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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】水処理システムおよび水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/78 20230101AFI20231225BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20231225BHJP
【FI】
C02F1/78
C02F1/72 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019225697
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094505
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 清一
(72)【発明者】
【氏名】森谷 可南子
(72)【発明者】
【氏名】牧瀬 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】王 駿良
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181386(JP,A)
【文献】特開2003-080278(JP,A)
【文献】特開平04-225896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/72-78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が導入される処理槽と、
制御部と、
前記処理槽への導入以前または導入以後の前記被処理水に酸化促進剤を注入する酸化促進剤注入部と、
前記処理槽内を流れる前記酸化促進剤を注入済みの前記被処理水にオゾンを接触させるオゾン注入部と、
前記処理槽への導入以前の前記被処理水に含まれる処理対象物質の濃度を測定する処理対象物質測定部と、
前記処理槽への導入以前の前記被処理水の蛍光強度または吸光度を測定する原水測定部と
前記オゾンの接触開始から接触終了までの間の前記被処理水の蛍光強度または吸光度を測定する処理水測定部と
前記オゾンの接触開始から接触終了までの間の前記被処理水の溶存オゾン濃度を測定する溶存オゾン測定部と、を備え、
前記制御部は、
前記処理対象物質測定部が測定した濃度が所定の低い条件を満たすとき、
前記処理水測定部の測定値を前記原水測定部の測定値で除して残存率を求め、
前記残存率が所定の下限閾値を下回るときは、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を減少させ、
前記残存率が所定の上限閾値を上回るときは、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を増加させ、
前記処理対象物質測定部が測定した濃度が所定の高い条件を満たすとき、
前記溶存オゾン測定部が測定した溶存オゾン濃度が予め定めた目標値となるように前記酸化促進剤注入部による酸化促進剤の注入量および前記オゾン注入部によるオゾン注入量を制御する、水処理システム。
【請求項2】
被処理水が導入される処理槽と、
制御部と、
前記処理槽への導入以前または導入以後の前記被処理水に酸化促進剤を注入する酸化促進剤注入部と、
前記処理槽内を流れる前記酸化促進剤を注入済みの前記被処理水にオゾンを接触させるオゾン注入部と、
前記処理槽への導入以前の前記被処理水に含まれる処理対象物質の濃度を測定する処理対象物質測定部と、
前記処理槽への導入以前の前記被処理水の蛍光強度または吸光度を測定する原水測定部と、
前記オゾンの接触開始から接触終了までの間の前記被処理水の蛍光強度または吸光度を測定する処理水測定部と、
前記オゾンの接触開始から接触終了までの間の前記被処理水の溶存オゾン濃度を測定する溶存オゾン測定部と、を備え、
前記制御部は、
前記処理対象物質測定部が測定した濃度が所定の低い条件を満たすとき、
前記処理水測定部の測定値を前記原水測定部の測定値で除して残存率を求め、
前記残存率が所定の下限閾値を下回るときは、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を減少させ、
前記残存率が所定の上限閾値を上回るときは、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を増加させ、
前記処理対象物質測定部が測定した濃度が所定の高い条件を満たすとき、
前記残存率が所定の下限閾値を下回るときは、前記測定された溶存オゾン濃度が設定された溶存オゾン濃度の上下限内に収まるように、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を減少させ、
前記残存率が所定の上限閾値を上回るときは、前記測定された溶存オゾン濃度が設定された溶存オゾン濃度の上下限内に収まるように、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を増加させるように制御する、水処理システム。
【請求項3】
前記処理槽内において前記オゾン注入部が配置されている範囲をオゾン接触領域とし、 前記被処理水が前記オゾン接触領域の通過に要する時間をTとしたとき、
前記処理水測定部および前記溶存オゾン測定部は、0T~0.6Tの範囲内のいずれかの時間に対応した位置に配置されている、
請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記オゾン注入部は、前記被処理水の流れる方向に沿って配列された複数のオゾン注入部を含み、
前記処理水測定部および前記溶存オゾン測定部は、前記複数のオゾン注入部のうちいずれかの間に配置されている、
請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記処理槽は、前記被処理水が流れる方向に沿って配置された複数の分割処理槽と、前記分割処理槽同士を接続する1以上の接続流路と、を備え、
前記オゾン注入部は、前記複数の分割処理槽にそれぞれ設けられた複数のオゾン注入部を含み、
前記処理水測定部および前記溶存オゾン測定部は、前記1以上の接続流路のうちいずれかに配置されている、
請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項6】
記処理水測定部および前記原水測定部は、単一の水質測定部と、測定対象の前記被処理水の一部を分取する原水用分取管および処理水用分取管と、前記原水用分取管および前記処理水用分取管により分取された前記被処理水を前記水質測定部に選択的に供給するように、前記原水用分取管を前記水質測定部に接続するか、または前記処理水用分取管を前記水質測定部に接続するかを切り替える切替部と、を含む、
請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項7】
酸化促進剤注入部により、被処理水が導入される処理槽への導入以前または導入以後の前記被処理水に酸化促進剤を注入することと、
オゾン注入部により、前記処理槽内を流れる前記酸化促進剤を注入済みの前記被処理水にオゾンを接触させることと、
処理対象物質測定部により、前記処理槽への導入以前の前記被処理水に含まれる処理対象物質の濃度を測定することと、
前記処理槽への導入以前の前記被処理水の蛍光強度または吸光度を原水測定部により測定することと、
記オゾンの接触開始から接触終了までの間の前記被処理水の蛍光強度または吸光度を処理水測定部により測定することと
前記オゾンの接触開始から接触終了までの間の前記被処理水の溶存オゾン濃度を溶存オゾン測定部により測定することと、
前記制御部により、
前記処理対象物質測定部が測定した濃度が所定の低い条件を満たすとき、
前記処理水測定部の測定値を前記原水測定部の測定値で除して残存率を求め、
前記残存率が所定の下限閾値を下回るときは、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を減少させ、
前記残存率が所定の上限閾値を上回るときは、前記酸化促進剤注入部と前記オゾン注入部のうちの少なくとも一方を制御して酸化促進剤とオゾンのうちの少なくとも一方の注入量を増加させることと、
前記処理対象物質測定部が測定した濃度が所定の高い条件を満たすとき、
前記溶存オゾン測定部が測定した溶存オゾン濃度が予め定めた目標値となるように前記酸化促進剤注入部による酸化促進剤の注入量および前記オゾン注入部によるオゾン注入量を制御することと
を備える、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理システムおよび水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、過酸化水素のような酸化促進剤と、オゾンと、を併用した水処理について検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-99878号公報
【文献】特開2005-87813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水処理では、たとえばオゾンによる消毒時の副生成物である臭素酸などが生成されるリスクを抑えるように、酸化促進剤およびオゾンの注入量をより適切に制御することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる水処理システムは、処理槽と、酸化促進剤注入部と、オゾン注入部と、原水測定部および処理水測定部のうち少なくとも一方と、溶存オゾン測定部と、制御部と、を備える。処理槽には、被処理水が導入される。酸化促進剤注入部は、処理槽への導入以前または導入以後の被処理水に酸化促進剤を注入する。オゾン注入部は、処理槽内を流れる酸化促進剤を注入済みの被処理水にオゾンを接触させる。原水測定部は、処理槽への導入以前の被処理水の蛍光強度または吸光度を測定する。処理水測定部は、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の蛍光強度または吸光度を測定する。溶存オゾン測定部は、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の溶存オゾン濃度を測定する。制御部は、原水測定部および処理水測定部のうち少なくとも一方の測定結果と、溶存オゾン測定部の測定結果と、に基づいて、酸化促進剤注入部による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるオゾンおよび酸化促進剤の注入量と蛍光強度との関係を示した例示的かつ模式的なグラフである。
図3図3は、第1実施形態にかかるオゾン注入率と溶存オゾン濃度との関係を示した例示的かつ模式的なグラフである。
図4図4は、第2実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図5図5は、第3実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図6図6は、第4実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図7図7は、第5実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図8図8は、第6実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図9図9は、第7実施形態にかかる水処理システムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態にかかる水処理システム1の構成を示した例示的かつ模式的な図である。
【0009】
第1実施形態にかかる水処理システム1は、たとえば、浄水場における上水の浄化処理に利用される。なお、第1実施形態の技術は、上水だけでなく下水の処理にも利用可能であるし、産業排水およびプールなどの分野にも利用することが可能である。
【0010】
図1に示されるように、第1実施形態にかかる水処理システム1は、処理槽2と、酸化促進剤注入部3と、オゾン注入部4と、制御装置10と、を備えている。
【0011】
処理槽2は、処理対象の水である被処理水が導入されるタンクである。酸化促進剤注入部3は、処理槽2への導入以前または導入以後の被処理水に酸化促進剤を注入する。オゾン注入部4は、処理槽2内に設置され、処理槽2内を流れる酸化促進剤を注入済みの被処理水にオゾンを接触させる。
【0012】
制御装置10は、原水測定部15と、処理水測定部16と、溶存オゾン測定部17と、処理対象物質測定部18と、制御部10aと、を有している。
【0013】
原水測定部15は、処理槽2への導入以前の被処理水の蛍光強度を測定する。処理水測定部16は、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の蛍光強度を測定する。以下では、原水測定部15および処理水測定部16が蛍光強度を測定する構成について説明するが、第1実施形態の技術は、原水測定部15および処理水測定部16が吸光度を測定する構成においても成立する。
【0014】
溶存オゾン測定部17は、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の溶存オゾン濃度を測定する。処理対象物質測定部18は、被処理水中の処理対象物質の濃度を示す処理対象物質濃度を測定する。
【0015】
制御部10aは、原水測定部15および処理水測定部16のうち少なくとも一方の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、に基づいて、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾン注入量のうち少なくとも一方を制御する。
【0016】
以下、上述した構成についてより詳細に説明する。
【0017】
処理槽2は、被処理水の導入を受け付け、導入された被処理水にオゾンを接触させるように被処理水を一時的に貯蔵するタンクである。第1実施形態において、処理槽2は、2つの槽に区画されており、各槽において被処理水にオゾンを接触させるように構成されている。
【0018】
より具体的に、処理槽2には、被処理水が流入する流入部2aと、被処理水が流出する流出部2bと、が設けられている。また、処理槽2には、2つの分割処理槽2cおよび2dが設けられている。分割処理槽2cおよび2dは、接続流路2eを介して接続されている。接続流路2eは、隔壁2fによって分割処理槽2cおよび2dから区画されている。流入部2aから処理槽2に流入した被処理水は、分割処理槽2c、接続流路2e、および分割処理槽2dを経て、流出部2bから処理槽2の外部に流出する。
【0019】
処理槽2では、被処理水中において酸化促進剤とオゾンとが反応してOHラジカルが生成し、OHラジカルによる被処理水中の処理対象物質の分解が進む。第1実施形態では、処理対象物質が有機物、たとえばカビ臭物質などのような臭気物質であるものとする。
【0020】
酸化促進剤注入部3は、被処理水にたとえば過酸化水素のような酸化促進剤を供給する供給部である。図1に示される例では、酸化促進剤注入部3が処理槽2に導入前の被処理水に酸化促進剤を供給するように構成されている。酸化促進剤注入部3は、制御部10aに接続されている。したがって、被処理水への酸化促進剤の注入量は、制御部10aの指令のもとで制御される。
【0021】
オゾン注入部4は、散気部4aと、配管4bと、オゾン発生器4cと、を備えている。散気部4aは、分割処理槽2cおよび2d内にそれぞれ1つずつ設置されている。散気部4aは、たとえば散気管または散気板として構成される。なお、散気部4aは、気泡状の気体を被処理水中に導入可能な構成であれば、たとえばインジェクターとして構成されていてもよい。
【0022】
散気部4aは、配管4bを介してオゾン発生器4cに接続されている。第1実施形態では、オゾン発生器4cにおいて生成したオゾンを含む流体が配管4bを介して散気部4aに送られる結果として、散気部4aから被処理水にオゾンが注入される。なお、オゾン発生器4cは制御部10aに接続されている。したがって、被処理水へのオゾンの注入量は、制御部10aの指令のもとで制御される。
【0023】
散気部4aから注入されたオゾンを含む気泡は、各分割処理槽2cおよび2d内を上昇することで、被処理水に接触する。被処理水は、分割処理槽2cにおいてオゾンと接触し、次いで、分割処理槽2dにおいてオゾンと接触する。したがって、第1実施形態において、処理槽2内では2度に渡って被処理水にオゾンが接触する。
【0024】
なお、第1実施形態では、分割処理槽2cにおいて被処理水がはじめてオゾンに接触することが、「オゾンの接触開始」と表現され、分割処理槽2dにおいて被処理水にオゾンに接触しなくなったことが、「オゾンの接触終了」と表現されうる。
【0025】
また、第1実施形態では、散気部4aが設置された全範囲が、「オゾン接触領域」と表現されうる。オゾン接触領域は、オゾンの接触開始が起こる位置から、オゾンの接触終了が起こる位置までの範囲となる。なお、散気部4aの間の領域も、オゾン接触領域に含まれる。すなわち、第1実施形態においては、接続流路2eも、オゾン接触領域に含まれる。
【0026】
原水測定部15は、被処理水の蛍光強度を測定するセンサである。原水測定部15は、処理槽2の外部であって流入部2aよりも上流側に設置されており、処理槽2への導入前の被処理水の蛍光強度を測定する。原水測定部15の設置位置は、酸化促進剤注入部3の設置位置よりも上流側であるので、原水測定部15の測定対象は、酸化促進剤の注入前の被処理水である。これにより、原水測定部15は、酸化促進剤の影響を受ける前の被処理水の蛍光強度を測定することができる。なお、原水測定部15の測定結果は、制御部10aに通知される。
【0027】
処理水測定部16も、原水測定部15と同様の、被処理水の蛍光強度を測定するセンサである。処理水測定部16は、接続流路2eに設置されており、接続流路2eを流れる被処理水の蛍光強度を測定するように構成されている。接続流路2eを流れる被処理水は、オゾンの接触開始時と接触終了との間の被処理水であるので、処理水測定部16の測定対象は、オゾンの接触開始時と接触終了との間の被処理水である。なお、処理水測定部16の測定結果は、制御部10aに通知される。
【0028】
このように、原水測定部15および処理水測定部16は、蛍光強度を測定するセンサである蛍光強度計として構成される。原水測定部15および処理水測定部16が蛍光光度計として構成される場合、原水測定部15および処理水測定部16は、測定対象の水に励起光を照射することで蛍光強度を測定する。
【0029】
水道プロセスでは、フルボ酸様有機物などと呼ばれる自然由来の有機物に相当する蛍光強度として、波長320~360nmの励起光に対する波長420~460nmの蛍光強度、特に、波長345nm付近の励起光に対する波長425nm付近の蛍光強度を測定することが望ましい。蛍光強度は、有機物濃度の代表的な指標であるE260(吸光度)、TOC(Total Organic Carbon)、およびトリハロメタン生成能などと相関がある。なお、第1実施形態において、蛍光強度に変えて吸光度が用いられる場合、吸光度を測定するための吸光度計の測定波長は、たとえば250~270nmに設定される。
【0030】
溶存オゾン測定部17は、被処理水の溶存オゾン濃度を測定するセンサである。溶存オゾン測定部17は、接続流路2eに設置されており、接続流路2eを流れる被処理水の溶存オゾン濃度を測定するように構成されている。接続流路2eを流れる被処理水は、オゾンの接触開始時と接触終了との間の被処理水であるので、溶存オゾン測定部17の測定対象は、オゾンの接触開始時と接触終了との間の被処理水である。なお、溶存オゾン測定部17の測定結果は、制御部10aに通知される。
【0031】
ここで、第1実施形態において、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、被処理水がオゾン接触領域の通過に要する時間、すなわちオゾンの接触開始から接触終了までの時間をTとしたときに、0T~0.6Tの範囲内のいずれかの時間に対応した位置に配置されていることが好ましい。より具体的に、第1実施形態のように散気部4aが2つ設けられている場合、処理水測定部16は、0.4T~0.6Tの範囲内のいずれかの時間に対応した位置に配置されていることが好ましい。図1に示される例は、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17が0.4T~0.6Tの範囲内の時間に対応した位置に設けられた接続流路2eに配置されているので、適切である。
【0032】
ただし、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17の位置が散気部4aの位置と重なっていると、散気部4aから出力されるオゾンを含む気泡が処理水測定部16および溶存オゾン測定部17による測定の妨げになる可能性があるため、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、散気部4aと重ならない位置に配置されていることが好ましい。
【0033】
第1実施形態では、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17が上述の位置に配置されていることで、オゾンを含む気泡の影響を受けることなく、適切な測定結果を得ることが可能になる。その結果、後述するように、酸化促進剤およびオゾンの注入量を適切に制御することが可能になる。
【0034】
制御部10aは、原水測定部15及び処理水測定部16の測定結果に基づき蛍光強度の残存率を算出し、当該残存率と閾値との比較結果に基づいて、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御することが可能なように構成されている。また、制御部10aは、溶存オゾン測定部17の測定結果と閾値との比較結果に基づいて、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御することも可能なように構成されている。なお、制御部10aの動作は、水処理方法の説明において詳細に述べる。
【0035】
次に、第1実施形態にかかる水処理システム1を用いた水処理方法を説明する。
【0036】
第1実施形態にかかる水処理方法は、酸化促進剤注入ステップと、オゾン注入ステップと、原水測定ステップと、処理水測定ステップと、溶存オゾン測定ステップと、制御ステップと、を備えている。
【0037】
酸化促進剤注入ステップは、酸化促進剤注入部3により、処理槽2への導入以前(または導入以後)の被処理水に酸化促進剤を注入する工程である。また、オゾン注入ステップは、オゾン注入部4により、処理槽2内を流れる酸化促進剤を注入済みの被処理水にオゾンを接触させる工程である。
【0038】
また、原水測定ステップは、原水測定部15により、処理槽2への導入以前の被処理水の蛍光強度を測定する工程である。また、処理水測定ステップは、処理水測定部16により、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の蛍光強度を測定する工程である。
【0039】
また、溶存オゾン測定ステップは、溶存オゾン測定部17により、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の溶存オゾン濃度を測定する工程である。また、制御ステップは、原水測定部15、処理水測定部16、および溶存オゾン測定部17の測定結果に基づいて、制御部10aにより、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量またはオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御する工程である。
【0040】
以下、上述した工程についてより詳細に説明する。
【0041】
まず、原水測定ステップにおいて、原水測定部15は、処理槽2への導入以前の被処理水の蛍光強度を原水測定部15により測定する。なお、被処理水とは、たとえば、浄水場の沈殿池において濁り成分が除去された後の被処理水である。
【0042】
そして、酸化促進剤注入ステップにおいて、酸化促進剤注入部3は、たとえば過酸化水素のような酸化促進剤を被処理水に注入する。酸化促進剤が注入された被処理水は、処理槽2の流入部2aから分割処理槽2cに導入される。そして、オゾン注入ステップにおいて、オゾン注入部4は、オゾン発生器4cから発生したオゾンを、配管4bおよび散気部4aを介して、分割処理槽2c内の被処理水に注入する。注入されたオゾンは、酸化促進剤と反応することでOHラジカルを生成し、当該OHラジカルにより、分割処理槽2c内の被処理水中の処理対象物質が分解される。
【0043】
なお、処理対象物質(たとえば上水処理ではカビ臭やトリハロメタン前駆物質など)の性質から考えると、オゾンの注入量に対する過酸化水素の注入量比は、モル比で1~5程度が望ましい。オゾンによる消毒時の副生成物である臭素酸などが生成されるリスクが高い時には、モル比が1~5程度となる範囲内で過酸化水素の比率を高めることで、臭素酸が生成されるリスクを抑えることができる。
【0044】
分割処理槽2cにおいて処理された被処理水は、分割処理槽2cから接続流路2eに送られる。そして、処理水測定ステップにおいて、処理水測定部16は、接続流路2e内の被処理水の蛍光強度を測定する。また、溶存オゾン測定ステップにおいて、溶存オゾン測定部17は、接続流路2e内の被処理水の溶存オゾン濃度を測定する。
【0045】
そして、被処理水は、接続流路2eから分割処理槽2dに送られる。酸化促進剤注入ステップにおいて被処理水に予め必要十分な量の過酸化水素が注入されているものとすると、後段の分割処理槽2dに送られる被処理水には、過酸化水素が残存していることになる。一方、前段の分割処理槽2cにおいて注入されたオゾンは、過酸化水素によってその大部分が分解されていると考えられるので、後段の分割処理槽2dに送られる頃には、被処理水の溶存オゾン濃度はかなり低下していると考えられる。
【0046】
分割処理槽2d内の被処理水には、前段の分割処理槽2c内の被処理水と同様に、オゾン注入ステップにより、オゾンが注入される。注入されたオゾンは、酸化促進剤と反応することでOHラジカルを生成し、当該OHラジカルにより、被処理水中に残存する処理対象物質が分解される。
【0047】
次に、制御ステップについて説明する。第1実施形態では、以下に説明するような方法により、過酸化水素およびオゾンの注入を過不足なく安定的に実行することが可能である。
【0048】
制御ステップにおいては、原水測定ステップおよび処理水測定ステップにおいて測定された蛍光強度と、溶存オゾン測定ステップにおいて測定された溶存オゾン濃度と、が制御部10aに入力される。そして、制御部10aは、まず、原水測定ステップおよび処理水測定ステップにおいて測定された蛍光強度に基づき、蛍光強度の残存率を算出する。蛍光強度の残存率は、たとえば下記の式によって算出される。
【0049】
蛍光強度の残存率=FLout1/FLin
【0050】
上記の式において、FLinは、原水測定ステップで測定された蛍光強度に対応し、FLout1は、処理水測定ステップで測定された蛍光強度に対応する。
【0051】
制御部10aは、上記の式により算出された残存率が、残存率の下限として予め定められた閾値を下回る場合は、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を減少させる制御を実行する。一方、制御部10aは、上記の式により算出された残存率が、残存率の上限として予め定められた閾値を上回る場合は、酸化促進剤の注入量およびオゾンの注入量のうち少なくとも一方を増加させる制御を実行する。
【0052】
なお、オゾンと過酸化水素とのモル比を一定に保つことが適切である場合は、たとえば、酸化促進剤の注入量およびオゾンの注入量の両方を増加または減少させることでモル比を一定にする制御が実行される。この場合、オゾンと過酸化水素とのモル比を適切な範囲に維持しつつ過酸化水素の注入量およびオゾンの注入量の両方を増加または減少させるか、もしくは、オゾンの注入量のみを増加または減少させる制御が実行されることも考えられる。
【0053】
ここで、水処理システム1の制御の指標として、オゾンの注入途中の被処理水の蛍光強度を用いる理由を説明する。処理槽2内では、注入されたオゾンおよび過酸化水素により生成されたOHラジカルにより処理対象物質が分解されるが、このとき、次の図2に示されるように、被処理水中に存在する自然由来の有機物も同時に分解されるため、蛍光強度の値は小さくなる。
【0054】
図2は、第1実施形態にかかるオゾンおよび酸化促進剤の注入量と蛍光強度との関係を示した例示的かつ模式的なグラフである。
【0055】
図2に示される例において、横軸は、オゾンおよび過酸化水素の注入量に対応し、縦軸は、蛍光強度に対応する。第1実施形態では、オゾンが2つの散気部4aから注入されるが、図2に示される例におけるオゾンの注入量は、2つの散気部4aから注入される合計量を意味する。なお、図2に示される例において、実線で示されるFLout1は、上記の通り、処理水測定ステップで測定された蛍光強度に対応し、破線で示されるFLout2は、分割処理槽2dの流出部2bの付近において測定された被処理水の蛍光強度に対応する。オゾンおよび過酸化水素の注入量が0であるときの蛍光強度は、原水測定ステップで測定された蛍光強度(上記のFLin)となる。
【0056】
図2に示されるように、FLout1もFLout2も、共に、オゾンおよび過酸化水素の注入量が増えるほど値が小さくなる。FLout1は、オゾンおよび過酸化水素による処理の途中段階での蛍光強度であるため、処理の終了段階での蛍光強度を示すFLout2よりも値が大きくなっている。また、FLout2の曲線の傾きは、横軸の値が「X1」を超えたところから小さくなっているが、FLout1の曲線の傾きは、横軸の値が「X1」を超えてもFLout2の曲線の傾きほど小さくならず、横軸の値が「X2」を超えたところで小さくなっていると言える。
【0057】
ここで、FLinに対するFLout1の割合をFL残存率1とする(FL残存率1=FLout1/FLin)。また、FLinに対するFLout2の割合をFL残存率2とする(FL残存率2=FLout2/FLin)。FL残存率1およびFL残存率2と、オゾンの注入量および過酸化水素の注入量との関係は、上述したFLout1およびFLout2の各曲線と同様の傾向を示す。また、FL残存率1およびFL残存率2は、被処理水中の被処理対象物の残存量とも対応関係を有する。
【0058】
処理槽2全体における促進酸化処理の状況は、分割処理槽2dの流出部2bの付近における上記のFL残存率2に対応したFLout2から把握することができる。上水処理におけるカビ臭除去を目的とする場合、FL残存率2は、0.1~0.2程度に維持されることが望ましい。
【0059】
しかしながら、オゾンの注入量および過酸化水素の注入量とFLout2との上述した関係から明らかなように、FL残存率2が0.1~0.2となる領域において、オゾンおよび過酸化水素の注入量に対するFL残存率2の変化量は小さい。したがって、オゾンおよび過酸化水素の注入量の制御の指標としてFL残存率2を用いると、FL残存率2の変化の見落としが発生する可能性がある。
【0060】
そこで、第1実施形態は、FL残存率1を、オゾンおよび過酸化水素の注入量の制御の指標の一つとして採用しうる。接続流路2eは、反応の途中段階の被処理水が通過する領域であるので、当該領域に対応したFL残存率1は十分に下がり切っていない。したがって、FL残存率1は、その変化が見落とされにくいので、上記のFL残存率2よりも、オゾンおよび過酸化水素の注入量の制御の指標として適切であると言える。
【0061】
第1実施形態において、制御部10aは、上述した原水測定ステップおよび処理水測定ステップにおいて測定された蛍光強度に基づき、FL残存率1を求め、このFL残存率1が予め定めた目標値(目標FL残存率1)となるように、フィードバック制御により、オゾンおよび過酸化水素の注入量を制御する。
【0062】
また、第1実施形態は、FL残存率1の他にも、上述した溶存オゾン測定ステップにおいて測定された溶存オゾン濃度を、オゾンおよび過酸化水素の注入量の制御の指標として採用しうる。前述したように、分割処理槽2cにおいて注入されたオゾンは、過酸化水素によってその大部分が分解されるので、分割処理槽2dに送られる頃には、溶存オゾン濃度がかなり低下していると考えられる。しかしながら、処理槽2への導入前の被処理水である原水中の処理対象物質の濃度が高い時は、処理対象物質の分解のため、より多くのオゾンおよび過酸化水素を注入することが必要となる。このような状況においては、溶存オゾン濃度が十分に測定できる程度の濃度まで上昇するので、制御の指標として用いることができる。
【0063】
なお、次の図3に示されるように、溶存オゾン濃度は、分割処理槽2cにおける反応の後に(つまり接続流路2eで)測定しても、分割処理槽2dにおける反応の後に(つまり流出部2bの付近で)測定しても、ほぼ同様の値となる。したがって、第1実施形態では、迅速なフィードバック制御のため、接続流路2e内で測定された被処理水の溶存オゾン濃度が、制御の指標として用いられうる。
【0064】
図3は、第1実施形態にかかるオゾンの注入率と溶存オゾン濃度との関係を示した例示的かつ模式的なグラフである。
【0065】
図3に示される例において、横軸は、オゾン/過酸化水素の注入量に対応し、縦軸は、溶存オゾン濃度に対応する。また、黒い□でプロットされた値は、オゾンおよび過酸化水素の両方を注入した場合における接続流路2e内の被処理水の溶存オゾン濃度に対応し、△でプロットされた値は、オゾンおよび過酸化水素の両方を注入した場合における流出部2b付近の被処理水の溶存オゾン濃度に対応する。なお、◇でプロットされた値は、比較として示された、オゾンを単独で注入した場合における接続流路2e内の被処理水の溶存オゾン濃度に対応する。
【0066】
図3に示されるように、オゾンおよび過酸化水素の両方を注入した場合においても、オゾンを単独で注入した場合においても、基本的には、注入量に応じて溶存オゾン濃度が増加する。したがって、オゾンおよび過酸化水素の注入量の制御の指標として溶存オゾン濃度を採用することは適切であると言える。
【0067】
また、黒い□でプロットされた値と△でプロットされた値とを比較すれば分かるように、溶存オゾン濃度は、接続流路2e内で測定しても、流出部2b付近で測定しても、ほとんど変わらない。これは、流出部2b付近においても、残存する過酸化水素により、接続流路2e内と同様にオゾンが消費されるためである。迅速なフィードバック制御のためは、流出部2b付近で測定された溶存オゾン濃度よりも、接続流路2e内で測定された溶存オゾン濃度の方が、制御の指標としてより適切であると言える。
【0068】
以上を踏まえると、蛍光強度の残存率(FL残存率1)を制御の指標としてオゾンおよび過酸化水素の注入量を制御する方法は、原水中の処理対象物質の濃度がそれほど高くない時に適した方法であると言える。しかしながら、原水中の処理対象物質の濃度が高い場合、分解のためにより多くのオゾンおよび過酸化水素を注入しても、FL残存率1が小さいことに起因して、オゾンおよび過酸化水素の注入量の変化に応じたFL残存率1の変化が小さくなるので、FL残存率1を制御の指標として用いることが難しくなってくる。
【0069】
したがって、第1実施形態において、制御部10aは、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第1の制御と、溶存オゾン測定部17の測定結果に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第2の制御と、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、の両方に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第3の制御と、を選択的に実行しうる。
【0070】
そして、第1実施形態において、制御部10aは、第1の制御と第2の制御と第3の制御との切り替えを、処理対象物質測定部18の測定結果と、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、のうち少なくとも1つ以上の測定結果に応じて実行しうる。
【0071】
より具体的に、第1実施形態において、制御部10aは、原水中の処理対象物質の濃度が低い時は、FL残存率1を制御の指標として採用し、FL残存率に応じたフィードバック制御を実行しうる。また、制御部10aは、原水中の処理対象物質の濃度が高い時は、FL残存率1に加えて溶存オゾン濃度も制御の指標として併用し、溶存オゾン濃度の上下限を設定することでオゾンおよび過酸化水素の過注入を抑制する、という制御を実行しうる。
【0072】
たとえば、第1実施形態において、制御部10aは、原水中のカビ臭物質の一例としての2-MIBの濃度が50~100ng/Lの範囲内である場合は、FL残存率1を制御の指標として採用し、それ以上の濃度である場合は、FL残存率1に加えて溶存オゾン濃度も制御の指標として併用する、という制御を実行しうる。
【0073】
前述したように、処理対象物質の性質から考えると、オゾンの注入量に対する過酸化水素の注入量比は、モル比で1~5程度であればよい。したがって、第1実施形態において、制御部10aは、たとえば過酸化水素の過剰注入を防止するためにモル比を1付近に固定した上で、オゾンおよび過酸化水素の注入量を制御しうる。オゾンによる消毒時の副生成物である臭素酸などが生成されるリスクが高い時には、モル比が1~5程度となる範囲内で過酸化水素の比率を高めることで、臭素酸が生成されるリスクを抑えることができる。
【0074】
なお、一般に、臭素酸が生成されるリスクをリアルタイムで把握することは困難であり、原水の水質の大きな変化がなければ、臭素酸が生成されるリスクは大きく変わることがない。したがって、第1実施形態では、過酸化水素の比率を手動で設定するという方法が採用されてもよいし、臭素酸が生成されるリスクを把握することが可能な水質指標などをリアルタイムで取得できる仕組みがあれば、その仕組みと連動させて過酸化水素の比率を自動で変更するという方法が採用されてもよい。
【0075】
また、実施形態において、制御部10aは、FL残存率1から溶存オゾン濃度へと制御の指標を完全に切り替える場合は、溶存オゾン濃度を、予め定めた目標値(目標溶存オゾン濃度)となるように、オゾンおよび過酸化水素の注入量を制御しうる。
【0076】
本願発明者らは、鋭意研究した結果、処理対象物質としてのカビ臭物質と蛍光強度とはほぼ同じ割合で減少していくことを確認したので、蛍光強度の残存率(FL残存率1)を指標とした制御によれば、処理対象物質の濃度を目的濃度まで処理することが可能であることは分かっている。
【0077】
しかしながら、原水中の処理対象物質の濃度が高い場合、または処理対象物質の目標濃度を低く設定する必要がある場合、蛍光強度の値が小さくなるまでオゾンおよび酸化促進剤の注入量を増やす必要があるので、注入量に対する蛍光強度の変化が小さくなり制御に適さなくなってくる(図2参照)。
【0078】
一方、オゾンおよび酸化促進剤の注入量が増えてくると、低い値を示していた溶存オゾン濃度も少しずつ上昇し、十分に測定できる濃度になってくる(図3参照)。
【0079】
上記を踏まえて、第1実施形態において、制御部10aは、FL残存率1が閾値(たとえば20%)以下になるという条件と、溶存オゾン濃度が閾値(たとえば0.10mg/L)以上になるという条件と、のうち少なくとも一方が成立した段階で、制御の指標をFL残存率1から溶存オゾン濃度に切り替えうる。これにより、たとえば目標とする水質の幅が広い場合であっても、オゾンおよび過酸化水素の注入量を適切に制御することができる。
【0080】
ただし、原水が清澄で蛍光強度がそもそも低い場合は、オゾンおよび酸化促進剤の注入量に対するFL残存率1の変化が小さくなる傾向にある。したがって、この場合は、溶存オゾン濃度も制御の指標として併用することが望ましい。この場合、FL残存率1に基づく制御を基本的な制御として実行した上で、適宜設定された溶存オゾン濃度の上限値に基づいてオゾンおよび酸化促進剤の過剰注入を抑制するという制御が実行されうる。
【0081】
以上説明したように、第1実施形態にかかる水処理システム1は、処理槽2と、酸化促進剤注入部3と、オゾン注入部4と、原水測定部15と、処理水測定部16と、溶存オゾン測定部17と、制御部10aと、を備えている。酸化促進剤注入部3は、処理槽2への導入以前または導入以後の被処理水に酸化促進剤を注入する。オゾン注入部4は、処理槽2内を流れる酸化促進剤を注入済みの被処理水にオゾンを接触させる。
【0082】
原水測定部15は、処理槽への導入以前の被処理水の蛍光強度を測定する。処理水測定部16は、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の蛍光強度を測定する。溶存オゾン測定部17は、オゾンの接触開始から接触終了までの間の被処理水の溶存オゾン濃度を測定する。
【0083】
ここで、制御部10aは、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、に基づいて、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御する。これにより、複数の指標を用いて、酸化促進剤およびオゾンの注入による水処理を適切に実行することができる。
【0084】
より具体的に、上記のような構成によれば、たとえば、オゾンと過酸化水素の注入量に対する蛍光強度の変化量が大きい領域と、溶存オゾン濃度の変化がとらえられる領域と、で別の指標に基づく制御を実行することができる。したがって、原水中の処理対象物質の濃度が低濃度の場合から高濃度となる場合まで、オゾンおよび過酸化水素を適切に注入することが可能となり、臭素酸が生成されるリスクを下げつつ、処理対象物質を適切に低減することができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、第2実施形態について説明する。図4に示される例において、図1に示される例と同一の符号が付された構成要素については、第1実施形態と同様であるものとして説明を省略する。
【0086】
図4は、第2実施形態にかかる水処理システム21の構成を示した例示的かつ模式的な図である。以下に説明するように、第2実施形態では、第1実施形態にかかる処理槽2と異なる構成の処理槽22が用いられる。以下、処理槽22の構成を中心に説明する。
【0087】
図4に示されるように、第2実施形態にかかる処理槽22も、第1実施形態にかかる処理槽2と同様に、被処理水の導入を受け付け、導入された被処理水にオゾンを接触させるように被処理水を一時的に貯蔵するタンクである。ただし、第2実施形態にかかる処理槽22は、第1実施形態のような分割処理槽2cおよび2dを有しない単一の処理槽として構成されている。
【0088】
処理槽22には、被処理水が流入する流入部2aと、被処理水が流出する流出部2bと、が設けられている。流入部2aから処理槽22に導入された被処理水は、処理槽22内を通過し、流出部2bから流出する。処理槽22内には、被処理水の流れる方向に沿って2つの散気部4aが配置され、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17が2つの散気部4aの間に配置されている。
【0089】
第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、処理槽22内で処理水に2回オゾンを接触させることができる。すなわち、処理槽22内では、2つの散気部4aが設けられた領域で被処理水中の酸化促進剤とオゾンとが反応することでOHラジカルが生成される。そして、生成されたOHラジカルにより、被処理水中の処理対象物質の分解が進む。
【0090】
したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の制御を実行することができる。より具体的に、第2実施形態にかかる制御装置20の制御部20aも、第1実施形態にかかる制御部10aと同様に、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、に基づいて、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御しうる。
【0091】
より詳細に、第2実施形態にかかる制御部20aも、第1実施形態にかかる制御部10aと同様に、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第1の制御と、溶存オゾン測定部17の測定結果に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第2の制御と、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、の両方に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第3の制御と、を選択的に実行しうる。
【0092】
なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0093】
第2実施形態にかかる水処理システム21によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、下記の効果も得られる。
【0094】
第2実施形態にかかる水処理システム21の処理槽22は、隔壁などによって区画されていないので、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、オゾンを接触させている最中の被処理水から測定結果を取得することができる。これにより、オゾンおよび過酸化水素の注入量に対する測定結果の変化をより敏感に捉えることができるので、オゾンおよび過酸化水素の注入量を適切に制御することができる。
【0095】
<第3の実施形態>
次に、図5を参照して、第3実施形態について説明する。図5に示される例において、図1に示される例と同一の符号が付された構成要素については、第1実施形態と同様であるものとして説明を省略する。
【0096】
図5は、第3実施形態にかかる水処理システム31の構成を示した例示的かつ模式的な図である。以下に説明するように、第3実施形態では、第1実施形態にかかる処理槽2と異なる構成の処理槽32が用いられる。以下、処理槽32の構成を中心に説明する。
【0097】
図5に示されるように、第3実施形態にかかる処理槽32も、第1実施形態にかかる処理槽2と同様に、被処理水の導入を受け付け、導入された被処理水にオゾンを接触させるように被処理水を一時的に貯蔵するタンクである。
ただし、第3実施形態にかかる処理槽32は、第1実施形態にかかる処理槽2と異なり、縦長の単一の処理槽として構成されている。
【0098】
処理槽32には、被処理水が流入する流入部32aと、被処理水が流出する流出部32bとが設けられている。流入部32aは処理槽32の上部にあり、流出部32bは処理槽32の下部にある。流入部32aから処理槽32に導入された被処理水は、処理槽32内を上方から下方に向けて通過し、流出部32bから流出される。
【0099】
また、第3実施形態では、第1実施形態にかかるオゾン注入部4と異なる構成のオゾン注入部34が設けられる。より具体的に、第3実施形態にかかるオゾン注入部34は、処理槽32の底部に配置された散気部4aを1つだけ有している。
【0100】
図5に示される例では、散気部4aが流出部32bの更に下方に配置されているが、散気部4aは、流出部32bと同じ高さまたは流出部32bの上方に配置されていてもよい。第3実施形態にかかるオゾン注入部34は、散気部4aにより、処理槽32の上方から下方に流れる被処理水に対し、処理槽32の下方からオゾンを注入する。これにより、オゾンを含む気泡は、処理槽32内を拡散しながら上昇する際に、処理槽32の上方から下方に流れる被処理水に接触する。
【0101】
なお、第3実施形態において、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、処理槽32の流入部32aと流出部32bとの間の位置に配置されている。処理水測定部16および溶存オゾン測定部17が散気部4aの近傍に設置されていると、オゾンを含む気泡が測定の障害になるため、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、オゾン注入部4から離れた位置に設置することが好ましい。
【0102】
以上の構成に基づき、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の制御を実行することができる。より具体的に、第3実施形態にかかる制御装置30の制御部30aも、第1実施形態にかかる制御部10aと同様に、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、に基づいて、酸化促進剤注入部3による酸化促進剤の注入量およびオゾン注入部4によるオゾンの注入量のうち少なくとも一方を制御しうる。
【0103】
より詳細に、第3実施形態にかかる制御部30aも、第1実施形態にかかる制御部10aと同様に、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第1の制御と、溶存オゾン測定部17の測定結果に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第2の制御と、原水測定部15および処理水測定部16の測定結果と、溶存オゾン測定部17の測定結果と、の両方に基づいて酸化促進剤およびオゾンの注入量を制御する第3の制御と、を選択的に実行しうる。
【0104】
なお、第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0105】
第3実施形態にかかる水処理システム31によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、下記の効果も得られる。
【0106】
第3実施形態にかかる水処理システム31によれば、処理槽32に配置する散気部4aを1つだけで済むので、水処理システム31の構成を単純化することができる。
【0107】
<第4実施形態>
次に、図6を参照して、第4実施形態について説明する。図6に示される例において、図1に示される例と同一の符号が付された構成要素については、第1実施形態と同様であるものとして説明を省略する。
【0108】
図6は、第4実施形態にかかる水処理システム41の構成を示した例示的かつ模式的な図である。以下に説明するように、第4実施形態では、第1実施形態にかかる原水測定部15が省略されている。
【0109】
より具体的に、図6に示されるように、第4実施形態では、流入部2aの被処理水の情報が、処理対象物質測定部18のみによって測定されている。このような構成によっても、第4実施形態にかかる制御装置40の制御部40aは、上述した第1実施形態と同様の技術的思想に基づく制御を実行することが可能である。
【0110】
すなわち、処理槽2への導入前の被処理水である原水の水質の変動が小さい場合は、接続流路2eを通過する被処理水の蛍光強度(FLout1)と、この蛍光強度に基づく残存率(FL残存率1)と、がほぼ同一であると見なせるので、原水の蛍光強度(FLin)を測定する必要がない。したがって、第4実施形態によれば、原水測定部15を省略することで、水処理システム41の構成を単純化することができる。
【0111】
なお、第4実施形態のその他の構成および動作は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。
【0112】
ここで、第4実施形態の変形例として、処理水測定部16を省略し、原水測定部15のみを用いて、制御を実行する構成も考えられる。より具体的に、原水の水質の変動が小さい場合であっても、オゾンおよび酸化促進剤の注入量と蛍光強度との間にある図2に示されるような関係はほとんど変化しない。したがって、当該関係を事前に数式としてインプットしておき、蛍光強度の残存率の目標値に対応したオゾンおよび酸化促進剤の注入量を原水測定部15の測定結果のみから演算により求めれば、フィードフォワード制御により、オゾンおよび酸化促進剤の注入量を適切に制御できる可能性が十分にあると言える。
【0113】
<第5実施形態>
次に、図7を参照して、第5実施形態について説明する。図7に示される例において、図1に示される例と同一の符号が付された構成要素については、第1実施形態と同様であるものとして説明を省略する。
【0114】
図7は、第5実施形態にかかる水処理システム51の構成を示した例示的かつ模式的な図である。以下に説明するように、第5実施形態では、被処理水の蛍光強度を測定するための構成が第1実施形態とは異なる。
【0115】
図7に示されるように、第5実施形態では、第1実施形態にかかる原水測定部15および処理水測定部16に相当する構成として、原水用分取管55aと、処理水用分取管55bと、切替部55cと、水質測定部55dと、を備えている。
【0116】
原水用分取管55aは、処理槽2への導入前の被処理水である原水を分取するように、一端が流入部2aに接続されている。また、処理水用分取管55bは、分割処理槽2cにおける反応と分割処理槽2dにおける反応との間の被処理水を分取するように、一端が接続流路2e接続されている。原水用分取管55aおよび処理水用分取管55bの各々の他端は、切替部55cに接続されている。
【0117】
切替部55cは、原水用分取管55aおよび処理水用分取管55bにより分取された被処理水を水質測定部55dに選択的に供給するように、原水用分取管55aを水質測定部55dに接続するか、または処理水用分取管55bを水質測定部55dに接続するかを切り替えるスイッチとして構成されている。そして、水質測定部55dは、切替部55cから供給される被処理水の蛍光強度を測定する蛍光強度計(または吸光度を測定する吸光度計)として構成されている。
【0118】
第5実施形態において、切替部55cは、たとえば処理槽2内での被処理水の滞留時間が所定時間(たとえば10分)以上の場合に、上記のような接続関係を交互に切り替えるように構成されている。したがって、この場合、原水の蛍光強度(FLin)と、接続流路2e内の被処理水の蛍光強度(FLout1)とが、単一の水質測定部55dにより交互に測定される。
【0119】
上記のような構成において、たとえば、測定されていない方の蛍光強度を次に測定されるまで一定と見なすようにすれば、原水の蛍光強度と、接続流路2e内の被処理水の蛍光強度と、の両方を同時に取得するのと同等の結果を得ることが可能である。したがって、第5実施形態にかかる制御装置50の制御部50aも、上述した第1実施形態と同様の技術的思想に基づく制御を実行することが可能である。ただし、第5実施形態においては、被処理水の水質の変動がそれほど大きくないことが望ましい。
【0120】
このように、第5実施形態においては、原水の蛍光強度と、接続流路2e内の被処理水の蛍光強度と、を測定するための構成として、原水用分取管55a、処理水用分取管55b、切替部55c、および水質測定部55dが用いられる。すなわち、第5実施形態においては、原水用分取管55a、切替部55c、および水質測定部55dが、原水の蛍光強度を測定する原水測定部として機能し、処理水用分取管55b、切替部55c、および水質測定部55dが、接続流路2e内の被処理水の蛍光強度を測定する処理水測定部として機能する。これにより、メンテナンスが必要となる高価な測定機器を単一の水質測定部55dに集約することができるので、水処理システム51の構成を単純化することができる。
【0121】
<第6実施形態>
次に、図8を参照して、第6実施形態について説明する。図8に示される例において、図1に示される例と同一の符号が付された構成要素については、第1実施形態と同様であるものとして説明を省略する。
【0122】
図8は、第6実施形態にかかる水処理システム61の構成を示した例示的かつ模式的な図である。以下に説明するように、第6実施形態では、第1実施形態にかかる処理槽2と異なる構成の処理槽62が用いられる。以下、処理槽62の構成を中心に説明する。
【0123】
図8に示されるように、第6実施形態にかかる処理槽22も、第1実施形態にかかる処理槽2と同様に、被処理水の導入を受け付け、導入された被処理水にオゾンを接触させるように被処理水を一時的に貯蔵するタンクである。ただし、第6実施形態にかかる処理槽62は、第1実施形態にかかる処理槽2と異なり、3つの領域に区画されている。
【0124】
より具体的に、第6実施形態にかかる処理槽62には、被処理水が流入する流入部62aと、被処理水が流出する流出部62bとが設けられている。また、処理槽62には、3つの分割処理槽62c、62d、および62eが設けられている。
【0125】
分割処理槽62cおよび62dの間には、接続流路62fが設けられており、分割処理槽62dおよび62eの間には、接続流路62gが設けられている。接続流路62fおよび62gは、隔壁62hによって分割処理槽62c、62d、および62eから区画されている。
【0126】
流入部62aから処理槽62に導入された被処理水は、分割処理槽62c、接続流路62f、分割処理槽62d、接続流路62g、および分割処理槽62eを経て、流出部62bから処理槽2の外部に流出される。
【0127】
また、第6実施形態では、第1実施形態にかかるオゾン注入部4と異なる構成のオゾン注入部64が設けられる。より具体的に、第6実施形態にかかるオゾン注入部64は、散気部4aが、分割処理槽62c、62d、および62eに対応するように3つ設けられている。
【0128】
すなわち、第6実施形態では、3つの分割処理槽62c、62d、62eのそれぞれの底部に、散気部4aが配置されている。したがって、第6実施形態では、処理槽62内で3度に渡って被処理水にオゾンが接触する。
【0129】
なお、第6実施形態において、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、最も上流側の分割処理槽62cと2番目に上流側の分割処理槽62dとの間の接続流路62f内の被処理水の特性を測定するように構成されている。したがって、第6実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、オゾンの接触開始から接触終了までの時間をTとしたときに、0T~0.6Tの範囲内のいずれかの時間に対応した位置に配置されている。
【0130】
なお、第6実施形態のように、散気部4aが3つ設けられた構成においては、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、0.2T~0.4Tの範囲の何れかの位置に配置されていることが好ましい。図8に示される例は、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17に対応した接続流路62fが0.2T~0.3Tの範囲内にあるので、上記の条件を満たす。
【0131】
なお、第6実施形態にかかるその他の構成および動作は、上述した第1実施形態と同様である。したがって、第6実施形態にかかる制御装置60の制御部60aも、上述した第1実施形態と同様の技術的思想に基づく制御を実行することができる。したがって、第6実施形態によっても、上述した第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0132】
第6実施形態では、処理槽62に散気部4aが3つ設けられているので、過酸化水素の注入によって減少したオゾンを後段で再注入することを容易に行うことができる。
【0133】
<第7実施形態>
次に、図9を参照して、第7実施形態について説明する。第7実施形態は、上述した第6実施形態の変形である。図9に示される例において、図8に示される例と同一の符号が付された構成要素については、第6実施形態と同様であるものとして説明を省略する。
【0134】
図9は、第7実施形態にかかる水処理システム71の構成を示した例示的かつ模式的な図である。以下に説明するように、第7実施形態では、第6実施形態にかかる処理槽62と異なる構成の処理槽72が用いられる。以下、処理槽72の構成を中心に説明する。
【0135】
図9に示されるように、第7実施形態にかかる処理槽72も、第6実施形態にかかる処理槽62と同様に、被処理水の導入を受け付け、導入された被処理水にオゾンを接触させるように被処理水を一時的に貯蔵するタンクである。ただし、第7実施形態にかかる処理槽72は、第6実施形態のような分割処理槽62c、62d、および62eを有しない単一の処理槽として構成されている。
【0136】
より具体的に、処理槽72には、被処理水が流入する流入部72aと、流入部2aから処理槽22に導入された被処理水は、処理槽22内を通過し、流出部2bから流出する。処理槽72内には、被処理水の流れる方向に沿って3つの散気部4aが配置され、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17が、最も上流側の散気部4aと2番目に上流側の散気部4aとの間に配置されている。
【0137】
第7実施形態においても、上述した第6実施形態と同様に、処理槽72に処理水に3度に渡ってオゾンを接触させることができる。したがって、第7実施形態にかかる制御装置70の制御部70aも、上述した第6実施形態と同様の技術的思想に基づく制御を実行することが可能である。
【0138】
なお、第7実施形態のその他の構成および動作は、上述した第6実施形態とほぼ同様である。したがって、第7実施形態によれば、上述した第6実施形態と同等の効果が得られるとともに、下記の効果も得られる。
【0139】
すなわち、第7実施形態にかかる水処理システム71の処理槽72は、隔壁などによって区画されていないので、処理水測定部16および溶存オゾン測定部17は、オゾンを接触させている最中の被処理水から測定結果を取得することができる。これにより、オゾンおよび過酸化水素の注入量に対する測定結果の変化をより敏感に捉えることができるので、オゾンおよび過酸化水素の注入量を適切に制御することができる。
【0140】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1、21、31、41、51、61、71 水処理システム
2、22、32、62、72 処理槽
2e、62f、62g 接続流路
3 酸化促進剤注入部
4 オゾン注入部
4a 散気部(オゾン注入部)
4b 配管(オゾン注入部)
4c オゾン発生器(オゾン注入部)
15 原水測定部
16 処理水測定部
17 溶存オゾン測定部
18 処理対象物質測定部
10a、20a、30a、40a、50a、60a、70a 制御部
55a 原水用分取管(原水測定部)
55b 処理水用分取管(処理水測定部)
55c 切替部(原水測定部、処理水測定部)
55d 水質測定部(原水測定部、処理水測定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9