(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】変位計及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01B11/00 C
(21)【出願番号】P 2020011350
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】魚住 崇之
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300763(JP,A)
【文献】特開2018-194738(JP,A)
【文献】特開2011-043634(JP,A)
【文献】特開2012-127865(JP,A)
【文献】特開平09-304266(JP,A)
【文献】特開2011-186383(JP,A)
【文献】特開2002-323318(JP,A)
【文献】特開2015-172556(JP,A)
【文献】特開2014-098619(JP,A)
【文献】特開2007-315865(JP,A)
【文献】特開2019-211237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を用いて、光軸上の所定位置において周辺部の光強度が中央部の光強度よりも強い光強度分布を形成する照明光学系と、
光軸上に開口部を有すると共に、前記照明光学系によって形成された前記光強度分布の光を前記所定位置で反射する反射部を有する光偏向部と、
前記反射部で反射された光を集光して測定対象物を照明する第1レンズ部と、
前記測定対象物で反射され、前記第1レンズ部を介して、前記光偏向部の前記開口部を通過した光を検出するセンサアレイと、
前記センサアレイの異なるタイミングの出力を用いて前記測定対象物の変位を検出する計測部と、
を有することを特徴とする変位計。
【請求項2】
前記照明光学系は、球面レンズの球面収差により前記光
強度分布を形成することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項3】
前記照明光学系は、平凸レンズを含み、前記平凸レンズの凸側に前記光源を配置したことを特徴とする請求項2に記載の変位計。
【請求項4】
前記センサアレイの受光面の前に開口絞りを有し、
前記第1レンズ部と前記開口絞りにより、物体側テレセントリック光学系を構成することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項5】
前記照明光学系は、前記光
強度分布としてリング状の光
強度分布を形成することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項6】
前記計測部は前記センサアレイの異なるタイミングの出力の相関を演算し、前記相関演算結果のピーク位置から測定対象物の変位を検出することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項7】
前記光偏向部の開口部が前記開口絞りを兼ねることを特徴とする請求項4に記載の変位計。
【請求項8】
前記光偏向部の前記反射部はリング状の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項9】
前記光偏向部の前記反射部は複数の平面ミラーを有することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項10】
前記照明光学系は回折格子を含むことを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項11】
前記光源がコヒーレント光源であることを特徴とする請求項10に記載の変位計。
【請求項12】
前記光偏向部と前記センサアレイとの間に第2レンズ部を有することを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項13】
前記第2レンズ部は前記センサアレイ側をテレセントリック光学系とすることを特徴とする請求項12に記載の変位計。
【請求項14】
前記第1レンズ部は複数のレンズを含むことを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項15】
前記光源がインコヒーレント光源であることを特徴とする請求項1に記載の変位計。
【請求項16】
光源と、
前記光源からの光を用いて、光軸上の所定位置において周辺部の光強度が中央部の光強度よりも強い光強度分布を形成する照明光学系と、
光軸上に反射部を有し、前記照明光学系によって形成された前記光強度分布の光を前記反射部の周囲の開口部を介して測定対象物に導く光偏向部と、
前記開口部を通過した光を集光して前記測定対象物を照明する第1レンズ部と、
前記測定対象物で反射され、前記第1レンズ部を介して、前記光偏向部の前記反射部で反射された光を検出するセンサアレイと、
前記センサアレイの異なるタイミングの出力を用いて測定対象物の変位を検出する計測部と、
を有することを特徴とする変位計。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の変位計を用いて対象物の変位を計測する工程と、
計測された変位を基に対象物に加工を行う工程と、を有する、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位計等に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で面内方向の変位を計測する方法として、レーザードップラ方式、空間フィルタ方式、レーザーによるスペックル、または、画像の相関から変位を算出する画像相関方式などが知られている。レーザードップラ方式は、各種測定対象物に適用可能で、測定精度も良好という特徴をもつ。しかし、干渉計をベースにした構成であること、静止状態測定、移動方向の判別を行うために、音響光学素子、または、電気光学素子が必要なことといった理由により安価に構成するのは困難である。
【0003】
空間フィルタ方式は、安価に構成できるが、測定対象物により最適な空間フィルタが異なる、また、静止状態、移動方向の判別を行うことが容易ではない。画像相関方式は、静止状態、移動方向の判別を行うことが可能なうえ、近年普及が著しいイメージセンサなどを用いて比較的安価に構成できる。本発明は、画像相関方式等を用いた変位計に関するものである。
【0004】
従来の画像相関方式による非接触面内変位計として、
図9に示す装置がある。
図9は従来の非接触面内変位計の一例を示した図である。この従来の非接触面内変位計は、照明光を測定対象物に対して斜め方向から照明し、測定対象面からの散乱光を略垂直方向から受光し、イメージセンサで取得した画像に基づいて変位を計測している。(特許文献1)
【0005】
また、
図10は上記とは異なる従来の画像相関方式による非接触面内変位計を示した図である。この方式では、同軸落射光学系を採用し、測定対象物に対して略垂直方向からレーザー光を照明し、測定対象物からの散乱光を略垂直な方向から受光し、イメージセンサで取得したスペックル画像に基づいて変位を計測している。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6044125号公報
【文献】特開2006-300763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方式では、測定対象物が普通紙のように入射光束に対する反射光の角度分布が等方的である場合において十分な光量を取得可能である。一方、測定対象物が金属などの鏡面反射成分が比較的強い(反射光の角度分布に異方性を持つ)場合において、十分な光量を取得することが困難になる場合がある。金属などの測定対象物でも測定可能とするためには、照明光量を十分大きくする必要があるが、光源の発熱が装置の使用温度範囲の制約になる。また、光源の寿命が短くなるといった課題が生じる。
【0008】
照明光の入射角度を小さくするように構成すれば、取得光量を増やすことは可能であるが、照明光学系と受光光学系の物理的な干渉などを考慮する必要があり、設計上の制約が生じるという課題がある。鏡面反射成分を取得するために、受光光学系を照明光学系に対して正反射配置する方法もあるが、変位計と測定対象物の距離(ワーキングディスタンス)が変化した際に、測定したい変位とワーキングディスタンス変化による変位が判別できないという課題がある。
【0009】
一方、特許文献2の方式では、同軸落射光学系を採用することで、上述した金属などの測定対象物に関しても十分な光量を取得することが可能となる。しかし、光偏向部としてハーフミラーを用いて同軸落射光学系を構成しており、照明時と受光時にそれぞれ約半分の光量ロスが生じ、有効な光量は約1/4程度になってしまう。したがって、特許文献1の場合と同様、照明光量を大きくする必要があり、光源の発熱、寿命が課題となる。また、ハーフミラーで折り返した照明光は、レンズに入射する際に同時に反射光を生じる。このレンズで発生する反射光は、受光光学系のゴーストとなる。これを避けるためには、特許文献2の中でも言及されているように、偏光子、波長板などの偏光光学素子を用いるようにすれば良いがコストアップが避けられない。
【0010】
そこで、本発明は、光学系で生じる光量ロスを減少させた、照明効率のよい変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つのアスペクトの変位計は、
光源と、
前記光源からの光を用いて、光軸上の所定位置において周辺部の光強度が中央部の光強度よりも強い光強度分布を形成する照明光学系と、
光軸上に開口部を有すると共に、前記照明光学系によって形成された前記光強度分布の光を前記所定位置で反射する反射部を有する光偏向部と、
前記反射部で反射された光を集光して測定対象物を照明する第1レンズ部と、
前記測定対象物で反射され、前記第1レンズ部を介して、前記光偏向部の前記開口部を通過した光を検出するセンサアレイと、
前記センサアレイの異なるタイミングの出力を用いて前記測定対象物の変位を検出する計測部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学系で生じる光量ロスを減少させた、照明効率のよい変位計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施例1の照明光の断面強度分布を示した図である。
【
図3】実施例1の計測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
<実施例1>
【0015】
図1は実施例1の変位計の構成図である。本実施例では変位計としていわゆる非接触面内変位計について説明する。
図1に示すように、変位計1が測定対象物2に対して略垂直な位置にワーキングディスタンスを隔てて設置され、矢印で示される測定対象物2の変位を検出する。光源6から出射した光束は、照明光学系としての集光部材7により集光され、光偏向部8で反射され、第1レンズ部3を経て測定対象物2を照明する。本実施例では光源6としては、例えばレーザーダイオードなどの適宜の光源を用いる。
図1では、集光部材7、第1レンズ部3についてそれぞれ単レンズとして図示しているが、複数のレンズの組み合わせで実現することも可能である。
【0016】
図2は、光源6から出射した光束を球面レンズからなる集光部材7により概ねコリメート光になるように集光した場合の光量分布(強度分布)を示した図であり、集光部材7からの距離と集光光束11の断面の光量分布の関係の模式図を示している。光量分布を2値化して表現しており、白色部が光量の大きい状態、黒色部が光量の小さい状態を示している。集光部材7のレンズの近傍では、球面収差により集光光束11の断面の光量分布12が輪帯状の光量分布となる。
【0017】
集光光束11の断面の光量布は、レンズから離れるにしたがって、光量分布13のように輪帯中心の光量が大きくなり、さらに離れると中心がピークとなる光量分布14となる。即ち、集光部材7は、光源からの光を用いて、光軸上の所定位置において周辺部の光強度が中央部の光強度よりも強いリング状の光強度分布を形成する照明光学系として機能している。
【0018】
図2では、球面収差による輪帯状の分布を発生させる具体的な例として、平凸レンズを用いた場合の例を示している。本実施例では、外形30mm、曲率半径18.17mm、中心厚さ9.9mm、材質BK7の平凸レンズを用いている。
図2で示した光量分布12~14は、φ3mmのLED光源を集光した場合の照明シミュレーション結果である。一般的な光学系では、球面収差を抑制するために平凸レンズの平側に光源が配置されるが、本実施例では積極的に球面収差を発生させるために凸側に光源を配置している。
図2の光量分布12では、中心部φ10mmを除いても90%以上の光量が確保できる。
【0019】
本実施例では、集光光束11の断面の強度分布(光量分布)が輪帯状となる光量分布12の近傍で、集光光束11を光偏向部8で折り返す構成をとる。光偏向部8は、
図1で示したように、中心(光軸上)に開口部9を有し、その周辺がリング状の形状を有する反射部10から成るミラーで構成される。上述の輪帯状の強度分布の状態で、光偏向部8の反射部10で反射することで、照明光の大部分を反射可能な構成となる。
【0020】
即ち、光偏向部8の反射部10は、照明光学系によって形成された前記光量分布が、光量分布12となる所定の光軸位置の周辺部(輪帯状)の位置で光を反射するように構成されている。また、第1レンズ部3は、反射部で反射した光を、集光して測定対象物を照明する。
【0021】
従来のような光偏向部としてハーフミラーを用いる場合には、半分程度の光量損失が生じるが、本実施例の構成では非常に効率よく照明することが可能となる。
また、集光部材7、第1レンズ部3の組み合わせにより、照明光の測定対象物2への入射角度は適宜選択可能である。
ここでは、集光部材7として球面レンズを用いて球面収差により輪帯状の光量分布を生成する方法について述べたが、アクシコンレンズや、CGH(計算機生成ホログラム)などを用いてもよい。更には
図6(B)の例で示すように回折格子を用いても良い。
【0022】
測定対象物2で反射散乱された反射光束は、第1レンズ部3で集光され、光偏向部8の開口部9を介して更にセンサアレイ5の受光面の前に配置した開口絞り4を通過し、センサアレイ5に入射する。受光光学系に関しても、光偏向部として従来のようなハーフミラーを用いる場合には更に半分程度の光量損失が生じていたが、本実施例によれば非常に効率よく受光することが可能となる。
【0023】
また、光偏向部8として従来のように、ハーフミラーを用いた場合には、第1レンズ部3に入射する光束の一部が反射光となり開口絞り4を通過してセンサアレイ5に到達し、迷光として測定に悪影響を及ぼす問題があった。これに対して本実施例では、光偏向部8で反射された輪帯状の光量分布は、第1レンズ部3に入射する際に、レンズ中心部の光量分布は略ゼロとなる。したがって、第1レンズ部3による裏面反射も略ゼロとなり、センサアレイ5に到達する迷光も略ゼロとなる。
【0024】
第1レンズ部3と開口絞り4で構成される受光光学系は、物体側テレセントリック光学系となるように、第1レンズ部3の焦点位置近傍に開口絞り4が設置される。開口絞り4とセンサアレイ5の設置距離は、変位計のワーキングディスタンスの設計値から最適な結像位置として決定し、所望の視野から決まる像の大きさと一致するように、センサアレイ5を構成する画素の大きさ、使用する画素数を選定することができる。光偏向部8の開口部9の大きさは、上記視野から決まる受光光束を制限しない大きさとして決定する。
【0025】
逆に、使用するセンサアレイ5の画素の大きさ、画素数と視野の大きさから像の大きさを決定し、開口絞り4とセンサアレイ5の設置距離を決定後、ワーキングディスタンスを決定してもよい。このように、物体側テレセントリック光学系を採用することで、ワーキングディスタンスが変化しても像の倍率は略変化しないため、ロバストな測定が可能となる。
【0026】
センサアレイ5で受光した光束は、光電変換された後、AD変換器
としてのAD20でAD変換され、信号処理部
としての信号処理21に取り込まれ各種補正処理がなされた後、制御回路22において
図3のフローチャートに示すような計測動作が行われる。
なお、制御回路22はコンピュータとしてのCPUを内蔵し、不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムに基づき装置全体の各種動作を実行する制御手段としても機能する。また制御回路22はセンサアレイ5等と同じ筐体に収納されていても良いし、外部に配置しても良い。
【0027】
即ち、信号処理部
としての信号処理21の出力を、ネット等を介して外部に送信し、ネット等を介して外部PCで受信するように構成しても良い。そして、前記外部PCが制御回路22の機能を実行するようにしても良い。
制御回路22で実施される変位演算の一例としては、
図3に示したフローが挙げられる。
図3のフローは前記制御回路22内のCPUが不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを処理することによって実行される。
【0028】
図3は計測方法のフローチャートを示す。
センサアレイ5は所定のサンプリングレートで連続的に画像を取得する。ステップS100において、測定開始のトリガ入力などにより、測定が開始されると、基準画像が設定される。次に、ステップS101において、所定のサンプリングレートで異なるタイミングのセンサアレイ出力から取得された画像が測定画像として設定される。設定された各画像はそれぞれステップS102でオフセット成分を減算され、ステップS103で窓関数を乗算後、ステップS104でフーリエ変換される。オフセット成分は画像の強度情報の平均値や最低値など適宜選択可能である。また、窓関数としては、ハン窓、ハミング窓など適宜選択可能である。
【0029】
フーリエ変換された各画像は、ステップS105で予め設定した範囲でバンドパスフィルタをかける。測定対象物の画像を構成する平均的な構成要素の大きさなどからバンドパスフィルタの帯域は適宜設定可能である。バンドパスフィルタをかけた各画像の周波数空間でのデータは、ステップS106で、一方の共役複素数をとって乗算後、逆フーリエ変換することで相関演算を行う。
【0030】
次にステップS107で相関演算結果のピーク位置を検出する。相関演算結果のピークとして、最大値を利用するだけでなく、最大値近傍の情報からサブピクセル演算することも可能である。ステップS108でピーク位置に基づき変位情報を算出し、変位情報に、光学系の倍率を反映することで、測定対象物の変位量を算出(検出)することができる。ここでは、実際の組立誤差から予め設定した補正値などを盛り込むことも可能である。変位演算の方法に関しては、
図3に示した例に対して適宜変更可能である。また、サンプリング時間は既知であるから、各サンプリングでの変位から速度を算出することも可能である。なお、
図3のようなフローを実行することによって制御回路22は測定対象物の変位を検出する計測部として機能する。
【0031】
以上のように、本実施例の変位計は、測定対象物によらず十分な光量が取得可能で、光学系で生じる光量ロスを減少させたうえ、ワーキングディスタンス変化に対してロバストな測定が可能となるという優れた効果を有する。
<実施例2>
【0032】
次に、
図4に基づいて実施例2の変位計について説明する。
図4は実施例2の変位計の構成図である。本実施例の変位計は、
図4に示すように、実施例1に対して、照明光学系と受光光学系の位置を入れ替えて、光偏向部8の反射部10を中央に設け、開口部9を周辺部に設けた構成である。なお、開口部9の外側は遮光マスクが配置される。即ち、光偏向部8は照明光学系によって形成された前記光量分布の光を周辺部に設けた開口部を介して測定対象物に導く。この構成を用いても、実施例1と同様な効果が得られる。
【0033】
ただし、光偏向部8の反射部10としてのミラーを保持する必要があり、保持部が照明光を遮る構成となるため、実施例1の構成と比較して若干効率は落ちる可能性がある。
なお、開口部9の外側に、開口部9を規定するための遮光マスク等の遮光手段を配置しない場合には、光偏向部8は反射部10だけの構成となるので、反射部10の周囲の光を透過する開口部9は単に透光部と呼ぶこともできる。
<実施例3>
【0034】
次に、
図5に基づいて実施例3の変位計について説明する。
図5は実施例3の変位計の構成図である。本実施例の変位計は、
図5に示すように、実施例1に対して、光偏向部8を、中央(光軸上)に開口部9を設けた例えば4つの平面ミラー15の組み合わせで構成している。ミラーに穴加工する実施例1よりも安価に構成できる。なお、平面ミラー15の数は4に限らず、2枚や3枚でも良いし、5枚以上でも良い。また、平面ミラー15の形状は矩形でなくても良く、任意の形状で良い。
<実施例4>
【0035】
次に、
図6(A)、(B)に基づいて実施例4の変位計について説明する。
図6(A)は実施例4の変位計の構成図であり、
図6(B)は回折格子周辺を拡大した図である。本実施例の変位計は、
図6(A)、(B)に示すように、照明光学系としての集光部材7に回折格子17を含めた点が実施例1~3とは異なる。また、
図6(A)において、15は平面ミラーであり、この実施例ではプラスマイナス1次回折光を受光する位置に、それぞれ1枚ずつ配置する。9は開口部である。
【0036】
本実施例では光源6はレーザーダイオードなどのコヒーレント光源を用いる。光源6から出射した光束はコリメートレンズ等の集光部材7によってコリメートされ、
図6(B)に示すように回折格子17で回折されプラスマイナス1次回折光を形成する。
ここで、使用するコヒーレント光源の波長をλ、回折格子17のピッチをpとすると、プラスマイナス1次回折光の回折角度θは、
θ=arcsin(λ/p)として求めることができる。
回折格子17を用い、位相格子としてプラスマイナス1次回折光の強度を最大化するように設計することによって、効率よく光束を分岐することができる。
<実施例5>
【0037】
次に、
図7に基づいて実施例5の変位計について説明する。
図7は実施例
5の変位計の構成図である。本実施例の変位計は、
図7に示すように、受光光学系のセンサアレイ5の受光面の前に第2レンズ部16を設けた点が実施例1~4とは異なる。実施例1の構成では、センサアレイ5での像の大きさは、開口絞り4とセンサアレイ5の距離で決まっていた。一般にセンサアレイ5はプリント基板などに実装される。プリント基板、または、その保持部材を光軸方向に沿って位置決めするためには、専用の調整機構などが必要となり煩雑な構成となってしまう。
【0038】
一方、本実施例のように、第2レンズ部16を用いた構成であれば、センサアレイ5の位置は変更せずに像の大きさを調整することが可能である。第2レンズ部16は、1つまたは複数のレンズから構成され、図示しない鏡筒部品に保持される。鏡筒部品に保持されるレンズは、光軸方向に位置調整をした後、固定される。センサアレイ5を実装したプリント基板などにおいてセンサアレイ5を光軸方向に位置調整する場合に比べ、構成がシンプルとなり、調整も容易となる効果がある。
【0039】
さらに、第2レンズ部16を用いてセンサアレイ側でテレセントリック光学系を構成することも可能である。その場合、第2レンズ部16は、その焦点位置が開口絞り4の位置と一致するように設置される。センサアレイ5と第2レンズ部16の位置は、実施例1の場合と同様、ワーキングディスタンスの設計値から最適な結像位置として決定してもよい。あるいは、使用するセンサアレイ5の仕様などから所望の像の大きさから決定し、ワーキングディスタンスを決定してもよい。このようにセンサアレイ5の相対位置変化に対してもロバストな測定が可能となる。
【0040】
なお、実施例1で採用した物体側テレセントリック光学系では、環境温度変化、振動、衝撃などの影響でセンサアレイ5の相対的な位置が変化した場合、倍率変動による誤差が生じる。しかし、実施例5を適用し、物体側とセンサ側との両側テレセントリック光学系を構成することで、物体側の相対位置変化だけでなく、センサアレイ5の相対位置変化に対してもロバストな測定が可能となる。なお、他の実施例で述べた構成に、本実施例のような第2レンズ部16を適用しても良い。
<実施例6>
【0041】
次に、
図8に基づいて実施例6の変位計について説明する。
図8は実施例6の変位計の構成図である。本実施例の変位計は、
図8に示すように、開口絞り4を設ける代わりに、光偏向部8の開口部9を開口絞り4と兼用させている。これによって、部品点数を削減し、コストダウンを達成することが可能となる。
なお、他の実施例で述べた構成に、本実施例の構成を適用してもよい。
<実施例7>
【0042】
ここまで、実施例1~実施例6では、光源としてレーザーダイオードなどを用いる例を説明してきた。しかし、レーザーダイオードなどのコヒーレント光源を採用した場合、以下のような課題がある。
コヒーレント光源を採用した場合、光学的に粗面とみなせる一般的な測定対象物2で散乱された光は、センサアレイ5面上にスペックルと呼ばれるランダムな強度分布を持つ斑点状の干渉パターンを生成する。変位計でコヒーレント光源を用いた場合は、測定対象物2の変位と同期して動くスペックルが検出されることとなる。
【0043】
スペックルは、受光光束波面の曲率に依存して形成される。測定対象物2が平面の場合は、照明光束の波面が略平面波であれば、反射光束もワーキングディスタンスに依らず略平面波となり、ワーキングディスタンスに依存しないスペックルが形成される。一方、曲率を持つ測定対象物2は、反射光束波面に曲率を与えるため、ワーキングディスタンスにより形成されるスペックルが変化する。したがって、曲率を持つ測定対象物2を測定する場合、ワーキングディスタンスが変化するとスペックルの変位倍率が変化し、一定の光学倍率を前提としていると大きな誤差が生じることとなる。
【0044】
そこで、測定対象物2の曲率とワーキングディスタンスが既知であればスペックルの変位倍率は算出可能であるが、ワーキングディスタンスの変化を許容し、各種曲率でも設定の変更なく使用できるロバストな測定が可能であることが望ましい。従って、実施例7では光源6としてLEDなどのインコヒーレント光源を用いることで、受光光学系で取得する画像にスペックルの影響が出ないようにし、測定対象物の曲率の影響を排除している。
【0045】
即ち、実施例7では、実施例1~3、5、6の変位計の光源6としてLEDなどのインコヒーレント光源を用いる点に特徴を有する。これによって、曲率を持った測定対象物2の場合でも、測定対象物2の曲率、ワーキングディスタンス変化に対してロバストな測定が可能となる。
<実施例8>
【0046】
次に、前述の変位計を利用した物品(金属板、プレス加工物、紙類、繊維類など)の製造方法を説明する。物品は、搬送装置で搬送物体(対象物)を搬送する工程と、前述の変位計を使用して搬送物体の搬送量を変位として計測する工程と、所望の搬送量を検知したタイミングで搬送物体に対して切断、プレスなどの加工を行う工程で製造される。あるいは、搬送量の所定の値からの乖離を検出して加工を中止することも可能である。
【0047】
本物品製造方法によれば、従来よりも多くの対象物や環境における物品の製造に適用することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:変位計
2:測定対象物
3:第1レンズ部
4:開口絞り
5:センサアレイ
6:光源
7:集光部材
8:光偏向部
9:開口部
10:反射部