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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/62 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
E06B1/62 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020514
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021123998
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】竹長 宰児
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173241(JP,A)
【文献】実開昭53-131641(JP,U)
【文献】特開平11-22317(JP,A)
【文献】特開2009-191503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
E05D 15/00 - 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部と、前記係合部と接触して、前記係合部が前記押付部から外れるのを防止する外れ止め部と、を有する建具。
【請求項2】
請求項に記載された建具において、
前記押付部は、前記取付面と前記枠材の間の隙間に配置されて、前記係合部により前記枠材側に向かって押されて弾性変形する板バネであり、
前記外れ止め部は、前記押付部に接続して、前記押付部から前記係合部に向かって突出する建具。
【請求項3】
建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部を有し、
前記押付部は、前記係合部を前記取付面に向かって付勢するとともに、前記係合部を前記枠材の見込み方向に付勢して、前記カバーを前記枠材に引き寄せる建具。
【請求項4】
建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部と、前記取付面と対向する前記枠材の対向部に装着される装着部と、を有し、
前記押付部は、前記装着部から前記取付面と前記枠材の間の隙間の内方に向かって突出する建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の取付面に取り付けられる枠材を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の枠材である枠体の上枠は、建物の取付面である天井面に取り付けられて、天井面に沿って配置される。そのため、不陸(例えば、凹凸、傾き)等により、天井面が水平面でないときには、上枠を天井面に水平に取り付けられないことがある。これに対し、従来、スペーサを用いて、枠材の枠本体を枠材取付面に水平に取り付ける建具の枠材が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された従来の建具の枠材では、スペーサを枠材取付面と枠本体の間に挟んで、枠本体を水平方向に沿って配置する。また、カバーを枠本体に取り付けて、カバーにより、枠材取付面と枠本体の間の隙間を覆う。ところが、経年変化に伴う枠材取付面の変形等により、枠材取付面と枠本体の間の隙間の寸法が変化し、或いは、振動等により、カバーの位置が変化することがある。この場合には、隙間を覆う位置にカバーが配置されずに、隙間が露出する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6153347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、建物の取付面と枠材の間の隙間を覆う位置にカバーを安定して保持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部と、前記係合部と接触して、前記係合部が前記押付部から外れるのを防止する外れ止め部と、を有する建具である。
本発明は、建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部を有し、
前記押付部は、前記係合部を前記取付面に向かって付勢するとともに、前記係合部を前記枠材の見込み方向に付勢して、前記カバーを前記枠材に引き寄せる建具である。
本発明は、建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部と、前記取付面と対向する前記枠材の対向部に装着される装着部と、を有し、
前記押付部は、前記装着部から前記取付面と前記枠材の間の隙間の内方に向かって突出する建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建物の取付面と枠材の間の隙間を覆う位置にカバーを安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建具の正面図である。
図2】本実施形態の建具と建物の縦断面図である。
図3】本実施形態の建具と建物の横断面図である。
図4】本実施形態の建具の枠材を含む上側部分を示す縦断面図である。
図5】本実施形態の建具を建物の取付面に設置する手順を示す縦断面図である。
図6】本実施形態の建具を建物の取付面に設置する手順を示す縦断面図である。
図7】本実施形態の建具を建物の取付面に設置する手順を示す縦断面図である。
図8】本実施形態の建具を建物の取付面に設置する手順を示す縦断面図である。
図9】他の実施形態の建具を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の建具は、建物の取付面に取り付けられて、建物に設置される。建物の取付面は、例えば、天井面、開口部の上面であり、建具は、例えば、スクリーンパーティション、間仕切、吊り戸、引戸である。
【0010】
図1は、本実施形態の建具1の正面図であり、建具1の概略構成を示している。図2は、本実施形態の建具1と建物10の縦断面図であり、図3は、本実施形態の建具1と建物10の横断面図である。
図示のように、建物10に設けた建具1を正面からみたときに(図1参照)、上下となる方向が上下方向であり、左右となる方向が左右方向である。図1では、上下方向は鉛直方向であり、左右方向は水平方向である。このように、建具1に関する方向は、建具1を建物10に設置した状態での方向で特定する。
【0011】
建物10の取付面11(図2参照)は、天井面であり、建具1の上側に位置する。建具1は、建物10の取付面11と床面12の間に配置されるパネル体20と、建物10の床面12に設けられたガイド2と、パネル体20が連結される枠体3を備えている。パネル体20は、左右方向(横方向)に移動可能な方形状の扉体であり、方形状の框体21と、框体21の内側に嵌め込まれた面材22と、框体21の下縁部に沿って延びるガイド溝23と、框体21に取り付けられた吊車24を有している。ガイド2は、床面12から上側に突出して、パネル体20のガイド溝23内に配置されている。パネル体20は、ガイド2により、左右方向にガイドされて移動する。吊車24は、2つの回転可能なローラ25を有し、パネル体20から上側に突出する。
【0012】
枠体3は、パネル体20を支持する枠材30を有している。枠材30は、枠体3を構成する枠部材であり、例えば、押出成形により形成された形材からなる。また、枠材30は、左右方向に延びる上枠であり、取付部材であるビス40により、建物10の取付面11に取り付けられて、取付面11に沿って配置される。パネル体20の吊車24は、枠材30に移動可能に支持されている。パネル体20は、吊車24を介して、摺動可能に枠材30に連結され、枠材30の長手方向(左右方向)に沿って摺動して移動する。
【0013】
図4は、本実施形態の建具1の枠材30を含む上側部分を示す縦断面図であり、建物10の取付面11に取り付けられた枠材30を示している。
図示のように、建具1は、枠材30と、2つのカバー50と、カバー50の保持に用いられる板状の保持部材60を備えている。枠材30は、枠材30の見込み方向(奥行方向)の両側に位置する一対の見付け部31と、一対の見付け部31の間に位置する一対のレール部32と、建物10の取付面11と対向する対向部33を有している。一対の見付け部31は、枠材30の見付け方向(上下方向)に沿って形成されて、枠材30の見込み方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0014】
一対のレール部32は、一対の見付け部31のそれぞれから枠材30の見込み方向に突出し、枠材30の見込み方向に互いに間隔をあけて対向している。レール部32は、対向部33の下側に位置し、レール部32と対向部33は、枠材30の見付け方向に離隔している。吊車24の一対のローラ25(図2参照)は、それぞれレール部32に載置されて、レール部32の上で、レール部32に沿って枠材30の長手方向に移動する。パネル体20は、吊車24を介して、移動可能(摺動可能)に枠材30のレール部32に支持され、レール部32にガイドされて、枠材30の長手方向に移動(摺動)する。対向部33は、枠材30の上面部であり、一対の見付け部31の間に形成されて、一対の見付け部31を連結している。
【0015】
不陸等により、建物10の取付面11が水平面でないときには、建物10の取付面11と枠材30の対向部33の間にスペーサ4を挟んで、枠材30を建物10の取付面11に取り付ける。スペーサ4は、枠材30の長手方向の複数箇所に設けられて、固定部材であるビス41により、建物10の取付面11に固定される。枠材30の長手方向の複数箇所のスペーサ4により、枠材30の水平方向に対する傾きが調整されて、枠材30が水平方向に沿って配置される。複数箇所のスペーサ4の厚さは、それぞれ建物10の取付面11と水平な枠材30の間の距離に対応して設定される。ビス40は、枠材30の対向部33を下側から上側に向かって貫通して、枠材30の対向部33を建物10の取付面11に取り付ける。
【0016】
建物10の取付面11と枠材30の対向部33の間のスペーサ4により、枠材30が建物10の取付面11から枠材30の見付け方向(下方向)に離隔して、建物10の取付面11と枠材30の間に隙間5が生じる。枠材30は、建物10の取付面11との間に隙間5をあけて配置されて、取付面11に取り付けられる。隙間5は、建物10の取付面11と枠材30の間に形成された空間であり、スペーサ4は、隙間5に設けられる。枠材30の対向部33は、枠材30の見付け方向において、建物10の取付面11との間に隙間5をあけて、建物10の取付面11と対向する。枠材30の見付け部31は、建物10の取付面11と枠材30の間の隙間5の外側に位置するとともに、隙間5よりも下側に位置しており、隙間5に対して取付面11の反対側に配置される。
【0017】
保持部材60は、建物10の取付面11と枠材30(ここでは、対向部33)の間に設けられて、建物10の取付面11と枠材30の間の隙間5(以下、単に、隙間5という)に配置され、隙間5においてカバー50を保持する。カバー50は、枠材30の見込み方向の両側に配置されて、枠材30の上側の隙間5を覆う。枠材30の見込み方向の両側で、カバー50は、保持部材60により、隙間5を覆う状態で保持されて、隙間5を遮蔽する。
【0018】
カバー50は、枠材30の長手方向に延びるカバー材であり、カバー50の長手方向は、枠材30の長手方向に対応する。カバー50は、板状の覆部51と、建物10の取付面11に当接する当接部52と、保持部材60に係合する係合部53を有している。覆部51と係合部53は、枠材30の見付け方向に沿って配置され、当接部52は、枠材30の見込み方向に沿って配置される。カバー50の覆部51は、枠材30の長手方向に連続して延びるカバー部であり、枠材30の見込み方向において、隙間5の外側に配置される。また、覆部51は、建物10の取付面11から枠材30の見付け部31まで配置され、枠材30の見付け部31に沿って配置される。カバー50は、隙間5の外側で、覆部51により、隙間5を覆うとともに、枠材30の見付け部31の少なくとも一部(上側部分)を覆う。
【0019】
覆部51と係合部53は、枠材30の見込み方向に離隔して形成され、枠材30の見込み方向において互いに対向している。カバー50の当接部52は、覆部51と係合部53の間に形成されて、覆部51と係合部53を連結している。当接部52が建物10の取付面11に当接する状態で、覆部51が隙間5を覆う。また、当接部52と係合部53は、隙間5の内側(建物10の取付面11と枠材30の間)に配置され、覆部51により覆われて遮蔽される。カバー50の係合部53は、保持部材60により保持される被保持部である。隙間5において、係合部53は、保持部材60に係合して、保持部材60により、建物10の取付面11と保持部材60の間に保持される。
【0020】
保持部材60は、金属製の保持具であり、枠材30に装着される装着部61と、カバー50を建物10の取付面11に押し付ける押付部62と、カバー50が外れるのを防止する外れ止め部63を有している。保持部材60及び保持部材60の各部61~63は、隙間5の内側に配置されて、カバー50の覆部51により覆われて遮蔽される。保持部材60の装着部61は、枠材30の見込み方向に沿って配置される基部であり、枠材30の対向部33に装着されて、枠材30に取り付けられる。保持部材60の押付部62は、弾性変形可能な板バネであり、装着部61及び枠材30から隙間5の内方に向かって突出する。カバー50の係合部53は、建物10の取付面11と押付部62の間に配置される。
【0021】
保持部材60の押付部62は、カバー50の係合部53と係合する係合部であり、建物10の取付面11側に凸な凸部64と、係合部53に接触する接触部65を有している。凸部64は、押付部62において、枠材30側(装着部61側)の端部(基端部)と建物10の取付面11側の端部(先端部)の間に形成されている。接触部65は、押付部62の凸部64と先端部の間に形成されている。保持部材60の押付部62によりカバー50を保持した状態で、接触部65は、押付部62の凸部64から先端部に向かって、枠材30の見込み方向(水平方向)に対して枠材30側(下側)に傾斜している。係合部53は、押付部62の凸部64と先端部の間の部分である接触部65に接触して、押付部62の凸部64よりも先端部側の箇所(接触部65)に保持される。凸部64及び接触部65により、押付部62は、押付部62の基端部側に向かう係合部53の移動を規制して、係合部53と係合し、係合部53及びカバー50を保持する。
【0022】
隙間5において、カバー50の係合部53は、建物10の取付面11と保持部材60の押付部62の間に挟まれて、押付部62に係合する。また、係合部53は、押付部62により、建物10の取付面11と押付部62の間に保持されるとともに、隙間5に保持される。押付部62は、隙間5に配置されて、係合部53により枠材30側(下側)に押されて弾性変形する。押付部62は、板バネの機能を有する保持部材60の板バネ部であり、隙間5において、枠材30側(枠材30に接近する方向)に弾性変形し、弾性変形した状態から、建物10の取付面11側(取付面11に接近する方向)に復元する。
【0023】
保持部材60の押付部62は、カバー50を付勢する付勢部であり、カバー50の係合部53から受ける枠材30側の力で、枠材30側に弾性変形する。その状態で、押付部62は、弾性力(復元力)により、係合部53を上方の建物10の取付面11に向かって付勢して、カバー50を取付面11に押し付ける(付勢方向R参照)。押付部62の付勢により、カバー50の当接部52は、取付面11に当接して、取付面11に向かって押し付けられる。保持部材60は、押付部62により、カバー50を取付面11に押し付けた状態で保持するとともに、隙間5を覆う位置にカバー50を保持する。
【0024】
保持部材60の押付部62は、接触部65により、カバー50の係合部53を建物10の取付面11に向かって付勢するとともに、係合部53を枠材30の見込み方向に付勢して、カバー50を枠材30に引き寄せる(付勢方向S参照)。係合部53は、押付部62により、隙間5の内方に向かって枠材30の見込み方向に付勢されて、枠材30の見込み方向の中央部側に押される。押付部62の付勢により、カバー50の覆部51は、枠材30の見付け部31に向かって付勢されて、見付け部31に押し付けられる。保持部材60は、押付部62により、カバー50の覆部51を枠材30の見付け部31に押し付けた状態で保持する。
【0025】
保持部材60の外れ止め部63は、押付部62と一体をなす突片であり、押付部62の基端部と先端部の間の箇所(ここでは、基端部と凸部64の間の箇所)に接続している。また、外れ止め部63は、押付部62の基端部と先端部の間の箇所から、カバー50の係合部53及び建物10の取付面11に向かって分岐している。保持部材60の押付部62と外れ止め部63を含む部分は、隙間5に配置されて、枠材30の長手方向に直交する断面において、Y字形状に形成されている。外れ止め部63は、枠材30の見込み方向において、カバー50の覆部51と係合部53の間に配置されて、係合部53に隣接する。
【0026】
保持部材60の外れ止め部63は、押付部62に接続して、押付部62からカバー50の係合部53及び建物10の取付面11に向かって突出する。外れ止め部63は、押付部62の弾性変形と復元に伴い、押付部62と一体に変位して、係合部53との接触位置に配置される。係合部53が隙間5の外方(付勢方向Sの反対方向)に向かって枠材30の見込み方向に変位したときに、外れ止め部63は、係合部53と接触して、係合部53が押付部62から外れるのを防止する。
【0027】
外れ止め部63により、係合部53及びカバー50の変位が規制されて、係合部53及びカバー50が停止する。また、外れ止め部63により、係合部53が押付部62の凸部64よりも基端部側の箇所に変位するのが規制されて、係合部53が押付部62の凸部64よりも先端部側の箇所(接触部65)に保持される。外れ止め部63は、係合部53を押付部62に係合する状態に維持する。
【0028】
図5図8は、本実施形態の建具1を建物10の取付面11に設置する手順を示す縦断面図であり、図4と同様に、建具1の枠材30を含む上側部分と建物10を示している。
図示のように、ビス41により、スペーサ4を建物10の取付面11に固定する(図5参照)。また、貼り付け材(例えば、両面テープ、接着剤)(図示せず)により、保持部材60を枠材30に貼り付けて仮止めする(図6参照)。ここでは、2つの保持部材60の装着部61を枠材30の対向部33に貼り付けて仮止めする。2つの保持部材60は、それぞれ装着部61、押付部62、及び、外れ止め部63を有し、装着部61に対して、押付部62と外れ止め部63が枠材30の見込み方向の外側に位置するように配置される。2つの保持部材60の装着部61は、枠材30の見付け方向に互いに重ねて配置される。
【0029】
枠材30の対向部33をスペーサ4に接触させ、建物10の取付面11と枠材30の間にスペーサ4を挟む(図7参照)。その状態で、ビス40を、枠材30の対向部33及び保持部材60の装着部61を貫通して、建物10の取付面11に取り付ける。ビス40により、枠材30を建物10の取付面11に隙間5をあけて取り付けるとともに、保持部材60の装着部61を枠材30の対向部33に取り付けて装着する。保持部材60の押付部62は、装着部61及び枠材30から建物10の取付面11に向かって突出する。スペーサ4は、枠材30の見込み方向の両側に設けられた2つの押付部62の間に位置する。
【0030】
2つのカバー50の係合部53のそれぞれを枠材30の見込み方向の外側から隙間5に挿入して、係合部53を保持部材60の押付部62に係合する(図8図4参照)。その際、枠材30の見込み方向の一方側と他方側のそれぞれで、係合部53により保持部材60の外れ止め部63を押して、押付部62を枠材30側に弾性変形させつつ、係合部53を隙間5に押し込む。これに伴い、係合部53が外れ止め部63を乗り越えて、押付部62が建物10の取付面11側に復元する。また、係合部53は、押付部62に係合する位置に移動し、押付部62に接触して、押付部62に係合する。
【0031】
押付部62の付勢により、カバー50の当接部52は、建物10の取付面11に押し付けられて当接する。その状態で、カバー50は、保持部材60により保持されて、覆部51により隙間5を覆う。保持部材60の外れ止め部63は、カバー50の係合部53と接触可能な位置(係合部53の押付部62からの外れ止めが可能な位置)に配置されて、枠材30の見込み方向において、係合部53と対峙する。続いて、パネル体20が枠材30に連結される。
【0032】
以上説明した建具1では、保持部材60の押付部62により、隙間5を覆う位置にカバー50を安定して保持でき、隙間5の露出を防止することができる。また、枠材30の見付け方向における隙間5の寸法(建物10の取付面11と枠材30の間の距離)が変化しても、カバー50を建物10の取付面11に押し付けた状態に維持して、カバー50により隙間5を覆うことができる。振動等により、カバー50が保持部材60から外れるのを抑制することもできる。カバー50の係合部53を押付部62に係合することで、隙間5を覆う位置にカバー50を簡単に取り付けることができる。
【0033】
保持部材60の外れ止め部63により、カバー50を保持部材60に確実に保持して、カバー50により隙間5を覆うことができる。板バネである保持部材60の押付部62が弾性変形することで、カバー50の係合部53が外れ止め部63を容易に乗り越えて、係合部53を保持部材60の押付部62に係合する位置に容易に配置することができる。また、係合部53の位置が枠材30側と建物10の取付面11側とに変化しても、押付部62の弾性変形と復元とに伴い、外れ止め部63を係合部53との接触位置に配置することができる。これにより、係合部53を押付部62から外れ難くすることができる。
【0034】
保持部材60の押付部62により、カバー50の係合部53を建物10の取付面11に向かって付勢しつつ、枠材30の見込み方向において、カバー50を枠材30に引き寄せており、カバー50のズレとガタツキを抑制して、カバー50を安定して保持することができる。保持部材60の装着部61が枠材30の対向部33に装着され、保持部材60の押付部62が装着部61から隙間5の内方に向かって突出する。そのため、建物10の取付面11の影響を受けずに、押付部62を隙間5に容易かつ確実に配置することができる。
【0035】
次に、他の実施形態の建具1の保持部材について説明する。以下説明する保持部材に関し、上記した保持部材60と同じ事項の説明は省略し、保持部材60の構成に相当する構成には、保持部材60の構成と同じ名称を用いる。
図9は、他の実施形態の建具1を示す縦断面図であり、図4と同様に、建具1の枠材30を含む上側部分と建物10を示している。
【0036】
図示のように、建具1は、合成樹脂製の保持部材70を備えている。保持部材70は、装着部71、押付部72、及び、外れ止め部73を有している。押付部72は、凸部74と、カバー50の係合部53に接触する接触部75を有している。外れ止め部73は、押付部72の凸部74に接続して、押付部72から突出している。装着部71は、枠材30に向かって突出する嵌合部76を有している。枠材30の対向部33に形成された嵌合孔に嵌合部76が嵌合して、装着部71が対向部33に装着される。
【0037】
なお、保持部材60、70の外れ止め部63、73をカバー50の係合部53との接触位置に配置した状態で、外れ止め部63、73は、係合部53に接触してもよく、係合部53との間に隙間をあけて、係合部53に接触可能な位置に配置されてもよい。また、建物10の取付面11の不陸等に対応して、カバー50の長手方向の全体又は一部が取付面11に当接して、カバー50が取付面11に押し付けられる。このように、カバー50の長手方向の少なくとも一部が取付面11に当接する。以上、枠材30が上枠である例について説明したが、枠材30は、上枠以外の枠材であってもよい。例えば、枠材30が縦枠である場合には、建物10の取付面11は、壁面、又は、開口部の側面である。
【0038】
以上のとおり、建具は、建物の取付面に隙間をあけて取り付けられる枠材を備えた建具であって、
前記取付面と前記枠材の間の隙間を覆うカバーと、
前記取付面と前記枠材の間の隙間で前記カバーを保持する保持部材と、を備え、
前記カバーは、前記保持部材に係合して、前記取付面と前記保持部材の間に保持される係合部を有し、
前記保持部材は、前記係合部と係合するとともに、前記係合部を前記取付面に向かって付勢して、前記カバーを前記取付面に押し付ける押付部を有する建具である。
従って、建物の取付面と枠材の間の隙間を覆う位置にカバーを安定して保持することができる。
【0039】
前記保持部材は、前記係合部と接触して、前記係合部が前記押付部から外れるのを防止する外れ止め部を有する。
保持部材の外れ止め部により、カバーを保持部材に確実に保持して、カバーにより、建物の取付面と枠材の間の隙間を覆うことができる。
【0040】
前記押付部は、前記取付面と前記枠材の間の隙間に配置されて、前記係合部により前記枠材側に向かって押されて弾性変形する板バネであり、
前記外れ止め部は、前記押付部に接続して、前記押付部から前記係合部に向かって突出する。
板バネである保持部材の押付部が弾性変形することで、カバーの係合部を保持部材の押付部に係合する位置に容易に配置することができる。また、係合部の位置が枠材側と建物の取付面側とに変化しても、押付部の弾性変形と復元とに伴い、外れ止め部を係合部との接触位置に配置することができる。これにより、係合部を押付部から外れ難くすることができる。
【0041】
前記押付部は、前記係合部を前記取付面に向かって付勢するとともに、前記係合部を前記枠材の見込み方向に付勢して、前記カバーを前記枠材に引き寄せる。
保持部材の押付部により、カバーの係合部を建物の取付面に向かって付勢しつつ、枠材の見込み方向において、カバーを枠材に引き寄せており、カバーのズレとガタツキを抑制して、カバーを安定して保持することができる。
【0042】
前記保持部材は、前記取付面と対向する前記枠材の対向部に装着される装着部を有し、
前記押付部は、前記装着部から前記取付面と前記枠材の間の隙間の内方に向かって突出する。
建物の取付面の影響を受けずに、押付部を建物の取付面と枠材の間の隙間に容易かつ確実に配置することができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・建具、2・・・ガイド、3・・・枠体、4・・・スペーサ、5・・・隙間、10・・・建物、11・・・取付面、12・・・床面、20・・・パネル体、21・・・框体、22・・・面材、23・・・ガイド溝、24・・・吊車、25・・・ローラ、30・・・枠材、31・・・見付け部、32・・・レール部、33・・・対向部、40・・・ビス、41・・・ビス、50・・・カバー、51・・・覆部、52・・・当接部、53・・・係合部、60・・・保持部材、61・・・装着部、62・・・押付部、63・・・外れ止め部、64・・・凸部、65・・・接触部、70・・・保持部材、71・・・装着部、72・・・押付部、73・・・外れ止め部、74・・・凸部、75・・・接触部、76・・・嵌合部、R・・・付勢方向、S・・・付勢方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9