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特許7408421処理条件特定方法、基板処理方法、基板製品製造方法、コンピュータープログラム、記憶媒体、処理条件特定装置、及び、基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】処理条件特定方法、基板処理方法、基板製品製造方法、コンピュータープログラム、記憶媒体、処理条件特定装置、及び、基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020013777
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120982
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】稲木 大
(72)【発明者】
【氏名】島野 達矢
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038888(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074091(WO,A1)
【文献】特開2020-004817(JP,A)
【文献】特開2019-062007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の基板である対象基板の径方向に沿って処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を処理するときに使用可能な処理条件を、複数の処理条件のうちから特定する処理条件特定方法であって、
前記対象基板の径方向における複数の位置での厚みの測定値を含む測定厚み情報に基づいて、前記複数の処理条件ごとに、前記対象基板の前記複数の位置での処理後の厚みの予測値を含む予測厚み情報を算出する工程と、
前記複数の処理条件に対してそれぞれ算出された複数の前記予測厚み情報を、所定評価方法に従って評価して、前記複数の予測厚み情報から予測厚み情報を選択する工程と、
前記選択された予測厚み情報に対応する前記処理条件を特定する工程と
を含み、
前記測定厚み情報に含まれる前記測定値は、前記処理液による前記対象基板の処理前に、前記対象基板の径方向に沿って測定された前記対象基板の厚みを示す、処理条件特定方法。
【請求項2】
前記選択された予測厚み情報に含まれる複数の前記予測値のうち、前記対象基板の径方向の端領域における予測値の最大値に基づいて、端領域処理時間を算出する工程をさらに含み、
前記端領域処理時間は、前記対象基板の前記端領域に対する処理時間であって、前記処理液の吐出位置が固定された状態での処理時間を示す、請求項1に記載の処理条件特定方法。
【請求項3】
前記端領域処理時間を算出する前記工程では、前記対象基板の前記端領域における前記予測値の前記最大値と、前記対象基板の目標厚み値と、処理係数とに基づいて、前記端領域処理時間を算出し、
前記処理係数は、予め設定されており、前記処理液による単位時間当たりの基板の処理量を示す、請求項2に記載の処理条件特定方法。
【請求項4】
前記予測厚み情報を算出する前記工程では、前記対象基板の前記測定厚み情報と、前記対象基板の目標厚み値と、基板の径方向に沿って予め実測して得られた前記基板の径方向における複数の位置での処理量を含む実測処理量情報とに基づいて、前記予測厚み情報を算出し、
前記実測処理量情報に含まれる前記処理量は、前記複数の処理条件のうち前記実測処理量情報に関連付けられた処理条件に従って前記基板を処理したときの処理量を示す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理条件特定方法。
【請求項5】
前記予測厚み情報を算出する前記工程は、
前記対象基板の前記測定厚み情報と、前記対象基板の前記目標厚み値と、前記実測処理量情報とに基づいて、前記対象基板の前記複数の位置の各々での厚みが前記目標厚み値になるときの処理時間を、前記対象基板の前記複数の位置ごとに算出する工程と、
前記対象基板の前記複数の位置に対してそれぞれ算出された複数の前記処理時間から、最も短い処理時間を選択する工程と、
前記対象基板の前記測定厚み情報と、前記実測処理量情報と、前記最も短い処理時間とに基づいて、前記予測厚み情報を算出する工程と
を含む、請求項4に記載の処理条件特定方法。
【請求項6】
前記予測厚み情報を選択する前記工程では、前記対象基板の表面のうち径方向の端領域よりも内側の内領域における2以上の位置での処理後の前記厚みの予測値を使用して、前記複数の予測厚み情報を評価する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の処理条件特定方法。
【請求項7】
前記所定評価方法は、前記予測厚み情報によって示される予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記予測厚みパターンは、前記対象基板の径方向における前記厚みの予測値の分布を示し、
前記所定評価方法は、第1評価方法と第2評価方法と第3評価方法とのうちの少なくとも1つの評価方法を含み、
前記第1評価方法は、前記予測厚みパターンの凹凸の程度を示す指標によって、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第2評価方法は、前記予測厚みパターンを構成する複数の前記予測値のうち前記対象基板の目標厚み値に近い予測値の数に基づく指標によって、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第3評価方法は、前記予測厚みパターンの傾斜がどの程度ゼロに近いかを示す指標によって、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の処理条件特定方法。
【請求項8】
前記第1評価方法は、第1方法と第2方法と第3方法と第4方法とのうちの少なくとも1つの方法を含み、
前記第1評価方法の前記第1方法は、第1評価直線上の値から前記予測厚みパターンを構成する前記予測値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第1評価直線は、前記予測厚みパターンよりも大きい側から前記予測厚みパターンに接する直線であり、
前記第1評価方法の前記第2方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記予測値から第2評価直線上の値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第2評価直線は、前記予測厚みパターンよりも小さい側から前記予測厚みパターンに接する直線であり、
前記第1評価方法の前記第3方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記予測値から第3評価直線上の値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第3評価直線は、最小二乗法によって得られる前記予測厚みパターンの近似直線であり、
前記第1評価方法の前記第4方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記予測値から第4評価直線上の値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第4評価直線は、前記対象基板の目標厚み値を示す直線である、請求項7に記載の処理条件特定方法。
【請求項9】
前記第2評価方法は、第1方法と第2方法とのうちの少なくとも1つの方法を含み、
前記第2評価方法の前記第1方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記複数の予測値のうち、第5評価直線を含む許容範囲内に存在する予測値の数を、前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第5評価直線は、前記対象基板の前記目標厚み値を示す直線であり、
前記第2評価方法の前記第2方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記複数の予測値の各々から第6評価直線上の値を差し引いた値である各差分値を、前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第6評価直線は、前記対象基板の前記目標厚み値を示す直線である、請求項7又は請求項8に記載の処理条件特定方法。
【請求項10】
前記第3評価方法は、第1方法と第2方法とのうちの少なくとも1つの方法を含み、
前記第3評価方法の前記第1方法は、第8評価直線に対する第7評価直線の傾斜を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であり、
前記第7評価直線は、最小二乗法によって得られる前記予測厚みパターンの近似直線であり、
前記第8評価直線は、一定値を示す直線であり、
前記第3評価方法の前記第2方法は、前記対象基板の径方向の前記各位置での前記予測厚みパターンの傾斜を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法である、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の処理条件特定方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の処理条件特定方法によって特定された前記処理条件に基づいて、前記対象基板の径方向に沿って前記処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を前記処理液によって処理する工程を含む、基板処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理方法によって前記対象基板を処理して、処理後の前記対象基板である基板製品を製造する、基板製品製造方法。
【請求項13】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の処理条件特定方法をコンピューターに実行させるためのコンピュータープログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータープログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項15】
処理対象の基板である対象基板の径方向に沿って処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を処理するときに使用可能な処理条件を、複数の処理条件のうちから特定する処理条件特定装置であって、
前記対象基板の径方向における複数の位置での厚みの測定値を含む測定厚み情報に基づいて、前記複数の処理条件ごとに、前記対象基板の前記複数の位置での処理後の厚みの予測値を含む予測厚み情報を算出する厚み予測部と、
前記複数の処理条件に対してそれぞれ算出された複数の前記予測厚み情報を、所定評価方法に従って評価して、前記複数の予測厚み情報から予測厚み情報を選択する評価部と、
前記選択された予測厚み情報に対応する前記処理条件を特定する特定部と
を備え、
前記測定厚み情報に含まれる前記測定値は、前記処理液による前記対象基板の処理前に、前記対象基板の径方向に沿って測定された前記対象基板の厚みを示す、処理条件特定装置。
【請求項16】
請求項15に記載の処理条件特定装置と、
前記処理条件特定装置によって特定された前記処理条件に基づいて、前記対象基板の径方向に沿って前記処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を前記処理液によって処理する処理装置と
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理条件特定方法、基板処理方法、基板製品製造方法、コンピュータープログラム、記憶媒体、処理条件特定装置、及び、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている基板処理装置は、ノズル体を有するアーム体と、制御装置とを備える。制御装置は、ノズル体が基板の周辺部から中心部に向かうときにアーム体の移動速度を次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには移動速度を次第に低下させるようアーム体の移動速度を制御する。従って、基板の周辺部に中心部よりも処理液を多く供給することができる。その結果、基板の中心部と周辺部とで処理液をほぼ同じ時間で滞留させることができる。よって、処理液による基板の処理を均一化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-067819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている基板処理装置では、処理液による処理後の基板の表面が平坦にならない可能性がある。なぜなら、処理液による処理前の基板の表面形状が平坦でない場合があり得るためである。例えば、処理液による処理前の基板が機械研磨されている場合には、基板の表面形状が平坦でない場合があり得る。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理後の基板の表面が平坦に近くなる、処理液による処理を実現することの可能な処理条件特定方法、基板処理方法、基板製品製造方法、コンピュータープログラム、記憶媒体、処理条件特定装置、及び、基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、処理条件特定方法では、処理対象の基板である対象基板の径方向に沿って処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を処理するときに使用可能な処理条件を、複数の処理条件のうちから特定する。処理条件特定方法は、前記対象基板の径方向における複数の位置での厚みの測定値を含む測定厚み情報に基づいて、前記複数の処理条件ごとに、前記対象基板の前記複数の位置での処理後の厚みの予測値を含む予測厚み情報を算出する工程と、前記複数の処理条件に対してそれぞれ算出された複数の前記予測厚み情報を、所定評価方法に従って評価して、前記複数の予測厚み情報から予測厚み情報を選択する工程と、前記選択された予測厚み情報に対応する前記処理条件を特定する工程とを含む。前記測定厚み情報に含まれる前記測定値は、前記処理液による前記対象基板の処理前に、前記対象基板の径方向に沿って測定された前記対象基板の厚みを示す。
【0007】
本発明の処理条件特定方法は、前記選択された予測厚み情報に含まれる複数の前記予測値のうち、前記対象基板の径方向の端領域における予測値の最大値に基づいて、端領域処理時間を算出する工程をさらに含むことが好ましい。前記端領域処理時間は、前記対象基板の前記端領域に対する処理時間であって、前記処理液の吐出位置が固定された状態での処理時間を示すことが好ましい。
【0008】
本発明の処理条件特定方法において、前記端領域処理時間を算出する前記工程では、前記対象基板の前記端領域における前記予測値の前記最大値と、前記対象基板の目標厚み値と、処理係数とに基づいて、前記端領域処理時間を算出することが好ましい。前記処理係数は、予め設定されており、前記処理液による単位時間当たりの基板の処理量を示すことが好ましい。
【0009】
本発明の処理条件特定方法において、前記予測厚み情報を算出する前記工程では、前記対象基板の前記測定厚み情報と、前記対象基板の目標厚み値と、基板の径方向に沿って予め実測して得られた前記基板の径方向における複数の位置での処理量を含む実測処理量情報とに基づいて、前記予測厚み情報を算出することが好ましい。前記実測処理量情報に含まれる前記処理量は、前記複数の処理条件のうち前記実測処理量情報に関連付けられた処理条件に従って前記基板を処理したときの処理量を示すことが好ましい。
【0010】
本発明の処理条件特定方法において、前記予測厚み情報を算出する前記工程は、前記対象基板の前記測定厚み情報と、前記対象基板の前記目標厚み値と、前記実測処理量情報とに基づいて、前記対象基板の前記複数の位置の各々での厚みが前記目標厚み値になるときの処理時間を、前記対象基板の前記複数の位置ごとに算出する工程と、前記対象基板の前記複数の位置に対してそれぞれ算出された複数の前記処理時間から、最も短い処理時間を選択する工程と、前記対象基板の前記測定厚み情報と、前記実測処理量情報と、前記最も短い処理時間とに基づいて、前記予測厚み情報を算出する工程とを含むことが好ましい。
【0011】
本発明の処理条件特定方法において、前記予測厚み情報を選択する前記工程では、前記対象基板の表面のうち径方向の端領域よりも内側の内領域における2以上の位置での処理後の前記厚みの予測値を使用して、前記複数の予測厚み情報を評価することが好ましい。
【0012】
本発明の処理条件特定方法において、前記所定評価方法は、前記予測厚み情報によって示される予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記予測厚みパターンは、前記対象基板の径方向における前記厚みの予測値の分布を示すことが好ましい。前記所定評価方法は、第1評価方法と第2評価方法と第3評価方法とのうちの少なくとも1つの評価方法を含むことが好ましい。前記第1評価方法は、前記予測厚みパターンの凹凸の程度を示す指標によって、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第2評価方法は、前記予測厚みパターンを構成する複数の前記予測値のうち前記対象基板の目標厚み値に近い予測値の数に基づく指標によって、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第3評価方法は、前記予測厚みパターンの傾斜がどの程度ゼロに近いかを示す指標によって、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。
【0013】
本発明の処理条件特定方法において、前記第1評価方法は、第1方法と第2方法と第3方法と第4方法とのうちの少なくとも1つの方法を含むことが好ましい。前記第1評価方法の前記第1方法は、第1評価直線上の値から前記予測厚みパターンを構成する前記予測値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第1評価直線は、前記予測厚みパターンよりも大きい側から前記予測厚みパターンに接する直線であることが好ましい。前記第1評価方法の前記第2方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記予測値から第2評価直線上の値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第2評価直線は、前記予測厚みパターンよりも小さい側から前記予測厚みパターンに接する直線であることが好ましい。前記第1評価方法の前記第3方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記予測値から第3評価直線上の値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第3評価直線は、最小二乗法によって得られる前記予測厚みパターンの近似直線であることが好ましい。前記第1評価方法の前記第4方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記予測値から第4評価直線上の値を差し引いた値である差分値を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第4評価直線は、前記対象基板の目標厚み値を示す直線であることが好ましい。
【0014】
本発明の処理条件特定方法において、前記第2評価方法は、第1方法と第2方法とのうちの少なくとも1つの方法を含むことが好ましい。前記第2評価方法の前記第1方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記複数の予測値のうち、第5評価直線を含む許容範囲内に存在する予測値の数を、前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第5評価直線は、前記対象基板の前記目標厚み値を示す直線であることが好ましい。前記第2評価方法の前記第2方法は、前記予測厚みパターンを構成する前記複数の予測値の各々から第6評価直線上の値を差し引いた値である各差分値を、前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第6評価直線は、前記対象基板の前記目標厚み値を示す直線であることが好ましい。
【0015】
本発明の処理条件特定方法において、前記第3評価方法は、第1方法と第2方法とのうちの少なくとも1つの方法を含むことが好ましい。前記第3評価方法の前記第1方法は、第8評価直線に対する第7評価直線の傾斜を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。前記第7評価直線は、最小二乗法によって得られる前記予測厚みパターンの近似直線であることが好ましい。前記第8評価直線は、一定値を示す直線であることが好ましい。前記第3評価方法の前記第2方法は、前記対象基板の径方向の前記各位置での前記予測厚みパターンの傾斜を前記指標として、前記予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法であることが好ましい。
【0016】
本発明の他の局面によれば、基板処理方法は、上記の処理条件特定方法によって特定された前記処理条件に基づいて、前記対象基板の径方向に沿って前記処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を前記処理液によって処理する工程を含む。
【0017】
本発明の更に他の局面によれば、基板製品製造方法は、上記の基板処理方法によって前記対象基板を処理して、処理後の前記対象基板である基板製品を製造する。
【0018】
本発明の更に他の局面によれば、コンピュータープログラムは、上記の処理条件特定方法をコンピューターに実行させる。
【0019】
本発明の更に他の局面によれば、記憶媒体は、上記のコンピュータープログラムを記憶する。
【0020】
本発明の更に他の局面によれば、処理条件特定装置は、処理対象の基板である対象基板の径方向に沿って処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を処理するときに使用可能な処理条件を、複数の処理条件のうちから特定する。処理条件特定装置は、厚み予測部と、評価部と、特定部とを備える。厚み予測部は、前記対象基板の径方向における複数の位置での厚みの測定値を含む測定厚み情報に基づいて、前記複数の処理条件ごとに、前記対象基板の前記複数の位置での処理後の厚みの予測値を含む予測厚み情報を算出する。評価部は、前記複数の処理条件に対してそれぞれ算出された複数の前記予測厚み情報を、所定評価方法に従って評価して、前記複数の予測厚み情報から予測厚み情報を選択する。特定部は、前記選択された予測厚み情報に対応する前記処理条件を特定する。前記測定厚み情報に含まれる前記測定値は、前記処理液による前記対象基板の処理前に、前記対象基板の径方向に沿って測定された前記対象基板の厚みを示す。
【0021】
本発明の更に他の局面によれば、基板処理装置は、上記の処理条件特定装置と、処理装置とを備える。処理装置は、前記処理条件特定装置によって特定された前記処理条件に基づいて、前記対象基板の径方向に沿って前記処理液の吐出位置を移動しながら前記対象基板を前記処理液によって処理する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、処理後の基板の表面が平坦に近くなる、処理液による処理を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置を示す図である。
図2】本実施形態に係る基板処理装置のノズルによる基板のスキャン処理を示す平面図である。
図3】本実施形態に係る基板処理装置の光学プローブによる基板のスキャン処理を示す平面図である。
図4】本実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る厚み測定部による基板の厚みの測定値を示すグラフである。
図6】本実施形態に係る制御部によって算出された基板の厚みの予測値を示グラフである。
図7】本実施形態に係る制御部によって選択された基板の厚みの予測値を示すグラフである。
図8】本実施形態に係る記憶部に記憶された実測処理量テーブルを示す図である。
図9】(a)は、本実施形態に係る制御部によって算出された基板の処理時間を示すグラフであり、(b)は、本実施形態に係る制御部によって算出された基板の厚みの予測値を示すグラフであり、(c)は、本実施形態に係る厚みの予測値と目標厚み値との差分値を示すグラフである。
図10】(a)は、本実施形態に係る第1評価方法の第1方法を示す図であり、(b)は、第1評価方法の第2方法を示す図であり、(c)は、第1評価方法の第3方法を示す図であり、(d)は、第1評価方法の第4方法を示す図である。
図11】(a)は、本実施形態に係る第2評価方法の第1方法を示す図であり、(b)は、第2評価方法の第2方法を示す図である。
図12】(a)は、本実施形態に係る第3評価方法の第1方法を示す図であり、(b)は、第3評価方法の第2方法を示す図である。
図13】本実施形態に係る基板の端領域における厚みの予測値を示すグラフである。
図14】本実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
図15図14の工程S3を示すフローチャートである。
図16図15の工程S31を示すフローチャートである。
図17図14の工程S4を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解を容易にするために、X軸、Y軸、及び、Z軸を適宜図示している。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、X軸及びY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。なお、「平面視」は、鉛直上方から対象を見ることを示す。
【0025】
図1図17を参照して、本発明の実施形態に係る基板処理装置100を説明する。まず、図1を参照して基板処理装置100を説明する。図1は、基板処理装置100を示す図である。図1に示す基板処理装置100は、基板Wを処理液によって処理する。つまり、基板Wは、処理液による処理対象の基板である。基板Wは「対象基板」の一例に相当する。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉型である。基板Wは略円板状である。
【0026】
基板Wは、本実施形態では、ベア基板である。ベア基板とは、成膜されていない基板のことである。つまり、ベア基板とは、成膜される前の基板のことである。例えば、ベア基板は、機械研磨された後の基板であって、成膜される前の基板である。
【0027】
基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、電界放出ディスプレイ(Field Emission Display:FED)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、又は、太陽電池用基板である。以下の実施形態の説明では、基板Wは、シリコンからなる半導体ウエハである。
【0028】
図1に示すように、基板処理装置100は、処理装置1と、制御装置19と、バルブV1と、供給配管K1と、バルブV2と、供給配管K2とを備える。制御装置19は、処理装置1、バルブV1、及び、バルブV2を制御する。
【0029】
処理装置1は、基板Wに処理液を吐出して基板Wを処理する。具体的には、処理装置1は、基板Wの径方向に沿って処理液の吐出位置を移動しながら基板Wを処理液によって処理する。処理液は薬液である。例えば、処理液がエッチング液である場合、処理装置1は、基板Wに対してエッチング処理を実行する。
【0030】
エッチング液は、例えば、フッ硝酸(フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、または、燐酸(H3PO4)を含む。なお、基板Wをエッチングできる限りにおいては、エッチング液の種類は、特に限定されず、例えば、酸性であってもよいし、アルカリ性であってもよい。
【0031】
具体的には、処理装置1は、チャンバー2と、スピンチャック3と、スピンモーター5と、ノズルNzmと、ノズル移動部9と、ノズル11と、複数のガード13(本実施形態では2つのガード13)と、厚み測定部15と、プローブ移動部17とを含む。「ノズルNzm」における「m」は、1以上の整数を示す。図1の例では、m=1である。つまり、図1の例では、処理装置1は、処理液を吐出するノズルNZ1を備えている。ただし、処理装置1は、各々が処理液を吐出する複数のノズルNZmを備えていてもよい。
【0032】
チャンバー2は略箱形状を有する。チャンバー2は、基板W、スピンチャック3、スピンモーター5、ノズルNZ1、ノズル移動部9、ノズル11、複数のガード13、厚み測定部15、プローブ移動部17、供給配管K1の一部、および、供給配管K2の一部を収容する。
【0033】
スピンチャック3は、基板Wを保持して回転する。具体的には、スピンチャック3は、チャンバー2内で基板Wを水平に保持しながら、回転軸線AXの回りに基板Wを回転させる。具体的には、スピンチャック3は、スピンモーター5によって駆動されて回転する。
【0034】
スピンチャック3は、複数のチャック部材32と、スピンベース33とを含む。複数のチャック部材32は、基板Wの周縁に沿ってスピンベース33に設けられる。複数のチャック部材32は基板Wを水平な姿勢で保持する。スピンベース33は、略円板状であり、水平な姿勢で複数のチャック部材32を支持する。スピンモーター5は、スピンベース33を回転軸線AXの回りに回転させる。従って、スピンベース33は回転軸線AXの回りに回転する。その結果、スピンベース33に設けられた複数のチャック部材32に保持された基板Wが回転軸線AXの回りに回転する。具体的には、スピンモーター5は、モーター本体51と、シャフト53とを含む。シャフト53はスピンベース33に結合される。そして、モーター本体51は、シャフト53を回転させることで、スピンベース33を回転させる。
【0035】
ノズルNZ1は、基板Wの回転中に基板Wに向けて処理液を吐出する。処理液は薬液である。例えば、処理液はエッチング液である。
【0036】
供給配管K1はノズルNZ1に処理液を供給する。バルブV1は、ノズルNZ1に対する処理液の供給開始と供給停止とを切り替える。
【0037】
ノズル移動部9は、略鉛直方向および略水平方向にノズルNZ1を移動する。具体的には、ノズル移動部9は、アーム91と、回動軸93と、ノズル移動機構95とを含む。アーム91は略水平方向に沿って延びる。アーム91の先端部にはノズルNZ1が配置される。アーム91は回動軸93に結合される。回動軸93は、略鉛直方向に沿って延びる。ノズル移動機構95は、回動軸93を略鉛直方向に沿った回動軸線のまわりに回動させて、アーム91を略水平面に沿って回動させる。その結果、ノズルNZ1が略水平面に沿って移動する。また、ノズル移動機構95は、回動軸93を略鉛直方向に沿って昇降させて、アーム91を昇降させる。その結果、ノズルNZ1が略鉛直方向に沿って移動する。ノズル移動機構95は、例えば、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与える電動モーターとを含む。
【0038】
ノズル11は、基板Wの回転中に基板Wに向けてリンス液を吐出する。リンス液は、例えば、脱イオン水、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、又は、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水である。
【0039】
供給配管K2はノズル11にリンス液を供給する。バルブV2は、ノズル11に対するリンス液の供給開始と供給停止とを切り替える。
【0040】
複数のガード13の各々は略筒形状を有する。複数のガード13の各々は、基板Wから排出された処理液又はリンス液を受け止める。
【0041】
厚み測定部15は、基板Wの厚みを測定して、基板Wの厚みを示す測定厚み情報(以下、「測定厚み情報MG」と記載する。)を制御装置19に出力する。本実施形態では、厚み測定部15は、基板Wの厚みを非接触方式で測定して、基板Wの厚みを示す測定厚み情報MGを制御装置19に出力する。厚み測定部15は、例えば、分光干渉法によって基板Wの厚みを測定する。具体的には、厚み測定部15は、光学プローブ151と、接続線153と、厚み測定器155とを含む。光学プローブ151はレンズを含む。接続線153は、光学プローブ151と厚み測定器155とを接続する。接続線153は光ファイバーを含む。厚み測定器155は、光源と受光素子とを含む。厚み測定器155の光源が出射した光は、接続線153および光学プローブ151を介して、基板Wに出射される。基板Wによって反射された光は、光学プローブ151および接続線153を介して、厚み測定器155の受光素子に受光される。厚み測定器155は、受光された光を解析して、解析結果に基づいて、基板Wの厚みを算出する。厚み測定器155は、基板Wの厚みを示す測定厚み情報MGを制御装置19に出力する。
【0042】
プローブ移動部17は、略鉛直方向および略水平方向に光学プローブ151を移動する。具体的には、プローブ移動部17は、アーム171と、回動軸173と、プローブ移動機構175とを含む。アーム171は略水平方向に沿って延びる。アーム171の先端部には光学プローブ151が配置される。アーム171は回動軸173に結合される。回動軸173は、略鉛直方向に沿って延びる。プローブ移動機構175は、回動軸173を略鉛直方向に沿った回動軸線のまわりに回動させて、アーム171を略水平面に沿って回動させる。その結果、光学プローブ151が略水平面に沿って移動する。また、プローブ移動機構175は、回動軸173を略鉛直方向に沿って昇降させて、アーム171を昇降させる。その結果、光学プローブ151が略鉛直方向に沿って移動する。プローブ移動機構175は、例えば、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与える電動モーターとを含む。
【0043】
次に、図2を参照して、ノズルNZ1による基板Wのスキャン処理を説明する。図2は、ノズルNZ1による基板Wのスキャン処理を示す平面図である。図2に示すように、ノズルNZ1による基板Wのスキャン処理とは、基板Wの径方向RDに沿って処理液の吐出位置を移動しながら基板Wを処理液によって処理することである。具体的には、ノズルNZ1によるスキャン処理とは、平面視において、基板Wの表面SFに対する処理液の着液位置が円弧状の軌跡TJ1を形成するように、ノズルNZ1を移動しながら、処理液を基板Wに吐出する処理のことである。スキャン処理中、ノズルNZ1は、回転軸線AX方向において、基板Wに対して間隔をあけている。なお、基板Wの半径Rは、アーム91の長さと比較して小さいため、実質的には、軌跡TJ1を略直線とみなすことができる。
【0044】
軌跡TJ1は、基板WのエッジEGと基板Wの中心CTとを通る。中心CTは、基板Wのうち回転軸線AXが通る部分を示す。エッジEGは、基板Wの周縁部を示す。ノズルNZ1による基板Wのスキャン処理は、基板Wの回転中に実行される。
【0045】
具体的には、ノズルNZ1は、基板Wの中心CTの直上位置TR0と折り返し位置TR1との間において、基板Wに対して処理液を基板Wに吐出しながら、時計回りの回動方向RT1への回動と、反時計回りの回動方向RT2への回動とを行う。本実施形態では、折り返し位置TR1は、基板Wの径方向RDの端領域EAの直上位置である。また、折り返し位置TR1は、回動方向RT1でのノズルNZ1の折り返し位置を示す。基板Wの中心CTの直上位置TR0は、回動方向RT2でのノズルNZ1の折り返し位置を示す。
【0046】
なお、基板Wの表面SFは、端領域EAと、端領域EAよりも基板Wの径方向RD内側の内領域IAとを含んでいる。内領域IAは略円形状の領域である。端領域EAは、内領域IAを囲む略円環状の領域である。端領域EAの径方向RDの幅は、例えば、基板Wの半径Rの1/15以上1/5以下の長さである。
【0047】
更に具体的には、ノズルNZ1は、基板Wの中心CTの直上位置TR0から回動方向RT1へ回動して、折り返し位置TR1で折り返して、回動方向RT2に回動する。さらに、ノズルNZ1は、基板Wの中心CTの直上位置TR0で折り返して、回動方向RT1に回動する。ノズルNZ1は、基板Wの中心CTの直上位置TR0と折り返し位置TR1との間で移動を繰り返しながら、基板Wの表面SFに処理液を吐出する。
【0048】
ノズルNZ1の移動速度は、例えば、ノズルNZ1の位置が折り返し位置TR1に近いほど低くなる。ノズルNZ1の移動速度は、基板Wの径方向RDにおける移動速度を示す。なお、ノズルNZ1の移動速度の変化は、線形には限定されず、非線形であってもよい。また、ノズルNZ1の移動速度は、ステップ状に変化してもよい。なお、ノズルNZ1の移動速度は一定であってもよい。
【0049】
なお、ノズルNZ1は、折り返し位置TR1と折り返し位置TR2との間で移動を繰り返してもよい。具体的には、ノズルNZ1は、回動方向RT1へ回動して、折り返し位置TR1で折り返して、回動方向RT2に回動する。そして、ノズルNZ1は、折り返し位置TR2で折り返して、回動方向RT1に回動する。折り返し位置TR1と折り返し位置TR2とは、平面視において、軌跡TJ1上で基板Wの中心CTを挟んでいる。折り返し位置TR2は、回動方向RT2でのノズルNZ1の折り返し位置を示す。また、折り返し位置TR2は、折り返し位置TR1と異なる位置であって、基板Wの径方向RDの端領域EAの直上位置である。
【0050】
次に、図3を参照して、光学プローブ151による基板Wのスキャン処理を説明する。図3は、光学プローブ151による基板Wのスキャン処理を示す平面図である。図3に示すように、光学プローブ151によるスキャン処理とは、平面視において、基板Wに対する厚みの測定位置が円弧状の軌跡TJ2を形成するように、光学プローブ151を移動しながら、基板Wの厚みを測定する処理のことである。軌跡TJ2は、基板WのエッジEGと基板Wの中心CTとを通る。光学プローブ151による基板Wのスキャン処理は、基板Wの回転中に実行される。
【0051】
具体的には、光学プローブ151は、平面視において、基板Wの中心CTとエッジEGとの間を移動しながら、測定位置を移動する。換言すれば、厚み測定部15は、基板Wの複数の測定位置の各々において、基板Wの厚みを測定する。その結果、基板Wの中心CTからエッジEGまでにおいて、基板Wの厚みの分布が測定される。つまり、基板Wの径方向RDにおける厚みの分布が測定される。
【0052】
次に、図4図7を参照して、図1に示す制御装置19の詳細を説明する。図4は、制御装置19を示すブロック図である。図4に示す制御装置19は、処理対象の基板Wの径方向RDに沿って処理液の吐出位置を移動しながら基板Wを処理するときに使用可能なレシピ情報RCnを、互いに異なる複数のレシピ情報RCnのうちから特定する。「RCn」の「n」は1以上の整数を示す。制御装置19は、「処理条件特定装置」の一例に相当する。
【0053】
レシピ情報RCnは、基板Wの処理内容及び処理手順を規定する情報である。つまり、レシピ情報RCnは、基板Wに対する処理条件を規定する情報である。一例として、基板Wに対する処理条件は、少なくとも、処理液による基板Wの処理の実行時間と、基板Wに処理液を吐出するノズルNZ1を示す情報と、基板Wに処理液を吐出するノズルNZ1の移動速度を示す情報とを含む。ノズルNZ1の移動速度は、例えば、基板Wの径方向RDにおける各位置の移動速度、又は、基板Wの径方向RDにおける各区間の移動速度である。レシピ情報RCnは、処理液による基板Wに対する「処理条件」の一例に相当する。
【0054】
具体的には、図4に示すように、制御装置19は、制御部21と、記憶部23とを備える。制御部21は記憶部23を制御する。また、制御部21は、基板処理装置100のその他の各構成を制御する。
【0055】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。記憶部23は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。制御部21のプロセッサーは、記憶部23の記憶装置が記憶しているコンピュータープログラムを実行して、基板処理装置100の各構成を制御する。
【0056】
例えば、記憶部23は、半導体メモリー等の主記憶装置と、半導体メモリー及びハードディスクドライブ等の補助記憶装置とを含む。記憶部23は、光ディスク等のリムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶部23は、例えば、非一時的コンピューター読取可能記憶媒体である。記憶部23は、「記憶媒体」の一例に相当する。
【0057】
具体的には、記憶部23は、実測処理量テーブル231と、複数のレシピ情報RCnと、基板Wの目標厚み値TGと、コンピュータープログラム232とを予め記憶する。基板Wの目標厚み値TGは、処理液による処理後の基板Wの厚みの目標値を示す。目標厚み値TGは、入力装置を介したユーザーからの入力によって変更されてもよい。実測処理量テーブル231については後述する。
【0058】
また、記憶部23は、厚み測定部15が出力した基板Wの測定厚み情報MGを記憶する。測定厚み情報MGは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置(複数の測定位置)での厚みの測定値を含む。つまり、測定厚み情報MGは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置(複数の測定位置)でそれぞれ測定された複数の厚みの測定値を含む。本実施形態では、基板Wの径方向RDにおける複数の位置(複数の測定位置)は、基板Wの径方向RDにおいて等間隔である。
【0059】
図5は、厚み測定部15による基板Wの厚みの測定値を示すグラフである。横軸は、基板Wの中心CTからの、基板Wの径方向RDに沿った基板W上の位置(mm)を示す。横軸において、「0」mmの位置は、基板Wの中心CTを示し、「R」mmの位置は、基板Wの径方向RDの最外位置(エッジEG近傍)を示す。「R」は基板Wの半径Rに相当する。縦軸は、基板Wの厚みの測定値を示す。例えば、縦軸は、数μm~数十μmのオーダーである。
【0060】
図5に例示する基板Wでは、基板Wの中心CT近傍から径方向RD外側に向かって厚みが徐々に小さくなり、基板Wの端領域EA(Rb[mm]~R[mm])において厚みが急に大きくなっている。基板Wの径方向RDの最外位置(エッジEG近傍)において、基板Wの厚みが最も大きい。
【0061】
図4に戻って、制御部21は、厚み予測部211と、評価部212と、特定部213とを備える。具体的には、制御部21のプロセッサーは、記憶部23の記憶装置が記憶しているコンピュータープログラム232を実行して、厚み予測部211、評価部212、及び、特定部213として機能する。制御部21は端領域処理部214をさらに備えることが好ましい。この場合、制御部21のプロセッサーは、記憶部23の記憶装置が記憶しているコンピュータープログラム232を実行して、端領域処理部214として機能する。端領域処理部214については後述する。
【0062】
厚み予測部211は、記憶部23から測定厚み情報MGを取得する。厚み予測部211は、測定厚み情報MGに基づいて、複数のレシピ情報RCnごとに、予測厚み情報PTnを算出する。つまり、厚み予測部211は、測定厚み情報MGに基づいて、複数のレシピ情報RCnのそれぞれに対応して、複数の予測厚み情報PTnを算出する。「PTn」の「n」は1以上の整数を示す。予測厚み情報PTnは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置での処理後の厚みの予測値を含む。つまり、予測厚み情報PTnは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置でそれぞれ予測された処理後の複数の厚みの予測値を含む。本実施形態では、基板Wの径方向RDにおける複数の位置は、基板Wの径方向RDにおいて等間隔である。記憶部23は、レシピ情報RCnと関連付けて予測厚み情報PTnを記憶する。予測厚み情報PTnの算出方法の詳細は後述する。
【0063】
ここで、予測厚み情報PTnによって示される予測厚みパターン(以下、「予測厚みパターンPNn」と記載する。)を定義する。「PNn」における「n」は1以上の整数を示す。予測厚みパターンPNnは、基板Wの径方向RDにおける処理後の厚みの予測値の分布を示す。予測厚みパターンPNnを構成する処理後の厚みの予測値は、予測厚み情報PTnに含まれる処理後の厚みの予測値である。
【0064】
以下、一例として、複数のレシピ情報RC1~RC3にそれぞれ対応して複数の予測厚み情報PT1~PT3が算出される場合を説明する。なお、レシピ情報RCnの数は、3に限定されず、2であってもよいし、4以上であってもよい。同様に、予測厚み情報PTnの数は、3に限定されず、2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0065】
図6は、予測厚み情報PT1~PT3を示すグラフである。横軸は、基板Wの中心CTからの、基板Wの径方向RDに沿った基板W上の位置(mm)を示す。縦軸は、基板Wの処理後の厚みの予測値を示す。例えば、縦軸は、数μm~数十μmのオーダーである。図6において、予測厚み情報PT1の各予測値は、四角形のプロットで表されており、予測厚みパターンPN1を示している。予測厚み情報PT2の各予測値は三角形のプロットで表されており、予測厚みパターンPN2を示している。予測厚み情報PT3の各予測値は円形のプロットで表されており、予測厚みパターンPN3を示している。なお、図6では、基板Wの内領域IA(0[mm]~Rb[mm])における複数の位置での処理後の厚みの予測値が示されている。
【0066】
図4及び図6に示すように、予測厚み情報PT1は、レシピ情報RC1に対応して算出されている。予測厚み情報PT2は、レシピ情報RC2に対応して算出されている。予測厚み情報PT3は、レシピ情報RC3に対応して算出されている。3つの予測厚み情報PT1~PT3は互いに異なっている。
【0067】
評価部212は、複数のレシピ情報RC1~RC3に対してそれぞれ算出された複数の予測厚み情報PT1~PT3を、所定評価方法に従って評価して、複数の予測厚み情報PT1~PT3から少なくとも1つの予測厚み情報PTnを選択する。本実施形態では、評価部212は、複数の予測厚み情報PT1~PT3を所定評価方法に従って評価して、複数の予測厚み情報PT1~PT3から1つの予測厚み情報PT3を選択する。具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PT1~PT3を所定評価方法に従って評価して、複数の予測厚み情報PT1~PT3から、最も平坦に近い予測厚みパターンPN3を示す予測厚み情報PT3を選択する。所定評価方法の詳細は後述する。
【0068】
図7は、評価部212によって選択された予測厚み情報PT3を示すグラフである。図7の横軸及び縦軸は、それぞれ、図6の横軸及び縦軸と同様である。
【0069】
図4及び図7に示すように、特定部213は、評価部212によって選択された予測厚み情報PT3に対応するレシピ情報RC3を特定する。そして、制御部21は、特定部213によって特定されたレシピ情報RC3に基づいて、処理装置1を制御する。その結果、処理装置1は、特定されたレシピ情報RC3に基づいて、基板Wの径方向RDに沿って処理液の吐出位置を移動しながら基板Wを処理液によって処理する。この場合、例えば、制御部21は、特定部213によって特定されたレシピ情報RC3に従って基板Wを処理するように処理装置1を制御する。その結果、処理装置1は、特定されたレシピ情報RC3に従って基板Wを処理液によって処理する。又は、例えば、制御部21は、特定部213によって特定されたレシピ情報RC3を改変して、改変後のレシピ情報RC3に従って基板Wを処理するように、処理装置1を制御してもよい。その結果、処理装置1は、改変後のレシピ情報RC3に従って基板Wを処理液によって処理する。
【0070】
以上、図4図7を参照して説明したように、本実施形態によれば、評価部212による評価に基づいて選択された予測厚み情報PT3に対応するレシピ情報RC3が特定される。
【0071】
従って、特定部213によって特定されたレシピ情報RC3に基づいて基板Wを処理することで、評価部212によって適正に評価された予測厚み情報PT3に含まれる厚みの予測値に応じた厚みになるように、基板Wを処理できる。その結果、処理後の基板Wの表面SFが平坦に近くなる、処理液による処理を実現することが可能である。
【0072】
換言すれば、特定部213によって特定されたレシピ情報RC3に基づいて基板Wを処理することで、最も平坦に近い予測厚みパターンPN3に応じた厚みになるように、基板Wを処理できる。その結果、処理後の基板Wの表面SFが平坦に近くなる、処理液による処理を実現することが可能である。
【0073】
特に、本実施形態では、図6を参照して説明したように、評価部212は、基板Wの表面SFのうち径方向RDの端領域EAよりも内側の内領域IAにおける2以上の位置での処理後の厚みの予測値を使用して、複数の予測厚み情報PT1~PT3を評価することが好ましい。なぜなら、基板Wの内領域IAにおける処理後の厚みの予測値の方が、基板Wの端領域EAにおける処理後の厚みの予測値よりも、特徴的な分布を示すからである。
【0074】
次に、図4及び図8を参照して厚み予測部211の詳細を説明する。図4に示すように、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、実測処理量テーブル231に含まれる実測処理量情報(以下、「実測処理量情報EMn」と記載する。)とに基づいて、基板Wの予測厚み情報PTnを算出する。「EMn」の「n」は1以上の整数を示す。
【0075】
実測処理量情報EMnは、基板(以下、「基板WA」と記載する。)の径方向RDに沿って予め実測して得られた基板WAの径方向RDにおける複数の位置での処理量を含む。各位置での処理量は、各位置での処理液による処理量を示す。基板WAの仕様は、処理対象の基板Wの仕様と同じである。つまり、基板WAの組成及びサイズは、処理対象の基板Wの組成及びサイズと同じである。
【0076】
図8は、図4に示す記憶部23に記憶された実測処理量テーブル231を示す図である。図8に示すように、実測処理量テーブル231は、複数の実測処理量情報EMn(EM1、EM2、…)を含む。実測処理量テーブル231では、互いに異なる複数の実測処理量情報EMn(EM1、EM2、…)は、それぞれ、互いに異なる複数のレシピ情報RCn(RC1、RC2、…)と関連付けられている。具体的には、複数の実測処理量情報EMn(EM1、EM2、…)は、それぞれ、複数のレシピ情報RCn(RC1、RC2、…)の識別情報と関連付けられている。
【0077】
図8の例では、複数の実測処理量情報EMnの各々は、基板WAの径方向RDにおける複数の位置(具体的にはJ個の位置)での実測の処理量を示す。Jは2以上の整数を示す。実測処理量テーブル231における「位置」は、基板WAの中心CTからの、基板WAの径方向RDに沿った基板WA上の位置(mm)を示す。実測処理量テーブル231における「処理量」は、基板WAの「位置」での実測の処理量(μm)を示す。本実施形態では、基板WAの径方向RDにおける複数の「位置」は、基板WAの径方向RDにおいて等間隔である。
【0078】
実測処理量情報EMnに含まれる基板WAの各位置での処理量は、複数のレシピ情報RCnのうち実測処理量情報EMnに関連付けられたレシピ情報RCnに従って基板WAを処理したときの基板WAの各位置での処理量を示す。例えば、実測処理量情報EM1によって示される基板WAの各位置での処理量a1~aJは、実測処理量情報EM1に関連付けられたレシピ情報RC1に従って基板WAを処理したときの基板WAの各位置での処理量を示す。なお、図8では、例えば、実測処理量情報EM2は処理量b1~bJを含む。
【0079】
なお、実測処理量情報EMnに含まれる基板WAの各位置での処理量は、所定の実行時間だけスキャン処理を実行することによって基板WAを処理した後に実測されている。この場合の「所定の実行時間」は、レシピ情報RC1に含まれる「処理の実行時間」と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
以上、図4及び図8を参照して説明したように、本実施形態によれば、厚み予測部211は、実測処理量情報EMnに基づいて基板Wの予測厚み情報PTnを算出する。その結果、精度の高い予測厚み情報PTnを得ることができる。
【0081】
特に、実測処理量テーブル231は、ノズルNZ1に対応して、複数の実測処理量情報EMnを含んでいる。つまり、実測処理量テーブル231では、複数の実測処理量情報EMnにノズルNZ1が関連付けられている。
【0082】
そして、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、ノズルNZ1に関連付けられた複数の実測処理量情報EMnとに基づいて、複数の実測処理量情報EMnごとに、基板Wの予測厚み情報PTnを算出する。
【0083】
換言すれば、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、ノズルNZ1に関連付けられた複数の実測処理量情報EMnとに基づいて、複数のレシピ情報RCnごとに、基板Wの予測厚み情報PTnを算出する。なぜなら、複数の実測処理量情報EMnにそれぞれ対応して複数のレシピ情報RCnが関連付けられているからである。
【0084】
なお、処理装置1が複数のノズルNZmを備えている場合は、実測処理量テーブル231は、複数のノズルNZmごとに、複数の実測処理量情報EMnを含む。そして、厚み予測部211は、複数のノズルNZmから少なくとも1つのノズルNZmを選択する。例えば、厚み予測部211は、複数のノズルNZmから1つのノズルNZmを選択する。そして、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、選択されたノズルNZmに関連付けられた複数の実測処理量情報EMnとに基づいて、複数の実測処理量情報EMnごとに、基板Wの予測厚み情報PTnを算出する。なお、図8の例では、実測処理量テーブル231は、ノズルNZ2に関連付けられた複数の実測処理量情報EMn(EM11、EM12、…)を含む。例えば、レシピ情報RC11に関連付けられた実測処理量情報EM11は、処理量c1~cJを含み、レシピ情報RC12に関連付けられた実測処理量情報EM12は、処理量d1~dJを含む。
【0085】
次に、図4図8、及び、図9(a)~図9(c)を参照して厚み予測部211を更に詳細に説明する。図4及び図8に示すように、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、ノズルNZ1に関連付けられた実測処理量情報EMnとに基づいて、基板Wの径方向RDの複数の位置Lkの各々での厚みが目標厚み値TGになるときの処理時間Tkを、基板Wの径方向RDの複数の位置Lkごとに算出する。「k」は、0以上の整数を示す。
【0086】
具体的には、厚み予測部211は、式(1)に基づいて、基板Wの複数の位置Lkの各々での厚みが目標厚み値TGになるときの処理時間Tkを算出する。式(1)において、Mkは、基板Wの位置Lkでの厚みの測定値を示し、TGは、基板Wの目標厚み値を示し、Ekは、基板WAの位置Lkでの処理量を示す。基板Wの位置Lkでの測定値Mkは、測定厚み情報MGに含まれる測定値である。基板WAの位置Lkでの処理量Ekは、実測処理量情報EMnに含まれる処理量である。「k」は、0以上の整数を示す。なお、式(1)において、Ekは、基板WAの位置Lkでの単位時間当たりの処理量を示してもよい。この場合は、実測処理量情報EMnに含まれる処理量も、単位時間当たりの処理量を示す。
【0087】
Tk=(Mk-TG)/Ek …(1)
【0088】
図9(a)は、式(1)によって算出された処理時間Tkの一例を示すグラフである。横軸は、基板Wの中心CTからの、基板Wの径方向RDに沿った基板W上の位置Lk(例えばmm)を示す。この点は、後述する図9(b)及び図9(c)の横軸も同様である。縦軸は、処理時間Tkを示す。
【0089】
図9(a)に示すように、厚み予測部211は、基板Wの複数の位置Lkに対してそれぞれ算出された複数の処理時間Tkから、最も短い処理時間Txを選択する。図9(a)の例では、最も短い処理時間Txは、位置L2(=2mm)での処理時間T2である。
【0090】
そして、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、ノズルNZ1に関連付けられた実測処理量情報EMnと、最も短い処理時間Txとに基づいて、予測厚み情報PTnを算出する。
【0091】
具体的には、厚み予測部211は、式(2)に基づいて、基板Wの径方向RDの複数の位置Lkでの処理後の厚みの予測値Pkを算出する。「k」は、0以上の整数を示す。基板Wの複数の位置Lkでの複数の予測値Pkは、予測厚み情報PTnを構成する。
【0092】
Pk=Mk-(Ek×Tx) …(2)
【0093】
図9(b)は、式(2)によって算出された基板Wの処理後の厚みの予測値Pkを示すグラフである。縦軸は、基板Wの厚みの予測値Pkを示す。
【0094】
図9(b)の例では、複数の予測値Pkのうち、位置L2(=2mm)での予測値Px(=P2)が、目標厚み値TGに一致する。そして、全ての予測値Pkは目標厚み値TG以上である。なぜなら、式(2)に示すように、全ての厚みの予測値Pkは、最も短い処理時間Txに基づいて算出されるからである。
【0095】
図9(c)は、厚みの予測値Pkと目標厚み値TGとの差分値DFk(=Pk-TG)を示すグラフである。kは、0以上の整数を示す。縦軸は、差分値DFkを示す。図9(c)に示すように、全ての位置Lkにおいて、差分値DFkは0以上である。図9(c)の例では、位置L2(=2mm)での差分値DF2が0である。なぜなら、図9(a)に示すように、位置L2(=2mm)での処理時間T2が最も短い処理時間Txとして選択されているからである。
【0096】
以上、図9(a)~図9(c)を参照して説明したように、本実施形態によれば、厚み予測部211は、複数の処理時間Tkのうち最も短い処理時間Txに基づいて予測厚み情報PTnを算出する。従って、予測厚み情報PTnに含まれる全ての厚みの予測値Pkが目標厚み値TG以上になる範囲で、各位置Lkでの厚みの予測値Pkを算出できる。その結果、評価部212によって選択された予測厚み情報PTnに対応するレシピ情報RCnに基づいて基板Wを処理する際に、目標厚み値TG未満となる厚みの部分が基板Wに発生することを抑制できる。つまり、基板Wが過剰に処理されることを抑制できる。
【0097】
次に、図10(a)~図12(b)を参照して、評価部212によって実行される所定評価方法を説明する。図10(a)~図12(b)の横軸及び縦軸は、それぞれ、図6の横軸及び縦軸と同様である。また、「n」は1以上の整数のうちのいずれかの整数を示す。
【0098】
本実施形態に係る所定評価方法は、予測厚み情報PTnによって示される予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、所定評価方法は、第1評価方法と第2評価方法と第3評価方法とのうちの少なくとも1つの評価方法を含む。
【0099】
第1評価方法は、予測厚みパターンPNnの凹凸の程度を示す指標によって、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。本実施形態では、第1評価方法によって、「予測厚みパターンPNnの凹凸の程度」の観点から、予測厚みパターンPNnの平坦の程度を容易に評価できる。第1評価方法は、第1方法と第2方法と第3方法と第4方法とのうちの少なくとも1つの方法を含む。第1方法~第4方法については後述する。
【0100】
第2評価方法は、予測厚みパターンPNnを構成する複数の予測値のうち基板Wの目標厚み値TGに近い予測値の数に基づく指標によって、予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。本実施形態では、第2評価方法によって、「基板Wの目標厚み値TGに近い予測値の数」の観点から、予測厚みパターンPNnの平坦の程度を容易に評価できる。第2評価方法は、第1方法と第2方法とのうちの少なくとも1つの方法を含む。第1方法及び第2方法については後述する。
【0101】
第3評価方法は、予測厚みパターンPNnの傾斜がどの程度ゼロに近いかを示す指標によって、予測厚みパターンが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。本実施形態では、第3評価方法によって、「予測厚みパターンPNnの傾斜がゼロに近い程度」の観点から、予測厚みパターンPNnの平坦の程度を容易に評価できる。第3評価方法は、第1方法と第2方法とのうちの少なくとも1つの方法を含む。第1方法及び第2方法については後述する。
【0102】
まず、図10(a)~図10(d)を参照して第1評価方法の第1方法~第4方法を説明する。
【0103】
図10(a)は、第1評価方法の第1方法を示す図である。図10(a)に示すグラフには、予測厚み情報PTnによって示される予測厚みパターンPNn及び第1評価直線Vaが示される。第1評価直線Vaは、予測厚みパターンPNnよりも大きい側から予測厚みパターンPNnに接する直線である。つまり、第1評価直線Vaは、予測厚みパターンPNnのうち、予測値が増加する方向に向いた凸点A1と凸点A2とを通る直線である。
【0104】
第1評価方法の第1方法は、第1評価直線Va上の値から予測厚みパターンPNnを構成する予測値を差し引いた値である差分値dfを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第1方法では、差分値dfは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置ごとに算出される。そして、基板Wの複数の位置にそれぞれ対応する複数の差分値dfのうち、最大差分値Qaを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかが評価される。最大差分値Qaが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0105】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、第1評価直線Va、複数の差分値df、及び、最大差分値Qaを算出する。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の最大差分値Qaのうち、最も小さい最大差分値Qaを特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい最大差分値Qaに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0106】
以上、図10(a)を参照して説明したように、本実施形態に係る第1評価方法の第1方法によれば、第1評価直線Vaに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0107】
図10(b)は、第1評価方法の第2方法を示す図である。図10(b)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn及び第2評価直線Vbが示される。第2評価直線Vbは、予測厚みパターンPNnよりも小さい側から予測厚みパターンPNnに接する直線である。つまり、第2評価直線Vbは、予測厚みパターンPNnのうち、予測値が減少する方向に向いた凸点A3と凸点A4とを通る直線である。
【0108】
第1評価方法の第2方法は、予測厚みパターンPNnを構成する予測値から第2評価直線Vb上の値を差し引いた値である差分値dfを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第2方法では、差分値dfは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置ごとに算出される。そして、基板Wの複数の位置にそれぞれ対応する複数の差分値dfのうち、最大差分値Qbを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかが評価される。最大差分値Qbが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0109】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、第2評価直線Vb、複数の差分値df、及び、最大差分値Qbを算出する。そして、評価部212は、第1評価方法の第1方法と同様にして、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい最大差分値Qbに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0110】
以上、図10(b)を参照して説明したように、本実施形態に係る第1評価方法の第2方法によれば、第2評価直線Vbに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0111】
図10(c)は、第1評価方法の第3方法を示す図である。図10(c)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn及び第3評価直線Vcが示される。第3評価直線Vcは、最小二乗法によって得られる予測厚みパターンPNnの近似直線である。
【0112】
第1評価方法の第3方法は、予測厚みパターンPNnを構成する予測値から第3評価直線Vc上の値を差し引いた値である差分値dfを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第3方法では、予測厚みパターンPNnを構成する最大予測値から第3評価直線Vc上の値を差し引いた値である第1差分値Qcと、予測厚みパターンPNnを構成する最小予測値から第3評価直線Vc上の値を差し引いた値である第2差分値Qdとが、算出される。そして、第1差分値Qcの絶対値と第2差分値Qdの絶対値との和SMを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかが評価される。和SMが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0113】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、第3評価直線Vc、第1差分値Qc、第2差分値Qd、及び、和SMを算出する。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の和SMのうち、最も小さい和SMを特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい和SMに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0114】
以上、図10(c)を参照して説明したように、本実施形態に係る第1評価方法の第3方法によれば、第3評価直線Vcに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0115】
図10(d)は、第1評価方法の第4方法を示す図である。図10(d)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn及び第4評価直線Vdが示される。第4評価直線Vdは、基板Wの目標厚み値TGを示す直線である。
【0116】
第1評価方法の第4方法は、予測厚みパターンPNnを構成する予測値から第4評価直線Vd上の値を差し引いた値である差分値dfを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第4方法では、差分値dfは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置ごとに算出される。そして、複数の差分値dfのうちの最大差分値Qeを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかが評価される。最大差分値Qeが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0117】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、第4評価直線Vd、複数の差分値df、及び、最大差分値Qeを算出する。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の最大差分値Qeのうち、最も小さい最大差分値Qeを特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい最大差分値Qeに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0118】
以上、図10(d)を参照して説明したように、本実施形態に係る第1評価方法の第4方法によれば、第4評価直線Vdに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0119】
次に、図11(a)及び図11(b)を参照して第2評価方法の第1方法及び第2方法を説明する。
【0120】
図11(a)は、第2評価方法の第1方法を示す図である。図11(a)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn、第5評価直線Ve、及び、許容範囲RGが示される。第5評価直線Veは、基板Wの目標厚み値TGを示す直線である。許容範囲RGは、基板Wにおいて許容可能な凹凸の範囲である。具体的には、許容範囲RGは、上限値THと、下限値である目標厚み値TGとを含む。
【0121】
第2評価方法の第1方法は、予測厚みパターンPNnを構成する複数の予測値のうち、第5評価直線Veを含む許容範囲RG内に存在する予測値の数NMを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。許容範囲RG内に存在する予測値の数NMが多い程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0122】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、許容範囲RG内に存在する予測値の数NMを計数して、数NMを示す計数情報を得る。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の計数情報のうち、最も大きい数NMを示す計数情報を特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も大きい数NMを示す計数情報に対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0123】
以上、図11(a)を参照して説明したように、本実施形態に係る第2評価方法の第1方法によれば、第5評価直線Veを含む許容範囲RGに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0124】
図11(b)は、第2評価方法の第2方法を示す図である。図11(b)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn及び第6評価直線Vfが示される。第6評価直線Vfは、基板Wの目標厚み値TGを示す直線である。
【0125】
第2評価方法の第2方法は、予測厚みパターンPNnを構成する複数の予測値の各々から第6評価直線Vf上の値を差し引いた値である各差分値dfを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第2方法では、差分値dfは、基板Wの径方向RDにおける複数の位置ごとに算出される。そして、基板Wの複数の位置にそれぞれ対応する複数の差分値dfの平均値AVが算出される。平均値AVが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0126】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、複数の差分値df、及び、平均値AVを算出する。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の平均値AVのうち、最も小さい平均値AVを特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい平均値AVに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0127】
以上、図11(b)を参照して説明したように、本実施形態に係る第2評価方法の第2方法によれば、第6評価直線Vfに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0128】
次に、図12(a)及び図12(b)を参照して第3評価方法の第1方法及び第2方法を説明する。
【0129】
図12(a)は、第3評価方法の第1方法を示す図である。図12(a)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn、第7評価直線Vg、及び、第8評価直線Vhが示される。第7評価直線Vgは、最小二乗法によって得られる予測厚みパターンPNnの近似直線である。第8評価直線Vhは、一定値を示す直線である。
【0130】
第3評価方法の第1方法は、第8評価直線Vhに対する第7評価直線Vgの傾斜を指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第1方法では、第8評価直線Vhに対する第7評価直線Vgの傾斜を示す傾斜角θaを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかが評価される。傾斜角θaが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。この場合、傾斜角θaの表現形式は特に限定されない。
【0131】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、第7評価直線Vg、及び、傾斜角θaを算出する。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の傾斜角θaのうち、最も小さい傾斜角θaを特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい傾斜角θaに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0132】
以上、図12(a)を参照して説明したように、本実施形態に係る第3評価方法の第1方法によれば、第7評価直線Vg及び第8評価直線Vhに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0133】
図12(b)は、第3評価方法の第2方法を示す図である。図12(b)に示すグラフには、予測厚みパターンPNn、複数の評価ベクトルVT、及び、第9評価直線Viが示される。複数の評価ベクトルVTの各々は、基板Wの径方向RDの各位置での予測厚みパターンPNnの傾斜を示す。第9評価直線Viは、傾斜がゼロの任意の直線である。
【0134】
第3評価方法の第2方法は、基板Wの径方向RDの各位置での予測厚みパターンPNnの傾斜を指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかを評価する方法である。具体的には、第2方法では、基板Wの径方向RDの各位置での予測値に対応して、各位置での評価ベクトルVTが算出される。評価ベクトルVTは、隣り合う2つの予測値のうち、一方の予測値から他方の予測値に向いている。また、評価ベクトルVTは、隣り合う2つの予測値のうち、一方の予測値を始点とし、他方の予測値を終点とする。評価ベクトルVTの傾斜は、第9評価直線Viに対する評価ベクトルVTの傾斜角θbによって示される。傾斜角θbの表現形式は特に限定されない。そして、複数の評価ベクトルVTのうち、最大傾斜角θmxを有する評価ベクトルVTMを指標として、予測厚みパターンPNnが平坦にどの程度近いかが評価される。最大傾斜角θmxが小さい程、予測厚みパターンPNnが平坦に近いことを示す。
【0135】
具体的には、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnによってそれぞれ示される複数の予測厚みパターンPNnごとに、複数の評価ベクトルVT、複数の傾斜角θb、及び、最大傾斜角θmxを算出する。そして、評価部212は、複数の予測厚みパターンPNnにそれぞれ対応する複数の最大傾斜角θmxのうち、最も小さい最大傾斜角θmxを特定する。さらに、評価部212は、複数の予測厚み情報PTnから、最も小さい最大傾斜角θmxに対応する予測厚みパターンPNnを示す予測厚み情報PTnを選択する。
【0136】
以上、図12(b)を参照して説明したように、本実施形態に係る第3評価方法の第2方法によれば、複数の評価ベクトルVTに基づいて予測厚みパターンPNnを簡易かつ精度良く評価できる。
【0137】
次に、図4図5、及び、図13を参照して、基板Wの端領域EAの処理を説明する。図5に示すように、一般的に、基板Wの端領域EAは、内領域IAと比較して、急峻に突出している。そこで、基板Wの全領域(IA+EA)に対するスキャン処理に加えて、端領域EAに対して個別の処理を行うことが好ましい。以下、この好ましい例を説明する。この場合、図6及び図7を参照して説明した場合と同様に、一例として、評価部212が、複数の予測厚み情報PT1~PT3から予測厚み情報PT3を選択した場合を説明する。
【0138】
図13は、基板Wの端領域EAにおける処理後の厚みの予測値を示すグラフである。図13の横軸及び縦軸は、それぞれ、図6の横軸及び縦軸と同様である。図13では、横軸において、基板Wの端領域EA(Rb[mm]~R[mm])が示されている。図13に示すように、予測厚み情報PT3は、基板Wの端領域EAにおいて、2以上の厚みの予測値を含んでいる。
【0139】
図4及び図13に示すように、端領域処理部214は、評価部212によって選択された予測厚み情報PT3に含まれる複数の予測値のうち、基板Wの径方向RDの端領域EAにおける予測値の最大値Pmに基づいて、端領域処理時間(以下、「端領域処理時間TE」と記載する。)を算出する。端領域処理時間TEは、基板Wの端領域EAに対する処理時間であって、処理液の吐出位置が固定された状態での処理時間を示す。
【0140】
制御部21は、ノズルNZ1が基板Wの端領域EAの直上位置(例えば、図2の折り返し位置TR1)に位置するように、ノズル移動部9を制御する。その結果、ノズルNZ1が基板Wの端領域EAの直上位置に静止する。そして、制御部21は、端領域処理時間TEだけ、ノズルNZ1が基板Wの端領域EAに向けて処理液を吐出するように、バルブV1を制御する。その結果、ノズルNZ1は、基板Wの端領域EAの直上位置に静止したまま、端領域処理時間TEだけ、回転中の基板Wの端領域EAに向けて処理液を吐出する。よって、本実施形態によれば、基板Wの端領域EAが集中して処理されて、基板Wの表面SFをより平坦に近づけることができる。
【0141】
具体的には、端領域処理部214は、基板Wの端領域EAにおける予測値の最大値Pmと、基板Wの目標厚み値TGと、処理係数PCとに基づいて、端領域処理時間TEを算出する。処理係数PCは、制御部21に対して予め設定されており、処理液による単位時間当たりの基板の処理量を示す。従って、本実施形態によれば、処理係数PCを使用することで、端領域処理時間TEを容易に算出できる。更に具体的には、端領域処理部214は、式(3)に基づいて、端領域処理時間TEを算出する。
【0142】
TE=(Pm-TG)/PC …(3)
【0143】
次に、図4及び図14図17を参照して、本発明の実施形態に係る処理条件特定方法及び基板処理方法を説明する。図14は、本実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。図14に示すように、基板処理方法は、工程S1~工程S9を含む。基板処理方法は、1枚の基板Wごとに基板処理装置100によって実行される。工程S3及び工程S4は、本実施形態に係る処理条件特定方法を構成する。
【0144】
図4および図14に示すように、工程S1において、基板処理装置100の制御部21は、基板Wを保持するように、スピンチャック3を制御する。その結果、スピンチャック3は基板Wを保持する。
【0145】
次に、工程S2において、制御部21は、基板Wの厚みを測定するように、厚み測定部15を制御する。その結果、厚み測定部15は、処理液による処理前に、基板Wの径方向RDに沿って各位置で基板Wの厚みを測定する。そして、厚み測定部15は、基板Wの各位置での厚みの測定値を含む測定厚み情報MGを、制御部21に出力する。
【0146】
次に、工程S3において、制御部21は、基板Wの径方向RDに沿って処理液の吐出位置を移動しながら基板Wを処理するときに使用可能なレシピ情報RCnを、複数のレシピ情報RCnのうちから特定する。
【0147】
次に、工程S4において、制御部21は、基板Wの端領域EAを処理するときの端領域処理時間TEを算出する。
【0148】
次に、工程S5において、制御部21は、工程S3で特定されたレシピ情報RCnに基づいて、基板Wに対してノズルNZ1がスキャン処理を実行するように、バルブV1及びノズル移動部9を制御する。その結果、ノズルNZ1は、基板Wの径方向RDに沿って処理液の吐出位置を移動しながら基板Wの全領域(内領域IA+端領域EA)を処理液によって処理する。つまり、ノズルNZ1は、基板Wの全領域に処理液を吐出する。
【0149】
次に、工程S6において、制御部21は、工程S4で算出された端領域処理時間TEだけ、処理液の吐出位置が固定された状態でノズルNZ1が基板Wの端領域EAを処理するように、バルブV1及びノズル移動部9を制御する。その結果、ノズルNZ1は、端領域処理時間TEだけ、処理液の吐出位置が固定された状態で基板Wの端領域EAを処理する。つまり、ノズルNZ1は、端領域処理時間TEだけ、静止したままの状態で基板Wの端領域EAに処理液を吐出する。
【0150】
次に、工程S7において、制御部21は、ノズル11がリンス液を基板Wに吐出するように、バルブV2を制御する。その結果、ノズル11がリンス液を吐出する。
【0151】
次に、工程S8において、制御部21は、基板Wが回転するようにスピンモーター5を制御する。その結果、スピンモーター5がスピンチャック3を回転させることによって、基板Wが回転する。基板Wの回転によって基板Wが乾燥する。
【0152】
次に、工程S9において、制御部21は、チャンバー2から基板Wを取り出すように、搬送ロボットを制御する。その結果、搬送ロボットは基板Wをチャンバー2から取り出す。工程S9の後、基板処理方法による処理は終了する。
【0153】
本実施形態に係る基板製品製造方法では、工程S1~工程S9を含む基板処理方法によって基板Wを処理して、処理後の基板Wである基板製品を製造する。また、図4に示すコンピュータープログラム232は、制御装置19に、工程S1~工程S9を含む基板処理方法を実行させる。さらに、図4に示すコンピュータープログラム232は、制御装置19に、工程S3及び工程S4を含む処理条件特定方法を実行させてもよい。制御装置19は「コンピューター」の一例に相当する。
【0154】
なお、工程S5の前に、工程S6が実行されてもよい。また、工程S6において、工程S5で使用するノズルNZ1と異なるノズルNZ2を使用してもよい。さらに、基板処理方法は、工程S4及び工程S6を含まなくてもよい。
【0155】
次に、図4及び図15を参照して、図14の工程S3を説明する。図15は、図14の工程S3を示すフローチャートである。図15に示すように、工程S3は、工程S31~工程S33を含む。
【0156】
図4及び図15に示すように、工程S31において、制御部21の厚み予測部211は、基板Wの径方向RDにおける複数の位置での厚みの測定値を含む測定厚み情報MGに基づいて、複数のレシピ情報RCnごとに、基板Wの複数の位置での処理後の厚みの予測値を含む予測厚み情報PTnを算出する。つまり、厚み予測部211は、複数の予測厚み情報PTnを算出する。測定厚み情報MGに含まれる測定値は、処理液による基板Wの処理前に、基板Wの径方向RDに沿って測定された基板Wの厚みを示す。
【0157】
具体的には、工程S31において、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、実測処理量情報EMnとに基づいて、基板Wの中心CTからエッジEGまでの各位置での処理後の厚みの予測値を含む予測厚み情報PTnを算出する。
【0158】
次に、工程S32において、制御部21の評価部212は、複数のレシピ情報RCnに対してそれぞれ算出された複数の予測厚み情報PTnを、所定評価方法に従って評価して、複数の予測厚み情報PTnから予測厚み情報PTnを選択する。この場合、評価部212は、所定評価方法に含まれる第1評価方法の第1方法~第4方法、所定評価方法に含まれる第2評価方法の第1方法及び第2方法、並びに、所定評価方法に含まれる第3評価方法の第1方法及び第2方法のうち、1つの方法によって複数の予測厚み情報PTnを評価してもよいし、2以上の方法を組み合わせて複数の予測厚み情報PTnを評価してもよい。
【0159】
次に、工程S33において、制御部21の特定部213は、工程S32で選択された予測厚み情報PTnに対応するレシピ情報RCnを特定する。工程S33の後、レシピ情報RCnを特定する処理は終了し、処理は図14の工程S4に進む。
【0160】
次に、図4及び図16を参照して、図15の工程S31を説明する。図16は、図15の工程S31を示すフローチャートである。図16に示すように、工程S31は、工程S311~工程S314を含む。
【0161】
図4及び図16に示すように、工程S311において、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、基板Wの目標厚み値TGと、実測処理量情報EMnとに基づいて、基板Wの径方向RDの複数の位置の各々での厚みが目標厚み値TGになるときの処理時間Tkを、基板Wの複数の位置ごとに算出する。具体的には、厚み予測部211は、上述の式(1)に基づいて処理時間Tkを算出する。
【0162】
次に、工程S312において、厚み予測部211は、基板Wの径方向RDの複数の位置に対してそれぞれ算出された複数の処理時間Tkから、最も短い処理時間Txを選択する。
【0163】
次に、工程S313において、厚み予測部211は、基板Wの測定厚み情報MGと、実測処理量情報EMnと、最も短い処理時間Txとに基づいて、予測厚み情報PTnを算出する。具体的には、厚み予測部211は、上述の式(2)に基づいて予測厚み情報PTn(具体的には複数の予測値Pk)を算出する。
【0164】
次に、工程S314において、厚み予測部211は、ノズルNZ1に関連付けられた全ての実測処理量情報EMnに対して、工程S311~工程S313の処理が完了したか否かを判定する。
【0165】
工程S314で否定判定(No)がされた場合は、処理は工程S311に進む。
【0166】
工程S314で肯定判定(Yes)がされた場合は、複数の予測厚み情報PTnを算出する処理は終了し、処理は図15の工程S32に進む。
【0167】
次に、図4及び図17を参照して、図14の工程S4を説明する。図17は、図14の工程S4を示すフローチャートである。図17に示すように、工程S4は、工程S41~工程S43を含む。
【0168】
図4及び図17に示すように、工程S41において、制御部21の端領域処理部214は、図15の工程S32で選択された予測厚み情報PTnに含まれる処理後の複数の厚みの予測値から、基板Wの端領域EAにおける2以上の位置での処理後の厚みの予測値を取得する。
【0169】
次に、工程S42において、端領域処理部214は、工程S41で取得した、基板Wの端領域EAにおける2以上の位置での処理後の厚みの予測値から、最大値Pmを選択する。
【0170】
次に、工程S43において、端領域処理部214は、工程S42で選択した、基板Wの端領域EAにおける予測値の最大値Pmと、基板Wの目標厚み値TGと、処理係数PCとに基づいて、端領域処理時間TEを算出する。具体的には、端領域処理部214は、上述の式(3)に基づいて端領域処理時間TEを算出する。工程S43の後、端領域処理時間TEを算出する処理は終了し、処理は図14の工程S5に進む。
【0171】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0172】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0173】
(1)図1図17を参照して説明した本実施形態では、基板Wはベア基板であったが、基板Wは、成膜後の基板であってもよい。
【0174】
(2)図1図17を参照して説明した本実施形態において、処理液による処理がエッチング処理である場合は、「処理液」を「エッチング液」と読み替え、「処理量」を「エッチング量」と読み替えることができる。
【0175】
(3)図1に示す処理装置1は、厚み測定部15及びプローブ移動部17を備えていなくてもよい。この場合は、処理装置1の外部に配置される厚み測定部15及びプローブ移動部17によって、基板Wの厚みが測定される。また、図1に示す基板処理装置100は、厚み測定部15及びプローブ移動部17を備えていなくてもよい。この場合は、基板処理装置100の外部に配置される厚み測定部15及びプローブ移動部17によって、基板Wの厚みが測定される。すなわち、処理前に基板Wの厚みを測定できる限りにおいては、基板Wの厚みが測定される場所は、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、処理条件特定方法、基板処理方法、基板製品製造方法、コンピュータープログラム、記憶媒体、処理条件特定装置、及び、基板処理装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0177】
1 処理装置
19 制御装置(処理条件特定装置、コンピューター)
23 記憶部(記憶媒体)
100 基板処理装置
211 厚み予測部
212 評価部
213 特定部
214 端領域処理部
232 コンピュータープログラム
W 基板
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