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特許7408395再始動判定装置、内部ショート判定装置、再始動判定方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】再始動判定装置、内部ショート判定装置、再始動判定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231225BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019556130
(86)(22)【出願日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2018037933
(87)【国際公開番号】W WO2019102735
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017225039
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 岬
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 翔也
(72)【発明者】
【氏名】杉江 一宏
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-66161(JP,A)
【文献】特開2013-26058(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107064815(CN,A)
【文献】特開2015-75009(JP,A)
【文献】特開2016-211405(JP,A)
【文献】特開2010-23660(JP,A)
【文献】特開2017-3286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/00-17/02
F02D29/00-29/06
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中の蓄電素子の端子間の第1電圧値を取得する電圧値取得部と、
前記アイドリングストップ中に前記蓄電素子に流れる電流値を取得する電流値取得部と、
前記第1電圧値、前記電流値、及び前記蓄電素子の無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出する算出部と、
前記内部抵抗値、及び前記蓄電素子から供給される電力により前記エンジンを始動させる始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する判定部と
を備える、再始動判定装置。
【請求項2】
前記無負荷電圧値、前記内部抵抗値、前記電流値、及び前記エンジンの再始動時に前記始動用モータに流れるクランキング電流値に基づいて、前記アイドリングストップを中止し、前記エンジンを再始動するときの前記蓄電素子の第2電圧値を推定する推定部を備え、
前記判定部は、前記第2電圧値及び前記作動電圧値に基づいて判定する、請求項1に記載の再始動判定装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記無負荷電圧値と前記第1電圧値との差分を前記電流値で除して前記内部抵抗値を算出する、請求項1又は2に記載の再始動判定装置。
【請求項4】
前記判定部が、前記再始動が可能でないと判定した場合に、前記アイドリングストップの止を要求する要求部を備える、請求項1から3までのいずれか1項に記載の再始動判定装置。
【請求項5】
前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の各温度及び各SOCについて、前記無負荷電圧値を表すマップを記憶する記憶部を備え、
前記算出部は、前記マップを参照して前記無負荷電圧値を取得する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の再始動判定装置。
【請求項6】
エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中の蓄電素子の端子間の電圧値を取得する電圧値取得部と、
前記アイドリングストップ中に前記蓄電素子に流れる電流値を取得する電流値取得部と、
前記電圧値、前記電流値、及び前記蓄電素子の無負荷電圧値に基づいて、前記蓄電素子の無負荷電圧値と前記電圧値との差分を前記電流値で除算することにより、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出する算出部と、
前記内部抵抗値に基づいて、前記蓄電素子の内部ショートの有無を判定する判定部と
を備える、内部ショート判定装置。
【請求項7】
エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中に、蓄電素子の端子間の電圧値、及び前記蓄電素子に流れる電流値を取得し、
前記電圧値、前記電流値、及び前記蓄電素子の無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出し、
前記内部抵抗値、及び前記蓄電素子から供給される電力により前記エンジンを始動させる始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する、再始動判定方法。
【請求項8】
コンピュータに、
エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中に、蓄電素子の端子間の電圧値、及び前記蓄電素子に流れる電流値を取得し、
前記電圧値、前記電流値、及び前記蓄電素子の無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出し、
前記内部抵抗値、及び前記蓄電素子から供給される電力により前記エンジンを始動させる始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドリングストップ中に、エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する再始動判定装置、アイドリングストップ中に蓄電素子に内部ショートが生じているか否かを判定する内部ショート判定装置、再始動判定方法、及びコンピュータに再始動判定処理を実行させるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉛蓄電池等の二次電池(蓄電素子)は、例えば車両等の移動体に搭載され、エンジン始動時におけるスタータモータへの電力供給源、及びライト等の各種電装品への電力供給源として使用されている。
【0003】
信号待ち等の車両の停止時においては、エネルギーの消費及び騒音の抑制を目的として、エンジンを一時的に停止し、信号が変わる等、車両の停止条件が解除したときにエンジンを再始動して走行を再開するアイドリングストップという制御が行われている。
【0004】
アイドリングストップ中に電池が内部ショートした場合、少量の放電量にも関わらず、内部抵抗が上昇するため、アイドリングストップの中止後の電池の放電電圧値が低くなり、エンジンを再始動できないことがある。
従って、電池の内部状態(劣化状態)を検出する必要がある。
【0005】
特許文献1の劣化状態判定装置は、補機バッテリから電力が供給されている期間における補機バッテリの端子間電圧の検出値及び補機バッテリに流れる電流の検出値に基づいて、補機バッテリの等価直列抵抗を推定する。補機バッテリのSOCと、補機バッテリの温度検出値とに基づいて、等価直列抵抗を補正する。補正された等価直列抵抗に基づいて、補機バッテリの劣化状態を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-114584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の劣化状態判定装置においては、走行中に電池の内部状態を検出する。使用されている電池はハイブリッド車用の電池であり、SOC50%前後で使用され、充電時及び放電時のいずれの場合でも内部状態を検出できる。
鉛蓄電池の場合、高SOC側で使用され、充電時の内部抵抗値と放電時の内部抵抗値とがリニアな関係になく、特許文献1の内部状態の判定方法を適用してショートを検出し、精度良くエンジンの再始動の可否を判定することはできない。
【0008】
本発明は、アイドリングストップ中に再始動が可能であるか否かを判定でき、放電不能により再始動の失敗を防止できる再始動判定装置、アイドリングストップ中の内部ショートの有無を判定できる内部ショート判定装置、再始動判定方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る再始動判定装置は、エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中の蓄電素子の端子間の第1電圧値を取得する電圧値取得部と、前記アイドリングストップ中に前記蓄電素子に流れる電流値を取得する電流値取得部と、前記第1電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出する算出部と、前記内部抵抗値、及び前記エンジンの始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、アイドリングストップ中の蓄電素子の内部抵抗値を算出するので、アイドリングストップ中に、精度良く蓄電素子の内部ショートを検出できる。内部抵抗値に対応する内部ショートの程度、及び始動用モータの作動電圧値に基づいて、アイドリングストップを中止したときにエンジンの再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る車両の電気的構成を概略的に示す説明図である。
図2】BMUの構成を示すブロック図である。
図3】電池の外観構成を示す斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】内部ショートした電池と、正常の電池とにつき、SOCと内部抵抗値との関係を示すグラフである。
図6】内部ショートした電池と、正常の電池とにつき、SOCと内部抵抗値との関係を示すグラフである。
図7】検出動作のメカニズムを示す説明図である。
図8】内部ショートが生じていない場合の電池のセルの一対の正極板及び負極板、並びにセパレータを示す断面図である。
図9】セル下部ショートが生じた場合の電池のセルの一対の正極板及び負極板、並びにセパレータを示す断面図である。
図10】集電体のセパレータ貫通が生じた場合の電池のセルの一対の正極板及び負極板、並びにセパレータを示す断面図である。
図11】制御部の再始動判定の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本実施形態の概要]
本実施形態に係る再始動判定装置は、エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中の蓄電素子の端子間の第1電圧値を取得する電圧値取得部と、前記アイドリングストップ中に前記蓄電素子に流れる電流値を取得する電流値取得部と、前記第1電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出する算出部と、前記内部抵抗値、及び前記エンジンの始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する判定部とを備える。
【0013】
アイドリングストップ中に蓄電素子に内部ショートが生じた場合、内部抵抗値が上昇する。上記構成によれば、第1電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、アイドリングストップ中の蓄電素子の内部抵抗値を算出するので、アイドリングストップ中に、精度良く蓄電素子の内部ショートを検出できる。内部抵抗値に対応する内部ショートの程度、及び始動用モータの作動電圧値に基づいて、アイドリングストップを中止したときにエンジンの再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。
蓄電素子が高SOC側で放電する場合においても、精度良く内部抵抗値を算出することができ、鉛蓄電池等の内部ショートを精度良く検出できる。
【0014】
上述の再始動判定装置において、前記無負荷電圧値、前記内部抵抗値、前記電流値、及びクランキング電流値に基づいて、前記アイドリングストップを中止し、前記エンジンを再始動するときの前記蓄電素子の第2電圧値を推定する推定部を備え、前記判定部は、前記第2電圧値及び前記作動電圧値に基づいて判定してもよい。
【0015】
無負荷電圧値、エンジンを再始動するときの電流値(前記電流値とクランキング電流値との合計値)、及び内部抵抗値に基づいて、エンジンを再始動するときの蓄電素子の第2電圧値を推定するので、推定の精度は高い。そして作動電圧値と第2電圧値とを比較することにより、エンジンの再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。
【0016】
上述の再始動判定装置において、前記算出部は、前記無負荷電圧値と前記第1電圧値との差分を前記電流値で除して前記内部抵抗値を算出してもよい。
【0017】
無負荷電圧値と第1電圧値との差分は内部ショートに基づく電圧値の減少量に対応し、これを前記電流値で除することで、内部ショートに基づく内部抵抗値を良好に算出できる。
【0018】
上述の再始動判定装置において、前記判定部が、前記再始動が可能でないと判定した場合に、前記アイドリングストップを中止して再始動を要求する要求部を備えてもよい。
【0019】
放電電圧値が減少し、作動電圧値より小さくなる前に、アイドリングストップを中止して再始動を要求するので、放電不能による再始動の失敗が良好に防止される。
【0020】
上述の再始動判定装置において、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の各温度及び各SOCについて、前記無負荷電圧値を表すマップを記憶する記憶部を備え、前記算出部は、前記マップを参照して前記無負荷電圧値を取得してもよい。
【0021】
温度及びSOCについて補償することで、無負荷電圧値がより正確になり、判定の精度がより向上する。
【0022】
本実施形態に係る内部ショート判定装置は、エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中の蓄電素子の端子間の電圧値を取得する電圧値取得部と、前記アイドリングストップ中に前記蓄電素子に流れる電流値を取得する電流値取得部と、前記電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出する算出部と、前記内部抵抗値に基づいて、前記蓄電素子の内部ショートの有無を判定する判定部とを備える。
【0023】
上述したように、アイドリングストップ中に蓄電素子に内部ショートが生じた場合、内部抵抗値が上昇するので、内部抵抗値に基づいて、蓄電素子の内部ショートの有無を判定できる。蓄電素子の内部状態(劣化)が検出できるので、再始動が可能か否かを判定でき、蓄電素子を充電したり交換したりする等の対策を講じることができる。
【0024】
本実施形態に係る再始動判定方法は、エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中に、蓄電素子の端子間の電圧値、及び前記蓄電素子に流れる電流値を取得し、前記電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出し、前記内部抵抗値、及び前記エンジンの始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する。
【0025】
上記構成によれば、第1電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、アイドリングストップ中の蓄電素子の内部抵抗値を算出するので、アイドリングストップ中に、精度良く蓄電素子の内部ショートを検出できる。従って、内部抵抗値に対応する内部ショートの程度、及び始動用モータの作動電圧値に基づいて、アイドリングストップを中止したときにエンジンの再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。
【0026】
本実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、エンジンのアイドリングを停止するアイドリングストップ中に、蓄電素子の端子間の電圧値、及び前記蓄電素子に流れる電流値を取得し、前記電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、前記アイドリングストップ中の前記蓄電素子の内部抵抗値を算出し、前記内部抵抗値、及び前記エンジンの始動用モータの作動電圧値に基づいて、前記エンジンの再始動が可能であるか否かを判定する処理を実行させる。
【0027】
上記構成によれば、第1電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、アイドリングストップ中の蓄電素子の内部抵抗値を算出するので、アイドリングストップ中に、精度良く蓄電素子の内部ショートを検出できる。従って、内部抵抗値に対応する内部ショートの程度、及び始動用モータの作動電圧値に基づいて、アイドリングストップを中止したときにエンジンの再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両の電気的構成を概略的に示す説明図である。
車両は、車両用制御装置1と、モータ(スタータモータ)3と、エンジン5とを備える。
車両用制御装置1は、鉛蓄電池(以下、電池という)2と、BMU(Battery Management Unit)4と、操作部6と、電圧センサ7と、電流センサ8と、第1温度センサ9と、第2温度センサ10とを備える。
電池2は、複数のセルCが直列に接続されている。
【0029】
電圧センサ7は、電池2に並列に接続されており、電池2の全体の電圧値に応じた検出結果を出力する。電流センサ8は、電池2に直列に接続されており、電池2に流れる電流(充放電電流)値に応じた検出結果を出力する。第1温度センサ9は、モータ3の近傍に配置され、モータ3の温度に応じた検出結果を出力する。第2温度センサ10は、電池2の近傍に配置され、電池2の温度に応じた検出結果を出力する。
【0030】
図2は、BMU4の構成を示すブロック図である。BMU4は、制御部41と、記憶部53と、入力部56と、インタフェース部57とを備える。これらの各部は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0031】
入力部56は、電圧センサ7、電流センサ8、第1温度センサ9、及び第2温度センサ10からの検出結果の入力を受け付ける。インタフェース部57は、例えば、LANインタフェース及びUSBインタフェース等により構成され、有線又は無線により例えば操作部6等の他の装置との通信を行う。
【0032】
記憶部53は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部53には、例えば、後述する再始動判定処理を実行するための再始動判定プログラム54が格納されている。再始動判定プログラム54は、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(図示しない)に格納された状態で提供され、BMU4にインストールすることにより記憶部53に格納される。また、記憶部53には、マップデータ55が格納されている。マップデータ55は、アイドリングストップ中の電池2の各温度及び各SOCについて、無負荷電圧値V0 を表すデータであり、予め実験により求められ、インタフェース部57を介してBMU4に入力され、記憶部53に格納されている。
【0033】
制御部41は、例えばCPUやROM、RAM等により構成され、記憶部53から読み出した再始動判定プログラム54等のコンピュータプログラムを実行することにより、BMU4の動作を制御する。例えば、制御部41は、再始動判定プログラム54を読み出して実行することにより、後述の再始動判定処理を実行する処理部として機能する。
具体的には、制御部41は、第1温度取得部42、第2温度取得部43、電圧値取得部44、電流値取得部45、VRESTmin算出部46、IST(TST)算出部47、V0 (TBatt,SOC)算出部48、RSS算出部49、VCR算出部50、判定部51、及び要求部52を含む。これら各部の機能については、後述の再始動判定処理の説明の中で説明する。
【0034】
図3は電池2の外観構成を示す斜視図、図4図3のIV-IV線断面図である。
図3及び図4に示すように、電池2は、ケース20と、正極端子28と、負極端子29と、複数の極板群23とを備える。
【0035】
ケース20は、ケース本体201と、蓋板202とを有する。ケース本体201は、上部が開口した直方体状の容器であり、例えば合成樹脂等により形成されている。例えば合成樹脂製の蓋板202は、ケース本体201の開口部を閉塞する。蓋板202の下面の周縁部分とケース本体201の開口部の周縁部分とは例えば熱溶着によって接合される。ケース20内の空間は、隔壁27によって、ケース20の長手方向に並ぶ複数のセル室21に区画されている。
【0036】
ケース20内の各セル室21には、1つの極板群23が収容されている。ケース20内の各セル室21には、希硫酸を含む電解液22が収容されており、極板群23の全体が電解液22中に浸漬している。電解液22は、蓋板202に設けられた注液口(図示せず)からセル室21内に注入される。
【0037】
極板群23は、複数の正極板231と、複数の負極板235と、セパレータ239とを備える。複数の正極板231及び複数の負極板235は、交互に並ぶように配置されている。
【0038】
正極板231は、集電体232と、集電体232に支持された活物質層234とを有する。集電体232は、略格子状又は網目状に配置された骨部を有する導電性部材であり、例えば鉛又は鉛合金により形成されている。集電体232は、上端付近に、上方に突出するタブ233を有する。活物質層234は、二酸化鉛を含んでいる。活物質層234は、さらに公知の添加剤を含んでもよい。
【0039】
負極板235は、集電体236と、集電体236に支持された活物質層238とを有する。集電体236は、略格子状又は網目状に配置された骨部を有する導電性部材であり、例えば鉛又は鉛合金により形成されている。集電体236は、上端付近に、上方に突出するタブ237を有する。活物質層238は、鉛を含む。活物質層238は、さらに公知の添加剤を含んでもよい。
【0040】
セパレータ239は、例えばガラス及び合成樹脂等の絶縁性材料により形成されている。セパレータ239は、互いに隣り合う正極板231と負極板235との間に介在する。セパレータ239は、一体の部材として構成されてもよく、正極板231と負極板235との間に各別に設けてもよい。
【0041】
複数の正極板231のタブ233は、例えば鉛又は鉛合金により形成されたストラップ24に接続されている。複数の正極板231は、ストラップ24を介して電気的に並列に接続されている。同様に、複数の負極板235のタブ237は、例えば鉛又は鉛合金により形成されたストラップ25に接続されている。複数の負極板235は、ストラップ25を介して電気的に並列に接続されている。
【0042】
電池2において、一のセル室21内のストラップ25は、例えば鉛又は鉛合金により形成された接続部材(バスバー)26を介して、前記一のセル室21に隣接する一方のセル室21内のストラップ24に接続されている。また、前記一のセル室21内のストラップ24は、接続部材26を介して、前記一のセル室21に隣接する他方のセル室21内のストラップ25に接続されている。即ち、電池2の複数の極板群23は、ストラップ24,25及び接続部材26を介して電気的に直列に接続されている。なお、図4に示すように、セルCが並ぶ方向の一端に位置するセル室21に収容されたストラップ24は、接続部材26ではなく、後述する正極柱282に接続されている。セルCが並ぶ方向の他端に位置するセル室21に収容されたストラップ25は、接続部材26ではなく、負極柱292に接続されている(不図示)。
【0043】
正極端子28は、セルCが並ぶ方向の一端部に配置されており、負極端子29は、前記方向の他端部付近に配置されている。
【0044】
図4に示すように、正極端子28は、ブッシング281と、正極柱282とを含む。ブッシング281は、略円筒状の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。ブッシング281の下側部分は、インサート成形により蓋板202に一体化されており、ブッシング281の上部は、蓋板202の上面から上方に突出している。正極柱282は、略円柱状の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。正極柱282は、ブッシング281の孔に挿入されている。正極柱282の上端部は、ブッシング281の上端部と略同じ位置に位置しており、例えば溶接によりブッシング281に接合されている。正極柱282の下端部は、ブッシング281の下端部より下方に突出し、さらに、蓋板202の下面より下方に突出しており、セルCが並ぶ方向の一端部に位置するセル室21に収容されたストラップ24に接続されている。
負極端子29は、正極端子28と同様に、ブッシング291と、負極柱292とを含み(図3参照)、正極端子28と同様の構成を有する。
【0045】
電池2の放電の際には、正極端子28のブッシング281及び負極端子29のブッシング291に負荷(図示せず)が接続され、各極板群23の正極板231での反応(二酸化鉛から硫酸鉛が生ずる反応)及び負極板235での反応(鉛(海綿状鉛)から硫酸鉛が生ずる反応)により生じた電力が該負荷に供給される。また、電池2の充電の際には、正極端子28のブッシング281及び負極端子29のブッシング291に電源(図示せず)が接続され、該電源から供給される電力によって各極板群23の正極板231での反応(硫酸鉛から二酸化鉛が生ずる反応)及び負極板235での反応(硫酸鉛から鉛(海綿状鉛)が生ずる反応)が起こり、電池2が充電される。
【0046】
以下、本実施形態に係る再始動判定処理について詳述する。
BMU4の制御部41は、エンジン5のアイドリングを停止するアイドリングストップ中に、電池2の正極端子28と負極端子29との間の電圧値、及び電池2に流れる電流値を取得し、前記電圧値、前記電流値、及び無負荷電圧値に基づいて、アイドリングストップ中の電池2の内部抵抗値を算出し、該内部抵抗値、及びモータ3のエンジン5の再始動に最低限必要とされる作動電圧値に基づいて、エンジン5の再始動が可能であるか否かを判定する。
【0047】
即ち、電圧値取得部44は、アイドリングストップ中に、電池2の正極端子28及び負極端子29間の電圧値(第1電圧値)VBattSSを電圧センサ7から取得する。
電流値取得部45は、アイドリングストップ中に、電流センサ8から電流値IELを取得する。電流値IELはアイドリングストップ中に作動する制御部41等の負荷の電流値である。
第1温度取得部42は、第1温度センサ9からモータ3の温度TSTを取得する。
第2温度取得部43は、第2温度センサ10から電池2の温度TBattを取得する。
RESTmin算出部46は、モータ3、回路、スタータリレー等の構成に基づいてエンジン5の再始動に必要な作動電圧値VRESTminを算出する。
ST(TST)算出部47は、クランキング電流値ISTに対し、第1温度取得部42から取得したモータ3の温度TSTに基づく温度補償を行い、IST(TST)を算出する。
【0048】
0 (TBatt,SOC)算出部48は、記憶部53に記憶されたマップデータ55を参照して、無負荷電圧値V0 (TBatt,SOC)を求める。
下記の表1にマップデータ55の一例を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
0 (TBatt,SOC)算出部48は、温度TBatt又はSOCの数値がマップデータ55の温度又はSOCの数値の間にある場合、線形補間を行って、V0 (TBatt,SOC)を算出する。
【0051】
SS算出部49は、無負荷電圧値V0 (TBatt,SOC)、温度VBattSS、電流値IELを用いて、下記式(1)により、内部抵抗値RSSを算出する。
SS=(V0 (TBatt,SOC)-VBattSS)/IEL…(1)
【0052】
CR算出部50は、無負荷電圧値V0 (TBatt,SOC)、内部抵抗値RSS、クランキング電流値IST(TST)、及び電流値IELを用いて、下記式(2)により、アイドリングストップを中止し、モータ3を作動させるときの推定電圧値(第2電圧値)VCRを算出する。
CR=V0 (TBatt,SOC)-RSS×(IST(TST)+IEL)…(2)
【0053】
判定部51は、第2電圧値VCRと作動電圧値VRESTminとを比較し、再始動が可能であるか否かを判定する。判定部51は、VCR≧VRESTminである場合、再始動が可能であると判定する。判定部51は、VCR<VRESTminである場合、再始動が可能でないと判定する。
要求部52は、判定部51が再始動が可能でないと判定した場合、アイドリングストップを中止し、エンジン5の再始動を要求する。
【0054】
図5は、内部ショートした電池と、正常の電池とにつき、SOCと内部抵抗値との関係を示すグラフである。横軸はSOC(%)、縦軸は内部抵抗値(mΩ)である。電池はSOC70%で内部ショートした。図中、内部ショートした電池を実線で、正常の電池を破線で示す。
図5より、少量の放電量にも関わらず、内部ショートにより内部抵抗値が急激に上昇することが分かる。
【0055】
図6は、内部ショートした電池と、正常の電池とにつき、SOCと内部抵抗値との関係を示すグラフである。横軸はSOC(%)、縦軸は内部抵抗値(mΩ)である。図中、内部ショートした電池を実線で、正常の電池を破線で示す。
図6において、アイドリングストップの開始前に内部抵抗値が5mΩであったところ、アイドリングストップ中に内部ショートにより内部抵抗値が上昇し、アイドリングストップの中止後に内部抵抗値が15mΩまで上昇している。
【0056】
図7は検出動作のメカニズムを示す説明図である。横軸は電流値(A)、縦軸は電圧値(V)である。
図7のアイドリングストップ中の(1)の測定時点の取得電圧値はVBattSS、取得電流値はIELである。このときの内部抵抗値RSSは、上述の式(1)により求められる。この内部抵抗値RSSにおいて、電流値をIELからIELとIST(TST)との合計値に対応させ、アイドリングストップを中止してモータ3を作動させるときの第2電圧値VCRを推定する。
直線(2)の場合、内部抵抗値RSSは、(1)の内部抵抗値RSSより大きく、第2電圧値VCRは(1)の第2電圧値VCRより小さく、エンジン5の再始動に最低必要な作動電圧値VRESTminと等しくなる。第2電圧値VCRが作動電圧値VRESTminより小さい場合、エンジン5の再始動ができなくなる。この場合、判定部51は再始動が可能でないと判定し、要求部52は、アイドリングストップを中止し、再始動を要求する。
これにより、アイドリングストップを続行した後、再始動を要求したときに、放電ができず、再始動が失敗することが防止される。
即ち、直線(2)により求められる第2電圧値VCRは、再始動の可否を判断するための下限電圧値である。
【0057】
以下、内部ショートの種類について説明する。
(1)正極板231の集電体232の伸び、負極板235のタブ237との接触
図4に示す正極の集電体232が上側に伸び、負極のタブ237と接触するケースである。
【0058】
(2)正極板231の集電体232の伸び、負極板235のストラップ25との接触
図4に示す正極の集電体232が上側に伸び、負極のストラップ25と接触するケースである。
【0059】
(3)脱落活物質堆積
正極板231の活物質層234から活物質が脱落し、ガスにより舞い上がり、負極板235のタブ237等に堆積するケースである。
【0060】
(4)セル下部ショート
図8は、内部ショートが生じていない場合の電池2のセルの一対の正極板231及び負極板235、並びにセパレータ239を示す断面図である。
集電体232,236の両面にそれぞれ、活物質層234,238が設けられている。対向する活物質層234,238間にセパレータ239が介在する。
図9は、セル下部ショートが生じた場合の電池2のセルの一対の正極板231及び負極板235、並びにセパレータ239を示す断面図である。
図9に示すように、セパレータ239が劣化して孔が生じ、正極板231の活物質層234が負極板235の活物質層238へ突出し、導通する。
【0061】
(5)正極板231の集電体232のセパレータ239貫通
図10は、集電体232のセパレータ239貫通が生じた場合の電池2のセルの一対の正極板231及び負極板235、並びにセパレータ239を示す断面図である。
集電体232が曲がり、セパレータ239を貫通する。
【0062】
(6)負極板235の集電体236のセパレータ239貫通
(5)とは逆に集電体236が曲がり、セパレータ239を貫通する。
【0063】
(7)セパレータ239の劣化
負極板235の活物質層238から硫酸鉛がセパレータ239に浸透し、セパレータ239の内部に硫酸鉛が蓄積され、正極板231の活物質層234に進入し、ショートが生じる。
【0064】
(8)デンドライトショート
負極板235の活物質層238から針状結晶(デンドライト)がセパレータ239に浸透し、正極板231の活物質層234に進入し、ショートが生じる。
【0065】
(9)セル間接続破損
接続部材26の劣化により隙間が生じ、活物質層234と活物質層238とがショートする。
【0066】
(10)異物混入
金属片が混入して正極と負極とを電気的に接続してしまう場合や、金属が溶解後、極板に析出、または、セパレータ239に付着して突破る等することで、ショートする。
【0067】
以下、再始動判定処理を制御部41の処理として説明する。
図11は、制御部41の再始動判定の処理手順を示すフローチャートである。
制御部41の判定部51は、IG-ON(イグニッション-オン)状態であるか否かを判定する(S1)。
判定部51はIG-ON状態でないと判定した場合(S1:NO)、再始動判定処理を終了する。
【0068】
判定部51はIG-ON状態であると判定した場合(S1:YES)、アイドリングストップ中であるか否かを判定する(S2)。
判定部51はアイドリングストップ中でないと判定した場合(S2:NO)、処理をS1へ戻す。
【0069】
判定部51はアイドリングストップ中であると判定した場合(S2:YES)、電圧値取得部44により第1電圧値VBattSSを取得し、電流値取得部45により電流値IELを取得し、第2温度取得部43により温度TBattを取得し、第1温度取得部42により温度TSTを取得する。そして、記憶部53に記憶された充放電履歴によりSOCを算出する(S3)。
判定部51は、V0 (TBatt,SOC)算出部48により、取得した温度TBatt及びSOCに基づき、マップデータ55を参照して、無負荷電圧値V0 (TBatt,SOC)を取得する(S4)。
判定部51は、IST(TST)算出部47によりクランキング電流値IST(TST)を算出する(S5)。
【0070】
判定部51は、RSS算出部49により、式(1)を用いて内部抵抗値RSSを算出する(S6)。
【0071】
判定部51は、VCR算出部50により、式(2)を用いて第2電圧値VCRを算出する(S7)。
判定部51は、VRESTmin算出部46により、作動電圧値VRESTminを算出する(S8)。
【0072】
判定部51は、第2電圧値VCRが作動電圧値VRESTminより小さいか否かを判定する(S9)。
判定部51は第2電圧値VCRが作動電圧値VRESTminより小さくないと判定した場合(S9:NO)、処理をS2へ戻す。
判定部51は第2電圧値VCRが作動電圧値VRESTminより小さいと判定した場合(S9:YES)、要求部52により、アイドリングストップを中止し、エンジン5の再始動を要求する(S10)。
【0073】
温度TBattは、正極端子28又は負極端子29の温度を用いることにしてもよい。また、雰囲気温度から推定した液温を用いてもよい。下記式(3)により求めてもよい。
Batt=ΔT+前回の電池2の温度…(3)
但し、ΔT=(前回の電池2の温度-現在の雰囲気温度)/(熱抵抗)
【0074】
温度TSTはエンジン5の水温を用いてもよい。
【0075】
作動電圧値VRESTmin又は第2電圧値VCRは、再始動の電力量を考慮して、マージンを設けるのが好ましい。これにより、再始動の失敗をより一層防止することができる。
【0076】
[変形例1]
電池2の第2電圧値VCRの代わりに、エンジン5の再始動時のモータ3の第2電圧値VCR(2)を用いる。モータ3の第2電圧値VCR(2)は、下記式(4)により算出される。
CR(2)=V0 (TBatt,SOC)-(RSS+RWH+RST+RCON )×(IST(TST)+IEL)…(4)
但し、RWH:電線の抵抗値
ST:モータ3の抵抗値
CON :接触抵抗値
変形例1によれば、モータ3の第2電圧値VCR(2)を推定し、再始動の可否を最低のモータ3の作動電圧値VRESTminと比較するので、より判定精度が高くなる。
【0077】
[変形例2]
電池2の外部のショートによるショート電流値の増加量を考慮して、電池2の第2電圧値VCR(3)を算出する。第2電圧値VCR(3)は、下記の式(5)により算出される。
CR(3)=V0 (TBatt,SOC)-RSS×(IST(TST)+IEL+IOSC )…(5)
但し、IOSC :外部ショートの電流値
【0078】
[変形例3]
電池2の外部のショートによるショート電流値の増加量及び抵抗値の減少量を考慮した、モータ3の第2電圧値VCR(4)を用いる。第2電圧値VCR(4)は、下記の式(6)により算出される。
CR(4)=V0 (TBatt,SOC)-(RSS+RWH+RST+RCON -ROSC )×(IST(TST)+IEL+IOSC )…(6)
但し、ROSC :抵抗値の減少量
【0079】
[変形例4]
制御部41が、内部ショートの有無の判定処理を実行する処理部として機能する。
制御部41は、RSS算出部49により算出した内部抵抗値RSSに基づいて、内部ショートの有無を判定する。内部抵抗値RSSが閾値以上である場合、アイドリングストップ中に内部ショートが生じたと判定する。
電池2の内部状態(劣化)が検出できるので、エンジン5の再始動が可能であるか否かを判定できる。また、操作部6において内部ショートの発生を報知し、電池2を充電したり交換したりする等の対策を講じることができる。
【0080】
[検証結果]
本実施形態の再始動判定処理を検証するために、以下の評価試験を行った。
車両はガソリンエンジン車(1.5L)を想定し、電池2として「S-95(12V-60Ah)を用いた。
上述の分類(1)~(10)の内部ショートを電池2内において生じさせた場合において、上記式(2)を用いて第2電圧値VCRを算出し、電圧値を測定し、誤差を求めた。その結果を下記の表2に示す。作動電圧値VRESTminは3.5Vであり、IST(TST)は250Aである。
【0081】
【表2】
【0082】
表2より、いずれの内部ショートが生じた場合においても、内部ショートの発生を検出でき、再始動が可能であるか否かを判定できることが確認された。第2電圧値VCRと測定電圧値との誤差の標準偏差は0.23Vであり、第2電圧値VCRの算出の精度は良好である。
【0083】
以上のように、本実施形態においては、アイドリングストップ中に内部抵抗値RSSを算出して、精度良く電池2の内部ショートを検出できる。内部抵抗値RSSに対応する内部ショートの程度、及びモータ3の作動電圧値VRESTminに基づいて、アイドリングストップを中止したときにエンジン5の再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。エンジン5の再始動が不可能であると判定した場合、アイドリングストップを中止してエンジン5の再始動を要求することにより、放電不良によりエンジン5の再始動が失敗することが防止される。
【0084】
無負荷電圧値V0 (TBatt,SOC)、エンジン5を再始動するときの電流値(電流値IELとクランキング電流値IST(TST)との合計値)、及び内部抵抗値RSSに基づいて、エンジン5を再始動するときの電池2の第2電圧値VCRを推定する場合、推定の精度は高い。そして作動電圧値VRESTminと第2電圧値VCRとを比較することにより、エンジン5の再始動が可能であるか否かを精度良く判定できる。
【0085】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
本発明は車載用の二次電池に適用する場合に限定されない。内部ショートを検出した後、エンジン5の再始動の可否を判定する場合にも限定されない。
前記実施形態においては、電池2が鉛蓄電池である場合につき説明しているが、これに限定されず、リチウムイオン電池等でもよい。
前記実施形態においては、BMU4の制御部41が本発明の再始動判定装置、内部ショート判定装置である場合につき説明しているが、これに限定されず、ECU(Electronic Control Unit)が再始動判定装置、内部ショート判定装置として機能してもよく、電池2に備えられた制御部でもよい。また、移動体の外部のサーバ等に備えられ、移動体に備えられた二次電池の内部ショートを検出し、エンジン5の再始動を遠隔で管理するものでもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 車載用制御装置
2 電池(蓄電素子)
3 モータ
4 BMU
41 制御部
44 電圧値取得部
45 電流値取得部
49 RSS算出部
5 エンジン
50 VCR算出部
51 判定部
52 要求部
53 記憶部
54 再始動判定プログラム
6 操作部
7 電圧センサ
8 電流センサ
9 第1温度センサ
10 第2温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11