(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】表面加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/02 20060101AFI20231225BHJP
B24D 11/00 20060101ALI20231225BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231225BHJP
B24B 55/02 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
B24B7/02
B24D11/00 A
H01L21/304 621C
H01L21/304 631
H01L21/304 622F
B24B55/02 B
(21)【出願番号】P 2019206411
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】本田 敏文
(72)【発明者】
【氏名】草野 鉄也
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-285964(JP,A)
【文献】特開2006-272546(JP,A)
【文献】特開平03-178776(JP,A)
【文献】特開2008-290190(JP,A)
【文献】特開2017-132011(JP,A)
【文献】米国特許第06048257(US,A)
【文献】特開2011-240470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B5/00-7/30
B24B55/02
B24D3/00-99/00
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するように構成された第1の保持面を含むワーク保持具と、
前記ワーク保持具に保持されているワークの表面を研削又は研磨するように構成された平面状の砥石工具と、
前記第1の保持面と対面すると共に前記砥石工具を保持するように構成された第2の保持面を含む工具保持具と、
前記砥石工具が前記工具保持具に対して静止した状態において、静止している状態の前記工具保持具の前記第2の保持面に沿って
前記ワーク保持具を往復移動させるように構成された駆動機構とを備え
、
前記砥石工具は、
平板状の基材と、
水平方向に接触せず且つ鉛直方向に重なり合うことなく、前記基材の表面上に配置された複数の砥粒と、
前記複数の砥粒を前記基材に対して固着させる結合剤とを含む、表面加工装置。
【請求項2】
ワークを保持するように構成された第1の保持面を含むワーク保持具と、
前記ワーク保持具に保持されているワークの表面を研削又は研磨するように構成された平面状の砥石工具と、
前記第1の保持面と対面すると共に前記砥石工具を保持するように構成された第2の保持面を含む工具保持具と、
前記砥石工具が前記工具保持具に対して静止した状態において、静止している状態の前記工具保持具の前記第2の保持面に沿って前記ワーク保持具を往復移動させるように構成された駆動機構とを備え、
前記砥石工具は、
可撓性を有するフィルム状の基材と、
水平方向に接触せず且つ鉛直方向に重なり合うことなく、前記基材の表面上
に配置された複数の砥粒と、
前記複数の砥粒を前記基材に対して固着させる結合剤とを含む、
表面加工装置。
【請求項3】
前記砥石工具を所定の方向に沿って搬送するように構成された搬送機構をさらに備える、請求項
2に記載の装置。
【請求項4】
前記ワーク保持具に保持されているワークに対して液体をミスト状に噴霧するように構成された噴霧機構をさらに備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転砥石を研削盤に取り付けて使用する際には、一般に、回転砥石でワークを加工する前に、ツルーイングやドレッシングといった事前調整作業が行われる。ツルーイングとは、研削盤のスピンドルの中心軸に回転砥石の中心軸を一致させて、回転砥石の偏心を除去する作業である(特許文献1参照)。ドレッシングとは、回転砥石の周方向において、砥粒の突出量や形状を整えて、回転砥石の切れ味を向上させる作業である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-195862
【文献】特開2001-071266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
事前調整作業には相応の時間を要することがあった。特に、回転砥石によって微少量を加工する場合には、事前調整作業が長時間にわたる場合があった。また、回転砥石は、ワークの加工に用いられるにつれて径が小さくなる。そのため、ワークの表面に対する回転砥石の位置調整作業に時間を要することがあった。したがって、これらの作業が、ワークの加工によって得られる加工品の生産性に影響を与えていた。
【0005】
そこで、本開示は、ワークの加工を効率的に行うことが可能な表面加工装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
表面加工装置の一例は、ワークを保持するように構成された第1の保持面を含むワーク保持具と、ワーク保持具に保持されているワークの表面を研削又は研磨するように構成された平面状の砥石工具とを備えていてもよい。表面加工装置の一例は、第1の保持面と対面すると共に砥石工具を保持するように構成された第2の保持面を含む工具保持具と、ワーク保持具及び工具保持具の少なくとも一方を、第1の保持面又は第2の保持面に沿って移動させるように構成された駆動機構とをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る表面加工装置によれば、ワークの加工を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、表面加工装置の一例を概略的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、ワーク保持具及び工具保持具の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、砥石工具の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、工具保持機構の他の例を概略的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の工具保持機構におけるチャックの主面の姿勢を調整する方法の例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図5の工具保持機構におけるチャックの主面の姿勢を調整する方法の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
[表面加工装置の構成]
図1~
図4を参照して、表面加工装置1について説明する。
図1及び
図2に示されるように、表面加工装置1は、加工対象であるワークWを加工するように構成されている。ワークWは、例えば、シート状の母材(金属薄板など)の打ち抜きに用いられる金型部品であってもよいし、半導体基板、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。ワークWの形状は、例えば、直方体形状、円柱形状、多角柱形状、平板状などであってもよい。
【0011】
表面加工装置1は、ワーク保持機構10と、工具保持機構20と、搬送機構30と、噴霧機構40と、砥石工具50と、コントローラCtrとを備える。
【0012】
ワーク保持機構10は、ベース11と、ワーク保持具12と、駆動機構13と、ポンプ14とを含む。ベース11は、ワーク保持具12を下側から支持するように構成されている。ワーク保持具12は、ベース11上を水平面に沿って移動可能となるようにベース11に取り付けられている。
【0013】
ワーク保持具12は、
図3に示されるように、収容本体12aと、チャック12bとを含む。収容本体12aは、チャック12bを内部に収容可能に構成されている。収容本体12aは、例えば、有底筒状を呈しており、上方に向けて開放された開口を含んでいてもよい。チャック12bの開口は、チャック12bの外形に対応した形状であってもよく、例えば上方から見て四角形状を呈していてもよい。
【0014】
図3に示されるように、収容本体12aの底面には、少なくとも一つの突出部12cが配置されていてもよい。突出部12cは、収容本体12a内にチャック12bが収容された状態でチャック12bの背面S2と当接し、チャック12bを支持するように構成されていてもよい。突出部12cの数、配置、形状等は、収容本体12aの底面における気体の流動の妨げにならない限り、特に限定されない。
【0015】
チャック12bは、
図1及び
図2に示されるように、主面S1(第1の保持面)においてワークWを保持するように構成されている。チャック12bには、主面S1から背面S2にかけて上下方向に沿って延びる複数の細孔が設けられている。チャック12bは、多孔質体であってもよい。チャック12bは、高剛性の材料で構成されていてもよく、例えば、アルミナ等のセラミックスで構成されていてもよい。
【0016】
駆動機構13は、
図1に示されるように、コントローラCtrからの指示に基づいて、ワーク保持具12をベース11上において移動させるように構成されている。駆動機構13は、例えば、リニアアクチュエータであってもよい。
【0017】
ポンプ14は、収容本体12aの底面と、配管等によって流体的に接続されている。ポンプ14は、収容本体12aの底面の複数箇所と流体的に接続されていてもよい。ポンプ14は、コントローラCtrからの指示に基づいて、収容本体12aの内部から気体を吸引するように構成されている。そのため、ポンプ14が動作すると、チャック12bの細孔を通じて主面S1の周囲の空気が吸引され、主面S1の近傍が負圧となる。したがって、主面S1にワークWが載置された状態でポンプ14が動作すると、ワークWが主面S1に対して吸着される。
【0018】
工具保持機構20は、
図1及び
図2に示されるように、ベース21と、工具保持具22と、駆動機構23と、ポンプ24とを含む。ベース21は、工具保持具22を支持するように構成されている。工具保持具22は、ベース21上を鉛直方向に沿って移動可能となるようにベース21に取り付けられている。
【0019】
工具保持具22は、
図3に示されるように、収容本体22aと、チャック22bとを含む。収容本体22aは、チャック22bを内部に収容可能に構成されている。収容本体22aは、例えば、有底筒状を呈しており、下方に向けて開放された開口を含んでいてもよい。チャック22bの開口は、チャック22bの外形に対応した形状であってもよく、例えば下方から見て四角形状を呈していてもよい。
【0020】
図3に示されるように、収容本体22aの底面には、少なくとも一つの突出部22cが配置されていてもよい。突出部22cは、収容本体22a内にチャック22bが収容された状態でチャック22bの背面S4と当接し、チャック22bを支持するように構成されていてもよい。突出部22cの数、配置、形状等は、収容本体22aの底面における気体の流動の妨げにならない限り、特に限定されない。
【0021】
チャック22bは、
図1及び
図2に示されるように、主面S3(第2の保持面)において砥石工具50を保持するように構成されている。チャック22bが収容本体22aに収容されている状態で、チャック22bの主面S3は、チャック12bの主面S1と対面する。チャック22bには、主面S3から背面S4にかけて上下方向に沿って延びる複数の細孔が設けられている。チャック22bは、多孔質体であってもよい。チャック22bは、高剛性の材料で構成されていてもよく、例えば、アルミナ等のセラミックスで構成されていてもよい。
【0022】
駆動機構23は、
図1に示されるように、コントローラCtrからの指示に基づいて、工具保持具22を昇降させるように構成されている。そのため、工具保持具22は、ワーク保持具12に対して近接または離間する。駆動機構23は、例えば、リニアアクチュエータであってもよい。
【0023】
ポンプ24は、収容本体22aの底面と、配管等によって流体的に接続されている。ポンプ24は、収容本体22aの底面の複数箇所と流体的に接続されていてもよい。ポンプ24は、コントローラCtrからの指示に基づいて、収容本体22aの内部から気体を吸引するように構成されている。そのため、ポンプ24が動作すると、チャック22bの細孔を通じて主面S3の周囲の空気が吸引され、主面S3の近傍が負圧となる。したがって、主面S3に砥石工具50が当接した状態でポンプ24が動作すると、砥石工具50が主面S3に対して吸着される。
【0024】
搬送機構30は、砥石工具50が帯状を呈するフィルムである場合に、砥石工具50を所定の方向に搬送するように構成されている。搬送機構30は、駆動ローラ31と、従動ローラ32とを含む。駆動ローラ31は、コントローラCtrからの指示に基づいて回転し、砥石工具50を巻き取るように構成されている。従動ローラ32は、自身に渦巻状に巻回された砥石工具50を回転自在に保持するように構成されている。そのため、駆動ローラ31に砥石工具50が巻き取られると、それにつれて従動ローラ32から砥石工具50が繰り出される。
【0025】
噴霧機構40は、液源41と、ポンプ42と、ノズル43とを含む。液源41は、液体Lの供給源として構成されている。液体Lは、ノズル43から吐出されたときに気化しやすい性質を有していてもよい。液体Lは、例えば、水、アルコール、溶剤などであってもよい。溶剤は、例えば、日本ゼオン株式会社製ゼオローラ(登録商標)であってもよい。
【0026】
ポンプ42は、コントローラCtrからの指示に基づき、液源41から液体Lを吸引し、配管を介してノズル43に液体Lを送り出すように構成されている。ノズル43は、吐出口がチャック12bの主面S1に向かうようにチャック12bの上方に配置されている。ノズル43は、ポンプ42から送り出された液体Lを、ミスト状に噴霧するように構成されている。
【0027】
砥石工具50は、ワークWの表面と接触して当該表面を研削又は研磨するように構成されている。砥石工具50は、
図4に示されるように、基材51と、結合剤52と、複数の砥粒53とを含む。基材51は、全体的に平面状に拡がる部材である。基材51は、可撓性を有するフィルムであってもよいし、平板であってもよい。基材51が平板状である場合、基材51は、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレス鋼(SUS)などで構成されていてもよい。
【0028】
結合剤52は、複数の砥粒53を基材51に固着させるように構成されている。結合剤52は、基材51の材質に応じて適宜選択されてもよい。基材51がフィルム状である場合には、結合剤52は、例えば、ポリイミド等の高耐熱性を有する高分子材料で構成されていてもよい。基材51が平板状である場合には、結合剤52は、例えば、ビトリファイドボンドで構成されていてもよい。
【0029】
複数の砥粒53は、互いに重なり合うことなく基材51の表面上に配置されている。砥粒53の材質、平均粒径、密度等は、ワークWの材質に応じて適宜選択されてもよい。基材51の表面上に配置される全ての砥粒53の粒径は、所定の基準値と略一致していてもよい。この場合、基材51上における複数の砥粒53の高さが略揃うので、ワークWをより精密に加工することが可能となる。ここでいう「略一致」とは、全ての砥粒53の粒径が当該基準値の±20%以内に含まれている場合をいうものであってもよいし、全ての砥粒53の粒径が当該基準値の±10%以内に含まれている場合をいうものであってもよい。
【0030】
[表面加工装置の動作]
続いて、表面加工装置1の動作について説明する。まず、ワークWをチャック12bの主面S1に載置する。この状態で、コントローラCtrがポンプ14を動作させる。これにより、収容本体12aの内部空間及びチャック12bの細孔を通じて、主面S1側の空気をポンプ14が吸引するので、主面S1上のワークWがチャック12bに吸着保持される。
【0031】
次に、フィルム状の砥石工具50を用いる場合には、
図1に示されるように、基材51がチャック22bの主面S3と当接し且つ砥粒53が下方を向いた状態となるように、砥石工具50を駆動ローラ31及び従動ローラ32の間に架け渡す。この状態で、コントローラCtrがポンプ24を動作させる。これにより、収容本体22aの内部空間及びチャック22bの細孔を通じて、主面S3側の空気をポンプ24が吸引するので、主面S3に当接する砥石工具50がチャック22bに吸着保持される。
【0032】
次に、コントローラCtrが駆動機構23を動作させる。これにより、工具保持具22が、ワーク保持具12に近づくように降下する。ワークWの加工量に応じた高さ位置に砥石工具50の砥粒53の先端が位置すると、コントローラCtrは、駆動機構23を停止させる。
【0033】
次に、コントローラCtrが駆動機構13を動作させる。これにより、ワーク保持具12がベース11上を移動する。ワーク保持具12のベース11に対する速度は、例えば数m/分~十m/分程度であってもよい。この際、ワークWの表面のうち砥粒53に接触した領域が、砥石工具50によって研削又は研磨される。その後、ワークWの表面が全体的に加工されると、コントローラCtrは駆動機構13を停止させる。
【0034】
砥石工具50のうちワークWと接触した使用済み領域の切れ味が低下した場合には、コントローラCtrが駆動ローラ31を動作させてもよい。この場合、砥石工具50が所定長さだけ駆動ローラ31に巻き取られる。そのため、チャック22bの主面S3には、砥石工具50のうち未使用領域が配置される。したがって、砥石工具50の使用済み領域を未使用領域へと簡単に入れ替えることが可能となる。
【0035】
ワークWの加工中において、コントローラCtrは、ポンプ42を動作させてもよい。この場合、加工中のワークWの表面にミスト状の液体Lが噴霧される。噴霧されたミストは、ワークWの周囲においてただちに蒸発して、気化熱によりワークWの熱を奪う。そのため、ワークW及びその周囲をほとんど濡らすことなく、ワークWの発熱を抑制することが可能となる。
【0036】
[作用]
以上の例によれば、回転しない平面状の砥石工具50がワークWの加工のために用いられるので、ツルーイングやドレッシングといった事前調整作業が不要となる。また、工具保持具22の主面S3を基準として砥石工具50の高さが略一定となるので、ワークWの表面に対する砥石工具50の位置合わせが容易となる。そのため、ワークWの加工前における砥石工具50の準備時間が大幅に短縮化される。したがって、ワークWの加工を効率的に行うことが可能となる。
【0037】
以上の例によれば、回転しない平面状の砥石工具50がワークWの加工のために用いられるので、砥石工具50に対するワークWの相対速度が比較的小さくても、ワークWを加工できる。そのため、砥石工具50とワークWとの間に熱が生じ難くなるので、ワークWを冷却するための冷却液の供給装置が不要となる。したがって、表面加工装置1の小型化及び簡素化を図ることが可能となる。
【0038】
以上の例において、砥石工具50が可撓性を有するフィルム状の基材51を含む場合、基材51がワークWの表面に沿って追従して変形しやすくなる。そのため、当該砥石工具50を用いてワークWを加工することにより、ワークWの表面を全体的に均一に加工することが可能となる。一方、砥石工具50が平板状の基材51を含む場合、基材51が変形し難い。そのため、当該砥石工具50を用いてワークWを加工することにより、平面度の高いワークWの表面を得ることが可能となる。
【0039】
以上の例において、砥石工具50が可撓性を有するフィルム状の基材51を含み、且つ、ミクロンオーダーのサイズの多数の孔が設けられている多孔質体でチャック22bが構成されている場合には、砥石工具50がチャック22bに吸着されたときに砥石工具50のうちワークWと対面する表面が変形難い。そのため、ワークWをより精度よく加工することが可能となる。
【0040】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0041】
(1)ワークWが砥石工具50に対して相対移動するように、ワーク保持具12及び工具保持具22の少なくとも一方を駆動機構13又は駆動機構23によって主面S1又は主面S3(例えば、水平面)に沿って移動させてもよい。
【0042】
(2)平板状の基材51を含む砥石工具50の切れ味が低下した場合、使用済みの砥石工具50をチャック22bから取り外して、新品の砥石工具50をチャック22bに取り付けることにより、砥石工具50の交換を行ってもよい。
【0043】
(3)砥石工具50が可撓性を有するフィルム状の基材51を含む場合、搬送機構30による砥石工具50の搬送方向に交差するチャック22bの角部が面取り加工されていてもよい。この場合、砥石工具50がチャック22bの角部に引っかかり難くなるので、砥石工具50の破損等を防止しつつ、砥石工具50をスムーズに搬送することが可能となる。面取り加工としては、C面取り加工(角部がテーパ状を呈するように角部を削る加工法)であってもよいし、R面取り加工(角部が丸みを帯びるように(湾曲面状を呈するように)角部を削る加工法)であってもよい。
【0044】
(4)チャック22bの主面S3は、チャック12bの主面S1に対して略並行となるように、すなわちワーク保持具12の進行方向に対して略並行となるように、拡がっていてもよい。ここで、
図5~
図7を参照して、チャック22bの主面S3がチャック12bの主面S1に対して略並行となるように工具保持具22を調整するための、工具保持機構20の他の例を示している。工具保持機構20の他の例は、ベース21の構造が上記の例と相違している。
【0045】
ベース21は、
図5~
図7に示されるように、第1のベース部21aと、第2のベース部21bと、第3のベース部21cとを含む。第1のベース部21aは、図示しない固定壁に取り付けられており、第2のベース部21bを支持するように構成されている。なお、
図5~
図7において、鉛直方向に延びる軸を「Z軸」とし、第1のベース部21aと第2のベース部21bとが並び且つ「Z軸」に直交する方向に延びる軸をX軸とし、X軸及びZ軸の両者に直交する方向に延びる軸を「Y軸」としている。
【0046】
第2のベース部21bは、第1のベース部21aの主面と重なり合うように配置されており、第1のベース部21aに対してボルトB1~B3によって締結されている。ボルトB1は、第2のベース部21bの上部に配置されていてもよい。ボルトB2は、第2のベース部21bの一方の側縁の近傍に配置されていてもよい。ボルトB3は、第2のベース部21bの他方の側縁の近傍に配置されていてもよい。第2のベース部21bには、第1のベース部21aに対する第2のベース部21bの姿勢を調整するための調整ボルトB4,B5が取り付けられている。調整ボルトB4は、第2のベース部21bの上部に配置されていてもよい。調整ボルトB5は、第2のベース部21bの下部に配置されていてもよい。
【0047】
第3のベース部21cは、第2のベース部21bの主面と重なり合うように配置されており、第2のベース部21bに対してボルトB6,B7によって締結されている。ボルトB6は、第3のベース部21cの一方の側縁の近傍に配置されていてもよい。ボルトB7は、第3のベース部21cの他方の側縁の近傍に配置されていてもよい。これらのボルトB6,B7は、第2のベース部21bに対する第3のベース部21cの姿勢を調整するための調整ボルトとしても構成されている。第3のベース部21cの下端部には、工具保持具22が固定されている。
【0048】
続いて、
図6を参照して、Y軸に関して時計回りの方向に主面S3が傾いている場合に、Y軸周りにおいて工具保持具22の姿勢(チャック22bの主面S3の向き)を調整する方法について説明する。まず、ボルトB2,B3を緩めた後に仮締めして、第2のベース部21bが第1のベース部21aに対してボルトB2,B3によって仮止めされた状態とする。次に、ボルトB1を緩める。次に、
図6(a)に示されるように、調整ボルトB4が第2のベース部21bから第1のベース部21aに向けて突出するように調整ボルトB4を締める。これにより、
図6(b)に示されるように、第2のベース部21bは、第1のベース部21aに対して、Y軸に関して反時計回りの方向に回転する。主面S3がチャック12bの主面S1に対して略並行となった時点で、調整ボルトB4の締め付けを停止する。その後、ボルトB1を締め付けてからボルトB2,B3を締め付けて、第2のベース部21bを第1のベース部21aに対して固定する。
【0049】
一方、図示はしていないが、Y軸に関して反時計回りの方向に主面S3が傾いている場合に、Y軸周りにおいて工具保持具22の姿勢(チャック22bの主面S3の向き)を調整する方法について説明する。まず、ボルトB1を緩めた後に仮締めして、第2のベース部21bが第1のベース部21aに対してボルトB1によって仮止めされた状態とする。次に、ボルトB2,B3を緩める。次に、調整ボルトB5が第2のベース部21bから第1のベース部21aに向けて突出するように調整ボルトB5を締める。これにより、第2のベース部21bは、第1のベース部21aに対して、Y軸に関して時計回りの方向に回転する。主面S3がチャック12bの主面S1に対して略並行となった時点で、調整ボルトB5の締め付けを停止する。その後、ボルトB2,B3を締め付けてからボルトB1を締め付けて、第2のベース部21bを第1のベース部21aに対して固定する。
【0050】
続いて、
図7を参照して、X軸に関して反時計回りの方向に主面S3が傾いている場合に、X軸周りにおいて工具保持具22の姿勢(チャック22bの主面S3の向き)を調整する方法について説明する。まず、ボルトB6を多少緩めた後に仮締めして、第3のベース部21cが第2のベース部21bに対してボルトB6によって仮止めされた状態とする。次に、ボルトB7を緩める。次に、
図7(a)に示されるように、ボルトB7側の第3のベース部21cをハンマー等で叩く。これにより、
図7(b)に示されるように、第3のベース部21cは、第2のベース部21bに対して、X軸に関して時計回りの方向に回転する。主面S3がチャック12bの主面S1に対して略並行となった時点で、ボルトB7を仮締めする。その後、ボルトB6を締め付けてからボルトB7を締め付けて、第3のベース部21cを第2のベース部21bに対して固定する。
【0051】
一方、図示はしていないが、X軸に関して時計回りの方向に主面S3が傾いている場合に、X軸周りにおいて工具保持具22の姿勢(チャック22bの主面S3の向き)を調整する方法について説明する。まず、ボルトB7を多少緩めた後に仮締めして、第3のベース部21cが第2のベース部21bに対してボルトB7によって仮止めされた状態とする。次に、ボルトB6を緩める。次に、ボルトB6側の第3のベース部21cをハンマー等で叩く。これにより、第3のベース部21cは、第2のベース部21bに対して、X軸に関して反時計回りの方向に回転する。主面S3がチャック12bの主面S1に対して略並行となった時点で、ボルトB6を仮締めする。その後、ボルトB7を締め付けてからボルトB6を締め付けて、第3のベース部21cを第2のベース部21bに対して固定する。
【0052】
なお、3つ以上のボルトを用いてY軸周りにおける工具保持具22の姿勢の調整が行われてもよい。3つ以上のボルトを用いてX軸周りにおける工具保持具22の姿勢の調整が行われてもよい。
【0053】
(5)ワークW及び砥石工具50の位置関係は特に限定されない。例えば、ワークWが砥石工具50の上方に位置した状態で、砥石工具50によりワークWが加工されてもよい。例えば、ワークW及び砥石工具50が水平方向に沿って並んだ状態で、砥石工具50によりワークWが加工されてもよい。
【0054】
[他の例]
例1.表面加工装置(1)の一例は、ワーク(W)を保持するように構成された第1の保持面(S1)を含むワーク保持具(12)と、ワーク保持具(12)に保持されているワーク(W)の表面を研削又は研磨するように構成された平面状の砥石工具(50)とを備えていてもよい。表面加工装置(1)の一例は、第1の保持面(S1)と対面すると共に砥石工具(50)を保持するように構成された第2の保持面(S3)を含む工具保持具(22)と、ワーク保持具(12)及び工具保持具(22)の少なくとも一方を、第1の保持面(S1)又は第2の保持面(S2)に沿って移動させるように構成された駆動機構(13)とをさらに備えていてもよい。この場合、回転しない平面状の砥石工具が用いられるので、ツルーイングやドレッシングといった事前調整作業が不要となる。また、工具保持具の第2の保持面を基準として砥石工具の高さが略一定となるので、ワークの表面に対する砥石工具の位置合わせが容易となる。そのため、ワークの加工前における砥石工具の準備時間が大幅に短縮化される。したがって、ワークの加工を効率的に行うことが可能となる。加えて、この場合、回転しない平面状の砥石工具が用いられるので、砥石工具に対するワークの相対速度が比較的小さくても、ワークを加工できる。そのため、砥石工具とワークとの間に熱が生じ難くなるので、ワークを冷却するための冷却液の供給装置が不要となる。したがって、表面加工装置の小型化及び簡素化を図ることが可能となる。
【0055】
例2.例1の装置(1)において、砥石工具(50)は、平板状の基材(51)と、基材(51)の表面上に重なり合うことなく配置された複数の砥粒(53)と、複数の砥粒(53)を基材(51)に対して固着させる結合剤(52)とを含んでいてもよい。この場合、基材が変形し難いので、当該砥石工具を用いてワークを加工することにより、平面度の高いワークの表面を得ることが可能となる。
【0056】
例3.例1の装置(1)において、砥石工具(50)は、可撓性を有するフィルム状の基材(51)と、基材(51)の表面上に重なり合うことなく配置された複数の砥粒(53)と、複数の砥粒(53)を基材に対して固着させる結合剤(52)とを含んでいてもよい。この場合、基材がワークの表面に沿って追従して変形しやすくなるので、当該砥石工具を用いてワークを加工することにより、ワークの表面を全体的に均一に加工することが可能となる。
【0057】
例4.例3の装置(1)は、砥石工具(50)を所定の方向に沿って搬送するように構成された搬送機構(30)をさらに備えていてもよい。この場合、フィルム状の砥石工具を所定方向に所定長さ搬送することにより、砥石工具の未使用領域が工具保持具に保持される。そのため、砥石工具の使用済み領域を未使用領域へと簡単に入れ替えることが可能となる。
【0058】
例5.例1~例4のいずれかの装置(1)は、ワーク保持具(12)に保持されているワーク(W)に対して液体をミスト状に噴霧するように構成された噴霧機構(40)をさらに備えていてもよい。この場合、噴霧されたミストは、ワークの周囲においてただちに蒸発して、気化熱によりワークの熱を奪う。そのため、ワーク及びその周囲を濡らすことなく、ワークを冷却することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1…表面加工装置、10…ワーク保持機構、12…ワーク保持具、12b…チャック、13…駆動機構、20…工具保持機構、22…工具保持具、22b…チャック、23…駆動機構、30…搬送機構、40…噴霧機構、50…砥石工具、51…基材、52…結合剤、53…砥粒、S1…主面(第1の保持面)、S3…主面(第2の保持面)、W…ワーク。