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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】屈曲部保護カバー
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20231225BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F16L57/00 A
H02G3/04 018
H02G3/04 087
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010615
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116865
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】川端 誠規
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-179785(JP,A)
【文献】特開平09-317983(JP,A)
【文献】特開2004-343943(JP,A)
【文献】特開2002-257261(JP,A)
【文献】特開2009-047284(JP,A)
【文献】特開2005-237120(JP,A)
【文献】特開2019-007540(JP,A)
【文献】特開2002-310382(JP,A)
【文献】特開2001-200983(JP,A)
【文献】特開2013-247813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁孔を通して壁表に屈曲されて引き出されて、壁表では長尺状の直線部保護カバーに収容される配線・配管材の当該屈曲部を収容するために、壁面に固定される基部に前記配線・配管材の貫通孔が設けられた基台と、当該基台に組み付けられて、前記直線部保護カバーと接続される接続口を備えた蓋体とから成る屈曲部保護カバーであって、
前記蓋体は、天壁と、当該天壁から前記基台の基部の側に垂下された一対の側壁とを備え、
前記基台は、前記側壁の先端面と前記壁面との間を通過して、前記蓋体の側壁の外面よりも外方へと張り出すフランジ部が設けられ、
前記基台の基部には、前記フランジ部を除去可能とする分離予定溝が、前記蓋体の側壁外面の形状に沿って形成され、
前記分離予定溝の内側溝形成面における前記壁面と対向しない側の頂点は、蓋体の側壁の端面の外面側端縁に対して同一位置か、又は当該側壁の肉厚範囲内において前記外面側端縁の内側となるように形成されていることを特徴とする屈曲部保護カバー。
【請求項2】
前記分離予定溝は、前記フランジ部における前記壁面と対面する側に凹設された断面V字状のV字溝から成り、当該V字溝は、当該V字溝を形成する2つの溝形成面が交差する交差頂点が、前記蓋体の側壁の端面の外面側端縁に対して同一位置か、又は当該側壁の肉厚範囲内において前記外面側端縁の内側となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屈曲部保護カバー。
【請求項3】
前記V字溝を構成する内側溝形成面の壁面に対する角度は、外側溝形成面の壁面に対する角度よりも大きくて、壁面に対して垂直又はこれに近い状態に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の屈曲部保護カバー。
【請求項4】
前記分離予定溝は、貫通されていて、内側内面の奥側端縁が、前記蓋体の側壁の端面の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の屈曲部保護カバー。
【請求項5】
1つの前記接続口を有し、
前記フランジ部は、前記接続口と反対側に張り出す第1フランジ部と、前記貫通孔の両側に張り出す一対の第2フランジ部と、が連続したU字状を成しており、
前記各第2フランジ部を除去可能とする各第2分離予定溝は、直線状となって前記第1フランジ部の端縁付近までそれぞれ延びており、
前記第1フランジ部を除去可能とする第1分離予定溝は、2本の前記第2分離予定溝の間に形成され、
第1及び第2の各分離予定溝は、互いに分離して形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の屈曲部保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁表に屈曲されて引き出されて、壁表では長尺状の保護カバーに収容される配線・配管材の当該屈曲部を収容保護する屈曲部保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した屈曲部保護カバーの一つとして、特許文献1に開示のものがあり、壁面に固定される基部に配線・配管材の貫通孔が形成された基台と、当該基台に組み付けられて、直線部保護カバーと接続される接続口を備えた蓋体とから成り、当該蓋体に前記貫通孔を覆うフランジ部が一体に形成されている。
【0003】
特許文献1に開示の屈曲部保護カバーは、その蓋体に前記貫通孔を覆うフランジ部が一体に形成されている。このため、壁面に貫通して形成される壁孔のサイズは、配線・配管材の外径、本数等に応じて種々のものがあり、蓋体のフランジ部を除く本体部の平面視の外形内に前記壁孔が納まる場合には、当該蓋体のフランジ部は不要であるが、当該フランジ部は、蓋体に一体に設けられているため、壁孔を覆うという機能を果たしていない場合でも、そのままの状態とせざるを得ない。この結果、蓋体の不要なフランジ部がそのまま存在することになって、見栄えが悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-61054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した屈曲部保護カバーにおいて、壁裏から壁表に引き出される配線・配管材を貫通させる貫通孔のサイズに対応して、当該貫通孔を覆うフランジ部が不要な場合は除去して、外観を「すっきり」させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、壁孔を通して壁表に屈曲されて引き出されて、壁表では長尺状の直線部保護カバーに収容される配線・配管材の当該屈曲部を収容するために、壁面に固定される基部に前記配線・配管材の貫通孔が設けられた基台と、当該基台に組み付けられて、前記直線部保護カバーと接続される接続口を備えた蓋体とから成る屈曲部保護カバーであって、
前記蓋体は、天壁と、当該天壁から前記基台の基部の側に垂下された一対の側壁とを備え、
前記基台は、前記側壁の先端面と前記壁面との間を通過して、前記蓋体の側壁の外面よりも外方へと張り出すフランジ部が設けられ、
前記基台の基部には、前記フランジ部を除去可能とする分離予定溝が、前記蓋体の側壁外面の形状に沿って形成され、
前記分離予定溝の内側溝形成面における前記壁面と対向しない側の頂点は、蓋体の側壁の端面の外面側端縁に対して同一位置か、又は当該側壁の肉厚範囲内において前記外面側端縁の内側となるように形成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、蓋体のフランジ部を除く本体部の平面視の外形内に壁孔の内径が納まる場合は、基台のフランジ部は、不要となるので、分離予定溝で切除して使用する。これにより、フランジ部が欠落された蓋体の横断面は、直線部保護カバーの横断面とほぼ同一サイズの相似形状となって、屈曲部保護カバーの蓋体の接続口を介して接続される直線部保護カバーと屈曲部保護カバーとが連続した立体形状となり、張出し部がなくなって「すっきり」した外観となって見栄えがよくなる。一方、壁孔のサイズが蓋体の本体部の平面視の外形よりも大きくて、当該壁孔の露出部を基台のフランジ部で覆う必要がある場合は、基台のフランジ部は、そのまま残して使用すればよい。このように、基台のフランジ部は、壁孔のサイズが大きくて、当該フランジ部を必要とする場合にのみ残して、壁孔のサイズが小さくて、蓋体の本体部の外形内に納まる場合には、基台のフランジ部を切除して使用することで、即ち、壁孔のサイズに対応して、基台のフランジ部を残存、及び切除を選択することで、種々のサイズの壁孔に対応可能にしたうえで、小サイズの壁孔の場合には、基台のフランジ部の切除により、直線部保護カバーと屈曲部保護カバーとの連続一体感が生じて、「すっきり」した外観となる。
しかも、請求項1の発明では、前記分離予定溝の内側溝形成面における前記壁面と対向しない側の頂点は、蓋体の側壁の端面の外面側端縁に対して同一位置か、又は当該側壁の肉厚範囲内において前記外面側端縁の内側となるように形成されているので、前記基台のフランジ部を切除して使用する場合には、蓋体の各側壁の端面は、その全部又は一部が、フランジ部を切除された基台の外周縁の上面に当接した状態となって、基台と蓋体とが組み付けられ、基台と蓋体との組付け状態において、当該基台は、当該蓋体の各側壁の端面から外方に突出した部分がなくなる結果、壁面と近接する部分における基台と蓋体との一体感が高められて、見栄えがよくなる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記分離予定溝は、前記フランジ部における前記壁面と対面する側に凹設された断面V字状のV字溝から成り、当該V字溝は、当該V字溝を形成する2つの溝形成面が交差する交差頂点が、前記蓋体の側壁の端面の外面側端縁に対して同一位置か、又は当該側壁の肉厚範囲内において前記外面側端縁の内側となるように形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明によれば、基台のフランジ部を切除して使用する場合において、蓋体の各側壁の端面は、その全部又は一部が、フランジ部を切除された基台の外周縁の上面に当接した状態となって、基台と蓋体とが組み付けられるので、基台と蓋体との組付け状態において、壁面と近接する部分における基台と蓋体との一体感が高められて、見栄えがよくなる。特に、前記V字溝を形成する2つの溝形成面が交差する交差頂点が、前記蓋体の側壁の端面の外面側端縁に対して同一位置になる場合には、V字溝を形成する2つの溝形成面のうち残存する溝形成面と蓋体の側壁の外面とが同一面又は同一面状となるので、壁面と近接する部分における基台と蓋体との一体感が最大に高められる。また、分離予定溝であるV字溝は、基台の基部の裏面に凹設されているため、壁孔のサイズが大きくて、基台のフランジ部を使用する場合には、前記V字溝は認識されないので、当該V字溝の存在により外観が害されることはない。また、分離予定溝がV字溝である場合には、フランジ部の切除が容易となる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記V字溝を構成する内側溝形成面の壁面に対する角度は、外側溝形成面の壁面に対する角度よりも大きくて、壁面に対して垂直又はこれに近い状態に形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明によれば、壁孔のサイズが小さくて、基台のフランジ部を切除して使用する場合において、基台と蓋体とが一体に組み付けられた屈曲部保護カバーの壁面に対して当接する当該基台の外周端面は、壁面に対して垂直又はこれに近い状態となって、側壁の外面に対して同一面又は平行な面となって、基台と蓋体との一体感が高められるので、使用状態での見栄えがよくなる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記分離予定溝は、貫通されていて、内側内面の奥側端縁が、前記蓋体の側壁の端面の範囲内に配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明によれば、貫通された分離予定溝の内側内面の奥側端縁が、前記蓋体の側壁の端面の範囲内に配置されているので、フランジ部が切除された基台の基部の外周縁部に対して蓋体の各側壁の端面が当接可能になって、基台と蓋体との組付けが可能になると共に、分離予定溝が貫通されているので、フランジ部の切除が容易となる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、1つの前記接続口を有し、
前記フランジ部は、前記接続口と反対側に張り出す第1フランジ部と、前記貫通孔の両側に張り出す一対の第2フランジ部と、が連続したU字状を成しており、
前記各第2フランジ部を除去可能とする各第2分離予定溝は、直線状となって前記第1フランジ部の端縁付近までそれぞれ延びており、
前記第1フランジ部を除去可能とする第1分離予定溝は、2本の前記第2分離予定溝の間に形成され、
第1及び第2の各分離予定溝は、互いに分離して形成されていることを特徴としている。
【0015】
1つの接続口を備えた屈曲部保護カバーは、直線部保護カバーの配線・配管方向に沿った一端側に接続口が形成されて、他端側は閉塞された構造となるので、基台の基部に設けられるフランジ部の全体形状は、前記接続口の部分のみが欠落されることで、前記接続口と反対側に張り出す第1フランジ部と、前記貫通孔の両側に張り出す一対の第2フランジ部とが連続したU字状となる。請求項5の発明では、前記第1及び第2の各フランジ部の合体形状がU字状であることに対応して、前記各第2フランジ部を除去可能とする2本の第2分離予定溝は、直線状となって前記第1フランジ部の端縁付近までそれぞれ延びており、前記第1フランジ部を除去可能とする第1分離予定溝は、2本の前記第2分離予定溝の間に形成され、第1及び第2の各分離予定溝を互いに分離して形成することで、小サイズの壁孔の場合には、第1及び第2の各フランジ部を除去して使用すればよく、第1及び第2の各フランジ部を残して使用する大サイズの壁孔の場合には、第1及び第2の各分離予定溝が非連続であるため、基台の基部の強度の低下は少ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基台のフランジ部は、壁孔が大サイズであって、当該フランジ部を必要とする場合にのみ残して、壁孔のサイズが小さくて、蓋体の本体部の外形内に納まる場合には、基台のフランジ部を切除して使用することで、即ち、壁孔のサイズに対応して、基台のフランジ部を残存、及び切除を選択することで、種々のサイズの壁孔に対応可能にしたうえで、小サイズの壁孔の場合には、基台のフランジ部の切除により、配管方向に沿って連続する直線部保護カバーと屈曲部保護カバーとに連続一体感が生じて、「すっきり」した外観となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a),(b)は、それぞれ屈曲部保護カバーC1 の基台V1 と蓋体L1 との組合せ状態を異なる方向から見た斜視図である。
図2】基台V1 の第1及び第2の各フランジ部16,17を基部1から除去した状態を裏面側から見た斜視図である。
図3】基台V1 と蓋体L1 の組付け状態を大サイズの壁孔H2 との関係で示した平面図である。
図4】(a),(b)は、それぞれ図3のX-X線及びY-Y線の各断面図である。
図5図3のZ-Z線断面図である。
図6】小サイズの壁孔H1 に対応して、基台V1 の第1及び第2の各フランジ部16,17を除去した状態の斜視図である。
図7】小サイズの壁孔H1 の周囲に固定された基台V1 に対して直線部保護カバーC11が接続された状態で、当該基台V1 に対して蓋体L1 を組み付ける前の状態の斜視図である。
図8】小サイズの壁孔H1 から壁表に引き出された配管材Pの屈曲部Paが屈曲部保護カバーC1 で覆われると共に、当該屈曲部Paに連続する直線部Pbが壁表において直線部保護カバーC11で覆われた状態の一部を破断した斜視図である。
図9】(a),(b)は、それぞれ小サイズの壁孔H1 から壁表に引き出された配管材Pの屈曲部Paが屈曲部保護カバーC1 で覆われた状態における図3のX-X線及びY-Y線に対応する各断面図である。
図10】大サイズの壁孔H2 から壁表に引き出された配管材Pの屈曲部Paが屈曲部保護カバーC1 で覆われると共に、当該屈曲部Paに接続する直線部Pbが壁表において直線部保護カバーC11で覆われた状態の一部を破断した斜視図である。
図11】(a),(b)は、それぞれ屈曲部保護カバーC2 の基台V2 と蓋体L2 との組合せ状態を異なる方向から見た斜視図である。
図12】屈曲部保護カバーC2 の基台V2 の背面図である。
図13】小サイズの壁孔H1 にチーズ継手Tの一部を差し込んで、壁内の1本の配管材Pと壁表の2本の配管材Pとを接続した状態の一部を破断した斜視図である。
図14】大サイズの壁孔H2 にチーズ継手Tの一部を差し込んで、壁内の1本の配管材Pと壁表の2本の配管材Pとを接続した状態の一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、複数の最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1の屈曲部保護カバーC1 は、図1図5に示されるように、壁裏や壁内から引き出された配管材Pを屈曲させて、壁表で直線状に配管する際に、配管材Pの当該屈曲部Paを覆う保護カバーであって、壁面Wにおける壁孔H1 (H2 )の周囲にビス固定される基台V1 と、当該基台V1 に係合構造により一体に組み付けられることで、内部に配管材Pの屈曲部Paを収容するための収容空間10を形成するための蓋体L1 とで構成される。当該屈曲部保護カバーC1 は、壁表において1本の直線部保護カバーC11に接続されるので、1つの接続口23を有している。前記基台V1 と蓋体L1 とは、いずれも樹脂の射出成形により形成されて、蓋体L1 の対向する一対の第2側壁部22bは、弾性変形可能である。
【0020】
基台V1 は、自身の貫通孔2と壁孔H1 (H2 )の各中心をほぼ合致させた状態で、壁面Wにおける壁孔H1 (H2 )の周囲にビス固定されるものであって、縦長長方形の各コーナー部が大きくアール面取りされた第1基部1aと、当該第1基部1aの一方の短辺部に、長辺が第1基部1aの短辺部よりも短い長辺部を有する横長の長方形状の第2基部1bが一体に形成された平板状の基部1を有し、前記第1基部1aには、当該第1基部1aにおける長手方向の中央部に対して前記第2基部1bと反対側に僅かにずれた部分に中心を有していて、配管材Pの屈曲部Paを貫通させるための円形の貫通孔2が形成されている。前記第2基部1bの表面における基台V1 の全体の幅方向の両端部には、一対の立壁部3が前記幅方向に沿って対向して形成され、図5に示されるように、各立壁部3の外側面は、断面視で段差状に形成され、基台V1 に対する蓋体L1 の組付け時に、当該蓋体L1 の後述の第2係合部25を摺接させながら一対の第2側壁部22bを外方に弾性変形させて拡幅させるための拡幅用傾斜面4の下方に、凹状に形成された一対の第2被係合部6が高さ方向に沿って連続して形成されている。また、第1基部1aの上面における一対の第2被係合部6と反対側の端部であって、基台V1 全体の幅方向の中央部には、前記第2被係合部6と同一断面形状の1つの第1被係合部5が形成されている。
【0021】
また、第2基部1bにおける基台V1 全体の幅方向に沿った端縁には、基台V1 に接続される直線部保護カバーC11の基台V11の幅方向の位置決めを行うための一対の位置決め突片7が、当該基台V1 の幅方向に沿って所定間隔をおいて長手方向(配管方向)に沿って形成されている。基台V1 の第1基部1aにおける前記第1被係合部5の両側部及び第2基部1bにおける一対の立壁部3の中央部の計3箇所に、当該基台V1 を壁面Wに固定するビスJ(図6及び図7参照)を挿通させるためのビス挿通孔8が貫通して形成されている。表面に一対の立壁部3が形成された第2基部1bにおける前記一対の位置決め突片7が設けられている部分は、当該第2基部1bの曲げ剛性を高めるための所定幅の厚肉部1b1が設けられ、当該厚肉部1b1の裏面側には、射出成形時に発生し易いひけ防止のための肉盗み部11が設けられている。前記貫通孔2と、一対の立壁部3の間のビス挿通孔8との間には、配管材Pの屈曲部Paの配管時において基台V1 の幅方向の中心を示して当該配管作業を容易にするための配管案内溝12が形成されている。なお、第1基部1aの裏面における前記第1被係合部5に対応する部分には、当該第1被係合部5のアンダカット部を成形可能にするスライド型の型挿通孔13が結果的に形成される。
【0022】
基台V1 の第1基部1aにおける第2基部1bと接続される部分を除く3辺の部分は、当該基台V1 に蓋体L1 を組み付けた場合に、当該蓋体L1 の平面視における外縁から突出して、壁孔H2 の露出部を覆い隠すフランジ部として機能する部分であって、壁孔H1 が当該蓋体L1 の平面視における外縁の範囲内に納まっている場合には、フランジ部は不要となる。このため、図1及び図2に示されるように、基台V1 の第1基部1aの裏面における一対の立壁部3と反対側(蓋体L1 を基準にすると、接続口23と反対側)の部分に、両端部が第1基部1aのコーナー部の円弧形状に対応した円弧状となった分離予定溝である第1V字溝14が設けられていると共に、基台V1 の第1基部1aの裏面における貫通孔2の両側部には、直線状をした一対の第2V字溝15が、前記第1V字溝14の形成端を超えて設けられることで、第1基部1aにおける一対の立壁部3と反対側の部分に第1フランジ部16が張り出して形成されていると共に、前記貫通孔2の両側に一対の第2フランジ部17がそれぞれ張り出して形成されている。各第2V字溝15と第1V字溝14の両端部とは、近接しているが非連続状態となっているため、当該第1及び第2の各V字溝14,15で第1及び第2の各フランジ部16,17を除去可能にしていると共に、第1及び第2の各フランジ部16,17を使用する場合には、各V字溝14,15が存在していても、第1基部1aの残りの部分との一体強度を確保している。
【0023】
前記第1及び第2の各V字溝14,15の横断面は、図4に示されるように、内側溝形成面14a,15aと外側溝形成面14b,15bとの交差頂点14c,15cが、蓋体L1 の後述の第1及び第2の各側壁部22a,22bの肉厚範囲内に配置されるようなV字状に形成されている。前記内側溝形成面14a,15aは、基台V1 が固定される壁面Wに対して垂直に形成されていると共に、前記外側溝形成面14b,15bは壁面Wに対して傾斜して形成されている。実施例1では、内側溝形成面14a,15aは、基台V1 に対して蓋体L1 を組み付けた状態で、当該蓋体L1 の第1及び第2の各側壁部22a,22bの外面に対して同一面を形成するように形成されている。これにより、壁面Wに固定される基台V1 に対して蓋体L1 を組み付けた状態で、基台V1 の基部1と蓋体L1 の第1及び第2の各側壁部22a,22bとの間が無段差状となって、基台V1 と蓋体L1 との形状的な一体感が高められて、見栄えが良好となる。また、基台V1 の基部1の裏面側に第1及び第2の各V字溝14,15が非貫通状態で形成されているため、大サイズの壁孔H2 の露出部を覆い隠すのに使用される第1及び第2の各フランジ部16,17に形成された第1及び第2の各V字溝14,15が露出されないため、第1及び第2の各フランジ部16,17における蓋体L1 の第1及び第2の各側壁部22a,22bと接続される基部の部分の見栄えがよくなる。
【0024】
なお、第1及び第2の各V字溝14,15は、上記理由により非貫通であることが好ましいが、基部1の表面側の開口が蓋体L1 の第1及び第2の各側壁部22a,22bの肉厚範囲内に配置されることを条件に、貫通孔であってもよい。
【0025】
一方、蓋体L1 の平面形状は、前記基台V1 において第1及び第2の各フランジ部16,17が切除された形状に対応していて、天壁21と、当該天壁21から基台V1 の基部1の側に垂下するように形成された側壁22とから成り、当該側壁22は、基台V1 の一対の第2被係合部6の側において接続口23を形成する一対の第2側壁部22bと、当該接続口23と反対側の部分を閉塞するために当該一対の第2側壁部22bに連結される第1側壁部22aとから成る。第1及び第2の各側壁部22a,22bの内面における基台V1 の第1及び第2の各被係合部5,6に対応する部分には、当該各被係合部5,6と係合される第1係合部24及び一対の第2係合部25がそれぞれ形成されている。
【0026】
また、図2図6及び図7にそれぞれ示されるように、基台V1 の基部1から第1及び第2の各フランジ部16,17を切除した状態では、第1及び第2の各フランジ部16,17が除去された第1基部1aと第2基部1bとの接続部における幅方向の両端部に、幅段差部18がそれぞれ発生し、各幅段差部18の部分に、蓋体L1 の一対の第2側壁部22bにおける接続口23から起算して所定長の部分が配置されるので、当該各第2側壁部22bの端面の接続口23に近い部分には、端面段差部26が形成されている。なお、図1及び図2において、27は、基部1の裏面に接着された仮固定用の両面テープを示す。
【0027】
そして、小サイズの壁孔H1 から配管材Pを引き出して、その屈曲部Paを屈曲部保護カバーC1 の収容空間10に収容するには、以下のようにして行う。ここで、「小サイズの壁孔」とは、基台V1 の第1及び第2の各フランジ部16,17を除去して残った第1基部1aのみで全体を覆うことが可能なサイズの壁孔をいう。一方、「大サイズの壁孔」とは、第1及び第2の各フランジ部16,17を有している第1基部1aでないと、全体を覆うことができないサイズの壁孔をいう。
【0028】
まず、図2及び図6に示されるように、基台V1 の第1基部1aに一体に設けられた第1フランジ部16及び一対の第2フランジ部17の計3つの各フランジ部を、計3本の第1及び第2の各V字溝14,15の部分で切除する。この状態の基台V1 の貫通孔2を、壁面Wに貫通された壁孔H1 に合致させて、当該壁面Wに複数本のビスJを介して壁面Wに基台V1 を固定する(図7)。引き続いて、壁面Wに固定された基台V1 の一対の位置決め突片7を用いて、当該基台V1 に対する直線部保護カバーC11の基台V11の幅方向の位置決めを行って、壁面Wにおいて当該基台V1 に対して直線部保護カバーC11の基台V11を接続し、この状態で、図7に示されるように、壁孔H1 から壁内の配管材Pを壁表に引き出して、壁表において配管材Pの直線部Pbを直線部保護カバーC11の基台V11に収容保護すると、壁孔H1 の引き出し部において屈曲された配管材Pの屈曲部Paは、屈曲部保護カバーC1 の基台V1 の上に配置される。
【0029】
最後に、壁面Wにおける壁孔H1 の周囲に固定されて、その上面に配管材Pの屈曲部Paが配置されている基台V1 に対して蓋体L1 を押し付けると、更に正確には、蓋体L1 の第1側壁部22aの側を壁面に近接させた傾斜姿勢で、当該蓋体L1 の第1係合部24と基台V1 の第1被係合部5とを係合させた状態で、当該蓋体L1 の接続口23の側を壁面Wに対して押し付けると、蓋体L1 の接続口23の側の一対の第2係合部25が、基台V1 の各拡幅用傾斜面4を摺動することで、蓋体L1 の一対の第2側壁部22bが僅かに外方に弾性変形されることで拡幅された後に原形状に復元して、蓋体L1 の一対の第2係合部25と、基台V1 の一対の第2被係合部6とが互いに係合されて、図8及び図9に示されるように、基台V1 に対して蓋体L1 が組み付けられて、その収容空間10に配管材Pの屈曲部Paが収容される。
【0030】
上記のようにして、基台V1 と蓋体L1 とが組み付けられた状態では、図8及び図9に示されるように、蓋体L1 の一対の第2側壁部22bの各端面段差部26が、基台V1 の各幅段差部18の部分にそれぞれ配置されて、各第2側壁部22bの段差状となって連続している各端面は、第1及び第2の各フランジ部16,17が切除された基台V1 の第1基部1aの周縁部の上面及び壁面Wに、それぞれ当接した状態で配置されることで、当該蓋体L1 の側壁22の端面と壁面Wとの間に一切の隙間が発生しない。また、基台V1 の第1基部1aの側端面は、第1及び第2の各V字溝14,15の内側溝形成面14a,15aで形成されて、蓋体L1 の第1及び第2の各側壁部22a,22bの外面に対して当該内側溝形成面14a,15aが僅かに内側に入り込んで、ほぼ無段差の連続面となっていて、平面視において蓋体L1 の第1及び第2の各側壁部22a,22bに対して基台V1 の側の突出している部分は皆無であり、しかも屈曲部保護カバーC1 と直線部保護カバーC11との各横断面は、僅かに寸法の異なる相似形状であるので、屈曲部保護カバーC1 の部分、及び直線部保護カバーC11との接続部が「すっきり」して、当該各部分の美観が高められる。
【0031】
一方、大サイズの壁孔H2 の場合には、図10に示されるように、基台V1 の第1及び第2の各フランジ部16,17は、切除することなく残存させたまま使用する。即ち、当該基台V1 を壁孔H2 の周囲に固定すると、当該壁孔H2 の外周部は、第1及び第2の各フランジ部16,17で覆われる。以後は、小サイズの壁孔H1 の場合と同様にして、配管作業を行うと、配管材Pの屈曲部Paは、基台V1 と蓋体L1 との組み付けにより形成された収容空間10に収容される。
【実施例2】
【0032】
次に、図11図14を参照して、実施例2の屈曲部保護カバーC2 について説明する。屈曲部保護カバーC2 は、壁孔H1 (H2 )に一部が差し込まれたチーズ継手(「T継手」又は「三方継手」とも称される)Tを介して壁内の1本の配管材Pと壁外の同一直線上に配置される2本の配管材Pとを接続する配管構造となる。実施例2は、実施例1に対して、壁表において直線部保護カバーC11と接続される接続口が2つであること、及び前記チーズ継手Tの部分が配管材Pの「屈曲部」に該当することの2点が大きく異なるのみであるので、実施例1と同等の部分は簡単に説明して、異なる上記2点の各部分についてのみ詳細に説明する。
【0033】
図11及び図12において、屈曲部保護カバーC2 は、平板状の基台V2 と、当該基台V2 に組み付けられることで内部に収容空間30を形成する蓋体L2 とから成る。基台V2 は、長方形平板状の基部31の長手方向の各両端部における幅方向の各両端部に立壁部32がそれぞれ長手方向に突設されて、各立壁部32の外側に凹状の被係合部33が形成され、当該基部31の長手方向の中央部にチーズ継手Tの一部を貫通させる貫通孔34が形成され、前記基部31における当該貫通孔34の両側部には、大サイズの壁孔H2 の外周部を覆うフランジ部35がそれぞれ形成されている。基台V2 の裏面における各フランジ部35の基端側の部分には、当該基台V2 の長手方向に沿って直線状のV字溝36がそれぞれ形成されている。基台V2 の基部31における各フランジ部35の両端部は、当該基台V2 に対して蓋体L2 を係合により組み付けた状態で、当該蓋体L2 の側壁42の長手方向の中間部に所定長に亘って形成された浅い嵌着溝部45を嵌着可能にするための幅段差部37が幅方向に沿って段差状となってそれぞれ形成されている。なお、図中38,39,40は、それぞれビス挿通孔、位置決め突片及び両面テープを示す。
【0034】
蓋体L2 は、全長に亘って同一の断面U字状を成していて、天壁41と、当該天壁41の両端部から、基台V2 との組付け状態で基部31に向けて垂下された各側壁42とから成り、長手方向の両端にそれぞれ接続口43が形成され、各接続口43にそれぞれ同一線上に配置される2本の配管材Pの各端部が挿入される。各側壁42の内面における前記基台V2 の各被係合部33に対応する部分には、それぞれ係合部44が形成され、各側壁42の長手方向の中央部には、基台V2 の基部31における長手方向に所定間隔をおいて設けられた各幅段座部37の間の部分を嵌め込むための浅い嵌着溝部45が形成されている。
【0035】
そして、小サイズの壁孔H1 の場合には、図13に示されるように、基台V2 の各フランジ部35を各V字溝36の部分で切除して、当該基台V2 の貫通孔34と前記壁孔H1 の各中心をほぼ合致させた状態で、当該基台V2 を壁面Wに固定する。壁孔H1 にチーズ継手Tの中央部の接続部を差し込んで、壁内において当該中央部の接続部と壁内の配管材Pの端部とを接続すると共に、壁外において基台V2 上に配置された前記チーズ継手Tの同一線上に位置する残りの2つの各接続部に、それぞれ同一直線上に配置される2本の配管材Pの端部を接続する。以後の配管作業は、前記屈曲部保護カバーC1 の場合と同様である。
【0036】
一方、大サイズの壁孔H2 の場合には、図14に示されるように、基台V2 の各フランジ部35を残したままで、当該基台V2 の貫通孔34と壁孔H2 の各中心とをほぼ合致させた状態で、壁面Wに基台V2 を固定して、上記した小サイズの壁孔H1 の場合と同様にして配管作業を行う。
【符号の説明】
【0037】
1 ,C2 :屈曲部保護カバー
11:直線部保護カバー
1 ,H2 :壁孔
1 ,L2 :蓋体
P:配管材
Pa :屈曲部
Pb :直線部
T:チーズ継手(屈曲部)
1 ,V2 :基台
W:壁面
1,31:基台の基部
2,34:貫通孔
5:第1被係合部
6:第2被係合部
10,30:収容空間
14:第1V字溝
14a,15a:内側溝形成面
14c,15c:交差頂点
15:第2V字溝
16:第1フランジ部
17:第2フランジ部
21,41:天壁
22,42:側壁
23,43:接続口
24:第1係合部
25:第2係合部
35:フランジ部
36:V字溝
44:係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14