(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/00 20200101AFI20231225BHJP
D06F 58/10 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
D06F58/00 Z
D06F58/10 Z
(21)【出願番号】P 2020010443
(22)【出願日】2020-01-25
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】517164556
【氏名又は名称】株式会社TOSEI
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙治
(72)【発明者】
【氏名】久保井 涼太
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 利隆
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実公平03-004233(JP,Y2)
【文献】特開2000-157781(JP,A)
【文献】特開2014-217496(JP,A)
【文献】特開2000-288297(JP,A)
【文献】特開2000-157795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0320303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F58/00-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥空間が
内部に画成される筐体と、
マット状部材を載置面に載置可能、且つ前記乾燥空間に収容可能に構成されると共に内部空間を有し、該内部空間と前記乾燥空間とを連通する通気孔が前記載置面に設けられている載置部と、を備え、
前記筐体の扉を開けて前記乾燥空間から前記載置部を載置作業可能な程度まで引き出し、前記載置面に前記マット状部材を載置した後、前記載置部を前記乾燥空間に収容して前記扉を閉める操作を要する乾燥機であって、
前記筐体内に取り付けられた照明装置を用いて、少なくとも前記乾燥空間への前記載置部の出し入れする可動操作時に、前記乾燥空間に向けて明かりを照射することを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
前記照明装置は、前記筐体の前方上部の操作パネルの後ろに設けられることを特徴とする請求項1に記載の乾燥機。
【請求項3】
前記載置部が前記筐体内の元の位置に戻された後、設定時間後に消灯することを特徴とする請求項1に記載の乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄などによって水分を含んだ布団やマットレスなどのマット状部材を乾燥させる乾燥機が知られている。このような乾燥機として、その筐体にガスヒータからの加熱された空気が流入する乾燥空間が画成され、当該乾燥空間内にマット状部材の載置部を配し、この載置部の内部に画成された内部空間と乾燥空間とを連通させ、載置されたマット状部材に加熱された空気を通過させることによって、マット状部材の乾燥を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-157795号公報
【文献】特開2000-288297号公報
【文献】実用新案登録第3086128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、乾燥機内の安全を確認することができる乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の乾燥機は、乾燥空間が内部に画成される筐体と、マット状部材を載置面に載置可能、且つ前記乾燥空間に収容可能に構成されると共に内部空間を有し、該内部空間と前記乾燥空間とを連通する通気孔が前記載置面に設けられている載置部と、を備え、前記筐体の扉を開けて前記乾燥空間から前記載置部を載置作業可能な程度まで引き出し、前記載置面に前記マット状部材を載置した後、前記載置部を前記乾燥空間に収容して前記扉を閉める操作を要する乾燥機であって、前記筐体内に取り付けられた照明装置を用いて、少なくとも前記乾燥空間への前記載置部の出し入れする可動操作時に、前記乾燥空間に向けて明かりを照射することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る乾燥機の構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る乾燥機の構成を示す正面図である。
【
図3】実施形態に係る乾燥機の構成を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る載置部の構成を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る載置部の構成を示す正面図である。
【
図6】実施形態に係る載置部の構成を示す側面図である。
【
図7】実施形態に係る布団が載置された載置部を示す正面図である。
【
図8】実施形態に係る布団が載置された載置部を示す側面図である。
【
図9】実施形態に係る乾燥機の全体の側面図である。
【
図10】実施形態に係る乾燥機のガスヒータから上方壁部に流れる温風の流れ方向を示す図である。
【
図11】実施形態に係る乾燥機の上方壁部から本体部の乾燥空間に流れる温風の流れ方向を示す図である。
【
図12】実施形態に係る乾燥機の全体の温風の流れを示す側面図である。
【
図13】実施形態に係る安全確認用の表示装置(LED)の取り付け機構を示す図である。
【
図14】実施形態に係る安全確認用の表示装置(LED)の動作を制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の詳細について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0008】
(全体構成)
まず、本実施形態に係る乾燥機の全体構成について説明する。
図1~
図3は、それぞれ、本実施形態に係る乾燥機の構成を示す斜視図、正面図、平面図である。以後、乾燥機1の正面側を前方、背面側を後方と称し、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と称して説明を行う。
【0009】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態に係る乾燥機1は、本体部2と、本体部2内に収容され、乾燥機1による乾燥対象である布団を載置するための可動型の載置部3とを備える。載置部3は、本体部2の乾燥空間D内で前後方向(
図1の矢印方向)に移動可能である。つまり、載置部3の上に布団を掛ける場合、本体部2の乾燥空間Dから外側に引き出され、載置後は元の位置に戻される。
【0010】
本体部2は、筐体20と、ガスヒータ21と、排気ファン22と、制御部24とを備える。筐体20は、全体として中空略直方体の箱状に形成され、上方壁部25(
図9等を参照)、一対の側方壁部26、後方壁部27、底壁部28、扉部29により囲われた乾燥空間Dが内部に画成される。この乾燥空間D内に可動型の載置部3を収容することができる。
【0011】
扉部29は、一方の側方壁部26に蝶番等により開閉可能に取り付けられ、前方側から乾燥空間Dへの載置部3の出し入れを可能としている。扉部29の一部は、例えばガラスなどの光透過性を有する窓部291として形成され、さらに使用者が扉部29を開閉させるための把持部292が設けられている。
【0012】
ガスヒータ21は、上方壁部25の上方に且つ筐体20の最後方に設けられており、ガスバーナを有して当該ガスバーナにより空気を加熱し、接続パイプ253(
図3参照)により後述する吸気流路251(
図12参照)に加熱した空気(温風)を供給する。なお、ガスヒータ21は、他の方式により空気を加熱する他の装置により代替されても良い。
【0013】
排気ファン22は、ガスヒータ21の前方に設けられており、空気の逆流を防止するためのチャッキダンパ221を有して乾燥空間D内の空気を吸気し、チャッキダンパ221を介して外部へ排出する。
【0014】
制御部24は、排気ファン22の前方、即ち筐体20の最前方に設けられており、使用者が乾燥機1の動作に関する指示操作をするための操作パネル241を有し、操作パネル241が前方を向くように設けられる。制御部24は、操作パネル241になされた操作に基づいて、ガスヒータ21、排気ファン22、及び後述するジェットノズル23(
図9参照)の動作を制御する。
【0015】
可動型の載置部3は、前後方向に可動に構成されている。載置部3を使用する際は、使用者が扉部29を開けて乾燥空間Dに収容された載置部3を前方に移動させてある程度乾燥空間Dから載置部3を
図1の外側の矢印方向に引き出し、その上に布団を載置する。載置後に載置部3を後方(収容方向)に移動させて再度乾燥空間Dに収容し、扉部29を閉める。その後、使用者が操作パネル241を操作して乾燥機1に所望の乾燥動作をさせることにより、布団を乾燥することができる。
【0016】
なお、筐体20の底壁部28は、載置部3が前後に移動される際にその一部の走行経路として機能すると共に、載置部3が乾燥空間Dに収容された際に排気流路として機能する。この底壁部28については、次の載置部3の構成の説明と併せて後に詳述する。
【0017】
(載置部3)
可動型の載置部3の構成について詳細に説明する。
図4~
図6はそれぞれ、載置部3の構成を示す斜視図、正面図、側面図である。
図7、
図8は、それぞれ布団Fが載置された載置部を示す正面図、側面図である。
図9は、実施形態に係る乾燥機の全体の側面図である。
図10は、実施形態に係る乾燥機のガスヒータから上方壁部に流れる温風の流れ方向を示す図である。
図11は、実施形態に係る乾燥機の上方壁部から本体部の乾燥空間に流れる温風の流れ方向を示す図である。
図12は、実施形態に係る乾燥機の全体の温風の流れを示す側面図である。載置部3は、
図4乃至
図6に示すように、載置台31と、台座部32と、押圧帯33とを備える。
【0018】
載置台31は、全体として、上面及び底面が前後方向に向くように横たえ、最も鋭角に形成された頂点に対向する一側面を下方に向けた中空の略三角柱状(例えば、跳び箱型)に形成される。以降の説明においては、三角柱としての上面及び底面の前方側を載置台31の前面とし、他方側を載置台31の背面とし、下方に向けられた三角柱としての一側面を載置台31の底面とする。また、他の傾斜する二側面と上端に形成された曲面とを載置台31の載置面とする。したがって、載置面は、前後方向を向く仮想的な折り曲げ線が上端に位置付けられるように平面を折り曲げた形状となる。載置台31の底面は、台座部32の上面に接続される。
【0019】
図6に示すように、載置台31は、例えば横幅100cm、高さ100cmmの大きさを有している。載置台31の両側面には、載置台31の内部空間P(図
図5又は
図12等参照)と乾燥空間Dとを連通する円形の複数の孔部からなるパンチング孔群311が設けられる。このパンチング孔群311を介して乾燥空間Dと内部空間Pとの空気の流動がなされる。これらパンチング孔群311は、載置台31の最上端から所定距離に亘って設けられ、この所定距離は、布団の長手方向幅の半分以上が好ましい。ここでは、3枚のステンレス等の金属板が結合して形成される。金属板の継ぎ目は内部側に曲げられており、強度を強化している。
【0020】
載置台31の前後(
図6では左右)と下側に、パンチング孔群311が形成されていないエリア311a,311b,311cを有している。なお、
図6の裏面も同じ形状である。エリア311a,311bの幅は、例えば60mm~150mm(一例としては140mm程度)である。また、エリア311cの幅は、100mm~250mm(一例としては200mm程度)である。このエリア311a,311b,311cには、載置台31に載置した布団の端部が位置する。布団の周端部にあっては、温熱が漏れないようにある程度の密着性が必要である。エリア311a,311b,311cを設けることにより、温風が漏れる心配はない。一方で、布団の端部とエリア311a,311b、311cの接触面との間に生じる僅かな隙間に温風が流れることによって、布団の端部でも乾燥が行われる。
【0021】
パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、乾燥空間D側、即ち布団Fが当接する側(図中上側)の周縁部が、乾燥空間D側に向かうにつれて拡径するように曲面が形成されている。したがって、パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、乾燥空間D側の開口径(孔径)が内部空間P側の開口径より拡径することとなる。曲面に代わり乾燥空間D側に向かうにつれて拡径するようにテーパー面を形成してもよい。
【0022】
また、載置台31の正面には、使用者が載置部3を移動する際に把持する把持部312が設けられている。
【0023】
乾燥対象である布団Fを載置台31に載置する場合、
図7に示すように、布団Fの短手方向を載置台31の前後方向に向け、パンチング孔群311を覆うように載置台31の載置面に載置する。この際、布団Fは載置面の傾斜に沿うように折り曲げられた状態となる。
【0024】
載置台31の上端は曲率を有する曲面に形成されており、その曲率半径は載置される布団Fの厚みの少なくとも0.9倍以上の大きさとすることが好ましい。このような曲率半径を有する曲面が形成されることにより、布団Fが折り曲げられて載置された場合、布団Fの折り曲げ部分を曲面に沿って面接触させることができ、そこに加わる応力を良好に分散することができる。もし載置台31の上方端部が鋭角、または曲率半径がより小さい曲面に形成されている場合、その上方端部に当接する布団Fの折り曲げ部分の一部に応力が集中することがある。このような応力集中が生じると、当該部分が圧縮され密度が高まることにより通気性が低下し、延いては乾燥効率が低下する可能性がある。しかしながら、載置台31が上述した曲率半径を有することにより、このような乾燥効率の低下を回避することができる。さらに、曲面においてもパンチング孔群311を形成することができるため、乾燥効率の向上も実現できる。
【0025】
台座部32は、
図4および
図5に示すように、中空の略直方体状に形成されており、台座部32の内部空間Tと載置台31の内部空間Pとを接続するための開口部321aが上面に形成されている。一方、台座部32の下面には、筐体20の底壁部28内に形成された後述する下方排気流路281と内部空間Tとを接続するための開口部321bが形成されている。これら開口部321a及び開口部321bにより、内部空間P内の空気の下方排気流路281(
図12参照)への流入を可能としている。
【0026】
図4乃至
図6に示すように、台座部32には、前方端部下面に2つの前輪キャスタ322aが左右方向に離間して設けられると共に、その後方端部下面に左右方向略全域に亘って上方に窪む段差部322cが形成され、当該段差部322cに2つの後輪キャスタ322bが左右方向に離間して設けられている。前輪キャスタ322aは、後輪キャスタ322bより大径に形成され、その下方端部が後輪キャスタ322bより下方に位置するように設けられている。後輪キャスタ322bは、筐体20の底壁部28上面に走行可能に当接している。
【0027】
台座部32における前輪キャスタ322a後方には、左右方向に延在すると共に、前方から後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面323が形成されている。傾斜面323は載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、後述する支持キャスタ285が当接する位置に、傾斜面323の前方端部が位置している。この傾斜面323が形成されることにより、台座部32はその前方端部及び後方端部と比較して開口部321b近傍の領域、具体的には傾斜面323の後方端部から段差部322cの前方端部にかけて下方に僅かに突出した形状となっている。
【0028】
図12に示すように、後輪キャスタ322bの走行面を形成する筐体20の底壁部28にも同様に傾斜面283が形成されている。傾斜面283は、台座部32の傾斜面323と同一の傾斜角度、傾斜方向、及び傾斜長さを有しており、載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、後輪キャスタ322bが当接する位置に、傾斜面283の後方端部が位置するように形成されている。したがって底壁部28は、傾斜面323より前方の領域が上方に僅かに突出した形状となっている。載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、当該領域と開口部321b近傍の領域との間に僅かな間隙が形成されるよう、傾斜面283及び傾斜面323の高さを設定することが好ましい。
【0029】
さらに底壁部28の前方端部には、下方が開放された断面略コ字状のキャスタ台284が設けられており、その上面には台座部32の下面に走行可能に当接する2つの支持キャスタ285が左右方向に離間して設けられている。支持キャスタ285は、載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、傾斜面323の前方端部に位置して台座部32に当接しこれを支持している。載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、この支持キャスタ285により載置部3の前方側が支持されるため、本実施形態においては前輪キャスタ322aを乾燥機1の設置面から僅かに離間させている。キャスタ台284には台座部32の前輪キャスタ322aに接触しないよう、該当する位置に切欠き286が形成されている。
【0030】
このように台座部32の後輪キャスタ322bに対応して傾斜面283が底壁部28に形成され、底壁部28の支持キャスタ285に対応して傾斜面323が台座部32に形成されることにより、載置部3を乾燥空間Dから引き出す際に各キャスタが対向する傾斜面を同時に走行する。これにより、台座部32と底壁部28との平行性を保ったまま傾斜面の高さ分、台座部32を底壁部28から離間するように上方へ移動させることができると共に、安定した水平移動をすることができる。また、後輪キャスタ322bと支持キャスタ285とは左右方向において同位置に配設されている。したがって支持キャスタ285により後輪キャスタ322bの前方移動が規制されるため、使用者が載置部3を前方に移動させた際に、載置部3全体が乾燥空間Dから抜け出てしまうことを防止することができる。
【0031】
さらに、
図12に示すように、底壁部28は内部に下方排気流路281が画成されており、その上面に下方排気流路281と内部空間Tとを接続するための開口部282と、当該開口部282後方に位置して後述する垂直流路271と下方排気流路281とを流体的に接続するための開口部287とが形成されている。開口部282は、載置部3が乾燥空間Dに収容された状態において、台座部32の開口部321bと対向する位置に且つ略同一形状に形成されている。
【0032】
開口部282の周縁部には、シール部材288が設けられており、載置部3が乾燥空間Dに収容された場合に台座部32の開口部321b周縁部がシール部材288に当接し、当該開口部282と台座部32の開口部321bとをシール部材288を介して気密に接続することができる。シール部材288は、底壁部28上にネジ等に締結具や接着剤等により移動不能に固定されており、対向する開口部間を気密に接続可能であればどのようなものを用いてもよい。例えば、フェルトや弾性部材等をシール部材288として用いることができる。なお、シール部材288は、開口部321bの周縁部に設けるようにしてもよい。
【0033】
以上のように載置部3は、後輪キャスタ322bが筐体20の底壁部28に当接し、支持キャスタ285により支持されることにより、筐体20に対して前後方向に相対移動して乾燥空間Dに対する収容及び引き出しが可能となっている。さらに載置部3は乾燥空間Dに収容された際に下方に相対移動することができ、開口部321bと開口部282とを気密に接続できる。
【0034】
なお、載置部3は、乾燥空間Dから引き出されるにつれ、後輪キャスタ322bが支持キャスタ285へ接近して前方側が下方に傾斜することとなる。しかしながら、当該傾斜により前輪キャスタ322aが設置面に接地することとなり、後輪キャスタ322bが常時筐体20の底壁部28に接地しているため、載置部3をある程度引き出したとしても載置部3を安定して走行させることができる。
【0035】
押圧帯33は、載置台31の前後方向両端部に設けられる可撓性を有する長尺の帯状部材であり、それぞれ布団Fの短手方向端部を載置台31の載置面に押圧する。押圧帯33は、載置台31の左右方向一方の側面(
図7中左側)から載置台31の上端曲面を経由して他方の側面(
図7中右側)に亘って延在し、その長手方向一端部は、載置台31の一方の側面に固定的に連結されている。一方、押圧帯33の長手方向他端部には、載置台31の他方の側面に設けられた連結装置313に対して着脱自在に連結可能な連結部材331が設けられている。
【0036】
このような連結装置313と連結部材331とを用いた連結機構としては、シートベルト等に用いられているバックル装置とタングとを用いたものが挙げられる。タングは孔部や切欠き等が形成された平板部材であり、これをバックル装置に設けられた挿入口に挿入することでバックル装置内でタングを係止することができる。一方、バックル装置の解除ボタンを押下することでタングの係止を解除することができる。その他、フックを用いて互いを係止するものや、面ファスナーを用いるなどしてもよく、着脱自在な連結機構であればどのようなものを用いてもよい。
【0037】
また、押圧帯33は、その一部に長手方向に伸縮自在な伸縮部332が形成されている。
図7および
図8に示すように、載置された布団Fの短手方向端部を押圧する場合、その短手方向端部上に押圧帯33を這わせることとなるため、布団Fの厚みに応じて押圧帯33が載置面から離間し、連結部材331と連結装置313とが離間する。しかしながら当該離間距離分、伸縮部332が伸長することにより連結部材331と連結装置313とを連結することができる。さらに伸縮部332は、伸長した状態において連結部材331と連結装置313とが連結することにより、常時復元力が生じるため、当該復元力により押圧帯33が一様に布団Fを載置面側に押圧することができる。このような伸縮部332は、コイルバネやゴム体等の弾性を有する部材であることが好ましく、押圧帯33全体を伸縮部332としてもよい。
【0038】
図9に示すジェットノズル23は、消臭剤、除菌剤、防ダニ剤などの薬剤を含む液体を噴出するノズルである。ジェットノズル23から排出された薬剤は、乾燥空間D内の温風と共に、布団F内に向けて送風されるので、布団Fの乾燥と同時に消毒も実施することができる。
【0039】
(乾燥機における流路及び動作)
乾燥機における温風流路について
図10乃至
図12を用いて説明する。
まず、
図10は、実施形態に係る乾燥機のガスヒータ21から上方壁部25に流れる温風の流れ方向を示す図である。平板部25aと上方壁部25との間に形成される空間が吸気流路251においては、ガスヒータ21からの温風が、接続パイプ253を通過して平板部25aに向けて送り出される。すると、吸気流路251内に渦(トルネード)が発生して、流入孔群255から乾燥空間Dへと送られる。
【0040】
図11は、実施形態に係る乾燥機の上方壁部から本体部の乾燥空間Dに流れる温風の流れ方向を示す図である。
図11に示すように、吸気流路251からの温風は、乾燥空間Dにおいても渦を巻いて、布団Fに送出され、載置台31の両側面に設けられたパンチング孔群311を介して乾燥空間D内の空気が布団Fを通過して載置部3内に吸気される。
【0041】
図12は、実施形態に係る乾燥機の全体の温風の流れを示す側面図である。
図12に示すように、筐体20の上方壁部25の上方には、2枚の水平に延在して互いに平行な平板部25a,25bが設けられており、最上方に位置する平板部25b上に、ガスヒータ21、排気ファン22がそれぞれ載置されている。当該平板部25bの下方に位置する平板部25aを境に、2つの空間が上下方向に分割して画成されており、平板部25aと上方壁部25との間に画成される空間が吸気流路251として用いられ、平板部25aと平板部25bとの間に画成される空間が上方排気流路252として用いられる。上方排気流路252は、吸気流路251より僅かに後方に延在して垂直流路271と流体的に接続している。なお、平板部25aを境に吸気流路251と上方排気流路252とが上下に形成されるため、平板部25aは断熱部材により構成されることが好ましい。
【0042】
垂直流路271は、後方壁部27と、この後方壁部27に平行な且つ前方に位置する平板部27aとの間隙であり、上方から見て左右方向に長尺な矩形断面が上下方向に延在する空間として形成される。垂直流路271は、上方排気流路252と下方排気流路281とに流体的に接続されており、これらが一体となって1つの排気流路を形成している。
【0043】
図10に示すように、吸気流路251には接続パイプ253が連結され、上方排気流路252には接続パイプ254が連結されている。接続パイプ253は、ガスヒータ21に対応して形成され、吸気流路251と流体的に接続されることでガスヒータ21に加熱された空気を吸気流路251に吸気可能となっている。接続パイプ254は、排気ファン22に対応して形成され、上方排気流路252と流体的に接続されることで排気ファン22により上方排気流路252の空気を排出可能となっている。
【0044】
また、上方壁部25には、吸気流路251と乾燥空間Dとを連通し、ガスヒータ21により加熱された空気を乾燥空間Dに流入させる通気孔としての流入孔群255が形成される。この流入孔群255は複数のパンチング孔であり、乾燥空間Dの左右方向全域及び前後方向においての所定範囲に亘って形成される。ここでの所定範囲とは、吸気流路251の下方領域の略全域であり、より具体的には載置台31の前後方向後方端部上方から、吸気流路251の前後方向前方端部までの範囲である。
【0045】
次に、乾燥機1の使用方法について説明する。先ず、乾燥空間Dから載置部3を引き出し、その載置面に布団Fを載置した後、扉部29を閉状態にできるように載置部3を所定距離、前後方向後方に移動させる。当該移動により、後輪キャスタ322b及び支持キャスタ285がそれぞれ対応する傾斜面を含む対抗面を走行し、台座部32の開口部321bと、底壁部28の開口部282とが接近してシール部材288を介してこれら開口部が接続される。この状態において扉部29を閉状態にでき載置部3を乾燥空間Dに完全に収容することができる。載置部3が乾燥空間Dに完全に収容されると、載置部3の内部空間P,Tと下方排気流路281とが流体的に接続され、よって内部空間P,Tと上方排気流路252とが流体的に接続されることとなる。
【0046】
載置部3を乾燥空間Dに収容した後、使用者が制御部24を制御し、排気ファン22が動作されると、上方排気流路252内の空気が外部に排出されることにより、垂直流路271及び下方排気流路281を介して、載置部3内の内部空間P,Tが負圧となる。内部空間P,Tが負圧となると、載置台31の両側面に設けられたパンチング孔群311を介して乾燥空間D内の空気が布団Fを通過して載置部3内に吸気される。これに応じて乾燥空間D内が負圧となり、流入孔群255により乾燥空間Dと連通された吸気流路251を介して、ガスヒータ21を通過する乾燥機1外部の空気が乾燥空間D内に吸気される。
【0047】
乾燥空間D内に空気が流入する状態において、ガスヒータ21が動作している場合、ガスヒータ21により加熱された空気が熱風として乾燥空間D内に流入することとなり、この熱風が載置部3に載置されたマット状部材Fを通過して載置部3内へ流入した後に乾燥機1の外部へ排出されることによって、布団Fの乾燥が行われる。
【0048】
図13は、実施形態に係る安全確認用の照明装置(LED)の取り付け機構を示す図である。
図14は、実施形態に係る安全確認用の照明装置(LED)の動作を制御するフローチャートである。乾燥機1の乾燥空間D内に忘れ物や残存物が放置されることがある。例えば、布団の首回りに当たる箇所にタオル等を付けたものを乾燥した場合、そのタオルが外れて放置されるなどがある。使用者は、それに気づかず載置部3を筐体20から引き出して、布団を載置して元の位置に戻す動作を行っても正しく収納されないと困る。そこで、実施形態では、載置部3を筐体20から引き出した時に、筐体20内に明かりが点灯するように
照明装置(例えば、LED)が設けられている。
【0049】
図13は、
図9における照明取付部500の詳細な形状を示す。照明取付部500は、筐体20の前方上部の操作パネル24の後ろに位置する。
図13において、(a)は正面図、(b)は(a)を下から見た図、(c)は側面図をそれぞれ示す。
図13において、LED510はLED固定板520に固定される。LED以外の照明装置であってもよい。乾燥空間D側の天板530には透明ガラス540が設けられ、乾燥空間D内の隅々までLED510の明かりが照射されるように構成されている。透明ガラス540は、ガラス押え550によって固定される。
【0050】
図14は、制御部24によって制御される、安全確認用の照明装置(LED)の動作を制御するフローチャートである。なお、載置台31又は乾燥空間Dには、図示しない位置検出センサにより、使用者による操作に基づき載置台31が筐体20内に収納されているか、又は外に引き出されたかを検出している。位置検出センサは、機械式又は電子式のいずれであっても良い。
【0051】
図14において、図示しない位置検出センサにより、載置台31を筐体20の外に引き出されたかを検出すると(S10のYes)、LED510が点灯して乾燥空間D内の隅々までLED510の明かりが照射される(S20)。これにより、乾燥空間Dの状態を確認することができる。そして、位置検出センサにより、載置台31が筐体20内の元の位置に戻ったか(収納された)を検出した時(S30のYes)、例えば1分経過したかを確認して(S40のYes)、LED510を消灯する(S550)。
【0052】
このように実施形態によれば、乾燥機1の乾燥空間Dの安全確認を照明装置によって行うことができるので、安全性の高い乾燥機を提供できる。なお、ここでは、載置台31の移動に伴ってLED510を点灯するとしたが、扉3の開閉に応じてLED510を点灯しても良い。つまり、前記乾燥機を使用するための可動操作が開始された時に、LED510が点灯する構造であれば良い。
【0053】
以上に説明した本実施形態においては、乾燥の対象を布団Fとして説明したがこれに限定されるものではなく、カーペット、ラグ、マットレスなど繊維素材がマット状に形成された他のマット状部材を載置して乾燥するようにしてもよい。
【0054】
また、パンチング孔群311や流入孔群255は円状の孔部であると説明したがこれに限定するものではなく角形の孔部であってもよい。さらに、載置面をメッシュ状に形成して内部空間Pと乾燥空間Dとを連通するようにしてもよい。
【0055】
また、ガスヒータ21と排気ファン22との位置を交換して配設することにより、流路を逆にしてもよい。この場合、載置台31から加熱された空気が布団Fに流入し、これを通過した空気が流入孔群255に流入することとなる。
【0056】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…乾燥機、 20…筐体、 21…ガスヒータ21、
22…排気ファン22、 23…ジェットノズル、 24…制御部
25…上方壁部25、 26…一対の側方壁部、 27…後方壁部27、
28…底壁部、 29…扉部29 31…載置台、
311…パンチング孔群、 311a,311b,311c…エリア
32…台座部、 33…押圧帯(押圧部)、
500…照明取付部、 510…LED、 520…LED固定板
530…天板、 540…透明ガラス、 550…ガラス押え550
D…乾燥空間、 F…布団(マット状部材)、 P…載置台の内部空間
T…台座部の内部空間