(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
F16J15/10 T
(21)【出願番号】P 2019172516
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000104490
【氏名又は名称】キーパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】池之谷 智彦
(72)【発明者】
【氏名】中澤 礼
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-165393(JP,U)
【文献】特開2010-121684(JP,A)
【文献】特開2000-346197(JP,A)
【文献】特開平10-122373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体の流路が形成されている二部材間に装着されて前記二部材間の隙間から圧力流体が漏洩するのを防止するガスケットであって、
ゴム硬度が70度以上100度以下のゴム材料で構成され、
且つ前記二部材のシール面と当接する両端面と外周部との角に面取りを設けるとともに、内周面中央に凹部を設けて略くの字状の縦断面形状に形成され
、
さらに前記縦断面形状において、縦幅寸法Vと横厚さ寸法Hとの比を、1.3~2:1の範囲内とする一方、
前記凹部の深さDを前記横厚さ寸法Hの25~45%とし、
前記両端面に、相手部材への装着時に前記相手部材に接触する平面部を設け、前記平面部の外径を前記凹部の外径よりも大きくすると共に、
前記平面部の径方向の長さ寸法Lを前記横厚さ寸法Hの35~50%とする
ことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記縦断面
形状において、前記凹部を先細とし、開口幅Wを縦幅寸法
Vの30~50%とする請求項
1記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力流体を使用する各種機器において、内部に圧力流体の流路が形成されている二つの部材の間に装着されて使用されるガスケットに関する。さらに詳述すると、本発明は、特に油圧機器のシールに用いて有用なガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧機器においては、
図4に示すように、それぞれ油路105を備えた一方の部材101と他方の部材102の油路の合わせ面(シールハウジング104の内側)には、二部材101,102間の隙間103から作動油が漏れないようにガスケット106が装着される。この種の用途において、ガスケット106は、最大油圧約5MPaが掛かっても機能に影響するような変形を起さないこと、及び油圧によるリップの異常変形を防止することが要求される。このため、
図3に示すような金属環107で補強されたゴム製のリップを備えたものが使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、金属環を備えることで、金属環単価、接着剤単価、金属環及び接着剤の管理コスト、ガスケット成形のための金型構造の複雑化、成形工数増加(接着剤塗布、金属環組み込み)、検査ポイント増加、不良数増加(接着不良)などによりコストアップとなる問題を有する。加えて、金属環により重量が増加する問題も伴う。
【0004】
かかる問題を解決するため、金属環の無い、OリングやDリング、リップパッキンの使用も考えられる。しかし、Oリング、Dリングの場合には、ゴムのボリュームが多いため、二部材間に装着されて潰されたときに油路側へのはみ出しの危険があり、また、二部材間の隙間のばらつきに対応するためには潰し率を大きくする必要があるが反力が過大となりガスケットの耐久性、油圧機器の組立性に影響を生じる危険がある。特に、二部材間の隙間のばらつきが大きい場合には大きな問題となる。さらに、リップを持たないため油圧によるシール性向上効果(セルフシール)が得られず、シール性を向上するためにはつぶし率を大きくしなければならない。
【0005】
また、Vパッキンなどのリップパッキンの場合には、一般的に無圧~低圧用であり、組み込み性、追随性、セルフシール性等を考慮しリップの厚さが薄い全体に華奢な構造であり、ゴムも60度程度の硬度のものを使用している。このため油圧機器に使用した場合には、リップパッキン全体およびリップの変形による破損、耐久性低下、シール性低下の問題が生じる。また、耐圧性を持たせるためにリップパッキンを複数重ねて使用することやリップパッキンにバックアップリングを装着すること等も考えられるが、いずれもコストアップ要因となる。
【0006】
本発明は、十分な耐圧性を備えつつコストを抑えたガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのガスケットは、内部に流体の流路が形成されている二部材間に装着されて二部材間の隙間から圧力流体が漏洩するのを防止するガスケットであって、ゴム硬度が70度以上100度以下のゴム材料で構成され、且つ二部材のシール面と当接する両端面と外周部との角に面取りを設けるとともに、内周面中央に凹部を設けて略くの字状の縦断面形状に形成され、ガスケットの縦断面形状において、縦幅寸法Vと横厚さ寸法Hとの比を、1.3~2:1の範囲内とする一方、凹部の深さDを横厚さ寸法Hの25~45%とし、両端面に、相手部材への装着時に相手部材に接触する平面部を設け、平面部の外径を凹部の外径よりも大きくすると共に、平面部の径方向の長さ寸法Lを横厚さ寸法Hの35~50%とするようにしている。
【0010】
また、ガスケットの縦断面形状は、凹部を先細とし、開口幅Wを縦幅寸法Vの30~50%とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のガスケットによれば、ゴム硬度が70度以上100度以下のゴム材料で製作するので、ガスケットの剛性が上がり圧力が付加されてもガスケットの外径方向への変形、二部材間の隙間へのはみ出しを抑制することができる。また、面取りと凹部とで形成されるリップの変形も抑制することができる。
【0014】
依って、金属環を用いないにも拘わらず十分な耐圧性を備えることができると共に、金属環を用いないことによるコストカットを期待できる。つまり、十分な耐圧性を備えつつコストを抑えたガスケットを実現できる。
【0015】
また、ガスケットの両端面と外周部との角をとって面取りを設けることにより、相手部材との接触面積が過大になり過ぎず良好な接触圧を保つとともに、圧力が付加された際に両端面が相手部材と面で強接触することができる。このため、ガスケット端面が反転しようとしても抵抗が高まり反転を防止することができる。また、ガスケットの面取りの分だけゴムのボリュームが減るので、圧力が付加されてガスケットが外径方向へ変形しても、二部材間の隙間まで変形が達することが無くなる。
【0016】
また、ガスケットの内周面中央に凹部を設け、圧力が付加された際に凹部を広げる方向に凹部の周りのアーム部を撓ませるようにしているので、両端面を相手部材に強く押し当ててシール性を向上させ得る。
【0017】
さらに、面取りと凹部によりガスケットを断面略くの字状に形成することで、二部材の組付け時のばらつき等による隙間の大小に対して、ガスケットが潰れ易くなることで接触圧の変動を抑制することができる。
【0018】
また、ガスケットの断面寸法縦横比(縦幅寸法Vと横厚さ寸法Hとの比)を1.3~2:1とすることで、相手部材間に装着された際の潰し代に対する潰し量を適切にすることができ、シール性を維持するとともにガスケットの耐久性、油圧機器の組立性を向上させることができる。また、凹部により形成されるガスケット両端面のアーム部の長さが相対的に長くなり、圧力が付加された際にアーム部が相手部材により強く押し付けられてシール性を向上させることができる(セルフシール)。
【0019】
また、凹部の深さをガスケットの横厚さ寸法Hの25~45%とすることで、ガスケット両端面のアーム部の長さを確保し圧力が付加された際にアーム部が相手部材により強く押し付けられてシール性を向上させることができる(セルフシール)。また、ガスケットの形状を保持するのに十分な剛性を備えるとともにガスケットに必要な潰し量も確実に確保できる。
さらに、ガスケットの両端面に、相手部材への装着時に相手部材に接触する平面部を設け、平面部の外径を凹部の外径よりも大きくすることで、ガスケットに必要な潰し量を確実に確保することができる。
さらに、ガスケットの縦断面形状における平面部の径方向の長さ寸法Lをガスケットの横厚さ寸法Hの35~50%とすることで、相手部材との接触面積が過大になり過ぎず良好な接触圧を保つとともに、圧力が付加された際には両端面が相手部材と面で強接触することでガスケット端面が反転しようとしても抵抗が高まり反転を防止する効果がより高まる。
【0020】
また、請求項2記載のガスケットによれば、凹部を先細とすることでアーム部の先端側が薄肉となり圧力が付加された際に相手部材との接触圧が高くなるのでシール性を高め得る。また、開口幅Wをガスケットの縦幅寸法Vの30~50%とすることで、ガスケット両端面のアーム部の肉厚を十分に確保して、圧力が付加された際にアーム部が変形しにくく反転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明にかかるガスケットの一実施形態を示す中央縦断面図である。
【
図2】同ガスケットを使用する状態を示す説明図である。
【
図3】従来のガスケットの一例を示す中央縦断面図であり、半分だけを示す。
【
図4】従来のガスケットの使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1に、本発明のガスケットの実施形態の一例を示す。この実施形態にかかるガスケット1は、
図2に示すように、圧力流体を使用する各種機器特に油圧機器において、内部に圧力流体の流路16が形成されている二つの部材(本明細書においては、相手部材10,11と呼ぶ)の間に装着されて、二部材(相手部材10,11)間の隙間12から圧力流体が漏洩するのを防止するものである。ガスケット1は、二つの部材のうちの少なくとも一方の相手部材例えば相手部材11に形成されているシールハウジング13に収容され、ガスケット1の外周部3がシールハウジング13の周壁部17で径方向に受け支えられると共に軸方向の両端面2が相手部材10,11のシール面14,15にそれぞれ挟み付けられて二部材(相手部材10,11)間を密封するように設けられている。
【0026】
ここで、本実施形態にかかるガスケット1は、ゴム材料で製作され、相手部材10,11のシール面14,15に接触する両端面2とシールハウジング13の周壁部17と接触する外周部3との間の角をとった面取り7を設けるとともに、内周面中央に凹部5を設けて略くの字状の縦断面形状を成している。
【0027】
具体的には、本実施形態のガスケット1は、例えば
図1に示すように円環状であり、軸方向の両端面2が相手部材10,11のシール面14,15と接触してシールを構成するものである。このため、少なくとも両端面2には相手部材10,11のシール面14,15に接触する平面部6が設けられている。また、ガスケット1の内周面側には、内周面中央に凹部5が設けられると共に、内周面4と端面2との間の角でリップ9が形成されている。他方、ガスケット1の外周面側には、外周部3と、端面2と外周部3との角をとった面取り7とが形成されている。そして、面取り7と凹部5により断面略くの字状に形成されたガスケット1には、端面2を相手部材10,11のシール面14,15に押しつける弾性力を付与するアーム部8が構成され、相手部材10,11の組付け時のばらつき等による隙間12の大小に対して、ガスケット1が潰れ易くなることで接触圧の変動を抑制することができるようにされている。さらに、流路16側から圧力が付加された際にガスケット1の内周面中央に設けられる凹部5を広げる方向に凹部5の周りのアーム部8を撓ませることにより、リップ9及び端面2を相手部材10,11の接触面14,15に強く押し当ててシール性を向上することができる。ここで、本実施形態では、ガスケット1を軸方向(
図1の上下方向)に対称に形成しているが、これによりガスケット1の装着時に向きを考慮する必要が無く作業性を向上することができる。尚、アーム部8は、本実施形態の場合、凹部
5の底部と面取り7の外周部3側の縁とを結ぶ線分Aよりも端面2側の領域を指すものである。
【0028】
ガスケット1に使用するゴム材料には特に限定は無く、ニトリルゴムやアクリルゴム、シリコーンゴムなどシール材料として一般的に使用されるあらゆるゴムを使用条件に応じて選択できる。
【0029】
また、ゴム材料は70度以上100度以下のゴム硬度のものが使用される。このゴム硬度の範囲内のゴム材料でガスケット1を製作すれば、ガスケット1の剛性が上がり、圧力が付加されてもガスケット1の外径方向への変形、相手部材10,11間の隙間12へのはみ出しを抑制することができる。また、リップ9の変形も抑制することができる。他方、70度未満の硬度では、例えば最大油圧約5MPaが掛かるような条件下では形状保持性に難があり、補強環等の補助部材を用いる必要が生じる危険がある。なお、ガスケット1の変形をより確実に抑制するために、ゴム硬度を90度以上とすることがより好ましい。また、100度を超えると、硬すぎて相手シール面14,15と十分に密着できず、シール性が悪くなったり、相手部材10,11間に装着された際に反力が高くなり過ぎてガスケットの耐久性、油圧機器の組立性に影響を生じる危険がある。
【0030】
面取り7の大きさは、例えば使用条件、ガスケットのその他の部位とのバランス等を考慮し適宜決定されるが、相手部材10,11との接触面積が過大になり過ぎず良好な接触圧を保つとともに、圧力が付加された際に両端面2が相手部材10,11と面で強接触することでガスケット端面2が反転しようとしても抵抗が高まり反転を防止しし得る大きさとすることが好ましい。この面取り7により取り除かれた角の分だけゴムのボリュームが減るので、圧力が付加されてガスケット1が外径方向へ変形しても、相手部材10,11間の隙間12まで変形することが無くなる。また、角が取り除かれることでアーム部8の変形もし易くなる。
【0031】
ここで、ガスケット1の断面寸法縦横比(即ち、縦幅寸法V:横厚さ寸法H)は、1.3~2:1の範囲内とすることが好ましい。ガスケット1の断面寸法縦横比V:Hを1.3~2:1の範囲内とすることで、相手部材10,11間に装着された際の潰し代に対する潰し量を適切にすることができ、シール性を維持するとともにガスケット1の耐久性、油圧機器の組立性を向上することができる。また、凹部5により形成されるガスケット両端面2のアーム部8の長さが相対的に長くなり、圧力が付加された際にアーム部8が相手部材10,11に対してより強く押し付けられてシール性を向上する(セルフシール)ことができる。これに対し、縦幅寸法Vを横厚さ寸法Hの1.3倍未満にすると、潰し代に対する潰し量(潰し率)が大きくなり過ぎて、異常変形およびはみ出しによるガスケット1の破損、へたりによる面圧低下(シール性悪化)、油圧機器の組み立て作業性が悪化する危険がある。また、縦幅寸法Vが横厚さ寸法Hの2倍を超えると、ガスケット1が座屈し易くなり、十分な面圧が得られず、また、凹部5により形成されるガスケット両端面2のアーム部8の長さが相対的に短くなり、セルフシール効果が小さくシール性が低下する等の危険がある。
【0032】
また、凹部5の深さDは、ガスケット1の横厚さ寸法Hの25~45%とすることが好ましい。この場合、ガスケット両端面2のアーム部8の長さを確保して圧力が付加された際にアーム部8が相手部材10,11のシール面14,15により強く押し付けられてシール性を向上することができる(セルフシール)。また、ガスケット1の形状を保持するのに十分な剛性を備えるとともにガスケット1に必要な潰し量も確実に確保できる。他方、凹部5の深さDを横厚さ寸法Hの25%未満にすると、ガスケット両端面2のアーム部8の長さが短くなり過ぎて、セルフシール効果が小さくシール性が低下する危険がある。また、ガスケット1をつぶす際の反発力が高くなり過ぎてへたりによる面圧低下(シール性悪化)、油圧機器の組み立て作業性が悪化する危険がある。また、凹部5の深さDがガスケットの横厚さ寸法Hの45%を超えると、アーム部8が長くなり過ぎて圧力が付加された際にアーム部8が反転する危険がある。また、ガスケット1が潰れ易くなり、十分な潰し量を確保できなくなる危険がある。
【0033】
ここで、凹部5は
図1に示すような先細の形状とすることが好ましい。この場合、凹部5により形成されるガスケット両端面2のアーム部8の先端側が薄肉となり、圧力が付加された際に相手部材10,11との接触圧が高くなりシール性を高めることができる。しかし、凹部5の形状は必ずしも先細である必要はなく、場合によっては底が平らな深さ方向に同じ幅の溝、あるいは入り口部分よりも中に入るほど幅が広くなる曲面形状、若しくは単なる半円形やV形の鋭いくさび型でも良い。いずれの場合にも、凹部5により形成されるガスケット両端面2のアーム部8の長さが十分なものとなる深さであれば足りる。
【0034】
また、凹部5の開口幅Wはガスケット1の縦幅寸法Vの30~50%とすることが好ましい。この場合、ガスケット両端面2のアーム部8の肉厚を十分に確保して、圧力が付加された際のアーム部8の変形をし難くして反転を防止することができる。他方、凹部5の開口幅Wをガスケット1の縦幅寸法Vの30%未満にすると、ガスケット1のボリュームが高くなり潰し量が大きくなり過ぎて異常変形およびはみ出しによるガスケット1の破損、へたりによる面圧低下(シール性悪化)、油圧機器の組み立て作業性が悪化する危険がある。また、アーム部8の剛性が高くなり過ぎてセルフシール効果がほとんど発揮できなくなる危険がある。また、凹部5の開口幅Wがガスケット1の縦幅寸法Vの50%を超えると、アーム部8の肉厚が十分に確保できず、圧力が付加された際にアーム部8が異常変形して相手部材10,11の間の隙間12にはみ出してしまいガスケット1が破損することやアーム部8が反転してシール不良となる等の危険がある。
【0035】
ここで、ガスケット1の端面2には、装着時に相手部材10,11のシール面14,15に接触する平面部6が設けられる。この平面部6の外径は凹部5の外径よりも大きいことが好ましい。この場合、ガスケットの潰し方向に連続したゴム部分が形成されて、ガスケットに必要な潰し量を確実に確保することができる。
【0036】
また、平面部6の径方向の長さ(以下、平面部寸法Lと呼ぶ)はガスケット1の横厚さ寸法Hの35~50%とすることが好ましい。この場合、相手部材との接触面積が過大になり過ぎず良好な接触圧を保つとともに、圧力が付加された際に両端面2が相手部材10,11と面で強接触することでガスケット端面が反転しようとしても抵抗が高まり反転を防止することができる。また、アーム部8に必要とされる剛性が得られるので、異常変形や隙間12へのはみ出しを防いで破損の危険を少なくする。その反面、平面部寸法Lをガスケット1の横厚さ寸法Hの35%未満にすると、アーム部8のボリュームが小さくなってしまい、圧力が付加された際にアーム部8が異常変形して相手部材10,11間の隙間12にはみ出してしまいガスケット1が破損することやアーム部8が反転してシール不良となる等の危険がある。また、50%を超えるとアーム部8のボリュームが大きくなり過ぎて異常変形およびはみ出しによるガスケット1の破損の危険がある。
【0037】
以上のように構成されたガスケット1によれば、一方の相手部材のシールハウジング13に収められて二部材10,11間に装着されたとき、ガスケット1の外周部3がシールハウジング13の周壁部17で径方向に受け支えられると共に軸方向の両端面2が相手部材10,11のシール面14,15にそれぞれ挟み付けられてアーム部8を撓ませながら二部材(相手部材10,11)間を密封する。しかも、70度以上100度以下のゴム硬度のゴム材料でガスケット1が製作されているので、金属環が埋設されていなくとも、ガスケット1の剛性が上がり、圧力が付加されてもガスケット1の外径方向への変形、相手部材10,11間の隙間12へのはみ出しを抑制することができる。また、リップ9の変形も抑制することができることから、隙間12から圧力流体が漏洩することがない。
【0038】
また、ガスケット1にかかる流体の圧力によって凹部5が広げられることでアーム部8を撓ませることにより、両端面2を相手部材10,11に強く押し当ててシール性を向上させ得る。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、ガスケット1の縦断面形状は、面取り7と凹部5により略くの字状としているが、これに特に限られるものではなく、弓形、U形、C形、>形などの類似した形状、即ち加圧下に二部材に対して端面2が押しつけられるように変形するアーム部を有する形状であれば、特定の形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 ガスケット
2 端面
3 外周部
4 内周面
5 凹部
6 平面部
7 面取り
8 アーム部
V 縦幅寸法
H 横厚さ寸法
D 凹部の深さ
W 凹部の開口幅
L 平面部の寸法
10 一方の相手部材
11 他方の相手部材
12 二部材の間の隙間
13 シールハウジング
14,15 シール面
16 流路
17 シールハウジングの外周面