出願番号】P 2019149788
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】内原 正人
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179910(JP,A)
【文献】特開2017-098663(JP,A)
【文献】特開2019-029834(JP,A)
【文献】特開2013-051524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正データを用いた画像処理を含む現像処理を、RAWデータに対して行い現像済みデータを生成する現像処理手段と、
動画のRAWデータを現像して再生する場合、前記動画を構成するフレームのなかの一部のフレームのRAWデータを現像して再生する場合と、前記動画を構成する各フレームのRAWデータを現像して再生する場合とで、前記現像処理手段が前記画像処理に用いる補正データを異ならせる制御手段と、
を有
し、
前記制御手段は、前記動画の前記一部のフレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、前記RAWデータから抽出したデータに基づく補正データを、前記現像処理手段の前記画像処理に適用し、前記動画の前記各フレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、前記RAWデータから抽出したデータを用いることなく予め記憶している補正データを、前記現像処理手段の前記画像処理に適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
記憶媒体に記憶されている動画の現像済みデータが再生される場合、前記動画を構成するフレームのなかの一部のフレームの現像済みデータを再生する場合と、前記動画を構成する各フレームの現像済みデータを再生する場合とで、前記画像処理に用いられた補正データは、共通した補正データであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
記憶媒体に記憶されている動画のRAWデータを現像して再生する第1の再生処理と、
記憶媒体に記憶されている動画の現像済みデータを再生する第2の再生処理との、いずれかを選択し、
前記第1の再生処理を選択した場合に、前記一部のフレームのRAWデータを現像して再生する場合と、前記各フレームのRAWデータを現像して再生する場合とで、前記画像処理に用いる補正データを異ならせることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理は、画像を撮像する撮像素子に配されたカラーフィルタにより分けられた各色成分の同色を各画素位置に配したプレーンを生成する処理を含むことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記現像処理手段は、
前記動画の前記各フレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、線形補間を用いて各画素位置に同色を配して前記プレーンを生成し、
前記動画の前記一部のフレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、適応補間を用いて各画素位置に同色を配して前記プレーンを生成することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記現像処理手段は、前記動画の前記各フレームの前記現像済みデータを再生する場合には、線形補間を用いて各画素位置に同色を配して前記プレーンを生成することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像処理は、前記色成分ごとのプレーンの間の色のずれを補正する補正処理を含むことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記動画の前記各フレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、画像の撮像に用いられるレンズの設計値に基づく補正データを、前記現像処理手段の前記画像処理に適用し、
前記動画の前記各フレームの前記現像済みデータを再生する場合の補正データは、前記レンズの設計値に基づく補正データであることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記補正データは前記レンズの収差補正を行うための補正データであることを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記レンズの収差補正は、倍率色収差の補正であることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記RAWデータから色ずれ量を検出して像高別に集計し、前記像高別の色ずれ量の集計結果から像高ごとの色ずれ量の平均値を算出することで、前記倍率色収差の補正に用いる前記補正データを抽出する補正量検出手段を有することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
補正データを用いた画像処理を含む現像処理をRAWデータに対して行い、現像済みデータを生成する現像処理工程と、
記憶媒体に記憶されている動画のRAWデータを現像して再生する場合、前記動画を構成するフレームのなかの一部のフレームのRAWデータを現像して再生する場合と、前記動画を構成する各フレームのRAWデータを現像して再生する場合とで、前記現像処理工程で前記画像処理に用いる補正データを異ならせる制御工程と、
を有
し、
前記制御工程は、前記動画の前記一部のフレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、前記RAWデータから抽出したデータに基づく補正データを前記画像処理に適用し、前記動画の前記各フレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、前記RAWデータから抽出したデータを用いることなく予め記憶している補正データを前記画像処理に適用することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から11のいずれか1項に記載の画像処理装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された画像を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、動画の高解像度化や表示装置の大型化が進んでおり、動画画質の高品質化への要求が高まっている。特に動画再生時において当該動画を構成している一部のフレームの画像を表示するような場合の画質が低いと目立ち易いため、その画像を高画質化したいという要求が存在する。なお、特許文献1には、動画再生時にのみ過去フレームとの間の輝度の相関性を維持するためにパラメータ補正を実施し、動画再生の一時停止時にはパラメータ補正を行わないことで静止画像に適した画像を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また最近は、動画をRAWデータで記録および再生できる撮像装置が普及しつつある。このため、RAWデータの動画再生時においても、当該動画を構成している一部のフレームの画像を表示する場合に高画質化できることが望まれる。しかしながら、特許文献1に挙げた技術は、現像済みの動画データ再生時の一時停止時におけるパラメータ補正に関するものであり、動画のRAWデータを再生する際の高画質化には適用できない。
【0005】
そこで、本発明は、RAWデータの動画を構成している一部のフレームの画像を再生する場合の高品質化を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、補正データを用いた画像処理を含む現像処理を、RAWデータに対して行い現像済みデータを生成する現像処理手段と、動画のRAWデータを現像して再生する場合、前記動画を構成するフレームのなかの一部のフレームのRAWデータを現像して再生する場合と、前記動画を構成する各フレームのRAWデータを現像して再生する場合とで、前記現像処理手段が前記画像処理に用いる補正データを異ならせる制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記動画の前記一部のフレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、前記RAWデータから抽出したデータに基づく補正データを、前記現像処理手段の前記画像処理に適用し、前記動画の前記各フレームの前記RAWデータを現像して再生する場合には、前記RAWデータから抽出したデータを用いることなく予め記憶している補正データを、前記現像処理手段の前記画像処理に適用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、RAWデータの動画を構成している一部のフレームの画像を再生する場合の高品質化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の画像処理装置が適用される一構成例を示した図である。
【
図3】RAWデータ取得から記録までの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】RAWデータの動画再生時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】動画再生選択時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】現像済み動画データ再生時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】RAW動画データ再生時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】倍率色収差検出の概要説明に用いる図である。
【
図9】倍率色収差検出の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】色プレーン生成の概要説明に用いる図である。
【
図11】色プレーン生成時のLPFの例を示す図である。
【
図12】色ずれ量検出の概要説明に用いる図である。
【
図13】適応補間処理の概要説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
図1は、本実施形態の画像処理装置の一適用例である動画記録再生装置100の構成例を示す図である。
撮像レンズ101は、ズームレンズ、フォーカスレンズおよび入射光量を調節するための絞りを含むレンズ群である。カラーフィルタ102は、入射光をR(赤),G(緑),B(青)の色成分に分離するためのフィルターである。カラーフィルタ102のR,G,Bと画素位置の対応は、
図2に示すようなベイヤ配列が多く用いられる。なお
図2はカラーフィルタ102の一部のみを示している。
【0010】
撮像部103は、入射光を電気信号に変換するためのCMOSセンサー等の撮像素子と、撮像素子から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器とを有して構成される。
【0011】
内部メモリ104は、記憶媒体としてDRAM等の揮発性メモリを有して構成されている。内部メモリ104は、撮像部103から出力されるデジタル信号(RAWデータとする)や、現像処理部109から出力されるデータ(現像済みデータとする)を、記憶媒体に記憶する。
【0012】
操作入力部105は、ユーザーが動画記録再生装置100に対して、動画記録の開始や終了、動画データの再生、一時停止等の操作指示を行うためのものであり、ボタンや電子ダイヤル、タッチパネル等で構成される。
制御部106は、操作入力部105に入力された内容に応じて、動画記録や再生などの、動画記録再生装置100の各種制御を行う。制御部106の詳細は後述する。
【0013】
補正データ記憶部107は、記憶媒体としてFlashROM等の不揮発性メモリを有して構成されている。補正データ記憶部107は、撮影条件ごとの補正データを、記憶媒体に記憶している。
補正量検出部108は、RAWデータを基に各種補正データの算出を行う。補正量検出部108の詳細は後述する。
【0014】
現像処理部109は、制御部106による制御の下、内部メモリ104からRAWデータを読み出し、各種補正処理とWB(ホワイトバランス)処理、ノイズリダクション処理、シャープネス等の画像処理を含む現像処理を行って現像済みデータを生成する。また、現像処理部109にて生成された現像済みデータは、制御部106による制御の下で、内部メモリ104に送られて記憶される。
【0015】
表示制御部110は、内部メモリ104に記憶された現像済みデータを表示部111に出力するための制御を行う。
表示部111は、現像済みデータの動画等を表示するための表示装置であり、LCD等の表示デバイスで構成される。
【0016】
外部メモリ制御部112は、内部メモリ104に記憶された現像済みデータあるいはRAWデータを外部メモリ113に出力するための制御を行う。
外部メモリ113は、記憶媒体としてSDカードなどのメモリカードを有して構成される。外部メモリ113は、現像済みデータあるいはRAWデータを、記憶媒体に記憶する。外部メモリ113には、フレーム毎の現像済みデータからなる動画データ(現像済み動画データとする)、またはフレーム毎のRAWデータからなる動画データ(RAW動画データとする)、もしくは現像済み動画データとRAW動画データの両方が保存される。
【0017】
続いて、
図3のフローチャートを用いて、本実施形態の動画記録再生装置100におけるRAWデータ取得から記録までの処理の流れを説明する。
操作入力部105を介したユーザーからの記録開始指示を受けとると、制御部106は、まずステップS301の処理として、撮像部103が取得した1フレーム分のRAWデータを内部メモリ104に記憶させる。そして、制御部106は、1フレーム分のRAWデータの保存が完了した時点で、ステップS302に処理を進める。
【0018】
ステップS302の処理に進むと、制御部106は、ユーザーにより予め設定された記録モードを確認する。制御部106は、予め設定された記録モードがRAW記録モードでないと判定した場合(通常記録モード)には、ステップS303に処理を進める。
【0019】
ステップS303に進むと、制御部106は、RAWデータに対する各種補正処理等の画像処理を含む現像処理を現像処理部109に実行させた後、ステップS304に処理を進める。そして、ステップS304に進むと、制御部106は、現像済みデータを外部メモリ113に保存させた後、ステップS306に処理を進める。
【0020】
一方、ステップS302において記録モードがRAW記録モードであると判定した場合、制御部106は、現像処理部109による現像処理を行わせず、ステップS305でRAWデータを外部メモリ113に保存させた後、ステップS306に処理を進める。
【0021】
ステップS306の処理に進むと、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーから記録終了指示が入力されたか確認し、記録終了指示が入力されていないと判定した場合にはステップS301に処理を戻し、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS306において記録終了指示が入力されたと判定した場合、制御部106は、
図3のフローチャートの処理を終了する。
【0022】
続いて、
図4のフローチャートを用い、
図3のステップS303において通常記録モード時に現像処理部109が行う補正および現像処理について説明する。
まずステップS401の処理として、現像処理部109は、補正データ記憶部107から補正データを読み出す。ここで本実施形態における補正データとは、倍率色収差など各種収差を補正する処理を行うためのデータであり、レンズ設計時のデータから算出された値が予め補正データ記憶部107に記憶されている。
【0023】
次にステップS402の処理として、現像処理部109は、補正データ記憶部107から読み出した補正データを基に、内部メモリ104に記憶されているRAWデータに対する補正処理を行う。さらに現像処理部109は、補正処理後のRAWデータに対して、WB処理、ノイズリダクション、およびエッジ強調処理といった画像処理および現像処理を行った後、圧縮処理を行い、現像済みデータとして内部メモリ104に送って記憶させる。
【0024】
その後、現像処理部109は、以上のような処理を動画の全てのフレームについて行ったか判定し、未処理のフレームがある場合にはステップS401に処理を戻して、当該未処理のフレームについてステップS401とステップS402の処理を行う。そして、現像処理部109は、動画の全てのフレームについて処理が完了したと判定した場合、
図4のフローチャートの処理を終了する。
【0025】
<第1の実施形態に係る動画再生処理>
続いて、動画記録再生装置100の第1の実施形態に係る動画再生処理について説明する。
本実施形態の場合、現像済み動画データの動画再生時において、動画を構成する各フレームのなかの一部のフレーム画像を再生する場合と、動画全体を再生(各フレームをフレーム順に再生)する場合とで、現像時の補正処理で用いられた補正データは共通である。
一方、RAW動画データを現像して再生する場合、動画を構成している一部のみのフレーム画像を現像して再生する場合と、動画全体を現像して再生する場合とで、現像時の補正処理に用いる補正データは異なるものとなされる。制御部106は、RAW動画データの現像および再生が行われる場合には、一部のフレームのみのRAWデータを現像して再生する場合と、各フレームのRAWデータを順に現像して再生する場合とで、補正処理に用いる補正データを異ならせる。すなわち本実施形態の場合、RAW動画データの一部のフレーム(RAWデータ)の画像を再生する際には、当該一部のフレームのRAWデータに特化した補正データを補正量検出部108が生成し、現像処理部109はその補正データを用いた補正処理を行う。これにより本実施形態の動画記録再生装置100は、RAW動画データの一部のフレーム画像を再生する場合に、当該画像の品質を向上させることができる。
【0026】
なお本実施形態において、動画再生時に表示される一部のフレーム画像とは、動画再生の一時停止時に表示される画像、動画から切り出されて表示される静止画、あるいは動画から繰り返し再生して表示される画像などである。本実施形態では、一部のフレーム画像として、動画再生の一時停止時に表示される画像を例に挙げて説明する。
【0027】
図5は、本実施形態の動画記録再生装置100において動画を再生する際に、制御部106が、動画データを選択して再生する処理の流れを示したフローチャートである。
操作入力部105を介してユーザーから動画再生要求を受け取ると、制御部106は、まずステップS501の処理として、外部メモリ113に現像済み動画データが保存されているか確認する。そして、制御部106は、外部メモリ113に現像済み動画データが保存されていると判定した場合にはステップS502に処理を進める。一方、制御部106は、外部メモリ113に現像済み動画データが保存されておらず、RAW動画データが保存されていると判定した場合にはステップS503に処理を進める。外部メモリ113に現像済み動画データとRAW動画データの両方が保存されている場合、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーがいずれの動画データの再生を指示したかに応じて、ステップS502またはS503に処理を進めてもよい。
【0028】
ステップS502に進んだ場合、制御部106は、外部メモリ113から、現像済み動画データを構成しているフレーム毎に現像済みデータを順次読み出して表示制御部110に送ることで、表示部111に動画を表示させる再生処理を行う。ステップS502では、ユーザーから一時停止要求が入力された場合には一時停止表示も行われる。ステップS502の詳細な処理は後述する。このステップS502の後、制御部106は、
図5のフローチャートの処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS503に進んだ場合、制御部106は、外部メモリ113からRAW動画データを構成するフレーム毎のRAWデータを読み出し、現像処理部109に当該フレーム毎のRAWデータの現像処理を行わせる。現像処理部109では、フレーム毎のRAWデータが現像処理され、そのフレーム毎の現像済みデータが表示制御部110に順次送られることで、表示部111に動画が表示されることになる。ステップS503では、ユーザーから一時停止要求が入力された場合には一時停止表示も行われる。ステップS503の詳細な処理は後述する。このステップS503の後、制御部106は、
図5のフローチャートの処理を終了する。
【0030】
図6は、
図5のステップS502における現像済み動画データの再生処理の流れを示すフローチャートである。
まずステップS601の処理として、制御部106は、外部メモリ113から現像済み動画データの1フレーム分の現像済みデータを読み出し、表示制御部110を介して表示部111に表示させる。
【0031】
続いてステップS602の処理として、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーからユーザー操作1として一時停止要求が入力されたか否かを確認する。制御部106は、一時停止要求が入力されたと判定した場合にはステップS603に処理を進め、一方、一時停止要求が入力されていないと判定した場合にはステップS604に処理を進める。
【0032】
ステップS603に進むと、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーからユーザー操作2として再生再開要求が入力されたか否かを確認する。制御部106は、再生再開要求が入力されたと判定した場合にはステップS604に処理を進める。一方、再生再開要求が入力されていないと判定した場合、制御部106は、再生再開要求が入力されたと判定されるまでステップS603の判定処理を繰り返す。つまり制御部106は、再生再開要求が入力されたと判定されるまで、ステップS601で表示された1フレーム分の現像済みデータの画像を表示し続ける一時停止表示の状態を維持する。
【0033】
ステップS604に進むと、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーからユーザー操作3として再生終了要求が入力されたか否かを確認する。制御部106は、再生終了要求が入力されたと判定した場合には
図6のフローチャートの処理を終了する。一方、再生終了要求が入力されていないと判定した場合、制御部106は、ステップS601に処理を戻す。これにより、ステップS604で再生終了要求が入力されたと判定されるまで、ステップS601以降の処理が繰り返される。
【0034】
図7は、
図5のステップS503におけるRAW動画データの再生処理の流れを示すフローチャートである。
まずステップS701の処理として、制御部106は、補正データ記憶部107から補正データを読み出して現像処理部109に送る。
続いてステップS702の処理として、制御部106は、外部メモリ113からRAW動画データの1フレーム分のRAWデータを読み出して現像処理部109に送る。現像処理部109は、補正データを用いた補正処理およびRAWデータの現像処理を行い、その現像済みデータを表示制御部110に送ることで表示部111に画像が表示される。
【0035】
続いて、ステップS703の処理に進むと、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーから一時停止要求が入力されたか否かを確認する。制御部106は、一時停止要求が入力されたと判定した場合にはステップS704に処理を進め、一方、一時停止要求が入力されていないと判定した場合にはステップS707に処理を進める。
【0036】
ステップS704に進むと、制御部106は、補正量検出部108を制御して、一時停止要求が入力された時のRAW動画データ内の1フレームのRAWデータから、補正データを抽出させる。補正量検出部108による補正データの抽出処理の詳細は後述する。
【0037】
次にステップS705の処理として、現像処理部109は、RAWデータに対し、ステップS701で取得された補正データに、ステップS704で抽出された補正データを加味した補正データを用いた補正処理および現像処理を行って現像済みデータを生成する。この現像済みデータが表示制御部110を介して表示部111に送られることで、一時停止時の画像表示が行われる。
【0038】
次にステップS706の処理として、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーから再生再開要求が入力されたか否かを確認する。制御部106は、再生再開要求が入力されたと判定した場合にはステップS707に処理を進め、一方、再生再開要求が入力されていないと判定した場合にはステップS706の判定処理を繰り返す。つまり制御部106は、再生再開要求が入力されたと判定されるまで、ステップS705で表示された現像済みデータの画像を表示し続ける一時停止表示の状態を維持する。
【0039】
ステップS707の処理に進むと、制御部106は、操作入力部105を介してユーザーから再生終了要求が入力されたか否かを確認する。制御部106は、再生終了要求が入力されたと判定した場合には
図7のフローチャートの処理を終了する。一方、再生終了要求が入力されていないと判定した場合、制御部106は、ステップS701に処理を戻す。これにより、ステップS707で再生終了要求が入力されたと判定されるまで、ステップS701以降の処理が繰り返される。
【0040】
以下、
図7のステップS704において補正量検出部108で行われる補正データ抽出処理について説明する。第1の実施形態では、補正データとして、倍率色収差を補正するための補正データを抽出する場合を例に挙げて説明する。補正データは、倍率色収差を補正するための補正データに限定されず、他の補正処理に用いられる補正データであってもよい。
【0041】
ここで、倍率色収差とは、基準色をGとした場合、レンズを透過することで、基準色のG光の結像位置に対してR光とB光のそれぞれの結像位置がずれる現象である。このずれ量は撮像部103の個体差の影響を受けやすいため、レンズ設計値による補正量だけを用いた補正処理では、個体差による補正残りが発生してしまう。撮像部103の個体差まで含めた補正を行うためには、
図8に示すようなRAWデータの画像800全体からそれぞれ異なる位置の矩形領域801(以下、ブロックとする)を複数抽出して、それらブロック毎に色ずれ量を評価する必要がある。色ずれ量には、色ずれの大きさと色ずれが発生している方向とが含まれる。色ずれが発生する方向は、画像800を複数に分割した領域(例えば領域803a~803h)のいずれの領域に、ブロック中心位置802が所属するかに応じた
図8中の矢印で示される方向となる。補正量検出部108は、ステップS704の補正データ抽出処理として、G成分に対するR成分とB成分の色ずれ量を検出し、その色ずれ量を基に色ずれを補正するための補正データを生成するような処理を行う。
【0042】
図9は、補正量検出部108における色ずれ量検出処理の流れを示すフローチャートである。
まずステップS901の処理として、補正量検出部108は、外部メモリ113から読み出されて一時的に内部メモリ104に保存された1フレームのRAWデータから、1ブロック分のRAWデータを読み出す。ここで、読み出されるRAWデータは、
図2に示したベイヤ配列データである。
【0043】
続いてステップS902の処理として、補正量検出部108は、ステップS902で読み出した1ブロック分のRAWデータを変換して、R,G,Bそれぞれの色成分だけを含んだ各色プレーン(以下、R,G,Bプレーンとする)を生成する。
【0044】
図10(a)~
図10(d)は、R,G,Bプレーン生成の一例を説明する図である。
図10(a)は、RAWデータにおけるベイヤ配列データの一部を示した図である。補正量検出部108は、ベイヤ配列データから、R,G,Bのそれぞれ同色の信号値を抜き出す。
図10(b)は、ベイヤ配列データから、R色の信号値のみを抜き出した状態を示した図である。次に補正量検出部108は、同色の信号値を抜き出した後の、信号値の無い画素位置にそれぞれ0値を挿入する。
図10(c)は、R値の信号値のみが抜き出された後の信号値の無い画素位置にそれぞれ0値が挿入された状態を示した図である。そして補正量検出部108は、信号値に0値が挿入された後のデータに対し、
図11に示すようなフィルター係数のローパスフィルタ(LPF)を用いた補間処理を施すことで、各画素位置に同色が配置されたプレーンを生成する。
図10(d)は、R色のプレーン(Rプレーン)を示した図である。
図10(b)~
図10(d)はR色を例に挙げているが、補正量検出部108は、G色とB色についても同様にしてGプレーンとBプレーンを生成する。なお、Gの成分については、R(またはB)の成分との帯域を合わせるために、補正量検出部108は、G1,G2のいずれか一方の信号値のみを用いてGプレーンを生成する。
【0045】
次にステップS903の処理として、補正量検出部108は、ステップS902で生成したGプレーンとRプレーン、またはGプレーンとBプレーンを、前述した
図8の矢印方向に1画素ずつずらしながら相関値を取得する。相関値として差分絶対値和(Sum Of Absolute Difference:SAD)を取得する場合、ずらし位置dにおけるSADの値は、以下の式(1)で算出される。
【0046】
【0047】
ここで、式(1)中のgainはGとR(またはB)の信号レベルを合わせるための調整値(局所的なWBゲイン)であり、ブロックおけるGの信号の積分値をRの信号の積分値で割った値である。
また、取得したずらし位置d毎のSAD値をプロットすることで、
図12のようなグラフが得られる。
そして補正量検出部108は、ステップS904の処理として、SAD値が最小値となるずらし位置Dの前後のSAD値から、以下の式(2)を用いて色ずれ量xを算出する。式(2)の右辺第2項は、放物線近似によるサブピクセルレベルの色ずれ量推定である。
【0048】
【0049】
なお、倍率色収差の補正では、サブピクセルレベルでの補正量の違いがエッジ部の色つきに影響を与えるため、色ずれ量の検出もサブピクセルレベルで精度を確保する必要がある。したがって、補正量検出部108は、色ずれ量をサブピクセルレベルの精度で色ずれ量を検出する。
【0050】
続いてステップS905の処理として、補正量検出部108は、前述のようにして算出した色ずれ量を、像高別に集計する。
次にステップS906の処理として、補正量検出部108は、全てのブロックについて前述した処理が完了したか否か判定する。補正量検出部108は、全てのブロックの処理が完了したと判定した場合にはステップS907に処理を進める。一方、全てのブロックの処理が完了していないと判定した場合、補正量検出部108は、ステップS901に処理を戻して、未処理のブロックについてステップS901以降の処理を行う。つまり、補正量検出部108は、全てのブロックの処理が完了するまで、ステップS901からステップS905の処理を繰り返す。
【0051】
ステップS907の処理に進むと、補正量検出部108は、像高別の色ずれ量の集計結果から、像高毎の色ずれ量の平均値を算出し、これを倍率色収差の補正データとする。このステップS907の後、補正量検出部108は、
図9のフローチャートの処理を終了する。
【0052】
以上説明したように第1の実施形態の動画記録再生装置100は、RAW動画データの再生中の一時停止表示時にのみ、RAWデータから色ずれ量を検出(サブピクセルレベルで直接評価)して補正データを求め、その補正データを用いて倍率色収差の補正を行う。つまり本実施形態の場合、RAW動画データの再生中にはレンズ設計値のみに基づく補正データを用いた補正処理が行われるが、一時停止表示時にはRAWデータの画像から生成した補正データをも加えた補正処理が行われる。したがって、本実施形態の場合、RAW動画データの再生中の一時停止時には、レンズ設計値のみに基づく補正データを用いる場合に比べて、高精度な倍率色収差補正が可能となる。すなわち本実施形態によれば、RAW動画データの再生表示中の一時停止表示時のように、RAWデータの動画を構成している一部のフレーム画像を表示する場合の高品質化が可能となる。
【0053】
<第2の実施形態に係る動画再生処理>
続いて、動画記録再生装置100の第2の実施形態に係る動画再生処理について説明する。第2の実施形態の動画記録再生装置100における構成および処理の流れは概ね前述した第1の実施形態と同様であり、それら構成と処理の図示は省略する。
第2の実施形態では、現像済み動画データを生成する場合と、RAW動画データを再生表示する場合とで、RAWデータからR,G,Bプレーンを生成する処理が異なる例を説明する。
【0054】
RAWデータからR,G,Bプレーンを生成する際の補間処理方法には、全画素に対して一律に
図11のLPFを適用する補間処理(線形補間処理)と、補間画素の周囲の信号値を参照しながら適応的に補間画素値を決定する補間処理(適応補間処理)とがある。
【0055】
図13は、適応補間処理の一例の説明に用いる図である。
図13は、Gプレーンの補間処理時に参照される画素配列を示している。補間画素位置1301には、R成分の信号値Rcが配置され、その補間画素位置1301の上下左右の画素位置にはG成分の信号値Gu,Gb,Gl,Grが、さらにその上下左右の画素位置にはR成分の信号Ru,Rb,Rl,Rrが配置されている。補間画素値の算出にあたり、まず補正量検出部108は、補間画素位置1301周辺の、水平方向の信号値の相関を評価するための評価値dhを式(3)により算出し、同様に垂直方向の信号値の相関を評価する評価値dvを式(4)により算出する。
【0056】
dh=abs(G1-Gr)+abs(2Rc-R1-Rr) 式(3)
dv=abs(Gu-Gb)+abs(2Rc-Ru-Rb) 式(4)
【0057】
続いて補正量検出部108は、算出した評価値dhと評価値dvの大小関係に応じて、以下の補間画素の生成に使用する信号値を、以下の式(5)と式(6)のように切り替える。
【0058】
dh<dvの場合、Gc=(G1+Gr)/2 式(5)
dh≧dvの場合、Gc=(Gu+Gb)/2 式(6)
【0059】
第2の実施形態の場合は、前述のように水平方向および垂直方向の色成分の信号値の相関を見ながら補間画素値Gcを生成することで、線形補間に比べて、画像の高域成分(エッジ成分)を保持した状態でGプレーンを生成することが可能となる。第2の実施形態においては、動画再生の一時停止表示時のみ適応補間で生成されたGプレーンを用いて各種補正データの抽出を行うことで、より高精度な補正データを抽出することが可能となり、画像の高画質化が可能となる。
また第2の実施形態の場合、動画の連続再生時は演算量の比較的小さい線形補間を用いることで動画再生時の処理負荷を低減し、RAW動画データ再生の一時停止表示時のみ演算量は比較的大きいが表示画像の高画質化が可能な適応補間を用いる。
【0060】
前述した各実施形態の画像処理に係る構成または各フローチャートの処理は、ハードウェア構成により実現されてもよいし、例えばCPUが本実施形態に係るプログラムを実行することによりソフトウェア構成により実現されてもよい。また、一部がハードウェア構成で残りがソフトウェア構成により実現されてもよい。ソフトウェア構成のためのプログラムは、予め用意されている場合だけでなく、不図示の外部メモリ等の記録媒体から取得されたり、不図示のネットワーク等を介して取得されたりしてもよい。
【0061】
また、前述した各実施形態の画像処理に係る構成のうち、制御部106や補正量検出部108で行われる処理は、人工知能(AI:artificial intelligence)を適用した処理であってもよい。例えば、それらの各部の代わりとして、機械学習された学習済みモデルを代わりに用いてもよい。その場合には、それら各部への入力データと出力データとの組合せを学習データとして複数個準備し、それらから機械学習によって知識を獲得し、獲得した知識に基づいて入力データに対する出力データを結果として出力する学習済みモデルを生成する。この学習済みモデルは、例えばニューラルネットワークモデルで構成できる。そして、その学習済みモデルは、前述の各部と同等の処理をするためのプログラムとして、CPUあるいはGPUなどと協働で動作することにより、前述の各部の処理を行う。また、前述の学習済みモデルは、必要に応じて一定のデータを処理する毎に更新する等も可能である。
【0062】
本発明に係る制御処理における1以上の機能を実現するプログラムは、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給可能であり、そのシステム又は装置のコンピュータの1つ以上のプロセッサにより読また出し実行されることで実現可能である。
前述の各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
100:動画記録再生装置、101:撮像レンズ、102:カラーフィルタ、103:撮像部、104:内部メモリ、105:操作入力部、106:制御部、107:補正データ記憶部、108:補正量検出部、109:現像処理部、110:表示制御部、111:表示部、112:外部メモリ制御部、113:外部メモリ