(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】制御装置、電動圧縮機、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 23/04 20060101AFI20231225BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20231225BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20231225BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20231225BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20231225BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H02P23/04
F04B49/06 341E
F04B49/02 331E
F04B39/00 106C
H02P29/00
F04B49/10 331J
(21)【出願番号】P 2019193694
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
(72)【発明者】
【氏名】川島 豊久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恭平
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/140867(WO,A1)
【文献】特開2017-180211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
F04B 49/06
F04B 49/02
F04B 39/00
H02P 29/00
H02P 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する検出部と、
前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する判定部と、
前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる制御部と、
を備え
、
前記判定部は、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、
前記制御部は、前記値が前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数が前記モータの最低回転数のときは前記モータを停止させ、前記第1目標回転数が前記最低回転数より高速のときは前記モータの回転数をさらに所定の第2目標回転数まで低下させる、
制御装置。
【請求項2】
バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する検出部と、
前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する判定部と、
前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる制御部と、
を備え
、
前記判定部は、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、
前記制御部は、前記値が前記閾値未満の場合、前記モータの回転数を負荷が要求する要求回転数に向けて上昇させる、
制御装置。
【請求項3】
前記第1目標回転数が、現在の回転数から
前記モータの最低回転数までの間に段階的に定められた所定の回転数のうちの1つ
、または前記最低回転数である、
請求項1
または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータの回転数を、前記要求回転数まで段階的に上昇させる、
請求項
2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記モータを停止して、再度、前記モータを起動した後に、前記値が前記閾値以上となることが所定の回数以上、発生した場合、
前記制御部は、前記モータを停止させたまま維持する、
請求項
2または請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5の何れか1項に記載の制御装置を備える、電動圧縮機。
【請求項7】
バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出し、
前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定し、
前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下さ
せ、
前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、
前記値が前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数が前記モータの最低回転数のときは前記モータを停止させ、前記第1目標回転数が前記最低回転数より高速のときは前記モータの回転数をさらに所定の第2目標回転数まで低下させる、
制御方法。
【請求項8】
バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出し、
前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定し、
前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下さ
せ、
前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、
前記値が前記閾値未満の場合、前記モータの回転数を負荷が要求する要求回転数に向けて上昇させる、
制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する手段、
前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する手段、
前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる手段、
前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定する手段、
前記値が前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数が前記モータの最低回転数のときは前記モータを停止させ、前記第1目標回転数が前記最低回転数より高速のときは前記モータの回転数をさらに所定の第2目標回転数まで低下させる手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する手段、
前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する手段、
前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる手段、
前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定する手段、
前記値が前記閾値未満の場合、前記モータの回転数を負荷が要求する要求回転数に向けて上昇させる手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、電動圧縮機、制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカーエアコンの構成要素の1つに電動圧縮機がある。電動圧縮機を駆動する駆動回路では、所定の周期で振動するリップル電圧が発生する。リップル電圧が大きくなると共振が生じ、過大な電流が流れる。
【0003】
特許文献1には、車両用交流発電機のリップル電圧を検出し、リップル電圧の最大値と最小値の差が所定値を超えると、交流発電機が故障していると判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リップル電圧の共振による過大な電流から機器を保護するためには、電動圧縮機のモータを停止する制御が考えられる。しかし、電動圧縮機のモータを停止すると、カーエアコンの運転が停止し、ユーザの快適性が損なわれる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、電動圧縮機、制御方法、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の制御装置は、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する検出部と、前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する判定部と、前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる制御部と、を備え、前記判定部は、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、前記制御部は、前記値が前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数が前記モータの最低回転数のときは前記モータを停止させ、前記第1目標回転数が前記最低回転数より高速のときは前記モータの回転数をさらに所定の第2目標回転数まで低下させる。
また、他の態様によれば、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する検出部と、前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する判定部と、前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる制御部と、を備え、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、前記制御部は、前記値が前記閾値未満の場合、前記モータの回転数を負荷が要求する要求回転数に向けて上昇させる。
【0008】
また、本開示の電動圧縮機は、上記の制御装置を備える。
【0009】
また、本開示の制御方法は、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出し、前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定し、前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させ、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、前記値が前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数が前記最低回転数のときは前記モータを停止させ、前記第1目標回転数が前記モータの最低回転数より高速のときは前記モータの回転数をさらに所定の第2目標回転数まで低下させる。
また、他の態様によれば、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出し、前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定し、前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させ、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定し、前記値が前記閾値未満の場合、前記モータの回転数を負荷が要求する要求回転数に向けて上昇させる。
【0010】
また、本開示のプログラムは、コンピュータを、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する手段、前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する手段、前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる手段、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定する手段、前記値が前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数が前記モータの最低回転数のときは前記モータを停止させ、前記第1目標回転数が前記最低回転数より高速のときは前記モータの回転数をさらに所定の第2目標回転数まで低下させる手段、として機能させる。
また、他の態様によれば、本開示のプログラムは、コンピュータを、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する手段、前記リップル電圧の値が所定の閾値以上かどうかを判定する手段、前記値が前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる手段、前記モータの回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値が前記閾値以上かどうかを判定する手段、前記値が前記閾値未満の場合、前記モータの回転数を負荷が要求する要求回転数に向けて上昇させる手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
上述の制御装置、電動圧縮機、制御方法、プログラムによれば、リップルによる共振を回避しつつ、電動圧縮機の運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態における電動圧縮機の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態における共振保護制御を説明する第1の図である。
【
図3】一実施形態における共振保護制御を説明する第2の図である。
【
図4】一実施形態における共振保護制御を説明する第3の図である。
【
図5】一実施形態における共振保護制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、一実施形態に係る電動圧縮機について、
図1~
図6を参照しながら説明する。
(構成)
図1に、車両空調機30が備える電動圧縮機20の概略構成の一例を示す。図示するバッテリ1と、車両空調機30と、車両機器40と、これらを駆動する電気回路は、車両に搭載される。インダクタ5a、5bは、バッテリ1と車両空調機30および車両機器40を含む電気回路のインダクタ成分を示す。
バッテリ1は、車両(車両空調機30の外部)に搭載された電源ユニットである。バッテリ1は、車両空調機30と車両機器40に高圧の直流電力を供給する。車両機器40は、コンデンサ2およびインバータ3、インバータ3に接続された負荷4を備える。車両空調機30は、電動圧縮機20を備えている。電動圧縮機20は、インバータ7が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機である。電動圧縮機20は、コンデンサ6およびインバータ7を含む電源回路8と、モータ9と、制御装置10と、電圧計11と、圧縮部12と、を備える。電動圧縮機20は、バッテリ1から供給される高電圧の直流電力をインバータ7で三相交流電力に変換し、それをモータ9に印加することによって駆動される。インバータ7とモータ9は電力線で接続される。インバータ7は、バッテリ1から供給された直流電力を三相交流に変換し、モータ9へ供給する。インバータ7は、制御装置10によって制御される。制御装置10は、マイコンを備え、図示しないECU(Electric Control Unit)等から取得した制御信号に基づいて、インバータ7を介してモータ9を所望の動作に制御する。例えば、制御装置10は、モータ9の回転数を制御する。モータ9がインバータ7からの指示によって回転駆動することにより、圧縮部12が冷媒を圧縮し、車両空調機30が備える冷媒回路(図示せず)へ冷媒を供給する。インバータ7および電圧計11と制御装置10とは信号線で接続されている。電圧計11は、インバータ7に入力される直流電圧を検出し、検出した電圧値を制御装置10へ出力する。電圧計11が計測する電圧値には、リップル成分が含まれる。電圧計11が計測する電圧値から、バッテリ1由来の直流電圧値を差し引いた値をリップル電圧と呼ぶ。リップル電圧が大きくなると、コンデンサ2、6およびインダクタ5a、5bで形成される共振回路で共振が生じ、車両空調機30および車両機器40を含む電気回路中に過大な電流が流れる。そこで、制御装置10は、電圧計11が計測した電圧値の変動を監視し、リップル電圧の値Wが所定の閾値以上となると、モータ9を減速させ、リップル電圧を抑制する制御を行う。
【0014】
制御装置10は、検出部101と、判定部102と、制御部103とを備える。
検出部101は、電圧計11が計測した電圧値を取得する。検出部101は、所定の微小時間における取得した電圧値の最大値と最小値の差を検出する。この値をリップル電圧の値Wと呼ぶ。検出部101は、微小時間ごとにリップル電圧の値Wを検出する。検出部101が検出対象とするリップル電圧の周波数は、インバータ7のキャリア周波数と等しく、一定である。
判定部102は、検出部101が演算したリップル電圧の値Wと所定の閾値とを比較する。リップル電圧の値Wが閾値以上の場合、判定部102は、共振保護制御を行うことを決定する。共振保護制御とは、モータ9の回転数を低下させて、リップル電圧の値Wを閾値未満に抑制する制御である。
制御部103は、インバータ7にモータ9の回転数を指示する。判定部102が、共振保護制御を行うことを決定すると、制御部103は、モータ9の回転数を、所定の目標回転数へ低下させる。ここで、モータ9を停止すると、共振の発生を防ぐことができるが、ユーザの快適性が損なわれる。従って、制御部103は、共振の発生を防ぎつつ、なるべくモータ9の運転を継続するような制御を行う。
【0015】
(モータの回転数を低下させる制御)
次に
図2~
図4を参照して、本実施形態の共振保護制御について説明する。
図2は、一実施形態における共振保護制御を説明する第1の図である。
図2上図の縦軸はリップル電圧の値Wを示し、横軸は時間を示す。
図2下図の縦軸はモータ9の回転数を示し、横軸は時間を示す。
図2上図および
図2下図の横軸の同じ位置は、同じ時刻を示す。また、
図2下図のX(rpm)はモータ9の最低回転数である。後述するように、モータ9の回転数を最低回転数X(rpm)まで低下させても値Wが閾値以上となる場合、制御部103は、モータ9を停止させる。これらのことは、
図3~
図4においても同様である。
【0016】
(時刻t0)
図2上図を参照すると、時刻t0のリップル電圧の値Wは0である。
図2下図を参照すると、時刻t0のモータ9の回転数はY(rpm)である。Y(rpm)は、ユーザが設定した冷暖房の設定温度に基づき車両のECUが決定した回転数である。
【0017】
(時刻t1)
時刻t1に至ると、リップル電圧の値Wは閾値以上となっている。判定部102は、値Wが閾値以上となったことに基づいて、共振保護制御の開始を制御部103に指示する。すると、制御部103は、Yより小さな値であるY1(rpm)を目標回転数に設定して、回転数Y1をインバータ7に指示する。時刻t1に回転数Y1を指示すると、モータ9の回転数は徐々に低下し、時刻t1-1にY1(rpm)となる。モータ9の回転数がY1(rpm)となると、判定部102は、再び値Wが閾値以上か否かを判定する。図示する例では、時刻t1-1における値Wは、依然として閾値以上である。そこで、判定部102は、回転数を更に低下するよう制御部103に指示する。制御部103は、回転数Y2(rpm)(Y2<Y1)を目標回転数に設定して、回転数Y2をインバータ7に指示する。モータ9の回転数は徐々に低下し、時刻t1-2にY2(rpm)となる。判定部102は、再び値Wと閾値を比較し、リップル電圧の値W≧閾値に基づいて、回転数の低下を制御部103に指示する。制御部103は、回転数Y3(rpm)(Y3<Y2)をインバータ7に指示する。
【0018】
(時刻t2)
上記制御により、時刻t2において、モータ9の回転数はY3(rpm)となり、リップル電圧の値Wは閾値未満となる。値Wが閾値未満となると、判定部102は、共振保護制御の解除を制御部103に指示する。制御部103は、所定の時間だけ、モータ9の回転数を維持する。所定の時間だけモータ9の回転数を維持するのは、リップル電圧の値Wを増加させる過渡的な要因が消滅するのを待機するためである。時刻t2-1に、所定の時間Twが経過すると、制御部103は、負荷が要求する回転数Yをインバータ7に指示する。これにより、車両空調機30の運転は、共振保護制御開始前における負荷に応じた運転状態に戻る(時刻t2-2)。この後も、検出部101は、リップル電圧の検出を継続し、判定部102は、所定の制御周期で、リップル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する。値Wが閾値以上とならなければ、車両空調機30は、負荷に応じた運転状態を継続する。
【0019】
(時刻t3)
時刻t3に、再び、値Wが閾値以上となると、判定部102は、値Wが閾値以上となったことに基づいて、共振保護制御の開始を制御部103に指示する。上記で説明したように、制御部103は、最低回転数X(rpm)に至るまで段階的にモータ9の回転数を低下させてもよいが、ここでは、制御部103による別の制御方法を説明する。判定部102が、共振保護制御の開始を指示すると、制御部103は、モータ9の回転数を最低回転数X(rpm)とするようインバータ7に指示する。時刻t3-1に、モータ9の回転数はX(rpm)となる。モータ9の回転数がX(rpm)となると、判定部102は、リプル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する。図示する例では、時刻t3-1における値Wは、閾値未満である。判定部102は、共振保護制御の解除を制御部103に指示する。制御部103は、所定の時間Twだけ、モータ9の回転数をX(rpm)に維持する。
【0020】
(時刻t4)
時刻t4に、所定の時間Twが経過すると、制御部103は、モータ9の回転数の上昇をインバータ7に指示する。時刻t2-1の例で説明したように、制御部103は、負荷に応じた回転数Yをインバータ7に指示してもよいが、ここでは、別の制御方法を説明する。制御部103は、負荷が要求する回転数Yに向けて、段階的にモータ9の回転数を上昇させる。例えば、制御部103は、回転数Y3をインバータ7に指示する。時刻t4-1モータ9の回転数が回転数Y3に至ったときに値Wが閾値未満であれば、制御部103は、さらに回転数をY2まで上昇させる。その後も同様にして、リップル電圧の値Wが閾値未満の間は、制御部103は、段階的にモータ9の回転数の上昇をインバータ7に指示する。時刻t5に回転数Yに到達すると、制御部103は、モータ9の回転数Yを維持し、判定部102は、所定の制御周期でリップル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する。このように、本実施形態によれば、リップル電圧による共振の発生を回避しつつ、車両空調機30の運転を継続することができる。
【0021】
なお、モータ9の回転数の低下の制御方法として、段階的に回転数Xまで低下させる方法、1度に回転数Xまで低下させる方法の2種類を記載し、回転数上昇の制御方法として、段階的に負荷が要求する回転数Yまで上昇させる方法、1度に回転数Yまで上昇させる方法の2種類を記載した。段階的に回転数Xまで低下させると、高い回転数でモータ9を駆動する時間を長くすることができるが、リップル電圧の増大を抑制しきれない可能性がある。一方、1度に回転数Xまで低下させる方法の場合、モータ9の回転数は一時的に大きく低下するが、その分、リップル電圧による共振をより確実に回避することができる。回転数を上昇させる場合、一度に回転数Yまで上昇させれば、速やかに車両空調機30の空調能力を回復させることができるが、リップル電圧の値Wが再び増大するリスクが大きくなる。一方、段階的に回転数を上昇させる方法であれば、要求される空調能力を発揮できるまでに時間が掛かるが、リップル電圧の挙動に応じた速度でモータ9を駆動することができる。回転数の低下、上昇の制御方法の組合せは任意である。つまり、制御部103は、段階的に回転数を低下させ、段階的に回転数を上昇させてもよいし、段階的に回転数を低下させ、一度に回転数Y(rpm)まで上昇させてもよい。あるいは、制御部103は、一度に回転数をX(rpm)まで低下させ、段階的に回転数を上昇させてもよいし、一度に回転数をX(rpm)まで低下させ、一度に回転数Y(rpm)まで上昇させてもよい。なお、
図2の例では、回転数を低下させる場合も、上昇させる場合もY1~Y3から選択して回転数を変化させることとしたが、低下用と上昇用それぞれに対して個別に段階的な回転数が設定されていてもよい。
【0022】
(モータを停止させる制御)
図2では、モータ9の回転数を最低回転数X(rpm)まで低下することにより、リップル電圧の増大を抑制できる例を説明した。次に、
図3を用いて、モータ9の回転数を最低回転数X(rpm)まで低下させても、リップル電圧の値Wを閾値未満に制御できない場合の制御について説明する。
図3は、一実施形態における共振保護制御を説明する第2の図である。
【0023】
(時刻t1)
図2の説明と同様にして、判定部102は、時刻t1にリップル電圧の値Wが閾値以上となったことを検知すると、共振保護制御の開始を指示する。制御部103は、段階的に、モータ9の回転数をY1、Y2、Y3と低下させる。
図2の例の場合と異なり、回転数をY3(rpm)まで低下させても、値Wが閾値未満とならない為、制御部103は、モータ9の回転数を最低回転数X(rpm)まで低下させる。
【0024】
(時刻t2)
時刻t2に回転数がX(rpm)となると、判定部102は、リップル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する。時刻t2における値Wは閾値以上の為、判定部102は、回転数を更に低下するよう制御部103に指示する。現在の回転数が最低回転数Xのときに回転数を低下させる指示を受けると、制御部103は、モータ9を停止させる。モータ9の停止後、所定の時間が経過すると(時刻t2+1)、判定部102は、再び値Wと閾値を比較する。値Wが閾値未満となっているので、判定部102は、共振保護制御の解除を指示する。
【0025】
(時刻t3)
モータ9の停止後、時間Twが経過し、時刻t3を迎えると、制御部103は、モータ9の回転数の上昇をインバータ7に指示する。制御部103は、回転数Yをインバータ7に指示する。時刻t4に回転数Yに到達すると、リップル電圧の値Wが閾値未満の間、制御部103は、モータ9の回転数Yを維持する。
【0026】
なお、上記で説明したように、制御部103は、時刻t1にて、モータ9の回転数を1度に最低回転数Xまで低下させてもよい。また、時刻t3以降、制御部103は、段階的にモータ9の回転数を上昇させてもよい。回転数を段階的に上昇させる過程で、値Wが閾値以上となると、制御部103は、再び、モータ9の回転数を低下させる。
【0027】
(モータの再起動を停止する制御)
図3では、モータ9を一旦停止させることにより、リップル電圧の値Wの抑制に成功する例を説明した。次に、
図4を用いて、モータ9を停止させても、再起動するたびにリップル電圧の値Wが閾値以上となってしまう場合の制御について説明する。
図4は、一実施形態における共振保護制御を説明する第3の図である。
【0028】
(時刻t1)
図3の説明と同様にして、判定部102は、時刻t1にリップル電圧の値Wが閾値以上となったことを検知すると、共振保護制御の開始を指示する。制御部103は、段階的に、モータ9の回転数をY1、Y2、Y3、Xと低下させる。
【0029】
(時刻t2)
時刻t2に回転数がX(rpm)となると、判定部102は、リップル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する。時刻t2におけるリップル電圧の値Wは閾値以上の為、制御部103は、モータ9を停止させる(停止1回目)。モータ9の停止後、所定の時間が経過すると(時刻t2+1)、判定部102は、リップル電圧の値Wと閾値を比較する。値Wが閾値未満となっているので、判定部102は、共振保護制御の解除を指示する。制御部103は、モータ9の停止から所定の時間Twが経過した後、目標回転数Yをインバータ7に指示する。
【0030】
(時刻t3、t4)
時刻t3にモータ9を起動し、時刻t3+1にリップル電圧の値Wが閾値以上となると、判定部102は、共振保護制御の開始を指示する。制御部103は、時刻t3+1のモータ9の回転数が最低回転数Xの為、モータ9を再び停止する(停止2回目)。制御部103は、同様の処理を時刻T4に実行し、時刻t4+1にモータ9を再び停止する(停止3回目)。
【0031】
(時刻t5)
その後、モータ9を起動と停止を何度か繰り返し、時刻t5に制御部103が、モータ9を起動し、回転数を上昇させる。今回の起動では、最低回転数Xを超えても、リップル電圧の値Wが閾値を超えず、時刻t5+1に回転数がY2に至ったときに閾値を超えたとする。すると、判定部102は、共振保護制御の開始を指示し、制御部103は、モータ9の回転数をX(rpm)まで低下させる。回転数をX(rpm)まで低下させても、リップル電圧の値Wが閾値以上となっているので、制御部103は、モータ9を停止する(停止N回目)。ここで、制御部103は、連続して、モータ9の起動と停止を繰り返した回数が、N回以上となると、モータ9の起動を繰り返さないことを決定する。モータ9の起動と停止をN回繰り返しても、リップル電圧の値Wが増大してしまうような場合、制御装置10は、モータ9の再起動を一旦停止する。このとき、制御装置10は、アラームを出力するようにしてもよい。モータ9の再起動の停止制御は、例えば、一旦、車両空調機30が停止され、次回、新たに車両空調機30が運転を開始するときまで継続される。これにより、
図1に例示する電気回路で共振が発生し得る状態が長く続く場合には、電動圧縮機20をロックし、共振による故障を回避することができる。
【0032】
次に本実施形態の電動圧縮機20の共振保護制御の流れについて説明する。
図5は、一実施形態における共振保護制御の一例を示すフローチャートである。
電動圧縮機20では、モータ9が車両空調機30の空調負荷に応じた要求回転数Yで駆動している。制御装置10は、車両空調機30の運転中、以下の処理を所定の制御周期で行う。
まず、検出部101が、リップル電圧を検出する(ステップS10)。具体的には、検出部101が、電圧計11が所定の時間に計測した電圧値から、リップル電圧の値Wを検出する。検出部101は、判定部102に値Wを出力する。判定部102は、値Wが閾値以上か否かを判定する(ステップS11)。値Wが閾値未満の場合(ステップS11;No)、ステップS10からの処理を繰り返す。
【0033】
値Wが閾値以上の場合(ステップS11;Yes)、判定部102は、共振保護制御の開始を制御部103へ指示する。制御部103は、モータ9の回転数を目標回転数まで低下させる(ステップS12)。目標回転数は、最低回転数X(rpm)でもよいし、要求回転数Yと最低回転数Xまでの間で段階的に設定された回転数(例えば、Y1~Y3)であってもよい。段階的に回転数を低下させる場合、制御部103は、現在の回転数より小さく、現在の回転数に最も近い値を選択して、その回転数をインバータ7へ指示する。
【0034】
次に検出部101が、回転数低下後のリップル電圧を検出する(ステップS13)。判定部102は、そのリップル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する(ステップS14)。値Wが閾値未満の場合(ステップS14;No)、後述するステップS19の処理に進む。
【0035】
値Wが閾値以上の場合(ステップS14;Yes)、判定部102は、回転数の低下を制御部103へ指示する。制御部103は、現在の回転数を最低回転数Xと比較する(ステップS15)。現在の回転数が最低回転数Xと等しくない(最低回転数Xより大きい)場合(ステップS15;No)、ステップS12からの処理を繰り返す。
【0036】
現在の回転数が最低回転数Xと等しい場合(ステップS15;Yes)、制御部103は、モータ9を停止させる(ステップS16)。制御部103は、モータ9の再起動停止条件を満たすかどうかを判定する(ステップS17)。例えば、制御部103は、連続してN回モータの起動と停止を繰り返している場合、モータ9の再起動停止条件を満たすと判定する。あるいは、制御部103は、所定時間内にN回モータの起動と停止を繰り返している場合、モータ9の再起動停止条件を満たすと判定する。再起動停止条件を満たす場合(ステップS17;Yes)、制御部103は、モータ9を停止したまま維持する(ステップS18)。制御装置10は、電動圧縮機20の異常を通知するアラームを出力してもよい。
【0037】
再起動停止条件を満たさない場合(ステップS17;No)、制御部103は、モータ停止後、所定の時間Twだけ待機する(ステップS19)。時間Twが経過すると、制御部103は、モータ9を起動し、回転数を目標回転数まで上昇させる(ステップS20)。目標回転数は、要求回転数Yでもよいし、最低回転数Xから要求回転数Yまでの間で段階的に設定された回転数(例えば、X、Y1~Y3)であってもよい。段階的に回転数を上昇させる場合、制御部103は、現在の回転数より大きく、現在の回転数に最も近い値を選択して、その回転数をインバータ7へ指示する。
【0038】
次に検出部101が、回転数上昇後のリップル電圧を検出する(ステップS21)。判定部102は、リップル電圧の値Wが閾値以上か否かを判定する(ステップS22)。値Wが閾値以上の場合(ステップS22;Yes)、ステップS12からの処理を繰り返す。
【0039】
値Wが閾値未満の場合(ステップS22;No)、制御部103は、現在の回転数を要求回転数Yと比較する(ステップS23)。現在の回転数が要求回転数Yと等しい場合(ステップS23;No)、ステップS10からの処理を繰り返す。
現在の回転数が要求回転数Yと等しくない(要求回転数Y以下)の場合(ステップS23;No)、ステップS20からの処理を繰り返す。
【0040】
本実施形態によれば、リップル電圧の値Wが閾値以上となると、回路に共振が生じる可能性があると判断し、電動圧縮機20のモータ9の回転数を低下させる。これにより、回路に生じる共振を防ぎ、電動圧縮機20等の破損を防止することができる。また、共振が生じる可能性があると判断した際に、電動圧縮機20を停止させること無く、運転を継続するので、車両空調機30による空調が継続され、ユーザの快適性の低下を抑制することができる。また、モータ9の回転数を低下させ、リップル電圧の値Wが閾値未満となってから所定時間が経過すると、リップル電圧の値Wを増大させる過渡的な要因が取り除かれた可能性があると判断し、モータ9の回転数を、再び、車両空調機30が要求する要求回転数Yへ向けて上昇させる。これにより、車両空調機30の運転状態を、負荷に応じた運転状態へ近づけることができるので、ユーザの快適性を回復することができる。また、モータ9の回転数を低下させても、リップル電圧の値Wが閾値以上となるような場合には、モータ9を停止させるので、共振の発生を確実に防ぐことができる。また、モータ9の停止と再起動を何回か繰り返しても、リップル電圧の値Wが閾値以上となるような場合には、モータ9の再起動を行わないので、共振の発生を確実に防ぐことができる。
【0041】
図6は、一実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の制御装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0042】
なお、制御装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0043】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0044】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置10、電動圧縮機20、制御方法、プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0045】
(1)第1の態様に係る制御装置10は、バッテリ1で駆動する電動圧縮機20のリップル電圧を検出する検出部101と、前記リップル電圧の値Wが所定の閾値以上かどうかを判定する判定部102と、前記値Wが前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機20のモータ9の回転数を0より大きい所定の第1目標回転数(Y1、又は、X)まで低下させる制御部103と、を備える。
【0046】
制御装置10によれば、リップル電圧の値が所定の閾値Wとなると、モータ9の回転数を低下させるので、電動圧縮機20を駆動する回路に共振が発生することを回避することができる。また、共振の発生を回避するために、直ちにモータ9を停止することが無いので、電動圧縮機20の運転を継続することができる。
【0047】
(2)第2の態様に係る制御装置10は、(1)の制御装置10であって、前記第1目標回転数Y1~Y4が、現在の回転数Yから所定の最低回転数Xまでの間に段階的に定められた所定の回転数のうちの1つである。
回転数を段階的に低下させることにより、モータ9の回転数をできるだけ高速に維持することができる。
【0048】
(3)第3の態様に係る制御装置10は、(1)~(2)の制御装置10であって、前記第1目標回転数が、所定の最低回転数Xである。
モータ9の回転数を一度で最低回転数Xまで低下させることにより、より確実に共振を回避しつつ、電動圧縮機20の運転を継続することができる。
【0049】
(4)第4の態様に係る制御装置10は、(2)~(3)の制御装置10であって、前記判定部102は、前記モータ9の回転数が前記第1目標回転数(X,Y1~Y4)まで低下すると、前記値Wが所定の閾値以上かどうかを判定し、前記制御部103は、前記値Wが前記閾値以上の場合であって、前記第1目標回転数(X,Y1~Y4)が前記最低回転数Xのときは前記モータ9を停止させ、前記第1目標回転数が前記最低回転数Xより高速のときは前記モータ9の回転数をさらに所定の第2目標回転数(Y2~Y4)まで低下させる。
モータ9の回転数を第1目標回転数まで低下させても、リップル電圧の値Wが閾値以上のときには、さらにモータ9の回転数を低下させるので、共振の発生を防ぐことができる。
【0050】
(5)第5の態様に係る制御装置10は、(2)~(3)の制御装置10であって、前記判定部102は、前記モータ9の回転数が前記第1目標回転数まで低下すると、前記値Wの大きさが所定の閾値以上かどうかを判定し、前記制御部103は、前記値Wが前記閾値未満の場合、前記モータ9の回転数を負荷が要求する要求回転数Yに向けて上昇させる。
モータ9の回転数を低下させた後にリップル電圧の値Wが閾値未満に低下した場合、リップル電圧の値Wを増大させる過渡的な要因が取り除かれている可能性があるため、再び、回転数を上昇させる。これにより、要求に近い状態で電動圧縮機20を運転することができる。
【0051】
(6)第6の態様に係る制御装置10は、(5)の制御装置10であって、前記制御部103は、前記モータ9の回転数を、前記要求回転数Yまで段階的に上昇させる。
モータ9の回転数を段階的に上昇させることで、モータ9の回転数を要求回転数Yに近づけることができる。
【0052】
(7)第5の態様に係る制御装置10は、(5)~(6)の制御装置10であって、前記モータ9を停止して、再度、前記モータ9を起動した後に、前記値Wが前記閾値以上となることが所定の回数以上、発生した場合、前記制御部103は、前記モータ9を停止させたまま維持する。
繰り返しモータ9を再起動しても、リップル電圧の増大が生じるような場合、モータ9を停止させたまま維持することで、共振の発生を回避することができる。
【0053】
(8)第8の態様に係る電動圧縮機20は、(1)~(7)の制御装置を備える。
【0054】
(9)第9の態様に係る制御方法は、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出し、前記リップル電圧の値Wが所定の閾値以上かどうかを判定し、前記値Wが前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる。
【0055】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータを、バッテリで駆動する電動圧縮機のリップル電圧を検出する手段、前記リップル電圧の値Wが所定の閾値以上かどうかを判定する手段、前記値Wが前記閾値以上の場合、前記電動圧縮機のモータの回転数を0より大きい所定の第1目標回転数まで低下させる手段、として機能させる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・バッテリ
2・・・コンデンサ
3・・・インバータ
4・・・負荷
5a、5b・・・インダクタ
6・・・コンデンサ
7・・・インバータ
8・・・電源回路
9・・・モータ
10・・・制御装置
101・・・検出部
102・・・判定部
103・・・制御部
11・・・電圧計
12・・・圧縮部
30・・・車両空調機
20・・・電動圧縮機
40・・・車両機器
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース