(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】データ管理システム,管理方法,管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20231225BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20231225BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231225BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2019218514
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】童子 淳
(72)【発明者】
【氏名】山田 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】弥延 聡
(72)【発明者】
【氏名】金子 順紀
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-010588(JP,A)
【文献】特開2012-068047(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110287513(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109544051(CN,A)
【文献】冨田裕行 ほか,BIMを活用した設備施工,空気調和・衛生工学,第86巻, 第5号,日本,公益社団法人空気調和・衛生工学会,2012年05月05日,pages 39-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
G06F 30/10
G06Q 50/08
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理システムの、関連する機能部が、建築物の部材に関し少なくとも部材ID,部材座標,部材形状の設計データを記録した設計データベースと、前記建築物に関する計測データを記録した計測データベースと、情報の送受信を行って、
前記管理システムの
起点部材選択部が、前記設計データベースから起点部材を選択するステップを実行し、
計測情報選択部が、前記計測データベースから、前記起点部材に対応する前記計測データを選択するステップを実行し、
現状モデル作成部が、前記起点部材に関し、前記設計データベースから作成される前記起点部材の設計モデルを前記計測データを用いて形状修正した現状モデルを作成するステップを実行し、
隣接部材選択部が、前記設計データベースから、前記起点部材に隣接する隣接部材を選択するステップを実行し、
設計修正モデル作成部が、前記起点部材の前記現状モデルの形状に合わせて、前記隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成するステップを実行し、
前記設計修正モデル作成部が、前記隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、
設計修正データベースに記録するステップを実行することを特徴とする管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管理方法において、さらに、
前記管理システムの設計修正モデル再帰作成部が、
(A)前記隣接部材を第一隣接部材として、前記隣接部材選択部に前記設計データベースから前記第一隣接部材に隣接する第二隣接部材を選択させるステップを実行し、
(B)前記設計修正モデル作成部に前記第一隣接部材の前記設計修正モデルの形状に合わせて、前記第二隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成させるステップを実行し、
(C)前記第二隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、前記設計修正データベースに記録するステップを実行し、
(D)前記(A)から前記(C)までのステップを、管理者の求めに応じて繰り返し、第三隣接部材,第四隣接部材,・・・,第n隣接部材の設計修正モデルを作成し記録するステップを実行することを特徴とする管理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の管理方法において、
前記現状モデル作成部が前記現状モデルを作成するステップの次のステップとして、
前記管理システムのモデル比較部が、
前記起点部材に関し、前記設計モデルと前記現状モデルを比較するステップを実行し、
設計と現状が異なる場合に、前記隣接部材選択部が、前記隣接部材を選択するステップを開始することを特徴とする管理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の管理方法において、さらに、
前記管理システムの設計修正反映部が、
前記設計修正データベースに記録された
設計修正部材の前記設計修正部材座標および前記設計修正部材形状を、前記部材IDで紐づく前記設計データベースの部材座標および部材形状に対し上書きするステップを実行することを特徴とする管理方法。
【請求項5】
建築物の部材に関し少なくとも部材ID,部材座標,部材形状の設計データを記録した設計データベースと、
前記建築物に関する計測データを記録した計測データベースと、
前記設計データベースから起点部材を選択する起点部材選択部と、
前記計測データベースから前記起点部材に対応する前記計測データを選択する計測情報選択部と、
前記起点部材に関し、前記設計データベースから作成される前記起点部材の設計モデルを前記計測データを用いて形状修正した現状モデルを作成する現状モデル作成部と、
前記起点部材を設計修正部材とし、前記起点部材の前記現状モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベースに記録する設計修正モデル作成部と、
前記設計データベースから前記起点部材に隣接する隣接部材を選択する隣接部材選択部と、
前記起点部材の前記現状モデルの形状に合わせて前記隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成し、前記隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、前記設計修正データベースに記録する設計修正モデル作成部と、
を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の管理システムにおいて、さらに、
前記隣接部材を第一隣接部材として、前記設計データベースから前記第一隣接部材に隣接する第二隣接部材を選択し、前記第一隣接部材の前記設計修正モデルの形状に合わせて、前記第二隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成して、前記第二隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、前記設計修正データベースに記録して、管理者の求めに応じて繰り返し、第三隣接部材,第四隣接部材,・・・,第n隣接部材の設計修正モデルを作成し記録する設計修正モデル再帰作成部を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の管理システムにおいて、
前記起点部材に関し、前記設計モデルと前記現状モデルを比較するモデル比較部をさらに備え、
前記モデル比較部が設計と現状が異なると判断した場合に前記隣接部材選択部が機能することを特徴とする管理システム。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載の管理システムにおいて、さらに、
前記設計修正データベースに記録された前記設計修正部材の設計修正部材座標および設計修正部材形状を、前記部材IDで紐づく前記設計データベースの部材座標および部材形状に対し上書きする設計修正反映部を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の管理方法を、コンピュータプログラムで記載し、前記コンピュータプログラムをコンピュータが実行することを特徴とする管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計および施工に関するデータを管理するためのシステム,方法,およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築の分野では、BIM(Building Information Modeling)と呼ばれる3Dモデルの活用が進んでいる。BIMは、設計現場、すなわち、企画,意匠設計,設備設計,設計分析,実施設計,施工計画,および部品製作において活用が進んでいる。例えば特許文献1には、工場での部材製作の場面でBIMを活用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、施工現場では、BIMの活用が遅れており、設計現場において作成された設計BIMを基にして独自に施工図を作成し、施工は施工図を基にして実施される。施工図は各工程において作成されるが、ここで、実際の施工状況を上流の設計BIMに反映する仕組みが無いため、古いBIMの情報を基に次の工程の施工図が作成され、現場の施工状況が施工図と一致しない問題がしばしば生じていた。このため、施工状況を上流の図面に反映させたり、次の施工工程に引き継げるようデータ管理することが望まれた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、実際の施工状況を設計に反映させるデータ管理をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理方法は、建築物の部材に関し少なくとも部材ID,部材座標,部材形状の設計データを記録した設計データベースと、前記建築物に関する計測データを記録した計測データベースと、と情報の送受信を行って、前記設計データベースから起点部材を選択するステップと、前記計測データベースから、前記起点部材に対応する前記計測データを選択するステップと、前記起点部材に関し、前記設計データベースから作成される前記起点部材の設計モデルを前記計測データを用いて形状修正した現状モデルを作成するステップを有することを特徴とする。
【0007】
上記態様において、さらに、前記起点部材を設計修正部材とし、前記起点部材の前記現状モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベースに記録するステップを有するのも好ましい。
【0008】
上記態様において、さらに、前記設計データベースから、前記起点部材に隣接する隣接部材を選択するステップと、前記起点部材の前記現状モデルの形状に合わせて、前記隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成するステップと、前記隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベースに記録するステップを有するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、さらに、(A)前記隣接部材を第一隣接部材として、前記設計データベースから前記第一隣接部材に隣接する第二隣接部材を選択するステップと、(B)前記第一隣接部材の前記設計修正モデルの形状に合わせて、前記第二隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成するステップと、(C)前記第二隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、前記設計修正データベースに記録するステップと、(D)前記(A)から前記(C)までのステップを、管理者の求めに応じて繰り返し、第三隣接部材,第四隣接部材,・・・,第n隣接部材の設計修正モデルを作成し記録するステップを有するのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記起点部材に関し、前記設計モデルと前記現状モデルを比較して、設計と現状が異なる場合に、前記隣接部材を選択するステップを開始するのも好ましい。
【0011】
上記態様において、さらに、前記設計修正データベースに記録された前記設計修正部材の前記設計修正部材座標および前記設計修正部材形状を、前記部材IDで紐づく前記設計データベースの部材座標および部材形状に対し上書きするステップを有するのも好ましい。
【0012】
上記管理方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にすることも好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理システムは、建築物の部材に関し少なくとも部材ID,部材座標,部材形状の設計データを記録した設計データベースと、前記建築物に関する計測データを記録した計測データベースと、前記設計データベースから起点部材を選択する起点部材選択部と、前記計測データベースから前記起点部材に対応する前記計測データを選択する計測情報選択部と、前記起点部材に関し、前記設計データベースから作成される前記起点部材の設計モデルを前記計測データを用いて形状修正した現状モデルを作成する現状モデル作成部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記態様において、さらに、前記起点部材を設計修正部材とし、前記起点部材の前記現状モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベースに記録する設計修正モデル作成部と、を備えるのも好ましい。
【0015】
上記態様において、さらに、前記設計データベースから前記起点部材に隣接する隣接部材を選択する隣接部材選択部と、前記起点部材の前記現状モデルの形状に合わせて前記隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成し、前記隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベースに記録する設計修正モデル作成部と、を備えるのも好ましい。
【0016】
上記態様において、さらに、前記隣接部材を第一隣接部材として、前記設計データベースから前記第一隣接部材に隣接する第二隣接部材を選択し、前記第一隣接部材の前記設計修正モデルの形状に合わせて、前記第二隣接部材の設計モデルを形状修正した設計修正モデルを作成して、前記第二隣接部材の前記設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、前記設計修正データベースに記録して、管理者の求めに応じて繰り返し、第三隣接部材,第四隣接部材,・・・.第n隣接部材の設計修正モデルを作成し記録する設計修正モデル再帰作成部を備えるのも好ましい。
【0017】
上記態様において、前記起点部材に関し、前記設計モデルと前記現状モデルを比較するモデル比較部をさらに備え、前記モデル比較部が設計と現状が異なると判断した場合に前記隣接部材選択部が機能するのも好ましい。
【0018】
上記態様において、前記設計修正データベースに記録された前記設計修正部材の設計修正部材座標および設計修正部材形状を、前記部材IDで紐づく前記設計データベースの部材座標および部材形状に対し上書きする設計修正反映部を備えるのも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のデータ管理システム,管理方法,管理プログラムによれば、実際の施工状況を設計に反映させるデータ管理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】同管理システムに係る設計データベースの一例を示す図である。
【
図3】同管理システムに係る計測データベースの一例を示す図である。
【
図4】同管理システムに係る設計修正部材データベースの一例を示す図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図7】本発明の第二の実施の形態に係る管理システムの構成ブロック図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態に係る管理システムの構成ブロック図である
。
【
図11】本発明の第三の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図13】本発明の第四の実施の形態に係る管理システムの構成ブロック図である。
【
図14】本発明の第四の実施の形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図15】本発明の第五の実施形態に係る管理システムの構成ブロック図である
。
【
図16】本発明の第五の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
<第一の実施形態>
(管理システムの構成)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る管理システム1の構成ブロック図である。管理システム1は、入出力装置2と、設計データベース3と、計測データベース4と、設計修正データベース11と、起点部材選択部5と、計測情報選択部6と、現状モデル作成部7と、設計修正モデル作成部9を備える。
【0023】
入出力装置2は、少なくとも演算部、記録部、通信部、表示部、操作部を備える汎用パーソナルコンピュータやタブレット端末等であり、管理者からの操作が可能である。
【0024】
起点部材選択部5,計測情報選択部6,現状モデル作成部7,および設計修正モデル作成部9の各機能部は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。各機能部は、入出力装置2内に、または他の外部ハードウェア/ソフトウェアのいずれかで、構成されてもよい。後者の場合、各機能部は、入出力装置2とネットワークを通じて情報の送受信を行える。
【0025】
設計データベース3および計測データベース4は、ネットワークを介して通信可能に構成されたサーバコンピュータに記憶されている。該サーバコンピュータは、関連する機能部と通信が可能であり、関連する機能部と情報の送受信を行える。
【0026】
設計データベース3には、管理対象となる建築物の設計BIMに基づく設計データ(建築物を構成する一つ一つの建築部材を3Dモデル形状で有したデータ。3Dモデルには面,線,点の形状も含まれる。以降、設計モデルとも称する)が記憶されている。設計データベース3は、少なくとも、
図2に示すように、建築部材に関し、部材識別情報(以下、部材ID)と,部材座標と,部材形状とを関連付けた設計テーブル31を記憶している。
【0027】
計測データベース4には、スキャナ等を利用して得られた上記建築物の計測データ(座標情報をレジストレーションした点群データ,点データ、計測地点の座標情報を保持する画面データ,建築部材の施工誤差に関するデータ)が記憶されている。計測データには、計測毎に点群識別情報(以下、点群ID)が付与されている。計測データベース4は、少なくとも、
図3に示すように、点群IDと,点座標とを関連付けた計測テーブル41を記憶している。
【0028】
設計修正データベース11は、ネットワークを介して通信可能に構成されたサーバコンピュータに記憶されている。設計修正データベース11には、設計に修正が必要になる部材(以降“設計修正部材”と称する)に関する設計修正データが随時記録されていく。設計修正データベース11は、少なくとも、
図4に示すように、設計修正部材の識別情報(以下、設計修正部材ID)と,設計修正部材の座標と,設計修正部材の形状と,が関連付けられた設計修正テーブル111を記憶している。各設計修正部材は、部材IDで設計データベース3と紐づいている。
【0029】
起点部材選択部5,計測情報選択部6,現状モデル作成部7,および設計修正モデル作成部9については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0030】
(管理方法)
図5は本発明の第一の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図、
図6は同管理フローの作業イメージ図である。本形態による管理方法は、ある部材に関し、設計モデルと計測データを基に、実際の施工を反映した現状モデルを作成し、データ管理をするものである。
【0031】
管理処理が開始されると、ステップS1001で、起点部材選択部5は、設計テーブル31を読み出し、部材IDまたは設計モデルを入出力装置2に表示して、管理者に管理したい部材(“起点部材”)を選択させる。管理者は、入出力装置2を介して起点部材を選択する。
【0032】
次に、ステップS1002に移行して、計測情報選択部6は、計測テーブル41の点座標を読み出し、ステップS1001で選択された起点部材の部材座標と略対応する点群データを抽出するか、管理者に入出力装置2を介して選択させる。このとき、座標が完全一致するものだけではなく、予め設定した誤差値内に入る点群は抽出される。
【0033】
次に、ステップS1003に移行して、現状モデル作成部7は、起点部材に関し、設計モデルとステップS1002の計測データ(点群データ)を基に、起点部材の現状形状を算出し、起点部材の現状モデルを作成する。
【0034】
ここで、現状モデル作成部7による現状モデルの作成は、例えば以下のように行われる。
(ケース1)
図6の符号6-1に示すように、計測データから起点部材の形状が取れている場合、設計モデルの形状を計測データに基づく形状に修正する。
(ケース2)
図6の符号6-2に示すように、計測データから起点部材の形状に関する一部の情報(面、線,点)が取れている場合、設計モデルの配置座標,回転,または傾きを修正する。
(ケース3)起点部材の形状に関し施工誤差情報が得られた場合、施工誤差情報を基に設計モデルの形状,配置座標,回転,または傾きを修正する。
【0035】
次に、ステップS1004に移行して、設計修正モデル作成部9は、起点部材に設計修正部材IDを付け、起点部材の部材IDと紐づけて、S1003の起点部材の現状モデルを基に、起点部材の現状モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベース11に記録する。
【0036】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、起点部材の形状に関し、計測データを用いて設計モデルを形状修正し、実際の施工を反映した現状モデルの形状を設計修正データベース11に記録する。このため、実際の施工状況を次の施工工程に引き継ぐことができる。
【0037】
<第二の実施形態>
(管理システムの構成)
図7は、本発明の第二の実施形態に係る管理システム1’の構成ブロック図である。第一の実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いて説明を割愛する。本形態の管理システム1’は、入出力装置2と、設計データベース3と、計測データベース4と、起点部材選択部5と、計測情報選択部6と、現状モデル作成部7と、隣接部材選択部8と、設計修正モデル作成部9と、設計修正データベース11を備える。
【0038】
隣接部材選択部8と設計修正モデル作成部9は、他の機能部と同様、電子回路により構成される。隣接部材選択部8と設計修正モデル作成部9については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0039】
(管理方法)
図8は本発明の第二の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図、
図9は同管理フローの作業イメージ図である。本形態による管理方法は、ある部材に関し現状モデルを作成し、その部材に隣接する部材について設計修正モデルを作成して、実際の施工状況を未施工の部材の設計に反映させるデータ管理をするものである。なお、第一の実施形態の管理方法と同様のステップは同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0040】
ステップS2001~ステップS2003は、ステップS1001~ステップS
1003と同様である。管理処理が開始されると、ステップS2001で起点部材選択部5により起点部材が選択され(
図9の符号9-1)、S2002で計測情報選択部6により起点部材の点群データが選択され(符号9-2)、ステップS2003で現状モデル作成部7により起点部材の現状モデルが作成される(符号9-3)。
【0041】
次に、ステップS2004に移行して、隣接部材選択部8は、設計テーブル31を読み出し、設計テーブル31にある起点部材の座標および形状のデータを基に起点部材に隣接する“隣接部材”を抽出するか、起点部材の周辺の設計モデルを入出力装置2に表示して起点部材に隣接する“隣接部材”を管理者に選択させる。
【0042】
次に、ステップS2005に移行して、設計修正モデル作成部9は、S2003の起点部材の現状モデルを基に、隣接部材の設計修正モデルを作成する。ここで、設計修正モデル作成部9による隣接部材の設計修正モデルの作成は、例えば以下のように行われる。
(ケース1)
図9の符号9-4に示すように、起点部材の現状モデルの形状に合わせて、干渉が発生しないように、隣接部材の設計モデルの形状を修正したモデルを作成する。
(ケース2)
図9の符号9-5に示すように、起点部材の現状モデルの形状に合わせて、干渉が発生しないように、隣接部材の設計モデルの座標を修正したモデルを作成する。
【0043】
次に、ステップS2006に移行して、設計修正モデル作成部9は、隣接部材に設計修正部材IDを付け、隣接部材の部材IDと紐づけて、隣接部材の設計修正モデルの座標および形状を設計修正部材座標および設計修正部材形状として、設計修正データベース11に記録する。
【0044】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、起点部材の現状モデルを用いて隣接部材の形状を修正し、設計修正した設計修正モデル形状を設計修正データベース11に記録する。このため、実際の施工状況を次の施工工程に引き継ぐことができる。
【0045】
<第三の実施形態>
本形態による管理システムおよび管理方法は、第二の実施形態に係る管理方法に追加的に適用されるものである。本形態による管理システムおよび管理方法は、起点部材の隣接部材だけでなく、隣接部材に隣接する部材、さらに隣接する部材、さらにさらに隣接する部材…の設計修正モデルを再帰的に作成し、これから施工される全域の部材の設計に修正が反映されるようデータ管理する。
【0046】
(管理システムの構成)
図10は、本発明の第三の実施の形態に係る管理システム1’’の構成ブロック図である。第二の実施形態と同一の構成および工程については、同一の符号を用いて説明を割愛する。管理システム1’’は、第二の実施形態に設計修正モデル再帰作成部14が追加されたものである。
【0047】
設計修正モデル再帰作成部14も、他の機能部と同様、電子回路により構成される。設計修正モデル再帰作成部14については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0048】
(管理方法)
図11は本発明の第三の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図、
図12は同管理フローの作業イメージ図である。本形態による管理処理は、第二の実施形態のステップS2001~S2006が完了し、隣接部材の修正設計データが設計修正データベース11に記録された後から開始される。本管理処理が開始すると、ステップS3001に移行して設計修正モデル再帰作成部14は、再帰的な修正データを作成するか、管理者に選択させる。管理者がYESを選択すると、ステップS3002に移行する。NOを選択した場合は本管理フローを終了する。
【0049】
ステップS3002に移行すると、設計修正モデル再帰作成部14は、ステップS2006の隣接部材を第一隣接部材として、隣接部材選択部8に “第二隣接部材”を選択させる。隣接部材選択部8は、設計テーブル31にある第一隣接部材の座標および形状のデータを基に第一隣接部材に隣接する“第二隣接部材”を抽出するか、第一隣接部材の周辺の設計モデルを入出力装置2に表示して第一隣接部材に隣接する“第二隣接部材”を管理者に選択させる。
【0050】
次に、ステップS3003に移行して、設計修正モデル再帰作成部14は、設計修正モデル作成部9に第二隣接部材の設計修正モデルを作成させる。設計修正モデル作成部9は、第一隣接部材の設計修正モデルの形状に合わせて、干渉が発生しないように、第二隣接部材の設計モデルの形状を修正したモデルを作成するか、第二隣接部材の設計モデルの座標を修正したモデルを作成する。
【0051】
次に、ステップS3004に移行して、設計修正モデル再帰作成部14は、設計修正モデル作成部9に第二隣接部材の設計修正データを記録させる。設計修正モデル作成部9は、第二隣接部材に設計修正部材IDを付け、第二隣接部材の部材IDと紐づけて、第二隣接部材の設計修正モデルの座標および形状に関するデータを設計修正部材座標および設計修正部材形状のデータとして、設計修正データベース11に記録する。記録すると、ステップS3001に戻り、設計修正モデル再帰作成部14は、第三隣接部材の再帰修正データを作成するか管理者に選択させる。設計修正モデル再帰作成部14は、管理者の求めに応じ、第四隣接部材,第五隣接部材,…,第n隣接部材の設計修正モデルを再帰的に作成し、作成の求めがなくなると本管理フローを終了する。
【0052】
図12を参照して、具体例を説明する。まずステップS2006までに、起点部材である「第一鉄骨(符号12-1)」の隣接部材である「第一梁(符号12-2)」と「第二鉄骨(符号12-3)」の設計修正モデルが作成されている。次に、ステップS3002に移行して、「第二鉄骨」の上端に接触する「第二梁」が第二隣接部材として選択される(符号12-4)。次に、ステップS3003に移行して、「第二鉄骨」の修正モデルを基に「第二梁」の設計修正モデルが作成される(符号12-5)。ステップS3004で、「第二梁」の設計修正モデルに基づく設計修正データが、設計修正データベース11に記録される。
【0053】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、実際の施工状況を反映して、これから施工される全域の部材の設計に関して再帰的に設計修正を行い、それらの設計修正データを管理することができる。
【0054】
<第四の実施形態>
本形態による管理システムおよび管理方法は、第二または第三の実施形態に係る管理方法に追加的に適用されるものである。本形態による管理方法は、起点部材の設計モデルと現状モデルが異なる場合に、隣接部材の設計修正モデルのデータ管理をする。
【0055】
(管理システムの構成)
図13は、本発明の第四の実施形態に係る管理システム1’ ’ ’の構成ブロック図である。前述までの実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いて説明を割愛する。管理システム1’ ’’は、第二の実施形態にモデル比較部12が追加されたものである。
【0056】
モデル比較部12も、他の機能部と同様、電子回路により構成される。モデル比較部12については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0057】
(管理方法)
図14は本発明の第四の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。前述までの実施形態と同様のステップは同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0058】
ステップS4001~ステップS4003は、ステップS1001~ステップS1003と同様である。管理処理が開始されると、ステップS4001で起点部材選択部5により起点部材が選択され、S4002で計測情報選択部6により起点部材の点群データが選択され、ステップS4003で現状モデル作成部7により起点部材の現状モデルが作成される。
【0059】
次に、ステップS4004に移行して、モデル比較部12は、起点部材の現状モデルを、起点部材の設計モデルと形状比較する。設計と現状が同じ場合は、隣接部材に設計修正が無いことから、今後の施工でも当初の設計モデルを参照してよいため、本管理フローを終了する。設計と現状が異なる場合は、ステップS4005に移行する。なお、設計と現状が「同じ」の判定は、完全一致の場合だけでなく、施工許容誤差などを考慮して予め定められた許容の範囲を含むものとする。設計と現状が「異なる」の判定は、上記許容の範囲を超える場合を意味するものとする。
【0060】
ステップS4005に移行すると、以降は、ステップS2004~S2006と同様となる。すなわち、ステップS4005でステップS2004と同様に隣接部材選択部8により起点部材の隣接部材が選択され、ステップS4006でステップS2005と同様に隣接部材の設計修正モデルが作成される。そして、ステップS4007でステップS2006と同様に隣接部材の設計修正データが設計修正データベース11に記録される。
【0061】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、起点部材の形状が設計と現状で異なる場合のみ、その影響を受ける隣接部材の設計形状が修正され、データ管理される。なお、本形態について第二の実施形態に適用した場合で説明したが、第三の実施形態に適用することも可能である。
【0062】
<第五の実施形態>
本形態による管理システムおよび管理方法は、設計修正データベース11で管理されている設計修正データを活用し、設計BIM(上流)に修正を反映させるデータ管理をするものである。
【0063】
(管理システムの構成)
図15は、本発明の第五の実施の形態に係る管理システム1’ ’’’の構成ブロック図である。前述までの実施形態と同一の構成および工程については、同一の符号を用いて説明を割愛する。管理システム1’ ’’’は、一例として、第二の実施形態に設計修正反映部13が追加されたものである。
【0064】
設計修正反映部13も、他の機能部と同様、電子回路により構成される。設計修正反映部13については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0065】
(管理方法)
図16は本発明の第五の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図、
図17は同管理フローの作業イメージ図である。本形態による管理処理が開始されると、ステップS5001に移行して、設計修正反映部13は、設計データベース3を読み出し、部材IDの一覧または設計モデルを入出力装置2に表示して、管理者に設計修正したい部材を選択させる。管理者は、入出力装置2を介して設計修正部材を選択する。
【0066】
次にステップS5002に移行して、設計修正反映部13は、選択された部材の部材IDを基に設計修正データベース11を読み出して、設計修正部材の設計修正部材座標および設計修正部材形状のデータを、設計データベース3の部材座標および部材形状に対し上書きする(
図17参照)。設計修正反映部13は、設計データベース3を更新すると本管理フローを終了する。
【0067】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、当初の設計から修正が必要になる部材の設計修正データを、設計BIM(上流の工程)に反映することができる。このため、施工現場において工程が進むごとに都度参照される設計BIMの情報が古いまま下流の工程で利用され、現場の状況と施工図が一致しないという事態を防ぐことができ、施工現場においてBIMを効率的に活用することが可能となる。なお、本形態について第二の実施形態に適用した場合で説明したが、第一,第三,および第四の実施形態に適用することも可能である。
【0068】
なお、第一から第五の実施形態において、「現状モデル」または「設計修正モデル」に関する設計修正データが、設計修正データベース11に記録されることを述べた。これらの設計修正データは、設計修正データベース11から外部システムに出力することが可能であり、外部システムにおいて設計修正データを利用・活用することが可能である。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1,1’, 1’’,1’’’,1’’’’ … 管理システム
2 … 入出力装置
3 … 設計データベース
31 … 設計テーブル
4 … 計測データベース
41 … 計測テーブル
5 … 起点部材選択部
6 … 計測情報選択部
7 … 現状モデル作成部
8 … 隣接部材選択部
9 … 設計修正モデル作成部
11 … 設計修正データベース
111 … 設計修正テーブル
12 … モデル比較部
13 … 設計修正反映部
14 … 設計修正モデル再帰作成部