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特許7408386研磨スラリー、及び、研磨スラリー用濃縮物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】研磨スラリー、及び、研磨スラリー用濃縮物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20231225BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231225BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231225BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
H01L21/304 621D
B24B37/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019239169
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2020109171
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2018248293
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤本 圭一朗
(72)【発明者】
【氏名】松下 隆幸
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102093820(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0074492(KR,A)
【文献】特開2003-243340(JP,A)
【文献】特開平11-349925(JP,A)
【文献】特開2012-094838(JP,A)
【文献】特表2017-515302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
H01L21/304
B24B37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ砥粒と、
アミノ基を有するシランカップリング剤と、
アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有し、
前記アミン化合物は、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジエチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシエチルモノエチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシプロピルモノメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシプロピルジエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、研磨スラリー。
【請求項2】
前記アミン化合物は、1分子内に2個以上のアルコール性水酸基を有するアミン化合物を含有する、請求項1に記載の研磨スラリー。
【請求項3】
前記アミン化合物は、1分子内に、アルコール性水酸基と、3個のアルキル基とを有するアミン化合物を含有する、請求項1に記載の研磨スラリー。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が、置換アミノ基を更に有する、請求項1~の何れか1項に記載の研磨スラリー。
【請求項5】
前記シランカップリング剤は、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの少なくとも一方を含有する、請求項に記載の研磨スラリー。
【請求項6】
前記シリカ砥粒がコロイダルシリカ砥粒を含有する、請求項1~の何れか1項に記載の研磨スラリー。
【請求項7】
水で希釈して用いられる、研磨スラリー用濃縮物であって、
シリカ砥粒と、
アミノ基を有するシランカップリング剤と、
アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有し、
前記アミン化合物は、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジエチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシエチルモノエチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシプロピルモノメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシプロピルジエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、研磨スラリー用濃縮物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨スラリー、及び、研磨スラリー用濃縮物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被研磨物(シリコンウェーハーなど)を研磨する研磨スラリーとして、砥粒を含有する研磨スラリーが用いられている。
また、従来、被研磨物に供給されて研磨に使用された研磨スラリーを回収し、回収した使用済みの研磨スラリーを被研磨物に循環供給して再利用する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-115791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、生産効率の向上の観点から、研磨速度を高めることが求められている。
また、所望の量で被研磨物を研磨するために研磨時間を調整するが、研磨スラリーを再利用した際に、再利用した研磨スラリーを用いた場合と新品の研磨スラリーを用いた場合とで研磨速度が異なると、研磨時間の調整が難しくなるなどの問題がある。すなわち、再利用しても研磨速度の変化を小さくできる研磨スラリーが求められ得る。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、研磨速度を高めることができ、且つ、再利用しても研磨速度の変化を小さくできる研磨スラリー、及び、研磨スラリー用濃縮物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る研磨スラリーは、シリカ砥粒と、
アミノ基を有するシランカップリング剤と、
アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有する。
【0007】
また、本発明に係る研磨スラリー用濃縮物は、水で希釈して用いられる、研磨スラリー用濃縮物であって、
シリカ砥粒と、
アミノ基を有するシランカップリング剤と、
アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコンウェーハーの研磨において、研磨速度を高めることができ、且つ、再利用しても研磨速度の変化を小さくできる研磨スラリー、及び、研磨スラリー用濃縮物を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1、4及び比較例1~4の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の経時変化を示す図。
図2】実施例1、4及び比較例1~4の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の比の経時変化を示す図。
図3】実施例2及び比較例1、6の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の経時変化を示す図。
図4】実施例2及び比較例1、6の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の比の経時変化を示す図。
図5】実施例3及び比較例5の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の経時変化を示す図。
図6】実施例3及び比較例5の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の比の経時変化を示す図。
図7】実施例1~4の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の経時変化を示す図。
図8】実施例1~4の研磨スラリーを用いた際の研磨速度の比の経時変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
まず、本実施形態に係る研磨スラリーについて説明する。
本実施形態に係る研磨スラリーは、シリコンウェーハーを研磨するのに用いられる。
【0012】
また、本実施形態に係る研磨スラリーは、シリカ砥粒と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有する。
また、本実施形態に係る研磨スラリーは、アルカリと、水とを更に含有する。
【0013】
本実施形態に係る研磨スラリーは、シリカ砥粒を、好ましくは0.0323~1.613質量%、より好ましくは0.1613~1.290質量%、さらに好ましくは0.3226~0.9677質量%含有する。
【0014】
また、本実施形態に係る研磨スラリーは、前記シランカップリング剤を、好ましくは0.0003226~0.1613質量%、より好ましくは0.003226~0.09677質量%含有する。
【0015】
また、本実施形態に係る研磨スラリーは、前記アミン化合物を、好ましくは0.0003226~0.1613質量%、より好ましくは0.003226~0.09677質量%含有する。
【0016】
前記シリカ砥粒は、1次粒子として、又は、1次粒子が複数凝集した2次粒子となって本実施形態に係る研磨スラリーに含まれている。
前記シリカ砥粒としては、コロイダルシリカ砥粒、ヒュームドシリカ砥粒などが挙げられ、コロイダルシリカ砥粒が好ましい。
【0017】
本実施形態に係る研磨スラリーは、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する。
アミノ基は、-NHで表される。
前記シランカップリング剤が、置換アミノ基を更に有することが好ましい。
置換アミノ基は、-NHR及び-NRを含む概念である。
ここで、Rは、有機基である。また、Rは、有機基である。さらに、Rは、有機基である。
【0018】
アミノ基(-NH)を有するシランカップリング剤としては、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アミノ基及び置換アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランが好適に用いられる。
【0019】
前記アミン化合物としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウムカチオンが挙げられる。
前記第一級アミンとしては、2-アミノエタノール、アミノメタノール、1-アミノ-2‐プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン等が挙げられる。
前記第二級アミンとしては、ジエタノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-エチルアミノエタノール、1-ピペラジンエタノール等が挙げられる。
前記第三級アミンとしては、トリエタノールアミン等が挙げられる。
前記第四級アンモニウムカチオンとしては、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、トリエチルフェニルアンモニウムカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオン、トリエチルベンジルアンモニウムカチオン、トリベンジルメチルアンモニウムカチオン、テトラベンジルアンモニウムカチオン、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン、トリブチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジエチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシエチルモノエチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシプロピルモノメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシプロピルジエチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
また、前記アミン化合物としては、1分子内に2個以上のアルコール性水酸基を有するアミン化合物が好ましい。
また、前記アミン化合物としては、第4級アンモニウムカチオンが好ましい。
前記第4級アンモニウムカチオンは、第4級アンモニウム塩と研磨スラリーの他の材料とが混合されることで、本実施形態に係る研磨スラリーに含まれる。
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、水酸化第4級アンモニウム、ハロゲン第4級アンモニウム、硝酸第4級アンモニウム、酒石酸第4級アンモニウムなどが挙げられる。
また、前記アミン化合物としては、1分子内に、アルコール性水酸基と、3個のアルキル基とを有するアミン化合物が好ましい。
前記アミン化合物としては、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムカチオン、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオンが好適に用いられる。
【0020】
前記アルカリとしては、無機物である無機アルカリ剤等が挙げられる。
無機アルカリ剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0021】
前記水としては、化学分析用の高純度水等が挙げられる。化学分析用の高純度水としては、超純水、純水、イオン交換水等が挙げられる。
【0022】
本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、水で希釈して用いられる。
希釈に用いる水としては、化学分析用の高純度水等が挙げられる。化学分析用の高純度水としては、超純水、純水、イオン交換水等が挙げられる。
また、本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、シリカ砥粒と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有する。
すなわち、本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物を水で希釈することにより、本実施形態に係る研磨スラリーを得ることができる。
なお、本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物を経ずに、各種材料を混合することによって、本実施形態に係る研磨スラリーを作製してもよい。
【0023】
本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、シリカ砥粒を、好ましくは1.0~50質量%、より好ましくは5.0~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%含有する。
【0024】
また、本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、前記シランカップリング剤を、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.1~3.0質量%含有する。
【0025】
また、本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、前記アミン化合物を、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.1~3.0質量%含有する。
【0026】
本実施形態に係る研磨スラリーは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0027】
本実施形態に係る研磨スラリーは、シリカ砥粒と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有する。
斯かる研磨スラリーは、研磨速度を高めることができ、且つ、再利用しても研磨速度の変化を小さくできる研磨スラリーとなるという利点を有する。
【0028】
本実施形態に係る研磨スラリーが上記利点を有する理由は、定かではないが、研磨速度を高めることができる理由としては、以下の理由1が想定され、また、再利用しても研磨速度の変化を小さくできる理由としては、以下の理由2-1及び理由2-2の少なくとも何れか一方の理由が想定される。
【0029】
(想定される理由1)
アミノ基を有するシランカップリング剤は、加水分解によって分子内に生じたシラノール基によりシリコンウェーハー表面に近接しやすいものとなっている。また、アミノ基は、エッチング作用によりシリコンウェーハーを腐食することで、シリコンウェーハーを脆くできることは知られているが、アミノ基を有するシランカップリング剤は、分子内のアミノ基によりシリコンウェーハーを腐食、脆くさせやすいものとなっている。その結果、本実施形態に係る研磨スラリーは、研磨速度を高めることができると考えられる。
【0030】
(想定される理由2-1)
シリコンウェーハーの研磨により発生した珪酸イオンは、水への溶出可能量近くまで溶出すると、前記珪酸イオンが自己収縮によってシリコンウェーハー上に析出し、グレージング(研磨速度の低下)が生じる。また、アミノ基を有するシランカップリング剤は、珪酸塩であるため、珪酸イオンの水への溶出可能量を小さくしてしまう。
しかし、アルコール性水酸基を有するアミン化合物は、シリコンウェーハーの研磨により発生した珪酸イオンに配位結合して該珪酸イオンの分散性を高めることができる。また、アルコール性水酸基を有するアミン化合物は、アルコール性水酸基により水への親和性が高いため、前記珪酸イオンの分散性をより一層高めることができる。これにより、前記珪酸イオンがシリコンウェーハー上に析出するのを抑制でき、グレージング(研磨速度の低下)を抑制できる。
その結果、本実施形態に係る研磨スラリーは、研磨速度の変化を小さくできると考えられる。
【0031】
(想定される理由2-2)
アミノ基を有するシランカップリング剤は、加水分解によって分子内に生じたシラノール基により、シリカ砥粒との縮合反応によってシリカ砥粒どうしを凝集させ、その結果、シリカ砥粒のシリコンウェーハーとの接触点が減少して、研磨速度が低下し得る。
しかし、アルコール性水酸基を有するアミン化合物は、シリカ砥粒に配位結合して該シリカ砥粒の分散性を高めることができる。また、アルコール性水酸基を有するアミン化合物は、アルコール性水酸基により水への親和性が高いため、前記シリカ砥粒の分散性をより一層高めることができる。これにより、シリカ砥粒どうしの凝集を抑制できる。
その結果、本実施形態に係る研磨スラリーは、研磨速度の変化を小さくできると考えられる。
【0032】
本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、水で希釈して用いられる。
また、本実施形態に係る研磨スラリー用濃縮物は、シリカ砥粒と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、アルコール性水酸基を有するアミン化合物とを含有する。
【0033】
なお、本発明に係る研磨スラリーは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨スラリーは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る研磨スラリーは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0034】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
コロイダルシリカ砥粒15.5質量%と、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシド2.0質量%と、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン1.8質量%と、アルカリとしての水酸化カリウムと、水とを含有する研磨スラリー用濃縮物を作製した(pH:11.0)。
そして、被研磨物たるシリコンウェーハーの研磨直前に、研磨スラリー用濃縮物を純水で31倍希釈して研磨スラリーを得た。
なお、研磨スラリーは、以下のような配合となる。
コロイダルシリカ砥粒:0.50質量%
トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシド:0.065質量%
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン:0.058質量%
【0036】
(実施例2)
トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシドの代わりに、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムヒドロキシドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物(ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド:2質量%)、及び、研磨スラリーを得た。
【0037】
(実施例3)
トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシドの代わりに、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物(モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:2質量%)、及び、研磨スラリーを得た。
【0038】
(実施例4)
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物((2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン:1.8質量%)、及び、研磨スラリーを得た。
【0039】
(比較例1)
トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシドを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物、及び、研磨スラリーを得た。
【0040】
(比較例2)
トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシドの代わりに、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物(TMAH:2質量%)、及び、研磨スラリーを得た。
【0041】
(比較例3)
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物、及び、研磨スラリーを得た。
【0042】
(比較例4)
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨スラリー用濃縮物(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン:1.8質量%)、及び、研磨スラリーを得た。
【0043】
(比較例5)
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、研磨スラリー用濃縮物(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン:1.8質量%)、及び、研磨スラリーを得た。
【0044】
(比較例6)
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして、研磨スラリー用濃縮物、及び、研磨スラリーを得た。
【0045】
実施例及び比較例の研磨スラリーを用いて、シリコンウェーハーを両面研磨し、研磨速度を求めた。研磨スラリーは循環使用した。研磨条件を以下に示す。
研磨スラリー流量:300mL/min
使用した研磨スラリーの全量:4200mL(14分に1回使用)
研磨時間:180min
研磨速度は、研磨時間30分毎に測定した。研磨速度は、研磨によって減少した厚みを研磨時間30分で割ることにより求めた。例えば、研磨時間60分後においては、研磨時間30分から60分までの間に減少した厚みを研磨時間30分で割ることにより求めた。
なお、厚みは、Nano-metrics社製のnanospecAFT5100で測定した。
研磨速度の結果を図1、3、5、7に示す。
また、研磨速度の比を図2、4、6、8に示す。研磨速度の比は下記式(1)で求めたものを意味する。
研磨速度の比 = (研磨速度/研磨時間30分の研磨速度)×100% ・・・(1)
【0046】
図1に示すように、実施例1、4の研磨スラリーを用いた場合では、比較例3、4の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度がどの研磨時間でも高かった。
また、図2に示すように、実施例1、4の研磨スラリーを用いた場合では、比較例1、2、4の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度の比が100%に近かった。
【0047】
図3に示すように、実施例2の研磨スラリーを用いた場合では、比較例6の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度がどの研磨時間でも高かった。
また、図4に示すように、実施例2の研磨スラリーを用いた場合では、比較例1の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度の比が100%に近かった。
【0048】
図5に示すように、実施例3の研磨スラリーを用いた場合では、比較例5の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度がどの研磨時間でも高かった。
また、図6に示すように、実施例3の研磨スラリーを用いた場合では、比較例5の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度の比が100%に近かった。
【0049】
以上より、本発明によれば、シリコンウェーハーの研磨において、研磨速度を高めることができ、且つ、再利用しても研磨速度の変化を小さくできる研磨スラリー、及び、研磨スラリー用濃縮物を提供し得ることがわかる。
【0050】
なお、実施例同士の比較では、図8に示すように、研磨速度の比は同程度であったが、
図7に示すように、実施例1、3、4の研磨スラリーを用いた場合では、実施例2の研磨スラリーを用いた場合に比べて、研磨速度がどの研磨時間でも高かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8