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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20231225BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20231225BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20231225BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20231225BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H04N1/04 105
H04N1/00 002A
G03B27/50 A
G03B27/62
G03G21/00 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019197450
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021072512
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】関 哲志
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-019269(JP,A)
【文献】特開2005-215376(JP,A)
【文献】特開2007-206624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04- 1/207
G06T 1/00
G03B 27/50-27/70
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台と、
前記原稿台を覆う原稿台カバーと、
前記原稿台に載置された原稿の画像を移動しながら読み取る読取手段と、
前記読取手段を移動させる移動手段と、
前記読取手段が移動する移動方向における前記読取手段の位置を検出するホームポジションセンサと、
前記読取手段移動るように前記移動手段を制御している状態における前記ホームポジションセンサの出力に基づいて、前記移動手段を制御して前記読取手段の前記移動方向における位置合わせを行う制御手段と、
を有
前記制御手段は、
前記位置合わせに異常が発生した場合は、前記原稿台カバーが前記原稿台に対して閉じた状態において前記読取手段画像読み取りを実行しながら前記読取手段移動るように前記移動手段の制御及び前記読取手段の制御を行い、かつ、
前記読取手段によって得られた画像データのうち、前記原稿が載置されるべき前記原稿台の領域内に対応する画像データに基づいて、前記移動手段に異常が生じているか前記ホームポジションセンサに異常が生じているかを判定することを特徴とする、
画像読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記原稿台カバーが前記原稿台に対して閉じた状態において前記読取手段が画像の読み取りを実行しながら前記読取手段が移動している期間に得られた前記領域に対応する画像データの値がしきい値より小さい値から前記しきい値より大きい値に変化すると、前記ホームポジションセンサに異常が生じていると判定することを特徴とする、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記原稿台カバーが前記原稿台に対して閉じた状態において前記読取手段が画像の読み取りを実行しながら前記読取手段が移動している期間に得られた前記領域に対応する画像データの値がしきい値より大きい値から前記しきい値より小さい値に変化すると、前記ホームポジションセンサに異常が生じていると判定することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記原稿台カバーが前記原稿台に対して閉じた状態において前記読取手段が画像の読み取りを実行しながら前記読取手段が移動している期間に得られた前記領域に対応する画像データの値がしきい値より小さい状態が所定時間継続すると、前記移動手段に異常が生じていると判定することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記原稿台カバーが前記原稿台に対して閉じた状態において前記読取手段が画像の読み取りを実行しながら前記読取手段が移動している期間に得られた前記領域に対応する画像データの値がしきい値より大きい状態が所定時間継続すると、前記移動手段に異常が生じていると判定することを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記画像読取装置は
前記原稿台カバーの開閉を検知する開閉検知手段と、
前記原稿台に載置された原稿の前記移動方向における長さを検知するサイズ検知センサであって、前記原稿台カバーへと光線を照射してその反射光を検出するサイズ検知センサと、
を有し、
前記制御手段は、前記位置合わせに異常が発生した場合前記開閉検知手段により前記原稿台カバーが開いていることが検知された場合は、前記移動方向において前記サイズ検知センサが設けられている位置に前記読取手段が位置するように前記移動手段を駆動させ、前記サイズ検知センサで前記反射光が検出されない場合には、前記移動手段に異常が生じていると判定することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ホームポジションセンサの出力を検出し、その検出結果に応じて、前記移動手段により前記読取手段の移動を開始する際の移動方向を決定することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記読取手段が、前記ホームポジションセンサからの出力が変化しないまま前記移動手段によって所定距離移動した場合、前記位置合わせに異常が発生したと判定することを特徴とする、請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記原稿が載置されるべき前記原稿台の領域は、前記読取手段の読取方向における中心位置であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置として、原稿台ガラスの上に載置された原稿を光学スキャナユニットが副走査方向に一定速度で移動しながら走査することによって、当該原稿の画像を読み取るものが知られている。特許文献1における画像読取装置には、光学スキャナユニットが所定の位置に位置していることを検知するためのHPセンサ(ホームポジションセンサ)が設けられている。HPセンサの検知結果に基づいて、光学スキャナユニットの位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-178624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HPセンサが光学スキャナユニットを検知しない状態が所定時間継続すると、画像読取装置に異常が生じたことがサービスマンに通知される。しかしながら、異常が生じた原因をサービスマンが特定するためには時間を要する。具体的には、例えば、光学スキャナユニットを動かすための駆動モータが故障したのか、HPセンサが故障したのか、を特定するのに時間を要する。その間、ユーザは画像読取装置を使用することができず、ユーザに不便を強いてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像読取装置における異常の原因を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の画像読取装置は、原稿台と、前記原稿台を覆う原稿台カバーと、前記原稿台に載置された原稿の画像を移動しながら読み取る読取手段と、前記読取手段を移動させる移動手段と、前記読取手段が移動する移動方向における前記読取手段の位置を検出するホームポジションセンサと、前記読取手段移動るように前記移動手段を制御している状態における前記ホームポジションセンサの出力に基づいて、前記移動手段を制御して前記読取手段の前記移動方向における位置合わせを行う制御手段と、を有、前記制御手段は、前記位置合わせに異常が発生した場合は、前記原稿台カバーが前記原稿台に対して閉じた状態において前記読取手段画像読み取りを実行しながら前記読取手段移動るように前記移動手段の制御及び前記読取手段の制御を行い、かつ、前記読取手段によって得られた画像データのうち、前記原稿が載置されるべき前記原稿台の領域内に対応する画像データに基づいて、前記移動手段に異常が生じているか前記ホームポジションセンサに異常が生じているかを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像読取装置における異常の原因を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像読取装置の断面図。
図2】画像読取装置の斜視図。
図3】制御ユニットの構成図。
図4】スキャナユニットの移動位置の説明図。
図5】スキャナユニットとその駆動構成の説明図。
図6】スキャナユニット位置出し制御のフローチャート。
図7】HPエラー診断処理のフローチャート。
図8】シェーディング白板周辺の読取画像の説明図。
図9】シェーディング白板周辺の読取画像の輝度を表すグラフ。
図10】故障箇所判定後の操作表示部の表示の説明図。
図11】位置合わせ異常時の制御を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0010】
<画像読取装置1000の構成例>
画像読取装置1000について、図1図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の自動原稿搬送装置(ADF: Auto Document Feeder)を備えた画像読取装置の一例を示す断面図である。また図2は画像読取装置1000の斜視図である。なお、図1では、ADFに含まれる構成として原稿台カバー100が記載されているが、実際には、ADFは、原稿が積載される積載部、原稿を搬送する搬送ローラ、搬送される原稿の第2面の画像を読み取る読取部等、公知の構成を備えている。
本実施形態の画像読取装置1000は、原稿の画像を読み取る画像読取部200と画像読取部200に対して回動(開閉)可能に取り付けられた原稿台カバー100(ADF)とを備えている。画像読取部200は、原稿の画像を光学的に読み取る読取ユニットとして光学式のスキャナユニット202を備える。また、画像読取部200は、流し読みガラス201、原稿台ガラス209、シェーディング白板210、副走査サイズセンサ212、原稿台カバー100の開閉検知を行う開閉センサ211及びHP(ホームポジション)センサ213を備える。
【0011】
スキャナユニット202は、図1の奥行き方向、つまり紙面に垂直な方向を主走査方向として原稿の画像を読み取る。画像読取部200は、原稿台ガラス209上に載置された原稿の画像を読み取る固定読みモードと、ADFによって搬送される原稿の画像を読み取る流し読みモードと、を備える。
【0012】
固定読みが行われる場合、スキャナユニット202は、所定方向に一定速度で移動しながら、原稿台ガラス209上に載置された原稿をLED203a、203bから出射された光によって照射する。原稿からの反射光は、ミラー204a~204cにより画像読取センサ208に導かれる。画像読取センサ208は、反射光を受光して電気信号に変換する。図1の例では、所定方向は主走査方向に直交する副走査方向(図1の矢印方向)である。
流し読みが行われる場合、スキャナユニット202は、ADFによって搬送される原稿の画像を流し読みガラス201を介して読み取る。
【0013】
副走査サイズセンサ212は、副走査方向における所定の位置に設けられており、原稿台ガラス209上に載置された原稿の有無を検知する。HPセンサ213は、光学モータ820の回転によって移動するスキャナユニット202の位置検出を行う。スキャナユニット202の位置を把握するための制御については後述する。原稿台カバー100、流し読みガラス201、スキャナユニット202、原稿台ガラス209、開閉センサ211、及び副走査サイズセンサ212の位置関係は図2の斜視図に示される。
【0014】
<制御ユニット>
図3は、画像読取装置1000の動作を制御する制御ユニットの構成図である。本実施形態の制御ユニットは、第1コントローラ310及び第2コントローラ300により構成されるが、これらは一体に構成されていてもよい。第1コントローラ310は、主にスキャナユニット202の制御を行い、第2コントローラ300は、主に、スキャナユニット202によって読み取られた画像を表す画像データの生成処理を行う。
【0015】
第1コントローラ310は、CPU(Central Processing Unit)801、ROM(Read Only Memory)802、及びRAM(Random Access Memory)803を備えるコンピュータシステムである。ROM802には、CPU801の制御プログラムが格納されており、RAM803には、CPU801で使用する入力データや作業用データが格納される。CPU801は、ROM802に格納される制御プログラムを読み出し、RAM803を作業領域に用いて実行することで、画像読取装置1000の各部の動作を制御する。
【0016】
CPU801には、副走査サイズセンサ212、開閉センサ211が接続される。開閉センサ211は、原稿台カバー100の回動(開閉)に応じて動作するフラグ形状のセンサである。開閉センサ211は、原稿台カバー100が画像読取部200(原稿台ガラス209)に対して所定角度(例えば1°)以上開いたか否かを検知する。開閉センサ211は、図2に示されるように、原稿台カバー100が画像読取部200に対して開いている状態においては、その一部が画像読取部200の上面から突出しており、この状態で開閉センサ211は原稿台カバー100が開いていることを検知する。
【0017】
原稿台カバー100が閉じられると、この突出部は原稿台カバー100によって画像読取部200の内部に押し込まれ、この状態で、開閉センサ211は、原稿台カバー100が閉じていることを検知する。また、副走査サイズセンサ212は、画像読取部200の内部から原稿台ガラス209へと光線を照射する。原稿台カバー100が閉じている場合、原稿台カバー100からの反射光が副走査サイズセンサ212で検出される。また、副走査サイズセンサ212の上方に原稿がある場合には、原稿からの反射光が副走査サイズセンサ212で検出される。
【0018】
本実施形態では、このように反射光検出が行われた場合、副走査サイズセンサ212はONを出力する。一方、原稿台カバー100が開いていてかつ副走査サイズセンサ212の上方に原稿がない場合には、副走査サイズセンサ212では反射光が検出されない。この場合、本実施形態では、副走査サイズセンサ212はOFFを出力する。CPU801は開閉センサ211及び副走査サイズセンサ212を用いて、副走査方向における原稿のサイズを決定できる。
【0019】
CPU801には、光学モータ820、原稿照射用のLED203が接続される。また、CPU801には、画像読取センサ208の異常発生時に、各種制御信号を出す基板が故障しているか否かの確認を行うためにヒューズ切れがある場合にLowとなるヒューズ入力ポート220が接続される。
【0020】
光学モータ820は、CPU801によって制御され、スキャナユニット202を副走査方向に移動させる。スキャナユニット202は、例えば移動方向である副走査方向に延びるレール、あるいは図5に示されるガイドシャフト250に沿って、光学モータ820により副走査方向に移動する。CPU801は、原稿の画像を読み取る際に、光学モータ820を回転させてスキャナユニット202をシェーディング白板210直下の位置に移動させ、公知の画質調整(シェーディング補正)を行う。
【0021】
その後、スキャナユニット202は、図1の矢印に示す副走査方向に一定速度で移動し、原稿台ガラス209上に載置された原稿の画像を上述した方法で読み取る。画像読取センサ208は、受光した反射光に基づく電気信号をCPU801に入力する。CPU801は、受信した電気信号を画像処理部833から画像ライン353を介して第2コントローラ300に送信する。
【0022】
第2コントローラ300は、CPU901、ROM902、RAM903を備えるコンピュータシステムである。CPU901は、ROM902に格納される制御プログラムを読み出し、RAM903を作業領域に用いて実行することで、画像データの生成処理を行う。CPU801との通信ライン354を介して画像読取制御に関するデータの授受を行う。
【0023】
CPU901は、通信ライン354を介してCPU801から受信した信号と、画像処理部905が画像ライン353を介して受信した電気信号とにより、読み取った原稿の画像を表す画像データを生成する。画像読取部200から受信したデータは画像メモリ906に格納される。また、第2コントローラ300は、操作表示部904を備えている。操作表示部904は、ユーザインタフェースであり、原稿の読み取り開始の指示等がユーザによって行われる。CPU901は、操作表示部904に画面を表示して、ユーザによる指示の入力をサポートする。なお、CPU801及びCPU901を物理的に同一のCPUで構成し、CPU間の通信をタスク間通信によって行う構成であってもよい。
【0024】
<スキャナユニットの駆動構成>
スキャナユニットの駆動構成について図4図5を用いて説明する。図4はスキャナユニット202の位置とHPセンサ213の出力との関係を説明する図である。図5はスキャナユニット202とその移動構成の説明図である。図4に示されるHPセンサエッジ位置は、スキャナユニット202が移動可能な範囲のうちの右端部の位置から左端部の位置へと移動するスキャナユニット202に起因してHPセンサ213の出力値がOFFからONになる位置である。
【0025】
D1は、HPセンサエッジ位置と、スキャナユニット202が移動可能な範囲のうちの右端部の位置との距離である。また、D2はスキャナユニット202が移動可能な範囲のうちの左端の位置とHPセンサエッジ位置との距離である。また、L1は、シェーディング白板210の周囲の範囲を表している。本実施形態では、図4において、スキャナユニット202がHPセンサエッジ位置よりも左側に位置している場合はHPセンサ213がONとなる構成となっている。また、図4において、スキャナユニット202がHPセンサエッジ位置よりも右側に位置している場合はHPセンサ213がOFFとなる構成となっている。
【0026】
図5には、スキャナユニット202及びHPセンサ213に加えて、ガイドシャフト250、スキャナベルト251が示されている。スキャナユニット202は、スキャナベルト251を介して光学モータ820と接続される。光学モータ820を回転させるとスキャナベルト251が動作し、スキャナベルト251と接続したスキャナユニットがガイドシャフト250上を移動する。これによりスキャナユニット202は副走査方向に移動する。
【0027】
電源投入後においては、スキャナユニット202が副走査方向においてどの位置にあるかは不明である。従って、CPU801は、HPセンサ213の出力に基づいてスキャナユニット202をホームポジションまで移動させる(位置合わせ制御を行う)。なお、位置合わせは位置出し、位置決め等と呼ばれる場合もある。位置合わせ制御の詳細は詳述する。
【0028】
<スキャナユニットの位置合わせ制御>
以下、スキャナユニット202の位置合わせ制御について説明する。図6は、スキャナユニット位置出し制御のフローチャートである。利用者が画像読取装置1000を使用するために画像読取装置1000の電源をONにすると、CPU801は、必要な初期設定を実行した後に、光学モータ820によって駆動されるスキャナユニット202の位置合わせを行う。前述したように、電源投入後の時点では、スキャナユニット202が副走査上のどの位置にあるか不明だからである。
【0029】
位置合わせに際し、まず、CPU801は、HPセンサ213の出力を確認する(S101)。HPセンサ213の出力がOFFの場合(S101:N)、CPU801は、図4に示す位置関係からスキャナユニット202はHPセンサエッジ位置より右側にいると判定し、スキャナユニット202を左方向へ移動する(S106)。CPU801は、スキャナユニット202の移動中にHPセンサの出力がONに変化するか否かを監視する(S107)。S107においてHPセンサ213の出力がOFFであると判定された場合(S107:N)、CPU801は、スキャナユニット202が、事前に設定された所定距離であるONエラー距離以上移動したか否かを確認する(S111)。
【0030】
スキャナユニット202がONエラー距離移動していない場合(S111:N)、CPU801は、S107に戻り、再度HPセンサの確認を行う。HPセンサの出力がONにならないままONエラー距離以上移動した場合(S111:Y)、CPU801は、異常が発生したと判断して(S112)位置合わせ制御を終了する。ここで、ONエラー距離とは、図4においてD1で示される、HPセンサエッジ位置から右端部位置までの距離である。D1は、HPセンサ213の出力がOFFである、つまりスキャナユニット202がHPセンサ213よりも右側にある場合に、HPセンサエッジ位置に確実に到達する距離である。画像読取装置1000が正常であれば、スキャナユニット202を図4で左側に少なくともD1移動させることで、スキャナユニット202はHPセンサエッジ位置に到達することが確実となる。
【0031】
従って、スキャナユニット202をD1以上移動させようとして光学モータ820を駆動したにもかかわらずHPセンサの出力がONにならない場合、CPU801は、光学モータ820とHPセンサ213との少なくとも一方に異常が発生していると判定する。次に、スキャナユニット202の移動距離がONエラー距離であるD1に達する前にHPセンサの出力がONになった場合(S107:Y)を説明する。この場合、CPU801は、スキャナユニット202をセンサが切り替わったタイミングから所定距離だけ左へ移動させて停止させる(S108)。
【0032】
S101でHPセンサの出力がONの場合(S101:Y)、または、S108でスキャナユニット202が所定距離移動された場合、図4の位置関係からわかるように、スキャナユニット202はHPセンサエッジ位置より左側に位置する。従って、CPU801は、光学モータ820を制御してスキャナユニット202を図中において右方向へと移動させる(S102)。
【0033】
ここでも、S106と同様に、スキャナユニット202を所定距離移動させることによる異常検知を行う。すなわち、CPU801は、HPセンサ213の出力がOFFであるか否かを判定し(S103)、その出力がONである場合(S103:N)、光学モータ820を駆動し、スキャナユニット202がOFFエラー距離以上移動したか否かを判定する(S109)。HPセンサがONのままでスキャナユニット202がOFFエラー距離以上右に移動完了している場合(S109:Y)、CPU801は、光学モータ820とHPセンサ213との少なくとも一方に異常が発生していると判定する(S110)。これにより、位置合わせ処理が終了する。
【0034】
ここでOFFエラー距離とは、図4においてD2で示される、HPセンサエッジ位置から左端部位置までの距離である。つまり、D2は、HPセンサ213の出力がONである(スキャナユニット202がHPセンサ213よりも左側にある)場合に、HPセンサエッジ位置に到達することが確実となる距離である。画像読取装置1000装置が正常であれば、スキャナユニット202を図中において右側に移動させることで、スキャナユニット202はHPセンサエッジ位置に到達することが確実となる。
【0035】
画像読取装置1000が正常であり、スキャナユニット202がOFFエラー距離以上移動する前にHPセンサがOFFになった場合(S103:Y)、CPU801は、センサが切り替わったタイミングからスキャナユニット202を所定距離移動させる。その結果、スキャナユニット202は、図4のシェーディング白板210直下の位置であるシェーディング位置に停止する(S104)。
【0036】
その後、CPU801は、RAM803内に保持しているスキャナユニット202の現在位置を、ホームポジション位置として更新する(S105)。以上のようにしてCPU801がスキャナユニット202の現在位置を把握することで、位置合わせ制御が終了する。
【0037】
<位置合わせ異常時の故障箇所特定>
画像読取装置1000の位置合わせ異常時の制御について、図7図10を参照して説明する。図7は故障箇所特定制御であるHPエラー診断処理のフローチャート、図8はシェーディング白板周辺の読取画像の説明図、図9はシェーディング白板周辺の読取画像の輝度を表すグラフ、図10は故障箇所判定後の操作表示部の表示の説明図である。
【0038】
CPU801は、HPエラー診断処理において、位置合わせ制御で異常が発生した場合、故障した箇所を判定するために、HPセンサ213や光学モータ820の動作信号を出力する電気基板の故障確認を行う(S201)。図5のフローチャートでは、S110及びS112において、位置合わせ制御での異常が発生するので、S201が実行される。
【0039】
この例では、電気基板の故障確認の一例として、電気基板上の回路に接続されたヒューズの状況を確認することで基板の故障確認を行うものとする。本実施形態では、CPU801は、電気基板のヒューズ切れがある場合にはLow、ヒューズ切れがない場合にはHighとなるように構成されたヒューズ入力ポート220に接続されている。CPU801は、その出力を参照することで基板の故障確認を行う。CPU801は、S201において、ヒューズ入力ポート220の出力がLowであるか否かを判定し、Lowである場合には(S201:N)電気基板が故障していると判定する(S210)。
【0040】
ヒューズ入力ポート220の出力がHighであって基板に故障がないと判定される場合(S201:Y)、CPU801は、画像を読み取る準備としてスキャナユニット202内の画像読取センサ208をONにする(S202)。その後、CPU801は、LED203を点灯させる(S203)。HPセンサ213の出力がONである場合は(S204:Y)、CPU801は、図4における右方向へとスキャナユニット202が移動するように光学モータ820を駆動させる(S205)。一方、HPセンサ213の出力がOFFである場合は(S204:N)、CPU801は、図4における左方向へとスキャナユニット202が移動するように光学モータ820を駆動させる(S206)。
【0041】
そして、CPU801は、スキャナユニット202によって取得された画像において画像変化があるか否かを判定する(S207)。
【0042】
図4のL1(シェーディング白板周辺)の範囲L1の画像は、正常時においては図8のような画像となる。図8では、流し読みガラス201の1つの頂点を原点とし、横軸は原点からの副走査方向の距離、縦軸は原点からの主走査方向の距離を表す。また、原稿の主走査方向における中心位置を図中において「M」として示している。
【0043】
図8には、シェーディング白板210、流し読みガラス201、及び原稿台ガラス209などの、白に近い色として読み取られる輝度値の高い領域が出現している。また、図8には、抑え部材等のその他の部材による領域などの黒に近い色として読み取られる輝度値の低い領域も出現している。なお、本実施形態では、画像読取センサ208では読み取られた画像の輝度の値を用いて異常の原因を判定する処理について説明するが、輝度に代えて色度やその他の物性値を検出することで異常の原因を判定することもできる。
【0044】
取得した画像の輝度値に対して、CPU801は、輝度値がある値以上であるか否かを判定する。図9において、横軸は副走査位置、縦軸は画像データの輝度を示す。図示されるように、本実施形態では、閾値Thを設定し、輝度値が閾値取得した画像について主走査中心位置Mの輝度値が図中の横軸方向、つまり副走査方向において閾値Th以上から閾値Th未満へと変化している場合に、画像変化ありと判断する。画像変化ありということは、スキャナユニット202が移動していることを意味する。従って、CPU801は、光学モータ820やその駆動を伝えるスキャナベルト251等が正常に動作していると判定する。一方、上述のような輝度値に閾値Thを超える変化が発生しておらず、画像変化がないと判定される場合には、スキャナユニット202はその位置が移動しておらず、光学モータ820やその駆動を伝えるスキャナベルト251等が正常動作していないと判定される。
【0045】
図7に戻り、S207において画像変化ありの場合(S207:Y)、CPU801はスキャナユニット202が正常に移動していると判定する。そして、CPU801は、光学モータ820やその駆動を伝えるスキャナベルト251等の駆動部材の故障ではなく、HPセンサ213の故障と判定する(S209)。先に述べたように光学モータ820が動きスキャナユニット202が正常に移動していれば図8に示すような画像が取得でき、その主走査方向中心位置Mの輝度について図9のように変化がでるためである。
【0046】
S207において画像変化がない場合(S207:N)、CPU801は、取得した画像の主走査中心位置Mの輝度値が副走査方向において閾値Th以上から閾値Th未満への変化がない状態が所定時間経過したかを判定する。所定時間経過していない場合(S208:N)、CPU801は、再度S207を実行する。所定時間経過した場合(S208:Y)、CPU801は、スキャナユニット202が移動していないことが原因となって画像変化がないものと判定する。その結果、CPU801は、光学モータ820及びその駆動を伝える駆動部材の故障と判定する(S210)。CPU801は、故障箇所を判定した後、図10に示されるように、故障したパーツを示す文言を操作表示部904に表示し(S212)、診断を終了する。この例では、図中の操作表示部904に、「異常を検出したため停止しました」「担当サービスに下記コードを連絡して下さい。E001」、「故障箇所:HPセンサ」と表示される。
【0047】
以上の処理により、利用者は、コールセンターへ電話連絡する際に、操作表示部904の表示から、故障パーツを伝えることで故障箇所がどこであるかを伝えることができる。即ち、画像読取装置における異常の原因を特定することができる。従って、コールセンターでは、故障箇所を特定したうえで故障対応を行うことができ、対応の迅速化を達成することができる。また、サービスマンが修理時に故障が発生した画像読取装置1000に到達した場合も、操作表示部904の表示から故障パーツが一目でわかるので修理に要する手間や時間を短縮することができる。
【0048】
第2実施形態
以下、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態における画像読取装置1000構成や機能ブロック図及びスキャナユニットの駆動構成、位置合わせ制御等は第1実施形態と同様である。
【0049】
<位置合わせ異常時の故障箇所特定>
第2実施形態における画像読取装置1000の位置合わせ異常時の制御について説明する。図11は、位置合わせ異常時の制御を表すフローチャートである。位置合わせ制御で異常が発生した場合、CPU801は、故障した箇所を判定するために、CPU801自体が配置されてHPセンサ213や光学モータ820の動作信号を出力する電気基板が故障しているかを確認する(S301)。基板故障ありの場合(S301:Y)における故障箇所判定は、第1実施形態と同様である。
【0050】
一方、基板故障がない場合(S301:N)、CPU801は、開閉センサ211を参照して原稿台カバー100が開いているか否かの判定を行う(S302)。原稿台カバー100が開いている場合(S302:N)、CPU801は、光学モータ820の駆動を開始する(S303)。次に、CPU801は、副走査サイズセンサ212の出力値に変化があるかの監視を開始する(S304)。副走査サイズセンサ212は、その上部にスキャナユニット202がある場合には、スキャナユニット202からの反射光を検出するのでONを出力する。一方、その上部にスキャナユニット202がない場合には、スキャナユニット202からの反射光は検出されないのでOFFを出力する。このことから、CPU801は、副走査サイズセンサ212の出力値に変化がない場合(S304:N)、スキャナユニット202が所定距離を移動するまでに光学モータ820が駆動されたかを判定する(S307)。所定距離を移動するまでに光学モータ820が駆動されていない場合(S307:N)には、再度S304を実行する。
【0051】
スキャナユニット202が所定距離移動完了する前に副走査サイズセンサ212の出力がOFFからONになった場合(S304:Y)、CPU801は、スキャナユニット202が正常に移動していると判定する。その後、CPU801は、光学モータ820及びギヤやプーリといった駆動部材には異常がないと判定する。その結果、CPU801は、光学モータ820の停止処理を実行し(S305)、HPセンサ故障と判定する(S306)。
【0052】
次に、副走査サイズセンサ212の出力値に変化がなく(S304:N)、かつ、S307においてスキャナユニット202が所定距離移動するまでに光学モータ820が駆動された場合(S307:Y)を説明する。この場合、CPU801は、スキャナユニット202が移動していないと判定する。その結果、CPU801は、光学モータ820の停止処理を実行し(S308)、光学モータ820及びスキャナベルト251などの駆動部材に故障があると判定する(S309)。
【0053】
なお、S302において原稿台カバー100が閉じている場合(S302:Y)、その後の故障箇所を判定するまでの処理(S310~S319)は、図7のS202~S211の処理と同様であるので説明を省略する。CPU801は、故障箇所を判定した後、図10に示されるように、故障したパーツを示す文言を操作表示部904に表示し(S320)、診断を終了する。
【0054】
以上の処理により、原稿台カバー100が開いている状態であっても、利用者に対してまぶしさを感じさせることなく故障箇所の判定を行うことが可能である。なおかつ、利用者がコールセンターへ電話連絡する際や、サービスマンが修理を行う際に、操作表示部904の表示により故障パーツがどこであるかを伝えることができるので、故障箇所を特定するための手間や時間を短縮することができる。
【0055】
このように、本実施形態における画像読取部200では、位置合わせ異常の発生時に、異常の原因を示す情報を取得して操作表示部904に表示することで、サービスマンによる異常対応の時間を短縮でき、利用者が装置を使えない時間を低減できる。
【0056】
なお、第1実施形態及び第2実施形態では、スキャナユニット202を初期位置に合わせるための位置合わせ処理を説明した。しかし、本発明は、初期位置に限らず、画像を読み取りながらスキャナユニット202を移動させることでスキャナユニット202を任意の位置に合わせるための処理にも適用可能である。また、異常の原因を判定するために画像データの輝度値が用いられているが、これに代えて画像データの任意の値、例えば色度等の任意の値やパラメータを用いることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11