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特許7408445半導体製造装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H01L21/306 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020046623
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021150381
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】村木 信介
(72)【発明者】
【氏名】中岡 聡
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212652(JP,A)
【文献】特開2017-069529(JP,A)
【文献】特開2019-192708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する薬液を貯留するタンクと、
前記薬液を加熱する加熱部と、
前記タンク内の前記薬液に気泡を供給する気泡供給部と、
前記薬液の濃度、前記薬液の水濃度、前記薬液の比重、および、前記タンクから排出される気体の水蒸気濃度の少なくとも1つを検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、前記気泡供給部による気泡の供給を制御する制御部と、を備え、
前記気泡供給部は、
前記薬液の外部の気体が通過する吸気路と、
前記薬液が通過する流路であって、前記薬液と前記吸気路を通過する気体とを混合する流路と、を有し、
前記流路は、前記吸気路の一端と接続される接続部を有し、
前記流路の流路径は、前記接続部よりも上流側から前記接続部にかけて小さくなり、前記接続部から前記接続部よりも下流側にかけて大きくなり、
前記吸気路は、前記接続部内に気体を引き込む、半導体製造装置。
【請求項2】
前記タンクに対して前記薬液を循環させる循環路をさらに備え、
前記加熱部は、循環する前記薬液を加熱し、
前記気泡供給部は、循環する前記薬液を気体と混合して前記タンク内に供給することにより、前記タンク内の前記薬液に気泡を供給する、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記タンクは、前記薬液を貯留する第1槽と、該第1槽からオーバーフローする前記薬液を受ける第2槽と、を有し、
前記循環路は、前記第1槽と前記第2槽との間で前記薬液を循環させ、
前記気泡供給部は、循環する前記薬液を気体と混合して前記第1槽内に供給する、請求項2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記気泡供給部は、前記吸気路の経路上に設けられ、気体の通過を調整する調整部をさらに有し、
前記制御部は、前記調整部を制御することにより、前記気泡供給部による気泡の供給を制御する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記タンク内を排気する排気部をさらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記タンク内の前記薬液に水を供給する水供給部をさらに備え、
前記制御部は、前記センサの検出結果が所定値になるように、前記気泡供給部による気泡の供給および前記水供給部による水の供給を制御する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記気泡供給部は、前記タンクの下部に設けられる、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、例えば、薬液を基板に供給し、基板上に形成された膜をエッチングする場合がある。この場合、所望のエッチングレートになるように、事前に薬液の濃度の調整が行われる。
【0003】
しかし、大量の薬液の濃度を調整するために、長い時間を要する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-147637号公報
【文献】特許第6324775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液の濃度の調整時間を短縮することができる半導体製造装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による半導体製造装置は、タンクと、加熱部と、気泡供給部と、センサと、制御部と、を備える。タンクは、基板を処理する薬液を貯留する。加熱部は、薬液を加熱する。気泡供給部は、タンク内の薬液に気泡を供給する。センサは、薬液の濃度、薬液の水濃度、薬液の比重、および、タンクから排出される気体の水蒸気濃度の少なくとも1つを検出する。制御部は、センサの検出結果に基づいて、気泡供給部による気泡の供給を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による半導体製造装置の構成を示す模式図。
図2】第1実施形態によるタンクおよびその周辺の構成を示す図。
図3】第1実施形態による気泡供給部の構成を示す図。
図4】第1実施形態による半導体製造装置の動作を示すフロー図。
図5】第2実施形態による処理部およびその周辺の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。以下の実施形態において、半導体基板の上下方向は、半導体素子が設けられる面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
本実施の形態に係る基板処理装置(半導体製造装置)は、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の半導体製造装置である。その半導体製造装置においては、酸化ケイ素(SiO)からなるシリコン酸化膜および窒化ケイ素(Si)からなるシリコン窒化膜が形成された基板に、処理液としてシリコンを含む高温のリン酸水溶液(HPO+HO)が供給される。この場合、リン酸水溶液がシリコンを含むことによりシリコン酸化膜のエッチングレートが低下する。それにより、シリコン窒化膜が選択的にエッチングされる。
【0010】
シリコンは、例えばリン酸水溶液によるシリコン窒化膜のエッチングが行われることにより、またはリン酸水溶液にシリコン微粒子を含む濃縮液が混合されることにより、そのリン酸水溶液に存在している。
【0011】
図1は、第1実施形態による半導体製造装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、半導体製造装置100は、主として処理部1、タンク5、タンク6、タンク7、新液供給装置8および制御部9を含む。また、処理部1は、スピンチャック2、処理液ノズル3、加熱装置4およびカップCUを含む。処理部1では、複数の基板Wが一枚ずつ順番に基板処理される。
【0012】
スピンチャック2は、スピンモータ2a、スピンベース2bおよび複数のチャックピン2cを有する。スピンモータ2aは、回転軸が鉛直方向と平行になるように設けられる。スピンベース2bは、円板形状を有し、スピンモータ2aの回転軸の上端部に水平姿勢で取り付けられる。複数のチャックピン2cは、スピンベース2bの上面上に設けられ、基板Wの周縁部を保持する。複数のチャックピン2cが基板Wを保持する状態でスピンモータ2aが動作する。それにより、基板Wが鉛直軸の周りで回転する。
【0013】
上記のように、本例では、基板Wの周縁部を保持する機械式のスピンチャック2が用いられる。これに限らず、機械式のスピンチャックに代えて、基板Wの下面を吸着保持する吸着式のスピンチャックが用いられてもよい。
【0014】
処理液ノズル3および加熱装置4は、スピンチャック2により保持される基板Wの上方の位置と基板Wの側方の待機位置との間で移動可能に設けられる。処理液ノズル3は、タンク5から供給されるリン酸水溶液をスピンチャック2により回転される基板Wに
供給する。
【0015】
処理液ノズル3から基板Wにリン酸水溶液が供給される際には、加熱装置4が基板Wの上面に対向する位置に配置される。加熱装置4は、赤外線を発生するランプヒータを含み、輻射熱により基板Wおよびその基板W上に供給される処理液を加熱する。ランプヒータとしては、例えばタングステンハロゲンランプ、キセノンアークランプまたはグラファイトヒータ等を用いることができる。
【0016】
加熱装置4による基板Wの加熱温度は、リン酸水溶液のリン酸濃度における沸点よりも高い温度(例えば、140℃以上160℃以下)に設定される。それにより、基板W上のリン酸水溶液の温度がそのリン酸濃度における沸点まで上昇し、リン酸水溶液によるシリコン窒化膜のエッチングレートが増加する。
【0017】
一方、リン酸水溶液におけるシリコン濃度が適切な範囲内にある場合には、リン酸水溶液によるシリコン酸化膜のエッチングレートは、シリコン窒化膜のエッチングレートよりも十分に低く保たれる。その結果、上記のように、基板W上のシリコン窒化膜が選択的にエッチングされる。
【0018】
スピンチャック2を取り囲むようにカップCUが設けられている。カップCUは、スピンチャック2への基板Wの搬入時およびスピンチャック2からの基板Wの搬出時に下降し、基板Wへのリン酸水溶液の供給時に上昇する。
【0019】
回転する基板Wへのリン酸水溶液の供給時に、カップCUの上端部は基板Wよりも上方に位置する。それにより、基板Wから振り切られるリン酸水溶液がカップCUにより受け止められる。カップCUにより受け止められるリン酸水溶液は、後述するようにタンク6またはタンク7に送られる。
【0020】
タンク5は、循環槽5aおよび貯留槽5bを含む。循環槽5aおよび貯留槽5bは隣接するように配置され、一方の槽(例えば循環槽5a)で溢れる液体が他方の槽(例えば貯留槽5b)に流れ込むように構成される。循環槽5aには、リン酸濃度計S1およびシリコン濃度計S2が設けられる。リン酸濃度計S1はリン酸水溶液のリン酸濃度を出力し、シリコン濃度計S2はリン酸水溶液のシリコン濃度を出力する。貯留槽5bには、リン酸水溶液の液面高さを出力する液面センサS3が設けられる。貯留槽5bには、DIW(脱イオン水:Deionized Water)供給系91、窒素(N2)ガス供給系92およびリン酸水溶液供給系93が接続されている。
【0021】
タンク5の貯留槽5bと処理部1の処理液ノズル3とをつなぐように供給配管10が設けられる。供給配管10には、貯留槽5bから処理液ノズル3に向かって、ポンプ15、ヒータ14、フィルタ13、バルブ12およびヒータ11がこの順で介挿されている。
【0022】
フィルタ13とバルブ12との間の供給配管10の部分と循環槽5aとをつなぐように循環配管16が設けられる。循環配管16には、バルブ17が介挿されている。また、ヒータ11と処理液ノズル3との間の供給配管10の部分には、DIW供給系91が接続されている。
【0023】
タンク6,7の各々は、タンク5と同じ構成を有し、循環槽6a,7aおよび貯留槽6b,7bを含む。循環槽6a,7aの各々には、リン酸濃度計S1およびシリコン濃度計S2が設けられる。貯留槽6b,7bの各々には、液面センサS3が設けられるとともにDIW供給系91、窒素ガス供給系92およびリン酸水溶液供給系93が接続されている。
【0024】
タンク5の貯留槽5bとタンク6,7の貯留槽6b,7bとをつなぐように供給配管20が設けられる。供給配管20は、1本の主管20aおよび2本の枝管20b,20cを有する。枝管20b,20cは主管20aに接続される。主管20aがタンク5の貯留槽5bに接続され、2本の枝管20b,20cがそれぞれタンク6,7の貯留槽6b,7bに接続される。
【0025】
一方の枝管20bには、貯留槽6bから主管20aに向かって、ポンプ24、ヒータ23、フィルタ22およびバルブ21がこの順で介挿されている。フィルタ22とバルブ21との間の枝管20bの部分と循環槽6aとをつなぐように循環配管25が設けられる。循環配管25には、バルブ26が介挿されている。
【0026】
他方の枝管20cには、貯留槽7bから主管20aに向かって、ポンプ34、ヒータ33、フィルタ32およびバルブ31がこの順で介挿されている。フィルタ32とバルブ31との間の枝管20cの部分と循環槽7aとをつなぐように循環配管35が設けられる。循環配管35には、バルブ36が介挿されている。
【0027】
処理部1のカップCUとタンク6,7の貯留槽6b,7bとをつなぐように回収配管50が設けられる。回収配管50は、1本の主管50aおよび2本の枝管50b,50cを有する。枝管50b,50cは主管50aに接続される。回収配管50の主管50aがカップCUに接続され、2本の枝管50b,50cがそれぞれタンク6,7の貯留槽6b,7bに接続される。枝管50bにバルブ51が介挿され、枝管50cにバルブ52が介挿されている。
【0028】
新液供給装置8は、混合タンク8aおよびその混合タンク8a内の液体を外部に供給する供給装置を有する。新液供給装置8には、リン酸水溶液供給系93およびシリコン(Si)濃縮液供給系94が接続されている。また、混合タンク8aには、シリコン濃度計S2が設けられている。
【0029】
新液供給装置8の混合タンク8a内では、リン酸水溶液供給系93およびシリコン濃縮液供給系94から供給されるリン酸水溶液およびシリコン濃縮液が予め定められた比率で混合される。それにより、予め定められたシリコン濃度(以下、基準シリコン濃度と呼ぶ。)を有するリン酸水溶液が新たな処理液として生成され、所定の温度に保持される。本例では、シリコン濃縮液としてリン酸水溶液にシリコン微粒子を溶解させた液体が用いられる。
【0030】
また、新液供給装置8においては、混合タンク8a内のシリコン濃度を基準シリコン濃度とは異なる値に調整することも可能である。例えば、混合タンク8a内に基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が貯留された状態で混合タンク8a内にシリコン濃縮液を追加する。それにより、混合タンク8a内のシリコン濃度を基準シリコン濃度よりも高くすることができる。また、混合タンク8a内に基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が貯留された状態で混合タンク8a内にリン酸水溶液を追加する。それにより、混合タンク8a内のシリコン濃度を基準シリコン濃度よりも低くすることができる。
【0031】
新液供給装置8とタンク6,7の貯留槽6b,7bとをつなぐように第3の供給配管40が設けられる。第3の供給配管40は、1本の主管40aおよび2本の枝管40b,40cを有する。枝管40b,40cは主管40aに接続される。第3の供給配管40の主管40aが新液供給装置8に接続され、2本の枝管40b,40cがそれぞれタンク6,7の貯留槽6b,7bに接続される。枝管40bにバルブ41が介挿され、枝管40cにバルブ42が介挿されている。
【0032】
制御部9は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータ等からなる。制御部9のメモリにはシステムプログラムが記憶される。制御部9は、半導体製造装置100の各構成要素の動作を制御する。
【0033】
次に、図1に示す半導体製造装置100の基板処理の動作について説明する。
【0034】
初期状態においては、予め定められたリン酸濃度(以下、基準リン酸濃度と呼ぶ。)を有するとともに基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が、タンク5,6に貯留されている。
【0035】
さらに、基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有しないリン酸水溶液が、タンク7に貯留されている。図1に示される全てのバルブ12,17,21,26,31,36,41,42,51,52は閉じられている。
【0036】
初期状態から半導体製造装置100の電源がオン状態になると、図1のヒータ11,14,23,33、ポンプ15,24,34および新液供給装置8の動作が開始される。この状態で、処理部1のスピンチャック2に1枚目の基板Wが搬入される。また、スピンチャック2により基板Wが保持され、回転される。
【0037】
その後、図1の制御部9は、図1のバルブ12,17を開く。これにより、貯留槽5b内のリン酸水溶液がポンプ15により吸引され、ヒータ14を通してフィルタ13に送られる。ヒータ14は、供給配管10を通るリン酸水溶液を所定温度(例えば150℃)に加熱する。フィルタ13は、リン酸水溶液をろ過することにより不要な析出物等を除去する。
【0038】
ヒータ14およびフィルタ13を通過したリン酸水溶液の一部は、さらにヒータ11を通して加熱されつつ処理液ノズル3に送られる。それにより、基準リン酸濃度および基準シリコン濃度を有するリン酸水溶液が、DIWとともに処理液ノズル3から基板Wに供給される。なお、ヒータ11と処理液ノズル3との間には、DIW供給系91から適宜DIWが供給される。
【0039】
一方、ヒータ14およびフィルタ13を通過したリン酸水溶液の残りは、循環配管16を通してタンク5の循環槽5aに戻される。タンク5内では、循環槽5aから溢れるリン酸水溶液が貯留槽5bに流れ込む。このように、貯留槽5b内のリン酸水溶液が、加熱およびろ過されつつ供給配管10、循環配管16および循環槽5aを通って貯留槽5b内に戻される。それにより、貯留槽5b内のリン酸水溶液の温度および清浄度がほぼ一定に保たれる。
【0040】
上記のように、貯留槽5bに貯留されたリン酸水溶液の一部を加熱およびろ過しつつ再び貯留槽5bに戻すことにより、貯留槽5b内のリン酸水溶液の温度および清浄度を一定に保つ動作を循環温調と呼ぶ。
【0041】
次に、図1に示す半導体製造装置100の溶液処理の動作について説明する。
【0042】
図1の制御部9はさらに図1のバルブ52を開く。これにより、処理部1のカップCUにより回収される使用済みのリン酸水溶液が、主管50aおよび枝管50cを通してタンク7の貯留槽7bに送られる。このように、基板Wに供給された使用済みのリン酸水溶液を貯留槽7bに送る動作を液回収と呼ぶ。
【0043】
図1の制御部9はさらに図1のバルブ26,36を開く。これにより、タンク6およびタンク7においてもタンク5と同様の循環温調が行われる。
【0044】
ここで、タンク7において液回収および循環温調が行われる際に、貯留槽7bに貯留されるリン酸水溶液のリン酸濃度は基準リン酸濃度とは異なる。そこで、図1の制御部9は、タンク7のリン酸濃度計S1の出力に基づいて、貯留槽7b内のリン酸濃度が基準リン酸濃度に近づくようにする。尚、濃度の調整の詳細については、図2図4を参照して、後で説明する。
【0045】
また、例えば、タンク7が液回収を行う間、タンク6は、リン酸濃度を調整し、主管20aと通してタンク5にリン酸を供給する。その後、タンク7とタンク6との動作が切り替わる。すなわち、タンク6は、液回収を行い、タンク7は、リン酸濃度を調整し、主管20aと通してタンク5にリン酸を供給する。このように、タンク6、7は、所定の時間ごとに、液回収とリン酸濃度の調整とを交互に行う。
【0046】
尚、タンク5から処理液ノズル3へのリン酸水溶液の供給は、基板Wの処理が終了されるまで継続される。また、タンク5、タンク6およびタンク7における循環温調も基板Wの処理が終了されるまで継続される。
【0047】
図2は、第1実施形態によるタンク7およびその周辺の構成を示す図である。尚、図2は、図1に対して、ヒータ33とポンプ34との順番が異なっている。
【0048】
半導体製造装置100は、タンク(容器)7と、ヒータ33と、循環配管(循環路)35と、ポンプ34と、気泡供給部38と、排気部37と、DIW供給系91と、センサと、制御部9と、を備える。
【0049】
タンク7は、基板Wを処理する薬液を貯留する。薬液は、基板W上に設けられる被処理膜を処理する。薬液は、例えば、リン酸水溶液等の、エッチング液である。この場合、例えば、シリコン窒化膜(Si)および金属膜等を処理することができる。尚、薬液は、例えば、フッ酸水溶液であってもよい。この場合、シリコン酸化膜(SiO)等を除去することができる。タンク7は、例えば、40Lの薬液を貯留する。
【0050】
また、より詳細には、タンク7は、循環槽7aと、貯留槽7bと、を有する。
【0051】
循環槽7aは、薬液を貯留する。
【0052】
貯留槽7bは、循環槽7aからオーバーフローする(溢れる)薬液を受ける。貯留槽7bは、例えば、循環槽7aの外周に設けられてもよい。
【0053】
循環配管35は、タンク7に対して薬液を循環させる。より詳細には、循環配管35は、循環槽7aと貯留槽7bとの間で薬液を循環させる。また、循環配管35は、一端が貯留槽7bと接続し、他端が循環槽7a内の気泡供給部38と接続する。尚、循環配管35は、図2に示す枝管20cを含んでいてもよい。
【0054】
ポンプ34は、循環配管35(枝管20c)の経路上に設けられ、貯留槽7b内の薬液を吸引して、循環槽7aに薬液を環流させる。
【0055】
加熱部としてのヒータ33は、薬液を加熱する。これにより、薬液中の水が蒸発し、薬液の濃度が上昇させることができる。ヒータ33は、循環配管35(枝管20c)の経路上に設けられる。すなわち、ヒータ33は、循環する薬液を加熱する。ヒータ33は、タンク7内の薬液の温度を略一定に保つようにする。制御部9は、例えば、循環配管35に設けられる温度計(図示せず)の検出結果に基づいて、ヒータ33をPID制御する。薬液の温度は、例えば、100℃以上になるように調整される。
【0056】
気泡供給部38は、タンク7内の薬液に気泡Bを供給する。気泡Bの表面において、薬液中の水が蒸発する。従って、気泡Bにより薬液の表面積を大きくすることができ、水の蒸発を促進することができる。これにより、薬液の濃度の調整時間を短縮することができる。気泡供給部38は、調整時間を短縮するように、大量の気泡Bを供給できることが好ましい。
【0057】
また、気泡供給部38は、タンク7内に設けられる。また、気泡供給部38は、タンク7の下部に設けられる。これにより、タンク7の下方から気泡が発生し、水がより蒸発しやすくなる。
【0058】
また、より詳細には、気泡供給部38は、循環する薬液を気体と混合してタンク7内に供給することにより、タンク7内の薬液に気泡Bを供給する。また、より詳細には、気泡供給部38は、循環する薬液を気体と混合して循環槽7a内に供給する。尚、気泡供給部38の詳細については、図3を参照して、後で説明する。
【0059】
排気部37は、タンク7内を排気する。タンク7内では、濃度調整のために水が蒸発するため、水蒸気を排出する必要がある。より詳細には、排気部37は、排気管371と、ポンプ372と、気液分離部373と、を有する。
【0060】
排気管371は、タンク7から排気される気体が通過する。
【0061】
ポンプ372は、タンク7内の気体を吸引して、外部に排気する。
【0062】
気液分離部373は、排気管371の経路上に設けられる。気液分離部373は、排気管371を通過する気体を冷却する。これは、タンク7から排出される気体には高温の水蒸気が含まれ、通常の排気系の配管等に悪影響を与える場合があるためである。また、気液分離部373は、結露した水を外部に排出する。
【0063】
水供給部としてのDIW供給系91は、タンク7内の薬液にDIW(水)を供給する。より詳細には、DIW供給系91は、貯留槽7bにDIWを供給する。これにより、例えば、水の蒸発量が多く薬液の濃度が高い場合に、薬液の濃度を低くすることができる。
【0064】
センサは、薬液の濃度、薬液の水濃度、薬液の比重、および、タンク7から排出される気体の水蒸気濃度の少なくとも1つを検出する。センサは、複数設けられていてもよい。センサは、例えば、濃度計S1、比重計S4および水蒸気濃度計S5の少なくとも1つであればよい。濃度計S1は、薬液濃度を検出してもよく、水濃度を検出してもよい。比重計S4は、例えば、圧力センサまたは光センサである。比重によっても、薬液の濃度を求めることができる。濃度計S1および比重計S4は、例えば、循環槽7aに設けられる。水蒸気濃度計S5は、例えば、気液分離部373の手前の排気管371の経路上に設けられる。上記のように、水の蒸発によって薬液の濃度が調整されるため、排気される気体の水蒸気濃度は、タンク7内の薬液の濃度と相関がある。また、センサは、検出結果を制御部9に送信する。
【0065】
尚、以下では、特に断りのない限り、センサはリン酸濃度を検出する濃度計S1であるとして説明する。
【0066】
制御部9は、濃度計S1の検出結果に基づいて、気泡供給部38による気泡Bの供給を制御する。すなわち、制御部9は、濃度計S1の検出結果を用いてフィードバック制御する。これにより、所定の濃度となるように薬液の濃度を調整することができる。また、より詳細には、制御部9は、濃度計S1の検出結果が所定値になるように、気泡供給部38による気泡の供給およびDIW供給系91によるDIWの供給を制御する。所定値は、例えば、薬液の所望のエッチングレートに対応して設定される。所定値は、基準濃度(基準リン酸濃度)であり、例えば、濃度約90%である。
【0067】
図3は、第1実施形態による気泡供給部38の構成を示す図である。尚、矢印は、薬液および気体の流れる向きを示す。
【0068】
気泡供給部38は、吸気管(吸気路)381と、配管(流路)382と、調整部383と、を有する。気泡供給部38は、例えば、エジェクタである。
【0069】
吸気管381には、薬液の外部の気体が通過する。吸気管381の一端は、配管382と接続する。また、図2に示すように、吸気管381の他端は、薬液の水面の上方に設けられる。
【0070】
配管382には、薬液が通過する。また、配管382は、薬液と吸気管381を通過する気体とを混合する。また、配管382は、導入部382aと、ノズル部382bと、導出部382cと、を有する。
【0071】
導入部382aは、循環配管35から薬液を導入する。また、ノズル部382bは、吸気管381と接続する。また、導出部382cは、薬液をタンク7内に導出する。
【0072】
配管382の流路径は、導入部382aからノズル部382bにかけて小さくなり、ノズル部382bから導出部382cにかけて大きくなる。最も狭くなるノズル部382bは、循環する薬液の流速が最も速くなるため、ベンチュリ効果により減圧状態となる。従って、薬液が配管382を通過すると、薬液の水面の上方から、気体(空気)が減圧状態のノズル部382b内に引き込まれる。さらに、ノズル部382bから導出部382cにかけて、気体は薬液に混合される。従って、導出部382cを通過する薬液には、気泡Bが含まれる。
【0073】
調整部383は、吸気管381の経路上に設けられる。また、調整部383は、気体の通過を調整する。調整部383は、例えば、開度が調整可能な弁である。例えば、調整部383の開き量が大きいほど、吸気管381を通過する気体が多く、気泡Bの供給量が多くなる。また、制御部9は、調整部383を制御することにより、気泡供給部38による気泡の供給を制御する。
【0074】
次に、半導体装置の製造方法について説明する。
【0075】
図4は、第1実施形態による半導体製造装置100の動作を示すフロー図である。尚、図4は、薬液の濃度調整および基板処理の工程を示す。
【0076】
まず、ヒータ33は、薬液を加熱する(S10)。すなわち、基板Wを処理する薬液を貯留するタンク7内の薬液をヒータ33により加熱する。例えば、ポンプ34が薬液を循環させ、ヒータ33は、循環する薬液を加熱する。
【0077】
次に、濃度計S1は、薬液の濃度を検出する(S20)。濃度計S1は、検出結果を制御部9に送信する。
【0078】
次に、制御部9は、薬液が基準濃度であるか否かを判定する(S30)。薬液が基準濃度ではない場合(S30のNO)、制御部9は、気泡供給部38およびDIW供給系91を制御する。例えば、薬液の濃度が基準濃度よりも低い場合、制御部9は、気泡の供給量を増加させるように気泡供給部38を制御する。一方、薬液の濃度が基準濃度よりも高い場合、制御部9は、水の供給量を増加させるようにDIW供給系91を制御する。その後、ステップS20が実行される。従って、薬液の濃度が基準濃度になるまで、ステップS20~S40が繰り返し実行される。すなわち、濃度計S1の検出結果に基づいて、タンク7内の薬液に気泡Bを供給する気泡供給部38による気泡Bの供給を制御部9により制御する。より詳細には、濃度計S1の検出結果が所定値になるように、気泡供給部38による気泡の供給およびDIW供給系91によるDIWの供給を制御部9により制御する。
【0079】
薬液がリン酸水溶液である場合、薬液の濃度を、例えば、半導体製造装置100への投入時の約85%から基準濃度である約90%に調整する。
【0080】
薬液の濃度が基準濃度である場合(S30のYES)、半導体製造装置100は、薬液供給により基板Wを処理する(S50)。すなわち、タンク7内の薬液により基板Wを処理する。これにより、薬液の濃度を所望のエッチングレートになるよう調整して、基板W上の被処理膜であるシリコン窒化膜を除去することができる。尚、基板Wの処理は、図1を参照して説明したように行われる。従って、例えば、濃度調整の開始から所定の時間後に、濃度が所定の範囲内である場合、タンク7からタンク5に薬液が供給される。
【0081】
以上のように、第1実施形態によれば、気泡供給部38は、タンク7内の薬液に気泡Bを供給する。また、制御部9は、濃度計S1の検出結果に基づいて、気泡供給部38による気泡Bの供給を制御する。これにより、薬液内に気泡Bを導入し、水の蒸発を促進することができる。すなわち、薬液の濃度の上昇速度が向上する。この結果、薬液の濃度の調整時間を短縮することができる。さらに、半導体製造装置100の単位時間あたりの処理能力を向上させることができる。
【0082】
一般に、濃度調整する薬液の量が多くなるほど、濃度調整の時間がかかってしまう。この待ち時間によって、スループットが悪化してしまう。また、濃度調整のためのタンクを新たに設けると、装置のフットプリントが大きくなってしまう。
【0083】
また、水の蒸発を促進する他の方法として、タンクの面積を広くし、薬液の表面積を増やすことが知られている。しかし、この場合も、装置のフットプリントが大きくなってしまう可能性がある。従って、単位面積あたりの半導体製造装置の処理効率が悪化する可能性がある。
【0084】
これに対して、第1実施形態では、気泡供給部38により、タンク面積を変える(大きくする)ことなく、水の蒸発を促進することができる。また、気泡供給部38は、タンク7内設けられている。従って、タンク7周辺の構成を大きく変えることなく、調整時間を短縮することができる。
【0085】
尚、濃度計S1は、薬液の水濃度を検出する水濃度計であってもよい。
【0086】
また、上記のように、センサは、濃度計S1に限られず、比重計S4または水蒸気濃度計S5であってもよい。この場合、図4のステップS20では、薬液の濃度、薬液の水濃度、薬液の比重、および、タンク7から排出される気体の水蒸気濃度の少なくとも1つをセンサにより検出する。制御部9は、計測された比重または水蒸気濃度が、薬液の基準濃度に対応する比重または水蒸気濃度(所定値)であるか否かにより判定すればよい。また、制御部9は、リン酸濃度計S1、比重計S4および水蒸気濃度計S5の検出結果のうち複数を組み合わせて気泡Bの供給を制御してもよい。
【0087】
また、タンク7に限られず、図1に示すタンク5、6、7の少なくとも一つのタンクにおいて、上記の濃度調整が行われればよい。すなわち、図2に示すタンク7は、例えば、図1に示すタンク5、6であってもよい。この場合、枝管20cは、例えば、図1に示す供給配管10または枝管20bである。ヒータ33は、例えば、図1に示すヒータ14、23である。ポンプ34は、例えば、図1に示すポンプ15、24である。循環配管35は、例えば、図1に示す循環配管16、25である。
【0088】
また、制御部9は、例えば、ポンプ34を制御して、気泡の供給を調整してもよい。例えば、ポンプ34により循環する薬液の流速が増加すると、吸気管381から引き込まれる空気の量が増加するため、気泡供給部38における気泡の供給量が増加する。
【0089】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態による処理部1aおよびその周辺の構成を示す模式図である。第2実施形態は、複数の基板Wを一括して処理するバッチ式の半導体製造装置100である点で、第1実施形態と異なる。
【0090】
半導体製造装置100は、タンク400をさらに備える。
【0091】
タンク400は、内槽401と、外槽402と、を有する。また、タンク400では、内槽401と外槽402との間に設けられる循環配管(図示せず)等により、タンク5、6、7と同様に循環温調が行われてもよい。
【0092】
内槽401は、薬液を貯留する。内槽401は、図1と同様の供給配管10が接続されている。また、供給配管10の経路上に、図1と同様のヒータ11が設けられる。従って、タンク5から薬液が内槽401内に供給される。
【0093】
外槽402は、内槽401の全周を囲むように設けられ、内槽401からオーバーフローした薬液を受けて回収する。外槽402は、図1と同様の主管50aが接続されている。従って、外槽402の薬液が図1に示すタンク6またはタンク7に回収される。
【0094】
第2実施形態による半導体製造装置100のその他の構成は、第1実施形態による半導体製造装置100の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0095】
第2実施形態においても、タンク6およびタンク7は、液回収と薬液濃度の調整とを交互に行う。従って、第1実施形態と同様に、タンク7は、薬液の濃度調整を行えばよい。
【0096】
次に、第2実施形態による半導体製造装置100の基板処理の動作について説明する。
【0097】
まず、供給配管10を介して、タンク400内に薬液が貯留される。すなわち、所望のエッチングレートになるように調整された薬液が、タンク400内に貯留される。次に、基板Wが内槽401に貯留された薬液に浸漬される。例えば、複数の基板Wを保持する保持部(図示せず)が鉛直方向に下降することにより、基板Wを薬液に浸漬する。これにより、基板W上のシリコン窒化膜が除去される。
【0098】
第2実施形態による半導体製造装置100は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
100 半導体製造装置、3 処理液ノズル、7 タンク、7a 循環槽、7b 貯留槽、9 制御部、33 ヒータ、35 循環配管、37 排気部、38 気泡供給部、381 吸気管、382 配管、383 調整部、91 DIW供給系、B 気泡、S1 濃度計、S4 比重計、S5 水蒸気濃度計
図1
図2
図3
図4
図5