(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231225BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231225BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 398
H05B3/00 310C
(21)【出願番号】P 2020038980
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰和
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 望
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-117945(JP,A)
【文献】実公昭49-007256(JP,Y1)
【文献】特開2006-145661(JP,A)
【文献】特開2008-191333(JP,A)
【文献】特開2006-004860(JP,A)
【文献】特開2013-235181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0391512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の負荷と、
T1端子とT2端子とゲート端子とを有し、交流電源から前記第1の負荷への電力の供給と電力供給の遮断とを切り替える第1のスイッチ素子と、
第2の負荷と、
T1端子とT2端子とゲート端子とを有し、前記交流電源から前記第2の負荷への電力の供給と電力供給の遮断とを切り替える第2のスイッチ素子と、
前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子を制御し、前記第1の負荷と前記第2の負荷とに共に電力が供給されないように制御する制御手段と、
を備える加熱装置であって、
前記第1のスイッチ素子は、前記T1端子が前記第1の負荷の一端に接続され、前記T2端子が前記交流電源に接続され、
前記第2のスイッチ素子は、前記T2端子が前記第2の負荷の一端に接続され、前記T1端子が前記交流電源に接続される、
又は、
前記第1のスイッチ素子は、前記T2端子が前記第1の負荷の一端に接続され、前記T1端子が前記交流電源に接続され、
前記第2のスイッチ素子は、前記T1端子が前記第2の負荷の一端に接続され、前記T2端子が前記交流電源に接続されることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1のスイッチ素子を導通させるための第1の制御信号を前記第1のスイッチ素子のゲート端子に出力し、前記第2のスイッチ素子を導通させるための第2の制御信号を前記第2のスイッチ素子のゲート端子に出力することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記交流電源の交流電圧がゼロクロスするタイミングを検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて、
前記交流電圧の正の半波の期間で前記第1の制御信号を出力し、前記交流電圧の負の半波の期間で前記第2の制御信号を出力する、
又は、
前記交流電圧の負の半波の期間で前記第1の制御信号を出力し、前記交流電圧の正の半波の期間で前記第2の制御信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
複数の前記負荷により加熱される第1の回転体と、
前記第1の回転体とともにニップ部を形成する第2の回転体と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1の回転体は、フィルムであることを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記複数の負荷は、前記フィルムの内面に接するように設けられており、
前記ニップ部は、前記フィルムを介して前記複数の負荷と前記第2の回転体とにより形成されていることを特徴とする請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第2の負荷は、第3の負荷と第4の負荷とを有し、
前記交流電源から前記第3の負荷又は前記交流電源から前記第4の負荷への電力供給路をいずれか一方に切り替える切替手段を備え、
前記制御手段は、前記第3の負荷と前記第4の負荷のいずれか一方に電力が供給されるように前記切替手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1の負荷、前記第3の負荷、及び前記第4の負荷が配置される基板と、
2つの前記第1の負荷と、
を備え、
一方の前記第1の負荷は、前記基板の短手方向の一方の端部に配置され、他方の前記第1の負荷は、前記短手方向の他方の端部に配置され、
前記短手方向において、前記一方の第1の負荷、前記第3の負荷、前記第4の負荷、前記他方の第1の負荷の順に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記一方の第1の負荷及び前記他方の第1の負荷の一方の端部が電気的に接続された第1の接点と、
前記一方の第1の負荷、前記他方の第1の負荷及び前記第3の負荷の他方の端部が電気的に接続された第2の接点と、
前記第3の負荷及び前記第4の負荷の一方の端部が電気的に接続された第3の接点と、
前記第4の負荷の他方の端部が電気的に接続された第4の接点と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の加熱装置。
【請求項10】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
前記第1の負荷である第1の発熱体及び前記第2の負荷である第2の発熱体を有し、前記第1の発熱体又は前記第2の発熱体により前記記録材に転写された未定着のトナー像を加熱して定着させる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の加熱装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
前記第1の負荷である第1の発熱体、前記第3の負荷である第3の発熱体及び前記第4の負荷である第4の発熱体を有し、前記第1の発熱体、前記第3の発熱体又は前記第4の発熱体により前記記録材に転写された未定着のトナー像を加熱して定着させる請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の加熱装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び画像形成装置に関し、特に、加熱装置の定着ヒータを制御する制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着器に複数の発熱体を備え、複数の発熱体を複数の双方向サイリスタを介して並列に接続することで、例えば記録紙の幅に応じた長さの発熱体を選択的に用いて非通紙部昇温を軽減するといった構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、双方向サイリスタをトライアックという。一方、トライアックは、一般的に交流電源の制御を目的とした半導体素子である。トライアックは、ゲート(G)端子と、T1端子、T2端子の3端子を持ち、G端子にゲート電流が流れG端子の電圧が閾値電圧以上となることで、T1端子とT2端子との間に双方向に電流が流れる。更にトライアックはトリガモードI及びII、III、IVという4種類のトリガモードを持つことが知られている。ここでトリガモードIとはT1端子に対してT2端子が正電位でありG端子が正電位である場合を指し、トリガモードIIとはT1端子に対してT2端子が正電位でありG端子が負電位である場合を指す。トリガモードIIIとはT1端子に対してT2端子が負電位でありG端子が負電位である場合を指し、トリガモードIVとはT1端子に対してT2端子が負電位でありG端子が正電位である場合を指す。このとき、トリガモードI及びIIよりもトリガモードIII及びIVの方が、トライアックをオンするために、G端子に対して大きいゲート電流が必要であることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一方、トライアックは例えばEFT/B試験(電気的ファーストトランジェント/バースト試験)のように交流電源からdv/dtの大きいサージが印加されると、所望ではないタイミングでG端子に対してゲート電流が流れてしまうことがある。その結果、トライアックがオン(以下、誤点弧という)し、所望ではないタイミングで発熱体へ電力を供給してしまうおそれがある。誤点弧に対し、トライアックの両端の電圧をモニタすることで、トライアックの誤点弧による発熱体の過昇温を検知する制御装置が考案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-100558号公報
【文献】特開昭60-022370号公報
【文献】特開平06-297808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の発熱体が複数のトライアックを介して並列に接続されている定着器において、EFT/B試験のように交流電源からdv/dtの大きいサージ電圧が継続的に印加され、複数のトライアックが継続的に誤点弧すると、次のような課題が発生する。すなわち、複数の発熱体が所望ではないタイミングで電力を供給されてしまい、例えば定着器が過昇温となってしまうという課題が発生する。このようなトライアックの誤点弧による定着器の過昇温を防ぐためには、従来のように、トライアックの両端の電圧をモニタする構成などが挙げられるが、回路部品の追加によりコストや基板面積が増加してしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、回路部品を追加することなく、半導体素子の誤点弧を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)第1の負荷と、T1端子とT2端子とゲート端子とを有し、交流電源から前記第1の負荷への電力の供給と電力供給の遮断とを切り替える第1のスイッチ素子と、第2の負荷と、T1端子とT2端子とゲート端子とを有し、前記交流電源から前記第2の負荷への電力の供給と電力供給の遮断とを切り替える第2のスイッチ素子と、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子を制御し、前記第1の負荷と前記第2の負荷とに共に電力が供給されないように制御する制御手段と、を備える加熱装置であって、前記第1のスイッチ素子は、前記T1端子が前記第1の負荷の一端に接続され、前記T2端子が前記交流電源に接続され、前記第2のスイッチ素子は、前記T2端子が前記第2の負荷の一端に接続され、前記T1端子が前記交流電源に接続される、又は、前記第1のスイッチ素子は、前記T2端子が前記第1の負荷の一端に接続され、前記T1端子が前記交流電源に接続され、前記第2のスイッチ素子は、前記T1端子が前記第2の負荷の一端に接続され、前記T2端子が前記交流電源に接続されることを特徴とする加熱装置。
【0009】
(2)静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、前記第1の負荷である第1の発熱体及び前記第2の負荷である第2の発熱体を有し、前記第1の発熱体又は前記第2の発熱体により前記記録材に転写された未定着のトナー像を加熱して定着させる前記(1)に記載の加熱装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路部品を追加することなく、半導体素子の誤点弧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1、2の画像形成装置の概略を示す断面図
【
図2】実施例1の第1の閉回路と第2の閉回路とを示す回路ブロック図
【
図4】実施例2の発熱体の駆動回路を示す回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。以下の説明で、G端子、T1端子及びT2端子を有するスイッチ素子の一例として双方向サイリスタについて説明する。また、スイッチ素子のトリガモードIとはT1端子に対してT2端子が正電位でありG端子が正電位である場合を指し、トリガモードIIとはT1端子に対してT2端子が正電位でありG端子が負電位である場合を指す。更にスイッチ素子のトリガモードIIIとはT1端子に対してT2端子が負電位でありG端子が負電位である場合を指し、トリガモードIVとはT1端子に対してT2端子が負電位でありG端子が正電位である場合を指す。また、トリガモードI、IIよりもトリガモードIII、IVの方が、トライアックをオンするために、G端子に対して大きいゲート電流が必要である。
【実施例1】
【0013】
[全体構成]
図1は実施例1の定着装置を搭載した一例の画像形成装置である、インライン方式のカラー画像形成装置を示す構成図である。
図1を用いて電子写真方式のカラー画像形成装置の動作を説明する。なお、第1ステーションをイエロー(Y)色のトナー画像形成用のステーション、第2ステーションをマゼンタ(M)色のトナー画像形成用のステーションとしている。また、第3ステーションをシアン(C)色のトナー画像形成用のステーション、第4ステーションをブラック(K)色のトナー画像形成用のステーションとしている。
【0014】
第1ステーションで、像担持体である感光ドラム1aは、OPC感光ドラムである。感光ドラム1aは金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層等からなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。帯電手段である帯電ローラ2aが感光ドラム1aに当接され、感光ドラム1aの回転に伴い、従動回転しながら感光ドラム1a表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aには直流電圧又は交流電圧を重畳した電圧が印加され、帯電ローラ2aと感光ドラム1a表面とのニップ部から、回転方向の上流側及び下流側の微小な空気ギャップにおいて放電が発生することにより感光ドラム1aが帯電される。クリーニングユニット3aは、後述する転写後に感光ドラム1a上に残ったトナーをクリーニングするユニットである。現像手段である現像ユニット8aは、現像ローラ4a、非磁性一成分トナー5a、現像剤塗布ブレード7aからなる。感光ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、現像ユニット8aは、画像形成装置に対して着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9aとなっている。
【0015】
露光手段である露光装置11aは、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニット又はLED(発光ダイオード)アレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1a上に照射する。また、帯電ローラ2aは、帯電ローラ2aへの電圧供給手段である帯電高電圧電源1020aに接続されている。現像ローラ4aは、現像ローラ4aへの電圧供給手段である現像高電圧電源1021aに接続されている。転写手段である1次転写ローラ1010aは、1次転写ローラ1010aへの電圧供給手段である1次転写高電圧電源22aに接続されている。以上が第1ステーションの構成であり、第2、第3、第4ステーションも同様の構成をしている。他のステーションについて、第1ステーションと同一の機能を有する部品は同一の符号を付し、符号の添え字にステーションごとにb、c、dを付している。なお、以下の説明において、特定のステーションについて説明する場合を除き、添え字a、b、c、dを省略する。
【0016】
中間転写ベルト13は、その張架部材として2次転写対向ローラ15、テンションローラ14、補助ローラ19の3本のローラにより支持されている。テンションローラ14のみバネで中間転写ベルト13を張る方向の力が加えられており、中間転写ベルト13に適当なテンション力が維持されるようになっている。2次転写対向ローラ15はメインモータ(不図示)からの回転駆動を受けて回転し、外周に巻かれた中間転写ベルト13が回動する。中間転写ベルト13は感光ドラム1a~1d(例えば、
図1では反時計回り方向に回転)に対して順方向(例えば、
図1では時計回り方向)に略同速度で移動する。また、中間転写ベルト13は、矢印方向(時計回り方向)に回転し、1次転写ローラ1010は中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と反対側に配置されて、中間転写ベルト13の移動に伴い従動回転する。中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と1次転写ローラ1010とが当接している位置を1次転写位置という。補助ローラ19、テンションローラ14及び2次転写対向ローラ15は電気的に接地されている。なお、第2~第4ステーションの1次転写ローラ1010b~1010dは第1ステーションの1次転写ローラ1010aと同様の構成としているので説明を省略する。
【0017】
次に実施例1の画像形成装置の画像形成動作を説明する。画像形成装置は待機状態時に印刷指令を受信すると、画像形成動作をスタートする。感光ドラム1や中間転写ベルト13等はメインモータ(不図示)によって所定のプロセススピードで矢印方向に回転を始める。感光ドラム1aは、帯電高電圧電源1020aにより電圧が印加された帯電ローラ2aによって一様に帯電され、続いて露光装置11aから照射された走査ビーム12aによって画像情報(画像データともいう)に従った静電潜像が形成される。現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像ローラ4aに塗布される。そして、現像ローラ4aには、現像高電圧電源1021aより所定の現像電圧が供給される。感光ドラム1aが回転して感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像ローラ4aに到達すると、静電潜像は負極性のトナーが付着することによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(例えば、Y(イエロー))のトナー像が形成される。他の色M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各ステーション(プロセスカートリッジ9b~9d)も同様に動作する。各色の1次転写位置間の距離に応じて、一定のタイミングでコントローラ(不図示)からの書き出し信号を遅らせながら、露光による静電潜像が各感光ドラム1a~1d上に形成される。それぞれの1次転写ローラ1010a~1010dにはトナーと逆極性の直流高電圧が印加される。以上の工程により、順に中間転写ベルト13にトナー像が転写されていき(以下、1次転写という)、中間転写ベルト13上に多重トナー像が形成される。
【0018】
その後、トナー像の作像に合わせて、カセット16に積載されている記録材である用紙Pは、搬送経路Yに沿って搬送される。具体的には、用紙Pは給紙ソレノイド(不図示)によって回転駆動される給紙ローラ17により給送(ピックアップ)される。給送された用紙Pは搬送ローラによりレジストレーションローラ(以下、レジストローラという)18に搬送される。そして、用紙Pは、搬送方向に直交する方向の長さ(以下、幅という)を検知する紙幅センサ122を通過する。レジストローラ18の下流側にはレジストレーションセンサ(以下、レジセンサという)123が配置されている。レジセンサ123は、用紙Pの先端が到着すると用紙Pの「有り」を検知し、用紙Pの後端が通過すると用紙Pの「無し」を検知する。
【0019】
用紙Pは、中間転写ベルト13上のトナー像に同期して、レジストローラ18によって中間転写ベルト13と2次転写ローラ25との当接部である転写ニップ部へ搬送される。2次転写ローラ25には2次転写高電圧電源26により、トナーと逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー像が一括して用紙P上(記録材上)に転写される(以下、2次転写という)。用紙P上に未定着のトナー像が形成されるまでに寄与した部材(例えば、感光ドラム1等)は画像形成手段として機能する。一方、2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留したトナーは、クリーニングユニット27によって清掃される。2次転写が終了した後の用紙Pは、加熱装置である定着装置50へと搬送され、トナー像の定着を受けて画像形成物(プリント、コピー)として排出トレー1030へと排出される。定着装置50は、第1の回転体であるフィルム51、ニップ形成部材52、第2の回転体である加圧ローラ53、ヒータ54を有する。ヒータ54は、後述する複数の発熱体を有しており、複数の発熱体は、フィルム51の内面に接するように設けられている。また、加圧ローラ53はフィルム51とともにニップ部を形成しており、ニップ部は、フィルム51を介して複数の発熱体と加圧ローラ53とにより形成されている。
【0020】
[定着装置の回路ブロック図]
(第1の閉回路)
定着装置50には交流電源からの電力供給によって発熱するヒータ54として1つ以上の発熱体が搭載されている。この発熱体の制御方法に関する実施例1について、
図2、
図3を用いて説明する。
図2(a)は第1の閉回路について説明する回路ブロック図である。第1の閉回路110は主に、交流電源100、第1の負荷である第1の発熱体101(以下、発熱体101という)、第1のスイッチ素子である双方向サイリスタ(以下、トライアックという)102、フォトトライアックカプラ103を有している。また、第1の閉回路110は、抵抗104、抵抗105、抵抗107、トランジスタ106を有している。発熱体101はトライアック102のオン(導通)/オフ(非導通)により交流電源100からの電力がオン(供給)/オフ(遮断)され発熱する。
【0021】
電気的に1次側と2次側との絶縁を確保するフォトトライアックカプラ103内部の発光ダイオード103aが発光すると、トライアック102にゲート端子電流(以下、G端子電流という)I3Gが流れる。これによりトライアック102は、ゲート端子の電圧(以下、G端子電圧という)が閾値電圧以上となることでオン(導通)する。また、トライアック102は、交流電源100の交流電圧がゼロクロスするタイミングでオフ(非導通)する。抵抗105は発光ダイオード103aの電流制限抵抗である。フォトトライアックカプラ103をオン/オフするためのトランジスタ106は、抵抗107を介して制御手段であるCPU10と接続されており、CPU10から出力される第1の制御信号10a(以下、制御信号10aという)に従ってオン/オフ動作する。また抵抗104はトライアック102を駆動するためのバイアス抵抗である。CPU10が制御信号10aによりトランジスタ106をオンすることで、電源Vccから抵抗105を介してフォトトライアックカプラ103の発光ダイオード103aに電流が流れる。なお、トライアック102のT2端子とT1端子間に流れる電流I3とする。
【0022】
(第2の閉回路)
図2(b)は第2の閉回路について説明する回路ブロック図である。第2の閉回路210は主に、交流電源100と第2の負荷である第2の発熱体201(以下、発熱体201という)、第2のスイッチ素子であるトライアック202、フォトトライアックカプラ203を有している。また、第2の閉回路210は、抵抗204、抵抗205、抵抗207、トランジスタ206を有している。発熱体201はトライアック202のオン/オフにより交流電源100からの電力がオン/オフされ発熱する。なお、用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さである発熱体101及び発熱体201の長手方向の長さについては、例えば、発熱体101を発熱体201よりも長くする。CPU10は、例えば用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さに応じて、発熱体101に電力を供給するタイミングと発熱体201に電力を供給するタイミングとを制御する。具体的には、CPU10は、発熱体101と発熱体201とに排他的に電力が供給されるように制御する。
【0023】
電気的に1次側と2次側との絶縁を確保するフォトトライアックカプラ203内部の発光ダイオード203aが発光すると、トライアック202にG端子電流I4Gが流れる。これによりトライアック202は、G端子電圧が閾値電圧以上となることでオンする。また、トライアック202は、交流電源100の交流電圧がゼロクロスするタイミングでオフする。抵抗205は発光ダイオード203aの電流制限抵抗である。フォトトライアックカプラ203をオン/オフするためのトランジスタ206は、抵抗207を介してCPU10と接続されており、CPU10から出力される第2の制御信号10b(以下、制御信号10bという)に従ってオン/オフ動作する。また抵抗204はトライアック202を駆動するためのバイアス抵抗である。CPU10が制御信号10bによりトランジスタ206をオンすることで、電源Vccから抵抗205を介してフォトトライアックカプラ203の発光ダイオード203aに電流が流れる。なお、トライアック202のT2端子とT1端子間に流れる電流I4とする。
【0024】
このとき
図2(a)に示すように、第1の閉回路110において、トライアック102は、T1端子が発熱体101の一端に接続され、発熱体101を介して交流電源100に接続される。トライアック102は、T2端子が交流電源100に接続される。一方、
図2(b)に示すように、第2の閉回路210において、トライアック202は、T2端子が発熱体201の一端に接続され、発熱体201を介して交流電源100に接続される。トライアック202は、T1端子が交流電源100に接続される。この様に接続することで、トライアック102とトライアック202とを必ず逆の極性、具体的にはトリガモードI及びトリガモードIIIで互い違いに動作させることができる。なお、トライアック102と発熱体101との接続と、トライアック202と発熱体201との接続とが、逆の極性となるように接続すればよいため、次のように接続してもよい。トライアック102は、T2端子が発熱体101の一端に接続され、T1端子が交流電源100に接続されるようにし、一方、トライアック202は、T1端子が発熱体201の一端に接続され、T2端子が交流電源100に接続されるようにしてもよい。
【0025】
[サージが印加された場合の動作]
図3は、(i)に交流電源100が出力する交流電圧の波形を示す。(ii)にCPU10から出力される制御信号10aの波形を示し、(iii)にトライアック102のG端子電流I3Gの波形を示し、(iv)にトライアック102のT2端子とT1端子間に流れる電流I3を示す。(v)にCPU10から出力される制御信号10bの波形を示し、(vi)にトライアック202のG端子電流I4Gの波形を示し、(vii)にトライアック202のT2端子とT1端子間に流れる電流I4の波形を示す。ここで、(iii)のトライアック102のG端子電流I3Gは、
図2(a)のG端子電流I3Gの矢印の向きを正としており、I3Gが正の場合ゲート端子に印加されるトリガ信号としては負である(トリガモードとしてはIIかIIIになる)。また、(iv)の電流I3は、
図2(a)の電流I3の矢印の向きを正としており、I3が正の場合トライアック102のT1端子に対してT2端子が負電位となっている(トリガモードとしてはIIIかIVになる)。一方、(vi)のトライアック202のG端子電流I4Gは、
図2(b)のG端子電流I4Gの矢印の向きとは反対の向きを正としており、I4Gが正の場合ゲート端子に印加されるトリガ信号としては負である(トリガモードとしてはIIかIIIになる)。また、(vii)の電流I4は、
図2(b)の電流I4の矢印の向きとは反対の向きを正としており、I4が正の場合トライアック202のT1端子に対してT2端子が負電位となっている(トリガモードとしてはIIIかIVになる)。また、CPU10は、交流電圧の正の半波の期間でハイレベルの制御信号10aを出力し、交流電圧の負の半波の期間でハイレベルの制御信号10bを出力する。なお、CPU10は、交流電圧の負の半波の期間でハイレベルの制御信号10aを出力し、交流電圧の正の半波の期間でハイレベルの制御信号10bを出力してもよい。
【0026】
(正常動作)
図2に示す回路が正常に動作している場合、
図3に示す通り、B点において制御信号10aがトランジスタ106にオン動作を指示する。これにより、トライアック102は、T1端子に対してT2端子が負電位となりG端子が負電位となるため、トリガモードIIIとしての動作を開始する。トライアック102のG端子に電流I3Gが流れ、G端子電圧が閾値以上となることでトライアック102がオン動作し、
図3のB点からC点までの期間、電流I3が発熱体101に供給される。このときC点は交流電源100が正電位から負電位に切り替わるゼロクロスのタイミングである。
【0027】
また、D点において制御信号10bがトランジスタ206にオン動作を指示する。これにより、トライアック202は、T1端子に対してT2端子が負電位となりG端子が負電位となるため、トリガモードIIIとしての動作を開始する。トライアック202のG端子に電流I4Gが流れ、G端子電圧が閾値以上となることでトライアック202がオン動作し、
図3のD点からE点までの期間、電流I4が発熱体201に供給される。このときE点は交流電源が負電位から正電位に切り替わるゼロクロスのタイミングである。このように
図3のA点からE点までの動作を繰り返すことで、発熱体101及び発熱体201を正常な温度で駆動している。
【0028】
(サージ発生)
ここで
図3のF点において、交流電源100から出力される交流電圧の波形にEFT/B試験に代表されるようなサージ電圧が印加された場合について説明する。トライアック102のG端子にはG端子電流I3G(トリガ信号としては負)が流れ、トライアック202のG端子にはG端子電流I4G(トリガ信号としては正)が流れてしまう。
図3のF点のように交流電源100が正電位である場合、トライアック102は、T1端子に対してT2端子が負電位となり、G端子が負電位となるため、上述した状態と同じトリガモードIIIである。一方、トライアック202は、T1端子に対してT2端子が正電位となり、G端子が正電位となるため、トリガモードIの状態となる。
【0029】
トライアックは、トリガモードI、IIよりもトリガモードIII、IVの方が、トライアックをオンするために、大きいG端子電流を必要とする。すなわち、トリガモードIIIよりもトリガモードIの方が、低いG端子電流でオンしてしまう。このため、トリガモードIの状態であるトライアック202は、サージによるG端子電流I4GによってG端子電圧が閾値以上となってしまいオン動作、すなわち誤点弧し、
図3のF点からH点の期間、電流I4が発熱体201に供給されてしまう。ここで、F点からH点の期間内で誤点弧した区間を誤点弧区間という。一方、トライアック102は、サージによるG端子電流I3Gが流れても、トリガモードIIIの状態であるためG端子電圧の閾値が高く、オン動作、すなわち誤点弧しない(「誤点弧せず」)。そのため、トライアック102はG点でCPU10からの制御信号10aの指示に従って正常に動作する。このように、少なくともトライアック102は誤点弧しないため発熱体101は発熱せず、サージが発生しても、発熱体101と発熱体201とが同時に発熱する時間を短くすることができる。
【0030】
なお、交流電圧の負の半波の区間でサージが発生した場合についても同様である。例えば、
図3のH点以降においてサージが発生した場合、トライアック102はトリガモードIの状態となり誤点弧してしまい、発熱体101が発熱してしまう。一方、トライアック202はトリガモードIIIの状態となり誤点弧しない。このため、交流電圧の負の半波の期間でサージが発生した場合でも、発熱体101と発熱体201とが同時に発熱する時間を短くすることができる。
【0031】
以上のように、交流電源100に対してトライアック102とトライアック202とを逆の極性で接続することにより、発熱体101と発熱体201とが同時に所望ではない異常状態で継続して発熱することを防ぐことが可能となる。これにより、例えばトライアックの誤点弧を検知する回路や定着装置50の過昇温を検知する回路などを追加して搭載することなく、定着装置50の過昇温を防ぐことが可能となる。
【0032】
なお、実施例1では、2つのトライアックが並列に接続されている構成について記載したがこの限りではない。上述の通り、並列に接続されるトライアックの内、少なくとも1つのトライアックが逆の極性で接続されれば、並列に接続されるトライアックは3つ以上でもよい。以上、実施例1によれば、回路部品を追加することなく、半導体素子の誤点弧を低減することができる。
【実施例2】
【0033】
[定着装置の回路ブロック図]
(第1の閉回路)
実施例2に関して、
図4から
図6を用いて説明する。初めに
図4を用いて第1の閉回路について説明する。第1の閉回路は主に、交流電源100と発熱体301、トライアック302、フォトカプラ303、抵抗304、抵抗305、抵抗307、抵抗309、トランジスタ306、アルミ電解コンデンサ308、ダイオード310により構成されている。
【0034】
発熱体301はトライアック302のオン/オフにより交流電源100からの電力供給がオン/オフされ発熱する。トライアック302は、電気的に1次側と2次側との絶縁を確保するフォトカプラ303内部の発光ダイオード303aが発光することでトランジスタ306がオン動作する。トランジスタ306がオンすると、トライアック302にアルミ電解コンデンサ308からG端子電流I5Gが流れ、G端子電圧が閾値電圧以上となることで、トライアック302はオンする。また、トライアック302は交流電源100の交流電圧がゼロクロスするタイミングでオフする。発光ダイオード303aはCPU10と接続されており、CPU10から出力される制御信号10aに従って導通/非導通となる。
【0035】
このとき交流電源100から出力される交流電圧は検出手段であるゼロクロス検出回路30に入力されており、ゼロクロス検出回路30では交流電圧がある閾値以下の電圧になっていることをCPU10にパルス信号であるゼロクロス信号30aとして報知する。CPU10はゼロクロス検出回路30の検出結果に基づいてトライアック302及び後述するトライアック402の制御を行う。具体的には、CPU10は、ゼロクロス検出回路30から入力されたゼロクロス信号30aの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検知し、制御信号10aをハイレベルとして出力するかローレベルとして出力するかを決定する。
【0036】
抵抗304はフォトカプラ303のコレクタ電流を制限するための抵抗であり、抵抗305はトランジスタ306のコレクタ電流を制限するための抵抗である。抵抗307はトランジスタ306のベース電圧を安定させるための抵抗である。アルミ電解コンデンサ308は、トライアック302にG端子電流I5Gを供給するためのものであり、抵抗309はアルミ電解コンデンサ308の電流制限抵抗である。ダイオード310は交流電源100から供給される電流を遮断するためのものである。なお、トライアック302のT2端子とT1端子間に流れる電流I5とする。
【0037】
(第2の閉回路)
次に
図4を用いて第2の閉回路について説明する。第2の閉回路は、交流電源100と第3の負荷である第3の発熱体401(以下、発熱体401という)、トライアック402、フォトカプラ403を有している。また、第2の閉回路は、抵抗404、抵抗405、抵抗407、抵抗409、トランジスタ406、アルミ電解コンデンサ408、ダイオード410も有している。第2の閉回路は更に、切替手段であるリレー20、トランジスタ21も有している。
【0038】
発熱体401はトライアック402のオン/オフにより交流電源100からの電力供給がオン/オフされ発熱する。トライアック402は、電気的に1次側と2次側との絶縁を確保するフォトカプラ403内部の発光ダイオード403aが発光することでトランジスタ406がオン動作する。トランジスタ406がオンすると、トライアック402にアルミ電解コンデンサ408からG端子電圧I6Gが流れ、G端子電圧が閾値電圧以上となることで、トライアック402はオンする。また、トライアック402は交流電源100の交流電圧がゼロクロスするタイミングでオフする。発光ダイオード403aはCPU10と接続されており、CPU10から出力される制御信号10bに従って導通/非導通となる。このとき制御信号10bは制御信号10aと同様に、CPU10は、ゼロクロス信号30aの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検知することで、制御信号10bをハイレベルとして出力するかローレベルとして出力するかを決定する。
【0039】
抵抗404はフォトカプラ403のコレクタ電流を制限するための抵抗であり、抵抗405はトランジスタ406のコレクタ電流を制限するための抵抗である。抵抗407はトランジスタ406のベース電圧を安定させるための抵抗である。アルミ電解コンデンサ408は、トライアック402にG端子電流I6Gを供給するためのものであり、抵抗409はアルミ電解コンデンサ408の電流制限抵抗である。ダイオード410は交流電源100から供給される電流を遮断するためのものである。なお、トライアック402のT2端子とT1端子間に流れる電流I6とする。
【0040】
リレー20は、実施例2では例えば二極型の切り替えリレーを用いることにより、発熱体401と第4の負荷である第4の発熱体501(以下、発熱体501という)との切り替えが可能な構成となっている。リレー20はCPU10から出力される制御信号10cに従って動作するトランジスタ21により制御される。リレー20は接点20a、20b、20cを有しており、CPU10から出力された制御信号10cにより、接点20aと接点20bとが接続された状態と、接点20aと接点20cとが接続された状態を切り替える。これにより、交流電源100から発熱体401に電力を供給する電力供給路と交流電源100から発熱体501に電力を供給する電力供給路とが切り替えられる。リレー20のリレー接点20b側とリレー接点20c側との切り替え制御により発熱体401と発熱体501との電力供給の切り替えがなされる。実施例2の第2の閉回路では、発熱体401を用いる構成であるため、リレー20はリレー接点20aとリレー接点20cとが接続されるようにCPU10及びトランジスタ21によって制御されているものとする。
【0041】
(第3の閉回路)
次に
図4を用いて第3の閉回路について説明する。実施例2における第3の閉回路は、上述した第2の閉回路に対して発熱体401の代わりに発熱体501を用いる構成とする。すなわち、リレー20はリレー接点20aとリレー接点20bとが接続されるようにCPU10及びトランジスタ21によって制御されているものとする。なお、用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さである発熱体301、発熱体401及び発熱体501の長手方向の長さについては、例えば、発熱体301を発熱体401よりも長くし、発熱体401を発熱体501よりも長くする。CPU10は、例えば用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さに応じて、発熱体301に電力を供給するタイミングと発熱体401又は発熱体501に電力を供給するタイミングとを制御する。
【0042】
上述したような3つの閉回路において、
図4に示すように、第1の閉回路では、トライアック302のT1端子が発熱体301の一端に接続され、発熱体301を介して交流電源100に接続される。トライアック302のT2端子は交流電源100に接続される。第2の閉回路では、トライアック402のT2端子が発熱体401の一端に接続され、発熱体401を介して交流電源100に接続される。トライアック402のT1端子は交流電源100に接続される。第3の閉回路では、トライアック402のT2端子が発熱体501の一端に接続され、発熱体501を介して交流電源100に接続される。そして、発熱体301と発熱体401、又は発熱体301と発熱体501、という組み合わせで交流電源100より電力供給が行われることとする。このように接続することで、トライアック302とトライアック402とを必ず逆の極性、具体的にはトリガモードII及びトリガモードIIIで互い違いに動作させることができる。
【0043】
[発熱体の基板上の配置]
図5(a)はヒータ54の模式図、
図5(b)はヒータ54の断面模式図である。また、
図5(b)は、発熱体301、401、501の長手方向の中心線であり、定着装置50に搬送される用紙Pの長手方向の中心線(
図5(a)中一点鎖線a)におけるヒータ54の断面を示す図である。以下、線aを基準線aという。
【0044】
ヒータ54について、
図5(a)を用いて詳しく説明する。ヒータ54は、基板54a、2本の発熱体301、発熱体401、発熱体501、接点54d1~54d4、保護ガラス層54eからなる。基板54a上に、発熱体301、401、501、接点54d1~54d4が形成されている。そして、その上に発熱体301、401、501とフィルム51との絶縁を確保するために保護ガラス層54eが形成されている。
【0045】
基板54aには、発熱体301、発熱体401、発熱体501が配置される。一方の発熱体301は、基板54aの短手方向の一方の端部に配置され、他方の発熱体301は、基板54aの短手方向の他方の端部に配置される。短手方向において、一方の発熱体301、発熱体401、発熱体501、他方の発熱体301の順に配置されている。第1の接点である接点54d1には、一方の発熱体301及び他方の発熱体301の一方の端部が電気的に接続されている。第2の接点である接点54d2には、一方の発熱体301、他方の発熱体301及び発熱体401の他方の端部が電気的に接続されている。第3の接点である接点54d3には、発熱体401及び発熱体501の一方の端部が電気的に接続されている。第4の接点である接点54d4には、発熱体501の他方の端部が電気的に接続されている。
【0046】
[サージが印加された場合の動作]
図6は、(i)に交流電源100が出力する交流電圧の波形を示す。(ii)にゼロクロス検出回路30から出力されるゼロクロス信号30aの波形を示す。(iii)にCPU10から出力される制御信号10aの波形を示し、(iv)にトライアック302のG端子電流I5Gの波形を示し、(v)にトライアック302のT2端子とT1端子間に流れる電流I5を示す。
図6(vi)にCPU10から出力される制御信号10cの波形を示す。(vii)にCPU10から出力される制御信号10bの波形を示し、(viii)にトライアック402のG端子電流I6Gの波形を示し、(ix)にトライアック402のT2端子とT1端子間に流れる電流I6の波形を示す。(viii)のトライアック402のG端子電流I6Gは、
図4のG端子電流I6Gの矢印の向きを正としており、I6Gが正の場合ゲート端子に印加されるトリガ信号としては負である(トリガモードとしてはIIかIIIになる)。その他の波形の正負は実施例1と同様とする。
【0047】
(正常動作)
図6のA点で、CPU10はハイレベルの制御信号10cを出力しており、リレー20のリレー接点20aとリレー接点20cとが接続され、発熱体401が選択されているものとする。
図4に示す回路が正常に動作している場合、
図6におけるA点にてゼロクロス信号30aが立ち下がった後、B点において制御信号10aがハイレベルとなり、トランジスタ306にオン動作を指示する。これにより、トライアック302はT1端子に対してT2端子が負電位となりG端子が負電位となり、トリガモードIIIとしての動作を開始する。トライアック302のG端子に電流I5Gが流れ、G端子電圧が閾値電圧以上となることでトライアック302がオン動作し、
図6のB点からC点までの期間、電流I5が発熱体301に供給される。このときC点は交流電源100が正電位から負電位に切り替わるゼロクロスのタイミングであり、ゼロクロス信号30aが立ち上がっている。
【0048】
C点にてゼロクロス信号30aが立ち上がった後、D点において制御信号10bがトランジスタ406にオン動作を指示する。これにより、トライアック402はT1端子に対してT2端子が負電位となりG端子が負電位となり、トリガモードIIIとしての動作を開始する。トライアック402のG端子に電流I6Gが流れ、G端子電圧が閾値電圧以上となることでトライアック402がオン動作し、
図6のD点からE点までの期間、電流I6が発熱体401に供給される。このときE点は交流電源100が負電位から正電位に切り替わるゼロクロスのタイミングであり、ゼロクロス信号30aが立ち下がっている。このように
図6のA点からE点までの動作を繰り返すことで、発熱体301及び発熱体401を正常な温度で駆動している。
【0049】
(サージ発生)
ここで
図6のF点において、交流電源100から出力される交流電圧の波形にEFT/B試験に代表されるようなサージ電圧が印加された場合について説明する。トライアック302のG端子にはG端子電流I5Gが流れ、トライアック402のG端子にはG端子電流I6Gが流れてしまう。
図6のF点のように交流電源100が正電位である場合、トライアック302は、T1端子に対してT2端子が負電位となり、G端子が負電位となるため、上述した状態と同じトリガモードIIIである。一方、トライアック402はT1端子に対してT2端子が正電位となり、G端子が負電位となるためトリガモードIIの状態となる。
【0050】
トライアックは、トリガモードI、IIよりもトリガモードIII、IVの方が、トライアックをオンするために、大きいG端子電流を必要とする。すなわち、トリガモードIIIよりもトリガモードIIの方が、低いG端子電流でオンしてしまう。このため、トリガモードIIの状態であるトライアック402は、サージによるG端子電流I6GによりG端子電圧が閾値以上となってしまいオン動作し、
図6のF点からH点の期間中の誤点弧区間で、電流I6が発熱体401に供給されてしまう。一方、トライアック302は、サージによるG端子電流I5Gが流れても、トリガモードIIIの状態であるためG端子電圧の閾値が高く、オン動作しない。そのためG点でCPU10からの制御信号10aの指示に従って正常に動作する。このように、少なくとも発熱体301は誤点弧しないため、サージが発生しても、発熱体301と発熱体401とが同時に発熱する時間を短くすることができる。
【0051】
なお、交流電圧の負の半波の区間でサージが発生した場合についても同様である。例えば、
図6のH点以降においてサージが発生した場合、トライアック302はトリガモードIIの状態となり誤点弧してしまい、発熱体301が発熱してしまう。一方、トライアック402はトリガモードIIIの状態となり誤点弧しない。このため、交流電圧の負の半波の期間でサージが発生した場合でも、発熱体301と発熱体401とが同時に発熱する時間を短くすることができる。
【0052】
以上のように、交流電源100に対してトライアック302とトライアック402とを逆の極性で接続することにより、発熱体301と発熱体401とが同時に所望ではない異常状態で継続して電力供給されることを防ぐことが可能となる。そして、例えばトライアックの誤点弧を検知する回路や定着装置50の過昇温を検知する回路などを搭載することなく、定着装置50の過昇温を防ぐことが可能となる。
【0053】
なお、実施例2では、2つのトライアックが並列に接続されている構成について記載したがこの限りではない。並列に接続されるトライアックの内、少なくとも1つのトライアックが逆の極性であれば、並列に接続されるトライアックは3つ以上でもよい。また、発熱体401と発熱体501とをリレー20によって切り替える構成を、実施例1の発熱体201に変えて適用してもよい。以上、実施例2によれば、回路部品を追加することなく、半導体素子の誤点弧を低減することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 CPU
100 交流電源
101、201 発熱体
102、202 双方向サイリスタ