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特許7408435線材のリングピッチ判定方法及び線材の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】線材のリングピッチ判定方法及び線材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/00 20060101AFI20231225BHJP
   B21B 1/16 20060101ALI20231225BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20231225BHJP
   B21B 38/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B21B39/00 J
B21B39/00 B
B21B1/16 B
B21C51/00 L
B21B38/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020033169
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133413
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】小林 正宜
(72)【発明者】
【氏名】中村 博志
(72)【発明者】
【氏名】石本 和聖
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174089(JP,A)
【文献】特開2005-224804(JP,A)
【文献】特開昭60-092018(JP,A)
【文献】特開2010-059478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 39/00 - 41/12
B21B 1/00 - 11/00
B21B 47/00 - 99/00
B21C 51/00
B21B 38/00 - 38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延により形成された線材をコイル状に巻き取るレイングヘッドと、このレイングヘッドで巻き取られて放出された上記線材を搬送する搬送装置とを備える線材の製造装置を用いた上記線材のリングピッチ判定方法であって、
上記レイングヘッドにより上記線材を巻き取る工程と、
上記巻工程後に上記レイングヘッドから放出され、上記搬送装置に落下中の上記線材を撮像する工程と、
上記撮像する工程で得られた画像に基づいて、上記線材のリングピッチを算出する工程と、
上記算出する工程で算出されたリングピッチに基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定する工程と
を備え
上記レイングヘッドの回転軸が、上記線材の放出方向上流側から下流側に向けて上記搬送装置の搬送方向下流側に傾斜しており、
上記撮像する工程で、コイル状の上記線材の隣接するリングの上端部分を、上記線材の搬送方向の下流側から撮像する線材のリングピッチ判定方法。
【請求項2】
上記撮像する工程で、上記レイングヘッドの放出方向に対して交差する角度で上記線材を撮像する請求項1に記載の線材のリングピッチ判定方法。
【請求項3】
上記撮像する工程で、少なくとも上記線材の先端部、中間部及び尾端部を撮像し、
上記算出する工程で、上記先端部、中間部及び尾端部のリングピッチを算出する請求項1又は請求項2に記載のリングピッチ判定方法。
【請求項4】
上記算出する工程で算出されたリングピッチに基づいて、上記線材全体におけるリングピッチの分布を抽出する工程をさらに備え、
上記判定する工程で、上記抽出する工程で抽出された上記リングピッチの分布に基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のリングピッチ判定方法。
【請求項5】
上記判定する工程で、過去にリング乱れが発生した他の線材のリングピッチに基づいて設定された閾値との比較によって上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の線材のリングピッチ判定方法。
【請求項6】
上記判定する工程が、
上記算出する工程で算出された上記リングピッチを、上記線材の各リングが基準位置を通過する時間間隔又は上記搬送装置上でのリングピッチに換算する工程と、
上記換算する工程で換算された値に基づいて上記リングピッチの乱れの有無を判定する工程とを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の線材のリングピッチ判定方法。
【請求項7】
熱間圧延により形成された線材をコイル状に巻き取るレイングヘッドと、
上記レイングヘッドで巻き取られて放出された上記線材を搬送する搬送装置と、
上記レイングヘッドから放出され、上記搬送装置に落下中の上記線材を撮像するカメラと、
上記カメラで得られた画像に基づいて、上記線材のリングピッチを算出する算出部と、
上記算出部で算出されたリングピッチに基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定する判定部と
を備え
上記レイングヘッドの回転軸が、上記線材の放出方向上流側から下流側に向けて上記搬送装置の搬送方向下流側に傾斜しており、
上記カメラが、コイル状の上記線材の隣接するリングの上端部分を、上記線材の搬送方向の下流側から撮像する線材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材のリングピッチ判定方法及び線材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビレット等の鋼片を連続圧延して線材を製造する線材の製造装置が知られている。この線材の製造装置は、加熱炉、粗圧延機、仕上げ圧延機、レイングヘッド、搬送装置及び集束機を上流側から下流側にこの順で備える。この線材の製造装置は、仕上げ圧延後の線材をレイングヘッドでコイル状に巻き取り、巻き取られた線材をコンベアやローラテーブル等の搬送装置で搬送して集束機で集束する。
【0003】
上記集束機で集束された線材は、リング径が均一であることが望ましい。そのため、上記レイングヘッドには、線材を真円に近い状態で巻き取りつつ、巻き取り後のリングを一定のピッチで放出することが求められる。
【0004】
一方、本出願人は、リング径の均一化を図る観点から、レイングヘッドによってコイル状に巻き取られ、搬送装置で搬送されている線材をカメラで撮像し、この線材のリングピッチを算出し、リングピッチが一定でない場合に線材の搬送姿勢を矯正する搬送方法を発案した(特開2015-174089号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-174089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に記載された搬送方法によると、レイングヘッドから放出された後の線材のリング形状を矯正することができる。しかしながら、この搬送方法は、搬送装置上に落下した線材のリングピッチが均一でない場合の対処法を提供するものであり、レイングヘッドから放出される線材のリングピッチ自体を制御するものではない。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、線材のリングピッチの乱れを早期に判定可能な線材のリングピッチ判定方法及び線材の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る線材のリングピッチ判定方法は、熱間圧延により形成された線材をコイル状に巻き取るレイングヘッドと、このレイングヘッドで巻き取られて放出された上記線材を搬送する搬送装置とを備える線材の製造装置を用いた上記線材のリングピッチ判定方法であって、上記レイングヘッドにより上記線材を巻き取る工程と、上記巻取工程後に上記レイングヘッドから放出され、上記搬送装置に落下中の上記線材を撮像する工程と、上記撮像工程で得られた画像に基づいて、上記線材のリングピッチを算出する工程と、上記算出工程で算出されたリングピッチに基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定する工程とを備える。
【0009】
当該線材のリングピッチ判定方法は、上記レイングヘッドから放出され、上記搬送装置に落下中の線材のリングピッチを算出することができるので、上記判定工程によって、上記線材のリングピッチの乱れを早期に判定することができる。
【0010】
上記撮像工程で、上記線材の放出方向下流側から、上記レイングヘッドの放出方向に対して交差する角度で上記線材を撮像するとよい。このように、上記撮像工程で、上記線材の放出方向下流側から、上記レイングヘッドの放出方向に対して交差する角度で上記線材を撮像することによって、上記算出工程で上記線材のリングピッチを容易かつ正確に算出することができる。
【0011】
上記撮像工程で、少なくとも上記線材の先端部、中間部及び尾端部を撮像し、上記算出工程で、上記先端部、中間部及び尾端部のリングピッチを算出するとよい。このように、上記撮像工程で、少なくとも上記線材の先端部、中間部及び尾端部を撮像し、上記算出工程で、上記先端部、中間部及び尾端部のリングピッチを算出することによって、上記判定工程により、上記線材のリングピッチの乱れを容易に判定することができる。
【0012】
上記算出工程で算出されたリングピッチに基づいて、上記線材全体におけるリングピッチの分布を抽出する工程をさらに備え、上記判定工程で、上記抽出工程で抽出された上記リングピッチの分布に基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定するとよい。このように、上記算出工程で算出されたリングピッチに基づいて、上記線材全体におけるリングピッチの分布を抽出する工程をさらに備え、上記判定工程で、上記抽出工程で抽出された上記リングピッチの分布に基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定することにより、上記線材のリングピッチの乱れを容易かつ確実に判定することができる。
【0013】
上記判定工程で、過去にリング乱れが発生した他の線材のリングピッチに基づいて設定された閾値との比較によって上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定するとよい。このように、上記判定工程で、過去にリング乱れが発生した他の線材のリングピッチに基づいて設定された閾値との比較によって上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定することによって、上記線材のリングピッチの乱れを容易かつ確実に判定することができる。
【0014】
上記判定工程が、上記算出工程で算出された上記リングピッチを、上記線材の各リングが基準位置を通過する時間間隔又は上記搬送装置上でのリングピッチに換算する工程と、上記換算工程で換算された値に基づいて上記リングピッチの乱れの有無を判定する工程とを有するとよい。このように、上記判定工程が、上記算出工程で算出された上記リングピッチを、上記線材の各リングが基準位置を通過する時間間隔又は上記搬送装置上でのリングピッチに換算する工程と、上記換算工程で換算された値に基づいて上記リングピッチの乱れの有無を判定する工程とを有することによって、集束時における線材のリング形状を制御しやすい。
【0015】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様に係る線材の製造装置は、熱間圧延により形成された線材をコイル状に巻き取るレイングヘッドと、上記レイングヘッドで巻き取られて放出された上記線材を搬送する搬送装置と、上記レイングヘッドから放出され、上記搬送装置に落下中の上記線材を撮像するカメラと、上記カメラで得られた画像に基づいて、上記線材のリングピッチを算出する算出部と、上記算出部で算出されたリングピッチに基づいて上記線材のリングピッチの乱れの有無を判定する判定部とを備える。
【0016】
当該線材の製造装置は、上記レイングヘッドから放出され、上記搬送装置に落下中の線材のリングピッチを算出することができるので、上記判定部によって、上記線材のリングピッチの乱れを早期に判定することができる。
【0017】
なお、本発明において、「リングピッチ」とは、コイル状に巻き取られた線材における長手方向に隣接するリング同士のピッチをいう。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の一態様に係る線材のリングピッチ判定方法及び他の一態様に係る線材の製造装置は、線材のリングピッチの乱れを早期に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る線材のリングピッチ判定方法を示すフロー図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る線材の製造装置を示す模式図である。
図3図3は、図1の線材のリングピッチ判定方法の撮像工程で得られた画像の一例を示す図である。
図4図4は、図1の線材のリングピッチ判定方法とは異なる実施形態に係る線材のリングピッチ判定方法を示すフロー図である。
図5図5は、図4の線材のリングピッチ判定方法の判定工程の詳細を示すフロー図である。
図6図6は、図2の線材の製造装置とは異なる実施形態に係る線材の製造装置を示す模式図である。
図7図7は、機器のメンテナンス前における抽出工程で抽出されたリングピッチの分布を示すグラフである。
図8図8は、機器のメンテナンス後における抽出工程で抽出されたリングピッチの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0021】
[第一実施形態]
<線材のリングピッチ判定方法>
図1の線材のリングピッチ判定方法(以下、単に「リングピッチ判定方法」ともいう)は、熱間圧延により形成された線材Xをコイル状に巻き取るレイングヘッド4と、このレイングヘッド4で巻き取られて放出された線材Xを搬送する搬送装置5とを備える図2の線材の製造装置1(以下、単に「製造装置1」ともいう)を用いた線材Xのリングピッチ判定方法である。当該リングピッチ判定方法は、レイングヘッド4により線材Xを巻き取る工程(巻取工程S1)と、巻取工程S1後にレイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下中の線材Xを撮像する工程(撮像工程S2)と、撮像工程S2で得られた画像に基づいて、線材Xのリングピッチを算出する工程(算出工程S3)と、算出工程S3で算出されたリングピッチに基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定する工程(判定工程S5)とを備える。また、当該リングピッチ判定方法は、算出工程S3で算出されたリングピッチに基づいて、線材X全体におけるリングピッチの分布を抽出する工程(抽出工程S4)を備える。判定工程S5では、抽出工程S4で抽出されたリングピッチの分布に基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定する。
【0022】
当該リングピッチ判定方法について説明するにあたり、まず図2を参照して当該リングピッチ判定方法を実施可能な製造装置1について説明する。
【0023】
〔製造装置〕
当該製造装置1は、ビレット等の鋼片を加熱する加熱炉(不図示)と、加熱された鋼片を熱間圧延する熱間圧延機2と、熱間圧延により形成された線材Xをコイル状に巻き取るレイングヘッド4と、レイングヘッド4で巻き取られて放出された線材Xを搬送する搬送装置5とを備える。また、当該製造装置1は、熱間圧延機2で形成され、レイングヘッド4に送られる途中の線材Xを冷却する冷却機3と、搬送装置5による搬送後の線材Xを集束する集束機6とを備える。当該製造装置1は、レイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下中の線材Xを撮像するカメラ7と、カメラ7で得られた画像に基づいて、線材Xのリングピッチを算出する算出部8と、算出部8で算出されたリングピッチに基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定する判定部10とを備える。さらに、当該製造装置1は、算出部8で算出されたリングピッチに基づいて、線材X全体におけるリングピッチの分布を抽出する抽出部9を備える。
【0024】
熱間圧延機2は、粗圧延機と、仕上げ圧延機とを有する。また、熱間圧延機2は、上記粗圧延機と上記仕上げ圧延機との間に中間列圧延機を有していてもよい。上記加熱炉で加熱された鋼片は、上記仕上げ圧延機を経ることで、所定の断面形状及び径を有する線材Xに形成される。
【0025】
レイングヘッド4は、回転軸を有するコーン状の回転体及びこの回転体に取り付けられる螺旋状のレイングパイプを有する。上記回転体の回転軸と上記レイングパイプの中心軸とは一致するよう構成されている。上記回転体の回転軸と上記レイングパイプの中心軸とは、鉛直方向に対して傾斜している。レイングヘッド4は、熱間圧延機2によって形成され、冷却機3によって冷却された線材Xを上記回転体を回転させつつ上記レイングパイプ内を通過させることにより、コイル状に巻き取り可能に構成されている。レイングヘッド4は、巻き取り後のコイル状の線材Xを上記回転体の回転軸方向に放出する。レイングヘッド4は、巻き取り後のコイル状の線材Xを搬送装置5上に、搬送装置5の搬送方向下流側に向けて放出する。
【0026】
搬送装置5は、レイングヘッド4から放出されたコイル状の線材Xを例えば水平方向に搬送する。搬送装置5としては、例えばコンベア、ローラテーブル等が挙げられる。
【0027】
カメラ7は、レイングヘッド4による線材Xの放出方向下流側から線材Xを撮像可能に配置されている。つまり、カメラ7は、レイングヘッド4から放出される線材Xを放出方向と対向する側から撮像可能に配置されている。カメラ7は、レイングヘッド4によって放出されるコイル状の線材Xを、この線材Xの中心軸(コイルの中心軸)と交差する角度から撮像可能に配置されている。カメラ7は、線材Xを水平方向から撮像可能に配置されている。図3に示すように、カメラ7は、コイル状の線材Xの隣接するリングの上端部分X1を選択的に(つまり、線材Xのリングの下端部分と重ならない位置で)撮像できる領域を含むよう配置されている。具体的には、カメラ7は、レイングヘッド4の上記回転体の下端位置よりも上方の部分を水平方向から撮像できるよう配置されている。カメラ7としては、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー、CCD(Charge Coupled Device)センサー等を有するものが用いられる。レイングヘッド4から放出される線材Xは高温となっており、線材Xが存在しない領域よりも輝度が高くなる。カメラ7は、予め輝度の閾値を設定しておき、この閾値よりも輝度が高い部分を線材Xとして検出する。なお、「水平方向」とは、完全な水平方向に限定されず、完全な水平方向に対して±10°以内の範囲内で傾斜した方向を含む。
【0028】
算出部8は、例えばコンピュータから構成される。算出部8は、例えばレイングヘッド4によって放出されたコイル状の線材Xの隣接するリング同士の上端部分の鉛直方向のピッチを算出する。算出部8は、カメラ7によって撮像された画像において、輝度が閾値以下である画素から輝度が閾値よりも高くなる画素までの画素数に基づいてリングピッチを算出する。
【0029】
抽出部9は、例えばコンピュータから構成される。抽出部9は、算出部8で算出されたリングピッチに基づいて線材X全体におけるリングピッチの分布を抽出することで、線材X全体におけるリングピッチのばらつき具合を検出する。
【0030】
判定部10は、例えばコンピュータから構成される。判定部10は、抽出部9で抽出されたリングピッチの分布に基づいて線材Xのリングピッチの乱れを判定可能に構成される。判定部10は、過去にリング乱れが発生した他の線材Xのリングピッチのデータを格納するデータベースを有していてもよい。例えば、判定部10は、集束機6に集束された状態でリング乱れが発生した他の線材Xにおけるレイングヘッド4からの放出時点でのリングピッチの分布のデータをデータベースに格納していてもよい。この場合、判定部10は、抽出部9で抽出された線材X全体におけるリングピッチの分布を上記データベースに格納されているリングピッチの分布のデータに基づいて設定された閾値と比較することで、線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定可能に構成される。
【0031】
なお、算出部8、抽出部9及び判定部10の一部又は全部は、一体的に設けられていてもよい。また、算出部8、抽出部9及び判定部10の一部又は全部は、カメラ7と一体的に設けられてもよい。
【0032】
以下、当該リングピッチ判定方法の各工程について詳述する。
【0033】
(巻取工程)
巻取工程S1では、熱間圧延機2により形成され、冷却機3を通過した線材Xをレイングヘッド4によってコイル状に巻き取る。
【0034】
(撮像工程)
撮像工程S2では、レイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下中の線材Xをカメラ7で撮像する。撮像工程S2では、線材Xの放出方向下流側から、レイングヘッド4の放出方向(すなわち上記回転体の回転軸)に対して交差する角度で線材Xを撮像することが好ましい。当該リングピッチ判定方法は、撮像工程S2で、上記方向から上記角度で線材Xを撮像することによって、算出工程S3で線材Xのリングピッチを容易かつ正確に算出することができる。詳しく説明すると、上述のように、レイングヘッド4は、上記回転体の回転軸方向に線材Xを放出する。そのため、撮像工程S2で、上述の方向及び角度から線材Xを撮像することで、撮像工程S2では、図3に示すように、レイングヘッド4から放出された直後における線材Xのリングの上端部分X1を撮像することができる。図3に示すように、カメラ7の画像において、線材Xの隣接するリングの上端部分X1間には、他のリングの下端部は存在しない。その結果、算出工程S3で、線材Xのリングの下端部分がリングピッチの指標として誤認されることを防止でき、上端部分X1同士のリングピッチPを容易かつ正確に算出できる。
【0035】
撮像工程S2では、コイル状の線材Xの長手方向(コイルの長手方向)における特定の部分のみを撮像してもよいが、線材Xを一定の間隔で連続的に撮像することが好ましい。また、撮像工程S2では、少なくとも線材Xの先端部、中間部及び尾端部を撮像することが好ましい。なお、線材Xの「先端部」とは、例えばレイングヘッドによる線材Xの放出開始時から放出完了時までの時間のうち放出開始時から5%以内の間に放出される部分をいい、「尾端部」とは放出完了時から5%以内の間に放出される部分をいう。また、線材Xの「中間部」とは、「先端部」と「尾端部」とに挟まれる部分をいう。
【0036】
(算出工程)
算出工程S3は、算出部8によって行う。算出工程S3では、撮像工程S2で得られた画像におけるリング間の画素数に基づいてリングピッチを算出する。算出工程S3では、例えば線材Xの隣接するリングの上端部分X1同士のリングピッチPを算出する。算出工程S3では、撮像工程S2で得られた画像において、線材Xの隣接するリングの上端部分X1のみが選択的に撮像された領域におけるリング間の画素数に基づいてリングピッチPを算出することが好ましい。当該リングピッチ判定方法は、撮像工程S2で搬送装置5に落下途中の線材Xを撮像することで、この撮像工程S2で線材Xのリングの上端部分X1のみが選択的に存在する領域を撮像することができる。当該リングピッチ判定方法は、算出工程S3で、線材Xのリングの上端部分X1のみが選択的に撮像された領域におけるリング間の画素数に基づいてリングピッチPを算出することで、リングの下端部がリングピッチの測定領域に現れることを防止し、リングピッチPの算出に当たって、リングの下端部分がリングピッチの指標として誤認されることを防止できる。
【0037】
算出工程S3では、線材Xの長手方向における特定の部分のリングピッチのみを算出してもよいが、線材Xのリングピッチを線材Xの長手方向に亘って連続的に算出することが好ましい。また、算出工程S3では、少なくとも線材Xの先端部、中間部及び尾端部のリングピッチを算出することが好ましい。この構成によると、当該リングピッチ判定方法は、判定工程S5で線材Xのリングピッチの乱れを容易に判定することができる。
【0038】
(抽出工程)
抽出工程S4は、抽出部9によって行う。抽出工程S4では、例えば線材X全体におけるリングピッチの標準偏差、平均値、尖度等を抽出してもよい。中でも、抽出工程S4では、線材X全体におけるリングピッチの標準偏差を抽出することが好ましい。抽出工程S4では、少なくとも線材Xの先端部、中間部及び尾端部のリングピッチを含むリングピッチの分布を抽出することが好ましく、線材Xの長手方向全体に亘って連続的に算出されたリングピッチの分布を抽出することがより好ましい。
【0039】
(判定工程)
判定工程S5は、判定部10によって行う。判定工程S5では、抽出工程S4で抽出されたリングピッチの分布を予め定めた閾値と比較してリングピッチの乱れの有無を判定する。これにより、当該リングピッチ判定方法は、線材Xのリングピッチの乱れを容易かつ確実に判定することができる。
【0040】
上記閾値は、過去にリング乱れが発生した他の線材Xのレイングヘッド4からの放出時点におけるリングピッチに基づいて設定されることが好ましい。つまり、判定工程S5では、過去にリング乱れが発生した他の線材Xのリングピッチに基づいて設定された閾値との比較によって線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定することが好ましい。また、上記閾値は、線径、圧延速度、鋼種等の層別毎に設定されることがさらに好ましい。判定工程S5では、過去にリング乱れが発生した他の線材Xのレイングヘッド4からの放出時点でのリングピッチの分布に基づいて設定された閾値との比較によって線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定することができる。これにより、当該リングピッチ判定方法は、線材Xのリングピッチの乱れを容易かつ確実に判定することができる。
【0041】
(その他の工程)
当該リングピッチ判定方法は、判定工程S5で線材Xのリングピッチに乱れ有りと判定された場合に、この判定結果に基づいて当該製造装置1の搬送装置5よりも上流側の機器をメンテナンスする工程をさらに備えていてもよい。
【0042】
<利点>
当該リングピッチ判定方法は、算出工程S3で、レイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下中の線材Xのリングピッチを算出することができるので、判定工程S5によって、線材Xのリングピッチの乱れを早期に判定することができる。すなわち、当該リングピッチ判定方法は、判定工程S5によって、搬送装置5の影響を受けていない状態での線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定することができる。
【0043】
当該製造装置1は、レイングヘッド4から放出されて搬送装置5に落下中の線材Xのリングピッチを算出部8により算出することができるので、判定部10によって、線材Xのリングピッチの乱れを早期に判定することができる。すなわち、当該製造装置1は、判定部10によって、搬送装置5の影響を受けていない状態での線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定することができる。
【0044】
[第二実施形態]
<線材のリングピッチ判定方法>
図4のリングピッチ判定方法は、熱間圧延により形成された線材Xをコイル状に巻き取るレイングヘッド4と、このレイングヘッド4で巻き取られて放出された線材Xを搬送する搬送装置5とを備える図6の線材の製造装置11(以下、単に「製造装置11」ともいう)を用いた線材Xのリングピッチ判定方法である。当該リングピッチ判定方法は、レイングヘッド4により線材Xを巻き取る工程(巻取工程S11)と、巻取工程S11後にレイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下中の線材Xを撮像する工程(撮像工程S12)と、撮像工程S12で得られた画像に基づいて、線材Xのリングピッチを算出する工程(算出工程S13)と、算出工程S13で算出されたリングピッチに基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定する工程(判定工程S14)とを備える。図5に示すように、判定工程S14は、算出工程S13で算出されたリングピッチを、線材Xの各リングが基準位置を通過する時間間隔又は搬送装置5上でのリングピッチに換算する工程(換算工程S141)と、換算工程S141で換算された値に基づいてリングピッチの乱れの有無を判定する工程(リングピッチ判定工程S142)とを有する。当該リングピッチ判定方法は、換算工程S141で換算された値に基づいて、線材X全体における各リングが基準位置を通過する時間間隔の分布又は搬送装置5上でのリングピッチの分布を抽出する工程(抽出工程)をさらに備えていてもよい。当該リングピッチ判定方法における巻取工程S11、撮像工程S12及び算出工程S13は、図1のリングピッチ判定方法における巻取工程S1、撮像工程S2及び算出工程S3と同様の手順で行うことができる。
【0045】
〔製造装置〕
図6の製造装置11は、ビレット等の鋼片を加熱する加熱炉(不図示)と、加熱された鋼片を熱間圧延する熱間圧延機2と、熱間圧延により形成された線材Xをコイル状に巻き取るレイングヘッド4と、レイングヘッド4で巻き取られて放出された線材Xを搬送する搬送装置5とを備える。また、当該製造装置11は、熱間圧延機2で形成され、レイングヘッド4に送られる途中の線材Xを冷却する冷却機3と、搬送装置5による搬送後の線材Xを集束する集束機6とを備える。さらに、当該製造装置11は、レイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下中の線材Xを撮像するカメラ7と、カメラ7で得られた画像に基づいて、線材Xのリングピッチを算出する算出部8と、算出部8で算出されたリングピッチに基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定する判定部20とを備える。当該製造装置11は、後述の換算部で換算された値に基づいて、線材X全体における各リングが基準位置を通過する時間間隔の分布又は搬送装置5上でのリングピッチの分布を抽出する抽出部を備えていてもよい。当該製造装置11における熱間圧延機2、冷却機3、レイングヘッド4、搬送装置5、集束機6、カメラ7及び算出部8としては、図2の製造装置1における熱間圧延機2、冷却機3、レイングヘッド4、搬送装置5、集束機6、カメラ7及び算出部8と同様の構成とすることができるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
判定部20は、例えばコンピュータから構成される。判定部20は、算出部8で算出されたリンピッチを、線材Xの各リングが基準位置を通過する時間間隔又は搬送装置5上でのリングピッチに換算する換算部と、上記換算部で換算された値に基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定するリングピッチ判定部とを有する。上記基準位置としては、例えばレイングヘッド4から放出され、搬送装置5に落下する間の空間における所定位置や、搬送装置5上の所定位置が挙げられる。上記換算部は、算出部8で算出されたリングピッチに所定の係数を掛けることで、このリングピッチを線材Xの各リングが基準位置を通過する時間間隔又は搬送装置5上でのリングピッチに換算する。
【0047】
判定部20は、集束機6に集束された状態でリング乱れが発生した他の線材Xにおける各リングが上記基準位置を通過した時間間隔に関するデータ及び/又は搬送装置5上でのリングピッチに関するデータを格納するデータベースを有していてもよい。この場合、上記リングピッチ判定部は、上記データベースに格納されているデータに基づいて設定された閾値と比較することで、線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定することができる。
【0048】
当該製造装置11が上述の抽出部を備える場合、上記リングピッチ判定部は、この抽出部で抽出された線材X全体における各リングが基準位置を通過する時間間隔の分布又は搬送装置5上でのリングピッチの分布に基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定してもよい。この場合、判定部20は、集束機6に集束された状態でリング乱れが発生した他の線材Xにおける各リングが上記基準位置を通過した時間間隔の分布に関するデータ及び/又は搬送装置5上でのリングピッチの分布に関するデータをデータベースに格納しておき、このデータベースに格納されているデータに基づいて設定された閾値と比較することで、線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定してもよい。なお、判定部20は、カメラ7、算出部8及び上記抽出部の一部又は全部と一体的に設けられていてもよい。
【0049】
(判定工程)
判定工程S14は、判定部20によって行う。
【0050】
〔換算工程〕
換算工程S141では、算出工程S13で算出されたリングピッチに所定の係数を掛けることで、このリングピッチを線材Xの各リングが基準位置を通過する時間間隔又は搬送装置5上でのリングピッチに換算する。
【0051】
〔リングピッチ判定工程〕
リングピッチ判定工程S142では、換算工程S141で換算された値を予め定めた閾値と比較してリングピッチの乱れの有無を判定する。当該リングピッチ判定方法が上述の抽出工程を備える場合、リングピッチ判定工程S142では、この抽出工程で抽出された線材X全体における各リングが基準位置を通過する時間間隔の分布又は搬送装置5上でのリングピッチの分布に基づいて線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定してもよい。リングピッチ判定工程S142では、上述のデータベースに格納されているデータに基づいて設定された閾値と比較することで、線材Xのリングピッチの乱れの有無を判定することが好ましい。
【0052】
(その他の工程)
当該リングピッチ判定方法は、判定工程S14で線材Xのリングピッチに乱れ有りと判定された場合に、この判定結果に基づいて当該製造装置11の搬送装置5よりも上流側の機器をメンテナンスする工程を備えていてもよい。
【0053】
<利点>
当該リングピッチ判定方法は、判定工程S14が換算工程S141及びリングピッチ判定工程S142を備えるので、集束機6に集束される時点における線材Xのリング形状を制御しやすい。
【0054】
当該製造装置11は、判定部20が上記換算部及び上記リングピッチ判定部を備えるので、集束機6に集束される時点における線材Xのリング形状を制御しやすい。
【0055】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0056】
例えば上記撮像工程における撮像方向及び撮像角度は、上述の実施形態に記載の方向及び角度に限定されるものではない。
【0057】
上記撮像工程では、上記線材の先端部、中間部及び尾端部のうちの一部分を撮像しないことも可能である。例えば、当該リングピッチ判定方法は、上記判定部が、上記線材の特定の部分のリングピッチを過去にリング乱れが発生した他の線材の対応する部分のリングピッチと比較することでリングピッチの乱れの有無を判定することも可能である。
【0058】
上記判定工程では、例えば上記算出工程で算出された1つの線材の複数部分のリングピッチ同士のピッチ差が予め設定した閾値を超えている場合にリング乱れが有ると判定してもよい。
【実施例
【0059】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例]
線材の放出方向下流側から、レイングヘッド4の放出方向に対して交差する角度で線材を撮像できるよう、レイングヘッド4の放出方向下流側に高速度カメラ7を配置した図2の製造装置1を用いて線材を製造した。カメラ7としては、解像度752×480、133FPSの1/3インチCMOSセンサーを有するものを用いた。図3に示すように、カメラ7によって線材のリングの上端部分を撮像し、画像処理により輝度検査を行った。画面上に複数のリングの上端部分が撮像される視野となるレンズ焦点距離を選び、輝度検査を行っている領域に存在するリングと、この1つ前に放出されたリングとが1つの画像の中に撮像されるようにした。閾値よりも輝度が高い部分が線材として検出されるように予め閾値を設定しておき、輝度が閾値よりも高くなる画素間の輝度が閾値以下である画素数に基づいてリングピッチを求めた。線材の全長に亘ってリングピッチを連続的に算出したうえ、この線材全体におけるリングピッチの分布を抽出した。この抽出結果を図7に示す。
【0061】
図7では、リングピッチの分布にばらつきが大きかったため、この結果に基づいて搬送装置5よりも上流側の機器のメンテナンスを行った。
【0062】
このメンテナンスの後、上記と同様の手順で線材全体におけるリングピッチの分布を抽出した。この抽出結果を図8に示す。
【0063】
リングピッチの分布にばらつきに基づいて機器のメンテナンスを行った結果、図8に示すようにリングピッチのばらつきが改善された。
【0064】
このことから、例えば過去にリング乱れが発生した他の線材のリングピッチに基づいて適切な閾値を設けておき、この閾値と上述の算出工程で算出されたリングピッチとを比較することで、リングピッチの乱れの有無を適切に判定できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明の一態様に係る線材のリングピッチ判定方法は、線材のリングピッチの乱れを早期に判定することができるので、線材のリング形状の均一化を促進するのに適している。
【符号の説明】
【0066】
1、11 線材の製造装置
2 熱間圧延機
3 冷却機
4 レイングヘッド
5 搬送装置
6 集束機
7 カメラ
8 算出部
9 抽出部
10、20 判定部
X 線材
X1 上端部分
P リングピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8