(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】印刷方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20231225BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20231225BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G06F3/12 341
B41J29/38 201
B41J5/30 Z
G06F3/12 303
G06F3/12 356
G06F3/12 344
G06F3/12 355
G06F3/12 340
G06F3/12 360
G06F3/12 387
(21)【出願番号】P 2020033223
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121348
【氏名又は名称】川原 健児
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大貫 陽平
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-134399(JP,A)
【文献】特開2012-252513(JP,A)
【文献】特開2002-355954(JP,A)
【文献】特開2016-004410(JP,A)
【文献】特開2015-030197(JP,A)
【文献】特開2006-185437(JP,A)
【文献】特開2015-036920(JP,A)
【文献】特開2005-169918(JP,A)
【文献】特開2019-096172(JP,A)
【文献】特開2017-039229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0044612(US,A1)
【文献】特開2006-099738(JP,A)
【文献】特開2010-061205(JP,A)
【文献】特開2019-043081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 29/38
B41J 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷条件毎に複数のページデータの連続印刷を行う印刷システムにおける印刷方法であって、
連続印刷の対象とするページデータを指定するページデータ指定ステップと、
前記ページデータ指定ステップで指定されたページデータである対象データ毎に印刷に関する要件を設定する要件設定ステップと、
前記対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションを行うRIPシミュレーションステップと、
前記RIPシミュレーションステップで得られた印刷条件毎のシミュレーション結果データに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件が満たされるよう、前記複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに前記対象データを特定するレコードを登録する対象データ振り分けステップと、
前記連続印刷リストに登録されているレコードの並び替えを行うレコード並び替えステップと、
生成済みの連続印刷リストに登録されているレコードによって特定される一群のページデータについて、当該生成済みの連続印刷リストに対応する印刷条件で、RIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理を含む連続印刷の処理を実行する連続印刷実行ステップと
を含
み、
前記RIPシミュレーションステップでは、印刷条件毎に前記シミュレーション結果データとしてRIP速度が求められ、
前記レコード並び替えステップでは、前記連続印刷実行ステップでの前記一群のページデータに対する連続印刷の処理がRIP速度の低い順で行われるよう、または、前記一群のページデータに対する連続印刷の処理が平均RIP速度に近いものが先に行われ、かつ、平均RIP速度から遠いものが後に行われるよう、各レコードに対応するRIP速度に基づいて並び替えが行われることを特徴とする、印刷方法。
【請求項2】
前記対象データ振り分けステップでは、印刷速度よりも高いRIP速度が得られる印刷条件に対応する連続印刷リストの中から前記レコードの登録先の連続印刷リストが決定されることを特徴とする、請求項
1に記載の印刷方法。
【請求項3】
印刷条件毎に複数のページデータの連続印刷を行う印刷システムにおける印刷方法であって、
連続印刷の対象とするページデータを指定するページデータ指定ステップと、
前記ページデータ指定ステップで指定されたページデータである対象データ毎に印刷に関する要件を設定する要件設定ステップと、
前記対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションを行うRIPシミュレーションステップと、
前記RIPシミュレーションステップで得られた印刷条件毎のシミュレーション結果データに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件が満たされるよう、前記複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに前記対象データを特定するレコードを登録する対象データ振り分けステップと、
生成済みの連続印刷リストに登録されているレコードによって特定される一群のページデータについて、当該生成済みの連続印刷リストに対応する印刷条件で、RIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理を含む連続印刷の処理を実行する連続印刷実行ステップと
を含
み、
前記RIPシミュレーションステップでは、印刷条件毎に前記シミュレーション結果データとしてRIP速度が求められ、
前記対象データ振り分けステップでは、印刷速度よりも高いRIP速度が得られる印刷条件に対応する連続印刷リストの中から前記レコードの登録先の連続印刷リストが決定されることを特徴とする、印刷方法。
【請求項4】
前記対象データ振り分けステップは、
前記複数の印刷条件の中から前記要件設定ステップで設定された要件を満たす1以上の印刷条件を抽出する印刷条件抽出ステップと、
前記印刷条件抽出ステップで抽出された前記1以上の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストへの前記レコードの登録を行うレコード登録ステップと
を含むことを特徴とする、請求項
1から3までのいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記要件設定ステップでは、要件に対する優先度の設定が行われ、
前記印刷条件抽出ステップで2以上の印刷条件が抽出された場合、前記レコード登録ステップでは、要件に対する優先度を考慮して、当該2以上の印刷条件に対応する2以上の連続印刷リストの中から前記レコードの登録先の連続印刷リストが決定されることを特徴とする、請求項
4に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記RIPシミュレーションステップでは、印刷条件毎に前記シミュレーション結果データとしてインク色毎のインク消費量が求められ、
前記要件設定ステップでは、印刷に関する要件として予算についての要件が設定され、
前記対象データ振り分けステップでは、各印刷条件に関して、予め定められているインク色毎の係数と前記RIPシミュレーションステップで求められたインク色毎のインク消費量とに基づいて算出される価格と前記要件設定ステップで設定された予算とを比較することによって、前記要件設定ステップで設定された要件を満たすか否かの判断が行われることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項7】
印刷条件毎のスケジュールの情報が保持され、
前記要件設定ステップでは、印刷に関する要件として納期についての要件が設定され、
前記対象データ振り分けステップでは、各印刷条件に関して、前記スケジュールの情報と前記要件設定ステップで設定された納期とに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件を満たすか否かの判断が行われることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記RIPシミュレーションステップでのRIP処理のシミュレーションでエラーが発生した対象データについては、前記対象データ振り分けステップにおいて、エラーが発生した印刷条件に対応する連続印刷リストに対しては前記レコードの登録は行われないことを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記対象データを構成する内部データの解析を行うページデータ解析ステップを更に含み、
前記ページデータ解析ステップで前記内部データの異常が発見された対象データについては、前記対象データ振り分けステップにおいて、いずれの連続印刷リストに対しても前記レコードの登録は行われないことを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項10】
前記印刷システムは、前記印字処理を行う複数の印刷機と、前記複数の印刷機と1対1で対応するように設けられ前記RIP処理を行う複数のRIPサーバと、前記対象データに対するRIP処理のシミュレーションを行う1台のシミュレーションサーバとを含み、
前記1台のシミュレーションサーバで、印刷機毎の各印刷条件に対応する連続印刷リストが生成されることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項11】
前記1台のシミュレーションサーバは、インターネットを介して外部端末と接続され、
前記ページデータ指定ステップでのページデータの指定および前記要件設定ステップでの要件の設定は、前記外部端末で行われ、
前記対象データ振り分けステップでは、
前記要件設定ステップで設定された要件を満たす1以上の印刷条件をそれぞれ特定するための1以上の納品情報が選択可能な態様で前記外部端末に提示され、
前記外部端末で選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに対して前記レコードの登録が行われることを特徴とする、請求項
10に記載の印刷方法。
【請求項12】
印刷条件毎に複数のページデータの連続印刷を行う印刷システムにおける印刷方法であって、
連続印刷の対象とするページデータを指定するページデータ指定ステップと、
前記ページデータ指定ステップで指定されたページデータである対象データ毎に印刷に関する要件を設定する要件設定ステップと、
前記対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションを行うRIPシミュレーションステップと、
前記RIPシミュレーションステップで得られた印刷条件毎のシミュレーション結果データに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件が満たされるよう、前記複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに前記対象データを特定するレコードを登録する対象データ振り分けステップと、
生成済みの連続印刷リストに登録されているレコードによって特定される一群のページデータについて、当該生成済みの連続印刷リストに対応する印刷条件で、RIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理を含む連続印刷の処理を実行する連続印刷実行ステップと
を含
み、
前記印刷システムは、前記対象データに対するRIP処理のシミュレーションを行うシミュレーションサーバを含み、
前記シミュレーションサーバは、インターネットを介して外部端末と接続され、
前記ページデータ指定ステップでのページデータの指定および前記要件設定ステップでの要件の設定は、前記外部端末で行われ、
前記対象データ振り分けステップでは、
前記要件設定ステップで設定された要件を満たす1以上の印刷条件をそれぞれ特定するための1以上の納品情報が選択可能な態様で前記外部端末に提示され、
前記外部端末で選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに対して前記レコードの登録が行われ、
前記納品情報は、価格および印刷物の提供日を含むことを特徴とする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおける印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークフローによる処理が行われる印刷システムでは、まず、フロントエンドと呼ばれるコンピュータ(例えば、パソコン)でDTPソフトウェアなどを用いて、印刷物を構成する部品等を用いた編集処理が行われる。その編集処理により、印刷対象をページ記述言語等で記述したページデータ(例えば、PostscriptファイルやPDFファイル)が作成される。次に、ページデータに対するRIP処理(ラスタライズ処理)が行われる。これにより、ページデータは、印刷対象の画像を表すビットマップ形式の画像データである印刷データに変換される。そして、印刷データがデジタル印刷機(例えば、インクジェット印刷装置)に送られて、当該デジタル印刷機で印刷データに基づく印刷が行われる。あるいは、印刷データを用いて製版装置により印刷版が作製され、その印刷版を使用して有版印刷機により印刷が行われる。
【0003】
このような印刷システムにおいて、従来より、印刷機等の資源を効率的に使用する等の目的で、RIP処理に要する時間(以下、単に「RIP時間」という。)を予測することが行われている。また、近年、RIP処理のシミュレーションを行うソフトウェア(以下、「RIPシミュレーションソフト」という。)が製品化されている。RIPシミュレーションソフトでは、実際に印刷出力が実行される際の実環境とは異なる環境(以下、「シミュレーション環境」という。)でページデータに対してRIP処理が行われる。実環境下でのRIP速度とシミュレーション環境下でのRIP速度との間には相関関係があり、当該相関関係に基づきシミュレーション環境下でのRIP時間から実環境下での予測RIP時間が求められる。また、典型的なRIPシミュレーションソフトには、シミュレーション環境下でのRIP処理で得られた画像データに基づきインク消費量を予測する機能や、実環境下でのRIP処理で問題が生じる可能性をユーザーに提示するためにページデータを構成する内部データを解析する機能が設けられている。
【0004】
従来のRIPシミュレーションソフトでシミュレーションが行われると、例えば、RIP処理に関する結果を記した「出力予測レポート」と呼ばれる報告書と、ページデータとしてのPDFファイルの解析結果を記した「PDF解析レポート」と呼ばれる報告書とが作成される。出力予測レポートおよびPDF解析レポートはPDFで作成されている。
【0005】
図27は、出力予測レポートの一部であるRIP速度予測ページ900の一例を示す図である。
図27に示すように、RIP速度予測ページ900には、実環境でRIP処理が行われた場合のRIP速度の予測値(予測RIP速度)などが表示されている。
図28は、出力予測レポートの一部であるインク消費量予測ページ905の一例を示す図である。
図28に示すように、インク消費量予測ページ905には、インク色毎(インクの種類毎)のインク消費量の予測値が表示されている。
【0006】
図29は、出力予測レポートに含まれるRIP時間予測グラフ910の一例を示す図である。横軸はシート番号であり、縦軸はRIP時間である。
図29に示す例では、750枚のシート毎の予測RIP時間が符号911を付した折れ線グラフで表されている。また、印刷出力が実際に実行される際の印刷速度に対応するRIP時間が符号912を付した点線で表されている。折れ線グラフ911上の全ての点が点線912よりも下の領域に存在していれば、RIP処理が確実に印刷機の出力動作に間に合うように行われる旨が把握される。一方、折れ線グラフ911上の点が点線912よりも上の領域に存在していれば、RIP処理が印刷機の出力動作に間に合わない可能性がある旨が把握される。なお、RIP処理が印刷機の出力動作に間に合わない可能性が高い場合には、実際の印刷出力の前にRIP処理を行うこと(事前RIP)や印刷速度を低くすることが検討される。
【0007】
図30は、PDF解析レポートの一部であってPDFファイルを構成する内部データの解析結果を記したページ(以下、「解析結果ページ」という。)920の一例を示す図である。解析結果ページ920には、複数の解析項目のうち問題があった項目についての結果が記されている。例えば、符号921を付した行は、「解析番号=13」で特定される項目に関して3ページ目に問題が生じていることを示している。また、例えば、符号922を付した行は、「解析番号=32」で特定される項目に関して合計25のページで問題が生じていることを示している。ところで、符号922を付した行からは、具体的にどのページで問題が生じているのかを把握することはできない。そこで、PDF解析レポートには、解析番号と問題が生じているページとの対応関係を記したページ(以下、「詳細情報ページ」という。)が含まれている。
図31は、詳細情報ページ930の一例を示す図である。例えば、符号931を付した行には、「解析番号=32」で特定される項目に関して問題が生じた25のページの番号が記されている。以上のようなPDF解析レポートにより、ユーザーは、実環境下でRIP処理が行われた場合にどのページでどのような問題が生じ得るのかを把握することができる。
【0008】
ところで、印刷業務においては、複数のページデータに対する連続印刷が行われることがよくある。連続印刷では、複数のページデータに対してRIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理が連続的に実行される。従来、このような連続印刷の実行の指示は、連続印刷の対象とするページデータをユーザーが例えば印刷機のコントローラ画面から登録することによって行われている。これに関し、問題のあるページデータが連続印刷の対象に含まれている場合に、連続印刷の処理が途中で止まることがある。そこで、上述の出力予測レポートやPDF解析レポートを参考にして、問題のあるページデータを連続印刷の対象外とすることが行われている。
【0009】
なお、本件発明に関連して、以下の先行技術文献が知られている。特開2002-182875号公報には、効率的なスケジューリングを行うことが可能な印刷制御装置の発明が開示されている。この印刷制御装置では、複数のジョブのそれぞれのRIP時間および印刷処理時間が予測され、その予測結果に基づいて、例えば待ち時間が最小となるように、当該複数のジョブについての最適スケジュールが作成される。また、特開2012-43123号公報には、複数のジョブを納期までに処理するための処理順序を決定する処理順決定装置の発明が開示されている。この処理順決定装置では、複数のジョブのそれぞれについて納期までの期間と予測処理期間とに基づいて残余期間が算出され、処理対象ジョブの順番が残余期間の短いものから順に決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-182875号公報
【文献】特開2012-43123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば大量の印刷出力を行う印刷会社では、複数の印刷機が用いられている。RIPシミュレーションソフトは印刷機に接続されたサーバに導入されるが、複数の印刷機からなる印刷システムにおいては、印刷機の数に等しい数のサーバにRIPシミュレーションソフトを導入する必要がある。すなわち、印刷機毎に、それに対応するサーバにRIPシミュレーションソフトが導入される。従って、大量のページデータの連続印刷を複数の印刷機に分散させて実行しようとする場合、各サーバでのRIP処理のシミュレーションの結果を考慮する必要がある。
【0012】
ところで、印刷システムが複数の印刷機で構成されているか否かに関わらず、一般的に、各印刷機では複数の条件を切り替えつつ印刷出力が行われる。例えば、印刷対象に応じて、用紙サイズ、解像度、印刷速度などが切り替えられる。なお、印刷システムが複数の印刷機で構成されている場合には、それら複数の印刷機を区別する必要がある。そこで、本明細書では、印刷機、用紙サイズ、解像度、印刷速度など、印刷の可否、印刷品質、若しくは印刷生産性などに関する条件の組み合わせのことを「印刷条件」という。
【0013】
印刷会社に印刷を依頼する顧客には、印刷に関して様々な要望がある。従って、複数の印刷条件で連続印刷を行っている場合には、処理順序を決定する際にそれら顧客の要望を考慮する必要がある。また、上述したように、大量のページデータの連続印刷を複数の印刷機に分散させて実行しようとする場合、各サーバでのシミュレーション結果を考慮する必要がある。これに関し、シミュレーション結果は印刷条件毎に得られるので、仮に1台の印刷機しか使用されていない場合でも、複数の印刷条件が使用されていれば、各ページデータについて、それら複数の印刷条件にそれぞれ対応する複数のシミュレーション結果を考慮する必要がある。以上より、顧客の要望が満たされるように連続印刷の処理順序を決定するためには、大量の情報を考慮する必要がある。それ故、従来の印刷システムでは、連続印刷についての好適な処理順序を決定することは困難であった。
【0014】
そこで、本発明は、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおいて、各顧客(印刷会社に印刷を依頼する者)の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザー(印刷会社の作業者)の負担なく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、印刷条件毎に複数のページデータの連続印刷を行う印刷システムにおける印刷方法であって、
連続印刷の対象とするページデータを指定するページデータ指定ステップと、
前記ページデータ指定ステップで指定されたページデータである対象データ毎に印刷に関する要件を設定する要件設定ステップと、
前記対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションを行うRIPシミュレーションステップと、
前記RIPシミュレーションステップで得られた印刷条件毎のシミュレーション結果データに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件が満たされるよう、前記複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに前記対象データを特定するレコードを登録する対象データ振り分けステップと、
前記連続印刷リストに登録されているレコードの並び替えを行うレコード並び替えステップと、
生成済みの連続印刷リストに登録されているレコードによって特定される一群のページデータについて、当該生成済みの連続印刷リストに対応する印刷条件で、RIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理を含む連続印刷の処理を実行する連続印刷実行ステップと
を含み、
前記RIPシミュレーションステップでは、印刷条件毎に前記シミュレーション結果データとしてRIP速度が求められ、
前記レコード並び替えステップでは、前記連続印刷実行ステップでの前記一群のページデータに対する連続印刷の処理がRIP速度の低い順で行われるよう、または、前記一群のページデータに対する連続印刷の処理が平均RIP速度に近いものが先に行われ、かつ、平均RIP速度から遠いものが後に行われるよう、各レコードに対応するRIP速度に基づいて並び替えが行われることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、
前記対象データ振り分けステップでは、印刷速度よりも高いRIP速度が得られる印刷条件に対応する連続印刷リストの中から前記レコードの登録先の連続印刷リストが決定されることを特徴とする。
第3の発明は、印刷条件毎に複数のページデータの連続印刷を行う印刷システムにおける印刷方法であって、
連続印刷の対象とするページデータを指定するページデータ指定ステップと、
前記ページデータ指定ステップで指定されたページデータである対象データ毎に印刷に関する要件を設定する要件設定ステップと、
前記対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションを行うRIPシミュレーションステップと、
前記RIPシミュレーションステップで得られた印刷条件毎のシミュレーション結果データに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件が満たされるよう、前記複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに前記対象データを特定するレコードを登録する対象データ振り分けステップと、
生成済みの連続印刷リストに登録されているレコードによって特定される一群のページデータについて、当該生成済みの連続印刷リストに対応する印刷条件で、RIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理を含む連続印刷の処理を実行する連続印刷実行ステップと
を含み、
前記RIPシミュレーションステップでは、印刷条件毎に前記シミュレーション結果データとしてRIP速度が求められ、
前記対象データ振り分けステップでは、印刷速度よりも高いRIP速度が得られる印刷条件に対応する連続印刷リストの中から前記レコードの登録先の連続印刷リストが決定されることを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、第1から第3までのいずれかの発明において、
前記対象データ振り分けステップは、
前記複数の印刷条件の中から前記要件設定ステップで設定された要件を満たす1以上の印刷条件を抽出する印刷条件抽出ステップと、
前記印刷条件抽出ステップで抽出された前記1以上の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストへの前記レコードの登録を行うレコード登録ステップと
を含むことを特徴とする。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、
前記要件設定ステップでは、要件に対する優先度の設定が行われ、
前記印刷条件抽出ステップで2以上の印刷条件が抽出された場合、前記レコード登録ステップでは、要件に対する優先度を考慮して、当該2以上の印刷条件に対応する2以上の連続印刷リストの中から前記レコードの登録先の連続印刷リストが決定されることを特徴とする。
【0021】
第6の発明は、第1から第5までのいずれかの発明において、
前記RIPシミュレーションステップでは、印刷条件毎に前記シミュレーション結果データとしてインク色毎のインク消費量が求められ、
前記要件設定ステップでは、印刷に関する要件として予算についての要件が設定され、
前記対象データ振り分けステップでは、各印刷条件に関して、予め定められているインク色毎の係数と前記RIPシミュレーションステップで求められたインク色毎のインク消費量とに基づいて算出される価格と前記要件設定ステップで設定された予算とを比較することによって、前記要件設定ステップで設定された要件を満たすか否かの判断が行われることを特徴とする。
【0022】
第7の発明は、第1から第6までのいずれかの発明において、
印刷条件毎のスケジュールの情報が保持され、
前記要件設定ステップでは、印刷に関する要件として納期についての要件が設定され、
前記対象データ振り分けステップでは、各印刷条件に関して、前記スケジュールの情報と前記要件設定ステップで設定された納期とに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件を満たすか否かの判断が行われることを特徴とする。
【0023】
第8の発明は、第1から第7までのいずれかの発明において、
前記RIPシミュレーションステップでのRIP処理のシミュレーションでエラーが発生した対象データについては、前記対象データ振り分けステップにおいて、エラーが発生した印刷条件に対応する連続印刷リストに対しては前記レコードの登録は行われないことを特徴とする。
【0024】
第9の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記対象データを構成する内部データの解析を行うページデータ解析ステップを更に含み、
前記ページデータ解析ステップで前記内部データの異常が発見された対象データについては、前記対象データ振り分けステップにおいて、いずれの連続印刷リストに対しても前記レコードの登録は行われないことを特徴とする。
【0026】
第10の発明は、第1から第9までのいずれかの発明において、
前記印刷システムは、前記印字処理を行う複数の印刷機と、前記複数の印刷機と1対1で対応するように設けられ前記RIP処理を行う複数のRIPサーバと、前記対象データに対するRIP処理のシミュレーションを行う1台のシミュレーションサーバとを含み、
前記1台のシミュレーションサーバで、印刷機毎の各印刷条件に対応する連続印刷リストが生成されることを特徴とする。
【0027】
第11の発明は、第10の発明において、
前記1台のシミュレーションサーバは、インターネットを介して外部端末と接続され、
前記ページデータ指定ステップでのページデータの指定および前記要件設定ステップでの要件の設定は、前記外部端末で行われ、
前記対象データ振り分けステップでは、
前記要件設定ステップで設定された要件を満たす1以上の印刷条件をそれぞれ特定するための1以上の納品情報が選択可能な態様で前記外部端末に提示され、
前記外部端末で選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに対して前記レコードの登録が行われることを特徴とする。
第12の発明は、印刷条件毎に複数のページデータの連続印刷を行う印刷システムにおける印刷方法であって、
連続印刷の対象とするページデータを指定するページデータ指定ステップと、
前記ページデータ指定ステップで指定されたページデータである対象データ毎に印刷に関する要件を設定する要件設定ステップと、
前記対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションを行うRIPシミュレーションステップと、
前記RIPシミュレーションステップで得られた印刷条件毎のシミュレーション結果データに基づいて、前記要件設定ステップで設定された要件が満たされるよう、前記複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに前記対象データを特定するレコードを登録する対象データ振り分けステップと、
生成済みの連続印刷リストに登録されているレコードによって特定される一群のページデータについて、当該生成済みの連続印刷リストに対応する印刷条件で、RIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理を含む連続印刷の処理を実行する連続印刷実行ステップと
を含み、
前記印刷システムは、前記対象データに対するRIP処理のシミュレーションを行うシミュレーションサーバを含み、
前記シミュレーションサーバは、インターネットを介して外部端末と接続され、
前記ページデータ指定ステップでのページデータの指定および前記要件設定ステップでの要件の設定は、前記外部端末で行われ、
前記対象データ振り分けステップでは、
前記要件設定ステップで設定された要件を満たす1以上の印刷条件をそれぞれ特定するための1以上の納品情報が選択可能な態様で前記外部端末に提示され、
前記外部端末で選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに対して前記レコードの登録が行われ、
前記納品情報は、価格および印刷物の提供日を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
上記第1の発明によれば、連続印刷の処理の実行前に、連続印刷の対象として指定されたページデータ(対象データ)の印刷に関する要件(顧客の要望)を設定することが可能となっている。その対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションが行われる。そして、設定済みの要件が満たされるようシミュレーション結果に基づいて印刷条件が決定され、当該印刷条件に対応する連続印刷リストに対象データを特定するレコードが登録される。すなわち、複数の印刷条件で連続印刷が行われている場合に、シミュレーション結果や印刷機の稼働状況などを考慮してページデータ毎に最適な印刷条件で印刷処理を実行することが可能となる。以上より、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおいて、各顧客の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザーの負担なく実現することができる。
また、複数のページデータに対する連続印刷の処理がRIP速度の低い順で行われる(もしくは、平均RIP速度に近いものから行われる)ので、例えばスプール不足の発生が抑制され、連続印刷の処理の安定性が向上する。
上記第2の発明によれば、RIP速度が低いことに起因して連続印刷の処理が途中で止まることが防止される。
上記第3の発明によれば連続印刷の処理の実行前に、連続印刷の対象として指定されたページデータ(対象データ)の印刷に関する要件(顧客の要望)を設定することが可能となっている。その対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションが行われる。そして、設定済みの要件が満たされるようシミュレーション結果に基づいて印刷条件が決定され、当該印刷条件に対応する連続印刷リストに対象データを特定するレコードが登録される。すなわち、複数の印刷条件で連続印刷が行われている場合に、シミュレーション結果や印刷機の稼働状況などを考慮してページデータ毎に最適な印刷条件で印刷処理を実行することが可能となる。以上より、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおいて、各顧客の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザーの負担なく実現することができる。
また、RIP速度が低いことに起因して連続印刷の処理が途中で止まることが防止される。
【0029】
上記第4の発明によれば、上記第3の発明と同様の効果が得られる。
【0030】
上記第5の発明によれば、設定された要件を満たす印刷条件が複数ある場合に、優先度を考慮して、最適な印刷条件の選択が行われる。
【0034】
上記第6の発明によれば、予算に関する顧客の要件が満たされるよう、印刷に使用する印刷条件を決定することが可能となる。
【0035】
上記第7の発明によれば、納期に関する顧客の要件が満たされるよう、印刷に使用する印刷条件を決定することが可能となる。
【0036】
上記第8の発明によれば、或る印刷条件でのRIP処理のシミュレーションでエラーが発生した対象データについては、当該印刷条件での連続印刷の対象外とされる。このため、RIP処理のエラーに起因して連続印刷の処理が途中で止まることが防止される。
【0037】
上記第9の発明によれば、内部データに異常がある対象データについては連続印刷の対象外とされる。このため、内部データの異常に起因して連続印刷の処理が途中で止まることが防止される。
【0039】
上記第10の発明によれば、複数の印刷機に対してシミュレーションサーバは1台設けられるにすぎないので、従来と比較してコストが大幅に低減される。
【0040】
上記第11の発明によれば、上記第10の発明と同様の効果が得られる
上記第12の発明によれば、連続印刷の処理の実行前に、連続印刷の対象として指定されたページデータ(対象データ)の印刷に関する要件(顧客の要望)を設定することが可能となっている。その対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションが行われる。そして、設定済みの要件が満たされるようシミュレーション結果に基づいて印刷条件が決定され、当該印刷条件に対応する連続印刷リストに対象データを特定するレコードが登録される。すなわち、複数の印刷条件で連続印刷が行われている場合に、シミュレーション結果や印刷機の稼働状況などを考慮してページデータ毎に最適な印刷条件で印刷処理を実行することが可能となる。以上より、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおいて、各顧客の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザーの負担なく実現することができる。
また、いわゆる「Web to Print」を採用した場合にも、各顧客の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザーの負担なく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
【
図2】上記第1の実施形態における制御サーバのハードウェア構成図である。
【
図3】上記第1の実施形態において、制御サーバでRIPシミュレーションソフトによって実現される機能構成を示すブロック図である。
【
図4】上記第1の実施形態において、連続印刷リストの一例を示す図である。
【
図5】上記第1の実施形態において、連続印刷リストの別の例を示す図である。
【
図6】上記第1の実施形態において、振り分け処理について説明するための図である。
【
図7】上記第1の実施形態において、結果データベースに保持されている内容を模式的に示した図である。
【
図8】上記第1の実施形態において、価格算出用のインク色毎の係数の情報を保持したテーブルの一例を示す図である。
【
図9】上記第1の実施形態において、連続印刷の対象とするPDFファイルの指定から連続印刷の実行までの全体の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図10】上記第1の実施形態において、出力予測レポートの一例を示す図である。
【
図11】上記第1の実施形態において、RIP予測画面の一例を示す図である。
【
図12】上記第1の実施形態において、解析結果画面の一例を示す図である。
【
図13】上記第1の実施形態において、印刷対象特定レコードの並び替えについて説明するための図である。
【
図14】上記第1の実施形態において、印刷対象特定レコードの並び替えについて説明するための図である。
【
図15】上記第1の実施形態において、振り分け処理の詳細な手順の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図16】上記第1の実施形態において、RIP速度に基づくフィルタリングについて説明するための図である。
【
図17】上記第1の実施形態において、価格の計算について説明するための図である。
【
図18】上記第1の実施形態において、価格に基づくフィルタリングについて説明するための図である。
【
図19】上記第1の実施形態において、納期に基づくフィルタリングについて説明するための図である。
【
図20】上記第1の実施形態において、納期に基づくフィルタリングについて説明するための図である。
【
図21】上記第1の実施形態において、連続印刷リストへの印刷対象特定レコードの登録(追加)について説明するための図である。
【
図22】上記第1の実施形態において、連続印刷リストへの印刷対象特定レコードの登録(追加)について説明するための図である。
【
図23】本発明の第2の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
【
図24】上記第2の実施形態において、ページデータの入稿から連続印刷リストへの印刷対象特定レコードの登録までの処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図25】上記第2の実施形態において、要件入力画面の一例を示す図である。
【
図26】上記第2の実施形態において、出力先選択画面の一例を示す図である。
【
図27】従来例に関し、RIP速度予測ページの一例を示す図である。
【
図28】従来例に関し、インク消費量予測ページの一例を示す図である。
【
図29】従来例に関し、出力予測レポートに含まれるRIP時間予測グラフの一例を示す図である。
【
図30】従来例に関し、解析結果ページの一例を示す図である。
【
図31】従来例に関し、詳細情報ページの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0043】
<1.第1の実施形態>
<1.1 印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、制御サーバ100と3台の実行サーバ200(1)~200(3)と3台のインクジェット印刷装置300(1)~300(3)とによって構成されている。制御サーバ100と実行サーバ200(1)~200(3)とインクジェット印刷装置300(1)~300(3)とは通信回線400によって互いに通信可能に接続されている。なお、実行サーバ200およびインクジェット印刷装置300の台数は特に限定されず、実行サーバ200およびインクジェット印刷装置300の台数がそれぞれ1台であっても良い。
【0044】
制御サーバ100は、この印刷システムでの印刷処理の全体を制御する。制御サーバ100にはRIPシミュレーションソフト(RIPシミュレーションプログラム)が導入されている。すなわち、制御サーバ100はシミュレーションサーバとして機能し、印刷出力が実際に実行される前のシミュレーションの段階ではRIP処理は制御サーバ100で行われる。実行サーバ200(1)~200(3)とインクジェット印刷装置300(1)~300(3)とは1対1で対応している。実行サーバ200(1)~200(3)は、インクジェット印刷装置300(1)~300(3)での印刷出力が実際に実行される際に、印刷対象のページデータに対するRIP処理を行う。すなわち、実行サーバ200(1)~200(3)はRIPサーバとして機能する。インクジェット印刷装置300(1)~300(3)は、印刷版を用いることなくデジタルデータである印刷データ(RIP処理で得られたビットマップ形式の画像データ)に基づいて印刷出力を行う。
【0045】
各インクジェット印刷装置300は、印刷機本体とそれを制御するコントローラとによって構成されている。なお、各インクジェット印刷装置300の印刷機本体に関し、シートの表面印刷用の印刷機本体とシートの裏面印刷用の印刷機本体とが設けられていても良い。この場合、制御サーバ100や実行サーバ200についても、表面用のサーバと裏面用のサーバとに分かれていても良い。また、通信回線400に接続されたクライアントパソコンから制御サーバ100に対してRIP処理のシミュレーションの実行の制御を行えるようにしても良い。
【0046】
ところで、本実施形態においては、RIPシミュレーションソフトには、RIP処理のシミュレーションを行う機能に加えて、各インクジェット印刷装置300で印刷条件毎に連続印刷を行うための連続印刷リストを作成する機能が設けられている。但し、RIP処理のシミュレーションを行う機能と連続印刷リストを作成する機能とが互いに異なるソフトウェア(プログラム)で実現されるようにしても良い。
【0047】
<1.2 制御サーバのハードウェア構成>
図2は、本実施形態における制御サーバ100のハードウェア構成図である。この制御サーバ100は、パソコンによって実現されており、CPU11と、ROM12と、RAM13と、補助記憶装置14と、入力操作手段15と、表示部16と、光学ディスクドライブ17と、ネットワークインタフェース部18とを有している。補助記憶装置14には、RIP処理のシミュレーションや連続印刷リストの作成を実行するためのRIPシミュレーションプログラム141が格納されている。また、補助記憶装置14には、RIP処理のシミュレーションの結果データを格納する結果データベース142が設けられている。さらに、補助記憶装置14には、連続印刷リストや通信回線400経由で送られてくる入稿データも格納される。
【0048】
上述したように、RIPシミュレーションプログラム141は補助記憶装置14に格納されている。この制御サーバ100においてRIPシミュレーションソフトの起動が指示されると、RIPシミュレーションプログラム141がRAM13へと読み出され、そのRAM13に読み出されたRIPシミュレーションプログラム141をCPU11が実行する。このようにして、制御サーバ100はシミュレーションサーバとして機能する。すなわち、制御サーバ100において、RIP処理のシミュレーションが実行される。RIPシミュレーションプログラム141は、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわちユーザーは、例えば、RIPシミュレーションプログラム141の記録媒体としての光学ディスク(CD-ROM、DVD-ROM等)170を購入して光学ディスクドライブ17に装着し、その光学ディスク170からRIPシミュレーションプログラム141を読み出して補助記憶装置14にインストールする。また、これに代えて、通信回線400を介して送られるRIPシミュレーションプログラム141をネットワークインタフェース部18で受信して、それを補助記憶装置14にインストールするようにしても良い。
【0049】
<1.3 機能構成>
図3は、制御サーバ100でRIPシミュレーションソフトによって実現される機能構成を示すブロック図である。この制御サーバ100は、機能的には、ページデータ記憶手段51と、ページデータ指定手段52と、PDF解析手段53と、RIP速度予測手段54と、インク消費量予測手段55と、結果表示制御手段56と、要件設定手段57と、対象データ振り分け手段58と、連続印刷リスト記憶手段59と、レコード並び替え手段60と、結果データ記憶手段(結果データベース)142と、表示部16とを有している。なお、ページデータ記憶手段51および連続印刷リスト記憶手段59はハードウェアとしての補助記憶装置14によって実現される。
【0050】
ページデータ記憶手段51は、複数のページからなるページデータである入稿データを保持する。本実施形態においては、入稿データはPDFファイルであると仮定する。従って、ページデータ記憶手段51には、PDFファイルが保持されている。なお、このページデータ記憶手段51については、制御サーバ100とは異なる装置に設けられていても良い。
【0051】
ページデータ指定手段52は、ページデータ記憶手段51に保持されているPDFファイルの中から処理対象のPDFファイルを指定する。具体的には、ユーザーが、連続印刷の対象とするPDFファイルをこのページデータ指定手段52を用いて指定する。
【0052】
PDF解析手段53は、ページデータ指定手段52によって指定されたPDFファイル(以下、「対象データ」という。)を構成する内部データの解析を行う。PDF解析手段53による内部データの解析は、RIP処理に関わる複数の項目(解析項目)について行われる。解析項目の例としては、例えば次のようなものが挙げられる。
例1:所定の解像度以上の画像の使用の有無
例2:画像のデータサイズについての不正の有無
例3:埋め込みがなされていないフォントの有無
【0053】
RIP速度予測手段54は、印刷出力が実際に実行される際の実環境とは異なる環境で対象データに対してRIP処理を行うことによって、実環境で対象データに対してRIP処理が行われた場合のRIP速度およびシート毎のRIP時間を予測する。本実施形態においては、RIP速度予測手段54は、具体的には、制御サーバ100で対象データに対してRIP処理を行うことによって、実行サーバ200で対象データに対してRIP処理が行われた場合のRIP速度およびシート毎のRIP時間を予測する。なお、印刷出力が実際に実行される際のシートとページとの対応関係が予め設定されており(すなわち、面付けの設定が予め行われており)、RIP速度予測手段54によるRIP処理は当該対応関係を考慮して行われる。
【0054】
インク消費量予測手段55は、RIP速度予測手段54によるRIP処理で得られた画像データを用いて、印刷条件を考慮して、インク色毎(インクの種類毎)にインク消費量を予測する。
【0055】
結果データ記憶手段(結果データベース)142は、PDF解析手段53による内部データの解析結果およびRIP処理のシミュレーション結果(RIP速度予測手段54によるRIP処理の結果およびインク消費量予測手段55によるインク消費量の予測結果)を保持する。
【0056】
結果表示制御手段56は、ユーザーによる入力操作手段15を用いた操作に基づき、PDF解析手段53による内部データの解析結果あるいはRIP処理のシミュレーション結果の表示部16への画面表示を制御する。
【0057】
要件設定手段57は、対象データについての印刷に関する要件の設定を行う。具体的には、システム条件や対象データ毎の顧客条件をユーザーが入力するための画面が要件設定手段57として用意されており、ユーザーによる入力操作によって要件が設定される。顧客条件としては、例えば、予算に関する要件、納期に関する要件、品質に関する要件などが挙げられる。なお、この要件設定手段57に関し、複数の顧客条件が入力された場合にその優先度の設定が可能であることが好ましい。
【0058】
対象データ振り分け手段58は、結果データ記憶手段(結果データベース)142に保持されている結果に基づいて、要件設定手段57によって設定された要件が満たされるよう、複数の印刷条件の1つに対応する連続印刷リストに対象データを特定するレコードを登録する。これについて、
図1および
図4~
図6を参照しつつ、さらに説明する。
【0059】
図1に示したように、本実施形態においては、印刷システムには3台のインクジェット印刷装置300(1)~(3)が含まれている。ここでは、それら3台のインクジェット印刷装置300(1)~(3)にそれぞれ「XA」,「XB」,および「YZ」という装置名が割り当てられているものと仮定する。また、ここでは、説明の便宜のため、各インクジェット印刷装置300では印刷出力の際の条件の切り替えとして用紙サイズの切り替えのみが行われるものと仮定する。これに関し、各インクジェット印刷装置300では、「P1」という名称で特定される用紙サイズと「P2」という名称で特定される用紙サイズとが用意されているものと仮定する。以上より、本実施形態における印刷システムでは、6個の印刷条件で印刷処理を行うことが可能である。ここで、例えば『「XA」という装置名が割り当てられたインクジェット印刷装置300で「P1」という名称で特定される用紙サイズを用いて印刷を行う』という印刷条件を「XA(P1)」と表す。
【0060】
上述したように、本実施形態においては、6個の印刷条件で印刷処理を行うことが可能である。そして、連続印刷は、印刷条件毎に行われる。印刷条件毎の連続印刷を可能にするために、印刷条件毎に、連続印刷の対象とするPDFファイルを特定するレコード(以下、「印刷対象特定レコード」という。)の一覧で構成される連続印刷リストが用意される。本実施形態においては、6個の連続印刷リストが用意される。
図4は、連続印刷リストの一例を示す図である。
図4から把握されるように、本実施形態においては、連続印刷の対象とするPDFファイルのファイル名が印刷対象特定レコードとして連続印刷リストに登録される。
【0061】
なお、印刷条件毎ではなく装置毎に連続印刷リストが用意されるようにしても良い。この場合、連続印刷リストには、各PDFファイルに対応する印刷条件の情報も保持される。すなわち、この場合の連続印刷リストは例えば
図5に示すようなものとなる。
【0062】
例えば、連続印刷の対象として追加したいPDFファイルが3個存在している場合、結果データ記憶手段(結果データベース)142に保持されている結果に基づいて、模式的には
図6に示すように、各PDFファイルのファイル名が、当該各PDFファイルの印刷の要件に最も適合する印刷条件に対応する連続印刷リストに印刷対象特定レコードとして追加(登録)される。以下、対象データ振り分け手段58によって行われる処理のことを「振り分け処理」という。
【0063】
連続印刷リスト記憶手段59は、連続印刷リストを保持する。レコード並び替え手段60は、所定のルールに従って、連続印刷リストに登録されている印刷対象特定レコードの並び替えを行う。後述するように、本実施形態においては、システム要件として、連続印刷の処理をRIP速度の低い順で行うという要件が設定される。従って、本実施形態においては、レコード並び替え手段60は、連続印刷リストに登録されている一群のPDFファイルに対する連続印刷の処理がRIP速度の低い順で行われるよう、各印刷対象特定レコードに対応するRIP速度に基づいて複数の印刷対象特定レコードの並び替えを行う。なお、一群のPDFファイルに対する連続印刷の処理が、平均RIP速度に近いものが先に行われ、かつ、平均RIP速度から遠いものが後に行われるよう、複数の印刷対象特定レコードの並び替えが行われるようにしても良い。
【0064】
<1.4 振り分け処理に必要なデータ>
ここで、対象データ振り分け手段58による振り分け処理に必要なデータについて説明する。振り分け処理は、RIP処理のシミュレーション結果を考慮して行われる必要がある。従って、結果データベース142に保持されているシミュレーション結果が必要である。
図7は、結果データベース142に保持されている内容を模式的に示した図である。
図7から把握されるように、各PDFファイルについて、印刷条件毎に、インク消費量やRIP速度などのシミュレーション結果が保持されている。また、本実施形態においては、顧客条件として納期を設定することが可能となっている。従って、それぞれの印刷条件での納品可能日を把握する必要がある。ところで、各インクジェット印刷装置300における各印刷条件のスケジュールは工程管理システムによって管理されている。そこで、本実施形態においては、各印刷条件のスケジュールの情報を工程管理システムから取得して保持することが可能となっている。さらに、本実施形態においては、顧客条件として予算(価格の上限値)を設定することが可能となっている。従って、それぞれの印刷条件での価格を求める必要がある。価格はインク色毎のインク消費量に基づいて決定することができるので、本実施形態においては、価格算出用のインク色毎の係数の情報を保持した
図8に示すようなテーブルが予め用意される。
【0065】
<1.5 処理手順>
以下、本実施形態における処理手順について説明する。
【0066】
<1.5.1 全体>
まず、
図9に示すフローチャートを参照しつつ、連続印刷の対象とするPDFファイルの指定から連続印刷の実行までの全体の処理手順を説明する。なお、
図9に関し、ステップS100~S160の処理は、1つのPDFファイルに対する処理であって、ステップS170~S180の処理は、多数のPDFファイルに対してステップS100~S160の処理が行われた後に連続印刷リスト毎に行われる処理である。
【0067】
まず、ユーザーが、ページデータ指定手段52によって、連続印刷の対象とするPDFファイル(ページデータ)の指定を行う(ステップS100)。次に、ユーザーが、要件設定手段57によって、印刷に関する要件の設定を行う(ステップS110)。本実施形態においては、このステップS110で、顧客条件として予算および納期の設定が行われる。また、ここでは、連続印刷の処理をRIP速度の低い順で行うという要件がシステム要件としてこのステップS110で設定されるものと仮定する。
【0068】
次に、PDF解析手段53によって、対象データ(ステップS100で指定されたPDFファイル)を構成する内部データの解析が行われる(ステップS120)。次に、RIP速度予測手段54によって、制御サーバ100にて対象データに対してRIP処理が行われ、その結果に基づいてRIP速度およびシート毎のRIP時間が予測される(ステップS130)。次に、インク消費量予測手段55によって、インク色毎のインク消費量の予測が行われる(ステップS140)。ステップS120~S140の処理で得られた結果は、結果データベース142に格納される。なお、ステップS120~S140の処理は、印刷条件毎に行われる。すなわち、ステップS120~S140の処理は、印刷システムで用意されている印刷条件の数だけ繰り返される。上述したように、本実施形態に係る印刷システムでは、6個の印刷条件で印刷処理を行うことが可能である。従って、本実施形態においては、ステップS120~S140の処理は6回繰り返される。
【0069】
その後、ステップS120~S140の処理で得られた結果の表示部16への画面表示が行われる(ステップS150)。但し、内部データの解析結果やRIP処理のシミュレーション結果を目視によって確認する必要がなければ、ステップS150の処理を省略しても良い。
【0070】
図10は、ステップS150で表示部16に表示される出力予測レポート620の一例を示す図である。なお、
図10では、或る1つの印刷条件に対応するジョブに着目している。出力予測レポート620には、基本情報表示欄625とRIP速度予測表示欄626とインク消費量予測表示欄627とプリンタ情報表示欄628とが含まれている。基本情報表示欄625には、該当のジョブに関する基本的な情報が表示されている。RIP速度予測表示欄626には、RIP速度予測手段54による処理の結果に基づき、実環境(実行サーバ200)でRIP処理が行われた場合のRIP速度の予測値(予測RIP速度)などが表示されている。インク消費量予測表示欄627には、インク消費量予測手段55による処理の結果に基づき、インク色毎のインク消費量の予測値が表示されている。プリンタ情報表示欄628には、該当のジョブに対応する印刷機に関する情報が表示されている。
【0071】
出力予測レポート620に関し、領域621~624は入力操作手段15としてのマウスによる選択(クリック)が可能となっている。領域621が選択されると、
図10に示されているように、基本情報表示欄625、RIP速度予測表示欄626、インク消費量予測表示欄627、およびプリンタ情報表示欄628の全てが表示される。領域622が選択されると、RIP速度予測表示欄626のみが表示される。領域623が選択されると、インク消費量予測表示欄627のみが表示される。領域624が選択されると、プリンタ情報表示欄628のみが表示される。なお、領域622~624が選択されたときに基本情報表示欄625も表示されるようにしても良い。
【0072】
図10に示すように、出力予測レポート620のRIP速度予測表示欄626には、RIP時間予測グラフ(シミュレーショングラフ)を表示するための2つのボタン65,66が設けられている。それら2つのボタン65,66は、マウスによる選択(クリック)が可能となっている。マウスによってボタン65が選択されると、シートの表面についてのRIP時間予測グラフが表示される。マウスによってボタン66が選択されると、シートの裏面についてのRIP時間予測グラフが表示される。ボタン65またはボタン66が選択されることにより、RIP時間予測グラフを含むRIP予測画面が表示部16に表示される。
【0073】
図11は、ステップS150で表示部16に表示されるRIP予測画面630の一例を示す図である。
図11に示すように、RIP予測画面630には、横軸をシート番号とし縦軸をRIP時間とするRIP時間予測グラフ631と、閉じるボタン632とが含まれている。閉じるボタン632はマウスによる選択(クリック)が可能となっており、当該閉じるボタン632が選択されるとRIP予測画面630が非表示となる。RIP時間予測グラフ631に着目すると、750枚のシート毎のRIP時間の予測値(予測RIP時間)が符号633を付した折れ線グラフで表されている。また、印刷出力が実際に実行される際の印刷速度に対応するRIP時間が符号634を付した点線で表されている。
【0074】
また、ステップS150では、PDF解析手段53による内部データの解析結果を表示部16に表示することもできる。
図12は、内部データの解析結果を表した解析結果画面640の一例を示す図である。解析結果画面640には、或るシートに関する問題点が表示されている。より詳しくは、解析結果画面640には、複数の解析項目のうち該当のシート番号に含まれるページに関して問題があった項目についての結果(解析結果)が重要度順に並べて表示されている。
【0075】
ステップS150の終了後、対象データ振り分け手段58による振り分け処理が行われる(ステップS160)。このステップS160の詳細な手順については後述する。
【0076】
ステップS170の処理は、典型的には、連続印刷の処理が実行される直前に行われる。連続印刷の処理が実行される直前の時点には、複数の印刷対象特定レコードが連続印刷リストに登録されている。その時点の連続印刷リストについては、複数の印刷対象特定レコードは処理順に並んでいない。そこで、ステップS170では、レコード並び替え手段60によって、連続印刷リストに登録されている印刷対象特定レコードの並び替えが行われる。その際、上述したシステム要件に基づき、連続印刷の処理がRIP速度の低い順で行われるよう、各印刷対象特定レコードに対応するRIP速度に基づいて並び替えが行われる。
【0077】
仮に各PDFファイルについてのRIP速度が
図13に示すようなものであって、ステップS170の処理の実行前の連続印刷リストが
図13で符号71を付した部分に示すようなものであった場合、ステップS170の実行後の連続印刷リストは
図14で符号72を付した部分に示すようなものとなる。
図14から把握されるように、RIP速度の昇順で、印刷対象特定レコードの並び替えが行われる。
【0078】
最後に、ステップS170での並び替え後の連続印刷リストに基づいて、連続印刷の処理が実行される(ステップS180)。より詳しくは、並び替え後の連続印刷リストに登録されている印刷対象特定レコードによって特定される一群のPDFファイルについて、当該連続印刷リストに対応する印刷条件で、実行サーバ200でのRIP処理およびそのRIP処理で得られた印刷データを用いたインクジェット印刷装置300での印字処理を含む連続印刷の処理が実行される。
【0079】
なお、本実施形態においては、ステップS100によってページデータ指定ステップが実現され、ステップS110によって要件設定ステップが実現され、ステップS120によってページデータ解析ステップが実現され、ステップS130およびステップS140によってRIPシミュレーションステップが実現され、ステップS160によって対象データ振り分けステップが実現され、ステップS170によってレコード並び替えステップが実現され、ステップS180によって連続印刷実行ステップが実現される。
【0080】
<1.5.2 振り分け処理>
次に、
図15に示すフローチャートを参照しつつ、振り分け処理(
図9のステップS160)の詳細な手順の一例について説明する。ここでは、対象データとして着目するPDFファイル(ページデータ)の印刷に関する要件として、
図9のステップS110において次の2つの顧客条件が設定されているものと仮定する。なお、第2の顧客条件よりも第1の顧客条件の方が優先度が高い。
第1の顧客条件:予算は6000円以内
第2の顧客条件:納期は2019年12月25日
【0081】
以下、この振り分け処理の過程において対象データの印刷処理に採用可能と判断される印刷条件の集合のことを「振り分け先候補」という。また、
図7で符号73を付している部分の結果を生ずるデータがここでの対象データであると仮定する。
【0082】
振り分け処理の開始後、まず、RIP速度に基づくフィルタリングが行われる(ステップS161)。RIP速度が印刷速度よりも低い場合、対象データのRIP処理がインクジェット印刷装置300の出力動作に間に合わない可能性がある。そこで、ステップS161では、シミュレーション結果に基づき、印刷速度よりも低いRIP速度しか得られない印刷条件は振り分け先候補から除外される。この例では、印刷条件「XB(P1)」についてのRIP速度は印刷速度よりも低い(
図7参照)。従って、印刷条件「XB(P1)」が振り分け先候補から除外される。その結果、振り分け先候補の一覧は、
図16に示すようなものとなる。
【0083】
次に、振り分け先候補として残っている各印刷条件について、価格の計算が行われる(ステップS162)。
図9のステップS140では、インク色毎のインク消費量(予測インク消費量)が求められている。また、本実施形態においては、価格算出用のインク色毎の係数が予め設定されている(
図8参照)。従って、B色,C色,M色,およびY色の予測インク消費量をそれぞれB1,C1,M1,およびY1とし、B色,C色,M色,およびY色の係数をそれぞれB2,C2,M2,およびY2とすると、次式(1)によって価格Pを算出することができる。
P=B1×B2+C1×C2+M1×M2+Y1×Y2 ・・・(1)
この例では、各印刷条件についての価格は、
図17に示すようなものとなる。
【0084】
次に、ステップS162で算出された価格に基づくフィルタリングが行われる(ステップS163)。この例では、予算を6000円以内にすることが第1の顧客条件とされているので、価格が6000円を超える印刷条件は振り分け先候補から除外される。具体的には、印刷条件「XB(P2)」と印刷条件「YZ(P2)」とが振り分け先候補から除外される。その結果、振り分け先候補の一覧は、
図18で符号74を付した部分に示すようなものとなる。
【0085】
次に、納期に基づくフィルタリングが行われる(ステップS164)。これに関し、上述したように、各印刷条件のスケジュールの情報を工程管理システムから取得することが可能となっている。従って、そのスケジュールの情報に基づいて、対象データに関して印刷条件毎の納品可能日を求めることができる。そして、納品可能日が
図9のステップS110で設定された納期を満たしていない印刷条件は振り分け先候補から除外される。ここでは、印刷条件毎の納品可能日が
図19に示すようなものになったと仮定する。上述したように、この例では第2の顧客条件として納期が2019年12月25日に設定されているので、印刷条件「XA(P2)」が振り分け先候補から除外される。その結果、振り分け先候補の一覧は、
図20で符号75を付した部分に示すようなものとなる。
【0086】
次に、最適な連続印刷リストが決定される(ステップS165)。詳しくは、ステップS164の終了時点で振り分け先候補として残っている印刷条件に対応する連続印刷リストの中から、
図9のステップS110で設定された各要件に対する優先度に基づいて、最適な連続印刷リストが決定される。この例では、予算に関する要件の優先度が最も高いので、最も価格の低い印刷条件「XA(P1)」に対応する連続印刷リストが最適な連続印刷リストとして定められる。
【0087】
最後に、ステップS165で決定した連続印刷リストに、対象データに対応する印刷対象特定レコードが登録(追加)される(ステップS166)。この例では、仮に印刷対象特定レコードの登録前の連続印刷リストが
図21に示すようなものであれば、印刷対象特定レコードの登録後の連続印刷リストは
図22に示すようなものとなる。
図22において、符号77を付したレコードが、追加された印刷対象特定レコードである。
【0088】
なお、上記の例では、ステップS161~S164によって印刷条件抽出ステップが実現され、ステップS165~S166によってレコード登録ステップが実現される。
【0089】
<1.6 効果>
本実施形態によれば、ユーザーは、連続印刷の対象として指定したPDFファイル(対象データ)の印刷について、予算,納期,品質などに関する顧客条件を設定することができる。その対象データに対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションが行われる。そして、設定済みの顧客条件が満たされるようシミュレーション結果に基づいて対象データに最適な印刷条件が決定され、当該印刷条件に対応する連続印刷リストに対象データを特定するレコード(印刷対象特定レコード)が登録される。すなわち、複数の印刷条件で連続印刷が行われている場合に、インク消費量や各インクジェット印刷装置300の稼働状況などを考慮してPDFファイル毎に最適な印刷条件で印刷処理を実行することが可能となる。ここで、シミュレーション結果に基づく最適な印刷条件の決定は制御サーバ100で行われるので、ユーザーの負担はない。以上のように、本実施形態によれば、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおいて、各顧客の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザーの負担なく実現することができる。
【0090】
また、本実施形態においては、連続印刷リストに登録されている印刷対象特定レコードの並び替えが行われることによって、連続印刷の処理がRIP速度の低い順で行われる。このため、例えばスプール不足の発生が抑制され、連続印刷の処理の安定性が向上する。
【0091】
さらに、本実施形態においては、複数のインクジェット印刷装置300に対して、RIP処理のシミュレーションを行う制御サーバ100は1台設けられるにすぎない。従来はインクジェット印刷装置300毎にシミュレーション用のサーバが設けられていたので、本実施形態によれば、従来と比較して、コストが大幅に低減される。
【0092】
<1.7 変形例>
連続印刷では、RIP処理および当該RIP処理で得られた印刷データを用いた印字処理などの一連の処理が複数のページデータに対して連続的に行われる。ところが、或るページデータについての処理の際にエラーが発生すると、連続印刷の処理が途中で止まってしまう。従って、連続印刷の際にエラーが発生する可能性の高いページデータについては、連続印刷の対象外とすることが好ましい。そこで、連続印刷の際にエラーが発生する可能性の高いページデータについては連続印刷リストへの印刷対象特定レコードの登録を行わないようにする例を上記第1の実施形態の変形例として以下に記載する。
【0093】
<1.7.1 第1の変形例>
上記第1の実施形態においては、システム要件として、連続印刷の処理をRIP速度の低い順で行うという要件が設定されていた。本変形例においては、システム要件として、さらに、或る印刷条件でのRIP処理の結果(シミュレーション結果)がエラーとなっているPDFファイルについては当該印刷条件での連続印刷の対象外とする旨の要件が設定される。なお、この要件は、
図9のステップS100で要件設定手段57(
図3参照)によって設定される。
【0094】
上記のような要件が設定されることにより、本変形例においては、RIP処理のシミュレーションでエラーが発生したPDFファイル(対象データ)については、振り分け処理(
図9のステップS160)の際に、エラーが発生した印刷条件に対応する連続印刷リストに対しては印刷対象特定レコードの登録は行われない。
【0095】
例えば
図7に示すシミュレーション結果を参照すると、符号76を付しているデータのRIP処理の結果にエラーが含まれている。詳しくは、印刷条件「YZ(P1)」および印刷条件「YZ(P2)」についてはエラーとなっていないが、印刷条件「XA(P1)」,印刷条件「XA(P2)」,印刷条件「XB(P1)」,および印刷条件「XB(P2)」についてはエラーとなっている。この例の場合、振り分け処理の最初の時点で、印刷条件「YZ(P1)」および印刷条件「YZ(P2)」は振り分け先候補に含められるが、印刷条件「XA(P1)」,印刷条件「XA(P2)」,印刷条件「XB(P1)」,および印刷条件「XB(P2)」は振り分け先候補から除外される。
【0096】
本変形例によれば、或る印刷条件でのRIP処理のシミュレーションでエラーが発生したPDFファイルについては、当該印刷条件での連続印刷の対象外とされる。このため、RIP処理のエラーに起因して連続印刷の処理が途中で止まることが防止される。
【0097】
<1.7.2 第2の変形例>
上記第1の実施形態においては、システム要件として、連続印刷の処理をRIP速度の低い順で行うという要件が設定されていた。本変形例においては、システム要件として、さらに、内部データに異常があるPDFファイルについては連続印刷の対象外とする旨の要件が設定される。なお、この要件は、
図9のステップS100で要件設定手段57(
図3参照)によって設定される。
【0098】
上記のような要件が設定されることにより、本変形例においては、PDF解析手段53による内部データの解析(
図9のステップS120)で内部データの異常が発見されたPDFファイル(対象データ)については、振り分け処理(
図9のステップS160)の際に、いずれの連続印刷リストに対しても印刷対象特定レコードの登録は行われない。
【0099】
本変形例によれば、内部データに異常があるPDFファイルについては連続印刷の対象外とされる。このため、PDFファイルの内部データの異常に起因して連続印刷の処理が途中で止まることが防止される。
【0100】
<2.第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態は、顧客からのページデータの入稿や印刷の発注をインターネットを介して行う、いわゆる「Web to Print」を採用したケースを想定している。以下、主に、上記第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0101】
<2.1 構成>
図23は、本実施形態における印刷システムの全体構成図である。この印刷システムには、上記第1の実施形態における構成要素に加えて、制御サーバ100にインターネットを介して接続された外部端末700が含まれている。なお、制御サーバ100には多数の外部端末700の接続が可能であるが、
図23では、1台の外部端末700のみを示している。
【0102】
上記第1の実施形態と同様、制御サーバ100は印刷処理の全体を制御し、実行サーバ200(1)~200(3)は印刷出力が実際に実行される際に印刷対象のページデータに対するRIP処理を行い、インクジェット印刷装置300(1)~300(3)は印刷データ(RIP処理で得られたビットマップ形式の画像データ)に基づいて印刷出力を行う。また、上記第1の実施形態と同様、制御サーバ100にはRIPシミュレーションソフト(RIPシミュレーションプログラム)が導入され、印刷出力が実際に実行される前のシミュレーションの段階ではRIP処理は制御サーバ100で行われる。
【0103】
この印刷システムでは、顧客は、外部端末700でWebブラウザを用いて、制御サーバ100に対してページデータの入稿や印刷の発注を行うことができるようになっている。また、詳しくは後述するように、印刷に関する要件を顧客が設定することができるようになっている。
【0104】
機能構成については、上記第1の実施形態とほぼ同様である(
図3参照)。但し、ページデータ指定手段52、要件設定手段57、および対象データ振り分け手段58の動作が上記第1の実施形態とは異なる。これについて、以下に説明する。
【0105】
本実施形態におけるページデータ指定手段52は、外部端末700に入稿データ(処理対象のPDFファイル)を指定する画面を表示することによって実現される。当該画面において、顧客は、入稿データを指定する。外部端末700で顧客によって指定された入稿データ(本実施形態における対象データ)は、インターネットを介して制御サーバ100に送られる。
【0106】
本実施形態における要件設定手段57は、顧客条件を顧客が入力するための要件入力画面を外部端末700に表示することによって実現される。顧客条件としては、上記第1の実施形態と同様、例えば、予算に関する要件、納期に関する要件、品質に関する要件などが挙げられる。外部端末700で顧客によって設定された要件の情報は、インターネットを介して制御サーバ100に送られる。
【0107】
本実施形態においては、対象データ振り分け手段58は、まず、結果データ記憶手段(結果データベース)142に保持されている結果に基づいて、要件設定手段57によって設定された要件を満たす1以上の印刷条件を抽出する。そして、対象データ振り分け手段58は、その抽出した1以上の印刷条件をそれぞれ特定するための1以上の納品情報を、選択可能な態様で外部端末700に提示する。さらに、対象データ振り分け手段58は、外部端末700で顧客によって選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに対して印刷対象特定レコードの登録を行う。
【0108】
<2.2 処理手順>
次に、
図24に示すフローチャートを参照しつつ、入稿データの指定から連続印刷リストへの印刷対象特定レコードの登録までの処理手順について説明する。なお、連続印刷リストに複数のページデータについての印刷対象特定レコードが登録された後の処理(
図9のステップS170以降の処理)については、上記第1の実施形態と同様である。
【0109】
まず、入稿データを指定する画面が外部端末700に表示され、当該画面において顧客が入稿データ(連続印刷の対象とするPDFファイル)の指定を行う(ステップS200)。このステップS200で指定された入稿データ(対象データ)は、インターネットを介して制御サーバ100に送られて、ページデータ記憶手段51に格納される。
【0110】
次に、外部端末700に要件入力画面が表示され、当該要件入力画面にて顧客が印刷に関する要件の設定を行う(ステップS210)。
図25は、要件入力画面800の一例を示す図である。
図25に示す要件入力画面800には、対象データの画像を表示する入稿データ表示欄801と、顧客条件を入力するための顧客条件入力欄802とが設けられている。要件入力画面800には、また、顧客条件入力欄802での入力内容を確定するOKボタン808と、顧客条件入力欄802での入力内容を取り消すキャンセルボタン809とが設けられている。
図25に示す例では、顧客は、予算、納期、および品質に関する要件を顧客条件入力欄802で設定することが可能となっている。また、符号804を付した部分に示すように、顧客条件入力欄802には、予算、納期、および品質のそれぞれに対応するチェックボックスが設けられている。顧客は、予算、納期、および品質のうち最も優先度の高い項目に対応するチェックボックスを選択状態にする。
図25に示す例では、予算が最も優先度の高い項目に設定されている。なお、このステップS210で設定された要件の情報は、インターネットを介して制御サーバ100に送られる。
【0111】
次に、PDF解析手段53によって、対象データを構成する内部データの解析が行われる(ステップS220)。次に、RIP速度予測手段54によって、制御サーバ100にて対象データに対してRIP処理が行われ、その結果に基づいてRIP速度およびシート毎のRIP時間が予測される(ステップS230)。次に、インク消費量予測手段55によって、インク色毎のインク消費量の予測が行われる(ステップS240)。ステップS220~S240の処理は、上記第1の実施形態におけるステップS120~S140の処理と同様、印刷条件毎に行われる。
【0112】
次に、対象データ振り分け手段58によって、結果データ記憶手段(結果データベース)142に保持されている結果に基づき、この印刷システムで用意されている印刷条件の中からステップS210で設定された要件を満たす印刷条件のみを抽出するフィルタリングが行われる(ステップS250)。
【0113】
次に、対象データ振り分け手段58によって、ステップS250で抽出された印刷条件の中から実際の印刷処理に採用する印刷条件を顧客が選択するための出力先選択画面が外部端末700に表示される(ステップS260)。
図26は、出力先選択画面810の一例を示す図である。出力先選択画面810には、各印刷条件を採用した場合の納品情報を表示する納品情報表示欄811が含まれている。納品情報表示欄811の1つの行が、1つの印刷条件(出力先)に対応する納品情報である。
図26に示す例では、納品情報として、出力サンプル、価格、および提供日が提示されている。また、納品情報表示欄811の各行には、OKボタン819が設けられている。すなわち、顧客は、このOKボタン819によって納品情報を選択することが可能となっている。なお、納品情報表示欄811における表示順序は、要件入力画面800で最も高い優先度に設定された項目を考慮して決定される。以上のように、ステップS260では、ステップS210で設定された要件を満たす1以上の印刷条件をそれぞれ特定するための1以上の納品情報が選択可能な態様で外部端末700に提示される。
【0114】
次に、顧客が、出力先選択画面810において、いずれかの納品情報に対応するOKボタン819を押下する(ステップS270)。すなわち、実際の印刷処理に採用する印刷条件(出力先)の選択が行われる。
【0115】
最後に、対象データ振り分け手段58によって、外部端末700で顧客によって選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに対して印刷対象特定レコードの登録が行われる(ステップS280)。
【0116】
なお、本実施形態においては、ステップS200によってページデータ指定ステップが実現され、ステップS210によって要件設定ステップが実現され、ステップS220によってページデータ解析ステップが実現され、ステップS230およびステップS240によってRIPシミュレーションステップが実現され、ステップS250~S280によって対象データ振り分けステップが実現される。
【0117】
<2.3 効果>
本実施形態によれば、顧客(印刷会社に印刷を依頼する者)は、印刷を依頼する際に、予算,納期,品質などに関する顧客条件を設定することができる。そして、対象データ(顧客が印刷を依頼したPDFファイル)に対して、予め設定されている複数の印刷条件でRIP処理のシミュレーションが行われる。そのシミュレーション結果に基づいて、設定済みの顧客条件を満たす印刷条件が抽出され、その抽出された印刷条件を特定するための納品情報が選択可能な態様で顧客に提示される。そして、顧客によって選択された納品情報で特定される印刷条件に対応する連続印刷リストに、対象データを特定するレコード(印刷対象特定レコード)が登録される。すなわち、複数の印刷条件で連続印刷が行われている場合に、インク消費量や各インクジェット印刷装置300の稼働状況などを考慮して、顧客の要望を満たすことのできる印刷条件で印刷処理を実行することが可能となる。ここで、印刷条件の決定は外部端末700で顧客によって行われるので、ユーザー(印刷会社の作業者)の負担はない。以上のように、本実施形態においても、複数の印刷条件で連続印刷が行われる印刷システムにおいて、各顧客の要望を満たした好適な順序での連続印刷をユーザーの負担なく実現することができる。
【0118】
<3.その他>
本発明は上記各実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を施すことができる。例えば、上記各実施形態では複数のインクジェット印刷装置300を含む印刷システムを例を挙げて説明しているが、これには限定されない。1台のみのインクジェット印刷装置300を含む印刷システムにおいても、当該インクジェット印刷装置300で複数の印刷条件で連続印刷が行われるのであれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
51…ページデータ記憶手段
52…ページデータ指定手段
53…PDF解析手段
54…RIP速度予測手段
55…インク消費量予測手段
56…結果表示制御手段
57…要件設定手段
58…対象データ振り分け手段
59…連続印刷リスト記憶手段
60…レコード並び替え手段
100…制御サーバ
200,200(1)~200(3)…実行サーバ
300,300(1)~300(3)…インクジェット印刷装置
700…外部端末
800…要件入力画面
810…出力先選択画面