(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】NOx削減のための一体化SCR触媒およびLNT
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20231225BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20231225BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231225BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20231225BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20231225BHJP
B01J 29/85 20060101ALI20231225BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20231225BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20231225BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20231225BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20231225BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F01N3/28 Q ZAB
B01D53/92 223
B01D53/92 352
B01D53/94 222
B01J20/06 C
B01J29/76 A
B01J29/85 A
B01J35/04 301E
B01J35/04 301L
F01N3/035 A
F01N3/035 E
F01N3/08 A
F01N3/08 B
F01N3/20 K
F01N3/24 C
F01N3/24 E
(21)【出願番号】P 2019542821
(86)(22)【出願日】2017-10-23
(86)【国際出願番号】 IB2017056576
(87)【国際公開番号】W WO2018078513
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シャー,サンディプ ディー
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0111886(US,A1)
【文献】特開2009-293431(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19933654(DE,A1)
【文献】国際公開第2013/147273(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136626(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0242438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290262(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0037799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315945(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0159093(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290262(US,A1)
【文献】特表2016-517343(JP,A)
【文献】特表2011-506818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38
F01N 9/00-11/00
B01D 53/34-53/96
B01J 20/00-20/281
B01J 20/30-20/34
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR触媒組成物と、
LNT組成物と
を含む、排ガス処理システムであって、LNT組成物が、SCR触媒組成物と流体連通し、かつその下流にあり、
10~20kW電気ヒーターをさらに含み、
前記SCR触媒組成物全体が第1の基材に直接接触しており、
前記LNT組成物が第1の基材上に配置されており、且つ
前記SCR触媒組成物が第1の基材の全長に広がり、前記LNT組成物が前記SCR触媒組成物の一部に重なっている、
排ガス処理システム。
【請求項2】
SCR触媒組成物と、
LNT組成物と
を含む、排ガス処理システムであって、LNT組成物が、SCR触媒組成物と流体連通し、かつその下流にあり、
10~20kW電気ヒーターをさらに含み、
前記SCR触媒組成物全体が第1の基材に直接接触しており、
前記LNT組成物が第1の基材上に配置されており、且つ
前記LNT組成物が第1の基材の全長に広がり、LNT組成物がSCR触媒組成物に重なっている、
排ガス処理システム
。
【請求項3】
1種または複数のディーゼル酸化触媒、煤煙フィルター、およびアンモニア酸化触媒をさらに含む、請求項1
又は2に記載の排ガス処理システム。
【請求項4】
SCR触媒組成物が密結合であり、かつLNT組成物がSCR触媒組成物の下流にある、請求項1から
3のいずれか一項に記載の排ガス処理システムであって、下流の床下ディーゼル酸化触媒、触媒煤煙フィルター、および第2のSCR触媒をさらに含む、排ガス処理システム。
【請求項5】
SCR触媒組成物と流体連通しかつその上流にある還元剤インジェクターをさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項6】
SCR組成物が密結合である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項7】
LNT組成物が床下である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の排ガス処理システム
。
【請求項8】
SCR触媒組成物が卑金属含有の8員環小孔モレキュラーシーブを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項9】
LNT組成物が、NOx吸着剤および耐火性金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項10】
NOxを含有する排気流を処理する方法であって、請求項1から
9のいずれか一項に記載の排ガス処理システムに排気流を通流させる工程を含む、方法。
【請求項11】
排気流が190℃以下である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
軸長を画定している第1の上流端および第2の下流端を有し、かつその上にゾーン化触媒コーティングを有する基材を含む、触媒物品であって、触媒コーティングが、
選択接触還元(SCR)触媒組成物を含む上流ゾーンと、
リーンNOxトラップ(LNT)組成物を含む下流ゾーンと
を含み、
前記SCR触媒組成物が前記LNT組成物に重なっておらず、
前記LNT組成物が第1の基材上に配置されており、且つ
前記SCR触媒組成物が第1の基材の全長に広がり、LNT組成物がSCR触媒組成物の一部に重なっている、
触媒物品。
【請求項13】
基材が多孔質壁流フィルターである、請求項
12に記載の触媒物品。
【請求項14】
基材がフロースルーモノリスである、請求項
12に記載の触媒物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択接触還元(SCR)触媒とリーンNOxトラップ(LNT)とを含む触媒物品およびシステム、ならびにかかる物品およびシステムを作製する方法および使用する方法、を対象とする。
【背景技術】
【0002】
例えばディーゼルエンジンなどのリーンバーンエンジンおよびリーンバーンガソリンエンジンは、燃料リーン条件下で高い空気/燃料比で作動することに起因して、ユーザーに優れた燃料経済性を提供し、かつ気相炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)の排出が非常に低い。特に、ディーゼルエンジンはまた、その耐久性および低速で高トルクを発生するその能力の点でガソリンエンジンよりかなりの利点を備えている。高NOx変換率には、還元剤リッチの条件が通常には必要であるため、リーンバーンエンジンからの酸化窒素(NOx)の効果的な削減を達成することは難しい。排気流のNOx成分を無害成分に変換するには、燃料リーン条件での作動向けに特化したNOx削減戦略が一般に必要である。
【0003】
リーンバーンエンジンからの排気流内のNOx削減に向けてのかかる一戦略では、当技術分野で「リーンNOxトラップ」(LNT)としても知られている、NOx貯蔵還元(NSR)触媒が使用されている。NSR触媒は、リーン条件で窒素の酸化物を吸着するまたは「トラップする」ことができるNOx収着剤材料と、酸化機能および還元機能を提供する白金族金属(PGM)成分とを含有する。その還元の役割に関して、PGM成分は最初にNOxの吸着を触媒し、次いでNOxは還元剤が導入されるかまたはある特定の閾値を超えて温度が上昇すると放出される。この段階ではNOx貯蔵部位が回復するが、NOx種の放出が誘発される。次いで、放出されたNOxは、リッチ環境で、ガス状N2へさらに還元される。NOxの放出は、正味の酸化環境において還元剤によって誘発することもできる。しかし、COによる放出NOxの効率的な還元は、リッチ条件を必要とする。高温になるほど金属硝酸塩の安定性はより不安定であるため、温度急上昇がNOx放出の引き金となる可能性もある。NOxトラップ触媒作用は循環的作動である。金属化合物は、リーン/リッチ作動時に支配的反応経路として炭酸塩/硝酸塩変換を起こすと考えられる。
【0004】
選択接触還元(SCR)触媒技術もまた、排気流からのNOx削減に対して用いられている。この戦略は、固定汚染源に、例えば煙道ガスの処理に、適用されると効果的であることが証明されてきた。この戦略では、通常には卑金属からなるSCR触媒上で、NOxを還元剤で、例えばNH3で窒素(N2)に還元する。この技術は90%超のNOx還元が可能であり、したがって、積極的なNOx還元の目標を達成するための最良の取組のうちの1取組である。酸化窒素には、N2O、NO、N2O3、NO2、N2O4、N2O5、およびNO3が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃エンジンの継続的な改良によって、より高い燃焼効率およびより低い排ガス温度がもたらされてきた。排気温度が低いことで、コールドスタートフェーズ時で汚染物質を除去するための課題がもたらされる。コールドスタートフェーズでは、窒素酸化物(NOx)排出を制御することは特に困難であり、さらなる触媒を供給してこの機能を可能とすることが望ましいであろう。
【0006】
本開示は一般に、選択接触還元(SCR)触媒組成物とリーンNOxトラップ(LNT)触媒組成物とを含む複合触媒物品を提供する。本開示は、かかる複合触媒物品を含むシステム、ならびにかかる触媒物品を作製する方法および使用する方法に関する。上記物品、システム、および方法は、ディーゼル内燃エンジンまたはガソリン内燃エンジンのリーン排ガス流を処理するのに適している。種々の実施形態を以下に列挙する。以下に列挙の実施形態は、以下の列挙に限らず、本発明の範囲に従って他の適切な組合せで組み合わせることもできることが理解される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は一般に、選択接触還元(SCR)触媒組成物とリーンNOxトラップ(LNT)組成物とを含む触媒物品およびシステムであって、SCR触媒組成物がLNT組成物の上流にある、触媒物品およびシステムを提供する。かかる組成物は、同じ基材上にまたは別々の基材上に配置することができる。NOxを含有する排気流を処理する方法であって、かかる物品およびシステムに排気流を通流させる工程を含む、方法も開示されている。本発明の物品、システムおよび方法は、空気が化学量論的燃焼に必要な空気を上回っている状態、すなわち、リーンである燃焼条件で作動するディーゼルエンジンから発生する排気の処理に特に適している。
【0008】
一態様では、本開示は、SCR触媒組成物とLNT組成物とを含む排ガス処理システムであって、LNT物品が、SCR触媒組成物と流体連通し、かつその下流にある、排ガス処理システムを提供する。SCR触媒組成物を第1の基材上に配置することができ、LNT組成物を第2の基材上に配置する、またはSCR触媒組成物とLNT組成物とを同じ基材上に配置することができる。組成物が同じ基材上に配置される場合、一部の実施形態では、SCR触媒組成物は基材の全長に広がり、LNT組成物はSCR触媒組成物の一部に重なっているか、またはSCR触媒組成物はLNT組成物に重なっている。組成物が同じ基材上に配置されている場合、一部の実施形態では、LNT組成物は基材の全長に広がり、SCR触媒組成物はLNT組成物の一部に重なっているか、またはLNT組成物はSCR触媒組成物に重なっている。さらに、組成物が同じ基材上に配置されている場合、一部の実施形態では、SCR触媒組成物とLNT組成物とは互いに重なっていない。
【0009】
一部の実施形態では、排ガス処理システムは、1種または複数のディーゼル酸化触媒、煤煙フィルター、およびアンモニア酸化触媒をさらに含む。ある特定の実施形態では、SCR触媒組成物は密結合であり、LNT組成物はSCR触媒組成物の下流にあり、システムは下流の床下ディーゼル酸化触媒、触媒煤煙フィルター、および第2のSCR触媒をさらに含む。システムは、一部の実施形態において、電気ヒーターをさらに含むことができる。電気ヒーターは、例えば、10kW電気ヒーターまたは20kW電気ヒーターなどの、2~20kW電気ヒーターとすることができる。システムは、一部の実施形態では、SCR触媒組成物と流体連通しかつその上流にある還元剤インジェクターをさらに含むことができる。
【0010】
一部の実施形態では、開示の排ガス処理システムは密結合とすることができる。システムは、一部の実施形態では、床下とすることができる。ある特定の実施形態では、SCR触媒組成物を含む第1の基材は密結合であり、LNT組成物を含む第2の基材は床下である。
【0011】
本明細書に開示のSCR触媒組成物およびLNT組成物の組成は様々である。一部の実施形態では、SCR触媒組成物は卑金属含有の8員環小孔モレキュラーシーブを含む。例えば、SCR触媒組成物は、鉄含有のおよび/または銅含有の8員環小孔モレキュラーシーブを含むことができる。かかるモレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SATおよびSAVからなる群から選択される構造を有するゼオライトとすることができかつ、特定の実施形態では、CHA結晶構造を有することができる。CHA結晶構造を有するモレキュラーシーブは、例えば、アルミノシリケートゼオライト、ボロシリケート、ガロシリケート、SAPO、AlPO、MeAPSOおよび/またはMeAPOとすることができる。特定のモレキュラーシーブには、それらに限定されないが、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、リンデD、リンデR、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47およびZYT-6が含まれる。モレキュラーシーブは任意に、アルカリ土類成分をさらに含有することができる。
【0012】
一部の実施形態では、LNT組成物は、NOx収着剤および耐火性金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含む。LNT組成物は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびそれらの混合物から選択されるアルカリ土類元素の塩基性含酸素化合物、セリア成分ならびに耐火性金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含むことができる。
【0013】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示の排ガス処理システムに排気流を通流させる工程を含む、NOxを含有する排気流を処理する方法を提供する。一部の実施形態では、排気流は190℃以下である。
【0014】
さらなる一態様では、本開示は、軸長を画定している第1の上流端および第2の下流端を有し、かつその上にゾーン化触媒コーティングを有する基材を含む、触媒物品であって、触媒コーティングが、選択接触還元(SCR)触媒組成物を含む上流ゾーンと、リーンNOxトラップ(LNT)組成物を含む下流ゾーンとを含む、触媒物品を提供する。基材は、例えば、多孔質壁流フィルターまたはフロースルーモノリスとすることができる。
【0015】
本開示は、限定されないが、以下の実施形態を含む。
【0016】
実施形態1:SCR触媒組成物とLNT組成物とを含む排ガス処理システムであって、LNT物品がSCR触媒組成物と流体連通しかつその下流にある、排ガス処理システム。
【0017】
実施形態2:SCR触媒組成物が第1の基材上に配置されてあり、LNT組成物は第2の基材上に配置されている、実施形態1の排ガス処理システム。
【0018】
実施形態3:SCR触媒組成物とLNT組成物とが同じ基材上に配置されている、実施形態1または2の排ガス処理システム。
【0019】
実施形態4:SCR触媒組成物が基材の全長に広がり、LNT組成物がSCR触媒組成物の一部に重なっているか、またはSCR触媒組成物がLNT組成物に重なっている、実施形態1から3のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0020】
実施形態5:LNT組成物が基材の全長に広がり、SCR触媒組成物がLNT組成物の一部に重なっているか、またはLNT組成物がSCR触媒組成物に重なっている、実施形態1から4のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0021】
実施形態6:SCR触媒組成物とLNT組成物とが互いに重なっていない、実施形態1から5のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0022】
実施形態7:1種または複数のディーゼル酸化触媒、煤煙フィルター、およびアンモニア酸化触媒をさらに含む、実施形態1から6のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0023】
実施形態8:SCR触媒組成物が密結合であり、かつLNT組成物がSCR触媒組成物の下流にある、実施形態1から7のいずれか一形態の排ガス処理システムであって、下流の床下ディーゼル酸化触媒、触媒煤煙フィルター、および第2のSCR触媒をさらに含む、排ガス処理システム。
【0024】
実施形態9:電気ヒーターをさらに含む、実施形態1から8のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0025】
実施形態10:電気ヒーターが2kW~20kW電気ヒーターである、実施形態1から9のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0026】
実施形態11:SCR触媒組成物と流体連通しかつその上流にある還元剤インジェクターをさらに含む、実施形態1から10のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0027】
実施形態12:密結合である、実施形態1から11のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0028】
実施形態13:床下である、実施形態1から12のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0029】
実施形態14:(SCR触媒組成物を含む)第1の基材が密結合であり、(LNT組成物を含む)第2の基材が床下である、実施形態1から13のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0030】
実施形態15:SCR触媒組成物が卑金属含有の8員環小孔モレキュラーシーブを含む、実施形態1から14のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0031】
実施形態16:LNT組成物が、NOx収着剤および耐火性金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含む、実施形態1から15のいずれか一形態の排ガス処理システム。
【0032】
実施形態17:NOxを含有する排ガス流を処理する方法であって、実施形態1から16のいずれか一形態の排ガス処理システムに排ガス流を通流させる工程を含む、方法。
【0033】
実施形態18:排気流が190℃以下である、実施形態17の方法。
【0034】
実施形態19:軸長を画定している第1の上流端および第2の下流端を有し、かつその上にゾーン化触媒コーティングを有する基材を含む触媒物品であって、触媒コーティングが、選択接触還元(SCR)触媒組成物を含む上流ゾーンと、リーンNOxトラップ(LNT)組成物を含む下流ゾーンとを含む、触媒物品。
【0035】
実施形態20:基材が多孔質壁流フィルターである、実施形態19の物品。
【0036】
実施形態21:基材がフロースルーモノリスである、実施形態19の物品。
【0037】
本開示のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を、以下に簡潔に記載される添付の図面と併せて読み解くことから明確になるであろう。本発明は、上述の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、またはこれより多くの任意の組合せを含むとともに、かかる特徴または要素が本明細書で特定の実施形態の記載において明示的に組み合わせられているか否かに関わらず、本開示に記載のいずれか2つ、3つ、4つ、またはこれより多くの特徴または要素の組合せを含むものである。本開示は、開示されている本発明の分離可能な任意の特徴または要素が、その種々の態様および実施形態のいずれかにおいて、文脈上明確に指定しない限り、組み合わせ可能であると意図されているとみなされるように、包括的に読み解かれることを意図するものである。本発明のその他の態様および利点については、以下から明白となるであろう。
【0038】
本発明の実施形態の理解をもたらすために、添付の図面を参照する。図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、図面中の参照番号は本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、例示に過ぎず、本発明を限定するものとして解釈するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明による、1種または複数の触媒組成物を含むことができるハニカム型基材担体の斜視図である。
【
図2】
図1に対して拡大した、かつ
図1の基材担体の端面に平行な平面に沿って取られている部分断面図である。これは、基材がモノリシックフロースルー基材である一実施形態における、
図1に示した複数のガス流路の拡大図を示す。
【
図3】
図1に対して拡大した断面の破断図である。ここで、
図1のハニカム型基材担体はモノリシック壁流フィルター基材である。
【
図4】本開示のゾーン化触媒物品の断面図を示す図である。
【
図5】温度の関数としての低温FTPのNOx放出分布を示すグラフである。
【
図6】DOC-CSF-SCRを有するccSCR成分と任意のSCR/AMOxとの両方を有する、2種の例示的なシステムの概略図である。
【
図7】DOC-CSF-SCRを有するccSCR-LNT成分と任意のSCR/AMOxとの両方を有する、2種の例示的なシステムの概略図である。
【
図8】ターボアウトの温度と比べた、ヒーターの後のガス温度に及ぼす10kWおよび20kW電気ヒーターの影響を示す、温度対時間のグラフである。
【
図9】電気加熱有りおよび無しで、種々の密結合触媒組成物(SCRおよびSCR/LNTベース)を比較するモデル化データのグラフである。
【
図10】ccSCRとUF DOC-CSF-SCRとを有する10kW電気ヒーターを含むシステムに関するモデル化データに基づくSCRアウトのNOx放出のグラフである。
【
図11】ccSCRとUF DOC-CSF-SCRとを有する20kW電気ヒーターを含むシステムに関するモデル化データに基づくSCRアウトのNOx放出のグラフである。
【
図12】ccSCR-LNTとUF DOC-CSF-SCRとを有する10kW電気ヒーターを含むシステムに関するモデル化データに基づくSCRアウトのNOx放出のグラフである。
【
図13】ccSCR-LNTとUF DOC-CSF-SCRとを有する20kW電気ヒーターを含むシステムに関するモデル化データに基づくSCRアウトのNOx放出のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、リーンバーンエンジンの排ガス流に含有されるNOxの削減に効果的な触媒物品、システムおよび方法に関する。一般に、本明細書で提供する物品、システム、および方法は、上流のSCR触媒組成物と下流のLNT組成物とを含み、かつリーン排ガスとリッチ排ガスとが交互に繰り返されて作動することができる。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「触媒」または「触媒組成物」とは、反応を促進する材料を指す。触媒は、「触媒活性種」および活性種を保有または担持する「担体」を含む。例えば、ゼオライトを含むモレキュラーシーブは、本発明の銅のおよび鉄の活性触媒種用の担体/支持体である。同様に、耐火性金属酸化物粒子は白金族金属触媒種用の担体とすることができる。触媒活性種はまた、化学反応を促進するので「促進剤」とも呼ばれる。例えば、本発明の銅含有モレキュラーシーブまたは鉄含有モレキュラーシーブは、銅促進モレキュラーシーブまたは鉄促進モレキュラーシーブと呼ばれることがある。「促進モレキュラーシーブ」とは、触媒活性種が意図的に添加されているモレキュラーシーブを指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「上流」および「下流」とは、エンジンから排気管に向かうエンジン排ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流の位置にあり、排気管ならびにフィルターおよび触媒などの任意の汚染削減物品がエンジンから下流に存在する状態である。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「流」とは、固体または液体の粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組合せを広く指す。用語「ガス流」または「排ガス流」とは、液滴、固体粒子などの混入非ガス成分を含有する場合もある燃焼エンジンの排気などのガス成分の流れを意味する。燃焼エンジンの排ガス流は通常には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素の酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質粒子状物質(すす)、ならびに未反応酸素および窒素をさらに含む。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「基材」とは、その上に触媒組成物が置かれるモノリシック材料を指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「支持体」とは、その上に触媒貴金属が適用される任意の高表面積材料、普通は金属酸化物材料を指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「ウォッシュコート」とは、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔質である、ハニカム型担体部材などの、基材材料に適用される触媒材料または他の材料の薄い接着性コーティングに関する、当技術分野におけるその普通の意味を有する。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に、ある特定の固形分の粒子(例えば、30質量%~90質量%)を含有するスラリーを製造することによって形成される。次いで、このスラリーを基材にコーティングし、乾燥してウォッシュコート層を提供する。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「触媒物品」とは、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、基材上に触媒組成物を含有するウォッシュコートを含むことができる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「含浸(された)」または「含浸」とは、支持体材料の多孔質構造への触媒材料の浸透を指す。
【0049】
用語「削減」とは、任意の手段によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0050】
特記されてない限り、質量パーセント(wt.%)とは、いかなる揮発性物質も含まない全体の組成に基づいている、すなわち、固形分に基づいている。
【0051】
LNT組成物
本明細書に開示の物品、システム、および方法の一触媒組成物は、リーンNOxトラップ(LNT)組成物である。LNTとはリーンNOxトラップを指し、これは通常には、白金族金属(PGM)成分とNOx収着剤(例えばアルカリ土類トラップ金属)とを含有する触媒である。LNT組成物は任意に、酸素貯蔵成分などの他の成分を含有することができる。LNTは、リーン作動時(λ>1.0)にはNOxの貯蔵を促進することによって、そしてリッチ時(λ<1.0)には貯蔵NOxのN2への還元を触媒することによって作動すると考えられている。一部のLNT触媒は特定の温度超でNOxを放出するが、ここで、この温度はLNTウォッシュコートの組成によって変わる。
【0052】
ある特定の例示的なLNT組成物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Wanに付与された米国特許第8,475,752号およびWanらに付与された米国特許第9,321,009号に教示されている。適切なNOx収着剤は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびそれらの混合物から選択されるアルカリ土類元素の塩基性含酸素化合物、ならびにセリウムなどの希土類元素の含酸素化合物(すなわち、セリア成分)を含む。「希土類金属成分」とは、ランタン、セリウム、プラセオジムおよびネオジムを含めて、元素周期表に定義されるランタン系列のうちの1種または複数の酸化物を指す。希土類金属成分、例えばセリア成分は、ランタン、ネオジムまたはプラセオジムのうちの1種または複数をさらに含有してもよい。「白金族金属成分」(PGM)とは、白金族金属またはそれらの化合物、例えば、またはそれらの酸化物の1種を指す。
【0053】
セリア成分は、例えば可溶性の前駆体(例えば硝酸セリウム)をその上に分散させることにより支持体上に、例えば耐火性金属酸化物支持体上に分散させることができる。あるいは、成分は、支持体上に分散されているのとは対照的に、わずか直径1~15ミクロン以下の微粒子などの、組成物中の粒子状形態で提供される。一部の実施形態では、セリア成分は、参照により本明細書に組み込まれる、Wanに付与された米国特許第5,057,483号に教示の、共形成希土類金属-ジルコニア複合体(例えば、セリア-ジルコニア複合体)のバルク微粒子材料を含むことができる。かかる粒子は、900℃に長時間曝露すると40m2/g超のBET表面積を維持することができる。「BET表面積」は、N2吸着によって表面積を決定するためのブルナウアー-エメット-テラー法を指すその普通の意味を有する。
【0054】
支持体は、アルミナ、チタニア、ジルコニア;アルミナとチタニア、ジルコニアおよびセリアのうちの1種または複数との混合物;アルミナにコーティングされたセリアまたはアルミナにコーティングされたチタニアなどの、少なくとも或る高表面積の耐火性金属酸化物を含む。耐火性金属酸化物は、酸化物または、混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、非晶質であっても結晶性であってもよいアルミノシリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリアなどを含有することができる。耐火性金属酸化物は特にガンマアルミナ、アルミナ上にコーティングされたセリアまたはアルミナ上にコーティングされたチタニアである。耐火性金属酸化物は、約50~約300m2/gの比表面積を有することができる。他の成分が、例えば、ジルコニウムなどの他の遷移金属が、LNT組成物中に存在してもよい。
【0055】
適切なLNT組成物は、約100~約600℃、例えば約150から約450℃までの排気温度で良好なNOx貯蔵/NOx還元活性を示す。加えて、一部の実施形態では、LNT触媒組成物は、高い熱安定性および温和な条件下で硫黄化合物を除去する能力も示す。
【0056】
SCR触媒組成物
選択接触還元(SCR)触媒組成物は一般には、卑金属(例えば、銅および/または鉄)イオン交換モレキュラーシーブ(例えば、Cu-Yおよび/またはFe-ベータ)、または例えば、V2O5/WO3/TiO2/SiO2などの、バナジア系組成物を含む。卑金属イオン交換ゼオライトについては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Boorseらに付与された米国特許第7,998,423号に記載されている。例えば、SCR触媒の例示的な1種類はCuCHA、例えば銅-SSZ-13である。SAPOなどのチャバザイトに類似の構造を示すモレキュラーシーブも用いることができる。したがって、CuSAPO、例えば銅-SAPO-34もまた適している。本発明の種々の実施形態で用いることができる種々のモレキュラーシーブは、本明細書において下に概説されている。
【0057】
モレキュラーシーブとは、四面体型部位を一般に含有するとともに比較的均一な孔径の孔分布を有する、酸素イオンの広範囲にわたる三次元ネットワークを有する材料を指す。ゼオライトは、モレキュラーシーブの具体的な例であり、さらに、シリコンとアルミニウムとを含む。触媒層における“非ゼオライト支持体”または“非ゼオライト系支持体”についての言及は、ゼオライトではない材料、かつ貴金属、安定剤、促進剤、バインダーなどを会合、分散、含浸または他の適切な方法によって受け入れる材料を指す。かかる非ゼオライト系支持体の例には、それらに限定されないが、高表面積の耐火性金属酸化物が含まれる。高表面積の耐火性金属酸化物支持体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、ランタナ、バリアおよびそれらの組合せからなる群から選択される活性化合物を含むことができる。
【0058】
ある種のモレキュラーシーブは、例えば、8員環の孔開口部および二重-6員環の二次構成単位、例えば以下の構造型を有するものを有する:AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SATまたはSAV。同じ構造型を有するSAPO、AlPOおよびMeAPO材料などのあらゆる同位体骨格材料が含まれる。アルミノシリケートゼオライト構造は、リンまたは骨格内で同型で置換された他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、AlPOおよびMeAPO材料などのアルミノホスフェート材料を除外するが、より広い用語「ゼオライト」はアルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含む。
【0059】
8員環小孔モレキュラーシーブには、アルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、MeAPSOおよびMeAPOが含まれる。これには、それらに限定されないが、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、リンデD、リンデR、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、ZYT-6、CuSAPO-34、CuSAPO-44およびCuSAPO-47が含まれる。ある特定の実施形態では、8員環小孔モレキュラーシーブは、SSZ-13およびSSZ-62などのアルミノシリケート組成物を有することになる。
【0060】
1つまたは複数の実施形態では、8員環小孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有し、かつCHA結晶構造を有するアルミノシリケートゼオライト、SAPO、AlPO、およびMeAPOからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、CHA結晶構造を有する8員環小孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有するアルミノシリケートゼオライトである。ある特定の実施形態では、CHA結晶構造を有する8員環小孔モレキュラーシーブは、SSZ-13またはSSZ-62などのアルミノシリケート組成物を有する。銅含有チャバザイトおよび鉄含有チャバザイトは、それぞれCuCHAおよびFeCHAと呼ばれる。
【0061】
モレキュラーシーブは、ゼオライト系(ゼオライト)とすることができ、または非ゼオライト系であってもよい。ゼオライト系モレキュラーシーブおよび非ゼオライト系モレキュラーシーブの両方とも、国際ゼオライト協会によってCHA構造とも呼ばれるチャバザイト結晶構造を有することができる。ゼオライト系チャバザイトは、近似公式(Ca、Na2、K2、Mg)Al2Si4O12・6H2O(すなわち、水和ケイ酸アルミニウムカルシウム))を有するゼオライト群の天然に存在するテクトケイ酸塩鉱物を含む。ゼオライト系チャバザイトはまた合成的に製造することができる。
【0062】
ゼオライト系チャバザイトの3種の合成形態は、参照により本明細書に組み込まれる、1973年にJohn Wiley&Sonsによって公開されたD.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記載されている。Breckによって報告された3種の合成形態は、参照により本明細書に組み込まれる、J.Chem.Soc.、2822頁(1956)、Barrerらに記載のZeolite K-G;英国特許第868,846号(1961年)に記載のZeolite D;およびMiltonに付与された米国特許第3,030,181号に記載のZeolite R、である。ゼオライト系チャバザイト、SSZ-13の別の合成形態の合成は、Zonesに付与された米国特許第4,544,538号に記載されている。チャバザイト結晶構造を有する非ゼオライト系モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート34(SAPO-34)の合成形態の合成は、参照により本明細書に組み込まれる、Lokらに付与された米国特許第4,440,871号およびVan Denらに付与された米国特許第7,264,789号に記載されている。チャバザイト構造を有するさらに別の合成非ゼオライト系モレキュラーシーブ、SAPO-44を作製する方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Liuらに付与された米国特許第6,162,415号に記載されている。
【0063】
合成8員環小孔モレキュラーシーブ(例えばCHA構造を有する)は、アルカリ性水性条件下でシリカ源と、アルミナ源と構造指向剤とを混合することによって製造することができる。典型的なシリカ源には、種々の種類のヒュームドシリカ、沈降シリカおよびコロイダルシリカ、ならびにシリコンアルコキシドが含まれる。典型的なアルミナ源には、ベーマイト、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウムまたはアルミン酸ナトリウムなどのアルミニウム塩、およびアルミニウムアルコキシドが含まれる。水酸化ナトリウムが典型的には、反応混合物に添加される。この合成向けの典型的な構造指向剤はアダマンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドであるが、他のアミンおよび/または四級アンモニウム塩で置き換わってもよく、これらを添加してもよい。反応混合物を圧力容器中で撹拌しながら加熱して結晶性生成物を得る。典型的な反応温度は約100℃から約200℃、例えば約135℃から約170℃までの範囲である。典型的な反応時間は1時間から30日の間であり、特定の実施形態では、例えば10時間から3日までである。反応の終わりに、任意にpHを6から10の間、例えば7から7.5の間に調整し、生成物を濾過し、水で洗浄する。任意の酸、例えば硝酸をpH調整に使用することができる。任意に、生成物を遠心分離してもよい。有機添加物を使用して、固体生成物の取扱いおよび単離に役立てることができる。噴霧乾燥は製品の加工において任意の工程である。固体生成物は空気中または窒素中で熱処理される。あるいは、各ガス処理は種々の順序で適用することができ、またはガスの混合物を適用することができる。典型的なか焼温度は、約400℃から約850℃までである。CHA構造を有するモレキュラーシーブは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Zonesへ付与された米国特許第4,544,538号およびZonesらへ付与された米国特許第6,709,644号に開示の方法に従って製造することができる。
【0064】
モレキュラーシーブは、約1、約2、約5、約8、約10、約15、約20または約25から約30、約35、約40、約45、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約260、約300、約400、約500、約750または約1000までのシリカ対アルミナ比(SAR)を有することができる。例えば、本発明のモレキュラーシーブは、約5から約250まで、約10から約200まで、約2から約300まで、約5から約250まで、約10から約200まで、約10から約100まで、約10から約75まで、約10から約60まで、約10から約50まで、約15から約100まで、約15から約75まで、約15から約60まで、約15から約50まで、約20から約100まで、約20から約75まで、約20から約60までまたは約20から約50までの、SARを有することができる。
【0065】
本発明のモレキュラーシーブは、一部の実施形態では、銅含有または鉄含有である。銅または鉄は、モレキュラーシーブのイオン交換部位(孔)内にある、またモレキュラーシーブと会合しているが孔「内」ではないとすることができる。例えば、か焼時に、非交換型銅塩は、本明細書で「遊離銅」または「可溶性銅」とも呼ばれるCuOに分解する。遊離卑金属は、参照により本明細書に組み込まれる、Bullらに付与された米国特許第8,404,203号に開示の通り有益とすることができる。銅などの遊離卑金属の量は、イオン交換卑金属の量より少なくても、等しくても、多くてもよい。
【0066】
本開示による鉄含有モレキュラーシーブの鉄の量は、例えば、鉄含有モレキュラーシーブの総質量に対して約1.0から約15wt.%までであり、銅含有モレキュラーシーブの銅の量は、銅含有モレキュラーシーブの総質量に対して、例えば約0.3から約10.0wt.%までである。例えば、一部の実施形態では、鉄含有モレキュラーシーブの鉄の量は、モレキュラーシーブの総質量に対して、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5または約10wt.%である。一部の実施形態での銅含有モレキュラーシーブの銅の量は、銅含有モレキュラーシーブの総質量に対して、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0wt.%、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9または約5.0wt.%、である。
【0067】
モレキュラーシーブの銅または鉄などの触媒金属の量は、酸化物、CuOまたはFe2O3として報告されている。モレキュラーシーブの総乾燥質量は、銅または鉄などの添加/交換された任意の金属を含む。銅または鉄を含有する8員環小孔モレキュラーシーブはそれぞれ、か焼モレキュラーシーブの総質量に対して2wt.%未満のナトリウム含有量(揮発分フリーベースでNa2Oとして報告)を有することができる。より特定の実施形態では、ナトリウム含有量は1wt.%未満または2500ppm未満である。モレキュラーシーブはそれぞれ、約0.02から約0.7までの原子ナトリウム対アルミニウム比を有することができる。モレキュラーシーブはそれぞれ、約0.5から約50までの原子銅または鉄対ナトリウムの比を有することができる。
【0068】
モレキュラーシーブは、一部の実施形態では、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、セリウム、白金、パラジウム、ロジウムまたはそれらの組合せなどの他の触媒活性金属を含有してもよい。一部の実施形態では、モレキュラーシーブは、第1の金属(例えば、銅または鉄)および第2の金属を含有してもよい。第二の金属は様々とすることができ、一部の実施形態では、鉄またはアルカリ土類金属もしくはアルカリ金属であってもよい。適切なアルカリ土類金属またはアルカリ金属には、それらに限定されないが、バリウム、マグネシウム、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびそれらの組合せが含まれる。任意のアルカリ土類金属またはアルカリ金属は、卑金属イオンとの共交換プロセスの前、その後またはその際に、交換することができる。さらに、調整したコロイドが構造指向剤と、シリカ源と、アルミナ源と金属イオン(例えば銅)源とを含有するように、モレキュラーシーブ合成プロセス時に触媒活性金属の少なくとも一部を含ませることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属を銅含有モレキュラーシーブに任意に組み込んで、さらなるSCR促進をもたらすことができる。
【0069】
本明細書に開示のモレキュラーシーブ(銅含有モレキュラーシーブまたは鉄含有モレキュラーシーブを含めて)は、DIN66131に準拠して決定された、少なくとも約400m2/g、少なくとも約550m2/gまたは少なくとも約650m2/gの、例えば約400から約750m2/gまでのまたは約500から約750m2/gまでの、BET表面積を示すことが可能である。モレキュラーシーブは、SEMにより決定して、約10ナノメートルから約10ミクロンまで、約50ナノメートルから約5ミクロンまでまたは約0.1ミクロンから約0.5ミクロンまでの平均結晶サイズを有することができる。例えば、モレキュラーシーブ微結晶は、0.1ミクロンまたは1ミクロンを超えかつ5ミクロン未満の結晶サイズを有することができる。
【0070】
適切なSCR組成物はまた、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,017,626号、第9,242,238号および第9,352,307号に、開示されている。例えば、さらなるSCR組成物は、バナジア/チタニア触媒およびCuゼオライトを含むか、またはCu含有モレキュラーシーブとFe含有モレキュラーシーブとの混合物を含む。
【0071】
触媒物品
本開示は、1種または複数の触媒物品であって、各触媒物品が、その上に配置された1種または複数の触媒組成物(すなわち、LNT組成物および/またはSCR触媒組成物)を有する基材を含む、触媒物品を提供する。本開示のコーティングは、壁面上および/または壁の孔内、すなわちフィルター壁の「中」にあっても、および/または「上」にあってもよい。したがって、表現「その上に触媒コーティングを有する」とは、任意の表面上、例えば壁面上および/または孔表面上を意味する。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に開示のLNT組成物とSCR触媒組成物とは別々の基材上に提供される。一部の実施形態では、(その上にLNT組成物が配置されている)第1の基材は多孔質壁流フィルターであり、(その上にSCR触媒組成物が配置されている)第2の基材はフロースルーモノリスであるか、または代替的に、第1の基材はフロースルーモノリスであり、第2の基材は多孔質壁流フィルターである。あるいは、両方の基材は同一であってもよく、フロースルー基材または壁流基材であってもよい。
【0073】
ある特定の好ましい実施形態では、LNT組成物とSCR触媒組成物とは同じ基材上に存在する。基材上の全体のコーティングは、例えばLNT組成物とSCR触媒組成物とを一緒に基材上の触媒コーティング(全体の触媒コーティング)と呼ぶことが可能なように、個々の「コーティング層」を含むことができる。全体のコーティングは、ある特定の実施形態では、基材の長さに沿って「横方向にゾーン化」または「ゾーン化」され、ここで、各横方向ゾーンは、本明細書で下に詳述するように1種または複数のコーティング層を含有する。
【0074】
1つまたは複数の実施形態によれば、触媒物品の基材は、自動車用触媒を製造するのに典型的に使用される任意の材料から構成されることができ、壁流基材などの金属のまたはセラミックのモノリシックハニカム構造を典型的には含む。基材(例えば、壁流フィルターまたはフロースルー基材)によって典型的には、本明細書に記載の触媒組成物を含むウォッシュコートが適用および接着されている複数の壁面が提供され、それによって触媒組成物の担体として働く。
【0075】
例示的な金属基材には、チタンおよびステンレス鋼などの耐熱性金属および金属合金、ならびに鉄が実質的または主成分である他の合金が含まれる。金属基材の具体例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的または主成分であるものが含まれる。かかる合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1種または複数を含有することができ、これらの金属の合計は、合金の少なくとも約15wt.%(質量パーセント)、例えば、クロム約10~約25wt.%、アルミニウム約1~約8wt.%、およびニッケル0から約20wt.%まで、を含むのが有利とすることができる。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどの少量または微量の1種または複数の他の金属を含有してもよい。壁流金属基材の表面は、例えば1000℃以上の高温で酸化して、基材の表面上に酸化物層を形成し、その結果、合金の耐食性が改善され、金属表面へのウォッシュコート層の接着が容易になる。金属基材は、ペレット、波形シートまたはモノリシックフォームなどの種々の形状で用いることができる。
【0076】
開示の基材を構成するのに使用されるセラミック材料には、適切な任意の耐火材料、例えばコージエライト、ムライト、コージエライト-αアルミナ、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノシリケートなどが含まれ得る。代替の実施形態では、1種または複数の触媒組成物を連続気泡フォーム基材上に堆積させることができる。かかる基材は当技術分野においてよく知られており、そして耐火セラミック材料または耐火金属材料から典型的には形成される。
【0077】
図1および
図2に、本明細書に記載の1種または複数のウォッシュコート組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態にある例示的な基材2を例示する。
図1を参照すると、例示的な基材2は、円筒形状、円筒形の外表面4、上流端面6、および端面6と同一の相応する下流端面8を有する。基材2はその中に形成されている、複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図2に見られるように、流路10は、壁12によって形成され、担体2を通して上流端面6から下流端面8まで広がり、担体2のガス流路10を介して担体2を通る縦方向の流体の流れ、例えばガス流を可能にするように、流路10は非閉塞である。
図2でより容易にわかるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形の形状を有するように寸法決めされかつ構成されている。示してあるように、ウォッシュコート組成物は、所望であれば、多重の異なる層で適用することができる。例示の実施形態では、ウォッシュコートは、担体部材の壁12に接着された別個のボトムウォッシュコート層14と、ボトムウォッシュコート層14上にコーティングされた第2の別個のトップウォッシュコート層16との両方からなる。本発明は、1層または複数(例えば、2、3、または4)のウォッシュコート層で実施することができ、例示の2層の実施形態に限定されない。
【0078】
フロースルーモノリス基材は、例えば、約50in3から約1200in3までの体積、約60セル毎1平方インチ(cpsi)から約500cpsiまでまたは最大約900cpsiまでのセル密度、例えば、約200から約400cpsiまでのセル密度、および約50から約200ミクロンまたは約400ミクロンまでの壁厚を有する。モノリシック基材の流路は薄壁チャンネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形および円形などの、適切な任意の断面形状および大きさとすることができる。かかる構造物は、約60から約900個までまたはそれ以上のガス入口開口部(すなわちセル)毎断面の1平方インチを含有することができる。
【0079】
あるいは、
図1および
図3に、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされた壁流フィルター基材の形態にある例示的な基材2を例示する。
図1でわかるように、例示的な基材2は複数の通路52を有する。通路はフィルター基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は入口端54と出口端56とを有する。入口プラグ58を有する入口端で、そして出口プラグ60を有する出口端で、交互の通路が塞がれて、入口54と出口56とで、対向するチェッカーボードパターンが形成されている。このようなモノリシック担体は、最大約700個までまたはそれより多い流路(または「セル」)毎断面の1平方インチを含んでも良いが、かなり少ない流路を使用しても良い。例えば、典型的な担体は普通には、約100から約400個までまたは約200から300個までのセル毎1平方インチ(「cpsi」)、を有する。セルは、長方形、正方形、円、楕円、三角形、六角形である、または、他の多角形形状である断面を有することができる。壁流基材は典型的には、約50ミクロンから約2000ミクロンまで、例えば、約50ミクロンから約400ミクロンまでまたは約0.002から約0.1インチまでの壁厚を有する。壁流フィルターは一般に、触媒コーティングの処置の前に、少なくとも5ミクロンの平均孔径を持って少なくとも50%の壁空隙率を有する。
【0080】
例えば、壁流フィルターは、触媒コーティングの処置の前に、約50から約75%までの壁空隙率および約10から約30ミクロンまでの平均孔径を有することになる。ガス流62は、塞がれていないチャンネル入口64を通って流入し、出口プラグ60によって止められ、そしてチャンネル壁53(これは多孔質である)を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58のために、壁の入口側に戻ることができない。本発明に使用される多孔質壁流フィルターは、前記要素の壁が1種または複数の触媒材料をその上に有するかまたはその中に含有していたという点で、触媒化されている。触媒材料は、要素壁の入口側に単独で存在しても、出口側に単独で存在しても、入口と出口側の両方に存在しても良く、または壁はそれ自体、全てがまたは部分的に触媒材料からなっていてもよい。壁流基材では、触媒組成物は、壁流基材中の壁の表面上に配置されることに加えて、多孔質壁の孔構造中に浸透することができる(すなわち、孔開口部を部分的にまたは完全に閉塞する)、ことに留意されたい。本発明には、要素の入口壁および/または出口壁上の触媒材料の1層または複数の層を使用することが含まれる。触媒化壁流フィルターは、例えば、米国特許第7,229,597号に開示されており、これには、コーティングが多孔質壁を浸透するように、すなわち壁全体にわたって分散されるように触媒コーティングを適用する方法が教示されている。フロースルー基材および壁流基材もまた、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Mohananらに付与された国際特許出願公開第WO2016/070090号に教示されている。壁流基材を利用する場合、結果として生じるシステムは、ガス状汚染物質と共に粒子状物質を除去することが可能となる。壁流基材上での触媒コーティングの装填は、空隙率および壁厚などの基材の特性に左右され、典型的には、フロースルー基材上への触媒装填よりも少ないことになる。
【0081】
LNT組成物に関して、この組成物は一般に、1層または複数のコーティング層を含むコーティングの形態(「LNTコーティング組成物」)であり、少なくとも基材の下流部分に配置されている。例えば、一部の実施形態では、LNTコーティング組成物は、基材に接着しているボトム層と、ボトム層の一部または全体と重なってかつ接触しているトップ層とを有する二層触媒コーティングである。一部の実施形態では、トップ層は少なくとも1種の担持PGM成分とセリアとを含む。一部の実施形態では、トップ層は少なくとも1種の担持PGM成分と、任意にジルコニアとを含む。
【0082】
トップ層は、一部の実施形態では、任意のアルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成分が実質的にない/含まれないことが有利であるとすることができる。「実質的にない」とは、例えば、「ほとんどまたは全くない」ことを意味し、例えば「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量および/または不注意量のみを有することを意味する。例えば、このことは、示された全組成の質量に対して、2wt.%(質量%)未満、1.5wt.%未満、1.0wt.%未満、0.5wt.%未満、0.25wt.%または0.01wt.%未満を意味する。「実質的に全て」とは、例えば、質量でまたは数で、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%を意味する。「実質的にない」とは、例えば、質量でまたは数で、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満または0.1%未満を意味する。
【0083】
一部の実施形態では、ボトム層は少なくとも1種のNOx吸着剤を含み、この吸着材は、一部の実施形態では、少なくとも1種の担持PGM成分と密接に接触していることが可能である。例えば、1つの特定の例として、LNTコーティング組成物は、セリアおよびBaOを含有するアルミナ、セリア、MgOならびにZrO2を含有するアンダーコートであって、一部の実施形態ではPtおよびPdをさらに含有することができるアンダーコートと、アルミナ上に担持されているPtおよびPdならびにセリア上に担持されているRhを含有するトップコートであって、アルカリ土類成分は実質的に存在しない状態であるトップコートと、を含むことができる。
【0084】
SCR触媒組成物に関して、この組成物は一般に、1層または複数のコーティング層を含む触媒コーティングの形態(「SCR触媒コーティング組成物」)であり、少なくとも基材の上流部分に配置されている。
【0085】
上述の通り、好ましい実施形態では、LNTコーティング組成物とSCR触媒コーティング組成物とは、同じ基材上に、ゾーン化(例えば、横方向にゾーン化)の構成で存在する。本発明のゾーン化基材は、上流のSCRゾーンと下流のLNTゾーン(SCR/LNT)とを含む。基材の入口端は、「上流」端または「前」端と同義である。出口端は「下流」端または「後」端と同義である。基材は或る長さと或る幅を有することになる。上流ゾーンは下流ゾーンの上流である。触媒化基材のゾーンは、その上にある特定のコーティング構造を有する断面として定義される。
【0086】
例えば、同じ基材を、LNTコーティング層の1種または複数のウォッシュコートスラリー(同じであっても異なっていてもよい)およびSCR触媒コーティング層の1種または複数のウォッシュコートスラリー(同じであっても異なっていてもよい)でコーティングすることができる。これは、
図4を参照することによってより容易に理解することができ、
図4に、第1のウォッシュコートゾーン102と第2のウォッシュコートゾーン103とが基材100の長さに沿って並んで配置されている、一実施形態を示す。特定の実施形態の第1のウォッシュコートゾーン102(SCR触媒コーティングを含む)は、基材100の前端または入口端100aから、基材100の長さの、約5%~約95%の、約5%から約75%までの、約5%から約50%までの、または約10%から約35%までの範囲にわたって広がっている(例えば、入口端から出口端に向かって、基材の長さの、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%広がっている)。第2のウォッシュコートゾーン103(LNTコーティングを含む)は、基材100の後端または出口端100bから、基材100の軸全長の、約5%から約95%まで、約5%から約75%まで、約5%から約50%まで、または約10%から約35%まで広がっている(例えば、出口端から入口端に向かって、基材の長さの、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%広がっている)。
【0087】
SCR触媒ゾーンとLNTゾーンとは互いに隣接していても、互いに重なっていなくてもよい。あるいは、SCR触媒ゾーンとLNTゾーンは互いに重なり合って、第3の「中間の」ゾーンを提供してもよい。中間のゾーンは、例えば、基材の長さの約5%から約80%まで、例えば、基材の長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%または約70%広がっていてもよい。
【0088】
SCR触媒ゾーンとLNTゾーンとは、「中間の」重なり合うゾーンなしで互いに直接に接触していてもよい。あるいは、SCR触媒ゾーンとLNTゾーンとは、2つのゾーン間に「ギャップ」を有して、直接に接触していなくてもよい。「アンダーコート」または「オーバーコート」の場合、SCRゾーンとLNTゾーンとの間のギャップは「中間層」と呼ばれる。SCR触媒ゾーンは基材の全長に広がっていてもよく、LNTゾーンはSCR触媒ゾーンの一部に重なっているかまたは下張りしてもよい。例えば、LNTゾーンは、出口端から入口端に向かって、基材の長さの、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%または約80%広がっていることができる。LNTゾーンは基材の全長に広がっていてもよく、SCR触媒ゾーンはLNTゾーンの一部に重なっているかまたは下張りしてもよい。例えば、SCR触媒ゾーンは、入口端から出口端に向かって、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%または約80%広がっていることができる。
【0089】
本発明のゾーンはSCR触媒コーティングとLNT触媒コーティングとの関係によって画定されている。SCR触媒コーティングとLNT触媒コーティングとに関しては、上流ゾーンおよび下流ゾーンのみが存在するか、または上流ゾーン、中間ゾーンおよび下流ゾーンが存在する場合もある。SCR触媒コーティングとLNT触媒コーティングとが隣接していて重なり合わない場合、上流ゾーンおよび下流ゾーンのみが存在する。SCR触媒コーティングとLNTコーティングとがある程度重なり合っている場合、上流ゾーン、下流ゾーンおよび中間ゾーンが存在する。例えば、SCRゾーンが基材の全長に広がり、LNTゾーンが出口端からある特定の長さ広がって、SCRゾーンの一部に重なっているかまたは下張りしている場合、上流ゾーンおよび下流ゾーンのみが存在する。隣接していて重なり合っていない場合、ゾーンは接触していてもよく、またはゾーン間にギャップがあってもよい。
【0090】
SCRゾーンとLNTゾーンとは基材と直接に接触していてもよい。あるいは、1種または複数の「アンダーコート」が存在することができ、その結果、SCRゾーンとLNTゾーンとの少なくとも一部は、基材と直接には接触していない(むしろアンダーコートと接触している)。1種または複数の「オーバーコート」も存在することができ、その結果、SCR触媒ゾーンとLNTゾーンとの少なくとも一部はガス流または大気に直接に曝露していない(むしろオーバーコートと接触している)。中間層、アンダーコートおよびオーバーコートは、1種または複数の触媒を含有してもよく、触媒を含まなくてもよい。本発明の触媒コーティングは、複数の同一の層を含むことができる。本発明の最も単純な物品は、フィルターの入口端から出口端に向かって広がっているSCR触媒コーティング組成物と、フィルターの出口端から入口端に向かって広がっているLNTコーティング組成物とを有するフロースルー基材または壁流フィルター基材を含む。
【0091】
組成物のウォッシュコート成分もしくは触媒金属成分または他の成分の量を記載する際には、成分の質量の単位毎触媒基材の単位体積を使用するのが便利である。したがって、本明細書では、単位、グラム毎1立方インチ(「g/in3」)とグラム毎1立方フィート当たりの(「g/ft3」)を使用して、基材の空隙空間の体積を含めて、成分の質量毎基材の体積を意味する。g/Lなどの質量毎体積の他の単位も使用することもある。基材上の触媒組成物、または他の任意の成分の濃度とは、任意の1個の三次元区画またはゾーン、例えば基材のまたは基材全体の任意の断面当たりの濃度を指す。
【0092】
LNT組成物に関して、PGM成分(窒素種の酸化および還元を促進すると理解されたい)は、基材に対して、約10g/ft3~約250g/ft3の範囲内の、例えば、約20g/ft3、約30g/ft3、約40g/ft3、約50g/ft3または約60g/ft3から約100g/ft3、約150g/ft3または約200g/ft3までの、装填であるとすることができる。複数のコーティング層が存在する場合、異なる層の白金族金属成分は同一でも異なっていてもよい。同様に、異なる層の白金族金属成分の量は同一でも異なっていてもよい。支持体は一般に、例えば、基材に対して、約1.5から約6.0または約7.0g/in3の濃度で存在する。複数のコーティング層が存在する場合、異なる層の支持体は同一でも異なっていてもよい。同様に、異なる層の支持体の量は同一でも異なっていてもよい。NOx収着剤成分は、例えば、基材に対して、約0.1から約4.0g/in3までの濃度で、例えば、約0.2g/in3、約0.3g/in3、約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3または約0.8g/in3から、約1.0g/in3、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3または約3.5g/in3までの濃度で、存在する。LNT組成物内で組み込み可能な任意の遷移金属成分は、基材に対して約0.01から約0.5g/in3までの濃度で存在することができる。
【0093】
SCR触媒組成物に関して、組成物は一般に、例えば、基材に対して、約0.3から4.5g/in3までの濃度で、または約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9または約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3または約4.0g/in3までの濃度で存在する。
【0094】
触媒組成物を作製する方法
本明細書に開示の組成物を作製する方法は、組成物内に組み込まれた特定の成分によって異なる。
【0095】
卑金属酸化物成分含浸支持体材料、PGM成分含浸支持体材料、または希土類金属酸化物成分含浸支持体材料の製造は一般に、粒子状形態にある支持体材料を活性金属前駆体溶液(例えば、パラジウム成分前駆体、銅含有前駆体、またはセリウム含有前駆体)で含浸させることを含む。活性金属前駆体は一般に、活性金属の塩であり、典型的には、溶媒に溶かして活性金属前駆体溶液を形成する。
【0096】
金属含浸支持体材料を含める場合(例えば、PGM含浸支持体)、かかる含浸材料は一般に、粒子状形態にある支持体材料を白金、パラジウムおよび/またはルテニウム前駆体溶液などの、活性金属溶液で含浸することによって提供される。活性金属は、初期湿潤技術を使用して同じ支持体粒子または別々の支持体粒子に含浸させることができる。毛管含浸または乾式含浸とも呼ばれる初期湿潤含浸技術は、不均一材料、例えば触媒の合成に普通に使用されている。典型的には、金属前駆体を水溶液または有機溶液に溶かし、次いで金属含有溶液を、添加した溶液の体積と同じ孔体積を含有する触媒支持体に、添加する。毛管作用によって溶液が支持体の孔に引き寄せられる。支持体の孔体積を超えて添加された溶液は、毛管作用プロセスからずっと遅い拡散プロセスへと溶液輸送に変化をもたらす。次いで触媒を乾燥しか焼して溶液内の揮発性成分を除去し、その結果、触媒支持体の表面に金属を堆積することができる。含浸材料の濃度プロファイルは、含浸および乾燥時の孔内での物質移送条件によって異なる。
【0097】
支持体粒子は典型的には、実質的に溶液の全てを吸収して湿った固体を形成するように十分に乾燥している。塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム(例えばRu(NO)およびその塩)、ヘキサアンミンルテニウムクロリド、またはそれらの組合せなどの、活性金属(例えばPGM成分)の水溶性化合物または錯体の水溶液が典型的には利用される。活性金属としてパラジウムを有する水溶性化合物の水溶液は、硝酸パラジウム、テトラアミンパラジウム、酢酸パラジウム、またはそれらの組合せなどの金属前駆体を含む。支持体粒子を活性金属溶液で処理することに続いて、高温(例えば、100~150℃)で一定時間(例えば、1~3時間)粒子を熱処理することによるなど、粒子を乾燥させ、次いでか焼して活性金属をより触媒的に活性な形態に変換する。例示的なか焼プロセスは、約400~550℃の温度で10分~3時間、大気中にて熱処理することを伴う。上記のプロセスは、所望のレベルの活性金属含浸に達するために必要に応じて繰り返すことができる。
【0098】
典型的には、PGM成分は、PGM塩または錯体(またはPGM前駆体)を使用して、支持体上に、例えば活性アルミナなどの耐火性金属酸化物上に分散される。本発明の目的では、用語「白金族金属前駆体」とは、そのか焼または使用の際に、触媒的に活性な形態、普通は金属または金属酸化物に分解あるいは変換する任意の化合物、錯体などを意味する。耐火性金属酸化物の支持体粒子上に金属成分を含浸させるまたは堆積するのに使用される液体媒体が、金属またはその化合物もしくはその錯体と、あるいは触媒組成物中に存在し得、加熱および/または真空の適用の際に揮発または分解によって金属成分から除去される可能性がある他の成分と不利に反応しない限り、金属成分の水溶性化合物または水分散性化合物または錯体については、使用することができる。いくつかの場合において、液体の除去の完了は、触媒が使用されて、作動中に発生した高温に付されないうちは、起こり得ない。一般に、経済的局面および環境的局面の両方の観点から、白金族金属の可溶性化合物または錯体の水溶液が好ましい。例えば、適切な化合物は、塩化白金酸、アミン可溶化水酸化白金、硝酸パラジウムまたは塩化パラジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、塩化ヘキサミンロジウムなどである。か焼工程の間、または少なくとも、複合体の使用の初期フェーズの間に、かかる化合物が、金属またはその化合物の触媒的に活性な形態に変換される。
【0099】
本明細書に開示のある特定の組成物に含めるための銅含有モレキュラーシーブまたは鉄含有モレキュラーシーブは、一部の実施形態では、例えばNa+含有モレキュラーシーブ(Na+形態)からのイオン交換を介して製造される。Na+形態とは一般には、いかなるイオン交換もしていないか焼形態のモレキュラーシーブを指す。この形態では、モレキュラーシーブは一般には、交換部位にNa+カチオンとH+カチオンとの混合物を含有する。Na+カチオンによって占められる部位の割合は、特定のゼオライトバッチおよびレシピに応じて異なる。任意に、アルカリ金属モレキュラーシーブはNH4
+交換であり、NH4
+形態が銅または鉄とのイオン交換に用いられる。任意に、NH4
+交換モレキュラーシーブをH+交換形態にか焼し、このH+交換形態を銅イオンまたは鉄イオンとのイオン交換に用いることができる。
【0100】
H+形態、アルカリ金属形態、またはNH4
+形態(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bleken,F.ら Topics in Catalysis 2009、52、218~228に開示の通り、当技術分野で知られている方法によりアルカリ金属モレキュラーシーブへのNH4
-イオン交換によって製造することができる)を有するモレキュラーシーブに、銅または鉄のイオン交換を行う。イオン交換法は一般には、粒子状形態のモレキュラーシーブを金属前駆体溶液と接触させることを含む。例えば、Na+形態、NH4
+形態またはH+形態のモレキュラーシーブを塩水溶液と混合し、高温で適切な時間撹拌する。参照により本明細書に組み込まれる、Mohananらに付与された米国特許第9,242,238号に開示の通り、例えば、酢酸銅、硫酸銅、塩化鉄、酢酸鉄などの銅塩または鉄塩を使用することができる。スラリーを濾過し、フィルターケーキを洗浄し、乾燥する。一般には、アルカリ金属モレキュラーシーブまたはNH4モレキュラーシーブに、かかる金属のイオン交換を行う。
【0101】
モレキュラーシーブが複数の金属(例えば、1種または複数の他の金属と組み合わせた銅)で促進されている場合、多重の金属前駆体(例えば、銅前駆体および鉄前駆体)を同時にまたは別々にイオン交換することができる。ある特定の実施形態では、第1の金属でまず促進されているモレキュラーシーブ材料に、第2の金属の交換を行うことができる(例えば、銅促進モレキュラーシーブ材料に、第2の金属の交換を行うことができる)。例えば、バリウムを、Cuとの共交換プロセスの前、後またはその際に、酢酸Baを添加することによってモレキュラーシーブ(例えば、CuCHA)に組み込むことができる。金属促進モレキュラーシーブを含むSCR触媒組成物の製造の例については、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rivas-Cardonaらに付与された米国特許第9,480,976号;Stiebelsらに付与された米国特許第9,352,307号;Wanらに付与された米国特許第9,321,009号;Andersenらに付与された米国特許第9,199,195号;Bullらに付与された米国特許第9,138,732号;Mohananらに付与された米国特許第9,011,807号;Turkhanらに付与された米国特許第8,715,618号;Boorseらに付与された米国特許第8,293,182号;Boorseらに付与された米国特許第8,119,088号;Fedeykoらに付与された米国特許第8,101,146号;Marshallらに付与された米国特許第7,220,692号;Byrneらに付与された米国特許第4,961,917号;Shiraishiらに付与された米国特許第4,010,238号;およびNakajimaらに付与された米国特許第4,085,193号を参照されたい。
【0102】
触媒物品を作製する方法
上記の層組成物は典型的には、上記のように触媒粒子の形態で製造される。こういった触媒粒子を水と混合して、ハニカム型基材などの基材をコーティングする目的でスラリーを形成することができる。触媒コーティングは、活性触媒種を含有する1種または複数の担体を含有する。触媒コーティングは典型的には、その上に触媒活性種を有する担体を含有するウォッシュコートの形態で適用することができる。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に、ある特定の固形分の担体(例えば、10~60質量%)を含有するスラリーを製造することによって形成される。次いで、このスラリーを基材にコーティングし、乾燥しか焼してコーティング層を提供する。多重のコーティング層を適用する場合、各層を適用後におよび/または所望の多重層の数を適用後に、基材を乾燥およびか焼する。
【0103】
触媒粒子に加えて、スラリーは、アルミナ、シリカ、酢酸Zr、コロイド状ジルコニア、または水酸化Zrの形態のバインダー、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性もしくは両性界面活性剤を含めて)を任意に含有することができる。他の例示的なバインダーには、ボヘマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルが含まれる。存在する場合、バインダーは典型的には、総ウォッシュコート装填の約1~5wt.%の量で使用される。適宜、pHを調整するためにスラリーへ酸性または塩基性種を添加することができる。例えば、一部の実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウムまたは硝酸水溶液の添加によって調整される。スラリーの典型的なpH範囲は約3~6である。
【0104】
スラリーを粉砕して粒径を小さくし、粒子混合を増大することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の類似の装置で行うことができ、スラリーの固形分は、例えば、約20~60wt.%、より詳細には約20~40wt.%とすることができる。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径の特徴を有する。D90は、専用の粒径分析器を使用して決定される。装置は、2010年にSympatecによって製造されたものであり、レーザー回折を使用して小体積スラリー中の粒径を測定する。通常、ミクロンの単位を有するD90とは、数で粒子の90%が引用符付きの値より小さい直径を有することを意味する。
【0105】
当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用してスラリーを基材上にコーティングする。一実施形態では、基材をスラリーに1回または複数回浸漬するか、そうでなければスラリーでコーティングする。その後、コーティング基材を、高温(例えば、100~150℃)で一定時間(例えば、10分~約3時間)乾燥し、次いで例えば、400~600℃で、典型的には約10分~約3時間、加熱することによりか焼する。乾燥およびか焼後に、最終ウォッシュコートコーティング層は本質的に無溶媒であるとみなすことができる。
【0106】
か焼後、上記のウォッシュコート技術によって得られた触媒装填は、基材のコーティング質量と未コーティング質量の差を計算することによって決定することができる。当業者であれば明らかなように、触媒装填はスラリーレオロジーを変えることによって改変することができる。加えて、ウォッシュコートを生成するコーティング/乾燥/か焼プロセスは、所望の装填レベルまたは厚さにコーティングを構築するために必要に応じて繰り返すことができ、このことは、複数のウォッシュコートが適用可能であることを意味する。
【0107】
特にLNT組成物に関しては、ボトム層については、ガンマアルミナなどの高表面積の耐火性金属酸化物と他の触媒成分との微細粒子が適当なビヒクル、例えば水中でスラリー化される。次いで、基材をかかるスラリーに1回または複数回浸漬してもよく、金属酸化物の所望の装填、例えば、約1.5~約6.0g/in3が基材上に堆積することになるように、スラリーを基材(例えばハニカムフロースルー基材)上にコーティングしてもよい。白金族金属、遷移金属酸化物、安定剤、促進剤およびNOx収着剤成分などの成分は、水溶性化合物または水分散性化合物または錯体の混合物としてスラリー中に組み込むことができる。その後、コーティング基材を、例えば、400~600℃で1~3時間加熱することによりか焼する。
【0108】
層状(多重層)触媒複合体のボトム層は、白金族金属前駆体の溶液と、少なくとも1種の微細な、高表面積の耐火性金属酸化物支持体、例えばガンマアルミナとを混合することによって製造できるが、この支持体は、実質的に溶液の全てを吸収してスラリーを形成するのに十分に乾燥している。好ましくは、スラリーは酸性であり、約3~7未満のpHを有する。スラリーのpHは、少量の無機酸または有機酸、例えば塩酸または硝酸、好ましくは酢酸をスラリーに添加することによって低下させることができる。その後、NOx吸着剤成分、ならびに任意の遷移金属成分、安定剤および/または促進剤をスラリーに添加することができる。その後、スラリーを粉砕すると、固形物の実質的に全てが、平均直径で、20ミクロン未満の、すなわち、1~15ミクロンの粒径を有することになる。粉砕はボールミルまたは他の類似の装置で行うことができ、スラリーの固形分は、例えば20~60wt.%、好ましくは25~45wt.%とすることができる。
【0109】
その後、トップ層を製造し、上記のものと同様の方法でか焼基材のボトム層の上に堆積させる。全てのコーティング操作が完了した後、基材を、例えば400~600℃で約1~約3時間加熱することにより再度か焼する。
【0110】
モレキュラーシーブは粉末の形態で提供されてもよく、または噴霧乾燥材料を適切な改質剤と混合するかまたはそれでコーティングする。改質剤には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよび耐火性金属酸化物バインダー(例えば、酢酸ジルコニルなどの適切な前駆体または硝酸ジルコニルなどの他の適切な任意のジルコニウム前駆体から誘導されるZrO2バインダー)が含まれる。酢酸ジルコニルバインダーによって、熱エージング後、例えば、触媒が少なくとも約600℃、例えば約800℃以上の高温、および約10%以上の高水蒸気環境に曝露される場合、均質かつ無傷のままである触媒コーティングが提供される。他の潜在的に適切なバインダーには、それらに限定されないが、アルミナおよびシリカが含まれる。アルミナバインダーには、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが含まれる。アルミニウム塩およびアルミナのコロイド形態も多く使用される。シリカバインダーにはコロイダルシリカを含めて、種々の形態のSiO2が含まれる。バインダー組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカの任意の組合せを含むことができる。任意にある適切な改質剤による混合またはコーティングの後に、粉末または噴霧材料を例えば水とともにスラリーに形成することができ、例えば参照により本明細書に組み込まれる、Bullらに付与された米国特許第8,404,203号に開示の通り、このスラリーを基材上に堆積させる。
【0111】
排出処理システム
本発明はまた、本明細書に記載の触媒製品を組み込んだ排出処理システムを提供する。本発明の触媒物品は典型的には、排ガス排出の処理のための1種または複数のさらなる成分を含む一体化排出処理システムにおいて使用される。開示の排出処理システムは典型的には、ディーゼル酸化触媒(DOC)および/または煤煙フィルターおよび/または任意にアンモニア酸化触媒をさらに含む。煤煙フィルターは、触媒化されていなくてもよく、触媒化されていてもよい(CSF)。例えば、本発明の処理システムは、上流から下流に - DOCを含有する物品、CSF、尿素インジェクター、本明細書で上記のゾーン化SCR/LNT物品または第1のSCR触媒物品および第2のLNT物品、ならびにAMOx触媒を含有する物品を含むことができる。本発明のシステムは、密結合であっても、床下であってもよい。
【0112】
第1の選択接触還元(SCR)物品と第2のリーンNOxトラップ(LNT)物品とを含む実施形態は、「多重ブリック」システムと呼ばれることがある。「ブリック」とは、フィルターなどの単一の物品を指す場合もある。個々の触媒物品(特に本明細書に開示のSCR触媒組成物)を含めて、システムは、還元剤、例えばアンモニアまたは尿素の存在中で窒素酸化物(NOx)の還元を触媒するのに効果的である。作動中、還元剤は、SCR触媒組成物/物品の上流の位置から排気流に定期的に計量される。インジェクターはSCR触媒組成物/物品とおよびその上流で流体連通している。インジェクターはまた、還元剤リザーバおよびポンプと連結することがある。
【0113】
有利には、ゾーン化SCR/LNTコーティングを有する本明細書に開示の触媒物品は、エンジンの排気口または排気マニホールドの近く、例えば排気口または排気マニホールド出口の約12インチ以内に配置された密結合触媒コンバーターである。あるいは、本発明の物品は床下物品であってもよい。あるいは、SCR物品は密結合であってもよく、LNT物品は床下であってもよい。
【0114】
さらに、ゾーン化触媒コーティングを有する本発明の物品は、電気加熱触媒(EHC)であるのが有利である。「電気加熱基材」または「電気加熱触媒」とは、1個または複数の加熱コイルまたは発熱体がそれらと連結していることを意味する。電気加熱触媒は、例えば、参照により本明細書に全て組み込まれる、Sanadaらに付与された米国特許第5,529,759号、Haradaに付与された米国特許第5,553,451号、Breuerらに付与された米国特許第5,480,621号、およびHuらに付与された米国特許第6,044,644号;ならびにIshiharaに付与された米国特許公開第2012/0076699号に開示されている。電気加熱触媒は例えば、触媒コンバーターアセンブリの内部に加熱コイルまたは発熱体を含有する。加熱コイルまたは発熱体は電気エネルギーで活性化する。例えば、エンジンが始動した直後に加熱コイルまたは発熱体が通電状態となり、触媒を作動温度へと上げる。ある特定の例示的なシステム構成を、
図6および
図7に例示する。
【0115】
ある特定の実施形態は、空気が化学量論的燃焼に必要な空気を上回っている状態、すなわち、リーン状態にある燃焼条件で作動する、内燃エンジン、特にディーゼルエンジンの排ガス流からNOxを除去するための物品、システムおよび方法の使用に関する。リーンバーン条件下では、LNT層は同時に、窒素酸化物(NOx)を貯蔵し、かつ排ガス流中の炭化水素および一酸化炭素の変換を触媒することができる。適切なリッチ再生条件下では、貯蔵NOxをトップ層とボトム層の両方に含有される触媒によって変換することができる。リーン排気流を含めて、「リーンガス流」とは、λ>1.0を有するガス流を意味する。「リーン期間」とは、排ガス組成がリーンである、すなわちλ>1.0を有する、排気処理の期間を指す。リッチ排気流を含めて、「リッチガス流」とは、λ<1.0を有するガス流を意味する。「リッチ期間」とは、排ガス組成がリッチである、すなわちλ<1.0を有する、排気処理の期間を指す。
【0116】
本発明の排ガス処理方法では、排ガス流は、上流端に流入し下流端を出ることによって、SCR/LNT触媒物品を、SCR物品とLNT物品とを、すなわち排ガス処理システムを通流する。本発明の方法は、特に、コールドフェーズまたはコールドスタートフェーズ時、すなわち、排ガス温度が約190℃以下、例えば約0℃または約20℃から約190℃までである場合、排ガスを処理することを含む。本発明の一目的は、低温で(コールドスタートフェーズ時)窒素酸化物を含有する排ガス流を処理するための触媒物品および方法を提供することである。
【0117】
本発明の物品、システムおよび方法は、トラックおよび自動車などの移動性排出源からの排ガス流の処理に適している。物品、システムおよび方法はまた、発電所などの固定汚染源からの排気流の処理にも適している。本触媒物品はまた、メタノールからオレフィンへの(MTO)反応、エチレンからプロピレンへの(ETP)反応、およびメタノールとエチレンとの共反応(CME)の触媒作用にも適している。アンモニアは定置発電所の排気処理のためのSCR反応向けの通常の還元剤であり、一方尿素は移動性排出源の排気処理のための通常のSCR還元剤である。
【実施例】
【0118】
[実施例1]
(モデル化シミュレーション)
図5に示してあるように、NOxのバルクが一般には200℃超で放出される。しかし、室温~200℃での変換は、排出遵守にとって非常に重要である。従来の触媒システムアーキテクチャはこの温度領域では活性が限られており、本研究の目標は190℃未満で92%超の脱NOxを有する触媒物品/システムを提供することである。
【0119】
図6および
図7に示す、種々のシステムアーキテクチャについて評価した。アーキテクチャ1(
図6)は、NH
3注入を使用する密結合SCR(cc-SCR)を提供する。示してあるように、cc-SCRはターボアウトにまたはバイパスレッグ内に存在する。アーキテクチャ2(
図7)は、NH
3注入を使用する密結合SCR-LNT(cc-SCR-LNT)を提供する。示してあるように、ここでもcc-SCR-LNTはターボアウトにまたはバイパスレッグ内に存在する。
【0120】
全てのコールドスタートシミュレーションについてある前提条件を設定した。電気加熱基材には2種の選択肢条件で(最大10kWまたは20kW)、電気加熱をコールドスタートFTPの最初の200秒間のみ有効とした。加熱目標を250℃のアウト温度とした。密結合構成でのNH3投与を、コールドスタートFTPの最初の200秒間のみ有効とした。エンジン制御を使用して、室温から100℃の間でNOxの50%を減ずることをさらに前提とした。
【0121】
ターボアウトの温度と比較した、10kWのEHCおよび20kWのEHCについての経時的な温度のグラフを提供する
図8に示してあるように、電気ヒーターの影響を解析した。これらの各シミュレーションでは、EHCにはt=0からt=200秒まで電力が供給され、そしてt=200秒を超えて、EO温度は200℃より高い。
【0122】
シミュレーションのTP目標を、0.2g/hp-hrの組合せFTP、すなわち、1/7×コールドFTP+6/7×ホットFTP0.02以下とした。これらの値に基づいて、コールドFTPは0.14g/hp-hr以下でなければならないと決定した。
【0123】
図9に示してあるように、種々の密結合構成をモデル化して、NOx制御を評価した。ccCRに40%の初期NH
3装填を前提とし、エンジン制御を使用して、室温から100℃の間でNOxの50%を減ずることをさらに前提とした。
図9のグラフが実証することは、加熱cc技術によってサイクルの初期にNOxの著しい低減が可能となることである。さらに、グラフが実証することは、LNTベースの技術がサイクルの最初の50秒でNOx制御に対してより有効であるということである。
【0124】
次に、床下(「UF」)システム(ccシステムの後にUF、バイパスなし)向けの供給ガスとして密結合(「cc」)アウトの排出を使用する条件で、全システムシミュレーションを実行した。全てのUFシステムは、大型車両用ディーゼルエンジン用の市販のシステムと同様のDOC-CSF-SCR触媒からなっていた。AMOx触媒はこれらのシミュレーションには含められていなかった。
【0125】
10kWのEHC ccSCRおよび20kWのEHC ccSCRの両方を使用してこれらのシステムに基づいてモデル化を実行した。
図10に示してあるように、UF DOC-CSF-SCRを有する10kWのEHC ccSCRでは、2g/ft
3のCSFは記載の排出要件を満たさなかったが、5g/ft
3のCSFは要件を満たした。UF SCR体積を増加することで、脱Nox性能が引き続き改善されることがわかった。1.1のANRによって、1のANRよりも性能が改善されることがわかった。
図11に示してあるように、UF DOC-CSF-SCRを有する20kWのEHC ccSCRでは、2g/ft
3のCSFは0.14g/hp-hr未満のNOxをわずかに達成することができる。かかるシステムでUF SCR容量を増加することで、脱NOx性能が改善され、1.1のANRによって、1のANRよりも性能が改善されることがわかった。
【0126】
また、10kWのEHC ccSCR-LNTおよび20kWのEHC ccSCR-LNTの両方を使用するシステムに基づいてモデル化を実行した。
図12に示してあるように、UF DOC-CSF-SCRを有する10kWのEHC ccSCR-LNTでは、2g/ft
3のCSFと4g/ft
3のCSFとの両方が記載の排出要件を満たした。UF SCR容量を増加することで、脱NOx性能が引き続き改善されることがわかった。1.1のANRによって、1のANRよりも性能が改善されることがわかった。
図13に示してあるように、UF DOC-CSF-SCRを有する20kWのEHC ccSCR-LNTでは、ここでも、2g/ft
3のCSFと4g/ft
3のCSFとの両方が記載の排出要件を満たした。かかるシステムでUF SCR容量を増加することで、脱NOx性能が改善され、1.1のANRによって、1のANRよりも性能が改善されることがわかった。
【0127】
[実施例2]
(製造)
SCR触媒組成物を含有する触媒コーティングを、セル状金属基材上にウォッシュコートプロセスによって配置する。コーティング基材を約150℃未満の温度で乾燥し、約300℃超の温度でか焼する。同様に、LNT組成物を含有する触媒コーティングもまた、基材上にウォッシュコートプロセスによって配置し、続いて乾燥およびか焼する。
【0128】
SCR組成物を含有するコーティングは上流ゾーンに適用され、入口から出口に向かって広がっている。LNT組成物を含有するコーティングは下流ゾーンに適用され、出口から入口に向かって広がっている。SCRコーティング長とLNTコーティング長との比が10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40、70/30、80/20、90/10、20/100および30/100である、コーティング基材を製造する。最後の2つの例では、LNTコーティングは基材の全長に広がり、SCRコーティングはLNTコーティングに重なる。基材は、最初にSCR触媒で、第2にLNT触媒でコーティングしてもよく、またはその逆でコーティングしてもよい。
【0129】
SCR組成物は、0.5g/in3から3.0g/in3までのレベルで適用される。LNT組成物は、1g/in3から5g/in3までで適用されたNOx吸着剤と、50g/ft3から150g/ft3までで適用されたPGM成分と、2g/in3から4g/in3までで適用された支持体と、を含有する。
【0130】
試験したSCR組成物は、CuCHA、CuSAPOおよびFe-ベータである。LNT組成物は層状であり、セリアおよびBaOを含有する活性アルミナ、粒子状形態のセリア、PtならびにPdを含有するアンダーコートを含む。LNTは、PtおよびPdを持つ活性アルミナとRhを持つセリアとを含有するトップコートを含有する。
【0131】
比較試料は、SCR組成物のみで全長に沿ってコーティングされた基材を含有する(「SCRのみ」)。本発明の試料および比較試料は上流のアンモニアインジェクターを含むシステムへと組み立てられる。比較試料の金属基材は、20kWの熱を供給する発熱体で電気的に加熱される。本発明の試料の金属基材は、10kWの熱を供給する発熱体で電気的に加熱される。
【0132】
試験は、エンジンまたはシャシーダイナモメーター上で、システム(アンモニアインジェクターおよびコーティング基材)をエンジンに密結合配置して、行う。システムの下流には、従来のDOC+CSF+SCR+AMOXシステムも存在する。アンモニアは、マッピングされたエンジンのNOx排出またはセンサーによって測定された排出のいずれかに基づいて注入される。エンジンは、始動時およびサイクルの有意な期間中に触媒において温度が190℃未満である、コールドスタートサイクルによって作動する。基材温度を200℃にすることを目標にして、試験開始時に基材に電気加熱を適用する。密結合システムが100℃に達した点で、十分なNH3が存在してNOxと反応するように、エンジン排出NOxに対する比率で、NH3注入が開始される。密結合システム上でのNOx低減の測定は排出測定技術によって行われる。SCR/LNTシステムは、LNT上でNOxを捕捉することに由来するさらなる利点を伴って、SCRのみのシステムよりも高いNOx制御を示すことになる。