(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】医用画像診断支援システム及び医用画像処理装置、医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231225BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20231225BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 360F
A61B6/03 360P
(21)【出願番号】P 2019216057
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦詞
(72)【発明者】
【氏名】白旗 崇
(72)【発明者】
【氏名】角村 卓是
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-143777(JP,A)
【文献】特開2016-168120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0036903(US,A1)
【文献】特開2017-064106(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01531425(EP,A2)
【文献】特開2011-120747(JP,A)
【文献】特開2007-029248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14,8/00-8/15,5/055
G06T 1/00-1/40,3/00-5/50,7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の医用画像を撮影する医用画像撮影装置と、前記医用画像を処理する医用画像処理装置を含む医用画像診断支援システムであって、
前記被検体の投影データを取得する投影データ取得部と、
前記投影データに基づいて前記医用画像を再構成する再構成部と、
前記医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データを取得する取得部と、
前記病変候補データに基づいて、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される拡大再構成画像の再構成条件を決定する再構成条件決定部と、
前記再構成条件を用いて前記拡大再構成画像を再構成する拡大再構成部と、
前記拡大再構成画像を表示する表示部を備え
、
前記再構成条件決定部は、前記病変候補データに含まれる前記病変候補の悪性度に基づいて、前記拡大再構成画像の視野を調整することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記再構成条件には、前記拡大再構成画像の視野や、再構成間隔、厚さが含まれることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記表示部が前記拡大再構成画像を表示する表示条件には、ウィンドウ幅とウィンドウレベルが含まれることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記表示条件は、前記病変候補データに含まれる画素値ヒストグラムに基づいて決定されることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記再構成条件決定部は、前記病変候補データに含まれる前記病変候補の大きさに基づいて、前記拡大再構成画像の視野を決定することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記拡大再構成部は、前記拡大再構成画像と異なる断面角度において、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される第二の拡大再構成画像を
生成し、
前記表示部は、前記第二の拡大再構成画像を前記拡大再構成画像とともに表示することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記再構成条件決定部は、前記病変候補データに含まれる前記病変候補の悪性度に基づいて、前記第二の拡大再構成画像の断面角度を決定することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記拡大再構成部は、前記病変候補を含む三次元画像を生成し、
前記表示部は、前記三次元画像を前記拡大再構成画像とともに表示することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項9】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記表示部は、前記病変候補を前記医用画像とともに表示する病変候補表示部を有し、
前記病変候補表示部に表示される病変候補のうちの一つが選択されると、選択された病変候補の拡大再構成画像を表示することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項10】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記病変候補データに基づいて、医用画像を再撮影するための条件である再撮影条件を決定する再撮影条件決定部をさらに備えることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項11】
請求項
10に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記表示部は、前記病変候補を前記医用画像とともに表示する病変候補表示部を有し、
前記再撮影条件決定部は、前記病変候補表示部に表示される病変候補の中から選択された病変候補の病変候補データに基づいて、前記再撮影条件を決定することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項12】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、
前記医用画像撮影装置は、前記再構成部を備え、
前記医用画像処理装置は、前記再構成条件決定部を備え、
前記医用画像撮影装置は、前記再構成された前記医用画像
を前記医用画像処理装置に送信し、
前記医用画像処理装置の前記再構成条件決定部は、受信した前記医用画像から検出された病変候補に基づいて前記再構成条件を決定し、前記再構成条件及び前記再構成条件に基づく再構成の指示を前記医用画像撮影装置に送信し、
前記医用画像撮影装置の前記再構成部は、前記指示を受信すると、前記再構成条件を用いて前記投影データに基づいて第二の再構成画像を生成することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項13】
医用画像を処理する医用画像処理装置であって、
前記医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データを取得する取得部と、
前記病変候補データに基づいて、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される拡大再構成画像の再構成条件を決定する再構成条件決定部と、
前記再構成条件を用いて前記拡大再構成画像を再構成する拡大再構成部と、
前記拡大再構成画像を表示する表示部を備え
、
前記再構成条件決定部は、前記病変候補データに含まれる前記病変候補の悪性度に基づいて、前記拡大再構成画像の視野を調整することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項14】
医用画像を処理する医用画像処理方法であって、
前記医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データを取得する取得ステップと、
前記病変候補データに基づいて、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される拡大再構成画像の再構成条件を決定する再構成条件決定ステップと、
前記再構成条件を用いて前記拡大再構成画像を再構成する拡大再構成ステップと、
前記拡大再構成画像を表示する表示ステップを備え
、
前記再構成条件決定ステップでは、前記病変候補データに含まれる前記病変候補の悪性度に基づいて、前記拡大再構成画像の視野が調整されることを特徴とする医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用画像を撮影する医用画像撮影装置と医用画像を処理する医用画像処理装置を含む医用画像診断支援システム及び医用画像処理装置、医用画像処理方法に関し、特に画像診断支援装置で扱われた医用画像の処理に係る。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置に代表される医用画像撮影装置の高性能化にともなって大量の医用画像が取得されるようになり、画像診断する読影医の負担が増大している。
【0003】
特許文献1には、読影医の負担を軽減するため、コンピュータによって医用画像から病変候補を検出して提示することで画像診断を支援する画像診断支援装置いわゆるCAD(Computer Aided Detection)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、CADによって検出された病変候補の提示に留まっており、病変候補が病変であるか否かといった診断を読影医が確定するのに長時間を要する場合がある。すなわち、病変候補の診断を確定させるには、単純に拡大された医用画像では不十分であって、より詳細なデータ、例えば病変候補に関する拡大再構成画像の作成を読影医が放射線技師に依頼する必要があるので、診断確定に長時間を要する。
【0006】
そこで本発明は、病変候補の診断確定に要する時間を短縮可能な医用画像診断支援システム及び医用画像処理装置、医用画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被検体の医用画像を撮影する医用画像撮影装置と、前記医用画像を処理する医用画像処理装置を含む医用画像診断支援システムであって、前記被検体の投影データを取得する投影データ取得部と、前記投影データに基づいて前記医用画像を再構成する再構成部と、前記医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データを取得する取得部と、前記病変候補データに基づいて、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される拡大再構成画像の再構成条件を決定する再構成条件決定部と、前記再構成条件を用いて前記拡大再構成画像を再構成する拡大再構成部と、前記拡大再構成画像を表示する表示部を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、医用画像を処理する医用画像処理装置であって、前記医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データを取得する取得部と、前記病変候補データに基づいて、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される拡大再構成画像の再構成条件を決定する再構成条件決定部と、前記再構成条件を用いて前記拡大再構成画像を再構成する拡大再構成部と、前記拡大再構成画像を表示する表示部を備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、医用画像を処理する医用画像処理方法であって、前記医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データを取得する取得ステップと、前記病変候補データに基づいて、前記病変候補を含み前記医用画像よりも拡大される拡大再構成画像の再構成条件を決定する再構成条件決定ステップと、前記再構成条件を用いて前記拡大再構成画像を再構成する拡大再構成ステップと、前記拡大再構成画像を表示する表示ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、病変候補の診断確定に要する時間を短縮可能な医用画像診断支援システム及び医用画像処理装置、医用画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の医用画像診断支援システムのハードウェア構成図である。
【
図4】実施例1の処理の流れの一例を示す図である。
【
図5】実施例1の拡大再構成画像の再構成条件の決定処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】病変候補の大きさと画素値について説明する図である。
【
図7】拡大再構成画像の表示画面の一例を示す図である。
【
図8】実施例2の拡大再構成画像の再構成条件の決定処理の流れの一例を示す図である。
【
図9】実施例2の多断面画像の生成処理を補足説明する図である。
【
図11】実施例3の処理の流れの一例を示す図である。
【
図12】実施例3の再撮影条件の決定処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像診断支援システム及び医用画像処理装置、医用画像処理方法の好ましい実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
図1を用いて本実施例の医用画像診断支援システム1のハードウェア構成について説明する。医用画像診断支援システム1は、医用画像処理装置100と医用画像撮影装置109、医用画像データベース110、読影装置111がネットワーク108を介して信号送受可能に接続されて構成される。
【0014】
医用画像処理装置100は、いわゆるコンピュータである。具体的には、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、記憶部103、ネットワークアダプタ104、入力部106、表示部107がバス105によって信号送受可能に接続されて構成される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的または光学的に、有線と無線を問わず、相互にあるいは一方から他方へ信号を受け渡しできる状態である。
【0015】
CPU101は、記憶部103に記憶されるシステムプログラム等を読み出し、各構成要素の動作を制御する装置である。CPU101は、記憶部103に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリ102にロードして実行する。記憶部103は、CPU101が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置や、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に読み書きする装置である。プログラム実行に必要なデータを含む各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワーク108からも送受信される。メモリ102には、CPU101が実行するプログラムや演算処理の途中経過等が記憶される。
【0016】
表示部107は、プログラム実行の結果等が表示される装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。入力部106は、操作者が医用画像処理装置100に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス等である。マウスはトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであっても良い。また表示部107がタッチパネルである場合には、タッチパネルが入力部106としても機能する。ネットワークアダプタ104は、医用画像処理装置100をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク108に接続するためのものである。
【0017】
医用画像撮影装置109は、病変部位等の形態を画像化した断層画像等の医用画像を取得する装置であり、例えばX線CT(Computed Tomography)装置である。医用画像撮影装置109は、投影データ取得部112と再構成部113を備える。投影データ取得部112は被検体を様々な投影角度で撮影した投影データを取得する装置であり、例えばX線源とX線検出器とを被検体の周囲で回転させるスキャナである。再構成部113は投影データに基づいて断層画像を再構成する装置であり、具体的にはいわゆるコンピュータである。投影データ取得部112と再構成部113は、それぞれ 医用画像撮影装置109に備えられたASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いた専用のハードウェアで構成されても良いし、CPUによって実行されるソフトウェアで構成されても良い。なお複数の断層画像が積み上げられることにより、三次元医用画像が作成される。
【0018】
医用画像データベース110は、医用画像撮影装置109によって取得された医用画像を保管するデータベースシステムである。医用画像は、医用画像の撮影条件等が含まれるDICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)タグとともに医用画像データベース110に保管される。
【0019】
読影装置111は、医用画像を読影するためのビューワ機能を備える装置であり、具体的にはいわゆるコンピュータである。読影装置111は医用画像処理装置100と一体であっても良い。
【0020】
医用画像処理装置100は、病変である可能性が高い組織である病変候補を医用画像から検出したり、検出された病変候補の悪性度や、医用画像に含まれる臓器を識別したりするコンピュータである。病変候補の検出プログラムは、AI(Artificial Intelligence)によって構築されてもよく、医用画像と病変との対の集合といった学習データを機械学習する機能を備えていても良い。
【0021】
図2を用いて、医用画像撮影装置109によって取得された医用画像と医用画像処理装置100によって検出された病変候補について説明する。
図2(a)にはX線CT装置によって撮影された医用画像である肺野の断層画像200が、
図2(b)には断層画像200から検出された三つの病変候補201が示される。なお断層画像200はXY面にて再構成され、XY面に直交するZ方向が被検体の体軸方向である。読影医は、
図2(a)の断層画像200を読影してから
図2(b)の病変候補201を参照して断層画像200を再読影したり、
図2(b)の病変候補201を参照しながら読影したりする。いずれにしろ、読影医が断層画像200を読影し、断層画像200や病変候補201に対して診断が下される。
【0022】
図3を用いて本実施例の医用画像処理装置100の機能ブロック図について説明する。なおこれらの機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いた専用のハードウェアで構成されても良いし、CPU101上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では各機能がソフトウェアで構成された場合について説明する。本実施例は、取得部301と再構成条件決定部302と拡大再構成部303を備える。以下、各部について説明する。
【0023】
取得部301は、医用画像処理装置100によって医用画像から検出される病変候補のデータである病変候補データ300を取得する。病変候補データ300には、例えば病変候補の三次元座標、大きさ、画素値、悪性度等が含まれる。
【0024】
再構成条件決定部302は、病変候補データ300に基づいて、病変候補を含み医用画像よりも拡大される拡大再構成画像304の再構成条件を決定する。
【0025】
拡大再構成部303は、再構成条件決定部302によって決定された再構成条件を用いて拡大再構成画像304を再構成する。再構成された拡大再構成画像304は、表示部107に表示される。なお拡大再構成部303は、医用画像処理装置100以外のコンピュータによって構成されても良い。また医用画像撮影装置109が備える再構成部113が拡大再構成を実行しても良い。
【0026】
図4を用いて、本実施例の処理の流れの一例について説明する。
【0027】
(S401)
投影データ取得部112は被検体の投影データを取得する。取得された投影データは、再構成部113に送信される。また医用画像データベース110や記憶部103に投影データが保管されても良い。
【0028】
(S402)
再構成部113はS401で取得された投影データに基づいて、医用画像を再構成する。 再構成部113は、再構成された医用画像を医用画像処理装置100に送信する。また医用画像データベース110や記憶部103に医用画像が保管されても良い。
【0029】
(S403)
医用画像処理装置100のCPU101はS402で再構成された医用画像から病変候補を検出する。次に、CPU101は、検出した病変候補に基づいて病変候補データ300を生成し、メモリ102に格納する。
【0030】
(S404)
取得部301はメモリ102から病変候補データ300を取得する。
【0031】
(S405)
再構成条件決定部302は、S404で取得された病変候補データ300に基づいて、拡大再構成画像の再構成条件を決定する。再構成条件には、拡大再構成画像の視野や再構成間隔、厚さが含まれる。再構成条件決定部302は決定した再構成条件をメモリ102に格納する。
【0032】
図5を用いて、本ステップの処理の流れの一例について説明する。
【0033】
(S501)
再構成条件決定部302は、病変候補データ300に含まれる病変候補の中心座標や大きさ、画素値に関するデータを取得する。
【0034】
図6を用いて、病変候補の大きさと画素値について説明する。
図6(a)は病変候補を含む領域が拡大されたXY面であり、病変候補のXY面での最大径XYmaxが示される。
図6(b)は病変候補を含む領域が拡大されたZX面であり、病変候補のZ方向での最大径Zmaxが示される。
図6(c)は病変候補を含む領域が拡大されたXY面であり、最大径XYmaxを直径とする円600が示される。
図6(d)は、
図6(c)の円600の中の画素値ヒストグラムである。
【0035】
本ステップでは、病変候補の大きさに関するデータとして、例えば病変候補のXY面での最大径XYmaxや病変候補のZ方向での最大径Zmaxが取得される。また病変候補の画素値に関するデータとして、例えば
図6(d)に例示される画素値ヒストグラムから算出される画素値の最頻値や平均値、標準偏差が取得される。
【0036】
(S502)
再構成条件決定部302は、S501で取得された病変候補のXY面での最大径XYmaxに基づいて、拡大再構成画像のXY面での視野FOV(Field Of View)を算出する。視野FOVの算出には例えば次式が用いられる。
【0037】
FOV=XYmax×L … (1)
ここで、Lは事前に設定される倍率であり、例えば2.0が設定される。なおFOVを予め定められた値に固定し、XYmaxの値に応じてLの値が設定されても良い。
【0038】
(S503)
再構成条件決定部302は、S501で取得された病変候補のZ方向での最大径Zmaxに基づいて、拡大再構成画像のZ方向での範囲を算出する。Z方向での範囲の算出には例えば次式が用いられる。
【0039】
PosA=z0-(Zmax×M)/2 … (2)
PosB=z0+(Zmax×M)/2 … (3)
ここで、PosAとPosBはZ方向での開始位置と終了位置、z0は病変候補のZ方向での中心座標、Mは事前に設定される倍率であり、例えば2.0が設定される。なおPosAからPosBまでの範囲を予め定められた値に固定し、Zmaxの値に応じてMの値が設定されても良い。
【0040】
またZ方向での拡大再構成画像の間隔Intを、医用画像が撮影されるときに設定された最小間隔に設定し、拡大再構成画像の厚さThickを次式によって算出しても良い。
【0041】
Thick=k×M×Int … (4)
ここで、kは事前に設定される倍率であり、例えば1.0が設定される。なおThickを予め定められた値に固定しても良い。
【0042】
(S504)
再構成条件決定部302は、S501で取得された病変候補の画素値に基づいて、ウィンドウ幅WW(Window Width)とウィンドウレベルWL(Window Level)を算出する。WWとWLは拡大再構成画像を表示する表示条件に含まれる。WLには、
図6(d)に例示される画素値ヒストグラムから算出される画素値の最頻値や平均値が設定される。またWWの算出には例えば次式が用いられる。
【0043】
WW=range(p×SD≦range)、
p×SD(p×SD>range) … (5)
ここで、rangeはWWの下限値、SDは画素値ヒストグラムから算出される標準偏差、pは事前に設定される係数であり、例えば3.0が設定される。
【0044】
【0045】
(S406)
拡大再構成部303は、S405で決定された再構成条件をメモリ102から取得する。そして、拡大再構成部303は取得した再構成条件に基づいて、拡大再構成画像を再構成する。再構成された拡大再構成画像は、ネットワークアダプタ104及びネットワーク108を介して、医用画像データベース110や読影装置111へ送信されても良い。
【0046】
医用画像撮影装置109によって被検体のボリュームデータが取得されている場合、拡大再構成画像はXY面での画像に限らず、YZ面やZX面での画像または任意の断面角度でのオブリーク画像であっても良い。
【0047】
(S407)
S406で再構成された拡大再構成画像は、表示部107に表示される。
【0048】
図7を用いて、拡大再構成画像の表示例について説明する。
図7(a)は病変候補が検出された医用画像とともに拡大再構成画像が表示される例であり、
図7(b)は病変候補が検出された医用画像とともに拡大再構成画像の多断面画像や三次元画像が表示される例である。
【0049】
図7(a)では、病変候補が検出された医用画像が表示部107の病変候補表示部700に表示され、マウスポインタ701によって各病変候補を選択可能である。病変候補表示部700に表示される病変候補の中から所望の病変候補を操作者がマウスポインタ701を用いて選択すると、選択された病変候補の拡大再構成画像が表示部107の拡大再構成画像表示部702に表示される。操作者の選択に応じて拡大再構成画像が表示されることにより、操作者である読影医が確認したい病変候補の拡大再構成画像だけが表示されるので、病変候補の診断確定に要する時間を短縮できる。
【0050】
また拡大再構成画像が再構成される前、例えば
図4のS405の前に、複数の病変候補が検出され表示部107に表示される医用画像の中から所望の病変候補が選択されても良い。この場合、再構成される拡大再構成画像の量が限定されるので、記憶部103等の使用容量を抑制できる。
【0051】
図7(b)では、病変候補が検出された医用画像が病変候補表示部700に表示され、XY断面画像703、ZX断面画像704、YZ断面画像705といった多断面画像と三次元画像706が病変候補の拡大再構成画像として拡大再構成画像表示部702に表示される。なお三次元画像706の代わりに、任意の断面角度でのオブリーク画像が表示されても良い。多断面画像や三次元画像が表示されることにより、操作者は多角的に病変候補を観察できるので、診断確定に要する時間を短縮できるとともに、読影精度を向上できる。
【0052】
ここで、医用画像処理装置100が拡大再構成部303を備えず、医用画像撮影装置109の再構成部113が拡大再構成を実行する場合について説明する。再構成は処理負荷が大きいため、高いマシンスペックが要求される。このため、医用画像撮影装置109の既存の再構成部113に拡大再構成を実行させることは有効である。
図4に基づいて、前述の医用画像処理装置100が拡大再構成を実行する形態からの変更箇所を以下に説明する。
(S405)
再構成条件決定部302は、S404で取得された病変候補データ300に基づいて、拡大再構成画像の再構成条件を決定する。再構成条件決定部302は、決定した再構成条件を、ネットワーク108を経由して医用画像撮影装置109に送信し、再構成部113に当該再構成条件に基づく再構成を指示する。
(S406)
再構成の指示を受けた再構成部113は、受信した再構成条件に基づいて、拡大再構成画像を再構成する。再構成部113は、再構成された拡大再構成画像を、再構成の指示に対する応答として医用画像処理装置100へ送信する。
【0053】
このように、医用画像処理装置100が医用画像撮影装置109へ拡大再構成を指示することで、医用画像撮影装置109が拡大再構成を実行することができる。これにより、医用画像撮影装置109の既存の再構成部113を活用することができ、医用画像処理装置100の再構成の負荷が軽減される。また、医用画像処理装置100に高いマシンスペックが必要なくなり、医用画像処理装置100を低コストに構成することができる。
【0054】
以上説明した処理の流れにより、医用画像処理装置100によって検出された病変候補の拡大再構成画像が表示される。病変候補とともに病変候補の詳細なデータである拡大再構成画像を読影医が確認できるので、病変候補の診断確定に要する時間を短縮可能となる。
【実施例2】
【0055】
実施例1では、病変候補の大きさに基づいて、拡大再構成画像の拡大再構成条件を決定することについて説明した。医用画像処理装置100は、病変候補を検出するとともに、病変候補の悪性度を算出することもできる。本実施例では、病変候補の悪性度に基づいて、拡大再構成画像の再構成条件を決定することについて説明する。なお、本実施例の全体構成と処理の流れは実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0056】
図8を用いて、本実施例の拡大再構成画像の再構成条件の決定処理の流れの一例について説明する。
【0057】
(S801)
再構成条件決定部302は、病変候補データ300に含まれる病変候補の中心座標や大きさ、画素値に関するデータとともに悪性度を取得する。本ステップで取得される病変候補の中心座標や大きさ、画素値に関するデータは実施例1と同様である。
【0058】
悪性度には、病変候補が悪性であるレベルを表す数値として0.0~1.0の範囲の小数が用いられ、悪性度0.0は病変候補が良性であることを、悪性度1.0は病変候補が悪性であることを示す。つまり悪性度が0.0または1.0であるときには診断確定が比較的容易であるのに対し、悪性度が0.5近辺であるときには診断確定が比較的困難であり、より詳細なデータが必要になる。
【0059】
(S802)
再構成条件決定部302は、S801で取得された病変候補のXY面での大きさと悪性度に基づいて、拡大再構成画像のXY面での視野FOVを算出する。視野FOVの算出には例えば式(1)を変形した次式が用いられる。
【0060】
FOV=XYmax×L(1-|1-2R|) … (6)
ここでRは悪性度であり、0.0~1.0の範囲の小数が用いられる。
【0061】
(S803)
再構成条件決定部302は、S801で取得された病変候補のZ方向での大きさと悪性度に基づいて、拡大再構成画像のZ方向での範囲を算出する。Z方向での範囲の算出には例えば式(2)と式(3)を変形した次式が用いられる。
【0062】
PosA=z0-(Zmax×M(1-|1-2R|))/2 … (7)
PosB=z0+(Zmax×M(1-|1-2R|))/2 … (8)
またZ方向での拡大再構成画像の間隔Intを、医用画像が撮影されるときに設定された最小間隔に設定し、式(4)を変形した次式によって拡大再構成画像の厚さThickを算出しても良い。
【0063】
Thick=k×M
(1-|1-2R|)×Int … (9)
(S804)
再構成条件決定部302は、S801で取得された病変候補の画素値に基づいて、ウィンドウ幅WW(Window Width)とウィンドウレベルWL(Window Level)を算出する。なおWWとWLの算出は、
図5のS504と同様である。
【0064】
(S805)
再構成条件決定部302は、S801で取得された病変候補の悪性度に基づいて、多断面画像を生成する。
【0065】
図9を用いて、多断面画像の生成について説明する。
図9(a)は病変候補を含む領域が拡大されたXY面であり、基準線900と傾斜線901が示される。基準線900は病変候補の中心を通りY方向に沿う線である。傾斜線901は病変候補の中心にて基準線900と角度θで交差する線であり、傾斜線901に沿って多断面画像が生成される。
図9(b)は病変候補の悪性度Rと角度θの関係を示す表の例である。
【0066】
本ステップでは、病変候補の悪性度Rに応じて多断面画像の角度θが決定され、悪性度Rが0.5近辺であるときほど多くの多断面画像が生成されるように再構成条件が決定される。すなわち診断確定が比較的困難な病変候補に対して、より多角的に観察可能となる。
【0067】
以上説明した処理の流れによって決定された再構成条件に基づいて、病変候補の拡大再構成画像が再構成され、表示される。病変候補とともに病変候補の詳細なデータである拡大再構成画像を読影医が確認できるので、病変候補の診断確定に要する時間を短縮可能となる。また本実施例では、悪性度に応じて、拡大再構成画像の視野や多断面画像の角度が調整されるので、診断確定が比較的困難な病変候補ほど、より詳細なデータが表示され、読影精度を向上できる。
【実施例3】
【0068】
実施例1と実施例2では、拡大再構成画像を再構成し表示することについて説明した。医用画像処理装置100が検出する病変候補によっては、より詳細なデータを得るために再撮影が必要になる場合がある。本実施例では、病変候補データに基づいて、再撮影条件を決定することについて説明する。なお、本実施例の全体構成は実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0069】
図10を用いて本実施例の機能ブロック図について説明する。なおこれらの機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いた専用のハードウェアで構成されても良いし、CPU101上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では各機能がソフトウェアで構成された場合について説明する。本実施例は、取得部301と再撮影条件決定部1002を備える。
【0070】
取得部301は、実施例1と同様に、病変候補データ300を取得する。
【0071】
再撮影条件決定部1002は病変候補データ300に基づいて、再撮影条件を決定する。
【0072】
図11を用いて、本実施例の処理の流れの一例について説明する。
【0073】
(S1101)
取得部301はメモリ102から病変候補データ300を取得する。病変候補データ300は、医用画像処理装置100からネットワークアダプタ104を介して送信されても良いし、予め記憶部103に記憶されたデータが読み出されても良い。
【0074】
なお本ステップで取得される病変候補データ300は、複数の病変候補の中から選択された病変候補の病変候補データ300だけに限定されても良い。病変候補の選択には、
図7(a)に例示される画面が用いられる。病変候補データ300が限定されることにより、本ステップ以降の処理が低減され、処理時間を抑制できる。
【0075】
(S1102)
再撮影条件決定部1002は、S1101で取得された病変候補データ300に基づいて、再撮影条件を決定する。
【0076】
図12を用いて、本ステップの処理の流れの一例について説明する。
【0077】
(S1201)
再撮影条件決定部1002は、病変候補データ300に含まれる病変候補の中心座標と大きさと画素値に関するデータを取得する。本ステップでは、病変候補の大きさに関するデータとして、例えば病変候補のZ方向での最大径Zmaxが取得される。また病変候補の画素値に関するデータとして、病変候補の画素値の平均値や病変候補の背景の画素値、病変候補と背景の画素値の差異であるコントラスト等が取得される。
【0078】
(S1202)
再撮影条件決定部1002は、S1201で取得された病変候補のZ方向での最大径Zmaxに基づいて、Z方向での撮影範囲を算出する。Z方向での撮影範囲の算出には例えば式(2)と式(3)が用いられる。
【0079】
(S1203)
再撮影条件決定部1002は、Z方向の撮影間隔を決定する。Z方向の撮影間隔には、医用画像撮影装置109の最小間隔が用いられる。
【0080】
(S1204)
再撮影条件決定部1002は、病変候補の画素値に関するデータに基づいて、管電流と管電圧を決定する。
【0081】
【0082】
(S1103)
S1102で決定された再撮影条件は、表示部107に表示される。
【0083】
(S1104)
操作者である医師は、表示部107に表示される再撮影条件を病変候補とともに確認し、再撮影するか否かを判定する。再撮影する場合はS1105へ処理が進み、再撮影しない場合は処理の流れは終了となる。
【0084】
(S1105)
S1102で決定された再撮影条件に基づいて、医用画像撮影装置109を用いた再撮影が実行される。
【0085】
以上説明した処理の流れにより、医用画像処理装置100によって検出された病変候補の細部が観察可能な再撮影画像が取得され、表示される。病変候補とともに病変候補の詳細なデータである再撮影画像を読影医が確認できるので、病変候補の診断確定に要する時間を短縮可能となる。
【0086】
以上、本発明の複数の実施例について説明した。本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したのであり、説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。さらに、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
100:医用画像処理装置、101:CPU、102:メモリ、103:記憶部、104:ネットワークアダプタ、105:バス、106:入力部、107:表示部、108:ネットワーク、109:医用画像撮影装置、110:医用画像データベース、111:読影装置、112:投影データ取得部、113:再構成部、200:断層画像、201:病変候補、300:病変候補データ、301:取得部、302:再構成条件決定部、303:拡大再構成部、304:拡大再構成画像、600:円、700:病変候補表示部、701:マウスポインタ、702:拡大再構成画像表示部、703:XY断面画像、704:ZX断面画像、705:YZ断面画像、706:三次元画像、900:基準線、901:傾斜線