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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】通信装置、伝送部品及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20231225BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20231225BHJP
【FI】
G06K7/10 184
G06K7/10 156
H04B5/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019230808
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021099633
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】松下 尚弘
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102530(JP,A)
【文献】特開2009-267774(JP,A)
【文献】特開2019-079507(JP,A)
【文献】特開2016-218814(JP,A)
【文献】林亮司,UHF帯RFIDリーダ用適応回り込みキャンセラ,電子情報通信学会2005年通信ソサイエティ大会講演論文集1,日本,社団法人電子情報通信学会,2005年09月07日,p.565,B-5-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線タグを備えるアンテナ及び第2の無線タグを備えるアンテナ給電線に信号を出力する出力部と、
前記アンテナの特性を特定可能な第1の情報を前記第1の無線タグから読み取り、前記アンテナ給電線の特性を特定可能な第2の情報を前記第2の無線タグから読み取る読取部と、
前記第1の情報及び前記第2の情報に基づき、自己干渉信号を打ち消すキャンセル信号の位相及び電力を設定する信号設定部と、を備える通信装置。
【請求項2】
第1の無線タグを備えるアンテナに信号を出力する出力部と、
前記アンテナの特性を特定可能な第1の情報を前記第1の無線タグから読み取る読取部と、
前記第1の情報に基づき、自己干渉信号を打ち消すキャンセル信号の位相及び電力を設定する信号設定部と、を備える通信装置。
【請求項3】
前記第1の情報は、前記アンテナの第1の移相量及び第1の減衰量を特定可能な情報であり、
前記第2の情報は、前記アンテナ給電線の第2の移相量及び第2の減衰量を特定可能な情報であり、
前記信号設定部は、前記キャンセル信号の移相量を前記第1の移相量と前記第2の移相量の合計に基づいて設定し、前記キャンセル信号の強さを前記第1の減衰量と前記第2の減衰量の合計に基づいて設定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記読取部による前記情報の読み取りより前に、送信電力を第1の電力に設定し、前記キャンセル信号の位相及び電力の設定より後に、前記送信電力を前記第1の電力よりも大きい第2の電力に設定する電力設定部をさらに備える、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記電力設定部は、前記読取部が前記情報の一部又は全部を読み取ることができなかった場合、前記アンテナへ送信する電力を、前記第2の電力よりも低い第3の電力に設定する、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
無線タグと通信する通信装置に用いる伝送部品であって、
前記伝送部品の特性を特定可能な情報を記憶した無線タグと、
前記通信装置が出力する信号を伝送する伝送部と、を備える伝送部品。
【請求項7】
第1の無線タグを備えるアンテナと、
第2の無線タグを備えるアンテナ給電線と、
前記アンテナの特性を特定可能な第1の情報を前記第1の無線タグから読み取り、前記アンテナ給電線の特性を特定可能な第2の情報を前記第2の無線タグから読み取る読取部と、
前記第1の情報及び前記第2の情報に基づき、自己干渉信号を打ち消すキャンセル信号の位相及び電力を設定する設定部と、を備える通信システム。
【請求項8】
第1の無線タグを備えるアンテナと、
前記アンテナの特性を特定可能な第1の情報を前記第1の無線タグから読み取る読取部と、
前記第1の情報に基づき、自己干渉信号を打ち消すキャンセル信号の位相及び電力を設定する設定部と、を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信装置、伝送部品及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(radio frequency identifier)タグなどの無線タグと通信して無線タグに記憶された情報を読み取るリーダー装置がある。リーダー装置は、自己干渉信号と呼ばれるノイズを低減するために、自己干渉信号と逆位相のキャンセル信号を用いて自己干渉信号を打ち消している。なお、自己干渉信号は、廻り込み信号及び反射信号を含む。廻り込み信号は、送信波がアンテナ共用器を通過して受信系に到達してしまうものである。また、反射信号は、送信波がアンテナの不整合によりアンテナ給電点で反射して受信系に到達してしまうものである。このうち、反射信号の電力及び位相は、アンテナ給電線及びアンテナの特性によって異なるため、自己干渉信号もアンテナ給電線及びアンテナの特性によって異なる。
【0003】
ところで、リーダー装置には、複数種類のアンテナを接続可能なもの、及び複数種類のアンテナ給電線及びアンテナを接続可能なものがある。このようなリーダー装置は、接続しているアンテナの種類、又はアンテナ給電線の種類及びアンテナの種類によって、自己干渉信号の電力及び位相が変わる。このため、従来のリーダー装置は、例えば、キャンセル信号の電力及び位相を適切に設定するために、制御位相と電力を全範囲掃引している。このため、従来のリーダー装置は、キャンセル信号の電力及び位相の設定に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-8313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、キャンセル信号の電力及び位相を従来よりも短時間で設定可能にする通信装置、伝送部品及び通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の通信装置は、出力部、読取部及び信号設定部を備える。出力部は、第1の無線タグを備えるアンテナ及び第2の無線タグを備えるアンテナ給電線に信号を出力する。読取部は、前記アンテナの特性を特定可能な第1の情報を前記第1の無線タグから読み取り、前記アンテナ給電線の特性を特定可能な第2の情報を前記第2の無線タグから読み取る。信号設定部は、前記第1の情報及び前記第2の情報に基づき、自己干渉信号を打ち消すキャンセル信号の位相及び電力を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る通信システム及び当該通信システムに含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図。
図2図1中の補助記憶装置が記憶する給電線テーブルの一例を示す図。
図3図1中の補助記憶装置が記憶するアンテナテーブルの一例を示す図。
図4】自己干渉信号について説明するための図。
図5図1中のアンテナ給電線の一部及びアンテナを示す斜視図。
図6図1中の直交検波器及び直流レベル検出回路の一部を示す図。
図7】検出信号の特性の一例を示すグラフ。
図8図1中のプロセッサーによる処理の一例を示すフローチャート。
図9図1中のプロセッサーによる処理の一例を示すフローチャート。
図10図1中のリーダー装置の送信電力の推移の一例を示すグラフ。
図11】第2実施形態に係る通信システム及び当該通信システムに含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、いくつかの実施形態に係る通信システムについて図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。また、各図面及び本明細書中において、同一の符号は同様の要素を示す。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る通信システム1及び通信システム1に含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図である。通信システム1は、RFIDタグなどの無線タグと通信して、当該無線タグに記憶された情報の読み取り又は読み書きを行うシステムである。通信システム1は、一例として、リーダー装置10、アンテナ給電線40、アンテナ50及び無線タグ60を含む。なお、リーダー装置10は、通信装置の一例である。
【0009】
リーダー装置10は、アンテナ給電線40及びアンテナ50を接続可能である。また、リーダー装置10は、アンテナ給電線40及びアンテナ50を別のアンテナ給電線40及びアンテナ50取り換えることも可能である。リーダー装置10は、アンテナ給電線40及びアンテナ50に信号を出力することでアンテナ50から電波を送信する。また、リーダー装置10は、アンテナ50によって受信された電波から情報を読み取る。これにより、リーダー装置10は、アンテナ給電線40及びアンテナ50を介して無線タグと通信する。リーダー装置10は、一例として、制御部11、補助記憶装置12、入力デバイス13、通信I/F(interface)14、DA(digital to analog)変換回路15、局部発振器16、変調器17、BPF(band-pass filter)18、送信アンプ19、アンテナ共用器20、給電線接続部21、制御回路22、可変減衰器23、可変移相器24、合成回路25、LNA(low-noise amplifier)26、直交検波器27、直流レベル検出回路28、AD(analog to digital)変換回路29、BPF30、ベースバンド増幅器31及びAD変換回路32を含む。
【0010】
制御部11は、例えば、リーダー装置10の制御などを行う回路である。また、制御部11は、DA変換回路15に送信ベースバンド信号を出力する。送信ベースバンド信号は、アンテナ50から送信する電波に載せる情報を含む。制御部11は、一例として、プロセッサー111、ROM(read-only memory)112及びRAM(random-access memory)113を含む。
【0011】
プロセッサー111は、リーダー装置10の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターの中枢部分に相当する。プロセッサー111は、ROM112又は補助記憶装置12などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、リーダー装置10の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサー111は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサー111の回路内に組み込まれていても良い。プロセッサー111は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサー111は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。
【0012】
ROM112は、プロセッサー111を中枢とするコンピューターの主記憶装置に相当する。ROM112は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM112は、例えば、上記のプログラムのうちの一部又は全部を記憶する。また、ROM112は、プロセッサー111が各種の処理を行う上で使用するデータなども記憶する。
【0013】
RAM113は、プロセッサー111を中枢とするコンピューターの主記憶装置に相当する。RAM113は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM113は、プロセッサー111が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリアなどとして利用される。RAM113は、典型的には揮発性メモリである。
【0014】
補助記憶装置12は、プロセッサー111を中枢とするコンピューターの補助記憶装置に相当する。補助記憶装置12は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリなどである。補助記憶装置12は、上記のプログラムのうち、一部又は全部を記憶する場合がある。また、補助記憶装置12は、プロセッサー111が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサー111での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値などを記憶する。
【0015】
また、補助記憶装置12は、例えば、設定値DB(database)121を記憶する。
設定値DB121は、リーダー装置10に接続可能な各アンテナ給電線40及び各アンテナ50についての情報を記憶するデータベースである。設定値DB121は、一例として図2に示す給電線テーブルT1及び図3に示すアンテナテーブルT2を含む。図2は、補助記憶装置12が記憶する給電線テーブルT1の一例を示す図である。図3は、補助記憶装置12が記憶するアンテナテーブルT2の一例を示す図である。
【0016】
給電線テーブルT1は、一例として、給電線IDに、給電線名、移相量及び減衰量を関連付ける。給電線IDは、アンテナ給電線40の種類ごとにユニークな識別情報である。給電線IDと関連付いている給電線名、移相量及び減衰量は、当該給電線IDで特定される種類のアンテナ給電線40についての給電線名、移相量及び減衰量である。
【0017】
アンテナテーブルT2は、一例として、アンテナIDに、アンテナ名、移相量及び減衰量を関連付ける。アンテナIDは、アンテナ50の種類ごとにユニークな識別情報である。アンテナIDと関連付いているアンテナ名、移相量及び減衰量は、当該アンテナIDで特定される種類のアンテナ50についてのアンテナ名、移相量及び減衰量である。
【0018】
入力デバイス13は、リーダー装置10の操作者による操作を受け付ける。入力デバイス13は、例えば、ボタン又はタッチパネルなどである。
【0019】
通信I/F14は、リーダー装置10がPC(personal computer)などの他の装置と通信するためのインターフェースである。
【0020】
DA変換回路15は、制御部11が出力する送信ベースバンド信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換して変調器17に出力する。
【0021】
局部発振器16は、局部発振信号を生成して変調器17及び直交検波器27に出力する。
変調器17は、局部発振器16から入力する局部発振信号を搬送波として、DA変換回路15から入力する送信ベースバンド信号で変調する。そして、変調器17は、局部発振信号を送信ベースバンド信号で変調した送信信号をBPF18に出力する。
【0022】
BPF18は、変調器17が出力する送信信号から特定の周波数帯成分を抜き出して送信アンプ19に出力する。
送信アンプ19は、BPF18が出力する送信信号を増幅してアンテナ共用器20に出力する。
【0023】
アンテナ共用器20は、送信アンプ19から入力する送信信号を給電線接続部21及び可変減衰器23に分配して出力する。なお、アンテナ共用器20が可変減衰器23に出力する信号を「キャンセル信号」と称するものとする。また、アンテナ共用器20は、給電線接続部21を介してアンテナ給電線40から入力する受信信号を合成回路25に出力する。さらに、アンテナ共用器20は、自己干渉信号を合成回路25に出力する。
【0024】
自己干渉信号について、図4を用いて説明する。図4は、自己干渉信号について説明するための図である。送信系Sが出力する送信信号は、一部が受信系Rに入力してしまう。この、受信系Rに入力する送信信号を自己干渉信号という。自己干渉信号は、廻り込み信号SJ1及び反射信号SJ2を含む。
【0025】
廻り込み信号SJ1は、送信信号の一部がアンテナ共用器20を通過してしまうものである。廻り込み信号SJ1の電力及び位相は、アンテナ給電線40及びアンテナ50の特性と無関係である。
反射信号SJ2は、送信信号の一部がアンテナ50で反射して、受信信号と同じ経路で受信系Rに入力してしまうものである。なお、送信信号の一部がアンテナ50で反射する原因は、アンテナ50のインピーダンス不整合などである。
【0026】
図1の給電線接続部21は、リーダー装置10とアンテナ給電線40を接続するための端子である。アンテナ共用器20から出力されて給電線接続部21に入力する信号は、給電線接続部21を介してアンテナ給電線40に入力する。なお、給電線接続部21は、アンテナ50及びアンテナ給電線40に信号を出力する出力部の一例である。
【0027】
ここで、アンテナ給電線40及びアンテナ50について図1及び図5を用いて説明する。図5は、アンテナ給電線40の一部及びアンテナ50を示す斜視図である。
アンテナ給電線40は、リーダー装置10がアンテナ給電線40に出力する送信信号を伝送してアンテナ50に出力する。また、アンテナ給電線40は、アンテナ50がアンテナ給電線40に出力する受信信号を伝送してリーダー装置10に出力する。アンテナ給電線40は、一例として、伝送部41、給電線無線タグ42、装置側接続部43及びアンテナ側接続部44を含む。なお、アンテナ給電線40は、リーダー装置10に用いる伝送部品の一例である。
【0028】
伝送部41は、信号を伝送する電線である。伝送部41は、例えば、同軸ケーブルなどである。
【0029】
給電線無線タグ42は、典型的にはRFIDタグなどの無線タグである。給電線無線タグ42は、例えば、図1に示すように伝送部41の被覆上に取り付けられている。給電線無線タグ42は、アンテナ給電線40についての情報(以下「給電線情報」という。)を記憶する。給電線情報は、例えば、アンテナ給電線40の種類を示す給電線IDを含む。なお、給電線無線タグ42は、第2の無線タグの一例である。また、給電線IDは、給電線テーブルT1を参照することでアンテナ給電線40の移相量及び減衰量を特定可能な情報である。そして、アンテナ給電線40の移相量及び減衰量は、アンテナ給電線40の特性の例である。したがって、給電線情報又は給電線IDは、アンテナ給電線40の特性を特定可能な第2の情報の一例である。
給電線無線タグ42は、例えば、アンテナ50から放射された所定の電波をエネルギー源として動作するパッシブ型の無線タグである。あるいは、給電線無線タグ42は、セクアクティブ型又はアクティブ型であっても良い。また、給電線無線タグ42は、アンテナ50から放射された電波を受信して復調する。これにより、給電線無線タグ42は、送信信号に基づく動作を行う。また、給電線無線タグ42は、無変調信号に対してバックスキャッタ変調を行うことで信号を発信する。当該信号は、アンテナ50によって受信される。このようにして、給電線無線タグ42は、リーダー装置10と通信する。なお、後で説明するアンテナ無線タグ53及び無線タグ60も同様にしてリーダー装置10と通信する。
【0030】
装置側接続部43は、アンテナ給電線40をリーダー装置10に接続するための端子である。給電線接続部21と装置側接続部43が接続することで、リーダー装置10とアンテナ給電線40が接続する。
アンテナ側接続部44は、アンテナ50をアンテナ給電線40に接続するための端子である。
リーダー装置10が出力する送信信号は、装置側接続部43、伝送部41及びアンテナ側接続部44を介してアンテナ50に入力する。また、アンテナ50が出力する受信信号は、アンテナ側接続部44、伝送部41及び装置側接続部43を介してリーダー装置10に入力する。
【0031】
アンテナ50は、入力される送信信号を電波に変換して空中に放射する。また、アンテナ50は、空中の電波を受信して信号として出力する。なお、アンテナ50が出力する当該信号を、「受信信号」と称するものとする。アンテナ50は、一例として、送受信部51、筐体52、アンテナ無線タグ53及び給電線接続部54を含む。なお、アンテナ50は、リーダー装置10に用いる伝送部品の一例である。
【0032】
送受信部51は、入力される信号を電波に変換して空中に放射する。また、送受信部51は、空中の電波を受信して信号として出力する。送受信部51は、筐体52内に収められている。
筐体52は、送受信部51などを収める筐体である。
【0033】
アンテナ無線タグ53は、典型的にはRFIDタグなどの無線タグである。アンテナ無線タグ53は、例えば、図5に示すように筐体52に取り付けられている。アンテナ無線タグ53は、アンテナ50についての情報(以下「アンテナ情報」という。)を記憶する。アンテナ情報は、例えば、アンテナ50の種類を示すアンテナIDを含む。なお、アンテナ無線タグ53は、第1の無線タグの一例である。また、アンテナIDは、アンテナテーブルT2を参照することでアンテナ50の移相量及び減衰量を特定可能な情報である。そして、アンテナ50の移相量及び減衰量は、アンテナ50の特性の例である。したがって、アンテナ情報又はアンテナIDは、アンテナ50の特性を特定可能な第1の情報の一例である。
【0034】
給電線接続部54は、アンテナ50をアンテナ給電線40に接続するための端子である。装置側接続部43と給電線接続部54が接続することで、アンテナ給電線40とアンテナ50が接続する。アンテナ50に入力する信号は、給電線接続部54を介して送受信部51に入力する。また、送受信部51が出力する信号は、給電線接続部54を介してアンテナ給電線40に入力する。
【0035】
図1を用いたリーダー装置10の説明に戻る。
制御回路22は、制御部11による制御に基づき、可変減衰器23に減衰制御信号を入力する。減衰制御信号は、可変減衰器23を制御する信号である。また、制御回路22は、可変移相器24に移相制御信号を入力する。移相制御信号は、可変移相器24を制御する信号である。以上のようにして、制御部11は、可変減衰器23及び可変移相器24を制御する。
【0036】
可変減衰器23は、制御回路22から入力する減衰制御信号に基づき、アンテナ共用器20から入力するキャンセル信号を減衰させる。そして、可変減衰器23は、減衰させたキャンセル信号を可変移相器24に出力する。これにより、可変減衰器23を通過したキャンセル信号は、振幅(電力)が小さくなる。
【0037】
可変移相器24は、制御回路22から入力する移相制御信号に基づき、可変減衰器23から入力するキャンセル信号の位相を変化させる。そして、可変移相器24は、位相を変化させたキャンセル信号を合成回路25に出力する。
【0038】
合成回路25は、アンテナ共用器20から入力する受信信号及び自己干渉信号と、可変移相器24から入力するキャンセル信号とを合成してLNA26に出力する。適切なキャンセル信号の電力及び位相が適切であれば、合成回路25によって、自己干渉信号とキャンセル信号が打ち消しあう。これにより、合成回路25は、受信信号のみをLNA26に出力する。ただし、合成回路25が出力する受信信号は、自己干渉信号などを原因とするノイズを含む場合がある。
LNA26は、合成回路25から入力する受信信号を増幅して直交検波器27に出力する。
【0039】
直交検波器27及び直流レベル検出回路28について、図1及び図6を用いて説明する。図6は、直交検波器27及び直流レベル検出回路28の一部を示す図である。
【0040】
直交検波器27は、合成回路25からLNA26を介して入力する受信信号を、局部発振器16から入力する局部発振信号を用いて受信ベースバンド信号に復調する。そして、直交検波器27は、受信ベースバンド信号を直流レベル検出回路28及びBPF30に出力する。なお、受信ベースバンド信号は、受信信号に含まれるベースバンド信号である。また、受信ベースバンド信号は、I(in-phase)信号及びQ(quadrature)信号を含む。直交検波器27は、図6に示すように、一例として、電力分配器271、ミキサー272I、ミキサー272Q及び移相器273を含む。
【0041】
電力分配器271は、合成回路25から入力する受信信号を2つに分配してミキサー272I及びミキサー272Qに入力する。
ミキサー272Iは、電力分配器271から入力する受信信号を局部発振器16から入力する局部発振信号で復調してI信号を出力する。
ミキサー272Qは、電力分配器271から入力する受信信号を移相器273から入力する局部発振信号で復調してQ信号を出力する。
移相器273は、局部発振器16から入力する局部発振信号の位相を90度変化させてミキサー272Qに出力する。
【0042】
直流レベル検出回路28は、図6に示すように、一例として、I相DC(direct current)抽出回路281及びQ相DC抽出回路282を含む。
【0043】
I相DC抽出回路281は、直交検波器27から入力するI信号から直流成分を抽出して出力する。
Q相DC抽出回路282は、直交検波器27から入力するQ信号から直流成分を抽出して出力する。
【0044】
直流レベル検出回路28は、I相DC抽出回路281が出力する直流成分とQ相DC抽出回路282が出力する直流成分とを合成して検出信号を生成する。検出信号は、自己干渉信号がキャンセル信号によって打ち消されている度合いを示す信号である。検出信号は、例えば、図7に示すような特性を示す。図7は、検出信号の特性の一例を示すグラフである。図7のグラフの縦軸は、検出信号の強さを示す。なお、検出信号の強さは、例えば、検出信号の電力の大きさである。また、図7のグラフの横軸は、キャンセル信号の逆相と自己干渉信号の位相差[°(度)]を示す。図7に示すように、検出信号は、自己干渉信号とキャンセル信号の逆相の位相差が小さいほど強さが小さくなる。
【0045】
AD変換回路29は、直流レベル検出回路28が出力する検出信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して制御部11に入力する。
【0046】
BPF30は、直交検波器27から入力する受信ベースバンド信号から特定の周波数帯成分を抜き出してベースバンド増幅器31に出力する。
ベースバンド増幅器31は、BPF30から入力するベースバンド信号を増幅してAD変換回路32に出力する。
AD変換回路32は、ベースバンド増幅器31から入力するベースバンド信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して制御部11に入力する。
【0047】
無線タグ60は、給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53以外の無線タグを示す。リーダー装置10は、給電線無線タグ42、アンテナ無線タグ53及び無線タグ60と通信可能である。
【0048】
以下、実施形態に係る通信システム1の動作を図8及び図9などに基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。図8及び図9は、リーダー装置10のプロセッサー111による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー111は、例えば、ROM112などに記憶されたプログラムに基づいてこの処理を実行する。
【0049】
図8のACT11においてプロセッサー111は、無線タグの読取開始を指示する入力があるか否かを判定する。当該入力は、例えば、入力デバイス13に対する、無線タグの読取開始を指示する操作入力である。あるいは、当該入力は、例えば、通信I/F14に対する、無線タグの読取開始を指示するコマンドなどの入力である。プロセッサー111は、無線タグの読取開始を指示する入力がないならば、ACT11においてNoと判定してACT12へと進む。
【0050】
ACT12においてプロセッサー111は、キャンセル信号の設定開始を指示する入力があるか否かを判定する。当該入力は、例えば、入力デバイス13に対する、キャンセル信号の設定開始を指示する操作入力である。あるいは、当該入力は、例えば、通信I/F14に対する、キャンセル信号の設定開始を指示するコマンドなどの入力である。プロセッサー111は、キャンセル信号の設定開始を指示する入力がないならば、ACT12においてNoと判定してACT11へと戻る。かくして、プロセッサー111は、無線タグの読取開始を指示する入力、又はキャンセル信号の設定開始を指示する入力があるまでACT11及びACT12を繰り返す待受状態となる。
【0051】
プロセッサー111は、ACT11及びACT12の待受状態にあるときに無線タグの読取開始を指示する入力があるならば、ACT11においてYesと判定してACT13へと進む。
【0052】
ACT13においてプロセッサー111は、補助記憶装置12などがキャンセル信号の移相量φ及び減衰量Bを記憶しているか否かを判定する。移相量φ及び減衰量Bについては後述する。
【0053】
プロセッサー111は、補助記憶装置12などが移相量φ及び減衰量Bを記憶していないならば、ACT13においてNoと判定してACT14へと進む。また、プロセッサー111は、ACT11及びACT12の待受状態にあるときにキャンセル信号の設定開始を指示する入力があるならば、ACT12においてYesと判定してACT14へと進む。
【0054】
ACT14においてプロセッサー111は、送信電力を、キャンセル信号設定用の電力に設定する。なお、図10に、リーダー装置10の送信電力の推移の一例を示す。図10は、リーダー装置10の送信電力の推移の一例を示すグラフである。なお、図10のグラフの縦軸は、送信電力の大きさ[W(ワット)]を示す。また、図10のグラフの横軸は、時間を示す。キャンセル信号設定用の電力を、図10では電力P1と示す。電力P1は、第1の電力の一例である。なお、図10中の時間0から時間t1までは、リーダー装置10の送信電力が0からP1になるまでの時間である。
以上より、プロセッサー111又は制御部11は、ACT14の処理を行うことで、送信電力をP1に設定する電力設定部として機能する。
【0055】
ACT15においてプロセッサー111は、無線タグと通信するためのコマンドを送信ベースバンド信号として出力する。アンテナ50は、当該コマンドを載せた送信信号を放射する。
送信信号を受信した無線タグは、当該コマンドに応答して、記憶している情報を送信する。例えば、給電線無線タグ42であれば、給電線情報を送信し、アンテナ無線タグ53であれば、アンテナ情報を送信する。このようにして送信された情報は、アンテナ50によって受信され、制御部11に入力する。したがって、リーダー装置10は、給電線情報及びアンテナ情報を読み取る読取部として機能する。
【0056】
ACT16においてプロセッサー111は、給電線無線タグ42から給電線情報を受信したか否かを判定する。プロセッサー111は、例えば、給電線情報が制御部11に入力しているならば、ACT16においてYesと判定してACT17へと進む。
【0057】
ACT17においてプロセッサー111は、アンテナ無線タグ53からアンテナ情報を受信したか否かを判定する。プロセッサー111は、例えば、アンテナ情報が制御部11に入力しているならば、ACT17においてYesと判定して図9のACT18へと進む。
【0058】
ACT18においてプロセッサー111は、受信した給電線情報から給電線IDを取得する。また、プロセッサー111は、受信したアンテナ情報からアンテナIDを取得する。これにより、プロセッサー111は、アンテナ給電線40及びアンテナ50の種類の特定することができる。
【0059】
ACT19においてプロセッサー111は、図2の給電線テーブルT1を参照して、図9のACT18で取得した給電線IDに関連付けられている移相量及び減衰量を取得する。当該移相量及び減衰量は、アンテナ給電線40の移相量θ1及び減衰量A1である。また、プロセッサー111は、図3のアンテナテーブルT2を参照して、図9のACT18で取得したアンテナIDに関連付けられている移相量及び減衰量を取得する。当該移相量及び減衰量は、アンテナ50の移相量θ2及び減衰量A2である。なお、移相量θ2は、第1の移相量の一例である。また、移相量θ1は、第2の移相量の一例である。また、減衰量A2は、第1の減衰量の一例である。そして、減衰量A1は、第2の減衰量の一例である。
【0060】
ACT20においてプロセッサー111は、給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53にキルコマンドを送信する。キルコマンドは、通信しないように指示するコマンドである。キルコマンドを受信した給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53は、通信が一定期間又は永久的にできなくなる。なお、キルコマンドの送信は、リーダー装置10の設定でオフにすることが出来ても良い。
【0061】
ACT21においてプロセッサー111は、ACT19で取得した、アンテナ給電線40及びアンテナ50の移相量及び減衰量に基づき、キャンセル信号の移相量θc及び減衰量Acを決定する。移相量θcは、以下の(1)式で求めることができる。
θc=θ1+θ2 (1)
すなわち、移相量θcは、移相量θ1と移相量θ2の合計である。また、減衰量Acは、以下の(2)式で求めることができる。
Ac=A1+A2 (2)
すなわち、減衰量Acは、減衰量A1と減衰量A2の合計である。
【0062】
一例として、給電線IDが1002でアンテナIDが0001である場合考える。この場合、給電線テーブルT1及びアンテナテーブルT2より、移相量θ1=90.1[°]、減衰量A1=1.5[dB]、移相量θ2=25.2[°]、減衰量A2=20.5[dB]である。したがって、
θc=θ1+θ2=90.1+25.2=115.3[°] (3)
Ac=A1+A2=1.5+20.5=22[dB] (4)
となる。
【0063】
ACT22においてプロセッサー111は、ACT21で決定した移相量及び減衰量でキャンセル信号の設定を行う。すなわち、制御回路22を介して可変減衰器23を制御することで、可変減衰器23の減衰量をAcにする。そして、プロセッサー111は、制御回路22を介して可変移相器24を制御することで、可変移相器24の移相量をθcにする。これにより、キャンセル信号は、送信信号の位相をθc変化させ、Ac減衰させたものとなる。このように設定されたキャンセル信号は、自己干渉信号とおおよそ逆位相であり、自己干渉信号とおおよそ同じ電力となる。なお、ACT22の設定を行うタイミングを、図10ではt2と示す。また、t1からt2までの期間p1は、キャンセル信号の初期設定にかかる期間を示す。ここで、初期設定は、給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53から情報を読み取って、ACT21で決定した移相量及び減衰量でキャンセル信号の設定を行うまでを示す。
以上より、プロセッサー111又は制御部11は、ACT18、ACT19、ACT21及びACT22の処理を行うことで、給電線情報及びアンテナ情報に基づきキャンセル信号の移相及び電力を設定する信号設定部として機能する。
【0064】
ACT23においてプロセッサー111は、キャンセル信号の移相量及び減衰量の微調整を行う。すなわち、プロセッサー111は、可変移相器24の移相量を変化させながら、検出信号が最も小さくなる移相量φを探索する。なお、このとき、プロセッサー111は、例えば、可変移相器24の移相量を、(θc-θa)から(θc+θa)までの範囲内で変化させる。θaは、予め定められた移相量である。また、プロセッサー111は、可変減衰器23の減衰量を変化させながら、自己干渉信号を最も良く打ち消すことができるような減衰量Bを探索する。なお、このとき、プロセッサー111は、例えば、可変減衰器23の減衰量を、(Ac-Aa)から(Ac+Aa)までの範囲内で変化させる。Aaは、予め定められた減衰量である。
【0065】
ACT24においてプロセッサー111は、ACT23で探索した移相量φ及び減衰量Bを補助記憶装置12などに記憶する。
【0066】
ACT25においてプロセッサー111は、キャンセル信号の移相量及び減衰量を設定する。すなわち、プロセッサー111は、可変移相器24の移相量を移相量φに設定する。また、プロセッサー111は、可変減衰器23の減衰量を減衰量Bに設定する。なお、図10では、キャンセル信号の移相量及び減衰量を移相量φ及び減衰量Bに設定するタイミングをt3と示している。
【0067】
ACT26においてプロセッサー111は、送信電力を、無線タグ60を読み取るための電力に設定する。この電力を、図10では電力P2と示す。電力P2は、第2の電力の一例である。なお、電力P1及び電力P2は、P1<P2の関係である。
以上より、プロセッサー111又は制御部11は、ACT26の処理を行うことで、送信電力をP2に設定する電力設定部として機能する。
【0068】
ACT27においてプロセッサー111は、無線タグ60の読み取りを開始するための動作を行う。無線タグ60の読み取りについては、従来のリーダー装置と同様であるので説明を省略する。
【0069】
ACT28においてプロセッサー111は、無線タグの読取停止を指示する入力があるか否かを判定する。当該入力は、例えば、入力デバイス13に対する、無線タグの読取停止を指示する操作入力である。あるいは、当該入力は、例えば、通信I/F14に対する、無線タグの読取停止を指示するコマンドなどの入力である。プロセッサー111は、無線タグの読取停止を指示する入力がないならば、ACT28においてNoと判定してACT29へと進む。
【0070】
ACT29においてプロセッサー111は、キャンセル信号の設定開始を指示する入力があるか否かを判定する。この入力は、例えば、キャンセル信号の再設定をする場合などに行われる入力である。プロセッサー111は、キャンセル信号の設定開始を指示する入力がないならば、ACT29においてNoと判定してACT28へと戻る。かくして、プロセッサー111は、無線タグの読取停止を指示する入力、又はキャンセル信号の設定開始を指示する入力があるまでACT28及びACT29を繰り返す待受状態となる。
【0071】
プロセッサー111は、ACT28及びACT29の待受状態にあるときに無線タグの読取停止を指示する入力があるならば、ACT28においてYesと判定してACT30へと進む。
【0072】
ACT30においてプロセッサー111は、無線タグ60の読み取りを停止するための動作を行う。このために、プロセッサー111は、例えば、送信電力を0に設定する。プロセッサー111は、ACT30の処理の後、図8のACT11へと戻る。
【0073】
また、プロセッサー111は、図9のACT28及びACT29の待受状態にあるときにキャンセル信号の設定開始を指示する入力があるならば、ACT29においてYesと判定して図8のACT14へと戻る。
【0074】
また、プロセッサー111は、補助記憶装置12などがキャンセル信号の移相量φ及び減衰量Bを記憶しているならば、ACT13においてYesと判定して図9のACT25へと進む。
【0075】
一方、プロセッサー111は、給電線無線タグ42から給電線情報を受信していないならば、図8のACT16においてNoと判定してACT31へと進む。また、プロセッサー111は、アンテナ無線タグ53からアンテナ情報を受信していないならば、ACT17においてNoと判定してACT31へと進む。すなわち、プロセッサー111は、給電線情報及びアンテナ情報の少なくともいずれかを受信できていない場合に、ACT31へと進む。
【0076】
ACT31においてプロセッサー111は、給電線情報及びアンテナ情報の受信に失敗したか否かを判定する。プロセッサー111は、例えば、ACT31の判定を行った回数をカウントして、当該カウントが所定の回数以上である場合に、給電線情報及びアンテナ情報の受信に失敗したと判定する。なお、プロセッサー111は、ACT17の処理においてYesと判定した場合には当該カウントをリセットする。プロセッサー111は、給電線情報及びアンテナ情報の受信に失敗していないと判定するならば、ACT31においてNoと判定してACT15へと進む。これにより、プロセッサー111は、給電線情報及びアンテナ情報の受信を再度試みる。
対して、プロセッサー111は、給電線情報及びアンテナ情報の受信に失敗したと判定するならば、ACT31においてYesと判定してACT32へと進む。なお、プロセッサー111は、ACT16又はACT17のいずれかにおいてNoと判定したならば、ACT31の処理を行わずに、ACT32へと進んでも良い。
【0077】
ACT32においてプロセッサー111は、送信電力を、低出力で無線タグ60を読み取るための電力に設定する。この電力を、電力P3と称するものとする。電力P3は、第3の電力の一例である。電力P1及び電力P3の関係は、P1<P3である。また、電力P1及び電力P2の大小関係は限定しないが、一例として、P1=P2である。プロセッサー111は、ACT32の処理の後、ACT27へと進む。これにより、リーダー装置10は、電力P2よりも弱い送信電力で無線タグ60の読み取りを開始することとなる。
【0078】
第1実施形態の通信システム1によれば、リーダー装置10は、アンテナ給電線40が備える給電線無線タグ42から給電線情報を読み取る。また、第1実施形態のリーダー装置10は、アンテナ50が備えるアンテナ無線タグ53からアンテナ情報を読み取る。そして、第1実施形態のリーダー装置10は、給電線情報及びアンテナ情報に基づき、キャンセル信号の設定を行う。このように設定されたキャンセル信号は、自己干渉信号とおおよそ逆位相であり、自己干渉信号とおおよそ同じ電力である。このように、第1実施形態のリーダー装置10は、従来のリーダー装置のように移相量及び減衰量を様々に変化させながらキャンセル信号を設定しなくても、最適なキャンセル信号と近いキャンセル信号の設定が可能である。したがって、第1実施形態のリーダー装置10は、従来よりもキャンセル信号の設定を早く行うことができる。
【0079】
第1実施形態の通信システム1によれば、リーダー装置10は、アンテナ給電線40が備える給電線無線タグ42から給電線情報を読み取る。そして、リーダー装置10は、給電線情報を用いて、アンテナ給電線40の特性である移相量θ1及び減衰量A1を取得する。また、リーダー装置10は、アンテナ50が備えるアンテナ無線タグ53からアンテナ情報を読み取る。そして、リーダー装置10は、アンテナ情報を用いて、アンテナ50の特性である移相量θ2及び減衰量A2を取得する。さらに、リーダー装置10は、移相量θ1、移相量θ2、減衰量A1及び減衰量A2に基づき、キャンセル信号の移相量θc及び減衰量Acを求め、キャンセル信号の設定を行う。このように設定されたキャンセル信号は、自己干渉信号とおおよそ逆位相であり、自己干渉信号とおおよそ同じ電力である。このように、第1実施形態のリーダー装置10は、従来のリーダー装置のように移相量及び減衰量を様々に変化させながらキャンセル信号を設定しなくても、移相量θc及び減衰量Acを求めることができるので、従来よりもキャンセル信号の設定を早く行うことができる。
【0080】
また、第1実施形態の通信システム1によれば、リーダー装置10は、移相量θc及び減衰量Acに設定されたキャンセル信号を、移相量及び減衰量を変化させながら微調整を行うことで、キャンセル信号をより適した設定にする。このとき、リーダー装置10は、例えば、移相量を(θc-θa)から(θc+θa)までの範囲、減衰量を、(Ac-Aa)から(Ac+Aa)までの範囲のように限られた範囲内で変化させれば十分である。これは、移相量θc及び減衰量Acが最適な移相量φ及び減衰量Bに近い値であるためである。従来のリーダー装置であれば、例えば、移相量を0°~360°、減衰量を最小値から最大値までの範囲で変化させる必要がある。このため、リーダー装置10は、従来よりもキャンセル信号の設定を早く行うことができる。
【0081】
また、第1実施形態の通信システム1によれば、リーダー装置10は、給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53から情報を読み取る際、無線タグ60を読み取る際よりも送信電力を小さくする。給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53は、アンテナ給電線40及びアンテナ50というアンテナから近い位置に設けられているため、送信電力を下げても読取が可能である。また、キャンセル信号を適切に設定していない状態では、受信信号のノイズが大きいため、リーダー装置10が故障しやすくなる。このため、第1実施形態のリーダー装置10は、送信電力を小さくすることで故障を防ぐことができる。
【0082】
また、第1実施形態の通信システム1によれば、リーダー装置10は、給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53から給電線情報及びアンテナ情報を読み取ることが出来なかった場合、キャンセル信号を適切に設定した状態よりも送信電力を小さくする。これにより、第1実施形態のリーダー装置10は、故障を防ぐことができる。
【0083】
また、第1実施形態の通信システム1によれば、リーダー装置10は、キルコマンドを送信することによって、アンテナ側接続部44アンテナ無線タグ53を通信できない状態にする。これにより、リーダー装置10は、無線タグ60との通信の際に、アンテナ側接続部44及びアンテナ無線タグ53による通信の干渉を防ぎ、無線タグ60との通信精度を向上することができる。
【0084】
上記の第1実施形態は以下のような変形も可能である。
プロセッサー111は、ACT32において送信電力を0にしても良い。すなわち、プロセッサー111は、ACT32において送信信号の出力を停止しても良い。また、これは、電力P3=0である場合に相当する。このようにすることで、リーダー装置10は、給電線無線タグ42を備えていないアンテナ給電線40、又はアンテナ無線タグ53を備えていないアンテナ50が接続されている場合に無線タグ60の読み取りなどの動作をしない。したがって、リーダー装置10は、動作保証外のアンテナ給電線40又はアンテナ50などが接続されている場合に、無線タグ60の読み取りなどの動作をしないことで故障などを防ぐことができる。
【0085】
上記の第1実施形態の給電線テーブルT1及びアンテナテーブルT2は、送信信号(搬送波)の周波数に拘らず移相量及び減衰量は一定である。しかしながら、実施形態の給電線テーブル及びアンテナテーブルは、送信信号の周波数帯域ごとに移相量及び減衰量が関連付けられていても良い。例えば、このような給電線テーブルは、給電線IDがXで送信信号周波数がf1~f2である場合の移相量はθ_X1、減衰量はA_X1、給電線IDがXで送信信号周波数がf2~f3である場合の移相量はθ_X2、減衰量はA_X2、…のような具合である。この場合、プロセッサー111は、上記のような給電線テーブル及びアンテナテーブルから、給電線ID又はアンテナIDと送信周波数を用いて移相量及び減衰量を取得する。
なお、上記の第1実施形態の給電線テーブルT1及びアンテナテーブルT2ように、周波数に拘らず移相量及び減衰量が一定であっても、リーダー装置10が用いる周波数の帯域幅は狭いため、問題とはならない。しかしながら、上記のように、周波数帯域ごとに移相量及び減衰量を関連付けている場合、実施形態のリーダー装置は、ACT22においてより正確な値でキャンセル信号の移相量及び減衰量を設定できる。
【0086】
上記の第1実施形態では、アンテナ給電線40の移相量及び減衰量を補助記憶装置12が記憶する。しかしながら、給電線無線タグ42がアンテナ給電線40の移相量及び減衰量を記憶していても良い。すなわち、給電線情報は、アンテナ給電線40の移相量及び減衰量を含んでいても良い。この場合、リーダー装置10は、給電線テーブルT1ではなく給電線情報から、アンテナ給電線40の移相量及び減衰量を取得する。またこの場合、給電線情報は、アンテナ給電線40の特性を特定可能な第2の情報の一例である。
上記の第1実施形態では、アンテナ50の移相量及び減衰量を補助記憶装置12が記憶する。しかしながら、アンテナ無線タグ53がアンテナ50の移相量及び減衰量を記憶していても良い。すなわち、アンテナ情報は、アンテナ50の移相量及び減衰量を含んでいても良い。この場合、リーダー装置10は、アンテナテーブルT2ではなくアンテナ情報から、アンテナ50の移相量及び減衰量を取得する。またこの場合、アンテナ情報は、アンテナ50の特性を特定可能な第1の情報の一例である。
【0087】
リーダー装置10は、テーブル以外の方法でアンテナ給電線40及びアンテナ50の移相量及び減衰量を記憶していても良い。
【0088】
アンテナ給電線40とアンテナ50は、一体となっており、自由に取り外しができないものであっても良い。この場合、アンテナ給電線40及びアンテナ50は、給電線無線タグ42及びアンテナ無線タグ53に代えて、給電線情報及びアンテナ情報の両方を記憶した無線タグを備えていても良い。また、この場合、リーダー装置10は、この無線タグから給電線情報及びアンテナ情報を読み取る。
【0089】
〔第2実施形態〕
第1実施形態の通信システム1は、リーダー装置10にアンテナ給電線40及びアンテナ50を接続可能なものであった。これに対し、第2実施形態の通信システム1Bは、リーダー装置10Bにアンテナ50Bを接続可能なものであり、アンテナ給電線40を接続することはできない。なお、以下の第2実施形態の説明において第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0090】
図11は、第2実施形態に係る通信システム1B及び通信システム1Bに含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図である。通信システム1Bは、一例として、リーダー装置10B、アンテナ50B及び無線タグ60を含む。
【0091】
第2実施形態の補助記憶装置12は、設定値DB121に代えて設定値DB121Bを記憶する。設定値DB121Bは、例えば、図3に示すアンテナテーブルT2を含む。
【0092】
リーダー装置10Bは、給電線接続部21に代えて給電線接続部21Bを備える。給電線接続部21Bは、リーダー装置10Bとアンテナ50Bを接続するための端子である。
【0093】
アンテナ50Bは、給電線接続部54に代えて給電線接続部54Bを備える。給電線接続部54Bは、アンテナ50Bをリーダー装置10Bに接続するための端子である。給電線接続部21Bと給電線接続部54Bが接続することで、リーダー装置10Bとアンテナ50が接続する。送受信部51が出力する信号は、給電線接続部54Bを介してリーダー装置10Bに入力する。
【0094】
また、第2実施形態のアンテナ共用器20は、給電線接続部21Bを介してアンテナ50Bから入力する受信信号を合成回路25に出力する。
【0095】
以下、実施形態に係る通信システム1Bの動作を図8及び図9などに基づいて説明する。
第2実施形態では、プロセッサー111は、ACT15の処理の後、ACT17へと進む。
【0096】
第2実施形態のACT19においてプロセッサー111は、図3のアンテナテーブルT2を参照して、図9のACT18で取得したアンテナIDに関連付けられている移相量θ2及び減衰量A2を取得する。
【0097】
第2実施形態のACT20においてプロセッサー111は、アンテナ無線タグ53にキルコマンドを送信する。
【0098】
第2実施形態のACT21においてプロセッサー111は、ACT19で取得した、アンテナ50の移相量及び減衰量に基づき、キャンセル信号の移相量θc及び減衰量Acを決定する。第2実施形態の移相量θcは、移相量θ2と等しい。また、第2実施形態の減衰量Acは、減衰量A2と等しい。
【0099】
第2実施形態の通信システム1Bによれば、リーダー装置10Bは、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
上記の第2実施形態は、以下のような変形も可能である。
リーダー装置10Bは、固定のアンテナ給電線を備えていても良い。この場合、給電線接続部21Bは、当該アンテナ給電線の先にある。また、この場合、当該アンテナ給電線の移相量及び減衰量は、アンテナ給電線の取り換えができないので固定の値である。したがって、当該アンテナ給電線は、給電線無線タグを備える必要はない。代わりに、リーダー装置は、当該アンテナ給電線の移相量及び減衰量を記憶しておけば良い。プロセッサー111は、移相量θcを、以下の(1)式で求めることができる。
θc=θ1+θ3 (5)
ここで、θ3は、当該アンテナ給電線の移相量である。補助記憶装置12などが移相量θ3を記憶する。また、プロセッサー111は、減衰量Acを以下の(6)式で求めることができる。
Ac=A1+A3 (6)
ここで、A3は、当該アンテナ給電線の減衰量である。補助記憶装置12などが減衰量A3を記憶する。
【0101】
上記の第1実施形態及び第2実施形態は、以下のような変形も可能である。
プロセッサー111は、上記実施形態においてプログラムによって実現する処理の一部又は全部を、回路のハードウェア構成によって実現するものであっても良い。
【0102】
上記実施形態における各装置は、例えば、上記の各処理を実行するためのプログラムが記憶された状態で各装置の管理者などへと譲渡される。あるいは、当該各装置は、当該プログラムが記憶されない状態で当該管理者などに譲渡される。そして、当該プログラムが別途に当該管理者などへと譲渡され、当該管理者又はサービスマンなどによる操作に基づいて当該各装置に記憶される。このときのプログラムの譲渡は、例えば、ディスクメディア又は半導体メモリなどのようなリムーバブルな記憶媒体を用いて、あるいはインターネット又はLANなどを介したダウンロードにより実現できる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1,1B……通信システム、10,10B……リーダー装置、11……制御部、12……補助記憶装置、13……入力デバイス、14……通信I/F、15……DA変換回路、16……局部発振器、17……変調器、18,30……BPF、19……送信アンプ、20……アンテナ共用器、21,21B,54,54B……給電線接続部、22……制御回路、23……可変減衰器、24……可変移相器、25……合成回路、26……LNA、27……直交検波器、28……直流レベル検出回路、29,32……AD変換回路、31……ベースバンド増幅器、40……アンテナ給電線、41……伝送部、42……給電線無線タグ、43……装置側接続部、44……アンテナ側接続部、50,50B……アンテナ、51……送受信部、52……筐体、53……アンテナ無線タグ、60……無線タグ、111……プロセッサー、112……ROM、113……RAM、121……設定値DB、271……電力分配器、272I,272Q……ミキサー、273……移相器、281……I相DC抽出回路、282……Q相DC抽出回路
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