(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】容器用蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 43/08 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
B65D43/08 200
(21)【出願番号】P 2019150286
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018170756
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390017949
【氏名又は名称】旭化成ホームプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 久晃
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270019(JP,A)
【文献】特開2017-110081(JP,A)
【文献】特開2018-095698(JP,A)
【文献】特表2002-518265(JP,A)
【文献】特開2005-001735(JP,A)
【文献】特開2001-064525(JP,A)
【文献】特開2004-051680(JP,A)
【文献】特開2003-221055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂により成形され、樹脂容器に対して嵌合及び分離する容器用樹脂蓋であって、
周縁に形成された、容器と嵌合するフランジ部と、
前記フランジ部より外周に突出し、容器との嵌合を分離させるための開封用のタブと、を備え、
前記タブは、その高さが2.0mm以上4.3mm以下であり、-30℃の環境において50~80Nの曲げ強度を
有し、
前記蓋を、容器に嵌合させた状態において、
前記タブに対して鉛直上方向に1Nの荷重を加えた場合の応力を、線形応力解析にて求めたタブ付根中央部に生ずる最大主応力(C)とタブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる最大主応力(D)との比(D/C)が、2.0~4.5である、容器用樹脂蓋。
【請求項2】
前記タブの容器との嵌合を分離する際の力が、-18℃の環境において14~26Nである、請求項
1の容器用樹脂蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂容器と嵌合及び分離させることが可能な容器用樹脂蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を保存するための容器として、樹脂製の蓋付き容器が知られている。このような蓋付き容器は、容器と蓋各々の周縁に凹状又は凸状のフランジ部が形成され、これら凹状又は凸状のフランジ部が嵌合し、嵌合が分離され着脱可能な構成となっている。
【0003】
このような容器用蓋には、フランジ部の嵌合を分離させて開封し易くするため、フランジ部の外周に蓋を分離させる際の摘まみとなるタブを設けている。そして、蓋の開封を容易にするため、タブの形状、サイズ、樹脂材料についての工夫が従来種々行われており、例えば、タブを堅くしつつ、開封時にタブにかかる応力に耐え得るため補強部材を設けるなどの技術が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした蓋付きの容器は、食品等を収納したのち、冷蔵庫や冷凍庫において保管され、食品を利用する際に冷蔵庫や冷凍庫から冷却された状態で取り出され、電子レンジで加熱するために開封するなどの使用が一般に想定される。冷蔵庫や冷凍庫から取り出された蓋付き容器は、容器自体が冷却されていることから、樹脂自体が硬くなり、常温時とは蓋の開封の堅さが異なる。また、特に冷凍庫から取り出された容器は、嵌合した容器と蓋との隙間に、食品の水分が固まって容器と蓋とを密着させる等の影響もあり、嵌合がより堅くなりやすく、蓋を開封する際にタブとフランジ部の間にクラックが入るなどの不具合が発生することがあった。
【0006】
本発明の目的のひとつは、冷蔵又は冷凍の環境下において、開封容易性を維持しつつ、クラックの発生などの不具合を防止した容器用樹脂蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、分離時の樹脂蓋の変形状況を観察したところ、樹脂蓋のタブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)を起点にクラックが発生することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の容器用樹脂蓋は、樹脂容器に対して嵌合及び分離する容器用樹脂蓋であって、周縁に形成された、容器と嵌合するフランジ部と、フランジ部より外周に突出し、容器との嵌合を分離させるための開封用のタブと、を備え、前記タブは、-30℃の環境において50~80Nの曲げ強度を有することを特徴とする。
【0009】
以上の態様では、樹脂蓋のタブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)のクラックの発生を抑えることが可能になり、また、同時に蓋の開け易さを確保できる。すなわち、タブの曲げ強度が低ければ低いほど、タブは弾性変形しやすくなり、タブ付根のフランジ部付近で応力集中がなくなるため、当該領域にクラックが発生する可能性は低くなる一方で、開封時にタブが曲がってしまってフランジ部を分離させるのに十分な力が伝わらなくなる。他方で、タブの曲げ強度が高ければ高いほど、タブは堅くなることになるため、タブ付根のフランジ部付近で応力集中が生じ、当該領域にクラックが発生する可能性が高くなる。本態様では、家庭での冷凍環境より温度の低い、-30℃の環境において、タブの曲げ強度を50~80Nとすることで、開封に適した弾性を有しつつ、タブ付根のフランジ部付近での過度な応力の集中をさせないタブを構成したものである。
【0010】
本発明の別の態様は、前記蓋を、容器に嵌合させた状態(蓋を容器に固定させた状態)において、前記タブに対して鉛直上方向に1Nの荷重を加えた場合の応力を、線形応力解析にて求めた、タブ付根中央部(
図1C)に生ずる最大主応力と、タブ付根のフランジコーナー中央部(
図1D)に生ずる最大主応力との比(タブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる最大主応力/タブ付根中央部に生ずる最大主応力)が、2.0~4.5である。
【0011】
この態様は、上記態様で特定したタブの曲げ強度と同様の効果を得ることができ、開封に適した弾性を有しつつ、蓋開けの際にタブ付根のフランジ部付近に過度な応力を集中させないタブを構成することが可能である。
【0012】
本発明の別の態様は、タブの容器との嵌合を分離する際の力が、-18℃の環境において10~30Nである。
【0013】
以上の態様では、家庭での冷凍環境を想定した-18℃の環境において、蓋開けの際にタブ付根のフランジ部付近に過度な応力を集中させず、当該フランジ部付近におけるクラックの発生を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷蔵又は冷凍の環境下にあっても、開封容易性を維持しつつ、クラックなどの不具合の発生を抑えた容器用樹脂蓋を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の容器用樹脂蓋の全体構成を示す平面図(A)及び断面図(B)である。
【
図2】本実施形態の容器用樹脂蓋のタブ面積を変更した例を示す図である。
【
図3】本実施形態の容器用樹脂蓋のタブ近傍のフランジ部の形状を変更した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態(以下「本実施形態」という。)をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、本実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、本実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
本実施形態の容器用樹脂蓋1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、容器用樹脂蓋1の全体構成を示す平面図(A)及び断面図(B)である。
【0018】
容器用樹脂蓋1は、全体が横長の方形状であり、樹脂容器に対して着脱自在であって、フランジ部11と、フランジ部11の外周に突出したタブ12と、を備える。なお、本実施形態において容器用樹脂蓋1を横長の方形状で表しているが、容器用樹脂蓋1の形状はこれに限られず、正方形状でもよく、円形や多角形で形成してもよい。
【0019】
容器用樹脂蓋1は、熱可塑性の樹脂により成形されており、好適にはプロピレン系樹脂を主とする樹脂が用いられる。プロピレン樹脂としては、プロピレンから誘導される単量体単位の含有量が51重量% 以上、好ましくは、80重量% 以上である重合体である。プロピレン系樹脂は、プロピレン以外のオレフィンから誘導される単量体単位を含有していてもよく、該プロピレン以外のオレフィンとしては、エチレン、1 - ブテン、1 - ペンテン、1 - ヘキセン、4 - メチル- 1 - ペンテン、1 - オクテン、1 - デセンなどがあげられる。プロピレン系樹脂としては、たとえば、プロピレン単独重合体、エチレン- プロピレン共重合体、プロピレン- 1 - ブテン共重合体、プロピレン- 1 - ヘキセン共重合体、プロピレン- 1 - オクテン共重合体、プロピレン- エチレン- 1 - ブテン共重合体、エチレン- プロピレン- 1 - ヘキセン共重合体などがあげられ、これらは、1 種または2 種以上のホモポリマー、コポリマー等が用いられる。望ましくは、プロピレン系樹脂に、必要に応じてエラストマーを加えて適度な柔軟性を持たせるよう成形されている。好適なエラストマーとしては、エチレン-α―オレフィン系共重合体ゴムやスチレンーブタジエン系共重合体ゴムが用いられる。容器用蓋1の材料は、これに限られず、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリアリーレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニルなど、周知の熱可塑性樹脂から任意に選択することができる。滑り剤、結晶核剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、顔料等の種々の添加剤を加えることができる。
【0020】
フランジ部11は、周縁に底面側より凹状もしくは凸状に形成され、この凹状、凸状部分が樹脂容器側のフランジ部の凸状もしくは凹状と嵌合及び分離することで、樹脂容器に対して容器用樹脂蓋1の着脱を可能にするものである。
【0021】
タブ12は、フランジ部11のR状のコーナー部11Aのひとつに形成されている。タブ12は、フランジ部11より外周に突出し、容器との嵌合を分離させ容器用樹脂蓋1を開封する際に、利用者の摘まみとなる。タブ12は、フランジ部11のR状のコーナー部11Aのうち少なくともひとつに形成されていればよく、他のコーナー部にも形成し、複数としてもよい。
【0022】
本実施形態では、タブ12を以下の条件を満たす形状としている。すなわち、タブ12の曲げ強度が、-30℃の環境において、50~80Nとなる形状としている。より望ましくは、この曲げ強度が、60~80Nとなる形状である。なお、タブ12の曲げ強度の測定は、冷凍でのタブを支点にした開封方法を再現するため、容器用樹脂蓋1のタブ12の下方から、鉛直方向へ冶具で押し、フランジ部11のR状のコーナー部11Aから変形させることで、その値を測定する。その際、タブ12がフランジ部11のR状のコーナー部11Aから変形する様に、
図1(A)に示す二点鎖線Eを境界として、この二点鎖線Eよりもタブ12と反対の側の部分を金属板2枚で挟んで固定する。
【0023】
ここで、クラックの発生が懸念されるタブ付根のフランジ部付近とは、
図1(A)に破線で囲って領域Bとして示す領域である。容器用樹脂蓋1を容器から分離させる際に、タブ12を摘まみとして持ち上げた場合、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)に応力が集中し、これを起点にクラックが発生する。本発明のタブ12は、このクラックが発生しない形状として設計したものである。
【0024】
このように、タブ12の曲げ強度を、-30℃環境において50~80Nとなるようにタブの形状を設定する。より具体的には、タブの高さH(
図1(A)参照)又はタブ半径R(
図2参照)を設定する。これにより、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)におけるクラックの発生を抑えることが可能になり、また、同時に蓋の開け易さを確保できる。
【0025】
すなわち、タブ12の曲げ強度が低ければ低いほど、タブ12は弾性変形しやすくなり、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)で応力集中がなくなるため、領域Bにクラックが発生する可能性は低くなる一方で、開封時にタブ12が曲がってしまってフランジ部11を分離させるのに十分な力が伝わらなくなる。他方で、タブ12の曲げ強度が高ければ高いほど、タブ12は堅くなることになるため、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)で応力集中が生じ、領域Bにクラックが発生する可能性が高くなる。
【0026】
本実施形態では、家庭での冷凍環境より温度の低い、-30℃の環境において、タブ12の曲げ強度を50~80Nとすることで、開封に適した弾性を有しつつ、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)での過度な応力集中をさせないようにした。
【0027】
また、タブ12の形状を、タブ12の曲げ強度が60~80Nとなるようにした場合には、クラックの発生を防止しつつ、さらなる開け易さを維持することが可能である。
【0028】
また、容器用樹脂蓋1を容器に嵌合固定させた状態において、タブ12を、下方から鉛直上方向に1Nの荷重を加えた場合の応力を、線形応力解析にて求めた、タブ付根中央部(C)に生ずる最大主応力(
図1(A)参照)と、タブ付根のフランジコーナー中央部(D)に生ずる最大主応力(同
図1(A)参照)との応力比(タブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる最大主応力/タブ付根中央部に生ずる最大主応力)が、2.0~4.5となるようにしたものである。より望ましくは、この応力比は、3.5~4.5である。
【0029】
タブ付根中央部(C)に生ずる最大主応力と、タブ付根のフランジコーナー中央部(D)に生ずる最大主応力との応力比(タブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる最大主応力/タブ付根中央部に生ずる最大主応力)の特定により、タブの曲げ強度と同様に、開封に適した弾性を有しつつ、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)での過度な応力の集中をさせないタブを構成することが可能である。
【0030】
また、タブ12は、家庭での冷凍環境を想定した-18℃の環境において、タブの容器との嵌合を分離する際の力が10~30Nとなるものである。より望ましくは、この力は、10~15Nとなるものである。
【0031】
タブ12を-18℃の環境において、タブの容器との嵌合を分離する際の力が10~30Nとなるようにその形状を設定することによっても、フランジ部付近(
図1B近傍)におけるクラックの発生を抑えることが可能になり、同時に蓋の開け易さを維持することが可能である。
【0032】
さらに好ましくは、10~15Nとなる様に、タブ近傍のフランジ部11の内周面側において溝を形成しない範囲(溝無し部)を設ける(
図3に太い破線で示す範囲を参照)ことで、蓋開けを更に容易にすることができる。なお、10N未満では蓋がしっかりと閉まらないなどの不具合が発生する。
【0033】
このように、家庭での冷凍環境を想定した-18℃の環境において、容器との嵌合を分離する際のタブ12の力を10~30Nとすることで、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)に過度な応力を集中させず、領域Bにおけるクラックの発生を防止することが可能になる。
【実施例1】
【0034】
以下の実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0035】
実施例及び比較例として、本実施形態の容器用樹脂蓋1におけるタブの形状とその他の形状について、(1)タブの曲げ強度測定、(2)最大主応力及び応力比の解析、(3)タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)におけるクラックの発生率の確認、クラック発生に対する主観的評価、(4)蓋の開封力の評価、(5)蓋の開けやすさの主観的評価の5つの観点から評価した。
【0036】
容器用樹脂蓋のタブの形状の例として、タブの平面の面積を一定としてタブ高さH(
図1(A)参照)を変更した例(表1、表2におけるNo.1~13)と、タブの高さHを一定としてタブの平面の面積を変更するためR形状部分の半径R(
図2参照)を変更した例(表3におけるNo.14~16)と、フランジ部の内周面において溝を形成しない範囲(
図3参照)を変更した例(表4におけるNo.17~No.21)とにおいて、上記(1)~(5)の評価を行った。
【0037】
具体的には、プロピレン系樹脂―A(PP樹脂―A)を用いた、厚み0.65mmの樹脂シート(引張弾性率:750MPa)を使用し、タブ高さを変更した実施例として、2.0mm(実施例1)、2.6mm(実施例2)、3.6mm(実施例3)、3.8mm(実施例4及び5)とした。なお、実施例5では、PP樹脂―Aにエラストマー(エチレン-1-ブテン共重合体)を10wt%添加した、厚み0.65mmの樹脂シート(引張弾性率710MPa)を使用した。また、タブ高さを変更した比較例として、PP樹脂―Aを用いた、厚み0.65mmの樹脂シート(引張弾性率:750MPa)を使用し、タブ高さを0mm(比較例1)、7.0mm(比較例2)とした。なお、これら実施例及び比較例のタブの長さは15mmとした。
【0038】
また、弾性率の異なる樹脂シートとして、プロピレン系樹脂―B(PP樹脂―B)を用いた、厚み0.65mmの樹脂シート(引張弾性率680MPa)を用い、タブ高さを変更した実施例として、3.4mm(実施例6)、3.8mm(実施例7)、4.0mm(実施例8)、4.3mm(実施例9)とし、同比較例として、タブ高さ0mm(比較例3)、7.0mm(比較例4)とした。なお、これら実施例及び比較例のタブの長さは15mmとした。
【0039】
次に、タブの平面の面積を変更した実施例として、PP樹脂―Aを用いた、厚み0.65mmの樹脂シート(引張弾性率:750MPa)を使用し、タブの半径Rを15mm(実施例10)、17mm(実施例11)とした。また、比較例として、タブの半径Rを20mm(比較例5)とした。なお、これら実施例及び比較例のタブの高さは4.8mmとした。
【0040】
さらに、PP樹脂―Aを用いた、厚み0.65mmの樹脂シート(引張弾性率:750MPa)を使用し、タブ近傍のフランジ部11の内周面側において、溝を形成しない範囲について変更した実施例として、溝を形成した例(実施例12)、この溝を形成しない範囲5mm(実施例13)、10mm(実施例14)、15mm(実施例15)、20mm(実施例16)とした。なお、これらの実施例においてタブ高さは3.4mmとし、タブの長さは15mmとした。
【0041】
ここで上記の樹脂シートの引張弾性率及び、(1)~(5)の評価方法について詳述する。樹脂シートの引張弾性率については、JIS K7161に沿って行った。すなわち、つかみ具間距離100mm、幅10mmで測定できる様に試験片を短冊形に切り出し、引張圧縮試験機(島津製作所製オートグラフ)のつかみ具に取り付けて、室温23℃、湿度50%RHの環境下で、引張速度1mm/分で測定を行った。n数は樹脂シートの長手方向と幅方向にそれぞれ5点とし、全ての平均値を求めた。なお、引張弾性率の値は、以下の計算式で求めた。
E=(σ2-σ1)/(ε2-ε1)
ここに、E:引張弾性率(MPa)
ε1(歪み1):0.0005(試験片の増加量0.05mm/つかみ具間距離100mm)
ε2(歪み2):0.0025(試験片の増加量0.25mm/つかみ具間距離100mm)
σ1:歪みε1における応力(MPa)
σ2:歪みε2における応力(MPa)
【0042】
(1)タブの曲げ強度については、冷凍保管品のタブを支点にした開封方法を再現するため、温度-30℃において、タブ12がフランジ部11のR状のコーナー部11Aから変形する様に、
図1(A)に示す二点鎖線Eを境界として、この二点鎖線Eよりもタブ12と反対の側の部分を金属板2枚で挟んで固定し、引張圧縮試験機(島津製作所製オートグラフ)に取り付け、タブ12の下方から、直径15mmの先端を球状に加工した押し込み棒により、速度1000mm/分で鉛直方向に押した時の力の最大値を測定した。n数は10で、全ての平均値を求めた。
【0043】
(2)最大主応力及び応力比の解析については、コンピュータによるシミュレーションであるCAE(Computer Aided Engineering)解析により行った。具体的には、ソフトウェアとしてAbaqusを用い、線形応力解析により行った。条件として、容器用蓋を容器と嵌合固定させたものとして、タブの下方から鉛直方向に1Nの荷重を加えた場合とし、材料をポリプロピレン(ヤング率:896MPa、ポアソン比:0.410)、厚みを0.65mmとし、タブ付根中央部(C)に生ずる最大主応力(
図1(A)参照)と、タブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる(D)に生ずる最大主応力(同
図1(A)参照)、及び、その応力比(タブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる最大主応力/タブ付根中央部に生ずる最大主応力)を求めた。
【0044】
(3)タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)におけるクラックの発生率の確認は、容器に水を入れて蓋をし、冷凍庫(-18℃環境)に1日保管した後に、冷凍庫から取り出してから0.5分後において、容器用蓋を開放した場合のクラックの有無で行った。(n数=10)この場合の開封方法は、試験者がタブのみを摘まんで持ち上げて開封する方法を採用した。クラック評価の基準は以下のとおり、タブ付根のフランジ部付近(
図1B近傍)におけるクラックの発生が10回中に何回あったかによるものとした。
○:0~1回
△:2~3回
×:4回以上
【0045】
(4)開封力の評価では、容器に水を入れて蓋をし、冷凍庫(-18℃環境)で1日保管した後に、冷凍庫から取り出してから0.5分後において、25℃の環境下で、フォースゲージでタブを持ち上げて、蓋が容器から分離するときに要する力の最大値を測定した。n数は10で、全ての平均値を求めた。蓋の開け易さの判断については、以下のとおり、タブ付根が変形して蓋の開封が出来なかった回数が10回中に何回あったかによるものとした。
◎:0回
○:1回
△:2~3回
×:4回以上
【0046】
以上の評価の結果について、タブ高さを変更したものを表1、表2に示し、タブの面積を変更したものを表3に示し、タブ近傍のフランジ部の形状を変更したものを表4に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
表1乃至表4によれば、タブ12の曲げ強度が、-30℃の環境において50~80Nとなるタブの高さ、タブの面積又は溝を形成しない範囲に設定された実施例1~16は、いずれもクラック発生評価において「〇」の評価となっていることがわかる。また、実施例1~16は、いずれもタブ12を、タブの下方から鉛直方向に1Nの荷重を加えた場合の応力を、線形応力解析にて求めた、タブ付根中央部(C)と、タブ付根のフランジコーナー中央部(D)との応力比(タブ付根のフランジコーナー中央部に生ずる最大主応力/タブ付根中央部に生ずる最大主応力)が、2.0~4.5となるようになっていることがわかる。さらに、これらの実施例1~16は、蓋の開け易さに関する官能評価においても「◎」、「〇」、「△」の評価となっており、開け易さも一定程度確保されていることがわかる。
【0052】
さらに、タブ12は、-18℃の環境において、容器との嵌合を分離する際の力(開封力)が10~30Nとなる実施例1~10においても、同様に、クラック発生評価において「〇」の評価となっている。また、これらの実施例1~10は、蓋の開け易さに関する官能評価においても「〇」又は「△」の評価となっており、開け易さも一定程度確保されていることがわかる。
【0053】
さらに、タブ12の曲げ強度が、-30℃の環境において60~80Nとなるタブの高さに設定され、容器との嵌合を分離する際の力が10~15Nとなるように、タブ近傍のフランジ部11の内周面側において溝を形成しない範囲(溝無し部)を設けた実施例15及び16は、蓋の開け易さに関する官能評価において「◎」の評価となっており、開け易さが更に良くなっていることがわかる。
【符号の説明】
【0054】
1 容器用蓋、11 フランジ部、11A コーナー部、12 タブ、B 領域、C タブ付根中央部、D タブ付根のフランジコーナー中央部、E 境界、H タブ高さ、L タブ長さ、R タブ半径